説明

表示装置の製造方法

【課題】 感光性絶縁膜を露光、現像して形成された絶縁層を有する液晶表示パネルにおける周期的な外観むらを低減する。
【解決手段】 感光性絶縁膜を露光、現像してなる絶縁層を形成する工程を有し、あらかじめ用意された数値データに基づく数値制御により生成される複数の露光パターンを前記感光性絶縁膜の異なる位置に同時に照射し、当該複数の露光パターンを排他的に走査することで当該感光性絶縁膜の全体を露光する表示装置の製造方法であって、前記数値データに基づき感光させないと判定される領域には、光を照射しない条件のときに前記感光性絶縁膜の各位置に照射される漏れ光の光量の総量のうちの最大値と同じ光量、または当該最大値より大きい光量の光を均一に照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の製造方法に関し、特に、感光性材料膜を露光、現像して得られる絶縁層を有する液晶表示パネルの製造方法に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの製造方法は、TFT基板を製造する工程、対向基板を製造する工程、およびTFT基板と対向基板とを張り合わせるとともに両基板の間に液晶層(液晶材料)を封入する工程を有する。このとき、TFT基板を製造する工程では、感光性材料膜を露光、現像する工程を複数回行う。
【0003】
TFT基板を製造する工程における感光性材料膜の露光、現像は、通常、走査信号線を形成する工程、映像信号線を形成する工程、および画素電極を形成する工程などの導体パターンを形成する工程や、TFT素子の半導体層を形成する工程などで行われる。これらの工程における感光性材料膜の露光、現像は、導電膜または半導体膜をエッチングする際のマスク(エッチングレジスト)を形成するために行われる。そのため、感光性材料膜を露光、現像して得られるパターン(マスク)は、通常、エッチング後に除去される。
【0004】
また、TFT基板を形成する工程には、絶縁基板上に形成された絶縁層に、たとえば、TFT素子のソース電極と画素電極とを接続するためのコンタクトホール(貫通穴)を形成する工程がある。このコンタクトホールを形成する工程は、従来、感光性材料膜を露光、現像して得られるマスクを用いたエッチングで形成されていた。
【0005】
しかしながら、近年のTFT基板の製造方法では、前記コンタクトホールを有する絶縁層を、たとえば、感光性有機絶縁膜で形成する方法が適用されている。この方法では、感光性有機絶縁膜を露光、現像するだけで前記コンタクトホールを有する絶縁層を形成することができ、形成時間の短縮、材料費の節減などの効果が得られる。
【0006】
ところで、TFT基板の製造方法において感光性材料膜を露光するときには、従来、フォトマスクを用いて行うのが一般的である。
【0007】
しかしながら、ある一組のレイアウトデータに基づいて液晶表示パネルを製造するときには、たとえば、複数の製造ラインで並行して製造することも多い。そのため、フォトマスクを用いて感光性材料膜を露光する場合は、少なくとも、製造ラインと同数のフォトマスクが必要になる。
【0008】
また、フォトマスクを用いて感光性材料膜を露光する場合は、たとえば、レイアウトデータに変更があると、変更されたレイアウトデータに基づいてフォトマスクを作り直す必要がある。特に、近年の液晶表示パネルは、高精細化などによりTFT素子の微細化が進んでおり、たとえば、前記コンタクトホールの形成位置や寸法に高い精度が要求されている。そのため、前記コンタクトホールの形成位置や寸法にずれが生じ、そのずれが液晶表示パネルの動作に影響する場合は、たとえば、当該コンタクトホールを有する絶縁層を形成する際に行う露光で使用するフォトマスクを作り直す必要がある。
【0009】
以上のようなことから、近年の液晶表示パネルの製造方法では、フォトマスクを用いないで感光性材料膜を露光する方法(以下、マスクレス露光という。)が検討されている。マスクレス露光としては、たとえば、CADなどで作成されたレイアウトデータに基づく数値制御により感光性材料膜に照射する光のパターン(以下、露光パターンという。)を生成するための光変調部品を用いて露光する方法が知られている(たとえば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−294373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
マスクレス露光で使用する光変調部品は、たとえば、生成する露光パターンを0.5μm単位以下で制御する必要がある。そのため、光変調部品の制御性を考慮すると、マスクレス露光において一度に生成することが可能な露光パターンの寸法(すなわち一度に露光可能な領域の寸法)は、感光性材料膜の露光対象領域全体(すなわちマザーガラスの面積)に比べて非常に小さい。したがって、マスクレス露光で感光性材料膜を露光するときには、露光パターンが照射される領域(以下、照射領域という。)を走査して、感光性材料膜の全体を露光する。このとき、照射領域の走査は、たとえば、照射領域を第1の方向と平行に移動させながら露光する第1の動作と、照射領域を第1の方向と直交する第2の方向に移動させる第2の動作とを繰り返して行う。
【0012】
また、上記のような第1の動作と第2の動作とを繰り返して行う感光性材料膜の露光方法は、別の言い方をすると、当該感光性材料膜を複数の帯状領域に分割し、帯状領域毎に順次露光する方法といえる。そのため、このような感光性材料膜の露光方法では、隣接する2つの帯状領域の間に露光されない領域が生じないよう、当該2つの帯状領域の境界に照射領域が二度通る重複領域を設けている。
【0013】
しかしながら、上記のように、2つの帯状領域の境界に照射領域が二度通る重複領域を設けた場合、現像して得られるパターンの表面のうちの、当該重複領域と対応する位置に、段差が生じる。前記重複領域は、隣接する2つの帯状領域の境界に設けられるので、当該段差は、たとえば、帯状領域の幅(第2の方向の寸法)と等間隔で縞状に生じる。
【0014】
すなわち、ポジ型の感光性有機絶縁膜を露光、現像してコンタクトホールを有する絶縁層を形成する場合、現像後に形成される絶縁層(感光性有機絶縁膜)の表面には、たとえば、段差(具体的には溝)が縞状に生じる。
【0015】
この絶縁層の表面に縞状に生じる溝の間隔は、照射領域の幅(第2の方向の寸法)と概ね等しく、たとえば、1mmから50mm程度である。
【0016】
この絶縁層の表面に縞状に生じる溝は、液晶表示装置(画素)の動作には影響しないものの、たとえば、液晶表示装置を観察したときに縞状の外観むらが発生するという問題がある。この縞状の外観むらは、たとえば、絶縁層の表面に生じた溝の部分における光の反射や屈折の影響で生じる。そのため、このような液晶表示パネルでは、たとえば、表示されている映像や画像に、画素サイズよりも大きい周期の縞状のむらが生じるおそれがある。
【0017】
本発明の目的は、たとえば、感光性絶縁膜を露光、現像して形成された絶縁層を有する液晶表示パネルにおける周期的な外観むらを低減することが可能な技術を提供することにある。
【0018】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面によって明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概略を説明すれば、以下の通りである。
【0020】
すなわち、複数の画素からなる表示領域を有する表示パネルの製造過程において基板上に成膜した感光性絶縁膜を露光、現像してなる絶縁層を形成する工程を有し、
前記感光性絶縁膜の露光は、
あらかじめ用意された数値データに基づく数値制御により当該感光性絶縁膜に照射する露光パターンを生成する光学系を複数有し、
