説明

表示機能付きICカード

【課題】 外光の量に左右されずにユーザが能動的に表示機能を駆動させることが可能な表示機能付きICカードを提供する。
【解決手段】 表示機能付きICカード1は、ディスプレイ31等の表示部と、非接触ICチップ51及びアンテナ52(非接触通信部)とに加え、カード本体2に加えられる圧力または振動により電力を発生する発電部6と、発電部6の発生する電力を蓄電し、表示部に電力を供給するキャパシタ7とを備える。発電部6には、例えばピエゾフィルム等の圧電素子及び整流回路を用いることができる。カードが曲げられたり振動したりすると圧電素子が電圧を発生し、キャパシタ7に蓄電される。スイッチボタン4が操作されるとキャパシタ7から表示制御回路33、ドライバ32、及び非接触ICチップ52に電力が供給され、所定の表示データがディスプレイ31に表示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示機能を備えたICカードにおける電源供給に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカード本体に表示機能を備えたものが開発されている。表示機能を動作させるためには表示駆動用の電力を供給する必要があるが、電力供給の方法としては、非接触通信によるもの(特許文献1)、接触端子を介するもの(特許文献2)、太陽電池を搭載するもの(特許文献3)等、種々の提案がなされている。
【0003】
特に、太陽電池を搭載する表示機能付きICカードは、外部機器からの電力供給に頼ることなくカード単体で作動可能であり、また電池交換の必要もなく外光にあてれば充電されるため、利用者が持ち歩く中でカード内容を随時確認するようなカード用途ではその利便性は一層高いものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−157414号公報
【特許文献2】特開2007−133563公報
【特許文献3】特表2000−501862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ICカードは、不使用時は主にユーザの財布やかばんの中等、暗い所に置かれていることが想定されるため、太陽電池が充電されず、カード使用時に毎回外光に当てる必要があった。また、室内等の外光量の少ない環境では、表示機能を駆動させるに足る電力を得るのが困難な場合もあった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、外光の量に左右されずにユーザが能動的に表示機能を駆動させることが可能な表示機能付きICカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するため第1の発明は、非接触ICチップ及びアンテナを有する非接触通信部と、ディスプレイ、ドライバ、及び表示制御回路を有する表示部と、を備えた表示機能付きICカードであって、カード本体に加えられる圧力または振動により電力を発生する発電手段と、前記発電手段により発生される電力を蓄電し、前記表示部に電力を供給する蓄電手段と、を更に備えることを特徴とする表示機能付きICカードである。
【0008】
第1の発明の表示機能ICカードによれば、発電手段によってカード本体に加えられる圧力により電力を発生し、蓄電手段によって電力を蓄電し、前記表示部に電力を供給する。
従って、外光量に左右されずに発電でき、また表示機能を駆動できるようになる。ユーザは外光量の小さい室内や夜間でも、カードをこする、振動させる、曲げるといった動作を行うことで表示駆動に必要な電力を生成できる。
【0009】
ここで、発電手段としては、カード本体に加えられる圧力や振動を電力に変換する圧電素子と整流回路とを組み合わせたものが好適である。カードに内蔵するために、圧電素子には薄型かつ可撓性に優れたピエゾフィルムを利用することが好適である。
また、蓄電手段としては、内部抵抗が低く、短時間で充放電が行える電気二重層キャパシタまたはリチウムイオンキャパシタを利用することが好ましい。
【0010】
また、第1の発明の表示機能付きICカードにおいて、前記発電手段は、前記カード本体の端部に配置されることが望ましい。
曲がりにくいカード端部に発電手段が設けられているため、発電のためにユーザがカードを曲げて力を加えても壊れにくく、発電手段を有するICカードの耐久性が向上する。
【0011】
また、第1の発明の表示機能付きICカードにおいて、前記発電手段は、複数の領域に分割配置されることが望ましい。
