説明

表示装置および電子機器

【課題】隣接する有機発光素子同士の発光光が互いに混ざり合うのを防止できるとともに、発光輝度等の特性に優れた有機発光素子を備える表示装置および信頼性の高い電子機器を提供すること。
【解決手段】表示装置10は、一対の電極(陽極3および陰極5)と、これらの電極間に設けられ、発光層を含む有機半導体層4とを備える複数の有機発光素子(有機EL素子)1と、これらの有機発光素子1を区画するように設けられたバンク31とを有している。
このような表示装置10において、バンク31の内面を、有機発光素子1からの光を反射する機能を有する光反射面で構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料を使用したエレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示装置が備える発光素子としての用途が有望視され、多くの開発が行われている(例えば、特許文献1参照)。
一般に、有機EL素子は、陰極と陽極との間に発光層(有機半導体層)を有する構成であり、陰極と陽極との間に電界を印加すると、発光層に陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入される。
【0003】
そして、注入された電子と正孔とが発光層において再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際の励起エネルギーを光エネルギーとして放出することにより、発光層が発光する。
例えば、特許文献2には、図10に示すように、基板900上に画素電極901、発光層902および透明な対向電極903がこの順で設けられ、基板900と反対側(対向電極903側)から、発光層902の発光光l〜lを取り出すトップエミッション構造の有機EL素子(有機発光素子)910が提案されている。
このトップエミッション構造の有機EL素子910は、電極間の通電のON/OFFを制御するスイッチング素子や配線を基板900側に設けることができることから、発光層902の開口率を高めて、消費電力の低電力化等を図ることができることから、着目され、実用化に向けて種々の研究がなされている。
【0004】
ここで、このような有機EL素子910を複数備える表示装置920では、カラーフィルター912を備えるカラーフィルター基板911を対向基板903側に設け、発光光l〜lをカラーフィルター912に透過することにより、色調を変化(色変調)して、フルカラー画像表示を実現している。
ここで、このような表示装置920では、各有機EL素子910からの発光光l〜lが四方八方に向かって発せられ、発光光l、lのように、隣接する有機EL素子910からの発光光が混ざり合う現象(すなわち、クロストーク現象)により、色ムラやコントラストの低下が生じるという問題がある。
【0005】
この問題を解決する方法としては、例えば、有機EL素子910とカラーフィルター基板911との離間距離をできるだけ小さく、かつ、カラーフィルター912同士を区画するブラックマトリクス913の大きくする方法がある。
ところが、かかる方法では、ブラックマトリクス913のサイズを大きくするのに依存して、各カラーフィルター912のサイズ、すなわち、各カラーフィルター(画素)912の開口率が小さくなる。その結果、表示装置920の特性(表示特性)が低下してしまう。
【0006】
【特許文献1】特開平10−153967号公報
【特許文献2】特開2005−62480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、隣接する有機発光素子同士の発光光が互いに混ざり合うのを防止できるとともに、発光輝度等の特性に優れた有機発光素子を備える表示装置および信頼性の高い電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の表示装置は、一対の電極と、これらの電極間に設けられ、発光層を含む有機半導体層とを備える複数の有機発光素子と、
各前記有機発光素子を区画するように設けられたバンクとを有し
該バンクの内面を、前記有機発光素子からの光を反射する機能を有する光反射面で構成したことを特徴とする。
これにより、隣接する有機発光素子同士の発光光が互いに混ざり合うのを防止できるとともに、発光輝度等の特性に優れた有機発光素子を備える表示装置とすることができる。
【0009】
本発明の表示装置では、前記バンクは、その幅が前記有機発光素子に向かって小さくなる部分を有することが好ましい。
これにより、表示装置を製造する際に、アライメントの精度が低い場合においても、比較的容易に、バンクを、有機発光素子と接触させることなく、有機発光素子を区画することができる。
【0010】
本発明の表示装置では、前記バンクの前記有機発光素子と反対側の面と、前記バンクの内面とのなす角度は、60°以上、90°未満であることが好ましい。
これにより、表示装置を製造する際に、アライメントの精度が低い場合においても、比較的容易に、バンクを、有機発光素子と接触させることなく、有機発光素子を確実に区画することができる。
【0011】
本発明の表示装置では、前記バンクは、その内面の反射率が60〜99.8%であることが好ましい。
これにより、バンクに入射した光がその内面で吸収されるのを好適に防止または抑制することができる。
本発明の表示装置では、前記バンクは、その内面の表面粗さRa(JIS B 0601に規定)が100nm以下であることが好ましい。
これにより、バンクの内面は、特に高い反射率を有するものとなる。
【0012】
本発明の表示装置では、前記有機発光素子の前記バンクと反対側の電極は、光反射性を有することが好ましい。
これにより、有機半導体層で発光した光がバンクと反対側の電極側で吸収(吸光)されることなく、バンク側に反射させることができる。
本発明の表示装置では、前記有機発光素子が備える一対の電極のうち、少なくとも前記バンク側の電極を共通電極で構成し、前記バンクの少なくとも内面付近を導電性材料で構成し、
該バンクを前記共通電極に接触させることにより、該共通電極の電気伝導度を向上させるよう構成したことが好ましい。
これにより、発光装置をより低電圧で駆動することが可能となる。
【0013】
本発明の表示装置では、前記バンクと前記共通電極とは、電気接続部を介して接続されることが好ましい。
本発明の表示装置では、前記接続部の電気伝導度は、前記バンクの電気伝導度よりも高いことが好ましい。
これにより、このバンクおよび接続部を介して一対の電極間に電圧を印加する際に、共通電極全体としての電気伝導度をより向上させることができる。
【0014】
本発明の表示装置では、前記導電性材料は、Al、Ni、Co、Agおよびこれらを含む合金のうちの少なくとも1種を主成分とするものであることが好ましい。
バンクをかかる材料を主材料として構成することにより、バンクに優れた導電性を付与することができるとともに、その内面の光反射性をも優れたものとすることができる。
本発明の表示装置では、前記発光素子の前記バンクと反対側に、前記有機発光素子への通電のON/OFFを切り替えるスイッチング素子を有することが好ましい。
これにより、表示装置が備える有機発光素子がトップエミッション型の構造を有するものとなる。
【0015】
本発明の表示装置では、各前記有機発光素子は、いずれも白色光を発光するものであることが好ましい。
本発明の表示装置では、各前記有機発光素子に対応する開口部を備え、前記有機発光素子からの光の透過を阻止するブラックマトリクスが、前記バンクの各前記有機発光素子と反対側に設けられていることが好ましい。
これにより、ブラックマトリクスが設けられている領域から、有機発光素子からの光を、ブラックマトリクスの有機発光素子と反対側に取り出されるのを確実に防止することができる。これにより、表示装置により表示される画像または映像のコントラストの増大を図ることができる。
【0016】
本発明の表示装置では、各前記開口部内には、それぞれ色素層が設けられ、各前記有機発光素子からの光は、前記色素層を透過する際に色調が変換されることが好ましい。
これにより、各有機発光素子がいずれも白色光を発光するように構成されている際に、表示装置のフルカラー表示が可能となる。
本発明の表示装置では、前記有機発光素子と前記ブラックマトリクスとの間の空間が封止されており、該空間に不活性ガスが充填されていることが好ましい。
これにより、有機発光素子が備える有機半導体層等が変質・劣化するのを好適に防止または抑制することができる。
【0017】
