表示装置および表示装置の製造方法
【課題】タンデム白色素子に微小共振構造を適用した場合、積層順による光の取り出し易さと共振部の光学的距離の正確な設定を簡単な製造工程で実現すること。
【解決手段】本発明は、上部電極3と下部電極2との間に機能層10R、10B、10Gが配置され、上部電極3と下部電極2との間を共振部として機能層10R、10B、10Gで発光した光を共振させて取り出す有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gと、異なる波長に対応させた少なくとも3つの発光素子EL−R、EL−B、EL−Gを組みとするピクセルとを備える表示装置において、ピクセルを構成する第1の有機EL素子EL−Rにおける共振部の光学的距離と第2の有機EL素子EL−Bにおける共振部の光学的距離とが等しく、第1の有機EL素子EL−Rにおける共振部の光学的距離と第3の有機EL素子EL−Gにおける共振部の光学的距離とが異なるよう構成されているものである。
【解決手段】本発明は、上部電極3と下部電極2との間に機能層10R、10B、10Gが配置され、上部電極3と下部電極2との間を共振部として機能層10R、10B、10Gで発光した光を共振させて取り出す有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gと、異なる波長に対応させた少なくとも3つの発光素子EL−R、EL−B、EL−Gを組みとするピクセルとを備える表示装置において、ピクセルを構成する第1の有機EL素子EL−Rにおける共振部の光学的距離と第2の有機EL素子EL−Bにおける共振部の光学的距離とが等しく、第1の有機EL素子EL−Rにおける共振部の光学的距離と第3の有機EL素子EL−Gにおける共振部の光学的距離とが異なるよう構成されているものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置およびその製造方法に関し、特には有機EL素子のような発光素子を基板上に配列形成してなり、所望の発光色を選択的に取り出すことができる面発光型の表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラウン管(CRT)に代わる表示装置として、軽量で消費電力の小さいフラット表示装置の研究、開発が盛に行われている。このうち、無機EL素子や有機EL素子などの自発光型の表示素子(いわゆる発光素子)を用いた表示装置は、低消費電力での駆動が可能な表示装置として注目されている。
【0003】
このような発光素子を用いた表示装置をフルカラー化する構成としては、たとえば(1)青、緑、赤に発光する発光素子を配列した構成、(2)白色発光素子にカラーフィルタを組み合わせた構成、(3)白色または青色発光素子に色変換フィルタを組み合わせる構成等が提案されている。
【0004】
上記(1)に係る構成では、発光層を含む機能層がパターン形成されるが、精度に限界があり、発光素子および発光素子間の微細化や大型化が困難である。
【0005】
これに対して、上記(2)および(3)の構成では、各発光素子において同一の波長領域の光を発光させれば良いため、発光層を含む機能層を色毎に作り分ける必要はない。このため、各発光素子の設計を含む製造工程は(1)に係る構成と比較して簡便である。ところが、(2)の構成ではカラーフィルタで不要な発光成分を吸収するため、発光効率が低下し、消費電力や素子寿命にとって負荷が大きい。さらに、一般的に量産可能なカラーフィルタの透過特性では、発光素子での白色発光を色純度よく青、緑、赤にフィルタリングすることができず、取り出し光は波長分布の広い色再現性に乏しい表示装置しかできない。
【0006】
また、上記(3)の構成では色変換フィルタの変換効率が低いこと、色変換フィルタの製造が困難なこと、色変換フィルタの寿命、色変換後の発光色の色純度等に課題があり実用化が困難である。
【0007】
一方で、従来の表示装置は、各色(赤(R),緑(G),青(B))の自発光素子を有する発光ユニット数の最適化がなされておらず、発光効率の悪い色の表示画素から必要な輝度を得るためには、他の発光効率の良い色の表示画素よりも大きな電流を流さなければならない。それによって、発光効率の悪い色の表示画素の寿命が短くなってしまい、各色の劣化速度が異なることにより、ホワイトバランスのズレが生じる。
【0008】
この問題を解決するために、各色の表示画素のうちいずれかの色の表示画素の発光面積を、他の色の表示画素の発光面積と異ならせることにより、各自発光素子の発光効率、劣化速度の違いによるホワイトバランスのズレを軽減させることが提案されている(特許文献1)。
【0009】
また、RGBの発光ユニットを接続層を介して積層することによりタンデム型白色素子とし、カラーフィルタを用いてフルカラー化する方法も提案されている。例えば、特許文献2において、色の異なるサブピクセルを上下に積層し、RGBの発光面積を調節し、最適化することが提案されている。
【0010】
【特許文献1】特開2001−290441号公報
【特許文献2】特開2004−79538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、陽極と陰極との間で発光ユニットが発した光を共振させる共振器構造の表示装置では、共振部の光学的距離を正確に設定するのが困難である。また、RGBの積層タンデム白色素子を適用した場合、RGB各色の位置設定により、最終的な光取り出し量が大きく異なるため、発光ユニットの積層順、また発光ユニット数の設定が非常に重要となる。特許文献2においては、積層順による光の取り出し易さについての記述はない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものである。すなわち、本発明は、上部電極と下部電極との間に機能層が配置され、上部電極と下部電極との間を共振部として機能層で発光した光を共振させて取り出す発光素子を備えており、異なる波長に対応させた少なくとも3つの発光素子を組みとしてピクセルを構成する表示装置において、ピクセルを構成する第1の発光素子における共振部の光学的距離と第2の発光素子における共振部の光学的距離とが等しくなるよう設けられ、第1の発光素子における前記共振部の光学的距離と第3の発光素子における共振部の光学的距離とが異なるよう設けられているものである。
【0013】
このような本発明では、少なくとも3つの発光素子を組みとするピクセルを備えた共振器構造の表示装置において、第1の発光素子における共振部の光学的距離と第2の発光素子における共振部の光学的距離とが等しくなるよう設けられ、第1の発光素子における前記共振部の光学的距離と第3の発光素子における共振部の光学的距離とが異なるよう設けられているため、光学的距離として2種類を設定すればよいことから、容易かつ正確に共振器構造の表示装置を実現できるようになる。
【0014】
ここで、発光ユニットとは、従来の有機EL素子を構成する要素のうち、陰極と陽極を除いた構成要素、つまり発光層単層や、発光層に電子注入層や電子輸送層、正孔注入層や正孔輸送層などを含む複数層であり、1色もしくは多色に対応した光を発生させる層の単位である。また、機能層とは従来型(単一発光ユニットを持つ形態)、タンデム型を問わず、有機EL素子中の陰極と陽極を除いた層単位である。この機能層と上部電極および下部電極(透明導電膜等の透明膜も含む)を含む構成を発光素子と言う。また、この発光素子が3つ以上基板に配列されることで1ピクセルを構成し、このピクセルが例えばマトリクス状に配置されることで面状の表示装置となる。
【0015】
発光素子における共振部は、例えば、光反射材料からなるミラーと光半透過性のハーフミラーとの間に少なくとも機能層が挟持された構成であり、この機能層の発光ユニットで発光した光をミラーとハーフミラーとの間で共振させてハーフミラー側から取り出すようにしている。ハーフミラーとしては、所定の反射率、透過率を備えた無機膜、有機膜や、発光ユニットとして用いられる有機膜との間で屈折率が異なるほぼ透明の膜が用いられる。また、共振部での共振としては、相対強度が高まるもののほか、相対強度がそれほど高くならない干渉状態も含むものとする。そして、各色の発光ユニットは発光効率が低い順番に光取り出しが容易な位置に設定されている。
【0016】
このような構成の表示装置では、発光ユニットとして同一構成の積層有機層を用い、各発光素子に設定されたミラーとハーフミラーとの間の共振部の光学的距離に対応する波長領域の光が共振によって強められた状態で取り出される。このため、同一構成の発光ユニットを持つ発光素子を用いながらも、所望の発光波長の取り出し効率が十分な大きさとなるように各発光素子におけるミラーとハーフミラーの間の光学的距離および積層順、ならびに位置を設計することで、各発光素子からは異なる発光色の光を取り出すことができる。
【0017】
したがって、青、緑、赤の発光が十分な強度を持って取り出されるようにミラーとハーフミラーとの間の光学的距離が調整された各発光素子を配列させることで、フルカラー表示の表示装置となる。
【0018】
また、各発光素子において、各色の発光ユニットを同一素子内で構成したことにより、発光ユニットを含む機能層の全体を同一にできる。このため、機能層全体を発光素子の発光色毎に作り分ける必要がなくなり、機能層を作り分ける際に必要となる各機能層間の合わせ裕度を発光素子間に設定する必要もなくなり、画素間ピッチを狭められ、高開口率化が可能になる。
【0019】
そして、発光ユニットを含む機能層全体を同一層で構成した場合、ミラーとハーフミラーとを電極として構成し、これらの間に機能層と共に透明導電膜(透明層)を狭持させる。この透明導電膜は、ミラーとハーフミラーとの間の光学的距離を調整するための調整層として用いられる。なお、ここで用いる透明とは、特定の波長に対して十分な透過率を有することを言う。透明導電膜は、リソグラフィ処理によって形成したレジストパターンをマスクに用いたエッチングによってパターン形成されるため、金属マスクを用いたパターン形成やインクジェットによるパターン形成が必要となる機能層と比較して、パターニング精度良好に形成されたものとなる。
【0020】
また本発明の表示装置の製造方法は、下部電極の上に機能層を形成し、その機能層の上に上部電極を形成して、上部電極と下部電極との間を共振部とする発光素子を構成する製造方法であり、異なる波長に対応させた少なくとも3つの発光素子を組みとしてピクセルを構成するにあたり、ピクセルの第1の発光素子における共振部の光学的距離と第2の発光素子における共振部の光学的距離とが等しくなるよう構成し、第1の発光素子における共振部の光学的距離と第3の発光素子における共振部の光学的距離とが異なるよう構成する方法である。
【0021】
このような本発明では、少なくとも3つの発光素子を組みとするピクセルを備えた共振器構造の表示装置を製造する場合、第1の発光素子における共振部の光学的距離と第2の発光素子における共振部の光学的距離とが等しくなり、第1の発光素子における共振部の光学的距離と第3の発光素子における共振部の光学的距離とが異なっているため、2種類の光学的距離の設定で済むことから、共振器構造の表示装置を正確かつ容易に実現できるようになる。
【0022】
ここで、例えば、光反射材料からなるミラーと光半透過性のハーフミラーとの間に少なくとも発光ユニットを含む機能層を挟持して共振部を構成する場合、基板上の各発光素子形成領域にミラーまたはハーフミラーを形成した後、光学的距離の異なる透明導電膜(透明層)をパターン形成する工程と前記発光ユニットを一括形成する工程とをこの順または逆の順に行う。
【0023】
このような製造方法では、各発光素子形成領域のミラーまたはハーフミラー上に、一括形成されることで同一の構成となる発光ユニットと、異なる光学的距離を有する透明導電膜との積層体が設けられ、かつ各色の発光ユニットの積層順が最適化された発光素子が形成される。そして、機能層を一括形成した同一層としたことにより、全体を一括形成することもでき、機能層の設計を含む製造工程数の削減が図られる。
【発明の効果】
【0024】
したがって、本発明の表示装置によれば、各発光素子における発光ユニットを共通化しながらも、各発光素子から所望の発光色の光を十分な強度で取り出すことが可能となる。したがって、発光ユニットの共通化によって発光素子および発光素子間の微細化が実現されることで高精細な表示が可能であり、しかも所望の発光色の光が十分な強度で取り出されることで色再現性に優れたフルカラー表示が可能となる。
【0025】
また、本発明の表示装置の製造方法によれば、各発光素子における発光ユニットを一括形成しながらも、各発光素子から所望の発光色の光を十分な強度で取り出すことが可能な表示装置が得られる。したがって、発光ユニットの共通化によって発光素子の微細化が実現されることで高精細な表示が可能であり、しかも所望の発光色の光が十分な強度で取り出されることで色再現性に優れた表示が可能な表示装置を、より簡便に製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
<表示装置の概要>
