説明

表示装置、表示方法及びテレビ受信装置

【課題】4色以上の多原色により映像を表示する際に、多原色の色再現域を有効に活用することで、高品位の映像表現を可能とする。
【解決手段】表示装置の色変換処理回路は、3次元の色空間でN原色による色再現範囲を表す色立体の頂点を、3原色の色立体上に設定する。そして設定した頂点を含めた3色の色立体の全ての頂点のうち、隣接する3頂点と、3色の色立体における重心とを頂点とするN(N−1)×2個の4面体に分割する。入力映像信号が示す階調が含まれる4面体において、重心から隣接する3頂点に向かうベクトルで階調を表したベクトル値を算出し、N原色による色再現範囲を表す色立体の対応する四面体に適用する。これにより、N原色の色立体におけるN原色の階調を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、表示方法及びテレビ受信装置に関し、より詳細には、4色以上のN色の原色により映像を表示する表示装置、表示方法及び該表示装置を備えたテレビ受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置におけるカラー画像の表示は、通常、赤(R)、緑(G)、青(B)からなる3原色の加法混色により実現される。すなわち、カラー表示画像における各画素は、RGBの各副画素から構成される。従って、例えばカラー表示用の液晶ディスプレイでは、通常、カラーフィルタによりRGBの副画素による画素が形成さている。そして、白色光を発するバックライトにより、カラー画像表示が行われる。
【0003】
カラー画像の表示装置において、色再現範囲を拡大し、画面輝度を向上させるために、4色以上のカラーフィルタを用いる構成のものが知られている。例えば、RGBの3原色に加えて、Y(黄)のカラーフィルタによる副画素を形成し、主に黄色方向の色再現範囲を拡げるともに画面輝度を向上させるものがある。また、4原色の表示装置として、RGBの3原色に加えてW(白)を加えた構成のものも知られている。
【0004】
また、上記の4つの原色のみならず、5色以上の副画素による構成のものも考えられている。例えば、R、G、B、C(シアン)、Yの5原色による構成、あるいはR、G、B、C、M(マゼンタ)、Yの6原色による構成、あるいはR、G、B、C、M、Y、Wの7原色による構成などが知られている。上記の4原色以上のN原色により映像表現するディスプレイを多原色ディスプレイとする。
【0005】
カラー表示用の表示装置では、上記のような多原色ディスプレイが使用される場合であっても、外部から与えられる表示データは、RGBの3原色に対応する原色信号の形式となっていた。このため、例えばRGBYの4原色構成のディスプレイの場合、表示装置では、RGBの3原色に対応する原色信号(3原色信号)R1,G1,B1を、RGBYの4原色に対応する原色信号(4原色信号)R2,G2,B2,Y2に変換するための変換回路を備える必要がある。
【0006】
このような色変換の技術に関して、例えば、特許文献1には、多原色への色変換を行う場合に、入力された白に対応する画像データを適切に再現するための色変換装置が開示されている。多原色(N原色)ディスプレイの色再現範囲は、原色に対応するベクトルによって構成された多面体で表され、N原色の場合には、N(N−1)面体となる。
この多面体を四角錘で切り出したとき、その四角錐を3つのベクトルで表現することができる。このとき、3つのベクトルから三刺激値X、Y、Zを算出し、さらにベクトルと多原色の階調を対応させることにより、多原色変換を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−134752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多原色ディスプレイは、3原色ディスプレイよりもカラー画像について高い表現能力を有している。しかしながら、上述したように、外部から与えられる表示データは、通常RGBの3原色に対応する原色信号の形式であるため、表示装置では、RGBの3原色に対応する原色信号を多原色の原色信号に変換する必要がある。
ここで、3原色のディスプレイと、4原色以上の多原色ディスプレイとは、2次元的、3次元的に色再現範囲が異なり、3原色信号を変換して得られる多原色信号は、多原色信号の全ての信号状態を取り得ない。すなわち、3原色信号を変換して得られる4原色信号等の多原色信号に基づき、多原色ディスプレイで映像を表示する場合、その多原色ディスプレイの表現能力を十分に利用することができない。
