説明

表示装置および電子機器

【課題】安定な液体移送と迅速な書き換えが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】下層に複数の液体供給路35,36,37等があり、上層に側壁6に囲まれた画素22が画成されている。そして、スイッチ部を介して下層流路から上層の画素22へインク注入を行うことで表示が可能となる。インク注入動作はスイッチ部の濡れ性を電圧調整して行う。そのため、走査電極43とスイッチ電極56が設けられている。スイッチ部は、画素22の部分を含む上層流路に設けられた撥液体柱8から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を用いて画像を表示する表示装置に関し、特にメモリー性を有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、広告等の目的のために印刷物が広く用いられている。印刷物は照明が存在しない場合には視認できないものの、電力等を消費せずフルカラー印刷などが可能である。また、大量に印刷することが可能であり、安価である。しかし、頻繁に印刷内容を変える場合には、印刷工程から掲示までの時間が長く、短期間に対応することができない。
【0003】
これを補うものとして、低消費電力型の表示装置が模索されている。この一例として、電気泳動現象を用いた表示装置を挙げることができる。しかし、この表示装置は白黒表示できるもののカラー表示に課題を有する。カラー表示の際には、上記の表示装置にカラーフィルタアレイ基板を付加してカラー表示するか、異なる色を発色する複数の表示装置を積層するかの手法が採られる。しかし、カラーフィルタアレイ基板を用いる場合には、白表示輝度が暗くなるという課題を有し、フルカラー表示などには十分な明るさの表示画面を得ることができない。一方、複数の表示装置を積層した場合は、構成が複雑であり、表示装置の個数が増加するため高価であるという課題を有する。
【0004】
以上のカラー化の限界を克服するものとして、特許文献1に示されるような表示装置が提案されている。図46を用いて、この表示装置の動作を説明する。表示装置は、画像表示板72と、セグメント流体列を形成するユニット(以下、セグメント流体列形成ユニットと称す)71とから概ね構成される。セグメント流体列形成ユニット71中では、複数の着色流体を混合することにより、所望の色液体が形成される。この所望の色液体と分断流体を交互にセグメント流体列形成ユニット71から流路中に排出することにより、セグメント流体列が形成される。画像表示板71は、曲がりくねった一本の流路1を有している。この流路1中をセグメント流体列が、セグメント流体列形成ユニット71の排出動作によって移動して行き、所望の表示位置に到達したときに排出動作が停止する。これによって、画像表示板72に所望の画像を形成することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−84166号公報(図4、図5、段落[0034]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示された表示装置は、以下の課題を有する。
【0007】
特許文献1の段落[0034]の記載によると、図47に示される分断流体73としては、表示を担う液体4に対して相溶性の無い液体が推奨されている。この液体列がポンプで加圧されて所望の位置に移動することで所定の表示画像が得られるときに、画素情報を担う液体(以下、画素情報液体と称す)どうしが混合することを避けるためには、上記分断流体の挿入が不可欠となっている。しかし、後方からのポンプ加圧では、液体列断面方向での均一な加圧が期待できない。その結果、加圧方向74への液体移動が進行するに伴い、図47に示すように、画素情報液体どうしの混合が生じる。この混合は、画像表示板中の流路が長い場合には、より深刻な問題となる。
【0008】
また、特許文献1の段落[0034]の記載では、分断流体としては、気体でも可能とされている。しかし、気体は加圧すると圧縮されるため、容易にその体積を変える。このため、画素情報液体どうしの混合を避けるためには、気体の使用は好ましくない。
【0009】
以上のように、特許文献1に開示された技術では、画素情報液体と分断流体が交互に配された列状の流体(以下、画素情報液体列と称す)を安定な状態で移動させることが困難である。
【0010】
そこで、分断流体の量を多くし、画素情報液体間の間隔を大きくとることで、画素情報液体列の混合を避けることができるように思われる。
【0011】
しかし、この場合には、分断流体の体積が増加するため、画像表示板における画素情報液体の体積比が低下する。このため、表示に供せられる画素領域の面積比が低下し、表示画像が暗くなるという課題を有している。
【0012】
本発明の主目的は、画像表示のための液滴移送中において、画素を担う液滴同士が混ざることなく移送可能な表示装置を提供することになる。また、移送中の液滴混合の課題以外の、上記の課題を解決することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の表示装置は、液体を収納できる液室からなる画素と、液体の流通と遮断を制御するスイッチと、該画素に前記スイッチを介して接続された液体供給路および液体排出路と、該画素内に設置され、該画素の内外へ液体の移送を行なう液体移送手段と、を備えることで、上記の主目的を達成できる。つまり、この構成によれば、画素を担う液滴どうしをスイッチで分断できるので、液滴移送中に液滴同士が混ざらない。
【0014】
上記の表示装置において、上記の画素が複数配置されており、該画素の各々に接続された液体供給路は液体供給源から分岐した液体供給路であり、該画素の各々に接続された液体排出路は1つの液体排出溜めに纏められている。この構成によれば、複数の画素を用いた2次元画像の形成が迅速に行なえる。また、画像の消去も迅速に行える。
【0015】
さらに、この表示装置の場合、複数の液体供給源を有し、当該複数の液体供給源の各々から分岐した複数の液体供給路が画素の各々に接続されているものが好ましい。この構成によれば、より迅速に任意色のカラー表示画像の生成を行うことが可能となる。
【0016】
また、以上の表示装置は、上記の画素が配置された領域の下層に液体供給路が配置されており、各液体供給路と各画素との間に配置されたスイッチの各々をマルチプレックス駆動するためのマトリクス電極を有することが望ましい。
【0017】
以上のような表示装置に用いられるスイッチは、流れ方向に物理的に開口するとともに撥液体性表面を有する構造物からなり、該構造物への印加電圧の有無により前記構造物の撥液体性が調整されて液体の流通と遮断を制御するものが好適である。このスイッチを用いることにより、スイッチ内に液体を残存させることなく、液体を分断することが可能となる。また、スイッチ間の画素に液滴が留まるため、表示状態にメモリー性を持たせることが可能となる。
【0018】
以上のような表示装置に用いられるスイッチの、流れ方向の開口部は1箇所、あるいは2箇所存在していることが好ましい。これにより、開口部が多数存在する場合に比べ、液体がスイッチを通過しやすくなるため、スイッチ動作に必要な印加電圧の低減と表示速度の向上とが可能となる。
【0019】
また、本発明に用いられる液体移送手段が、スイッチをなす構造物の撥液体性表面と画素内壁を覆う撥液体性表面とに選択的に電界を印加する電界印加手段で構成されていることが好ましい。あるいは、液体に帯電粒子が分散された液体を用いる場合、液体移送手段は、スイッチをなす構造物の撥液体性表面と該スイッチ以外の流路部とに選択的に電界を印加する電界印加手段で構成されていることが好ましい。つまり、電界印加手段によって電界を印加する位置を液体移送方向に順々に切替えていくことで、安定に液滴を移動させることができる。
【0020】
また、本発明に用いられる電界印加手段は、表示面に平行な方向に電界を印加させられる櫛歯状電極であってもよい。この構成によれば、容易に電極間隔を狭くすることができるので、撥液体性制御のための印加電圧の低減が可能となる。
【0021】
以上のような表示装置を用いることにより、頻繁に内容を書き換えるような用途に対応したフルカラー表示できる電子機器が提供できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、画像表示のための液滴移送中において、画素を担う液滴同士が混ざることなく、安定に液体移送が可能である。スイッチにより画素部に液体を留めることができるため、表示状態にメモリー性を持たせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の表示装置の基本構成を示す平面図である。
【図2】本発明の表示装置の基本構成の応用を示す平面図である。