図1は、本実施形態に係る表示装置の概略構成を説明する模式図である。すなわち、本実施形態に係る表示装置は、上部電極3と下部電極2との間に機能層10−1、10−2、10−3が配置され、上部電極3と下部電極2との間を共振部として機能層10−1、10−2、10−3で発光した光を共振させて取り出す少なくとも3つの発光素子(有機EL素子EL1、EL2、EL3)を基板1に設けたもので、この少なくとも3つの有機EL素子EL1、EL2、EL3によって1つのピクセルを構成している。図1(a)に示す例では、第1の色に対応した第1の有機EL素子EL1と、第2の色に対応した第2の有機EL素子EL2と、第3の色に対応した第3の有機EL素子EL3の3つによって1つのピクセルが構成されている。
【0028】
このような表示装置において、本実施形態では、1つのピクセルを構成する少なくとも3つの有機EL素子EL1、EL2、EL3の各共振部の光学的距離として、第1の有機EL素子EL1に対応した共振部の光学的距離と、第2の有機EL素子EL2に対応した共振部の光学的距離とが等しく設けられ、第1の有機EL素子ELに対応した共振部の光学的距離と、第3の有機EL素子EL3に対応した共振部の光学的距離とが異なるよう設けられている点に特徴がある。
【0029】
上記のような関係から成る光学的距離を設定するため、図1に示す例では、第1の有機EL素子EL1に対応した機能層10−1と下部電極2との間、および第2の有機EL素子EL2に対応した機能層10−2と下部電極2との間に共通の透明導電膜20aを設け、第3の有機EL素子EL3に対応した機能層10−3と下部電極2との間に上記透明導電膜20aとは高さの異なる別の透明導電膜20bを設けている。
【0030】
つまり、共振部の光学的距離を設定するため、機能層と下部電極との間に透明導電膜を設けているが、3つの発光素子で1つのピクセルを構成する場合、2つの透明導電膜によって光学的距離を設定している。このように、ピクセルを構成する発光素子の数よりも少ない数の透明導電膜によって光学的距離を設定するようにすれば、各発光素子に対して各々高さの異なる透明導電膜を形成する場合に比べて工程数を削減することができるようになる。
【0031】
図1(a)に示す例では3つの発光素子(有機EL素子EL1、EL2、EL3)によって1ピクセルを構成しているが、この場合、第1の色、第2の色、第3の色として、R(赤)、B(青)、G(緑)を用いることでフルカラーの表示装置を構成できる。また、3色より多い発光素子で構成する場合でも適用可能である。上記の3色の他に、シアン、マゼンタ、イエローのうち1つ以上を追加して構成することもできる。特に、自然界ではシアンで表される色が多く存在するため、シアンを追加することで色の表現力を高めることができる。RGBだけでも高純度なものを用いれば100%以上に出来ます。
【0032】
このように、3つより多い発光素子によって構成する場合、例えば、4つの発光素子によって1ピクセルを構成する場合には、透明導電膜として、3つの発光素子に共通な透明導電膜と、残りの1つの発光素子に対応した透明導電膜との2種類であったり、2つの発光素子に共通な透明導電膜と、残りの2つに共通な透明導電膜との2種類であったり、2つの発光素子に共通な透明導電膜と、残りの2つに対応して各々設けられた透明導電膜との3種類が考えられる。
【0033】
同様に、5つ、6つ…の発光素子に対応することも可能である。つまり、n個(nは3以上の整数)の発光素子によって1つのピクセルを構成する場合、透明導電膜の種類としては2種類以上(n−1)種類以下にすることで、本発明の特徴的な構成を実現することができる。
【0034】
なお、図1(a)に示す表示装置では、透明導電膜を用いて発光素子である有機EL素子の共振部における光学的距離を設定しているが、透明導電膜以外で光学的距離を設定してもよい。例えば、機能層を構成する各層の厚さによって調整したり、また、図1(a)に示す透明導電膜20a、20bに対応する部分を下部電極2で構成してもよい。
【0035】
各発光素子である有機EL素子EL1、EL2、EL3の機能層10−1、10−2、10−3は、種々の発光ユニットによって構成される。図1(b)〜(g)は、各機能層の発光ユニットの構成例である。なお、ここではRを赤、Gを緑、Bを青とする。図1(b)に示す例は、2つの発光ユニットを積層したタンデム型であり、下側の発光ユニットがR,Gを発光し、上側の発光ユニットがBを発光する。また、図1(c)に示す例は、図1(b)と同じ2つの発光ユニットによるタンデム型であるが、下側にB、上側にR,Gを発光する発光ユニットが積層されている。また、図1(d)に示す例では、1つの発光ユニットによって構成されるもので、白色を発光するもの、図1(e)は同じ1つの発光ユニットによって構成されるものであるが、特定波長の単色を発光するものである。図1(f)に示す例は3つの発光ユニットを積層したタンデム型であり、下側からG、R、Bの順に積層されている。また、図1(g)に示す例は4つの発光ユニットを積層したタンデム型であり、下側からG、B、R、Bの順に積層されている。
【0036】
なお、図1(b)〜(g)に示す機能層の構成は一例であり、他の構成であってもよい。例えば、発光ユニットを3色以上で構成することも可能である。すなわち、R、G、Bの3色に加え、シアン、マゼンタ、イエローのうち1つ以上を追加して4色以上の構成を行ってもよい。特に、自然界ではシアンで表される色が多く存在するため、シアンを追加することで色の表現力を高めることができる。
【0037】
以下に、本実施形態の具体的構成を説明するが、ここでは図1(g)に示す4つの発光ユニットを積層したタンデム型の機能層を有する発光装置を例として説明する。
【0038】
<表示装置の具体的構成>
図2は本実施形態に係る表示装置の一構成例を模式的に示す断面図である。この図に示す表示装置は、基板1上に、赤(R)、青(B)、緑(G)の各色の光が取り出される各有機EL素子を発光素子として配列形成してなる、フルカラーの表示装置である。ここで、赤(R)に対応した有機EL素子をEL−R、青(B)に対応した有機EL素子をEL−B、緑(G)に対応した有機EL素子をEL−Gとする。
【0039】
各有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gは、基板1側から順に、下部電極2、透明導電膜(透明層)20a、20b、機能層10R、10B、10Gおよび上部電極3を積層した構成となっており、機能層10R、10B、10Gにおいて生じた発光波長を基板1と反対の上部電極3側から取り出す、いわゆるトップエミッション型として構成されている。以下、各部材の詳細な構成を説明する。
【0040】
基板1は、ガラス、シリコン、プラスチック基板、さらには薄膜トランジスタ(TFT)が形成されたTFT基板などからなる。
【0041】
そして、基板1上に設けられた下部電極2は、光反射性に優れた導電性材料を用いてミラーとして構成される。通常、下部電極2は、陽極または陰極として用いられるが、本実施形態においては、この下部電極2上に透明導電膜20a、20bを介して機能層10R、10B、10Gが設けられるため、透明導電膜20a、20bが実質的な陽極または陰極となる。このため、本実施形態においては、下部電極2は、反射性に優れた材料で構成されればよい。
【0042】
また、下部電極2は、この表示装置の駆動方式によって適する形状にパターニングされていることとする。例えば、駆動方式が単純マトリックス型である場合には、この下部電極2は例えばストライプ状に形成される。また、駆動方式が画素毎にTFTを備えたアクティブマトリックス型である場合には、下部電極2は複数配列された各画素に対応させてパターン形成され、同様に各画素に設けられたTFTに対して、これらのTFTを覆う層間絶縁膜に形成されたコンタクトホール(図示省略)を介してそれぞれが接続される状態で形成されることとする。
【0043】
そして、この下部電極2上に設けられた透明導電膜20a、20bは透明電極材料で構成され、特に本実施形態においては、上述したように実質的な陽極または陰極として用いられている。なお、図2においては、透明導電膜20a、20bが陽極として用いられる場合を代表して示しており、例えば、酸化インジウム錫(ITO)を用いて陽極となる透明導電膜20a、20bが設けられていることとする。
【0044】
この透明導電膜20a、20bは、3つの有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gについて、有機EL素子EL−R、EL−Bで同じ透明導電膜20aを用いている。つまり、RとBに対応した光学的距離が(例えば、L=310nm)で等しくなるよう透明導電膜20aがパターニングされている。また、有機EL素子EL−Gに対応した透明導電膜20bはGに対応した光学的距離(例えば、L=240n)となるようパターニングされている。このため、各有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gに設けられる透明導電膜20a、20bは、2種類の厚さ(透明導電膜の光学的距離Lt)を有していれば良いことになる。なお、透明導電膜20a、20bは同一材料で構成されている必要はない。透明導電膜20a、20bの光学的距離Ltの設定については、以降に詳しく説明する。
【0045】
各機能層10R、10B、10Gは、異なる波長の光を発光する複数の発光ユニット11〜14を積層したものから成る。本実施形態では、下部電極2側から緑(G)に対応した第1の発光ユニット11、青(B)に対応した第2の発光ユニット12、赤(R)に対応した第3の発光ユニット13、青(B)に対応した第4の発光ユニット14の順に積層されている。ここでは、一般にcd/A(単位電流当たりの光度)で表される発光効率が最も低い青に対応した発光ユニットを他の波長の発光ユニットよりも多い2層にしている。
【0046】
図3は、透明導電膜上に積層される機能層の詳細を説明する模式断面図である。機能層10(図2に示す機能層10R、10B、10Gの各々に対応)は、複数の発光ユニット(図2では、11、12のみ表示)が積層されたもので、主として有機材料で構成された複数層からなる。一つの発光ユニット(例えば、発光ユニット11)は、例えば、下部電極2側から順に、正孔注入層61、正孔輸送層62、発光層(有機層)11a、電荷輸送層72、電荷注入層71によって構成され、接続層80を介して繰り返すことで他の発光ユニット12および他の発光ユニット13、14(図2参照)も構成されている。接続層80は各発光ユニットを接続するための層であり、電荷発生層であったり、電荷発生層を含む層である。
【0047】
このような構成により、陽極である上部電極3から注入された正孔と接続層80において発生した電子が有機層で結合し、同時に陰極から注入された電子と接続層80において発生した正孔が発光ユニット11、12…で結合する際に所定波長の光を発生する。図2に示す各機能層10R、10B、10Gの各発光ユニットは同一構成で設けられている。また、この機能層10R、10B、10Gの各有機層は、対応する層の厚さがほぼ等しく設けられている。つまり、対応する各層は同一工程で形成されることになる。また、機能層10R、10B、10Gの各有機層は、各画素毎にパターン形成されていても良いし、ベタ膜状に形成されていても良い。
【0048】
各発光ユニット間に配置される接続層は、電荷注入層71、電荷発生層80、正孔注入層61からなるが、電荷注入層71が電荷発生層80を兼ねても良く、また、正孔注入層61が無くても良く、2層で構成される場合もある。電荷発生層80の構成は、有機層によって構成される有機電界発光素子の電子輸送層62と有機層によって構成される正孔注入層61の特性によって適宜選択される。
【0049】
一般的には、特開2003−45676号公報および特開2003−272860号公報に記載されているV2O5等の材料を電荷発生層として用いて接続層を構成することが多いが、この構成以外にも薄膜内で電子−正孔を発生させることができる構成であれば、これに限ったものではない。
【0050】
ここで、本実施形態の表示装置においてフルカラー表示を得るためには、有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gによって構成されるピクセルを複数配列し、各ピクセルにおいて生じる発光光が、赤、青、緑の波長領域で各々発光強度を有していることが必要である。特に、赤、青、緑として認識される所望の波長領域に発光強度の極大を持ち、不要な波長領域の発光強度が小さい構成の機能層10R、10B、10Gであることが好ましい。このような機能層10R、10B、10Gを用いることにより、必要な発光領域の光の取り出し効率が高く、色純度が高い表示装置が得られる。また、赤、青、緑に対応する光取り出しの極大値は、視野角特性等を考慮して適宜決定される。
【0051】
なお、機能層10R、10B、10Gの膜厚(光学的距離Lf)は、透明導電膜とを合わせた下部電極2と上部電極3との間が、目的とする波長を共振させる共振部となるように、以降に詳細に説明するように設定されていることが重要となる。
【0052】
そして、このような機能層10R、10B、10Gの上部に設けられた上部電極3は、ハーフミラーとして構成され、上述した下部電極2(透明導電膜20a、20b)が陽極である場合には陰極として用いられ、下部電極2(透明導電膜20a、20b)が陰極である場合には陽極として用いられる。上部電極3が陽極として用いられる場合、上部電極2を構成する材料としては、ニッケル、銀、金、白金、パラジウム、セレン、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、レニウム、タングステン、モリブデン、クロム、タンタル、ニオブやこれらの合金、あるいは酸化錫(SnO2)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛、酸化チタン等の仕事関数が大きい導電性材料が選択して用いられる。
