説明

表示装置およびこれに用いるCu合金膜

【課題】Cu系材料の特徴である低電気抵抗を維持しつつ、ガラス基板との密着性に優れた、表示装置用Cu合金膜を提供する。
【解決手段】基板上にて、ガラス基板と直接接触する表示装置用Cu合金膜であって、該Cu合金膜は、Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上を合計で0.1〜10.0原子%含有することを特徴とする。本発明は、前記表示装置用Cu合金膜が薄膜トランジスタに用いられている点に特徴を有する表示装置も含むものである。該表示装置としては、該薄膜トランジスタがボトムゲート型構造を有するものであって、前記表示装置用Cu合金膜が、該薄膜トランジスタのゲート電極および走査線に用いられ、ガラス基板に直接接触されている態様が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置およびこれに用いるCu合金膜に関するものであり、特に、表示装置の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、TFTという場合がある。)において、ガラス基板と直接接触するCu合金配線を構成するCu合金膜、および該Cu合金膜が上記薄膜トランジスタに用いられた、例えば液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(表示装置)、並びに上記Cu合金膜の形成に用いられるスパッタリングターゲットに関する。尚、以下では、表示装置のうち、液晶ディスプレイを例に説明するが、これに限定する意図ではない。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶ディスプレイは、小型の携帯電話から100インチを超す大型テレビに至るまで様々な分野に用いられている。この液晶ディスプレイは、画素の駆動方法によって、単純マトリックス型液晶ディスプレイとアクティブマトリックス型液晶ディスプレイに分類される。このうち、スイッチング素子としてTFTを組み込んだアクティブマトリックス型液晶ディスプレイは、画質が高品質で高速の動画にも対応できるため、液晶ディスプレイの主流となっている。
【0003】
図1は、アクティブマトリックス型液晶ディスプレイに適用される代表的な液晶ディスプレイの構成を示したものである。この液晶ディスプレイの構成および動作原理を、図1を参照しながら説明する。
【0004】
まず、液晶ディスプレイ100は、TFT基板1と、TFT基板1に対向して配置された対向基板2と、TFT基板1と対向基板2との間に配置され、光変調層として機能する液晶層3とを単位画素ユニットとし、これが2次元アレイ状に配列した構造を有している。
【0005】
TFT基板1は、絶縁性のガラス基板1a上に配置されたTFT4、画素電極(透明導電膜)5、走査線や信号線を含む配線部6を有している。
【0006】
また、対向基板2は、ガラス板の全面に形成された共通電極7と、TFT基板1側の画素電極(透明導電膜)5に対向する位置に配置されたカラーフィルタ8と、TFT基板1上のTFT4および配線部6に対向する位置に配置された遮光膜9とを有している。対向基板2は更に、液晶層に含まれる液晶分子を所定の向きに配向させるための配向膜11を有している。
【0007】
TFT基板1および対向基板2の外側(液晶層の反対側)には、それぞれ偏光板10a、10bが配置されている。
【0008】
液晶ディスプレイ100では、各画素において、対向基板2と画素電極(透明導電膜)5との間の電界が、TFT4によって制御され、この電界によって液晶層3における液晶分子の配向が変化し、液晶層3を通過する光が変調(遮光や透光)される。これにより、対向基板2を透過する光の透過量が制御されて、画像として表示される。
【0009】
液晶ディスプレイ100の下部にはバックライト22が設置され、この光が図1の下部から上部へと通過する。
【0010】
また、TFT基板1は、TABテープ12を介して連結されたドライバ回路13および制御回路14によって駆動される。
【0011】
尚、図1中、15はスペーサー、16はシール材、17は保護膜、18は拡散板、19はプリズムシート、20は導光板、21は反射板を示す。また23は保持フレーム、24はプリント基板を示す。
【0012】
図2は、図1中、Aの要部拡大図である。図2では、ガラス基板1a上に走査線(ゲート配線)25が形成されており、走査線25の一部はTFTのオン・オフを制御するゲート電極26として機能する。ゲート電極26を覆うようにしてゲート絶縁膜(SiN)27が形成されている。ゲート絶縁膜27を介して走査線25と交差するように信号線(ソース−ドレイン配線)34が形成され、信号線34の一部は、TFTのソース電極28として機能する。ゲート絶縁膜27上に、アモルファスシリコンチャネル層(活性半導体層)、信号線(ソース−ドレイン配線)34、パッシベーション膜(保護膜、窒化シリコン膜)30が順次形成されている。このタイプは一般にボトムゲート型と呼ばれる。
【0013】
ゲート絶縁膜27上の画素領域には、例えば(In)中に酸化錫(SnO)を10質量%程度含む酸化インジウム錫(Indium Tin Oxide;ITO)膜や、(In)中に酸化亜鉛を含む酸化インジウム亜鉛(Indium Zinc Oxide;IZO)膜によって形成された画素電極(透明導電膜)5が配置されており、図2において、ドレイン電極29は、画素電極(透明導電膜)5に直接コンタクトして電気的に接続される構造となっている。
【0014】
このTFT基板に、走査線を経由してゲート電極26にゲート電圧を印加すると、TFT4がオン状態となり、あらかじめ信号線に印加されていた駆動電圧がソース電極28からドレイン電極29を経由して画素電極(透明導電膜)5に印加される。そして、この様に画素電極(透明導電膜)5に所定レベルの駆動電圧が印加されると、対向基板2との間に十分な電位差が生じ、液晶層3に含まれる液晶分子が配向して光変調が生じる。
【0015】
またTFTの上部には、輝度向上のために反射電極(図示せず)が設置される場合がある。ドレイン電極29の端部は、画素電極(透明導電膜)5と電気的に接触し、更にこの画素電極(透明導電膜)5が上記反射電極と接触している場合がある。
【0016】
図2に示したTFTのソース電極28とドレイン電極29の間には電圧が印加されているが、ゲート電極26の電圧をON/OFF制御することにより、チャンネル層を経由してソース電極28からドレイン電極29への電流を制御し、画素電極5を経由して液晶層3の電界を制御し、この結果、各画素の光透過量が変調され、動画像を表示することもできる。
【0017】
上記ソース−ドレイン配線34や走査線25、ゲート電極26は、加工が容易であるなどの理由により、Al−NdなどのAl合金の薄膜から形成されている。
【0018】
しかしながら、近年は、液晶ディスプレイの大型化や動作周波数が60kHzから120kHzへと変更する等の事情により、配線の電気抵抗の更なる低減が必須課題となっており、より小さい電気抵抗を示す配線材料へのニーズが高まっている。そこで、テレビ用途の大型パネルを中心に、純AlやAl合金などのAl系材料に比べて電気抵抗率が小さく、また、ヒロック耐性に優れたCu系材料が注目されている(金属[バルク材]の室温における電気抵抗率は、純Alが2.7×10−6Ω・cmであるのに対し、純Cuは1.8×10−6Ω・cmである)。
【0019】
本願出願人も、透明導電膜とCu合金膜を直接接続させるべく、該Cu合金膜として、(i)Znおよび/またはMg、更に(ii)Niおよび/またはMn、更に(iii)Feおよび/またはCoを合金元素として含むCu合金膜を提案している(特許文献1)。
【0020】
