説明

表示機能付きICカード

【課題】点字による表示を好適に行なうことができる表示機能付きICカードを提供する。
【解決手段】表示機能付きICカード1を、表示制御用マイコン17、点字ピン13により点字を表示する表示部7、点字ピン13を表示部7の表面に対して出し入れする駆動部19等で構成する。駆動部19は、通電により平たくなる板状の形状記憶合金19aと、通電により湾曲する板状の形状記憶合金19bとからなる。表示制御用マイコン17は、形状記憶合金19a、19bへの通電状態を制御する。駆動部19は、通電による形状記憶合金19a、19bの変形により、点字ピン13を表示部7の表面33から埋没した状態または表示部7の表面33から突出した状態とし、表示部7に点字を表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示機能付きICカードに関する。より詳しくは、点字による表示を行なう表示機能付きICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カード本体に表示機能を有するICカードが開発されている(例えば、特許文献1参照)。例えば電子マネーを記憶するICカードの場合、ICカードに記憶している電子マネーの残高金額等をディスプレイに表示させることが可能となる。
【0003】
しかし、従来のICカードを視力の弱い人が利用する際、カードのディスプレイで表示内容を確認することが困難である。そこで、ICカードにおいて点字による表示を行うことが考えられる。これにより、視力の弱い人であってもICカードを好適に利用することができる。
【0004】
点字による表示については、点字ピンをコイル状や棒状の形状記憶合金の変形によって開口部から出没させるように構成した点字表示装置が提案されている(例えば、特許文献2から特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−086067号公報
【特許文献2】特許公報第2850789号
【特許文献3】特許公報第3624785号
【特許文献4】特許公報第3624712号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような点字表示装置は、構造が複雑で、厚みのある形状であるため、ICカード等の薄い媒体に適用することが難しかった。
【0007】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、点字による表示を好適に行なうことができる表示機能付きICカードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するための本発明は、制御部と、点字ピンにより点字を表示する表示部と、前記制御部の制御により、前記点字ピンを前記表示部の表面から突出または埋没させる駆動部と、を具備し、前記駆動部は、板状の一対の形状記憶合金からなり、前記形状記憶合金として、通電により平たくなる第1の形状記憶合金、および/または、通電により湾曲する第2の形状記憶合金を用い、前記制御部により一対の前記形状記憶合金への通電状態をそれぞれ制御することで、前記点字ピンを前記表示部の表面から突出または埋没させて点字を表示することを特徴とする表示機能付きICカードである。
【0009】
本発明によれば、板状の一対の形状記憶合金からなる駆動部を用い、形状記憶合金に通電してジュール熱によりこれを変形させることで、点字ピンを駆動させる。形状記憶合金としては、通電により平たくなるものや通電により湾曲するものを用い、制御部による通電状態の制御により点字ピンを上下させる。
これにより、少ない部品数で厚みのない構造の駆動部を薄型のICカードに組み込んで、カード表面に対して点字ピンを出し入れし、点字による表示を好適に行なうことができる。
【0010】
また、前記形状記憶合金として、通電により平たくなる第1の形状記憶合金、および、通電により湾曲する第2の形状記憶合金を用い、前記制御部は、前記第2の形状記憶合金のみに通電して、前記第2の形状記憶合金を前記表示部の表面側に凸となるように湾曲させることにより、前記点字ピンを前記表示部の表面から突出した状態とし、前記第1の形状記憶合金のみに通電して、前記第1の形状記憶合金を平たくすることにより、前記点字ピンを前記表示部の表面から埋没した状態とすることが望ましい。
これにより、通電により平たくなる第1の形状記憶合金、および、通電により湾曲する第2の形状記憶合金からなる一対の形状記憶合金を駆動部として用い点字ピンの出し入れを好適に行うことができる。また、点字ピンの埋没時には、第1の形状記憶合金を通電させ平たく変形させるとともに、通電されない第2の形状記憶合金もこれに追従して平たく変形させることにより、カードの非使用時に両者が平らな状態を維持することができる。これは、カードの非使用時に形状記憶合金が湾曲した状態である場合に比べ耐久性の面で有利である。
【0011】
また、前記点字ピンと、一対の前記形状記憶合金との間が断熱されることが望ましい。