【0053】
また、この上部電極3が陰極として用いられる場合(図2の場合)、上部電極3を構成する材料としては、例えば、Li、Mg、Ca等の活性な金属とAg、Al、In等の金属との合金等の仕事関数が小さい導電性材料が選択して用いられ、これらを積層した構造としても良い。また、機能層10R、10B、10Gとの間に例えば、Li、Mg、Ca等の活性な金属とフッ素、臭素等のハロゲンや酸素等との化合物層を薄く挿入した構造としても良い。なお、上部電極3は、機能層10R、10B、10Gで生じた発光を取り出す側となるハーフミラーとして用いられるため、その光透過率が膜厚等で調整されていることとする。
【0054】
また、上部電極3は、この表示装置が、単純マトリックス型である場合には、下部電極2のストライプと交差するストライプ状に形成され、これらが交差して積層された部分が有機EL素子となる。また、この表示装置が、アクティブマトリックス型である場合には、上部電極3は、基板1上の一面を覆う状態で成膜されたベタ膜状で良く、各ピクセルに共通の電極として用いられることとする。
【0055】
そして、この上部電極3と上述した下部電極2との間には、図3に示すように電流注入用の駆動電源が接続されていることとする。
【0056】
次に、各有機EL素子における下部電極2と上部電極3との間の共振部の光学的距離Lおよび、透明導電膜20a、20bの光学的距離Ltについて説明する。
【0057】
すなわち、各有機EL素子において、下部電極2と上部電極3との間の共振部の光学的距離Lは、それぞれの有機EL素子に設定した所望の波長領域の光が共振部の両端で共振する値にそれぞれ設定されている。このため、例えば、共振部の両端において発光ユニット11〜14で発生した発光光が反射する際に生じる位相シフトをΦラジアン、共振部の光学的距離をL、発光ユニット11〜14で発生した発光光のうちの取り出したい光のスペクトルのピーク波長をλとした場合、下記式(1)をほぼ満たす範囲で共振部の光学的距離Lが構成されていることとする。
【0058】
(2L)/λ+Φ/(2π)=m(mは整数) …(1)
【0059】
この際、機能層10Bについては、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λとして青色の領域内にピーク波長(例えばλ=460nm)を設定し、共振部の光学的距離Lを算出する。また、機能層10Gについては、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λとして緑色の領域内にピーク波長(例えばλ=530nm)を設定して、共振部の光学的距離Lを算出する。さらに、機能層10Rについては、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λとして赤色の領域内にピーク波長(例えばλ=630nm)を設定して、共振部の光学的距離Lを算出する。
【0060】
なお、各共振部の光学的距離Lは、上記式(1)を満たす値であれば良い。
【0061】
そして、各機能層10R、10B、10Gは、発光ユニット11〜14を含む同一層で構成されているため、共振部の光学的距離Lは、各透明導電膜20a、20bの光学的距離Ltによって調整されていることとする。したがって、透明導電膜20a、20bの光学的距離をLt、発光ユニット11〜14を含む機能層10R、10B、10Gの光学的距離をLfとした場合、下記式(2)を満たすように各機能層10R、10B、10Gの透明導電膜10a、20bの光学的距離Lt(膜厚)が設置されていることとする。
【0062】
L=Lt+Lf …(2)
ただし、LfはLより小さい一定値であることとする。
【0063】
なお、このような構成の表示装置にカラーフィルタ4を組み合わせて設ける場合には、各機能層10R、10B、10Gから取り出したいスペクトルのピーク波長λ近傍の光のみを透過するカラーフィルタ4R、4B、4Gを、それぞれの機能層10R、10B、10Gの光取り出し面側に設けることとする。
【0064】
以上説明した構成の表示装置によれば、同一層で形成された機能層10R、10B、10Gを有する各有機EL素子のそれぞれが、赤、青、緑の各波長を共振させる共振器構造として構成されている。これにより、同一構成の繰り返し発光ユニットを含む機能層10R、10B、10Gを用いながらも、各有機EL素子から赤、青、緑の各波長の光のみを多重干渉によって強めて取り出すことが可能になるため、フルカラー表示が行われる表示装置が構成される。
【0065】
そして、各有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gから取り出される光は、それぞれの有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gの共振部で共振されて取り出されるため、赤、青、緑に対応する所望の波長領域の光のみが十分な強度で取り出されることになる。したがって、色再現性に優れたフルカラー表示が可能となる。
【0066】
しかも、上述したように、各有機EL素子においては、発光ユニット11〜14を含む機能層10R、10B、10G全体が同一層で構成されているため、金属マスクを用いた蒸着法や転写法、インクジェット法等によって形成される機能層10R、10B、10Gを、有機EL素子EL−R、EL−B、EL−G毎に作り分けたものとする必要がない。このため、機能層10R、10B、10Gを作り分ける際に必要となる各機能層間の合わせ裕度を画素間に設定する必要もなくなり、画素間ピッチが狭められる。
【0067】
なお、各機能層10R、10B、10Gにおける光学的距離Lは、2つの透明導電膜20a、20bの光学的距離Ltによって調整されるため、RおよびBに対応した透明導電膜20aを作り分ける必要が生じない。これにより、透明導電膜を形成する際の工程を簡素化することができる。
【0068】
ここで、透明電極膜20a、20bはリソグラフィ処理によって形成したレジストパターンをマスクに用いたエッチングによってパターン形成されるため、金属マスクを用いたパターン形成やインクジェットによるパターン形成が必要となる機能層10R、10B、10Gと比較して、パターニング精度が良好である。
【0069】
そして、以上のように画素間の微細化が実現されることにより、高精細なフルカラー表示が可能となる。
【0070】
また、発光ユニット11〜14が同一層からなるため、特定の色の有機EL素子の駆動電圧が他色と比べて特異的に高くなるといった現象が生じることもなく、各色の有機EL素子の駆動条件が異なることを考慮した駆動回路設計を行う必要もない。
【0071】
<表示装置の製造方法>
次に、上述した構成の表示装置の製造方法を説明する。
【0072】
先ず、基板1上に、下部電極2を構成する電極材料膜を成膜し、この電極材料膜上に、それぞれの画素部に形成される有機EL素子毎に設定された光学的距離Ltを有する各透明導電膜20a、20bをパターン形成する。これらの各透明導電膜20a、20bのパターン形成方法は特に限定されることはないが、各透明導電膜20a、20bが同一材料からなる場合には、例えば次のように行う。
【0073】
先ず、最も光学的距離Ltが小さい透明導電膜20bの膜厚と同一の膜厚で第1透明導電材料膜を形成し、機能層10Gが配置される画素のみを覆う状態で第1レジストパターンを形成する。次に、第1透明導電材料膜の上に膜厚が透明導電膜20aと同一となるように第2透明導電材料膜を形成し、機能層10R、10Bが配置される画素のみを覆う状態で第2レジストパターンを形成する。
【0074】
次いで、第2レジストパターンをマスクにして第2透明導電材料膜をエッチングする。続けて、第1レジストパターンが露出したところで、第1レジストパターンおよび第2レジストパターンをマスクにして第1透明導電材料膜をエッチングする。これにより、第1レジストパターンの下には第1透明導電膜からなる透明導電膜20bがパターン形成され、第2レジストパターンの下には第1透明導電膜および第2透明導電膜からなる透明導電膜20aがパターン形成されることになる。
【0075】
本実施形態に係る製造方法では、R,B,Gに対応した3つの有機EL素子をピクセルとして用いるが、光学的距離を調整するための透明導電膜としてR、Bに対応するものを同じ厚さのもの(同じ透明導電膜20a)を用いることから、Gに対応した透明導電膜20bと合わせて2種類の厚さからなる透明導電膜20a、20bを形成すればよいことになる。つまり、各色の有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gに合わせて厚さの異なる透明導電膜を形成する必要がないことから、製造工程の簡素化や、厚さ管理を容易にすることが可能となる。
【0076】
以上のようにして透明導電膜20a、20bをパターン形成した後、さらに第1、第2レジストパターンをマスクに用いて電極材料膜をエッチングして下部電極2をパターン形成する。
【0077】
その後、パターン形成された透明導電膜20a、20bおよび下部電極2を覆う状態で、基板1上に正孔輸送層、発光層および電子輸送層を含む発光ユニット11〜14を順次積層形成し、各画素に同一層からなる機能層10R、10B、10Gを一括形成する。これらの各層は、周知の方法にて合成された各有機材料を用いて、真空蒸着やスピンコートなどの周知の方法を適用して、各機能層に対応した各層を同一工程で形成することができる。そして最後に、上部電極3を積層形成することにより、上述した構成の有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gを配列形成してなる表示装置を得ることができる。
【0078】
以上説明した製造方法によれば、上述した構成の表示装置の製造において、各色の有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gに対応した機能層10R、10B、10Gを一括形成することにより、機能層10R、10B、10Gの設計を含む製造工程数の削減を図ることができる。したがって、機能層10R、10B、10Gの共通化によって発光素子の微細化が実現されることで高精細な表示が可能であり、しかも所望の発光色の光が十分な強度で取り出されることで色再現性に優れた表示が可能な表示装置を、より簡便に製造することが可能になる。
【0079】
なお、以上説明した実施形態においては、図2を用いて発光光を基板1と反対の上部電極3側から取り出す、いわゆるトップエミッション型の表示装置の構成およびその製造方法を説明した。しかしながら、本発明は、基板1側から発光光を取り出す、いわゆるボトムエミッション型の表示装置にも適用される。この場合、基板1上に設けられる下部電極2は光反射性の材料を用いてハーフミラーとして構成され、上部電極3は光反射性の良好な材料を用いてミラーとして構成されること以外は、上述した実施形態と同様の構成として良く、同様の効果を得ることができる。ただし、表示装置の駆動方式としてアクティブマトリックス型を採用する場合には、図2に示したトップエミッション型を用いることで素子の開口率を向上させることが好ましい。
【0080】
また、上述した実施形態においては、下部電極2上に透明導電膜20a、20bを設けた構成としたが、透明導電膜20a、20bは機能層10R、10B、10Gと上部電極3との間に設けられても良い。この場合、下部電極2が実質的な陽極または陰極となり、上部電極3に変わって透明電極20a、20bが実質的な陰極または陽極となる。また、上述した実施形態においては、透明導電膜20a、20bはリソグラフィを用いてパターン形成したが、蒸着マスクや、インクジェット等の方法を用いてパターン形成してもよい。
【0081】
さらに、上述した実施形態においては、下部電極2と上部電極3とをミラーとハーフミラーとしてこの間を共振部とした各有機EL素子を用いた例を説明した。しかしながら、本発明の表示装置は、このような構成に限定されることはない。すなわち、下部電極2または上部電極3をミラーとし、機能層10R、10B、10Gを構成する何れかの層をハーフミラーとし、これらのミラーとハーフミラーとの間に同一層からなる発光ユニット11〜14を狭持させ、これらのミラーとハーフミラーとの間に狭持された発光ユニット11〜14以外の機能層の膜厚によって共振部の光学的距離を調整した構成であっても良い。また、ミラーやハーフミラーは上部電極3または下部電極2の外側から発光ユニット11〜14を狭持する構成であってもよい。このような場合であっても、発光ユニット11〜14を同一層として製造工程の簡便化を図ることが可能である。また、各有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gの共振部における光学的距離の設定に透明導電膜20a、20bを用いているが、透明導電膜を用いないで発光ユニット11〜14の層厚によって調整する構成や、例えば透明導電膜20aのみを用いて20bを用いない構成でも良い。
【実施例】
【0082】
次に、本発明の具体的な実施例、および実施例に対する比較例の表示装置の製造手順を説明し、その後これらの評価結果を説明する。