しかし、Cu系材料を配線に適用した場合、ガラス基板や絶縁膜との密着性がAl系材料よりも劣るという課題がある。特に、ガラス基板上に形成する場合、以下の様な問題がある。即ち、液晶ディスプレイのガラス基板には、通常(SiO,Al,BaO,B)を主成分とするガラスが使用されているが、Cu系材料からなる電極・配線(Cu系電極・配線、またはCu系配線という)は、このガラス基板との密着性が悪く、Cu系電極・配線がガラス基板から剥離しやすい、といった問題がある。上記特許文献1は、上記Cu合金膜とガラス基板や絶縁膜との密着性を十分検討したものではなく、Cu合金膜のガラス基板等との密着性を高めるには、更なる検討が必要であると考える。
【0021】
従来のCu系電極・配線を採用した液晶ディスプレイでは、ガラス基板とCu系電極・配線の間に下地膜(純Mo層、Mo−Ti合金層などのMo含有下地層)を介した構造をとっている。例えば、Mo含有下地層に純Cu薄膜を形成した2層構造の配線が使用されている例がある。
【0022】
また、例えば特許文献2〜4には、Cu系配線とガラス基板との間に、モリブデン(Mo)やクロム(Cr)などの高融点金属層を介在させて、Cu系配線とガラス基板の密着性向上を図り、パターン形成時のCu系配線の浮き上がりや破断を抑制する技術が示されている。
【0023】
しかしながら、このような2層構造配線は、プロセスが複雑になり、プロセスコストがかかる。また、電気抵抗の高いMo含有下地層が配線下地にあるため、2層全体としての配線抵抗(実効的配線抵抗)が高くなるといった課題がある。具体的には、上記CrやMoの電気抵抗率は、Cuよりも高いため(Crの電気抵抗率:12.9×10-6Ω・cm、Moの電気抵抗率:10.0×10-6Ω・cm)、Cu系配線と高融点金属層の2層配線は、配線電気抵抗増大による信号遅延や電力損失が問題となる。更に、Cuと高融点金属(Mo等)という異種金属を積層させるため、薬液を用いたウェットエッチングの際に、Cuと高融点金属との界面で腐食が生ずるおそれがある。また、材質の異なる薄膜を積層させていることから、配線形状にパターニングする際に、ウェットエッチングによるテーパー制御が難しいといった課題がある。具体的に、例えば2層構造における下層のエッチングレートが上層よりも速い場合には、下層がくびれるアンダーカットが生じて、配線断面を望ましい形状(例えばテーパ角が45〜60°程度である形状)に形成できないといった問題が生じ得る。
【0024】
特許文献5は、Cu系配線とガラス基板との間に、密着層としてニッケル又はニッケル合金と高分子系樹脂膜とを介在させる技術を開示している。しかしこの技術では、表示ディスプレイ(例えば液晶パネル)の製造時における高温アニール工程で樹脂膜が劣化し、密着性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2007−17926号公報
【特許文献2】特開平7−66423号公報
【特許文献3】特開平8−8498号公報
【特許文献4】特開平8−138461号公報
【特許文献5】特開平10−186389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、Cu系材料の特徴である低電気抵抗を維持しつつ、ガラス基板(以下、単に「基板」ということがある)との密着性(以下、単に「密着性」ということがある)に優れたCu合金膜や、更には、エッチング特性にも優れたCu合金膜、およびこのCu合金膜をTFT(特には、TFTのゲート電極および走査線)に上記Mo含有下地層等を形成させずに用いた、例えば液晶ディスプレイに代表されるフラットパネルディスプレイ(表示装置)を提供することにある。また本発明は、上記の様な優れた性能を有するCu合金膜を形成するためのスパッタリングターゲットを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明に係る表示装置用Cu合金膜とは、表示装置において、ガラス基板と直接接触する表示装置用Cu合金配線薄膜(Cu合金配線を構成するCu合金膜)であって、該Cu合金膜は、Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上(以下、これらの元素を総称してXという場合がある)を合計で0.1〜10.0原子%(好ましくは0.1〜5.0原子%)含有するところに特徴を有する。
【0028】
本発明に係る別の表示装置用Cu合金膜とは、表示装置において、ガラス基板と直接接触するCu合金配線を構成するCu合金膜であって、該Cu合金膜は、Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上(X)を合計で0.2〜10.0原子%含有するところに特徴を有する。好ましい実施形態において、前記Cu合金膜は、酸素を含む下地層と、酸素を実質的に含まない上層と、を含む積層構造を有し、前記下地層は前記ガラス基板と接触している。
【0029】
本発明に係る更に別の表示装置用Cu合金膜とは、表示装置において、ガラス基板と直接接触するCu合金配線を構成するCu合金膜であって、該Cu合金膜は、Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上(X)を合計で0.2〜10.0原子%、および酸素を含むCu合金からなる下地層と、純Cu、またはCuを主成分とするCu合金であって前記下地層よりも電気抵抗率の低いCu合金からなり、酸素を実質的に含まない上層と、を含む積層構造を有し、前記下地層は前記ガラス基板と接触しているところに特徴を有する。
【0030】
好ましい実施形態において、前記下地層は、酸素濃度が1体積%以上20体積%未満であるスパッタリングガスを用いて、スパッタリング法により形成されたものである。
【0031】
好ましい実施形態において、前記下地層の膜厚は、10nm以上200nm以下である。
【0032】
本発明は、前記Cu合金膜が、薄膜トランジスタに用いられていることを特徴とする表示装置(特には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイに代表されるフラットパネルディスプレイ)も含むものである。
【0033】
前記表示装置として、前記薄膜トランジスタがボトムゲート型構造を有するものであって、前記Cu合金膜が、該薄膜トランジスタのゲート電極および走査線に用いられ、かつガラス基板に直接接触された形態のものが、該Cu合金膜の効果が存分に発揮されるので好ましい。
【0034】
また本発明には、Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上を合計で0.1〜10.0原子%(好ましくは0.1〜5.0原子%)含有するCu合金からなるところに特徴を有するCu合金スパッタリングターゲットも含まれる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、液晶ディスプレイの大型化や動作周波数の高域化に対応することのできる低電気抵抗のCu合金膜を有する表示装置を実現できる。また、本発明のCu合金膜はガラス基板との密着性に優れていると共に、エッチング特性にも優れているので、表示装置(例えば液晶ディスプレイ)の特にTFTのゲート電極および走査線に適用したときに、上記Mo含有下地層等を設けることなくガラス基板上に形成でき、該Mo含有下地層等の省略を可能にした高性能の表示装置を、製造コストを低減して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、アモルファスシリコンTFT基板が適用される代表的な液晶ディスプレイの構成を示す概略断面拡大説明図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係るTFT基板の構成を示す概略断面説明図であり、図1中のAの要部拡大図である。
