説明

表示装置とその製造方法

【課題】画素電極の駆動素子として酸化物TFTを用いた表示装置の信頼性を向上させつつ、製造コストの低減を図ることを可能にした表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】画素電極および薄膜トランジタを有する複数の画素と、薄膜トランジタを駆動する信号線および走査線と、共通電極と、複数の画素と共通電極との間に配置される表示層とを備える表示部4を、第1のガラス基板2と第2のガラス基板3との間の間隙に設けた後、レーザ吸収能を有する封着用ガラス材料の焼成層からなる枠状の封着材料層10にレーザ光11を照射することによって、表示部4を封止する封着層9を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(Organic Electro−Luminescence Display:OELD)等の表示装置においては、画素電極の駆動素子として、活性層にアモルファスのIn−Ga−Zn系複合酸化物のような酸化物半導体を適用した薄膜トランジスタ(TFT)を使用することが検討されている。酸化物半導体層を有するTFT(以下、酸化物TFTとも記す。)は、従来のアモルファスシリコンを活性層として用いたTFTに比べて電子移動度が大きく、さらに成膜性等に優れるため、例えば表示装置の高解像度化や大型化等が期待されている。
【0003】
TFTの活性層(チャネル層)として用いられる酸化物半導体層は、酸素や水分を吸収することで特性が劣化しやすいという難点を有している。具体的には、酸化物半導体層が酸素や水分を吸収すると酸化物TFTのしきい値電圧(Vth)が変化し、これにより酸化物TFTを所定の低電圧で駆動させることができなくなるため、表示装置の表示特性が劣化してしまう。LCDやOELD等の表示装置では、多数の画素電極をマトリクス状に設けた基板と共通電極を設けた基板とを対向させ、これら基板間の外周部を封止すると共に、封止空間に液晶層や有機EL層を配置する構造が一般的である。このため、封止部に近い画素電極に設けられた酸化物TFTが酸素や水分で劣化しやすいという問題がある。
【0004】
このような点に対して、ゲート絶縁膜、酸化物半導体層を覆うチャネル保護膜、酸化物TFT全体を覆うパッシベーション膜等の膜構造や材質等の改良が行われている。特許文献1には、ゲート絶縁膜、チャネル保護膜、パッシベーション膜等としての積層膜や、Al、Ti、Taの酸窒化物や窒化物等からなるパッシベーション膜が記載されている。特許文献2には、ゲート絶縁膜となる第1の絶縁膜とチャネル保護膜としての第2の絶縁膜とで酸化物半導体層を挟み込むことが記載されている。特許文献3には、フッ素、シリコンおよび酸素を含む材料からなるチャネル保護膜が記載されている。いずれの場合にも、酸化物TFTの製造コストの上昇が避けられないため、酸化物TFTやそれを用いた表示装置の製造コストを低減しつつ、表示特性の信頼性を高めることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−114413号公報
【特許文献2】特開2011−009719号公報
【特許文献3】特開2011−119355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、画素電極の駆動素子として酸化物TFTを用いた表示装置の表示特性の信頼性を向上させつつ、製造コストの低減を図ることを可能にした表示装置とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の表示装置の製造方法は、第1の封止領域と、第1の表示領域とを備える第1の表面を有する第1のガラス基板を用意する工程と、第2の封止領域と、第2の表示領域と、前記第2の封止領域上に形成され、レーザ吸収能を有する封着用ガラス材料の焼成層からなる枠状の封着材料層とを備える第2の表面を有する第2のガラス基板を用意する工程と、前記第1の表示領域側に配置される画素電極および薄膜トランジタを有する複数の画素と、前記薄膜トランジタを駆動する信号線および走査線と、前記第2の表示領域側に配置される共通電極と、前記複数の画素と前記共通電極との間に配置される表示層とを備える表示部を、前記第1のガラス基板の前記第1の表示領域と前記第2のガラス基板の前記第2の表示領域との間に設ける工程と、前記第1の表面と前記第2の表面とを対向させつつ、前記封着材料層を介して前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とを積層する工程と、レーザ光を前記第1のガラス基板または前記第2のガラス基板を通して前記封着材料層に沿って走査しながら照射し、前記封着材料層を溶融および固化させて、前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板との間に設けられた前記表示部を封止する封着層を形成する工程とを具備し、前記薄膜トランジタは活性層として酸化物半導体層を有することを特徴としている。
【0008】
本発明の表示装置は、第1の封止領域と、第1の表示領域とを備える第1の表面を有する第1のガラス基板と、第2の封止領域と、第2の表示領域とを備える第2の表面を有し、前記第2の表面が前記第1の表面と対向するように、前記第1のガラス基板上に所定の間隙を持って配置された第2のガラス基板と、前記第1のガラス基板の前記第1の表示領域と前記第2のガラス基板の前記第2の表示領域との間に設けられた表示部であって、前記第1の表示領域側に配置される画素電極および薄膜トランジタを有する複数の画素と、前記薄膜トランジタを駆動する信号線および走査線と、前記第2の表示領域側に配置される共通電極と、前記複数の画素と前記共通電極との間に配置される表示層とを備える表示部と、前記表示部を封止するように、前記第1の封止領域と前記第2の封止領域との間に形成され、レーザ吸収能を有する封着用ガラス材料の溶融固着層からなる封着層とを具備し、前記薄膜トランジタは活性層として酸化物半導体層を有し、かつ前記薄膜トランジタは厚さが100nm以下のパッシベーション膜で覆われているか、もしくはパッシベーション膜で覆われていないことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の表示装置とその製造方法においては、表示部の形成領域となる第1のガラス基板と第2のガラス基板との間の間隙を封着用ガラス材料で封止しているため、チャネル保護膜やパッシベーション膜の膜構造、膜厚、材質等によらずに、画素電極の駆動素子として用いられる、活性層として酸化物半導体層を有する薄膜トランジタ(酸化物TFT)の酸素や水分による特性劣化を再現性よく抑制することができる。従って、表示装置の製造コストを低減しつつ、表示特性の信頼性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態による表示装置を示す断面図である。
【図2】図1に示す表示装置における表示部の一例を示す断面図である。
【図3】図1に示す表示装置における表示部の他の例を示す断面図である。
【図4】図2および図3に示す表示部における画素電極の駆動素子としての酸化物TFTの構成例を示す断面図である。
【図5】図2および図3に示す表示部における画素電極の駆動素子としての酸化物TFTの他の構成例を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態による表示装置の製造工程を示す断面図である。
【図7】図6に示す表示装置の製造工程で使用する第1のガラス基板を示す平面図である。
【図8】図7のA−A線に沿った断面図である。
【図9】図6に示す表示装置の製造工程で使用する第2のガラス基板を示す平面図である。
【図10】図9のA−A線に沿った断面図である。