【0009】
特許文献1の技術の場合、三刺激値XYZを多原色の色域にマッピングすることができるが、上記のように3原色と多原色の色再現範囲が異なるため、入力信号(3原色)を三刺激値に展開するときに、多原色に相当する色再現範囲の全てを使用してマッピングすることはできず、多原色ディスプレイを有効に利用することができない。
【0010】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、4色以上の多原色により映像を表示する際に、多原色の色再現範囲を有効に活用することで、高品位の映像表現が可能な表示装置、表示方法及びテレビ受信装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、4原色以上のN原色により映像を表示する映像表示装置であって、入力した3原色の映像信号を前記N原色の映像信号に変換する色変換処理部と、該色変換処理部が変換した映像信号によりN原色による映像表示を行う表示部とを有し、前記色変換処理部は、3次元の色空間で3原色による色再現範囲を示す色立体において、前記入力した映像信号の階調を表すベクトル値を算出し、該算出したベクトル値を、前記3次元の色空間でN原色による色再現範囲を示す色立体に適用し、前記N原色の色立体における階調を算出することにより、前記3原色の映像信号を前記N原色の映像信号に変換すること、を特徴としたものである。
【0012】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記色変換処理部が、3次元の色空間でN原色による色再現範囲を表す色立体の頂点であって、3原色による色再現範囲を表す色立体にはない前記頂点を、前記3原色の色立体に設定し、該設定した頂点を含めた前記3色の色立体の全ての頂点のうち、隣接する3頂点と、前記3原色の色立体における重心とを頂点とするN(N−1)×2個の4面体に前記3原色の色立体を分割し、前記映像信号の階調が含まれる前記4面体において、前記重心から前記隣接する3頂点に向かうベクトルで前記階調を表した前記ベクトル値を算出し、前記N原色による色再現範囲を表す色立体を、隣接する3頂点と、前記N原色の色立体の重心とを頂点とするN(N−1)×2個の4面体に分割し、前記算出したベクトル値を、該ベクトル値を計算した四面体に対応するN原色の色立体の四面体に適用し、前記N原色の色立体における階調を算出する、ことを特徴としたものである。
【0013】
第3の技術手段は、第2の技術手段において、ユーザによる操作を受け付ける操作部を有し、前記色変換処理部が、前記操作部に対する操作に基づいて、前記3原色の色立体に対して設定する前記N原色の色立体の頂点位置を調整することを特徴としたものである。
【0014】
第4の技術手段は、第1〜第3のいずれか1の技術手段において、前記色変換処理部は、前記入力した3原色の映像信号を線形化したデータに基づいて、前記3原色の映像信号を前記N原色の映像信号に変換し、前記表示部に出力することを特徴としたものである。
【0015】
第5の技術手段は、入力した3原色の映像信号を前記N原色の映像信号に変換する色変換処理部と、該色変換処理部が変換した映像信号によりN原色による映像表示を行う表示部とを有する映像表示装置によって4原色以上のN原色により映像を表示する表示方法であって、前記色変換処理部が、3次元の色空間で3原色による色再現範囲を示す色立体において、前記入力した映像信号の階調を表すベクトル値を算出するステップと、前記色変換処理部が、前記算出したベクトル値を、前記3次元の色空間でN原色による色再現範囲を示す色立体に適用し、前記N原色の色立体における階調を算出することにより、前記3原色の映像信号を前記N原色の映像信号に変換するステップと、を有することを特徴としたものである。
【0016】
第6の技術手段は、第5の技術手段において、前記ベクトル値を算出するステップは、前記色変換処理部が、3次元の色空間でN原色による色再現範囲を表す色立体の頂点であって、3原色による色再現範囲を表す色立体にはない前記頂点を、前記3原色の色立体に設定し、前記設定した頂点を含めた前記3原色の色立体の全ての頂点のうち、隣接する3頂点と、前記3原色の色立体における重心とを頂点とするN(N−1)×2個の4面体に前記3原色の色立体を分割し、前記映像信号の階調が含まれる前記4面体において、前記重心から前記隣接する3頂点に向かうベクトルで前記階調を表した前記ベクトル値を算出し、前記3原色の映像信号を前記N原色の映像信号に変換するステップは、前記色変換処理部が、前記N原色による色再現範囲を表す色立体を、隣接する3頂点と、前記N原色の色立体の重心とを頂点とするN(N−1)×2個の4面体に分割し、前記算出したベクトル値を、該ベクトル値を計算した四面体に対応するN原色の色立体の四面体に適用し、前記N原色の色立体における階調を算出する、ことを特徴としたものである。
