表示装置、電子機器
【課題】 表示品質を向上させ、さらには品質寿命を向上させることが可能な表示装置の提供を目的とする。
【解決手段】 本発明の表示装置は、複数の画素にて構成される表示領域2aを備える表示装置であって、前記表示領域2aが、第1発光波長範囲を示す第1画素群にて構成される第1表示領域21と、該第1発光波長範囲とは異なる第2発光波長範囲を示す第2画素群にて構成される第2表示領域22とを備えることを特徴とする。
【解決手段】 本発明の表示装置は、複数の画素にて構成される表示領域2aを備える表示装置であって、前記表示領域2aが、第1発光波長範囲を示す第1画素群にて構成される第1表示領域21と、該第1発光波長範囲とは異なる第2発光波長範囲を示す第2画素群にて構成される第2表示領域22とを備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置に代表される自発光型表示装置は、バックライトを必要としないため薄型化が可能な表示装置として脚光を浴びている。このような有機EL装置は、例えば特許文献1に開示されているように、表示領域内に赤色(R),緑色(G),青色(B)の各色のサブ画素(表示の最小単位)をストライプ状に配列し、3つのサブ画素を1画素としてフルカラーの表示を可能としている。
【特許文献1】特開2002−252083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された表示装置は、表示領域内において各々共通の画素構成により一様にフルカラー表示を行うものである。このような構成は、テレビのように表示領域における輝度の時間積分値が画素によらず略一定の表示を行う場合には好適であるが、逆に表示領域内での輝度の時間積分値が画素毎に異なるような表示を行う場合には、以下のような問題を生じる場合がある。つまり、1)輝度の時間積分値が大きい色の画素について輝度劣化が他の色よりも進み易い、2)輝度の時間積分値が大きい色の画素について輝度劣化が相対的に早いことで、全体としてホワイトバランスが崩れ、色味が変わったり、焼付きが生じ易い、3)単色表示したい領域に、フルカラー用の3色のサブ画素が存在すると開口率が低くなり、単色表示部分の輝度劣化が早くなる、等の問題が生じ得る。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、上記問題を悉く解決し、もって表示品質を向上させ、さらには品質寿命を向上させることが可能な表示装置の提供を目的としている。また、本発明は、このような高品質の表示が可能な表示装置を備える電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の表示装置は、複数の画素にて構成される表示領域を備え、前記表示領域が、第1発光波長範囲を示す第1画素群にて構成される第1表示領域と、該第1発光波長範囲とは異なる第2発光波長範囲を示す第2画素群にて構成される第2表示領域とを備えることを特徴とする。なお、第1発光波長範囲と第2発光波長範囲とは互いに同一波長範囲でないものを意味しており、両範囲が完全同一でなければ良く、一方の範囲が他方の範囲に含まれることを除外するものではない。
【0006】
このような本発明の表示装置は、第1表示領域の第1画素群と第2表示領域の第2画素群とで発光波長範囲が異なり、つまり発光可能な色の範囲(種類)が異なることとなる。したがって、本発明の表示装置が具備する表示領域は、表示可能な色がそれぞれ異なる第1表示領域と第2表示領域とに少なくとも分割されることとなり、表示領域の設計自由度を高めることができるようになる。
また、この場合、表示領域のうちの所定領域に必要な色の発光が可能な画素を配設し、しかも当該領域において不必要な色の画素を排除できるため、全体として開口率を高めることができる。つまり、従来の構成では、例えば単色表示を行う領域にも一様にフルカラー表示用の画素を配設しているため、不必要な色に係る画素が備えられたことによる開口率低下は免れなかったが、本発明では不必要な色に係る画素を排除することで、これを解決することができたのである。
また、そのような必要な色の画素のみにより所定の表示領域を構成することにより、従来のようにフルカラー用の画素を表示領域全体に配置する場合に比して、1画素当りの輝度を低減させても、該従来と同程度の面輝度を得ることができ、したがって1画素当りの輝度劣化も低減され、消費電力を低減することも可能となり、ひいては輝度寿命を高めることも可能となる。
また、本発明の表示装置では解像度も向上されている。つまり、従来のようにフルカラー用の画素を表示領域全体に配置する場合に比して、所定領域内における必要な色の画素数を増大させることができ、ひいては解像度の向上に寄与することができるのである。
【0007】
本発明の表示装置では、前記第1画素群が複数種の色光を表示可能な画素にて構成される一方、前記第2画素群が1種の色光を表示可能な画素にて構成されてなるものとすることができる。この場合、第1表示領域では2色以上の表示が可能となる一方、第2表示領域では単色表示が可能となる。そして、特に第2表示領域では、従来のようなフルカラー表示用の画素を備える場合に比して、開口率向上、解像度向上、輝度寿命向上を実現することができるようになる。なお、具体的には、前記第1画素群を、所定の色光を発光可能なサブ画素と、これとは異なる色光を発光可能なサブ画素とを少なくとも含む画素にて構成する一方、前記第2画素群を、所定の色光を発光可能な1種のサブ画素のみを含む画素にて構成することで、上記構成を実現することができる。
【0008】
さらに、前記第1画素群がフルカラー表示可能な画素にて構成される一方、前記第2画素群が単色表示可能な画素にて構成されてものとすることができる。具体的には、前記第1画素群を、赤色を発光可能なサブ画素と、緑色を発光可能なサブ画素と、青色を発光可能なサブ画素とを含む画素にて構成する一方、前記第2画素群を、赤色を発光可能なサブ画素と、緑色を発光可能なサブ画素と、青色を発光可能なサブ画素との中から選択される1又は2のサブ画素を含む画素にて構成することができる。
【0009】
上記のような複数種のサブ画素を備える場合、各種サブ画素がそれぞれ同一の大きさにて構成されてなるものとすることができる。この場合、表示領域に形成するサブ画素の数により開口率を調整することができ、開口率の設計が容易となる。なお、サブ画素を長方形状にて構成し、画素を該長方形状のサブ画素を複数含む正方形状にて構成することが好ましい。
【0010】
次に、本発明の電子機器は上記表示装置を備えることを特徴とし、このような電子機器によると、その表示部において高品質の表示を提供できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の表示装置の一実施形態としての有機EL装置について、及びその有機EL装置の製造方法について図面を参照しつつ説明する。なお、各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0012】
(有機EL装置)
図1は、本実施形態の有機EL装置の配線構造を示す説明図であって、図2は、本実施形態の有機EL装置の平面模式図、図3及び図4は画素の構成を拡大して示す平面模式図、図5及び図6は、本実施形態の有機EL装置の表示領域の断面模式図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の有機EL装置は、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、信号線102に対して並列する方向に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有し、走査線101及び信号線102の各交点付近には単位表示領域Pが設けられている。
【0014】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路104が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路105が接続されている。
更に、単位表示領域Pの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスタ122と、このスイッチング用の薄膜トランジスタ122を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量capと、該保持容量capによって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスタ123と、この駆動用薄膜トランジスタ123を介して電源線103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(電極)111と、この画素電極111と陰極(対向電極)12との間に挟み込まれた有機EL層110とが設けられている。電極111と対向電極12と有機EL層110により、発光素子が構成されている。
【0015】
走査線101が駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスタ122がオンになると、そのときの信号線102の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて駆動用の薄膜トランジスタ123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ123のチャネルを介して、電源線103から画素電極111に電流が流れ、更に有機EL層110を介して陰極12に電流が流れる。有機EL層110では、流れる電流量に応じて発光が生じる。
【0016】
本実施形態の有機EL装置は、図5及び図6に示すように、ガラス等からなる透明な基板2と、マトリックス状に配置された発光素子を具備して基板2上に形成された発光素子部11と、発光素子部11上に形成された陰極12とを具備している。ここで、発光素子部11と陰極12とにより表示素子10が構成される。基板2は、例えばガラス等の透明基板であり、図2に示すように、基板2の中央に位置する表示領域2aと、基板2の周縁に位置して表示領域2aを囲む非表示領域2cとに区画されている。
【0017】
表示領域2aは、マトリックス状に配置された発光素子によって形成される領域であって、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色のいずれかを発光可能なドット(サブ画素)を表示の最小駆動単位として複数有しており、該各ドット(サブ画素)が図1に示した単位表示領域Pを構成している。そして、本実施形態では、表示領域2aがフルカラー表示を行う第1表示領域21と、単色表示を行う第2表示領域22とを有して構成されている。第1表示領域21には、図3にも示す通り、赤色(R)を発光可能なRドットA1と、緑色(G)を発光可能なGドットA2と、青色(B)を発光可能なBドットA3の異なる3色のドットからなる画素Aが複数配列されている。一方、第2表示領域22には、図4にも示す通り、赤色(R)を発光可能なRドットA1を3つ含んで構成された画素A’が複数配列されている。
【0018】
つまり、表示領域2aには画素A,A’が所定の配列にて配置されてなり、該画素Aと画素A’とは発光可能な波長範囲が異なるものであって、画素Aはフルカラーの波長範囲(概ね380nm〜780nm程度)の発光が可能で、画素A’は赤色の波長範囲(概ね580nm〜780nm)の発光が可能とされている。そして、複数の画素Aを所定パターンで含む第1画素群にて構成される表示領域が、フルカラー表示可能な第1表示領域21として構成され、一方、複数の画素A’を所定パターンで含む第2画素群にて構成される表示領域が、赤色表示可能な第2表示領域22として構成されている。なお、図3及び図4に示すように、各ドット(サブ画素)A1、A2、A3はそれぞれ同一長方形状、且つ同一面積にて構成されてなり、各画素A,A’はそれぞれ略正方形状にて構成されている。
【0019】
図2に戻り、非表示領域2cには、前述の電源線103(103R、103G、103B)が配線されている。表示領域2aの両側には、前述の走査側駆動回路105が配置されている。更に、走査側駆動回路105の両側には、走査側駆動回路105に接続される駆動回路用制御信号配線105aと駆動回路用電源配線105bとが設けられている。表示領域2aの図示上側には製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行う検査回路106が配置されている。
【0020】
図5は第1表示領域21の断面構成図であって、該第1表示領域21は上述の通り3種のドット(サブ画素)A1、A2、A3にて構成されている。
第1表示領域21では、基板2上に、TFTなどの回路等が形成された回路素子部14、有機EL層110が形成された発光素子部11及び陰極12が順次積層されて構成されており、有機EL層110から基板2側に発せられた光が、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるとともに、有機EL層110から基板2の反対側に発せられた光が陰極12により反射されて、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるようになっている。
なお、上記陰極12として、透明な材料を用いるならば、陰極側から発光する光を出射させることができる。透明な陰極材料としては、ITO(インジウムスズ酸化物)、Pt、Ir、Ni、もしくはPdを挙げることができる。
【0021】
回路素子部14には、基板2上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。半導体膜141には、ソース領域141a及びドレイン領域141bが高濃度リンイオン打ち込みにより形成されている。前記リンイオンが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。
【0022】
