説明

表示照明装置

【課題】従来に比べ、構造を簡便なものとしつつ、各画素のピーク輝度を下げる。
【解決手段】表示照明装置1は、電圧印加により抵抗値Rswが変化する抵抗スイッチ22、及び当該抵抗スイッチ22と直列に接続された発光部21をそれぞれ有し、マトリクス状に配列された有機ELデバイス20と、抵抗スイッチ22の抵抗値Rswを高抵抗又は低抵抗に設定する書き込み制御、及び、抵抗スイッチ22の抵抗値Rswに基づいて発光部21の発光を制御する発光制御を行う制御部6とを備える。制御部6は、1フレームを複数のサブフレームに時分割し、書き込み制御と発光制御とをサブフレーム毎に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示照明装置に関し、特に、有機発光ダイオード等の有機ELデバイスを用いた表示照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静止画及び動画の表示や、所定の模様での照明が可能な表示照明装置として、有機発光ダイオード(Organic Light-Emitting Diode:OLED)等の有機EL(Electro Luminescence)デバイスを用いたものが知られている。
【0003】
この種の表示照明装置においては、その駆動方式として、アクティブマトリクス方式又はパッシブマトリクス方式が用いられる。
このうち、アクティブマトリクス方式では、有機ELデバイスを有する各画素にTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング素子を配置して、このスイッチング素子の駆動を制御することにより各画素(有機ELデバイスの発光部)を発光させている。このアクティブマトリクス方式を用いた表示照明装置は、消費電力や解像度の点で優れる反面、各画素に少なくとも2つのスイッチング素子が必要となってしまう。
【0004】
一方、パッシブマトリクス方式では、各画素を挟みつつ垂直に交差するように走査線と信号線を格子状に張り巡らせ、走査線のタイミングに合わせて信号線に電流を供給することで、その交点に並ぶ画素を発光させている。このパッシブマトリクス方式を用いた表示照明装置は、スイッチング素子等を不要として構造をシンプルにすることができるため、アクティブマトリクス方式のものに比べ、製造コストを低く抑えることができる点で優れている。
【0005】
ところが、パッシブマトリクス方式では、各画素を走査線毎に順次発光させているため、各画素の発光時間が短くなり、輝度が低くなってしまう。そこで、各画素のピーク輝度を高くすることによって必要な輝度を確保しているものの、ピーク輝度を高くすると各画素を構成する有機ELデバイスの劣化が早まるため、当該有機ELデバイスの寿命が短くなってしまう。
【0006】
そこで、例えば特許文献1に記載の技術では、全ての走査線のうちの上半分のものと下半分のものとを同時にスキャンする手法(デュアルスキャン)を用いている。この手法によれば、各画素を2本の走査線毎に発光させることができるため、1本の走査線毎に発光させていた上述の単純なパッシブマトリクス方式に比べ、各画素の発光時間を長くして輝度の低下を抑制することができ、ひいては各画素のピーク輝度を下げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−302937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、各画素の発光時間が2倍にしか長くならないため、必要な輝度を維持しようとすると、各画素のピーク輝度を半分までしか下げることができない。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、従来に比べ、構造を簡便なものとしつつ、発光部のピーク輝度を下げることができる表示照明装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の表示照明装置は、
電圧印加により抵抗値が変化する抵抗スイッチ、及び当該抵抗スイッチと直列に接続された発光部をそれぞれ有し、マトリクス状に配列された複数の有機ELデバイスと、
前記複数の有機ELデバイスそれぞれの前記抵抗スイッチに電圧を印加可能な第一電圧印加手段と、
前記複数の有機ELデバイスそれぞれの前記抵抗スイッチ及び前記発光部に電圧を印加可能な第二電圧印加手段と、