【0017】
第7の技術手段は、第1〜第4のいずれか1の技術手段の表示装置を備えたテレビ受信装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、4色以上の多原色により映像を表示する際に、多原色の色再現域を有効に活用することで、高品位の映像表現が可能な表示装置、表示方法及びテレビ受信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る表示装置における色変換処理を行う部分の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の表示装置における色変換処理を説明するための図で、RGBの3原色の色立体を示す図である。
【図3】本発明の表示装置における色変換処理を説明するための図で、RGBYの4原色の色立体を示す図である。
【図4】4原色の色立体から四面体(三角錐)を切り出す処理を説明する図である。
【図5】3原色の色立体に対して4原色の色立体の特有の頂点を設定する処理を説明する図である。
【図6】3原色の色立体から四面体(三角錐)を切り出す処理を説明する図である。
【図7】3原色の色立体から切り出した一つの四面体における特定の階調を計算する処理を説明する図である。
【図8】4原色の色立体から切り出した一つの四面体における特定の階調を計算する処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明に係る表示装置における色変換処理を行う部分の構成例を示すブロック図である。表示装置100は、多原色ディスプレイ101と、色変換処理回路102と、操作部103とを備えている。色変換処理回路102は本発明の色変換処理部に該当し、多原色ディスプレイ101は本発明の表示部に該当する。
【0021】
多原色表示とは、基本となる表示色(基本色)を4色以上用い、この基本色を適当な割合で混合することによって実現されるカラー表示を意味する。また、多原色ディスプレイとは、上記基本色に対応した画素を有することにより多色表示を実現する表示パネルを意味する。多原色ディスプレイ101としては、液晶表示パネル、CRT、PDP、液晶プロジェクタなど、多原色表示が可能なデバイスであればいずれのものを用いてもよい。以下の例では、RGBYの4原色ディスプレイを用いた構成を例として説明する。
【0022】
色変換処理回路102に入力される映像信号は、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色信号からなる映像信号である。色変換処理回路102では、入力映像信号に逆ガンマ補正処理を施し、その後3原色信号を多原色信号d1〜d4に変換する。そして変換された多原色信号にガンマ補正処理を行う。
ここでは、色変換処理回路102に入力される映像信号は、ガンマ補正された状態で伝送されてくることを想定している。ガンマ補正された映像信号は階調レベルと輝度との関係が非線形になっているため、まず逆ガンマ補正処理を行うことによって階調レベルと輝度との関係を線形にする。これにより適切な多原色信号変換処理を行うことができる。そして色変換処理回路102は、3原色信号を多原色の映像信号d1〜d4に変換し、これにガンマ補正処理を行って、多原色ディスプレイ101に供給する。この他、逆ガンマ補正処理を行った映像信号をXYZの3刺激値に変換し、XYZの色空間で多原色の信号に変換し、これをRGBYの信号に変換してガンマ補正を行うものであってもよい。
【0023】
また、色変換処理回路102に入力する映像信号は、例えばカラーテレビ信号に用いられているYCbCrのようなRGBの3原色信号に変換可能な信号であってもよい。この場合、YCbCr信号等をRGBの3原色信号に変換するための回路部を設ける。また、入力映像信号がガンマ補正された状態で伝送されていない場合には、上記の逆ガンマ補正処理と、その後のガンマ補正処理は省略できる。
【0024】