本発明の表示装置では、前記バンクは、前記ブラックマトリクスのパターンとほぼ等しいパターンで設けられていることが好ましい。
これにより、隣接する有機発光素子からの光同士が混ざり合うクロストーク現象の発生を防止して、画像にムラが生じるのを確実に防止することができる。
本発明の表示装置では、前記開口部の開口面積は、前記有機発光素子が備える一対の電極のうち、少なくとも平面積が小さい方の電極の平面積より大きいことが好ましい。
これにより、有機EL素子からの光を、開口部内を通過させて、バンクと反対側に取り出すことができる。
【0018】
本発明の表示装置では、前記平面積が小さい方の電極の平面積をA[μm]とし、前記開口部の開口面積をB[μm]としたとき、B/Aが1.0〜1.5なる関係を満足することが好ましい。
これにより、有機EL素子からの光を、確実に開口部内を通過させて、バンクと反対側に取り出すことができる。
【0019】
本発明の表示装置では、前記開口部は、平面視で四角形状をなし、
前記バンクの平均高さをC[μm]とし、前記開口部の平均幅をD[μm]としたとき、D/Cが0.2〜5なる関係を満足することが好ましい。
これにより、表示装置の大型化を防止しつつ、バンクと反対側に出射される光の方向を、有機発光素子の厚さ方向に対して平行に近づけることができる。
本発明の電子機器は、本発明の表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の表示装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態について説明する。
<表示装置>
まず、本発明の表示装置の好適な実施形態について説明する。
【0021】
<<第1実施形態>>
まず、本発明の表示装置の第1実施形態について説明する。
図1および図2は、本発明の表示装置の第1実施形態を示す図であり、図1は縦断面図、図2は斜視図である。図3は、図1に示す表示装置の製造方法を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図1および図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0022】
図1に示す本発明の表示装置(有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置)10は、TFT回路基板(対向基板)20と、この基板20上に設けられた複数の有機EL素子(有機発光素子)1と、TFT回路基板20に対向して設けられたカラーフィルター基板9と、TFT回路基板20とカラーフィルター基板9との間に設けられたバンク31とを有している。
TFT回路基板20は、基板21と、この基板21上に形成された回路部22とを有している。
【0023】
以下、このTFT回路基板20について説明する。
基板21は、表示装置10を構成する各部の支持体となるものである。
また、本実施形態の表示装置10は、カラーフィルター基板9側から光を取り出す構成(トップエミッション型)であるため、基板21は、特に、透明性は要求されない。
このような基板21には、各種ガラス材料基板および各種樹脂基板が用いられ、これらの中でも比較的硬度の高いものが好適に用いられる。
【0024】
基板21の平均厚さは、特に限定されないが、1〜30mm程度であるのが好ましく、5〜20mm程度であるのがより好ましい。
回路部22は、各有機EL素子1が備える陽極3と陰極5における通電のON/OFFを切り替える機能を有するものであり、基板21上に形成された下地保護層23と、下地保護層23上に形成された駆動用TFT(スイッチング素子)24と、第1層間絶縁層25と、第2層間絶縁層26とを有している。
【0025】
駆動用TFT24は、半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
このような回路部22上に、一対の電極(陽極3および陰極5)と、これらの電極間に設けられ、発光層を含む有機半導体層4とを備える有機EL素子(発光素子)1が、それぞれ、各駆動用TFT24に対応して複数設けられている。
【0026】
本実施形態では、各有機EL素子1の陽極3は、個別電極(画素電極)を構成し、各駆動用TFT24のドレイン電極245に配線(導電部)27により電気的に接続されている。
また、各有機EL素子1の有機半導体層4は、一体的に形成されており、陰極5は、共通電極とされている。
【0027】
以下、この有機EL素子1について説明する。
図1に示すように、有機EL素子1は、個別の陽極3と、共通の陰極5と、陽極3と陰極5との間に共通の有機半導体層4とを有している。
陽極3は、有機半導体層(後述する発光層)4に正孔を注入する電極である。
この陽極3の構成材料(陽極材料)としては、導電性を有するものであればよく、特に限定されないが、仕事関数が大きく、導電性に優れた材料を用いるのが好ましい。
このような陽極材料としては、例えば、ITO(酸化インジウムと酸化亜鉛との複合物)、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物、Al、Ni、Co、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0028】
陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。陽極3の厚さが薄すぎると、陽極3としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陽極3が厚過ぎると、後述する正孔と電子との再結合を有機半導体層4において行うことができず、有機EL素子1の発光効率等の特性が低下するおそれがある。
【0029】
なお、陽極材料には、例えば、ポリチオフェン、ポリピロール等の導電性樹脂材料を用いることもできる。
このような陽極3は、光反射性を有するのが好ましい。これにより、後述する有機半導体層4で発光した光が陽極3(有機EL素子1の後述するブラックマトリクス7と反対側の電極)側で吸収(吸光)されることなく、陰極5(バンク31)側に反射されて、カラーフィルター6を通過する光の量を増大させることができる。その結果、有機EL素子1の発光効率や光の取り出し効率等の特性が向上をすることとなる。
【0030】
かかる構成の陽極3は、前述したような陽極材料のうち、Al、Ni、Co、Agまたはこれらを含む合金で、少なくとも陽極3の表面を構成することにより形成することができる。
一方、陰極5は、有機半導体層4に電子を注入する電極である。
この陰極5の構成材料(陰極材料)としては、表示装置10が陰極5側から光を取り出すトップエミッション構造であるため透光性を有する導電性材料が選択される。
【0031】
このような陰極材料としては、インジウムティンオキサイド(ITO)、フッ素含有インジウムティンオキサイド(FITO)、アンチモンティンオキサイド(ATO)、インジウムジンクオキサイド(IZO)、アルミニウムジンクオキサイド(AZO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、フッ素含有酸化スズ(FTO)、フッ素含有インジウムオキサイド(FIO)、インジウムオキサイド(IO)、等の透明導電性材料が挙げられ、これらのうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0032】
陰極5の平均厚さは、特に限定されないが、100〜3000nm程度であるのが好ましく、500〜2000nm程度であるのがより好ましい。陰極5の厚さが薄すぎると、陰極5としての機能が充分に発揮されなくなるおそれがあり、一方、陰極5が厚過ぎると、陰極材料の種類等によっては、光の透過率が低下して、トップエミッション型の構造を有する有機EL素子1として、実用に適さなくなるおそれがある。
【0033】
このような陰極5は、その光(可視光領域)の透過率が好ましくは60%以上、より好ましくは80%以上となっている。これにより、光を効率よく陰極5側から取り出すことができる。
陽極3と陰極5との間には、有機半導体層4が設けられている。本実施形態では、この有機半導体層4は、発光層で構成される単層体となっている。
【0034】
ここで、個別の陽極3と共通の陰極5との間に通電(電圧を印加)すると、陽極3から発光層(有機半導体層4)に正孔が注入され、また、陰極5から電子が発光層に注入され、この発光層の個別に設けられた陽極3に対応する領域において正孔と電子とが再結合する。そして、発光層の前記領域ではエキシトン(励起子)が生成し、このエキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)する。すなわち、各有機EL素子1(陽極3)の形状に対応して、有機半導体層(発光層)4が光を発光する。
