表示素子
【課題】金属反射状態と透過状態との間で遷移が可能な材料を用いて表示素子を提供する。
【解決手段】複数の画素を含む表示素子である。複数の画素のそれぞれは、特定元素の濃度に応じて光学的特性が変化する第1材料を含む第1層1と、特定元素を含有し得る第2材料を含む第2層であって、第2材料は電圧を印加されると特定元素を放出または吸収する第2層2と、第2層に電圧を印加するための一対の電極3aおよび3bを備える。電圧に応答して第1層1の光反射率が変化する。
【解決手段】複数の画素を含む表示素子である。複数の画素のそれぞれは、特定元素の濃度に応じて光学的特性が変化する第1材料を含む第1層1と、特定元素を含有し得る第2材料を含む第2層であって、第2材料は電圧を印加されると特定元素を放出または吸収する第2層2と、第2層に電圧を印加するための一対の電極3aおよび3bを備える。電圧に応答して第1層1の光反射率が変化する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光の反射率や透過率を制御できる表示素子に関している。
【0002】
【従来の技術】
イットリウム(Y)やランタン(La)などの金属薄膜が水素と結合することにより、可視光を透過し得る水素化物に変化する現象が報告されている(特許文献1、非特許文献1)。この現象は可逆的であるため、雰囲気中の水素圧力を調節することにより、薄膜を金属光沢状態と透明状態との間で変化させることが可能である。
【0003】
上記薄膜の光学特性を変化させ、金属光沢を示す状態と透明な状態とを切り替えることができれば、光の反射率/透過率を自由に調節できる調光ミラーを実現することができる。調光ミラーを例えば建物や自動車の窓ガラスとして使用すれば、太陽光を必要に応じて遮断(反射)し、または透過させることができる。
【0004】
このような調光ミラーは、例えば、イットリウム薄膜の上にパラジウム層を形成した構造を有している。パラジウムは、イットリウム薄膜の表面酸化を防止する機能と、雰囲気中の水素分子を効率的に水素原子に変化させ、イットリウムに供給する機能とを有している。イットリウムが水素原子と化学的に結合すると、YH2またはYH3が形成される。YH2は金属であるが、YH3は半導体であり、その禁制帯幅が可視光のエネルギよりも大きいため、透明である。
【0005】
また、室温においてもYH2⇔YH3の状態変化が迅速(数秒程度)で生じるため、雰囲気中の水素含有量に応じて反射(金属光沢)状態と透明状態との間でスイッチングを行うことが可能である。
【0006】
このように金属光沢⇔透明の遷移が可能な他の材料として、例えば、Mg2Ni薄膜が非特許文献2に開示されている。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第5635729号明細書
【非特許文献1】
Huibert、他6名、ネイチャー(Nature)、(英国)、1996年3月、第380巻、p.231−234
【非特許文献2】
応用物理学会講演会2001春31−a−ZS−14
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術によれば、薄膜の光学的状態を変化させるには、薄膜を水素雰囲気へ暴露することにより、薄膜に含まれる金属光沢⇔透明の遷移が可能な材料を水素化することが必要である。具体的には、薄膜と接する雰囲気ガス中の水素量(水素分圧)を制御することが必要になる。このような水素量の制御は薄膜の全面で行われるので、薄膜全面の光学的状態が変化する。
【0009】
このため、上記従来技術では、調光ミラーなどの薄膜全面の光学的状態を変化させる用途に適用することを前提としており、表示装置に適用することは提案されていない。表示装置に適用するには、薄膜を複数の画素に区画化し、画素ごとに光学的状態を制御する必要がある。しかし、画素ごとに雰囲気ガスの水素量を制御することは困難であり、実用的ではない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属反射状態と透過状態との間で遷移が可能な材料を用いて表示素子を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の表示素子は、複数の画素を含む表示素子であって、前記複数の画素のそれぞれは、特定元素の濃度に応じて光学的特性が変化する第1材料を含む第1層と、前記特定元素を含有し得る第2材料を含む第2層であって、前記第2材料は電圧を印加されると前記特定元素を放出または吸収する第2層と、前記第2層に前記電圧を印加するための一対の電極を備え、前記電圧に応答して前記第1層の光反射率が変化することを特徴とし、そのことにより前記目的が達成される。
【0012】
ある好ましい実施形態において、前記第1材料は、前記特定元素の濃度に応じて光反射状態と光透過状態との間を遷移し得る。
【0013】
ある好ましい実施形態において、前記第1材料が光反射状態のとき、前記第1層は光を拡散反射する。
【0014】
ある好ましい実施形態において、前記第1材料が粒子である。
【0015】
ある好ましい実施形態において、前記第1層の上面または下面の少なくとも一方は凹凸を有している。
【0016】
ある好ましい実施形態において、前記第1層は着色粒子をさらに含んでおり、前記第1材料は前記着色粒子に吸着している。
【0017】
ある好ましい実施形態において、前記第1層は、光を拡散反射する状態と光を透過する状態との間を遷移し、前記第2層は、光透過性を有しており、前記第1層および前記第2層を透過した光を吸収する光吸収層を更に備えている。
【0018】
ある好ましい実施形態において、前記第1層は、光を拡散反射する状態と光を透過する状態との間を遷移し、前記第2層は可視光吸収性を有しており、前記第2層は、前記第1層の光入射面とは反対側に配置されている。
【0019】
前記第2層は、前記第1層の光入射側に配置され、カラーフィルタとして機能してもよい。
【0020】
前記特定元素は水素であり、前記第2層は、水素貯蔵材料を含んでいてもよい。
【0021】
前記第2材料は、電子の授受により、前記特定元素の放出または吸収を行うことが好ましい。
【0022】
前記第1層は導電性を有しており、前記一対の電極の一方として機能してもよい。
【0023】
本発明の表示素子は反射型表示素子であってもよい。
【0024】
本発明の表示素子は、バックライトをさらに有することもできる。
【0025】
前記第1層は、光をミラー反射する状態と光を透過する状態との間を遷移し、バックライトをさらに有してもよい。
【0026】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の表示素子において、表示に利用する調光原理を説明する。
【0027】
図1(a)〜(c)は、本発明の表示素子の調光原理を説明するための模式的な断面図である。本発明の表示素子は複数の画素を有しており、各画素は調光層M1および変換層M2の積層構造を備えている。画素ごとに調光層M1の光反射率を変化させることにより、表示を行う。
【0028】
図1(a)に示す調光層M1は、特定元素の濃度に応じて光学的特性が変化する調光材料を含んでいる。調光材料の好ましい例は、前述したY、La、Mg2Ni合金であり、調光層1は、例えばこれらの調光材料の薄膜である。Y、La、Mg2Ni合金などの材料は、水素濃度に応じて金属−半導体(または絶縁体)状態間の遷移を行う。
【0029】
変換層M2は、水素などの特定元素を含有し得る材料(本明細書では「変換材料」と称する。)を含んでいる。変換材料は、電荷(電子や正孔)の注入または光照射などの外部刺激に応じて、上記の特定元素(例えば水素)を放出または吸収する。
【0030】
図1(a)に示されている調光層M1および変換層M2は、いずれも、水素を吸収/放出する能力を有するとともに、電荷(電子または正孔)およびイオンを移動させることができる電気伝導性を有している。
【0031】
以下、電荷の注入/放出により、水素イオンが変換層M2から調光層M1へ、あるいは調光層M1から変換層M2へ移動するメカニズムを説明する。このメカニズムの特徴点は、調光層M1の光学的特性を変化させる特定元素(水素)のイオンを、電気化学的な反応によってではなく、電荷の移動を媒介として移動させる点にある。
【0032】
図2(a)は、図1の構造に含まれる調光層M1および変換層M2の初期状態を示している。この初期状態では、水素を実質的に貯蔵していない調光層M1と、あらかじめ水素を貯蔵した変換層M2との間で平衡状態が形成されている。調光層M1には充分な濃度の水素が存在していないため、調光層M1は金属状態にあり、金属光沢を示している。
【0033】
次に、図2(b)に示すように、調光層M1の側に負電位を与えるとともに、変換層M2の側に正電位を与える。このとき、調光層M1には負の電極(不図示)から電子が注入され、調光層M1は電子リッチな状態となる。一方、変換層M2には正孔が注入される(電子が引き抜かれる)。変換層M2に注入された正孔は、変換層M2の内部を調光層M1に向かって移動してゆく。このような正孔の移動過程で、更に継続して変換層M2に正孔が注入されると、変換層M2は正孔リッチな状態となる。このため、変換層M2では、水素イオンを放出しやすい状態となる一方、調光層M1では、変換層M2から水素イオンを受け取り、保持する量が増える。
【0034】
このため、調光層M1と変換層M2との間で成立していた水素の平衡状態が崩れ、調光層M1が水素をより多く保持しやすい状態となり、変換層M2から放出された水素イオンが調光層M1に移動することになる。こうして、図2(c)に示すように、新しい平衡状態が形成される。この状態では、調光層M1に移動した水素と調光材料とが結合して、調光層M1が透明になる。
【0035】
以上の反応を記述すると、M1+M2(H)→M1(H)+M2となる。ここで、M1(H)およびM2(H)は、それぞれ、調光層M1に水素が保持されている状態、および変換層M2に水素が保持されている状態を示している。
【0036】
以上の説明から明らかなように、調光層M1と変換層M2との間では水素イオンの受け渡しが行なわれるだけで、他のイオンの関与する反応は生じていない。また、図2(c)の状態で印加電圧の極性を反転すると、逆方向に反応が進行するため、図2(a)に示す元の平衡状態に復帰する。
【0037】
図1(a)に示す構造の代わりに、図1(b)に示す調光層M1および変換層M2を含む積層構造を有していてもよい。図1(b)の調光層M1は、特定元素の濃度に応じて光学的特性が変化する調光材料の粒子m1(以下、「調光粒子」ということがある)を含んでいる。調光材料の好ましい例は、前述したY、La、Mg2Ni合金である。調光層M1は、例えばバインダー樹脂を含んでおり、上記調光粒子m1はバインダー樹脂に分散している。また、調光層M1は、変換層M2から水素イオンもしくは水素を運ぶための電解質性の材料(導電性高分子など)も含んでいる。変換層M2は、図1(a)を参照して説明した変換層M2と実質的に同様である。
【0038】
図1(b)に示す構造を用いると、調光層M1および変換層M2の初期状態(図2(a))では、調光層M1には充分な濃度の水素が存在していないため、調光層M1に分散している各調光粒子m1は金属状態にあり、光をミラー反射する。このように各調光粒子m1が調光層M1に入射する光をランダムな方向に反射するので、調光層M1全体としては光を拡散反射する。これにより、白色の反射光が得られる。水素イオンが調光層M1に移動して新しい平衡状態が形成されると(図2(c))、調光層M1に移動した水素と調光粒子m1とが結合して、各調光粒子m1が透明になる。
【0039】
あるいは、図1(c)に示す調光層M1および変換層M2を含む積層構造を用いることもできる。図1(c)の調光層M1は、黒色粒子などの着色粒子m2をさらに含んでおり、調光粒子m1が着色粒子m2に吸着している点で図1(b)の調光層M1と異なっている。図1(c)の変換層M2は、図1(a)を参照して説明した変換層M2と実質的に同様である。
【0040】
図1(b)に示す構造を用いると、初期状態(図2(a))では、図1(b)の構造と同様に、着色粒子m2に吸着した各調光粒子m1は金属状態にあり、光をミラー反射する。このように各調光粒子m1が調光層M1に入射する光をランダムな方向に反射するので、調光層M1全体としては光を拡散反射する。これにより、白色の反射光が得られる。水素イオンが調光層M1に移動して新しい平衡状態が形成されると(図2(c))、調光層M1に移動した水素と調光粒子m1とが結合して、各調光粒子m1が透明になる。その結果、調光層M1は例えば黒色などの着色粒子m2の色を示す。このように、調光層M1は拡散反射状態と着色状態(吸収状態ともいう)とを遷移するので、この構造では、変換層M2が透明である必要がない。
【0041】
本発明では、図2(a)〜(c)に示すような電荷の注入により水素イオンが調光層M1と変換層M2との間を移動するメカニズムを利用しているが、本発明はこれに限定されない。本発明の表示素子は、例えば電気化学的な反応により、水素イオンが変換層M2と調光層M1との間を移動するメカニズムを利用することもできる。この場合は、調光層M1と変換層M2との間に固体電解質の層をさらに設けてもよいし、図1(b)または(c)の調光層M1に含まれるバインダー樹脂を固体電解質として用いてもよい。あるいは、本発明の表示素子は、変換層M2を備えていなくても良い。この場合は、調光層M1がさらに変換材料を含んでおり、調光層M1内部で、水素イオンを調光粒子m1と変換材料との間で移動させてもよい。
【0042】
何れのメカニズムを利用する場合でも、変換材料に印加される電圧に応じて、調光層M1の水素イオンの濃度が変化するので、調光層M1の光学的特性は、図1(a)〜(c)に示すように変化する。
【0043】
なお、上記のうちでは、電荷の注入により水素イオンを移動させるメカニズムを利用することが好ましい。電荷(電子や正孔)の移動によって水素の平衡状態を変化させることにより水素を駆動する場合は、水素イオン以外の他のイオンを反応に関与させる必要がない。このため、複数種のイオンが関与する電気化学的な反応によるメカニズムを利用する場合と比べて応答速度が高いという利点がある。また、電気化学的な反応が生じないため、正極側で水素ガスが発生する可能性も低く、電子素子としての安定した動作が可能になる。
【0044】
このように、本発明の表示素子は、変換材料を含む変換層M2に電圧を印加することにより、調光層M1の水素含有量を変化させることができる。従って、本発明の表示素子は、雰囲気の水素分圧を制御する必要がある従来技術の調光素子と比べて実用的である。また、従来技術では、水素分圧の制御は調光層M1の全面で行われるので、調光層M1の光学的特性は調光層M1全面で変化する。これに対して、本発明では、上記メカニズムを利用するので、調光層M1の画素ごとに印加電圧を制御することにより、画素ごとに光学的特性を変化させることができる。
【0045】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0046】
(実施形態1)