表示装置100では、多原色ディスプレイ101に表示される映像の色を調整することができるようになっている。この調整は、操作者が操作部103を操作することによって行われる。操作部103は、このような操作を受け付け、その操作に応じた調整信号を色変換処理回路102に供給する。色変換処理回路102では、操作部103からの調整信号に基づいて映像信号の調整を行う。
【0025】
図2は、本発明の表示装置における色変換処理を説明するための図で、RGBの3原色の色立体を示す図である。
3原色(RGB)のディスプレイにおける再現可能な色再現範囲は、3次元の色空間で3原色の色ベクトルの和として表される領域に限られる。例えば、RGBの3種類の副画素で色を再現するディスプレイにおいて、RGBの最大階調をそれぞれ、Rmax、Gmax、Bmaxとする。
【0026】
この場合、RGBの色空間における色立体の角頂点を、(R,G,B)の階調で表すと、頂点K=(0,0,0)、W=(Rmax,Gmax,Bmax)、R=(Rmax,0,0)、G=(0,Gmax,0)、B=(0,0,Bmax)、GB=(0,Gmax,Bmax)、RG=(Rmax,Gmax,0)、BR=(Rmax,0,Bmax)の8点を頂点とする6面体となる。この6面体の内部が、その3原色ディスプレイにおける色再現範囲となる。
【0027】
図3は、本発明の表示装置における色変換処理を説明するための図で、RGBYの4原色の色立体を示す図である。
4原色(RGBY)のディスプレイにおける再現可能な色再現範囲は、3次元の色空間で4原色の色ベクトルの和として表される領域に限られる。例えば、RGBYの4種類の副画素で色を再現するディスプレイにおいて、RGBYの最大階調をRmax、Gmax、Bmax、Ymaxとする。
【0028】
この場合、RGBYの色空間における色立体の各頂点を、(R,G,B,Y)の階調値で表すと、頂点K=(0,0,0,0)、W=(Rmax,Gmax,Bmax,Ymax)、R=(Rmax,0,0,0)、G=(0,Gmax,0,0)、B=(0,0,Bmax,0)、Y=(0,0,0,Ymax)、GB=(0,Gmax,Bmax,0)、YG=(0,Gmax,0,Ymax)、RG=(Rmax,Gmax,0,0)、BR=(Rmax,0,Bmax,0)、YGB=(0,Gmax,Bmax,Ymax)、GBR=(Rmax,Gmax,Bmax,0)、RYG=(Rmax,Gmax,0,Ymax)、BRY=(Rmax,0,Bmax,Ymax)の14点を頂点とする12面体となる。この12面体は、12個の平行四辺形で囲まれたものとなる。この12面体の内部が、その4原色ディスプレイにおける色再現範囲となる。以下では、3次元色空間で表される色再現範囲を色立体として説明する。
【0029】
本発明の実施形態による色変換処理回路102は、3原色の色立体において、入力した映像信号の階調を表すベクトル値を算出し、その算出したベクトル値を、N原色の色立体に適用し、N原色の色立体における階調を算出することにより、3原色の映像信号をN原色の映像信号に変換する処理を行う。以下にその処理をRGB信号からRGBY信号への変換を例として具体的に説明する。
【0030】
図4は、4原色の色立体から四面体(三角錐)を切り出す処理を説明する図である。まず色変換処理回路102は、RGBYの階調で表される色空間における4色(RGBY)の色立体を、隣接する3頂点と色立体の重心Oとを頂点とする四面体に分割する。図4に示す四面体は、色立体の重心O、頂点Y、頂点RY、頂点RYGの4点を頂点とする四面体である。このような四面体を全ての隣接3頂点について生成して切り出す。
N原色の色立体はN(N−1)面体となり、表平面はN(N−1)個の平行四辺形となる。この平行四辺形を対角で分割した三角形を底面、重心を頂点とする4面体はN(N−1)×2個切り出すことができる。従って4原色の場合には、12個の平行四辺形で囲まれた12面体になり、隣接する3点と色立体の重心とを頂点とする四面体を全部で24個切り出すことができる。
【0031】
図5は、3原色の色立体に対して4原色の色立体の特有の頂点を設定する処理を説明する図である。
色変換処理回路102は、RGBの階調で表される色空間における3原色の色立体に対して、4原色特有の頂点に対応する階調を任意に設定する。例えば、RGBYの4色の多原色ディスプレイに特有の色はYであり、3原色色立体に対して4原色色立体の特有の頂点は、Y、YG,RY、RYG、GBR,BRY,YGBである。これらの頂点を3原色色立体上の任意の場所に設定する。
例えば、図5に示すように、Yの最大階調は、3色立体における頂点RYGとKとを結ぶ線上で、頂点RYGとKとの間に設定される。そして全ての特有の頂点を3原色の色立体上に設定した状態が図5に示すものとなる。
