説明

表示装置、及びそのプログラム

【課題】従来の技術には表示装置の故障箇所を特定する場合修理工場に配送するなどの手間がかかるという課題がある。あるいは自己診断のためには安定電圧供給源などが必要となりコストがかかるという課題がある。
【解決手段】以上の課題を解決するために、本発明は、パターン画像を表示パネルに表示するためのテスト信号を各処理回路から順次出力させ、表示パネルの制御電流や制御電圧を測定する機能を備える表示装置を提供する。具体的には、表示パネルと、映像ソース入力から表示パネルに至るまで順に信号を受け渡す関係の複数の処理回路ブロックと、各処理回路ブロックの入力に対して択一的にテスト信号を出力するテスト出力回路と、テスト出力がされる場合に表示パネルでの電流又は/及び電圧を検知する検知部と、を有する表示装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の処理回路ブロックによる処理を経て画像を表示パネルに出力する表示装置において不具合が発生した場合に、その不具合の原因箇所がいずれの処理回路ブロックであるのかを好適に特定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、テレビジョン装置、PC用やデジタルサイネージ用のモニタ装置、デジタルフォトフレーム装置など様々な表示装置が提供されている。これら表示装置は、例えば映像ソースの入力端から表示パネルまでの間に、デコーダ(デコード処理回路)、MUX(マルチプレクサ)処理回路、OSD(オンスクリーン・ディスプレイ)処理回路、画質向上のための各種処理回路(例えばノイズリダクション回路など)、パネルコントローラ、また表示対象が動画であればフレームレートの変換処理回路などの複数の処理回路ブロックが接続され構成されている。そして、入力端に入力された映像ソースはこれら処理回路ブロックでの処理を順次経て、表示パネルに映像として表示される。
【0003】
ところで、表示装置はこのように様々な処理回路ブロックで構成されているため、その画像表示に不具合が生じた場合の原因箇所の特定が難しくなっている。そこで表示装置に不具合が生じた場合は、ユーザが修理工場などに装置を配送し、そこで表示装置を分解の上、各処理回路ブロックへの検査などを実施することによって故障箇所を特定していた。
【0004】
あるいはユーザ宅へサービスマンが出向き、そこで目視やユーザへの聞き取り、また自己診断機能を備える表示装置であればその診断結果を表示しサービスマンが確認することによって故障箇所の特定を行うことも実施されている。そして表示装置の自己診断技術として、例えば特許文献1には、ICを用いて安定した電圧を表示装置に加え、故障の状態によって変動する電圧レベルと時間を測定することでいずれの処理回路が故障しているかを判別する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3319310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし上記従来の技術には以下のような課題がある。すなわち、修理工場などで故障箇所を特定する場合、ユーザが装置を配送する手間がかかり、また修理工場においても故障箇所検出のための分解や各種点検などの手間がかかってしまう。また、サービスマンが出向く場合には、表示装置を分解などせずに故障箇所を特定するためにはサービスマンに高いスキルや経験などが要求される。また、特許文献1の技術では安定して電圧を供給するためのICなどが必要となり、表示装置そのもののコストがかかるという課題がある。また、当該ICを省くと電圧が安定せず故障箇所を正確に検出することができなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明は、パターン画像を表示パネルに表示するためのテスト信号を各処理回路ブロックから順次出力させ、そのテスト信号ごとにテスト出力による表示パネルでの電流や電圧を測定する機能を備える表示装置を提供する。具体的には、表示パネルと、映像ソース入力から表示パネルに至るまで順に信号を受け渡す関係の複数の処理回路ブロックと、各処理回路ブロックの入力に対して択一的にテスト信号を出力するテスト出力回路と、テスト出力がされる場合に表示パネルでの電流又は/及び電圧を検知する検知部と、を有する表示装置を提供する。
【0008】
また、当該表示装置の複数の処理回路ブロックは、デコーダ、フレーム画像編集回路、フレームレート変換回路、2D/3D画像変換回路、パネルコントローラ、のいずれか一以上からなると良い。
【0009】
