説明

表示装置およびその駆動方法

【課題】1つの表示体で奥行き方向に空間像を移動表示することのできる表示装置およびその駆動方法を提供する。
【解決手段】本発明の表示装置は、画像を投射するプロジェクターと、プロジェクターから投射された投射像を表示する螺旋形状のスクリーンと、スクリーン上に表示された投射像を空間に投射結像させる結像手段と、スクリーンの中心軸を回転させる回転手段と、を備え、スクリーンの投射面と結像手段との距離が連続的に変化する構成となっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置およびその駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
誘導灯で誘導する方向の情報を提示する装置、システムとして、次の提案がある(特許文献1,2)。
特許文献1では、誘導灯の背面から別のパターンを表示し、避難者が火災方向に向かわないように情報提示することが提案されている。また、特許文献2では、災害時に誘導灯に安全な出入り口方向を矢印で表示することや、廊下の壁面にレーザー光で矢印のマークを走査表示することで誘導方向を示す装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−277545号公報
【特許文献2】特開2001−100678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記いずれの提案でも、通路において非難表示を正面から見て非難方向を分かりやすく提示することができなかった。また、複数の誘導灯を連携させて順次転動することで非難方向を誘導する方法も提案されているが、物理的に離れた複数の誘導灯を連携動作させるためには、配線の引き回しが困難で手間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、1つの表示体で奥行き方向に空間像を移動表示することのできる表示装置およびその駆動方法を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表示装置は、画像を投射するプロジェクターと、前記プロジェクターから投射された投射像を表示する螺旋形状のスクリーンと、前記スクリーン上に表示された投射像を空間に投射結像させる結像手段と、前記スクリーンの中心軸を回転させる回転手段と、を備え、前記スクリーンの投射面と前記結像手段との距離が連続的に変化する構成となっていることを特徴とする。
【0007】
これによれば、スクリーンの投射面と結像手段との距離が連続的に変化する構成とすることによって、空間像の表示位置を光軸方向で変化させることができる。
【0008】
本発明の表示装置は、画像を投射するプロジェクターと、前記プロジェクターから投射された投射像を表示するスクリーンと、前記スクリーンの中心軸を回転させる回転手段と、前記スクリーン上に表示された投射像を空間に結像させる結像手段と、を備え、前記スクリーンが中心軸方向から見て複数に分割された平行平面を有して構成されており、前記スクリーンの投射面と前記結像手段との距離が離散的に変化する構成となっていることを特徴とする。
【0009】
これによれば、スクリーンの投射面と結像手段との距離が離散的に変化する構成とすることで、空間像の表示位置を光軸方向で変化させることができる。
【0010】
また、前記スクリーンの前記中心軸の回転角度を検出する角度検出手段と、前記角度検出手段の出力により表示信号を切り替えるタイミングを設定する切替手段と、前記切替手段の出力により予め設定した複数の映像信号を切り替えて出力する信号発生手段と、を備えた構成としてもよい。
【0011】
これによれば、スクリーンの回転軸の回転角度によって表示する信号を切り替えるようにしたので、回転軸の回転速度に関わらず、空間像の形成される位置に対応してスクリーンに表示する表示信号を切り替えることで、表示位置を変化させながら異なる表示パターンを表示できる。
【0012】
また、前記角度検出手段と前記プロジェクターとの間にフォーカス制御手段あるいはズーム制御手段が設けられている駆動方法としてもよい。
【0013】
これによれば、フォーカス制御手段を設けた場合には、スクリーンの中心軸の回転角が変化するに伴いフォーカス制御部を連動させることによって、どの位置に空間像が形成されても常に最適なフォーカスにすることが可能となる。また、ズーム制御手段を設けた場合には、スクリーンの中心軸の回転角が変化するに伴いズーム制御手段を連動させることによって、どの位置に空間像が形成されても常に最適なフォーカスにすることが可能となる。
【0014】
