説明

表示素子およびその製造方法、ならびに表示素子用の電極材、

【課題】 プラスチック基板を用いずに、より優れたフレキシビリティ性を有する表示素子を実現できるようにする。
【解決手段】 表示素子1は、線状を有する複数の第1の電極材X1〜Xnと、線状を有する複数の第2の電極材Y1〜Ynとが互いに交差するように設けられ、第1の電極材X1〜Xnおよび第2の電極材Y1〜Ynの交点に陽極、発光層、陰極が積層されてなる積層構造が設けられている。陽極と陰極との間に電圧を印加すると、発光層において、陽極から供給されたホールと、陰極から供給された電子とを結合させて発光現象を起こすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報を表示するための表示素子およびその製造方法、ならびにその製造に用いられる表示素子用の電極材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの使い方の多様化に伴い、フレキシブルディスプレイに対するニーズが増加している。このニーズに応えるために、様々なフレキシブルディスプレイが提案されているが、本命と呼べるものは未だ確立されるには至ってはいない。
【0003】
フレキシブルディスプレイに要求される特性としては、落としても壊れない、曲げても壊れない、軽い、薄い、手に持った感触が良いなどの特性が考えられる。これら全ての要求を必ずしも満足する必要はなく、これらの特性のうちから幾つかのものがアプリケーションに応じて選ばれる。
【0004】
ところで、上述の特性の中でも、曲げることができる、すなわちフレキしビリティは最も重要な特性である。このため、従来では、基板としてプラスチック基板が用いられ、ある程度のフレキシビリティが実現されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−15859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プラスチック基板は、軽い、曲げに強いなどの特長を有するものの、曲げ癖が付き易い、曲げ半径が小さいと折れてしまうといった問題がある。また、プラスチック基板上に電極を形成することは困難であるため、フレキシブルディスプレイの実用化が難しくなっている。
【0007】
そこで、フレキシブル基板を用いずに、曲げ癖が付きにくく、曲げ半径が小さくても壊れることがない、フレキシビリティにより優れた新たなフレキシブルディスプレイの開発が熱望されている。
【0008】
したがって、この発明の目的は、プラスチック基板を用いずに、より優れたフレキシビリティ性を実現できる表示素子およびその製造方法、ならびにその製造に用いられる表示素子用の電極材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
線状を有する第1の電極材と、
線状を有する第2の電極材と
が互いに交差するように設けられ、
第1の電極材および第2の電極材の交点に陽極、発光層、陰極が積層されてなる積層構造が設けられていることを特徴とする表示素子である。
【0010】
第1の発明では、交点に陽極、発光層、陰極が積層されてなる積層構造が設けられているので、陽極と陰極との間に電圧を印加すると、発光層において、陽極から供給されたホールと、陰極から供給された電子とを結合させて発光現象を起こすことができる。
【0011】
第2の発明は、
線状の電極と、
電極を被覆する発光層と
を備えることを特徴とする表示素子用の電極材である。
【0012】
第2の発明では、表示素子用の電極材を縦糸および横糸として織布状に織った場合には、縦糸となる電極材と横糸となる電極材との間に電圧を印加したとき、電極材の交点の発光層において、正極となる電極材から供給されたホールと、負極となる電極材から供給された電子とを結合させて発光現象を起こすことができる。
【0013】
第3の発明は、
線状の陰極および陽極の一方を発光層により被覆する工程と、
陰極および陽極とが交差するように該陰極および陽極を配列する工程と
を備えることを特徴とする表示素子の製造方法である。
【0014】
第3の発明では、陰極および陽極とが交差することにより、交点に陽極、発光層、陰極が積層されてなる積層構造を形成することができるので、陽極と陰極との間に電圧を印加すると、発光層において、陽極から供給されたホールと、陰極から供給された電子とを結合させて発光現象を起こすことができる。
【0015】
第1の発明では、陽極と発光層との間に、ホール輸送層をさらに設けることが好ましい。また、発光層と陰極との間に、電子輸送層をさらに設けることが好ましい。また、電子輸送層と発光層との間に、ホールバリヤー層をさらに設けることが好ましい。また、陽極とホール輸送層との間に、ホール注入層をさらに設け、陰極と発光層との間に、電子注入層をさらに設けることが好ましい。電子注入層と発光層との間に、電子輸送層がさらに設けることが好ましい。また、隣り合う第1の電極材間および第2の電極材間には、線状の絶縁材をさらに設けることが好ましい。また、絶縁材は、黒色を有することが好ましい。
【0016】
第1の発明では、第1の電極材を、線状を有する複数の陽極材から構成し、第2の電極材を、線状を有する複数の陰極材から構成し、陽極材および陰極材との交点に陽極、発光層、陰極が積層されてなる積層構造を設けるようにすることが好ましい。また、互いに交差するように設けられた第1の電極材と第2の電極とは、封止材により被覆されていることが好ましい。また、第1の電極材および第2の電極材を行列状に設け、発光層を、赤色光を発光可能な赤の発光層、緑色光を発光可能な緑の発光層または青色光を発光可能な青の発光層とし、赤の発光層、緑の発光層および青の発光層を、列方向または行方向に繰り返し設けることが好ましい。また、第1の電極材および第2の電極材を縦糸および横糸として第1の電極材および第2電極を織布状に織ることが好ましい。
【0017】
第2の発明では、発光層を被覆する保護層をさらに設けることが好ましい。第3の発明では、陰極および陽極を配列する工程の後に、配列された陰極および陽極を封止剤により被覆する工程をさらに備えることが好ましい。また、発光層を形成する工程と、陰極および陽極を配列する工程との間に、発光層を保護層により被覆する工程をさらに備えることが好ましい。また、陰極および陽極を配列する工程の後に、保護層を溶解し、硬化させる工程をさらに備えることが好ましい。また、第1〜第3の発明では、発光層の材料としては、有機発光材料または無機発光材料が用いられる。また、第2〜第3の発明において、電極の被覆は部分的であってもよいが、陽極、発光層、陰極からなる積層構造をより確実に交点に設ける観点からすると、電極全体を被覆することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、この発明によれば、線状を有する第1の電極材と、線状を有する第2の電極材とを互いに交差するようにして表示素子を構成するので、織布のように表示素子を折り曲げることができる。すなわち、プラスチック基板を用いずに、フレキシビリティに優れた表示素子を実現できる。また、大きさおよび解像度に自由度がある表示素子を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態の全図においては、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