また、上記構成を備え、さらにテスト出力回路が、前記順に信号を受け渡す関係において表示パネルに最も近い処理回路ブロックから、その入力に対するテスト信号を順次出力する順次出力手段を有する表示装置も提供する。あるいはテスト出力回路が、各処理回路ブロックで異なるパターン画像を表示パネルに表示するためのパターン画像表示信号をテスト信号として出力するパターン画像表示信号出力手段を有する表示装置も提供する。
【0010】
また、上記構成を備え、さらに前記各処理回路ブロックで択一的なテスト信号によるテスト出力時の表示パネルの電流又は/及び電圧期待値を保持する電流/電圧期待値保持部と、所定のテスト信号の出力時に検知部で検知した電流又は/及び電圧と、保持されている当該テスト信号の出力時の電流/電圧期待値との乖離度合いを判断する乖離判断部と、電流又は/及び電圧と電流/電圧期待値とが所定以上乖離しているとの判断結果である場合に、当該テスト信号を択一的に出力した処理回路ブロックの識別情報を取得する識別情報取得部と、を有する表示装置も提供する。
【0011】
また、表示装置を上記のように動作させるプログラムも合わせて提供する。
【発明の効果】
【0012】
以上のような構成をとる本発明によって、表示装置を工場などに配送することなく、また知識と経験豊富なサービスマンによる診断を必要とすることなく、いずれの処理回路が故障しているのかを容易に特定することができる。また、電圧安定回路を必要とせず、テスト信号の出力回路と表示パネルの制御電流(電圧)測定回路といった比較的コストのかからない簡単な機構の追加のみで、表示装置の自己診断機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の表示装置における故障箇所の特定の一例を説明するための図
【図2】実施例1の表示装置における機能ブロックの一例を表す図
【図3】実施例1の表示装置における複数の処理回路の接続態様の一例を表す図
【図4】実施例1の表示装置におけるパターン画像の表示の一例を説明するための図
【図5】実施例1の表示装置の検知部での表示パネルの電流や電圧検知の一例を説明するための図
【図6】実施例1の表示装置の検知部での表示パネルの電流や電圧検知の、別の一例を説明するための図
【図7】実施例1の表示装置の検知部での表示パネルの電流や電圧検知の、さらに別の一例を説明するための図
【図8】実施例1のその他の表示装置における機能ブロックの一例を表す図
【図9】実施例1の表示装置における処理の流れの一例を表すフローチャート
【図10】実施例1のその他の表示装置における処理の流れの一例を表すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。なお、実施例1は、主に請求項1から8について説明する。
【0015】
≪実施例1≫
<概要>
図1に示すのは、本実施例の表示装置における内部構成の一例を表す図である。この図を用いて故障箇所の特定の一例を説明する。この図1にあるように、本実施例の表示装置は映像ソース入力から表示パネルまでの間に処理回路ブロックA〜Dが順にバス線などで接続されている。そして自己診断(テスト)モードのスタート信号が「操作信号I/O」から入力されると、表示装置の「マイコン(演算装置)」は、まず表示パネルに最も近い処理回路ブロックAからテスト信号(破線矢印)を出力するよう「処理回路ブロックA」を制御する。そしてそのテスト信号に応じて表示パネルにおいてテスト用のパターン画像が表示されると、その「表示パネル」での電流(液晶シャッターの駆動にかかる電流や自発光型画素素子の発光にかかる電流)や電圧を測定する。ここでパターン画像が正常に表示された場合の表示パネルの制御電流が「700mA」として、測定結果がその700mA前後の値となれば処理回路ブロックAは正常動作していると判断することができる。
【0016】
そして、上記制御を回路ブロックの接続順で表示パネルに近いブロックからB,Cと順次実行していき、例えば処理回路ブロックCでテスト信号を出力した際の表示パネルの制御電流が200mAと測定される。すると表示パネルに近い処理回路ブロックA、Bまでは正常にテスト信号によるパターン画像表示がされていることから、処理回路ブロックCに故障箇所があると判定することができる、という具合である。
【0017】
<機能的構成>