まず、図を参照しながら、本発明による表示素子の実施形態を説明する。図3は、本実施形態の表示素子における一画素の模式的な断面図を示し、図4は、本実施形態の表示素子の平面図を示す。ここでは、反射型フルカラー表示素子を例に説明するが、本発明はこれに限定されない。例えば、白黒表示素子でもよいし、投射型表示素子でもよい。
【0047】
本実施形態の表示素子は、基板1の上に順次積層された光吸収層5、電極3b、変換層2、調光層1、電極3aおよびカラーフィルタ6を有している。図4に示すように、電極3bは平行に延びる複数のパターンを有し、電極3aは、電極3bと垂直な方向に延びる複数のパターンを有している。一対の電極3a、3bには適切な電圧が印加され得るが、適宜、電極3aと電極3bとを単純に短絡させることも可能である。カラーフィルタ6は、電極3aと略平行に伸びる複数のパターンを有している。これらのパターンのうち、典型的には各画素につきR(赤)、G(緑)、B(青)の3つのパターンが形成されている。
【0048】
なお、基板4に対する変換層2および調光層1の積層順序は、図示されているものに限定されず、基板4に近い側に変換層2を配置し、その上に調光層1を形成してもよい。また、基板4がガラス基板などの透明な基板であれば、光吸収層5を基板4の背面に設けてもよい。また、光吸収層5が導電性を有する場合、光吸収層5は電極3aと電極3bとの間のどこに設けてもよい。あるいは、導電性を有する光吸収層5を、電極3bと一体的に、または電極3bの代わりに用いることも可能である。
【0049】
本実施形態における調光層1は、水素濃度に応じて光学的特性が変化する調光材料(例えばイットリウム)を含んでいる。本実施形態では、調光層1として、図1(a)に示すように調光材料を用いて形成された膜(例えばイットリウム膜)である。調光層1は1層でもよいし、多層構造を有していてもよい。
【0050】
変換層2は、水素を含有し得る変換材料を含んでいる。この変換材料は電極3aとの間で電子の授受を行うことにより、水素のイオン(H+)を放出/吸収を行うことができる。
【0051】
図示する例では、マトリクス状に形成された電極3aおよび3bによって、任意の画素の変換層2に電圧を印加できる。ある画素において、電極3aに正の電位を与え、電極3bに負の電位を与えると、あらかじめ充分な量の水素を含有している変換層2の変換材料から水素イオンが放出される。放出された水素イオンは、積層構造中に形成された電界中を移動し、調光層1に達した後、調光材料にドープされる。このような水素の放出および移動のメカニズムは、前述したとおりである。調光層1における調光材料は、水素と結合することにより、水素金属化合物を形成する。この結果、当初は金属状態にあった調光材料は、可視光を透過する半導体または絶縁体に変化する。
【0052】
上述したような調光層1および変換層2の状態の変化を、図5(a)に示す。調光層1の調光材料が金属状態のとき、表示素子に入射する光は調光層1で反射され、カラーフィルタ6を透過する。従って、カラーフィルタ6を透過した光が視認される。調光材料が半導体または絶縁体になると調光層1が透明になるので、表示素子に入射する光は調光層1を透過し、光吸収層5に吸収される。そのため、黒色が視認される。
【0053】
次に、本実施形態の表示素子の製造方法を説明する。
【0054】
まず、基板4を用意する。基板4は、基板4上に形成される積層構造を支持できればよく、ガラス基板、プラスチック基板、金属基板などを用いることができる。基板4は透明である必要はない。
【0055】
基板1の上に光吸収層5を形成する。光吸収層5は、可視光域の全域で光を吸収するもの(黒)であってもよいし、可視光域の一部の光を吸収するもの(他の色)であってもよい。光吸収層5の形成は、例えばカーボンブラック系黒色材料を含む黒色樹脂をスピンコート法で基板1上に塗布することによって行う。
【0056】
この後、光吸収層5の上に電極を形成する。例えば、ITO(Indium Tin Oxide)を用いて、厚さ150nmの膜をスパッタ法で形成する。この膜を、幅が100μm(画素の幅に対応する)の複数のパターンにパターニングする。これらのパターンは互いに略平行であり、隣接するパターンの間隔は10μmとする。
【0057】
電極3b上に、透明な変換層2を形成する。変換層2に含まれる変換材料は、定常状態で水素の原子またはイオンを貯蔵し保持することができ、外部刺激に応じて、水素貯蔵量(保持量)を変化させる。このような水素を貯蔵できる材料としては、LaNi5、MnNi5、CaNi5・TiMn1.5、ZrMn1.5、ZrMn2、TiNi、TiFe、Mg2Niなどの合金を用いることができる。また、カーボンナノチューブ(CNT)やNiOOHを用いることもできる。なお、NiOOHを用いる場合には、電気化学的なメカニズムを利用して、水素を変換層2−調光層1の間で移動させることになるので、例えば変換層2と調光層1との間に電解質層を設けることが好ましい。
【0058】
変換層2は、水素貯蔵材料のほかに電気導電性材料を含んでいてもよい。電気導電性材料が変換層2に含まれていると、調光層1との間で水素イオンのやりとりを迅速に行うことができる。電気伝導性材料としては、液体または固体電解質のようにイオン伝導を行うことが出来る材料、電荷(電子または正孔)を伝導させる導電性高分子や電荷移動錯体を用いることができる。また、変換層2には、上記の水素貯蔵材料や電気伝導性材料以外とは別に必要に応じてバインダー樹脂などの結合材料を加えても良い。
【0059】
電極3a、3bから注入された電荷は、調光層1および変換層2においてそれぞれ電荷のやり取りを行う。一方の電極から注入された電荷が、そのまま他方の電極に移動してしまう場合もあるので、調光層1と変換層2との間に、イオン交換膜などのセパレータの役割を有する層(セパレート層)を配置してもよい。セパレート層は、層内でイオンは移動できるが、電荷が移動し難い材料を用いて形成することが望ましい。そのような材料は、例えばイオン交換体、多孔質絶縁物、イオン導電性高分子材料などである。セパレータ層を設けると、一方の電極から注入された電荷が他方の電極に突き抜けることが抑制される。そのため、調光層1および変換層2において、注入された電荷のうち水素イオンとのやり取りに用いられる電荷の割合が高くなるので、効率よくやり取りを行うことができる。
【0060】
本実施形態では、次のようにして変換層2を形成する。AB5型Mm水素貯蔵合金であるNi合金の超微粒子(分散中心半径10nm)と、導電性高分子材料P1(電子、正孔両電荷を輸送できる材料)、及びバインダー樹脂としてアクリル系樹脂で屈折率がガラスとほぼ同等のものをブレンドしたものを用いる。これらの材料を溶媒に溶解させた溶液を用意し、スピンコート法や印刷法によって塗布することにより、例えば厚さが500nmの変換層2を形成することができる。このような変換層2の形成は、インクジェット法やその他の薄膜堆積技術用いて行っても良い。
【0061】
次いで、調光層1を、蒸着法、スパッタ法などによって形成する。調光層1は、例えば厚さ50nmのイットリウム膜である。
【0062】
この後、電極3aとカラーフィルタ6とを順次形成する。電極3aは透明である。電極3aは、ITOを用いて、電極3bの形成方法と同様の方法で形成できる。ただし、電極3aのパターンは、図4に示すように、電極3bのパターンの延びる方向と略垂直方向に延びるように形成する。パターンの幅および隣接するパターンの間隔は、例えばそれぞれ100μmおよび10μmである。カラーフィルタ6は、例えば公知の材料を用いて、印刷法などの公知の方法で形成する。カラーフィルタ6は、図4に示すように、例えば電極3bのパターンの幅と同じ幅を有する複数のパターンを有する。このようにして、表示素子が得られる。
【0063】
この表示素子の電極3a、3bに電圧を印加することにより、変換層2の内部で電荷およびイオンの授受が行われる結果、前述したメカニズムにより、変換層2と調光層1との間で水素の移動を引き起こすことができる。このため、例えば、初期状態で水素がドープされていない調光層1と、あらかじめ水素を貯蔵した変換層2とを用い、図1に示すような電圧を印加すると、水素イオンが正極側から負極側に移動して、調光層1にドープされる。すなわち、正極側では水素放出反応が進行し、負極側では水素と金属との結合反応が進行して、水素金属化合物が形成される。これに対して、逆方向の電圧を印加すると、逆方向に水素の移動が生じるため、印加電圧の極性を交替することにより、調光層1の光学的状態を金属光沢−透明の間で可逆的に切り替えることができる。
【0064】
変換層2に貯蔵された水素の移動だけを考えると、電極3aと電極3bと積層構造の外部で短絡させてもよい。このような短絡は、二次電池における放電と同様の現象であり、積層構造の内部状態を初期状態に復帰させることができる。
【0065】
変換層2と調光層1が水素を保持する能力を持つため、電圧の印加を行わないとき(外部の回路を開放しているとき)、水素の移動が生じず、調光層1の光学的状態が保持される(調光層のメモリ機能)。このため、水素保持能力に優れた材料を選択すれば、電力を消費することなく調光状態を長期間保持することができる。
【0066】
上記の例とは逆に、あらかじめ水素をドープした調光層1と、水素を貯蔵していない状態の変換層2とを用いてもよい。その場合は、調光層1に正電位を、変換層2に負電位を与えることにより、調光層1から変換層2に水素を移動させ、それによって調光層1における調光材料の光学的状態を変化させても良い。
【0067】
本実施形態では、水素のドーピング量によって調光材料の光反射率/光透過率を制御することができるため、電極に印加する電圧や印加時間(デューティ比など)を調節することにより、調光層1の光反射率/光透過率を制御することができる。水素保持能力に基づくメモリ性を利用すれば、適切な光反射率/光透過率を保持することも容易である。
【0068】
このような水素の貯蔵/放出を適切に制御する際には、水素平衡圧−組成等温線(以下、「PTC特性曲線」と称する。)に注目する必要がある。PTC特性曲線は、図4に示すように、水素の貯蔵量と水素平衡圧力との関係を示す。図6のグラフでは、横軸が水素貯蔵量を示し、縦軸が水素平行圧力を示している。
【0069】
PTC特性曲線が横軸に対して概平行な部分(以下、「プラトー領域」と称する。)では、一定の平衡圧力内のもとで水素の貯蔵量が変化しえるため、水素平衡圧力を一定にした状態で水素の吸収/放出を可逆的に行うことができる。このため、本実施形態の表示素子は、PTC特性曲線のプラトー領域でスイッチング動作を行う。
【0070】
変換層2および調光層1は略同様のPTC特性を示すことが望ましい。より具体的には、図4に示すように、変換層2および調光層1のPTC特性曲線におけるプラトー領域の「水素貯蔵量」の範囲が重なり合い、かつ、「水素平衡圧力」のレベルがほぼ等しいことが望ましい。同等の水素平衡圧力を示すことによって、調光層1および変換層2の間で水素の授受をスムーズに行うことができる。調光層1および変換層2の間で、水素平衡圧力差が大きくなると、それぞれの層で水素の吸放出が生じても、2つの層の間で水素のやりとりを行うことができなくなってしまうからである。
【0071】
また、変換層2におけるPTC特性曲線のプラトー領域の水素貯蔵量範囲(幅)は、調光層1におけるPTC特性曲線のプラトー領域の水素貯蔵量範囲(幅)を含む大きさを有していることが更に好ましい。本実施形態の表示素子では、調光層1の水素ドーピング量によって調光層1の光透過率を制御するため、変換層2における水素貯蔵量の変化の幅が調光層1の状態変化に必要な水素ドーピング量の変化の幅よりも少ないと、調光層1の光学的状態を充分に変化させることができなくなるからである。
【0072】
再び、図3を参照する。図3に示す表示素子は、変換層2が透明である場合、金属反射状態と透明状態との間でスイッチングを行うことができる。透明度の高い状態を形成するには、基板4および電極3a、3bだけではなく、変換層2を可視光域の全範囲で透過率の高い(吸収の無い)材料から形成する必要がある。しかし、水素貯蔵材料などの変換材料は、金属または着色した材料である場合が多く、このような変換材料の層から透明性の高い変換層2を形成することは難しい。このため、変換材料の微粒子を透明な材料と混合することによって変換層2を形成することが好ましい。具体的には、光の波長以下の粒径を持つナノ粒子を変換材料から形成し、このナノ粒子を透明性に優れたバインダー樹脂で結合することができる。このようにして作製される変換層2は、透明性および水素貯蔵能力の両方を発揮することができるだけではなく、変換材料がナノ粒子化することにより、その表面積が増加するため、水素の吸放出効率も上昇することも期待される。変換材料による水素の吸放出効率が上昇すると、調光動作の応答速度が向上するので好ましい。超微粒子状態の変換材料としては、カーボン系材料(CNT、フラーレンなど)やカリウム−黒鉛層間化合物などを用いることもできる。
【0073】
調光層1は、金属反射状態において、入射する光を拡散反射することが好ましい。調光層1が光を拡散反射すると、表示素子は白を良好に表示する。
【0074】
調光層1が金属反射状態において光を拡散反射するためには、例えば調光層1の表面に微細な凸部および/または凹部が存在していてもよいし(図5(b))、調光層1が図1(b)に示すような調光粒子を含んでいてもよい(図5(c))。
【0075】
まず、表面に微細な凸部および/または凹部を有する調光層1について、詳しく説明する。
【0076】
表面に微細な凸部および/または凹部を有する調光層1は、例えば以下のように形成できる。図5(b)に示すように、凸部を有する基板4上に、電極3a、変換層2、調光層1、および電極3bを、この順序で積層する。調光層1は例えばイットリウム膜である。これにより、調光層1の表面に微細な凸部を形成できる。調光層1の表面に微細な凸部が存在していると、調光層1が金属反射状態にあるとき、反射光は散乱して白色として認識されるため、調光層1の表面は白色に見える。一方、調光層1が透明な状態にあるときには、変換層2によって光が吸収されるため、黒または他の色に見える。
【0077】
図5(b)に示す例では、基板の表面が微細な凸部を有しているため、変換層2および調光層1の全体の平坦性が基板の凹凸を反映した形状を有している。言い換えると、調光層1の上面(光反射側の面)だけではなく、底面も下地の凹凸を反映した形状を有している。しかし、下地である変換層2は凹凸構造を有している必要性は無いため、基板表面および変換層2は平坦に形成した上で、調光層1の上面のみに微細な凹部および/また凸部を形成するようにしてもよい。
【0078】
このように、イットリウム膜などの金属膜は平坦であれば光をミラー反射するが、金属膜の表面に凹凸を設けることにより、光を拡散反射する調光層1となる。これにより、白色の表示が可能な表示素子を提供できる。このような表示素子は、図3に示す構成を有するカラー表示素子に限らず、カラーフィルタ6を設けない白黒表示素子であってもよい。白黒表示素子に適用すれば、白表示をより良好に行うことができるので有利である。
【0079】
次に、調光粒子を含む調光層1について詳しく説明する。
【0080】