【図11】図7に示す第1のガラス基板の表面の一部を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明の実施形態による表示装置を示す図、図2および図3は図1に示す表示装置における表示部の例を示す図、図4および図5は図2および図3に示す表示部における画素電極の駆動素子としての酸化物TFTの構成例を示す図である。図6は本発明の実施形態による表示装置の製造工程を示す図、図7ないし図10は表示装置の製造工程に用いる第1および第2のガラス基板の構成を示す図、図11は図1に示す表示装置における第1のガラス基板の表面の一部を拡大して示す図である。
【0012】
図1に示す表示装置1は、液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイ(OELD)等を構成するものである。表示装置1は、所定の間隙を持って対向配置された第1のガラス基板2と第2のガラス基板3とを具備している。第1および第2のガラス基板2、3は、各種公知の組成を有する無アルカリガラスやソーダライムガラス等で構成される。第1のガラス基板2の表面2aとそれと対向する第2のガラス基板3の表面3aとの間には、表示装置1に応じた表示部4が設けられる。表示部4は、LCDであれば液晶表示素子を、またOELDであれば有機EL(OEL)素子を備えている。
【0013】
表示部4は、第1のガラス基板2側に配置され、画素電極とその駆動素子であるTFTとを有する複数の画素と、TFTを駆動する信号線および走査線と、第2のガラス基板3側に配置される共通電極と、複数の画素と共通電極との間に配置される表示層とを備えている。表示部4に液晶表示素子を適用した場合、表示部4は表示層として液晶層を備えており、さらに液晶層の表示面側、すなわち第2のガラス基板3側に配置されたカラーフィルタ層を備えている。表示部4に有機EL素子を適用した場合、表示部4は表示層(発光層)として有機EL層を備えている。有機EL素子を適用した際の表示部4は、有機EL層の表示面側に必要に応じてカラーフィルタ層を備えていてもよい。
【0014】
図2は液晶表示素子41の一例を示している。図2に示す液晶表示素子41において、第1のガラス基板2の表面2aには各画素に応じてTFT411が形成されている。TFT411は第1のガラス基板2の表面2aにマトリクス状に形成されており、それぞれ図示を省略した信号線および走査線と電気的に接続されている。第1のガラス基板2はTFT基板を構成している。TFT411上には絶縁膜412を介して画素電極413が形成されている。画素電極413はTFT411と電気的に接続されている。第2のガラス基板3の表面3aには、カラーフィルタ層414と共通電極415としての透明電極とが順に形成されている。そして、画素電極413と共通電極415との間に液晶層416が設けられており、これらによって液晶表示素子41が構成されている。
【0015】
図3は有機EL素子42の一例を示している。図3に示す有機EL素子42において、第1のガラス基板2の表面2aには各画素に応じてTFT421が形成されている。TFT421は第1のガラス基板2の表面2aにマトリクス状に形成されており、それぞれ図示を省略した信号線および走査線と電気的に接続されている。第1のガラス基板2はTFT基板を構成している。TFT421上には絶縁膜422を介して画素電極423が形成されている。画素電極423はTFT421と電気的に接続されている。画素電極423上には、発光層として有機EL層424が形成されている。さらに、有機EL層424上には複数の画素に対応するように、共通電極425としての透明電極が形成されており、これらによって有機EL素子42が構成されている。第2のガラス基板3の表面3aには、必要に応じてカラーフィルタ層426や絶縁膜427が形成される。
【0016】
図3は封止用の第2のガラス基板3を表示面とするトップエミッション型の有機EL素子42を示しているが、表示方向はこれに限られるものではなく、TFT基板である第1のガラス基板2を表示面とするボトムエミッション型の有機EL素子であってもよい。また、有機EL素子42によるカラー表示方法には、白色発光の有機EL層424とBGRのカラーフィルタ層426とを組合せた方式(カラーフィルタ方式)や、青色発光層と緑色発光層と赤色発光層とを有する有機EL層424を用いた方式(塗り分け方式)等、各種公知の方式を適用することができる。塗り分け方式においてもカラーフィルタ層426を併用することができる等、カラー表示方法は特に限定されるものではない。
【0017】
図2に示す液晶表示素子41や図3に有機EL素子42において、画素電極の駆動素子であるTFT411、421は、活性層(チャネル層)として酸化物半導体層を有している。活性層としての酸化物半導体層には、例えばIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−Zn−O系酸化物半導体、In−Zn−O系酸化物半導体、In−Sn−O系酸化物半導体、Sn−Zn−O系酸化物半導体、Ga−Sn−O系酸化物半導体等が用いられる。酸化物半導体の状態は、アモルファス状態やアモルファスと多結晶とが混在する微結晶状態であることが好ましい。特に、アモルファス状態のIn−Ga−Zn−O系酸化物半導体(a−IGZO)は、エネルギーギャップが大きいことから好適である。
【0018】
活性層(チャネル層)として酸化物半導体層を有するTFT(酸化物TFT)411、421の具体的な構造は、特に限定されるものではなく、各種公知のTFT構造を適用することができる。酸化物TFT411、421の構造としては、逆スタガ構造(ボトムゲート型)、スタガ構造(トップゲート型)、ボトムゲート型やトップゲート型のコプレーナ構造等が挙げられる。酸化物TFT411、421の構造例として、図4に逆スタガ構造(ボトムゲート型)を、また図5はボトムゲート型のコプレーナ構造を示す。
【0019】
図4に示す酸化物TFT43は、第1のガラス基板2の表面2a上に形成されたゲート電極431を有している。ゲート電極431は図示を省略した走査線(アドレス線)と電気的に接続されている。ゲート電極431上には、ゲート絶縁膜432を介して、酸化物半導体層433が活性層(チャネル層)として形成されている。酸化物半導体層433上には、ソース電極434およびドレイン電極435が形成されている。ソース電極434とドレイン電極435とは、酸化物半導体層433を介して電気的に接続されている。ソース電極434は図示を省略した信号線(データ線)と電気的に接続されており、ドレイン電極435は画素電極413、423と電気的に接続されている。酸化物TFT43は、パッシベーション膜436で覆われている。なお、後述するように、場合によってはパッシベーション膜436の形成を省くことができる。
【0020】
図5に示す酸化物TFT44は、第1のガラス基板2の表面2a上に形成されたゲート電極441を有している。ゲート電極441は図示を省略した走査線(アドレス線)と電気的に接続されている。ゲート電極441上にはゲート絶縁膜442が形成されている。ゲート絶縁膜442上には、ソース電極443と活性層(チャネル層)として酸化物半導体層444とドレイン電極445とが、同一平面内に配置されるように形成されている。ソース電極443とドレイン電極445とは、酸化物半導体層444を介して電気的に接続されている。ソース電極443は図示を省略した信号線(データ線)と電気的に接続されており、ドレイン電極445は画素電極413、423と電気的に接続されている。酸化物TFT44は、パッシベーション膜446で覆われている。なお、後述するように、場合によってはパッシベーション膜446の形成を省くことができる。
【0021】