【図3】本発明の表示装置の基本構成の更なる応用を示す平面図である。
【図4】図3の画素部分の断面図である。
【図5】本発明の表示装置の基本構成の更なる応用を示す平面図である。
【図6】本発明の表示装置の基本構成の更なる応用を示す平面図である。
【図7】本発明の表示装置の基本構成の更なる応用を示す平面図である。
【図8】本発明の表示装置に備わるスイッチの機能を説明するための断面図である。
【図9】本発明の表示装置に備わるスイッチの構成例を示す概略斜視図である。
【図10】本発明の表示装置に備わるスイッチの構成例を示す概略斜視図である。
【図11】本発明の表示装置に備わるスイッチの構成例を示す概略斜視図である。
【図12】本発明の表示装置に備わるスイッチの構成例を示す概略斜視図である。
【図13】本発明の表示装置における流路内の液体の移送を説明する断面図である。
【図14】本発明の表示装置における流路内の液体の移送を説明する断面図である。
【図15】図7の構成の更なる応用を説明する平面図である。
【図16】図15のA−A'断面図である。
【図17】本発明の表示装置の基本構成の更なる応用を示す平面図である。
【図18】図17に電極を重ね書きした平面図である。
【図19】図17の表示装置の書き込み動作を説明する図で、(a)は各電極への電圧印加のタイミングチャート、(b)はその印加タイミングによる液滴の様子を示す平面図である。
【図20】図17の表示装置の消去動作を説明する図である。
【図21】本発明の表示装置を適用した電子機器の例を示す図である。
【図22】本発明の第1の実施の形態を説明するための平面図である。
【図23】図22の形態に適用できる液体移送手段の例を示す断面図である。
【図24】図22の形態の液体移送経路に好適な構成例を示す断面図である。
【図25】本発明の第2の実施の形態を説明するための平面図である。
【図26】本発明に用いられる液滴混合手段の構成例を示す概略平面図である。
【図27】液体混合手段のより詳細な構成例を示す概略平面図である。
【図28】本発明の第2の実施の形態に用いられる液体混合素子において、流路が交差する場合の取り扱いを説明する図である。
【図29】本発明の第3の実施の形態を説明するための平面図である。
【図30】図29のA−A'断面図である。
【図31】第3の実施の形態の表示装置に用いられる電極レイアウトと比較するための図である。
【図32】第3の実施の形態の表示装置に用いられる電極レイアウトを説明する図である。
【図33】本発明の第4の実施の形態を説明するための平面図である。
【図34】図33のB−B'断面図である。
【図35】第4の実施の形態の表示装置を構成する上層基板の製造方法を説明する工程図である。
【図36】第4の実施の形態の表示装置を構成する中層基板の製造方法を説明する工程図である。
【図37】第4の実施の形態の表示装置を構成する下層基板の製造方法を説明する工程図である。
【図38】第4の実施の形態の表示装置の製造方法を説明する工程図である。
【図39】第5の実施の形態の表示装置に備わるスイッチの構成例を示す概略斜視図である。
【図40】図39のスイッチを液体が通過するときのメニスカスを説明する概略正面図である。
【図41】図9のスイッチを液体が通過するときのメニスカスを説明する概略正面図である。
【図42】第5の実施の形態の表示装置に備わるスイッチの構成例を示す概略斜視図である。
【図43】図42のスイッチを液体が通過するときのメニスカスを説明する概略正面図である。
【図44】第6の実施の形態の表示装置に備わるスイッチの構成例を示す概略斜視図である。
【図45】櫛歯電極の形状を説明する概略正面図である。
【図46】従来の表示装置の構成を説明する平面図である。
【図47】従来の表示装置の課題を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、本発明の表示装置の基本構成および、その応用例について図を用いて説明する。なお、下記の説明において同一の機能部には同一符号を用いている。
【0025】
図1に本発明の基本構成を示す。本発明の表示装置において、表示画像を構成する画素22は、液体を収容できる液室からなる。そして、このような画素22に、液体供給路19および液体排出路46がスイッチ3を介して接続されている。液体供給路19、液体排出路46および画素22は共に、側壁と上面および下面で囲われて、流路を形成している。スイッチ3は、流路における液体の流通と遮断を制御するものである。さらに、画素22の内外へ液体の移送は液体移送手段18によって行なわれる。
【0026】
このような装置の表示動作の概要を説明する。例えば、画素22の上面を透明に構成し下面を白色に塗装しておき、着色した液体(インク)を画素22内に導入することで画素22を色変化させて表示動作を行う。着色液体は、液体供給路19から供給される。スイッチ3は、液体供給路19からの液体を遮断している。図左側のスイッチ3を開放すると、液体供給路19より画素22内に液体が供給される。画素22内に進入した液体は、図右側の閉じているスイッチ3の手前まで進入する。この後、図左のスイッチ3を閉じる。この結果、画素22内の液体は閉じ込められるため、左右のスイッチ3が開放されない限り、画素22内に留まることになる。以上のようにして、メモリー性を有する表示状態を作り出すことができる。
【0027】
画素22内の液体を排出する際は、以下のように行う。図左側のスイッチ3を閉じたまま、図右側のスイッチ3を開放する。この結果、毛細管現象により、画素22内より液体排出路46へ液体を排出することができる。しかし、画素22内から完全に液体を排出するためには、液体移送手段18を同時に用いる必要がある。これら、スイッチ3の構成や液体移送手段18の構成に関しては、後述する。
【0028】
次に、図2を用いて、上記の基本構成の応用を説明する。
【0029】
この図に示す装置は、図1の単位を直列に接続したものである。すなわち、液体が図左から右へと移送されていくように、上流の画素22の液体排出路46がすぐ下流の画素22の液体供給路19と接続されている。また、画素間の接続路には、液体移送手段18が配置されている。図2では、最左端の液体供給路19から供給された液体は、スイッチ3の開放に応じて画素22内に進入する。この後、画素22内から液体を排出する際には、画素と画素間の接続路とに設けられた液体移送手段18が用いられる。以上のようにして、液体は画素あるいは画素間の接続路へと移送されていく。本発明においては、特許文献1に開示された技術とは異なり、液体はスイッチ3によって分断されている。このため、特許文献1に述べられているような分断流体を必要としない。この結果、使用する液体量を少なくすることができる。また、スイッチ3で液体が分断されているため、液体移送時に液界面が不安定になり各液体が混合してしまう虞がなく、安定な液体移送が可能である。また、直列接続した画素22を図46に示すような蛇行形状に配置することにより、表示画面を構成することができる。
【0030】
次に、図3および4を用いて、上記の基本構成の更なる応用を説明する。
【0031】
この図に示す表示装置は、流路1と、スイッチ3と、流路1の一端部にスイッチ3を介して接続された液体混合手段21とを含む。流路1の一部が液体を収容する画素22となっている。液体混合手段21は、液体Aと液体Bを供給する二本の供給路19,20の各々から液体を導き入れて混合する領域である。これにより、所望の色の着色液体を得ることができる。図3では、1つの液体混合手段21と2本の液体供給路19,20しか示していないが、これらの数は限定されない。例えば、赤、青、緑および透明液体の4種類の液体や、イエロー、マゼンタ、シアン、および黒の4種類の液体を混合することにより、任意の色の着色液体を得ることが可能である。この後、スイッチ3を開放することで、着色液体を、画素22を含む流路1に送ることができる。
【0032】
この構成では、液体混合手段21と流路1をスイッチ3を介して接続することにより、液体の混合動作タイミングと移送動作を時間的に分けることができ、安定な液体混合と安定な液体移送を実現することができる。
【0033】
また、流路1の一部は、着色流体を収容する画素22となっている。図3では、画素22が矢印形状のシンボルとして形成されている。したがって、画素22に着色液体を流入することにより、任意の色の矢印表示を得ることができる。画素22に対応する流路内面をそれ以外の部分の色と一致させておく。こうしておくと、画素22に着色液体が流入されない場合には、画素22の部分とこれ以外の部分との区別ができないため、矢印形状のシンボルが認識されない。一方、画素22に着色液体が流入した場合には、画素22の部分の色が他と変わるため、矢印形状のシンボルを認識することができる。特に、液体混合手段21での液体Aと液体Bの混合比率を変えることにより、任意色の着色液体を生成し任意色の表示を行わせることができる。