前記発電手段が、複数の領域に分割配置されるため、カード内の空いたスペースに発電手段を効率よく配置でき、発電量を増大できる。また、分割配置することにより、曲げに対する耐久性に優れた表示機能付きICカードを提供できる。
【0012】
また、第1の発明の表示機能付きICカードにおいて、前記発電手段には、カード長手方向にほぼ直交するようにスリットが設けられることが望ましい。
カードを発電するために、カード本体を長手方向に湾曲させる力が加えられた場合でも、スリットによって屈曲性が向上し、製品の耐久性がより向上する。また、スリットが設けられることによって、発電手段自体の割れを防ぐことができるため製品の耐久性がより向上する。
特に、スリットの間隔を長手方向中央部で狭く端部に向かうにつれて徐々に広くなるように設ければ、長手方向の湾曲に対して、更に屈曲性が向上し、製品の耐久性をより向上させることが可能となる。
【0013】
また、第1の発明の表示機能付きICカードにおいて、前記非接触通信部、前記表示部、前記発電手段、及び前記蓄電手段を同じ基板に設けるようにすれば、表示機能付きICカードを最小1枚の基板で構成できるため、カード厚さの制約により薄型化しなければならない部品について、その制約を軽減でき、製造が容易となる。
【0014】
また、第1の発明の表示機能付きICカードにおいて、前記非接触通信部を前記表示部、前記発電手段、及び前記蓄電手段と別の基板に設ける場合には、一般的な規格で製造される非接触通信基板に対して、発電手段と蓄電手段とを有する表示駆動用の基板を積層することにより、本発明に係る表示機能付きICカードを製造できるようになる。また、表示駆動用の基板内にアンテナや非接触ICチップ等のスペースを設ける必要がないので、発電手段または蓄電手段の設置面積を増加させ、発電量及び蓄電量を増大させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、外光の量に左右されずに表示機能を駆動させることが可能な表示機能付きICカードを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】表示機能付きICカード1の外観図
【図2】表示機能付きICカード1の内部構成を示すブロック図(第1実施形態)
【図3】表示機能付きICカード1を長辺側の側面から見た断面構造図(第1実施形態)
【図4】表示制御用ICカード1の内部構成を示すブロック図(第2実施形態)
【図5】表示機能付きICカード1を長辺側の側面から見た断面構造図(第2実施形態)
【図6】発電部6を複数領域に分割配置した例
【図7】発電部6を複数領域に分割配置した例
【図8】発電部6を複数領域に分割配置した例
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、表示機能付きICカード1の外観図である。
本発明に係る表示機能付きICカード1は、非接触ICカード機能と、表示機能とを兼ね備えたICカードであり、図1に示すように、カード本体2の表面に表示部3及びスイッチ4を有する。
【0018】
スイッチ4は、表示部3の表示をON/OFFする、或いは表示内容を更新するために操作される操作ボタンである。
【0019】
非接触通信機能を実現するため、表示機能付きICカード1は、内部に非接触ICチップ51及びアンテナ52を有する。以下、非接触ICチップ51及びアンテナ52を含めて非接触通信部という。
【0020】
また、表示機能を実現するため、表示機能付きICカード1は、ディスプレイ31、ドライバ32、及び表示制御回路33を有する。以下、ディスプレイ31、ドライバ32、及び表示制御回路33を含めて表示部3という。
図1は、表示部3のディスプレイ31がカード表面に露出された例である。
【0021】
ディスプレイ31には、例えば液晶ディスプレイや電子ペーパを採用でき、文字や画像等の表示データが表示される。特に、電子ペーパは、電力の供給が絶えても表示状態が維持され、かつ薄く可撓性に優れるため好適である。電子ペーパは、電子粉流体の場合は、黒文字と白地の2色表示となり、コレステリック液晶の場合は、緑文字と黒字の2色表示またはカラー表示を行える。また、電子ペーパの電力消費は表示書き換え時のみ行われ、書き換えられた表示画面は電力消費なしで保持でき、また、ディスプレイの視認性も確保できる。
ドライバ32は、ディスプレイ31を駆動するための駆動回路である。
【0022】