また、前記中心軸方向に並ぶ複数の前記平行平面が、前記中心軸の周りに互いに所定角度ずつ順次位置を異ならせて配置されている構成としてもよい。
【0015】
これによれば、中心軸方向(光軸方向)から見て中心軸の周りに所定角度毎に分割された平行平面は、中心軸方向に位置を異ならせて配置されているので、表示位置が離散的に移動させながら表示を切り替えることができる。
【0016】
また、プロジェクターから射出される投射光の光軸に対して前記スクリーンの前記中心軸が傾いている構成としてもよい。
【0017】
これによれば、光軸に対するスクリーンの投射面の傾きを少なくすることができるので、表示の歪み等が解消される。
【0018】
本発明の表示装置の駆動方法は、画像を投射するプロジェクターと、前記プロジェクターから投射された投射像を表示する螺旋形状のスクリーンと、前記スクリーン上に表示された投射像を空間に投射結像させる結像手段と、前記スクリーンの中心軸を回転させる回転手段と、を備える表示装置の駆動方法において、前記スクリーンの前記中心軸の回転角度に応じて、前記プロジェクターから前記スクリーンに投射する前記投射像の表示パターンを第1表示パターンから第2表示パターンへ切り替える際に全黒表示を実施することを特徴とする。
【0019】
これによれば、第1表示パターンから第2表示パターンへ表示が切り替わる際に全黒表示を実施することによって、観察者に対する違和感は生じない。
【0020】
本発明の表示装置の駆動方法は、画像を投射するプロジェクターと、前記プロジェクターから投射された投射像を表示するスクリーンと、前記スクリーンの中心軸を回転させる回転手段と、前記スクリーン上に表示された投射像を空間に結像させる結像手段と、を備える表示装置の駆動方法において、前記スクリーンの前記中心軸の回転角度によって前記スクリーンと前記結像手段との距離が離散的に変化する際に、前記投射像として全黒画像を空間に結像させることを特徴とする。
【0021】
これによれば、光軸上でスクリーンへの投射位置が変化する際に表示パターンが変化したとしても観察者に対する違和感は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態である表示装置の概略構成を示す図。
【図2】リアスクリーンの概略構成を示す斜視図。
【図3】リアスクリーンの概略構成を示す図であって、(a)側面図,(b)正面図。
【図4】表示装置で空間像が生成される原理について説明するための図。
【図5】第1実施形態の表示装置を建物の廊下の天井に設置した様子を模式的示す図。
【図6】第2実施形態の表示装置の概略構成を示す図。
【図7】第2実施形態における表示装置の動作タイミングチャートを示す図。
【図8】第3実施形態の表示装置の構成を示す図であって、(a)側面図、(b)平面図。
【図9】リアスクリーンの構成を示す斜視図。
【図10】第3実施形態における表示装置の動作タイミングチャートを示す図。
【図11】第3実施形態の表示装置を地下商店街や大型店舗の廊下の隅に設置した様子を模式的に示す図。
【図12】第4実施形態の表示装置の概略構成を示す図。
【図13】第5実施形態の表示装置の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0024】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態である表示装置の概略構成を示す図である。
本実施形態の表示装置100は、図1に示すように、プロジェクター1と、リアスクリーン(スクリーン)2、モーター(回転手段)25、フレネルレンズ(結像手段)3および信号発生部(信号発生手段)5と、を筐体13内に備えてなる。
【0025】
プロジェクター1は、ライトバルブや投射レンズなどを搭載し、図示しないパーソナルコンピューターなどの外部の映像信号発生手段から入力された映像信号に基づいてリアスクリーン2に映像を投射する。ここで、プロジェクター1には、同じく筐体13内に設置された信号発生部5が接続されており、かかる信号発生部5から入力される信号(表示タイミング)に応じて表示を行う。プロジェクター1内に搭載されたライトバルブは、図示しない光源によって照明され、投射レンズで拡大投射されてリアスクリーン2上で結像する。
【0026】
リアスクリーン2は、透過型のスクリーンであって、螺旋状を呈するスクリーン面(投射面)2Aが光軸周りに回転するように構成されており、このリアスクリーン2の回転はモーター25の駆動によって実現される。このリアスクリーン2は、使用時において所定の回転速度で回転する。
【0027】
フレネルレンズ3は、リアスクリーン2上に表示された投射像を空間に結像させるものであって、微小な間隔で同心円状に設けられた複数のプリズム(不図示)を有して構成され、筐体13の前面13aに設けられている。