また、前記下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線101)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して、半導体膜141のソース、ドレイン領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145,146が形成されている。
【0023】
そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極111が所定の形状にパターニングされて形成され、一方のコンタクトホール145がこの画素電極111に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール146が電源線103に接続されている。このようにして、回路素子部14には、各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。
【0024】
発光素子部11は、複数の画素電極111…上の各々に積層された有機EL層110と、各画素電極111及び有機EL層110の間に備えられて各有機EL層110を区画するバンク部112とを主体として構成されている。有機EL層110上には陰極12が配置されている。これら画素電極111、有機EL層110及び陰極12によって発光素子が構成されている。ここで、画素電極111は、例えばITOにより形成されてなり、平面視略矩形状にパターン形成されている。この各画素電極111…を仕切る形にてバンク部112が備えられている。
【0025】
バンク部112は、図5に示すように、基板2側に位置する第1隔壁部としての無機物バンク層(第1バンク層)112aと、基板2から離れて位置する第2隔壁部としての有機物バンク層(第2バンク層)112bとが積層された構成を備えている。無機物バンク層112aは、例えばTiO2やSiO2等により形成され、有機物バンク層112bは、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等により形成される。
【0026】
無機物、有機物バンク層112a、112bは、画素電極111の周縁部上に乗上げるように形成されている。平面的には、画素電極111の周囲と無機物バンク層112aとが部分的に重なるように配置された構造となっている。また、有機物バンク層112bも同様であり、画素電極111の一部と平面的に重なるように配置されている。また無機物バンク層112aは、有機物バンク層112bの縁端よりも画素電極111の中央側に更に突出するように形成されている。このようにして、無機物バンク層112aの各第1積層部(突出部)112eが画素電極111の内側に形成されることにより、画素電極111の形成位置に対応する下部開口部112cが設けられている。
【0027】
また、有機物バンク層112bには、上部開口部112dが形成されている。この上部開口部112dは、画素電極111の形成位置及び下部開口部112cに対応するように設けられている。上部開口部112dは、図5に示すように、下部開口部112cより開口が広く、画素電極111より狭く形成されている。また、上部開口部112dの上部の位置と、画素電極111の端部とがほぼ同じ位置になるように形成される場合もある。この場合は、図5に示すように、有機物バンク層112bの上部開口部112dの断面が傾斜した形状となる。このようにして、バンク部112には、下部開口部112c及び上部開口部112dが連通された開口部112gが形成されている。
【0028】
また、バンク部112には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域が形成されている。親液性を示す領域は、無機物バンク層112aの第1積層部112e及び画素電極111の電極面111aであり、これらの領域は、酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理されている。また、撥液性を示す領域は、上部開口部112dの壁面及び有機物バンク層112の上面112fであり、これらの領域は、4フッ化メタン、テトラフルオロメタン、もしくは四フッ化炭素を処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)されている。
【0029】
一方、有機EL層110は、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された発光層110bとから構成されている。
正孔注入/輸送層110aは、発光層110bに正孔を注入する機能を有するとともに、正孔注入/輸送層110a内部において正孔を輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを画素電極111と発光層110bの間に設けることにより、発光層110bの発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層110bでは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子とが再結合し、発光が行われる。
【0030】
正孔注入/輸送層110aは、下部開口部112c内に位置して画素電極面111a上に形成される平坦部110a1と、上部開口部112d内に位置して無機物バンク層の第1積層部112e上に形成される周縁部110a2から構成されている。また、正孔注入/輸送層110aは、構造によっては、画素電極111上であって、且つ無機物バンク層110aの間(下部開口部110c)にのみ形成されている(前述に記載した平坦部にのみ形成される形態もある)。
【0031】
また、発光層110bは、正孔注入/輸送層110aの平坦部110a1及び周縁部110a2上に渡って形成されており、平坦部112a1上での厚さが50nm〜80nmの範囲とされている。発光層110bは、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2、及び青色(B)に発光する青色発光層110b3の3種類を有し、各発光層110b1〜110b3は平面視ストライプ状に配置されている。
【0032】
なお、正孔注入/輸送層形成材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いることができる。また、発光層110bの材料としては、例えば、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれらの高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。
【0033】
陰極12は、発光素子部11の全面に形成されており、画素電極111と対になって有機EL層110に電流を流す役割を果たす。この陰極12は、例えば、カルシウム層とアルミニウム層とが積層されて構成されている。このとき、発光層に近い側の陰極には仕事関数が低いものを設けることが好ましく、特にこの形態においては発光層110bに直接に接して発光層110bに電子を注入する役割を果たす。
【0034】
また、発光層110bと陰極12との間に発光効率を高めるためのLiFを形成する場合もある。なお、赤色及び緑色の発光層110b1、110b2にはフッ化リチウムに限らず、他の材料を用いても良い。従ってこの場合は青色(B)発光層110b3のみにフッ化リチウムからなる層を形成し、他の赤色及び緑色の発光層110b1、110b2にはフッ化リチウム以外のものを積層しても良い。また、赤色及び緑色の発光層110b1、110b2上にはフッ化リチウムを形成せず、カルシウムのみを形成しても良い。
【0035】
また、陰極12を形成するアルミニウムは、発光層110bから発した光を基板2側に反射させるもので、Al膜の他、Ag膜、AlとAgの積層膜等からなることが好ましい。更にアルミニウム上にSiO、SiO2、SiN等からなる酸化防止用の保護層を設けても良い。
【0036】
図5に示す発光素子部11上には、実際の有機EL装置では封止部が備えられる。この封止部は、例えば基板2の周囲に環状に封止樹脂を塗布し、さらに封止缶により封止することにより形成することができる。前記封止樹脂は、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等からなり、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。この封止部は、陰極12または発光素子部11内に形成された発光層の酸化を防止する目的で設けられる。また、前記封止缶の内側には水、酸素等を吸収するゲッター剤を設け、封止缶の内部に侵入した水又は酸素を吸収できるようにしてもよい。
【0037】
一方、図6は第2表示領域22の断面構成図であって、赤色のドット(サブ画素)A1のみによって構成されている。なお、第2表示領域22では、図5に示した第1表示領域21とは発光層110bの構成のみが異なり、その他の断面構成は同様のため説明を省略する。つまり、第2表示領域22では、3つの赤色ドットA1が1つの画素を構成しており、各ドットA1には、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1が配設されている。なお、第1表示領域21では、発光層110bと陰極12との間に発光効率を高めるためのLiFを形成する場合もあるが、当該第2表示領域22においては、発光効率が低下するおそれがあるため、LiFを形成しない方が好ましい。
【0038】
以上のような構成を有する本実施形態の有機EL装置によると、表示領域2aが、フルカラー表示が可能な第1表示領域21と、単色表示のみが可能な第2表示領域22とにより構成されている。この場合、表示領域2aの全域にフルカラー用の画素を配設するのではなく、所定の領域(第2表示領域22)に必要な色の発光が可能な画素を配設し、しかも当該領域22において不必要な色の画素を排除できるため、全体として開口率を高めることができる。また、そのような必要な色の画素のみにより所定の領域(第2表示領域22)を構成することにより、従来のようにフルカラー用の画素を表示領域2a全体に配置する場合に比して、1画素当りの輝度を低減させても、該従来と同程度の面輝度を得ることができ、したがって1画素当りの輝度劣化も低減され、消費電力を低減することも可能となり、ひいては輝度寿命を高めることも可能となる。
【0039】
具体的には、図7に示すように寿命が向上する。図7は、本実施形態の有機EL装置の第2表示領域22における輝度(実施例)と、表示領域の全てをフルカラー表示用の画素にて構成した場合における輝度(比較例)とについて、その時間変化を表したグラフである。なお、縦軸は1画素当りの面輝度(cd/m2)、横軸は時間(hour)を表している。
図7に示す通り、本実施形態の有機EL装置によると、実施例及び比較例の有機EL装置に関し、1画素において初期値300cd/m2の面輝度が得られるような画素設定とした場合、輝度が初期値の80%となる時間は、比較例では8000時間であったのに対し、実施例では40000時間であった。つまり、本実施形態の構成の導入により、輝度の劣化時間が約5倍となったのである。
【0040】
また、本実施形態の有機EL装置では解像度も向上されている。つまり、フルカラー用の画素を表示領域2a全体に配置する場合に比して、所定領域(第2表示領域22)内における必要な色の画素数を増大させることができ、解像度を向上させることができるのである。
【0041】
なお、本実施形態では第1表示領域21をフルカラー表示用、第2表示領域22を単色表示用として構成しているが、例えば第1表示領域21をフルカラー表示用、第2表示領域22を二色表示用、或いは第1表示領域21を二色表示用、第2表示領域22を単色表示用として構成してもよい。また、単色表示用に、白色発光材料を用いて、白色発光としても良い。これにより沢山のバリエーションを有した表示領域2aを構成することができる。
【0042】
(有機EL装置の製造方法)
次に、上記有機EL装置を製造する方法について図面を参照して説明する。
本実施形態の製造方法は、(1)バンク部形成工程、(2)正孔注入/輸送層形成工程、(3)発光層形成工程、(4)陰極形成工程及び(5)封止工程等を有する。なお、ここで説明する製造方法は一例であって、必要に応じてその他の工程が追加されたり、上記の工程の一部が除かれたりする。
なお、(2)正孔注入/輸送層形成工程、(3)発光層形成工程は、液滴吐出装置(インクジェット装置)を用いた液体吐出法(インクジェット法)にて行われる。
【0043】
(1)バンク部形成工程
バンク部形成工程では、基板2の所定位置にバンク部112を形成する。バンク部112は、第1のバンク層として無機物バンク層112aが形成され、第2のバンク層として有機物バンク層112bが形成された構造を有している。
【0044】
(1)−1 無機物バンク層112aの形成
まず、図8に示すように、基板上の所定位置に無機物バンク層112aを形成する。無機物バンク層112aが形成される位置は、第2層間絶縁膜144b及び画素電極111上である。なお、第2層間絶縁膜144bは薄膜トランジスタ、走査線、信号線、等が配置された回路素子部14上に形成されている。無機物バンク層112aは、例えば、SiO2、TiO2等の無機物材料にて構成することができる。これらの材料は、例えばCVD法、コート法、スパッタ法、蒸着法等によって形成される。更に、無機物バンク層112aの膜厚は50nm〜200nmの範囲が好ましく、特に150nmがよい。
【0045】
無機物バンク層112aは、層間絶縁層144及び画素電極111の全面に無機物膜を形成し、その後無機物膜をフォトリソグラフィ法等によりパターニングすることにより、開口部を有する形にて形成される。この開口部は、画素電極111の電極面111aの形成位置に対応するもので、図8に示すように下部開口部112cとして設けられる。なお、無機物バンク層112aは画素電極111の周縁部と一部重なるように形成され、これにより発光層110の平面的な発光領域が制御される。