これにより、形状記憶合金への通電時、点字ピンが加熱されることがなくなり、点字ピンに触れて表示内容を認識するような本発明の表示機能付きICカードの使用を好適に行うことができる。
【0012】
また、一対の前記形状記憶合金の間が断熱されることが望ましい。
これにより、一方の形状記憶合金に通電させた際に、通電によるジュール熱が他方の形状記憶合金に伝わることによる誤作動を防ぐことができる。
【0013】
また、前記表示部の表面にゴムが設置されることが望ましい。
表示部では、点字ピンを出し入れするための開口がカード本体に多く形成されるため構造的にはやや弱くなるが、表示部の表面をゴムとすることにより、表示部の表面が割れるなどの破損を防ぐことができる。また、上記の開口を塞いで水やごみの侵入を防ぐこともできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、点字による表示を好適に行なうことができる表示機能付きICカードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】表示機能付きICカード1の外観図
【図2】表示機能付きICカード1の内部構成を示すブロック図
【図3】点字ピン13が埋没した状態を示す図
【図4】形状記憶合金19a、19bの変形について示す図
【図5】点字ピン13が突出した状態を示す図
【図6】駆動部40について示す図
【図7】駆動部50について示す図
【図8】駆動部60について示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る表示機能付きICカード1の外観図である。
【0018】
表示機能付きICカード1は、非接触式の通信を行うことによりICチップに電子マネー残額等のデータを記録し、表示制御用マイコンの制御により当該データの点字による表示を行うものであり、カード本体3の表面33に表示部7およびスイッチ5を有する。
【0019】
表示部7では、点字ピン13により点字による表示を行う。カード本体3の表面33には、表示部7の位置にシリコンゴム9が設置される。点字ピン13は、シリコンゴム9の下方に設けられ、表示部7の表面33から突出または埋没される。表示部7では、例えば6つの点字ピン13の出し入れの状態により、1つの点字を表現する。
スイッチ5は、例えば、機械接点式のプッシュスイッチである。
【0020】
図2は、表示機能付きICカード1の内部構成を示すブロック図である。図2に示すように、表示機能付きICカード1は、表示制御用マイコン17(制御部)、非接触ICチップ21、スイッチ5、電源15、駆動部19、点字ピン13等により構成される。
【0021】
表示制御用マイコン17は、CPU(Central Proccessing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)や、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)等のメモリ、外部入出力端子等を備えたICチップであり、外部入出力端子を介して電源15、非接触ICチップ21、スイッチ5、駆動部19が接続される。
【0022】
駆動部19は、点字ピン13に接続され、表示制御用マイコン17による制御に従い、点字ピン13を駆動する。
点字ピン13は、表示制御用マイコン17による制御に従い駆動部19により駆動され、表示部7の表面33に対する出し入れが行われる。
【0023】
電源15は、表示制御用マイコン17に電力を供給する電池であり、一次電池、二次電池等、その種類は問わない。
スイッチ5は、前記のように、例えばプッシュスイッチであり、触れて押下している場合にオン状態となり、電源15から表示制御用マイコン17へ電力が供給される。
【0024】
非接触ICチップ21は、CPU、ROM、RAM、EEPROM等を備える。非接触ICチップ21は、外部のカードリーダライタとの間で非接触式の通信を行い、ROMに格納されたプログラムに従ってデータ処理を実行する。例えば、電子マネー残額等のデータをカードリーダライタから受信し、EEPROMに保存する。
【0025】
表示機能付きICカード1では、スイッチ5がオン状態とされると、電源15から供給される電力により表示制御用マイコン17が起動する。表示制御用マイコン17は、非接触ICチップ21に記憶された電子マネー残額のデータを取得し、該データに従って駆動部19を制御する。駆動部19は、表示制御用マイコン17の制御に従って点字ピン13を出し入れし、表示部7に該データの値を点字として表示する。点字による表示の終了後、表示制御用マイコン17はシャットダウンする。
【0026】
次に、点字ピン13および駆動部19について、図3を用いて説明する。図3(a)は、カード本体3の点字ピン13付近の断面構成の概略図であり、点字ピン13が表示部7の表面33から埋没した状態を示す。また、図3(b)は、点字ピン13および駆動部19を上方から見た図である。
【0027】