当該複数の光学系により生成される複数の前記露光パターンを前記感光性絶縁膜の異なる位置に照射し、当該露光パターンの照射領域を排他的に走査して、当該感光性絶縁膜の全体を露光する露光装置を用いて行う表示装置の製造方法であって、
前記露光パターンの照射領域の走査は、前記照射領域を第1の方向と平行に移動させる第1の動作と、前記照射領域を前記第1の方向とは異なる第2の方向と平行に移動させる第2の動作とを繰り返し、かつ、
前記照射領域における当該照射領域の移動方向と直交する方向の端部が、他のタイミングで前記露光パターンが照射される領域と、あらかじめ定められた幅だけ重なるように行い、
複数の前記光学系は、
前記感光性絶縁膜のうちの前記数値データに基づき感光させないと判定される領域に対して光を照射しない条件で当該光学系を制御したときに、前記露光パターンが2回以上通る重複領域のそれぞれに照射される前記光学系からの漏れ光の光量の総量に基づき、
前記感光性絶縁膜のうちの前記数値データに基づき感光させないと判定される領域全体に前記漏れ光の光量の総量の最大値と同じ光量、または当該最大値より大きくかつ当該感光性絶縁膜が完全に感光する最小光量よりも小さい光量の光を均一に照射するよう数値制御する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、たとえば、感光性絶縁膜を露光、現像して形成された絶縁層を有する液晶表示パネルにおける周期的な外観むらを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1(a)】本発明に関わる液晶表示パネルの平面構成の一例を示す模式平面図である。
【図1(b)】液晶表示パネルにおけるサブ画素の平面構成の一例を示す模式平面図である。
【図1(c)】図1(b)のA−A’線の位置における断面構成の一例を示す模式平面図である。
【図2(a)】マスクレス露光の露光手順の一例を示す模式平面図である。
【図2(b)】図2(a)の領域AR1を拡大して示した模式平面図である。
【図2(c)】図2(b)のB−B’線の位置における露光パターンの一例を示す模式断面図である。
【図2(d)】隣接する2つの帯状領域の境界の露光方法の一例を示す模式平面図である。
【図2(e)】図2(d)のC−C’線の位置に照射される漏れ光の光量分布の一例を示す模式図である。
【図2(f)】図2(d)のC−C’線の位置を感光させるときの光学系の制御方法の一例を示す模式図である。
【図3】本発明に関わるマスクレス露光における原理を示す模式図である。
【図4(a)】実際にマスクレス露光を行うときの露光方法の一例を示す模式斜視図である。
【図4(b)】露光に使用する光学系が異なる2つの領域の境界部分における漏れ光の光量分布の一例を示す模式図である。
【図4(c)】本発明による一実施例の露光方法の原理を示す模式図である。
【図5】本実施例の露光方法において考慮すべき点を説明するための模式図である。
【図6(a)】光量調節素子に印加する電圧と感光性絶縁膜側に回折する光の光量との関係の一例を示す模式図である。
【図6(b)】光変調部品の校正方法の一例を示す模式図である。
【図7】液晶表示パネルにおける絶縁層の表面粗さと外観むらのレベルとの関係の一例を示す模式図である。
【図8】本実施例の露光方法の変形例の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について、図面を参照して実施の形態(実施例)とともに詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは、同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
図1(a)乃至図1(c)は、本発明に関わる液晶表示パネルの概略構成の一例を説明するための模式図である。
図1(a)は、本発明に関わる液晶表示パネルの平面構成の一例を示す模式平面図である。図1(b)は、液晶表示パネルにおけるサブ画素の平面構成の一例を示す模式平面図である。図1(c)は、図1(b)のA−A’線の位置における断面構成の一例を示す模式平面図である。
【0025】
本発明は、感光性の材料でなる膜を露光、現像して得られる感光性材料膜層を有する表示パネルの製造方法に関し、たとえば、図1(a)乃至図1(c)に示すような液晶表示パネルの製造方法への適用が考えられる。
【0026】
液晶表示パネルは、たとえば、第1の基板1、第2の基板2、液晶層3、第1の偏光板4、および第2の偏光板5を有する。また、本発明に関わる液晶表示パネルは、たとえば、携帯電話端末やノートブック型コンピュータなどの携帯型電子機器に搭載される液晶ディスプレイや液晶テレビなどに用いられるものである。このとき、液晶表示パネルの表示領域DAは、マトリクス状に配置された多数の画素PXからなる。またこのとき、1つの画素PXは、たとえば、赤色の光の輝度を制御する第1のサブ画素SPR、緑色の光の輝度を制御する第2のサブ画素SPG、および青色の光の輝度を制御する第3のサブ画素SPBの3つのサブ画素からなる。
【0027】
第1の基板1は、TFT基板などと呼ばれている基板であり、ガラス基板などの絶縁基板6の上に、たとえば、走査信号線7、第1の絶縁層8、半導体層9、映像信号線10およびTFTのドレイン電極11、第2の絶縁層12、共通電極13、第3の絶縁層14、画素電極15、および第1の配向膜16などを積層したものである。
【0028】
このとき、画素電極15と共通電極13とは、第3の絶縁層14を介した積層配置になっており、液晶層3からの距離が短い画素電極15は、櫛歯状と呼ばれる複数のスリットを有する平面形状になっている。また、画素電極15は、第2の絶縁層12および第3の絶縁層14に形成された貫通穴22a,22bにより、下層のドレイン電極11と接続している。またこのとき、液晶層3からの距離が長い共通電極13は、複数のサブ画素にまたがって延在する平板状または帯状の平面形状であり、画素電極15とドレイン電極11とを接続する貫通穴22a,22bを設ける位置が開口している。
【0029】
第2の基板2は、対向基板またはCF基板などと呼ばれている基板であり、ガラス基板などの絶縁基板17の上に、たとえば、ブラックマトリクス18(遮光膜)、カラーフィルタ19、平坦化膜20、および第2の配向膜21などを積層したものである。
【0030】
図1(b)および図1(c)に示したサブ画素の構成は、IPS(In-Plane Switching)方式と呼ばれる液晶駆動方式のサブ画素における構成の一例である。IPS方式の原理および具体的な構成例については周知であるため、本明細書では、説明を省略する。
【0031】
さて、液晶表示パネルの製造方法は、第1の基板1を形成する工程、第2の基板2を形成する工程、第1の基板1と第2の基板2とを張り合わせるとともに液晶層3を封入する工程、ならびに第1の偏光板4および第2の偏光板5を張り合わせる工程などを有する。
【0032】
本発明は、主として、上記の製造工程のうちの第1の基板1を形成する工程に関わり、たとえば、第2の絶縁層12や第3の絶縁層14を形成する際の露光方法に関わる。そのため、まず、第2の絶縁層12および第3の絶縁層14の従来の形成方法について簡単に説明する。
【0033】
従来、第2の絶縁層12を形成するときには、まず、半導体層9、ならびに映像信号線10およびドレイン電極11などが形成された第1の絶縁層8の上に、たとえば、ポジ型の感光性絶縁膜を形成(成膜)する。次に、その感光性絶縁膜を露光する。この露光では、感光性絶縁膜のうちの貫通穴22aを形成する領域のみに光を照射し、当該領域を感光させる。その後、現像し、ベーク(加熱処理)などを行うと、貫通穴22aを有する第2の絶縁層12が得られる。
【0034】
また、第3の絶縁層14も、第2の絶縁層12と同様の方法で形成する。
【0035】