表示制御回路33は、CPU(Central Proccessing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)等のメモリ、外部入出力端子等を備えたICチップであり、外部入出力端子を介してドライバ32、キャパシタ7、非接触ICチップ51、及びスイッチ4が接続される(図2、図4参照)。これにより、表示制御回路33は、キャパシタ7から供給される電力により駆動され、ドライバ32を駆動して、表示制御回路33のメモリ内に保持されたデータをディスプレイ31に表示させることができる。
【0023】
更に、本発明の表示機能付きICカード1は、カード本体2に加えられる圧力または振動により電力を発生する発電部6(発電手段)と、発電部6の発生する電力を蓄電し、表示部に電力を供給するキャパシタ7(蓄電手段)とを備える。
【0024】
発電部6は、圧電素子と整流回路とを組み合わせて構成される。圧電素子には、例えば、圧電性セラミックやピエゾフィルム等を用いる。ピエゾフィルムを利用すれば、薄型で、屈曲性及び加工性に優れるため、カードに内蔵するのに好適である。ピエゾフィルムとは、圧電素子をフィルム状に加工し金属膜で挟み込んだものである。圧電材料としては、ポリフッ化ビニリデン、ジルコン酸チタン酸鉛、チタン酸バリウム等が知られている。
発電部6において、圧電素子は、加えられる圧力や振動を電力に変換し、整流回路へ出力する。整流回路は圧電素子から出力される交流波を直流に変換し、キャパシタ7へ出力する。
【0025】
キャパシタ7は、発電部6にて発電された電力を蓄電する。キャパシタ7としては、内部抵抗が低く、短時間で充放電が行える電気二重層キャパシタまたはリチウムイオンキャパシタを利用することが好ましい。
【0026】
次に、各実施形態として、表示機能付きICカード1の内部構造の例を説明する。
第1の実施の形態(図2、図3)では、非接触通信部(非接触ICチップ51及びアンテナ52)、表示部3(ディスプレイ31、ドライバ32、及び表示制御回路33)、発電部6(圧電素子及び整流回路)、及びキャパシタ7を同じ基板23に設ける例を示し、第2の実施の形態(図4、図5)では、非接触通信部5(非接触ICチップ51及びアンテナ52)を搭載した基板22を、表示部3、発電部6、及びキャパシタ7を搭載した基板24とは別に設ける例を示す。
また、第3の実施の形態(図6〜図8)では、発電部6の分割配置の種々の態様について説明する。
【0027】
[第1の実施の形態]
図2及び図3を参照して、第1の実施の形態の表示機能付きICカード1の内部構成を説明する。
図2は表示機能付きICカード1の内部構成を示すブロック図、図3は表示機能付きICカード1を長辺側の側面から見た断面構造を示す図である。
【0028】
図2に示すように、第1の実施の形態の表示機能付きICカード1は、非接触通信部(非接触ICチップ51、アンテナ52)、表示部3(ディスプレイ31、ドライバ32、表示制御回路33)、発電部6(圧電素子、整流回路)、及びキャパシタ7が同じ基板23に設けられる。
【0029】
また、図3に示すように、上述の基板23を中心層として、その両側に外装フィルム21、25がそれぞれ積層されてカード本体2が構成される。外装フィルム21には、ディスプレイ31が露出する窓部21aが設けられている。また、図3は表示機能付きICカード1を長辺側の側面(図2の下側)から見た図であるため、ディスプレイ31の一部がキャパシタ7の後方に配置されることとなり、図3では、ディスプレイ31のキャパシタ7との重なり部分は図示されていない。
【0030】
図2及び図3に示すように、アンテナ52は基板23内を周回してその両端が非接触ICチップ51に接続される。アンテナ2は、図3に示すように基板23に埋設されてもよいし、基板23の表面に露出してもよい。
【0031】
非接触型ICチップ51は、CPU、ROM、RAM、EEPROM等を備え、外部のICカードリーダライタとの間で通信を行い、ROMに格納されたプログラムに応じたデータ処理を実行する。例えば、カード累積使用額やチャージ残額等の表示データをICカードリーダライタから受信し、EEPROMに保存する。非接触型ICチップ51は、機能にもよるが通常は4.0mm角以内の平面サイズ、厚みは200μm程度とする。
非接触ICチップ51の外部入出力端子と表示制御回路33の外部入出力端子とが、導線等によって接続される。これにより、表示制御回路33は、非接触ICチップ51から表示データを取得できる。
【0032】