【0035】
発光層の構成材料(発光材料)としては、例えば、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)、1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリスフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)のようなベンゼン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン(CuPc)、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリノレート)アルミニウム(Alq)、ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy))のような低分子系のものや、オキサジアゾール系高分子、トリアゾール系高分子、カルバゾール系高分子のような高分子系のものが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて、目的とする発光色を得ることができる。
なお、発光層は、このような発光材料のうちの1種または2種以上で構成される単層体であってもよいし、複層体であってもよい。
【0036】
本実施形態では、各有機EL素子1がいずれも白色光を発光するように構成され、この白色光を後述するカラーフィルター(色素層)6R、6G、6Bにそれぞれ透過させて、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の光に色調を変換させ、表示装置10のフルカラー表示が可能となっている。
ここで、白色光を発光する有機半導体層4としては、例えば、青色発光する1、1、4、4−テトラフェニル−1、3−ブタジエン(TPB)と、赤色発光する(4−ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(パラジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)およびナイルレッドと、緑色発光するクマリン6とを組み合わせて構成したもの等が挙げられる。
【0037】
発光層の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。
なお、有機半導体層4は、本実施形態で示したような単層体の他、発光層を含む複数の層が積層された積層体であってもよい。
有機半導体層4をかかる構成とする場合、陽極3と発光層との間には、例えば、陽極3から注入された正孔を発光層まで輸送する機能を有する正孔輸送層を設けるようにすればよい。さらには、この正孔輸送層と陽極3との間に、陽極3から正孔輸送層への正孔の注入効率を向上させる正孔注入層を設けるようにしてもよい。
また、陰極5と発光層との間には、例えば、陰極5から注入された電子を発光層まで輸送する機能を有する電子輸送層を設けるようにすればよい。さらには、この電子輸送層と陰極5との間に、陰極5から電子輸送層への電子の注入効率を向上させる電子注入層を設けるようにしてもよい。
【0038】
この正孔輸送層の構成材料(正孔輸送材料)としては、例えば、ポリアリールアミン、フルオレン−アリールアミン共重合体、フルオレン−ビチオフェン共重合体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
また、前記化合物は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
このような正孔輸送層の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、50〜100nm程度であるのがより好ましい。
【0040】
正孔注入層の構成材料(正孔注入材料)としては、例えば、銅フタロシアニンや、4,4‘,4‘‘−トリス(N,N−フェニル−3−メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等が挙げられる。
電子輸送層の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、1,3,5−トリス[(3−フェニル−6−トリ−フルオロメチル)キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ1)、1,3,5−トリス[{3−(4−t−ブチルフェニル)−6−トリスフルオロメチル}キノキサリン−2−イル]ベンゼン(TPQ2)のようなベンゼン系化合物、ナフタレン系化合物、フェナントレン系化合物、クリセン系化合物、ペリレン系化合物、アントラセン系化合物、ピレン系化合物、アクリジン系化合物、スチルベン系化合物、BBOTのようなチオフェン系化合物、ブタジエン系化合物、クマリン系化合物、キノリン系化合物、ビスチリル系化合物、ジスチリルピラジンのようなピラジン系化合物、キノキサリン系化合物、2,5−ジフェニル−パラ−ベンゾキノンのようなベンゾキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)のようなオキサジアゾール系化合物、3,4,5−トリフェニル−1,2,4−トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、オキサゾール系化合物、アントロン系化合物、1,3,8−トリニトロ−フルオレノン(TNF)のようなフルオレノン系化合物、MBDQのようなジフェノキノン系化合物、MBSQのようなスチルベンキノン系化合物、アントラキノジメタン系化合物、チオピランジオキシド系化合物、フルオレニリデンメタン系化合物、ジフェニルジシアノエチレン系化合物、フローレン系化合物、8−ヒドロキシキノリン アルミニウム(Alq)、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする錯体のような各種金属錯体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
電子輸送層の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100nm程度であるのが好ましく、20〜50nm程度であるのがより好ましい。
また、電子注入層の構成材料(電子注入材料)としては、例えば、8−ヒドロキシキノリン、オキサジアゾール、または、これらの誘導体(例えば、8−ヒドロキシキノリンを含む金属キレートオキシノイド化合物)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
さて、カラーフィルター基板9は、上基板8と、この上基板8上に設けられたカラーフィルター6R、6G、6Bと、各カラーフィルター6R、6G、6B同士を区画するブラックマトリクス7とで構成されている。
上基板8は、例えば、有機EL素子1を保護する保護層等として機能するものである。
このような上基板8を設けることにより、有機EL素子1が酸素や水分に接触するのをより好適に防止または低減できることから、有機EL素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止等の効果をより確実に得ることができる。
【0043】
また、本実施形態の有機EL装置10は、カラーフィルター基板9すなわち上基板8側から光を取り出す構成(トップエミッション型)であるため、上基板8は、実質的に透明(無色透明、着色透明、半透明)とされる。
このような上基板8には、各種ガラス材料基板および各種樹脂基板のうち透明なものが選択され、例えば、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料や、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料等を主材料として構成される基板を用いることができる。
【0044】
上基板8の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
この上基板8の下には、各有機EL素子1に対応するように、それぞれ、カラーフィルター(色素層)6R、6G、6Bが設けられている。