第2の絶縁層12を形成する工程や第3の絶縁層14を形成する工程で行う露光は、従来、フォトマスクを用いて行うのが一般的であった。しかしながら、フォトマスクを用いる場合、たとえば、貫通穴22a,22bの形成位置や寸法に許容範囲を超えるずれが生じたり、形成位置や寸法を変更したりすると、そのたびに、フォトマスクを作り直す必要がある。そのため、フォトマスクを用いる露光方法では、貫通穴22a,22bの形成位置や寸法の修正または変更に、柔軟に対応することが難しいという問題がある。また、フォトマスクの作成には時間とコストがかかるので、フォトマスクを用いる露光方法は、液晶表示パネルの製造コスト低減を妨げる要因の1つになっている。
【0036】
このようなことから、近年の液晶表示パネルの製造方法では、フォトマスクを使用しない露光方法(以下、マスクレス露光という。)の適用が検討されている。マスクレス露光は、フォトマスクの変わりに、レイアウトデータから作成した描画データなどの数値データに基づく数値制御により感光性絶縁膜に照射する光のパターン(以下、露光パターンという。)を生成する光学系を用いる露光方法である。すなわち、マスクレス露光は、描画データ(レイアウトデータ)の数値を変えるだけで、露光パターンを変更することができる。そのため、第2の絶縁層12を形成する工程や第3の絶縁層14を形成する工程で行う露光にマスクレス露光を適用すれば、貫通穴22a,22bの形成位置や寸法の修正または変更に、柔軟に対応することができる。また、フォトマスクを使用しないことから、マスクレス露光の適用は、液晶表示パネルの製造コストの低減も期待できる。
【0037】
なお、マスクレス露光は、第2の絶縁層12を形成する工程や第3の絶縁層14を形成する工程で行う露光に限らず、走査信号線7を形成する工程などの、導電膜をエッチングして導電パターンを形成する工程で行う露光にも適用できることはもちろんである。
【0038】
しかしながら、第2の絶縁層12を形成する工程や第3の絶縁層14を形成する工程で行う露光に、従来のマスクレス露光を適用した場合、たとえば、以下に説明するような問題が生じる。
【0039】
図2(a)乃至図2(f)は、マスクレス露光の原理と従来のマスクレス露光における問題点の一例を説明するための模式図である。
図2(a)は、マスクレス露光の露光手順の一例を示す模式平面図である。図2(b)は、図2(a)の領域AR1を拡大して示した模式平面図である。図2(c)は、図2(b)のB−B’線の位置における露光パターンの一例を示す模式断面図である。図2(d)は、隣接する2つの帯状領域の境界の露光方法の一例を示す模式平面図である。図2(e)は、図2(d)のC−C’線の位置に照射される漏れ光の光量分布の一例を示す模式図である。図2(f)は、図2(d)のC−C’線の位置を感光させるときの光学系の制御方法の一例を示す模式図である。
【0040】
マスクレス露光で用いる光学系は、数値制御により露光パターンを生成する光変調部品を有する。光変調部品は、たとえば、GLV(Grating Light Valve)やDMD(Digital Micromirror Device)などのMEMS(Micro Electro Mechanical System)であり、感光性絶縁膜に照射する光の光量(強度)を調節するための光量調節素子を複数有し、かつ、それらが線状または行列状に配置されている。そして、描画データ(数値データ)に基づいてそれぞれの光量調節素子を制御することにより、感光性絶縁膜に照射する露光パターンを生成する。このとき、それぞれの光量調節素子は、通常、光学系に設けられた光源が発した光を感光性絶縁膜に照射するオン状態、または光源が発した光を感光性絶縁膜に照射しないオフ状態のいずれかに制御される。またこのとき、オン状態で感光性絶縁膜23に照射される光の光量(強度)は、感光性絶縁膜を完全に感光させることが可能な大きさであり、たとえば、感光性絶縁膜の組成や厚さ、露光領域ERの移動速度から定められる。
【0041】
第2の絶縁層12を形成する工程や第3の絶縁層14を形成する工程においてマスクレス露光を行う場合、感光性絶縁膜に照射する露光パターンは、たとえば、0.5μm単位で制御する必要がある。そのため、光変調部品(複数の光量調節素子)の制御性を考慮すると、マスクレス露光で用いる1つの光学系により一度に露光可能な領域(以下、露光領域という。)は、感光性絶縁膜の露光対象領域全体に比べて非常に小さくなる。
【0042】
したがって、マスクレス露光で感光性絶縁膜を露光するときには、たとえば、図2(a)に示すように、感光性絶縁膜23上における露光領域ERの位置を第1の方向(v軸方向)に移動させながら露光する第1の動作と、露光領域ERを第1の方向と直交する第2の方向(u軸方向)に移動させる第2の動作とを繰り返して、感光性絶縁膜23の全体を露光する。この露光方法は、別の言い方をすると、感光性絶縁膜23を複数の帯状領域Qに分割し、帯状領域Q毎に順次露光する方法といえる。このとき、1度の第1の動作で露光される帯状領域Qの幅WQ(u軸方向の寸法)は、たとえば、1mmから50mm程度である。またこのとき、第1の動作および第2の動作は、たとえば、露光装置内における露光領域ER(光変調部品)の位置を固定しておき、感光性絶縁膜23が形成された基板24をv軸方向およびu軸方向に移動させるのが一般的である。
【0043】
なお、液晶表示パネルを製造するときには、多面取りと呼ばれる、一対のマザーガラスを用いて複数枚の液晶表示パネルを一括して製造する方法をとるのが一般的である。多面取りで液晶表示パネルを製造する場合、一対のマザーガラスのうちの一方のマザーガラスには、複数枚の第1の基板1が一括して形成される。このとき、図1(a)に示した第1の基板1におけるx軸方向およびy軸方向と、感光性絶縁膜23を露光するときのu軸方向およびv軸方向との関係には、2通りある。すなわち、x軸方向とu軸方向とが平行になる場合と、x軸方向とv軸方向とが平行になる場合の2通りである。
【0044】
また、一度の第1の動作に着目すると、当該動作では、たとえば、図2(b)および図2(c)に示すように、帯状領域Qをさらに多数の微細帯状領域Rに分割し、微細帯状領域R毎に独立して露光する。このとき、微細帯状領域Rの幅WR(u軸方向の寸法)は、たとえば、0.5μm程度である。
【0045】
またこのとき、光変調部品25が前述のGLVであるとすると、複数の光量調節素子25aは、たとえば、第2の動作で移動する方向、すなわち感光性絶縁膜23の短辺方向(u軸方向)に並んでいる。そのため、描画データ(数値データ)および感光性絶縁膜23上における露光領域ERの相対位置に基づいて、それぞれの光量調節素子25aの状態をオン状態またはオフ状態に制御することで、露光領域ERに、感光した領域と、感光していない領域とを作ることができる。なお、図2(c)に示した感光性絶縁膜23は、ドットパターンを付した部分が光量調節素子25aにより照射された光で感光した領域であり、白地の部分が感光していない領域である。
【0046】
このようなマスクレス露光は、前述のように、感光性絶縁膜23を複数の帯状領域Qに分割し、帯状領域Q毎に順次露光する方法といえる。そのため、マスクレス露光では、隣接する2つの帯状領域Qの境界に露光されない領域、すなわち露光領域ERが通らない領域が生じないようにする必要がある。したがって、マスクレス露光では、たとえば、図2(d)に示すように、一度の第1の動作で露光する帯状領域Qの幅WQを、露光領域ERの幅WERよりもわずかに狭くし、隣接する2つの帯状領域Qの境界BLQに幅WCO1の重複領域、すなわち露光領域ERが二度通る領域を設ける。なお、図2(d)は、図2(a)の領域AR2を拡大して示した図である。また、図2(d)では、C−C’線と交差する境界BLQを挟んで隣接する2つの帯状領域Qを区別するために、符号Qに添え字nおよびn+1を付している。
【0047】
ところで、このようなマスクレス露光により感光性絶縁膜23を露光する場合、光量調節素子25aの状態は、通常、前述のように感光性絶縁膜23に光を照射するオン状態、または光を照射しないオフ状態の2通りのいずれかに制御される。また、マスクレス露光で使用する描画データは、通常、感光させる領域の位置および寸法を示す数値データで構成される。
