説明

表示装置、表示装置を備える電子機器および表示装置の製造方法

【課題】表示装置の構造および製造プロセスが複雑化するのを抑制することが可能な表示装置および表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】このEL装置(表示装置)100は、複数の画素2と、画素2に設けられた反射層23と、反射層23の表面上に形成され、反射層23の酸化物からなる単層の反射層酸化膜24と、反射層酸化膜24の上方に有機発光層27を介して形成された対向電極28とを備える。また、複数の画素2は、異なる膜厚の反射層酸化膜24を有するように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、表示装置を備える電子機器および表示装置の製造方法に関し、特に、反射層の上方に発光層を介して半反射層を備える表示装置、表示装置を備える電子機器および表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反射層の上方に発光層を介して半反射層を備える表示装置および表示装置の製造方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。上記特許文献1に開示されている表示装置および表示装置の製造方法では、各画素に設けられた反射層(光反射層)の上方には透明電極を介して発光層(発光体)および半反射層(第2電極)が形成されている。また、各画素に設けられた反射層と半反射層との距離を調整するために、反射層と半反射層との間に1層〜3層に積層された透明電極(第1電極)を形成している。これにより、発光層から発光された光を反射層と半反射層との間で共振させ、光強度を強めた状態で半反射層側から光(R(赤色)、G(緑色)およびB(青色))を出射させる光共振構造が構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2007−48644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の表示装置では、反射層と半反射層との距離の調整を行うために、1層〜3層の積層数の透明電極を形成しているため、表示装置の構造および製造プロセスが複雑化する。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、表示装置の構造および製造プロセスが複雑化するのを抑制することが可能な表示装置および表示装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における表示装置は、複数の画素と、画素に設けられた反射層と、反射層と、反射層の表面上に形成され、反射層の酸化物からなる単層の反射層酸化膜と、反射層酸化膜の上方に発光層を介して形成された半反射層とを備え、複数の画素は、異なる膜厚の反射層酸化膜を有するように形成されている。
【0007】
この第1の局面による表示装置では、上記のように、反射層の表面上に形成された反射層の酸化物からなる単層の反射層酸化膜を、複数の画素が、異なる膜厚の反射層酸化膜を有するように形成することによって、反射層と半反射層との間の距離を単層の反射層酸化膜により調整することができるので、たとえば、透明電極(画素電極)の積層数を調整することにより反射層と半反射層との間の距離を調整する場合と比べて、表示装置の構造および製造プロセスが複雑化するのを抑制することができる。
【0008】
上記第1の局面による表示装置において、好ましくは、複数の画素には、それぞれ、画素トランジスタが設けられており、反射層は、画素トランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続されている。このように構成すれば、たとえば、表示装置に設けられた画素トランジスタを用いて、反射層に電圧を印加することができるので、反射層の表面を陽極酸化して、反射層の表面に反射層酸化膜を形成することができる。これにより、反射層を陽極酸化する際に、別途、電圧を印加するための素子を表示装置に設けることなく反射層の表面に反射層酸化膜を形成することができる。
【0009】
上記第1の局面による表示装置において、好ましくは、反射層酸化膜は、平面的に見て、反射層の上面上の略全域に形成されている。このように構成すれば、たとえば、反射層酸化膜が反射層の上面上の一部に形成されている場合と異なり、反射層と半反射層との間の距離を反射層の上面の全域にわたって均一にすることができる。
【0010】
上記第1の局面による表示装置において、好ましくは、反射層酸化膜と発光層との間には、単層の画素電極が形成されている。このように構成すれば、たとえば、R(赤色)、G(緑色)およびB(青色)に対応して、反射層と半反射層との間の距離を調整するために透明電極(画素電極)を最大3層積層させる場合と比べて、画素電極の構造を簡素化することができる。
【0011】
