説明

表示装置の製造方法

【課題】表示組成物を含む複数の表示素子を備えた表示装置の製造方法において、良好に像を表示させることができる表示装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】先ず基板10上に陽極11aを形成する(a)(b)。次いでPVKから成る絶縁層11bを形成する(c)。次いで絶縁層11b上の陽極11aと対向する位置に、絶縁層11bを溶解する溶媒及び表示用組成物を含有するインク溶液21を塗布する(d)。次いで、インク21中の溶媒を蒸発させ、インク21の不揮発成分である表示用組成物を、陽極11aと電気的接合を持った状態で固化させる(e)。次いで電子注入層11eを形成する(f)。この際、塗布後の電子注入層11eにおいて、発光層11c及び隔壁11dに接する側と反対側の面が、発光層11c及び隔壁11dからなる面より平らになるようにする。その後、陰極11fを形成する(g)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機材料等の表示組成物を含む複数の表示素子を備えた表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機ELディスプレイやエレクトロクロミックディスプレイなどのような薄型の表示装置の開発が盛んに行われている。このような表示装置は、例えば特許文献1に記載のように、一対の電極とその一対の電極の間に挿入され、その一対の電極間に電圧が印加されると発光し又は呈色変化する物質である表示用組成物からなる表示素子を複数備えている。また、各表示素子には、自身の表用組成物と他の表示素子の表示用組成物との間を絶縁する隔壁を備えている。
【0003】
その製造方法は、(I)先ず基板上に、上記一対の電極の一方(第1電極)を形成する。(II)次いで、その第1電極を覆うようにPVK(ポリ(N−ビニルカルバゾール))などのような材質を用いて絶縁層を形成する。(III)次いで、この絶縁層を溶解する溶媒と表示用組成物を含有したインク溶液を、絶縁層上の第1電極に対向する位置に滴下させる(以下、インク溶液を滴下する方法をインクジェット法と言う。)。そして、滴下されたインク溶液に含有されている上記溶媒の作用によって、インク溶液が第1電極に到達するまで絶縁層が溶解されていく。その結果、上記隔壁を形成することができる。(IV)次いで、第1電極に到達したインク溶液に対して、そのインク溶液に含有されている上記溶媒を蒸発させ、残った表示用組成物を第1電極に電気的に接触させる。(V)その後、表示用組成物及び隔壁の上に他方の電極(第2電極)を形成する。
【0004】
このようにして製造された表示装置は、第1電極と第2電極の間に所定の電圧を印加することによって、表示用組成物が発光し又は呈色変化する。そして、各表示素子について、第1電極と第2電極の間に所定の電圧を印加するか否かを制御することによって、様々な像を表示させることができる。
【0005】
このように、特許文献1に記載の方法で表示装置を製造することによって、複数の表示用組成物と隔壁とを略同時に形成できる。その結果、表示装置の製造時間を短縮できるとともに、複雑な光露光、エッチングプロセスを経ずに隔壁を形成できるのでコストを削減できる。
【特許文献1】特開2003−86366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記(IV)の工程が実行されると、他方の電極が形成される面である表示用組成物及び隔壁とからなる面において、表示用組成物における面と隔壁における面とに段差が生じる。すなわち、表示用組成物及び隔壁とからなる面は、平らになっていない。その結果、表示用組成物及び隔壁とからなる面と第2電極との接合が不良になりやすく、その接合が不良になった場合、良好に像を表示させることができないという問題点がある。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、表示組成物を含む複数の表示素子を備えた表示装置の製造方法において、良好に像を表示させることができる表示装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の表示装置の製造方法は、第1電極と、その第1電極と離間して、且つ対向して位置する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に挿入され、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が印加された場合、前記第1電極から供給される電荷である第1電極供給電荷及び前記第2電極から供給される電荷である第2電極供給電荷によって、発光し又は呈色変化する物質である表示用組成物とを有する表示素子を複数備え、さらに、前記各表示素子の前記表示用組成物と他の前記表示素子の前記表示組成物との間を絶縁する隔壁を備えた表示装置の製造方法であって、基板上に前記第1電極を形成する第1電極形成工程と、前記第1電極形成工程において形成された前記第1電極を覆う絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、前記絶縁層形成工程において形成された前記絶縁層上の前記第1電極に対向する位置に、前記絶縁層を溶解する溶媒及び前記表示用組成物を含有するインク溶液を塗布するインク溶液塗布工程と、前記インク溶液塗布工程において塗布された前記インク溶液が前記絶縁層を溶解した後に、前記インク溶液の前記溶媒を蒸発させ、前記第1電極と接触するように前記表示用組成物を形成する表示用組成物形成工程と、前記表示用組成物形成工程において形成した前記表示用組成物及び前記インク溶液によって溶解された後の前記絶縁層である前記隔壁の上に、前記第2電極供給電荷を前記表示用組成物に注入する電荷注入層を塗布する工程であって、その塗布後の前記電荷注入層において、前記表示用組成物及び前記隔壁に接する側と反対側の面が、前記表示用組成物及び前記隔壁とからなる面より平らになっている電荷注入層塗布工程と、前記電荷注入層塗布工程において塗布された前記電荷注入層の上に前記第2電極を形成する第2電極形成工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