表示装置1の作製に用いられる第1のガラス基板2の表面2aは、図7および図8に示すように、表示部4が形成される第1の表示領域5と、その外周に沿って設けられた枠状の第1の封止領域6とを備えている。第2のガラス基板3の表面3aは、図9および図10に示すように、第1の表示領域5に対応する第2の表示領域7と、その外周に沿って設けられ、かつ第1の封止領域6と対応する枠状の第2の封止領域8とを備えている。第1および第2の封止領域6、8は、後述する封着層の形成領域(第2の封止領域8については後述する封着材料層の形成領域)となる。表示部4を構成する素子構造体は、第1および第2のガラス基板2、3の表示領域5、7の少なくとも一方に形成される。
【0022】
表示部4に液晶表示素子41を適用する場合には、第1および第2のガラス基板2、3の各表示領域5、7に、それぞれ液晶表示素子41を構成する素子構造体の一部(4A、4B)が形成される。すなわち、第1のガラス基板2の表示領域5には、TFT411、走査線や信号線、絶縁膜412、画素電極413等が形成される。第2のガラス基板3の表示領域7には、カラーフィルタ層414、共通電極415等が形成される。液晶表示素子41を構成する液晶層416は、第1のガラス基板2と第2のガラス基板3との間の間隙を後述する封着層で封止する前に充填される。
【0023】
表示部4に有機EL素子42を適用する場合、第1のガラス基板2は素子用ガラス基板を構成し、その表面2aに設けられた表示領域5に有機EL素子42を構成する素子構造体(4A)が形成される。第2のガラス基板3は第1のガラス基板2の表面2aに形成された表示部4を封止する封止基板を構成する。なお、第2のガラス基板3の表示領域3aにも、必要に応じて素子構造体の一部(4B)が形成される。第1のガラス基板2の表示領域5には、TFT421、走査線や信号性、絶縁膜422、画素電極423、有機EL層424、共通電極425等が形成される。第2のガラス基板3の表示領域7には、必要に応じてカラーフィルタ層426や絶縁膜427等が形成される。
【0024】
第1のガラス基板2と第2のガラス基板3とは、表示部4の構造体4A、4Bが形成された表面2a、3aが対向するように所定の間隙を持って配置されている。第1のガラス基板2と第2のガラス基板3との間の間隙は、封着層9で封止されている。封着層9は表示部4を封止するように、第1のガラス基板2の封止領域6と第2のガラス基板3の封止領域8との間に形成されている。言い換えると、表示部4はTFTが形成された第1のガラス基板(TFT基板)2と第2のガラス基板(封止基板)3と封着層9とで構成された表示装置用パッケージ(ガラスパッケージ)で気密封止されている。
【0025】
この実施形態の表示装置1においては、ガラス基板2、3間を封止する封着層9にレーザ吸収能を有する封着用ガラス材料を適用している。すなわち、表示装置1の作製に用いられる第2のガラス基板3の封止領域8には、図9および図10に示すように、封着用ガラス材料の焼成層からなる枠状の封着材料層10が形成されている。第2のガラス基板3の封止領域8に形成された封着材料層10は、後述するレーザ光による加熱工程で加熱、溶融され、第1のガラス基板2の封止領域6に固着される。このように、第1のガラス基板2と第2のガラス基板3との間の間隙(表示部4の形成空間)は、レーザ吸収能を有する封着用ガラス材料の溶融固着層からなる封着層9で封止されている。
【0026】
第1および第2のガラス基板2、3と封着用ガラス材料の溶融固着層からなる封着層9とで表示装置用気密パッケージを構成することによって、気密パッケージ内への水分や酸素の侵入等を抑制することができる。すなわち、気密パッケージの耐湿性等を向上させることができる。このような気密パッケージで表示部4を封止することによって、水分等を吸収することによる酸化物半導体層の特性劣化を抑制することができる。すなわち、酸化物TFTのしきい値電圧(Vth)の変動が抑制されるため、酸化物TFTを有する表示部4の経時的な劣化を再現性よく抑制することが可能となる。
【0027】
前述したように、酸化物TFTのしきい値電圧(Vth)の経時的な変動による変化量(ΔVth)が大きいと、酸化物TFTを所定の電圧で駆動させることができなくなるため、表示装置1の表示特性が劣化してしまう。このようなしきい値電圧(Vth)の変化量(ΔVth)を、ガラス基板2、3と封着用ガラス材料の溶融固着層からなる封着層9とで構成した気密パッケージで小さくすることによって、酸化物TFTを用いた表示装置1の信頼性を向上させることができる。
【0028】
一方、水分や酸素等による酸化物TFTの劣化を抑制するために、バリア層(パッシベーション膜)が設けられる。十分なバリア性を確保するために、パッシベーション膜の膜厚を大きくしたり、緻密な膜にしたりする等の工夫がなされてきた。酸化物半導体層を保護するパッシベーション膜の膜厚の増大は、酸化物TFTの生産性を低下させる。
【0029】
このような点に対して、酸化物TFTの経時的な劣化を気密パッケージ自体で抑制することで、水分等のバリア性は低いものの、生産性が高いパッシベーション膜、例えば膜厚が薄いパッシベーション膜を適用した場合においても、表示装置1の信頼性を維持することができる。具体的には、膜厚が100nm以下のパッシベーション膜を適用した場合においても、表示装置1の信頼性を維持することができるため、酸化物TFTを有する表示部4の製造コストを低減することが可能となる。
【0030】
さらに、パッシベーション膜の膜厚を50nm以下とした場合においても、表示装置1の信頼性が維持されるため、表示部4の製造コストをより一層低減することができる。また場合によっては、パッシベーション膜で酸化物TFTを覆うことなく、表示装置1の信頼性を維持することができる。ただし、酸化物TFTを有する表示部4の製造工程等における酸化物半導体層の特性劣化を抑制する上で、酸化物TFTは膜厚が10nm以上のパッシベーション膜で覆うことが好ましい。このように、酸化物TFTは膜厚が10〜50nmの範囲のパッシベーション膜で覆われていることが好ましい。
【0031】
また、パッシベーション膜の膜構造や膜材質等も、酸化物TFTの生産性を低下させる要因となる。このような点に対して、酸化物TFTの経時的な劣化を気密パッケージ自体で抑制することで、一般的な膜材質や膜構造(単層構造等)を有するパッシベーション膜を適用した場合においても、表示装置1の信頼性を維持することができる。具体的には、パッシベーション膜を酸化ケイ素(シリカ)や窒化ケイ素等の低コスト材料で形成し、かつ上記したような膜厚を有する単層構造を適用した場合においても、表示装置1の信頼性を維持することができる。このような点からも酸化物TFTを有する表示部4の製造コストを低減することが可能となる。
【0032】
次に、実施形態の表示装置1の製造工程について、図6を参照して説明する。まず、封着層9の形成材料となる封着用ガラス材料を用意する。封着用ガラス材料は、低融点ガラスからなる封着ガラスに、レーザ吸収材や必要に応じて低膨張充填材のような充填材を配合したものである。なお、黒色系の色調を有する封着ガラスのように、封着ガラス自体がレーザ吸収能を有する場合には、レーザ吸収材を配合することなく、封着ガラスと必要に応じて添加される低膨張充填材とで封着用ガラス材料を構成することができる。また、封着用ガラス材料はこれら以外の添加材を含有していてもよい。
【0033】
封着ガラス(ガラスフリット)としては、例えばビスマス系ガラス、錫−リン酸系ガラス、バナジウム系ガラス、鉛系ガラス等が用いられる。これらのうち、ガラス基板2、3に対する接着性やその信頼性、さらに環境や人体に対する影響等を考慮して、ビスマス系ガラスや錫−リン酸系ガラスからなる封着ガラスを使用することが好ましい。
【0034】
ビスマス系ガラス(ガスフリット)は、70〜90質量%のBi23、1〜20質量%のZnO、および2〜12質量%のB23(基本的には合計量を100質量%とする)の組成を有することが好ましい。Bi23はガラスの網目を形成する成分である。Bi23の含有量が70質量%未満であると低融点ガラスの軟化点が高くなり、低温での封着が困難になる。Bi23の含有量が90質量%を超えるとガラス化しにくくなると共に、熱膨張係数が高くなりすぎる傾向がある。