【0046】
(1)−2 有機物バンク層112bの形成
次に、第2のバンク層としての有機物バンク層112bを形成する。
具体的には、図8に示すように、無機物バンク層112a上に有機物バンク層112bを形成する。有機物バンク層112bを構成する材料として、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶剤性を有する材料を用いる。これらの材料を用い、有機物バンク層112bをフォトリソグラフィ技術等によりパターニングして形成される。なお、パターニングする際、有機物バンク層112bに上部開口部112dを形成する。上部開口部112dは、電極面111a及び下部開口部112cに対応する位置に設けられ、全画素共通のパターンを有して形成するものとしている。
【0047】
上部開口部112dは、図8に示すように、無機物バンク層112aに形成された下部開口部112cより広く形成する事が好ましい。更に、有機物バンク層112bは断面形状がテーパー状をなすことが好ましく、有機物バンク層112bの最底面では画素電極111の幅より狭く、有機物バンク層112bの最上面では画素電極111の幅とほぼ同一の幅に形成する事が好ましい。
これにより、無機物バンク層112aの下部開口部112cを囲む第1積層部112eが、有機物バンク層112bよりも画素電極111の中央側に突出された形になる。このようにして、有機物バンク層112bに形成された上部開口部112d、無機物バンク層112aに形成された下部開口部112cを連通させることにより、無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bを貫通する開口部112gが形成される。
【0048】
形成されたバンク部112、及び画素電極111の表面は、プラズマ処理により適切な表面処理を施すことが好ましく、具体的にはバンク部112表面の撥液化処理、及び画素電極111の親液化処理を行う。画素電極111の表面処理は、酸素ガスを用いたO2プラズマ処理により行うことができ、例えばプラズマパワー100kW〜800kW、酸素ガス流量50ml/min〜100ml/min、板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件で処理することで、画素電極111表面を含む領域を親液化することができる。また、このO2プラズマ処理により画素電極111表面の洗浄、及び仕事関数の調整も同時に行われる。次いで、バンク部112の表面処理は、テトラフルオロメタンを用いたCF4プラズマ処理により行うことができ、例えばプラズマパワー100kW〜800kW、4フッ化メタンガス流量50ml/min〜100ml/min、基板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件で処理することで、バンク部112の上部開口部112d及び上面112fを撥液化することができる。
【0049】
(2)正孔注入/輸送層形成工程
次に発光素子形成工程では、まず画素電極111上に正孔注入/輸送層を形成する。
正孔注入/輸送層形成工程では、液滴吐出装置として例えばインクジェット装置を用いることにより、正孔注入/輸送層形成材料を含む液状組成物を電極面111a上に吐出する。その後に乾燥処理及び熱処理を行い、画素電極111上及び無機物バンク層112a上に正孔注入/輸送層110aを形成する。なお、ここで、正孔注入/輸送層110aは第1積層部112e上に形成されないこともあり、つまり画素電極111上にのみ正孔注入/輸送層が形成される形態もある。
【0050】
インクジェットによる製造方法は以下の通りである。すなわち、図9に示すように、インクジェットヘッドH1に形成された複数のノズルから正孔注入/輸送層形成材料を含む液状組成物を吐出する。ここではインクジェットヘッドを走査することにより各画素毎に組成物を充填しているが、基板2を走査することによっても可能である。更に、インクジェットヘッドと基板2とを相対的に移動させることによっても組成物を充填させることができる。なお、これ以降のインクジェットヘッドを用いて行う工程では上記の点は同様である。
【0051】
インクジェットヘッドによる吐出は以下の通りである。すなわち、インクジェットヘッドH1に形成された吐出ノズルH2を電極面111aに対向させて配置し、ノズルH2から液状組成物を吐出する。画素電極111の周囲には下部開口部112cを区画するバンク112が形成されており、この下部開口部112c内に位置する画素電極面111aにインクジェットヘッドH1を対向させ、このインクジェットヘッドH1と基板2とを相対移動させながら、吐出ノズルH2から1滴当たりの液量が制御された液状組成物の液滴110cを電極面111a上に吐出する。
【0052】
本工程で用いる液状組成物としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物を、極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
【0053】
より具体的な組成としては、PEDOT/PSS混合物(PEDOT/PSS=1:20):12.52重量%、IPA:10重量%、NMP:27.48重量%、DMI:50重量%のものを例示できる。なお、上記液状組成物の粘度は1mPa・s〜20mPa・s程度が好ましく、特に4mPa・s〜15mPa・s程度が良い。
【0054】
上記の液状組成物を用いることにより、吐出ノズルH2に詰まりが生じることがなく安定吐出できる。なお、正孔注入/輸送層形成材料は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各発光層110b1〜110b3に対して同じ材料を用いても良く、各発光層毎に変えても良い。
【0055】
吐出された組成物の液滴110cは、親液処理された電極面111a及び第1積層部112e上に広がり、下部、上部開口部112c、112d内に充填される。仮に、第1組成物滴110cが所定の吐出位置から外れて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが第1組成物滴110cで濡れることがなく、弾かれた第1組成物滴110cが下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0056】
電極面111a上に吐出する組成物の量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする正孔注入/輸送層の厚さ、液状組成物中の正孔注入/輸送層形成材料の濃度等により決定される。また、液状組成物の液滴110cは1回のみならず、数回に分けて同一の電極面111a上に吐出しても良い。この場合、各回における液状組成物の量は同一でも良く、各回毎に液状組成物を変えても良い。更に電極面111aの同一箇所のみならず、各回毎に電極面111a内の異なる箇所に前記液状組成物を吐出しても良い。
【0057】
インクジェットヘッドの構造については、図17に示すようなヘッドHを用いる事ができる。更に、基板とインクジェットヘッドの配置に関しては図18のように配置することが好ましい。図17中、符号H7は前記のインクジェットヘッドH1を支持する支持基板であり、この支持基板H7上に複数のインクジェットヘッドH1が備えられている。インクジェットヘッドH1のインク吐出面(基板との対向面)には、ヘッドの長さ方向に沿って列状に、且つヘッドの幅方向に間隔をあけて2列で吐出ノズルが複数(例えば、1列180ノズル、合計360ノズル)設けられている。また、このインクジェットヘッドH1は、吐出ノズルを基板側に向けるとともに、X軸(またはY軸)に対して所定角度傾いた状態で略X軸方向に沿って列状に、且つY方向に所定間隔をあけて2列に配列された状態で平面視略矩形状の支持板20に複数(図17では1列6個、合計12個)位置決めされて支持されている。
【0058】
また図18において、符号1115は基板2を載置するステージであり、符号1116はステージ1115を図中x軸方向(主走査方向)に案内するガイドレールである。またヘッドHは、支持部材1111を介してガイドレール1113により図中y軸方向(副主走査方向)に移動できるようになっており、更にヘッドHは図中θ軸方向に回転できるようになっており、インクジェットヘッドH1を主走査方向に対して所定の角度に傾けることができるようになっている。このように、インクジェットヘッドを走査方向に対して傾けて配置することにより、ノズルピッチを画素ピッチに対応させることができる。また、傾き角度調整することにより、どのような画素ピッチに対しても対応させることができる。
【0059】
図18に示す基板2は、マザー基板に複数のチップを配置した構造となっている。即ち、1チップの領域が1つの表示装置に相当する。ここでは、3つの表示領域2aが形成されているが、これに限られるものではない。例えば、基板2上の左側の表示領域2aに対して組成物を塗布する場合は、ガイドレール1113を介してヘッドHを図中左側に移動させるとともに、ガイドレール1116を介して基板2を図中上側に移動させ、基板2を走査させながら塗布を行う。次に、ヘッドHを図中右側に移動させて基板の中央の表示領域2aに対して組成物を塗布する。右端にある表示領域2aに対しても前記と同様である。なお、図17に示すヘッドH及び図18に示すインクジェット装置は、正孔注入/輸送層形成工程のみならず、発光層形成工程にも用いるものである。
【0060】
次に、図10に示すような乾燥工程を行う。つまり、吐出後の第1組成物を乾燥処理し、第1組成物に含まれる溶媒を蒸発させ、正孔注入/輸送層110aを形成する。乾燥処理を行うと、液状組成物に含まれる溶媒の蒸発が、主に無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bに近いところで起き、溶媒の蒸発に併せて正孔注入/輸送層形成材料が濃縮されて析出する。これにより図10に示すように、第1積層部112e上に、正孔注入/輸送層形成材料からなる周縁部110a2が形成される。この周縁部110a2は、上部開口部112dの壁面(有機物バンク層112b)に密着しており、その厚さが電極面111aに近い側では薄く、電極面111aから離れた側、即ち有機物バンク層112bに近い側で厚くなっている。
【0061】
また、これと同時に、乾燥処理によって電極面111a上でも溶媒の蒸発が起き、これにより電極面111a上に正孔注入/輸送層形成材料からなる平坦部110a1が形成される。電極面111a上では溶媒の蒸発速度がほぼ均一であるため、正孔注入/輸送層の形成材料が電極面111a上で均一に濃縮され、これにより均一な厚さの平坦部110a1が形成される。このようにして、周縁部110a2及び平坦部110a1からなる正孔注入/輸送層110aが形成される。なお、周縁部110a2には形成されず、電極面111a上のみに正孔注入/輸送層が形成される態様であっても構わない。
【0062】
上記の乾燥処理は、例えば窒素雰囲気中、室温で圧力を例えば133.3Pa(1Torr)程度にして行う。圧力が低すぎると組成物の液滴110cが突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、極性溶媒の蒸発速度が高まり、平坦な膜を形成する事ができない。乾燥処理後は、窒素中、好ましくは真空中で200℃で10分程度加熱する熱処理を行うことで、正孔注入/輸送層110a内に残存する極性溶媒や水を除去することが好ましい。
【0063】
(3)発光層形成工程
発光層形成工程は、発光層形成材料吐出工程及び乾燥工程とからなる。
前述の正孔注入/輸送層形成工程と同様、インクジェット法により発光層形成用の液状組成物を正孔注入/輸送層110a上に吐出する。その後、吐出した液状組成物を乾燥処理(及び熱処理)して、正孔注入/輸送層110a上に発光層110bを形成する。
【0064】
図11に、インクジェットにより発光層形成用材料を含む液状組成物の吐出工程を示す。図示の通り、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対的に移動し、インクジェットヘッドに形成された吐出ノズルH6から各色(例えばここでは青色(B))発光層形成材料を含有する液状組成物が吐出される。
吐出の際には、下部、上部開口部112c、112d内に位置する正孔注入/輸送層110aに吐出ノズルを対向させ、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対移動させながら液状組成物を吐出する。吐出ノズルH6から吐出される液量は1滴当たりの液量が制御されている。このように液量が制御された液滴が吐出ノズルから吐出され、この液滴を正孔注入/輸送層110a上に吐出する。
【0065】
本実施形態では、図2に示した通り、第1表示領域21と第2表示領域22とでは、各色のドットパターンが異なるため、それぞれ領域で吐出態様が異なることとなる。
第1表示領域21では、図12に示すように、基板2上に滴下された液状組成物滴110eを乾燥させることなく、異なる色の発光層形成材料を含有する液状組成物滴110f及び110gの吐出配置を行うようになっている。一方、第2表示領域22では、赤色発光層形成材料を含有する液状組成物110gを吐出配置するようになっている。つまり、本実施形態では、インクジェットにより吐出工程を行っているため、所定のドットに対して、所定の色の吐出を選択的に行うことができるようになっている。
【0066】
吐出された各液状組成物110e〜110gは、図12に示すように、正孔注入/輸送層110a上に広がって下部、上部開口部112c、112d内に満たされる。その一方で、撥液処理された上面112fでは各液状組成物滴110e〜110gが所定の吐出位置からはずれて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが液状組成物滴110e〜110gで濡れることがなく、液状組成物滴110e〜110gが下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0067】