の表示装置の製造方法は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記第1電極は、前記第1電極供給電荷としてホールを前記表示用組成物に供給するITO又はPEDOTであり、前記電荷注入層は、オキサジゾール誘導体、トリアゾール系、及びアルミニウム錯体のいずれかであり、前記第2電極は、前記第2電極供給電荷として電子を前記表示用組成物に供給するアルミニウム(Al)、フッ化リチウム(LiF)、Al/Ca、Al/LiF、及びAl/Baのいずれかであることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の表示装置の製造方法は、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記第1電極形成工程は、前記第1電極供給電荷として電子を前記表示用組成物に供給する電子供給金属であるアルミニウム(Al)、フッ化リチウム(LiF)、Al/Ca、Al/LiF、及びAl/Baのいずれかの層を前記基板上に形成する電子供給金属層形成工程と、その電子供給金属層形成工程において形成された前記電子供給金属の層の表面を覆う絶縁層である表面被覆絶縁層を形成する表面被覆絶縁層形成工程とを有し、前記電荷注入層は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)であり、前記第2電極は、前記第2電極供給電荷としてホールを前記表示用組成物に供給するITO又はPEDOTであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の表示装置の製造方法によれば、先ず、第1電極形成工程において、基板上に第1電極が形成される。次いで、絶縁層形成工程において、第1電極形成工程において形成された第1電極を覆う絶縁層が形成される。次いで、インク溶液塗布工程において、絶縁層形成工程において形成された絶縁層上の第1電極に対向する位置に、絶縁層を溶解する溶媒及び表示用組成物を含有するインク溶液が塗布される。次いで、表示用組成物形成工程において、インク溶液塗布工程において塗布されたインク溶液が絶縁層を溶解した後に、インク溶液の前記溶媒を蒸発させ、第1電極と接触するように表示用組成物が形成される。次いで、電荷注入層塗布工程において、表示用組成物及び隔壁の上に、第2電極供給電荷を表示用組成物に注入する電荷注入層が形成される。この際、その電荷注入層の、表示用組成物及び隔壁に接する側と反対側の面が、表示用組成物及び隔壁とからなる面より平らになるように、電荷注入層が塗布される。その後、第2電極形成工程において、電荷注入層塗布工程において塗布された電荷注入層の上に第2電極が形成される。
【0012】
このように、第2電極は、表示用組成物及び隔壁とからなる面より平らな面を有する電荷注入層上に形成されるので、表示用組成物及び隔壁とからなる面と第2電極とが接合される場合よりも、第2電極と電荷注入層とは良好に接合される。これにより、良好に像を表示させることができる。
【0013】
なお、電荷注入層は、第2電極供給電荷を表示用組成物に注入するので、電荷注入層を第2電極と表示用組成物との間に挿入することによって、表示用組成物が発光し又は呈色変化することの妨げにはならない。
【0014】
また、請求項2の表示装置の製造方法によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、電荷注入層としてオキサジゾール誘導体、トリアゾール系、及びアルミニウム錯体のいずれを用いて、第2電極としてアルミニウム(Al)、フッ化リチウム(LiF)、Al/Ca、Al/LiF、及びAl/Baのいずれかを用いることにより、電荷注入層と第2電極とは良好に接合する。また、電荷注入層であるオキサジゾール誘導体、トリアゾール系、及びアルミニウムは、第2電極から供給される電子を表示用組成物に注入する材料として適している。さらに、第1電極であるITO又はPEDOTは仕事関数が大きいので、ホールを良好に表示組成物に供給することができる。反対に第2電極であるアルミニウム(Al)、フッ化リチウム(LiF)、Al/Ca、Al/LiF、及びAl/Baは、仕事関数が小さいので、電子を良好に表示組成物に供給することができる。その結果、表示組成物を良好に発光させ、又は呈色変化させることができる。
【0015】
また、請求項3の表示装置の製造方法によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、第1電極を構成する電子供給金属であるアルミニウム(Al)、フッ化リチウム(LiF)、Al/Ca、Al/LiF、及びAl/Baは、第1電極供給電荷として電子を良好に表示用組成物に供給する。このように、電子供給金属は電子を良好に表示用組成物に供給するので、電子供給金属の仕事関数は小さい。したがって、電子供給金属は、真空中若しくは不活性ガス中でないと還元する虞があるが、電子供給金属の表面には表面被覆絶縁膜で覆われているので、第1電極形成工程後の工程を、真空中若しくは不活性ガス中で行う必要がない。よって、真空状態を作る真空装置や不活性ガスを密閉する密閉装置が必要でないので、大きな表示装置を製造することができ、また、低コストで表示装置を製造することができる。また、電荷注入層としてPEDOTを用いて、第2電極としてITO又はPEDOTを用いることにより、電荷注入層と第2電極とは良好に接合する。上述したように、第1電極の電子供給金属は、電子を良好に表示用組成物に供給することができる。反対に第2電極であるITO又はPEDOTはホールを良好に表示用組成物に供給することができる。また、電荷注入層であるPEDOTは、第2電極であるITO又はPEDOTから供給されるホールを表示用組成物に注入する材料として適している。したがって、表示組成物を良好に発光させ、又は呈色変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る表示装置の製造方法の第1実施形態について、図面を参照して説明する。ここでは、表示装置として、有機ELディスプレイを例に挙げて説明する。
【0017】