【0083】
<実施例の表示装置の作製>
実施例では、図2を用いて説明したフルカラー表示を行うトップエミッション型の表示装置を、次のように作製した。
【0084】
先ず、ガラス板からなる基板1上に、ミラーとなる陽極としてAPC(Ag-Pd-Cu)(膜厚約100nm)からなる下部電極2と、各膜厚のITOからなる透明導電膜20a、20bをパターン形成した。次に、透明導電膜20a、20bの表面中央部における2mm×2mmの発光領域以外を絶縁膜(図示省略)でマスクした有機EL素子用のセルを作製した。
【0085】
次に、各発光領域となる透明導電膜20a、20bの露出部上に開口を有する金属マスクを基板1上に近接して配置し、10-4Pa以下の真空下での真空蒸着法により、緑、青、赤、青(以下、GBRBのように表す)の順で発光ユニット11〜14を、透明導電膜20a、20bおよび絶縁膜の上部に積層し、機能層10R、10B、10G形成した。各発光ユニット11〜14の膜厚は適当な値を選択すればよいが、発光に十分な膜厚を確保できることが望ましい。今回の場合、各発光ユニット11〜14の膜厚は50nm〜70nmの範囲でほぼ均等になるようにした。
【0086】
その後、ハーフミラーとなる陰極として、MgとAgの共蒸着比10:1の薄膜を9nmの膜厚で成膜し、さらにITOを150nmの膜厚で成膜して上部電極3を形成し、実施例の表示装置を得た。
【0087】
なお、実施例の表示装置においては、R,B,Gの各有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gから赤:波長λ=630nm、青:波長λ=460nm、緑:波長λ=530nmの光の取り出しが十分大きくなるように、上述した式(1)を満たす共振部の光学的距離Lのうちの最小値となる光学的距離Lを設定した。そして、機能層10R、10B、10Gの膜厚を220nmとし、上述した式(2)を満たすように、各透明導電膜20a、20bの光学的距離Ltを、Lt(赤)=80nm、Lt(青)=80nm、Lt(緑)=10nmに設定した。
【0088】
<比較例の表示装置の作製>
比較例では、実施例と同一の材料を使用した機能層を用いており、各色の固有の波長に最適化されていない積層順で各機能層における複数の発光ユニットを積層した。複数の発光ユニットの積層順をGRBB、およびBRBGとした以外は、全ての工程を実施例と同一として、比較例1および比較例2の表示装置を得た。
【0089】
<評価結果>
以上の様にして作製した実施例および比較例の表示装置について、各有機EL素子からの取り出し光のスペクトルを測定した。
【0090】
図4、図5は、実施例の表示装置の各有機EL素子からの取り出し光のスペクトルである。図4に緑色領域この発光波長が取り出されているL=240nmの場合、図5に青および赤色領域の発光波長が取り出されているL=310nmの場合を示した。各図の縦軸は、光共振が行われていない場合の発光強度からの相対強度を示している。これらの図から、青、緑、赤の波長領域でスペクトルの発光強度が大きく異なり、B,G,R各有機EL素子から取り出したい波長領域の光が多重干渉効果によって選択的に取り出されていることが確認された。
【0091】
なお、この場合、青と赤は光学的距離を同一にしているため、両方の色が発光されている。図5からわかるように、今回の例では緑色領域の発光強度に大きな依存性はないものの、青、赤の発光強度には大きな差が生じることがわかった。
【0092】
つまり、本実施例のように、機能層における発光ユニットの積層順(発光位置)をGBRBにすることで、赤、青、緑の全てにおいて選択的に光を取り出せることが可能となる。なお、上記のように青と赤とでは光学的距離を同一にしているため、赤の発光強度が他の色に比べて小さくなっているものの、相対強度で50%以上となっていることで、十分選択的に取り出すことができる。
【0093】
そして、図6、7、8には、このような表示装置における発光面側に、G、B、R各有機EL素子に対応させて、それぞれの色の波長のみを透過する各色のカラーフィルタを設けた場合のシミュレーション結果を示す。各図に示すように、カラーフィルタを組み合わせて設けることにより、実施例のスペクトルの不要な波長領域成分が減少され、B,G,R各有機EL素子から取り出される青、緑、赤の光の色純度が向上することが確認された。また、光学的距離が同一であるため、青と赤が発光される画素においては、カラーフィルタによって青、あるいは赤の画素として使用できることが分かる。
【0094】
一方、図9、図10は、実施例、比較例の表示装置における各有機EL素子からの取り出し光強度を表した図である。これらの図から、各波長領域において、発光ユニットの積層順に対して、光取り出しやすさに大きな差があることがわかる。各図の縦軸に、光共振が起こらない場合を1とした相対的な光取り出しやすさを示す。また、図11に各波長領域において、光取り出しが極大になる場合を1としたときの相対的な光取り出しやすさの指標を示す。この図から、積層順をGBRBとすることにより、フルカラーに必要なRGB3色について、光取り出しが良好に行われていることがわかる。
【0095】
以上から、本発明による表示装置は、簡便で精度の高い製造プロセスを使用しながらも、十分な発光効率と、色純度を併せ持つ発光素子を使用した装置となった。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本実施形態に係る表示装置の概略構成を説明する模式図である。
【図2】本実施形態に係る表示装置の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図3】透明導電膜上に積層される機能層の詳細を説明する模式断面図である。
【図4】実施例の表示装置の各有機EL素子からの取り出し光のスペクトル(L=240nm)を示す図である。
【図5】実施例の表示装置の各有機EL素子からの取り出し光のスペクトル(L=310nm)を示す図である。
【図6】各色のカラーフィルタを設けた場合のシミュレーション結果を示す図(その1)である。
【図7】各色のカラーフィルタを設けた場合のシミュレーション結果を示す図(その2)である。
【図8】各色のカラーフィルタを設けた場合のシミュレーション結果を示す図(その3)である。
【図9】各有機EL素子からの取り出し光強度を表した図(その1)である。
【図10】各有機EL素子からの取り出し光強度を表した図(その2)である。
【図11】各波長領域において、光取り出しが極大になる場合を1としたときの相対的な光取り出しやすさの指標を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1…基板、2…下部電極、3…上部電極、4…カラーフィルタ、10R、10B、10G…機能層、11…第1の発光ユニット、12…第2の発光ユニット、13…第3の発光ユニット、14…第4の発光ユニット、20a…透明導電膜、20b…透明導電膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置およびその製造方法に関し、特には有機EL素子のような発光素子を基板上に配列形成してなり、所望の発光色を選択的に取り出すことができる面発光型の表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラウン管(CRT)に代わる表示装置として、軽量で消費電力の小さいフラット表示装置の研究、開発が盛に行われている。このうち、無機EL素子や有機EL素子などの自発光型の表示素子(いわゆる発光素子)を用いた表示装置は、低消費電力での駆動が可能な表示装置として注目されている。
【0003】
このような発光素子を用いた表示装置をフルカラー化する構成としては、たとえば(1)青、緑、赤に発光する発光素子を配列した構成、(2)白色発光素子にカラーフィルタを組み合わせた構成、(3)白色または青色発光素子に色変換フィルタを組み合わせる構成等が提案されている。
【0004】
上記(1)に係る構成では、発光層を含む機能層がパターン形成されるが、精度に限界があり、発光素子および発光素子間の微細化や大型化が困難である。
【0005】
これに対して、上記(2)および(3)の構成では、各発光素子において同一の波長領域の光を発光させれば良いため、発光層を含む機能層を色毎に作り分ける必要はない。このため、各発光素子の設計を含む製造工程は(1)に係る構成と比較して簡便である。ところが、(2)の構成ではカラーフィルタで不要な発光成分を吸収するため、発光効率が低下し、消費電力や素子寿命にとって負荷が大きい。さらに、一般的に量産可能なカラーフィルタの透過特性では、発光素子での白色発光を色純度よく青、緑、赤にフィルタリングすることができず、取り出し光は波長分布の広い色再現性に乏しい表示装置しかできない。
【0006】
また、上記(3)の構成では色変換フィルタの変換効率が低いこと、色変換フィルタの製造が困難なこと、色変換フィルタの寿命、色変換後の発光色の色純度等に課題があり実用化が困難である。
【0007】
一方で、従来の表示装置は、各色(赤(R),緑(G),青(B))の自発光素子を有する発光ユニット数の最適化がなされておらず、発光効率の悪い色の表示画素から必要な輝度を得るためには、他の発光効率の良い色の表示画素よりも大きな電流を流さなければならない。それによって、発光効率の悪い色の表示画素の寿命が短くなってしまい、各色の劣化速度が異なることにより、ホワイトバランスのズレが生じる。
【0008】
この問題を解決するために、各色の表示画素のうちいずれかの色の表示画素の発光面積を、他の色の表示画素の発光面積と異ならせることにより、各自発光素子の発光効率、劣化速度の違いによるホワイトバランスのズレを軽減させることが提案されている(特許文献1)。
【0009】
また、RGBの発光ユニットを接続層を介して積層することによりタンデム型白色素子とし、カラーフィルタを用いてフルカラー化する方法も提案されている。例えば、特許文献2において、色の異なるサブピクセルを上下に積層し、RGBの発光面積を調節し、最適化することが提案されている。
【0010】
【特許文献1】特開2001−290441号公報
【特許文献2】特開2004−79538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、陽極と陰極との間で発光ユニットが発した光を共振させる共振器構造の表示装置では、共振部の光学的距離を正確に設定するのが困難である。また、RGBの積層タンデム白色素子を適用した場合、RGB各色の位置設定により、最終的な光取り出し量が大きく異なるため、発光ユニットの積層順、また発光ユニット数の設定が非常に重要となる。特許文献2においては、積層順による光の取り出し易さについての記述はない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものである。すなわち、本発明は、上部電極と下部電極との間に機能層が配置され、上部電極と下部電極との間を共振部として機能層で発光した光を共振させて取り出す発光素子を備えており、異なる波長に対応させた少なくとも3つの発光素子を組みとしてピクセルを構成する表示装置において、ピクセルを構成する第1の発光素子における共振部の光学的距離と第2の発光素子における共振部の光学的距離とが等しくなるよう設けられ、第1の発光素子における前記共振部の光学的距離と第3の発光素子における共振部の光学的距離とが異なるよう設けられているものである。
【0013】
このような本発明では、少なくとも3つの発光素子を組みとするピクセルを備えた共振器構造の表示装置において、第1の発光素子における共振部の光学的距離と第2の発光素子における共振部の光学的距離とが等しくなるよう設けられ、第1の発光素子における前記共振部の光学的距離と第3の発光素子における共振部の光学的距離とが異なるよう設けられているため、光学的距離として2種類を設定すればよいことから、容易かつ正確に共振器構造の表示装置を実現できるようになる。
【0014】
ここで、発光ユニットとは、従来の有機EL素子を構成する要素のうち、陰極と陽極を除いた構成要素、つまり発光層単層や、発光層に電子注入層や電子輸送層、正孔注入層や正孔輸送層などを含む複数層であり、1色もしくは多色に対応した光を発生させる層の単位である。また、機能層とは従来型(単一発光ユニットを持つ形態)、タンデム型を問わず、有機EL素子中の陰極と陽極を除いた層単位である。この機能層と上部電極および下部電極(透明導電膜等の透明膜も含む)を含む構成を発光素子と言う。また、この発光素子が3つ以上基板に配列されることで1ピクセルを構成し、このピクセルが例えばマトリクス状に配置されることで面状の表示装置となる。
【0015】
発光素子における共振部は、例えば、光反射材料からなるミラーと光半透過性のハーフミラーとの間に少なくとも機能層が挟持された構成であり、この機能層の発光ユニットで発光した光をミラーとハーフミラーとの間で共振させてハーフミラー側から取り出すようにしている。ハーフミラーとしては、所定の反射率、透過率を備えた無機膜、有機膜や、発光ユニットとして用いられる有機膜との間で屈折率が異なるほぼ透明の膜が用いられる。また、共振部での共振としては、相対強度が高まるもののほか、相対強度がそれほど高くならない干渉状態も含むものとする。そして、各色の発光ユニットは発光効率が低い順番に光取り出しが容易な位置に設定されている。