図3(a)に示すように、点字ピン13は、表面33側が半球状で、下面27が平坦な部材である。下面27には断熱材23が固定される。さらに、断熱材23の下面29に断熱シート25が固定される。断熱材23や断熱シート25の素材は特に限定されるものではなく、断熱効果を有するものであれば適宜使用可能である。
【0028】
点字ピン13の下方には、板状の形状記憶合金19a(第1の形状記憶合金)による板ばねと、板状の形状記憶合金19b(第2の形状記憶合金)による板ばねの、形状記憶合金による一対の板ばねからなる駆動部19が、後述する変形が可能な状態で設置される。形状記憶合金19aは、断熱材23を貫通するように設けられる。形状記憶合金19bは、断熱シート25の下面31に設けられる。図3(b)に示すように、形状記憶合金19aと形状記憶合金19bは、平面上点字ピン13に対応する位置で直交するように、平らな状態で配置される。これらの形状記憶合金19a、19bの両端には、通電を行うための導線(不図示)を接続する。この導線には、金メッキを行いさびを防ぐようにしておく。
【0029】
形状記憶合金19aより上部の断熱材23により、形状記憶合金19a(および形状記憶合金19b)と点字ピン13との間が断熱され、形状記憶合金19aより下部の断熱材23および断熱シート25により、形状記憶合金19aと形状記憶合金19bとの間が断熱される。
【0030】
表示機能付きICカード1で点字による表示を行う際、表示制御用マイコン17は、表示するデータにしたがって、各点字ピン13の駆動部19の形状記憶合金19a、19bへの通電を制御する。これにより、形状記憶合金19a、19bを変形させて点字ピン13を出し入れする。
【0031】
図4は、形状記憶合金19a、19bの変形を示す図である。図4において、右側の図は、通電時における形状記憶合金19a、19bの形状を示す。
【0032】
図に示すように、形状記憶合金19aは、非通電時には自由に変形するが、通電によるジュール熱で元の形状に戻り、湾曲していた場合、平らな状態になる。一方、形状記憶合金19bも、非通電時には自由に変形するが、通電によるジュール熱で元の形状に戻り、平らであった場合、湾曲した状態になる。湾曲した際の高さは、例えば1〜2mm程度である。
なお、形状記憶合金19a、19bとしては、通電による40〜50度程度の熱で元の形状に戻るものを用い、通常の気温下では元の形状に戻らないようにしておく。
【0033】
点字による表示を行うため、図3(a)に示す埋没した状態の点字ピン13を、表面33から突出した状態とする場合、表示制御用マイコン17は、形状記憶合金19bのみに通電するように制御する。
これにより、形状記憶合金19bは上側(表面33側)が凸となるように湾曲する。通電されない形状記憶合金19aは自由な変形が可能であり、形状記憶合金19bの変形に追従して、上側が凸となるように湾曲する。これにより、図3(a)に示す状態の点字ピン13は、矢印Aに示すように上昇し、シリコンゴム9の下方に設けられたカード本体3の開口35を介して表面33から突出する。
【0034】
図5(a)、図5(b)は、点字ピン13が表面33から突出した状態の、点字ピン13付近の断面構成の概略図である。図5(b)は、図5(a)の矢印Cに示す方向から見た図である。形状記憶合金19bのみの通電により、点字ピン13は、図5(a)および図5(b)に示すように、表面33から突出した状態となる。表面33に設けられたシリコンゴム9も、点字ピン13の上部形状に沿って突出する。
【0035】
点字の表示を終了する際には、表示制御用マイコン17は、全ての点字ピン13が表面33から埋没した状態となるように、各点字ピン13の駆動部19を制御する。
【0036】
点字ピン13を、図3(a)に示すように表面33から埋没した状態とする場合、表示制御用マイコン17は、図5(a)および図5(b)に示す状態において、形状記憶合金19aのみに通電するように制御する。
これにより、形状記憶合金19aは平たくなる。通電されない形状記憶合金19bは自由な変形が可能であり、形状記憶合金19aの変形に追従して平たくなる。これにより、図5(a)および図5(b)に示す状態の点字ピン13は、矢印Bに示すように下降し、図3(a)に示すように、表面33から埋没した状態となる。
【0037】
その後、表示制御用マイコン17はシャットダウンする。シャットダウン後は、形状記憶合金19a、19bへの通電は行なわれず、全ての点字ピン13が埋没した状態が維持される。
【0038】
このように、本実施形態の表示機能付きICカード1では、通電により平たくなる板状の形状記憶合金19aと、通電により湾曲する板状の形状記憶合金19bとからなる駆動部19を用い、表示制御用マイコン17による通電の制御によりこれらを変形させ点字ピン13を駆動する。これにより、ICカードのような薄い媒体に少ない部品数で厚みのない構造の駆動部19を組み込み、カード表面に対して点字ピン13を出し入れし、点字による表示を好適に行なうことができる。
【0039】