前記第一電圧印加手段を制御して前記抵抗スイッチの抵抗値を高抵抗又は低抵抗に設定する書き込み制御と、前記第二電圧印加手段を制御して前記抵抗スイッチ及び前記発光部に電圧を印加し、当該抵抗スイッチの抵抗値に基づいて当該発光部の発光を制御する発光制御とを、所定の入力信号に基づいて行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、1フレームを複数のサブフレームに時分割し、前記書き込み制御と、当該書き込み制御で設定された前記抵抗値に基づいて前記発光部の発光を制御する前記発光制御とを、前記サブフレーム毎に行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、抵抗スイッチの抵抗値を設定することで発光部への通電を制御して当該発光部の発光を制御することができるので、各有機ELデバイスにTFT等のスイッチング素子が必要であった従来のアクティブマトリクス方式のものに比べ、各有機ELデバイスを発光部と抵抗スイッチとが直列に接続されただけのものとすることができ、ひいては、構造を簡便なものとすることができる。
【0012】
また、抵抗スイッチの抵抗値を設定する書き込み制御と、設定された抵抗値に基づいて発光部の発光を制御する発光制御とを、1フレームを複数に時分割したサブフレーム毎に行うので、各サブフレームの間で発光部を発光させることができる結果、トータルの発光時間を大幅に長くすることができ、ひいてはピーク輝度を大きく下げることができる。したがって、走査線の数で発光時間が制限されていた従来のパッシブマトリクス方式のものに比べ、発光部のピーク輝度を下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態における表示照明装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】表示照明装置のパネル部の拡大図である。
【図3】図2のII−II線での断面図である。
【図4】図2のIII−III線での断面図である。
【図5】バイポーラ型の抵抗スイッチの抵抗変化特性を示すグラフである。
【図6】書き込み制御が行われるときの各部の電圧値や抵抗スイッチの抵抗値のタイミングチャートである。
【図7】書き込み制御及び発光制御が交互に行われるときの各部の電圧値や抵抗スイッチの抵抗値のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
[表示照明装置の構成]
図1は、本実施形態における表示照明装置1の概略構成を示すブロック図である。
この図に示すように、表示照明装置1は、表示照明パネル部(以下、単に「パネル部」という)2と、陰極線ドライバー3と、陽極線ドライバー4と、信号線ドライバー5と、制御部6とを備えている。
【0016】
このうち、パネル部2には、複数の有機ELデバイス20,…が、行方向X及び列方向Yに沿ってマトリクス状(二次元状)に配列されている。これら有機ELデバイス20,…は、赤色(R)・緑色(G)・青色(B)の各色を発光する3つの当該有機ELデバイス20が1組となって1つの画素を構成している。各有機ELデバイス20は、発光部21と、電圧印加により抵抗値が変化する抵抗スイッチ22と、キャパシター23とを有しており、回路構成としては、抵抗スイッチ22が発光部21の陽極と直列に接続され、キャパシター23の一方の電極も発光部21の陽極と接続されたものとなっている。この有機ELデバイス20の具体構成(構造)については、後述する。
【0017】
また、パネル部2には、有機ELデバイス20,…の各行に配線されて当該各行の発光部21,…の陰極と接続された複数の陰極バイアス線24,…と、有機ELデバイス20,…の各列に配線されて当該各列の抵抗スイッチ22,…と接続された複数の陽極バイアス線25,…と、有機ELデバイス20,…の各行に配線されて当該各行のキャパシター23,…の他方の電極と接続された複数の信号線26,…とが設けられている。
【0018】
陰極線ドライバー3,陽極線ドライバー4及び信号線ドライバー5は、陰極バイアス線24,…,陽極バイアス線25,…及び信号線26,…と接続されており、制御部6からの信号に基づいて、当該各配線を所定の電位に設定できるように構成されている。
このうち、陽極線ドライバー4及び信号線ドライバー5は、本発明に係る第一電圧印加手段であり、陽極バイアス線25及び信号線26を介して各有機ELデバイス20の抵抗スイッチ22に電圧を印加可能に構成されている。また、陰極線ドライバー3及び陽極線ドライバー4は、本発明に係る第二電圧印加手段であり、陰極バイアス線24及び陽極バイアス線25を介して各有機ELデバイス20の発光部21及び抵抗スイッチ22に電圧を印加可能に構成されている。
【0019】