【0035】
ZnOは熱膨張係数等を下げる成分である。ZnOの含有量が1質量%未満であるとガラス化が困難になる。ZnOの含有量が20質量%を超えると低融点ガラス成形時の安定性が低下し、失透が発生しやすくなる。B23はガラスの骨格を形成してガラス化が可能となる範囲を広げる成分である。B23の含有量が2質量%未満であるとガラス化が困難となり、12質量%を超えると軟化点が高くなりすぎて、封着時に荷重をかけたとしても低温で封着することが困難となる。
【0036】
上記した3成分で形成されるガラスはガラス転移点が低く、低温用の封着材料に適したものであるが、Al23、CeO2、SiO2、Ag2O、MoO3、Nb23、Ta25、Ga23、Sb23、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、CaO、SrO、BaO、WO3、P25、SnOx(xは1又は2である)等の任意成分を含有していてもよい。ただし、任意成分の含有量が多すぎるとガラスが不安定となって失透が発生したり、またガラス転移点や軟化点が上昇するおそれがあるため、任意成分の合計含有量は30質量%以下とすることが好ましい。この場合のガラス組成は基本成分と任意成分との合計量が基本的には100質量%となるように調整される。
【0037】
錫−リン酸系ガラス(ガラスフリット)は、55〜68モル%のSnO、0.5〜5モル%のSnO2、および20〜40モル%のP25(基本的には合計量を100モル%とする)の組成を有することが好ましい。SnOはガラスを低融点化させるための成分である。SnOの含有量が55モル%未満であるとガラスの粘性が高くなって封着温度が高くなりすぎ、68モル%を超えるとガラス化しなくなる。
【0038】
SnO2はガラスを安定化するための成分である。SnO2の含有量が0.5モル%未満であると封着作業時に軟化溶融したガラス中にSnO2が分離、析出し、流動性が損なわれて封着作業性が低下する。SnO2の含有量が5モル%を超えると低融点ガラスの溶融中からSnO2が析出しやすくなる。P25はガラス骨格を形成するための成分である。P25の含有量が20モル%未満であるとガラス化せず、その含有量が40モル%を超えるとリン酸塩ガラス特有の欠点である耐候性の悪化を引き起こすおそれがある。
【0039】
上記した3成分で形成されるガラスはガラス転移点が低く、低温用の封着材料に適したものであるが、SiO2等のガラスの骨格を形成する成分やZnO、B23、Al23、WO3、MoO3、Nb25、TiO2、ZrO2、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO等のガラスを安定化させる成分等を任意成分として含有していてもよい。ただし、任意成分の含有量が多すぎるとガラスが不安定となって失透が発生したり、またガラス転移点や軟化点が上昇するおそれがあるため、任意成分の合計含有量は30モル%以下とすることが好ましい。この場合のガラス組成は基本成分と任意成分との合計量が基本的には100モル%となるように調整される。
【0040】
レーザ吸収材としては、Fe、Cr、Mn、Co、NiおよびCuからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属、または前記金属を含む酸化物等の化合物を用いることが好ましい。レーザ吸収材はこれら以外の顔料であってもよい。レーザ吸収材の含有量は、封着用ガラス材料に対して0.1〜40体積%の範囲とすることが好ましい。レーザ吸収材の含有量が0.1体積%未満であると、レーザの照射時に封着材料層10を十分に溶融させることができないおそれがある。レーザ吸収材の含有量が40体積%を超えると第2のガラス基板3との界面近傍で局所的に発熱してガラス基板2、3や封着層9が破損するおそれがあり、また封着用ガラス材料の溶融時の流動性が劣化して第1のガラス基板2との接着性が低下するおそれがある。
【0041】
低膨張充填材としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、珪酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、ムライト、コージェライト、ユークリプタイト、スポジュメン、リン酸ジルコニウム系化合物、酸化錫系化合物、石英固溶体、およびマイカからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。リン酸ジルコニウム系化合物としては、(ZrO)227、NaZr2(PO43、KZr2(PO43、Ca0.5Zr2(PO43、NbZr(PO43、Zr2(WO3)(PO42、これらの複合化合物が挙げられる。低膨張充填材とは封着ガラスより低い熱膨張係数を有するものである。
【0042】
低膨張充填材の含有量は、封着用ガラス材料の熱膨張係数がガラス基板2、3のそれに近づくように適宜に設定される。低膨張充填材は封着ガラスやガラス基板2、3の熱膨張係数にもよるが、封着用ガラス材料に対して50体積%以下の範囲で含有させることが好ましい。低膨張充填材の含有量が50質量%を超えると、封着用ガラス材料の流動性が劣化して接着強度が低下するおそれがある。低膨張充填材は必要に応じて配合されるものであり、必ずしも封着用ガラス材料に配合しなければならないものではない。従って、封着用ガラス材料における低膨張充填材の含有量は零を含むが、実用的には0.1質量%以上とすることが好ましい。低膨張充填材の含有量はレーザ吸収材との合計含有量として影響するため、これらの合計含有量を0.1〜50体積%の範囲とすることが好ましい。
【0043】
レーザ吸収能を有する封着用ガラス材料によるガラス基板2、3間の封止工程は、封止領域6、8間にレーザ光を吸収する封着用ガラス材料の焼成層(封着材料層10)を配置し、これにレーザ光を照射して局所的に加熱することにより実施される。レーザ光による局所加熱によれば、表示部4(4A、4B)を有するガラス基板2、3全体を加熱する場合に比べて、封止工程における表示部4の特性劣化を抑制することができる。以下に、レーザ光による局所加熱を適用した封止工程について詳述する。
【0044】
まず、封着用ガラス材料とビヒクルとを混合して封着材料ペーストを調製する。ビヒクルは、バインダ成分である樹脂を溶剤に溶解したものである。ビヒクル用の樹脂としては、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、オキシエチルセルロース、ベンジルセルロース、プロピルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル系モノマーの1種以上を重合して得られるアクリル系樹脂等の有機樹脂が用いられる。溶剤としては、セルロース系樹脂の場合にはターピネオール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート等が、またアクリル系樹脂の場合にはメチルエチルケトン、ターピネオール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート等が用いられる。
【0045】
第2のガラス基板3の封止領域8に封着材料ペーストを塗布し、これを乾燥させて封着材料ペーストの塗布層を形成する。封着材料ペーストは、例えばスクリーン印刷やグラビア印刷等の印刷法を適用して第2の封止領域8上に塗布したり、あるいはディスペンサ等を用いて第2の封止領域8に沿って塗布する。封着材料ペーストの塗布層は、例えば120℃以上の温度で10分以上乾燥させることが好ましい。乾燥工程は塗布層内の溶剤を除去するために実施するものである。塗布層内に溶剤が残留していると、その後の焼成工程でバインダ成分を十分に除去することができないおそれがある。
【0046】