【図3】図3は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図4】図4は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図5】図5は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図6】図6は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図7】図7は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図8】図8は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図9】図9は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図10】図10は、図2に示したTFT基板の製造工程の一例を、順番を追って示す説明図である。
【図11】図11は、0.1at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu合金膜について、熱処理温度と膜残存率の関係を示した図である。
【図12】図12は、2.0at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu合金膜について、熱処理温度と膜残存率の関係を示した図である。
【図13】図13は、5.0at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu合金膜について、熱処理温度と膜残存率の関係を示した図である。
【図14】図14は、0.1at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu合金膜について、熱処理温度と電気抵抗率の関係を示した図である。
【図15】図15は、2.0at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu合金膜について、熱処理温度と電気抵抗率の関係を示した図である。
【図16】図16は、5.0at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu合金膜について、熱処理温度と電気抵抗率の関係を示した図である。
【図17】図17は、成膜直後の試料(Cu積層膜)の合金元素量と、密着率との関係を示した図である。
【図18】図18は、熱処理後の試料(Cu積層膜)の合金元素量と、密着率との関係を示した図である。
【図19】図19は、Cu積層膜の下地層形成に用いるスパッタリングガス(Ar+O)の酸素濃度と密着率との関係を、合金元素別に示した図である。
【図20】図20は、Cu積層膜における下地層の膜厚と密着率との関係を、合金元素別に示した図である。
【図21】図21は、2.0at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu積層膜について、熱処理温度と電気抵抗率の関係を示した図である。
【図22】図22は、5.0at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu積層膜について、熱処理温度と電気抵抗率の関係を示した図である。
【図23】図23は、10.0at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu積層膜について、熱処理温度と電気抵抗率の関係を示した図である。
【図24】図24は、実施例で測定するアンダーカット量を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明者らは、Cu系材料の特徴である低電気抵抗を維持しつつ、ガラス基板との密着性に優れた(更には、エッチング特性にも優れた)Cu合金膜、およびこれをTFTに用いた表示装置を実現すべく鋭意研究を行った。
【0038】
まず、Cu系電極・配線とガラス基板との密着性を高めるには、該Cu系電極・配線を構成する元素とガラス基板を構成する元素(以下、ガラス基板構成元素という)との間で、化学的な結合を形成(具体的には、化学吸着や界面反応層等を形成)させることが望ましい、と考えた。その理由は、「化学吸着や界面反応層の形成などによる化学的な結合」の方が、「物理吸着などによる物理的な結合」よりも結合エネルギー(結合力)が大きいため、界面でより強い密着力を発揮できると考えられるからである。
【0039】
しかし、Cu系電極・配線を構成するCuとガラス基板構成元素との間では化学的な結合が形成し難い。よって本発明者らは、ガラス基板と化学的な結合を形成し易い元素を、合金元素として含むCu合金をCu系電極・配線に用い、該合金元素とガラス基板構成元素の間で化学的な結合を形成させればよい、との着想のもとでその具体的方法について検討した。
【0040】
その結果、ガラス基板と直接接触するCu合金配線を、合金元素として、Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上を含むCu合金膜からなるものとすればよいことを見出した。ガラス基板は多種の金属酸化物の混合物であり、構成元素として酸素を多く含んでいる。この酸素(例えば、ガラス基板の主成分であるSiOの酸素)と、上記Ti、Al、Mgとの間で化学的な結合が形成されることにより、密着性が向上するものと考えられる。
【0041】
具体的には、AlおよびMgは、温度:20〜300℃、圧力:1atmの系において、SiOと反応し、Si−Al−O、Si−Mg−Oの複合酸化物をそれぞれ形成する。またTiは、温度:20〜300℃、圧力:1atmの系において、SiOと反応し、TiSiまたはTiSiの窒化物を形成する。
【0042】
また、これらの元素は、Cu中の拡散係数がCuの自己拡散係数よりも大きく、少量を含有させただけでも、成膜後の加熱によりガラス基板との界面に拡散濃化し、界面でSiOと反応を起こして化学的な結合を形成し、ガラス基板との密着性を飛躍的に向上させると考えられる。
【0043】
上記効果を十分に発揮させるには、Cu合金膜中に含まれるTi、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上(X)を合計で0.1原子%(at%)以上含有させる必要がある(以下、この様な本発明のCu合金膜を、特に「Cu−X含有合金膜」という場合がある)。好ましくは合計で0.2原子%以上、より好ましくは合計で0.5原子%以上、更に好ましくは合計で1.0原子%以上である。
【0044】
ガラス基板との密着性向上の観点からは、Xの含有量が多いほど望ましいが、多過ぎると電気抵抗が増大するため、Xの含有量は合計で10.0原子%以下(好ましくは5.0原子%以下)に抑える必要がある。電気抵抗をより小さくする観点からは、Xを合計で2.0原子%以下とすることがより好ましい。
【0045】
前記Cu−X含有合金膜は、成膜後に熱処理を施すことによって、格段に優れた密着力が得られる。これは、成膜後の熱処理(熱エネルギー)により、合金元素(X)のガラス基板界面への濃化、および界面での化学結合形成が促進されるためである。
【0046】
上記熱処理の条件は、温度が高いほど、また保持時間が長いほど、密着性向上に有効に作用する。しかし、熱処理温度はガラス基板の耐熱温度以下にする必要があり、また、保持時間が過度に長いと、表示装置(液晶ディスプレイ等)の生産性の低下を招く。よって、上記熱処理の条件は、温度:350〜450℃、保持時間:30〜120分間の範囲内とすることが好ましい。この熱処理は、Cu−X含有合金膜の電気抵抗率低減にも有効に作用するため、低電気抵抗を実現させる観点からも好ましい。
【0047】
前記熱処理は、密着性の更なる向上を目的に行う熱処理であってもよいし、前記Cu−X含有合金膜形成後の熱履歴が、上記温度・時間を満たすものであってもよい。
【0048】
上記Cu−X含有合金膜は、上記規定量のXを含み、残部Cuおよび不可避不純物である。
【0049】