表示制御回路33は、基板23の表面に実装されており、ドライバ32に接続される。表示制御回路33は、ドライバ32を駆動して、表示データをディスプレイ31に表示させる。なお、表示制御回路33の外形寸法は、7mm×7mm程度、市販品の厚みは1mm程度であるが、本発明の表示機能付きICカード1に使用する場合は、背面を研磨して300μm程度にして使用する必要がある。
【0033】
ドライバ32は、通常はディスプレイ31の縁辺部にマトリックス配線と一体にして設けられる。ドライバ32の外形寸法は、例えば1.5mm×10.0mmや2.0mm×22.5mm程度である。表示制御回路33と同様に背面を研磨して、厚み300μm程度にする必要がある。
【0034】
ディスプレイ31は、例えば液晶ディスプレイや電子ペーパにより構成され、基板面上に実装されるか、或いは基板23に埋設される。ディスプレイ31は、表示制御回路33の制御に従い、表示データを表示する。
【0035】
発電部(圧電素子及び整流回路)6は、基板23上に配置される。図2及び図3の例では、発電部6の外形寸法は、基板23の長辺の1/4以下、短辺の1/3以下程度の面積を占める領域に配置される例を示しているが、配置位置や配置面積はこれに限定されない。ただし、発電部(圧電素子及び整流回路)6は、基板23の端部寄りの位置に配置されることが好ましい。カード端部ではカード中央部に比べて曲がりにくいため、発電部6に、屈曲性の低い圧電性セラミックを利用しても壊れにくく、製品の耐久性を向上させることが可能となる。本発明の表示機能付きICカード1では、カード本体2をユーザが能動的に屈曲させて発電させる使用環境に耐えることが重視される。
【0036】
キャパシタ7は、基板23に埋設、或いは基板面上に配置され、導線を介して表示制御回路33に接続される。
【0037】
図3の外装フィルム21、25、基板23の各層間は、配線後、エポキシ系またはウレタン系等の液状の樹脂が充填され、接着・硬化される。
【0038】
外装フィルム21、25の厚みは約100μmである。基板23は、基板部分の厚みが約50μm、表示制御回路33、ドライバ32、ディスプレイ31の厚みが約300μm、非接触型ICチップ7の厚みが約200μmである。表示制御回路33、ドライバ32、非接触型ICチップ51等の凸部は、その上部に重なる部分を穴あけして逃がす構成とし、全体で0.68mmから0.84mmの厚みになるようにすることが望ましい。
【0039】
以上説明したように、第1の実施の形態に示す構造とすれば、表示機能付きICカード1を最小1枚の基板23で構成できる。そのため、カード厚さの制約により薄型化しなければならない部品について、その制約を軽減でき、製造が容易となる。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、図4及び図5を参照して、第2の実施の形態の表示機能付きICカード1の内部構成を説明する。
図4は表示機能付きICカード1の内部構成を示すブロック図、図5は表示機能付きICカード1を長辺側の側面から見た断面構造を示す図である。
【0041】
図4に示すように、第2の実施の形態の表示機能つきICカード1は、非接触ICチップ51及びアンテナ52を含む非接触通信部5の基板24と、表示部3(ディスプレイ31、ドライバ32、表示制御回路33)、発電部6(圧電素子、整流回路)、及びキャパシタ7を実装する基板22とが別に設けられる。
【0042】
また、図5に示すように、上述の基板22、24が積層され、それらを中心層としてその両側に外装フィルム21、25がそれぞれ積層されてカード本体2が構成される。外装フィルム21には、ディスプレイ31が露出する窓部21aが設けられている。また、図5は表示機能付きICカード1を長辺側の側面(図4の下側)から見た図であるため、ディスプレイ31の一部がキャパシタ7の後方に配置されることとなり、図5では、ディスプレイ31のキャパシタ7との重なり部分は図示されていない。
【0043】
基板24には、アンテナ52と非接触ICチップ51とが実装される。図4及び図5に示すように、アンテナ52は基板24内を周回してその両端が非接触ICチップ51に接続される。アンテナ2は、基板24に埋設されてもよいし、図5に示すように基板24の表面に露出してもよい。
【0044】
非接触型ICチップ51の内部構成、外形寸法については、第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略する。