上記第1の局面による表示装置において、好ましくは、複数の画素は、最大強度を有する波長が異なる光を発光するように構成されており、最大強度を有する波長が長い光を発光する画素に設けられた反射層酸化膜の膜厚は、最大強度を有する波長が短い光を発光する画素に設けられた反射層酸化膜の膜厚よりも大きく形成されている。このように構成すれば、反射層酸化膜が波長の長さに応じた膜厚に形成されているので、波長の長さに応じて反射層と半反射層との間の距離を調整することができる。
【0012】
この場合、好ましくは、複数の画素は、それぞれ、赤色、緑色および青色のうち、1つの光の色で発光するように構成されており、赤色に発光する画素に設けられた反射層酸化膜の膜厚は、緑色に発光する画素に設けられた反射層酸化膜の膜厚よりも大きく形成され、青色に発光する画素には、反射層酸化膜は形成されていない。このように構成すれば、青色に発光する画素にも反射層酸化膜が形成されている場合と比べて、光共振構造をより簡素化させることができる。
【0013】
この第2の局面による電子機器は、上記のいずれかの構成を有する液晶表示装置を備える。このように構成すれば、表示装置の構造が複雑化するのを抑制することが可能な液晶表示装置を備える電子機器を得ることができる。
【0014】
この発明の第3の局面における表示装置の製造方法は、複数の画素に反射層を形成する工程と、反射層の表面上に、反射層の表面を酸化することにより反射層の酸化物からなるとともに、複数の画素において異なる膜厚を有する単層の反射層酸化膜を形成する工程と、反射層酸化膜の上方に発光層を介して半反射層を形成する工程とを備える。
【0015】
この第3の局面による表示装置の製造方法では、上記のように、反射層の表面上に、反射層の表面を酸化することにより反射層の酸化物からなるとともに、複数の画素において異なる膜厚を有する単層の反射層酸化膜を形成する工程を備えることによって、反射層の表面を酸化することにより、容易に、単層の反射層酸化膜を形成するとともに、反射層と半反射層との間の距離を単層の反射層酸化膜により調整することができるので、たとえば、反射層と半反射層との間の距離を積層させて形成した透明電極により調整する場合と比べて、表示装置の構造および製造プロセスが複雑化するのを抑制することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、反射層酸化膜を形成する工程は、反射層を陽極酸化することにより反射層の酸化物からなる単層の反射層酸化膜を形成する工程を含む。このように構成すれば、反射層を陽極酸化することにより、容易に、単層の反射層酸化膜を形成することができるので、透明電極を積層して形成する場合と比べて、製造工程数が増加するのを抑制することができる。
【0017】
上記陽極酸化する工程を含む反射層酸化膜を形成する工程を備える表示装置の製造方法において、好ましくは、画素トランジスタを形成する工程をさらに備え、反射層を形成する工程は、反射層と画素トランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方とを接続するように反射層を形成する工程を含み、反射層酸化膜を形成する工程は、画素トランジスタから反射層に電圧を印加することにより反射層を陽極酸化することによって、反射層の表面上に反射層酸化膜を形成する工程を含む。このように構成すれば、表示装置に設けられた画素トランジスタを用いて容易に反射層酸化膜を陽極酸化により形成する際の電流を供給することができる。
【0018】
上記反射層に電圧を印加する工程を含む反射層酸化膜を形成する工程を備える表示装置の製造方法において、好ましくは、反射層酸化膜を形成する工程は、複数の画素において、反射層に電圧を印加する時間を異ならせることにより異なる膜厚を有する単層の反射層酸化膜を形成する工程を含む。このように構成すれば、反射層に電圧を印加する時間を異ならせることにより、容易に、単層の反射層酸化膜を形成するとともに、反射層と半反射層との間の距離を単層の反射層酸化膜により調整することができるので、たとえば、反射層と半反射層との間の距離を積層させて形成した透明電極により調整する場合と比べて、製造プロセスが複雑化するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態によるEL装置(エレクトロルミネッセンス装置)の平面図である。図2および図3は、本発明の一実施形態によるEL装置の画素の平面図である。図4は、図3の150−150線に沿った断面図である。まず、図1〜図4を参照して、本発明の一実施形態によるEL装置100の構成について説明する。なお、本発明の一実施形態では、表示装置の一例としてトップエミッション型のEL装置100に本発明を適用した場合について説明する。
【0021】
本発明の一実施形態によるEL装置100では、図1に示すように、基板1aの表面上には、複数の画素2がマトリクス状に配置された表示領域101と、表示領域101を囲むように配置される非表示領域102とが設けられている。非表示領域102には、2つの走査線駆動回路3と、1つのデータ線駆動回路4とが設けられている。走査線駆動回路3には、複数のゲート線5が接続されるとともに、データ線駆動回路4には、複数の信号線6が接続されている。表示領域101に配置される複数の画素2は、ゲート線5と信号線6とが交差する位置に配置されている。