また、本発明の作用を損なわない範囲で、他の特性付与を目的として、その他の元素を添加することもできる。即ち、Cu−X含有合金膜を、例えばボトムゲート型構造を有するTFTのゲート電極および走査線に適用する場合、その特性として、上記ガラス基板との密着性に加えて「耐酸化性(ITO膜とのコンタクト安定性)」や「耐食性」に優れていることも求められる。また、電気抵抗率をより低減させることが求められる場合がある。更に、TFTのソース電極および/またはドレイン電極並びに信号線に適用する場合には、上記「耐酸化性(ITO膜とのコンタクト安定性)」等の特性に加えて、「絶縁膜(SiN膜)との密着性」に優れていることも求められる。
【0050】
これらの場合、上記合金元素(X)に加えて、上記「耐酸化性(ITO膜とのコンタクト安定性)」等の特性向上に有効な合金元素を添加して、多元系のCu合金膜とすることもできる。
【0051】
上記Cu−X含有合金膜の形成には、スパッタリング法を採用することが望ましい。スパッタリング法とは、真空中にAr等の不活性ガスを導入し、基板とスパッタリングターゲット(以後、ターゲットという場合がある)との間でプラズマ放電を形成し、該プラズマ放電によりイオン化したArを上記ターゲットに衝突させて、該ターゲットの原子をたたき出し基板上に堆積させて薄膜を作製する方法である。イオンプレーティング法や電子ビーム蒸着法、真空蒸着法で形成された薄膜よりも、成分や膜厚の膜面内均一性に優れた薄膜を容易に形成でき、かつas−deposited状態(成膜直後を意味する。以下「as−depo状態」という場合がある)で合金元素が均一に固溶した薄膜を形成できるため、高温耐酸化性を効果的に発現できる。スパッタリング法としては、例えばDCスパッタリング法、RFスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、反応性スパッタリング法等のいずれのスパッタリング法を採用してもよく、その形成条件は、適宜設定すればよい。
【0052】
また、上記スパッタリング法で、上記Cu−X含有合金膜を形成するには、上記ターゲットとして、Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上(X)を合計で0.1〜10.0原子%含有するCu合金からなるものであって、所望のCu−X含有合金膜と同一の組成のCu−X含有スパッタリングターゲットを用いれば、組成ズレすることなく、所望の成分・組成のCu−X含有合金膜を形成することができるのでよい。尚、スパッタリング法により成膜したCu合金膜の組成と、ターゲットの組成はわずかに異なる場合がある。しかし、その組成の「ずれ」は概ね数%以下であり、ターゲットの合金組成を最大でも所望の組成の±10%以内で制御すれば、所定の組成を有するCu合金膜を形成することができる。
【0053】
ターゲットの形状は、スパッタリング装置の形状や構造に応じて任意の形状(角型プレート状、円形プレート状、ドーナツプレート状など)に加工したものが含まれる。
【0054】
上記ターゲットの製造方法としては、溶解鋳造法や粉末焼結法、スプレイフォーミング法で、Cu基合金からなるインゴットを製造して得る方法や、Cu基合金からなるプリフォーム(最終的な緻密体を得る前の中間体)を製造した後、該プリフォームを緻密化手段により緻密化して得られる方法が挙げられる。
【0055】
また本発明者らは、ガラス基板とのより高い密着性、低い電気抵抗率、および優れたエッチング特性を示す表示装置用Cu合金膜を提供するため、検討を重ねた。その結果、Cu合金膜として、
(I)Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上(X)を合計で0.2〜10.0原子%含有するものであって、酸素を含む下地層と、酸素を実質的に含まない上層と、を含む積層構造を有し、前記下地層は前記ガラス基板と接触しているCu積層膜(以下、「Cu積層膜(I)」ということがある);または、
(II)Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上(X)を合計で0.2〜10.0原子%、および酸素を含むCu合金からなる下地層と、純Cu、またはCuを主成分とするCu合金であって前記下地層よりも電気抵抗率の低いCu合金からなり、酸素を実質的に含まない上層と、を含む積層構造を有し、前記下地層は前記ガラス基板と接触しているCu積層膜(以下、「Cu積層膜(II)」ということがある);
とすれば、所期の目的が達成することを見出した(上記Cu積層膜(I)およびCu積層膜(II)を総称して「Cu積層膜」ということがある)。尚、上記「Cuを主成分とする」とは、材料を構成する元素のうち、Cuの質量または原子数が最も多く含まれていることを意味する。
【0056】
本明細書において、「下地層」は、上記の通り、ガラス基板と直接接触する層を意味し、「上層」は下地層の直上にある層を意味する。
【0057】
まず、本発明のCu積層膜の合金成分組成について、以下に説明する。
【0058】
上記Cu積層膜(I)、または上記Cu積層膜(II)の下地層は、Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上(X)を合計で0.2〜10.0原子%含むものである。上述した通り、ガラス基板は多種の金属酸化物の混合物であり、構成元素として酸素を多く含んでいる。この酸素(例えば、ガラス基板の主成分であるSiOの酸素)と、上記Ti、AlおよびMgとの間で化学的な結合が形成されることにより、密着性が向上するものと考えられる。
【0059】
本発明のCu積層膜において、上記効果を十分に発揮させて密着性をより高めるには、Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上(X)を、合計で0.2原子%(at%)以上含有させる必要がある。Xの含有量がこれより少ないと、上記Xの絶対量が不足し、ガラス基板界面への上記Xの濃化の程度も少なく、界面での化学的結合形成の程度も小さくなるため、より高い密着性を発揮することが難しくなる。Xの含有量は、好ましくは合計で0.5原子%以上、より好ましくは合計で1.0原子%以上である。一方、Xの含有量が多い場合、ガラス基板界面の密着性は向上するが、Cu積層膜自体の電気抵抗が増大する。また、純Cu膜に比べてエッチングレートが増加する場合がある。よって、上層として純Cu膜を形成するCu積層膜(II)の場合、エッチャントに浸漬した際の腐食電位が純Cu膜に比べて大きく変化し、エッチング時に、下地層が上層(純Cu膜)に比べて過度にエッチングされる現象(アンダーカット)が生じやすくなる。これらの観点から、Xの含有量は合計で10.0原子%以下に抑える。電気抵抗をより小さくする観点から、Xの含有量は合計で5.0原子%以下とすることが好ましい。
【0060】
上記Cu積層膜(I)、または上記Cu積層膜(II)の下地層としては、上記規定量のX(合金元素)を含み、残部Cuおよび不可避不純物であるものが挙げられる。また、本発明の作用を損なわない範囲で、他の特性付与を目的として、その他の元素を添加することもできる。即ち、上記合金元素(X)に加えて、「耐酸化性(ITO膜とのコンタクト安定性)」や「耐食性」等の特性向上に有効な合金元素を添加して、多元系のCu合金膜とすることもできる。
【0061】
また、Cu積層膜(I)の下地層やCu積層膜(II)の下地層は、酸素を含むものとすることで、上記化学的な結合がより強固に形成されるのでよい。上記元素(X)は、上述した通りガラス基板中の酸素との化学的な結合形成に有効な元素であるが、この化学的結合の形成には一定のエネルギーが必要である。通常、前記Xを含むCu合金膜をスパッタリングによりガラス基板上に形成したのみでは、上記エネルギーが十分とは言い難く、より高い密着性を発現することが難しい。そこで本発明では、Cu積層膜において前記基板と接触する下地層を酸素を含む層とする。
【0062】