第2の実施の形態では、非接触ICチップ51の外部入出力端子と表示制御回路33の外部入出力端子とが、基板22を貫通する貫通孔を通る導線等によって接続される。これにより、表示制御回路33は、非接触ICチップ51から表示データを取得できる。
【0045】
表示制御回路33は、基板22の表面に実装され、ドライバ32に接続され、ドライバ32を駆動して、表示データをディスプレイに表示させる。なお、表示制御回路33、ドライバ32、及びディスプレイ31の外形寸法、厚みに関しては、第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0046】
発電部(圧電素子及び整流回路)6は、基板22上に配置され、キャパシタ7に接続される。キャパシタ7は、基板22上に配置され、発電部6及び表示制御回路33に接続される。
発電部6及びキャパシタの外形寸法、厚み、配置位置については第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0047】
図5の外装フィルム21、25、基板22,24の各層間は、配線後、エポキシ系またはウレタン系等の液状の樹脂が充填され、接着・硬化される。
【0048】
第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、外装フィルム21、25の厚みは約100μmとし、基板22は、基板部分の厚みが約50μm、表示制御回路33、ドライバ32、ディスプレイ31の厚みが約300μm、非接触型ICチップ7の厚みが約200μmとする。また、基板24は、基板部分の厚みが約50μm、非接触ICチップ7の厚みが約500μmとする。
表示制御回路33、ドライバ32、非接触型ICチップ51等の凸部は、その上部に重なる部分を穴あけして逃がす構成とし、表示機能付きICカード1の積層構造は、全体で0.68mmから0.84mmの厚みになるようにすることが望ましい。
【0049】
以上説明したように、表示機能付きICカード1を第2の実施の形態に示すような構造とすれば、非接触通信部5(基板22)と表示部3(基板24)とがそれぞれ独立した部材として開発できる。特に、非接触通信部5(基板22)については、既存のアンテナシートをそのまま利用することが可能となり、製造コストを抑えることが可能となる。また、表示部3(基板22)内にアンテナ52や非接触ICチップ51等のスペースを設ける必要がないので、発電部6及びキャパシタ7の設置面積を増やし、発電量及び蓄電量を増加させることが可能となる。
【0050】
[第3の実施の形態]
図6〜図8は、第3の実施の形態として、表示機能付きICカード1の発電部6の配置について示す図であり、発電部6以外の各部は省略されている。第3の実施の形態では、表示部3や非接触ICチップ51及びアンテナ52を実装した基板とは異なる基板27,28,29に複数の発電部6が配置される例を示している。発電部6以外の各部の配置は任意である(第1及び第2の実施の形態参照)。
【0051】
例えば、図3に示す層構造を有する表示機能付きICカード1において、基板23と外装フィルム25との間に、上述の基板27,28,29のいずれかを挿入するように形成し、各発電部6とキャパシタ7とを導線にて接続する。または、図5に示す層構造を有する表示機能付きICカード1において、基板24と外装フィルム25との間に、上述の基板27,28,29のいずれかを挿入するように形成し、各発電部6とキャパシタ7とを導線にて接続する。この場合は、発電部6の配置面積を広くできるため、発電量を増やすことができる。
或いは、図3または図5に示す層構造を有する表示機能付きICカード1において、表示部3または、非接触ICチップ51及びアンテナ52等を実装した基板の裏面(例えば、基板22、基板23、または基板24の裏面)に、図6〜図8に示す発電部6を配置し、各発電部6とキャパシタ7とを導線にて接続するようにしてもよい。この場合は、発電部6の基板を別に設ける必要がないため、カードの薄型化に寄与できる。
【0052】
図6は、カード本体2の最大4つの隅部に発電部6が設けられる例を示している。カードの複数の領域に分割して発電部6を配置しているので、発電量を増大させることが可能となる。また、曲がりにくいカード端部に発電部6が設けられているため、カードの耐久性を維持できる。なお、キャパシタ7については、図6に示す基板27内に配置するようにしてもよいし、図2や図4に示すように、表示部3を実装した基板22,24に配置するようにしてもよい。