調光粒子を含む調光層1および変換層2を図5(c)に示す。図5(c)に示す調光層1では、水素濃度に応じて光学的特性が変化する調光材料を用いて形成された微粒子11(例えばイットリウム、ランタン、以下「調光微粒子」という)がバインダー樹脂に分散している。調光層1に含まれる調光微粒子11の平均粒径は例えば1μmである。バインダー樹脂として、例えばガラスとほぼ同等の屈折率を有するアクリル系樹脂を用いる。また、調光層1は、さらに、調光微粒子11と変換層2との間で水素イオンおよび電荷のやりとりを行うための電気導電性材料を含んでいる。電気伝導性材料としては、液体または固体電解質のようにイオン伝導を行うことが出来る材料、電荷(電子または正孔)を伝導させる導電性高分子(例えばP2)や電荷移動錯体を用いることができる。
【0081】
調光粒子を含む調光層1は、例えば以下のように形成する。バインダー樹脂の溶液に上記の調光微粒子11を分散させ、さらに電気導電性材料を溶解させた塗布溶液を用意する。この塗布溶液を、例えばスピンコート法によって変換層2上に塗布することによって形成できる。調光層1の厚さは例えば3μm程度である。調光層1の形成を、インクジェット法やその他の薄膜堆積技術用いて行っても良い。なお、好ましい調光層1の厚さは、1.5μm以上50μm以下である。1.5μm未満であれば、高い反射率を有する調光層1が得られなかったり、調光層1に用いる調光微粒子11の粒径が制限されたりする。一方、50μmを超えると、調光層1の導電性が低くなる可能性がある。
【0082】
調光層1に調光微粒子11が分散していると、図1(b)を参照して説明したように、各調光微粒子11が金属状態のとき、各調光微粒子11は調光層1に入射する光をランダムな方向に反射するので、調光層1全体としては光を拡散反射することができる。
【0083】
調光層1が拡散反射すること他に、調光材料を粒子化することにより以下のメリットが得られる。調光材料からなる薄膜を調光層1として用いる場合と比べて、調光材料の表面積を大きくすることができる。従って、調光材料と水素との反応効率が向上し、より高速なスイッチングが可能になる。また、調光材料の表面積が大きくなるので、調光層1に含まれる調光材料の状態をより確実に制御することができる。その結果、調光層の拡散反射状態と透明状態との反射率の差を拡大できる。
【0084】
調光微粒子11が光を反射するためには、各調光微粒子11は可視光波長よりも大きな粒径を持つことが望ましい。従って、調光微粒子11の粒径は、好ましくは400nm以上である。より好ましくは800nm以上である。800nm以上であれば、可視光が調光微粒子11を透過することをより確実に防止できるので、調光層1の光の反射率を高めることができる。一方、調光粒子m1の粒径は、調光層1の厚さよりも小さいことが好ましい。粒径が調光層1の厚さよりも大きいと、上述したような調光材料を粒子化するメリットが得られない。より好ましくは、調光微粒子11の粒径は30μm以下である。粒径が30μm以下であれば、調光材料と水素との反応効率を充分に高くすることができ、かつ調光層に入射する光を確実に拡散反射させることができる。さらに好ましくは、粒径は3μm以下である。調光材料の粒径が例えば1μmのとき、調光層1の厚さを3μm程度とすることが好ましい。
【0085】
本実施形態の表示素子において、調光層1と変換層2との間における電荷やイオンのやりとりを行うため、調光層1と変換層2との間に導電性高分子P1の膜を配置することが好ましい。電荷移動性をもつ高分子膜に加えて、電解質材料を用いて形成された層を配置しても良い。あるいは、電荷移動性をもつ高分子材料と電解質材料とを含む層を配置しても良い。電解質材料を含む層(電解質膜)を配置すると、水素イオンの移動が電解質膜を介して起こりやすいので、特性を向上させることも可能である。導電性高分子P1は、導電性を付与するためのイオンがドーピングされているため、電解質膜としての機能も併せ持っている。なお、上述したように調光粒子を含む調光層1を用いる場合は、調光層1のバインダー樹脂を上記高分子膜または電解質膜として機能させることもできる。
【0086】
図示する例では、変換層2や調光層1はそれぞれ1層であるが、変換層2および/または調光層1は必要に応じて多層構造を有していてもよい。また、2層の変換層2を、調光層1を挟み込むように配置すると、調光層1の上面および下面で水素の吸放出が行なわれるため、表示素子のスイッチング速度を高くできる。
【0087】
また、図3に示す表示素子は単純マトリクス構造を有しているが、画素ごとにアクティブ素子を有するアクティブマトリクス駆動の表示素子であってもよい。さらに、図3に示す表示素子は、カラーフィルタ6を備えたカラー表示素子であるが、白黒表示素子であってもよい。白黒表示素子は、基本的には図3に示す構成と同様の構成を有するが、カラーフィルタ6を有していない点で異なる。
【0088】
本実施形態の表示素子は、従来の液晶表示素子と比べて、非常に明るい(輝度の高い)白を表示することができる。また、コントラスト比を大きくできる。その理由を以下に説明する。
【0089】
液晶表示素子は、液晶分子の電圧印加に伴う配列変化を可視化するために偏向板を備えている。そのため、液晶素子に入射してくる光のうち、表示に用いられる光の割合は最大でも50%にとどまる。従って、特に白が暗くなり、表示が視認され難いという問題がある。これに対し、本実施形態の表示素子は、偏光板を設ける必要がない。そのため、調光層1で金属反射(または金属拡散反射)された光を、カラーフィルタ6を通して直接見るので、明るい白が表示できる。一方、調光層1が光透過状態のとき、光吸収層5の色を直接見ることになるので、非常に高品位の黒表が得られる。その結果、表示のコントラスト比を大きくできる。
【0090】
本実施形態の表示素子はメモリ性を有するので、いったん書き込んだ情報は電源を切っても保持される。そのため、書き換えの必要なときのみ電圧を印加すればよいので、消費電力を低減できる。
【0091】
さらに、本実施形態の表示素子は、基板上に各層を順次積層するだけで製造できる。従って、液晶表示素子のように、2枚の基板を貼り合わせ、それらの間に液晶材料を注入する工程がないので、製造プロセスが簡易である。また、本実施形態の表示素子は液晶層を有していないので、液晶表示素子よりも薄く、かつ軽くできる。
【0092】
本実施形態の表示素子は、各種表示装置に適用できる。例えば、本実施形態の表示素子は高いメモリ性を有するので、電子ペーパーや電子ブックなどに適用することもできる。
【0093】
(実施形態2)
以下、図7を参照しながら、本発明による表示素子の第2の実施形態を説明する。図7に示すように、本実施形態の表示素子は、変換層2が光吸収層としての機能を有しており、そのため基板4と電極3bとの間に光吸収層を有していない点が、上記の実施形態1の表示素子と異なる。
【0094】
本実施形態の表示素子は、可視光を吸収する変換層2を備えている。このような変換層2は、例えば、黒色のCNTから形成することができる。なお、変換層2が着色している場合、あるいは、変換層2が透明であっても、その中に顔料や着色樹脂が混入されている場合は、金属拡散反射状態と着色状態との間でのスイッチングが可能になる。
【0095】
光吸収性を有する変換層2は、水素貯蔵材料として機能するカリウム−黒鉛層間化合物および導電性高分子材料P1(電子、正孔両電荷を輸送できる材料)を、バインダー樹脂として機能するアクリル系樹脂と混合したもの(ブレンド樹脂)から形成することもできる。ブレンド樹脂は溶液化できため、変換層2は、スピンコートによって形成され得る。変換層2の厚さは、例えば500nm程度に設定され得る。なお、変換層2が光を充分に吸収できない場合には、変換層2にさらに黒色樹脂を加えてもよい。
【0096】
調光層1は、例えば実施形態1で用いた調光層1と同様である。すなわち厚さが50nm程度のイットリウム膜であってもよいし、イットリウム粒子などの調光材料の粒子を有する膜であってもよい。また、表面に微小な凹部および/または凸部を有していてもよい。
【0097】
調光層1と変換層2との間における電荷やイオンのやりとりを行うため、調光層1と変換層2との間に導電性高分子P1の膜を配置することが好ましい。電荷移動性をもつ高分子膜に加えて、電解質材料を用いて形成された層を配置しても良い。あるいは、電荷移動性をもつ高分子材料と電解質材料とを含む層を配置しても良い。電解質材料を含む層(電解質膜)を配置すると、電解質膜を介して水素イオンが移動するので、特性を向上させることも可能である。導電性高分子P1は、導電性を付与するためのイオンがドーピングされているため、電解質膜としての機能も併せ持っている。なお、調光材料の粒子を含む調光層1の場合には、バインダー樹脂を上記高分子膜または電解質膜として機能させることもできる。
【0098】
電極3aは、実施形態1と同様に透明な電極であるが、電極3bおよび基板4は透明である必要はない。
【0099】
本実施形態の表示素子に対して、変換層2が正極側、調光層1が負極側になるように電極3a、3bに電圧を印加すると、図8(a)〜(c)に示すように、表示素子の光入射面側が金属(拡散)反射状態から黒(光吸収)状態に変化する。
【0100】
調光層1が調光材料の膜である場合には、図8(a)に示すように、初期状態で金属反射を示していた表示素子の光入射面側が、電圧の印加により、徐々に黒(光吸収)状態に変化してゆく。これは、調光層1が透明になるに連れて、黒色の変換層2が視認されるためである。
【0101】
調光層1は、図8(a)および(b)に示すように、金属反射状態において、光を拡散反射することが好ましい。図8(b)に示すように、調光層1の表面に微小な凸部があれば、初期状態で金属拡散反射を示していた表示素子の光入射面側が、電圧の印加により、徐々に黒(光吸収)状態に変化してゆく。また、図8(c)に示すように、調光層1が調光材料の粒子(調光微粒子)を含む場合には、初期状態で金属拡散反射を示していた表示素子の光入射面側が、電圧の印加により、徐々に黒(光吸収)状態に変化してゆく。これは、調光層1に含まれる調光微粒子が透明になるに連れて、黒色の変換層2が視認されるようになるためである。
【0102】
図8(a)〜(c)の何れの場合でも、電源を切ってもこの状態は保持される。また、電極3aと電極3bとの間をショートさせ、あるいは電極3a、3bに対して極性を反転させた電圧を印加すると、表示素子の光入射側面が金属(拡散)光沢を示すように変化する。
【0103】
なお、図8(b)および(c)に示すような、金属反射状態において光を拡散反射する調光層1を含む表示素子は、明るく良好な白が表示できる。このような表示素子は白黒表示素子であってもよい。図9は、本実施形態の白黒表示素子を示す断面図である。図9に示すように、白黒表示素子は、基本的な構成は図7に示す構成と同様であるが、カラーフィルタ6を有していない点で異なる。
【0104】
本実施形態によれば、光吸収層を別個に設ける必要がないので、製造プロセスをさらに簡易にできる。また、実施形態1の表示素子では、表示素子に入射する光は、光吸収状態において、調光層1、変換層2および電極3層を通過して光吸収層5に吸収される。これに対し、本実施形態の表示素子では、表示素子に入射する光は、光吸収状態において、調光層1のみを通過して変換層2に吸収されるので、層の界面などで生じる反射光も低減され、黒表示の品位を向上できる。そのため、表示のコントラスト比が高くなる。
【0105】
(実施形態3)
次に、図10を参照しながら、本発明による表示素子の第3の実施形態を説明する。本実施形態の表示素子は、実施形態1の表示素子と同様の構成を有するが、以下の点で異なっている。実施形態1では、電極3a上にカラーフィルタ6を有しているが、本実施形態では、変換層2がカラーフィルタの機能を有しており、カラーフィルタを電極3a上に設ける必要がない。
【0106】
図10に示す構成では、基板4に近い側に調光層1が設けられ、その上に変換層2が形成されているが、基板4に近い側に変換層2を配置し、その上に調光層1を形成してもよい。また、基板4がガラス基板などの透明な基板であれば、光吸収層5を基板4の背面に設けてもよい。
【0107】
カラーフィルタとして機能できる変換層2は、例えば以下のように形成される。実施形態1の透明な変換層1に用いた材料と同じ材料に、RGBのそれぞれの着色顔料を混入することにより、RGBのそれぞれの分散溶液を用意する。これらの分散溶液を、インクジェット法により、調光層1上に画素のパターンに対応するように塗布する。これにより、変換層2が形成される。塗布方法は、インクジェット法の他に、スクリーン印刷法やロール印刷法などの公知の他の印刷方法であってもよい。
【0108】
本実施形態の表示素子は、実施形態1と同様の表示特性を有する。本実施形態によれば、カラーフィルタを別個に設ける必要がないので、製造プロセスを簡易にできる。
【0109】
(実施形態4)
次に、図11を参照しながら、本発明による表示素子の第4の実施形態を説明する。本実施形態の表示素子における調光層1は、以下に説明するように、前述の他の実施形態の表示素子における調光層1と異なっている。そのほかの構成は、実施形態1と同様である。本実施形態の表示素子は、図3に示す表示素子ように光吸収層5を設けたり、図7に示す表示素子のように光吸収性を有する変換層2を用いたりすることなく、金属拡散反射(白色)状態と光吸収(黒または着色)状態の間でスイッチングを行うことが可能である。
【0110】
図12は、本実施形態の表示素子における調光層1および変換層2を示す断面図である。図12に示すように、調光層1は、図5(c)の調光層1に含まれる調光微粒子と同様の調光微粒子(イットリウム微粒子など)11を含んでいる。調光微粒子11は、例えばカーボン系の黒色粒子などの着色粒子10に吸着している。調光微粒子11を着色粒子10の表面に確実に吸着させるために、調光粒子11の粒径が着色粒子10の粒径よりも小さいことが好ましい。なお、調光微粒子の好ましい粒径は、図5(c)を参照して説明した好ましい粒径と同じである。
【0111】
このような調光層1は、例えば以下のようにして形成できる。バインダー樹脂の溶液中で、粒径5μmの黒色粒子と、それより小さい粒径(例えば1μm)を有する調光微粒子とを混合することにより、黒色粒子の表面を覆うように調光微粒子を吸着させる。得られた溶液に導電性高分子材料P2をさらにブレンドした後、スピンコート法により電極3bの上に塗布する。得られた調光層1の厚さは、例えば10μmである。黒色粒子が分散されているため、調光層1の厚さは他の実施形態の調光層1の厚さよりも大きい。しかし、カーボン系黒色微粒子および調光微粒子は何れも高い導電性を示すので、調光層1全体は十分な導電性を有する。
【0112】
本実施形態の表示素子に対して、変換層2が正極側、調光層1が負極側になるように電極3a、3bに電圧を印加すると、図12に示すように、初期状態で金属拡散反射を示していた表示素子の光入射面側が徐々に黒状態に変化してゆく。これは、黒色粒子に吸着している調光微粒子が透明になるに連れて、黒色粒子が視認されるようになるためである。電源を切ってもこの状態は保持される。また、電極3aと電極3bとの間をショートさせ、あるいは電極3a、3bに対して極性を反転させた電圧を印加すると、表示素子の光入射側面が金属拡散光沢を示すように変化する。