【0028】
図2は、リアスクリーンの概略構成を示す斜視図である。図3は、リアスクリーンの概略構成を示す図であって、(a)側面図,(b)正面図である。
本実施形態のリアスクリーン2は、図2、図3(a)に示すように、中心軸22と、当該中心軸22を中心にしてその軸周りに360°の螺旋状のスクリーン面21Aを有するスクリーン21とを備える。中心軸22には、その軸上であってフレネルレンズ3とは反対側の端部側に、モーター25の回転軸26が接続されており、このモーター25の駆動によってスクリーン面21Aが軸周りに回転する構成となっている。
【0029】
ここで、スクリーン21は、図3(b)に示すように正面(軸方向)から見てスクリーン21の端部21a,21b同士の間に隙間が形成されないような螺旋形状を呈するもので、正面から見て軸周り全体がスクリーン面21Aとなるように、少なくとも軸方向に直交する方向において端部21a,21bが一致している。中心軸22の軸周りにおいてスクリーン面21Aが途切れることのない構成であればいいので、スクリーン21の端部21a,21b同士が必ずしも一致していなくてもよく、例えば、軸方向でモーター25側に位置する端部21bが前方側のスクリーン面21Aの一部に若干重なるような構成としてもよい。このようなスクリーン21は、軸周りに順次位置を異ならせた複数の支持部23を介して中心軸22に支持されている。
【0030】
リアスクリーン2には、スクリーン面21A上の所定位置にプロジェクター1からの投射光が投射される。プロジェクター1から投射される投射光の光軸LXと、リアスクリーン2の中心軸22とは互いに平行している。つまり、上記構成のスクリーン21のスクリーン面21Aに対して像を投射するプロジェクター1は、中心軸22の径方向外側に位置し、その投射光の光軸LXがスクリーンの中心軸22とは一致しない位置に配置されている。これにより、プロジェクター1からの投射光をスクリーン面21A上の所定の投射位置Pに確実に投射することができる。スクリーン面21A上における投射位置Pは中心軸22から所定距離だけ離れた場所に設定される。リアスクリーン2に対するプロジェクター1の位置は固定されているため、モーター25を回転させることによりこれに伴って所定の回転速度で回転するリアスクリーン2のスクリーン面21A上を投射位置Pが移動することになる。
なお、リアスクリーン2の形状、回転速度および投射位置Pに関しては適宜変更が可能である。
【0031】
以下、上記構成の表示装置で空間像が生成される原理について説明する。
図4は、表示装置で空間像が生成される原理について説明するための図である。
プロジェクター1によりリアスクリーン2に画像を投射して、物体像(投射像)Yを生成する。物体像Yは、フレネルレンズ3により投射され、空間に空間像Zとして実像を結像する。観察者は、表示装置の正面側、つまり、フレネルレンズ3の光射出側から実像(空間像Z)を視認することができる。
【0032】
本実施形態の表示装置では、図3(a)に示したように、スクリーン面21Aの投射位置Pにはプロジェクター1からの像が投射されるため、モーター25を回転させることによりリアスクリーン2が回転し、リアスクリーン2(スクリーン面21A)とフレネルレンズ3との距離が変化する。本実施形態では、リアスクリーン2が反時計周りに回転するものとして説明する。
【0033】
図4に戻り、フレネルレンズ3の焦点距離をf、リアスクリーン2からフレネルレンズ3までの距離をa、フレネルレンズ3から空間像Zまでの距離をbとすると、
1/f=1/a+1/b
という関係が成立する。
【0034】
このとき、リアスクリーン2(スクリーン面21A)上の物体像Yに対する空間像Zのサイズ拡大率Mは、
M=b/a
で表すことができる。
【0035】
ここで、螺旋形状を呈するリアスクリーン2が回転することによって、スクリーン面21A上における投射位置Pが光軸上で移動する場合には、その移動前後における空間像Zのサイズ拡大率は、移動前のサイズ拡大率M1、移動後のサイズ拡大率M2とすると、
1/f=1/a1+1/b1=1/a2+1/b2
M1=b1/a1
M2=b2/a2
となる。
【0036】
ここで例えば、フレネルレンズ3の焦点距離fが300(mm)であった場合、移動前のリアスクリーン2からフレネルレンズ3までの距離a1を400(mm)、移動後のリアスクリーン2からフレネルレンズ3までの距離a2を500(mm)とすると、移動前のフレネルレンズ3から空間像Zまでの距離b1が1200(mm)、移動後のフレネルレンズ3から空間像Zまでの距離b2が750(mm)となる。
【0037】