【0053】
また、図7に示す例のように、表示部3や非接触ICチップ51及びアンテナ52を実装した基板とは異なる基板28にスリット65を形成した発電部6を設けるようにしてもよい。
図7は、基板28のほぼ全面を占める発電部6に、カード長手方向に直交するスリット65を複数形成した例を示している。カードを曲げる際は、通常、カードの長手方向に湾曲するように力が加えられる。このため、カード長手方向に直交するようにスリット65を設ければ、長手方向に湾曲させる力に対して、屈曲性が向上し、製品の耐久性がより向上する。また、スリットが設けられることによって、発電手段自体の割れを防ぐことができるため製品の耐久性がより向上する。
【0054】
また、図8に示す例のように、スリット65の間隔を中央部で狭く端部に向かうにつれて徐々に広くなるように設けてもよい。カードの曲率は、カードの長手方向中央部で最大となり、端部に向かうにつれて小さくなっている。このため、図8に示すようなスリット65を設ければ、長手方向に湾曲させる力に対して、更に屈曲性が向上し、製品の耐久性がより向上する。
【0055】
次に、本発明に係る表示機能付きICカード1の表示に関する動作を説明する。
ユーザが表示機能付きICカード1を外部のICカードリーダライタにかざすと、表示機能付きICカード1は非接触通信部5によってICカードリーダライタと通信を開始する。表示制御用ICチップ51は、必要に応じて所定のデータを非接触ICチップ51のRAMやEEPROMに保存する。例えば、カードのチャージ残額データ等を非接触ICチップ51のRAMやEEPROMに保持する。
非接触ICチップ51は、RAMに保持されているデータを表示制御回路33へ出力する。表示制御回路33は、非接触ICカード51から表示データが入力されると、表示制御回路33やEEPROMに記憶する。
【0056】
ユーザにより表示機能付きICカード1のスイッチボタン4が押下されると、表示制御回路33のCPUは、EEPROMに格納されている表示データ(カードのチャージ残額データ等)を取得し、ドライバ32を駆動してディスプレイ31に表示させる。
【0057】
ディスプレイ31に液晶ディスプレイが使用されている場合は、表示内容が表示されている間、キャパシタ7から蓄電されている電力が供給される。スイッチボタン4がOFF操作されることにより、ディスプレイの表示もOFF(消去)される。
一方、ディスプレイ31に電子ペーパが使用されている場合は、表示内容更新の際にキャパシタ7から蓄電されている電力が供給される。表示内容更新後は電力が消費されず、次にスイッチボタン4が操作されるまで、表示内容が維持される。
【0058】
ユーザが、表示機能付きICカード1を曲げる、こする、振動させるといった動作を行うと、その都度、発電部6の圧電素子は、加えられた圧力や振動に応じた電力を発生する。発生した電力は整流回路にて整流され、キャパシタ7に供給される。キャパシタ7は発電部6から供給される電力を蓄電する。
【実施例】
【0059】
以下、実施例について説明する。
ディスプレイ31として4桁数字表示用の液晶ディスプレイを用いた。この場合、非接触ICチップ51、表示制御回路33、ドライバ32の3チップが同時に駆動され、1回の表示を行うためには、5mW程度の電力が必要であった。
このようなディスプレイ31を有する表示機能付きICカード1において、発電部6としてカード面積の1/4程度を占める圧電素子を用い、またキャパシタ7として容量5000μFの電気二重層キャパシタを用いた。本実施例では、カード本体2を25回振動させることで1回の表示を行わせることが可能であった。
【0060】
以上説明したように、本発明の表示機能付きICカード1は、非接触ICチップ51及びアンテナ52を有する非接触通信部5と、ディスプレイ31、ドライバ32、及び表示制御回路33を有する表示部3とを備えるとともに、カード本体2に加えられる圧力または振動により電力を発生する発電部6と、発電部6の発生する電力を蓄電し、表示部3に電力を供給するキャパシタ7とを備える。そのため、ユーザがカードを曲げたり、こすったりすると発電でき、また発電した電力をキャパシタ7に蓄電して必要に応じて表示部3に供給できる。従って、外光量に左右されずに発電でき、また表示機能を駆動できるようになる。外光量の小さい室内や夜間でも、ユーザが能動的な動作を行うことで表示駆動に必要な電力を発生できる。
また、発電部6をカード本体2の端部に内蔵すれば、ユーザがカードを曲げても壊れにくく、ICカードの耐久性を向上できる。