まず、有機ELディスプレイ1の全体構成を図1を用いて説明する。有機ELディスプレイ1は、ガラス基板10と、そのガラス基板10上に配置された有機EL素子11(表示素子)、電流駆動TFT12、水平駆動回路13、垂直駆動回路14、及び封止層16を備えている。
【0018】
上記有機EL素子11は、ガラス基板10の中央部に形成されており、碁盤の目状に、15の画素に分割されている。それぞれの画素は、発光層11c(表示用組成物)と、その発光層11cを上下から挟む陽極(ITO(インジウムチタンオキサイド)11a)及び電荷注入層11eと、その電荷注入層11eと接合する陰極11fとを備えている。
【0019】
有機EL素子11について、陽極ITO11aと陰極11fとの間に直流電圧をかけると、陽極ITO11a(第1電極)からホール(第1電極供給電荷)が発光層11cに供給され、陰極11f(第2電極)から電子(第2電極供給電荷)が発光層11cに供給される。そして、陽極ITO11aから供給されたホールと、陰極11fから供給された電子とが発光層11cで再結合する。この際、発光層11cは発光し、ガラス基板10を透過して、下方(図1における下方)に光を照射する。一方、陽極(ITO11a)と陰極11fとの間の電圧がOFFの時には消光する。また、電子注入層11eは、陰極11fから供給される電子を効率よく発光層11cに注入する役割を担っているとともに、発光層11c及び後述する隔壁とからなる面と陰極11fとを良好に接合させる役割を担っている。
【0020】
上記電流駆動TFT12は、有機EL素子11の個々の画素ごとに1個ずつ設けられており、対応する画素への電流供給を制御するスイッチとして作用する。上記水平駆動回路13及び上記垂直駆動回路14は、各画素に対応する電流駆動TFT12を、オン又はオフとすることにより、各画素の独立発光及び消灯制御を行う。上記封止層16は、有機EL素子11、電流駆動TFT12、水平駆動回路13、垂直駆動回路14、P−SiTFT15を上から覆い、保護するものである。
【0021】
次に、上記電流駆動TFT12について、図1、図2、及び図3を用いて説明する。有機ELディスプレイ1には、図1に示す様に、有機EL素子11の1画素ごとに、電流駆動TFT12が設けられている。この電流駆動TFT12は、図2に示す様に、有機EL素子11の個々の画素への電流の供給を制御するスイッチとして機能する。
【0022】
この電流駆動TFT12の構成を、図3の等価回路を用いて説明する。なお、図3は、6個の画素についての繰り返し図である。電流駆動TFT12は、図3に示す様に、垂直駆動回路14に接続したデータ線12f、水平駆動回路13に接続した走査線12e、走査線12eを介して走査信号が、そのゲート電極に供給されるメモリーTFT12b、メモリーTFT12bを介してデータ線12fから電荷(画像信号)を供給され、保持するコンデンサ12c、コンデンサ12cにより保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動TFT12aを備えており、有機EL素子の陽極(ITO11a)には、駆動TFT12aを介して電源線12dから駆動電流が流れ込む。
【0023】
この電流駆動TFT12では、水平駆動回路13によって走査線12eがオンになり、垂直駆動回路14によってデータ線12fがオンになると、メモリーTFT12bが作動し、コンデンサ12cに電荷が蓄積される。この電荷に相当する時間だけ駆動TFT12aが作動し、電源線 12dから、駆動TFT12a、陽極(ITO11a)、発光層11c及び電子注入層11eを介して、陰極11fへ電流が流れ、その電流駆動TFT12に対応する画素が発光する。
【0024】
一方、水平駆動回路13によって走査線12dがオフとなるか、垂直駆動回路14によってデータ線12eがオフとなった場合には、メモリーTFT12bが作動せず、発光層11cには電流が流れないので、その電流駆動TFT12に対応する画素は消光する。
【0025】
次に、有機ELディスプレイ1の製造方法を図4及び図5を用いて説明する。なお、図4は、有機ELディスプレイ1のうち、有機EL素子11の部分のみの製造工程を示したフローチャートであり、図5は、図4の各工程における有機EL素子11を示した外観図である。したがって、ここでは、特に、要部である有機EL素子11の製造方法を説明する。
【0026】
先ず、S11では、ガラス基板10上に、ITO11aを150nmの厚みで蒸着し、陽極を成膜する(図5(a)参照)。このITO11aの表面抵抗は500〜600μΩ/cmであり、光透過率は81%であった。
【0027】
次いで、S12では、S11で成膜したITO11a上に、露光用のレジストをスピンコートにより塗布し、所望の電極パターンをマスク露光する。その後、濃硝酸と濃塩酸の混合液である王水を用いたエッチングにより、露光されていない部分のレジスト及びITO11aを取り除き、所望の電極パターンを形成する(図5(b)参照)。
【0028】
次いで、S13では、ITO11a表面を、中性洗剤洗浄、アセトン洗浄、IPA(イソプロピルアルコール)洗浄、及びUVオゾン洗浄により順次洗浄する。なお、これらの洗浄の目的は、(i)ITO11a上の汚れを除去すること、(ii)ITO11a表面の酸素欠陥を減らし、ホール注入障壁を低下させること、である。中でも、UVオゾン洗浄は、湿式洗浄ではとれない有機物の汚れを除去することができる。
【0029】
次いで、S14では、ガラス基板10上の、有機EL素子11を形成する部分全体に、スピンコート法、ディップ法、カーテンコート法、バーコート法、印刷法もしくはインクジェット法を用いて、PVKから成る絶縁層11bを形成する(図5(c)参照)。絶縁層11bの厚みは、ITO11a間の絶縁を保持できる厚みであればよく、薄い方が、インクジェットの液滴径(ドロップ径)を考えると、高分解能、高画質の点で好ましい。また、絶縁層11bは、後述する工程において溶解させるので、半キュアー状態(完全に硬化していない状態)が望ましい。
【0030】
また、有機EL膜(表示用組成物)の成分及び炭化水素系溶媒から成るインク21(インク溶液)を予め調製しておく。具体的には、以下の成分を、それぞれ対応する重量比で混合することにより調製する。
【0031】
ホール輸送性ポリマーである、カルバゾール誘導体を主鎖あるいは側鎖に有する高分子化合物(PVK):16重量比