次いで、封着材料ペーストの塗布層を焼成して封着材料層10を形成する。焼成工程は、塗布層を封着用ガラス材料の主成分である封着ガラス(ガラスフリット)のガラス転移点以下の温度に加熱し、塗布層内のバインダ成分を除去した後、封着ガラスの軟化点以上の温度に加熱し、封着ガラスを溶融してガラス基板3に焼き付ける。このようにして、図6(a)に示すように第2のガラス基板3の表面3aに封着用ガラス材料の焼成層からなる封着材料層10を形成する。なお、表示装置1や表示部4の構造によっては、封着材料層10を第1のガラス基板2の封止領域6に形成してもよい。
【0047】
次に、図6(b)に示すように、第1のガラス基板2と第2のガラス基板3とを、それらの表面2a、3a同士が対向するように封着材料層10を介して積層する。次いで、図6(c)に示すように、第2のガラス基板3(または第1のガラス基板2)を通して封着材料層10にレーザ光11を照射する。レーザ光11は枠状の封着材料層10に沿って走査しながら照射される。レーザ光は特に限定されず、半導体レーザ、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ、HeNeレーザ等からのレーザ光が使用される。
【0048】
封着材料層10はそれに沿って走査されるレーザ光11が照射された部分から順に溶融し、レーザ光11の照射終了と共に急冷固化されて第1のガラス基板2に固着する。そして、封着材料層10の全周にわたってレーザ光11を照射することによって、図6(d)に示すように第1のガラス基板2と第2のガラス基板3との間の間隙、すなわち第1のガラス基板2と第2のガラス基板3との間に設けられた表示部4を封止する封着層9が形成される。このような各工程を経て、目的とする表示装置1が作製される。
【0049】
レーザ光11による封着材料層10の加熱温度は、封着ガラスの軟化点温度T(℃)に対して(T+100℃)以上で(T+400℃)以下の範囲とすることが好ましく、さらに500〜700℃の範囲とすることがより好ましい。封着材料層10の加熱温度が500℃未満であると、封着ガラスの流動が不十分となって、ガラス基板2、3と封着層9との接着強度が低下するおそれがある。封着材料層10の加熱温度が700℃を超えると、ガラス基板2、3や封着層9に割れ等が生じやすくなるおそれがある。
【0050】
なお、本明細書における封着ガラスの軟化点は、示唆熱分析(DTA)の第4変曲点で定義されるものである。また、レーザ光11を照射した際の封着材料層10の温度(加熱温度)は、正確な封着温度を測定するために、放射温度計で測定することが好ましく、さらに二色放射温度計で測定することがより好ましい。二色放射温度計の特徴は、被測定物ごとの放射率の設定をせずに測定できる点にある。
【0051】
ところで、第1のガラス基板2の表示領域5には、図11に示すように、複数の酸化物TFT12がマトリクス状に形成されていると共に、これら酸化物TFT12を駆動する信号線13および走査線14が形成されている。酸化物TFT12を駆動するにあって、信号線13や走査線14は封止層9により形成された気密空間の外部に取り出す必要がある。このため、第1のガラス基板2の表面2aは、信号線13および走査線14を気密空間の外部に取り出す取り出し電極15が第1の封止領域6を横切るように設けられた電極領域16を備えている。レーザ光11は枠状の封着材料層10の全周にわたって走査しながら照射されるため、電極領域16内も通過することになる。
【0052】
封着後の電極領域16は、取り出し電極15と封着層9とが存在する複雑な構造になっているため、電極構造や封着条件が最適でない場合には、気密性が不十分になりやすい。特に、電極領域16内に存在する封着層9に近い列の酸化物TFT12が水分等で劣化しやすい。一方、電極領域16内の封着層9に近い列の酸化物TFT12は、レーザ光11が電極領域16内を通過する際に取り出し電極15を介して加熱される。すなわち、レーザ光11が電極領域16内を通過する際に、電極領域16内に位置する封着材料層10が加熱されると同時に、電極領域16内の取り出し電極15も加熱されることになる。レーザ光11の照射により取り出し電極15に生じた熱は、取り出し電極15や信号線13等を介して酸化物TFT12、特に封着層9に近い酸化物TFT12に伝熱される。
【0053】
ここで、酸化物半導体層は加熱(アニール)により特性が改善されるという性質を有している。このため、レーザ光11が電極領域16内を通過する際に取り出し電極15に生じる熱を有効に利用することによって、特に電極領域16内の封着層9に近い酸化物TFT12の特性を向上させることができる。すなわち、ガラス基板2、3間の封止にレーザ封着、すなわち封着用ガラス材料(封着材料層10)へのレーザ光11の照射による加熱封着を適用することによって、酸化物TFT12の特性劣化を抑制できるだけでなく、酸化物TFT12の特性を積極的に改善することが可能となる。
【0054】
このように、第1および第2のガラス基板2、3間の封止に、レーザ光11による封着用ガラス材料の局所加熱を適用することによって、酸化物TFT12の特性を向上させることが可能となる。ただし、レーザ光11による酸化物半導体層の加熱温度が高くなりすぎると、逆に酸化物半導体層の特性が損なわれるおそれがある。すなわち、酸化物半導体層はアモルファス状態やそれに近い状態で特性を発揮する。従って、レーザ光11による酸化物半導体層の加熱温度が高くなりすぎて、酸化物半導体層が結晶化してしまうと特性が損なわれてしまう。このため、レーザ光11による酸化物半導体層の加熱は、酸化物半導体層が結晶化しない程度の適度な温度で実施することが好ましい。酸化物半導体層の加熱温度は250〜600℃の範囲とすることが好ましい。
【0055】
レーザ光11による酸化物半導体層の加熱温度は、レーザ光11が電極領域16を通過する際の封着材料層10の加熱温度に加えて、レーザ光11が電極領域16を通過する際の走査速度V[mm/秒]、レーザ光のビーム径D[mm]、取り出し電極15の電極領域16内に存在する封着材料層10から酸化物TFT12Aまでの最短距離L[mm]等に影響される。レーザ光11が電極領域16を通過する際の封着材料層10の加熱温度は、前述したように封着性等を考慮して500〜700℃の範囲とすることが好ましい。これに加えて、レーザ光11の走査速度Vが遅ければ酸化物半導体層の加熱温度が上昇し、逆に早ければ加熱温度が低下する。また、電極領域16内に存在する封着材料層10から酸化物TFT12までの取り出し電極15の最短距離Lが短ければ酸化物半導体層の加熱温度が上昇し、逆に最短距離Lが長ければ加熱温度が低下する。
【0056】
このような点から、レーザ光11が電極領域16を通過する際の各条件(走査速度V[mm/秒]、ビーム径D[mm]、取り出し電極15の最短距離L[mm])を、下記の式(1)で表されるパラメータAが0.1以上2500以下の範囲となるように設定することが好ましい。
パラメータA=V×L2/D …(1)
パラメータAが0.1未満になるということは、レーザ光11による酸化物半導体層の加熱温度が高くなりすぎることを意味し、酸化物半導体層が結晶化して特性が損なわれるおそれが強まる。従って、パラメータAは0.1以上とすることが好ましい。
【0057】
パラメータAの上限値は必ずしも限定されるものではないが、酸化物半導体層の加熱による特性向上効果を有効に得る上で、パラメータAは2500以下とすることが好ましい。これによって、酸化物半導体層の特性向上効果を再現性よく得ることが可能となる。パラメータAは1500以下とすることがより好ましく、さらに1000以下とすることが特に好ましい。このような場合に、酸化物半導体層の特性向上効果をより効果的に得ることができる。さらに、パラメータAの下限値は0.5以上とすることがより好ましい。このように、レーザ光11が電極領域16を通過する際の条件をパラメータAに基づいて制御することによって、酸化物TFT12の特性を向上させることが可能となる。
【実施例】