よって、移動前のサイズ拡大率M1=3、移動後のサイズ拡大率M2=1.5という結果が得られる。
【0038】
物体像Yの最大値は空間像Zのサイズに対応するため、これを「5」とすると、スクリーン面21A(投射位置P)からフレネルレンズ3までの距離a1(400mm)〜a2(500mm)の間で切り替えると、フレネルレンズ3と空間像Zとの距離b1(1200mm)の位置に拡大率M1=15のサイズの空間像Zが形成され、フレネルレンズ3と空間像Zとの距離b2(750mm)の位置に拡大率M2=7.5のサイズの空間像Zが形成されることになる。
【0039】
具体的には、プロジェクター1の投射レンズからフレネルレンズ3までの距離を固定値として、1000mmとすると、プロジェクター1からの投射距離cは、
c=1000−a
となる。
【0040】
すなわち、
c1=1000−a1=600、c2=1000−a2=500
となる。
【0041】
ここで、リアスクリーン2上の画像サイズは投射距離cにほぼ比例するので、リアスクリーン2に対する投射位置が400mm(a1)の場合を基準として、500mm(a2)の場合には、
c2/c1=500/600=1/1.2
の画像サイズになる。
【0042】
従って、750mm(b2)の位置に形成される空間像Zのサイズは、
7.5/1.2=6.25
となり、投射距離を固定した場合よりも、空間像Zのサイズがより小さく表示されることになり、見かけ上、遠近感が強調されることになる。
【0043】
すなわち、本実施形態の表示装置100では、螺旋形状を呈するリアスクリーン2のスクリーン面21A上の所定の投射位置Pにプロジェクター1からの投射光を投射させているので、リアスクリーン2が回転することでスクリーン面21A上における投射位置Pが軸方向(光軸方向)で移動することになる。これにより、例えば、上述したようにスクリーン面21A(投射位置P)からフレネルレンズ3までの距離aが400mmから500mmに連続的に変化し、フレネルレンズ3から空間像Zまでの距離bが1200mmから750mmに連続的に変化する。このようにして、フレネルレンズ3のリアスクリーン2とは軸方向反対側に形成される空間像Zの位置が、徐々にフレネルレンズ3側に近づくように連続的に変化する。正面から見ている観察者は、奥行き方向へ連続的に移動するとともに徐々に小さくなる表示を視認することになる。
【0044】
なお、本実施形態では図3に示すように、リアスクリーン2の中心軸22とプロジェクター1からの投射光の光軸LXとが平行になっているが、これに限られる必要はなく、光軸LXに対するスクリーン投射面の傾きを少なくするようにリアスクリーン2の回転軸(中心軸22)を傾けた配置としてもよい。これにより、表示の歪み等が解消される。
また、リアスクリーン2を時計周りに回転させても良い。
【0045】
図5に、上記構成の表示装置を建物の廊下の天井に設置した様子を模式的示す。
ここでは、図1に示した筐体13の内部に設置された信号発生部5により、空間像Zとして非常口を示す標識Gを表示している。
図5に示すように、建物の廊下30の天井31に設置した上記構成の表示装置100により避難方向を示す標識Gを示す場合、プロジェクター1からの投射光が回転するリアスクリーン2上に投射されることによって、フレネルレンズ3を介してその前方に形成される空間像Z(標識G)は、フレネルレンズ3から離れた位置から徐々に近づく方向へ連続的に位置が移動して表示される。
【0046】
さらに、表示位置の移動に伴って、表示される画像(標識G)のサイズも連続的に小さくなるので、観察者側からは、自分から遠ざかる方向(廊下30の奥の方向)へ標識Gが移動しているように見える。標識Gを視認した観測者は、避難場所が廊下30の先の方向であることを認識し、廊下30の奥へと誘導される。
このような表示を行うことで、標識Gを見た観察者に対して避難する方向を的確に知らせることが可能となる。
【0047】
なお、リアスクリーン2を逆回転することにより、観測者側からは自分側に近づくように標識Gが移動するように見えるため、避難方向が、自分の進行方向とは反対側の方向であることを認識する。これにより、観察者を標識G側(表示装置100)側から離れる方向へ誘導することも可能となる。
【0048】
本実施形態の表示装置100によれば、物体像Yが表示されるリアスクリーン2への投射位置Pとフレネルレンズ3との距離を連続的に変化させることによって、空間像Zの表示位置を光軸方向で変化させることができるため、1台の表示装置で観察者を所定の方向へ誘導することが可能となる。上述したように、回転する螺旋状のリアスクリーン2に投射する像を空間像Zとして結像させ、光軸方向に空間像Zを移動表示させることで、観察者に対して移動方向を提示することができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の表示装置の構成について述べる。