【0016】
このような構成の表示装置では、発光ユニットとして同一構成の積層有機層を用い、各発光素子に設定されたミラーとハーフミラーとの間の共振部の光学的距離に対応する波長領域の光が共振によって強められた状態で取り出される。このため、同一構成の発光ユニットを持つ発光素子を用いながらも、所望の発光波長の取り出し効率が十分な大きさとなるように各発光素子におけるミラーとハーフミラーの間の光学的距離および積層順、ならびに位置を設計することで、各発光素子からは異なる発光色の光を取り出すことができる。
【0017】
したがって、青、緑、赤の発光が十分な強度を持って取り出されるようにミラーとハーフミラーとの間の光学的距離が調整された各発光素子を配列させることで、フルカラー表示の表示装置となる。
【0018】
また、各発光素子において、各色の発光ユニットを同一素子内で構成したことにより、発光ユニットを含む機能層の全体を同一にできる。このため、機能層全体を発光素子の発光色毎に作り分ける必要がなくなり、機能層を作り分ける際に必要となる各機能層間の合わせ裕度を発光素子間に設定する必要もなくなり、画素間ピッチを狭められ、高開口率化が可能になる。
【0019】
そして、発光ユニットを含む機能層全体を同一層で構成した場合、ミラーとハーフミラーとを電極として構成し、これらの間に機能層と共に透明導電膜(透明層)を狭持させる。この透明導電膜は、ミラーとハーフミラーとの間の光学的距離を調整するための調整層として用いられる。なお、ここで用いる透明とは、特定の波長に対して十分な透過率を有することを言う。透明導電膜は、リソグラフィ処理によって形成したレジストパターンをマスクに用いたエッチングによってパターン形成されるため、金属マスクを用いたパターン形成やインクジェットによるパターン形成が必要となる機能層と比較して、パターニング精度良好に形成されたものとなる。
【0020】
また本発明の表示装置の製造方法は、下部電極の上に機能層を形成し、その機能層の上に上部電極を形成して、上部電極と下部電極との間を共振部とする発光素子を構成する製造方法であり、異なる波長に対応させた少なくとも3つの発光素子を組みとしてピクセルを構成するにあたり、ピクセルの第1の発光素子における共振部の光学的距離と第2の発光素子における共振部の光学的距離とが等しくなるよう構成し、第1の発光素子における共振部の光学的距離と第3の発光素子における共振部の光学的距離とが異なるよう構成する方法である。
【0021】
このような本発明では、少なくとも3つの発光素子を組みとするピクセルを備えた共振器構造の表示装置を製造する場合、第1の発光素子における共振部の光学的距離と第2の発光素子における共振部の光学的距離とが等しくなり、第1の発光素子における共振部の光学的距離と第3の発光素子における共振部の光学的距離とが異なっているため、2種類の光学的距離の設定で済むことから、共振器構造の表示装置を正確かつ容易に実現できるようになる。
【0022】
ここで、例えば、光反射材料からなるミラーと光半透過性のハーフミラーとの間に少なくとも発光ユニットを含む機能層を挟持して共振部を構成する場合、基板上の各発光素子形成領域にミラーまたはハーフミラーを形成した後、光学的距離の異なる透明導電膜(透明層)をパターン形成する工程と前記発光ユニットを一括形成する工程とをこの順または逆の順に行う。
【0023】
このような製造方法では、各発光素子形成領域のミラーまたはハーフミラー上に、一括形成されることで同一の構成となる発光ユニットと、異なる光学的距離を有する透明導電膜との積層体が設けられ、かつ各色の発光ユニットの積層順が最適化された発光素子が形成される。そして、機能層を一括形成した同一層としたことにより、全体を一括形成することもでき、機能層の設計を含む製造工程数の削減が図られる。
【発明の効果】
【0024】
したがって、本発明の表示装置によれば、各発光素子における発光ユニットを共通化しながらも、各発光素子から所望の発光色の光を十分な強度で取り出すことが可能となる。したがって、発光ユニットの共通化によって発光素子および発光素子間の微細化が実現されることで高精細な表示が可能であり、しかも所望の発光色の光が十分な強度で取り出されることで色再現性に優れたフルカラー表示が可能となる。
【0025】
また、本発明の表示装置の製造方法によれば、各発光素子における発光ユニットを一括形成しながらも、各発光素子から所望の発光色の光を十分な強度で取り出すことが可能な表示装置が得られる。したがって、発光ユニットの共通化によって発光素子の微細化が実現されることで高精細な表示が可能であり、しかも所望の発光色の光が十分な強度で取り出されることで色再現性に優れた表示が可能な表示装置を、より簡便に製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
<表示装置の概要>
図1は、本実施形態に係る表示装置の概略構成を説明する模式図である。すなわち、本実施形態に係る表示装置は、上部電極3と下部電極2との間に機能層10−1、10−2、10−3が配置され、上部電極3と下部電極2との間を共振部として機能層10−1、10−2、10−3で発光した光を共振させて取り出す少なくとも3つの発光素子(有機EL素子EL1、EL2、EL3)を基板1に設けたもので、この少なくとも3つの有機EL素子EL1、EL2、EL3によって1つのピクセルを構成している。図1(a)に示す例では、第1の色に対応した第1の有機EL素子EL1と、第2の色に対応した第2の有機EL素子EL2と、第3の色に対応した第3の有機EL素子EL3の3つによって1つのピクセルが構成されている。
【0028】
このような表示装置において、本実施形態では、1つのピクセルを構成する少なくとも3つの有機EL素子EL1、EL2、EL3の各共振部の光学的距離として、第1の有機EL素子EL1に対応した共振部の光学的距離と、第2の有機EL素子EL2に対応した共振部の光学的距離とが等しく設けられ、第1の有機EL素子ELに対応した共振部の光学的距離と、第3の有機EL素子EL3に対応した共振部の光学的距離とが異なるよう設けられている点に特徴がある。
【0029】
上記のような関係から成る光学的距離を設定するため、図1に示す例では、第1の有機EL素子EL1に対応した機能層10−1と下部電極2との間、および第2の有機EL素子EL2に対応した機能層10−2と下部電極2との間に共通の透明導電膜20aを設け、第3の有機EL素子EL3に対応した機能層10−3と下部電極2との間に上記透明導電膜20aとは高さの異なる別の透明導電膜20bを設けている。
【0030】
つまり、共振部の光学的距離を設定するため、機能層と下部電極との間に透明導電膜を設けているが、3つの発光素子で1つのピクセルを構成する場合、2つの透明導電膜によって光学的距離を設定している。このように、ピクセルを構成する発光素子の数よりも少ない数の透明導電膜によって光学的距離を設定するようにすれば、各発光素子に対して各々高さの異なる透明導電膜を形成する場合に比べて工程数を削減することができるようになる。
【0031】
図1(a)に示す例では3つの発光素子(有機EL素子EL1、EL2、EL3)によって1ピクセルを構成しているが、この場合、第1の色、第2の色、第3の色として、R(赤)、B(青)、G(緑)を用いることでフルカラーの表示装置を構成できる。また、3色より多い発光素子で構成する場合でも適用可能である。上記の3色の他に、シアン、マゼンタ、イエローのうち1つ以上を追加して構成することもできる。特に、自然界ではシアンで表される色が多く存在するため、シアンを追加することで色の表現力を高めることができる。RGBだけでも高純度なものを用いれば100%以上に出来ます。
【0032】
このように、3つより多い発光素子によって構成する場合、例えば、4つの発光素子によって1ピクセルを構成する場合には、透明導電膜として、3つの発光素子に共通な透明導電膜と、残りの1つの発光素子に対応した透明導電膜との2種類であったり、2つの発光素子に共通な透明導電膜と、残りの2つに共通な透明導電膜との2種類であったり、2つの発光素子に共通な透明導電膜と、残りの2つに対応して各々設けられた透明導電膜との3種類が考えられる。
【0033】
同様に、5つ、6つ…の発光素子に対応することも可能である。つまり、n個(nは3以上の整数)の発光素子によって1つのピクセルを構成する場合、透明導電膜の種類としては2種類以上(n−1)種類以下にすることで、本発明の特徴的な構成を実現することができる。
【0034】
なお、図1(a)に示す表示装置では、透明導電膜を用いて発光素子である有機EL素子の共振部における光学的距離を設定しているが、透明導電膜以外で光学的距離を設定してもよい。例えば、機能層を構成する各層の厚さによって調整したり、また、図1(a)に示す透明導電膜20a、20bに対応する部分を下部電極2で構成してもよい。
【0035】
各発光素子である有機EL素子EL1、EL2、EL3の機能層10−1、10−2、10−3は、種々の発光ユニットによって構成される。図1(b)〜(g)は、各機能層の発光ユニットの構成例である。なお、ここではRを赤、Gを緑、Bを青とする。図1(b)に示す例は、2つの発光ユニットを積層したタンデム型であり、下側の発光ユニットがR,Gを発光し、上側の発光ユニットがBを発光する。また、図1(c)に示す例は、図1(b)と同じ2つの発光ユニットによるタンデム型であるが、下側にB、上側にR,Gを発光する発光ユニットが積層されている。また、図1(d)に示す例では、1つの発光ユニットによって構成されるもので、白色を発光するもの、図1(e)は同じ1つの発光ユニットによって構成されるものであるが、特定波長の単色を発光するものである。図1(f)に示す例は3つの発光ユニットを積層したタンデム型であり、下側からG、R、Bの順に積層されている。また、図1(g)に示す例は4つの発光ユニットを積層したタンデム型であり、下側からG、B、R、Bの順に積層されている。
【0036】
なお、図1(b)〜(g)に示す機能層の構成は一例であり、他の構成であってもよい。例えば、発光ユニットを3色以上で構成することも可能である。すなわち、R、G、Bの3色に加え、シアン、マゼンタ、イエローのうち1つ以上を追加して4色以上の構成を行ってもよい。特に、自然界ではシアンで表される色が多く存在するため、シアンを追加することで色の表現力を高めることができる。
【0037】
以下に、本実施形態の具体的構成を説明するが、ここでは図1(g)に示す4つの発光ユニットを積層したタンデム型の機能層を有する発光装置を例として説明する。
【0038】
<表示装置の具体的構成>
図2は本実施形態に係る表示装置の一構成例を模式的に示す断面図である。この図に示す表示装置は、基板1上に、赤(R)、青(B)、緑(G)の各色の光が取り出される各有機EL素子を発光素子として配列形成してなる、フルカラーの表示装置である。ここで、赤(R)に対応した有機EL素子をEL−R、青(B)に対応した有機EL素子をEL−B、緑(G)に対応した有機EL素子をEL−Gとする。
【0039】
各有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gは、基板1側から順に、下部電極2、透明導電膜(透明層)20a、20b、機能層10R、10B、10Gおよび上部電極3を積層した構成となっており、機能層10R、10B、10Gにおいて生じた発光波長を基板1と反対の上部電極3側から取り出す、いわゆるトップエミッション型として構成されている。以下、各部材の詳細な構成を説明する。
【0040】
基板1は、ガラス、シリコン、プラスチック基板、さらには薄膜トランジスタ(TFT)が形成されたTFT基板などからなる。
【0041】
そして、基板1上に設けられた下部電極2は、光反射性に優れた導電性材料を用いてミラーとして構成される。通常、下部電極2は、陽極または陰極として用いられるが、本実施形態においては、この下部電極2上に透明導電膜20a、20bを介して機能層10R、10B、10Gが設けられるため、透明導電膜20a、20bが実質的な陽極または陰極となる。このため、本実施形態においては、下部電極2は、反射性に優れた材料で構成されればよい。
【0042】
また、下部電極2は、この表示装置の駆動方式によって適する形状にパターニングされていることとする。例えば、駆動方式が単純マトリックス型である場合には、この下部電極2は例えばストライプ状に形成される。また、駆動方式が画素毎にTFTを備えたアクティブマトリックス型である場合には、下部電極2は複数配列された各画素に対応させてパターン形成され、同様に各画素に設けられたTFTに対して、これらのTFTを覆う層間絶縁膜に形成されたコンタクトホール(図示省略)を介してそれぞれが接続される状態で形成されることとする。
【0043】
そして、この下部電極2上に設けられた透明導電膜20a、20bは透明電極材料で構成され、特に本実施形態においては、上述したように実質的な陽極または陰極として用いられている。なお、図2においては、透明導電膜20a、20bが陽極として用いられる場合を代表して示しており、例えば、酸化インジウム錫(ITO)を用いて陽極となる透明導電膜20a、20bが設けられていることとする。
【0044】