図2は、本実施例の表示装置における機能ブロックの一例を表す図である。本実施例の表示装置における機能ブロックの一例を表す図である。なおこの表示装置は、チューナなどを備えるテレビジョン受像機に組み込まれ、チューナにて受信した放送番組を表示するものであっても良い。あるいはモニタ装置やレコーダ装置、映像プレーやなどに組み込まれても良い。そして、以下に記載する本装置やシステムの機能ブロックは、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせとして実現され得る。具体的には、コンピュータを利用するものであれば、マイコンや主メモリ、バス、あるいは二次記憶装置(ハードディスクや不揮発性メモリ、CDやDVDなどの記憶メディアとそれらメディアの読取ドライブなど)、情報入力に利用される入力デバイス、印刷機器や表示装置、その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部、またその外部周辺装置用のインターフェース、通信用インターフェース、それらハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラム、ユーザ・インターフェース用アプリケーションなどが挙げられる。
【0018】
そして主メモリ上に展開したプログラムに従ったマイコンの演算処理によって、入力デバイスやその他インターフェースなどから入力され、メモリやハードディスク上に保持されているデータなどが加工、蓄積されたり、上記各ハードウェアやソフトウェアを制御するための命令が生成されたりする。あるいは本表示装置の機能ブロックは専用ハードウェアによって実現されてもよい。
【0019】
また、この発明は装置として実現できるのみでなく、方法としても実現可能である。また、このような発明の一部をソフトウェアとして構成することができる。さらに、そのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いるソフトウェア製品、及び同製品を固定した記録媒体も、当然にこの発明の技術的な範囲に含まれる(本明細書の全体を通じて同様である)。
【0020】
そして、図2に示すように、本実施例の表示装置0200は、表示パネル0201と、複数の処理回路0202と、テスト出力回路0203と、検知部0204と、を有する。
【0021】
表示パネル0201は、画像表示用の機構を備えるパネルであって、例えば液晶パネルなどの非自発光型の表示パネルでも、プラズマパネルや有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)パネルなどの自発光型の表示パネルであっても良い。なお後述する検知部においてパターン画像の表示にかかる表示パネルでの電流/電圧検知が実行されるが、前者の非自発光型の表示パネルであれば液晶シャッターなどの駆動電流/電圧を測定し、後者の自発光型の表示パネルであれば画素の発光電流/電圧を測定する構成とすると良い。
【0022】
複数の処理回路ブロック0202は、映像ソース入力から表示パネルに至るまで順に信号を受け渡す関係で接続されており、例えば、デコーダ、フレーム画像編集回路(ノイズリダクション回路やアップスケーリング回路など)、フレームレート変換回路、2D/3D画像変換回路、パネルコントローラなどが挙げられる。また、その他にもMUX(マルチプレクサ)処理回路、DeMUX(デマルチプレクサ)処理回路、OSD(オンスクリーン・ディスプレイ)処理回路なども挙げられる。図3は、この複数の処理回路の接続態様の一例を表す図である。この図にあるように、例えば映像ソース入力から表示パネルまでの間に、フレーム画像編集回路、フレームレート変換回路、パネルコントローラなどがバス線などで順に接続されている。また、映像ソース入力として「チューナ」、「HDMI入力端子」、および「デコーダ」や「HDMIレシーバ」などが並列的に接続されていても良い。
【0023】
そして表示装置では、例えば映像ソース入力である「チューナ」に入力された映像ソース(TSデータ)を「デコーダ」にて復号化し、その復号化して得られたフレームデータに対して「フレーム画像処理回路」にてノイズリダクション処理や1440×1080の画像サイズを1920×1080(表示パネルの表示サイズ)に拡大するアップスケーリング処理などを実行する。つづいて1秒間30枚のフレームとして取得されたフレームデータに対して「フレームレート変換回路」にて60枚や120枚のフレーム枚数に増やす処理を実行し、最後にその処理済フレームデータが順次パネルコントローラに入力されることで表示パネルに映像が表示される、という具合である。
【0024】
テスト出力回路0203は、各処理回路ブロックの入力に対して択一的にテスト信号を出力する機能を有する回路である。なお「テスト信号」とは、後述する電流(電圧)検知による故障評価のために表示パネルに画像(あるいは映像)を表示するための映像信号をいう。また、予めその表示電流(電圧)が判明しているパターン画像であっても良い。