上記下地層として酸素を含む層を形成するには、酸素濃度が一定範囲内にあるスパッタリングガスを用いて、スパッタリング法により形成することが挙げられる。上記方法は、反応性スパッタリングの一種であり、酸素プラズマアシストにより、合金元素(X)とガラス基板中の酸素との化学的結合が促進され、高密着性が発現されるものと考えられる。
【0063】
上記スパッタリングガスの酸素濃度は1体積%以上20体積%未満とすることが好ましい。スパッタリングガスの酸素濃度が1体積%未満では、合金元素(X)とガラス基板中の酸素との化学的結合が十分に促進されず、高密着性が発現されにくい。上記酸素濃度は、好ましくは5.0体積%以上である。
【0064】
スパッタリングガスの酸素濃度増加に伴い、上記化学的結合がより促進され、密着性は向上するが、上記酸素濃度を20体積%以上と高めても基板との密着性向上効果は飽和する。一方で、スパッタリングガスの高酸素化はスパッタリング収率を低下させ、Cu合金膜形成の生産性を低下させる。したがって、スパッタリングガスに含まれる酸素濃度は20体積%未満(より好ましくは10体積%以下)とするのがよい。尚、酸素を添加した不活性ガスを用いてスパッタリングを行った場合、形成される酸素含有Cu合金配線の電気抵抗率はあまり上昇しない。よって、スパッタリングガスの酸素濃度は、配線の電気抵抗率低減の観点からは制約を受けない。
【0065】
上記スパッタリングガスとして、例えば上記濃度の酸素と、Arとの混合ガスを用いることができる。以下ではArを代表例に挙げているが、Xe等の他の希ガスで実施することも可能である。
【0066】
上記下地層に含まれる好ましい酸素量として、例えば0.5〜30原子%とすることが挙げられる。上記化学的結合を促進させるには、上記下地層に含まれる酸素量を0.5原子%以上とするのがよく、より好ましくは1原子%以上であり、更に好ましくは2原子%以上、特に好ましくは4原子%以上である。一方、下地層中の酸素量が過剰になり、密着性が向上し過ぎると、ウェットエッチングを行なった後に残渣が残り、ウェットエッチング性が低下する。また酸素量が過剰になると、Cu合金膜の電気抵抗が上昇する。これらの観点を勘案し、下地層に含まれる酸素量は、30原子%以下であることが好ましい。より好ましくは20原子%以下、更に好ましくは15原子%以下、特に好ましくは10原子%以下である。
【0067】
尚、Cu積層膜(I)の上層やCu積層膜(II)の上層は、電気抵抗低減の観点から、酸素を実質的に含まないものとするのがよい。上層の酸素量は、最大でも、下地層の酸素量の下限(例えば0.5原子%)を超えないものとするのがよい。上層のより好ましい酸素含有量は0.1原子%以下、更に好ましくは0.05原子%以下であり、特に好ましくは0.02原子%以下、最も好ましくは0原子%である。
【0068】
Cu積層膜(II)において、上層は、
・純Cu、または
・Cuを主成分とするCu合金であって前記下地層よりも電気抵抗率の低いCu合金
で構成されている。このような上層を設けることにより、Cu積層膜(I)よりも、配線の電気抵抗率をより低減することができる。
【0069】
上記「Cuを主成分とするCu合金であって前記下地層よりも電気抵抗率の低いCu合金」とは、密着性向上元素を含むCu合金で構成されている下地層に比べて電気抵抗率が低くなるように、合金元素の種類および/または含有量が適切に制御されたものであればよい。電気抵抗率が低い元素(おおむね、純Cuなみに低い元素)は、文献に記載の数値などを参照し、公知の元素から容易に選択することができる。ただし、電気抵抗率が高い元素であっても、含有量を少なくすれば(おおむね、0.05〜1原子%程度)電気抵抗率を低減できるため、上層に適用可能な上記合金元素は、電気抵抗率が低い元素に必ずしも限定されない。具体的には、例えば、Cu−0.5原子%Ni、Cu−0.5原子%Zn、Cu−0.3原子%Mnなどが好ましく用いられる。
【0070】
前記Cu積層膜(I)やCu積層膜(II)における下地層の膜厚は、10nm以上200nm以下とすることが望ましい。酸素と化学的な結合を形成する合金元素の絶対量を確保するには、下地層の膜厚を10nmとするのがよい。下地層の膜厚がこれよりも薄いと、合金元素の絶対量を補うべく下地層の合金元素(X)量を例えば合計で10原子%超とする必要があるが、この様に合金元素量が過剰であると、上述した通り電気抵抗率の増大やエッチング特性の劣化を招きやすいため好ましくない。下地層の膜厚は、より好ましくは20nm以上である。
【0071】
一方、下地層の膜厚が厚すぎると、配線断面を望ましいテーパー形状に制御することが難しくなる。特に、酸素含有Cu合金膜は、酸素を実質的に含まないCu合金膜と比べてエッチングレートが大きいため、エッチング時にアンダーカットが生じやすく、配線を望ましいテーパー形状にパターニングできなくなる。また下地層の膜厚が厚いと、Cu積層膜における電気抵抗率が高い配線部分の比率が相対的に大きくなり、実効的な配線抵抗の増加を招く。よって、下地層の膜厚は200nm以下にすることが好ましい。より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0072】
上記Cu積層膜も、前記Cu−X含有合金膜と同様に、成膜後に熱処理を施すことが好ましい。この様に成膜後に熱処理を施すことによって、格段に優れた密着力が得られる。また、電気抵抗率低減にも有効に作用するため、低電気抵抗を実現させる観点からも好ましい。しかし、熱処理温度はガラス基板の耐熱温度以下にする必要があり、また、保持時間が過度に長いと、表示装置(液晶ディスプレイ等)の生産性の低下を招く。これらの観点から、上記熱処理の条件は、温度:350〜450℃、保持時間:30〜120分間の範囲内とすることが好ましい。前記熱処理は、密着性の更なる向上を目的に行う熱処理であってもよいし、前記Cu積層膜形成後の熱履歴が、上記温度・時間を満たすものであってもよい。
【0073】
前記Cu積層膜の形成は、スパッタリング法を採用することが望ましい。スパッタリング法やスパッタリングターゲットの詳細については、前記Cu−X含有合金膜の形成で述べた通りである。Cu積層膜の形成は、例えば下記の様にしてスパッタリング法で形成することができる。
【0074】
即ち、Cu積層膜の形態として、Cu積層膜(I)、即ち、下地層および上層を同一合金成分組成のCu合金膜とし、下地層と上層で酸素量のみ異なる積層構造を形成する場合、スパッタリングターゲットとして、規定の成分組成を満たすCu合金ターゲットを用い、下地層の形成に用いるスパッタリングガスはArとOの混合ガスとし、上層の形成に用いるスパッタリングガスはArのみとすることが挙げられる。
【0075】
また、Cu積層膜(II)として、下地層を所定成分・組成のCu合金膜とし、上層を例えば純Cu膜とする場合には、スパッタリングターゲットとして、規定の成分組成を満たすCu合金ターゲット(下地層用)、および純Cuターゲット(上層用)を用い、下地層の形成には上記Cu合金ターゲットを用い、ArとOの混合ガスをスパッタリングガスに用いて成膜し、上層の形成には、純Cuターゲットを用い、Arのみをスパッタリングガスに用いて成膜することが挙げられる。
【0076】
本発明のCu合金膜(Cu−X含有合金膜、Cu積層膜)は、TFTの
・ソース電極および/またはドレイン電極並びに信号線、および/または、
・ゲート電極および走査線
に用いられることを好ましい形態とし、特に、前記TFTがボトムゲート型構造を有するものであって、Cu−X含有合金膜またはCu積層膜が、該TFTのゲート電極および走査線に用いられ、ガラス基板に直接接触されている場合にその特性が十分に発揮される。
【0077】
尚、Cu−X含有合金膜、Cu積層膜を、ソース電極および/またはドレイン電極並びに信号線、および/または、ゲート電極および走査線の複数箇所に用いる場合、互いのCu−X含有合金膜、Cu積層膜の組成は一致していてもよいし、また規定範囲内で組成が相違していてもよい。
【0078】