【0032】
RGBYの4原色色立体の頂点をRGBの3原色の色立体上に設定する場合、以下のような考え方を元に頂点設定を行う。
まず、基本的に、3原色色立体と4原色色立体の両方に存在する原色頂点R,G,B、及び混色頂点のシアン(GB)、マゼンタ(BR)は、4原色色立体の頂点をそのまま3原色色立体に対応させる。そして、4原色色立体に存在し、3原色色立体に存在しない特有の頂点Y、YG,RY、RYG、GBR,BRY,YGBを3原色色立体上に設定する。
【0033】
この場合、4色色立体の特有の頂点は、3色色立体の頂点間を結ぶ線上に設定する。3次元色立体の色域の全てを活用するためである。
ここで、4原色色立体のYは3原色のRG(R+G)に相当するため、4原色色立体のYを3原色色立体のRGに対応させることが考えられる。しかしながら、3原色のRGはBの補色であるが、4原色のYは原色の一つでありBの補色ではないため、これらはWに対する輝度比が大きく異なる。従って、4原色色立体のYを3原色色立体のRGに対応させると4原色表示時の違和感が大きくなる。従って、3原色色立体のRGに対しては、Bの補色であり輝度比が近い4原色色立体のRYGを対応させる。つまり、4原色色立体の頂点設定前における3原色色立体のRGを、頂点設定時にRYGに置き換える。3原色色立体では、Yは、RYGとKを結ぶ線上に設定する。
こうして、4原色色立体の全ての頂点を3次元色立体上に適宜設定する。
【0034】
図6は、3原色の色立体から四面体(三角錐)を切り出す処理を説明する図である。色変換処理回路102は、RGBの階調で表される色空間における3色(RGBY)の色立体を、隣接する3頂点と色立体の重心Oとを頂点とする四面体に分割する。このときの頂点は、3原色の色立体の本来の位置にある頂点に加えて、上記図5で設定した4原色特有の頂点も色立体の頂点とみなす。図6に示す四面体は、色立体の重心O、頂点Y、頂点RY、頂点RYGの4点を頂点とする四面体である。このような四面体を全ての隣接3頂点について生成して切り出す。これにより、3原色の色立体の場合も、隣接する3点と色立体の重心とを頂点とする四面体を、全部で24個切り出すことができる。
【0035】
図7は、3原色の色立体から切り出した一つの四面体における特定の階調を計算する処理を説明する図である。3原色の色立体から切り出した四面体の頂点が、A,B,C,及び色立体の重心Oの4点であるものとする。また、A,B,C,OのRGB階調が、それぞれ(R,G,B)、(R,G,B)、(R,G,B)、(R,G,B)であるものとする。
【0036】
この場合、四面体の中の特定の色をF(RFi,GFi,BFi)とするとき、Fは、3つのベクトル、つまりOAを結ぶベクトルα、OBを結ぶベクトルβ、及びOCを結ぶベクトルγにより表すことができる。このとき、ABCOのRGB階調と、FのRGB階調が既知であるため、α,γ,βの値をこれら階調から算出することができる
【0037】
のRGB階調は次の式で表すことができる。
=α(A−O)+β(B−O)+γ(C−O)
これを展開すると以下のごとくとなる。
=αA+βB+γC−(α+β+γ)O
=α(R,G,B)+β(R,G,B)+γ(R,G,B)−(α+β+γ)(R,G,B
={α(R−R)+β(R−R)+γ(R−R),α(G−G)+β(G−G)+γ(G−C),α(B−B)+β(B−B)+γ(B−B)}
Fi=α(R−R)+β(R−R)+γ(R−R
Fi=α(G−G)+β(G−G)+γ(G−C
Fi=α(B−B)+β(B−B)+γ(B−B
そして、上記のようにFiの階調と、ABCOの階調が既知であるため、これらの階調からベクトルα、β、γの値を計算することができる。このベクトルα,β,γを4色の色立体に適用して、4色の色立体におけるFに対応するFoを算出する。
【0038】
図8は、4原色の色立体から切り出した一つの四面体における特定の階調を計算する処理を説明する図である。RGBYの4原色の色立体から切り出した一つの四面体の頂点が、S,T,U,及び色立体の重心Oの4点であるものとする。S,T,U,Oの階調が、それぞれ(R,G,B,Y)、(R,G,B,Y)、(R,G,B,Y)、(R,G,B,Y)であるものとする。
【0039】
この場合、四面体の中の任意の一点の色をF(RFO,GFO,BFO,YFO)とするとき、Fは、3つのベクトル、つまりOAを結ぶベクトルα、OBを結ぶベクトルβ、及びOCを結ぶベクトルγにより表すことができる。このとき、ABCOの階調が既知であるため、3原色の色立体で求めたベクトル(α、β,γ)を用いることにより、4原色の色立体における色Fの階調を算出することができる。