【0022】
画素2は、画素選択用のTFT(Thin Film Transistor)7と、駆動電流制御用のTFT8と、保持容量9と、有機EL素子10とから構成されている。なお、TFT8は、本発明の「画素トランジスタ」の一例である。TFT7のゲートは、ゲート線5に接続されている。また、TFT7のソース/ドレイン電極の一方は、信号線6に接続されるとともに、他方は、TFT8のゲートに接続されている。また、TFT8のソース/ドレイン電極の一方は、有機EL素子10に接続されるとともに、他方は、共通給電線11に接続されている。また、TFT7のソース/ドレイン電極の他方(TFT8のゲート)と共通給電線11との間には、保持容量9が設けられている。
【0023】
次に、図2〜図4を参照して、本発明の一実施形態による画素2の詳細な構成について説明する。
【0024】
図4に示すように、EL装置100の画素2では、基板1aの表面上には、バッファ膜12およびバッファ膜13が形成されている。このバッファ膜12は、シリコン窒化膜(SiN膜)からなるとともに、バッファ膜13は、シリコン酸化膜(SiO膜)からなる。バッファ膜13の表面上の画素選択用のTFT7、および、駆動電流制御用のTFT8が形成される領域には、それぞれ、ポリシリコンなどからなる能動層141、および、能動層142が形成されている。
【0025】
バッファ膜13の表面上には、能動層141(142)を覆うように絶縁膜15が形成されている。なお、絶縁膜15の能動層141(142)上に位置する部分は、ゲート絶縁膜として機能する。この絶縁膜15は、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜からなる。TFT7のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜15の表面上には、ゲート電極51(ゲート線5)が形成されている。このゲート電極51は、クロムやモリブデンなどからなる。TFT8のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜15の表面上には、ゲート電極52が形成されている。絶縁膜15、ゲート電極51およびゲート電極52の表面上には、SiOなどからなる層間絶縁膜16が形成されている。
【0026】
また、図2に示すように、保持容量9は、能動層141(142)と同一層から形成されている活性層91上に絶縁膜15(図4参照)を介してゲート層92が形成されることにより構成されている。
【0027】
また、図4に示すように、絶縁膜15には、能動層141(142)のソース領域141a(142a)を露出するためのコンタクトホール151a(152a)、および、ドレイン領域141b(142b)を露出するためのコンタクトホール151b(152b)が形成されている。層間絶縁膜16には、能動層141(142)のソース領域141a(142a)を露出するためのコンタクトホール161a(162a)、および、ドレイン領域141b(142b)を露出するためのコンタクトホール161b(162b)が形成されている。
【0028】
コンタクトホール161a(162a)には、能動層141(142)のソース領域141a(142a)に接続するようにソース電極17(18)が形成されるとともに、コンタクトホール161b(162b)には、能動層141(142)のドレイン領域141b(142b)に接続するようにドレイン電極19(20)が形成されている。
【0029】
また、図3に示すように、保持容量9の活性層91と、TFT7のソース電極17(ソース領域141a)と、TFT8のゲート電極52とは、配線層93により電気的に接続されている。また、保持容量9のゲート層92と、TFT8のドレイン電極20(ドレイン領域142b)と、共通給電線11とは、電気的に接続されている。
【0030】
ソース電極17(18)、ドレイン電極19(20)および層間絶縁膜16の表面上には、シリコン窒化膜(SiN膜)からなり、約300nmの厚みを有するパッシベーション膜21が形成されている。
【0031】
パッシベーション膜21の表面上には、感光性のアクリル樹脂からなる有機平坦化膜22が形成されている。パッシベーション膜21および有機平坦化膜22には、それぞれ、コンタクトホール21aおよびコンタクトホール22aが形成されている。このコンタクトホール21aおよび22aは、TFT8のソース電極18を露出させるために形成されている。また、有機平坦化膜22の表面上の画素2(R(赤色)、G(緑色)およびB(青色))に対応する領域毎に、それぞれ、アルミニウム膜やアルミニウム合金膜からなる反射層23が形成されている。
【0032】