【0061】
また、発電部6を複数の領域に分割配置すれば、カード内の空いたスペースに効率よく配置でき、発電量を増大できる。また、分割配置することにより、曲げに対する耐久性に優れた表示機能付きICカードを提供できる。
特に、カード長手方向に直交するようなスリットを形成して発電部6を配置すれば、カードの湾曲に対する耐久性がより向上する。
【0062】
また、表示機能付きICカード1において、非接触通信部(非接触ICチップ51、アンテナ52)、表示部3、発電部6、及びキャパシタ7を同じ基板23に設けるようにすれば(図2参照)、表示機能付きICカードを最小1枚の基板23で構成できるため、カード厚さの制約により薄型化しなければならない部品について、その制約を軽減でき、製造が容易となる。
【0063】
また、表示機能付きICカードにおいて、非接触通信部5(非接触ICチップ51、アンテナ52)を表示部3、発電部6、及びキャパシタ7と別の基板24に設けるようにすれば(図4参照)、一般的な非接触ICカードと同じアンテナシート等を利用することが可能となるため、本発明に係る表示機能付きICカードを低コストに製造できるようになる。また、表示駆動用の基板内にアンテナや非接触ICチップ等のスペースを設ける必要がないので、発電部6またはキャパシタ7の設置面積を増加させることが可能となる。
【0064】
なお、表示機能付きICカード1の各部の配置は、上述の例に限定されず、適宜変更可能である。また、カード厚みの制約よりも発電量及び蓄電量を優先する場合は、発電部6及びキャパシタ7を複数層に形成して、発電部6及びキャパシタ7の設置面積を増大させればよい。
また、第1及び第2の実施の形態と第3の実施の形態の組み合わせは任意である。すなわち、例えば、図2に示す発電部6にスリット65を設けたり、第1の実施の形態の基板23や、第2の実施の形態の基板22,24に加え、発電部6の基板27,28,29を追加する構成としてもよい。
【0065】
その他、当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0066】
1・・・・・・表示機能付きICカード
2・・・・・・・カード本体
3・・・・・・・表示部
31・・・・・・ディスプレイ
32・・・・・・ドライバ
33・・・・・・表示制御回路
4・・・・・・・スイッチボタン
5・・・・・・・非接触通信部
51・・・・・・非接触ICチップ
52・・・・・・アンテナ
6・・・・・・・発電部(圧電素子及び整流回路)
7・・・・・・・キャパシタ
23・・・・・・・基板
21、25・・・・外装フィルム
22・・・・・・・表示部、発電部、キャパシタの基板
24・・・・・・・非接触通信部の基板
65・・・・・・・スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触ICチップ及びアンテナを有する非接触通信部と、
ディスプレイ、ドライバ、及び表示制御回路を有する表示部と、を備えた表示機能付きICカードであって、
カード本体に加えられる圧力または振動により電力を発生する発電手段と、
前記発電手段によって発生される電力を蓄電し、前記表示部に電力を供給する蓄電手段と、
を更に備えることを特徴とする表示機能付きICカード。
【請求項2】
前記発電手段は、前記カード本体の端部に配置されることを特徴とする請求項1に記載の表示機能付きICカード。
【請求項3】
前記発電手段は、複数の領域に分割配置されることを特徴とする請求項1に記載の表示機能付きICカード。
【請求項4】
前記発電手段には、カード長手方向にほぼ直交するようにスリットが設けられることを特徴とする請求項1に記載の表示機能付きICカード。
【請求項5】
前記非接触通信部、前記表示部、前記発電手段、及び前記蓄電手段を同じ基板に設けることを特徴とする請求項1に記載の表示機能付きICカード。
【請求項6】
前記非接触通信部を前記表示部、前記発電手段、及び前記蓄電手段と別の基板に設けることを特徴とする請求項1に記載の表示機能付きICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−18594(P2012−18594A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156361(P2010−156361)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】