【0048】
したがって、図2(d)に示した領域AR2が、たとえば、描画データに基づき感光させないと判定される領域(以下、非感光指定領域という。)内にある場合は、境界BLQの左側の帯状領域Qnを露光するときも、右側の帯状領域Qn+1を露光するときも、光量調節素子25aはオフ状態に制御される。
【0049】
しかしながら、光変調部品25を用いて感光性絶縁膜23を露光する場合、たとえば、オフ状態にしている光量調節素子25aから若干の光が漏れ、感光性絶縁膜23に照射されることが多い。そのため、図2(d)に示した領域AR2が非感光指定領域内にあるとしても、露光領域ERが当該領域AR2を通るときには、オフ状態である光量調節素子25aから漏れた光(以下、漏れ光という。)が感光性絶縁膜23に照射されることが多い。すなわち、図2(d)に示した領域AR2が非感光指定領域内にあるとしても、当該領域AR2の感光性絶縁膜は、わずかではあるが感光してしまうことが多い。このとき、領域AR2の内部にあるC−C’線の位置において感光性絶縁膜23に照射される漏れ光の光量は、たとえば、図2(e)に示す分布P1、分布P2、および分布P3のようになる。
【0050】
なお、図2(e)における分布P1は、境界BLQの左側にある帯状領域Qnを露光しているときに感光性絶縁膜23に照射される光の光量IRの分布である。また、図2(e)における分布P2は、境界BLQの右側にある帯状領域Qn+1を露光しているときに感光性絶縁膜23に照射される光の光量IRの分布である。またさらに、図2(e)における分布P3は、当該区間に照射される光の光量IRの総量である。
【0051】
また、図2(e)における光量IRは相対値であり、オン状態のときに照射される光の光量を1としている。このとき、図2(e)におけるILOFFは、一般に0.02以下、すなわち感光性絶縁膜23を感光させるのに必要十分な光量の2%以下である。
【0052】
また、図2(e)における横軸Cuは、感光性絶縁膜23上におけるu軸方向の座標を表しており、座標U1から座標U4の区間が、図2(d)におけるC−C’線の区間に相当する。
【0053】
隣接する2つの帯状領域Qn,Qn+1の境界BLQにある重複領域(座標U2から座標U3までの区間)が非感光指定領域内にある場合、当該重複領域には、光量ILOFFの漏れ光が二度照射される。そのため、当該重複領域の照射される漏れ光の光量の総量は、図2(e)に示したように、非感光指定領域のうちの露光領域ERが一度だけ通る領域に比べて約2倍になる。
【0054】
漏れ光の光量ILOFFは、前述のように、多くても感光性絶縁膜23を完全に感光させるのに必要十分な光量の2%程度である。そのため、感光性絶縁膜23に光量ILOFFの漏れ光が照射されても、表面がわずかに感光するだけである。
【0055】
しかしながら、感光性絶縁膜23の感光される量(深さ)は、照射される光の光量(強度)が大きくなるにつれて多くなる(深くなる)。そのため、図2(e)に示したように、非感光指定領域内に、部分的に照射される光の光量が大きい箇所があると、その箇所だけ、他より感光する量が多くなる。感光性絶縁膜23を露光、現像して第2の絶縁層12や第3の絶縁層14のような多数の貫通穴を有する絶縁層を形成する場合は、通常、ポジ型の感光性有機絶縁材料にを用いて形成(成膜)した感光性絶縁膜23を露光、現像する。感光性絶縁膜23がポジ型の場合、現像で除去されるのは、露光時に光を照射して感光させた部分である。したがって、感光性絶縁膜23がポジ型の場合、露光、現像して得られる絶縁層の表面には、照射された漏れ光の光量の差を反映した段差を有する溝が生じる。
【0056】
ちなみに、図2(d)に示した領域AR2が、描画データに基づき感光させると判定される領域(以下、感光指定領域という。)内にある場合、領域AR2の内部にあるC−C’線の位置において感光性絶縁膜23に照射する光の光量は、たとえば、図2(f)に示す分布P1’、分布P2’、および分布P3’のようにすることが多い。
【0057】
なお、図2(f)における分布P1’は、境界BLQの左側にある帯状領域Qnを露光しているときに感光性絶縁膜23に照射される光の光量IRの分布である。また、図2(f)における分布P2’は、境界BLQの右側にある帯状領域Qn+1を露光しているときに感光性絶縁膜23に照射される光の光量IRの分布である。またさらに、図2(f)における分布P3’は、当該区間に照射される光の光量IRの総量である。
【0058】
また、図2(f)における光量IRは相対値であり、オン状態のときに照射される光の光量、すなわち感光性絶縁膜23を感光させるのに必要十分な光量を1としている。また、図2(f)におけるILOFFは、前述の、オフ状態のときに照射される漏れ光の光量である。
【0059】
また、図2(f)における横軸Cuは、感光性絶縁膜23上におけるu軸方向の座標を表しており、座標U1から座標U4の区間が、図2(d)におけるC−C’線の区間に相当する。
【0060】
すなわち、図2(d)に示したC−C’線の位置が、感光指定領域内にある場合、隣接する2つの帯状領域Qn,Qn+1の境界BLQにある重複領域(座標U2から座標U3までの区間)は、たとえば、左側の帯状領域Qnを露光するときに照射される光の光量と、右側の帯状領域Qn+1を露光するときに照射される光の光量との総量が概ね1であり、かつ、1よりも大きくなるように露光することが多い。感光性絶縁膜がポジ型の場合、設計時感光領域は現像時に除去される。そのため、図2(d)に示したC−C’線の位置が設計時感光領域内にある場合、重複領域に照射された光の光量の総量が、設計時感光領域のうちの露光領域ERが一度だけ通る領域に照射された光の光量よりも大きい分にはまったく問題ない。したがって、重複領域は、光量(相対値)が1の光を2回照射しても良いことはもちろんである。しかしながら、照射光量が多くなると、たとえば、感光性絶縁膜23の下層にある導体に悪影響を及ぼすことがあるので、図2(f)に示したように、重複領域に照射される光の光量の総量も概ね1であり、かつ、1よりもわずかに大きくなるように露光するのが一般的である。
【0061】
話を戻すと、図1(b)および図1(c)に示したような構成の画素を有する液晶表示パネルにおける第2の絶縁層12を、ポジ型の感光性有機絶縁膜を用い、かつ、従来のマスクレス露光を適用して形成した場合、第2の絶縁層12の表面には、幅WCO1の溝が縞状に生じる。この溝は、隣接する2つの帯状領域Qの境界BLQに生じるので、溝の間隔は帯状領域Qの幅WQになる。
【0062】
また、第1の基板1におけるx軸方向と感光性絶縁膜23を露光するときのu軸方向とが平行になる場合、第2の絶縁層12の表面に生じる複数の溝は、液晶表示パネルの表示領域DAにおいて走査信号線7の延びる方向に並ぶ。このとき、帯状領域Qの幅WQは、前述のように、1mmから50mm程度である。これに対し、画素のx軸方向の寸法は、数十μm程度である。したがって、第2の絶縁層12の表面に生じる縞状の溝は、画素の寸法よりも十分に大きい間隔で並んでいることになる。
【0063】
また、第1の基板1におけるx軸方向と感光性絶縁膜を露光するときのv軸方向とが平行になる場合、複数の溝は、液晶表示パネルの表示領域DAにおいて映像信号線10の延びる方向に並ぶ。画素のy軸方向の寸法も数十μm程度であるので、この場合も、第2の絶縁層12の表面に生じる縞状の溝は、画素の寸法よりも十分に大きい間隔で並んでいることになる。
【0064】
また、第3の絶縁層14を形成するときにも、ポジ型の感光性絶縁膜を用い、かつ、従来のマスクレス露光を適用すると、第3の絶縁層14の表面には、第2の絶縁層12と同様の縞状の溝が生じる。
【0065】