また、本実施形態では、点字ピン13と形状記憶合金19aおよび形状記憶合金19bとの間が、断熱材23により断熱される。これにより、形状記憶合金19a等への通電時に発生するジュール熱により点字ピン13が加熱されることがなくなり、点字ピン13に触れて表示内容を認識するような表示機能付きICカード1の使用を好適に行うことができる。
また、形状記憶合金19aと形状記憶合金19bとの間も、断熱材23や断熱シート25により断熱される。これにより、形状記憶合金19aあるいは形状記憶合金19bへの通電時に発生するジュール熱が、他方の形状記憶合金に伝達されることによる誤作動も防ぐことができる。
【0040】
さらに、本実施形態では、表示部7の表面33に、シリコンゴム9が設置される。表示部7では、点字ピン13を出し入れするための開口35がカード本体3に多く形成されるため構造的にはやや弱くなるが、表示部7の表面33をシリコンゴム9とすることにより、表示部7の表面33が割れるなどの破損を防ぐことができる。また、開口35を塞いで水やごみの侵入を防ぐこともできる。なお、シリコンゴム9に代えてその他のゴムを用いることも可能である。
【0041】
さらに、本実施形態では、形状記憶合金19aを上に、形状記憶合金19bを下に配置しているが、この配置は逆とすることもできる。また、これらの形状記憶合金19a、19bは平面上直交するように配置しているが、平面上斜交するように配置してもよい。この他、駆動部19の構成は、板ばねとして一対の形状記憶合金を用いるものであれば図3等に示すものに限らない。以下、駆動部19の構成が異なる第2〜第4の実施形態について説明する。
【0042】
[第2の実施形態]
図6は、第2の実施形態に係る表示機能付きICカード1aの駆動部40について示す図である。駆動部40以外の構成は第1の表示機能付きICカード1と同様であるので、説明を省略する。
【0043】
図6(a)に示すように、第2の実施形態の表示機能付きICカード1aの駆動部40では、点字ピン13が表面33から埋没した状態において、形状記憶合金19a、19bが下に凸となるように湾曲した状態である。形状記憶合金19aは、断熱材23を貫通するように設けられ、形状記憶合金19bは、断熱シート25の下面に設けられる。
【0044】
この点字ピン13を表面33から突出させる際、表示制御用マイコン17は、形状記憶合金19aのみに通電する。すると、図6(b)に示すように、形状記憶合金19aは平たくなる。通電されない形状記憶合金19bは、形状記憶合金19aの変形に追従して平たくなる。これにより、点字ピン13が上昇し表面33から突出する。
【0045】
一方、この点字ピン13を表面33から埋没させる際は、形状記憶合金19bのみに通電することにより、形状記憶合金19bを下に凸となるように湾曲させる。通電されない形状記憶合金19aは、形状記憶合金19bの変形に追従して下に凸となるように湾曲する。これにより、図6(a)に示すように点字ピン13が下降し表面33から埋没した状態となる。
【0046】
[第3の実施形態]
図7は、第3の実施形態に係る表示機能付きICカード1bの駆動部50について示す図である。駆動部50以外の構成は第1の表示機能付きICカード1と同様であるので、説明を省略する。
【0047】
第3の実施形態の駆動部50では、2枚の形状記憶合金19aを用いて駆動部50を構成する。
すなわち、駆動部50では、図7(a)に示すように、点字ピン13が表面33から埋没した状態において、上方の形状記憶合金19aは、下に凸となるように湾曲した状態で断熱材23を貫通するように設けられ、下方の形状記憶合金19aは平らな状態で断熱シート25の下面に設けられる。
【0048】
この点字ピン13を表面33から突出させる際、表示制御用マイコン17は、上方の形状記憶合金19aのみに通電する。すると、この形状記憶合金19aは平たくなる。通電されない下方の形状記憶合金19aは、上方の形状記憶合金19aの変形に追従して、上に凸となるように湾曲する。これにより、図7(b)に示すように、点字ピン13が上昇し表面33から突出する。
【0049】
一方、この点字ピン13を表面33から埋没させる際は、下方の形状記憶合金19aのみに通電する。すると、下方の形状記憶合金19aが平たくなる。通電されない上方の形状記憶合金19aは、下方の形状記憶合金19aの変形に追従して下に凸となるように湾曲する。これにより点字ピン13が下降し、図7(a)に示すように表面33から埋没した状態となる。
【0050】
[第4の実施形態]
図8は、第4の実施形態に係る表示機能付きICカード1cの駆動部60について示す図である。駆動部60以外の構成は第1の表示機能付きICカード1と同様であるので、説明を省略する。
【0051】
第4の実施形態の駆動部60では、2枚の形状記憶合金19bを用いて駆動部60を構成する。
すなわち、駆動部60では、図8(a)に示すように、点字ピン13が表面33から埋没した状態において、上方の形状記憶合金19bは、下に凸となるように湾曲した状態で断熱材23を貫通するように設けられ、下方の形状記憶合金19bは平らな状態で断熱シート25の下面に設けられる。
