説明

表示素子

【課題】 支持部材と封止部材の気密性に優れ、耐久性の高い有機ELパネルを提供する。
【解決手段】 表示装置1は、支持部材8と、前記支持部材8に積層される有機EL素子層9と、前記支持部材8に接合され前記有機EL素子層9を収納する空間部Sを形成する封止部材10と、を備え、前記支持部材8または前記封止部材10の少なくとも一方は、前記空間部S内において他方側に向かって突出する突出部18を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透光性の一対の電極によって少なくとも発光層を含む有機層を挟持してなる有機EL(Electro luminescence)素子層を基板上に配設し、前記有機EL素子を覆う封止部材を前記基板に接合してなる表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子層を用いる表示素子は、自発光素子であるためバックライト照明が不要であり、それゆえ薄型化が可能で、視野角が広く、大型表示パネルに適することから実用化が進められている。
【0003】
表示素子は、例えば、特許文献1に開示されているようにセグメントの発光部によって画素を形成するものと、特許文献2に開示されているようにドットマトリクスの発光部によって画素を形成するものとがある。これらの表示素子は、ともに支持基板上に透明電極と絶縁層と有機層と背面電極(不透明電極)とで構成される有機EL素子層を形成し、この有機EL素子層を覆うように封止部材を支持基板上に配設し、接続部材と接続する端子部を封止部材によって覆われない領域に備えるものである。表示素子は、端子部に接続されるFPC等の接続端子を介して定電流が印加されると発光する。また、封止部材には、支持部材に形成される有機EL素子層と空隙を介して対向する吸湿剤が充填され、収納空間の余分な水分を吸収し、有機EL素子層へのダメージを抑制している。
【特許文献1】特開2001−267066号公報
【特許文献2】特開2004−207094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、以上のような表示素子は、大型化すると、外力をうけて撓みが発生しやすく、有機EL素子層が、封止部材や封止部材に設けられる吸湿剤と接触してしまい、この接触によってダークスポット(非発光部)等が発生し、寿命を短くしてしまう恐れがある。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑み、表示素子において、耐久性の高い表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために、支持部材と、前記支持部材に積層される有機EL素子層と、前記支持部材に接合され前記有機EL素子層を収納する空間部を形成する封止部材と、を備え、前記支持部材または前記封止部材の少なくとも一方は、前記空間部内において他方側に向かって突出する突出部を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、請求項2に記載したように、前記支持部材は、前記空間部の形成領域内に第一の貫通孔を有し、前記封止部材は、前記空間部の形成領域内に前記第一の貫通孔に対応する第二の貫通孔を有し、前記突出部は、前記第二の貫通孔を取り巻いて前記第一の貫通孔の外縁に対向する周壁部からなることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、請求項3に記載したように、前記有機EL素子層は、透明電極と発光層と不透明電極とを有し、前記支持基板上に設けられ、前記支持部材は、少なくとも前記封止部材に設けられる前記突出部に対応する箇所に前記不透明電極を形成しない透明領域を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、請求項4に記載したように、前記支持部材または前記封止部材の一方は、前記空間部の形成領域において貫通孔を備え、前記突出部は、前記貫通孔の周壁部を形成し、前記支持部材または前記封止部材の他方は、前記貫通孔に対応する箇所に前記貫通孔を塞ぐ遮蔽部を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、請求項5に記載したように、前記封止部材は、前記貫通孔の周壁部を形成する前記突出部を備え、前記有機EL素子層は、前記支持部材上に発光層と、前記発光層を挟持する透明電極と不透過性材料からなる背面電極とを積層してなり、これら両電極の少なくとも一方は、前記支持部材と前記周壁部との間を経由して前記遮蔽部上に延長し外部に露出する端子部を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、請求項6に記載したように、前記突出部は、外部光源からの光を透過することにより所定の発光意匠を形成する透光部からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、有機EL素子を備える表示パネルに関して、耐久性の高い表示素子を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面に基づいて、本発明による表示素子を適用した表示装置の実施形態を説明する。