【0058】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。なお、以下の説明は本発明を限定するものではく、本発明の趣旨に沿った形での改変が可能である。
【0059】
[実施例1]
(TFT基板の製造工程)
無アルカリガラスからなる第1のガラス基板(旭硝子社製、AN100(熱膨張係数:38×10-7/℃)、寸法:100×100×0.7mmt)の表示領域に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物半導体層、およびソース・ドレイン電極を、この順に以下示す工程で形成した。
【0060】
無アルカリガラスからなるガラス基板上に、スパッタ法を用いてスズドープ酸化インジウムを成膜し、ゲート電極(膜厚150nm)を形成した。次に、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition:ALD)でアルミナとチタニアとを交互に積層したATO膜を成膜し、ゲート絶縁膜(膜厚150nm)を形成した。続いて、チャネル形成領域以外の領域がレジストで覆われるようにフォトリソグラフィでレジストパターンを形成した。この後、スパッタ法でインジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)の各元素を含む酸化物を成膜した(膜厚35nm)。レジストを剥離して不要な膜を取り除くことによって、チャネル層(酸化物半導体層)を形成した。
【0061】
次に、ソース・ドレイン電極の形成領域以外の領域がレジストで覆われるようにフォトリソグラフィでレジストパターンを形成した。この後、蒸着法で膜厚5nmのチタン(Ti)を成膜した後、膜厚500nmの金(Au)を成膜した。レジストを剥離して不要な膜を取り除くことによって、ソース・ドレイン電極を形成した。このようにして、1枚のガラス基板あたりに25個(5個×5個)の酸化物TFTを作製した。なお、酸化物TFT上にパッシベーション膜は形成していない。
【0062】
続いて、取り出し電極の形成領域(電極領域)以外の領域がレジストで覆われるようにフォトリソグラフィでレジストパターンを形成した。この後、スパッタ法で膜厚200nmのアルミニウム(Al)を成膜した。レジストを剥離して不要な膜を取り除くことによって、線幅0.5mmの取り出し電極を形成した。このようにして、逆スタガ構造の酸化物TFTを有するTFT基板(第1のガラス基板)を作製した。
【0063】
(封止基板の製造工程)
質量割合でBi2383%、B235%、ZnO11%、Al231%の組成を有するビスマス系ガラスフリット(軟化点:410℃)と、低膨張充填材として平均粒径(D50)が2.0μm、比表面積が4.3m2/gのコージェライト粉末と、質量割合でFe2316.0%、MnO43.0%、CuO27.3%、Al238.5%、SiO25.2%の組成を有し、平均粒径(D50)が1.2μm、比表面積が6.1m2/gのレーザ吸収材とを用意した。
【0064】
コージェライト粉末の粒度分布は、粒度分析計(日機装社製、マイクロトラックHRA)を用いて測定した。測定条件は、測定モード:HRA−FRAモード、Particle Transparency:yes、Spherical Particles:no、Particle Refractive index:1.75、Fluid Refractive index:1.33とした。粉末を水に分散させたスラリーを超音波で分散させた後に測定した。レーザ吸収材の粒度分布は、粒度分析計(日機装社製、マイクロトラックHRA)を用いて測定した。測定条件は、測定モード:HRA−FRAモード、Particle Transparency:yes、Spherical Particles:no、Particle Refractive index:1.81、Fluid Refractive index:1.33とした。粉末を水に分散させたスラリーを超音波で分散させた後に測定した。
【0065】
コージェライト粉末およびレーザ吸収材の比表面積は、BET比表面積測定装置(マウンテック社製、Macsorb HM model−1201)を用いて測定した。測定条件は、吸着質:窒素、キャリアガス:ヘリウム、測定方法:流動法(BET1点式)、脱気温度:200℃、脱気時間:20分、脱気圧力:N2ガスフロー/大気圧、サンプル質量:1gとした。以下の例も同様である。
【0066】
ビスマス系ガラスフリット65.8体積%とコージェライト粉末27.2体積%とレーザ吸収材7.0体積%とを混合して封着材料(熱膨張係数(50〜350℃):71×10-7/℃)を作製した。封着材料83質量%を、バインダ成分としてエチルセルロース5質量%を2,2,4−トリメチル−1,3ペンタンジオールモノイソブチレート95質量%に溶解して作製したビヒクル17質量%と混合して封着材料ペーストを調製した。
【0067】
次いで、無アルカリガラスからなる第2のガラス基板(旭硝子社製、AN100(熱膨張係数:38×10-7/℃)、寸法:95×95×0.7mmt))を用意し、このガラス基板の封止領域に封着材料ペーストをスクリーン印刷法で塗布した。スクリーン版のパターンは、線幅が0.5mmで80mm×80mmの額縁状パターンとし、コーナー部の曲率半径Rは0.5mmとした。封着材料ペーストの塗布層を120℃×10分の条件で乾燥させた後、480℃×10分の条件で焼成し、膜厚が8μm、線幅が0.5mmの封着材料層を形成することによって、封止基板(第2のガラス基板)を作製した。
【0068】
(TFT基板と封止基板との封着工程)
上述したTFT基板と封止基板とを、酸化物TFTを有する表面と封着材料層を有する表面とが対向するように、封着材料層を介して積層した。このとき、電極領域内に存在する封着材料層から最も近い酸化物TFTまでの距離(取り出し電極の最短距離L)が0.5mmとなるようにした。次いで、封止基板を通して封着材料層に対して、スポット径1.5mm、出力13.5W(出力密度:764W/cm2)のレーザ光(半導体レーザ)を、5mm/秒の走査速度で照射し、封着材料層を溶融並びに急冷固化することによって、TFT基板と封止基板とを封着した。レーザ光の強度分布は一定に整形せず、突形状の強度分布を有するレーザ光を使用した。このときのスポット径は、レーザ強度が1/e2となる等高線の半径を用いた。
【0069】
レーザ光を封着材料層に沿って照射するにあたって、電極領域を除く領域(非電極領域)については上記した条件を選択した。レーザ光が電極領域を通過する際の条件は、出力を2.5W(出力密度:142W/cm2)、走査速度を1mm/秒に変更した。これら以外は非電極領域を通過する際の条件と同一とした。この条件におけるパラメータAは0.17である。レーザ光を照射した際の封着材料層の加熱温度は、非電極領域および電極領域共に650℃であった。また、電極領域内に存在する封着材料層に最も近い酸化物TFTは封着時に600℃まで加熱されていた。レーザ光を照射した際の封着材料層の加熱温度および酸化物TFTの加熱温度は放射温度計で測定した。
【0070】
(信頼性の評価)
レーザ封着後にガラス基板、封着層、取り出し電極の状態を観察したところ、クラックや割れの発生は認められず、TFT基板と封止基板とが良好に封着されていることが確認された。次に、以下のようにして酸化物TFTの特性信頼性を評価した。
【0071】
まず、TFT基板と封止基板との封着体(気密パッケージ)の取り出し電極を、電圧電流発生/測定装置(横河電機社製、装置名:GS820(50Vレンジモデル))と配線で接続した。恒温恒湿槽を用いて、高温・高湿度環境下で一定電流を印加する信頼性試験を実施した。信頼性試験における条件は、温度60℃、湿度90%(相対湿度)、ドレイン電流5μAとし、ストレス時間を24時間まで実施した。信頼性試験後のしきい値電圧の変化量(ΔVth)は0.1V以下であり、十分に高い信頼性を示した。
【0072】
[実施例2〜18、比較例1〜4]