以下、図面を参照しながら、前記図2に示す本実施形態に係るTFT基板の製造方法を説明する。図3〜10には図2と同じ参照符号を付している。
【0079】
まず、図3に示すように、ガラス基板(透明基板)1aに、スパッタリング法を用いて膜厚200nm程度のCu−X含有合金膜またはCu積層膜を成膜する。この膜をパターニングすることにより、ゲート電極26および走査線25を形成する。このとき、後記する図4において、ゲート絶縁膜27のカバレッジが良くなる様に、上記合金膜の側面を傾斜角約30°〜60°のテーパー状にエッチングしておくのがよい。
【0080】
次いで、図4に示すように、例えばプラズマCVD法などの方法を用いて、約300nm程度のゲート絶縁膜(SiN膜)27を形成する。プラズマCVD法の成膜温度は、約350℃とすればよい。続いて、ゲート絶縁膜27の上に、膜厚50nm程度の水素化アモルファスシリコン膜(a−Si:H)および膜厚300nm程度の窒化シリコン膜(SiNx)を成膜する。
【0081】
続いて、ゲート電極26をマスクとする裏面露光により、図5に示すように窒化シリコン膜(SiNx)をパターニングし、チャネル保護膜を形成する。更にその上に、図6に示すように、リンをドーピングした膜厚50nm程度のn型水素化アモルファスシリコン膜(na−Si:H)を成膜した後、水素化アモルファスシリコン膜(a−Si:H)およびn型水素化アモルファスシリコン膜(na−Si:H)をパターニングする。
【0082】
そして図7に示す様に、スパッタリング法を用いて、膜厚300nm程度のCu−X含有合金膜またはCu積層膜を形成してからパターニングすることにより、信号線と一体のソース電極28と、画素電極(透明導電膜)5に直接接続されるドレイン電極29を形成する。
【0083】
次いで図8に示す如く、例えばプラズマCVD装置などを用いて、窒化シリコン膜30を例えば膜厚300nm程度で成膜することにより保護膜(パッシベーション膜)を形成する。このときの成膜は例えば250℃程度で行なわれる。そしてこの窒化シリコン膜30上にフォトレジスト層31を形成した後、該窒化シリコン膜30をパターニングし、例えばドライエッチング等によって窒化シリコン膜30にコンタクトホール32を形成する。また図示していないが、同時にパネル端部のゲート電極上のTABとの接続に当たる部分にコンタクトホールを形成する。
【0084】
更に図9に示す如く、例えば酸素プラズマによるアッシング工程を経た後、例えばアミン系等の剥離液を用いてフォトレジスト層31の剥離処理を行い、そして最後に、図10に示すように、例えば膜厚40nm程度のITO膜を成膜し、ウェットエッチングによるパターニングを行うことによって画素電極(透明導電膜)5を形成する。
【0085】
上記では、画素電極(透明導電膜)5として、ITO膜を用いたが、IZO膜(InOx−ZnOx系導電性酸化膜)を用いてもよい。また、活性半導体層として、アモルファスシリコンの代わりにポリシリコンを用いてもよい。
【0086】
このようにして得られるTFT基板を用いて、通常行なわれている方法で、前述した図1に示す様な液晶ディスプレイ(表示装置)を作製すればよい。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0088】
[実施例1]
Cu合金膜とガラス基板との密着性を評価するため、以下の様なテープによる剥離試験を行った。
【0089】
(試料の作製)
まず、ガラス基板(コーニング社製 Eagle2000、直径100mm×厚さ0.7mm)上に、DCマグネトロンスパッタリング法(成膜条件は下記の通り)により、室温にて、純Cu膜、純Mo膜、または表1に示す成分組成のCu合金膜を膜厚300nm形成した。そして、成膜後に真空雰囲気中にて350℃で30分間保持する熱処理を行い、密着性評価用試料とした。
【0090】
尚、純Cu膜、純Mo膜の形成には、それぞれ純Cu、純Moをスパッタリングターゲットに用いた。また、種々の成分のCu合金膜の形成には、純Cuスパッタリングターゲット上にCu以外の元素を含むチップを設置したターゲット、または、真空溶解法で作製した種々の組成のCu−X2元系合金ターゲットをスパッタリングターゲットとして用いた。
【0091】
(成膜条件)
・背圧:1.0×10−6Torr以下
・Arガス圧:2.0×10−3Torr
・Arガス流量:30sccm
・スパッタパワー:3.2W/cm
・極間距離:50mm
・基板温度:室温
【0092】
尚、形成されたCu合金膜の組成は、ICP発光分光分析装置(島津製作所製のICP発光分光分析装置「ICP−8000型」)を用い、定量分析して確認した。
【0093】
(ガラス基板との密着性の評価)
上記試料の成膜表面(純Cu膜、純Mo膜、または上記Cu合金膜の表面)に、カッター・ナイフを用いて1mm間隔で碁盤目状の切り込みを入れた。次いで、3M社製黒色ポリエステルテープ(製品番号8422B)を上記成膜表面上にしっかりと貼り付け、上記テープの引き剥がし角度が60°になるように保持しつつ、上記テープを一挙に引き剥がして、上記テープにより剥離しなかった碁盤目の区画数をカウントし、全区画との比率(膜残存率)を求めた。その結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
表1より次の様に考察できる。純Cu膜の膜残存率は約5%であり、ガラス基板との密着性を示さないのに対し、純Mo膜の膜残存率は100%であり、ガラス基板に対して良好な密着性を示す。但し、純Mo膜は室温での電気抵抗が、純Cuよりもかなり高いといったデメリットを有する。
【0096】
また、Cu合金膜のうち、X以外の合金元素を含むCu合金膜は、膜残存率がほぼゼロか70%にも満たないのに対し、規定量のXを含むCu−X含有合金膜の膜残存率は90%以上であり、ガラス基板に対して良好な密着性を示すことがわかる。
【0097】
[実施例2]
Cu−X含有合金膜を形成し、成膜後の熱処理が、ガラス基板との密着性(上記膜残存率)に及ぼす影響を調べた。
【0098】
(試料の作製)
ガラス基板(コーニング社製 Eagle2000、直径100mm×厚さ0.7mm)上に、上記実施例1と同様に、DCマグネトロンスパッタリング法で、種々のCu−X含有合金膜(X=Al、MgまたはTi,X含有量は0.1at%、2.0at%または5.0at%)を膜厚300nm形成した。そして、
(A)上記の様にして作製した試料(as−deposited状態の試料)、
(B)真空雰囲気中にて350℃で30分間保持の熱処理を施した試料、
(C)真空雰囲気中にて400℃で30分間保持の熱処理を施した試料、
(D)真空雰囲気中にて450℃で30分間保持の熱処理を施した試料
をそれぞれ用意した。
【0099】
(ガラス基板との密着性の評価)
実施例1と同様の方法でガラス基板との密着性(上記膜残存率)の評価を行った。その結果を図11〜13にまとめた。図11は、0.1at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu合金膜について、熱処理温度と上記膜残存率の関係を示したものであり、図12は、2.0at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu合金膜について、熱処理温度と上記膜残存率の関係を示したものである。また図13は、5.0at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu合金膜について、熱処理温度と上記膜残存率の関係を示したものである。
【0100】
これら図11〜13から、Cu−X含有合金膜のXの種類や含有量に関係なく、350℃以上の温度で熱処理を施すことによって、膜残存率90%以上と、as−deposited状態のものよりも格段に優れた密着性を示すことがわかる。
【0101】
[実施例3]
Cu−X含有合金膜を形成し、該合金膜の電気抵抗率を測定してその評価を行った。
【0102】
(試料の作製)