【0014】
図1から図4は、本発明による表示素子を適用した表示装置の第一の実施形態を示す図である。図1は、本実施形態の表示装置の正面図であり、図2は、表示装置の斜視図であり、図3は、図2のA−A断面図である。図4は、接合前の支持部材と封止部材の分解斜視図である。
【0015】
表示装置1は、指針2と、有機ELパネル(表示素子)3と、回路基板4と、見返し板5と、からなり、図1に示すように、指針2と、セグメント及びドットマトリクスによって車両情報を表示する。
【0016】
指針2は、指示部6と、指針2の回転中心部を覆う指針キャップ7と、を備える。指示部6は、透明な合成樹脂からなり光を導く導光材料で形成され、後に詳述する有機ELパネル3によって照明される。指針キャップ7は、遮光性の合成樹脂材料で形成される。
【0017】
有機ELパネル3は、支持部材8と、有機EL素子層9と、封止部材10と、貫通孔11と、からなり、図1に示すように、車両の速度を示す指標である数字をセグメント12によって表示し、指針2が回動しない表示領域下方においては、車両の速度を除いた時刻や走行距離等の車両情報をドットマトリクス(積層構造は図示しない)13によって表示する。
【0018】
支持部材8は、略長方形状の平板部材でガラスや透光性樹脂等からなり、有機EL素子層9を支持する。
【0019】
有機EL素子層9は、図3に示すように、透光性材料であるITO(indium tin oxide)等を用いた陽極である透明電極9aと、ポリイミド系やフェノール系の感光性樹脂材料からなる電気絶縁性の絶縁層9bと、正孔注入層,正孔輸送層,発光層及び電子輸送層からなる有機層9cと、アルミニウム(Al)等の非透光性材料を用いた陰極である背面電極(不透明電極)9dと、を順次蒸着法等により積層し、形成される。
【0020】
背面電極9dは、支持部材8と支柱との接合部(貫通孔11の周囲)14を少なくとも含む透明領域15を除いて、透明電極9aと、有機層9cとを覆うように広範囲に蒸着法等により形成される。
【0021】
封止部材10は、例えば、ガラス材料の平板部材を支持部材8よりも若干小さく、凹形状に形成し、底部16と側部17とによって有機EL素子層9を収納する空間部Sを支持部材8とによって構成する。図4に示すように、封止部材10は、底部16の中央から突出する、貫通孔11の周壁となる円柱状の突出部18が形成される。突出部18の高さは、側部17と同等に設定される。封止部材10は、底部16に空間部Sの水分を吸収する吸湿剤19が有機EL素子層9と所定の空隙を隔てるように塗布される。封止部材10は、接合部14に塗布される紫外線硬化型接着剤20を介して支持部材8に配設される。封止部材10の一部である突出部18と対向する支持部材8の接合部14には背面電極9dを形成しないため、支持部材8と封止部材10との接着性を向上させ、空間部Sの気密性を保っている。
【0022】
有機ELパネル3は、有機EL素子層9を積層した支持部材8と封止部材10とを接合して形成された後に、ドリルなどによって突出部18の中心をくりぬくように貫通孔11が形成される。支持部材8には、第一の貫通孔11aが形成され、封止部材10には、第二の貫通孔11bが形成され、突出部18は、貫通孔11の周壁となる。このようにして形成された貫通孔11には、指針2の指針軸21が挿通される。有機ELパネル3は、その空間部Sに突出部18を設けて、これを有機EL素子層9と封止部材10との間に所定の空隙を保持するスペーサとして機能させることにより、外力を受けても撓みにくくなる。突出部18は、筒状にくりぬかれて貫通孔11の周壁となるため、空間部Sの気密性を保持し、有機EL素子層9の劣化を防ぐことができる。
【0023】
回路基板4は、ガラスエポキシ樹脂からなる硬質の基板であり、指針軸21が貫通する孔を有する。回路基板4は、その下側に指針2の駆動本体22が固定されている。回路基板4は、図示しない可撓性接続部材(FPC)などにより、有機ELパネル3と電気的に接続されてなる。