制御部6は、陰極線ドライバー3,陽極線ドライバー4及び信号線ドライバー5と接続されており、入力される画像信号(画像情報)及び同期信号に基づいて、これら各部の同期を取りつつ当該各部の動作を制御する。具体的には、制御部6は、後述するように、抵抗スイッチ22の抵抗値を設定する書き込み制御や、当該書き込み制御で設定された抵抗値に基づいて発光部21の発光を制御する発光制御等を行う。
また、制御部6は、メモリー61を有している。このメモリー61は、入力される画像信号を保持し、後述するように、1フレームの画像信号から所定数のサブフレームの信号を生成する。
【0020】
続いて、有機ELデバイス20の具体構成について説明する。
図2は、パネル部2の拡大図であり、図3は、図2のII−II線での断面のうち、1つの有機ELデバイス20の断面を示す断面図であり、図4は、図2のIII−III線での断面図である。
【0021】
図2及び図3に示すように、有機ELデバイス20は、パネル部2の基板27上に積層された絶縁層81を有している。絶縁層81上には、アルミニウム等の金属線からなる上述の陽極バイアス線25が、列方向Yに沿って延在するように配設されている。
【0022】
基板27及び陽極バイアス線25上には、第一電極82,抵抗スイッチ本体部83及び第二電極84が、この順に積層されている。これら第一電極82,抵抗スイッチ本体部83及び第二電極84は、上述の抵抗スイッチ22を構成しており、したがって、第一電極82及び第二電極84が抵抗スイッチ22の両電極となっている。
【0023】
このうち、第一電極82は、例えば窒化チタン(TiN)で構成されている。また、第一電極82は、陽極バイアス線25に接続される部分の近傍に凹部82aを有するように設けられている(図2参照)。このような凹部82aを設けることにより、製造プロセスにおいて第一電極82と第二電極84との相対位置が設計値からずれた場合であっても、抵抗スイッチ本体部83を介した第一電極82と第二電極84との接合面積の変化を最小限に抑えることができ、ひいては、当該接合面積の変化に依存する抵抗スイッチ22の抵抗値の変化(設計値からの変化)を抑制することができる。また、第一電極82のエッジ部が基板27及び陽極バイアス線25から切り立った状態に形成されていると、その上方に積層される抵抗スイッチ本体部83が第一電極82のエッジ部に対応する部分で段切れを生じてしまい、電流が流れにくくなる恐れがあるため、当該エッジ部はテーパー状に形成されていることが好ましい。
【0024】
抵抗スイッチ本体部83は、厚さが数nm〜数十nm(例えば20nm)程度の薄膜状に形成され、第一電極82を覆うように積層されている。この抵抗スイッチ本体部83は、抵抗スイッチ22の両電極、つまり第一電極82及び第二電極84に電圧が印加されることにより当該抵抗スイッチ22内に形成される電界によって抵抗値が変化する材料で構成されており、本実施形態ではチタン酸化物(TiOx)で構成されている。但し、抵抗スイッチ本体部83の構成材料としては、チタン酸化物以外にも、公知の種々の材料を用いることが可能であり、好ましくは、例えばCu、Ni、Fe、Al、Hf、Zr、Ba、Sr、Ta、La、Si、Y等の遷移金属の酸化物等や、酸素欠陥を有するものが用いられる。また、それらの金属酸化物と、含有する酸素(O)等の比率が異なる金属酸化物とを混合したり、或いはそれらを2層に分けて形成したりすることも可能である。
【0025】
第二電極84は、抵抗スイッチ22の一方の電極として機能するとともに、後述するように、発光部21の陽極としても機能するものである。そのため、第二電極84は、第一電極82や抵抗スイッチ本体部83よりも広く形成され、発光部21と同等の面積を有している。この第二電極84は、発光部21の陽極として機能する他、抵抗スイッチ22内で遊離した酸素原子(O)等が発光部21側に入り込むことを阻止するバリアとしても機能するようになっているため、窒化チタン(TiN)や白金(Pt)、金(Au)、タングステン(W)等の酸素に不活性な材料で形成されている。
【0026】
以上の構成を具備する抵抗スイッチ22は、本実施形態においては、バイポーラ型のものであり、図5に示すような抵抗変化特性を有している。この図に示すように、バイポーラ型の抵抗スイッチ22は、当該抵抗スイッチ22に印加される電圧の向き(極性)を正負で逆転させることで、その抵抗値が高抵抗の状態と低抵抗の状態との間で遷移する。具体的には、例えば、抵抗スイッチ22に正の電圧を印加してその電圧値を増加させていくと、電圧値の増加に伴って電流値も増加していった後、この電圧値が所定のリセット電圧Vrs以上となったときに、抵抗スイッチ22の抵抗値が高抵抗の状態に遷移して電流値が小さくなる。また、抵抗スイッチ22に負の電圧を印加してその電圧値を減少させていくと、この電圧値が所定のセット電圧Vst以下となったときに、抵抗スイッチ22の抵抗値が低抵抗の状態に遷移して電流値(絶対値)が大きくなる。