図6は、第2実施形態の表示装置の概略構成を示す図である。
図6に示すように、本実施形態の表示装置200は、プロジェクター1、リアスクリーン2、モーター25、フレネルレンズ3、信号発生部(信号発生手段)5の他に、設定ダイヤル6、エンコーダー(角度検出手段)7および設定切替部(切替手段)8をさらに筐体13内に備えている。
【0050】
設定ダイヤル6は、リアスクリーン2の動きの速さを設定する。設定ダイヤル6の設定値により、モーター25の回転の速さを制御し、モーター25に接続されたリアスクリーン2の動きの速さが決定する。モーター25の出力側には、モーター25の回転軸の角度を検出するエンコーダー7が設けられており、その値を設定切替部8へ出力する。
【0051】
設定切替部8は、モーター25の回転軸の回転角度、すなわちリアスクリーン2の中心軸22の回転角度によって表示設定を切り替えるもので、その出力値を信号発生部5へと出力する。信号発生部5は、この設定切替部8から入力された信号に基づいて表示信号の切り替えを行う。
【0052】
そして、モーター25の駆動によりリアスクリーン2を所定の速さで回転させることにより、フレネルレンズ3の前方に形成される空間像Zを光軸方向へ所定の速さで連続的に移動させることができる。
【0053】
次に、本実施形態における表示装置の駆動方法について述べる。
図7は、本実施形態における表示装置の動作タイミングチャートを示す図である。
設定ダイヤル6によって設定した速度に対応して、モーター25が駆動制御され、リアスクリーン2が所定の速度で回転する。エンコーダー7からは、設定ダイヤル6によって設定された速度に対応してモーター25の回転軸の回転角度が検出される。そして、設定切替部8で設定した角度に応じて表示切替信号が信号発生部5へ出力され、信号発生部5では、入力された表示切替信号に応じてプロジェクター1へ出力する表示信号を切り替える。
【0054】
本実施形態では、エンコーダー7によって検出される、リアスクリーン2(モーター25の回転軸)の停止している位置の角度を絶対角度として設定してあり、表示装置200の電源をオンにした時、機械的に廻されたリアスクリーン2の停止位置の現在角度の信号を出力する。リアスクリーン2(モーター25の回転軸)の1回転(360°)におけるそれぞれの位置における角度はエンコーダー7における出力信号で決まっている。ここで、エンコーダー7の分解能はNパルス/1回転(360°)であって、リアスクリーン2の回転に応じて、所定の表示パターンA、表示パターンB、表示パターンCおよび表示パターン全黒ごとに設定されたパルス数/回転角度がエンコーダー7より出力されることになる。
【0055】
図7のように、エンコーダー7からの出力信号に応じて設定切替部8から信号発生部5へ切替信号が入力される度に、プロジェクター1から投射される表示パターンA,B,Cが順次切り替わる。信号発生部5からまず初めにパターンA信号が出力され、順次パターンB信号、パターンC信号へ切り替えられると、最後には全黒信号が出力される。
【0056】
具体的には、まず、エンコーダー7から出力されるモーター25の回転軸の回転角度が設定切替部8において設定された所定角度に達すると、所定の表示切替信号がオンになり、信号発生部5においてパターンAを示す表示信号がプロジェクター1へ出力される。
【0057】
このとき、形成される空間像Z(A)、Z(B)、Z(C)、Z(Bk)の位置は、図6に示すように、フレネルレンズ3からの距離が最も遠い位置(A)から位置(B)、位置(C)へと順次移動して、最もフレネルレンズ3に近い位置(Bk)において全黒の空間像Z(Bk)が表示される。
【0058】
また、これに伴って、空間像Zの大きさも、空間像Z(A)<空間像Z(B)<空間像Z(C)<空間像Z(Bk)へと順次縮小変化する。このとき、空間像Zの位置は図のように変化するので、表示位置が連続的に変化しながら表示パターンが切り替わる。
【0059】
また、空間像Zの表示位置が位置(C)から位置(A)へ元に戻る期間では、表示を全黒表示にしているので観察者に対する違和感は生じない。つまり、観察者側から最も離れた位置において小さく全黒表示が行われることになるため、自然な形で表示の切り替えを行える。観察者からは、視認できる実像(空間像Z)が必ず自分から離れる方向(遠ざかる方向)へ移動するように見えるため、避難方向が観察者のさらに前方であることを認識する。このようにして観察者の避難方向を示し、誘導されることになる。
【0060】