【0034】
図4に図3の画素部分の断面図を示す。画素22は、白色反射体59を有する基板77と透明基板78の間隙として形成されている。画素22以外の部分では、透明側壁63を介して上下の基板77,78が張り合わされている。図4(a)に示す状態では、画素22内に着色液体が導入されておらず、画素領域と非画素領域は白色を呈している。図4(b)では、画素領域に着色液体が導入されているため、画素領域と非画素領域が異なる色を呈する。
【0035】
図3では、画素22が矢印形状のシンボルとして形成されている。したがって画素22に着色液体が流入されない場合には、画素領域と非画素領域との区別ができないため、矢印形状のシンボルが認識されない。一方、画素22に着色液体が流入した場合には、画素領域の色が他と異なるため、矢印形状のシンボルを認識することができる。
【0036】
なお、液体混合手段21を図2の構成と組み合わせることもできる。これを図5に示す。但し、図5では、液体移送手段18を割愛している。図5の表示装置では、流路1の複数の部分に画素22が画成され、隣り合う画素22間にスイッチ3が設けられている。この構成によると、スイッチ3の開閉動作を制御することにより、液体混合素子21で混合された任意の着色液体を図左から右方向の画素22へ転送することができる。したがって、一方向にドットを表示させることが可能となる。また、図46に示された従来例のように、1本の流路1を蛇行させて画素22を2次元的に配置することにより、マトリックス表示が可能となる。さらに、流路1の終端の画素22には液体を排出する排出路46がスイッチ3を介して接続されている。このため、画像を消去したい場合には、スイッチ3を開放し、各画素22内の液体を液体排出路46へ排出することができる。
【0037】
また、本発明では、図5の構成を画素行もしくは画素列ごとに配置することにより、マトリックス表示を行える表示画面を構成することも可能である。この構成を示した図が図6である。すなわち、ドットマトリックス型の表示画面を形成する場合は、表示画面の各画素行もしくは各画素列に、図6に示すように画素22とスイッチ3と液体混合手段21などを直線的に配置する。これにより、図5の構成で1本の流路1を蛇行させて2次元表示を可能にする場合と比較して、移送距離を短くすることができ、より早い画面の更新が可能となる。なお、図6では、画素行毎に図5の表示装置を配置する構成を示したが、その配置及び画素数は図に限定されない。
【0038】
次に、図7を用いて、上記の基本構成の更に別の応用を説明する。図2〜6に示した構成では、一本の流路で接続された画素群の一端で所望の色の液滴を生成し、当該流路の各画素領域に順次液体を移送して画像表示を行っている。これに対し、図7に示す構成では、表示画面を構成する複数の画素22が二次元的(マトリックス状)に配置され、画素22毎に液体供給路(液体供給路19A、液体供給路19B20)が直接接続されている。さらに、各画素22と各供給路19A,19Bの接続部にはスイッチ3が配設されている。これにより、より迅速に画素22への液体供給が可能となる。つまり、本構成では、各画素22で液体混合を行う。また、図示していないが、画素22内には液体移送手段18が備えられている。
【0039】
さらに、各画素22には液体を排出する液体排出路46がスイッチ3を介して接続されている。このため、表示した画像を消去したい場合には、液体排出路46のスイッチ3を開放し、液体移送手段(不図示)を動作させることにより、画素22内の液体を液体排出路46へ排出することができる。このように、各画素22に液体排出路46を接続することにより、より迅速に表示画像を消去することが可能となる。
【0040】
また、図7では、各画素22に対して液体供給路19A、液体供給路19Bなどの複数の液体供給路がそれぞれスイッチ3を介して接続されている。そのため、各液体供給路19,20のスイッチ3を独立に制御することにより、一画素内に二種類の液体を任意の比率で注入することができる。これら液体供給路19Aおよび19Bは、2種類の液体の液体供給源(不図示)の各々から分岐して各画素22に接続されたものである。例えば、前記2種類の液体が異なる色を呈している場合、これら液体の注入比率を変えて、任意の混色を作り出すことができる。
【0041】
尚、図7では、各液体供給源から分岐した複数の液体供給路19A,19Bは、画素列方向に並んだ各画素22と接続されている。また、液体排出路46については各画素行に沿って配設され、画素行方向に並んだ各画素22と接続されている。そして、液体排出路46は下流側で1つの液体排出溜め(不図示)に纏められている。
【0042】
次に、本発明に用いられるスイッチ3の機能を図8を用いて説明する。本発明では、図8に示すように、2枚の基板2間に形成された流路1中に、スイッチ3が配置される。スイッチ3は、それへの印加電圧のオンオフ動作により、液体4を通過させたり液体4の流通を遮断することができる。図8(a)の左端の流路1中の液体4は、オフ状態のスイッチ3で進行が阻止されている。この状態からスイッチ3をオン状態にすることにより、図8(b)に示すように、流路1の中央部まで液体を誘導することができる。しかし、図右側のオフ状態のスイッチ3により、それより先への液体4の進行は妨げられることとなる。次に、図8(c)に示すように、図左右のスイッチ3をオフにすることにより、液体4は流路1の中央部に閉じ込められる。次に、図8(d)に示すように、図右側のスイッチ3をオンすることにより、中央部の液体4を右端の流路1まで誘導することができる。このように本発明においては、スイッチ部の動作により、液体の流通および停止を行うことができる。
【0043】
本発明においては、スイッチ3をオフ状態にすると、その履歴に関係なく、スイッチ3に液体4は留まらない。すなわち、オフ状態のスイッチ3はスイッチ3の領域に液体4を残留させない。このため、一度スイッチ3を通過させると、液体4は分断される。以上のように本発明では、液体をスイッチ3によって分断することができる。この分断できる特性が、後で述べる液滴の安定な転送に必須である。
【0044】
さらに、スイッチ3の、より詳細な構成例を図9、10、11、12を用いて説明する。スイッチ3としては、流路1内に、流れ方向に物理的に開口した、撥液体性表面を有する構造物が配置された領域を適用できる。この構造物は、電圧供給により撥液体性を調整することができる。この例として、図9を挙げることができる。図9では2枚の基板2間に側壁6に囲まれた流路1が形成されている。流路1中には、撥液体性を有する柱(以下、撥液体柱と称す)8が互いに間隔を置いて形成されている。
【0045】
撥液体柱8の材質は液体に応じて選ぶことができる。たとえば、液体が親水性の場合、撥液体柱8としては親油性の材質やフッ素系材質により作製することができる。また、液体が親油性の場合、フッ素系材質により撥液体柱8を作製することができる。あるいは、適当な材質で柱を形成後、表面改質をすることにより撥液体性を柱表面に持たせることもできる。いずれにしても、柱自体もしくは柱表面の材質を適当に選択することにより、撥液体柱8を作製することができる。このような撥液体柱8を密に流路1内の一部に配置することにより、スイッチ3として機能させることができる。電界に曝されていない撥液体柱8に流路1内の液体が接すると、このスイッチ3内に液体は侵入できない。
【0046】
流路1の上下あるいは左右には電圧を印加する電極が用意される。図9では、電極7が流路1の上下に用意されている。いずれの電極配置にしても、撥液体柱8を電界に曝すことにより、撥液体柱8表面の撥液体性は低下する。このため、流路1内の液体が、撥液体柱8が配置された領域(スイッチ3)に進入することが可能となる。
【0047】
液体がこのスイッチ3を越えて流路の向こう側に達した後、電極7への電圧供給を停止する。これにより、撥液体柱8の撥液体性が回復する。このため、スイッチ3内の液体は流路1の上流側と下流側に分断される。撥液体柱8を密に配置することにより、スイッチ3内に残留する液体は無くなる。
【0048】
以上のように、本発明では、撥液体性表面を有する構造物を流路1中に配置し、その構造物の撥液体性を電極7間への印加電圧のオンオフ操作により調整することにより、スイッチ部にて液体の流通と遮断を実現することができる。
【0049】
上記の撥液体性構造物の構造は、図9に示した円柱状に限らず、図10のような角柱の構成でもよい。図9および図10の構造は、フォトリソグラフィー工程や印刷工程などにより、作製することができる。
【0050】
また、撥液体性構造物の構造は、図11に示すような多孔質材9でもよい。たとえば、キセルゲルやパイロゲルといわれる化学物質で作製することが可能である。この場合も、流路1内に配置された多孔質材9はその上流側と下流側を物理的に連続な孔を通じて繋いでいる。但し、孔の表面自身は撥液体性を有している。このような撥液体性は前述と同様に電界印加によって調整可能である。