ポジ型の感光性絶縁膜を用い、かつ、従来のマスクレス露光を適用して形成された第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面に生じる縞状の溝は、現状、画素の特性(たとえば、TFTの特性や保持容量の大きさなど)への影響はほとんどないものの、たとえば、外観を検査したときに、縞状のむらとして観測される。本願発明者らが調べた結果では、この縞状のむらは、映像や画像を表示しているときには観測されないが、使用していないときには肉眼でも観測された。すなわち、上記の縞状のむらは、現在のところ、表示品質への影響は無いと考えられるが、使用していないときにこのような外観むらが生じることにより、液晶表示装置としての品位を下げてしまう。
【0066】
このような縞状の外観むらは、主として、太陽光や照明光などの外光が第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面で反射することにより生じる。そのため、使用していないときに縞状の外観むらが観測される液晶表示装置では、たとえば、映像や画像を低輝度(低階調)で表示しているときにそれらの映像または画像に当該外観むらが重なり、表示品質が低下するおそれがある。特に、反射型や半透過型の液晶表示装置では、このような縞状の外観むらにより表示品位が低下する可能性が高いと考えられる。
【0067】
なお、上記のような縞状の外観むらは、図1(a)および図1(b)に示したような構成の画素を有する液晶表示パネルに限らず、従来のマスクレス露光を適用して形成された絶縁層を有する液晶表示パネル全般に生じる。
【0068】
図3は、本発明に関わるマスクレス露光における原理を示す模式図である。
【0069】
従来の一般的なマスクレス露光では、図2(e)に示したように、非感光指定領域のうちの露光領域ERが2回通る重複領域における漏れ光の照射光量の総量が、露光領域ERが1回だけ通る領域における光量の約2倍になる。このように、非感光指定領域に漏れ光が照射され、感光してしまう原因は、主として、光変調部品(光量調節素子)の性能にあると考えられる。そして、現状では、漏れ光が生じないようそれぞれの光量調節素子を制御することは非常に困難である。すなわち、現状のマスクレス露光では、前述のような第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面に縞状の溝が生じるのを防ぐことは非常に困難である。
【0070】
そこで、本願発明者らは、マスクレス露光で露光した感光性絶縁膜を現像したときに表面に生じる溝を抑制する方法として、たとえば、図3に示す分布P4、分布P5、および分布P6のような露光方法を提案している。
【0071】
なお、図3における分布P4は、境界BLQの左側にある帯状領域Qnを露光しているときに感光性絶縁膜23に照射される光の光量IRの分布である。また、図2(e)における分布P5は、境界BLQの右側にある帯状領域Qn+1を露光しているときに感光性絶縁膜23に照射される光の光量IRの分布である。またさらに、図2(e)における分布P6は、当該区間に照射される光の光量IRの総量である。
【0072】
また、図3における光の光量IRは相対値であり、オン状態のときに照射される光の光量を1としたときのILOFFは、一般に0.02以下、すなわち感光性絶縁膜23を感光させるのに必要十分な光量の2%以下である。
【0073】
本願発明者らが提案しているマスクレス露光(光変調部品の制御方法)では、露光領域ERが非感光指定領域を通るときに感光性絶縁膜23に照射される光の光量IRを、たとえば、図3に示した分布P4および分布P5のようになるようにする。
【0074】
すなわち、光変調部品が有する多数の光量調節素子のうちの露光領域ERが2回通る重複領域に対する露光を担う素子については、従来通りのオフ状態に制御し、光量ILOFFの漏れ光が感光性絶縁膜23に照射されるようにする。
【0075】
一方、露光領域ERが1回だけ通る領域に対する露光を担う光量調節素子については、漏れ光の光量ILOFFの2倍の光量ILA0の光が感光性絶縁膜23に照射されるように制御する。
【0076】
このようにすると、非感光指定領域に照射される光の光量IRの総量は、図3に示した分布P6のようになり、露光領域ERが1回だけ通る領域と2回通る重複領域とでほぼ等しくなる。すなわち、図3に示したような露光方法を適用すると、露光領域ERが1回だけ通る領域と2回通る重複領域とで照射光量(感光性絶縁膜23の感光量)がほぼ等しくなり、現像後に残る絶縁層の表面に重複領域の分布と対応した縞状の溝が生じにくくなる。
【0077】
本発明は、上記の原理に基づいて成されたものであり、複数の独立して制御される光変調部品25を用いて感光性絶縁膜23をマスクレス露光するときに生じると考えられる問題を解決するものである。
【実施例】
【0078】
図4(a)乃至図4(c)は、本発明による一実施例のマスクレス露光の概略を説明するための模式図である。
図4(a)は、実際にマスクレス露光を行うときの露光方法の一例を示す模式斜視図である。図4(b)は、露光に使用する光学系が異なる2つの領域の境界部分における漏れ光の光量分布の一例を示す模式図である。図4(c)は、本発明による一実施例の露光方法の原理を示す模式図である。
【0079】
マスクレス露光は、前述のように、露光領域ERを走査して露光対象領域全体を露光する。このとき、露光領域ERの幅は、前述のように1mmから50mm程度である。これに対し、液晶表示パネルの製造に用いられるマザーガラスの寸法、すなわち露光対象領域全体の寸法は、一辺が数十cmから数mの長方形である。したがって、液晶表示パネルの製造方法における感光性絶縁膜23の露光にマスクレス露光を適用する場合は、たとえば、図4(a)に示すように、複数の露光ヘッド26を有し、当該複数の露光ヘッド26により生成される複数の露光パターンを感光性絶縁膜23の異なる位置に照射し、当該露光パターンの照射領域(露光領域ER)を排他的に走査して、当該感光性絶縁膜23の全体を露光する露光装置を用いる。なお、複数の露光ヘッド26は、それぞれ光源、光変調部品25、および複数のレンズからなる光学系などを有し、描画データに基づき独立して制御されるものである。
【0080】
マスクレス露光は、露光領域ERを走査して露光対象領域全体を露光するので、フォトマスクを用いる露光方法に比べてタクトタイム、すなわち露光対象領域全体の露光に要する時間が長くなる。そのため、マスクレス露光では、複数の露光ヘッド26を用い、感光性絶縁膜23の異なる領域を並行して露光することでタクトタイムの長時間化による製造効率の低下を抑えている。
【0081】
ところで、複数の露光ヘッド26を用いる場合、通常、露光ヘッド26ごとに光変調部品25(光量調節素子25a)の動作特性が異なる。そのため、たとえば、感光性絶縁膜23を感光させないように光変調部品25を制御したときの漏れ光の光量は、通常、露光ヘッド26ごとに異なる。すなわち、複数の露光ヘッド26を用いる従来のマスクレス露光では、露光対象領域のうちの、露光に使用する露光ヘッド26が異なる2つの領域の境界部分における漏れ光の光量を調べると、たとえば、図4(b)に示す分布P7、分布P8、および分布P9になる。
【0082】
なお、図4(b)における分布P7は、第1の露光ヘッド26の光変調部品25における各光量調節素子25aをオフ状態にして走査したときに感光性絶縁膜23に照射される光の光量IRの分布である。また、図4(b)における分布P8は、第2の露光ヘッド26の光変調部品25における各光量調節素子25aをオフ状態にして走査したときに感光性絶縁膜23に照射される光の光量IRの分布である。またさらに、図4(b)における分布P9は、当該区間に照射される光の光量IRの総量である。
【0083】
また、図4(b)における光量IRは、オン状態のときに照射される光の光量を1としたときの相対値であり、上に行くほど値(光量)が大きくなる。また、図4(b)に示しているのは、オフ状態のときに照射される漏れ光の光量分布であり、このときの漏れ光の光量は、一般に0.02以下、すなわち感光性絶縁膜23を感光させるのに必要十分な光量の2%以下である。