ガラス基板(コーニング社製 Eagle2000、直径100mm×厚さ0.7mm)上に、上記実施例1と同様に、DCマグネトロンスパッタリング法で、種々のCu−X含有合金膜(X=Al、MgまたはTi,X含有量は0.1at%、2.0at%または5.0at%)を膜厚300nm形成した。
【0103】
(電気抵抗率の測定)
上記形成した種々のCu−X含有合金膜に対して、フォトリソグラフィーおよびウェットエッチングを施し、幅100μm、長さ10mmのストライプ状パターン(電気抵抗率測定用パターン)に加工してから、該パターンの電気抵抗率を、プローバーを使用した直流4探針法で室温にて測定した。
【0104】
尚、電気抵抗率の測定も、下記(a)〜(d)のそれぞれの試料(ストライプ状パターン)について行った。
(a)上記の様にして作製した試料(as−deposited状態のストライプ状パターン)、
(b)真空雰囲気中にて350℃で30分間保持の熱処理を施したストライプ状パターン、
(c)真空雰囲気中にて400℃で30分間保持の熱処理を施したストライプ状パターン、
(d)真空雰囲気中にて450℃で30分間保持の熱処理を施したストライプ状パターン
【0105】
その結果を図14〜16にまとめた。図14は、0.1at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu合金膜について、熱処理温度と電気抵抗率の関係を示したものであり、図15は、2.0at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu合金膜について、熱処理温度と電気抵抗率の関係を示したものである。また図16は、5.0at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu合金膜について、熱処理温度と電気抵抗率の関係を示したものである。
【0106】
これら図14〜16から、Cu−X含有合金膜の電気抵抗率は、as−deposited状態では合金元素の含有量に比例して増加し、Xの含有量が2.0〜5.0at%のCu−X含有合金膜では電気抵抗率が比較的高くなっている。しかしながら、熱処理により電気抵抗率は低下し、350℃以上の温度で熱処理を施すことによって、as−deposited状態の場合よりも電気抵抗率が飛躍的に低下することがわかる。
【0107】
[実施例4]
Cu積層膜とガラス基板との密着性を評価するため、以下の様なテープによる剥離試験を行った。
【0108】
(試料の作製)
ガラス基板(コーニング社製 Eagle2000、直径100mm×厚さ0.7mm)上に、DCマグネトロンスパッタリング法(成膜条件は下記の通り)により、下地層として、種々の含有量のAl、MgもしくはTiと酸素とを含むCu合金膜、または比較例として純Cu膜を形成し、次いで、下地層上に上層として、上記下地層と合金成分組成が同一で、かつ酸素を実質的に含まない膜を形成してCu積層膜を得た。Cu積層膜の全膜厚は300nm、下地層の膜厚は50nmとした。スパッタリングターゲットとして、純Cuスパッタリングターゲット、または、純Cuスパッタリングターゲットに添加合金元素(Al、MgまたはTiの各純金属チップ)をチップオンしたものを用いた。
【0109】
前記下地層の形成には、スパッタリングガスとして、Ar+5体積%Oの混合ガスを用いた。また上層の形成には、スパッタリングガスとして、純Arガスを用いた。尚、上記混合ガスにおけるArガスとOガスの混合比率は、ArガスとOガスの分圧で設定し、分圧比はArガスとOガスの流量比で設定した。
【0110】
(成膜条件)
・背圧:1.0×10−6Torr以下
・ガス圧:2.0×10−3Torr
・ガス流量:30sccm
・スパッタパワー:3.2W/cm
・極間距離:50mm
・基板温度:室温
【0111】
尚、形成されたCu積層膜の合金成分組成は、ICP発光分光分析装置(島津製作所製のICP発光分光分析装置「ICP−8000型」)を用い、定量分析して確認した。下地層に酸素が存在することはSEM−EDXにより定性的に確認した。
【0112】
上記の様にして成膜した直後(as−depo状態)の試料、および、成膜後に真空雰囲気中にて350℃で30分間保持する熱処理を行った試料を、密着性評価用試料として用意した。
【0113】
(ガラス基板との密着性の評価)
ガラス基板との密着性を評価するため、以下のようなテープによる剥離試験を行った。即ち、上記試料の成膜表面に、カッター・ナイフを用いて1mm間隔で碁盤目状の切り込みを入れた。碁盤目状の切り込みは治具(ステンシル)を用いてけがき、全ての試料に対して同一の碁盤目形状が描けるようにした。次いで、3M社製黒色ポリエステルテープ(製品番号8422B)をラミネーターにより上記成膜表面上に貼り付け、上記テープの引き剥がし角度が90°になるように治具を使用して粘着テープを引き剥がした。そして、上記テープにより剥離しなかった碁盤目の区画数をカウントし、全区画との比率(密着率、膜残存率)を求めた。
【0114】
上記成膜直後の試料の合金元素(Al、MgまたはTi)含有量と、密着率との関係を図17に示す。この図17より、本発明のCu積層膜は、純Cu膜と比較して密着性に優れていることがわかる。特に合金元素がAlであるCu−Al2元系のCu積層膜が、優れた密着性を示していることがわかる。
【0115】
また、上記熱処理後の試料の合金元素(Al、MgまたはTi)含有量と、密着率との関係を図18に示す。この図18より、熱処理を施すことによって、成膜直後の試料よりも密着性が十分に向上していることがわかる。特に、合金元素がAlであるCu−Al2元系のCu積層膜、および合金元素がMgであるCu−Mg2元系のCu積層膜は、密着率がほぼ100%であり、優れた密着性を示していることがわかる。
【0116】
[実施例5]
Cu積層膜の下地層形成に用いるスパッタリングガスの酸素濃度が、ガラス基板との密着性に及ぼす影響を調べた。
【0117】
Cu積層膜として、Cu−2at%Al合金積層膜、Cu−2at%Mg合金積層膜、またはCu−2at%Ti合金積層膜を形成し、かつ下地層形成に用いるスパッタリングガスの酸素濃度を変化させる以外は、実施例4と同様の方法により、Cu積層膜を形成して密着性評価試料(as−depo状態の試料)を得、密着性を評価した。その結果を図19に示す。
【0118】
図19は、下地層に用いたスパッタリングガス(Ar+O)の酸素濃度と密着率との関係を示したものである。この図19より、合金元素(X)の種類によって飽和する密着率の絶対値は異なるが、いずれの合金元素においても、スパッタリングガスの酸素濃度が増加するにつれて、密着率が増加する(密着性が向上する)傾向が認められる。尚、上記スパッタリングガスの酸素濃度増加による密着率の増加は、いずれの合金元素においても、酸素濃度:10体積%程度で飽和していることがわかる。
【0119】
[実施例6]
Cu積層膜における下地層の膜厚が、ガラス基板との密着性に及ぼす影響を調べた。
【0120】
Cu積層膜として、Cu−2at%Al合金積層膜、Cu−2at%Mg合金積層膜、またはCu−2at%Ti合金積層膜を形成し、かつ各Cu積層膜(いずれも全膜厚は300nm)における下地層の膜厚を10〜200nmの範囲で変化させる以外は、実施例4と同様の方法により、Cu積層膜を形成して密着性評価試料(as−depo状態の試料)を得、密着性を評価した。その結果を図20に示す。
【0121】
図20は、上記各Cu積層膜における下地層の膜厚と、密着率との関係を示したものである。この図20より、合金元素(X)の種類によって飽和する密着率の絶対値は異なるが、いずれの合金元素においても、下地層の膜厚が増加するにつれて、密着率が増加する(密着性が向上する)傾向が認められる。尚、下地層の膜厚増加による密着率の増加は、下地層の膜厚:100nm程度で飽和していることがわかる。
【0122】
[実施例7]
Cu積層膜の合金元素の種類・含有量および熱処理温度が、Cu積層膜の電気抵抗に及ぼす影響について調べた。