電子輸送材料(BND):4重量比
発光中心形成化合物(TPB):1重量比
炭化水素系溶媒(テトラリン):インク21において、PVK、BND、及びTPBの合計濃度が2%wtとなる重量比
【0032】
上記インク21の粘度は、1×10-3〜1×10Pa・sとすることができるが、このうち、5×10-3〜1.5×10-2Pa・sの範囲にあることが、インクジェット法を用いてインク21を吐出する際のドロップ径を制御する上で望ましい。また、上記インク21の表面張力は、20〜50mN/mの範囲にあることが、インクジェット法によるインクの吐出の際の飛行曲がりを抑えることができるので好ましい。
【0033】
次いで、S15では、調製したインク21を、インクジェットヘッド30を用い、絶縁層11b上において、所望の電極パターンに形成されたITO11a(第1電極)に対向する位置の、画素を形成するべき15カ所に、選択的に塗布する(図5(d)参照)。このインクジェットヘッド30は、図6に示す様に、圧電素子30aを備えた圧電素子方式のインクジェットヘッドであり、ドライバー30cからの信号に応じて、インクジェットヘッド本体30dに形成したオリフィス30bから、インク21のドロップを吐出する。吐出の駆動周波数は1KHzとし、ドロップ1個の液適量を50μlとする。インク21が塗布された場所では、塗布されたインク中に含まれる溶媒により、絶縁層11bが溶解し、インク21はITO11aに達する(図5e参照)。
【0034】
次いで、S16では、50〜60℃で30分間乾燥させることにより、インク21中の溶媒を蒸発させ、インク21の不揮発成分である表示用組成物を、ITO11aと電気的接合を持った状態で固化させる。この固化させた表示用組成物を発光層11cとする。
【0035】
なお、固化した15カ所の発光層11cは、それぞれが、1画素に対応する。この時、図5eに示すように、インク21により溶解された絶縁層11bは、インク21を滴下した部分の周辺部に偏析し、インク21に含まれていた表示用組成物は、インク21を滴下した部分の中央において固化する。この理由としては、インク21に含まれる溶媒に対する溶解度において、表示用組成物の方が、絶縁層11bよりも大きいことが考えられる。
【0036】
また、インク21が塗布されなかった部分の絶縁層11bは、溶解されずに残り、発光層11cを隔てる隔壁11dとなる。また、上述したように、インク21により溶解された絶縁層11bが、インク21を滴下した部分の周辺部に偏析することから、発光層11cと隔壁11dとからなる面は凹凸となっている。
【0037】
次いで、S17では、オキサジゾール誘導体、トリアゾール系、及びアルミニウム錯体のいずれかである電子注入層11eを、スピンコート法、ディップ法、カーテンコート法、バーコート法、印刷法もしくはインクジェット法を用いて塗布することによって形成する(図5(f)参照)。この際、塗布後の電子注入層11eにおいて、発光層11c及び隔壁11dに接する側と反対側の面が、発光層11c及び隔壁11dからなる面より平らになるように、電子注入層11eを塗布する。
【0038】
次いで、S18では、マスク真空蒸着により、所定のパターンに従って、Al/LiFを形成し、これを陰極11fとする(図5(g)参照)。この時、Al層と、LiF層の厚みは、それぞれ、例示として1000Å、10Åとし、連続的に積層する。ここで、電子注入層11eの表面は平らとなっているので、発光層11c及び隔壁11dに接合させて陰極を形成する場合よりも、電子注入層11eに接合させて陰極11fを形成するほうが、電子注入層11eと陰極11fは良好に接合する。なお、LiF(フッ化リチウム)/Alの代わりに、Al、LiF、Al/Ca、及びAl/Baのいずれかで陰極11fを形成してもよい。
【0039】
上記のようにして有機EL素子11をガラス基板10の中心部に形成するとともに、ガラス基板10の周辺部に、水平駆動回路13及び垂直駆動回路14を形成する。さらには、封止層16により、有機EL素子11、水平駆動回路13及び垂直駆動回路14を覆うことにより、有機ELディスプレイ1を完成する。
【0040】
この封止層16は、ガラス板から成り、その下面(図1における下面)には、有機EL素子11との間に、0.3〜0.5mmの隙間が生じるように、乾燥剤が取り付けられている。封止層16を取り付ける際には、その隙間に、窒素ガスを封入する。
【0041】
以上、本実施形態の表示装置の製造方法によれば、表示用組成物及び溶媒を含むインク21を、画素を形成すべき場所に塗布することにより、発光層11cの形成と、発光層11cを隔てる隔壁11dの形成とを、同時に行うことができる。つまり、インク21を塗布した部分においては、インク21に含まれる溶媒が絶縁層11bを溶解し、発光層11cが形成され、インク21が塗布されない部分では、絶縁層11bが残存し、画素間を隔てる隔壁11dとなる。そのため、従来の有機EL素子の製造方法のように、有機EL膜間の隔壁を形成するために、露光、エッチング等の独立した工程を行う必要がない。よって、製造工程を短縮することができ、製造コストを低くすることができる。
【0042】
また、インクジェットヘッド30として、圧電素子方式を用いることにより、バブルジェット(登録商標)方式のように、インク吐出のための熱源がないので、インク材料の劣化が起こらないこと、インク21の溶媒の選択範囲が広いこと、吐出するインク21の液滴量の制御がしやすいこと、駆動周波数を高くできること、耐久性が高いこと、という利点が得られる。
【0043】
また、陰極11fは、発光層11c及び隔壁11dとからなる面より平らな面を有する電子注入層11e上に形成されるので、発光層11c及び隔壁11dとからなる面と陰極11fとが接合される場合よりも、陰極11fと電子注入層11eとは良好に接合される。これにより、良好に像を表示させることができる。なお、電子注入層11eは、電子を発光層11cに注入するので、電子注入層を陰極11fと発光層11cとの間に挿入することによって、発光層11cが発光し又は呈色変化することの妨げにはならない。
【0044】