【0024】
見返し板5は、遮光性の合成樹脂からなり、有機ELパネル3の表示領域を露出させるための開口部23を備える。見返し板5は、その開口部23を囲むように、有機ELパネル3において表示される車両の速度を示す数字の指標に対応する目盛り24を有する。目盛り24は、見返し板5を切欠いてスリットを入れることによって設けられたものであり、有機ELパネル3から発光する光の透過により照明される。
【0025】
従って、かかる表示装置1は、有機ELパネル3の空間部S中央に突出部18を備えることにより、撓みにくい構造となるため、耐久性が向上する。
【0026】
また、突出部18は、貫通孔11の周壁として形成されることにより、貫通孔11を有する場合でも、支持部材8と封止部材10との気密性を保持し、水分や塵、ゴミ等の空間部Sへの侵入を防ぐことから、ダークスポット(非発光部)の発生を抑えることができ、表示装置1の信頼性を高めるものである。
【0027】
また、背面電極9dは、支持部材8と封止部材10との接合部14を含む貫通孔11の周囲の透明領域15を除いて形成され、支持部材8と封止部材10とを直接、接着することができるため、両部材8,10の接着性を高めている。
【0028】
なお、本実施形態において、貫通孔11は、支持部材8と封止部材10を接合した後に形成するものであったが、例えば、支持部材8と突出部18を形成した封止部材10とにそれぞれ貫通孔(第一の貫通孔11a,第二の貫通孔11b)11を形成した後、接合するものでもよい。
【0029】
また、本実施形態は、有機EL素子層9を指針2の背後に設け、有機ELパネル3によって指針2を照明するものであったが、本発明の第二の実施形態として、図5に示すように、指針2の回転中心の後方に位置する透明領域15には、不透光性の背面電極9dが形成されないため、回路基板4上に発光ダイオード25を設け、有機ELパネルではなく、別光源によって指針2を照明してもよい。これは、単色発光の有機ELパネル3を用いる際に、指針2を有機ELパネル3と異なる色で照明することができる点で有効である。
【0030】
また、本実施形態は、有機ELパネル3の中心に貫通孔11を設け、貫通孔11の周壁をなすように突出部18を設けたが、本発明においては、貫通孔11はなくともよく、突出部18の形成位置、構造は任意である。
【0031】
また、本実施形態において、封止部材10は、ガラス材料からなる平板部材を加工したものであったが、構成材料は任意であり、金属を用いてもよい。
【0032】
次に、本発明の第三の実施形態を説明する。
【0033】
図6は、本発明の第三の実施形態を示す断面図である。なお、前述した第一の実施形態と同一もしくは相当箇所には同一の符号を付して、その詳細な説明は省く。
【0034】
封止部材10は、その中央に貫通孔11を有する突出部18を備える。この場合、支持部材8は、貫通しない。封止部材10と支持部材8とを接合すると、支持部材8は、外部に開放する前記貫通孔11をふさぎ、有機ELパネル3は、凹状部Rを備える構造となる。
【0035】
支持部材8は、平板状の部材に端子部26を備える有機EL素子層9が積層される。有機EL素子層9は、凹状部Rに対応する中心領域を除いて形成される。有機EL素子層9は、その凹状部Rに対応する中心領域に透明電極9aが引き出され、外部の電極と接続する端子部26を構成する。
【0036】
以上のような構成の表示装置1は、有機ELパネル3の中央に突出部18が設けられるため、耐久性が向上する。
【0037】
また、通常、端子部26は、有機ELパネル3の周辺領域に配線を引き回して設けるが、外部電極との接続用に端子部26をパネルの中央に設けることで、配線の引き回しを短くすることが可能となり、有機ELパネル3の大型化により引き起こされる電気抵抗値の増大、通電不良による輝度のばらつきを防ぐものである。
【0038】
なお、本発明の実施形態においては、有機ELパネル3の凹状部Rによって支持部材8の露出する領域に端子部26を設けたが、これに加えて、支持部材8の周辺部に端子部を設けてもよい。また、端子部26の配設箇所は、任意であり、表示意匠のレイアウト等によって適宜配設するものであってよい。
【0039】
次に、本発明の第4の実施形態を説明する。なお、前述した第一の実施形態と同一もしくは相当箇所には同一の符号を付して、その詳細な説明は省く。
【0040】
図7は、本実施形態における表示素子を用いた表示装置の正面図であり、図8は、図7のB―B断面図であり、図9は、表示装置の分解斜視図である。
【0041】