ここで、本実施形態では、反射層23は、コンタクトホール21aおよび22aを介してTFT8のソース電極18と電気的に接続されている。また、反射層23の表面(上面および側面)上の略全領域には、平面的に見て、反射層23が陽極酸化された酸化物からなる単層の反射層酸化膜24が形成されている。また、反射層酸化膜24は、画素2毎に設けられた、後述する有機発光層27からパネル外部に出射される光の色(R(赤色)、G(緑色)およびB(青色))に対応するように異なる膜厚に形成されている。具体的には、有機発光層27からパネル外部に出射される光の色がR(赤色)の画素2の領域では、反射層酸化膜241は、約48nmの膜厚t1に形成されている。また、有機発光層27からパネル外部に出射される光の色がG(緑色)の画素2の領域では、反射層酸化膜242は、約24nmの膜厚t2に形成されている。なお、有機発光層27からパネル外部に出射される光の色がB(青色)の画素2の領域では、反射層酸化膜24は、0nmの膜厚である(形成されていない)。このように、複数の画素2は、最大強度を有する波長が異なる光(R(赤色)、G(緑色)およびB(青色))を発光するように構成されており、最大強度を有する波長が長い光(たとえば、R(赤色))を発光する画素2に設けられた反射層酸化膜241の膜厚t1は、最大強度を有する波長が短い光(たとえば、G(緑色))を発光する画素2に設けられた反射層酸化膜242の膜厚t2よりも大きく形成されている。
【0033】
このように、有機発光層27からの光を対向電極28(半反射層)と反射層23との間で共振させ、光強度を強めた状態で対向電極28(半反射層)側から光を出射させることが可能である。また、対向電極28(半反射層)と反射層23との間の距離は、反射層酸化膜24の厚みにより調整され、対向電極28(半反射層)と反射層23との間の距離に対応した波長の光(R(赤色)G(緑色)およびB(青色))が対向電極28(半反射層)側から出射される。
【0034】
また、TFT8のソース電極18、パッシベーション膜21のコンタクトホール21a、有機平坦化膜22のコンタクトホール22aおよび反射層酸化膜24の表面を覆うように、ITO(酸化インジウムスズ)などの透明電極からなる画素電極25が形成されている。この画素電極25は、コンタクトホール22aおよび21aを介してソース電極18と接続されている。この画素電極25は、画素2毎に設けられており、表示信号に応じた電圧が印加されるように構成されている。
【0035】
また、隣接する各画素2の間の領域には、画素電極25の表面上を覆うように、それぞれ、隔壁26が形成されている。
【0036】
また、隔壁26および画素電極25を覆うように有機発光層27が形成されている。なお、有機発光層27は、本発明の「発光層」の一例である。また、有機発光層27の表面上には、マグネシウムおよび銀などの金属からなり、半反射可能な対向電極28が形成されている。なお、対向電極28は、本発明の「半反射層」の一例である。また、画素電極25、有機発光層27および対向電極28により、有機EL素子層(有機エレクトロルミネッセンス素子層)29が構成される。有機EL素子層29の対向電極28上には、封止膜30が形成されている。封止膜30の表面上には、接着層31を介して封止基板32が貼り合わされている。
【0037】
画素電極25を陽極、対向電極28を陰極とした場合には、共通給電線11に正電源、対向電極28に負電源を接続する。そして、TFT7により選択された画素2は、信号線6からの信号に応じてTFT8により共通給電線11からの駆動電流が制御されるとともに画素電極25に印加される。これにより、有機発光層27から光を出射させることが可能である。
【0038】
図5は、本発明の一実施形態によるEL装置の製造プロセスを説明するためのフロー図である。図6〜図10は、本発明の一実施形態によるEL装置の製造プロセスを説明するための断面図である。図11は、本発明の一実施形態によるEL装置の陽極酸化を説明するための図である。図12〜図16は、本発明の一実施形態によるEL装置の製造プロセスを説明するための断面図である。次に、図4および図5〜図16を参照して、本発明の一実施形態によるEL装置100の製造プロセスについて説明する。
【0039】
まず、図5に示すように、本発明の一実施形態によるEL装置100の製造プロセスでは、工程S1において、図6に示すように、基板1aの表面上に形成されたバッファ膜12および13の表面上に、TFT7および8を形成する。
【0040】
次に、工程S2において、図7に示すように、TFT7、TFT8および層間絶縁膜16の表面上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、シリコン窒化膜(SiN膜)からなるパッシベーション膜21を形成する。このパッシベーション膜21は、保護膜としての機能を有する。
【0041】
次に、工程S3において、図8に示すように、パッシベーション膜21の表面上に、塗布法により、感光性のアクリル樹脂を塗布することによって有機平坦化膜22を形成する。
【0042】
次に、工程S4において、図9に示すように、TFT8のソース電極18の上方に位置する有機平坦化膜22およびパッシベーション膜21をフォトリソグラフィ技術またはドライエッチングなどにより、コンタクトホール22aおよび21aを形成する。これにより、ソース電極18の表面を露出させることができる。
【0043】