レーザ封着工程において、レーザ光が電極領域を通過する際の条件を表1に示す各条件に変更する以外は、実施例1と同様にしてTFT基板と封止基板との封着体(気密パッケージ)を作製した。レーザ封着後にガラス基板、封着層、取り出し電極の状態を観察したところ、いずれの例においてもクラックや割れの発生は認められず、TFT基板と封止基板とが良好に封着されていることが確認された。次に、実施例1と同様にして酸化物TFTの特性信頼性を評価した。評価結果を表1に示す。信頼性の評価結果は、しきい値電圧の変化量(ΔVth)が0.1V以下の場合は◎、0.1Vを超えて0.3V以下の場合は○、0.3Vを超えて0.5V以下の場合は△、TFTが駆動しなかった場合やしきい値電圧の変化量(ΔVth)が0.5Vを超える場合は×として示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から明らかなように、実施例1〜18の気密パッケージとその製造工程によれば、酸化物TFTの信頼性を維持することができる。さらに、実施例1〜7、10〜16の気密パッケージの製造工程によれば、酸化物TFTの信頼性が向上することが分かる。比較例1〜4では、封着時のTFTの温度が600℃を超えたため、酸化物半導体層が結晶化を起こし、トランジスタとして駆動しなかった。従って、パラメータAは0.1以上とすることが好ましいことが分かる。さらに、実施例1〜7、10〜16と実施例8〜9、17〜18との比較から、パラメータAが2500以下となるように電極領域の封着条件を選択することによって、酸化物TFTの信頼性を向上させることができる。
【0075】
[実施例19]
(TFT基板の製造工程)
無アルカリガラスからなる第1のガラス基板(旭硝子社製、AN100(熱膨張係数:38×10-7/℃)、寸法:100×100×0.7mmt)の表示領域に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物半導体層、およびソース・ドレイン電極を、この順に以下示す工程で形成した。
【0076】
無アルカリガラスからなるガラス基板上に、スパッタ法を用いてスズドープ酸化インジウムを成膜し、ゲート電極(膜厚150nm)を形成した。次に、原子層堆積法(ALD)でアルミナとチタニアとを交互に積層したATO膜を成膜し、ゲート絶縁膜(膜厚150nm)を形成した。続いて、チャネル形成領域以外の領域がレジストで覆われるようにフォトリソグラフィでレジストパターンを形成した。この後、スパッタ法でインジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)の各元素を含む酸化物を成膜した(膜厚35nm)。レジストを剥離して不要な膜を取り除くことによって、チャネル層(酸化物半導体層)を形成した。
【0077】
次に、ソース・ドレイン電極の形成領域以外の領域がレジストで覆われるようにフォトリソグラフィでレジストパターンを形成した。この後、蒸着法で膜厚5nmのチタン(Ti)を成膜した後、膜厚500nmの金(Au)を成膜した。レジストを剥離して不要な膜を取り除くことによって、ソース・ドレイン電極を形成した。さらに、スパッタ法で膜厚100nmのシリカ膜を成膜することによって、パッシベーション膜を形成した。このようにして、1枚のガラス基板あたりに25個(5個×5個)の逆スタガ構造の酸化物TFTを形成したTFT基板(第1のガラス基板)を作製した。
【0078】
(TFT基板と封止基板との封着工程)
上述したTFT基板と実施例1と同様に作製した封止基板とを、酸化物TFTを有する表面と封着材料層を有する表面とが対向するように、封着材料層を介して積層した。次いで、封止基板を通して封着材料層にスポット径1.5mm、出力13.5W(出力密度:764W/cm2)のレーザ光(半導体レーザ)を、5mm/秒の走査速度で照射し、封着材料層を溶融並びに急冷固化することによって、TFT基板と封止基板とを封着した。レーザ光の強度分布は一定に整形せず、突形状の強度分布を有するレーザ光を使用した。レーザ光を照射した際の封着材料層の加熱温度は650℃であった。
【0079】
(信頼性の評価)
レーザ封着後にガラス基板、封着層、取り出し電極の状態を観察したところ、クラックや割れの発生は認められず、TFT基板と封止基板とが良好に封着されていることが確認された。また、TFT基板と封止基板との封着体(気密パッケージ)の気密性をヘリウムリークテストで評価したところ、良好な気密性が得られていることが確認された。さらに、実施例1と同様にして酸化物TFTの信頼性試験を実施した。その結果、信頼性試験後のしきい値電圧の変化量(ΔVth)は0.01Vであった。
【0080】
[実施例20]
パッシベーション膜の膜厚を50nmとする以外は、実施例19と同様にしてTFT基板と封止基板とを封着した。得られたTFT基板と封止基板との封着体(気密パッケージ)を用いて、実施例1と同様にして酸化物TFTの信頼性試験を実施した。その結果、信頼性試験後のしきい値電圧の変化量(ΔVth)は0.05Vであった。
【0081】
[実施例21]
パッシベーション膜を形成しないこと以外は、実施例19と同様にしてTFT基板と封止基板とを封着した。得られたTFT基板と封止基板との封着体(気密パッケージ)を用いて、実施例1と同様にして酸化物TFTの信頼性試験を実施した。その結果、信頼性試験後のしきい値電圧の変化量(ΔVth)は0.5Vであった。
【0082】
[比較例5]
無アルカリガラスからなる第2のガラス基板(旭硝子社製、AN100(熱膨張係数:38×10-7/℃)、寸法:95mm×95mm×0.7mmt)を用意し、このガラス基板の封止領域にエポキシ樹脂(スリーボンド社製、ThreeBond 3124B)をスクリーン印刷法で塗布した。スクリーン版のパターンは、線幅が0.5mmで80mm×80mmの額縁状パターンとし、コーナー部の曲率半径Rは0.5mmとした。
【0083】
封止領域にエポキシ樹脂が塗布された封止基板(第2のガラス基板)と、実施例19と同様にして、第1のガラス基板上に膜厚が100nmのパッシベーション膜を有する酸化物TFTを形成して作製したTFT基板とを積層した後、TFTの作製領域を遮光した上で紫外線を照射し、続いて80℃で1時間アニールしてエポキシ樹脂を硬化させた。このようにして、TFT基板と封止基板とを樹脂封止したパッケージを作製した。得られたTFT基板と封止基板との樹脂封止パッケージを用いて、実施例1と同様にして酸化物TFTの信頼性試験を実施した。その結果、信頼性試験後のしきい値電圧の変化量(ΔVth)は0.7Vであった。
【0084】
[比較例6]
パッシベーション膜の膜厚を50nmとする以外は、比較例5と同様にしてTFT基板と封止基板とを樹脂封止した。得られたTFT基板と封止基板との樹脂封止パッケージを用いて、実施例1と同様にして酸化物TFTの信頼性試験を実施した。その結果、信頼性試験後のしきい値電圧の変化量(ΔVth)は1.0Vであった。
【0085】
[比較例7]
パッシベーション膜を形成しないこと以外は、比較例5と同様にしてTFT基板と封止基板とを樹脂封止した。得られたTFT基板と封止基板との樹脂封止パッケージを用いて、実施例1と同様にして酸化物TFTの信頼性試験を実施した。その結果、信頼性試験後のしきい値電圧の変化量(ΔVth)は2Vであった。
【0086】
[比較例8]
実施例19と同様にして、第1のガラス基板上に膜厚が100nmのパッシベーション膜を有する酸化物TFTを形成してTFT基板を作製した。このTFT基板を封止基板で封止することなく、実施例1と同様の酸化物TFTの信頼性試験を実施した。その結果、信頼性試験後のしきい値電圧の変化量(ΔVth)は0.8Vであった。
【0087】
[比較例9]
パッシベーション膜の膜厚を50nmとする以外は、比較例8と同様にしてTFT基板を作製した。このTFT基板を封止基板で封止することなく、実施例1と同様の酸化物TFTの信頼性試験を実施した。その結果、信頼性試験後のしきい値電圧の変化量(ΔVth)は1.5Vであった。