複数のカラーフィルター(色素層)6R、6G、6Bは、赤色のカラーフィルター6Rと、緑色のカラーフィルター6Gと、青色のカラーフィルター6Bとで構成され、図2に示すように、マトリクス状に配設された3つのカラーフィルター6R、6G、6B(三原色)が1組となって1画素(ピクセル)を構成する。
【0045】
ここで、有機EL素子1から発光された光(白色光)は、カラーフィルター(色素層)6R、6G、6Bを透過して、上基板8の有機EL素子1と反対側に取り出されるが、この際、各白色光は、各カラーフィルター6R、6G、6Bに対応した色に色調が変換されることとなる。
なお、以下では、カラーフィルター6R、6G、6Bを総称してカラーフィルター6ということもある。
このようなカラーフィルター6には、例えば、前述したような透明な樹脂材料やレジスト材料を主材料として構成され、この主材料を着色する着色剤を含む(添加した)ものを用いることができる。
【0046】
レジスト材料としては、ロジン−重クロム酸塩、ポリビニルアルコール(PVA)−重クロム酸塩、セラック−重クロム酸塩、カゼイン−重クロム酸塩、PVA−ジアゾ、アクリル系フォトレジスト等のような水溶性フォトレジスト、ポリケイ皮酸ビニル、環化ゴム−アジド、ポリビニルシンナミリデンアセタート、ポリケイ皮酸β−ビニロキシエチルエステル等のような油溶性フォトレジスト等のネガ型フォトレジストや、o−ナフトキノンジアジド等のような油溶性フォトレジスト等のポジ型フォトレジストが挙げられる。
また、着色剤としては、例えば、染料または顔料を用いることができるが、耐光性および耐候性の観点から、微粒子状の顔料を用いることが好ましい。
【0047】
カラーフィルター6Rに用いられる赤色の顔料としては、例えば、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料およびイソインドリン系顔料等が、カラーフィルター6Gに用いられる緑色の顔料としては、例えば、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料、ハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料およびイソインドリノン系の顔料等が、カラーフィルター6Bに用いられる青色の顔料としては、例えば、銅フタロシアニン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料およびジオキサジン系顔料等がそれぞれ挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
カラーフィルター6の平均厚さは、特に限定されないが、0.5〜10μm程度であるのが好ましく、0.5〜3μm程度であるのがより好ましい。
また、隣接するカラーフィルター6同士の間には、ブラックマトリクス7が設けられている。すなわち、隣接するカラーフィルター6同士は、ブラックマトリクス7により区画されている。
【0049】
ブラックマトリクス7は、光の透過を阻止する(遮光)機能を有している。そのため、カラーフィルター基板9を、ブラックマトリクス7を備える構成とすることより、ブラックマトリクス7が設けられている領域から、有機EL素子1からの光を、上基板8(ブラックマトリクス7)の有機EL素子1と反対側に取り出される(出射する)のを確実に防止することができる。これにより、表示装置10により表示される画像または映像のコントラストの増大を図ることができる。
【0050】
このようなブラックマトリクス7は、例えば、カーボンやチタン等を分散させた透明な樹脂またはレジスト層の他、Cr、Al、Ni、ZnおよびTi等で構成されている。
ブラックマトリクス7は、カラーフィルター6と連続した平滑面で構成されているのが好ましく、その平均厚さは、カラーフィルター6と同様に、0.5〜10μm程度であるのが好ましく、0.5〜2μm程度であるのがより好ましい。
さて、本発明では、このカラーフィルター基板9(ブラックマトリクス7)とTFT回路基板20(有機EL素子1)との間に、バンク31を設けたことに特徴を有する。
【0051】
以下、この点(特徴)について説明する。
図1に示すように、本実施形態では、バンク31は、ブラックマトリクス7のパターンとほぼ等しいパターンをなし、ブラックマトリクス7と陰極5との双方に接触するように設けられている。これにより、有機EL素子1とカラーフィルター6との間には、バンク31により区画される空間36が形成されている。
【0052】
ここで、仮にバンク31を設けない場合、隣接する有機EL素子からの光が混ざり合うクロストーク現象が生じ、これに起因して、表示装置により表示される画像に色ムラが生じてしまう。
これに対して、本発明の表示装置10では、バンク31を設けたので、このバンク31が各有機EL素子1を区画する遮光板として機能して、特定の空間36から隣接する空間36への光の漏れ出しを確実に防止することができる。その結果、本発明の表示装置10では、クロストーク現象の発生を防止して、画像にムラが生じるのを防止することができる。
【0053】
また、バンク31を設けることにより、カラーフィルター6を有機EL素子1に対して近づけることや、ブラックマトリクス7の形成領域を大きくする必要がなくなるので、カラーフィルター6の開口率を大きく設定することが可能となる。
さらに、本発明の表示装置10では、バンク31の内側の面を、有機EL素子1からの光を反射し得る反射面で構成した。そのため、図1に示すように、有機EL素子1からの光のうち、対応するカラーフィルター(開口部)6から外れた方向に向かう光Lを、バンク31の内面(反射面)で反射して、カラーフィルター6内に誘導する(導く)ことができる。その結果、光Lとともにカラーフィルター6を透過させて、上基板8の有機EL素子1と反対側に取り出すことができるようになる。これにより、有機EL素子1の発光輝度、光の取り出し効率の向上を図ることとができるとともに、表示装置10の低消費電力化および長寿命化を実現することができる。
【0054】
本実施形態では、バンク31は、図2に示すように、それぞれ、枠状(四角形の環状)をなしており、隣り合うバンク31同士と一体的に設けられている。
なお、バンク31は、有機EL素子1を取り囲むように設けられていればよく、その枠の形状は、本実施形態のような四角形の環状の他、例えば、円形、楕円形、五角形、六角形等の多角形等の環状ように、いかなるものであってもよい。
【0055】
また、本実施形態では、バンク31は、有機EL素子1側に向かって、その幅が小さくなる部分を有している。すなわち、バンク31の厚さ方向に垂直な方向の断面積が小さくなる部分を有している。これにより、後述する表示装置10の製造方法において、アライメントの精度が低い場合においても、比較的容易に、有機EL素子1と接触することなく、有機EL素子1を取り囲むようにバンク31により区画することができる。
【0056】
具体的には、バンク31の有機EL素子1と反対側の面と、バンク31の内面とのなす角度(図1に示す角度θ)は、60°以上、90°未満であるのが好ましく、70°以上、90°未満であるのがより好ましい。かかる関係を満足することにより、前述したような効果を確実に発揮させることができる。
また、バンク31は、その内面の反射率が、好ましくは60〜99.8%程度、より好ましくは90〜99.8%程度となっている。これにより、バンク31に入射した光Lがその内面で吸収されるのを好適に防止または抑制することができる。その結果、光Lがバンク31の内面で反射して、カラーフィルター6を確実に透過することとなる。
【0057】
かかる関係を満足するバンク31とするには、その内面の表面粗さRaをできるだけ小さく設定するのが好ましい。
具体的には、バンク31は、その構成材料の種類によっても若干異なるが、内面の表面粗さRa(JIS B 0601に規定)が100nm以下であるのが好ましく、80〜30nm程度であるのがより好ましい。これにより、バンク31の内面は、特に高い反射率を有するものとなる。
【0058】
また、本実施形態では、カラーフィルター(開口部)6の面積(開口面積)は、陽極3および陰極5(有機EL素子1が備える一対の電極)のうち、その面積が小さい陽極3よりも大きくなっている。これにより、有機EL素子1からの光を、空間36内で反射させることなく確実に上基板8の上側(バンク31と反対側)に取り出すことができる。
具体的には、陽極3の平面積(平面積が小さい方の平面積)をA[μm]とし、カラーフィルター6の面積(開口面積)をB[μm]としたとき、B/Aが1.0〜1.5なる関係を満足するのが好ましく、1.0〜1.2なる関係を満足するのがより好ましい。これにより、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