【0025】
また「各処理回路ブロックの入力に対して択一的にテスト信号を出力する」とは、同時に二以上の処理回路ブロックからテスト信号を出力せず、一の処理回路ブロックごとに順番にテスト信号を出力する形態をいう。例えば、選択された一の処理回路ブロックAからテスト信号が出力され、当該テスト信号による所定の処理(表示パネルへのパターン画像表示処理および電流/電圧の検知処理など)が実行されると、次に選択された処理回路ブロックBからテスト信号が出力される、という具合である。
【0026】
より具体的に、テスト出力回路は、例えば一の回路として表示装置に配置され各処理回路ブロックにバス線などで接続されており、表示装置のマイコンなどからの制御命令に応じて各処理回路ブロックに対して順番にテスト信号を送信することで、各処理回路ブロックから択一的にテスト信号を出力する構成が挙げられる。あるいは、例えば前述の複数の処理回路ブロックのそれぞれにテスト出力回路が配置されており、表示装置のマイコンなどからの制御命令に応じて各テスト出力回路が自身の配置されている処理回路ブロックから順番にテスト信号を出力する構成も挙げられる。
【0027】
このようにテスト出力回路では、各処理回路ブロックの入力に対して択一的にテスト信号を出力する構成をとるので、表示パネルにて表示されるパターン画像がいずれの処理回路ブロックから出力されたものであるか容易に区別することができる。
【0028】
また、いずれの処理回路ブロックに不具合があるかをさらに容易に特定するため、このテスト出力回路は図示しない「順次出力手段」を有していても良い。「順次出力手段」は、前記順に信号を受け渡す関係において表示パネルに最も近い処理回路ブロックから、その入力に対するテスト信号を順次出力する機能を有する。そしてこの機能により、図4に示すように、まず1番目のテスト信号によって表示パネルと処理回路ブロックAの区間において故障はないと判断できる。つづいて2番目のテスト信号によって処理回路ブロックAと処理回路ブロックBの区間においても故障はないと判断できる。そして例えば処理回路ブロックCのテスト信号によるパターン画像が表示されなければ、先のブロックA及びBの判断結果と合わせて、この時点で処理回路ブロックBと処理回路ブロックCの区間(Bの入力端からCの入力端までの間)において故障箇所があると判断することができる。
【0029】
検知部0204は、テスト出力がされる場合に表示パネルでの電流又は/及び電圧を検知する機能を有し、電流/電圧の測定回路やマイコンと検知プログラムなどで実現することができる。なお検知部の検知対象として、表示パネルが非自発光型であれば液晶シャッターなどの駆動電流や駆動電圧を検知対象とし、自発光型であれば画素の点灯制御電流や制御電圧を検知対象とするよう構成すると良い。
【0030】
そして例えばテスト出力回路が上記順次出力手段を有し、表示パネルから近い処理回路ブロック順に、かつ同じパターン画像を表示するテスト信号を出力する場合、検知部での検知によって図5(a)に示すように、処理回路ブロックCからのテスト信号出力時に駆動電流や電圧が、前の処理回路ブロックBの検知結果よりも所定値以上変化していることが判明する。つまりこの検知結果によって処理回路ブロックCからのテスト信号によるパターン画像が正常に表示されていないと判断され、処理回路ブロックBと処理回路ブロックCの区間において故障箇所があると判断することができる。また図5(b)に示すように検知結果が所定誤差範囲内で全て同じ電流/電圧である場合には、最初の処理回路ブロックAを故障箇所と特定することができる。もちろん、テスト信号によるパターン画像の表示にかかる電流の測定予想値(例えば1000mA)を予め保持していれば、処理回路ブロックAからのテスト信号の検知結果とその測定予想値との乖離度合いによって処理回路ブロックAを故障箇所と特定することもできる。
【0031】
また、上記のようにテスト出力部が順次出力手段を有していなくても、例えば信号を受け渡す処理回路ブロックの順番を示す処理回路ブロック接続順情報を保持し、かつ検知部での検知結果と、そのテスト信号を出力した処理回路ブロックのIDを関連付けて保持する機能を有することで不具合のある処理回路ブロックを特定するよう構成しても良い。具体的に例えば、図6に示すように、処理回路ブロックD、A、C、Bの順にテスト信号を出力し、その検知結果「D:200mA」、「A:1000mA」、「C:180mA」、「B:800mA」を記録しておく。そして予め保持されている処理回路ブロック接続順情報で示される処理回路ブロックの接続順が表示パネルから近い順にA,B,C,D(または遠い順にD,C,B,A)を参照し、表示パネルに近い位置で電流値に所定値以上の大きな変化のあった処理回路ブロックCを故障箇所として特定する、という具合である。