【0020】
(1)第1の実施形態
図1は、この発明の第1の実施形態による表示素子1の一構成例を示す平面図である。図1に示すように、この表示素子1は、X方向(行方向)にストライプ状に配列された線状のX1〜Xn電極と、Y方向(列方向)にストライプ状に配列された線状のY1〜Yn電極と、X1〜Xn電極間にそれぞれ設けられた線状のX絶縁材2と、Y1〜Yn電極間にそれぞれ設けられた線状のY絶縁材3とを備える。X1〜Xn電極とY1〜Yn電極とはn×n個の交点を有し、この交点が、X1〜Xn電極とY1〜Yn電極との間に電圧を印加することによって発光するようになっている。
【0021】
図2は、この第1の実施形態による表示素子1の端部を示す模式図である。図2に示すように、表示素子1のX電極10、Y電極20の端部はそれぞれ、フレキ基板4、5に接続される。この接続により、X電極10、Y電極20はドライバ(図示せず)に接続される。
【0022】
X電極10とY電極20との交点には、陽極、発光層、陰極が順次積層されてなる有機EL(Electroluminescence)発光層が設けられている。このような有機EL発光層が交点に設けられるように、X電極およびY電極の構成は選ばれる。以下に、X電極10およびY電極20の第1〜第2の構成例について説明する。
【0023】
図3(a)は、X電極10の第1の構成例を示す断面図である。図3(b)は、Y電極20の第1の構成例を示す断面図である。図3(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆する発光層12とからなる。また、図3(b)に示すように、Y電極20は、線状を有する陰極21からなる。
【0024】
図4(a)は、X電極10の第2の構成例を示す断面図である。図4(b)は、Y電極20の第2の構成例を示す断面図である。図4(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11からなる。図4(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、陰極21を被覆する発光層12とからなる。
【0025】
線状の陽極11および陰極21の断面は、例えば円形状の断面を有する。なお、陽極11および陰極21の断面は、折り曲げ可能な形状であればよく円形状に限定されるものではない。例えば、その断面の形状を、楕円形状、または三角形状もしくは四角形状などの多角形状などとしてもよい。
【0026】
陽極11および陰極21の太さは、所望とする1画素の大きさに応じて選択され、1画素を数100μm程度の大きさにする場合には、陽極11および陰極21の太さは、例えば数10μm程度に選択される。
【0027】
陽極11を構成する材料としては、仕事関数の大きな金属または合金などの導電性材料が用いられる。このような材料としては、例えば、金(Au)、銅(Cu)、酸化錫、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)などを用いることができ、発光した光を外部に取り出すためには、透明性を有すITO、IZOを用いることが好ましい。
【0028】
陰極21を構成する材料としては、仕事関数の小さな金属または合金などの導電性材料が用いられる。このような材料としては、例えば、例えば、アルミ(Al)、マグネシウム銀合金(MgAg)、アルミリチウム合金(AlLi)などを用いることができる。
【0029】
発光層12は、電子とホールとが結合して、その結合エネルギーが光として放出される層である。この発光層12を構成する材料としては、例えば低分子系発光材料または高分子系発光材料を用いることができる。低分子系発光材料としては、例えば、アルミ錯体、アントラセン類、希土類錯体、イリジウム錯体、各種蛍光色素を用いることができる。高分子系材料としては、例えば、π共役系高分子または色素含有系高分子(非共役系高分子)などを用いることができる。π共役系高分子としては、例えばポリフェニレンビニレン類、ポリフルオレン類またはポリチオフェン類などを用いることができる。色素含有系高分子としては、例えば側鎖型ポリマーまたは主鎖型ポリマーなどを用いることができる。
【0030】
発光層12の形成方法は、発光層12として低分子系材料および高分子系材料のうちどちらの材料を用いるかによって異なる。発光層12として低分子系発光材料を用いる場合には、発光層12の形成方法としては、例えば、真空蒸着法などのドライプロセスを用いることができる。具体的には例えば、陽極11または陰極21をその周方向に回転させながら、真空蒸着法により低分子系発光材料を陽極11または陰極21上に被覆する方法を用いることができる。
【0031】
発光層12として高分子系発光材料を用いる場合には、発光層12の形成方法としては、例えば、ディッピング法などのウエットプロセスを用いることができる。具体的には例えば、公知の糸の表面コーティング法を用いることができる。このようなコーティング法としては、例えば、発光層12を形成するための高分子系発光材料の溶液内に、陽極11または陰極21を潜らせ、乾燥させる方法を用いることができる。この際、引き上げ速度、乾燥速度を適宜調整することにより一定の膜厚を有する発光層12を形成することができる。
【0032】
X絶縁材2およびY絶縁材3は、絶縁性および光吸収性を有する線状の部材であり、例えば、黒の顔料が分散された絶縁性の樹脂材料からなる。このように、黒の顔料を分散させることにより、表示素子1の表示コントラストを向上させることができる。顔料としては、例えばカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックとしては、市販のカーボンブラックを用いることができ、例えば、三菱化成社製の#980B、#850B、MCF88B、#44B、キャボット社製のBP−800、BP−L、REGAL−660、REGAL−330、コロンビヤンカーボン社製のRAVEN−1255、RAVEN−1250、RAVEN−1020、RAVEN−780、RAVEN−760、デグサ社製のPrintex−55、Printex−75、Printex−25、Printex−45、SB−550などを単独または2以上混合して用いることができる。
【0033】
樹脂材料としては、例えば、変成または非変成の塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂などを使用でき、これ以外にも、セルロースアセテートブチレートなどのセルロースエステルも使用できる。
【0034】
X絶縁材2およびY絶縁材3の形成方法としては、例えば溶融紡糸法を用いることができる。X絶縁材2およびY絶縁材3は、具体的には例えば、黒の顔料が分散された絶縁性の樹脂材料を、溶融紡糸法により繊維状にすることにより得られる。