また、電子注入層11eであるオキサジゾール誘導体、トリアゾール系、及びアルミニウムは、陰極11fであるアルミニウム(Al)、フッ化リチウム(LiF)、Al/Ca、Al/LiF、及びAl/Baのいずれかから供給される電子を発光層11cに注入する材料として適している。さらに、陽極11aであるITOは、仕事関数が大きいので、ホールを良好に発光層11cに供給することができる。反対に、陰極11fであるAl/LiFは、仕事関数が小さいので、電子を良好に発光層11cに供給することができる。その結果、発光層11cを良好に発光させることができる。
【0045】
(第2実施形態)
続いて、本発明に係る表示装置の製造方法の第2実施形態について、図面を参照して説明する。ここでは、表示装置として、第1実施形態と同様に有機ELディスプレイを例に挙げて説明する。なお、第1実施形態では、最初に陽極(ITO11a)を形成して(図4 S11〜S13)、最後に陰極11fを形成していたが(図4 S18)、本実施形態では、最初に陰極を形成して、最後に陽極を形成する製造方法である。以下、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0046】
まず、有機ELディスプレイ2の全体構成を図7を用いて説明する。なお、第1実施形態と同じ機能を有するものには同じ符号を付している。有機ELディスプレイ2は、ガラス基板50と、そのガラス基板50上に配置された有機EL素子51(表示素子)、電流駆動TFT12、水平駆動回路13、垂直駆動回路14、及びガラス板である封止層16を備えている。
【0047】
上記有機EL素子51は、ガラス基板50の中央部に形成されており、碁盤の目状に、15の画素に分割されている。それぞれの画素は、発光層11c(表示用組成物)と、その発光層11cを上下から挟む陰極51a及びホール注入層51eと、その電荷注入層51eと接合する陽極51f(ITO)とを備えている。
【0048】
有機EL素子51について、陽極51fと陰極51aとの間に直流電圧をかけると、陽極51f(第2電極)からホール(第2電極供給電荷)が発光層11cに供給され、陰極51a(第1電極)から電子(第1電極供給電荷)が発光層11cに供給される。そして、陽極51fから供給されたホールと、陰極51aから供給された電子とが発光層11cで再結合する。この際、発光層11cは発光し、封止層16を透過して、上方(図7における上方)に光を照射する。一方、陽極51fと陰極51aとの間の電圧がOFFの時には消光する。また、ホール注入層51eは、陽極51fから供給されるホールを効率よく発光層11cに注入する役割を担っているとともに、発光層11c及び後述する隔壁とからなる面と陽極51fとを良好に接合させる役割を担っている。
【0049】
なお、電流駆動TFT12、水平駆動回路13、垂直駆動回路14は第1実施形態と同じなので、説明を省略する。
【0050】
次に、有機ELディスプレイ2の製造方法を図8及び図9を用いて説明する。なお、図8は、有機ELディスプレイ2のうち、有機EL素子51の部分のみの製造工程を示したフローチャートであり、図9は、図8の各工程における有機EL素子51を示した外観図である。したがって、ここでは、特に、要部である有機EL素子51の製造方法を説明する。
【0051】
先ず、S21では、マスク真空蒸着により、Al/LiFの層を形成し、これを電子供給金属51a1の層とする(図9(a)参照)。この電子供給金属51a1は電子を良好に発光層11cに供給する金属であり、そのため電子供給金属51a1の仕事関数は小さい。したがって、電子供給金属51a1は、真空中若しくは不活性ガス中でないと還元する虞がある。なお、電子供給金属51a1の層であるAl層と、LiF層の厚みは、それぞれ、例示として1000Å、10Åとし、連続的に積層する。なお、Al/LiFの代わりに、Al、LiF、Al/Ca、及びAl/Baのいずれかで電子供給金属51a1の層を形成してもよい。
【0052】
次いで、S22では、マスク真空蒸着により、S21で形成した電子供給金属51a1の層の表面を覆う絶縁層である表面被覆絶縁層51a2を形成する(図9(b)参照)。この表面被覆絶縁層51a2の厚みは、電子供給金属51a1が還元しない程度の薄い厚さにする。なお、電子供給金属51a1の層及び表面被覆絶縁層51a2を陰極51a(第1電極)とする。このように、電子供給金属51a1の層の表面を表面被覆絶縁層51a2で覆うことにより、以下に示す工程を、真空中若しくは不活性ガス中で行う必要がない。なお、表面被覆絶縁層51a2の厚みは薄いので、表面被覆絶縁膜51a2は、電子供給金属51a1が発光層11cに電子を供給する妨げにはならない。
【0053】
次いで、S23では、S21及びS22で形成した陰極51a上に、露光用のレジストをスピンコートにより塗布し、所望の電極パターンをマスク露光する。その後、濃硝酸と濃塩酸の混合液である王水を用いたエッチングにより、露光されていない部分のレジスト及び陰極51aを取り除き、所望の電極パターンを形成する(図9(c)参照)。
【0054】
次いで、S24では、ガラス基板50上の、有機EL素子51を形成する部分全体に、スピンコート法、ディップ法、カーテンコート法、バーコート法、印刷法もしくはインクジェット法を用いて、PVKから成る絶縁層11bを形成する(図9(d)参照)。絶縁層11bの厚みは、陰極51a間の絶縁を保持できる厚みであればよく、薄い方が、インクジェットの液滴径(ドロップ径)を考えると、高分解能、高画質の点で好ましい。また、絶縁層11bは、後述する工程において溶解させるので、半キュアー状態(完全に硬化していない状態)が望ましい。
【0055】
また、有機EL膜(表示用組成物)の成分及び炭化水素系溶媒から成る第1実施形態と同じインク21(インク溶液)を予め調製しておく。
【0056】
次いで、S25では、調製したインク21を、インクジェットヘッド30を用い、絶縁層11b上において、所望の電極パターンに形成された陰極51a(第1電極)に対向する位置の、画素を形成するべき15カ所に、選択的に塗布する(図9(e)参照)。このインクジェットヘッド30は、図6に示す様に、圧電素子30aを備えた圧電素子方式のインクジェットヘッドであり、ドライバー30cからの信号に応じて、インクジェットヘッド本体30dに形成したオリフィス30bから、インク21のドロップを吐出する。吐出の駆動周波数は1KHzとし、ドロップ1個の液適量を50μlとする。インク21が塗布された場所では、塗布されたインク中に含まれる溶媒により、絶縁層11bが溶解し、インク21は陰極51aに達する(図9f参照)。