【0051】
さらに、撥液体性構造物は図12に示すような繊維材10であってもかまわない。この場合、流路1内の所定のエリアに流路1に沿って繊維材10が配置され、その上流側と下流側を繊維同士の間隙を通じて繋いでいる。繊維材10の各繊維表面は撥液体性を有し、その撥液体性は前述と同様に電界印加によって調整可能である。
【0052】
次に、本発明に用いられる液体移送手段18について図13を用いて説明する。図13では、スイッチ3に撥液体柱8を用いた例を示している。そして、液体4を移送する流路内壁が、電界に曝すと撥液体性が低下する撥液体性表面30となっており、液体移送手段18が、スイッチ3や撥液体性表面30に電界を印加できる電極から構成されている。この構成において、図13(a)に示すように図左端の流路中に液体4の液滴が存在するとき、液滴は、撥液体柱8のために図右側へ進行できない。そこで、図左側の撥液体柱8(スイッチ3)と流路中央部(図左右の撥液体柱8に挟まれた流路部)とに対応する上下一対の電極である液体移送手段18に電圧を印加すると、その領域の撥液体性が低下し、図13(b)に示すように液滴が流路中央部へ移動する。次に、上記の電圧印加を停止すれば、液滴は流路中央部に留まる(図13(c))。この状態は、電圧を印加しない限り維持される。すなわち、メモリー性が発現する。次に、図右側の撥液体柱8と流路右端部とに対応する上下一対の電極である液体移送手段18に電圧を印加すると、その領域の撥液体性が低下する。これに加え、流路中央部はすでに撥液体化している。このため、液滴は速やかに流路中心部から流路右端部へと移動する。以上のように、電圧を印加する位置の切替え動作と流路内部のエレクトロ・ウェッティング現象を用いることにより、圧送ポンプ等を用いることなく、速やかな液滴の移送が可能となる。また、液滴移送前の流路部位中に液体が残留することも無くなる。さらに、2つのスイッチ部に挟まれた撥液体性表面を有する流路は、安定な液滴停止状態と確実な液滴転送を可能とする。
【0053】
図2および図5の構成では、上記のような液体移送手段18を少なくとも、画素22と、画素22間の接続路との夫々に対して備える必要がある。また、図1、図3および図7の構成では、少なくとも画素22内に液体移送手段18を備える必要がある。
【0054】
また、上記のような撥液体性を利用した液体移送に限らず、本発明では、帯電粒子を分散した液体を電気泳動させて液体移送を行うことも可能である。例えば、図14(a)を参照すると、帯電粒子分散液体80の液滴が図左端の流路内に位置している。帯電粒子分散液体80中には、帯電した微粒子が分散されている。その帯電極性は微粒子を選択することにより決めることができる。図14では、スイッチ3に撥液体柱8を用いた例を示している。はじめに、図左側の撥液体柱8からなるスイッチ部に電界を印加し、当該スイッチを開放する。さらに、流路中央部(図左右の撥液体柱8に挟まれた流路部)の、液体移送手段である電極に電圧を印加する。この電圧極性に応じて、図14(b)に示すように帯電粒子分散液体80は、流路中央部に進入する。この後、上記の両電圧印加を停止する。この結果、図14(c)に示すような、安定な液滴停止状態を得ることができる。再度、液滴を移送するためには、図右側のスイッチを開放し、図右端の流路部の液体移送手段に電圧を印加する。以上のようにして、液滴を電気泳動させて液体移送を行なう。本構成では、液体移送の駆動力として、電気泳動現象を用いているため、図13の構成のように流路内壁を撥液体性表面で覆う必要がない。
【0055】
次に、図15および図16を参照し、上述した図7の構成の更なる応用を説明する。図7の構成と相違する点は、各画素22に直接繋がる液体供給路が、複数の画素22からなる表示領域の下層に配設されていることである。
【0056】
図15はこの表示装置の平面配置を示している。図16は、図15のA−A'断面の構造を示している。図16から分かるように、本表示装置は液体供給路19が下層に配置され、上層に画素22が配置されている。図15に示すように、下層では、液体供給源(不図示)から分岐した各液体供給路19が画素列方向に配設されている。一方、上層では、画素22は個別に側壁(点線で示す。)に囲われており、スイッチ3を介して液体排出路46と接続されている。下層の液体供給路19と上層の画素22は、図16に示すような断面構造で互いに接続されている。具体的には下層の液体供給路19は液体孔38を介して上層の画素22と接続されている。液体孔38の周辺にはスイッチ3が設けられている。画素22の内壁は、電界に曝すと撥液体性が低下する撥液体性表面30となっている。図16では、撥液体柱からなるスイッチ3を図示している。図16(a)に示すように、走査電極43および信号電極81に電圧が印加されていない状態では、下層の液体供給路19中の液体は液体孔38から上層へ盛り上がった液面を形成している。この液面レベルは、液体供給源の圧力を調整することにより制御することができる。走査電極43と信号電極81に電圧が印加されると、スイッチ3が開放される。これに従い、図16(b),(c)に示すように、液体が画素22内へ進入する。この後、電圧印加を停止すれば、図16(d)に示すように、スイッチ3により液体が分断される。以上のようにして、下層の液体供給路19から上層の画素22内へ適量の液体を供給することが可能となる。
【0057】
図15では、上層と下層の平面配置を透視する形で示している。液体孔38周辺のスイッチ3を開閉するために、画素行を選択する走査電極43と画素列を選択する信号電極81がマトリクス状に配置されている。以上のような構成のため、走査電極43を順次選択し、これに応じた信号を信号電極81に加えることにより、所望の画素内に液体を注入することが可能となる。このようなマトリクス配置により、通常の表示装置のマルチプレックス駆動を用いることができる。
【0058】
以上のように、本発明では各画素まで各液体の流路を用意することにより、表示動作させることが可能である。特に、画素から画素への液体の移送をさせる必要がないため、迅速に表示画面を作ることが可能である。
【0059】
また、図15に示したように、画素列毎に液体排出路46を配置し、各画素22とスイッチ3を介して接続させておく。この液体排出路46は上層あるいは下層に配置することができる。また、液体排出路46に接続されたスイッチ3を開閉するために、排出電極44を画素列に沿って配置している。このため、画像を消去する場合、全走査電極と全排出電極に電圧を印加して液体排出路46のスイッチ3を開放すれば、全画素内の液体を液体排出路46に排出することができる。
【0060】
次に、図17〜20を参照し、上述した図7の構成の更なる別の応用を説明する。図15の構成では、一画素に一本の液体供給路が液体孔およびスイッチを介して接続されていた。これに対し、図17に示す表示装置では、一画素に複数の液体供給路がそれぞれ液体孔およびスイッチを介して接続されている。具体的に図17を参照すると、液体を収容できる液室である3つの画素22(点線で囲まれた部位)が縦方向(列方向)に並んで配置されるとともに、それぞれの画素22の区域が横方向(行方向)に延びている。そして、各画素22に6本の液体供給路が6個のスイッチ3を介して接続されている。図17では、3つの画素22が形成された平面領域の下層に、赤色液体用の液体供給路R34、緑色液体用の液体供給路G36、青色液体用の液体供給路B37、および3本の透明液体用の液体供給路C35が配置されている。液体供給路の本数は、これに限るものではなく、必要な色数の液体供給路を配置することができる。図17の表示装置では、赤、緑、青および透明液体で色の調整が可能であり、任意の色が生成可能である。また、液体色をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等に変更することも可能である。また、図17に示すように、各液体供給路の、液体孔38を有する部分に迂回路を設けている。これにより、各液体孔38から液体が上層の画素22内へ噴出しても、その噴出した部位よりも下流側の流路に液体を安定的に供給することができる。なお、図17のA−A'断面は、図16に示した構造と同一のものでよい。
【0061】
また、図17に示す画素22をマトリックス状に配置すれば、任意のカラー画像を表示することができる。
【0062】
図18は、図17に電極構造を重ね書きした図である。図18では、横方向(画素行方向)に延びる各画素に対応するよう3つの走査電極43が配置されている。さらに、信号電極R39,信号電極G40,信号電極B41,および3つの信号電極C42が各色の液体供給路に沿って対応配置されている。これにより、各液体孔38のスイッチ3が起動させられる。さらに、各画素に対する液体排出動作のための排出電極44が、液体排出路46に対応して配置されている。