この透明導電膜20a、20bは、3つの有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gについて、有機EL素子EL−R、EL−Bで同じ透明導電膜20aを用いている。つまり、RとBに対応した光学的距離が(例えば、L=310nm)で等しくなるよう透明導電膜20aがパターニングされている。また、有機EL素子EL−Gに対応した透明導電膜20bはGに対応した光学的距離(例えば、L=240n)となるようパターニングされている。このため、各有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gに設けられる透明導電膜20a、20bは、2種類の厚さ(透明導電膜の光学的距離Lt)を有していれば良いことになる。なお、透明導電膜20a、20bは同一材料で構成されている必要はない。透明導電膜20a、20bの光学的距離Ltの設定については、以降に詳しく説明する。
【0045】
各機能層10R、10B、10Gは、異なる波長の光を発光する複数の発光ユニット11〜14を積層したものから成る。本実施形態では、下部電極2側から緑(G)に対応した第1の発光ユニット11、青(B)に対応した第2の発光ユニット12、赤(R)に対応した第3の発光ユニット13、青(B)に対応した第4の発光ユニット14の順に積層されている。ここでは、一般にcd/A(単位電流当たりの光度)で表される発光効率が最も低い青に対応した発光ユニットを他の波長の発光ユニットよりも多い2層にしている。
【0046】
図3は、透明導電膜上に積層される機能層の詳細を説明する模式断面図である。機能層10(図2に示す機能層10R、10B、10Gの各々に対応)は、複数の発光ユニット(図2では、11、12のみ表示)が積層されたもので、主として有機材料で構成された複数層からなる。一つの発光ユニット(例えば、発光ユニット11)は、例えば、下部電極2側から順に、正孔注入層61、正孔輸送層62、発光層(有機層)11a、電荷輸送層72、電荷注入層71によって構成され、接続層80を介して繰り返すことで他の発光ユニット12および他の発光ユニット13、14(図2参照)も構成されている。接続層80は各発光ユニットを接続するための層であり、電荷発生層であったり、電荷発生層を含む層である。
【0047】
このような構成により、陽極である上部電極3から注入された正孔と接続層80において発生した電子が有機層で結合し、同時に陰極から注入された電子と接続層80において発生した正孔が発光ユニット11、12…で結合する際に所定波長の光を発生する。図2に示す各機能層10R、10B、10Gの各発光ユニットは同一構成で設けられている。また、この機能層10R、10B、10Gの各有機層は、対応する層の厚さがほぼ等しく設けられている。つまり、対応する各層は同一工程で形成されることになる。また、機能層10R、10B、10Gの各有機層は、各画素毎にパターン形成されていても良いし、ベタ膜状に形成されていても良い。
【0048】
各発光ユニット間に配置される接続層は、電荷注入層71、電荷発生層80、正孔注入層61からなるが、電荷注入層71が電荷発生層80を兼ねても良く、また、正孔注入層61が無くても良く、2層で構成される場合もある。電荷発生層80の構成は、有機層によって構成される有機電界発光素子の電子輸送層62と有機層によって構成される正孔注入層61の特性によって適宜選択される。
【0049】
一般的には、特開2003−45676号公報および特開2003−272860号公報に記載されているV2O5等の材料を電荷発生層として用いて接続層を構成することが多いが、この構成以外にも薄膜内で電子−正孔を発生させることができる構成であれば、これに限ったものではない。
【0050】
ここで、本実施形態の表示装置においてフルカラー表示を得るためには、有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gによって構成されるピクセルを複数配列し、各ピクセルにおいて生じる発光光が、赤、青、緑の波長領域で各々発光強度を有していることが必要である。特に、赤、青、緑として認識される所望の波長領域に発光強度の極大を持ち、不要な波長領域の発光強度が小さい構成の機能層10R、10B、10Gであることが好ましい。このような機能層10R、10B、10Gを用いることにより、必要な発光領域の光の取り出し効率が高く、色純度が高い表示装置が得られる。また、赤、青、緑に対応する光取り出しの極大値は、視野角特性等を考慮して適宜決定される。
【0051】
なお、機能層10R、10B、10Gの膜厚(光学的距離Lf)は、透明導電膜とを合わせた下部電極2と上部電極3との間が、目的とする波長を共振させる共振部となるように、以降に詳細に説明するように設定されていることが重要となる。
【0052】
そして、このような機能層10R、10B、10Gの上部に設けられた上部電極3は、ハーフミラーとして構成され、上述した下部電極2(透明導電膜20a、20b)が陽極である場合には陰極として用いられ、下部電極2(透明導電膜20a、20b)が陰極である場合には陽極として用いられる。上部電極3が陽極として用いられる場合、上部電極2を構成する材料としては、ニッケル、銀、金、白金、パラジウム、セレン、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、レニウム、タングステン、モリブデン、クロム、タンタル、ニオブやこれらの合金、あるいは酸化錫(SnO2)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛、酸化チタン等の仕事関数が大きい導電性材料が選択して用いられる。
【0053】
また、この上部電極3が陰極として用いられる場合(図2の場合)、上部電極3を構成する材料としては、例えば、Li、Mg、Ca等の活性な金属とAg、Al、In等の金属との合金等の仕事関数が小さい導電性材料が選択して用いられ、これらを積層した構造としても良い。また、機能層10R、10B、10Gとの間に例えば、Li、Mg、Ca等の活性な金属とフッ素、臭素等のハロゲンや酸素等との化合物層を薄く挿入した構造としても良い。なお、上部電極3は、機能層10R、10B、10Gで生じた発光を取り出す側となるハーフミラーとして用いられるため、その光透過率が膜厚等で調整されていることとする。
【0054】
また、上部電極3は、この表示装置が、単純マトリックス型である場合には、下部電極2のストライプと交差するストライプ状に形成され、これらが交差して積層された部分が有機EL素子となる。また、この表示装置が、アクティブマトリックス型である場合には、上部電極3は、基板1上の一面を覆う状態で成膜されたベタ膜状で良く、各ピクセルに共通の電極として用いられることとする。
【0055】
そして、この上部電極3と上述した下部電極2との間には、図3に示すように電流注入用の駆動電源が接続されていることとする。
【0056】
次に、各有機EL素子における下部電極2と上部電極3との間の共振部の光学的距離Lおよび、透明導電膜20a、20bの光学的距離Ltについて説明する。
【0057】
すなわち、各有機EL素子において、下部電極2と上部電極3との間の共振部の光学的距離Lは、それぞれの有機EL素子に設定した所望の波長領域の光が共振部の両端で共振する値にそれぞれ設定されている。このため、例えば、共振部の両端において発光ユニット11〜14で発生した発光光が反射する際に生じる位相シフトをΦラジアン、共振部の光学的距離をL、発光ユニット11〜14で発生した発光光のうちの取り出したい光のスペクトルのピーク波長をλとした場合、下記式(1)をほぼ満たす範囲で共振部の光学的距離Lが構成されていることとする。
【0058】
(2L)/λ+Φ/(2π)=m(mは整数) …(1)
【0059】
この際、機能層10Bについては、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λとして青色の領域内にピーク波長(例えばλ=460nm)を設定し、共振部の光学的距離Lを算出する。また、機能層10Gについては、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λとして緑色の領域内にピーク波長(例えばλ=530nm)を設定して、共振部の光学的距離Lを算出する。さらに、機能層10Rについては、取り出したい光のスペクトルのピーク波長λとして赤色の領域内にピーク波長(例えばλ=630nm)を設定して、共振部の光学的距離Lを算出する。
【0060】
なお、各共振部の光学的距離Lは、上記式(1)を満たす値であれば良い。
【0061】
そして、各機能層10R、10B、10Gは、発光ユニット11〜14を含む同一層で構成されているため、共振部の光学的距離Lは、各透明導電膜20a、20bの光学的距離Ltによって調整されていることとする。したがって、透明導電膜20a、20bの光学的距離をLt、発光ユニット11〜14を含む機能層10R、10B、10Gの光学的距離をLfとした場合、下記式(2)を満たすように各機能層10R、10B、10Gの透明導電膜10a、20bの光学的距離Lt(膜厚)が設置されていることとする。
【0062】
L=Lt+Lf …(2)
ただし、LfはLより小さい一定値であることとする。
【0063】
なお、このような構成の表示装置にカラーフィルタ4を組み合わせて設ける場合には、各機能層10R、10B、10Gから取り出したいスペクトルのピーク波長λ近傍の光のみを透過するカラーフィルタ4R、4B、4Gを、それぞれの機能層10R、10B、10Gの光取り出し面側に設けることとする。
【0064】
以上説明した構成の表示装置によれば、同一層で形成された機能層10R、10B、10Gを有する各有機EL素子のそれぞれが、赤、青、緑の各波長を共振させる共振器構造として構成されている。これにより、同一構成の繰り返し発光ユニットを含む機能層10R、10B、10Gを用いながらも、各有機EL素子から赤、青、緑の各波長の光のみを多重干渉によって強めて取り出すことが可能になるため、フルカラー表示が行われる表示装置が構成される。
【0065】
そして、各有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gから取り出される光は、それぞれの有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gの共振部で共振されて取り出されるため、赤、青、緑に対応する所望の波長領域の光のみが十分な強度で取り出されることになる。したがって、色再現性に優れたフルカラー表示が可能となる。
【0066】
しかも、上述したように、各有機EL素子においては、発光ユニット11〜14を含む機能層10R、10B、10G全体が同一層で構成されているため、金属マスクを用いた蒸着法や転写法、インクジェット法等によって形成される機能層10R、10B、10Gを、有機EL素子EL−R、EL−B、EL−G毎に作り分けたものとする必要がない。このため、機能層10R、10B、10Gを作り分ける際に必要となる各機能層間の合わせ裕度を画素間に設定する必要もなくなり、画素間ピッチが狭められる。
【0067】
なお、各機能層10R、10B、10Gにおける光学的距離Lは、2つの透明導電膜20a、20bの光学的距離Ltによって調整されるため、RおよびBに対応した透明導電膜20aを作り分ける必要が生じない。これにより、透明導電膜を形成する際の工程を簡素化することができる。
【0068】
ここで、透明電極膜20a、20bはリソグラフィ処理によって形成したレジストパターンをマスクに用いたエッチングによってパターン形成されるため、金属マスクを用いたパターン形成やインクジェットによるパターン形成が必要となる機能層10R、10B、10Gと比較して、パターニング精度が良好である。
【0069】
そして、以上のように画素間の微細化が実現されることにより、高精細なフルカラー表示が可能となる。
【0070】
また、発光ユニット11〜14が同一層からなるため、特定の色の有機EL素子の駆動電圧が他色と比べて特異的に高くなるといった現象が生じることもなく、各色の有機EL素子の駆動条件が異なることを考慮した駆動回路設計を行う必要もない。
【0071】
<表示装置の製造方法>
次に、上述した構成の表示装置の製造方法を説明する。
【0072】
先ず、基板1上に、下部電極2を構成する電極材料膜を成膜し、この電極材料膜上に、それぞれの画素部に形成される有機EL素子毎に設定された光学的距離Ltを有する各透明導電膜20a、20bをパターン形成する。これらの各透明導電膜20a、20bのパターン形成方法は特に限定されることはないが、各透明導電膜20a、20bが同一材料からなる場合には、例えば次のように行う。
【0073】
先ず、最も光学的距離Ltが小さい透明導電膜20bの膜厚と同一の膜厚で第1透明導電材料膜を形成し、機能層10Gが配置される画素のみを覆う状態で第1レジストパターンを形成する。次に、第1透明導電材料膜の上に膜厚が透明導電膜20aと同一となるように第2透明導電材料膜を形成し、機能層10R、10Bが配置される画素のみを覆う状態で第2レジストパターンを形成する。
【0074】
次いで、第2レジストパターンをマスクにして第2透明導電材料膜をエッチングする。続けて、第1レジストパターンが露出したところで、第1レジストパターンおよび第2レジストパターンをマスクにして第1透明導電材料膜をエッチングする。これにより、第1レジストパターンの下には第1透明導電膜からなる透明導電膜20bがパターン形成され、第2レジストパターンの下には第1透明導電膜および第2透明導電膜からなる透明導電膜20aがパターン形成されることになる。