バンク31の平均高さは、特に限定されないが、1〜35μm程度とするのが好ましく、5〜15μm程度とするのがより好ましい。これにより、表示装置10の大型化を防止しつつ、有機EL素子1からの光を、確実に上基板8の上側に取り出すことができる。
【0059】
また、本実施形態のように、カラーフィルター6が平面視で四角形状をなす場合には、このバンク31の平均高さをC[μm]とし、カラーフィルター(開口部)6の平均幅をD[μm]としたとき、D/Cが0.2〜5なる関係を満足するのが好ましく、0.33〜3なる関係を満足するのがより好ましい。かかる関係を満足することにより、表示装置10の大型化を防止しつつ、上基板8の上側に出射される光の方向を、有機EL素子1の厚さ方向に対して平行に近づけることができる。
【0060】
さらに、有機EL素子1とブラックマトリクス7との間の空間36が封止されており、この空間36には、窒素、ヘリウムおよびアルゴン等の不活性ガスが充填されているのが好ましい。これにより、例えば、有機EL素子1が備える有機半導体層4等が変質・劣化するのを好適に防止または抑制することができる。
ここで、バンク31は、導電性材料、半導体材料および絶縁材料のうちのいずれで構成してもよいが、特に、導電性材料で構成されるのが好ましい。
【0061】
前述したように、本実施形態では、一対の電極のうちカラーフィルター基板9(ブラックマトリクス7)側の陰極5を共通電極で構成し、この陰極(共通電極)5にバンク31を接触するように設けている。これにより、陰極5全体として抵抗値の低減(電気伝導度の向上)を図ることができ、発光装置10をより低電圧で駆動することが可能となる。
かかる構成は、陰極5が前述したITOのような比較的抵抗値の大きい導電性材料で構成される場合に、特に有効である。
【0062】
このような導電性材料としては、各種の金属材料や導電性樹脂材料等が挙げられるが、これらの中でも、特に、Al、Ni、Co、Agおよびこれらを含む合金のうちの少なくとも1種を主成分とするものが好ましい。バンク31をかかる材料を主材料として構成することにより、バンク31に優れた導電性を付与することができるとともに、その内面の光反射性をも優れたものとすることができる。
なお、バンク31の内面付近を選択的に導電性材料、特に、前記金属材料で構成するようにしてもよい。かかる構成によっても、前記と同様の効果が得られる。
【0063】
以上のように、バンク31に陰極5全体としての抵抗値を低減させる機能を付与することにより、このような機能を有する補助陰極を、陽極3の間で露出する第2相関絶縁層26上に形成する必要がないことから、後述する表示装置10の製造方法(工程[2−B])で示すように、マスクを用いることなく1回の工程で、有機半導体層4を一体的に形成することができる。その結果、有機半導体層4を形成するための工程数の削減を図ることができる。
【0064】
なお、本実施形態では、カラーフィルター6R、6G、6Bに有機EL素子1からの光を透過させることにより得られる画像をフルカラー表示する場合について説明したが、このような場合に限定されず、例えば、カラーフィルター6R、6G、6Bの形成を省略して、有機EL素子1に対応する開口部から光の色調を変換することなく光を取り出す場合、すなわち、表示装置により表示される画像または映像を単色(モノカラー)表示する場合にも適用することができる。
また、本実施形態では、バンク31は、ブラックマトリクス7のパターンとほぼ等しいパターンをなす場合について説明したが、このような場合に限定されず、隣接するカラーフィルター6のうち同一のカラーフィルター同士(例えば、カラーフィルター6B同士)の間に対応する位置において、バンクの形成を省略するようにしてもよい。
【0065】
このような本実施形態の表示装置10は、例えば、次のような製造方法により製造することができる。
[1]まず、TFT回路基板20を用意する。
[1−A]まず、基板21を用意し、基板21上に、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガス等を原料ガスとして、プラズマCVD法等により、平均厚さが約200〜500nmの酸化シリコンを主材料として構成される下地保護層23を形成する。
【0066】
[1−B]次に、下地保護層23上に、駆動用TFT24を形成する。
[1−Ba]まず、基板21を約350℃に加熱した状態で、下地保護層23上に、例えばプラズマCVD法等により、平均厚さが約30〜70nmのアモルファスシリコンを主材料として構成される半導体膜を形成する。
[1−Bb]次いで、半導体膜に対して、レーザアニールまたは固相成長法等により結晶化処理を行い、アモルファスシリコンをポリシリコンに変化させる。
ここで、レーザアニール法では、例えば、エキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用い、その出力強度は、例えば200mJ/cm程度に設定される。また、ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザー強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームを走査する。
【0067】
[1−Bc]次いで、半導体膜をパターニングして島状とし、各島状の半導体膜241を覆うように、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料ガスとして、プラズマCVD法等により、平均厚さが約60〜150nmの酸化シリコンまたは窒化シリコン等を主材料として構成されるゲート絶縁層242を形成する。
[1−Bd]次いで、ゲート絶縁層242上に、例えば、スパッタ法等により、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属を主材料として構成される導電膜を形成した後、パターニングし、ゲート電極243を形成する。
[1−Be]次いで、この状態で、高濃度のリンイオンを打ち込んで、ゲート電極243に対して自己整合的にソース・ドレイン領域を形成する。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域となる。
【0068】
[1−C]次に、駆動用TFT24に電気的に接続されるソース電極244およびドレイン電極245を形成する。
[1−Ca]まず、ゲート電極243を覆うように、第1層間絶縁層25を形成した後、コンタクトホールを形成する。
[1−Cb]次いで、コンタクトホール内にソース電極244およびドレイン電極245を形成する。
【0069】
[1−D]次に、ドレイン電極245と陽極3とを電気的に接続する配線(中継電極)27を形成する。
[1−Da]まず、第1層間絶縁層25上に、第2層間絶縁層26を形成した後、コンタクトホールを形成する。
[1−Db]次いで、コンタクトホール内に配線27を形成する。
以上のようにして、TFT回路基板20が得られる。
【0070】
[2]次に、TFT回路基板20上に有機EL素子1を形成する。
[2−A]まず、TFT回路基板20が備える第2層間絶縁層26上に、配線27に接触するように、陽極(画素電極)3を形成する。
この陽極3は、第2層間絶縁層26上に、例えば、真空蒸着法やスパッタ法のような気相成膜法等により、前述したような陽極3の構成材料を主材料として構成される導電膜を形成した後、パターニングすることにより得ることができる。
【0071】
[2−B]次に、各陽極3、および、各陽極3の間で露出する第2相関絶縁層26を覆うように、有機半導体層(発光層)4を一体的に形成する。
この有機半導体層4は、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法等を用いた気相プロセスや、スピンコート法(パイロゾル法)、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等を用いた液相プロセス等で形成することができる。これらの中でも、有機半導体層4の構成材料の熱安定性や、溶媒への溶解性等の物理的特性および/または化学的特性を考慮して、有機半導体層4は、液相プロセスにより形成するのが好ましい。
【0072】
具体的には、有機半導体層形成用の液状材料を、液相プロセスを用いて、有機半導体層4を形成する領域、すなわち、各陽極3、および、各陽極3の間で露出する第2相関絶縁層26上に供給し、脱溶媒または脱分散媒した後、必要に応じて、150℃程度で短時間の加熱処理を施す。