【0057】
次いで、S26では、50〜60℃で30分間乾燥させることにより、インク21中の溶媒を蒸発させ、インク21の不揮発成分である表示用組成物を、陰極51fと電気的接合を持った状態で固化させる。この固化させた表示用組成物を発光層11cとする。
【0058】
なお、固化した15カ所の発光層11cは、それぞれが、1画素に対応する。この時、図9(f)に示すように、インク21により溶解された絶縁層11bは、インク21を滴下した部分の周辺部に偏析し、インク21に含まれていた表示用組成物は、インク21を滴下した部分の中央において固化する。この理由としては、インク21に含まれる溶媒に対する溶解度において、表示用組成物の方が、絶縁層11bよりも大きいことが考えられる。
【0059】
また、インク21が塗布されなかった部分の絶縁層11bは、溶解されずに残り、発光層11cを隔てる隔壁11dとなる。また、上述したように、インク21により溶解された絶縁層11bが、インク21を滴下した部分の周辺部に偏析することから、発光層11cと隔壁11dとからなる面は凹凸となっている。
【0060】
次いで、S27では、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)を、スピンコート法、ディップ法、カーテンコート法、バーコート法、印刷法もしくはインクジェット法を用いて塗布することによってホール注入層51eを形成する(図9(g)参照)。この際、塗布後のホール注入層11eにおいて、発光層11c及び隔壁11dに接する側と反対側の面が、発光層11c及び隔壁11dからなる面より平らになるように、ホール注入層51eを塗布する。
【0061】
次いで、S28では、マスク真空蒸着により、所定のパターンに従って、ITOを150nmの厚みで蒸着し、陽極51f(第2電極)を形成する(図9(h)参照)。この陽極51fの表面抵抗は500〜600μΩ/cmであり、光透過率は81%であった。)。ここで、ホール注入層51eの表面は平らとなっているので、発光層11c及び隔壁11dに接合させて陽極を形成する場合よりも、ホール注入層51eに接合させて陽極51fを形成するほうが、ホール注入層51eと陽極51fは良好に接合する。なお、ITOの代わりに、PEDOTで陽極51fを形成してもよい。
【0062】
上記のようにして有機EL素子51をガラス基板50の中心部に形成するとともに、ガラス基板50の周辺部に、水平駆動回路13及び垂直駆動回路14を形成する。さらには、封止層16により、有機EL素子51、水平駆動回路13及び垂直駆動回路14を覆うことにより、有機ELディスプレイ2を完成する。
【0063】
この封止層16は、ガラス板から成り、その下面(図7における下面)には、有機EL素子51との間に、0.3〜0.5mmの隙間が生じるように、乾燥剤が取り付けられている。封止層16を取り付ける際には、その隙間に、窒素ガスを封入する。
【0064】
以上、本実施形態の表示装置の製造方法によれば、表示用組成物及び溶媒を含むインク21を、画素を形成すべき場所に塗布することにより、発光層11cの形成と、発光層11cを隔てる隔壁11dの形成とを、同時に行うことができる。つまり、インク21を塗布した部分においては、インク21に含まれる溶媒が絶縁層11bを溶解し、発光層11cが形成され、インク21が塗布されない部分では、絶縁層11bが残存し、画素間を隔てる隔壁11dとなる。そのため、従来の有機EL素子の製造方法のように、有機EL膜間の隔壁を形成するために、露光、エッチング等の独立した工程を行う必要がない。よって、製造工程を短縮することができ、製造コストを低くすることができる。
【0065】
また、インクジェットヘッド30として、圧電素子方式を用いることにより、バブルジェット(登録商標)方式のように、インク吐出のための熱源がないので、インク材料の劣化が起こらないこと、インク21の溶媒の選択範囲が広いこと、吐出するインク21の液滴量の制御がしやすいこと、駆動周波数を高くできること、耐久性が高いこと、という利点が得られる。
【0066】
また、陽極51fは、発光層11c及び隔壁11dとからなる面より平らな面を有するホール注入層51e上に形成されるので、発光層11c及び隔壁11dとからなる面と陽極51fとが接合される場合よりも、陽極51fとホール注入層51eとは良好に接合される。これにより、良好に像を表示させることができる。
【0067】
また、ホール注入層51eであるPEDOTは、陽極51fであるITOから供給されるホールを発光層11cに注入する材料として適している。さらに、陰極51aであるAl/LiFは、仕事関数が小さいので、電子を良好に発光層11cに供給することができる。反対に陽極51fであるITOは、仕事関数が大きいので、ホールを良好に発光層11cに供給することができる。その結果、発光層11cにおいて良好に発光させることができる。
【0068】
また、電子供給金属51a1の表面には表面被覆絶縁膜51a2で覆われているので、陰極51aを形成した後の工程を、真空中若しくは不活性ガス中で行う必要がない。よって、真空状態を作る真空装置や不活性ガスを密閉する密閉装置が必要でないので、大きな有機EL素子51を製造することができ、また、低コストで有機EL素子51を製造することができる。
【0069】
(第3実施形態)
続いて、本発明に係る表示装置の製造方法の第3実施形態について説明する。ここでは、表示装置として、エレクトロクロミックディスプレイを例に挙げて説明する。
【0070】
エレクトロクロミックディスプレイの全体構成は、基本的には、上記第1、第2実施形態の有機ELディスプレイ1、2と同様であるが、有機EL素子11、51の代わりに、エレクトロクロミック素子を備えている。
【0071】
このエレクトロクロミック素子は、基本的には、上記第1、第2実施形態の有機EL素子11、51と同じ構成を有するが、表示用組成物として、エレクトロクロミック膜を備えている点で異なる。
【0072】