【0035】
図5は、この第1の実施形態による表示素子1の発光原理を示す模式図である。図5に示すように、X電極10とY電極20との交点には、有機EL発光層が構成されている。したがって、陽極11と陰極21との間に電圧を印加すると、陽極11から発光層12にホールが供給され、陰極21から発光層12に電子が供給され、発光層12において電子とホールとが結合し、発光現象が起こる。
【0036】
表示素子1の駆動方式としては、液晶表示装置の駆動方式として当業者に公知のものを用いることができる。このような駆動方式としては、例えば単純マトリックスドライブ法を用いることができる。
【0037】
図6は、この第1の実施形態による表示素子1の駆動の一例を説明するための模式図である。ここでは、表示素子1の駆動方式としては単純マトリックスドライブ法を用いて、文字「A」を表示する場合を例として示す。
【0038】
まず、X1電極とY4電極との間に電圧を印加する。次に、X3電極とY3およびY5電極との間に電圧を印加する。次にX5電極とY2,Y3,Y4,Y5およびY6電極との間に電圧を印加する。次に、X7電極とY1およびY7電極との間に電圧を印加する。これにより、上述のように電圧が印加されたXY電極間の交点において発光現象が生じ、文字「A」が表示される。
【0039】
次に、この第1の実施形態による表示素子1の製造方法の一例について説明する。図7は、この第1の実施形態による表示素子1の製造方法の一例を示す模式図である。この表示素子1の製造方法は、一般に使われている織布の作製工程を模したものである。
【0040】
まず、X電極10およびX絶縁材20が等間隔で交互に並ぶようにして、X電極10およびX絶縁材20の一端を固定する。次に、図7(a)に示すように、X電極10の他端を上方に引き上げるとともに、X絶縁材2の他端を下方に引き下げた後、X電極10とX絶縁材2との間にY電極20を通す。
【0041】
次に、図7(b)に示すように、X電極10の他端を下方に引き下げるとともに、X絶縁材2の他端を上方に引き上げて、X電極10およびX絶縁材2の他端の位置を入れ替えた後、X電極10とX絶縁材2との間にY絶縁材3を通す。
【0042】
その後、図7(a)および図7(b)に示す工程を繰り返す。以上により、目的とする表示素子1を得ることができる。
【0043】
上述のように、X電極10、X絶縁材2およびY電極20、Y絶縁材3を縦糸および横糸として、織布の作成方法により表示素子1を作製するので、安価で、大きさおよび解像度に自由度があるフレキシブルな表示素子1を得ることができる。
【0044】
この第1の実施形態では、線状を有するX電極10と、線状を有するY電極20とを組み合わせて織布のようにして織っていくことにより表示素子1を作製するので、以下のような特徴を有するフレキシブルな表示素子1を実現できる。
【0045】
(1)織布のような風合い(手ざわりや見た感じ)を得ることができる。(2)織布のように、折り癖をつきにくくできる。(3)織布のように、継ぎ足し、カッティングができるので、従来の表示素子のように基板サイズに制約されず、柔軟な表示素子の製造が可能となる。(4)陰極および陽極として低抵抗の金属線材料を使うことができるので、表示素子のサイズが大きくなっても、電圧降下による表示ムラが少ない。(5)従来、繊維産業で使われてきた製糸あるいは織物の製造装置、または類似の製造装置を用いて表示素子を製造できるので、高価な表示素子の製造装置を投資する必要がなくなる。(6)基板サイズの大型化によるコスト低減、および基板サイズの世代毎の投資が不必要となる。(7)以上の特徴を有する表示素子によって、新たなアプリケーションの開発および新たなディスプレイ産業の創出を期待できる。
【0046】
(2)第2の実施形態
次に、この発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態では、X電極10とY電極20との交点には、陽極、ホール輸送層、発光層、陰極が順次積層されてなる有機EL発光層が構成されている。このような有機EL発光層が交点に形成されるように、X電極10およびY電極20の構成は選ばれる。以下に、X電極10およびY電極20の第1〜第3の構成例について説明する。
【0047】
図8(a)は、X電極10の第1の構成例を示す断面図である。図8(b)は、Y電極20の第2の構成例を示す断面図である。図8(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール輸送層13と、このホール輸送層13を被覆する発光層12とからなる。また、図8(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21からなる。
【0048】
図9(a)は、X電極の第2の構成例を示す断面図である。図9(b)は、Y電極の第2の構成例を示す断面図である。図9(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール輸送層13とからなる。図9(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する発光層12とからなる。
【0049】
図10(a)は、X電極の第3の構成例を示す断面図である。図10(b)は、Y電極の第3の構成例を示す断面図である。図10(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11からなる。図10(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する発光層12と、この発光層12を被覆するホール輸送層13とからなる。
【0050】
ホール輸送層13は、ホール(正孔)を陽極11から発光層12に輸送するためのものである。このホール輸送層13の材料としては、例えば、ポリ(エチレンジオキシチオフェン):ポリ(スチレン・スルフォン酸)(PEDOT:PSS)、1,1−ビス(4−ジ−p−アミノフェニル)シクロヘキサン、トリフェニルアミン誘導体、カルバゾール誘導体などを用いることができる。
これ以外のことは上述の第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0051】
(3)第3の実施形態
次に、この発明の第3の実施形態について説明する。
この第3の実施形態では、X電極10とY電極20との交点には、陽極、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、陰極が順次積層されてなる有機EL発光層が構成されている。このような有機EL発光層が交点に形成されるように、X電極10およびY電極20の構成は選ばれる。以下に、X電極10およびY電極20の第1〜第4の構成例について説明する。
【0052】