この脱溶媒または脱分散媒は、減圧雰囲気に放置する方法、熱処理(例えば50〜60℃程度)による方法、窒素ガスのような不活性ガスのフローによる方法等が挙げられる。さらに、追加の熱処理(150℃程度で短時間)で行うことにより、残存溶媒を除去する。
用いる液状材料は、前述したような発光材料を溶媒または分散媒に溶解または分散することにより調製される。
【0073】
また、液状材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の各種無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0074】
なお、本実施形態では、各有機EL素子1が白色光を発光し、カラーフィルター6により、その光の色調を変換する構成となっていることから、各陽極3および各陽極3の間で露出する第2相関絶縁層26の全面に、有機半導体層4を一体的に形成することができる。
そのため、マスクを用いる必要がないため、これらの形成には、スピンコート法(パイロゾル法)、スプレーコート法等を用いた液相プロセス等が好適に用いられる。
また、このように本実施形態では、マスクを用いる必要がないことから、例えば、マスクの形成工程および除去工程等を省略できるため、表示装置10の製造工程の簡略化および製造コストの削減を図ることができる。
【0075】
[2−C]次に、有機半導体層(発光層)4上に、すなわち、有機半導体層4の陽極3と反対側に、各陽極3に共通の陰極5を形成する。
この陰極5は、例えば、前述したような気相プロセスおよび液相プロセス等により形成することができる。
なお、これらの方法は、陰極5の構成材料の熱安定性や、溶媒への溶解性等の物理的特性および/または化学的特性を考慮して選択される。
なお、本実施形態では、有機半導体層4の全面に、陰極5を形成することから、マスクを用いる必要がないため、これらの形成には、スパッタ法、真空蒸着法を用いた気相プロセス等が好適に用いられる。
【0076】
[3]次に、バンク31が設けられたカラーフィルター基板9を用意する。
[3−A]まず、上基板8を用意し、図3(a)に示すように、上基板8上に、カラーフィルター6を形成する。
[3−Aa]まず、上基板8上に、例えば、フォトリソグラフィー法を用いて、カラーフィルター6を形成する領域に開口部を有するレジスト層を形成する。
【0077】
このレジスト層は、上基板8上に、レジスト材料を液相プロセスにより供給した後に、このレジスト材料を形成するカラーフィルター6の形状に対応するフォトマスクを介してi線、紫外線、電子線等により露光・現像することにより得ることができる。
用いるレジスト材料は、ネガ型のレジスト材料およびポジ型のレジスト材料のいずれであってもよく、カラーフィルター6の構成材料で説明したのと同様のものを用いることができる。
【0078】
[3−Ab]次に、このレジスト層をマスクとして用いて、開口部にカラーフィルター形成用の液状材料を前述したような液相プロセスを用いて供給して乾燥した後、レジスト層を除去することによりカラーフィルター6を形成することができる。
また、カラーフィルター形成用の液状材料は、前述したようなカラーフィルター6の構成材料を溶媒または分散媒に溶解または分散することにより調製される。
液状材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、前記工程[2−B]で説明したのと同様のものを用いることができる。
【0079】
前記液状材料を開口部に供給する方法としては、インクジェット法(液滴吐出法)を選択するのが好ましい。インクジェット法によれば、開口部の内側に液状材料を選択的に供給することができる。そのため、カラーフィルター6R、6G、6Bに対応する各色毎の液状材料を容易に塗り分けすることができる。
なお、レジスト層の除去は、例えば、大気圧または減圧下における酸素プラズマやオゾン蒸気により行うことができる。
【0080】
[3−B]次に、図3(b)に示すように、各カラーフィルター6同士の間、すなわち、上基板8が露出する領域に、ブラックマトリクス7を形成する。
このブラックマトリクス7は、例えば、上基板8が露出する領域に、ブラックマトリクス形成用の液状材料を前述したような液相プロセスを用いて供給した後、乾燥することにより得ることができる。
また、ブラックマトリクス形成用の液状材料は、前述したようなブラックマトリクス7の構成材料を溶媒または分散媒に溶解または分散することにより調製される。
液状材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、前記工程[2−B]で説明したのと同様のものを用いることができる。
【0081】
前記液状材料を上基板8が露出する領域に供給する方法としては、インクジェット法(液滴吐出法)を選択するのが好ましい。インクジェット法によれば、上基板8が露出する領域の内側に液状材料を選択的に供給することができる。そのため、液状材料のムダを省くことができるとともに、カラーフィルター6の上面にブラックマトリクス7の構成材料が付着するのを確実に防止することができる。
【0082】
[3−C]次に、ブラックマトリクス7上に、このブラックマトリクス7とほぼ同じパターンとなるように、すなわち、カラーフィルター6が露出するように、バンク31を形成する。
[3−Ca]まず、図3(c)に示すように、カラーフィルター6およびブラックマトリクス7を覆うように、前述したような気相プロセスおよび液相プロセス等により、バンク31の構成材料により主として構成されるバンク形成膜31’を形成する。
なお、これらの方法は、バンク31の構成材料の熱安定性や、溶媒への溶解性等の物理的特性および/または化学的特性を考慮して選択される。例えば、バンク31を前述したような導電性材料を主材料として構成する場合、バンク形成膜31’を形成する方法としては、スパッタ法、真空蒸着法等を用いた気相プロセスが好適に選択される。
【0083】
[3−Cb]次に、図3(d)に示すように、バンク31を形成する領域、すなわち、ブラックマトリクス7が設けられた領域に対応するレジスト層38をバンク形成膜上に形成する。
このレジスト層38は、バンク31の形状に対応するフォトマスクを用いて、前記工程[3−Aa]で説明したのと同様にして得ることができる。
【0084】
[3−Cc]次に、図3(e)に示すように、レジスト層38をマスクとして用いて、ウェットエッチング法によりバンク形成膜の不要部分を除去して、カラーフィルター6を露出させる。その後、図3(f)に示すように、レジスト層38を除去することによりバンク31を形成する。
ここで、ウェットエッチング法によれば、バンク形成膜の不要部分を除去する際に、サイドエッチング現象が生じることから、バンク形成膜をその厚さ方向に向かって除去することができるとともに、上基板8の面方向に対しても除去することができる。そのため、形成されるバンク31を、上基板8側に向かって、バンク31の厚さ方向に垂直な方向の断面積が大きくなる形状、すなわち、テーパー形状のものとすることができる。
【0085】
なお、ウェットエッチング法に用いるエッチング液としては、特に限定されないが、例えば、NaOH、KOHのようなアルカリ金属水酸化物の水溶液、Mg(OH)のようなアルカリ土類金属水酸化物の水溶液、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの水溶液、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系有機溶媒等が挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。
また、レジスト層の除去は、例えば、大気圧または減圧下における酸素プラズマやオゾン蒸気により行うことができる。
【0086】
[4]次に、TFT回路基板20と、バンク31が設けられたカラーフィルター基板9とを接合させて表示装置10を得る。
[4−A]まず、TFT回路基板20の有機EL素子1が設けられている側の面と、カラーフィルター基板9のバンク31が設けられている側の面とを対向させる。
[4−B]次に、各有機EL素子1と、各カラーフィルター6とが対応するようにした状態で、バンク31と陰極5とが接触するまで、TFT回路基板20とカラーフィルター基板9とを接近させる。これにより、各有機EL素子1がバンク31により取り囲まれるような形態となり、空間36が形成される。
【0087】
なお、この工程は、不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。これにより、空間36内に不活性ガスを確実に充填することができる。