【0063】
図18に示した各電極への電圧印加例を図19に示す。走査電極S1からS3は、図19(a)に示すよう、各タイミングで走査される。一方、信号電極R,G,B,C1,C2,C3の各々には、図19(a)に示すような電圧が印加される。例えば、図19(a)に示すように走査電極S1が選択されている第1タイミングでは、赤色液体(R)、緑色液体(G)、青色液体(B)の各液体供給路のスイッチ部3には十分な電圧が印加されない。一方、透明液体(C1、C2、C3)の液体供給路のスイッチ3では十分な電圧が印加される。このため、透明液体のみが画素内22に放出される。したがって、画素22の下地の色が白地の場合、図19(b)に示す第1行目の画素では白色が表示されることとなる。
【0064】
一方、図19(a)に示すように走査電極S2が選択されている第2タイミングでは、赤色、緑色および青色用の液体供給路のスイッチ3に電圧が印加され、3つの着色液体が画素領域に広がることとなる。この結果、図19(b)に示す第2行目の画素では黒表示が行われることとなる。
【0065】
同様に、図19(a)に示すように走査電極S3が選択されている第3タイミングにより、図19(b)に示すように赤色の液体のみが画素中に広がることとなり、赤表示が行われることとなる。
【0066】
本構成によれば、画素領域の下層に液体供給用の流路を複数種類配置したことにより、図17〜19に示したように走査電極と信号電極をマトリクス状に配置することが可能となる。このため、このようなマトリクス電極の交点のスイッチ3をマルチプレックス駆動することが可能となる。
【0067】
また、本構成によれば、画素部分に直接所望の混合比の液体を注入することが可能であり、任意色のカラー表示が可能である。以上の説明から分かるように、液体供給路の内面は、撥液体性表面である必要がない。むしろ、迅速な液体補給を行わせるためには、親液体性表面である方が望ましい。
【0068】
以上、図17の構成の各画素に対する書き込み動作について説明した。以下では、図20を用いて消去動作について説明する。図17の構成では、各画素の表示色を更新するには、一度溜まった画素中の液体を排出する必要がある。そこで、図17及び図18に示すような液体排出路46、排出電極44、および液体排出路46用のスイッチ3が表示装置に設けられている。図20では液体排出路46は、他の液体供給路と同様に下層に設けられているが、上層に設けてもよい。
【0069】
図20では、すでに画素内に広がった着色液体をハッチング(斜線部)で示している。更に、図20では、以降の説明のために各列の電極にE、R,C1,G,C2,B,C3と、各走査電極にS1,S2,S3と表記している。
【0070】
図20(a)は縦に並んだ3画素内すべてに液体に満たされている状態をハッチングで示している。画素内の液体を排出するために、走査電極S1,S2,S3をすべて同時に選択する。この後、電極C3以外の列電極E、R,C1,G,C2,Bと全走査電極S1,S2,S3との間に電圧を印加する。この結果、排出電極Eに対応したスイッチ3が開き、液体排出路46への液体の排出が可能となる。液体排出路46は表示装置外部へ延びている。一方、列電極C3付近の液体は、画素22内面が撥液体性のために排除され、他の電圧印加されている列電極付近に移動する。この結果、図20(b)のハッチング領域に示すように、画素内の液体領域は左側へ移動する。この後、列電極Bと全走査電極間への電圧印加を停止する。すなわち、電極BとC3以外の列電極E、R,C1,G,C2と全走査電極S1,S2,S3との間に電圧を印加する。この結果、図20(c)に示すように、さらに画素内の液体領域は左側へ移動する。以下、同様の手順を繰り返して、液体領域を順次左方向に移動させて、最終的には図20(d)に示すように画素内の液体を液体排出路46に排出することができる。
【0071】
また、上記の図1〜20に示した表示装置を用いて、図21に示すような電子機器を製造することが可能である。図21に示す電子機器47では、アンテナ49を搭載することで、表示装置48で表示させる画像の書き込みデータを無線を介して、受信できるようにしてもよい。また、表示装置48と前面あるいは背面に太陽電池50を搭載して、表示装置48の充電動作を自動で行わせるようにしてもよい。特に、表示装置48の前面に、透明な太陽電池50を搭載すると、表示装置48の消費電力の一部を賄うこともできる。
【0072】
また、表示装置48の前面もしくは背面に光源を搭載して、反射表示や透過表示を行わせることができる。反射表示は、例えば図6や図7などに示す画素領域の下地を白色化することで実施することができる。この場合には、夜間のように照明の期待できない場合、図21に示すように照明装置51を点灯させることができる。また、図6や図7などに示す画素領域の下地を透明化することにより、透過表示させることもできる。この場合には、電子機器47の内部に液晶表示装置などに用いられるバックライトを持ち込んでもよい。
【0073】
あるいは、図6や図7などに示す画素領域の下地を白色と透明の二種類にすることにより、透過表示あるいは反射表示に兼用させることもできる。
【0074】
「本発明の実施の形態」
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、説明において前述した構成要素と同じ機能を有するものには同一符号を使用している。
【0075】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態について、図22を参照して説明する。
【0076】
図22に示される表示装置では、画素22とスイッチ部3を交互に連続して接続し、この連続した画素22を蛇行させて2次元的(マトリックス状)に配置することで、表示画面が形成されている。図左上の画素22には、赤(R),透明(C),緑(G),青(B)の液体を供給するために4本の液体供給路34,35,36,37がそれぞれスイッチ3を介して接続されている。したがって、図左上の画素22は液体混合素子21を兼ねる。また、連続した画素群の終端(図右下の画素)は液体排出路46にスイッチ3を介して接続されている。4本の液体供給路34,35,36,37と液体排出路46の内壁は、親液体性表面で覆われることが望ましい。一方、画素22内は液体の移送動作を迅速に行わせるために撥液体性表面で覆われるとともに、該撥液体性表面に電界を加える電極を液体移送手段として備えることが望ましい。
【0077】
本形態の表示装置では、図左上の画素22に任意の比率の着色インクが4本の液体供給路34,35,36,37からスイッチ3を介して供給される。供給するインクの比率は、各色のスイッチ3を開放する電圧や時間によって制御される。この後、隣接する画素22間のスイッチ3を開放して移送動作を行い、次の画素22に着色インクを転送し、図左上の画素22を空にする。空になった図左上の画素22に対して、再度インクの注入が行われる。以上を繰り返して、所定の位置までインク液滴が移送されたら、画素間のスイッチ3を閉鎖する。これにより、安定な表示状態(メモリー性)を得ることができる。表示を消去する際は、液体排出路46へのスイッチ3を開放し、液滴の移送動作を繰り返す。
以上のようにして、表示画像の書き込み、メモリー、および消去を実現する。
【0078】
この実施の形態では、複数のインク供給流路の配置を簡単化することができる。
【0079】
次に、上記実施形態の表示装置に用いられる液体移送手段の例を、図23、図24を用いて説明する。図23および24は表示装置の画素部を含む流路断面を示す。
【0080】
図23においては、流路上部の基板には共通電極11が配置されている。また、流路下部の基板には、スイッチ電極A14、スイッチ電極B15、流路電極A12、流路電極B13がこの順番の繰り返し周期で配置されている。スイッチ電極A14およびスイッチ電極B15上の流路中には撥液体性構造物が配置され、これによりスイッチ3を構成している。図23(a)に示すスイッチ3間の流路にはすでに液滴が存在している。また、スイッチ3以外の流路内壁表面は撥液体性を有し、電界に曝すと撥液体性が低下する。
【0081】
流路電極B13とスイッチ電極A14に電圧を供給すると、各液滴に移送が生じる。これが、図23(b)の状態である。この後、流路電極B13への電圧供給を停止し、スイッチ電極A14およびスイッチ電極B15に電圧を供給する。流路電極A12、B13上の流路はすべて撥液体化するために、各液滴はスイッチ3内に移動する(図23(c))。次に、スイッチ電極A14への電圧供給を停止し、スイッチ電極B15と流路電極A12に電圧を供給すると、各液滴は隣の流路へ移動する(図23(d)〜(f))。
【0082】
以上のようにして、スイッチ3間の流路を液滴が存在しない状態にすることなく連続して安定に液滴を移送することが可能となる。