【0032】
あるいは処理回路ブロックごとに表示されるパターン信号が異なるテスト信号を順次出力する、すなわちそのテスト出力により検知される電流や電圧の測定値がそれぞれ異なる構成とすることで、上記「検知部での検知結果と処理回路ブロックのIDを関連付けて保持する機能」を省略するようにしても良い。具体的に、本実施例の表示装置のテスト出力回路が、各処理回路ブロックで異なるパターン画像を表示パネルに表示するためのパターン画像表示信号をテスト信号として出力するパターン画像表示信号出力手段を有し、検知部では、その異なるパターン画像ごとの表示電流や電圧を検知する。
【0033】
そして図7(a)に示すように、例えば処理回路ブロックAからのパターン画像a(白べた画像)の表示電流(想定値)は「1000mA」であり、処理回路ブロックBからのパターン画像b(モザイク画像1)の表示電流は「800mA」であり、処理回路ブロックCからのパターン画像c(モザイク画像2)の表示電流は「600mA」であり、処理回路ブロックDからのパターン画像d(ウィンドウ画像)の表示電流は「400mA」であるとする。そして上記各データを予め装置内部に保持やマニュアルへの記載などしておき、図7(b)に示すような検知部での電流(電圧)の検知結果(実測値)と照合することでパターン画像c、dに近似する測定値が無いことがわかる。したがって前述の処理回路ブロック接続順情報と合わせて異常表示となっているのは処理回路ブロックCであることを特定する、という具合である。
【0034】
もちろん検知部での検知結果を利用した不具合のある処理回路ブロックの特定は上記処理に限定されず、例えば順次出力手段の逆に表示パネルから遠い処理回路ブロックからもっとも近い処理回路ブロックまでテスト信号を順次出力し、全てのテスト信号に関する検知を行ったうえで故障箇所を特定する構成としても良い。
【0035】
<その他の機能的構成>
なお本実施例の表示装置は、上記テスト信号ごとの電流や電圧の検知結果を、例えばサービスマンのハンディ端末に近距離無線通信で飛ばし、あるいはインターネット回線を介して遠隔サービスセンターのオペレータの端末に送信することで、当該サービスマンやオペレータに故障箇所を特定させる構成としても良い。あるいは、表示装置自身のマイコンの演算処理によって上記故障箇所の特定処理を行う機能をさらに有していても良い。
【0036】
図8は、本実施例のその他の表示装置における機能ブロックの一例を表す図である。この図にあるように、本実施例の表示装置0800は、上記説明したように表示パネル0801と、複数の処理回路ブロック0802と、テスト出力回路0803と、検知部0804と、を有する。そしてこのその他の例では、さらに電流/電圧期待値保持部0805と、乖離判断部0806と、識別情報取得部0807と、を有することを特徴とする。
【0037】
電流/電圧期待値保持部0805は、前記各処理回路ブロックで択一的なテスト信号によるテスト出力時の表示パネルの電流又は/及び電圧期待値を保持する機能を有し、例えばフラッシュメモリなどの各種記録媒体によって実現することができる。具体的に各処理回路ブロックからのテスト信号によるパターン画像が同一である場合、その一のパターン画像による表示電流(電圧)、例えば「1000mA」を電流/電圧期待値としてフラッシュメモリなどに保持する。あるいは、各処理回路ブロックからのテスト信号によるパターン画像が異なる場合、処理回路ブロックのIDと前述のパターン画像ごとの測定想定値を関連付けたデータテーブルをフラッシュメモリなどに保持する、という具合である。
【0038】
乖離判断部0806は、所定のテスト信号の出力時に検知部で検知した電流又は/及び電圧と、保持されている当該テスト信号の出力時の電流/電圧期待値との乖離度合いを判断する機能を有し、マイコンや乖離判断プログラムなどによって実現することができる。具体的に、例えばパターン画像が全て同一であるとして、処理回路ブロックAから出力されたテスト信号によるパターン画像の検知結果が「950mA」であれば、乖離度合いは「5%」であると判断する、という具合である。
【0039】
もちろん、パターン画像が異なる場合には、テスト信号を出力した処理回路ブロックのIDを別途取得する構成とし、検知結果と比較する電流/電圧期待値を前述のテーブルデータから特定する構成とすると良い。
【0040】
そして上記処理を各処理回路ブロックの検知結果ごとに実行し、例えば処理回路ブロックBの乖離度合いを「2%」と判断し、処理回路ブロックCの乖離度合いを「80%」と判断し、処理回路ブロックDの乖離度合いを「98%」と判断する、という具合である。