【0113】
本実施形態では、変換層2は透明であったり、黒色であったりする必要はないので、変換層2に用いる材料の選択の余地が大きい。また、電極3bは透明である必要はないので、金属電極であってもよい。
【0114】
本実施形態の表示素子は、実施形態1の表示素子と同様の表示特性を有する。
【0115】
本実施形態の表示素子によれば、調光層1に含まれる調光微粒子が金属反射状態にあるとき、反射光は散乱して白色として認識されるため、調光層1の表面は白色に見える。一方、調光微粒子が透明な状態にあるときには、黒色粒子などの着色粒子によって光が吸収されるため、調光層1の表面は黒または他の色に見える。このように、調光層1自体が、金属拡散状態と光吸収(着色)状態との間を遷移する。従って、本実施形態では、光吸収層などの光吸収性を有する層を別個に設ける必要がないので、製造プロセスを簡易にできる。
【0116】
(実施形態5)
図13を参照しながら、本発明による表示素子の第5の実施形態を説明する。
【0117】
本実施形態の表示素子は、実施形態4と同様の構成を有するが、図13に示すように、変換層2がカラーフィルタの機能を有する点が異なる。
【0118】
調光層1は、実施形態4における調光層1と同様である。すなわち、調光微粒子を含んでおり、調光微粒子は黒色粒子に吸着している。調光層1は、実施形態4における調光層1の形成方法と同様の方法で形成できる。
【0119】
カラーフィルタの機能を有する変換層2は、例えば実施形態3における変換層2と同様である。変換層2は、調光層1の上に、実施形態3における変換層2の形成方法と同様の方法で形成できる。
【0120】
本実施形態によれば、調光層1が光吸収性を有するので、光吸収層などの光吸収性を有する層を別個に設ける必要がなく、また、変換層2がカラーフィルタとしても機能するので、カラーフィルタを別個に設ける必要がないので、製造プロセスを大幅に簡易化できる。さらに、実施形態1の表示素子と比べて、入射光や反射光が通過する層の数が低減されるので、白状態における光の吸収や黒状態における光の反射が低減され、その結果、表示のコントラスト比が向上する。
【0121】
(実施形態6)
図14を参照しながら、本発明による表示素子の第6の実施形態を説明する。
【0122】
本実施形態の表示素子は、実施形態4と同様の構成を有するが、図14に示すように、基板4の背面にバックライト8を設置している点が異なる。本実施形態の表示素子は、バックライト8をON/OFFすることにより、透過型表示素子⇔反射型表示素子の切り替えを行うことができる。
【0123】
変換層2は透明であり、例えば実施形態1における変換層2と同様である。変換層2は、電極3bの上に、実施形態1における変換層2の形成方法と同様の方法で形成できる。
【0124】
本実施形態の表示素子における調光層1は、実施形態4における調光層1と同様である。すなわち、調光微粒子を含んでおり、調光微粒子は黒色粒子に吸着している。調光層1は、変換層2の上に、実施形態4における調光層1の形成方法と同様の方法で形成できる。
【0125】
基板4に対する変換層2および調光層1の積層順序は、図示するものに限定されず、基板4に近い側に調光層1を配置し、その上に変換層2を形成してもよい。この場合は、変換層2がカラーフィルタの機能を有することもできる。そのような変換層2は、例えば実施形態5における変換層2と同様である。このような構成にすると、カラーフィルタ6を無くすことができるので有利である。
【0126】
本実施形態では、電極3a、3bおよび基板4は透明である。例えば、電極3a、3bはITO電極であり、基板4はガラス基板である。
【0127】
バックライト8は、液晶表示装置などに用いられる公知のバックライトであってよい。
【0128】
本実施形態の表示素子は、外光があるときは反射型表示素子として用いることができる。すなわち、基板4の上方から充分な光が入射してくるときは、実施形態4と同様に反射光による表示を行うことができる。一方、外光が少なく、反射型表示素子として用いることが困難なときは、バックライト8を点灯することにより、透過型表示素子として用いることができる。バックライト8から調光層1に入射する光は、画素の調光層1が光吸収(黒)状態であれば、調光層1に吸収されるので、その画素は黒を表示する。画素の調光層1が金属拡散反射状態に変化すると、バックライト8から調光層1に入射する光は調光層1の調光微粒子によって散乱される。散乱された光は、基板4の上方から取り出すことができる。そのため、その画素は白を表示する。
【0129】
このように、本実施形態によれば、外光の環境に応じて、透過型、反射型の何れの表示素子としても用いることができるので、マルチシーンで視認性のよい表示素子を実現できる。
【0130】
(実施形態7)
図15(a)および(b)を参照しながら、本発明による表示素子の第7の実施形態を説明する。本実施形態の表示素子は、実施形態6と同様の構成を有するが、以下の点が異なる。実施形態6では、調光層1として、着色粒子に吸着した調光粒子を含む膜を用いているが、本実施形態では、調光材料の膜を調光層1として用いている。本実施形態の表示素子は、バックライト8をON/OFFすることにより、透過型表示素子⇔反射型表示素子の切り替えを行うことができる。
【0131】
図15(a)および(b)に示す表示素子における調光層1は、金属反射状態において光をミラー反射するものであればよい。例えば図1(a)に示すようなイットリウム膜などの金属膜である。この金属膜は典型的には略平坦である。
【0132】
本実施形態の表示素子は、外光があるときは、図15(a)に示すように、反射型表示素子として用いることができる。すなわち、基板4の上方から充分な光が入射してくるときは、実施形態6と同様に反射光による表示を行うことができる。画素の調光層1が光を透過する状態であれば、入射光は調光層1や他の層を通過して、透明な基板4の背面にある消灯中のバックライト8に吸収されるので、その画素は黒を表示する。画素の調光層1が光を反射する状態であれば、入射光は調光層1で反射されるので、その画素は白を表示する。一方、外光が少なく、反射型表示素子として用いることが困難なときは、バックライト8を点灯することにより、図15(b)に示すような透過型表示素子として用いることができる。バックライト8から調光層1に入射する光は、画素の調光層1がミラー反射状態であれば、調光層1で反射されて、バックライト8に戻される。そのため、その画素は黒を表示する。画素の調光層1が光を透過する状態に変化すると、バックライト8から調光層1に入射する光を、そのまま基板4の上方から取り出すことができる。そのため、その画素の表示は白になる。
【0133】
本実施形態では、上記のように、表示しようとする画素および非表示の画素のそれぞれの調光層1の状態は、反射型表示素子として用いる場合と透過型表示素子として用いる場合と異なる。従って、反射型表示素子⇔透過型表示素子の切り替えに伴って、各画素の調光層1の状態を反転させることが好ましい。
【0134】
なお、基板に対する変換層2および調光層1の積層順序は、図示する例と逆転していてもよい。
【0135】
このように、本実施形態によれば、外光の環境に応じて、透過型、反射型の何れの表示素子としても用いることができるので、マルチシーンで視認性のよい表示素子を実現できる。
【0136】
(実施形態8)
図16を参照しながら、本発明による表示素子の第7の実施形態を説明する。本実施形態の表示素子が他の実施形態の表示素子と異なる点は、図16に示すように、調光層1それ自体が電極の一方を兼ねている点である。
【0137】
調光層1がイットリウム膜などの金属膜である場合、調光層1は電極として機能し得る。また、調光層1が調光材料の粒子(調光微粒子)を含む膜であっても、調光層1のバインダー樹脂が導電性材料を含んでいれば、調光層1を電極として用いることができる。調光層1を変換層2の基板4側に配置すると、調光層1を電極3bとして機能させることができる。また、図13に示すように、調光層1を変換層2の上に配置すると、調光層1を電極3aとして機能させることができる。
【0138】
調光層1を電極として機能させるためには、調光材料から形成された膜をパターニングする必要がある。調光材料として、実施形態1で用いた調光材料と同様の材料を用いることができる。本実施形態では、調光層1は以下のように形成する。まず、変換層2の上に、スパッタ法などにより金属膜を形成する。この金属膜を、マスク蒸着によるパターニング、ウェット・ドライパターニングプロセスなどによりパターニングする。これにより、調光層1が得られる。調光層1は、電極として機能するために十分な導電性を有する。
【0139】
代わりに、調光微粒子を含む調光層1を形成してもよい。この場合は、バインダー樹脂、調光微粒子、導電性材料などの必要な材料を含む溶液を用意し、この溶液を公知の印刷法を用いて変換層2の上に塗布することによって、パターニングされた調光層1を形成できる。
【0140】
本実施形態では、変換層2は、実施形態2における変換層2と同様の光吸収性を有する変換層2を用いている。代わりに、実施形態1に置ける変換層2と同様の透明な変換層2を用いてもよい。その場合は、調光層1と基板4との間のどこかに光吸収層5を配置するとよい。
【0141】
本実施形態の表示素子は、図16に示す構成の表示素子に限らない。この他に、前述した他の実施形態における表示素子に対し、調光層1を電極の一方として機能させてもよい。例えば、図14に示す透過型表示素子において、電極3aを設けずに、調光層1を電極として機能させることができる(図17)。
【0142】
本実施形態によれば、調光層1が電極を兼ねることにより、表示素子の製造工程数を低減することができる。
【0143】
【発明の効果】
本発明によれば、金属反射状態と透過状態との間で遷移が可能な材料を用いて表示素子を提供することができる。本発明の表示素子は、液晶表示素子のように偏光板を有していないので、高明度で高コントラスト比の表示が可能である。
【0144】
本発明の表示素子は、アクティブマトリクス駆動または単純マトリクス駆動の各種表示装置(フルカラー、白黒表示装置を含む)に適用できる。また、本発明の表示素子は、反射型、透過型、および投射型の何れの表示装置にも適用できる。特に、本発明の表示素子を用いると、反射型表示装置としても透過型表示装置としても機能できる表示装置を構成することができるので有利である。また、本発明の表示素子は高いメモリ性を有するので、電子ブックや電子ペーパーに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(c)は、本発明による表示素子の調光原理を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の表示素子の動作原理を示す図である。
【図3】本発明による表示素子の第1の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明による表示素子の第1の実施形態を示す平面図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明による表示素子の第1の実施形態における調光層および変換層を示す断面図である。
【図6】調光層および変化層の水素平衡圧−組成等温線(PTC特性曲線)を示すグラフである。
【図7】本発明による表示素子の第2の実施形態を示す断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明による表示素子の第2の実施形態における調光層および変換層を示す断面図である。
【図9】本発明による表示素子の第2の実施形態を示す断面図である。
【図10】本発明による表示素子の第3の実施形態を示す断面図である。
【図11】本発明による表示素子の第4の実施形態を示す断面図である。
【図12】本発明による表示素子の第4の実施形態における調光層および変換層を示す断面図である。
【図13】本発明による表示素子の第5の実施形態を示す断面図である。
【図14】本発明による表示素子の第6の実施形態を示す断面図である。
【図15】(a)および(b)は、本発明による表示素子の第7の実施形態を示す断面図である。
【図16】本発明による表示素子の第8の実施形態を示す断面図である。
【図17】本発明による表示素子の第8の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
M1 調光層
M2 変換層
m1 調光微粒子
m2 着色粒子
1 調光層
2 変換層
3a 上層の電極
3b 下層の電極
4 基板
5 吸収層
6 カラーフィルタ
8 バックライト
10 着色粒子
11 調光微粒子
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光の反射率や透過率を制御できる表示素子に関している。
【0002】
【従来の技術】
イットリウム(Y)やランタン(La)などの金属薄膜が水素と結合することにより、可視光を透過し得る水素化物に変化する現象が報告されている(特許文献1、非特許文献1)。この現象は可逆的であるため、雰囲気中の水素圧力を調節することにより、薄膜を金属光沢状態と透明状態との間で変化させることが可能である。
【0003】
上記薄膜の光学特性を変化させ、金属光沢を示す状態と透明な状態とを切り替えることができれば、光の反射率/透過率を自由に調節できる調光ミラーを実現することができる。調光ミラーを例えば建物や自動車の窓ガラスとして使用すれば、太陽光を必要に応じて遮断(反射)し、または透過させることができる。
【0004】
このような調光ミラーは、例えば、イットリウム薄膜の上にパラジウム層を形成した構造を有している。パラジウムは、イットリウム薄膜の表面酸化を防止する機能と、雰囲気中の水素分子を効率的に水素原子に変化させ、イットリウムに供給する機能とを有している。イットリウムが水素原子と化学的に結合すると、YH2またはYH3が形成される。YH2は金属であるが、YH3は半導体であり、その禁制帯幅が可視光のエネルギよりも大きいため、透明である。
【0005】
また、室温においてもYH2⇔YH3の状態変化が迅速(数秒程度)で生じるため、雰囲気中の水素含有量に応じて反射(金属光沢)状態と透明状態との間でスイッチングを行うことが可能である。
【0006】
このように金属光沢⇔透明の遷移が可能な他の材料として、例えば、Mg2Ni薄膜が非特許文献2に開示されている。
【0007】
【特許文献1】
米国特許第5635729号明細書
【非特許文献1】
Huibert、他6名、ネイチャー(Nature)、(英国)、1996年3月、第380巻、p.231−234
【非特許文献2】
応用物理学会講演会2001春31−a−ZS−14
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術によれば、薄膜の光学的状態を変化させるには、薄膜を水素雰囲気へ暴露することにより、薄膜に含まれる金属光沢⇔透明の遷移が可能な材料を水素化することが必要である。具体的には、薄膜と接する雰囲気ガス中の水素量(水素分圧)を制御することが必要になる。このような水素量の制御は薄膜の全面で行われるので、薄膜全面の光学的状態が変化する。