【0027】
また、図2及び図4に示すように、抵抗スイッチ本体部83から離間した位置であって第二電極84に覆われた位置には、金属線からなる上述の信号線26が、基板27と絶縁層81との間において行方向Xに沿って延在するように配設されている。したがって、信号線26の一部は、絶縁層81を介して第二電極84と対向するような位置に配置されている。また、絶縁層81は、第二電極84と信号線26との間に設けられた上述のキャパシター23を構成している。つまり、陽極バイアス線25と信号線26とを絶縁させる層間絶縁膜としての絶縁層81を、キャパシター23用の誘電体として利用した構成となっている。そして、信号線26と、第一電極82に接続された陽極バイアス線25とにより、抵抗スイッチ22に電圧を印加可能となっている。
【0028】
第二電極84の上方には、図2及び図3に示すように、発光部本体部85及び第三電極86が、この順に積層されている。これら第二電極84,発光部本体部85及び第三電極86は、上述の発光部21を構成しており、したがって、第二電極84及び第三電極86が発光部21の陽極及び陰極となっている。また、第二電極84を発光部21と抵抗スイッチ22との共通の電極とすることにより、抵抗スイッチ22が発光部21の陽極と直列に接続されるようになっている。
【0029】
発光部本体部85は、図示は省略するが、下側から順に、正孔注入層(Hole Injection Layer:HIL) 、正孔輸送層(Hole Transport Layer:HTL)、発光層(Emitting Layer:EML)、電子輸送層(Electron Transport Layer:ETL)、電子注入層(Electron Injection Layer:EIL)の各層が蒸着等の方法により積層されて形成されている。このような発光部本体部85を有することにより、発光部21は、電極間の電位差により生じる正孔と電子の注入電荷量に応じて輝度が変化する有機発光ダイオードとして構成されている。この発光部21において、第一電極82や抵抗スイッチ22を介して第二電極84側から正孔が注入され、また、第三電極86側から電子が注入されると、各電極から注入された正孔と電子がそれぞれの輸送層(HTL、ETL)を介して発光層(EML)で結合する。そして、結合する際に生じるエネルギーによって発光層の有機分子が励起され、これが失活する時に放出するエネルギーの一部が光として取り出される。このようにして、発光部21の発光層で発光が生じるようになっている。
【0030】
第三電極86は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極として形成されている。そのため、発光部21では、発光部本体部85から第三電極86を介して光が発光される(すなわちいわゆるトップエミッション)。
【0031】
発光部本体部85及び第三電極86の上方には、スパッタリング等の方法により、例えば窒化シリコン(SiN)等からなる絶縁層87が形成され、当該絶縁層87により抵抗スイッチ22や発光部21等が被覆されている。そして、絶縁層87のうち、第三電極86の上方に位置する部分に、コンタクトホールHが形成されている。
【0032】
絶縁層87の上方には、アルミニウム等の金属線からなる上述の陰極バイアス線24が、コンタクトホールHを通りつつ行方向Xに沿って延在するように配設され、当該陰極バイアス線24が、コンタクトホールHを介して第三電極86に接続される。なお、図2では、陰極バイアス線24が、抵抗スイッチ本体部83の直上に形成されたコンタクトホールHを介して第三電極86と接続されている状態を示したが、陰極バイアス線24の配線位置やコンタクトホールHの形成位置はこれに限定されるものではない。
【0033】
[表示照明装置の動作]
続いて、表示照明装置1の動作について説明する。
図6は、書き込み制御が行われるときの各部の電圧値や抵抗スイッチ22の抵抗値のタイミングチャートであり、このうち図6(a)は、発光部21を発光させない有機ELデバイス20に対する書き込み制御のときのものであり、図6(b)は、発光部21を発光させる有機ELデバイス20に対する書き込み制御のときのものである。図7は、書き込み制御及び発光制御が交互に行われるときの各部の電圧値や抵抗スイッチ22の抵抗値のタイミングチャートである。
【0034】