【0084】
このように、隣接する2つの露光ヘッド26における漏れ光の光量が異なる場合、露光領域ERが2回通る重複領域に照射される漏れ光の光量の総量は、従来、図4(b)に示したように、第1の露光ヘッド26により生成される露光領域ERが2回通る重複領域、第2の露光ヘッド26により生成される露光領域ERが2回通る重複領域、ならびに第1の露光ヘッド26により生成される露光領域ERおよび第2の露光ヘッド26により生成される露光領域ERが1回ずつ通る重複領域のそれぞれで異なる。
【0085】
図4(b)に示した例では、感光性絶縁膜23に照射される漏れ光の光量の総量は、第2の露光ヘッド26により生成される露光領域ERが2回通る重複領域が最も大きくなる。したがって、露光後に現像して得られる絶縁膜の表面に縞状の溝が生じるのを防ぐには、感光性絶縁膜23のうちの非感光指定領域全体に、第2の露光ヘッド26により生成される露光領域ERが2回通る重複領域に照射される漏れ光の光量の総量ILTMAXと同じ光量の光が照射されるようにすればよい。すなわち、第1の露光ヘッド26および第2の露光ヘッド26のそれぞれにおいて、露光領域ERが非感光指定領域を通るときの光変調部品25(光量調節素子25a)を、図4(c)に示したような光量分布P7’および光量分布P8’の光が感光性絶縁膜23に照射されるよう制御すればよい。そうすると、当該領域に照射される光の光量IRの総量は、図4(c)に示した分布P9’のようになる。
【0086】
なお、図4(b)には隣接する2個の露光ヘッド26における漏れ光の光量分布のみを示しているが、図4(a)に示したように8個の露光ヘッド26を用いて露光する場合は、それぞれの露光ヘッドにおける漏れ光の光量からそれぞれの重複領域に照射される漏れ光の光量の総量のうちの最大値を求め、感光性絶縁膜23のうちの非感光指定領域全体に、その最大値と同じ光量の光が照射されるようにすればよい。
【0087】
図5は、本実施例の露光方法において考慮すべき点を説明するための模式図である。
【0088】
本実施例のマスクレス露光は、前述のように、非感光指定領域の全体に対して、重複領域に照射される漏れ光の光量の総量の最大値ILTMAXと同じ光量の光が照射されるように各光変調部品25を制御する。このとき、漏れ光の光量は光変調部品25ごとに異なるが、実際に露光装置に組み込まれる光変調部品25における漏れ光の光量は、感光性絶縁膜23を感光させるのに必要十分な光量の2%以下である。
【0089】
このことから、重複領域に照射される漏れ光の光量の総量の最大値ILTMAXは、感光性絶縁膜23を感光させるのに必要十分な光量の4%程度になることが考えられる。この場合、非感光指定領域のうちの露光領域ERが1回だけ通る領域に対しては、感光性絶縁膜23を感光させるのに必要十分な光量の4%程度の光量を持つ光を照射することになる。すなわち、光変調部品25が有する多数の光量調節素子25aのうちの露光領域ERが1回だけ通る領域の露光を担う素子については、感光性絶縁膜23を感光させるのに必要十分な光量の4%程度の光量を持つ光が当該感光性絶縁膜23に照射されるよう制御する必要がある。
【0090】
光変調部品25の1つとしてよく知られているGLVは、光量調節素子25aである帯状の回折素子に印加する電圧の大きさを制御することで、感光性絶縁膜23側に回折する光の光量を制御する。このとき、印加する電圧Vの大きさと、感光性絶縁膜23側に回折する光の光量IRとの関係は、物理的な計算の上では一義的に決まるが、実際には光量調節素子25aごとに多少の違いがある。
【0091】
従来のマスクレス露光では、感光させる領域に照射する光の光量(強度)が感光性絶縁膜23を完全に感光させる大きさであり、かつ、概ね一定の値になるように各光量調節素子25aを校正(キャリブレーション)している。しかしながら、感光させない領域に照射される漏れ光の光量(強度)については、感光性絶縁膜23を感光させるのに必要十分な光量の2%以下であるため、各光量調節素子25aにおける漏れ光の光量の違いは考慮されていなかった。
【0092】
ところが、本実施例の露光方法のように、露光領域ERが1回だけ通る領域の露光を担う光量調節素子25aについて、感光光量の4%程度の光量を持つ光が感光性絶縁膜23に照射されるよう制御する場合、それぞれの素子における印加電圧Vの大きさと感光性絶縁膜23側に回折される光の光量IRとの関係の違いが無視できなくなる。すなわち、本実施例の露光方法において、計算により決まる印加電圧Vの大きさと感光性絶縁膜23側に回折される光の光量IRとの関係に基づいて、オフ状態にする素子に印加する電圧Vを決めると、たとえば、図5に示す分布P10、分布P11、および分布P12のように、非感光指定領域のうちの露光領域ERが1回だけ通る領域に照射される光の光量IRに、光変調部品25ごとに特有の不均一性が生じることが考えられる。
【0093】
なお、図5は、図4(c)と対応しており、図5における分布P10は、第1の露光ヘッド26の光変調部品25における各光量調節素子25aをオフ状態にして走査したときに感光性絶縁膜23に照射される光の光量IRの分布である。また、図5における分布P11は、第2の露光ヘッド26の光変調部品25における各光量調節素子25aをオフ状態にして走査したときに感光性絶縁膜23に照射される光の光量IRの分布である。またさらに、図5おける分布P12は、当該区間に照射される光の光量IRの総量である。
【0094】
また、図5における光量IRは、オン状態のときに照射される光の光量を1としたときの相対値であり、上に行くほど値(光量)が大きくなる。また、図5に示しているのは、オフ状態のときに照射する光の光量分布であり、このときの照射光の光量ILTMAXは、前述のように、感光性絶縁膜23を感光させるのに必要十分な光量の4%程度である。
【0095】
このように、露光領域ERが1回だけ通る領域に照射される光の光量(強度)に不均一性があると、現像後に得られる絶縁層の表面には、当該不均一性を反映した、意図しない凹凸が生じる。この意図しない凹凸の度合い(以下、表面粗さという。)は、たとえば、図2(e)に示したような従来のマスクレス露光において重畳領域に生じる溝の深さに比べると小さい。そのため、従来のマスクレス露光を適用した液晶表示パネルでは、重畳領域と対応する縞状の溝による周期的な外観むらが際だち、表面粗さによる周期的な外観むらは無視できるレベルと考えられてきた。
【0096】
しかしながら、第2の絶縁層12を形成する際に行う露光や第3の絶縁層14を形成する際に行う露光に、図3および図4(c)に示したような原理のマスクレス露光を適用した場合、重畳領域と対応した縞状の溝による周期的な外観むらが抑制(改善)される。そのため、従来のマスクレス露光を適用した液晶表示パネルでは無視できるとされていた、表面粗さによる周期的な外観むらを無視することができなくなる。したがって、本実施例のマスクレス露光では、以下に示すような方法で、感光させない領域のうちの露光領域ERが1回だけ通る領域に生じる表面粗さを低減し、当該表面粗さによる液晶表示パネルの外観むらを抑える。
【0097】
図6(a)および図6(b)は、本実施例のマスクレス露光における光変調部品の具体的な制御方法を説明するための模式図である。
図6(a)は、光量調節素子に印加する電圧と感光性絶縁膜側に回折する光の光量との関係の一例を示す模式図である。図6(b)は、光変調部品の校正方法の一例を示す模式図である。
【0098】
本実施例のマスクレス露光では、非感光指定領域のうちの露光領域ERが1回だけ通る領域に照射される光の光量が、光変調部品25(光量調節素子25a)の動作特性の違いによらず均一になるようにするために、たとえば、図6(a)に示すように、感光させない場合、すなわちオフ状態のときの印加電圧Vと照射光(回折光)の光量IRについても校正する。
【0099】