なお、第1表示領域21と第2表示領域22との境界部にダミー画素を配置されている。ダミー画素はバンク部112にて囲まれた開口部112gは有するものの、該ダミー画素には液滴が吐出されず、したがって発光層が形成されないこととなる。
上述した通り、第1表示領域21では赤色、緑色、青色の各色発光層形成材料を含む液状組成物を吐出する一方、第2表示領域22では赤色の発光層形成材料を含む液状組成物を吐出するものとしている。この場合、仮に第1表示領域21と第2表示領域22とを連続で形成する場合には、両者の境界で色の混じりが生じる惧れがあるが、本実施形態のようにダミー画素を配置することで、該混じりによる表示不良の発生を防止ないし抑制することが可能となる。なお、該ダミー領域には、これと平面的に重なるように遮光部を設けておくことが好ましい。
【0068】
本実施形態に用いる発光層形成材料としては、ポリフルオレン系高分子誘導体の他、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープして用いる事ができる。例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープすることにより用いることができる。そして、これら発光層形成材料を溶解ないし分散させるための溶媒は、各色発光層毎に同じ種類のものを用いるものとしている。
【0069】
次に、乾燥処理を行う。第1表示領域21では、上記各色用の液状組成物110e〜110gを所定の位置に配置し終えた後、一括に乾燥処理することにより発光層110b1〜110b3が形成される。すなわち、乾燥により液状組成物滴110e〜110gに含まれる溶媒が蒸発し、図13に示すような赤色(R)発光層110b1、緑色(G)発光層110b2、青色(B)発光層110b3が形成される。なお、図13においては赤、緑、青に発光する発光層が1つずつ図示されているが、図2やその他の図より明らかなように本来は発光素子がマトリックス状に形成されたものであり、図示しない多数の発光層(各色に対応)が形成されている。
【0070】
一方、第2表示領域22では、赤色用の液状組成物110gを配置し終えた後、一括に乾燥処理することにより発光層110b1が形成される。すなわち、乾燥により液状組成物滴110gに含まれる溶媒が蒸発し、図14に示すような赤色(R)発光層110b1が形成される。
【0071】
以上のような液状組成物の乾燥は、真空乾燥により行うことが好ましく、具体例を挙げるならば、窒素雰囲気中、室温で圧力を133.3Pa(1Torr)程度とした条件により行うことができる。圧力が低すぎると液状組成物が突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、溶媒の蒸発速度が高まり、発光層形成材料が上部開口部112d壁面に多く付着してしまうので好ましくない。
【0072】
次いで、上記乾燥処理が終了したならば、ホットプレート等の加熱手段を用いて発光層110bのアニール処理を行うことが好ましい。このアニール処理は、各有機EL層の発光特性を最大限に引き出せる共通の温度と時間で行う。
このようにして、画素電極111上に正孔注入/輸送層110a及び発光層110bが形成される。
【0073】
(4)陰極形成工程
次に、図15及び図16に示すように、第1表示領域21と第2表示領域22のそれぞれに、画素電極(陽極)111と対をなす陰極12を形成する。即ち、各色発光層110b及び有機物バンク層112bを含む基板2上の領域全面に、例えばカルシウム層とアルミニウム層とを順次積層した構成の陰極12を形成する。これにより、各色発光層110bの形成領域全体に、陰極12が積層され、赤色、緑色、青色の各色に対応する有機EL素子がそれぞれ形成される。
【0074】
陰極12は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等で形成することが好ましく、特に蒸着法で形成することが、熱による発光層110bの損傷を防止できる点で好ましい。また陰極12上に、酸化防止のためにSiO2、SiN等の保護層を設けても良い。
【0075】
(5)封止工程
最後に、有機EL素子が形成された基板2と、別途用意した封止基板とを封止樹脂を介して封止する。例えば、熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂からなる封止樹脂を基板2の周縁部に塗布し、封止樹脂上に封止基板を配置する。封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、陰極12にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が陰極12に侵入して陰極12が酸化されるおそれがあるので好ましくない。
【0076】
この後、基板2の配線に陰極12を接続するとともに、基板2上あるいは外部に設けられる駆動IC(駆動回路)に回路素子部14の配線を接続することにより、本実施形態の有機EL装置が完成する。
【0077】
(電子機器)
次に、本発明の表示装置を用いた電子機器について説明する。
まず、上記実施形態の有機EL装置と同様の構成の表示装置をインストルメントパネルの表示部に用いた実施形態について説明する。図19は、インストルメントパネルに備え付ける表示部用基板の構成を模式的に示す平面図であって、図20は、同じく表示部用基板の構成を模式的に示す断面図である。
【0078】
当該表示部は、TFT等を備えた基板2及び封止ガラス3の間に有機EL層が挟持された構成の表示本体部31を主体として構成され、該表示本体部31の中央部に表示面32が配設されている。また、基板2に接続されたフレキシブル基板4と、該フレキシブル基板4上に配設されたデータ線駆動IC5とを備えた外部接続部33が、上記表示本体部31に接続されており、該外部接続部33の端部には外部接続端子6が配設されている。
【0079】
なお、基板2には、トランジスタアレイが構成され、データ保持回路が備えられるとともに、スキャンドライバが内蔵されている。また、フレキシブル基板4には、データ線や、制御線、電源線等が形成されており、データ線駆動ICは、各ドット(サブ画素)にデータを供給する機能を具備している。また、外部接続端子6は、図示しない外部制御基板から制御信号を、電源基板から電源を受けるための端子である。
【0080】
一方、図21は搭載する表示部について、その表示領域の構成を示す説明図である。図2に示した有機EL装置では、カラー表示可能な範囲が異なる2つの表示領域から構成されていたが、本表示部の表示領域2aは、赤色の単色表示のみが可能な赤色表示領域22aと、青色の単色表示のみが可能な青色表示領域22bと、フルカラー表示が可能なフルカラー表示領域21とから構成されている。ここで、各表示領域の境界領域にはダミー画素領域23が構成され、いずれの表示も行わない領域、つまり発光層を具備しない画素領域が形成されている。境界領域は、発光層を形成して、制御回路にて、電流が流れないようにしても良い。
【0081】
なお、当該ダミー画素領域23には、その幅方向に3つの画素(つまり9つのドット(サブ画素))が形成されている。また、当該表示部の表示領域2aは、全体で560×560の画素を含み、1画素には3つのドット(サブ画素)が含まれており、その表示領域2aの周辺部にも、ダミー画素領域23が形成されている。
【0082】
以上のような構成の表示部は、図22に示すようにインストルメントパネル部500に装着されて使用に供される。具体的には、フレキシブル基板4をインストルメントパネル部500内部に組み込む形にて装着される。赤色表示領域22aは、速度表示を行うメータ表示部71として使用に供され、自動車使用時には常時点灯表示される一方、青色表示領域22bは、運転上必要な情報を表示する必要情報表示部72として使用に供され、当該情報を出力するタイミングに応じて点灯表示される。さらに、フルカラー表示領域21は、ナビゲーションシステムからのナビゲーション情報や、車載されたカメラからの外部情報等の付随的に必要な情報をフルカラー表示する任意情報表示部74として使用に供される。
【0083】
次に、上記実施形態の有機EL装置と同様の構成の表示装置を家電製品の表示部に用いた実施形態について説明する。図23は、冷蔵庫に備え付ける表示パネルの構成を模式的に示す平面図であって、図24は、その使用態様を示す平面図である。なお、基板構成等は上記インストルメントパネルに用いたものと同様のため、説明を省略する。
【0084】
本実施形態に用いた表示パネルの表示領域2aは、フルカラー表示が可能なフルカラー表示領域21と、橙色の単色表示のみが可能な橙色表示領域22cと、赤色の単色表示のみが可能な赤色表示領域22dとから構成されている。なお、橙色表示領域22cは、赤色のドット(サブ画素)2つと、緑色のドット(サブ画素)1つとからなる画素にて構成されている。また、表示領域2aの周辺部にはダミー画素領域23が構成されている。
【0085】
以上のような構成の表示パネルは、図24に示すように冷蔵庫の表示部550に装着されて使用に供される。具体的には、赤色表示領域22dは、庫内温度その他の運転状況を表示する運転状況表示部77として使用に供される一方、橙色表示領域22cは、サービス情報を表示するサービス情報表示部76として使用に供され、本実施形態では日替わりでレシピが表示される態様となっている。さらに、フルカラー表示領域21は、上記サービス情報に付随する画像情報を表示する画像表示部75として使用に供される。
【0086】
以上のような電子機器によると、表示のバリエーションが増える上、本発明に係る表示装置を具備したものであるため、高品質の表示を高寿命にて提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本実施形態の有機EL装置の回路図。
【図2】同、平面構成図。
【図3】第1表示領域に係る画素の平面構成図。
【図4】第2表示領域に係る画素の平面構成図。
【図5】第1表示領域の断面構成を示す図。
【図6】第2表示領域の断面構成を示す図。
【図7】実施例における輝度の経時変化と、比較例における輝度の経時変化とについて示したグラフ。
【図8】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図9】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図10】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図11】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図12】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図13】実施形態に係る製造方法について第1表示領域に係るものを説明する工程図。
【図14】実施形態に係る製造方法について第2表示領域に係るものを説明する工程図。
【図15】実施形態に係る製造方法について第1表示領域に係るものを説明する工程図。
【図16】実施形態に係る製造方法について第2表示領域に係るものを説明する工程図。
【図17】実施形態に係るヘッドの平面構成図。
【図18】実施形態に係るインクジェット装置の平面構成図。
【図19】電子機器に装着する表示部を構成する基板の一例を示す平面図。
【図20】図19に示した表示部を構成する基板の断面構成を示す断面図。
【図21】図19に示した表示部について表示領域の構成を示す平面図。
【図22】電子機器の一例を示す平面図。
【図23】電子機器に装着する表示部を構成する基板の一変形例を示す平面図。
【図24】電子機器の一例を示す平面図。
【符号の説明】
【0088】
2…基板、2a…表示領域、21…第1表示領域、22…第2表示領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL装置に代表される自発光型表示装置は、バックライトを必要としないため薄型化が可能な表示装置として脚光を浴びている。このような有機EL装置は、例えば特許文献1に開示されているように、表示領域内に赤色(R),緑色(G),青色(B)の各色のサブ画素(表示の最小単位)をストライプ状に配列し、3つのサブ画素を1画素としてフルカラーの表示を可能としている。
【特許文献1】特開2002−252083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示された表示装置は、表示領域内において各々共通の画素構成により一様にフルカラー表示を行うものである。このような構成は、テレビのように表示領域における輝度の時間積分値が画素によらず略一定の表示を行う場合には好適であるが、逆に表示領域内での輝度の時間積分値が画素毎に異なるような表示を行う場合には、以下のような問題を生じる場合がある。つまり、1)輝度の時間積分値が大きい色の画素について輝度劣化が他の色よりも進み易い、2)輝度の時間積分値が大きい色の画素について輝度劣化が相対的に早いことで、全体としてホワイトバランスが崩れ、色味が変わったり、焼付きが生じ易い、3)単色表示したい領域に、フルカラー用の3色のサブ画素が存在すると開口率が低くなり、単色表示部分の輝度劣化が早くなる、等の問題が生じ得る。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、上記問題を悉く解決し、もって表示品質を向上させ、さらには品質寿命を向上させることが可能な表示装置の提供を目的としている。また、本発明は、このような高品質の表示が可能な表示装置を備える電子機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の表示装置は、複数の画素にて構成される表示領域を備え、前記表示領域が、第1発光波長範囲を示す第1画素群にて構成される第1表示領域と、該第1発光波長範囲とは異なる第2発光波長範囲を示す第2画素群にて構成される第2表示領域とを備えることを特徴とする。なお、第1発光波長範囲と第2発光波長範囲とは互いに同一波長範囲でないものを意味しており、両範囲が完全同一でなければ良く、一方の範囲が他方の範囲に含まれることを除外するものではない。