ここで、表示するパターンは静止画であっても動画であってもよい。
【0061】
以上のように、リアスクリーン2(モーター25の回転軸)の回転角度によって表示する信号を切り替えるようにしたので、モーター25の速度にかかわらず、空間像Zが形成される位置に対応してリアスクリーン2上に表示するパターンを切り替えることで、表示位置を変化させながら、異なるパターンの表示が行える。
【0062】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の表示装置の構成について述べる。
図8は、第3実施形態の表示装置の構成を示す図であって、(a)側面図、(b)平面図である。図9は、リアスクリーンの構成を示す斜視図である。
図8(a),(b)および図9に示すように、本実施形態の表示装置300が備えるリアスクリーン32は、中心軸22の軸周りに90°ごとに分割された平行平面(スクリーン面33A)を有し、各スクリーン面33Aを光軸方向に並べて配置した構造となっている。
【0063】
リアスクリーン32は、中心軸22と、当該中心軸22の軸方向に位置を異ならせて配置された複数のスクリーン部33とを備えている。スクリーン部33は、平面視扇形状をなし、その円弧に対する円周角は90°である。本実施形態では4つのスクリーン部33(331,332,333,334)が中心軸22の軸方向に互いのスクリーン面33Aを平行にして所定間隔を置いて配置されている。各スクリーン部33(331,332,333,334)は、中心軸22の軸周り(時計周り)に90°ごとに位置を順次異ならせて配置されており、観察者がリアスクリーン32の正面から見ると、各スクリーン部33(331,332,333,334)のスクリーン面33Aが全て見えるようになっている。
本実施形態の表示装置300は、リアスクリーン2が時計周りに回転するように構成されている。
【0064】
本実施形態の表示装置300は、先の実施形態と同様に、リアスクリーン32を駆動するモーター25には設定ダイヤル6が接続されており、設定値によってリアスクリーン32の回転速度を設定することができる。また、モーター25の出力側に接続されたエンコーダー7により当該モーター25の回転軸の回転角度を検出し、その検出結果に応じて、設定切替部8は信号発生部5に表示を切り替えるタイミングを示す切替信号を出力する。
【0065】
次に、本実施形態における表示装置の駆動方法について述べる。
図10は、本実施形態における表示装置の動作タイミングチャートを示す図である。
表示装置300では、設定ダイヤル6によって設定したモーターの回転速度に対応してエンコーダー7からはモーター25の回転軸の角度が出力され、設定切替部8において設定した角度に達した際に表示切替信号が出力される。設定切替部8から表示切替信号が入力される度に、信号発生部5では表示信号を切り替えて出力する。
【0066】
本実施形態では、図10に示すように、設定切替部8から表示切替信号が出力されると、信号発生部5は初めにパターンAの表示信号を出力し、図8に示したプロジェクター1からスクリーン部331に対して所定の投射光が投射される(投射期間T1)。その後、リアスクリーン2の回転が進み、リアスクリーン2上における投射位置Pにスクリーン部331,332の境界部分(中心軸22の軸周りで対向するスクリーン部331,332の側辺どうし)が差し掛かるタイミングで、設定切替部8から表示切替信号が出力されて、信号発生部5において全黒の表示信号が生成される(黒表示期間T5)。黒表示は、スクリーン部331,332の両方に対して投射が行われている期間中に実施され、投射位置Pがスクリーン部332に完全に切り替わるタイミングで黒表示は終了する。
そして、投射期間T2においてスクリーン部332に対する投射が行われ、スクリーン部332からスクリーン部333に切り替わるタイミングで黒表示期間T5に切り替わる。
【0067】
このように、スクリーン部331への投射期間T1、スクリーン部332への投射期間T2、スクリーン部333への投射期間T3、スクリーン部334への投射期間T4、の各期間の境界に、投射するスクリーン部が切り替わる期間(黒表示期間T5)が存在し、全黒表示が実施される。投射光が投射されるスクリーン部33が別のスクリーン部33に切り替わる際、全黒表示を実施することによって、各スクリーン部33において表示される表示がパターンA、B,Cへと順次変化しても、観察者に対する違和感は生じなくなるという効果が得られる。
【0068】
本実施形態のように、初めにパターンAが生じされ、全黒表示を経てパターンBが表示され、再び全黒表示、パターンC、全黒表示、パターンD、全黒表示へと順次切り替えられる。空間像Zの位置は光軸方向で4つの位置に変化するので、表示位置が変化しながら表示パターンがパターンA,B,Cへと順次切り替わるが、その際、表示を黒表示にしているので観察者への違和感は生じなくなる。