【0052】
この点字ピン13を表面33から突出させる際、表示制御用マイコン17は、下方の形状記憶合金19bのみに通電することにより、この形状記憶合金19bを上に凸となるように湾曲させる。通電されない上方の形状記憶合金19bは、下方の形状記憶合金19bの変形に追従して平たくなる。これにより、図8(b)に示すように、点字ピン13が上昇し表面33から突出する。
【0053】
一方、この点字ピン13を表面33から埋没させる際は、上方の形状記憶合金19bのみに通電することにより、この形状記憶合金19bを下に凸となるように湾曲させる。通電されない下方の形状記憶合金19bは、上方の形状記憶合金19bの変形に追従して平たくなる。これにより点字ピン13が下降し、図8(a)に示すように表面33から埋没した状態となる。
【0054】
以上説明した第2〜第4の実施形態の駆動部40、50、60を用いた場合であっても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。第3、第4の実施形態では、同種の形状記憶合金を用いるので材料にかかるコストも低減される。ただし、これらの実施形態では非使用時でいずれかの形状記憶合金が湾曲してカード内に配置されることになるので、耐久性の観点からは、非使用時で両形状記憶合金が平らな状態となる第1の実施形態のほうが有利である。
【0055】
また、以上の説明では、表示機能付きICカードの例として非接触ICチップ21のデータを表示部7に表示する処理を行うものを挙げたが、表示機能付きICカードの例としてはこれに限らず、スイッチの押下後、制御部がプログラムを実行してワンタイムパスワードを生成し、これを表示部に表示する処理を行うワンタイムパスワード生成器などもある。この場合も、前記と同様の構成(ただし非接触ICチップ21は省略される)により、生成したワンタイムパスワードを点字により表示することが可能である。
加えて、表示部7に表示する内容は、電子マネー残額やワンタイムパスワードに限らない。点字により表示可能なものであれば、数字や文字、記号その他の種々の表示が可能である。
【0056】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0057】
1、1a、1b、1c………表示機能付きICカード
3………カード本体
5………スイッチ
7………表示部
9………シリコンゴム
13………点字ピン
17………表示制御用マイコン
19、40、50、60………駆動部
19a、19b………形状記憶合金
21………非接触ICチップ
23………断熱材
25………断熱シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部と、
点字ピンにより点字を表示する表示部と、
前記制御部の制御により、前記点字ピンを前記表示部の表面から突出または埋没させる駆動部と、
を具備し、
前記駆動部は、板状の一対の形状記憶合金からなり、
前記形状記憶合金として、通電により平たくなる第1の形状記憶合金、および/または、通電により湾曲する第2の形状記憶合金を用い、
前記制御部により一対の前記形状記憶合金への通電状態をそれぞれ制御することで、前記点字ピンを前記表示部の表面から突出または埋没させて点字を表示することを特徴とする表示機能付きICカード。
【請求項2】
前記形状記憶合金として、通電により平たくなる第1の形状記憶合金、および、通電により湾曲する第2の形状記憶合金を用い、
前記制御部は、
前記第2の形状記憶合金のみに通電して、前記第2の形状記憶合金を前記表示部の表面側に凸となるように湾曲させることにより、前記点字ピンを前記表示部の表面から突出した状態とし、
前記第1の形状記憶合金のみに通電して、前記第1の形状記憶合金を平たくすることにより、前記点字ピンを前記表示部の表面から埋没した状態とすることを特徴とする請求項1に記載の表示機能付きICカード。
【請求項3】
前記点字ピンと、一対の前記形状記憶合金との間が断熱されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の表示機能付きICカード。
【請求項4】
一対の前記形状記憶合金の間が断熱されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の表示機能付きICカード。
【請求項5】
前記表示部の表面にゴムが設置されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の表示機能付きICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−73465(P2013−73465A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212753(P2011−212753)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】