【0083】
あるいは、本表示装置では、図24に示すように液滴の移送流路を構成することもできる。図24では、流路1の高さが部分的に異なっている。そのため、一定の体積の液滴を移送する場合には、浅い流路部の液流方向(図横方向)のサイズを大きくとり、深い流路部の流路方向(図横方向)のサイズを小さく取ることができる。
【0084】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態について、図25を参照して説明する。
【0085】
図25に示す形態の表示装置は、画素行毎に液体混合手段21を備えている。液体混合手段21において複数の着色液体を混合することにより所望の色の液体が生成され、その後、側壁6に囲まれた流路1中に移送されてくる。流路1中にはスイッチ3と画素22(液室)が交互に配置されている。このため、各色の液滴が順々に流路1の右方向へ移送される。右端の画素22に液滴が到達すると転送が停止する。以上のようにして、画素行毎の流路1に液滴を移送することにより、各液滴が所定の画素位置に到達し、表示画像が完成する。
【0086】
流路1内の画素22の部分を透明にすれば、表示装置の背面に面光源を配置して透過型表示装置として動作させることができる。また、流路1の画素22の部分に対応する下地の色を白色にすれば、反射型表示装置として動作させることができる。いずれの場合も、黒色液滴が移送されてきた画素は黒表示することができる。また、透明液滴が移送されてきた画素は白表示させることができる。
【0087】
画像を更新する際には、表示画像を形成している液滴を排出路46に移送して消去する。図25では、画素22の面積と、画素22間のスイッチ3の面積とが異なる。このため、図24に示すように、流路1の浅い部分を画素部に、深い部分を画素間のスイッチ部に当てている。以上のようにして、面内の面積変化を流路内の深さを変えて一定の体積の液滴を移送している。この結果、図24に示す流路レイアウトでは、表示における画素面積の比率を大きくとることができている。
【0088】
図25の下方に図示したように、画素22とスイッチ3を記号を用いて略記することができる。図26にこの略記法を用いて液体混合手段21の構成例を示す。図26では、赤インク溜め23、緑インク溜め25、青インク溜め26の各々に透明インク溜め24が併設され、赤インク、緑インク、青インクはおのおの透明インクで濃度調整され最終的に混合される。しかし、液体混合手段21は図26に示す構成に限定されるわけではない。たとえば、赤インク、緑インク、青インクが先に混合・調整され、その後に透明インクで濃度調整されてもよい。また、インク色もこれに限る必要はなく、赤インク、緑インク、青インク、黒インクから構成されてもよい。また、イエローインク、マゼンタインク、シアンインクを混合してもよい。
【0089】
図27に、液体混合手段21のより詳細な構成例を示す。図27では、流路1は、左端で液体供給路19Aと液体供給路19Bの二つに分離されている。液体供給路19Aおよび液体供給路19Bはそれぞれ上流側で液体溜め(不図示)に接続されている。液体供給路19Aと液体供給路19Bの流路1側端部にはそれぞれ、前述した構成のスイッチ3が構成されている。
【0090】
液体を混合するため、初めに、液体供給路19Aのスイッチ3に対応する混合電極A16に電圧を印加して、液体Aを流路1に誘導する。この後、液体供給路19Bのスイッチ3に対応する混合電極B17に電圧を印加して、液体Bを流路1に誘導する。この際に、2つのスイッチ3に印加する電圧と印加時間を調整することにより、液体Aおよび液体Bの混合比を調整することができる。しかる後、液体移送手段18を用いて、すでに述べた手順で混合液体を図の流路1の右方向へ移送することができる。
【0091】
より多数の液体を混合する場合には、図27に示す構成を直列あるいは並列に接続して実現することができる。例えば、図27に示す流路1の上流側端部あるいは下流側端部に、スイッチ3を含む液体供給路を新規に接続して、多数の液体を混合することができる。
【0092】
以上のように、液体混合手段21を用いて任意の色を有する液体を生成することができる。一般に、フルカラー画像を表示する場合には、多数のインクを混合する必要が生じる。このため、図26に示すような比較的複雑な流路構成が必要となる。図25の構成では、各画素行に図26に示すような液体混合手段が必要であるため、流路(液体供給路)が交差することが生じる。
【0093】
しかし、交差した流路においても、スイッチ3を配置し、適当な動作を行わせることにより、互いの液体を混合させることなく取り扱うことが可能である。この構成を示したのが図28である。図28では、図の上下方向に延びる流路27で液体Aを移送し、左右方向に延びる流路28で液体Bを移送する場合を示している。先ず上方向の流路27から中心流路29に液体Aを移送する(図28(a),(b))。次に、下方向の流路27へ液体Aを移送し、中心流路29を空にする(図28(c))。その後、左方向の流路28から中心流路29に液体Bを移送する(図28(d),(e))。この後、中心流路29から右の流路28に液体Bを移送する(図28(f))。このようにすれば、3次元的に交差した流路を作製しなくとも、スイッチ部3とその駆動タイミングにより、2種類の液体液滴を独立に扱うことが可能である。
【0094】
(第3の実施の形態)
次に、図29、図30に基づき、第3の実施の形態を説明する。図29は本実施形態の表示装置を示す平面図、図30は図29のA−A'断面図である。
【0095】
図29に示される形態では、画素22とスイッチ3を交互に接続してなる流路構造を行方向(図の横方向)に一直線に配置し、この流路構造を間に側壁6を介して列方向(図の縦方向)に複数配置することで、複数の画素22によるマトリクス状の表示画面が形成されている。
【0096】
図30から分かるように、本形態では、概略3枚の基板を積層して上層および下層の流路が形成される。下層流路に関しては、表示部の行方向片側(図左側)に、赤(R),透明(C),緑(G),青(B)の液体を流す4本の液体供給路34,35,36,37が下層に配置されている。各色の液体供給路は液体孔38を介して、対応する上層の液体供給路34,35,36,37の各々と接続されている。本実施の形態では、インク液滴は表示部の行単位で、図左から右へ移送されていく。したがって、各行の左端の画素22は、4本の上層の液体供給路34,35,36,37と接続されている。また、上層の各液体供給路34,35,36,37の、画素22への注入部には、スイッチ3が設けられている。さらに、各行の左端の画素22は、当該画素内への液体注入によって液体を混合する液体混合手段58を兼ねている。
【0097】
画像の書き込み時には、上層の各液体供給路のスイッチ3が開放され、当該各液体供給路から各色のインクが左端の液体混合素子58に注入される。この各インクの注入比率を変えることで任意の色を液体混合手段58内で調整することができる。この後、左端の液体混合手段58から右隣の画素22へインクを移送する。この際、スイッチ3に対応するように配置されたスイッチ電極56の電極形状が、いわゆるシェブロン形となっている。シェブロン形とは、液体移送手段18の電極側に当たるスイッチ電極56の辺が山形であり、かつ当該辺と相対する液体移送手段18の電極辺が谷形となる形である。後に説明するように、この形状により、より安定にインク液滴を移送することができる。以上のインク移送と左端の液体混合手段58へのインク注入とを繰り返すことにより、第1の実施の形態と同様に表示画像を得ることができる。なお、本形態では、図30に示すように、スイッチ3を構成する撥液体性構造物として多孔質材9を用いた場合を示している。
【0098】
この実施の形態では、第1の実施の形態に比べて、インク供給路の配置が複雑になるものの、画素間の液滴移送を短距離で済ますことができる。このため、表示画像の、より早い更新動作が可能となる。
【0099】
ここで、上記シェブロン形電極構造の効果について図31および図32を用いて述べる。
【0100】
図31では、液体移送手段18の電極およびスイッチ電極56のレイアウトがシェブロン形状を有さない場合の液滴形状を示す。液体移送手段18の電極に電圧が印加されている場合には、液滴70は液体移送手段18の電極上に位置している(図31の状態)。一方、電圧が印加されていないスイッチ電極56上では、撥液体性のため、液滴70はこの領域を避けようとする。もし、インク液滴が不足する場合には、インク液滴と次のスイッチ電極56までの距離が長くなる。この場合、液滴が位置する液体移送手段18の電極に対する電圧印加を停止し、次のスイッチ電極56へ電圧を印加しても、安定な液滴移動が期待できない。
【0101】