【0069】
図11に、上記構成の表示装置を地下商店街や大型店舗の廊下の隅に設置した様子を模式的に示す。
表示装置300によって表示される空間像Zは、廊下30の延在方向に沿って表示装置300から離れた場所から表示装置300に近い方向へ、表示される文字が順次変わりながら、位置が離散的に移動して表示される。さらに、表示サイズも連続的に小さくなるので、観察者から見ると、表示画像がより表示装置300に近い方向へ移動しているように見える。
【0070】
つまり、観察者側からは、空間像である「新」、「発」、「売」、「←」の表示が、自分から遠ざかる方向(廊下30の奥の方向)へ移動しているように見える。ここでは、全黒表示に代えて「←」を表示することとした。これにより、「新発売」対象の商品が矢印で示す店舗によって販売されていることを観察者へ提示することができる。表示を視認した観測者は、店舗が矢印の示す方向にあることを認識し、廊下30の奥へと誘導される。
【0071】
このような構成により、物体像が表示されるリアスクリーン2への投射位置とフレネルレンズ3との距離を変化し、空間像Zを離散的に連続して移動表示できるので、1台の表示装置300によって、文字などの情報を提示しながら観察者の動きを誘導することができる。
【0072】
なお、光軸上におけるスクリーン部33の配置間隔については、実像が表示される間隔に対応してあらかじめ決めておくことにより、例えば等間隔で表示したり、観察者から離れるほど間隔を狭くするなどの設定をしておくことができる。
【0073】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態の表示装置の構成について述べる。
図12は、第4実施形態の表示装置の概略構成を示す図である。
図12に示すように、表示装置400では、エンコーダー7の出力側にフォーカス制御部41が接続されている。このフォーカス制御部(フォーカス制御手段)41は、リアスクリーン2(32)に対する投射距離が変わった場合、つまり、モーター25の回転軸の回転角が変化するに伴いフォーカス制御部41を連動させて、どの位置に空間像が形成された場合でも常に最適なフォーカスにすることが可能となる。
【0074】
エンコーダー7の出力に対応して投射距離が変わるので、予めエンコーダー7の出力に対応した最適フォーカス制御値を求めて設定しておくことにより、常に最適なフォーカスを得ることができる。
また、リアスクリーン2(32)の回転角度に応じて変化する空間像Zのサイズ応じて自由に設定できるようにしてもよい。
【0075】
[第5実施形態]
次に、第5実施形態の表示装置について述べる。
図13は、第5実施形態の表示装置の概略構成を示す図である。
図13に示すように、表示装置500では、エンコーダー7の出力側にズーム制御部(ズーム制御手段)51が接続されている。このズーム制御部51は、リアスクリーン2(32)に対する投射距離が変わった場合、つまり、モーター25の回転軸の回転角が変化するに伴いズーム制御部51を連動させて、どの位置に空間像Zが形成された場合においても常に最適なサイズで表示を行うことが可能となる。
【0076】
エンコーダー7の出力に対応して投射距離cと、リアスクリーン2からフレネルレンズ3までの距離aが決まっており、その結果、フレネルレンズ3から空間像Zまでの距離bと、空間像のサイズも決まっているが、ズーム制御部51により、空間像Zのサイズを変えることができる(図4参照)。
【0077】
予め、フレネルレンズ3から空間像Zまでの距離bに対応して、表示したい空間像Zのサイズとなるようにエンコーダー7の出力に対応してズーム制御値を求めておく。そして、ズーム制御部51から所定のズーム制御値をプロジェクター1へ出力することで、プロジェクター1の内部に搭載されたズームレンズ(不図示)を制御することができる。これにより、例えば、空間像の位置が変わっても空間像のサイズを変えないで表示したり、逆に変化を大きくして遠近感をより強調するように設定することができる。
【0078】
本実施形態の構成によれば、ズーム制御部51によりプロジェクター1内部のズームレンズを制御することにより、空間像の位置が変化しても空間像を任意のサイズで表示することが可能となる。
【0079】
以上の各実施形態の表示装置によれば、リアスクリーン2(モーター25の回転軸)の回転角度によって表示パターンの信号を切り替えることができるため、空間像が形成される位置に対応して表示する内容を切り替えて表示することができる。さらに、エンコーダー7を備えたので、空間像の表示される位置と表示内容の切替タイミングとを一括して制御することができる。