次に、工程S5において、図10に示すように、有機平坦化膜22の表面上およびTFT8のソース電極18の表面上に、スパッタ法により、アルミニウム膜やアルミニウム合金膜などからなる金属層を形成する。その後、フォトリソグラフィ技術により、アルミニウム膜やアルミニウム合金膜の表面上にレジスト膜(図示せず)を形成した後、そのレジスト膜をマスクとしてエッチングすることによって反射層23を形成する。そして、レジスト膜を除去する。反射層23とTFT8のソース電極18とが電気的に接続される。
【0044】
次に、本実施形態では、工程S6において、アルミニウム膜やアルミニウム合金膜などからなる反射層23を陽極酸化させることにより反射層酸化膜24を形成する。この反射層酸化膜24は、反射層23の酸化物からなる単層のアルミナなどからなる。具体的には、図11に示すように、複数のTFT基板1aを含む大板ガラス基板1の状態で陽極酸化を行う。まず、それぞれのTFT基板1aに形成されているゲート線5、信号線6および共通給電線11に導通する引き出し配線33を大板ガラス基板1のガラス端Aまで形成するとともに、パネル駆動回路40の一方に接続する。また、陰極41をパネル駆動回路40の他方に接続する。そして、大板ガラス基板1および陰極41を硫酸などの溶液が設けられた槽42内に配置する。
【0045】
この後、パネル駆動回路40を駆動させることにより、パネル駆動回路40から、図1に示す、各画素2のTFT7にデータ線6を介して信号が入力されるとともに、走査線5を介して信号が入力される。そして、信号が入力された画素2のTFT8が駆動され、共通給電線11から、図12に示す、各TFT8のソース電極18から各画素2のそれぞれの反射層23に+15Vの電圧が印加される。また、陰極41には、−15Vの電圧が印加される。これにより、各画素2のそれぞれの反射層23が陽極酸化され、反射層23の表面上に反射層23の酸化物からなる単層の反射層酸化膜24が形成される。そして、反射層酸化膜24が所望の膜厚に達した際には、印加されている電圧を+15Vから−15Vに切り替えることにより、反射層23の陽極酸化を停止させる。
【0046】
具体的な反射層酸化膜26の製造プロセスとしては、まず、陰極41に−15Vの電圧を印加するとともに、有機発光層27から出射される光の色がR(赤色)およびG(緑色)のそれぞれの画素2の反射層23に+15Vの電圧を印加する。このとき、B(青色)の画素2の反射層23には、−15Vの電圧を印加する。これにより、B(青色)の画素2の反射層23の表面上には、反射層酸化膜24は形成されない。一方、R(赤色)およびG(緑色)の画素2の反射層23の表面上には、反射層酸化膜26が成長しながら形成される。
【0047】
次に、G(緑色)の画素2の反射層23の表面上に、約24nmの膜厚の反射層酸化膜242が形成された時点で、G(緑色)の画素2の反射層23に印加されている電圧を+15Vから−15Vに切り替える。これにより、G(緑色)の画素2の反射層23の表面上には、約24nmの膜厚の反射層酸化膜242が形成される。
【0048】
次に、R(赤色)の画素2の反射層23の表面上に、約48nmの膜厚の反射層酸化膜241が形成された時点で、R(赤色)の画素2の反射層23に印加されている電圧を+15Vから−15Vに切り替える。これにより、R(赤色)の画素2の反射層23の表面上には、約48nmの膜厚の反射層酸化膜241が形成される。このように、反射層酸化膜24は、画素2毎に発光されるR(赤色)、G(緑色)およびB(青色)の光の色に対応するように、反射層23に電圧を印加する時間を異ならせることにより形成されている。この後、各画素2に形成された反射層酸化膜24の封孔処理を沸騰水中で行う。
【0049】
次に、工程S7において、図13に示すように、反射層酸化膜24の表面を覆うように、スパッタ法により、ITOなどの透明電極を形成する。その後、フォトリソグラフィ技術により、透明電極の表面上にレジスト膜(図示せず)を形成した後、そのレジスト膜をマスクとしてエッチングすることによって画素電極25を形成する。そして、レジスト膜を除去する。これにより、画素電極25とTFT8のソース電極18とが電気的に接続される。
【0050】
次に、工程S8において、図13に示すように、隣接する各画素2の間の領域に、有機平坦化膜22および画素電極25の表面上を覆うように、塗布法により、感光性のアクリル樹脂からなる隔壁26を形成する。
【0051】
次に、工程S9において、隔壁26を形成した後に、アニール処理(脱水処理)を行う。これにより、有機平坦化膜22および隔壁26が含んでいた水分を放出させることができる。
【0052】
次に、工程S10において、図14に示すように、隔壁26および画素電極25の表面上を覆うように、有機発光層27を形成する。なお、有機発光層27は、低分子材料または高分子材料のいずれか1つから形成してもよい。たとえば、高分子材料により有機発光層を形成する場合では、スピンコート法により液状組成物を塗布した後に、パターニングを行うことにより形成する方法がある。低分子材料により有機発光層を形成する場合では、低分子材料を選択的に蒸着することにより形成する方法や、低分子材料を蒸着した後に、パターニングを行うことにより形成する方法がある。また、有機発光層27は、単層に形成してもよいし、複数の層から形成してもよい。