各有機EL素子1と、各カラーフィルター6とが対応した状態で、バンク31と陰極5とを確実に接触させるには、アライメントマーク(図示せず)を双方の基板に予め形成して、これらのアライメントマーク同士が一致するように位置合わせすることにより、比較的容易に行うことができる。
なお、本実施形態では、バンク31が前述したようなテーパー形状をなしていることから、アライメントの精度が低い場合においても、比較的容易に、有機EL素子1を取り囲むようして、バンク31を陰極5に接触させることができる。
【0088】
[4−C]次に、TFT回路基板20とカラーフィルター基板9とを、これらの縁部において形成される間隙を封止する封止部(図示せず)を形成することにより接合する。
封止部は、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂のような有機材料またはその前駆体を含有する液状の封止部形成用材料を、インクジェット法のような液相プロセス等により封止部を形成する領域に供給した後、乾燥させることにより形成することができる。
【0089】
ここで、TFT回路基板20とカラーフィルター基板9との接合は、前記工程[4−B]で説明したようにバンク31と陰極5とを接触させた状態、すなわちスペーサとしてのバンク31を介した状態で行われる。そのため、前記工程[4−B]で形成された空間36の上基板8の厚さ方向に対する幅(高さ)をほぼ一定なものとした状態で、TFT回路基板20とカラーフィルター基板9とを接合することができる。
以上のような工程を経て、表示装置10を製造することができる。
【0090】
なお、本実施形態では、光Lおよび光Lを陰極5側から取り出すトップエミッション構造の有機EL素子1を備える表示装置10に本発明の表示装置を適用した場合について説明したが、このような場合に限定されず、例えば、光Lおよび光Lを陽極3側から取り出すボトムエミッション構造の有機EL素子を備える表示装置に本発明の表示装置を適用することもできる。なお、この場合には、陽極3の下側、すなわち、TFT回路基板20の下側に、カラーフィルター基板9とバンク31とを設けるようにすればよい。
【0091】
<<第2実施形態>>
次に、本発明の表示装置の第2実施形態について説明する。
図2は、本発明の表示装置の第2実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0092】
以下、第2実施形態について、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図2に示す表示装置10は、バンク31に代えて、第1導電部32および第2導電部33で構成されるバンク35を備えていること以外は、前記第1実施形態の表示装置10と同様である。
【0093】
本実施形態では、バンク35は、有機EL素子1側に向かって、バンク35の厚さ方向に垂直な方向の断面積が一定になっている。すなわち、ブラックマトリクス7の有機EL素子1側の面と、バンク35の内面とのなす角度が90°となっている。これにより、バンク35により反射された光Lを、上基板8の面方向に対して比較的垂直に近い角度をなして、カラーフィルター6から出射させることができる。その結果、表示装置10により表示される画像または映像のコントラストが増大することとなる。
また、第1導電部32と第2導電部33とは、ともに、導電性を示し、第1導電部32は、光反射性を要求されるが、第2導電部33は、光反射性を特に要求されない。
【0094】
第1導電部32の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜5μm程度であるのが好ましく、0.5〜2μm程度であるのがより好ましい。
第2導電部33の平均厚さは、特に限定されないが、1〜30μm程度であるのが好ましく、5〜10μm程度であるのがより好ましい。
このような第1導電部32の構成材料としては、導電性を有するものであればよく、各種の導電性材料を用いることができるが、特に、Cr、Au、Al、Niおよびこれらを含む合金のうちの少なくとも1種であるのが好ましい。これにより、形成される第1導電部32は、特に優れた導電性を発揮するものとなる。
【0095】
また、第2導電部33の構成材料としては、導電性および光反射性を有するものであればよく、各種の導電性材料を用いることができるが、特に、Ni、Co、Agおよびこれらを含む合金のうちの少なくとも1種であるのが好ましい。これにより、形成される第2導電部33が銀色に近い色になることから、光Lを、第2導電部33の内面において、その色調を変化させることなく反射することができる。
このようなバンク35は、前記第1実施形態で説明した前記工程[3−C]に代えて、以下のようにすることにより形成することができる。
【0096】
[3−C’]バンク35形成工程
[3−C’a]まず、図5(a)に示すように、カラーフィルター6およびブラックマトリクス7を覆うように、前述したような気相プロセスにより、第1導電部32の構成材料により主として構成される導電膜32’を形成する。
[3−C’b]次に、図5(b)に示すように、バンク35(第2導電部33)を形成する領域に開口部を有し、かつ、その開口部の厚さが形成する第2導電部33の高さとほぼ等しくなっているレジスト層39を導電膜32’上に形成する。
レジスト層39は、バンク35の形状に対応するフォトマスクを用いて、前記工程[3−Aa]で説明したのと同様にして得ることができる。
【0097】
[3−C’c]次に、図5(c)に示すように、レジスト層39をマスクとして用いて、電界メッキ法により、レジスト層39の開口部内に第2導電部33の構成材料を析出させる。その後、図5(d)に示すように、レジスト層39を除去することにより第2導電部33を形成する。
ここで、電界メッキ法によれば、第2導電部33の構成材料の金属塩を含有するメッキ液を第1導電部32に接触させつつ、第1導電部32を陰極として電圧を印加することにより、レジスト層の開口部内に第2導電部33の構成材料を析出させることができる。
また、前記金属塩としては、例えば、硫酸塩、スルファミン酸塩、塩酸塩、硝酸塩等が好適に用いられる。
また、レジスト層の除去は、例えば、大気圧または減圧下における酸素プラズマやオゾン蒸気により行うことができる。
【0098】
[3−C’d]次に、図5(e)に示すように、第2導電部33の開口部、すなわちカラーフィルター6に対応する領域に存在する導電膜32’を除去することにより、第1導電部32を形成して、バンク35を得る。
この導電膜の除去は、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることにより行うことができる。
【0099】
<<第3実施形態>>
次に、本発明の表示装置の第3実施形態について説明する。
図6は、本発明の表示装置の第3実施形態を示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第3実施形態について、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0100】
図6に示す表示装置10は、バンク31が導電性材料により構成され、このバンク31と陰極5とが、導電性を有する接続部34を介して接続していること以外は、前記第1実施形態の表示装置10と同様である。
バンク31を構成する導電性材料としては、前記第1実施形態で説明したのと同様に、主としてAl、Ni、Co、Agおよびこれらを含む合金のうちの少なくとも1種であるのが好ましい。
【0101】
また、接続部34は、導電性を有するものであればよく、特に限定されるものではないが、その電気導電度がバンク31の電気導電度よりも高いのが好ましい。これにより、このバンク31および接続部34を介して陽極3と陰極5との間に電圧を印加する際に、陰極5全体としての電気伝導度をより向上させることができる。
このような接続部34の構成材料としては、バンク31の構成材料に応じて選択すればよく、例えば、Al、Au、Pt、Cuおよびこれらを含む合金のうちバンク31の構成材料よりも抵抗値の低いものが選択される。
【0102】
接続部34の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜3μm程度であるのが好ましく、0.5〜1μm程度であるのがより好ましい。
このような接続部34は、前記第1実施形態で説明した前記工程[2]の後に、バンク31を形成する際に説明した前記工程[3−C]と同様の工程を行うことにより形成することができる。