まず、制御部6は、最小画素(有機ELデバイス20の発光部21)毎に、入力された画像信号の1フレームを時間幅の異なる複数のサブフレームに時分割し、当該フレームの階調に応じた各サブフレームの組み合わせを設定する。つまり、制御部6は、発光部21を発光させるサブフレームの累計時間により階調制御を行う。本実施形態においては、1フレームは、発光時の時間幅の比率が1:2:4:8:16:32:64:128となる8つのサブフレームに時分割されて、これらサブフレームの組み合わせにより256階調を表現できるようになっている。こうして、制御部6は、各サブフレームにおいて発光部21を発光させるか否かを決定する。
【0035】
次に、制御部6は、第1サブフレームにおける発光部21の発光/非発光に基づいて、有機ELデバイス20に対して抵抗スイッチ22の抵抗値を設定する書き込み制御を行う。つまり、第1サブフレームの書き込み制御を行う。
【0036】
この書き込み制御では、制御部6は、図6(a),(b)に示すように、まず、陰極バイアス線24の陰極電圧Vcをフローティング(図6(a),(b)では破線で図示)にするとともに、陽極バイアス線25の陽極電圧Vaを0(GND電位)にする。
それから、第1行(y1)用の信号線26に負のパルス電圧を印加して、当該信号線26の信号電圧Vsigを抵抗スイッチ22のセット電圧Vst以下とし、第1行の全ての抵抗スイッチ22の抵抗値Rswを低抵抗に設定する。なお、図6(a),(b)では、抵抗値Rswの初期値が高抵抗と低抵抗との中間の抵抗値にあるものと仮定して、当該抵抗値Rswの変化を示している。また、このときに、陰極バイアス線24の陰極電圧VcをGND電位にすることで、陰極バイアス線24と陽極バイアス線25との間に電荷が流れるようにして、発光部21の蓄積電荷を抜いてもよい。
【0037】
そして、制御部6は、第1行の有機ELデバイス20のうち、発光部21を発光させないものに対しては、図6(a)に示すように、陽極バイアス線25の陽極電圧VaをGND電位としたままで、信号線26に正のパルス電圧を印加して、その信号電圧Vsigを抵抗スイッチ22のリセット電圧Vrs以上とし、当該有機ELデバイス20の抵抗スイッチ22の抵抗値Rswを高抵抗に設定する。
一方、第1行の有機ELデバイス20のうち、発光部21を発光させるものに対しては、制御部6は、図6(b)に示すように、陽極バイアス線25の陽極電圧Vaをフローティングにして、当該有機ELデバイス20の抵抗スイッチ22の抵抗値Rswを低抵抗のままとする。
【0038】
次に、制御部6は、第2行以降(y2,y3,…)の有機ELデバイス20に対して、第1行の有機ELデバイス20に対するものと同様に、各抵抗スイッチ22の抵抗値Rswを順次設定する。
こうして、全ての有機ELデバイス20について第1サブフレームの書き込み制御が終了し、当該有機ELデバイス20の抵抗スイッチ22の抵抗値Rswが高抵抗又は低抵抗に設定される。
【0039】
次に、制御部6は、図7に示すように、有機ELデバイス20に対し、書き込み制御で設定された抵抗スイッチ22の抵抗値Rswに基づいて、発光部21の発光を制御する発光制御を行う。
【0040】
この発光制御では、制御部6は、陰極バイアス線24の陰極電圧VcをGND電位とするとともに、陽極バイアス線25の陽極電圧Vaを正の所定電圧にする。すると、各有機ELデバイス20の抵抗スイッチ22及び発光部21に電圧が印加されるため、有機ELデバイス20のうち、抵抗スイッチ22の抵抗値Rswが低抵抗に設定されているものでは、発光部21に通電されて当該発光部21が発光する。一方、抵抗スイッチ22の抵抗値Rswが高抵抗に設定されているものでは、発光部21に流れる電流量が制限され、当該発光部21は発光しない(非発光のまま)。なお、このときに、発光部21を発光させる有機ELデバイス20において、抵抗スイッチ22に電圧が印加された場合であっても、当該電圧がリセット電圧Vrsを超えないように(抵抗値Rswが変化しないように)なっている。
こうして、全ての有機ELデバイス20について、第1サブフレームの発光制御が終了する。
【0041】
次に、制御部6は、第2サブフレームの書き込み制御を第1サブフレームのときと同様にして行い、次いで、第2サブフレームの発光制御を第1サブフレームのときと同様にして行う。
そして、以降の各サブフレームにおける書き込み制御及び発光制御も、同様にして順次行われる。
【0042】
すなわち、制御部6は、書き込み制御と、当該書き込み制御で設定された抵抗値に基づいて発光部21を発光させる発光制御とを、1フレームを時分割したサブフレーム毎に行う。
【0043】
このように、1フレームを複数のサブフレームに時分割し、書き込み制御と発光制御とをサブフレーム毎に行うことにより、従来のパッシブマトリクス方式のものに比べ、各画素(発光部21)の発光時間を長くすることができる。