【0053】
次に、工程S11において、図15に示すように、有機発光層27の表面上に、蒸着法により、マグネシウムおよび銀などの金属からなるとともに、半反射可能な対向電極28を形成する。これにより、有機EL素子層29(画素電極25、有機発光層27および対向電極28)が形成される。
【0054】
次に、工程S12において、図16に示すように、対向電極28の表面上に、シリコン窒化膜(SiN膜)からなる封止膜30を形成する。その後、図4に示すように、封止膜30の表面上に、接着層31を形成し、封止基板32を貼り合わせる。このようにして、本実施形態によるEL装置100が完成される。
【0055】
本実施形態では、上記のように、反射層23の表面上に形成された反射層23の酸化物からなる単層の反射層酸化膜24を、複数の画素2が、異なる膜厚の反射層酸化膜24を有するように形成することによって、反射層23と対向電極28(半反射層)との間の距離を単層の反射層酸化膜24により調整することができるので、透明電極(画素電極25)の積層数を調整することにより、反射層23と対向電極28(半反射層)との間の距離を調整する場合と比べて、表示装置100の構造および製造プロセスが複雑化するのを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、反射層23を、TFT8のソース電極18と接続することによって、表示装置100に設けられたTFT8を用いて、反射層23に電圧を印加することができるので、反射層23の表面を陽極酸化して、反射層23の表面に反射層酸化膜24を形成することができる。これにより、反射層23を陽極酸化する際に、別途、電圧を印加するための素子を表示装置100に設けることなく反射層23の表面に反射層酸化膜24を形成することができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、反射層酸化膜24を、平面的に見て、反射層23の上面上の略全域に形成することによって、たとえば、反射層酸化膜24が反射層23の上面上の一部に形成されている場合と異なり、反射層23と対向電極28(半反射層)との間の距離を反射層23の上面上の全域にわたって均一にすることができる。
【0058】
また、本実施形態では、上記のように、反射層酸化膜24と有機発光層27との間に、単層の画素電極25を形成することによって、たとえば、R(赤色)、G(緑色)およびB(青色)に対応して、反射層23と対向電極28(半反射層)との間の距離を調整するために画素電極25を最大3層積層させる場合と比べて、画素電極25の構造を簡素化することができる。
【0059】
また、本実施形態では、上記のように、最大強度を有する波長が長い光(たとえば、R(赤色))を発光する画素2に設けられた反射層酸化膜241の膜厚t1を、最大強度を有する波長が短い光(G(緑色))を発光する画素2に設けられた反射層酸化膜242の膜厚t2よりも大きく形成することによって、反射層酸化膜24を波長の長さに応じた膜厚に形成されているので、波長の長さに応じて反射層23と対向電極28(半反射層)との間の距離を調整することができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、R(赤色)の光の色に発光する画素2に設けられた反射層酸化膜241の膜厚t1を、G(緑色)の光の色に発光する画素2に設けられた反射層酸化膜242の膜厚t2よりも大きく形成し、B(青色)の光の色に発光する画素2には、反射層酸化膜24を形成しないことによって、B(青色)に発光する画素2にも反射層酸化膜24が形成されている場合と比べて、光共振構造をより簡素化させることができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、反射層23の表面上に、反射層23の表面を陽極酸化することにより反射層23の酸化物からなるとともに、複数の画素2毎において異なる膜厚を有する単層の反射層酸化膜24を形成することによって、反射層23の表面を陽極酸化することにより、容易に、単層の反射層酸化膜24を形成するとともに、反射層23と対向電極28(半反射層)との間の距離を単層の反射層酸化膜24により調整することができるので、反射層と半反射層との間の距離を積層させて形成した透明電極により調整する場合と比べて、表示装置100の構造および製造プロセスが複雑化することを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、TFT8から反射層23に電圧を印加することにより、反射層23の表面上に反射層酸化膜24を形成することによって、表示装置100に設けられたTFT8を用いて容易に反射層酸化膜24を陽極酸化により形成する際の電流を供給することができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、画素2毎に発光されるR(赤色)G(緑色)およびB(青色)の光の色に対応するように、複数の画素2において、反射層23に電圧を印加する時間を異ならせることにより異なる膜厚を有する単層の反射層酸化膜24を形成することによって、反射層23に電圧を印加する時間を異ならせることにより、容易に、単層の反射層酸化膜24を形成するとともに、反射層23と対向電極28(半反射層)との間の距離を単層の反射層酸化膜24により調整することができるので、たとえば、反射層23と対向電極28(半反射層)との間の距離を積層させて形成した透明電極により調整する場合と比べて、製造プロセスが複雑化するのを抑制することができる。