図11(a)は、X電極10の第1の構成例を示す断面図である。図11(b)は、Y電極20の第1の構成例を示す断面図である。図11(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール輸送層13と、このホール輸送層13を被覆する発光層12と、この発光層12を被覆する電子輸送層14とからなる。図11(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21からなる。
【0053】
図12(a)は、X電極10の第2の構成例を示す断面図である。図12(b)は、Y電極20の第2の構成例を示す断面図である。図12(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール輸送層13と、このホール輸送層13を被覆する発光層12とからなる。図12(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子輸送層14とからなる。
【0054】
図13(a)は、X電極10の第3の構成例を示す断面図である。図13(b)は、Y電極20の第3の構成例を示す断面図である。図13(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール輸送層13とからなる。図13(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子輸送層14と、この電子輸送層14を被覆する発光層12とからなる。
【0055】
図14(a)は、X電極10の第4の構成例を示す断面図である。図14(b)は、Y電極20の第4の構成例を示す断面図である。図14(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11からなる。図14(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子輸送層14と、この電子輸送層14を被覆する発光層12と、この発光層12を被覆するホール輸送層13とからなる。
【0056】
電子輸送層14は、電子を陰極21から発光層12に輸送するためのものである。電子輸送層14の材料としては、例えば、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレンテトラカルボン酸誘導体などを用いることができる。
これ以外のことは上述の第3の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0057】
(4)第4の実施形態
次に、この発明の第4の実施形態について説明する。
この第4の実施形態では、X電極10とY電極20との交点には、陽極、ホール輸送層、発光層、ホールバリヤー層、電子輸送層、陰極が順次積層されてなる有機EL発光層が構成されている。このような有機EL発光層が交点に形成されるように、X電極10およびY電極20の構成は選ばれる。以下に、X電極10およびY電極20の第1〜第5の構成例について説明する。
【0058】
図15(a)は、X電極10の第1の構成例を示す断面図である。図15(b)は、Y電極20の第1の構成例を示す断面図である。図15(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール輸送層13と、このホール輸送層13を被覆する発光層12と、この発光層12を被覆するホールバリヤー層15と、このホールバリヤー層15を被覆する電子輸送層14とからなる。図15(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21からなる。
【0059】
図16(a)は、X電極10の第2の構成例を示す断面図である。図16(b)は、Y電極20の第2の構成例を示す断面図である。図16(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール輸送層13と、このホール輸送層13を被覆する発光層12と、この発光層12を被覆するホールバリヤー層15とからなる。図16(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子輸送層14とからなる。
【0060】
図17(a)は、X電極10の第3の構成例を示す断面図である。図17(b)は、Y電極20の第3の構成例を示す断面図である。図17(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール輸送層13と、このホール輸送層13を被覆する発光層12とからなる。図17(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子輸送層14と、この電子輸送層14を被覆するホールバリヤー層15とからなる。
【0061】
図18(a)は、X電極10の第4の構成例を示す断面図である。図18(b)は、Y電極20の第4の構成例を示す断面図である。図18(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール輸送層13とからなる。図18(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子輸送層14と、この電子輸送層14を被覆するホールバリヤー層15と、このホールバリヤー層15を被覆する発光層12とからなる。
【0062】
図19(a)は、X電極10の第5の構成例を示す断面図である。図19(b)は、Y電極20の第5の構成例を示す断面図である。図19(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11からなる。図19(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子輸送層14と、この電子輸送層14を被覆するホールバリヤー層15と、このホールバリヤー層15を被覆する発光層12と、この発光層12を被覆するホール輸送層13とからなる。
【0063】
ホールバリヤー層15は、発光層12から来るホール(陽子)をブロックするためのものである。ホールバリヤー層15の材料としては、例えば2-(4-Biphenylyl)-5-(4-tert-butylpheny 1,3,4-oxadiazole)(Bu-PBS)を用いることができる。
これ以外のことは上述の第3の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0064】
(5)第5の実施形態
次に、この発明の第5の実施形態について説明する。
第5の実施形態では、X電極10とY電極20との交点には、陽極、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子注入層、陰極が順次積層されてなる有機EL発光層が構成されている。このような有機EL発光層が交点に形成されるように、X電極10およびY電極20の構成は選ばれる。以下に、X電極10およびY電極20の第1〜第5の構成例について説明する。
【0065】