【0123】
Cu合金積層膜として、Cu−(2.0at%、5.0at%、または10.0at%)Al合金積層膜、Cu−(2.0at%、5.0at%、または10.0at%)Mg合金積層膜、またはCu−(2.0at%、5.0at%、または10.0at%)Ti合金積層膜を形成し、かつ熱処理条件を、熱処理なし(25℃)または熱処理温度:350〜450℃の範囲で変化させる以外は、実施例4と同様の方法により、Cu積層膜を形成して電気抵抗率測定用試料(as−depo状態の試料、熱処理後の試料)を得た。
【0124】
そして上記試料に対し、フォトリソグラフィーおよびウェットエッチングを施し、幅100μm、長さ10mmのストライプ状パターン(電気抵抗率測定用パターン)に加工してから、該パターンの電気抵抗率を、プローバーを使用した4探針法で室温にて測定した。その結果を図21〜23に示す。
【0125】
図21は、2.0at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu積層膜について、熱処理温度と電気抵抗率の関係を示した図であり、図22は、5.0at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu積層膜について、熱処理温度と電気抵抗率の関係を示した図である。また、図23は、10.0at%のX(Ti、AlまたはMg)を含むCu積層膜について、熱処理温度と電気抵抗率の関係を示した図である。
【0126】
これら図21〜23より、Cu積層膜の電気抵抗率は、as−deposited状態では合金元素の含有量に比例して増加していることがわかる。しかしながら、熱処理により電気抵抗率は低下し、350℃以上の温度で熱処理を施すことによって、as−deposited状態の場合よりも電気抵抗率が飛躍的に低下することがわかる。
【0127】
尚、合金元素量が多くかつ熱処理温度が低い場合には、電気抵抗率が高く、単層配線としての使用が難しい場合もあるが、この様な場合、上層を純Cu膜とし、かつ下地層の膜厚を調整することにより、配線の実効的電気抵抗率を、実用上問題ないレベルまで低減することが可能である。
【0128】
[実施例8]
Cu積層膜のウェットエッチング性を評価するため、以下の方法でエッチングテストを実施した。
【0129】
Cu積層膜として、表2に示すCu積層膜を形成する以外は、実施例4に記載した方法と同様の方法により、Cu積層膜を形成して、エッチングテスト用試料(as−depo状態の試料)を得た。
【0130】
【表2】

【0131】
そして、上記試料に対し、10μm幅のラインアンドスペースを持つストライプパターンを形成すべくフォトリソグラフィーを行い、りん酸:硝酸:水=75:5:20の混酸エッチャントを用いてエッチングを行った。尚、本発明のCu積層膜の様な複層薄膜試料では、下地層と上層でエッチングレートが異なるため、上層に比べて下地層のエッチングレートが速い場合、配線底部(下地層部分)にアンダーカットが生じ得る。よって、エッチングした試料の配線膜断面をSEMで観察し、図24に示すアンダーカット量(アンダーカット深さ)を測定して、ウェットエッチング性を評価した。
【0132】
その結果、本発明のCu積層膜を形成したいずれの試料も、アンダーカット量は0.5μm以下であり、ウェットエッチング性に問題がないことを確認した。またエッチング部に残渣の発生も認められなかった。
【符号の説明】
【0133】
1 TFT基板
1a ガラス基板
2 対向基板(対向電極)
3 液晶層
4 薄膜トランジスタ(TFT)
5 画素電極(透明導電膜)
6 配線部
7 共通電極
8 カラーフィルタ
9 遮光膜
10a、10b 偏光板
11 配向膜
12 TABテープ
13 ドライバ回路
14 制御回路
15 スペーサー
16 シール材
17 保護膜
18 拡散板
19 プリズムシート
20 導光板
21 反射板
22 バックライト
23 保持フレーム
24 プリント基板
25 走査線(ゲート配線)
26 ゲート電極
27 ゲート絶縁膜
28 ソース電極
29 ドレイン電極
30 パッシベーション膜(保護膜、窒化シリコン膜)
31 フォトレジスト層
32 コンタクトホール
34 信号線(ソース−ドレイン配線)
100 液晶ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置において、ガラス基板と直接接触するCu合金配線を構成するCu合金膜であって、該Cu合金膜は、Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上を合計で0.1〜10.0原子%含有することを特徴とする表示装置用Cu合金膜。
【請求項2】
表示装置において、ガラス基板と直接接触するCu合金配線を構成するCu合金膜であって、該Cu合金膜は、Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上を合計で0.1〜5.0原子%含有することを特徴とする表示装置用Cu合金膜。
【請求項3】
表示装置において、ガラス基板と直接接触するCu合金配線を構成するCu合金膜であって、該Cu合金膜は、Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上を合計で0.2〜10.0原子%含有することを特徴とする表示装置用Cu合金膜。
【請求項4】
前記Cu合金膜は、酸素を含む下地層と、酸素を実質的に含まない上層と、を含む積層構造を有し、前記下地層は前記ガラス基板と接触している請求項3に記載の表示装置用Cu合金膜。
【請求項5】
表示装置において、ガラス基板と直接接触するCu合金配線を構成するCu合金膜であって、該Cu合金膜は、
Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上を合計で0.2〜10.0原子%、および酸素を含むCu合金からなる下地層と、
純Cu、またはCuを主成分とするCu合金であって前記下地層よりも電気抵抗率の低いCu合金からなり、酸素を実質的に含まない上層と、を含む積層構造を有し、前記下地層は前記ガラス基板と接触していることを特徴とする表示装置用Cu合金膜。
【請求項6】
前記下地層は、酸素濃度が1体積%以上20体積%未満であるスパッタリングガスを用いて、スパッタリング法により形成されたものである請求項4または5に記載の表示装置用Cu合金膜。
【請求項7】
前記下地層の膜厚は、10nm以上200nm以下である請求項4〜6のいずれかに記載の表示装置用Cu合金膜。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の表示装置用Cu合金膜が、薄膜トランジスタに用いられていることを特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の薄膜トランジスタがボトムゲート型構造を有するものであって、
請求項1〜7のいずれかに記載の表示装置用Cu合金膜が、該薄膜トランジスタのゲート電極および走査線に用いられている請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
フラットパネルディスプレイである請求項8または9に記載の表示装置。
【請求項11】
Ti、AlおよびMgよりなる群から選択される1種以上を合計で0.1〜10.0原子%含有するCu合金からなることを特徴とするCu合金スパッタリングターゲット。

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−65317(P2010−65317A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186537(P2009−186537)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】