【0006】
このような本発明の表示装置は、第1表示領域の第1画素群と第2表示領域の第2画素群とで発光波長範囲が異なり、つまり発光可能な色の範囲(種類)が異なることとなる。したがって、本発明の表示装置が具備する表示領域は、表示可能な色がそれぞれ異なる第1表示領域と第2表示領域とに少なくとも分割されることとなり、表示領域の設計自由度を高めることができるようになる。
また、この場合、表示領域のうちの所定領域に必要な色の発光が可能な画素を配設し、しかも当該領域において不必要な色の画素を排除できるため、全体として開口率を高めることができる。つまり、従来の構成では、例えば単色表示を行う領域にも一様にフルカラー表示用の画素を配設しているため、不必要な色に係る画素が備えられたことによる開口率低下は免れなかったが、本発明では不必要な色に係る画素を排除することで、これを解決することができたのである。
また、そのような必要な色の画素のみにより所定の表示領域を構成することにより、従来のようにフルカラー用の画素を表示領域全体に配置する場合に比して、1画素当りの輝度を低減させても、該従来と同程度の面輝度を得ることができ、したがって1画素当りの輝度劣化も低減され、消費電力を低減することも可能となり、ひいては輝度寿命を高めることも可能となる。
また、本発明の表示装置では解像度も向上されている。つまり、従来のようにフルカラー用の画素を表示領域全体に配置する場合に比して、所定領域内における必要な色の画素数を増大させることができ、ひいては解像度の向上に寄与することができるのである。
【0007】
本発明の表示装置では、前記第1画素群が複数種の色光を表示可能な画素にて構成される一方、前記第2画素群が1種の色光を表示可能な画素にて構成されてなるものとすることができる。この場合、第1表示領域では2色以上の表示が可能となる一方、第2表示領域では単色表示が可能となる。そして、特に第2表示領域では、従来のようなフルカラー表示用の画素を備える場合に比して、開口率向上、解像度向上、輝度寿命向上を実現することができるようになる。なお、具体的には、前記第1画素群を、所定の色光を発光可能なサブ画素と、これとは異なる色光を発光可能なサブ画素とを少なくとも含む画素にて構成する一方、前記第2画素群を、所定の色光を発光可能な1種のサブ画素のみを含む画素にて構成することで、上記構成を実現することができる。
【0008】
さらに、前記第1画素群がフルカラー表示可能な画素にて構成される一方、前記第2画素群が単色表示可能な画素にて構成されてものとすることができる。具体的には、前記第1画素群を、赤色を発光可能なサブ画素と、緑色を発光可能なサブ画素と、青色を発光可能なサブ画素とを含む画素にて構成する一方、前記第2画素群を、赤色を発光可能なサブ画素と、緑色を発光可能なサブ画素と、青色を発光可能なサブ画素との中から選択される1又は2のサブ画素を含む画素にて構成することができる。
【0009】
上記のような複数種のサブ画素を備える場合、各種サブ画素がそれぞれ同一の大きさにて構成されてなるものとすることができる。この場合、表示領域に形成するサブ画素の数により開口率を調整することができ、開口率の設計が容易となる。なお、サブ画素を長方形状にて構成し、画素を該長方形状のサブ画素を複数含む正方形状にて構成することが好ましい。
【0010】
次に、本発明の電子機器は上記表示装置を備えることを特徴とし、このような電子機器によると、その表示部において高品質の表示を提供できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の表示装置の一実施形態としての有機EL装置について、及びその有機EL装置の製造方法について図面を参照しつつ説明する。なお、各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
【0012】
(有機EL装置)
図1は、本実施形態の有機EL装置の配線構造を示す説明図であって、図2は、本実施形態の有機EL装置の平面模式図、図3及び図4は画素の構成を拡大して示す平面模式図、図5及び図6は、本実施形態の有機EL装置の表示領域の断面模式図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の有機EL装置は、複数の走査線101と、走査線101に対して交差する方向に延びる複数の信号線102と、信号線102に対して並列する方向に延びる複数の電源線103とがそれぞれ配線された構成を有し、走査線101及び信号線102の各交点付近には単位表示領域Pが設けられている。
【0014】
信号線102には、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを備えるデータ側駆動回路104が接続されている。また、走査線101には、シフトレジスタ及びレベルシフタを備える走査側駆動回路105が接続されている。
更に、単位表示領域Pの各々には、走査線101を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスタ122と、このスイッチング用の薄膜トランジスタ122を介して信号線102から供給される画素信号を保持する保持容量capと、該保持容量capによって保持された画素信号がゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスタ123と、この駆動用薄膜トランジスタ123を介して電源線103に電気的に接続したときに当該電源線103から駆動電流が流れ込む画素電極(電極)111と、この画素電極111と陰極(対向電極)12との間に挟み込まれた有機EL層110とが設けられている。電極111と対向電極12と有機EL層110により、発光素子が構成されている。
【0015】
走査線101が駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスタ122がオンになると、そのときの信号線102の電位が保持容量capに保持され、該保持容量capの状態に応じて駆動用の薄膜トランジスタ123のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ123のチャネルを介して、電源線103から画素電極111に電流が流れ、更に有機EL層110を介して陰極12に電流が流れる。有機EL層110では、流れる電流量に応じて発光が生じる。
【0016】
本実施形態の有機EL装置は、図5及び図6に示すように、ガラス等からなる透明な基板2と、マトリックス状に配置された発光素子を具備して基板2上に形成された発光素子部11と、発光素子部11上に形成された陰極12とを具備している。ここで、発光素子部11と陰極12とにより表示素子10が構成される。基板2は、例えばガラス等の透明基板であり、図2に示すように、基板2の中央に位置する表示領域2aと、基板2の周縁に位置して表示領域2aを囲む非表示領域2cとに区画されている。
【0017】
表示領域2aは、マトリックス状に配置された発光素子によって形成される領域であって、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色のいずれかを発光可能なドット(サブ画素)を表示の最小駆動単位として複数有しており、該各ドット(サブ画素)が図1に示した単位表示領域Pを構成している。そして、本実施形態では、表示領域2aがフルカラー表示を行う第1表示領域21と、単色表示を行う第2表示領域22とを有して構成されている。第1表示領域21には、図3にも示す通り、赤色(R)を発光可能なRドットA1と、緑色(G)を発光可能なGドットA2と、青色(B)を発光可能なBドットA3の異なる3色のドットからなる画素Aが複数配列されている。一方、第2表示領域22には、図4にも示す通り、赤色(R)を発光可能なRドットA1を3つ含んで構成された画素A’が複数配列されている。
【0018】
つまり、表示領域2aには画素A,A’が所定の配列にて配置されてなり、該画素Aと画素A’とは発光可能な波長範囲が異なるものであって、画素Aはフルカラーの波長範囲(概ね380nm〜780nm程度)の発光が可能で、画素A’は赤色の波長範囲(概ね580nm〜780nm)の発光が可能とされている。そして、複数の画素Aを所定パターンで含む第1画素群にて構成される表示領域が、フルカラー表示可能な第1表示領域21として構成され、一方、複数の画素A’を所定パターンで含む第2画素群にて構成される表示領域が、赤色表示可能な第2表示領域22として構成されている。なお、図3及び図4に示すように、各ドット(サブ画素)A1、A2、A3はそれぞれ同一長方形状、且つ同一面積にて構成されてなり、各画素A,A’はそれぞれ略正方形状にて構成されている。
【0019】
図2に戻り、非表示領域2cには、前述の電源線103(103R、103G、103B)が配線されている。表示領域2aの両側には、前述の走査側駆動回路105が配置されている。更に、走査側駆動回路105の両側には、走査側駆動回路105に接続される駆動回路用制御信号配線105aと駆動回路用電源配線105bとが設けられている。表示領域2aの図示上側には製造途中や出荷時の表示装置の品質、欠陥の検査を行う検査回路106が配置されている。
【0020】
図5は第1表示領域21の断面構成図であって、該第1表示領域21は上述の通り3種のドット(サブ画素)A1、A2、A3にて構成されている。
第1表示領域21では、基板2上に、TFTなどの回路等が形成された回路素子部14、有機EL層110が形成された発光素子部11及び陰極12が順次積層されて構成されており、有機EL層110から基板2側に発せられた光が、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるとともに、有機EL層110から基板2の反対側に発せられた光が陰極12により反射されて、回路素子部14及び基板2を透過して基板2の下側(観測者側)に出射されるようになっている。
なお、上記陰極12として、透明な材料を用いるならば、陰極側から発光する光を出射させることができる。透明な陰極材料としては、ITO(インジウムスズ酸化物)、Pt、Ir、Ni、もしくはPdを挙げることができる。
【0021】
回路素子部14には、基板2上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜2cが形成され、この下地保護膜2c上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜141が形成されている。半導体膜141には、ソース領域141a及びドレイン領域141bが高濃度リンイオン打ち込みにより形成されている。前記リンイオンが導入されなかった部分がチャネル領域141cとなっている。
【0022】
また、前記下地保護膜2c及び半導体膜141を覆う透明なゲート絶縁膜142が形成され、ゲート絶縁膜142上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極143(走査線101)が形成され、ゲート電極143及びゲート絶縁膜142上には透明な第1層間絶縁膜144aと第2層間絶縁膜144bが形成されている。ゲート電極143は半導体膜141のチャネル領域141cに対応する位置に設けられている。また、第1、第2層間絶縁膜144a、144bを貫通して、半導体膜141のソース、ドレイン領域141a、141bにそれぞれ接続されるコンタクトホール145,146が形成されている。
【0023】
そして、第2層間絶縁膜144b上には、ITO等からなる透明な画素電極111が所定の形状にパターニングされて形成され、一方のコンタクトホール145がこの画素電極111に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール146が電源線103に接続されている。このようにして、回路素子部14には、各画素電極111に接続された駆動用の薄膜トランジスタ123が形成されている。
【0024】
発光素子部11は、複数の画素電極111…上の各々に積層された有機EL層110と、各画素電極111及び有機EL層110の間に備えられて各有機EL層110を区画するバンク部112とを主体として構成されている。有機EL層110上には陰極12が配置されている。これら画素電極111、有機EL層110及び陰極12によって発光素子が構成されている。ここで、画素電極111は、例えばITOにより形成されてなり、平面視略矩形状にパターン形成されている。この各画素電極111…を仕切る形にてバンク部112が備えられている。
【0025】
バンク部112は、図5に示すように、基板2側に位置する第1隔壁部としての無機物バンク層(第1バンク層)112aと、基板2から離れて位置する第2隔壁部としての有機物バンク層(第2バンク層)112bとが積層された構成を備えている。無機物バンク層112aは、例えばTiO2やSiO2等により形成され、有機物バンク層112bは、例えばアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等により形成される。
【0026】
無機物、有機物バンク層112a、112bは、画素電極111の周縁部上に乗上げるように形成されている。平面的には、画素電極111の周囲と無機物バンク層112aとが部分的に重なるように配置された構造となっている。また、有機物バンク層112bも同様であり、画素電極111の一部と平面的に重なるように配置されている。また無機物バンク層112aは、有機物バンク層112bの縁端よりも画素電極111の中央側に更に突出するように形成されている。このようにして、無機物バンク層112aの各第1積層部(突出部)112eが画素電極111の内側に形成されることにより、画素電極111の形成位置に対応する下部開口部112cが設けられている。