【0041】
識別情報取得部0807は、電流又は/及び電圧と電流/電圧期待値とが所定以上乖離しているとの判断結果である場合に、当該テスト信号を択一的に出力した処理回路ブロックの識別情報を取得する機能を有し、マイコンや識別情報取得プログラムなどによって実現することができる。具体的には、上記乖離度合いから、所定値である「80%」以上の処理回路ブロックC及び処理回路ブロックDを特定する。その上で、より表示パネルに近い処理回路ブロックCを不具合のある箇所として、その識別情報を取得する、という具合である。
【0042】
そして取得した識別情報を、例えば装置に設けられたLEDの所定パターンでの明滅や表示パネルへのID表示などでユーザやサービスマンに通知したり、インターネット回線を介して遠隔サポートセンターのオペレータ端末に送信し通知したりする、という具合である。
【0043】
このようにして、本実施例の表示装置によって、ユーザやサービスマン、遠隔サポートセンターのオペレータなどは、容易にいずれの処理回路ブロックが故障しているのか特定することができる。
【0044】
<処理の流れ>
図9は、本実施例の表示装置における処理の流れの一例を表すフローチャートである。なお、以下に示すステップは、上記のような計算機の各ハードウェア構成によって実行されるステップであっても良いし、媒体に記録され計算機を制御するためのプログラムによって実行される処理ステップであっても構わない。
【0045】
この図にあるように、まず、例えばリモコンや操作パネルなどの入力操作や、インターネットやLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)回線を介した遠隔操作によって自己診断(テスト)モードコマンドが入力されると、表示装置のマイコンは、テスト出力回路に対する制御命令を出力する。するとテスト出力回路では、ステップS0901では当該制御命令に応じて各処理回路ブロックから択一的にテスト信号が出力されるよう処理を実行する。
【0046】
ここで、複数のテスト出力回路が各処理回路ブロックごとにそれぞれ配置されている場合には、例えばマイコンは、所定のプログラムの解釈結果にしたがって上記制御命令をそれぞれのテスト出力回路に順番に出力する構成をとると良い。これによって、各処理回路ブロックに配置されたテスト出力回路から、順番に(択一的に)テスト信号が出力されることになる。また、一のテスト出力回路が処理回路ブロックとは別に配置されている場合には、テスト出力回路は上記マイコンからの制御命令にしたがって順番にテスト信号を各処理回路ブロックに出力し、それによって各処理回路ブロックから択一的にテスト信号が出力される構成をとると良い。
【0047】
そして、ステップS0902では示パネルの表示/駆動電流(あるいは電圧)を測定する測定器は、テスト信号に応じてパターン画像が表示されると、その表示に際する表示パネルの電流(電圧)を検知する。
【0048】
そして、例えばそのテスト信号を出力した処理回路ブロックのIDと電流(電圧)の測定値を関連付け、表示パネルや映像用の表示パネルとは別のLEDディスプレイに当該情報を出力し、ユーザやサービスマンに通知しても良い。あるいは、インターネット回線を介して遠隔サポートセンターのオペレータに当該IDと測定値を通知しても良い。
【0049】
また表示装置自身が、テスト信号によるパターン画像表示の際の電流/電圧期待値を保持しており、その情報を参照して故障箇所を特定する処理をさらに実行しても良い。図10は、表示装置において故障箇所を特定し、その故障箇所の処理回路ブロックの識別情報を取得する際の処理の流れの一例を表す図である。
【0050】
この図にあるように、ステップS1001では先のステップS0902で検知された電流や電圧の測定値と、フラッシュメモリなどに保持されているパターン画像の表示パネルへの表示おける予め想定される電流(電圧)期待値とを比較し、両値の乖離度合いXをマイコンの演算処理によって算出する。ここで、処理回路ブロックごとにテスト信号によるパターン画像が異なり電流(電圧)期待値も異なる場合、ステップS1002では比較対象の測定値のもとになるテスト信号を択一的に出力した処理回路ブロックのIDを利用して、データテーブルの中から所望の電流(電圧)期待値を特定すると良い。そしてステップS1002では算出した乖離度合いXが所定値α以上であるかの判断処理を行う。
【0051】