つまり、エレクトロクロミック素子は、ガラス基板上に、陽極(第1電極)、エレクトロクロミック膜、電子注入層及び陰極(第2電極)が順次積層された構成を有しており、ガラス基板と第2電極の間には、第1電極、エレクトロクロミック膜及び電子注入層が形成されていない部分を埋めるように、絶縁層が形成されている。また、エレクトロクロミック膜は、ポリマー電極と、ポリマー電解質との2層から成る。
【0073】
このエレクトロクロミックディスプレイの呈色メカニズムは、陽極、陰極の間に直流電圧を印加し、陽極を+側にすると酸化反応が起こり、ニュートラル状態(電圧非印加状態)の時に比べて異なる色となる。陽極を−側にすると還元反応が起こり酸化時に比べて更に異なる色となる。このように、陽極の電位を制御して表示制御が行われる。
【0074】
次に、エレクトロクロミックディスプレイの製造方法を説明する。ここでは、特に、要部であるエレクトロクロミック素子の製造方法を簡単に説明する。
【0075】
先ず、第1実施形態のS11〜S13と同様に、ガラス基板上に、ITOからなる陽極を所定のパターンで形成する。次いで、第1実施形態のS14と同様に、ガラス基板上の、エレクトロクロミック素子を形成する部分全体に、PVKから成る絶縁層を形成する。
【0076】
また、エレクトロクロミック膜のポリマー電極の成分、及び炭化水素系溶媒から成る第1のインク(インク溶液)を予め調製しておく。具体的には、PVK(ポリ(N−ビニルカルバゾール))と、PSNPhS(ポリ(N−フェニル−2(2'−チエニル)−5−(5"−ビニル−2"チエニル)ピロール)を1:4の割合で混合し、この混合物の濃度が4wt%となるように、テトラリンに溶解し、第1のインクとする。この第1のインクを、第1実施形態のS15、S16と同様にして、絶縁層上に選択的に塗布し、ポリマー電極を形成する。
【0077】
また、エレクトロクロミック膜のポリマー電解質の成分、及び炭化水素系溶媒から成る第2のインク(インク溶液)を予め調製しておく。具体的には、以下の成分を混合し、テトラリンに溶解することにより、第2のインクを調製する。この時、第2のインクの粘度が0.1〜10Pa・sになるように、テトラリンの量を調整する。
【0078】
ポリメチルメタクリレート(分子量120000):500mg
プロピレンカーボネート:1ml
エチレンカーボネート:2g
リチウムテトラフルオロボレート:100mg
アセトニトリル:3ml
【0079】
この第2のインクを、インクジェット法を用いて、ポリマー電極の上に塗布し、ポリマー電解質を形成する。
【0080】
次いで、オキサジゾール誘導体、トリアゾール系、及びアルミニウム錯体のいずれかである電子注入層を、スピンコート法、ディップ法、カーテンコート法、バーコート法、印刷法もしくはインクジェット法を用いて塗布することによって形成する。この際、塗布後の電子注入層において、エレクトロクロミック膜及び隔壁に接する側と反対側の面が、エレクトロクロミック膜及び隔壁からなる面より平らになるように、電子注入層を塗布する。
【0081】
次いで、マスク真空蒸着により、所定のパターンに従って、Al/LiFを形成し、これを陰極とする。この時、Al層と、LiF層の厚みは、それぞれ、1000Å、10Åとし、連続的に積層する。ここで、電子注入層の表面は平らとなっているので、エレクトロクロミック膜及び隔壁に接合させて陰極を形成する場合よりも、電子注入層に接合させて陰極を形成するほうが、電子注入層と陰極は良好に接合する。なお、LiF(フッ化リチウム)/Alの代わりに、Al、LiF、Al/Ca、及びAl/Baのいずれかで陰極を形成してもよい。
【0082】
このようにしてエレクトロクロミック素子をガラス基板の中心部に形成するとともに、上記第1、第2実施形態と同様にして、ガラス基板の周辺部に、水平駆動回路及び垂直駆動回路を形成し、更には、封止層により、エレクトロクロミック素子、水平駆動回路及び垂直駆動回路を覆うことにより、エレクトロクロミックディスプレイを完成させる。
【0083】
本実施形態のエレクトロクロミックディスプレイは、上記第1、第2実施形態の有機ELディスプレイ1、2と同様の効果を奏する。
【0084】
なお、本発明は上記の形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、上記第1〜第3実施形態における絶縁層としては、PVKの代わりに、ポリスチレン、ナイロン(ポリアミド)、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリイミド、フッ素樹脂のいずれかを用いることができる。
【0085】
また、上記第1、第2実施形態において、インクを構成するポリマーとしては、カルバゾール誘導体を主鎖あるいは側鎖に有する高分子(PVK)の代わりに、トリフェニルアミン誘導体を主鎖あるいは側鎖に有する高分子化合物(例えばPTPDES)、電子輸送性ポリマーである、オキサジアゾール誘導体を主鎖あるいは側鎖に有する高分子化合物(例えばPVMOXD)、PPV(ポリパラフェニレンビニレン)、PPF、PPT、その他の誘導体を用いることができる。
【0086】
また、上記第1〜第3実施形態において、インクを構成する溶媒としては、炭化水素系溶媒の代わりに、ハロゲン炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン、アルデヒド、ドデシルベンゼン、テトラリン、ジクロルエタン、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテルのいずれかを用いることができる。
【0087】
また、上記第1、第2実施形態における発光中心形成化合物としては、TPBの代わりに、ペリレン、クマリン、ルブレン、ナイルレッド、DCM、DCJTB、スクアリリウム、アルミニウム錯体(例えばAlQ3)等を用いることができる。
【0088】
また、上記第3実施形態において、エレクトロクロミック膜は、ポリマー電極の成分と、ポリマー電解質の成分との両方を、テトラリン等の有機溶媒に溶解させたインクをインクジェット法により塗布することにより形成することができる。
【0089】