【0040】
つまり4原色の色立体におけるFの三刺激値は次の式で表すことができる。
=αS+βT+γU−(α+β+γ)O
=α(R,G,B,Y)+β(R,G,B,Y)+γ(R,G,B,Y)−(α+β+γ)(R,G,B,Y
={α(R−R)+β(R−R)+γ(R−R),α(G−G)+β(G−G)+γ(G−G),α(B−B)+β(B−B)+γ(B−B),α(Y−Y)+β(Y−Y)+γ(Y−Y)}
FO=α(R−R)+β(R−R)+γ(R−R
FO=α(G−G)+β(G−G)+γ(G−G
FO=α(B−B)+β(B−B)+γ(B−B
FO=α(Y−Y)+β(Y−Y)+γ(Y−Y
【0041】
そして、STUOの階調が既知であるため、3原色の色立体で算出したベクトルα、β、γの値を上記4原色の色立体の式に代入して、4原色の色立体におけるFに対応するFの値を算出することができる。このときの4原色の色立体における四面体は、ベクトルを算出した3原色の四面体に対応する四面体とする。つまり3原色の色立体における四面体の頂点ABCと、4原色の色立体における頂点STUとがそれぞれ同じ色の頂点である四面体にベクトルα、β、γを適用する。これにより、3原色の色立体における特定の色Fを4原色の色立体に写像して、対応する色FのRGBYの階調を得ることができる。
【0042】
このように、3原色の色立体上に4原色の色立体特有の頂点を設定し、これを3原色の色立体の頂点とみなして四面体を切り出し、入力映像信号が示す階調を四面体のベクトルで表し、そのベクトルを4原色の色立体の対応する四面体に適用することにより、簡単な計算を行うだけで、3原色信号から4原色の色再現範囲の全てを活用できる信号変換を行うことができる。
【0043】
また、上記の3原色の色立体に対して、4原色の色立体の特有の頂点を設定したとき、操作部103に対するユーザ操作に応じて、3原色色立体に適用する4原色色立体の頂点を調整可能とすることができる。頂点を調整することにより、変換後4原色信号の色相等を調整することができる。
4原色色立体特有の頂点は、3原色色立体にない色を示すものであり、これらの色は、3原色色立体の色との色相の違いに加えて輝度が高く、4原色色立体の頂点を3原色色立体の頂点間の辺上に設定していった場合に、違和感を生じる場合もある。このような場合、例えば4原色色立体の頂点ではなく、頂点より内側の点を頂点とみなして3原色色立体に設定することができる。この場合、4原色色立体の全ての領域を活用できなくなるが、この調整を可能とすることにより、色相変化などの違和感が生じたときに適宜違和感を減少させるための調整ができるようになる。
【0044】
また、上記の実施形態では、3原色信号を4原色信号に変換する処理を示したが、さらに多原色の原色信号に変換することもできる。この場合、N原色のときの色立体を構成する平面数はN(N−1)となる。そしてこの色立体から平面数×2の四面体(三角錘)を切り出すことができる。3原色の色立体からN原色の色立体に任意の色Fの階調を写像する場合、N原色の色立体に特有の頂点を3原色の色立体に設定し、3原色の色立体から、N原色の色立体で切り出せる数と同数の四面体を切り出す。そして、任意の色Fをその色Fを含む四面体の頂点のベクトルで表現し、そのベクトルをN原色の色立体に適用して、N原色の色立体における対応点色Fの階調を得る。
【0045】
また、上記の表示装置は、テレビ受信装置として構成することができる。テレビ受信装置は、アンテナで受信した放送信号を選局して復調し、復号して再生用映像信号を生成する手段を有し、再生用映像信号を色変換処理回路102に入力させる。これにより、受信した放送信号を多原色ディスプレイ101に表示させることができる。本発明は、表示装置、およびその表示装置を備えるテレビ受信装置として構成することができる。
【符号の説明】
【0046】
100…表示装置、101…多原色ディスプレイ、102…色変換処理回路、103…操作部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4原色以上のN原色により映像を表示する映像表示装置であって、
入力した3原色の映像信号を前記N原色の映像信号に変換する色変換処理部と、該色変換処理部が変換した映像信号によりN原色による映像表示を行う表示部とを有し、