そして、乖離度合いXが所定値α以下であるとの判断結果であれば、図9に戻り次の処理回路ブロックに関して同様の処理を実行する。一方、所定以上乖離しているとの判断結果が出力された場合には、ステップS1003では当該テスト信号を択一的に出力した処理回路ブロックのIDを取得する。ここで先のステップS0902にて、テスト信号の出力順番が表示パネルに最も近い処理回路ブロックから出力される順番となるよう処理されていれば、前述の通りこの最初に取得したIDで識別される処理回路ブロックを故障箇所のあるものとの判断結果を「マイコン」は出力する。またテスト信号の出力順番が上記順番でなければ、図9に戻り全ての処理回路ブロックからのテスト信号による表示パネルの電流などの測定を行い、その測定値と処理回路ブロックの表示パネルに近い順からの並びを示すデータなどを参照する「マイコン」の演算処理によって、前述のように故障箇所のある処理回路ブロックを特定しそのIDを取得すると良い。
【0052】
そして、取得したIDを表示パネルやLEDディスプレイに出力表示したり、LEDランプの所定パターンで明滅させたりすることで、当該故障箇所の処理回路ブロックを示すIDをユーザやサービスマンに通知しても良い。あるいは、インターネット回線を介して遠隔サポートセンターのオペレータに当該故障箇所の処理回路ブロックのIDを通知しても良い。
【0053】
<効果の簡単な説明>
以上のように、本実施例の表示装置によって、ユーザやサービスマンなどは容易にいずれの処理回路ブロックが故障しているのか特定することができる。
【符号の説明】
【0054】
0200 表示装置
0201 表示パネル
0202 複数の処理回路ブロック
0203 テスト出力回路
0204 検知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルと、
映像ソース入力から表示パネルに至るまで順に信号を受け渡す関係の複数の処理回路ブロックと、
各処理回路ブロックの入力に対して択一的にテスト信号を出力するテスト出力回路と、
テスト出力がされる場合に表示パネルでの電流又は/及び電圧を検知する検知部と、
を有する表示装置。
【請求項2】
複数の処理回路ブロックは、デコーダ、フレーム画像編集回路、フレームレート変換回路、2D/3D画像変換回路、パネルコントローラ、のいずれか一以上からなる請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
テスト出力回路は、前記順に信号を受け渡す関係において表示パネルに最も近い処理回路ブロックから、その入力に対するテスト信号を順次出力する順次出力手段を有する請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
テスト出力回路は、各処理回路ブロックで異なるパターン画像を表示パネルに表示するためのパターン画像表示信号をテスト信号として出力するパターン画像表示信号出力手段を有する請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記各処理回路ブロックで択一的なテスト信号によるテスト出力時の表示パネルの電流又は/及び電圧期待値を保持する電流/電圧期待値保持部と、
所定のテスト信号の出力時に検知部で検知した電流又は/及び電圧と、保持されている当該テスト信号の出力時の電流/電圧期待値との乖離度合いを判断する乖離判断部と、
電流又は/及び電圧と電流/電圧期待値とが所定以上乖離しているとの判断結果である場合に、当該テスト信号を択一的に出力した処理回路ブロックの識別情報を取得する識別情報取得部と、
を有する請求項1から4のいずれか一に記載の表示装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一の表示装置を含むテレビジョン受像機。
【請求項7】
表示パネルと、映像ソース入力から表示パネルに至るまで順に信号を受け渡す関係の複数の処理回路ブロックを有する表示装置を動作させるプログラムであって、
各処理回路ブロックの入力に対して択一的にテスト信号を出力するテスト出力ステップと、
テスト出力がされる場合に表示パネルでの電流又は/及び電圧を検知する検知ステップと、
を表示装置の計算機に実行させるプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを記録する記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−115521(P2013−115521A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258232(P2011−258232)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】