具体的に説明すると、例えば、フレームレートが60Hz、サブフレーム数が8、走査線数(有機ELデバイス20の行数)が64本であった場合、上述のデュアルスキャンを用いた従来のパッシブマトリクス方式のものでは、1フレームに占める発光時間の割合である点灯時間率(発光時間率)は、走査線数のみによって決まり、3%(≒1/(64[本]/2)×100)となる。
一方、本実施形態における表示照明装置1では、1行(走査線)の書き込み制御に要する時間を3μsとすれば、1フレームの書き込み制御に要する時間が1536μs(=3[μs]×64[本]×8)、1フレームでの発光時間が15131μs(≒1/60[Hz]×106−1536[μs])となるので、点灯時間率は、91%(≒15131[μs]/(1/60[Hz]×106))となる。
【0044】
すなわち、表示照明装置1では、書き込み制御時間を除き各サブフレームの間で発光部21を発光させることができるため、走査線数によって点灯時間率が制限されていた従来のパッシブマトリクス方式のものに比べて、点灯時間率を大幅に向上させることができ、つまりは発光時間を大幅に長くすることができる。その結果、従来のパッシブマトリクス方式のものに比べて、各画素(発光部21)の輝度の低下を抑制することができ、所望の輝度を確保するためにピーク輝度を高くする必要性が薄れるため、発光部21のピーク輝度を大きく下げることができる。
【0045】
以上のように、本実施形態における表示照明装置1によれば、各有機ELデバイス20が、電圧印加により抵抗値Rswが変化する抵抗スイッチ22と、当該抵抗スイッチ22と直列に接続された発光部21とを有しており、抵抗スイッチ22の抵抗値Rswを設定することで発光部21への通電を制御して当該発光部21の発光を制御することができるので、各有機ELデバイスにTFT等のスイッチング素子が必要であった従来のアクティブマトリクス方式のものに比べ、各有機ELデバイス20を発光部21と抵抗スイッチ22とが直列に接続されただけのものとすることができ、ひいては、構造を簡便なものとすることができる。
【0046】
これにより、従来の有機ELデバイスでは、TFTを形成するために成膜やレジスト塗布、露光、現像、ポストベーク、エッチング、レジスト剥離等の種々の工程からなるPEP(Photo Etching Process)を繰り返し行う必要があったところ、本実施形態に係る有機ELデバイス20では、マスクを用いた比較的簡易な方法により抵抗スイッチ22等の積層を行うことができる。
【0047】
また、抵抗スイッチ22の抵抗値Rswを設定する書き込み制御と、設定された抵抗値Rswに基づいて発光部21の発光を制御する発光制御とを、1フレームを複数に時分割したサブフレーム毎に行うので、各サブフレームの間で発光部21を発光させることができる結果、トータルの発光時間を大幅に長くすることができ、ひいてはピーク輝度を大きく下げることができる。したがって、走査線の数で発光時間が制限され、各画素(発光部)のピーク輝度を半分までしか下げることができなかったデュアルスキャンを用いた従来のパッシブマトリクス方式のものに比べ、発光部21のピーク輝度を大きく下げることができる。
【0048】
また、抵抗スイッチ22の第二電極84と信号線26との間にキャパシター23が設けられているので、信号線26に電圧パルスを印加して抵抗スイッチ22の抵抗値Rswを設定するときに、発光部21に電圧が掛かって当該発光部21が発光してしまうことを好適に防止することができる。
【0049】
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態では、抵抗スイッチ22が発光部21の陽極に接続されることとしたが、発光部21の陰極に接続されることとしてもよい。この場合には、第二電極84及び第三電極86が発光部21の陰極及び陽極に対応することとなる。またこの場合には、発光部本体部85の各層が上下反転させた順番となり、つまり、下側から、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層の順に積層される。
【0051】
また、第二電極84を発光部21と抵抗スイッチ22との共通の電極とすることとしたが、発光部21と抵抗スイッチ22とが直列に接続されていれば、このような構成でなくともよく、例えば、発光部21と抵抗スイッチ22とで異なる電極をそれぞれ設け、当該電極同士を導線等で接続してもよい。