【0064】
図17および図18は、それぞれ、本発明の一実施形態によるEL装置を用いた電子機器の一例を説明するための図である。図17および図18を参照して、本発明の一実施形態によるEL装置100を用いた電子機器について説明する。
【0065】
本発明の一実施形態によるEL装置100は、図17および図18に示すように、携帯電話200およびPC(Personal Computer)300などに用いることが可能である。図17の携帯電話200においては、表示画面200aに本発明の一実施形態によるEL装置100が用いられる。また、図18のPC300においては、キーボード300aなどの入力部および表示画面300bなどに本発明の一実施形態によるEL装置100を用いることが可能である。
【0066】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0067】
たとえば、上記実施形態では、表示装置の一例として、EL装置に本発明を適用する例を示したが、本発明はこれに限らず、EL装置以外の表示装置にも適用可能である。
【0068】
また、上記実施形態では、EL装置の一例として、トップエミッション型のEL装置に本発明を適用する例を示したが、本発明はこれに限らず、トップエミッション型のEL装置以外のEL装置にも適用可能である。
【0069】
また、上記実施形態では、反射層酸化膜の製造プロセスの一例として、画素トランジスタから反射層に電圧を印加する例を示したが、本発明はこれに限らず、反射層に別途電圧を印加するための引き出し配線を設け、引き出し配線から電圧を印加してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、反射層酸化膜の一例として、R(赤色)、G(緑色)およびB(青色)に対応する反射層酸化膜の膜厚を、それぞれ、48nm、24nmおよび0nmの膜厚に形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、B(青色)にも膜厚t3の反射層酸化膜243を形成してもよい。この場合、R(赤色)、G(緑色)およびB(青色)がそれぞれ反射層と対向電極(半反射層)との間で共振可能な反射層酸化膜の膜厚に形成すればよい。たとえば、図19に示すように、R(赤色)、G(緑色)およびB(青色)に対応する反射層酸化膜の膜厚を、それぞれ、148nm、124nmおよび100nmのような膜厚に形成してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、反射層が画素トランジスタのソース電極に接続されている例を示したが、本発明はこれに限らず、反射層を表示領域101から非表示領域102にまで引き延ばして外部と電気的に接続するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態によるEL装置の平面図である。
【図2】本発明の一実施形態によるEL装置の画素の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態によるEL装置の画素の平面図である。
【図4】図3の150−150線に沿った断面図である。
【図5】本発明の一実施形態によるEL装置の製造プロセスを説明するためのフロー図である。
【図6】本発明の一実施形態によるEL装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図7】本発明の一実施形態によるEL装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図8】本発明の一実施形態によるEL装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図9】本発明の一実施形態によるEL装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図10】本発明の一実施形態によるEL装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図11】本発明の一実施形態によるEL装置の陽極酸化を説明するための図である。
【図12】本発明の一実施形態によるEL装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図13】本発明の一実施形態によるEL装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図14】本発明の一実施形態によるEL装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図15】本発明の一実施形態によるEL装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図16】本発明の一実施形態によるEL装置の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図17】本発明の一実施形態によるEL装置を用いた電子機器の一例を説明するための図である。