なお、図6(a)において、実線の分布P13および分布P13’はそれぞれ、校正前の印加電圧Vと照射光の光量IRとの関係の一例を表しており、点線の分布P14および分布P14’はそれぞれ、照射光の光量IRが均一になるように印加電圧Vを校正したときの関係の一例を表している。
【0100】
各光量調節素子25aは機械的な構造が同じなので、本来なら、各光量調節素子25aに同じ大きさの電圧Vを印加すれば、感光性絶縁膜23に照射される光(回折する光)の光量は同じ(すなわち一定)になるはずである。しかしながら、実際には、動作特性のわずかな違いにより、照射される光の光量分布に不均一性が生じる。光の光量分布にどのような不均一性が生じるかは光変調部品25ごとに異なるが、不均一性が生じたときの校正方法は同じである。そのため、本実施例では、説明を簡単にするために、露光領域ERが1回だけ通る領域の露光を担う光量調節素子の列(以下、素子列という。)の光量IRが、たとえば、図6(a)に示した実線の分布P13’のように、素子列における中央部分の光量が両端部分の光量よりも大きい凸状の分布になる場合を挙げる。
【0101】
このような光量分布P13’を有する光変調部品25に対しては、素子列(露光領域ER)における中央部分の光量を小さくするか、または両端部分の光量を大きくする校正を行う。光変調部品25が前述のGLVの場合、光量調節素子25aに印加する電圧Vと回折する光の光量IRとの関係は、通常正比例であり、印加する電圧Vを大きくすると回折する光の光量IRが大きくなる。そのため、中央部分の光量を小さくして光量分布を均一化する校正を行う場合は、たとえば、図6(a)に点線で示した分布P14のように、中央部分にある光量調節素子25aに印加する電圧Vを、両端部分にある光量調節素子25aに印加する電圧Vよりも小さくする。
【0102】
また、照射される光(回折する光)の光量分布にどのような不均一性が生じるかは光変調部品25ごとに異なるが、どのような分布の場合も、基準とする光量調節素子25aの印加電圧Vおよび光の光量IRを決め、他の光量調節素子25aにおけるオフ状態の光の光量IRが当該基準の光量調節素子25aにおける光量と等しくなるように印加電圧Vを調整すればよいことはもちろんである。
【0103】
すなわち、感光させないときの光量調節素子25aの動作についての校正を行っていない場合に感光性絶縁膜23に照射される光の光量分布が図5に示した実線の分布P10および分布P11になる場合は、各光変調部品25における印加電圧Vを、それぞれ、たとえば、図6(b)に示した実線の分布P10’および分布P11’のように校正する。そうすると、各光変調部品25(露光領域ER)の中央部分における光量が校正前よりも小さくなるので、感光性絶縁膜23に照射される光の光量は、図6(b)に示した分布P12’のように均一化される。その結果、マスクレス露光後に現像して得られる絶縁層の表面に重複領域と対応する縞状の溝が生じることを抑えられ、かつ、露光領域ERが1回だけ通る領域の表面粗さを低減することができる。
【0104】
以上のようなことから、本実施例のマスクレス露光を適用して製造された液晶表示パネルでは、従来のマスクレス露光において問題視されていた縞状の溝による外観むらを低減できるとともに、表面粗さ(表面の周期的な凹凸)による外観むらを低減することができると言える。
【0105】
図7は、液晶表示パネルにおける絶縁層の表面粗さと外観むらのレベルとの関係の一例を示す模式図である。
【0106】
感光させない領域のうちの露光領域ERが1回だけ通る領域に照射する光の光量を、重複領域に照射される漏れ光の光量の総量の最大値ILTMAXにする場合、該当する光量調節素子25aの校正を行わないと、たとえば、図5に示したように、光量分布P12に不均一性が生じ、絶縁層の表面に、意図しない凹凸が生じる。このような意図しない凹凸による外観むらは、一般に、表面粗さ(すなわち凹凸の高低差)が大きくなるほど強くなる。
【0107】
そこで、本願発明者らは、まず、第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面に生じる表面粗さdと液晶表示パネルに生じる表面粗さによる外観むらの目視判定レベルとの関係を調べた。その結果を、図7に示す。なお、図7は、横軸が表面粗さd(nm)、縦軸がむらの目視判定レベルULVのグラフである。また、目視判定レベルULVは、数値が大きいほど外観むらが弱く、4または5は外観むらを視認できないレベル(合格レベル)であり、1乃至3はむらが視認できるレベル(不合格レベル)である。また、目視判定レベルULVの数値と外観むらの強さとの関係は、具体的に言うと、下記の通りである。
【0108】
まず、マスクレス露光に起因する周期的な外観むらが視認できない場合、具体的には散乱光強度で0.1%未満の場合の目視判定レベルULVを5としている。また、むらが散乱光強度として確認できる場合の目視判定レベルULVは、0.1%以上0.2%未満であれば4とし、0.2%以上0.4%未満であれば3とし、0.4%以上0.6%未満であれば2とし、0.6%以上であれば1としている。
【0109】
図7からわかるように、第2の絶縁層12や第3の絶縁層14の表面に生じる表面粗さdが10nm以下であれば、目視判定レベルULVが4または5になり、マスクレス露光に起因する周期的な外観むらが観測されなくなる。特に、表面粗さdが5nm以下の場合は、目視判定レベルULVが5になり、マスクレス露光に起因する外観むらは視認できない。
【0110】
本願発明者らが、本実施例のマスクレス露光を適用して図1(b)および図1(c)に示した構成の画素を有する液晶表示パネルを作成したところ、重複領域と対応する縞状の溝の深さは平均7nmにすることができ、表面粗さも平均7nmにすることができた。なお、マスクレス露光を行う際、感光させない領域のうちの重複領域に対しては感光させる領域に照射する光の光量に対して2%の光を2回照射し、露光領域ERが1回だけ通る領域に対しては感光させる領域に照射する光の光量に対して4%の光を1回照射している。
【0111】
これに対し、露光領域ERが1回だけ通る領域の露光を担う光量調節素子25aについて、オフ状態に関する校正を行わずに露光した液晶表示パネルでは、重複領域と対応する縞状の溝の深さは平均7nmにすることができたものの、表面粗さは10nm以上になってしまった。
【0112】
以上説明したように、本実施例の露光方法を適用して形成された液晶表示パネル(液晶表示装置)は、マスクレス露光に起因する外観品位の低下、表示品位の低下を防ぐことができる。
【0113】
図8は、本実施例の露光方法の変形例の一例を示す模式図である。
【0114】
本実施例では、本発明に係るマスクレス露光における露光方法の一例として、たとえば、図4(c)に示したように、非感光指定領域(描画データに基づき感光させないと判定される領域)に照射する光の光量が、重複領域に照射される漏れ光の光量の総量のうちの最大値ILTMAXになるように各光変調部品25を制御する場合を挙げた。
【0115】
しかしながら、光変調部品25の特性により生じる漏れ光の光量は、光変調部品25ごとにまちまちである。そのため、重複領域に照射される漏れ光の光量の総量の最大値ILTMAXは、たとえば、図8に示すように、感光させるときの光の光量に対して3%と4%の間の値(非整数値)になることもある。この場合も、上記のような方法で、光変調部品25(光量調節素子25a)の校正および制御をすることで、表面粗さによる外観むらを弱めることができる。
【0116】
しかしながら、このような場合は、重複領域に照射される漏れ光の光量IRの総量の最大値ILTMAXに合わせるより、当該最大値ILTMAXより大きい整数のうちの最小の整数(図8に示した例では4%)に合わせるほうが都合がよい。
【0117】