【0009】
このため、上記従来技術では、調光ミラーなどの薄膜全面の光学的状態を変化させる用途に適用することを前提としており、表示装置に適用することは提案されていない。表示装置に適用するには、薄膜を複数の画素に区画化し、画素ごとに光学的状態を制御する必要がある。しかし、画素ごとに雰囲気ガスの水素量を制御することは困難であり、実用的ではない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属反射状態と透過状態との間で遷移が可能な材料を用いて表示素子を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の表示素子は、複数の画素を含む表示素子であって、前記複数の画素のそれぞれは、特定元素の濃度に応じて光学的特性が変化する第1材料を含む第1層と、前記特定元素を含有し得る第2材料を含む第2層であって、前記第2材料は電圧を印加されると前記特定元素を放出または吸収する第2層と、前記第2層に前記電圧を印加するための一対の電極を備え、前記電圧に応答して前記第1層の光反射率が変化することを特徴とし、そのことにより前記目的が達成される。
【0012】
ある好ましい実施形態において、前記第1材料は、前記特定元素の濃度に応じて光反射状態と光透過状態との間を遷移し得る。
【0013】
ある好ましい実施形態において、前記第1材料が光反射状態のとき、前記第1層は光を拡散反射する。
【0014】
ある好ましい実施形態において、前記第1材料が粒子である。
【0015】
ある好ましい実施形態において、前記第1層の上面または下面の少なくとも一方は凹凸を有している。
【0016】
ある好ましい実施形態において、前記第1層は着色粒子をさらに含んでおり、前記第1材料は前記着色粒子に吸着している。
【0017】
ある好ましい実施形態において、前記第1層は、光を拡散反射する状態と光を透過する状態との間を遷移し、前記第2層は、光透過性を有しており、前記第1層および前記第2層を透過した光を吸収する光吸収層を更に備えている。
【0018】
ある好ましい実施形態において、前記第1層は、光を拡散反射する状態と光を透過する状態との間を遷移し、前記第2層は可視光吸収性を有しており、前記第2層は、前記第1層の光入射面とは反対側に配置されている。
【0019】
前記第2層は、前記第1層の光入射側に配置され、カラーフィルタとして機能してもよい。
【0020】
前記特定元素は水素であり、前記第2層は、水素貯蔵材料を含んでいてもよい。
【0021】
前記第2材料は、電子の授受により、前記特定元素の放出または吸収を行うことが好ましい。
【0022】
前記第1層は導電性を有しており、前記一対の電極の一方として機能してもよい。
【0023】
本発明の表示素子は反射型表示素子であってもよい。
【0024】
本発明の表示素子は、バックライトをさらに有することもできる。
【0025】
前記第1層は、光をミラー反射する状態と光を透過する状態との間を遷移し、バックライトをさらに有してもよい。
【0026】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の表示素子において、表示に利用する調光原理を説明する。
【0027】
図1(a)〜(c)は、本発明の表示素子の調光原理を説明するための模式的な断面図である。本発明の表示素子は複数の画素を有しており、各画素は調光層M1および変換層M2の積層構造を備えている。画素ごとに調光層M1の光反射率を変化させることにより、表示を行う。
【0028】
図1(a)に示す調光層M1は、特定元素の濃度に応じて光学的特性が変化する調光材料を含んでいる。調光材料の好ましい例は、前述したY、La、Mg2Ni合金であり、調光層1は、例えばこれらの調光材料の薄膜である。Y、La、Mg2Ni合金などの材料は、水素濃度に応じて金属−半導体(または絶縁体)状態間の遷移を行う。
【0029】
変換層M2は、水素などの特定元素を含有し得る材料(本明細書では「変換材料」と称する。)を含んでいる。変換材料は、電荷(電子や正孔)の注入または光照射などの外部刺激に応じて、上記の特定元素(例えば水素)を放出または吸収する。
【0030】
図1(a)に示されている調光層M1および変換層M2は、いずれも、水素を吸収/放出する能力を有するとともに、電荷(電子または正孔)およびイオンを移動させることができる電気伝導性を有している。
【0031】
以下、電荷の注入/放出により、水素イオンが変換層M2から調光層M1へ、あるいは調光層M1から変換層M2へ移動するメカニズムを説明する。このメカニズムの特徴点は、調光層M1の光学的特性を変化させる特定元素(水素)のイオンを、電気化学的な反応によってではなく、電荷の移動を媒介として移動させる点にある。
【0032】
図2(a)は、図1の構造に含まれる調光層M1および変換層M2の初期状態を示している。この初期状態では、水素を実質的に貯蔵していない調光層M1と、あらかじめ水素を貯蔵した変換層M2との間で平衡状態が形成されている。調光層M1には充分な濃度の水素が存在していないため、調光層M1は金属状態にあり、金属光沢を示している。
【0033】
次に、図2(b)に示すように、調光層M1の側に負電位を与えるとともに、変換層M2の側に正電位を与える。このとき、調光層M1には負の電極(不図示)から電子が注入され、調光層M1は電子リッチな状態となる。一方、変換層M2には正孔が注入される(電子が引き抜かれる)。変換層M2に注入された正孔は、変換層M2の内部を調光層M1に向かって移動してゆく。このような正孔の移動過程で、更に継続して変換層M2に正孔が注入されると、変換層M2は正孔リッチな状態となる。このため、変換層M2では、水素イオンを放出しやすい状態となる一方、調光層M1では、変換層M2から水素イオンを受け取り、保持する量が増える。
【0034】
このため、調光層M1と変換層M2との間で成立していた水素の平衡状態が崩れ、調光層M1が水素をより多く保持しやすい状態となり、変換層M2から放出された水素イオンが調光層M1に移動することになる。こうして、図2(c)に示すように、新しい平衡状態が形成される。この状態では、調光層M1に移動した水素と調光材料とが結合して、調光層M1が透明になる。
【0035】
以上の反応を記述すると、M1+M2(H)→M1(H)+M2となる。ここで、M1(H)およびM2(H)は、それぞれ、調光層M1に水素が保持されている状態、および変換層M2に水素が保持されている状態を示している。
【0036】
以上の説明から明らかなように、調光層M1と変換層M2との間では水素イオンの受け渡しが行なわれるだけで、他のイオンの関与する反応は生じていない。また、図2(c)の状態で印加電圧の極性を反転すると、逆方向に反応が進行するため、図2(a)に示す元の平衡状態に復帰する。
【0037】
図1(a)に示す構造の代わりに、図1(b)に示す調光層M1および変換層M2を含む積層構造を有していてもよい。図1(b)の調光層M1は、特定元素の濃度に応じて光学的特性が変化する調光材料の粒子m1(以下、「調光粒子」ということがある)を含んでいる。調光材料の好ましい例は、前述したY、La、Mg2Ni合金である。調光層M1は、例えばバインダー樹脂を含んでおり、上記調光粒子m1はバインダー樹脂に分散している。また、調光層M1は、変換層M2から水素イオンもしくは水素を運ぶための電解質性の材料(導電性高分子など)も含んでいる。変換層M2は、図1(a)を参照して説明した変換層M2と実質的に同様である。
【0038】
図1(b)に示す構造を用いると、調光層M1および変換層M2の初期状態(図2(a))では、調光層M1には充分な濃度の水素が存在していないため、調光層M1に分散している各調光粒子m1は金属状態にあり、光をミラー反射する。このように各調光粒子m1が調光層M1に入射する光をランダムな方向に反射するので、調光層M1全体としては光を拡散反射する。これにより、白色の反射光が得られる。水素イオンが調光層M1に移動して新しい平衡状態が形成されると(図2(c))、調光層M1に移動した水素と調光粒子m1とが結合して、各調光粒子m1が透明になる。
【0039】
あるいは、図1(c)に示す調光層M1および変換層M2を含む積層構造を用いることもできる。図1(c)の調光層M1は、黒色粒子などの着色粒子m2をさらに含んでおり、調光粒子m1が着色粒子m2に吸着している点で図1(b)の調光層M1と異なっている。図1(c)の変換層M2は、図1(a)を参照して説明した変換層M2と実質的に同様である。
【0040】
図1(b)に示す構造を用いると、初期状態(図2(a))では、図1(b)の構造と同様に、着色粒子m2に吸着した各調光粒子m1は金属状態にあり、光をミラー反射する。このように各調光粒子m1が調光層M1に入射する光をランダムな方向に反射するので、調光層M1全体としては光を拡散反射する。これにより、白色の反射光が得られる。水素イオンが調光層M1に移動して新しい平衡状態が形成されると(図2(c))、調光層M1に移動した水素と調光粒子m1とが結合して、各調光粒子m1が透明になる。その結果、調光層M1は例えば黒色などの着色粒子m2の色を示す。このように、調光層M1は拡散反射状態と着色状態(吸収状態ともいう)とを遷移するので、この構造では、変換層M2が透明である必要がない。
【0041】
本発明では、図2(a)〜(c)に示すような電荷の注入により水素イオンが調光層M1と変換層M2との間を移動するメカニズムを利用しているが、本発明はこれに限定されない。本発明の表示素子は、例えば電気化学的な反応により、水素イオンが変換層M2と調光層M1との間を移動するメカニズムを利用することもできる。この場合は、調光層M1と変換層M2との間に固体電解質の層をさらに設けてもよいし、図1(b)または(c)の調光層M1に含まれるバインダー樹脂を固体電解質として用いてもよい。あるいは、本発明の表示素子は、変換層M2を備えていなくても良い。この場合は、調光層M1がさらに変換材料を含んでおり、調光層M1内部で、水素イオンを調光粒子m1と変換材料との間で移動させてもよい。
【0042】
何れのメカニズムを利用する場合でも、変換材料に印加される電圧に応じて、調光層M1の水素イオンの濃度が変化するので、調光層M1の光学的特性は、図1(a)〜(c)に示すように変化する。
【0043】
なお、上記のうちでは、電荷の注入により水素イオンを移動させるメカニズムを利用することが好ましい。電荷(電子や正孔)の移動によって水素の平衡状態を変化させることにより水素を駆動する場合は、水素イオン以外の他のイオンを反応に関与させる必要がない。このため、複数種のイオンが関与する電気化学的な反応によるメカニズムを利用する場合と比べて応答速度が高いという利点がある。また、電気化学的な反応が生じないため、正極側で水素ガスが発生する可能性も低く、電子素子としての安定した動作が可能になる。
【0044】
このように、本発明の表示素子は、変換材料を含む変換層M2に電圧を印加することにより、調光層M1の水素含有量を変化させることができる。従って、本発明の表示素子は、雰囲気の水素分圧を制御する必要がある従来技術の調光素子と比べて実用的である。また、従来技術では、水素分圧の制御は調光層M1の全面で行われるので、調光層M1の光学的特性は調光層M1全面で変化する。これに対して、本発明では、上記メカニズムを利用するので、調光層M1の画素ごとに印加電圧を制御することにより、画素ごとに光学的特性を変化させることができる。
【0045】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0046】
(実施形態1)
まず、図を参照しながら、本発明による表示素子の実施形態を説明する。図3は、本実施形態の表示素子における一画素の模式的な断面図を示し、図4は、本実施形態の表示素子の平面図を示す。ここでは、反射型フルカラー表示素子を例に説明するが、本発明はこれに限定されない。例えば、白黒表示素子でもよいし、投射型表示素子でもよい。
【0047】
本実施形態の表示素子は、基板1の上に順次積層された光吸収層5、電極3b、変換層2、調光層1、電極3aおよびカラーフィルタ6を有している。図4に示すように、電極3bは平行に延びる複数のパターンを有し、電極3aは、電極3bと垂直な方向に延びる複数のパターンを有している。一対の電極3a、3bには適切な電圧が印加され得るが、適宜、電極3aと電極3bとを単純に短絡させることも可能である。カラーフィルタ6は、電極3aと略平行に伸びる複数のパターンを有している。これらのパターンのうち、典型的には各画素につきR(赤)、G(緑)、B(青)の3つのパターンが形成されている。
【0048】
なお、基板4に対する変換層2および調光層1の積層順序は、図示されているものに限定されず、基板4に近い側に変換層2を配置し、その上に調光層1を形成してもよい。また、基板4がガラス基板などの透明な基板であれば、光吸収層5を基板4の背面に設けてもよい。また、光吸収層5が導電性を有する場合、光吸収層5は電極3aと電極3bとの間のどこに設けてもよい。あるいは、導電性を有する光吸収層5を、電極3bと一体的に、または電極3bの代わりに用いることも可能である。
【0049】
本実施形態における調光層1は、水素濃度に応じて光学的特性が変化する調光材料(例えばイットリウム)を含んでいる。本実施形態では、調光層1として、図1(a)に示すように調光材料を用いて形成された膜(例えばイットリウム膜)である。調光層1は1層でもよいし、多層構造を有していてもよい。
【0050】
変換層2は、水素を含有し得る変換材料を含んでいる。この変換材料は電極3aとの間で電子の授受を行うことにより、水素のイオン(H+)を放出/吸収を行うことができる。
【0051】
図示する例では、マトリクス状に形成された電極3aおよび3bによって、任意の画素の変換層2に電圧を印加できる。ある画素において、電極3aに正の電位を与え、電極3bに負の電位を与えると、あらかじめ充分な量の水素を含有している変換層2の変換材料から水素イオンが放出される。放出された水素イオンは、積層構造中に形成された電界中を移動し、調光層1に達した後、調光材料にドープされる。このような水素の放出および移動のメカニズムは、前述したとおりである。調光層1における調光材料は、水素と結合することにより、水素金属化合物を形成する。この結果、当初は金属状態にあった調光材料は、可視光を透過する半導体または絶縁体に変化する。
【0052】
上述したような調光層1および変換層2の状態の変化を、図5(a)に示す。調光層1の調光材料が金属状態のとき、表示素子に入射する光は調光層1で反射され、カラーフィルタ6を透過する。従って、カラーフィルタ6を透過した光が視認される。調光材料が半導体または絶縁体になると調光層1が透明になるので、表示素子に入射する光は調光層1を透過し、光吸収層5に吸収される。そのため、黒色が視認される。
【0053】
次に、本実施形態の表示素子の製造方法を説明する。
【0054】
まず、基板4を用意する。基板4は、基板4上に形成される積層構造を支持できればよく、ガラス基板、プラスチック基板、金属基板などを用いることができる。基板4は透明である必要はない。
【0055】