表示装置1は、有機ELパネル3上で目盛り24及び指標12を指針指示することで車両の速度を表示し、表示領域下方においては、進行方向を示すウォーニング27を表示する。
【0042】
有機ELパネル3は、その中央に指針軸21が挿通する貫通孔11を備える。
【0043】
封止部材10は、ガラス材料からなり、貫通孔11の周壁として第一の突出部18が設けられ、表示領域の下方に対応する箇所には、車両の進行方向を示す矢印状の第二の突出部27が設けられる。第二の突出部27は、第一の突出部18の高さと同等に設定される。
【0044】
回路基板4は、有機ELパネル3の非表示側に設けられ、第二の突出部27の背面に対応する箇所に発光ダイオード25を有する。
【0045】
第二の突出部27は、その背後から回路基板4に設けられた発光ダイオード25で発光する光によって透過照明される。すると有機ELパネル上には、第二の突出部の矢印状の断面がウォーニング27として表示される。
【0046】
本実施形態は、封止部材に第一の突出部18,第二の突出部27を設けることで、表示素子の耐久性を向上させ、さらに、第二の突出部を透過照明することにより、その断面形状を表示意匠として有機ELパネル上に表示することができる。
【0047】
なお、本実施形態においては、第二の突出部によって車両の進行方向を示すウォーニングを表示したが、表示する情報及び表示位置は、任意である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第一の実施形態を示す正面図。
【図2】同上実施形態を示す斜視図。
【図3】同上実施形態を示す図2のA−A断面図。
【図4】同上実施形態の有機ELパネルを示す分解斜視図。
【図5】本発明の第二の実施形態を示す断面図。
【図6】本発明の第三の実施形態を示す断面図。
【図7】本発明の第四の実施形態を示す正面図。
【図8】同上実施形態を示す図7のB―B断面図
【図9】同上実施形態の有機ELパネルを示す分解斜視図。
【符号の説明】
【0049】
1 表示装置
2 指針
3 有機ELパネル(表示素子)
8 支持部材
9 有機EL素子層
9a 透明電極
9b 絶縁層
9c 有機層
9d 不透明電極(背面電極)
10 封止部材
11 貫通孔
11a 第一の貫通孔
11b 第二の貫通孔
14 接合部
15 透明領域
18 支柱
21 指針軸
26 端子部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材と、
前記支持部材に積層される有機EL素子層と、
前記支持部材に接合され前記有機EL素子層を収納する空間部を形成する封止部材と、
を備え、
前記支持部材または前記封止部材の少なくとも一方は、前記空間部内において他方側に向かって突出する突出部を有することを特徴とする表示素子。
【請求項2】
前記支持部材は、前記空間部の形成領域内に第一の貫通孔を有し、
前記封止部材は、前記空間部の形成領域内に前記第一の貫通孔に対応する第二の貫通孔を有し、
前記突出部は、前記第二の貫通孔を取り巻いて前記第一の貫通孔の外縁に対向する周壁部からなることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項3】
前記有機EL素子層は、透明電極と発光層と不透明電極とを有し、前記支持基板上に設けられ、
前記支持部材は、少なくとも前記封止部材に設けられる前記突出部に対応する箇所に前記不透明電極を形成しない透明領域を有することを特徴とする請求項2に記載の表示素子。
【請求項4】
前記支持部材または前記封止部材の一方は、前記空間部の形成領域において貫通孔を備え、
前記突出部は、前記貫通孔の周壁部を形成し、
前記支持部材または前記封止部材の他方は、前記貫通孔に対応する箇所に前記貫通孔を塞ぐ遮蔽部を有することを特徴とする請求項1に記載の表示素子。
【請求項5】
前記封止部材は、前記貫通孔の周壁部を形成する前記突出部を備え、
前記有機EL素子層は、前記支持部材上に発光層と、前記発光層を挟持する透明電極と不透過性材料からなる背面電極とを積層してなり、
これら両電極の少なくとも一方は、前記支持部材と前記周壁部との間を経由して前記遮蔽部上に延長し外部に露出する端子部を有することを特徴とする請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記突出部は、外部光源からの光を透過することにより所定の発光意匠を形成する透光部からなることを特徴とする請求項1に記載の表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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