すなわち、本実施例の露光方法では、非感光指定領域全体に均一な光量(強度)の光を照射して表面のみを感光させることで、現像後に得られる絶縁層の表面に縞状の溝や周期的な凹凸が生じることを防げればよい。そのため、非感光指定領域に照射する光の光量は、重複領域に照射される漏れ光の光量の総量のうちの最大値、または最大値よりも大きな値であればよい。
【0118】
なお、非感光指定領域に照射する光の光量(強度)が大きくなると、現像する際の絶縁層の膜厚の減少量が多くなる。そのため、現像後に所望の膜厚の絶縁層を得るには、現像時の膜厚の減少量を考慮して感光性絶縁膜を厚く形成(成膜)する必要があり、その分材料費が増大する。したがって、非感光指定領域に照射する光の光量は、可能な限り低くすることが望ましいことはもちろんである。光変調部品25により生じる漏れ光の光量は、前述のように、オン状態のときの光の光量(感光性絶縁膜23を完全に感光させるのに必要十分な光量)の2%以下である。したがって、非感光指定領域に照射する光の光量は、4%以下であることが望ましい。
【0119】
以上、本発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々変更可能であることはもちろんである。
【0120】
たとえば、前記実施例では、露光領域ERが1回だけ通る領域に対する露光を担う光量調節素子25aを校正することで表面粗さを低減している。しかしながら、重複領域に対する露光を担う光量調節素子25aについても、印加電圧Vと光量IRとの関係は光量調節素子25aごとに異なる。したがって、本発明のマスクレス露光では、重複領域に対する露光を担う光量調節素子25aについて、露光領域ERが1回だけ通る領域に対する露光を担う光量調節素子25aと同様の校正を行ってもよいことはもちろんである。
【0121】
また、本明細書では、本発明のマスクレス露光の適用例として、図1(b)および図1(c)に示したような構成の画素を有する液晶表示パネルの製造方法を挙げている。しかしながら、本発明のマスクレス露光は、これに限らず、ポジ型の感光性絶縁膜を露光現像して得られる絶縁層を有する液晶表示パネルの製造方法であれば、どのような画素構成のものであっても適用できる。また、本発明のマスクレス露光は、液晶表示パネルの製造方法に限らず、類似の画素構成を有する表示パネル、たとえば、有機EL材料を用いた自発光型の表示パネルにおける絶縁層の形成工程の露光などに適用できることはもちろんである。
【0122】
また、前記実施例では、露光領域ERの走査方法の一例として、図2(a)に示したような第1の動作と第2の動作を繰り返す走査、すなわち感光性絶縁膜23を複数の帯状領域Qに分割し、一方の端に位置する帯状領域Qから他方の端に位置する帯状領域Qに向かって順番に露光する走査方法を挙げている。しかしながら、露光領域ERの走査方法は、これに限らず、別の走査方法、たとえば、露光領域ERを螺旋状(渦巻き状)に移動させながら露光しても良いことはもちろんである。
【符号の説明】
【0123】
1 第1の基板
2 第2の基板
3 液晶層
4 第1の偏光板
5 第2の偏光板
6,17 絶縁基板
7 走査信号線
8 第1の絶縁層
9 半導体層
10 映像信号線
11 ドレイン電極
12 第2の絶縁層
13 共通電極
14 第3の絶縁層
15 画素電極
16 第1の配向膜
18 ブラックマトリクス
19 カラーフィルタ
20 平坦化膜
21 第2の配向膜
22a,22b 貫通穴
23 感光性絶縁膜
24 基板
25 光変調部品
25a 光量調節素子
26 露光ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素からなる表示領域を有する表示パネルの製造過程において基板上に成膜した感光性絶縁膜を露光、現像してなる絶縁層を形成する工程を有し、
前記感光性絶縁膜の露光は、
あらかじめ用意された数値データに基づく数値制御により当該感光性絶縁膜に照射する露光パターンを生成する光学系を複数有し、
当該複数の光学系により生成される複数の前記露光パターンを前記感光性絶縁膜の異なる位置に照射し、当該露光パターンの照射領域を排他的に走査して、当該感光性絶縁膜の全体を露光する露光装置を用いて行う表示装置の製造方法であって、
前記露光パターンの照射領域の走査は、前記照射領域を第1の方向と平行に移動させる第1の動作と、前記照射領域を前記第1の方向とは異なる第2の方向と平行に移動させる第2の動作とを繰り返し、かつ、
前記照射領域における当該照射領域の移動方向と直交する方向の端部が、他のタイミングで前記露光パターンが照射される領域と、あらかじめ定められた幅だけ重なるように行い、
複数の前記光学系は、
前記感光性絶縁膜のうちの前記数値データに基づき感光させないと判定される領域に対して光を照射しない条件で当該光学系を制御したときに、前記露光パターンが2度以上通る重複領域のそれぞれに照射される前記光学系からの漏れ光の光量の総量に基づき、
前記感光性絶縁膜のうちの前記数値データに基づき感光させないと判定される領域全体に前記漏れ光の光量の総量の最大値と同じ光量、または当該最大値より大きくかつ当該感光性絶縁膜が完全に感光する最小光量よりも小さい光量の光を均一に照射するよう数値制御することを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記感光性絶縁膜の露光は、前記第1の動作を行っている最中に行われ、
前記照射領域は、前記第2の方向の寸法が前記第1の方向の寸法よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
複数の前記光学系は、それぞれ、1個乃至2個以上の光源と、当該光源が発した光を変調して前記露光パターンを生成する空間光変調器とを有し、
前記空間光変調器は、複数の回折光量制御素子を有し、
複数の前記回折光量制御素子における前記光源が発した前記光の回折光量を前記回折光量制御素子ごとに独立して数値制御することで、前記露光パターンを生成することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記感光性絶縁膜の露光は、前記第1の動作を行っている最中に行われ、
複数の前記回折光量制御素子は、前記第2の方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項3に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁層を形成する工程よりも前に前記基板の上に第1の導体パターンを形成する工程と、
前記絶縁層を形成する工程よりも後に前記基板の上に第2の導体パターンを形成する工程とを有し、
前記絶縁層を形成する工程は、前記第2の導体パターンを前記第1の導体パターンと接続するための貫通穴を有する絶縁膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の表示装置の製造方法。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図2(d)】
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【図2(e)】
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【図2(f)】
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【図3】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−73420(P2012−73420A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218221(P2010−218221)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【出願人】(506087819)パナソニック液晶ディスプレイ株式会社 (443)
【Fターム(参考)】