基板1の上に光吸収層5を形成する。光吸収層5は、可視光域の全域で光を吸収するもの(黒)であってもよいし、可視光域の一部の光を吸収するもの(他の色)であってもよい。光吸収層5の形成は、例えばカーボンブラック系黒色材料を含む黒色樹脂をスピンコート法で基板1上に塗布することによって行う。
【0056】
この後、光吸収層5の上に電極を形成する。例えば、ITO(Indium Tin Oxide)を用いて、厚さ150nmの膜をスパッタ法で形成する。この膜を、幅が100μm(画素の幅に対応する)の複数のパターンにパターニングする。これらのパターンは互いに略平行であり、隣接するパターンの間隔は10μmとする。
【0057】
電極3b上に、透明な変換層2を形成する。変換層2に含まれる変換材料は、定常状態で水素の原子またはイオンを貯蔵し保持することができ、外部刺激に応じて、水素貯蔵量(保持量)を変化させる。このような水素を貯蔵できる材料としては、LaNi5、MnNi5、CaNi5・TiMn1.5、ZrMn1.5、ZrMn2、TiNi、TiFe、Mg2Niなどの合金を用いることができる。また、カーボンナノチューブ(CNT)やNiOOHを用いることもできる。なお、NiOOHを用いる場合には、電気化学的なメカニズムを利用して、水素を変換層2−調光層1の間で移動させることになるので、例えば変換層2と調光層1との間に電解質層を設けることが好ましい。
【0058】
変換層2は、水素貯蔵材料のほかに電気導電性材料を含んでいてもよい。電気導電性材料が変換層2に含まれていると、調光層1との間で水素イオンのやりとりを迅速に行うことができる。電気伝導性材料としては、液体または固体電解質のようにイオン伝導を行うことが出来る材料、電荷(電子または正孔)を伝導させる導電性高分子や電荷移動錯体を用いることができる。また、変換層2には、上記の水素貯蔵材料や電気伝導性材料以外とは別に必要に応じてバインダー樹脂などの結合材料を加えても良い。
【0059】
電極3a、3bから注入された電荷は、調光層1および変換層2においてそれぞれ電荷のやり取りを行う。一方の電極から注入された電荷が、そのまま他方の電極に移動してしまう場合もあるので、調光層1と変換層2との間に、イオン交換膜などのセパレータの役割を有する層(セパレート層)を配置してもよい。セパレート層は、層内でイオンは移動できるが、電荷が移動し難い材料を用いて形成することが望ましい。そのような材料は、例えばイオン交換体、多孔質絶縁物、イオン導電性高分子材料などである。セパレータ層を設けると、一方の電極から注入された電荷が他方の電極に突き抜けることが抑制される。そのため、調光層1および変換層2において、注入された電荷のうち水素イオンとのやり取りに用いられる電荷の割合が高くなるので、効率よくやり取りを行うことができる。
【0060】
本実施形態では、次のようにして変換層2を形成する。AB5型Mm水素貯蔵合金であるNi合金の超微粒子(分散中心半径10nm)と、導電性高分子材料P1(電子、正孔両電荷を輸送できる材料)、及びバインダー樹脂としてアクリル系樹脂で屈折率がガラスとほぼ同等のものをブレンドしたものを用いる。これらの材料を溶媒に溶解させた溶液を用意し、スピンコート法や印刷法によって塗布することにより、例えば厚さが500nmの変換層2を形成することができる。このような変換層2の形成は、インクジェット法やその他の薄膜堆積技術用いて行っても良い。
【0061】
次いで、調光層1を、蒸着法、スパッタ法などによって形成する。調光層1は、例えば厚さ50nmのイットリウム膜である。
【0062】
この後、電極3aとカラーフィルタ6とを順次形成する。電極3aは透明である。電極3aは、ITOを用いて、電極3bの形成方法と同様の方法で形成できる。ただし、電極3aのパターンは、図4に示すように、電極3bのパターンの延びる方向と略垂直方向に延びるように形成する。パターンの幅および隣接するパターンの間隔は、例えばそれぞれ100μmおよび10μmである。カラーフィルタ6は、例えば公知の材料を用いて、印刷法などの公知の方法で形成する。カラーフィルタ6は、図4に示すように、例えば電極3bのパターンの幅と同じ幅を有する複数のパターンを有する。このようにして、表示素子が得られる。
【0063】
この表示素子の電極3a、3bに電圧を印加することにより、変換層2の内部で電荷およびイオンの授受が行われる結果、前述したメカニズムにより、変換層2と調光層1との間で水素の移動を引き起こすことができる。このため、例えば、初期状態で水素がドープされていない調光層1と、あらかじめ水素を貯蔵した変換層2とを用い、図1に示すような電圧を印加すると、水素イオンが正極側から負極側に移動して、調光層1にドープされる。すなわち、正極側では水素放出反応が進行し、負極側では水素と金属との結合反応が進行して、水素金属化合物が形成される。これに対して、逆方向の電圧を印加すると、逆方向に水素の移動が生じるため、印加電圧の極性を交替することにより、調光層1の光学的状態を金属光沢−透明の間で可逆的に切り替えることができる。
【0064】
変換層2に貯蔵された水素の移動だけを考えると、電極3aと電極3bと積層構造の外部で短絡させてもよい。このような短絡は、二次電池における放電と同様の現象であり、積層構造の内部状態を初期状態に復帰させることができる。
【0065】
変換層2と調光層1が水素を保持する能力を持つため、電圧の印加を行わないとき(外部の回路を開放しているとき)、水素の移動が生じず、調光層1の光学的状態が保持される(調光層のメモリ機能)。このため、水素保持能力に優れた材料を選択すれば、電力を消費することなく調光状態を長期間保持することができる。
【0066】
上記の例とは逆に、あらかじめ水素をドープした調光層1と、水素を貯蔵していない状態の変換層2とを用いてもよい。その場合は、調光層1に正電位を、変換層2に負電位を与えることにより、調光層1から変換層2に水素を移動させ、それによって調光層1における調光材料の光学的状態を変化させても良い。
【0067】
本実施形態では、水素のドーピング量によって調光材料の光反射率/光透過率を制御することができるため、電極に印加する電圧や印加時間(デューティ比など)を調節することにより、調光層1の光反射率/光透過率を制御することができる。水素保持能力に基づくメモリ性を利用すれば、適切な光反射率/光透過率を保持することも容易である。
【0068】
このような水素の貯蔵/放出を適切に制御する際には、水素平衡圧−組成等温線(以下、「PTC特性曲線」と称する。)に注目する必要がある。PTC特性曲線は、図4に示すように、水素の貯蔵量と水素平衡圧力との関係を示す。図6のグラフでは、横軸が水素貯蔵量を示し、縦軸が水素平行圧力を示している。
【0069】
PTC特性曲線が横軸に対して概平行な部分(以下、「プラトー領域」と称する。)では、一定の平衡圧力内のもとで水素の貯蔵量が変化しえるため、水素平衡圧力を一定にした状態で水素の吸収/放出を可逆的に行うことができる。このため、本実施形態の表示素子は、PTC特性曲線のプラトー領域でスイッチング動作を行う。
【0070】
変換層2および調光層1は略同様のPTC特性を示すことが望ましい。より具体的には、図4に示すように、変換層2および調光層1のPTC特性曲線におけるプラトー領域の「水素貯蔵量」の範囲が重なり合い、かつ、「水素平衡圧力」のレベルがほぼ等しいことが望ましい。同等の水素平衡圧力を示すことによって、調光層1および変換層2の間で水素の授受をスムーズに行うことができる。調光層1および変換層2の間で、水素平衡圧力差が大きくなると、それぞれの層で水素の吸放出が生じても、2つの層の間で水素のやりとりを行うことができなくなってしまうからである。
【0071】
また、変換層2におけるPTC特性曲線のプラトー領域の水素貯蔵量範囲(幅)は、調光層1におけるPTC特性曲線のプラトー領域の水素貯蔵量範囲(幅)を含む大きさを有していることが更に好ましい。本実施形態の表示素子では、調光層1の水素ドーピング量によって調光層1の光透過率を制御するため、変換層2における水素貯蔵量の変化の幅が調光層1の状態変化に必要な水素ドーピング量の変化の幅よりも少ないと、調光層1の光学的状態を充分に変化させることができなくなるからである。
【0072】
再び、図3を参照する。図3に示す表示素子は、変換層2が透明である場合、金属反射状態と透明状態との間でスイッチングを行うことができる。透明度の高い状態を形成するには、基板4および電極3a、3bだけではなく、変換層2を可視光域の全範囲で透過率の高い(吸収の無い)材料から形成する必要がある。しかし、水素貯蔵材料などの変換材料は、金属または着色した材料である場合が多く、このような変換材料の層から透明性の高い変換層2を形成することは難しい。このため、変換材料の微粒子を透明な材料と混合することによって変換層2を形成することが好ましい。具体的には、光の波長以下の粒径を持つナノ粒子を変換材料から形成し、このナノ粒子を透明性に優れたバインダー樹脂で結合することができる。このようにして作製される変換層2は、透明性および水素貯蔵能力の両方を発揮することができるだけではなく、変換材料がナノ粒子化することにより、その表面積が増加するため、水素の吸放出効率も上昇することも期待される。変換材料による水素の吸放出効率が上昇すると、調光動作の応答速度が向上するので好ましい。超微粒子状態の変換材料としては、カーボン系材料(CNT、フラーレンなど)やカリウム−黒鉛層間化合物などを用いることもできる。
【0073】
調光層1は、金属反射状態において、入射する光を拡散反射することが好ましい。調光層1が光を拡散反射すると、表示素子は白を良好に表示する。
【0074】
調光層1が金属反射状態において光を拡散反射するためには、例えば調光層1の表面に微細な凸部および/または凹部が存在していてもよいし(図5(b))、調光層1が図1(b)に示すような調光粒子を含んでいてもよい(図5(c))。
【0075】
まず、表面に微細な凸部および/または凹部を有する調光層1について、詳しく説明する。
【0076】
表面に微細な凸部および/または凹部を有する調光層1は、例えば以下のように形成できる。図5(b)に示すように、凸部を有する基板4上に、電極3a、変換層2、調光層1、および電極3bを、この順序で積層する。調光層1は例えばイットリウム膜である。これにより、調光層1の表面に微細な凸部を形成できる。調光層1の表面に微細な凸部が存在していると、調光層1が金属反射状態にあるとき、反射光は散乱して白色として認識されるため、調光層1の表面は白色に見える。一方、調光層1が透明な状態にあるときには、変換層2によって光が吸収されるため、黒または他の色に見える。
【0077】
図5(b)に示す例では、基板の表面が微細な凸部を有しているため、変換層2および調光層1の全体の平坦性が基板の凹凸を反映した形状を有している。言い換えると、調光層1の上面(光反射側の面)だけではなく、底面も下地の凹凸を反映した形状を有している。しかし、下地である変換層2は凹凸構造を有している必要性は無いため、基板表面および変換層2は平坦に形成した上で、調光層1の上面のみに微細な凹部および/また凸部を形成するようにしてもよい。
【0078】
このように、イットリウム膜などの金属膜は平坦であれば光をミラー反射するが、金属膜の表面に凹凸を設けることにより、光を拡散反射する調光層1となる。これにより、白色の表示が可能な表示素子を提供できる。このような表示素子は、図3に示す構成を有するカラー表示素子に限らず、カラーフィルタ6を設けない白黒表示素子であってもよい。白黒表示素子に適用すれば、白表示をより良好に行うことができるので有利である。
【0079】
次に、調光粒子を含む調光層1について詳しく説明する。
【0080】
調光粒子を含む調光層1および変換層2を図5(c)に示す。図5(c)に示す調光層1では、水素濃度に応じて光学的特性が変化する調光材料を用いて形成された微粒子11(例えばイットリウム、ランタン、以下「調光微粒子」という)がバインダー樹脂に分散している。調光層1に含まれる調光微粒子11の平均粒径は例えば1μmである。バインダー樹脂として、例えばガラスとほぼ同等の屈折率を有するアクリル系樹脂を用いる。また、調光層1は、さらに、調光微粒子11と変換層2との間で水素イオンおよび電荷のやりとりを行うための電気導電性材料を含んでいる。電気伝導性材料としては、液体または固体電解質のようにイオン伝導を行うことが出来る材料、電荷(電子または正孔)を伝導させる導電性高分子(例えばP2)や電荷移動錯体を用いることができる。
【0081】
調光粒子を含む調光層1は、例えば以下のように形成する。バインダー樹脂の溶液に上記の調光微粒子11を分散させ、さらに電気導電性材料を溶解させた塗布溶液を用意する。この塗布溶液を、例えばスピンコート法によって変換層2上に塗布することによって形成できる。調光層1の厚さは例えば3μm程度である。調光層1の形成を、インクジェット法やその他の薄膜堆積技術用いて行っても良い。なお、好ましい調光層1の厚さは、1.5μm以上50μm以下である。1.5μm未満であれば、高い反射率を有する調光層1が得られなかったり、調光層1に用いる調光微粒子11の粒径が制限されたりする。一方、50μmを超えると、調光層1の導電性が低くなる可能性がある。
【0082】
調光層1に調光微粒子11が分散していると、図1(b)を参照して説明したように、各調光微粒子11が金属状態のとき、各調光微粒子11は調光層1に入射する光をランダムな方向に反射するので、調光層1全体としては光を拡散反射することができる。
【0083】
調光層1が拡散反射すること他に、調光材料を粒子化することにより以下のメリットが得られる。調光材料からなる薄膜を調光層1として用いる場合と比べて、調光材料の表面積を大きくすることができる。従って、調光材料と水素との反応効率が向上し、より高速なスイッチングが可能になる。また、調光材料の表面積が大きくなるので、調光層1に含まれる調光材料の状態をより確実に制御することができる。その結果、調光層の拡散反射状態と透明状態との反射率の差を拡大できる。
【0084】
調光微粒子11が光を反射するためには、各調光微粒子11は可視光波長よりも大きな粒径を持つことが望ましい。従って、調光微粒子11の粒径は、好ましくは400nm以上である。より好ましくは800nm以上である。800nm以上であれば、可視光が調光微粒子11を透過することをより確実に防止できるので、調光層1の光の反射率を高めることができる。一方、調光粒子m1の粒径は、調光層1の厚さよりも小さいことが好ましい。粒径が調光層1の厚さよりも大きいと、上述したような調光材料を粒子化するメリットが得られない。より好ましくは、調光微粒子11の粒径は30μm以下である。粒径が30μm以下であれば、調光材料と水素との反応効率を充分に高くすることができ、かつ調光層に入射する光を確実に拡散反射させることができる。さらに好ましくは、粒径は3μm以下である。調光材料の粒径が例えば1μmのとき、調光層1の厚さを3μm程度とすることが好ましい。
【0085】