【0027】
また、有機物バンク層112bには、上部開口部112dが形成されている。この上部開口部112dは、画素電極111の形成位置及び下部開口部112cに対応するように設けられている。上部開口部112dは、図5に示すように、下部開口部112cより開口が広く、画素電極111より狭く形成されている。また、上部開口部112dの上部の位置と、画素電極111の端部とがほぼ同じ位置になるように形成される場合もある。この場合は、図5に示すように、有機物バンク層112bの上部開口部112dの断面が傾斜した形状となる。このようにして、バンク部112には、下部開口部112c及び上部開口部112dが連通された開口部112gが形成されている。
【0028】
また、バンク部112には、親液性を示す領域と、撥液性を示す領域が形成されている。親液性を示す領域は、無機物バンク層112aの第1積層部112e及び画素電極111の電極面111aであり、これらの領域は、酸素を処理ガスとするプラズマ処理によって親液性に表面処理されている。また、撥液性を示す領域は、上部開口部112dの壁面及び有機物バンク層112の上面112fであり、これらの領域は、4フッ化メタン、テトラフルオロメタン、もしくは四フッ化炭素を処理ガスとするプラズマ処理によって表面がフッ化処理(撥液性に処理)されている。
【0029】
一方、有機EL層110は、画素電極111上に積層された正孔注入/輸送層110aと、正孔注入/輸送層110a上に隣接して形成された発光層110bとから構成されている。
正孔注入/輸送層110aは、発光層110bに正孔を注入する機能を有するとともに、正孔注入/輸送層110a内部において正孔を輸送する機能を有する。このような正孔注入/輸送層110aを画素電極111と発光層110bの間に設けることにより、発光層110bの発光効率、寿命等の素子特性が向上する。また、発光層110bでは、正孔注入/輸送層110aから注入された正孔と、陰極12から注入される電子とが再結合し、発光が行われる。
【0030】
正孔注入/輸送層110aは、下部開口部112c内に位置して画素電極面111a上に形成される平坦部110a1と、上部開口部112d内に位置して無機物バンク層の第1積層部112e上に形成される周縁部110a2から構成されている。また、正孔注入/輸送層110aは、構造によっては、画素電極111上であって、且つ無機物バンク層110aの間(下部開口部110c)にのみ形成されている(前述に記載した平坦部にのみ形成される形態もある)。
【0031】
また、発光層110bは、正孔注入/輸送層110aの平坦部110a1及び周縁部110a2上に渡って形成されており、平坦部112a1上での厚さが50nm〜80nmの範囲とされている。発光層110bは、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1、緑色(G)に発光する緑色発光層110b2、及び青色(B)に発光する青色発光層110b3の3種類を有し、各発光層110b1〜110b3は平面視ストライプ状に配置されている。
【0032】
なお、正孔注入/輸送層形成材料としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸等の混合物を用いることができる。また、発光層110bの材料としては、例えば、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、またはこれらの高分子材料にルブレン、ペリレン、9,10-ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープして用いることができる。
【0033】
陰極12は、発光素子部11の全面に形成されており、画素電極111と対になって有機EL層110に電流を流す役割を果たす。この陰極12は、例えば、カルシウム層とアルミニウム層とが積層されて構成されている。このとき、発光層に近い側の陰極には仕事関数が低いものを設けることが好ましく、特にこの形態においては発光層110bに直接に接して発光層110bに電子を注入する役割を果たす。
【0034】
また、発光層110bと陰極12との間に発光効率を高めるためのLiFを形成する場合もある。なお、赤色及び緑色の発光層110b1、110b2にはフッ化リチウムに限らず、他の材料を用いても良い。従ってこの場合は青色(B)発光層110b3のみにフッ化リチウムからなる層を形成し、他の赤色及び緑色の発光層110b1、110b2にはフッ化リチウム以外のものを積層しても良い。また、赤色及び緑色の発光層110b1、110b2上にはフッ化リチウムを形成せず、カルシウムのみを形成しても良い。
【0035】
また、陰極12を形成するアルミニウムは、発光層110bから発した光を基板2側に反射させるもので、Al膜の他、Ag膜、AlとAgの積層膜等からなることが好ましい。更にアルミニウム上にSiO、SiO2、SiN等からなる酸化防止用の保護層を設けても良い。
【0036】
図5に示す発光素子部11上には、実際の有機EL装置では封止部が備えられる。この封止部は、例えば基板2の周囲に環状に封止樹脂を塗布し、さらに封止缶により封止することにより形成することができる。前記封止樹脂は、熱硬化樹脂あるいは紫外線硬化樹脂等からなり、特に、熱硬化樹脂の1種であるエポキシ樹脂よりなることが好ましい。この封止部は、陰極12または発光素子部11内に形成された発光層の酸化を防止する目的で設けられる。また、前記封止缶の内側には水、酸素等を吸収するゲッター剤を設け、封止缶の内部に侵入した水又は酸素を吸収できるようにしてもよい。
【0037】
一方、図6は第2表示領域22の断面構成図であって、赤色のドット(サブ画素)A1のみによって構成されている。なお、第2表示領域22では、図5に示した第1表示領域21とは発光層110bの構成のみが異なり、その他の断面構成は同様のため説明を省略する。つまり、第2表示領域22では、3つの赤色ドットA1が1つの画素を構成しており、各ドットA1には、赤色(R)に発光する赤色発光層110b1が配設されている。なお、第1表示領域21では、発光層110bと陰極12との間に発光効率を高めるためのLiFを形成する場合もあるが、当該第2表示領域22においては、発光効率が低下するおそれがあるため、LiFを形成しない方が好ましい。
【0038】
以上のような構成を有する本実施形態の有機EL装置によると、表示領域2aが、フルカラー表示が可能な第1表示領域21と、単色表示のみが可能な第2表示領域22とにより構成されている。この場合、表示領域2aの全域にフルカラー用の画素を配設するのではなく、所定の領域(第2表示領域22)に必要な色の発光が可能な画素を配設し、しかも当該領域22において不必要な色の画素を排除できるため、全体として開口率を高めることができる。また、そのような必要な色の画素のみにより所定の領域(第2表示領域22)を構成することにより、従来のようにフルカラー用の画素を表示領域2a全体に配置する場合に比して、1画素当りの輝度を低減させても、該従来と同程度の面輝度を得ることができ、したがって1画素当りの輝度劣化も低減され、消費電力を低減することも可能となり、ひいては輝度寿命を高めることも可能となる。
【0039】
具体的には、図7に示すように寿命が向上する。図7は、本実施形態の有機EL装置の第2表示領域22における輝度(実施例)と、表示領域の全てをフルカラー表示用の画素にて構成した場合における輝度(比較例)とについて、その時間変化を表したグラフである。なお、縦軸は1画素当りの面輝度(cd/m2)、横軸は時間(hour)を表している。
図7に示す通り、本実施形態の有機EL装置によると、実施例及び比較例の有機EL装置に関し、1画素において初期値300cd/m2の面輝度が得られるような画素設定とした場合、輝度が初期値の80%となる時間は、比較例では8000時間であったのに対し、実施例では40000時間であった。つまり、本実施形態の構成の導入により、輝度の劣化時間が約5倍となったのである。
【0040】
また、本実施形態の有機EL装置では解像度も向上されている。つまり、フルカラー用の画素を表示領域2a全体に配置する場合に比して、所定領域(第2表示領域22)内における必要な色の画素数を増大させることができ、解像度を向上させることができるのである。
【0041】
なお、本実施形態では第1表示領域21をフルカラー表示用、第2表示領域22を単色表示用として構成しているが、例えば第1表示領域21をフルカラー表示用、第2表示領域22を二色表示用、或いは第1表示領域21を二色表示用、第2表示領域22を単色表示用として構成してもよい。また、単色表示用に、白色発光材料を用いて、白色発光としても良い。これにより沢山のバリエーションを有した表示領域2aを構成することができる。
【0042】
(有機EL装置の製造方法)
次に、上記有機EL装置を製造する方法について図面を参照して説明する。
本実施形態の製造方法は、(1)バンク部形成工程、(2)正孔注入/輸送層形成工程、(3)発光層形成工程、(4)陰極形成工程及び(5)封止工程等を有する。なお、ここで説明する製造方法は一例であって、必要に応じてその他の工程が追加されたり、上記の工程の一部が除かれたりする。
なお、(2)正孔注入/輸送層形成工程、(3)発光層形成工程は、液滴吐出装置(インクジェット装置)を用いた液体吐出法(インクジェット法)にて行われる。
【0043】
(1)バンク部形成工程
バンク部形成工程では、基板2の所定位置にバンク部112を形成する。バンク部112は、第1のバンク層として無機物バンク層112aが形成され、第2のバンク層として有機物バンク層112bが形成された構造を有している。
【0044】
(1)−1 無機物バンク層112aの形成
まず、図8に示すように、基板上の所定位置に無機物バンク層112aを形成する。無機物バンク層112aが形成される位置は、第2層間絶縁膜144b及び画素電極111上である。なお、第2層間絶縁膜144bは薄膜トランジスタ、走査線、信号線、等が配置された回路素子部14上に形成されている。無機物バンク層112aは、例えば、SiO2、TiO2等の無機物材料にて構成することができる。これらの材料は、例えばCVD法、コート法、スパッタ法、蒸着法等によって形成される。更に、無機物バンク層112aの膜厚は50nm〜200nmの範囲が好ましく、特に150nmがよい。
【0045】
無機物バンク層112aは、層間絶縁層144及び画素電極111の全面に無機物膜を形成し、その後無機物膜をフォトリソグラフィ法等によりパターニングすることにより、開口部を有する形にて形成される。この開口部は、画素電極111の電極面111aの形成位置に対応するもので、図8に示すように下部開口部112cとして設けられる。なお、無機物バンク層112aは画素電極111の周縁部と一部重なるように形成され、これにより発光層110の平面的な発光領域が制御される。
【0046】
(1)−2 有機物バンク層112bの形成
次に、第2のバンク層としての有機物バンク層112bを形成する。
具体的には、図8に示すように、無機物バンク層112a上に有機物バンク層112bを形成する。有機物バンク層112bを構成する材料として、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶剤性を有する材料を用いる。これらの材料を用い、有機物バンク層112bをフォトリソグラフィ技術等によりパターニングして形成される。なお、パターニングする際、有機物バンク層112bに上部開口部112dを形成する。上部開口部112dは、電極面111a及び下部開口部112cに対応する位置に設けられ、全画素共通のパターンを有して形成するものとしている。
【0047】
上部開口部112dは、図8に示すように、無機物バンク層112aに形成された下部開口部112cより広く形成する事が好ましい。更に、有機物バンク層112bは断面形状がテーパー状をなすことが好ましく、有機物バンク層112bの最底面では画素電極111の幅より狭く、有機物バンク層112bの最上面では画素電極111の幅とほぼ同一の幅に形成する事が好ましい。
これにより、無機物バンク層112aの下部開口部112cを囲む第1積層部112eが、有機物バンク層112bよりも画素電極111の中央側に突出された形になる。このようにして、有機物バンク層112bに形成された上部開口部112d、無機物バンク層112aに形成された下部開口部112cを連通させることにより、無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bを貫通する開口部112gが形成される。
【0048】
形成されたバンク部112、及び画素電極111の表面は、プラズマ処理により適切な表面処理を施すことが好ましく、具体的にはバンク部112表面の撥液化処理、及び画素電極111の親液化処理を行う。画素電極111の表面処理は、酸素ガスを用いたO2プラズマ処理により行うことができ、例えばプラズマパワー100kW〜800kW、酸素ガス流量50ml/min〜100ml/min、板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件で処理することで、画素電極111表面を含む領域を親液化することができる。また、このO2プラズマ処理により画素電極111表面の洗浄、及び仕事関数の調整も同時に行われる。次いで、バンク部112の表面処理は、テトラフルオロメタンを用いたCF4プラズマ処理により行うことができ、例えばプラズマパワー100kW〜800kW、4フッ化メタンガス流量50ml/min〜100ml/min、基板搬送速度0.5mm/sec〜10mm/sec、基板温度70℃〜90℃の条件で処理することで、バンク部112の上部開口部112d及び上面112fを撥液化することができる。
【0049】
(2)正孔注入/輸送層形成工程
次に発光素子形成工程では、まず画素電極111上に正孔注入/輸送層を形成する。