【0103】
<電子機器>
このような表示装置10は、各種の電子機器に組み込むことができる。
図7は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述の表示装置10で構成されている。
【0104】
図8は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述の表示装置10で構成されている。
【0105】
図9は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0106】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述の表示装置10で構成されている。
【0107】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0108】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0109】
なお、本発明の電子機器は、図7のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図8の携帯電話機、図9のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
以上、本発明の表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
なお、本発明の表示装置は、基板上に陰極、有機半導体層、陰極がこの順で積層されている構成の有機EL素子を備える表示装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の表示装置の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】本発明の表示装置の第1実施形態を示す斜視図である。
【図3】図1に示す表示装置の製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図4】本発明の表示装置の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図5】図4に示す表示装置の製造方法を説明するための図(縦断面図)である。
【図6】本発明の表示装置の第3実施形態を示す縦断面図である。
【図7】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【図10】従来の表示装置の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0111】
1……有機EL素子 3……陽極 31、35……バンク 31’……バンク形成膜 32……第1導電部 32’……導電膜 33……第2導電部 34……接続部 36……空間 38、39……レジスト層 4……有機半導体層 5……陰極 6、6R、6G、6B……カラーフィルター 7……ブラックマトリクス 8……上基板 9……カラーフィルター基板 10……表示装置 20……TFT回路基板 21……基板 22……回路部 23……下地保護層 24……駆動用TFT 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 25……第1層間絶縁層 26……第2層間絶縁層 27……配線 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306…………シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ 900……基板 901……画素電極 902……発光層 903……対向電極 910……有機EL素子 911……カラーフィルター基板 912……カラーフィルター 913……ブラックマトリクス 915……空間 920……表示装置 L、L、l〜l……光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、これらの電極間に設けられ、発光層を含む有機半導体層とを備える複数の有機発光素子と、
各前記有機発光素子を区画するように設けられたバンクとを有し
該バンクの内面を、前記有機発光素子からの光を反射する機能を有する光反射面で構成したことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記バンクは、その幅が前記有機発光素子に向かって小さくなる部分を有する請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記バンクの前記有機発光素子と反対側の面と、前記バンクの内面とのなす角度は、60°以上、90°未満である請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記バンクは、その内面の反射率が60〜99.8%である請求項1ないし3のいずれかに記載の表示装置。
【請求項5】
前記バンクは、その内面の表面粗さRa(JIS B 0601に規定)が100nm以下である請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記有機発光素子の前記バンクと反対側の電極は、光反射性を有する請求項1ないし5のいずれかに記載の表示装置。
【請求項7】
前記有機発光素子が備える一対の電極のうち、少なくとも前記バンク側の電極を共通電極で構成し、前記バンクの少なくとも内面付近を導電性材料で構成し、
該バンクを前記共通電極に接触させることにより、該共通電極の電気伝導度を向上させるよう構成した請求項1ないし6のいずれかに記載の表示装置。
【請求項8】
前記バンクと前記共通電極とは、電気接続部を介して接続される請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記接続部の電気伝導度は、前記バンクの電気伝導度よりも高い請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記導電性材料は、Al、Ni、Co、Agおよびこれらを含む合金のうちの少なくとも1種を主成分とするものである請求項7ないし9のいずれかに記載の表示装置。
【請求項11】
前記発光素子の前記バンクと反対側に、前記有機発光素子への通電のON/OFFを切り替えるスイッチング素子を有する請求項1ないし10のいずれかに記載の表示装置。
【請求項12】
各前記有機発光素子は、いずれも白色光を発光するものである請求項1ないし11のいずれかに記載の表示装置。
【請求項13】
各前記有機発光素子に対応する開口部を備え、前記有機発光素子からの光の透過を阻止するブラックマトリクスが、前記バンクの各前記有機発光素子と反対側に設けられている請求項1ないし12のいずれかに記載の表示装置。
【請求項14】
各前記開口部内には、それぞれ色素層が設けられ、各前記有機発光素子からの光は、前記色素層を透過する際に色調が変換される請求項13に記載の表示装置。
【請求項15】
前記有機発光素子と前記ブラックマトリクスとの間の空間が封止されており、該空間に不活性ガスが充填されている請求項13または14に記載の表示装置。
【請求項16】
前記バンクは、前記ブラックマトリクスのパターンとほぼ等しいパターンで設けられている請求項13ないし15のいずれかに記載の表示装置。
【請求項17】
前記開口部の開口面積は、前記有機発光素子が備える一対の電極のうち、少なくとも平面積が小さい方の電極の平面積より大きい請求項16に記載の表示装置。
【請求項18】
前記平面積が小さい方の電極の平面積をA[μm]とし、前記開口部の開口面積をB[μm]としたとき、B/Aが1.0〜1.5なる関係を満足する請求項17に記載の表示装置。
【請求項19】
前記開口部は、平面視で四角形状をなし、
前記バンクの平均高さをC[μm]とし、前記開口部の平均幅をD[μm]としたとき、D/Cが0.2〜5なる関係を満足する請求項16ないし18のいずれかに記載の表示装置。
【請求項20】
請求項1ないし19のいずれかに記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−157404(P2007−157404A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348543(P2005−348543)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】