本実施形態の表示素子において、調光層1と変換層2との間における電荷やイオンのやりとりを行うため、調光層1と変換層2との間に導電性高分子P1の膜を配置することが好ましい。電荷移動性をもつ高分子膜に加えて、電解質材料を用いて形成された層を配置しても良い。あるいは、電荷移動性をもつ高分子材料と電解質材料とを含む層を配置しても良い。電解質材料を含む層(電解質膜)を配置すると、水素イオンの移動が電解質膜を介して起こりやすいので、特性を向上させることも可能である。導電性高分子P1は、導電性を付与するためのイオンがドーピングされているため、電解質膜としての機能も併せ持っている。なお、上述したように調光粒子を含む調光層1を用いる場合は、調光層1のバインダー樹脂を上記高分子膜または電解質膜として機能させることもできる。
【0086】
図示する例では、変換層2や調光層1はそれぞれ1層であるが、変換層2および/または調光層1は必要に応じて多層構造を有していてもよい。また、2層の変換層2を、調光層1を挟み込むように配置すると、調光層1の上面および下面で水素の吸放出が行なわれるため、表示素子のスイッチング速度を高くできる。
【0087】
また、図3に示す表示素子は単純マトリクス構造を有しているが、画素ごとにアクティブ素子を有するアクティブマトリクス駆動の表示素子であってもよい。さらに、図3に示す表示素子は、カラーフィルタ6を備えたカラー表示素子であるが、白黒表示素子であってもよい。白黒表示素子は、基本的には図3に示す構成と同様の構成を有するが、カラーフィルタ6を有していない点で異なる。
【0088】
本実施形態の表示素子は、従来の液晶表示素子と比べて、非常に明るい(輝度の高い)白を表示することができる。また、コントラスト比を大きくできる。その理由を以下に説明する。
【0089】
液晶表示素子は、液晶分子の電圧印加に伴う配列変化を可視化するために偏向板を備えている。そのため、液晶素子に入射してくる光のうち、表示に用いられる光の割合は最大でも50%にとどまる。従って、特に白が暗くなり、表示が視認され難いという問題がある。これに対し、本実施形態の表示素子は、偏光板を設ける必要がない。そのため、調光層1で金属反射(または金属拡散反射)された光を、カラーフィルタ6を通して直接見るので、明るい白が表示できる。一方、調光層1が光透過状態のとき、光吸収層5の色を直接見ることになるので、非常に高品位の黒表が得られる。その結果、表示のコントラスト比を大きくできる。
【0090】
本実施形態の表示素子はメモリ性を有するので、いったん書き込んだ情報は電源を切っても保持される。そのため、書き換えの必要なときのみ電圧を印加すればよいので、消費電力を低減できる。
【0091】
さらに、本実施形態の表示素子は、基板上に各層を順次積層するだけで製造できる。従って、液晶表示素子のように、2枚の基板を貼り合わせ、それらの間に液晶材料を注入する工程がないので、製造プロセスが簡易である。また、本実施形態の表示素子は液晶層を有していないので、液晶表示素子よりも薄く、かつ軽くできる。
【0092】
本実施形態の表示素子は、各種表示装置に適用できる。例えば、本実施形態の表示素子は高いメモリ性を有するので、電子ペーパーや電子ブックなどに適用することもできる。
【0093】
(実施形態2)
以下、図7を参照しながら、本発明による表示素子の第2の実施形態を説明する。図7に示すように、本実施形態の表示素子は、変換層2が光吸収層としての機能を有しており、そのため基板4と電極3bとの間に光吸収層を有していない点が、上記の実施形態1の表示素子と異なる。
【0094】
本実施形態の表示素子は、可視光を吸収する変換層2を備えている。このような変換層2は、例えば、黒色のCNTから形成することができる。なお、変換層2が着色している場合、あるいは、変換層2が透明であっても、その中に顔料や着色樹脂が混入されている場合は、金属拡散反射状態と着色状態との間でのスイッチングが可能になる。
【0095】
光吸収性を有する変換層2は、水素貯蔵材料として機能するカリウム−黒鉛層間化合物および導電性高分子材料P1(電子、正孔両電荷を輸送できる材料)を、バインダー樹脂として機能するアクリル系樹脂と混合したもの(ブレンド樹脂)から形成することもできる。ブレンド樹脂は溶液化できため、変換層2は、スピンコートによって形成され得る。変換層2の厚さは、例えば500nm程度に設定され得る。なお、変換層2が光を充分に吸収できない場合には、変換層2にさらに黒色樹脂を加えてもよい。
【0096】
調光層1は、例えば実施形態1で用いた調光層1と同様である。すなわち厚さが50nm程度のイットリウム膜であってもよいし、イットリウム粒子などの調光材料の粒子を有する膜であってもよい。また、表面に微小な凹部および/または凸部を有していてもよい。
【0097】
調光層1と変換層2との間における電荷やイオンのやりとりを行うため、調光層1と変換層2との間に導電性高分子P1の膜を配置することが好ましい。電荷移動性をもつ高分子膜に加えて、電解質材料を用いて形成された層を配置しても良い。あるいは、電荷移動性をもつ高分子材料と電解質材料とを含む層を配置しても良い。電解質材料を含む層(電解質膜)を配置すると、電解質膜を介して水素イオンが移動するので、特性を向上させることも可能である。導電性高分子P1は、導電性を付与するためのイオンがドーピングされているため、電解質膜としての機能も併せ持っている。なお、調光材料の粒子を含む調光層1の場合には、バインダー樹脂を上記高分子膜または電解質膜として機能させることもできる。
【0098】
電極3aは、実施形態1と同様に透明な電極であるが、電極3bおよび基板4は透明である必要はない。
【0099】
本実施形態の表示素子に対して、変換層2が正極側、調光層1が負極側になるように電極3a、3bに電圧を印加すると、図8(a)〜(c)に示すように、表示素子の光入射面側が金属(拡散)反射状態から黒(光吸収)状態に変化する。
【0100】
調光層1が調光材料の膜である場合には、図8(a)に示すように、初期状態で金属反射を示していた表示素子の光入射面側が、電圧の印加により、徐々に黒(光吸収)状態に変化してゆく。これは、調光層1が透明になるに連れて、黒色の変換層2が視認されるためである。
【0101】
調光層1は、図8(a)および(b)に示すように、金属反射状態において、光を拡散反射することが好ましい。図8(b)に示すように、調光層1の表面に微小な凸部があれば、初期状態で金属拡散反射を示していた表示素子の光入射面側が、電圧の印加により、徐々に黒(光吸収)状態に変化してゆく。また、図8(c)に示すように、調光層1が調光材料の粒子(調光微粒子)を含む場合には、初期状態で金属拡散反射を示していた表示素子の光入射面側が、電圧の印加により、徐々に黒(光吸収)状態に変化してゆく。これは、調光層1に含まれる調光微粒子が透明になるに連れて、黒色の変換層2が視認されるようになるためである。
【0102】
図8(a)〜(c)の何れの場合でも、電源を切ってもこの状態は保持される。また、電極3aと電極3bとの間をショートさせ、あるいは電極3a、3bに対して極性を反転させた電圧を印加すると、表示素子の光入射側面が金属(拡散)光沢を示すように変化する。
【0103】
なお、図8(b)および(c)に示すような、金属反射状態において光を拡散反射する調光層1を含む表示素子は、明るく良好な白が表示できる。このような表示素子は白黒表示素子であってもよい。図9は、本実施形態の白黒表示素子を示す断面図である。図9に示すように、白黒表示素子は、基本的な構成は図7に示す構成と同様であるが、カラーフィルタ6を有していない点で異なる。
【0104】
本実施形態によれば、光吸収層を別個に設ける必要がないので、製造プロセスをさらに簡易にできる。また、実施形態1の表示素子では、表示素子に入射する光は、光吸収状態において、調光層1、変換層2および電極3層を通過して光吸収層5に吸収される。これに対し、本実施形態の表示素子では、表示素子に入射する光は、光吸収状態において、調光層1のみを通過して変換層2に吸収されるので、層の界面などで生じる反射光も低減され、黒表示の品位を向上できる。そのため、表示のコントラスト比が高くなる。
【0105】
(実施形態3)
次に、図10を参照しながら、本発明による表示素子の第3の実施形態を説明する。本実施形態の表示素子は、実施形態1の表示素子と同様の構成を有するが、以下の点で異なっている。実施形態1では、電極3a上にカラーフィルタ6を有しているが、本実施形態では、変換層2がカラーフィルタの機能を有しており、カラーフィルタを電極3a上に設ける必要がない。
【0106】
図10に示す構成では、基板4に近い側に調光層1が設けられ、その上に変換層2が形成されているが、基板4に近い側に変換層2を配置し、その上に調光層1を形成してもよい。また、基板4がガラス基板などの透明な基板であれば、光吸収層5を基板4の背面に設けてもよい。
【0107】
カラーフィルタとして機能できる変換層2は、例えば以下のように形成される。実施形態1の透明な変換層1に用いた材料と同じ材料に、RGBのそれぞれの着色顔料を混入することにより、RGBのそれぞれの分散溶液を用意する。これらの分散溶液を、インクジェット法により、調光層1上に画素のパターンに対応するように塗布する。これにより、変換層2が形成される。塗布方法は、インクジェット法の他に、スクリーン印刷法やロール印刷法などの公知の他の印刷方法であってもよい。
【0108】
本実施形態の表示素子は、実施形態1と同様の表示特性を有する。本実施形態によれば、カラーフィルタを別個に設ける必要がないので、製造プロセスを簡易にできる。
【0109】
(実施形態4)
次に、図11を参照しながら、本発明による表示素子の第4の実施形態を説明する。本実施形態の表示素子における調光層1は、以下に説明するように、前述の他の実施形態の表示素子における調光層1と異なっている。そのほかの構成は、実施形態1と同様である。本実施形態の表示素子は、図3に示す表示素子ように光吸収層5を設けたり、図7に示す表示素子のように光吸収性を有する変換層2を用いたりすることなく、金属拡散反射(白色)状態と光吸収(黒または着色)状態の間でスイッチングを行うことが可能である。
【0110】
図12は、本実施形態の表示素子における調光層1および変換層2を示す断面図である。図12に示すように、調光層1は、図5(c)の調光層1に含まれる調光微粒子と同様の調光微粒子(イットリウム微粒子など)11を含んでいる。調光微粒子11は、例えばカーボン系の黒色粒子などの着色粒子10に吸着している。調光微粒子11を着色粒子10の表面に確実に吸着させるために、調光粒子11の粒径が着色粒子10の粒径よりも小さいことが好ましい。なお、調光微粒子の好ましい粒径は、図5(c)を参照して説明した好ましい粒径と同じである。
【0111】
このような調光層1は、例えば以下のようにして形成できる。バインダー樹脂の溶液中で、粒径5μmの黒色粒子と、それより小さい粒径(例えば1μm)を有する調光微粒子とを混合することにより、黒色粒子の表面を覆うように調光微粒子を吸着させる。得られた溶液に導電性高分子材料P2をさらにブレンドした後、スピンコート法により電極3bの上に塗布する。得られた調光層1の厚さは、例えば10μmである。黒色粒子が分散されているため、調光層1の厚さは他の実施形態の調光層1の厚さよりも大きい。しかし、カーボン系黒色微粒子および調光微粒子は何れも高い導電性を示すので、調光層1全体は十分な導電性を有する。
【0112】
本実施形態の表示素子に対して、変換層2が正極側、調光層1が負極側になるように電極3a、3bに電圧を印加すると、図12に示すように、初期状態で金属拡散反射を示していた表示素子の光入射面側が徐々に黒状態に変化してゆく。これは、黒色粒子に吸着している調光微粒子が透明になるに連れて、黒色粒子が視認されるようになるためである。電源を切ってもこの状態は保持される。また、電極3aと電極3bとの間をショートさせ、あるいは電極3a、3bに対して極性を反転させた電圧を印加すると、表示素子の光入射側面が金属拡散光沢を示すように変化する。
【0113】
本実施形態では、変換層2は透明であったり、黒色であったりする必要はないので、変換層2に用いる材料の選択の余地が大きい。また、電極3bは透明である必要はないので、金属電極であってもよい。
【0114】
本実施形態の表示素子は、実施形態1の表示素子と同様の表示特性を有する。
【0115】
本実施形態の表示素子によれば、調光層1に含まれる調光微粒子が金属反射状態にあるとき、反射光は散乱して白色として認識されるため、調光層1の表面は白色に見える。一方、調光微粒子が透明な状態にあるときには、黒色粒子などの着色粒子によって光が吸収されるため、調光層1の表面は黒または他の色に見える。このように、調光層1自体が、金属拡散状態と光吸収(着色)状態との間を遷移する。従って、本実施形態では、光吸収層などの光吸収性を有する層を別個に設ける必要がないので、製造プロセスを簡易にできる。
【0116】
(実施形態5)
図13を参照しながら、本発明による表示素子の第5の実施形態を説明する。
【0117】
本実施形態の表示素子は、実施形態4と同様の構成を有するが、図13に示すように、変換層2がカラーフィルタの機能を有する点が異なる。
【0118】
調光層1は、実施形態4における調光層1と同様である。すなわち、調光微粒子を含んでおり、調光微粒子は黒色粒子に吸着している。調光層1は、実施形態4における調光層1の形成方法と同様の方法で形成できる。
【0119】
カラーフィルタの機能を有する変換層2は、例えば実施形態3における変換層2と同様である。変換層2は、調光層1の上に、実施形態3における変換層2の形成方法と同様の方法で形成できる。
【0120】
本実施形態によれば、調光層1が光吸収性を有するので、光吸収層などの光吸収性を有する層を別個に設ける必要がなく、また、変換層2がカラーフィルタとしても機能するので、カラーフィルタを別個に設ける必要がないので、製造プロセスを大幅に簡易化できる。さらに、実施形態1の表示素子と比べて、入射光や反射光が通過する層の数が低減されるので、白状態における光の吸収や黒状態における光の反射が低減され、その結果、表示のコントラスト比が向上する。
【0121】
(実施形態6)
図14を参照しながら、本発明による表示素子の第6の実施形態を説明する。
【0122】
本実施形態の表示素子は、実施形態4と同様の構成を有するが、図14に示すように、基板4の背面にバックライト8を設置している点が異なる。本実施形態の表示素子は、バックライト8をON/OFFすることにより、透過型表示素子⇔反射型表示素子の切り替えを行うことができる。
【0123】
変換層2は透明であり、例えば実施形態1における変換層2と同様である。変換層2は、電極3bの上に、実施形態1における変換層2の形成方法と同様の方法で形成できる。
【0124】
本実施形態の表示素子における調光層1は、実施形態4における調光層1と同様である。すなわち、調光微粒子を含んでおり、調光微粒子は黒色粒子に吸着している。調光層1は、変換層2の上に、実施形態4における調光層1の形成方法と同様の方法で形成できる。
【0125】
基板4に対する変換層2および調光層1の積層順序は、図示するものに限定されず、基板4に近い側に調光層1を配置し、その上に変換層2を形成してもよい。この場合は、変換層2がカラーフィルタの機能を有することもできる。そのような変換層2は、例えば実施形態5における変換層2と同様である。このような構成にすると、カラーフィルタ6を無くすことができるので有利である。