正孔注入/輸送層形成工程では、液滴吐出装置として例えばインクジェット装置を用いることにより、正孔注入/輸送層形成材料を含む液状組成物を電極面111a上に吐出する。その後に乾燥処理及び熱処理を行い、画素電極111上及び無機物バンク層112a上に正孔注入/輸送層110aを形成する。なお、ここで、正孔注入/輸送層110aは第1積層部112e上に形成されないこともあり、つまり画素電極111上にのみ正孔注入/輸送層が形成される形態もある。
【0050】
インクジェットによる製造方法は以下の通りである。すなわち、図9に示すように、インクジェットヘッドH1に形成された複数のノズルから正孔注入/輸送層形成材料を含む液状組成物を吐出する。ここではインクジェットヘッドを走査することにより各画素毎に組成物を充填しているが、基板2を走査することによっても可能である。更に、インクジェットヘッドと基板2とを相対的に移動させることによっても組成物を充填させることができる。なお、これ以降のインクジェットヘッドを用いて行う工程では上記の点は同様である。
【0051】
インクジェットヘッドによる吐出は以下の通りである。すなわち、インクジェットヘッドH1に形成された吐出ノズルH2を電極面111aに対向させて配置し、ノズルH2から液状組成物を吐出する。画素電極111の周囲には下部開口部112cを区画するバンク112が形成されており、この下部開口部112c内に位置する画素電極面111aにインクジェットヘッドH1を対向させ、このインクジェットヘッドH1と基板2とを相対移動させながら、吐出ノズルH2から1滴当たりの液量が制御された液状組成物の液滴110cを電極面111a上に吐出する。
【0052】
本工程で用いる液状組成物としては、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルホン酸(PSS)等の混合物を、極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、ノルマルブタノール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビト−ルアセテート、ブチルカルビト−ルアセテート等のグリコールエーテル類等を挙げることができる。
【0053】
より具体的な組成としては、PEDOT/PSS混合物(PEDOT/PSS=1:20):12.52重量%、IPA:10重量%、NMP:27.48重量%、DMI:50重量%のものを例示できる。なお、上記液状組成物の粘度は1mPa・s〜20mPa・s程度が好ましく、特に4mPa・s〜15mPa・s程度が良い。
【0054】
上記の液状組成物を用いることにより、吐出ノズルH2に詰まりが生じることがなく安定吐出できる。なお、正孔注入/輸送層形成材料は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各発光層110b1〜110b3に対して同じ材料を用いても良く、各発光層毎に変えても良い。
【0055】
吐出された組成物の液滴110cは、親液処理された電極面111a及び第1積層部112e上に広がり、下部、上部開口部112c、112d内に充填される。仮に、第1組成物滴110cが所定の吐出位置から外れて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが第1組成物滴110cで濡れることがなく、弾かれた第1組成物滴110cが下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0056】
電極面111a上に吐出する組成物の量は、下部、上部開口部112c、112dの大きさ、形成しようとする正孔注入/輸送層の厚さ、液状組成物中の正孔注入/輸送層形成材料の濃度等により決定される。また、液状組成物の液滴110cは1回のみならず、数回に分けて同一の電極面111a上に吐出しても良い。この場合、各回における液状組成物の量は同一でも良く、各回毎に液状組成物を変えても良い。更に電極面111aの同一箇所のみならず、各回毎に電極面111a内の異なる箇所に前記液状組成物を吐出しても良い。
【0057】
インクジェットヘッドの構造については、図17に示すようなヘッドHを用いる事ができる。更に、基板とインクジェットヘッドの配置に関しては図18のように配置することが好ましい。図17中、符号H7は前記のインクジェットヘッドH1を支持する支持基板であり、この支持基板H7上に複数のインクジェットヘッドH1が備えられている。インクジェットヘッドH1のインク吐出面(基板との対向面)には、ヘッドの長さ方向に沿って列状に、且つヘッドの幅方向に間隔をあけて2列で吐出ノズルが複数(例えば、1列180ノズル、合計360ノズル)設けられている。また、このインクジェットヘッドH1は、吐出ノズルを基板側に向けるとともに、X軸(またはY軸)に対して所定角度傾いた状態で略X軸方向に沿って列状に、且つY方向に所定間隔をあけて2列に配列された状態で平面視略矩形状の支持板20に複数(図17では1列6個、合計12個)位置決めされて支持されている。
【0058】
また図18において、符号1115は基板2を載置するステージであり、符号1116はステージ1115を図中x軸方向(主走査方向)に案内するガイドレールである。またヘッドHは、支持部材1111を介してガイドレール1113により図中y軸方向(副主走査方向)に移動できるようになっており、更にヘッドHは図中θ軸方向に回転できるようになっており、インクジェットヘッドH1を主走査方向に対して所定の角度に傾けることができるようになっている。このように、インクジェットヘッドを走査方向に対して傾けて配置することにより、ノズルピッチを画素ピッチに対応させることができる。また、傾き角度調整することにより、どのような画素ピッチに対しても対応させることができる。
【0059】
図18に示す基板2は、マザー基板に複数のチップを配置した構造となっている。即ち、1チップの領域が1つの表示装置に相当する。ここでは、3つの表示領域2aが形成されているが、これに限られるものではない。例えば、基板2上の左側の表示領域2aに対して組成物を塗布する場合は、ガイドレール1113を介してヘッドHを図中左側に移動させるとともに、ガイドレール1116を介して基板2を図中上側に移動させ、基板2を走査させながら塗布を行う。次に、ヘッドHを図中右側に移動させて基板の中央の表示領域2aに対して組成物を塗布する。右端にある表示領域2aに対しても前記と同様である。なお、図17に示すヘッドH及び図18に示すインクジェット装置は、正孔注入/輸送層形成工程のみならず、発光層形成工程にも用いるものである。
【0060】
次に、図10に示すような乾燥工程を行う。つまり、吐出後の第1組成物を乾燥処理し、第1組成物に含まれる溶媒を蒸発させ、正孔注入/輸送層110aを形成する。乾燥処理を行うと、液状組成物に含まれる溶媒の蒸発が、主に無機物バンク層112a及び有機物バンク層112bに近いところで起き、溶媒の蒸発に併せて正孔注入/輸送層形成材料が濃縮されて析出する。これにより図10に示すように、第1積層部112e上に、正孔注入/輸送層形成材料からなる周縁部110a2が形成される。この周縁部110a2は、上部開口部112dの壁面(有機物バンク層112b)に密着しており、その厚さが電極面111aに近い側では薄く、電極面111aから離れた側、即ち有機物バンク層112bに近い側で厚くなっている。
【0061】
また、これと同時に、乾燥処理によって電極面111a上でも溶媒の蒸発が起き、これにより電極面111a上に正孔注入/輸送層形成材料からなる平坦部110a1が形成される。電極面111a上では溶媒の蒸発速度がほぼ均一であるため、正孔注入/輸送層の形成材料が電極面111a上で均一に濃縮され、これにより均一な厚さの平坦部110a1が形成される。このようにして、周縁部110a2及び平坦部110a1からなる正孔注入/輸送層110aが形成される。なお、周縁部110a2には形成されず、電極面111a上のみに正孔注入/輸送層が形成される態様であっても構わない。
【0062】
上記の乾燥処理は、例えば窒素雰囲気中、室温で圧力を例えば133.3Pa(1Torr)程度にして行う。圧力が低すぎると組成物の液滴110cが突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、極性溶媒の蒸発速度が高まり、平坦な膜を形成する事ができない。乾燥処理後は、窒素中、好ましくは真空中で200℃で10分程度加熱する熱処理を行うことで、正孔注入/輸送層110a内に残存する極性溶媒や水を除去することが好ましい。
【0063】
(3)発光層形成工程
発光層形成工程は、発光層形成材料吐出工程及び乾燥工程とからなる。
前述の正孔注入/輸送層形成工程と同様、インクジェット法により発光層形成用の液状組成物を正孔注入/輸送層110a上に吐出する。その後、吐出した液状組成物を乾燥処理(及び熱処理)して、正孔注入/輸送層110a上に発光層110bを形成する。
【0064】
図11に、インクジェットにより発光層形成用材料を含む液状組成物の吐出工程を示す。図示の通り、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対的に移動し、インクジェットヘッドに形成された吐出ノズルH6から各色(例えばここでは青色(B))発光層形成材料を含有する液状組成物が吐出される。
吐出の際には、下部、上部開口部112c、112d内に位置する正孔注入/輸送層110aに吐出ノズルを対向させ、インクジェットヘッドH5と基板2とを相対移動させながら液状組成物を吐出する。吐出ノズルH6から吐出される液量は1滴当たりの液量が制御されている。このように液量が制御された液滴が吐出ノズルから吐出され、この液滴を正孔注入/輸送層110a上に吐出する。
【0065】
本実施形態では、図2に示した通り、第1表示領域21と第2表示領域22とでは、各色のドットパターンが異なるため、それぞれ領域で吐出態様が異なることとなる。
第1表示領域21では、図12に示すように、基板2上に滴下された液状組成物滴110eを乾燥させることなく、異なる色の発光層形成材料を含有する液状組成物滴110f及び110gの吐出配置を行うようになっている。一方、第2表示領域22では、赤色発光層形成材料を含有する液状組成物110gを吐出配置するようになっている。つまり、本実施形態では、インクジェットにより吐出工程を行っているため、所定のドットに対して、所定の色の吐出を選択的に行うことができるようになっている。
【0066】
吐出された各液状組成物110e〜110gは、図12に示すように、正孔注入/輸送層110a上に広がって下部、上部開口部112c、112d内に満たされる。その一方で、撥液処理された上面112fでは各液状組成物滴110e〜110gが所定の吐出位置からはずれて上面112f上に吐出されたとしても、上面112fが液状組成物滴110e〜110gで濡れることがなく、液状組成物滴110e〜110gが下部、上部開口部112c、112d内に転がり込む。
【0067】
なお、第1表示領域21と第2表示領域22との境界部にダミー画素を配置されている。ダミー画素はバンク部112にて囲まれた開口部112gは有するものの、該ダミー画素には液滴が吐出されず、したがって発光層が形成されないこととなる。
上述した通り、第1表示領域21では赤色、緑色、青色の各色発光層形成材料を含む液状組成物を吐出する一方、第2表示領域22では赤色の発光層形成材料を含む液状組成物を吐出するものとしている。この場合、仮に第1表示領域21と第2表示領域22とを連続で形成する場合には、両者の境界で色の混じりが生じる惧れがあるが、本実施形態のようにダミー画素を配置することで、該混じりによる表示不良の発生を防止ないし抑制することが可能となる。なお、該ダミー領域には、これと平面的に重なるように遮光部を設けておくことが好ましい。
【0068】
本実施形態に用いる発光層形成材料としては、ポリフルオレン系高分子誘導体の他、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、あるいは上記高分子に有機EL材料をドープして用いる事ができる。例えば、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープすることにより用いることができる。そして、これら発光層形成材料を溶解ないし分散させるための溶媒は、各色発光層毎に同じ種類のものを用いるものとしている。
【0069】
次に、乾燥処理を行う。第1表示領域21では、上記各色用の液状組成物110e〜110gを所定の位置に配置し終えた後、一括に乾燥処理することにより発光層110b1〜110b3が形成される。すなわち、乾燥により液状組成物滴110e〜110gに含まれる溶媒が蒸発し、図13に示すような赤色(R)発光層110b1、緑色(G)発光層110b2、青色(B)発光層110b3が形成される。なお、図13においては赤、緑、青に発光する発光層が1つずつ図示されているが、図2やその他の図より明らかなように本来は発光素子がマトリックス状に形成されたものであり、図示しない多数の発光層(各色に対応)が形成されている。
【0070】
一方、第2表示領域22では、赤色用の液状組成物110gを配置し終えた後、一括に乾燥処理することにより発光層110b1が形成される。すなわち、乾燥により液状組成物滴110gに含まれる溶媒が蒸発し、図14に示すような赤色(R)発光層110b1が形成される。
【0071】
以上のような液状組成物の乾燥は、真空乾燥により行うことが好ましく、具体例を挙げるならば、窒素雰囲気中、室温で圧力を133.3Pa(1Torr)程度とした条件により行うことができる。圧力が低すぎると液状組成物が突沸してしまうので好ましくない。また、温度を室温以上にすると、溶媒の蒸発速度が高まり、発光層形成材料が上部開口部112d壁面に多く付着してしまうので好ましくない。
【0072】
次いで、上記乾燥処理が終了したならば、ホットプレート等の加熱手段を用いて発光層110bのアニール処理を行うことが好ましい。このアニール処理は、各有機EL層の発光特性を最大限に引き出せる共通の温度と時間で行う。
このようにして、画素電極111上に正孔注入/輸送層110a及び発光層110bが形成される。