図20(a)は、X電極10の第1の構成例を示す断面図である。図20(b)は、Y電極20の第1の構成例を示す断面図である。図20(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール注入層16と、このホール注入層16を被覆するホール輸送層13と、このホール輸送層13を被覆する発光層12と、この発光層12を被覆する電子注入層17とからなる。図20(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21からなる。
【0066】
図21(a)は、X電極10の第2の構成例を示す断面図である。図21(b)は、Y電極20の第2の構成例を示す断面図である。図21(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール注入層16と、このホール注入層16を被覆するホール輸送層13と、このホール輸送層13を被覆する発光層12とからなる。図21(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子注入層17とからなる。
【0067】
図22(a)は、X電極10の第3の構成例を示す断面図である。図22(b)は、Y電極20の第3の構成例を示す断面図である。図22(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール注入層16と、このホール注入層16を被覆するホール輸送層13とからなる。図22(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子注入層17と、この電子注入層17を被覆する発光層12とからなる。
【0068】
図23(a)は、X電極10の第4の構成例を示す断面図である。図23(b)は、Y電極20の第4の構成例を示す断面図である。図23(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール注入層16とからなる。図23(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子注入層17と、この電子注入層17を被覆する発光層12と、発光層12を被覆するホール輸送層13とからなる。
【0069】
図24(a)は、X電極10の第5の構成例を示す断面図である。図24(b)は、Y電極20の第5の構成例を示す断面図である。図24(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11からなる。図24(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子注入層17と、この電子注入層17を被覆する発光層12と、発光層12を被覆するホール輸送層13と、このホール輸送層13を被覆するホール注入層16とからなる。
【0070】
ホール注入層16は、ホール輸送層13に対してホール(正孔)を注入するためのものである。ホール注入層16の材料としては、例えば、銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン、芳香族ジアミンなどを用いることができる。
【0071】
電子注入層17は、電子輸送層14に対して電子を注入するためのものである。電子注入層17の材料としては、リチウムなどのアルカリ金属、フッ化リチウム、酸化リチウム、リチウム錯体、アルカリ金属ドープ有機層、バリウム、カルシウムなどを用いることができる。
これ以外のことは上述の第3の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0072】
(6)第6の実施形態
次に、この発明の第6の実施形態について説明する。
第6の実施形態では、X電極10とY電極20との交点には、陽極、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、陰極が順次積層されてなる有機EL発光層が構成されている。このような有機EL発光層が交点に形成されるように、X電極10およびY電極20の構成は選ばれる。以下に、X電極10およびY電極20の第1〜第6の構成例について説明する。
【0073】
図25(a)は、X電極10の第1の構成例を示す断面図である。図25(b)は、Y電極20の第1の構成例を示す断面図である。図25(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール注入層16と、このホール注入層16を被覆するホール輸送層13と、このホール輸送層13を被覆する発光層12と、この発光層12を被覆する電子輸送層14と、この電子輸送層14を被覆する電子注入層17とからなる。図25(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21からなる。
【0074】
図26(a)は、X電極10の第2の構成例を示す断面図である。図26(b)は、Y電極20の第2の構成例を示す断面図である。図26(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール注入層16と、このホール注入層16を被覆するホール輸送層13と、このホール輸送層13を被覆する発光層12と、この発光層12を被覆する電子輸送層14とからなる。図26(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子注入層17とからなる。
【0075】
図27(a)は、X電極10の第3の構成例を示す断面図である。図27(b)は、Y電極20の第3の構成例を示す断面図である。図27(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール注入層16と、このホール注入層16を被覆するホール輸送層13と、このホール輸送層13を被覆する発光層12とからなる。図27(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子注入層17と、この電子注入層17を被覆する電子輸送層14とからなる。
【0076】
図28(a)は、X電極10の第4の構成例を示す断面図である。図28(b)は、Y電極20の第4の構成例を示す断面図である。図28(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール注入層16と、このホール注入層16を被覆するホール輸送層13とからなる。図28(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子注入層17と、この電子注入層17を被覆する電子輸送層14と、この電子輸送層14を被覆する発光層12とからなる。
【0077】
図29(a)は、X電極10の第5の構成例を示す断面図である。図29(b)は、Y電極20の第5の構成例を示す断面図である。図29(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11と、この陽極11を被覆するホール注入層16とからなる。図29(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子注入層17と、この電子注入層17を被覆する電子輸送層14と、この電子輸送層14を被覆する発光層12と、この発光層12を被覆するホール輸送層13とからなる。