【図18】本発明の一実施形態によるEL装置を用いた電子機器の一例を説明するための図である。
【図19】本発明の一実施形態によるEL装置の変形例を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0073】
2 画素
8 TFT(画素トランジスタ)
18 ソース電極
20 ドレイン電極
23 反射層
24、241、242、243 反射層酸化膜
25 画素電極
27 有機発光層(発光層)
28 対向電極(半反射層)
100 EL(エレクトロルミネッセンス)装置(表示装置)
200 携帯電話(電子機器)
300 PC(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素と、
前記画素に設けられた反射層と、
前記反射層の表面上に形成され、前記反射層の酸化物からなる単層の反射層酸化膜と、
前記反射層酸化膜の上方に発光層を介して形成された半反射層とを備え、
前記複数の画素は、異なる膜厚の前記反射層酸化膜を有するように形成されている、表示装置。
【請求項2】
前記複数の画素には、それぞれ、画素トランジスタが設けられており、
前記反射層は、前記画素トランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方と接続されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記反射層酸化膜は、平面的に見て、前記反射層の上面上の略全域に形成されている、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記反射層酸化膜と前記発光層との間には、単層の画素電極が形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記複数の画素は、最大強度を有する波長が異なる光を発光するように構成されており、
前記最大強度を有する波長が長い光を発光する画素に設けられた前記反射層酸化膜の膜厚は、前記最大強度を有する波長が短い光を発光する画素に設けられた前記反射層酸化膜の膜厚よりも大きく形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記複数の画素は、それぞれ、赤色、緑色および青色のうち、1つの光の色で発光するように構成されており、
前記赤色に発光する画素に設けられた前記反射層酸化膜の膜厚は、前記緑色に発光する画素に設けられた前記反射層酸化膜の膜厚よりも大きく形成され、
前記青色に発光する画素には、前記反射層酸化膜は形成されていない、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の表示装置を備える、電子機器。
【請求項8】
複数の画素に反射層を形成する工程と、
前記反射層の表面上に、前記反射層の表面を酸化することにより前記反射層の酸化物からなるとともに、前記複数の画素において異なる膜厚を有する単層の反射層酸化膜を形成する工程と、
前記反射層酸化膜の上方に発光層を介して半反射層を形成する工程とを備える、表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記反射層酸化膜を形成する工程は、前記反射層を陽極酸化することにより前記反射層の酸化物からなる単層の反射層酸化膜を形成する工程を含む、請求項8に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
画素トランジスタを形成する工程をさらに備え、
前記反射層を形成する工程は、前記反射層と前記画素トランジスタのソース電極またはドレイン電極の一方とを接続するように前記反射層を形成する工程を含み、
前記反射層酸化膜を形成する工程は、前記画素トランジスタから前記反射層に電圧を印加することにより前記反射層を陽極酸化することによって、前記反射層の表面上に前記反射層酸化膜を形成する工程を含む、請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記反射層酸化膜を形成する工程は、前記複数の画素において、前記反射層に電圧を印加する時間を異ならせることにより異なる膜厚を有する単層の前記反射層酸化膜を形成する工程を含む、請求項10に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−153172(P2010−153172A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329377(P2008−329377)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】