前記色変換処理部は、3次元の色空間で3原色による色再現範囲を示す色立体において、前記入力した映像信号の階調を表すベクトル値を算出し、
該算出したベクトル値を、前記3次元の色空間でN原色による色再現範囲を示す色立体に適用し、前記N原色の色立体における階調を算出することにより、前記3原色の映像信号を前記N原色の映像信号に変換すること、を特徴とする映像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記色変換処理部は、
3次元の色空間でN原色による色再現範囲を表す色立体の頂点であって、3原色による色再現範囲を表す色立体にはない前記頂点を、前記3原色の色立体に設定し、
前記設定した頂点を含めた前記3原色の色立体の全ての頂点のうち、隣接する3頂点と、前記3原色の色立体における重心とを頂点とするN(N−1)×2個の4面体に前記3原色の色立体を分割し、
前記映像信号の階調が含まれる前記4面体において、前記重心から前記隣接する3頂点に向かうベクトルで前記階調を表した前記ベクトル値を算出し、
前記N原色による色再現範囲を表す色立体を、隣接する3頂点と、前記N原色の色立体の重心とを頂点とするN(N−1)×2個の4面体に分割し、前記算出したベクトル値を、該ベクトル値を計算した四面体に対応するN原色の色立体の四面体に適用し、前記N原色の色立体における階調を算出する、ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の表示装置において、
ユーザによる操作を受け付ける操作部を有し、
前記色変換処理部は、前記操作部に対する操作に基づいて、前記3原色の色立体に対して設定する前記N原色の色立体の頂点位置を調整することを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の表示装置において、
前記色変換処理部は、前記入力した3原色の映像信号を線形化したデータに基づいて、前記3原色の映像信号を前記N原色の映像信号に変換し、前記表示部に出力することを特徴とする表示装置。
【請求項5】
入力した3原色の映像信号を前記N原色の映像信号に変換する色変換処理部と、該色変換処理部が変換した映像信号によりN原色による映像表示を行う表示部とを有する映像表示装置によって4原色以上のN原色により映像を表示する表示方法であって、
前記色変換処理部が、3次元の色空間で3原色による色再現範囲を示す色立体において、前記入力した映像信号の階調を表すベクトル値を算出するステップと、
前記色変換処理部が、前記算出したベクトル値を、前記3次元の色空間でN原色による色再現範囲を示す色立体に適用し、前記N原色の色立体における階調を算出することにより、前記3原色の映像信号を前記N原色の映像信号に変換するステップと、を有することを特徴とする映像表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表示方法において、
前記ベクトル値を算出するステップは、前記色変換処理部が、3次元の色空間でN原色による色再現範囲を表す色立体の頂点であって、3原色による色再現範囲を表す色立体にはない前記頂点を、前記3原色の色立体に設定し、
前記設定した頂点を含めた前記3原色の色立体の全ての頂点のうち、隣接する3頂点と、前記3原色の色立体における重心とを頂点とするN(N−1)×2個の4面体に前記3原色の色立体を分割し、
前記映像信号の階調が含まれる前記4面体において、前記重心から前記隣接する3頂点に向かうベクトルで前記階調を表した前記ベクトル値を算出し、
前記3原色の映像信号を前記N原色の映像信号に変換するステップは、前記色変換処理部が、前記N原色による色再現範囲を表す色立体を、隣接する3頂点と、前記N原色の色立体の重心とを頂点とするN(N−1)×2個の4面体に分割し、前記算出したベクトル値を、該ベクトル値を計算した四面体に対応するN原色の色立体の四面体に適用し、前記N原色の色立体における階調を算出する、ことを特徴とする表示方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1の表示装置を備えたテレビ受信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−80147(P2013−80147A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220809(P2011−220809)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】