【0078】
図30(a)は、X電極10の第6の構成例を示す断面図である。図30(b)は、Y電極20の第6の構成例を示す断面図である。図30(a)に示すように、X電極10は、線状の陽極11からなる。図30(b)に示すように、Y電極20は、線状の陰極21と、この陰極21を被覆する電子注入層17と、この電子注入層17を被覆する電子輸送層14と、この電子輸送層14を被覆する発光層12と、この発光層12を被覆するホール輸送層13と、このホール輸送層13を被覆するホール注入層16とからなる。
これ以外のことは上述の第5の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0079】
(7)第7の実施形態
次に、この発明の第7の実施形態について説明する。
この第7の実施形態は、赤色光を発光する発光層を有する電極と、緑色光を発光する発光層を有する電極と、青色光を発光する発光層を有する電極とを行方向または列方向に繰り返し並べたものである。これにより、この第7の実施形態では、フルカラー表示行うことができる。
【0080】
フレキシブルなプラスチック基板を用いた従来の表示素子では、カラー化のためのパターン形成(例えばカラーフィルタ形成)が困難であるため、表示素子のフルカラー化の実現が難しい状況であるのに対して、この第7の実施形態では、赤色、緑色、青色を発光可能な発光層を陽極または陰極に被覆する工程を設けることで表示素子をフルカラー化することができるので、表示素子のフルカラー化が容易である。
【0081】
図31は、この発明の第7の実施形態による表示素子1の一構成例を示す平面図である。図31に示すように、この表示素子1は、互いに平行に配列されたX11、X12、X13、・・・、Xn1、Xn2、Xn3電極と、これらのX電極と直交するように配列されたYr1、Yg1、Yb1、・・・、Yrn、Ygn、Ybn電極と、X11〜Xn3電極間にそれぞれ設けられたX絶縁材2と、Yr1〜Ybn電極間にそれぞれ設けられたY絶縁材3とを備える。隣り合うX電極間の幅および隣り合うY電極の間の幅は、ほぼ一定に設定されている。
【0082】
Yr1、・・・、Yrnは、赤色光を発光する発光層を有するY電極であり、Yg1、・・・、Ygnは、緑色光を発光する発光層12を有するY電極であり、Yb1、・・・、Ybnは、青色光を発光する発光層12を有するY電極である。すなわち、赤色光、緑色光、青色光をそれぞれ発光可能な発光層12を有するY電極が、列方向に繰り返し設けられている。
【0083】
1画素は、例えば、Yrn、YgnおよびYbn電極と、Xn1、Xn2およびXn3電極との交点により形成される。具体的には例えば、画素内において赤を表示する場合には、YrnとXn1〜Xn3との間に電圧を印加し、画素内において緑を表示する場合には、YgnとXn1〜Xn3との間に電圧を印加し、画素内において青を表示する場合には、YbnとXn1〜Xn3との間に電圧を印加する。
【0084】
赤色光を発光する発光層12の材料としては、赤色光を発光できる当業者に公知の発光材料を用いることができる。このような発光材料としては、例えばDOW Chemical社製の“LUMINATION”Red 1100 seriesを挙げることができる。
【0085】
緑色光を発光する発光層12の材料としては、緑色光を発光できる当業者に公知の発光材料を用いることができる。このような発光材料としては、例えばDOW Chemical社製の“LUMINATION”Green 1300 seriesを用いることができる。
【0086】
青色光を発光する発光層12の材料としては、青色光を発光できる当業者に公知の発光材料を用いることができ、このような発光材料としては、例えばDOW Chemical社製の“LUMINATION”Blue 1300 seriesを用いることができる。
【0087】
(8)第8の実施形態
次に、この発明の第8の実施形態について説明する。
この第8の実施形態は、X電極とY電極との2以上の交点により1画素を構成するものである。以下では、一例として、X電極とY電極との9つの交点により1画素を構成し、輝度を均一化する場合について説明する。
【0088】
図32は、この発明の第8の実施形態による表示素子1の一構成例を示す模式図である。図32に示すように、この表示素子1は、互いに平行に配列されたX11、X12、X13、・・・、Xn1、Xn2、Xn3電極と、これらのX電極と直交するように配列されたY11、Y11、Y11、・・・、Yn1、Yn2、Yn3電極と、X11〜Xn3電極間にそれぞれ設けられたX絶縁材2と、Y11〜Yn3電極間にそれぞれ設けられたY絶縁材3とを備える。隣り合うX電極間の幅および隣り合うY電極の間の幅は、ほぼ一定に設定されている。この表示素子1では、Xn1、Xn2、Xn3電極と、Yn1、Yn1、Yn1電極との9つの交点により1画素が構成される。
【0089】
上述したように、一画素を複数本のXY電極で構成し、一画素内に複数の輝点をつくり、画素内を平均化することで、画素間の輝度のバラツキを平均化することができる。
【0090】
(9)第9の実施形態
次に、この発明の第9の実施形態について説明する。
図33は、この発明の第9の実施形態による表示素子1の一構成例を示す模式図である。図33に示すように、表示素子1は封止剤31により被覆されている。なお、表示素子1の隙間を封止剤31により埋めるようにすることが好ましい。このよう隙間を埋めることで、行方向に隣接するX電極10同士、および列方向に隣接するY電極20同士が接触してショートすることをより確実に防止できる。また、表示素子1の両面を封止剤31により被覆することが好ましい。このように両面を被覆することで、表示素子1の酸化を防止できる。
【0091】
封止剤31は、例えば、表示素子1の両面に塗布された後、硬化される。封止剤31の塗布方法としては、例えばディッピング法を用いることができる。また、封止剤31の硬化方法としては、例えば紫外線により硬化する方法を用いることができる。
【0092】
この封止剤31としては、例えば、高誘電率の高分子材料を用いることができる。このような高誘電率の高分子としては、種々の樹脂を用いることができるが、透明性およびフレキシビリティ性といった性質に加え、他の材料を保護できる性質、具体的には酸素透過度と水蒸気透過度とが低い性質を有する樹脂を選ぶことが好ましい。高誘電率の高分子としては、具体的には例えば、UV硬化型エポキシ樹脂またはUV硬化型アクリル樹脂などのUV硬化型樹脂を用いることができる。
【0093】
図34は、溶融状態の封止剤31が両面に塗布された表示素子1を模式的に示す断面図である。図34中の矢印に示すように、両面に塗布された封止剤31の表面張力により、X電極10およびY電極20に適度な圧力を加えることができる。したがって、この状態を保持しつつ、封止剤31を硬化することにより、X電極10とY電極20とをより確実に接触させることができる。すなわち、X電極10とY電極20との交点においてより確実に発光現象を起こすことができる。