【0126】
本実施形態では、電極3a、3bおよび基板4は透明である。例えば、電極3a、3bはITO電極であり、基板4はガラス基板である。
【0127】
バックライト8は、液晶表示装置などに用いられる公知のバックライトであってよい。
【0128】
本実施形態の表示素子は、外光があるときは反射型表示素子として用いることができる。すなわち、基板4の上方から充分な光が入射してくるときは、実施形態4と同様に反射光による表示を行うことができる。一方、外光が少なく、反射型表示素子として用いることが困難なときは、バックライト8を点灯することにより、透過型表示素子として用いることができる。バックライト8から調光層1に入射する光は、画素の調光層1が光吸収(黒)状態であれば、調光層1に吸収されるので、その画素は黒を表示する。画素の調光層1が金属拡散反射状態に変化すると、バックライト8から調光層1に入射する光は調光層1の調光微粒子によって散乱される。散乱された光は、基板4の上方から取り出すことができる。そのため、その画素は白を表示する。
【0129】
このように、本実施形態によれば、外光の環境に応じて、透過型、反射型の何れの表示素子としても用いることができるので、マルチシーンで視認性のよい表示素子を実現できる。
【0130】
(実施形態7)
図15(a)および(b)を参照しながら、本発明による表示素子の第7の実施形態を説明する。本実施形態の表示素子は、実施形態6と同様の構成を有するが、以下の点が異なる。実施形態6では、調光層1として、着色粒子に吸着した調光粒子を含む膜を用いているが、本実施形態では、調光材料の膜を調光層1として用いている。本実施形態の表示素子は、バックライト8をON/OFFすることにより、透過型表示素子⇔反射型表示素子の切り替えを行うことができる。
【0131】
図15(a)および(b)に示す表示素子における調光層1は、金属反射状態において光をミラー反射するものであればよい。例えば図1(a)に示すようなイットリウム膜などの金属膜である。この金属膜は典型的には略平坦である。
【0132】
本実施形態の表示素子は、外光があるときは、図15(a)に示すように、反射型表示素子として用いることができる。すなわち、基板4の上方から充分な光が入射してくるときは、実施形態6と同様に反射光による表示を行うことができる。画素の調光層1が光を透過する状態であれば、入射光は調光層1や他の層を通過して、透明な基板4の背面にある消灯中のバックライト8に吸収されるので、その画素は黒を表示する。画素の調光層1が光を反射する状態であれば、入射光は調光層1で反射されるので、その画素は白を表示する。一方、外光が少なく、反射型表示素子として用いることが困難なときは、バックライト8を点灯することにより、図15(b)に示すような透過型表示素子として用いることができる。バックライト8から調光層1に入射する光は、画素の調光層1がミラー反射状態であれば、調光層1で反射されて、バックライト8に戻される。そのため、その画素は黒を表示する。画素の調光層1が光を透過する状態に変化すると、バックライト8から調光層1に入射する光を、そのまま基板4の上方から取り出すことができる。そのため、その画素の表示は白になる。
【0133】
本実施形態では、上記のように、表示しようとする画素および非表示の画素のそれぞれの調光層1の状態は、反射型表示素子として用いる場合と透過型表示素子として用いる場合と異なる。従って、反射型表示素子⇔透過型表示素子の切り替えに伴って、各画素の調光層1の状態を反転させることが好ましい。
【0134】
なお、基板に対する変換層2および調光層1の積層順序は、図示する例と逆転していてもよい。
【0135】
このように、本実施形態によれば、外光の環境に応じて、透過型、反射型の何れの表示素子としても用いることができるので、マルチシーンで視認性のよい表示素子を実現できる。
【0136】
(実施形態8)
図16を参照しながら、本発明による表示素子の第7の実施形態を説明する。本実施形態の表示素子が他の実施形態の表示素子と異なる点は、図16に示すように、調光層1それ自体が電極の一方を兼ねている点である。
【0137】
調光層1がイットリウム膜などの金属膜である場合、調光層1は電極として機能し得る。また、調光層1が調光材料の粒子(調光微粒子)を含む膜であっても、調光層1のバインダー樹脂が導電性材料を含んでいれば、調光層1を電極として用いることができる。調光層1を変換層2の基板4側に配置すると、調光層1を電極3bとして機能させることができる。また、図13に示すように、調光層1を変換層2の上に配置すると、調光層1を電極3aとして機能させることができる。
【0138】
調光層1を電極として機能させるためには、調光材料から形成された膜をパターニングする必要がある。調光材料として、実施形態1で用いた調光材料と同様の材料を用いることができる。本実施形態では、調光層1は以下のように形成する。まず、変換層2の上に、スパッタ法などにより金属膜を形成する。この金属膜を、マスク蒸着によるパターニング、ウェット・ドライパターニングプロセスなどによりパターニングする。これにより、調光層1が得られる。調光層1は、電極として機能するために十分な導電性を有する。
【0139】
代わりに、調光微粒子を含む調光層1を形成してもよい。この場合は、バインダー樹脂、調光微粒子、導電性材料などの必要な材料を含む溶液を用意し、この溶液を公知の印刷法を用いて変換層2の上に塗布することによって、パターニングされた調光層1を形成できる。
【0140】
本実施形態では、変換層2は、実施形態2における変換層2と同様の光吸収性を有する変換層2を用いている。代わりに、実施形態1に置ける変換層2と同様の透明な変換層2を用いてもよい。その場合は、調光層1と基板4との間のどこかに光吸収層5を配置するとよい。
【0141】
本実施形態の表示素子は、図16に示す構成の表示素子に限らない。この他に、前述した他の実施形態における表示素子に対し、調光層1を電極の一方として機能させてもよい。例えば、図14に示す透過型表示素子において、電極3aを設けずに、調光層1を電極として機能させることができる(図17)。
【0142】
本実施形態によれば、調光層1が電極を兼ねることにより、表示素子の製造工程数を低減することができる。
【0143】
【発明の効果】
本発明によれば、金属反射状態と透過状態との間で遷移が可能な材料を用いて表示素子を提供することができる。本発明の表示素子は、液晶表示素子のように偏光板を有していないので、高明度で高コントラスト比の表示が可能である。
【0144】
本発明の表示素子は、アクティブマトリクス駆動または単純マトリクス駆動の各種表示装置(フルカラー、白黒表示装置を含む)に適用できる。また、本発明の表示素子は、反射型、透過型、および投射型の何れの表示装置にも適用できる。特に、本発明の表示素子を用いると、反射型表示装置としても透過型表示装置としても機能できる表示装置を構成することができるので有利である。また、本発明の表示素子は高いメモリ性を有するので、電子ブックや電子ペーパーに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(c)は、本発明による表示素子の調光原理を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の表示素子の動作原理を示す図である。
【図3】本発明による表示素子の第1の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明による表示素子の第1の実施形態を示す平面図である。
【図5】(a)〜(c)は、本発明による表示素子の第1の実施形態における調光層および変換層を示す断面図である。
【図6】調光層および変化層の水素平衡圧−組成等温線(PTC特性曲線)を示すグラフである。
【図7】本発明による表示素子の第2の実施形態を示す断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明による表示素子の第2の実施形態における調光層および変換層を示す断面図である。
【図9】本発明による表示素子の第2の実施形態を示す断面図である。
【図10】本発明による表示素子の第3の実施形態を示す断面図である。
【図11】本発明による表示素子の第4の実施形態を示す断面図である。
【図12】本発明による表示素子の第4の実施形態における調光層および変換層を示す断面図である。
【図13】本発明による表示素子の第5の実施形態を示す断面図である。
【図14】本発明による表示素子の第6の実施形態を示す断面図である。
【図15】(a)および(b)は、本発明による表示素子の第7の実施形態を示す断面図である。
【図16】本発明による表示素子の第8の実施形態を示す断面図である。
【図17】本発明による表示素子の第8の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
M1 調光層
M2 変換層
m1 調光微粒子
m2 着色粒子
1 調光層
2 変換層
3a 上層の電極
3b 下層の電極
4 基板
5 吸収層
6 カラーフィルタ
8 バックライト
10 着色粒子
11 調光微粒子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を含む表示素子であって、前記複数の画素のそれぞれは、
特定元素の濃度に応じて光学的特性が変化する第1材料を含む第1層と、
前記特定元素を含有し得る第2材料を含む第2層であって、前記第2材料は電圧を印加されると前記特定元素を放出または吸収する第2層と、
前記第2層に前記電圧を印加するための一対の電極を備え、
前記電圧に応答して前記第1層の光反射率が変化する、表示素子。
【請求項2】
前記第1材料は、前記特定元素の濃度に応じて光反射状態と光透過状態との間を遷移し得る、請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記第1材料が光反射状態のとき、前記第1層は光を拡散反射する、請求項2に記載の表示素子。
【請求項4】
前記第1材料が粒子である、請求項3に記載の表示素子。
【請求項5】
前記第1層の上面または下面の少なくとも一方は凹凸を有している、請求項3または4に記載の表示素子。
【請求項6】
前記第1層は着色粒子をさらに含んでおり、前記第1材料は前記着色粒子に吸着している、請求項4に記載の表示素子。
【請求項7】
前記第1層は、光を拡散反射する状態と光を透過する状態との間を遷移し、前記第2層は、光透過性を有しており、
前記第1層および前記第2層を透過した光を吸収する光吸収層を更に備えている、請求項3から5のいずれかに記載の表示素子。
【請求項8】
前記第1層は、光を拡散反射する状態と光を透過する状態との間を遷移し、前記第2層は可視光吸収性を有しており、
前記第2層は、前記第1層の光入射面とは反対側に配置されている請求項3から5のいずれかに記載の表示素子。
【請求項9】
前記第2層は、前記第1層の光入射側に配置され、カラーフィルタとして機能する、請求項1から7のいずれかに記載の表示素子。
【請求項10】
前記特定元素は水素であり、前記第2層は、水素貯蔵材料を含んでいる、請求項1から9のいずれかに記載の表示素子。
【請求項11】
前記第2材料は、電子の授受により、前記特定元素の放出または吸収を行う請求項1から10のいずれかに記載の表示素子。
【請求項12】
前記第1層は導電性を有しており、前記一対の電極の一方として機能する請求項1から11のいずれかに記載の表示素子。
【請求項13】
反射型表示素子である、請求項1から12のいずれかに記載の表示素子。
【請求項14】
バックライトをさらに有する、請求項6に記載の表示素子。
【請求項15】
前記第1層は、光をミラー反射する状態と光を透過する状態との間を遷移し、バックライトをさらに有する、請求項1から4のいずれかに記載の表示素子。
【請求項1】
複数の画素を含む表示素子であって、前記複数の画素のそれぞれは、
特定元素の濃度に応じて光学的特性が変化する第1材料を含む第1層と、
前記特定元素を含有し得る第2材料を含む第2層であって、前記第2材料は電圧を印加されると前記特定元素を放出または吸収する第2層と、
前記第2層に前記電圧を印加するための一対の電極を備え、
前記電圧に応答して前記第1層の光反射率が変化する、表示素子。
【請求項2】
前記第1材料は、前記特定元素の濃度に応じて光反射状態と光透過状態との間を遷移し得る、請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記第1材料が光反射状態のとき、前記第1層は光を拡散反射する、請求項2に記載の表示素子。
【請求項4】
前記第1材料が粒子である、請求項3に記載の表示素子。
【請求項5】
前記第1層の上面または下面の少なくとも一方は凹凸を有している、請求項3または4に記載の表示素子。
【請求項6】
前記第1層は着色粒子をさらに含んでおり、前記第1材料は前記着色粒子に吸着している、請求項4に記載の表示素子。
【請求項7】
前記第1層は、光を拡散反射する状態と光を透過する状態との間を遷移し、前記第2層は、光透過性を有しており、
前記第1層および前記第2層を透過した光を吸収する光吸収層を更に備えている、請求項3から5のいずれかに記載の表示素子。
【請求項8】
前記第1層は、光を拡散反射する状態と光を透過する状態との間を遷移し、前記第2層は可視光吸収性を有しており、
前記第2層は、前記第1層の光入射面とは反対側に配置されている請求項3から5のいずれかに記載の表示素子。
【請求項9】
前記第2層は、前記第1層の光入射側に配置され、カラーフィルタとして機能する、請求項1から7のいずれかに記載の表示素子。
【請求項10】
前記特定元素は水素であり、前記第2層は、水素貯蔵材料を含んでいる、請求項1から9のいずれかに記載の表示素子。
【請求項11】
前記第2材料は、電子の授受により、前記特定元素の放出または吸収を行う請求項1から10のいずれかに記載の表示素子。
【請求項12】
前記第1層は導電性を有しており、前記一対の電極の一方として機能する請求項1から11のいずれかに記載の表示素子。
【請求項13】
反射型表示素子である、請求項1から12のいずれかに記載の表示素子。
【請求項14】
バックライトをさらに有する、請求項6に記載の表示素子。
【請求項15】
前記第1層は、光をミラー反射する状態と光を透過する状態との間を遷移し、バックライトをさらに有する、請求項1から4のいずれかに記載の表示素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2004−279680(P2004−279680A)
【公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−70341(P2003−70341)
【出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年3月14日(2003.3.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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