【0075】
本実施形態に係る製造方法では、R,B,Gに対応した3つの有機EL素子をピクセルとして用いるが、光学的距離を調整するための透明導電膜としてR、Bに対応するものを同じ厚さのもの(同じ透明導電膜20a)を用いることから、Gに対応した透明導電膜20bと合わせて2種類の厚さからなる透明導電膜20a、20bを形成すればよいことになる。つまり、各色の有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gに合わせて厚さの異なる透明導電膜を形成する必要がないことから、製造工程の簡素化や、厚さ管理を容易にすることが可能となる。
【0076】
以上のようにして透明導電膜20a、20bをパターン形成した後、さらに第1、第2レジストパターンをマスクに用いて電極材料膜をエッチングして下部電極2をパターン形成する。
【0077】
その後、パターン形成された透明導電膜20a、20bおよび下部電極2を覆う状態で、基板1上に正孔輸送層、発光層および電子輸送層を含む発光ユニット11〜14を順次積層形成し、各画素に同一層からなる機能層10R、10B、10Gを一括形成する。これらの各層は、周知の方法にて合成された各有機材料を用いて、真空蒸着やスピンコートなどの周知の方法を適用して、各機能層に対応した各層を同一工程で形成することができる。そして最後に、上部電極3を積層形成することにより、上述した構成の有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gを配列形成してなる表示装置を得ることができる。
【0078】
以上説明した製造方法によれば、上述した構成の表示装置の製造において、各色の有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gに対応した機能層10R、10B、10Gを一括形成することにより、機能層10R、10B、10Gの設計を含む製造工程数の削減を図ることができる。したがって、機能層10R、10B、10Gの共通化によって発光素子の微細化が実現されることで高精細な表示が可能であり、しかも所望の発光色の光が十分な強度で取り出されることで色再現性に優れた表示が可能な表示装置を、より簡便に製造することが可能になる。
【0079】
なお、以上説明した実施形態においては、図2を用いて発光光を基板1と反対の上部電極3側から取り出す、いわゆるトップエミッション型の表示装置の構成およびその製造方法を説明した。しかしながら、本発明は、基板1側から発光光を取り出す、いわゆるボトムエミッション型の表示装置にも適用される。この場合、基板1上に設けられる下部電極2は光反射性の材料を用いてハーフミラーとして構成され、上部電極3は光反射性の良好な材料を用いてミラーとして構成されること以外は、上述した実施形態と同様の構成として良く、同様の効果を得ることができる。ただし、表示装置の駆動方式としてアクティブマトリックス型を採用する場合には、図2に示したトップエミッション型を用いることで素子の開口率を向上させることが好ましい。
【0080】
また、上述した実施形態においては、下部電極2上に透明導電膜20a、20bを設けた構成としたが、透明導電膜20a、20bは機能層10R、10B、10Gと上部電極3との間に設けられても良い。この場合、下部電極2が実質的な陽極または陰極となり、上部電極3に変わって透明電極20a、20bが実質的な陰極または陽極となる。また、上述した実施形態においては、透明導電膜20a、20bはリソグラフィを用いてパターン形成したが、蒸着マスクや、インクジェット等の方法を用いてパターン形成してもよい。
【0081】
さらに、上述した実施形態においては、下部電極2と上部電極3とをミラーとハーフミラーとしてこの間を共振部とした各有機EL素子を用いた例を説明した。しかしながら、本発明の表示装置は、このような構成に限定されることはない。すなわち、下部電極2または上部電極3をミラーとし、機能層10R、10B、10Gを構成する何れかの層をハーフミラーとし、これらのミラーとハーフミラーとの間に同一層からなる発光ユニット11〜14を狭持させ、これらのミラーとハーフミラーとの間に狭持された発光ユニット11〜14以外の機能層の膜厚によって共振部の光学的距離を調整した構成であっても良い。また、ミラーやハーフミラーは上部電極3または下部電極2の外側から発光ユニット11〜14を狭持する構成であってもよい。このような場合であっても、発光ユニット11〜14を同一層として製造工程の簡便化を図ることが可能である。また、各有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gの共振部における光学的距離の設定に透明導電膜20a、20bを用いているが、透明導電膜を用いないで発光ユニット11〜14の層厚によって調整する構成や、例えば透明導電膜20aのみを用いて20bを用いない構成でも良い。
【実施例】
【0082】
次に、本発明の具体的な実施例、および実施例に対する比較例の表示装置の製造手順を説明し、その後これらの評価結果を説明する。
【0083】
<実施例の表示装置の作製>
実施例では、図2を用いて説明したフルカラー表示を行うトップエミッション型の表示装置を、次のように作製した。
【0084】
先ず、ガラス板からなる基板1上に、ミラーとなる陽極としてAPC(Ag-Pd-Cu)(膜厚約100nm)からなる下部電極2と、各膜厚のITOからなる透明導電膜20a、20bをパターン形成した。次に、透明導電膜20a、20bの表面中央部における2mm×2mmの発光領域以外を絶縁膜(図示省略)でマスクした有機EL素子用のセルを作製した。
【0085】
次に、各発光領域となる透明導電膜20a、20bの露出部上に開口を有する金属マスクを基板1上に近接して配置し、10-4Pa以下の真空下での真空蒸着法により、緑、青、赤、青(以下、GBRBのように表す)の順で発光ユニット11〜14を、透明導電膜20a、20bおよび絶縁膜の上部に積層し、機能層10R、10B、10G形成した。各発光ユニット11〜14の膜厚は適当な値を選択すればよいが、発光に十分な膜厚を確保できることが望ましい。今回の場合、各発光ユニット11〜14の膜厚は50nm〜70nmの範囲でほぼ均等になるようにした。
【0086】
その後、ハーフミラーとなる陰極として、MgとAgの共蒸着比10:1の薄膜を9nmの膜厚で成膜し、さらにITOを150nmの膜厚で成膜して上部電極3を形成し、実施例の表示装置を得た。
【0087】
なお、実施例の表示装置においては、R,B,Gの各有機EL素子EL−R、EL−B、EL−Gから赤:波長λ=630nm、青:波長λ=460nm、緑:波長λ=530nmの光の取り出しが十分大きくなるように、上述した式(1)を満たす共振部の光学的距離Lのうちの最小値となる光学的距離Lを設定した。そして、機能層10R、10B、10Gの膜厚を220nmとし、上述した式(2)を満たすように、各透明導電膜20a、20bの光学的距離Ltを、Lt(赤)=80nm、Lt(青)=80nm、Lt(緑)=10nmに設定した。
【0088】
<比較例の表示装置の作製>
比較例では、実施例と同一の材料を使用した機能層を用いており、各色の固有の波長に最適化されていない積層順で各機能層における複数の発光ユニットを積層した。複数の発光ユニットの積層順をGRBB、およびBRBGとした以外は、全ての工程を実施例と同一として、比較例1および比較例2の表示装置を得た。
【0089】
<評価結果>
以上の様にして作製した実施例および比較例の表示装置について、各有機EL素子からの取り出し光のスペクトルを測定した。
【0090】
図4、図5は、実施例の表示装置の各有機EL素子からの取り出し光のスペクトルである。図4に緑色領域この発光波長が取り出されているL=240nmの場合、図5に青および赤色領域の発光波長が取り出されているL=310nmの場合を示した。各図の縦軸は、光共振が行われていない場合の発光強度からの相対強度を示している。これらの図から、青、緑、赤の波長領域でスペクトルの発光強度が大きく異なり、B,G,R各有機EL素子から取り出したい波長領域の光が多重干渉効果によって選択的に取り出されていることが確認された。
【0091】
なお、この場合、青と赤は光学的距離を同一にしているため、両方の色が発光されている。図5からわかるように、今回の例では緑色領域の発光強度に大きな依存性はないものの、青、赤の発光強度には大きな差が生じることがわかった。
【0092】
つまり、本実施例のように、機能層における発光ユニットの積層順(発光位置)をGBRBにすることで、赤、青、緑の全てにおいて選択的に光を取り出せることが可能となる。なお、上記のように青と赤とでは光学的距離を同一にしているため、赤の発光強度が他の色に比べて小さくなっているものの、相対強度で50%以上となっていることで、十分選択的に取り出すことができる。
【0093】
そして、図6、7、8には、このような表示装置における発光面側に、G、B、R各有機EL素子に対応させて、それぞれの色の波長のみを透過する各色のカラーフィルタを設けた場合のシミュレーション結果を示す。各図に示すように、カラーフィルタを組み合わせて設けることにより、実施例のスペクトルの不要な波長領域成分が減少され、B,G,R各有機EL素子から取り出される青、緑、赤の光の色純度が向上することが確認された。また、光学的距離が同一であるため、青と赤が発光される画素においては、カラーフィルタによって青、あるいは赤の画素として使用できることが分かる。
【0094】
一方、図9、図10は、実施例、比較例の表示装置における各有機EL素子からの取り出し光強度を表した図である。これらの図から、各波長領域において、発光ユニットの積層順に対して、光取り出しやすさに大きな差があることがわかる。各図の縦軸に、光共振が起こらない場合を1とした相対的な光取り出しやすさを示す。また、図11に各波長領域において、光取り出しが極大になる場合を1としたときの相対的な光取り出しやすさの指標を示す。この図から、積層順をGBRBとすることにより、フルカラーに必要なRGB3色について、光取り出しが良好に行われていることがわかる。
【0095】
以上から、本発明による表示装置は、簡便で精度の高い製造プロセスを使用しながらも、十分な発光効率と、色純度を併せ持つ発光素子を使用した装置となった。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本実施形態に係る表示装置の概略構成を説明する模式図である。
【図2】本実施形態に係る表示装置の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図3】透明導電膜上に積層される機能層の詳細を説明する模式断面図である。
【図4】実施例の表示装置の各有機EL素子からの取り出し光のスペクトル(L=240nm)を示す図である。
【図5】実施例の表示装置の各有機EL素子からの取り出し光のスペクトル(L=310nm)を示す図である。
【図6】各色のカラーフィルタを設けた場合のシミュレーション結果を示す図(その1)である。
【図7】各色のカラーフィルタを設けた場合のシミュレーション結果を示す図(その2)である。
【図8】各色のカラーフィルタを設けた場合のシミュレーション結果を示す図(その3)である。
【図9】各有機EL素子からの取り出し光強度を表した図(その1)である。
【図10】各有機EL素子からの取り出し光強度を表した図(その2)である。
【図11】各波長領域において、光取り出しが極大になる場合を1としたときの相対的な光取り出しやすさの指標を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1…基板、2…下部電極、3…上部電極、4…カラーフィルタ、10R、10B、10G…機能層、11…第1の発光ユニット、12…第2の発光ユニット、13…第3の発光ユニット、14…第4の発光ユニット、20a…透明導電膜、20b…透明導電膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極と下部電極との間に機能層が配置され、前記上部電極と前記下部電極との間を共振部として前記機能層で発光した光を共振させて取り出す発光素子を備えており、
異なる波長に対応させた少なくとも3つの前記発光素子を組みとしてピクセルを構成する表示装置において、
前記ピクセルを構成する第1の発光素子における前記共振部の光学的距離と第2の発光素子における前記共振部の光学的距離とが等しく設けられ、前記第1の発光素子における前記共振部の光学的距離と第3の発光素子における共振部の光学的距離とが異なるよう設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記発光素子における共振部の光学的距離を設定するため前記機能層と前記下部電極との間に透明層を備えている場合、
前記第1の発光素子における前記透明層と前記第2の発光素子における前記透明層とが等しい厚さで設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記ピクセルは、赤、青、緑の波長に対応した3つの発光素子から構成される
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記機能層は、異なる波長の光を発光する複数の発光層を有する