これ以外のことは上述の第7の実施形態と同様であるので説明を省略する。なお、第1〜第6および第8の表示素子を同様に封止剤により被覆するようにしてもよい。
【0094】
(10)第10の実施形態
次に、この発明の第10の実施形態について説明する。
図35および図36は、この発明の第10の実施形態による表示素子の製造方法を説明するためのものである。
【0095】
まず、上述の第1の実施形態と同様にしてX電極10およびY電極20を得る。次に、図35(a)に示すように、保護層32によりX電極10を被覆し、図35(b)に示すように、保護層33によりY電極20を被覆する。保護層32、33の形成方法としては、例えば、ディッピング法などのウエットプロセスを用いることができる。具体的には例えば、公知の糸の表面コーティング法を用いることができる。このようなコーティング法としては、例えば、保護層32、33を形成するための樹脂材料の溶液内に、X電極10およびY電極20を潜らせ、乾燥させる方法を用いることができる。この際、引き上げ速度、乾燥速度を適宜調整することにより一定の膜厚を有する保護層32、33を形成することができる。
【0096】
保護層32、33を設けることで、表示素子1の製造工程中または表示素子1の製造後においてX電極10およびY電極20を保護することができる。また、行方向に隣接するX電極10同士、および列方向に隣接するY電極20同士が接触してショートすることを防止できる。
【0097】
この封止剤31としては、例えば、高誘電率の高分子材料を用いることができる。このような高誘電率の高分子としては、種々の樹脂を用いることができるが、透明性およびフレキシビリティ性といった性質に加え、他の材料を保護できる性質、具体的には酸素透過度と水蒸気透過度とが低い性質を有する樹脂を選ぶことが好ましい。高誘電率の高分子としては、具体的には例えば、UV硬化型エポキシ樹脂またはUV硬化型アクリル樹脂などのUV硬化型樹脂を用いることができる。
【0098】
次に、上述の第1の実施形態と同様にして、X電極10およびY電極20を織り布のように組み合わせて表示素子1を得る。これにより、図36(a)に示すように、X電極10およびY電極20の交点に、陽極11、発光層12、保護層32、保護層33、陰極21からなる積層構造が設けられる。
【0099】
次に、例えば表示素子1を加熱することにより、X電極10およびY電極20をそれぞれ被覆する保護層32、33を溶解する。これにより、図36(b)に示すように、表面張力によりX電極10およびY電極20に対して矢印の方向に適度な圧力を加えることができる。したがって、X電極10およびY電極20をより確実に接触させることができる。すなわち、X電極10およびY電極20の交点に、陽極11、発光層12、陰極21からなる有機EL発光層をより確実に設けることができる。その後、溶解された保護層32、33の材料を硬化させる。以上により、目的とする表示素子1を得ることができる。
【0100】
なお、表示素子1に対してその中心から遠ざかる方向にテンションを加えながら、保護層32、33を溶解し、硬化するようにしてもよい。このようにすることで、X電極10とY電極20とを更に確実に接触させることができる。
【0101】
これ以外のことは上述の第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。なお、この第10の実施形態では、第1の実施形態におけるX電極10およびY電極20をそれぞれ保護層32、33により被覆し、これを用いて表示素子1を製造する場合を例として説明したが、第2〜第8の実施形態においてもX電極10およびY電極20をそれぞれ保護層32、33により被覆し、これを用いて表示素子1を製造するようにしてもよい。
【0102】
以上、この発明の第1〜第10の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の第1〜第10の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0103】
例えば、上述の第1〜第10の実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
【0104】
また、上述の第1〜第10の実施形態では、X電極10とY電極20との交点に有機EL発光層が設けられている場合を例として説明したが、X電極10とY電極20との交点に無機EL発光層が設けられているようにしてもよい。発光材料としては、例えば、分散型エレクトロルミネッセンス材料、無機エレクトロルミネッセンス材料などを用いることができる。
【0105】
また、上述の第1〜第10の実施形態では、発光層12、ホール輸送層13、電子輸送層14、ホールバリヤー層15、ホール注入層16および電子注入層17が、線状の陽極11または陰極21の全体を被覆している場合を例として説明したが、線状の陽極11または陰極21の被覆はこの例に限定されるものではない。すなわち、X電極10とY電極20とを交差させた場合に、その交点において有機EL発光層が形成されるように、上述の各層が線状の陽極11または陰極21を被覆していればよく、被覆は陽極11または陰極21の一部であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】この発明の第1の実施形態による表示素子の一構成例を示す平面図である。
【図2】この第1の実施形態による表示素子の端部を示す模式図である。
【図3】図3(a)は、X電極の第1の構成例を示す断面図、図3(b)は、Y電極の第1の構成例を示す断面図である。
【図4】図4(a)は、X電極の第2の構成例を示す断面図、図4(b)は、Y電極の第2の構成例を示す断面図である。
【図5】この第1の実施形態による表示素子の発光原理を示す模式図である。
【図6】この第1の実施形態により表示素子の駆動の一例を説明するための模式図である。
【図7】この第1の実施形態による表示素子の製造方法の一例を示す模式図である。
【図8】図8(a)は、X電極の第1の構成例を示す断面図、図8(b)は、Y電極の第1の構成例を示す断面図である。
【図9】図9(a)は、X電極の第2の構成例を示す断面図、図9(b)は、Y電極の第2の構成例を示す断面図である。
【図10】図10(a)は、X電極の第3の構成例を示す断面図、図10(b)は、Y電極の第3の構成例を示す断面図である。
【図11】図11(a)は、X電極の第1の構成例を示す断面図、図11(b)は、Y電極の第1の構成例を示す断面図である。
【図12】図12(a)は、X電極の第2の構成例を示す断面図、図12(b)は、Y電極の第2の構成例を示す断面図である。
【図13】図13(a)は、X電極の第3の構成例を示す断面図、図13(b)は、Y電極の第3の構成例を示す断面図である。
【図14】図14(a)は、X電極の第4の構成例を示す断面図、図14(b)は、Y電極の第4の構成例を示す断面図である。