この場合、第二電極84に代えて設けた抵抗スイッチ22の一方の電極(図3の上側のもの)は、発光部21と同等の面積を有していなくともよい。更に、第二電極84に代えて設けた発光部21の一方の電極(図3の下側のもの)をITO等の透明電極として形成することによって、いわゆるボトムエミッション(図3の下側に向かって光を発光する構成)にしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 表示照明装置
2 パネル部
20 有機ELデバイス
21 発光部
22 抵抗スイッチ
23 キャパシター
24 陰極バイアス線
25 陽極バイアス線
26 信号線
3 陰極線ドライバー
4 陽極線ドライバー
5 信号線ドライバー
6 制御部(制御手段)
X 行方向
Y 列方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧印加により抵抗値が変化する抵抗スイッチ、及び当該抵抗スイッチと直列に接続された発光部をそれぞれ有し、マトリクス状に配列された複数の有機ELデバイスと、
前記複数の有機ELデバイスそれぞれの前記抵抗スイッチに電圧を印加可能な第一電圧印加手段と、
前記複数の有機ELデバイスそれぞれの前記抵抗スイッチ及び前記発光部に電圧を印加可能な第二電圧印加手段と、
前記第一電圧印加手段を制御して前記抵抗スイッチの抵抗値を高抵抗又は低抵抗に設定する書き込み制御と、前記第二電圧印加手段を制御して前記抵抗スイッチ及び前記発光部に電圧を印加し、当該抵抗スイッチの抵抗値に基づいて当該発光部の発光を制御する発光制御とを、所定の入力信号に基づいて行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、1フレームを複数のサブフレームに時分割し、前記書き込み制御と、当該書き込み制御で設定された前記抵抗値に基づいて前記発光部の発光を制御する前記発光制御とを、前記サブフレーム毎に行うことを特徴とする表示照明装置。
【請求項2】
前記複数の有機ELデバイスの各行に配線され、前記発光部の電極のうち前記抵抗スイッチが接続された一方の電極とは反対側の電極と接続された複数の陰極バイアス線と、
前記複数の有機ELデバイスの各列に配線され、前記抵抗スイッチの電極のうち前記発光部が接続された一方の電極とは反対側の電極と接続された複数の陽極バイアス線と、
前記複数の有機ELデバイスの各行に配線され、前記抵抗スイッチの前記一方の電極と接続された複数の信号線と、
を備え、
前記第一電圧印加手段は、前記複数の陽極バイアス線及び前記複数の信号線を介して、前記複数の有機ELデバイスそれぞれの前記抵抗スイッチに電圧を印加可能であり、
前記第二電圧印加手段は、前記複数の陰極バイアス線及び前記複数の陽極バイアス線を介して、前記複数の有機ELデバイスそれぞれの前記抵抗スイッチ及び前記発光部に電圧を印加可能であることを特徴とする請求項1に記載の表示照明装置。
【請求項3】
前記制御手段は、所定行の複数の有機ELデバイスに前記書き込み制御を行うときに、
予め全ての陽極バイアス線の電圧をGND電位にしつつ当該行の信号線に負のパルス電圧を印加して、当該行の全ての抵抗スイッチの抵抗値を低抵抗に設定しておき、
当該行の複数の有機ELデバイスのうち、前記発光制御時に発光部を発光させないものに対しては、陽極バイアス線の電圧をGND電位としたままで、信号線に正のパルス電圧を印加して、当該有機ELデバイスの抵抗スイッチの抵抗値を高抵抗に設定し、
当該行の複数の有機ELデバイスのうち、前記発光制御時に発光部を発光させるものに対しては、陽極バイアス線の電圧をフローティングにして、当該有機ELデバイスの抵抗スイッチの抵抗値を低抵抗のままとすることを特徴とする請求項2に記載の表示照明装置。
【請求項4】
前記複数の有機ELデバイスは、それぞれの前記抵抗スイッチの前記一方の電極と前記複数の信号線との間にキャパシターを有していることを特徴とする請求項2又は3に記載の表示照明装置。
【請求項5】
前記キャパシターは、前記複数の陽極線と前記複数の信号線とを絶縁させる絶縁層を用いて構成されていることを特徴とする請求項4に記載の表示照明装置。
【請求項6】
前記制御手段は、1フレームを時間幅の異なる複数のサブフレームに時分割して、前記発光部を発光させるサブフレームの累計時間により階調制御を行うことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の表示照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−97293(P2013−97293A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242081(P2011−242081)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】