【0073】
(4)陰極形成工程
次に、図15及び図16に示すように、第1表示領域21と第2表示領域22のそれぞれに、画素電極(陽極)111と対をなす陰極12を形成する。即ち、各色発光層110b及び有機物バンク層112bを含む基板2上の領域全面に、例えばカルシウム層とアルミニウム層とを順次積層した構成の陰極12を形成する。これにより、各色発光層110bの形成領域全体に、陰極12が積層され、赤色、緑色、青色の各色に対応する有機EL素子がそれぞれ形成される。
【0074】
陰極12は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法等で形成することが好ましく、特に蒸着法で形成することが、熱による発光層110bの損傷を防止できる点で好ましい。また陰極12上に、酸化防止のためにSiO2、SiN等の保護層を設けても良い。
【0075】
(5)封止工程
最後に、有機EL素子が形成された基板2と、別途用意した封止基板とを封止樹脂を介して封止する。例えば、熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂からなる封止樹脂を基板2の周縁部に塗布し、封止樹脂上に封止基板を配置する。封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、陰極12にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が陰極12に侵入して陰極12が酸化されるおそれがあるので好ましくない。
【0076】
この後、基板2の配線に陰極12を接続するとともに、基板2上あるいは外部に設けられる駆動IC(駆動回路)に回路素子部14の配線を接続することにより、本実施形態の有機EL装置が完成する。
【0077】
(電子機器)
次に、本発明の表示装置を用いた電子機器について説明する。
まず、上記実施形態の有機EL装置と同様の構成の表示装置をインストルメントパネルの表示部に用いた実施形態について説明する。図19は、インストルメントパネルに備え付ける表示部用基板の構成を模式的に示す平面図であって、図20は、同じく表示部用基板の構成を模式的に示す断面図である。
【0078】
当該表示部は、TFT等を備えた基板2及び封止ガラス3の間に有機EL層が挟持された構成の表示本体部31を主体として構成され、該表示本体部31の中央部に表示面32が配設されている。また、基板2に接続されたフレキシブル基板4と、該フレキシブル基板4上に配設されたデータ線駆動IC5とを備えた外部接続部33が、上記表示本体部31に接続されており、該外部接続部33の端部には外部接続端子6が配設されている。
【0079】
なお、基板2には、トランジスタアレイが構成され、データ保持回路が備えられるとともに、スキャンドライバが内蔵されている。また、フレキシブル基板4には、データ線や、制御線、電源線等が形成されており、データ線駆動ICは、各ドット(サブ画素)にデータを供給する機能を具備している。また、外部接続端子6は、図示しない外部制御基板から制御信号を、電源基板から電源を受けるための端子である。
【0080】
一方、図21は搭載する表示部について、その表示領域の構成を示す説明図である。図2に示した有機EL装置では、カラー表示可能な範囲が異なる2つの表示領域から構成されていたが、本表示部の表示領域2aは、赤色の単色表示のみが可能な赤色表示領域22aと、青色の単色表示のみが可能な青色表示領域22bと、フルカラー表示が可能なフルカラー表示領域21とから構成されている。ここで、各表示領域の境界領域にはダミー画素領域23が構成され、いずれの表示も行わない領域、つまり発光層を具備しない画素領域が形成されている。境界領域は、発光層を形成して、制御回路にて、電流が流れないようにしても良い。
【0081】
なお、当該ダミー画素領域23には、その幅方向に3つの画素(つまり9つのドット(サブ画素))が形成されている。また、当該表示部の表示領域2aは、全体で560×560の画素を含み、1画素には3つのドット(サブ画素)が含まれており、その表示領域2aの周辺部にも、ダミー画素領域23が形成されている。
【0082】
以上のような構成の表示部は、図22に示すようにインストルメントパネル部500に装着されて使用に供される。具体的には、フレキシブル基板4をインストルメントパネル部500内部に組み込む形にて装着される。赤色表示領域22aは、速度表示を行うメータ表示部71として使用に供され、自動車使用時には常時点灯表示される一方、青色表示領域22bは、運転上必要な情報を表示する必要情報表示部72として使用に供され、当該情報を出力するタイミングに応じて点灯表示される。さらに、フルカラー表示領域21は、ナビゲーションシステムからのナビゲーション情報や、車載されたカメラからの外部情報等の付随的に必要な情報をフルカラー表示する任意情報表示部74として使用に供される。
【0083】
次に、上記実施形態の有機EL装置と同様の構成の表示装置を家電製品の表示部に用いた実施形態について説明する。図23は、冷蔵庫に備え付ける表示パネルの構成を模式的に示す平面図であって、図24は、その使用態様を示す平面図である。なお、基板構成等は上記インストルメントパネルに用いたものと同様のため、説明を省略する。
【0084】
本実施形態に用いた表示パネルの表示領域2aは、フルカラー表示が可能なフルカラー表示領域21と、橙色の単色表示のみが可能な橙色表示領域22cと、赤色の単色表示のみが可能な赤色表示領域22dとから構成されている。なお、橙色表示領域22cは、赤色のドット(サブ画素)2つと、緑色のドット(サブ画素)1つとからなる画素にて構成されている。また、表示領域2aの周辺部にはダミー画素領域23が構成されている。
【0085】
以上のような構成の表示パネルは、図24に示すように冷蔵庫の表示部550に装着されて使用に供される。具体的には、赤色表示領域22dは、庫内温度その他の運転状況を表示する運転状況表示部77として使用に供される一方、橙色表示領域22cは、サービス情報を表示するサービス情報表示部76として使用に供され、本実施形態では日替わりでレシピが表示される態様となっている。さらに、フルカラー表示領域21は、上記サービス情報に付随する画像情報を表示する画像表示部75として使用に供される。
【0086】
以上のような電子機器によると、表示のバリエーションが増える上、本発明に係る表示装置を具備したものであるため、高品質の表示を高寿命にて提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本実施形態の有機EL装置の回路図。
【図2】同、平面構成図。
【図3】第1表示領域に係る画素の平面構成図。
【図4】第2表示領域に係る画素の平面構成図。
【図5】第1表示領域の断面構成を示す図。
【図6】第2表示領域の断面構成を示す図。
【図7】実施例における輝度の経時変化と、比較例における輝度の経時変化とについて示したグラフ。
【図8】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図9】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図10】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図11】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図12】実施形態に係る製造方法を説明する工程図。
【図13】実施形態に係る製造方法について第1表示領域に係るものを説明する工程図。
【図14】実施形態に係る製造方法について第2表示領域に係るものを説明する工程図。
【図15】実施形態に係る製造方法について第1表示領域に係るものを説明する工程図。
【図16】実施形態に係る製造方法について第2表示領域に係るものを説明する工程図。
【図17】実施形態に係るヘッドの平面構成図。
【図18】実施形態に係るインクジェット装置の平面構成図。
【図19】電子機器に装着する表示部を構成する基板の一例を示す平面図。
【図20】図19に示した表示部を構成する基板の断面構成を示す断面図。
【図21】図19に示した表示部について表示領域の構成を示す平面図。
【図22】電子機器の一例を示す平面図。
【図23】電子機器に装着する表示部を構成する基板の一変形例を示す平面図。
【図24】電子機器の一例を示す平面図。
【符号の説明】
【0088】
2…基板、2a…表示領域、21…第1表示領域、22…第2表示領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素にて構成される表示領域を備える表示装置であって、
前記表示領域が、第1発光波長範囲を示す第1画素群にて構成される第1表示領域と、該第1発光波長範囲とは異なる第2発光波長範囲を示す第2画素群にて構成される第2表示領域とを備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1画素群が複数種の色光を表示可能な画素にて構成される一方、前記第2画素群が1種の色光を表示可能な画素にて構成されてなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1画素群が、所定の色光を発光可能なサブ画素と、これとは異なる色光を発光可能なサブ画素とを少なくとも含む画素にて構成される一方、
前記第2画素群が、所定の色光を発光可能な1種のサブ画素のみを含む画素にて構成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1画素群がフルカラー表示可能な画素にて構成される一方、前記第2画素群が単色表示可能な画素にて構成されてなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1画素群が、赤色を発光可能なサブ画素と、緑色を発光可能なサブ画素と、青色を発光可能なサブ画素とを含む画素にて構成される一方、前記第2画素群が、赤色を発光可能なサブ画素と、緑色を発光可能なサブ画素と、青色を発光可能なサブ画素との中から選択される1又は2のサブ画素を含む画素にて構成されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記サブ画素が、それぞれ同一の大きさにて構成されてなることを特徴とする請求項3又は5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記サブ画素が長方形状にて構成される一方、前記画素が該長方形状のサブ画素を複数含む正方形状にて構成されてなることを特徴とする請求項3、5又は6に記載の表示装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
複数の画素にて構成される表示領域を備える表示装置であって、
前記表示領域が、第1発光波長範囲を示す第1画素群にて構成される第1表示領域と、該第1発光波長範囲とは異なる第2発光波長範囲を示す第2画素群にて構成される第2表示領域とを備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1画素群が複数種の色光を表示可能な画素にて構成される一方、前記第2画素群が1種の色光を表示可能な画素にて構成されてなることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1画素群が、所定の色光を発光可能なサブ画素と、これとは異なる色光を発光可能なサブ画素とを少なくとも含む画素にて構成される一方、
前記第2画素群が、所定の色光を発光可能な1種のサブ画素のみを含む画素にて構成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1画素群がフルカラー表示可能な画素にて構成される一方、前記第2画素群が単色表示可能な画素にて構成されてなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1画素群が、赤色を発光可能なサブ画素と、緑色を発光可能なサブ画素と、青色を発光可能なサブ画素とを含む画素にて構成される一方、前記第2画素群が、赤色を発光可能なサブ画素と、緑色を発光可能なサブ画素と、青色を発光可能なサブ画素との中から選択される1又は2のサブ画素を含む画素にて構成されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記サブ画素が、それぞれ同一の大きさにて構成されてなることを特徴とする請求項3又は5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記サブ画素が長方形状にて構成される一方、前記画素が該長方形状のサブ画素を複数含む正方形状にて構成されてなることを特徴とする請求項3、5又は6に記載の表示装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
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【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
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【図19】
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【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2006−41003(P2006−41003A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215326(P2004−215326)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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