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
前記機能層は、異なる波長の光を発光する複数の発光ユニットを有する
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項6】
前記機能層は、異なる波長の光を発光する複数の発光ユニットを有しており、cd/A(単位電流当たりの光度)で表される発光効率が最も低い波長の発光ユニットが他の波長の発光ユニットより多層となっている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項7】
前記機能層は、異なる波長の光を発光する複数の発光ユニットを有しており、前記ピクセルを構成する各発光素子の各機能層において前記複数の発光ユニットの配列が同じとなっている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項8】
前記機能層は、異なる波長の光を発光する複数の発光ユニットを有しており、前記ピクセルを構成する各発光素子の各機能層において前記複数の発光ユニットの配列が同じで、かつ、各機能層で対応する発光ユニットの厚さがほぼ等しくなっている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項9】
前記機能層は、前記下部電極側から緑に対応した第1の発光ユニット、青に対応した第2の発光ユニット、赤に対応した第3の発光ユニット、青に対応した第4の発光ユニットの順に積層された複数の発光ユニットから構成される
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1の発光素子は赤の波長に対応し、前記第2の発光素子は青の波長に対応する
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項11】
請求項1記載の表示装置において、前記機能層で発生した光が前記共振部の両端で反射する際に生じる位相シフトをΦラジアン、前記共振部の光学的距離をL、前記共振部から取り出したい光のスペクトルのピーク波長をλとした場合、
(2L)/λ+Φ/(2π)=m(mは整数)
を満たす範囲で前記光学的距離Lが設定されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項12】
前記発光素子における共振部の光学的距離Lを設定するため前記機能層と前記下部電極との間に透明層を備えている場合、
前記透明層の光学的距離をLt、前記機能層の光学的距離をLfとした場合、
L=Lt+Lf
を満たすように前記透明層の光学的距離Ltが設定されている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項13】
前記機能層は、異なる波長の光を発光する複数の発光ユニットを有しており、各発光ユニットの前記共振部内の位置は、取り出す光の発光強度が相対強度で50%以上となっている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項14】
前記発光素子には、前記共振部で共振して取り出される波長領域のうち特定の波長領域の光を透過するカラーフィルタが設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項15】
下部電極の上に機能層を形成し、その機能層の上に上部電極を形成して、前記上部電極と前記下部電極との間を共振部とする発光素子を構成する表示装置の製造方法において、
異なる波長に対応させた少なくとも3つの発光素子を組みとしてピクセルを構成するにあたり、前記ピクセルの第1の発光素子における前記共振部の光学的距離と第2の発光素子における前記共振部の光学的距離とが等しくなるよう構成し、前記第1の発光素子における前記共振部の光学的距離と第3の発光素子における共振部の光学的距離とが異なるよう構成する
ことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記発光素子における共振部の光学的距離を設定するため前記機能層と前記下部電極との間に透明層を形成する場合、前記第1の発光素子における前記透明層と前記第2の発光素子における前記透明層とを等しい厚さで形成する
ことを特徴とする請求項15記載の表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記ピクセルにおける各発光素子の機能層を一括形成する
ことを特徴とする請求項15記載の表示装置の製造方法。
【請求項18】
赤、青、緑の波長に対応した3つの共振型発光素子を形成してピクセルを構成する表示装置の製造方法において、
基板上に下部電極を形成する工程と、
前記下部電極上に赤に対応した透明層および青に対応した透明層を同じ高さで形成し、緑に対応した透明層を前記赤および青に対応した透明層と異なる高さで形成する工程と、
前記赤、青および緑の各々に対応した透明層の上に、異なる波長の光を発光する複数の発光ユニットを順次積層して3つの機能層を形成する工程と、
前記3つの機能層の上に上部電極を形成する工程と
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項19】
前記3つの機能層における複数の発光ユニットは、前記下部電極側から緑に対応した第1の発光ユニット、青に対応した第2の発光ユニット、赤に対応した第3の発光ユニット、青に対応した第4の発光ユニットの順に積層する
ことを特徴とする請求項18記載の表示装置の製造方法。
【請求項20】
前記ピクセルにおける各発光素子の機能層を一括形成する
ことを特徴とする請求項18記載の表示装置の製造方法。
【請求項1】
上部電極と下部電極との間に機能層が配置され、前記上部電極と前記下部電極との間を共振部として前記機能層で発光した光を共振させて取り出す発光素子を備えており、
異なる波長に対応させた少なくとも3つの前記発光素子を組みとしてピクセルを構成する表示装置において、
前記ピクセルを構成する第1の発光素子における前記共振部の光学的距離と第2の発光素子における前記共振部の光学的距離とが等しく設けられ、前記第1の発光素子における前記共振部の光学的距離と第3の発光素子における共振部の光学的距離とが異なるよう設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記発光素子における共振部の光学的距離を設定するため前記機能層と前記下部電極との間に透明層を備えている場合、
前記第1の発光素子における前記透明層と前記第2の発光素子における前記透明層とが等しい厚さで設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記ピクセルは、赤、青、緑の波長に対応した3つの発光素子から構成される
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
前記機能層は、異なる波長の光を発光する複数の発光層を有する
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
前記機能層は、異なる波長の光を発光する複数の発光ユニットを有する
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項6】
前記機能層は、異なる波長の光を発光する複数の発光ユニットを有しており、cd/A(単位電流当たりの光度)で表される発光効率が最も低い波長の発光ユニットが他の波長の発光ユニットより多層となっている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項7】
前記機能層は、異なる波長の光を発光する複数の発光ユニットを有しており、前記ピクセルを構成する各発光素子の各機能層において前記複数の発光ユニットの配列が同じとなっている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項8】
前記機能層は、異なる波長の光を発光する複数の発光ユニットを有しており、前記ピクセルを構成する各発光素子の各機能層において前記複数の発光ユニットの配列が同じで、かつ、各機能層で対応する発光ユニットの厚さがほぼ等しくなっている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項9】
前記機能層は、前記下部電極側から緑に対応した第1の発光ユニット、青に対応した第2の発光ユニット、赤に対応した第3の発光ユニット、青に対応した第4の発光ユニットの順に積層された複数の発光ユニットから構成される
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1の発光素子は赤の波長に対応し、前記第2の発光素子は青の波長に対応する
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項11】
請求項1記載の表示装置において、前記機能層で発生した光が前記共振部の両端で反射する際に生じる位相シフトをΦラジアン、前記共振部の光学的距離をL、前記共振部から取り出したい光のスペクトルのピーク波長をλとした場合、
(2L)/λ+Φ/(2π)=m(mは整数)
を満たす範囲で前記光学的距離Lが設定されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項12】
前記発光素子における共振部の光学的距離Lを設定するため前記機能層と前記下部電極との間に透明層を備えている場合、
前記透明層の光学的距離をLt、前記機能層の光学的距離をLfとした場合、
L=Lt+Lf
を満たすように前記透明層の光学的距離Ltが設定されている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項13】
前記機能層は、異なる波長の光を発光する複数の発光ユニットを有しており、各発光ユニットの前記共振部内の位置は、取り出す光の発光強度が相対強度で50%以上となっている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項14】
前記発光素子には、前記共振部で共振して取り出される波長領域のうち特定の波長領域の光を透過するカラーフィルタが設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項15】
下部電極の上に機能層を形成し、その機能層の上に上部電極を形成して、前記上部電極と前記下部電極との間を共振部とする発光素子を構成する表示装置の製造方法において、
異なる波長に対応させた少なくとも3つの発光素子を組みとしてピクセルを構成するにあたり、前記ピクセルの第1の発光素子における前記共振部の光学的距離と第2の発光素子における前記共振部の光学的距離とが等しくなるよう構成し、前記第1の発光素子における前記共振部の光学的距離と第3の発光素子における共振部の光学的距離とが異なるよう構成する
ことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記発光素子における共振部の光学的距離を設定するため前記機能層と前記下部電極との間に透明層を形成する場合、前記第1の発光素子における前記透明層と前記第2の発光素子における前記透明層とを等しい厚さで形成する
ことを特徴とする請求項15記載の表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記ピクセルにおける各発光素子の機能層を一括形成する
ことを特徴とする請求項15記載の表示装置の製造方法。
【請求項18】
赤、青、緑の波長に対応した3つの共振型発光素子を形成してピクセルを構成する表示装置の製造方法において、
基板上に下部電極を形成する工程と、
前記下部電極上に赤に対応した透明層および青に対応した透明層を同じ高さで形成し、緑に対応した透明層を前記赤および青に対応した透明層と異なる高さで形成する工程と、
前記赤、青および緑の各々に対応した透明層の上に、異なる波長の光を発光する複数の発光ユニットを順次積層して3つの機能層を形成する工程と、
前記3つの機能層の上に上部電極を形成する工程と
を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項19】
前記3つの機能層における複数の発光ユニットは、前記下部電極側から緑に対応した第1の発光ユニット、青に対応した第2の発光ユニット、赤に対応した第3の発光ユニット、青に対応した第4の発光ユニットの順に積層する
ことを特徴とする請求項18記載の表示装置の製造方法。
【請求項20】
前記ピクセルにおける各発光素子の機能層を一括形成する
ことを特徴とする請求項18記載の表示装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−302506(P2006−302506A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117717(P2005−117717)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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