一方、図32に示すようにシェブロン形の場合には、画素22内の液滴量が少ない場合でも、必ずスイッチ電極56上に液滴70の一部が重なることとなる。これは、液体の形状(メニスカス)が鋭角的な形状をとれないことに起因する。したがって、シェブロン形電極構造の場合には、スイッチ電極56の山形辺の先端が起点となって、液滴の移送を開始させることができる。
【0102】
(第4の実施の形態)
図33、図34に基づき、第4の実施の形態を説明する。図34に示すように、本形態の表示装置は概ね、上層基板62と中層基板61と下層基板60からなっている。各基板間には、流路が形成されており、上層基板62と中層基板61間に形成された流路を上層流路と呼ぶことにする。また、中層基板61と下層基板60間に形成された流路を下層流路と呼ぶことにする。
【0103】
図33は、上層流路と下層流路のレイアウトを透視図で示している。図33から分かるように、下層流路としては、赤(R)のインクを供給する液体供給路R34、緑(G)のインクを供給する液体供給路G36、青(B)のインクを供給する液体供給路B37、および透明(C)なインクを供給する液体供給路C35が図の上下方向に延びている。そして、下層の液体供給路34、36、37、35はこの順番で図の横方向に繰り返し周期で配置されている。
【0104】
また、下層の各液体供給路は、上層流路(図33の実線で囲まれる部分)と液体孔38を介して繋がっている。上層流路は、各色の液体供給路ごとに形成された液体孔38をスイッチ3と側壁6で囲んだ4種類の領域と、画素22となる領域(液室)と、画素22とスイッチ3を介して繋がる液体排出路46とから構成される。各スイッチ8は撥液体柱8が配置された部分である。
【0105】
液体孔38毎に近傍に配置された4つのスイッチ3は、独立に赤(R)、緑(G)、青(B)、透明(C)の液体を画素22中に流入させるかどうか選択する。このため、上層基板62は各色用のスイッチ3に対応するように4つのスイッチ電極56を有し、中層基板61上には走査電極43が設けられている。各スイッチ電極56は下層の各液体供給路に沿って配置されている。走査電極43は図の横方向にスイッチ電極56と交差するよう配置されている。
【0106】
これらスイッチ電極56と走査電極43間に電圧が印加されることにより、各色用の液体孔38から画素22内に赤(R)、緑(G)、青(B)、透明(C)の液体のインクが注入される。これらの液体の注入比率は、各色用スイッチ3を開放する電圧や時間によって制御することができる。また、画素22をマトリックス状に複数配置し、各画素22に所望の色インクを注入することで、フルカラー画像を表示することができる。
【0107】
図33に示すように走査電極43を分割しておけば、インク注入直後に画素22内の電圧印加を工夫して、画素22内でインク移動を生じさせ、インクを混合することもできる。
【0108】
画像を消去する際は、走査電極43と、液体排出路46に沿って配置された排出電極44の間に電圧を印加して、液体排出路46のスイッチ3を開放し、画素22内のインクを排出する。排出時には、図20を用いて説明した操作と同様な操作を行って、画素22内のインクを液体排出路46側に寄せていくことで、排出動作を迅速に行うことができる。
【0109】
排出動作をより迅速に行わせるためには、各液体供給路が形成された下層に、図33に示すような通気管76をさらに設けておく。通気管76は、画素22の部分を含む上層流路に通気孔75を介して接続されている。この上層流路への接続箇所は、液体排出路46とは反対側とする。また、通気孔75の周辺はスイッチ3で囲われている。このため、液体が通気孔75に侵入できない。排出動作時には、画素22内の液体は液体排出路46側へ寄せられていく。このため、もともと液体が存在していた領域に空気等の気体を補充してやることが必要である。そこで、画素22内の、液体排出路46に対して遠い所に通気孔75を配置することにより、より迅速に排出動作させることが可能となる。
【0110】
さらに、図35,36,37,38を用いて、図34に示す構造の製造方法を説明する。図34から分かるように、本構造は、下層基板60、中層基板61および上層基板62よりなる。そこで、各基板の製造方法を図35,36,37,を用いて順に説明する。
【0111】
図35に示すように下層基板60を用意し、この表面を親液体性表面57に形成する。これは、下層基板表面に親液体性薄膜を形成することでも実現できる。あるいは、下層基板の表面を改質してこのような表面を形成することも可能である。この後、下層基板表面に透明側壁63を形成する。これは、図35(c)に示すように、下層基板表面に感光性樹脂66の塗膜を形成して、この塗膜をフォトリソグラフィー工程によって加工することで得られる。あるいは、透明側壁63を印刷法により、下層基板表面に直接パターニングしてもよい。
【0112】
中層基板61は、図36に示すように加工される。初めに、液体孔38を中層基板61に開口する。これは、プラスチック樹脂を型成型することによって行うこともできる。あるいは、基板を機械的に穿孔することも可能である。あるいは、基板を化学的にエッチングして孔を形成することも可能である。あるいは、感光性ガラスを用いて、穿孔した基板を作製することも可能である。次に、反射表示させる場合には白色反射体59を中層基板61上に形成する。この白色反射体としては、粗面を有する金属層でもよい。あるいは、散乱性を有する樹脂膜でもよい。あるいは、白色のペイント層でもよい。次に、白色反射体59上に透明導電層を形成し、パターン加工して走査電極43を得る。次に、撥液体性薄膜64を基板表面に形成する。撥液体性薄膜64は、たとえばディップコートのような手法で形成することが可能である。この場合、図36(e)に示すように基板の表面および裏面に撥液体性薄膜64が形成される。この後、下層流路(液体供給路)の内壁となる基板裏面の撥液体性薄膜64を親液体化させる(図36(f))。つまり、基板裏面を親液性表面57に改質する。これは、紫外線照射することにより実現できる。あるいは、プラズマ中に基板裏面を曝すことによって実現できる。この後、基板表面の一部を親液体化させて親液性表面57に改質する。(図36(f))。これは、前述のような親液体化処理を適当なマスクを用いて行うことにより実現できる。
【0113】
作動させる液体が親水性液体の場合には、撥液体性薄膜64として親油性物質あるいはフッ素系物質を用いることができる。この場合、親油性物質あるいはフッ素系物質は、酸素中での紫外線処理や酸素中でのプラズマ処理により親水化させることができる。
【0114】
また、作動させる液体が親油性液体の場合には、撥液体性薄膜64としてフッ素系物質を用いることができる。この場合にも、適当な雰囲気下で紫外線照射あるいはプラズマ処理を行うことにより親油化できる。あるいは、前述した親水化処理後に表面処理剤によって、薄膜表面を炭化水素で修飾し親油化することができる。
【0115】
図36(e)では、基板両面に同時に撥液体性薄膜64を形成する場合について示した。しかし、基板表面のみに撥液体性薄膜64を形成するとともに、この撥液体性薄膜64の一部を親液体化した後に、基板裏面のみに親液体性薄膜を形成することもできる。この場合、基板裏面に関しては表面改質を行う必要はない。
【0116】
さらに、上層基板62の製造方法を図37を用いて説明する。初めに、上層基板62上に透明導電層65を形成し、パターン加工して、スイッチ電極56を形成する。この後、スイッチ電極56が形成された表面全体に感光性樹脂66の被膜を形成する。そして、当該被膜をフォトリソグラフィー工程によりパターン加工し、スイッチ部の柱構造と流路の側壁6を形成する。この後、柱構造表面および基板表面に撥液体処理を行う。これは、単純に撥液体性薄膜を被覆してもよい。あるいは、撥液体性表面30を得るためにプラズマ中に曝して表面改質を行ってもよい。この後、撥液体性表面30に対して部分的に親液体化を行う。スイッチ3に位置する柱8の撥液体性は維持される。また、側壁6は、配置される場所に応じて、撥液体性表面または親液体性表面の何れかに処理される。
【0117】
以上の工程を経て用意された3枚の基板を図38に示すように、重ね合わせる。この後、図38(b)に示すように、互いの位置を整え、3枚の基板を接合させる。この接合は、例えば、接合させる基板の親液体性領域どうしの間に接着性物質を介在させて行うことができる。あるいは、撥液体性領域にフッ素系物質が用いられている場合には確実な接着を期待できないので、親液体性領域のみで接合させる。撥液体柱8については、その原理からいえば、中層基板61との接合部に接着剤を介在させる必要はない。以上のように3枚の基板を接合後に、各色インクを所定の下層流路に充填する。これを図38(c)に示す。
【0118】
(第5の実施の形態)
図39、図40、図41、図42、図43に基づき、第5の実施の形態を説明する。本実施形態は、これまでの実施形態とはスイッチ部の流れ方向の開口部の数が1または2箇所である点が異なる。