【0088】
[比較例10]
パッシベーション膜を形成しないこと以外は、比較例8と同様にしてTFT基板を作製した。このTFT基板を封止基板で封止することなく、実施例1と同様の酸化物TFTの信頼性試験を実施した。その結果、信頼性試験後のしきい値電圧の変化量(ΔVth)は3Vであった。
【0089】
実施例19〜21および比較例5〜10の結果を表2にまとめて示す。
【表2】

【符号の説明】
【0090】
1…表示装置、2…第1のガラス基板、2a…表面、3…第2のガラス基板、3a…表面、4…表示部、5…第1の表示領域、6…第1の封止領域、7…第2の表示領域、8…第2の封止領域、9…封着層、10…封着材料層、11…レーザ光、12,411,421,43,44…酸化物TFT、13…信号線、14…走査線、15…取り出し電極、16…電極領域、413,423…画素電極、414,426…カラーフィルタ層、415,424…共通電極、416…液晶層、424…有機EL層、431,441…ゲート電極、432,442…ゲート絶縁膜、433,444…酸化物半導体層、434,443…ソース電極、435,445…ドレイン電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の封止領域と、第1の表示領域とを備える第1の表面を有する第1のガラス基板を用意する工程と、
第2の封止領域と、第2の表示領域と、前記第2の封止領域上に形成され、レーザ吸収能を有する封着用ガラス材料の焼成層からなる枠状の封着材料層とを備える第2の表面を有する第2のガラス基板を用意する工程と、
前記第1の表示領域側に配置される画素電極および薄膜トランジタを有する複数の画素と、前記薄膜トランジタを駆動する信号線および走査線と、前記第2の表示領域側に配置される共通電極と、前記複数の画素と前記共通電極との間に配置される表示層とを備える表示部を、前記第1のガラス基板の前記第1の表示領域と前記第2のガラス基板の前記第2の表示領域との間に設ける工程と、
前記第1の表面と前記第2の表面とを対向させつつ、前記封着材料層を介して前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板とを積層する工程と、
レーザ光を前記第1のガラス基板または前記第2のガラス基板を通して前記封着材料層に沿って走査しながら照射し、前記封着材料層を溶融および固化させて、前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板との間に設けられた前記表示部を封止する封着層を形成する工程とを具備し、
前記薄膜トランジタは活性層として酸化物半導体層を有することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1のガラス基板の前記第1の表面は、前記信号線および前記走査線を外部に取り出す取り出し電極が前記第1の封止領域を横切るように設けられた電極領域を備え、
前記レーザ光が前記電極領域を通過する際の走査速度をV[mm/秒]、前記レーザ光のビーム径をD[mm]、前記取り出し電極の前記電極領域内に存在する前記封着材料層から前記薄膜トランジタまでの最短距離をL[mm]としたとき、前記レーザ光は前記電極領域を通過する際に、0.1≦V×L2/D≦2500の条件を満たすことを特徴とする請求項1記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記レーザ光が前記電極領域を通過する際の前記封着材料層の加熱温度が500℃以上700℃以下の範囲となるように、前記レーザ光を前記封着材料層に照射することを特徴とする請求項2記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記薄膜トランジタは厚さが100nm以下のパッシベーション膜で覆われているか、もしくはパッシベーション膜で覆われていないことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記パッシベーション膜は10nm以上50nm以下の範囲の膜厚を有することを特徴とする請求項4記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記表示部は、前記表示層の表示面側に配置されたカラーフィルタ層を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記表示層として液晶層を備える前記表示部を具備する液晶ディスプレイを製造することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記表示層として有機EL層を備える前記表示部を具備する有機ELディスプレイを製造することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記封着用ガラス材料は、低融点ガラスからなる封着ガラスを含有し、かつ0.1〜40体積%のレーザ吸収材と0〜50体積%の低膨張充填材とを、前記レーザ吸収材と前記低膨張充填材との合計量として0.1〜50体積%の範囲で含有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
第1の封止領域と、第1の表示領域とを備える第1の表面を有する第1のガラス基板と、
第2の封止領域と、第2の表示領域とを備える第2の表面を有し、前記第2の表面が前記第1の表面と対向するように、前記第1のガラス基板上に所定の間隙を持って配置された第2のガラス基板と、
前記第1のガラス基板の前記第1の表示領域と前記第2のガラス基板の前記第2の表示領域との間に設けられた表示部であって、前記第1の表示領域側に配置される画素電極および薄膜トランジタを有する複数の画素と、前記薄膜トランジタを駆動する信号線および走査線と、前記第2の表示領域側に配置される共通電極と、前記複数の画素と前記共通電極との間に配置される表示層とを備える表示部と、
前記表示部を封止するように、前記第1の封止領域と前記第2の封止領域との間に形成され、レーザ吸収能を有する封着用ガラス材料の溶融固着層からなる封着層とを具備し、
前記薄膜トランジタは活性層として酸化物半導体層を有し、かつ前記薄膜トランジタは厚さが100nm以下のパッシベーション膜で覆われているか、もしくはパッシベーション膜で覆われていないことを特徴とする表示装置。
【請求項11】
前記パッシベーション膜は10nm以上50nm以下の範囲の膜厚を有することを特徴とする請求項10記載の表示装置。
【請求項12】
前記表示部は、前記表示層の表示面側に配置されたカラーフィルタ層を備えることを特徴とする請求項10または11記載の表示装置。
【請求項13】
前記表示層として液晶層を備える前記表示部を具備する液晶ディスプレイであることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか1項記載の表示装置。
【請求項14】
前記表示層として有機EL層を備える前記表示部を具備する有機ELディスプレイであることを特徴とする請求項10ないし12のいずれか1項記載の表示装置。
【請求項15】
前記封着用ガラス材料は、低融点ガラスからなる封着ガラスを含有し、かつ0.1〜40体積%のレーザ吸収材と0〜50体積%の低膨張充填材とを、前記レーザ吸収材と前記低膨張充填材との合計量として0.1〜50体積%の範囲で含有することを特徴とする請求項10ないし14のいずれか1項記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−97195(P2013−97195A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240461(P2011−240461)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】