また、上記第3実施形態において、ポリマー電極の成分は、ポリアニリン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−(3−チエニルプロピルスルホネート))、(ポリ(N−フェニル−2(2'−チエニル)−5−(5"−ビニル−2"チエニル)ピロール、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルメチルエーテルのうち少なくとも1種を含むポリマーとすることができる。
【0090】
また、上記第3実施形態において、第2実施形態と同様に、陽極よりも陰極を最初に形成してもよい。この場合、第2実施形態と同様にPEDOからなるホール注入層を陽極とエレクトロクロミック膜との間に挿入することにより、陽極はホール注入層と良好に接合する。したがって、良好に像を表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】第1実施形態の有機ELディスプレイ1の全体構成を示す説明図である。
【図2】第1実施形態における有機EL素子11の1画素の回路構成を示す説明図である。
【図3】第1実施形態における電流駆動回路12の構成を示す説明図である。
【図4】第1実施形態における有機EL素子11の製造プロセスを示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態における有機EL素子11の製造プロセスを示す説明図である。
【図6】第1実施形態におけるインクジェットヘッド30の構成を示す説明図である。
【図7】第2実施形態の有機ELディスプレイ2の全体構成を示す説明図である。
【図8】第2実施形態における有機EL素子51の製造プロセスを示すフローチャートである。
【図9】第2実施形態における有機EL素子51の製造プロセスを示す説明図である。
【符号の説明】
【0092】
1、2:有機ELディスプレイ
11、51:有機EL素子(表示装置)
11a:陽極(第1電極)
11b:絶縁層
11c:発光層(表示用組成物)
11d:隔壁
11e:電子注入層(電荷注入層)
11f:陰極(第2電極)
21:インク溶液
51a:陰極(第1電極)
51a1:電子供給金属の層
51a2:表面被覆絶縁層
51e:ホール注入層(電荷注入層)
51f:陽極(第2電極)
S11〜S13、S21〜S23:第1電極形成工程
S14、S24:絶縁層形成工程
S15、S25:インク溶液塗布工程
S16、S26:表示用組成物形成工程
S17、S27:電荷注入層塗布工程
S18、S28:第2電極形成工程
S21:電子供給金属層形成工程
S22:表面被覆絶縁層形成工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、その第1電極と離間して、且つ対向して位置する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に挿入され、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧が印加された場合、前記第1電極から供給される電荷である第1電極供給電荷及び前記第2電極から供給される電荷である第2電極供給電荷によって、発光し又は呈色変化する物質である表示用組成物とを有する表示素子を複数備え、さらに、前記各表示素子の前記表示用組成物と他の前記表示素子の前記表示組成物との間を絶縁する隔壁を備えた表示装置の製造方法であって、
基板上に前記第1電極を形成する第1電極形成工程と、
前記第1電極形成工程において形成された前記第1電極を覆う絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層形成工程において形成された前記絶縁層上の前記第1電極に対向する位置に、前記絶縁層を溶解する溶媒及び前記表示用組成物を含有するインク溶液を塗布するインク溶液塗布工程と、
前記インク溶液塗布工程において塗布された前記インク溶液が前記絶縁層を溶解した後に、前記インク溶液の前記溶媒を蒸発させ、前記第1電極と接触するように前記表示用組成物を形成する表示用組成物形成工程と、
前記表示用組成物形成工程において形成した前記表示用組成物及び前記インク溶液によって溶解された後の前記絶縁層である前記隔壁の上に、前記第2電極供給電荷を前記表示用組成物に注入する電荷注入層を塗布する工程であって、その塗布後の前記電荷注入層において、前記表示用組成物及び前記隔壁に接する側と反対側の面が、前記表示用組成物及び前記隔壁とからなる面より平らになっている電荷注入層塗布工程と、
前記電荷注入層塗布工程において塗布された前記電荷注入層の上に前記第2電極を形成する第2電極形成工程とを備えることを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1電極は、前記第1電極供給電荷としてホールを前記表示用組成物に供給するITO又はPEDOTであり、
前記電荷注入層は、オキサジゾール誘導体、トリアゾール系、及びアルミニウム錯体のいずれかであり、
前記第2電極は、前記第2電極供給電荷として電子を前記表示用組成物に供給するアルミニウム(Al)、フッ化リチウム(LiF)、Al/Ca、Al/LiF、及びAl/Baのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1電極形成工程は、
前記第1電極供給電荷として電子を前記表示用組成物に供給する電子供給金属であるアルミニウム(Al)、フッ化リチウム(LiF)、Al/Ca、Al/LiF、及びAl/Baのいずれかの層を前記基板上に形成する電子供給金属層形成工程と、
その電子供給金属層形成工程において形成された前記電子供給金属の層の表面を覆う絶縁層である表面被覆絶縁層を形成する表面被覆絶縁層形成工程とを有し、
前記電荷注入層は、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)であり、
前記第2電極は、前記第2電極供給電荷としてホールを前記表示用組成物に供給するITO又はPEDOTであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−32750(P2010−32750A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194506(P2008−194506)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】