【0080】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0081】
1…プロジェクター、2,32…リアスクリーン(スクリーン)、2A,33A…スクリーン面(投射面)、3…フレネルレンズ(結像手段)、5…信号発生部(信号発生手段)、7…エンコーダー(角度検出手段)、8…設定切替部(切替手段)、A,B,C,D…表示パターン、b…距離、P…投射位置、Y…投射像、Z…空間像、21…スクリーン、22…中心軸、25…モーター(回転手段)、26…回転軸、41…フォーカス制御部、41…フォーカス制御部(フォーカス制御手段)、51…ズーム制御部(ズーム制御手段)、100,200,300,400,500…表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を投射するプロジェクターと、
前記プロジェクターから投射された投射像を表示する螺旋形状のスクリーンと、
前記スクリーン上に表示された投射像を空間に投射結像させる結像手段と、
前記スクリーンの中心軸を回転させる回転手段と、を備え、
前記スクリーンの投射面と前記結像手段との距離が連続的に変化する構成となっている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
画像を投射するプロジェクターと、
前記プロジェクターから投射された投射像を表示するスクリーンと、
前記スクリーンの中心軸を回転させる回転手段と、
前記スクリーン上に表示された投射像を空間に結像させる結像手段と、を備え、
前記スクリーンが中心軸方向から見て複数に分割された平行平面を有して構成されており、
前記スクリーンの投射面と前記結像手段との距離が離散的に変化する構成となっている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
前記スクリーンの前記中心軸の回転角度を検出する角度検出手段と、
前記角度検出手段の出力により表示信号を切り替えるタイミングを設定する切替手段と、
前記切替手段の出力により予め設定した複数の映像信号を切り替えて出力する信号発生手段と、を備えた
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記角度検出手段と前記プロジェクターとの間にフォーカス制御手段あるいはズーム制御手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の表示の駆動方法。
【請求項5】
前記中心軸方向に並ぶ複数の前記平行平面が、前記中心軸の周りに互いに所定角度ずつ順次位置を異ならせて配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項6】
プロジェクターから射出される投射光の光軸に対して前記スクリーンの前記中心軸が傾いている
ことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
画像を投射するプロジェクターと、前記プロジェクターから投射された投射像を表示する螺旋形状のスクリーンと、前記スクリーン上に表示された投射像を空間に投射結像させる結像手段と、前記スクリーンの中心軸を回転させる回転手段と、を備える表示装置の駆動方法において、
前記スクリーンの前記中心軸の回転角度に応じて、前記プロジェクターから前記スクリーンに投射する前記投射像の表示パターンを第1表示パターンから第2表示パターンへ切り替える際に全黒表示を実施する
ことを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項8】
画像を投射するプロジェクターと、前記プロジェクターから投射された投射像を表示するスクリーンと、前記スクリーンの中心軸を回転させる回転手段と、前記スクリーン上に表示された投射像を空間に結像させる結像手段と、を備える表示装置の駆動方法において、
前記スクリーンの前記中心軸の回転角度によって前記スクリーンと前記結像手段との距離が離散的に変化する際に、前記投射像として全黒画像を空間に結像させる
ことを特徴とする表示装置の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−73229(P2013−73229A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214798(P2011−214798)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】