【図15】図15(a)は、X電極の第1の構成例を示す断面図、図15(b)は、Y電極の第1の構成例を示す断面図である。
【図16】図16(a)は、X電極の第2の構成例を示す断面図、図16(b)は、Y電極の第2の構成例を示す断面図である。
【図17】図17(a)は、X電極の第3の構成例を示す断面図、図17(b)は、Y電極の第3の構成例を示す断面図である。
【図18】図18(a)は、X電極の第4の構成例を示す断面図、図18(b)は、Y電極の第4の構成例を示す断面図である。
【図19】図19(a)は、X電極の第5の構成例を示す断面図、図19(b)は、Y電極の第5の構成例を示す断面図である。
【図20】図20(a)は、X電極の第1の構成例を示す断面図、図20(b)は、Y電極の第1の構成例を示す断面図である。
【図21】図21(a)は、X電極の第2の構成例を示す断面図、図21(b)は、Y電極の第2の構成例を示す断面図である。
【図22】図22(a)は、X電極の第3の構成例を示す断面図、図22(b)は、Y電極の第3の構成例を示す断面図である。
【図23】図23(a)は、X電極の第4の構成例を示す断面図、図23(b)は、Y電極の第4の構成例を示す断面図である。
【図24】図24(a)は、X電極の第5の構成例を示す断面図、図24(b)は、Y電極の第5の構成例を示す断面図である。
【図25】図25(a)は、X電極の第1の構成例を示す断面図、図25(b)は、Y電極の第1の構成例を示す断面図である。
【図26】図26(a)は、X電極の第2の構成例を示す断面図、図26(b)は、Y電極の第2の構成例を示す断面図である。
【図27】図27(a)は、X電極の第3の構成例を示す断面図、図27(b)は、Y電極の第3の構成例を示す断面図である。
【図28】図28(a)は、X電極の第4の構成例を示す断面図、図28(b)は、Y電極の第4の構成例を示す断面図である。
【図29】図29(a)は、X電極の第5の構成例を示す断面図、図29(b)は、Y電極の第5の構成例を示す断面図である。
【図30】図30(a)は、X電極の第6の構成例を示す断面図、図30(b)は、Y電極の第6の構成例を示す断面図である。
【図31】この発明の第7の実施形態による表示素子の一構成例を示す平面図である。
【図32】この発明の第8の実施形態による表示素子の一構成例を示す模式図である。
【図33】この発明の第9の実施形態による表示素子の一構成例を示す模式図である。
【図34】溶融状態の封止剤が両面に塗布された表示素子を模式的に示す断面図である。
【図35】図35(a)は、保護層により被覆されたX電極の一構成例を示す断面図、図35(b)は、保護層により被覆されたY電極の一構成例を示す断面図である。
【図36】図36(a)は、保護層の溶融前におけるX電極とY電極との交点を示す模式図、図36(b)は、保護層の溶融後におけるX電極とY電極との交点を示す模式図である。
【符号の説明】
【0107】
1 表示素子
2 X絶縁材
3 Y絶縁材
10 X電極
11 陽極
12 発光層
13 ホール輸送層
14 電子輸送層
15 ホールバリヤー層
16 ホール注入層
17 電子注入層
20 Y電極
21 陰極
31 封止剤
32,33 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状を有する第1の電極材と、
線状を有する第2の電極材と
が互いに交差するように設けられ、
上記第1の電極材および上記第2の電極材の交点に陽極、発光層、陰極が積層されてなる積層構造が設けられていることを特徴とする表示素子。
【請求項2】
上記陽極と上記発光層との間に、ホール輸送層がさらに設けられていることを特徴とする請求項1記載の表示素子。
【請求項3】
上記発光層と上記陰極との間に、電子輸送層がさらに設けられていることを特徴とする請求項2記載の表示素子。
【請求項4】
上記電子輸送層と上記発光層との間に、ホールバリヤー層がさらに設けられていることを特徴とする請求項3記載の表示素子。
【請求項5】
上記陽極と上記ホール輸送層との間に、ホール注入層がさらに設けられ、
上記陰極と上記発光層との間に、電子注入層がさらに設けられていることを特徴とする請求項2記載の表示素子。
【請求項6】
上記電子注入層と上記発光層との間に、電子輸送層がさらに設けられていることを特徴とする請求項5記載の表示素子。
【請求項7】
隣り合う上記第1の電極材間および上記第2の電極材間には、線状の絶縁材がさらに設けられていることを特徴とする請求項1記載の表示素子。
【請求項8】
上記絶縁材は、黒色を有することを特徴とする請求項7記載の表示素子。
【請求項9】
上記第1の電極材は、線状を有する複数の陽極材からなり、
上記第2の電極材は、線状を有する複数の陰極材からなり、
上記陽極材および上記陰極材との交点に陽極、発光層、陰極が積層されてなる積層構造が設けられていることを特徴とする請求項1記載の表示素子。
【請求項10】
互いに交差するように設けられた上記第1の電極材と上記第2の電極とは、封止材により被覆されていることを特徴とする請求項1記載の表示素子。
【請求項11】
上記第1の電極材および上記第2の電極材は行列状に設けられ、
上記発光層は、赤色光を発光可能な赤の発光層、緑色光を発光可能な緑の発光層または青色光を発光可能な青の発光層であり、
上記赤の発光層、緑の発光層および青の発光層が、列方向または行方向に繰り返し設けられていることを特徴とする請求項1記載の表示素子。
【請求項12】
上記第1の電極材および上記第2電極は、該第1の電極材および第2の電極材を縦糸および横糸として織布状に織られていることを特徴とする請求項1記載の表示素子。
【請求項13】
線状の電極と、
上記電極を被覆する発光層と
を備えることを特徴とする表示素子用の電極材。
【請求項14】
上記発光層を被覆する保護層がさらに設けられていることを特徴とする請求項13記載の表示素子用の電極材。
【請求項15】
線状の陰極および陽極の一方を発光層により被覆する工程と、
上記陰極および陽極とが交差するように該陰極および陽極を配列する工程と
を備えることを特徴とする表示素子の製造方法。
【請求項16】
上記陰極および陽極を配列する工程の後に、上記配列された陰極および陽極を封止剤により被覆する工程をさらに備えることを特徴とする請求光15記載の表示素子の製造方法。
【請求項17】
上記発光層を形成する工程と、上記陰極および陽極を配列する工程との間に、上記発光層を保護層により被覆する工程をさらに備えることを特徴とする請求項15記載の表示素子の製造方法。
【請求項18】
上記陰極および陽極を配列する工程の後に、上記保護層を溶解し、硬化させる工程をさらに備えることを特徴とする請求項17記載の表示素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2007−52953(P2007−52953A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236028(P2005−236028)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】