【0119】
例として、図39を挙げることができる。図39では2枚の基板2間に一対の側壁6に囲まれた流路1が形成されている。流路1中には、それぞれの側壁6の内面に撥液体壁82を接続することでスイッチが構成されている。そのため、このスイッチ部では流れ方向の開口部の数が1箇所である。
【0120】
図40のように基板2に垂直な方向から流路1を見た場合、撥液体壁82のスイッチを液体4が通過するときは、図40の断面C−C'では液体4は1塊の液体のままである。一方、図41に示すように、図9のスイッチを液体4が通過するときは、断面D−D'では液体4は5つに分かれる。
【0121】
また、別の例として図42を挙げることができる。図42では、流路1中には、撥液体柱8を一つ設置することでスイッチが構成されている。したがって、このスイッチ部では流れ方向の開口部の数が2箇所である。また図43から分かるように、図42のスイッチを液体4が通過するときは、断面E−E'では液体4は2つに分かれる。
【0122】
液体4が多数の開口部を通過するとき、その形状に沿って複雑なメニスカスを形成することとなる。一方、1箇所や2箇所の開口部のときは、多数の開口部に比べ単純なメニスカスでよい。複雑なメニスカスを形成することはエネルギーを要するので、開口部が多数のときに比べ、開口部が少ないときの方が液がスイッチを通過しやすくなる。したがって、撥液性が調整する印加電圧の低減が可能になるとともに、液体の移動速度ひいては表示速度の向上が可能となる。
【0123】
(第6の実施の形態)
図44、図45に基づき、第6の実施の形態を説明する。これまでの実施形態とは、撥液体性表面への電界印加手段が異なる。
【0124】
これまでの実施形態では、撥液体性表面への電界印加手段は、図9に示したように2枚の基板2の両方に電極7を配置し、両方の電極7への電圧印加により撥液体性表面へ電界を印加していた。この方法を、垂直電界方式と呼ぶ。一方、本実施形態では、図44に示したように、対向する2枚の基板2のうち、片方に相互に咬合する櫛歯状電極7A,7Bを有し、相互の櫛歯状電極7A,7Bの間への電圧印加により電界を印加する。この方法を、横電界方式と呼ぶ。櫛歯状電極7A,7Bの平面図を図45に示す。図45では、相互の櫛歯状電極7A,7Bの間に電圧を印加することにより、2枚の基板2の基板面に平行でかつ櫛歯状電極7A,7Bの櫛歯の延在する方向に対し垂直な方向83の電界が生じる。すなわち、表示面と平行な方向に電界を発生する。この電界の強さは櫛歯状電極7A,7B同士の電極間隔82に反比例する。
【0125】
垂直電界方式では電界を強くするため、基板2間の距離を近づけて電極7間距離を小さくすると、流路1が浅くなる。流路1が浅くなったとき、浅くなる前と同じ色を表示するためには、着色インクの光学濃度を上げる必要がある。しかし、着色インクの液体の特性は変えずに光学濃度をあげることは困難である。一方、横電界方式では電界を強くするためには、電界の強さが櫛歯状の電極間隔82に反比例することから、電極間隔82を狭くすれば良い。したがって、横電界方式は、垂直電界方式に比べ容易に電極間隔を狭くすることができるので、撥液体性制御のための印加電圧の低減が可能となる。
【0126】
尚、図44では、液の流れ方向と櫛歯状電極7A,7Bによる電界方向83とは平行となっているが、平行でなくても可能である。また本実施形態では、撥液体柱8からなるスイッチ部への電界印加手段に櫛歯状電極7A,7Bを用いた例を示したが、このような櫛歯状電極は、スイッチ部以外における撥液体性表面への電界印加に用いることも可能である。
【0127】
以上、本発明の実施の形態について種々述べてきたが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲でさらに多くの改変を施しえるのは言うまでも無いことである。
【符号の説明】
【0128】
1 流路
2 基板
3 スイッチ
4 液体
5 液体先端
6 側壁
7 電極
7A,7B 櫛歯状電極
8 撥液体柱
9 多孔質材
10 繊維材
11 共通電極
12 流路電極A
13 流路電極B
14 スイッチ電極A
15 スイッチ電極B
16 混合電極A
17 混合電極B
18 液体移送手段
19A、19B 液体供給路
21 液体混合手段
22 画素(液室)
23 赤インク溜め
24 透明インク溜め
25 緑インク溜め
26 青インク溜め
27 液体A流路
28 液体B流路
29 中心流路
30 撥液体性表面
34 液体供給路R
35 液体供給路C
36 液体供給路G
37 液体供給路B
38 液体孔
39 信号電極R
40 信号電極G
41 信号電極B
42 信号電極C
43 走査電極
44 排出電極
46 液体排出路
47 電子機器
48 表示装置
49 アンテナ
50 太陽電池
51 照明装置
56 スイッチ電極
57 親液体性表面
58 液体混合手段
59 白色反射体
60 下層基板
61 中層基板
62 上層基板
63 透明側壁
64 撥液体性薄膜
65 透明導電層
66 感光性樹脂
67 緑色インク
68 青色インク
69 透明インク
70 液滴
71 セグメント流体列形成ユニット
72 画像表示板
73 分断液体
74 加圧方向
75 通気孔
76 通気管
78 透明基板
79 着色液体
80 帯電粒子分散液体
81 信号電極
82 電極間隔
83 電界方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収納できる液室からなる画素と、
液体の流通と遮断を制御するスイッチと、
前記画素に前記スイッチを介して接続された液体供給路および液体排出路と、
前記画素内に設置され、前記画素の内外へ液体の移送を行なう液体移送手段と、
を備えた表示装置。
【請求項2】
前記画素が複数配置されており、前記画素の各々に接続された前記液体供給路は液体供給源から分岐した液体供給路であり、前記画素の各々に接続された前記液体排出路は1つの液体排出溜めに接続されている、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
複数の前記液体供給源を有し、当該複数の液体供給源の各々から分岐した複数の前記液体供給路が前記画素の各々に接続されている、請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記画素が配置された領域の下層に前記液体供給路が配置されており、前記各液体供給路と前記各画素との間にある前記スイッチの各々をマルチプレックス駆動するマトリクス電極を有する、請求項2または3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記スイッチが、流れ方向に物理的に開口するとともに撥液体性表面を有する構造物からなり、該構造物への印加電圧の有無により前記構造物の撥液体性が調整されて液体の流通と遮断を制御する、請求項1から4のいずれかに記載の表示装置。
【請求項6】
前記スイッチの、流れ方向の開口部の数は1箇所である、請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記スイッチの、流れ方向の開口部の数は2箇所である、請求項5に記載の表示装置。
【請求項8】
前記液体移送手段が、前記スイッチをなす構造物の撥液体性表面と前記画素の内壁を覆う撥液体性表面とに選択的に電界を印加する電界印加手段で構成されている、請求項5から7のいずれかに記載の表示装置。
【請求項9】
前記液体に帯電粒子が分散された液体を用いる場合、前記液体移送手段が、前記スイッチをなす構造物の撥液体性表面と該スイッチ以外の流路部とに選択的に電界を印加する電界印加手段で構成されている、請求項5から7のいずれかに記載の表示装置。
【請求項10】
前記電界印加手段は、表示面と平行な方向に電界を発生させられる櫛歯状電極である、請求項8または9に記載の表示装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の表示装置を搭載した電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate

【図47】
image rotate


【公開番号】特開2012−226374(P2012−226374A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−169887(P2012−169887)
【出願日】平成24年7月31日(2012.7.31)
【分割の表示】特願2007−200968(P2007−200968)の分割
【原出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(303018827)NLTテクノロジー株式会社 (547)
【Fターム(参考)】