説明

表示装置の製造方法

【課題】ノズルプリンティング法によって表示装置を作製する場合に、有機EL素子の発光特性の低下を抑制することが可能な発光装置およびその製造方法を提供することにある。
【解決手段】支持基板と、当該支持基板上において、第1の方向および当該第1の方向と交差する第2の方向にそれぞれ所定の間隔をあけてマトリクス状に配置される複数の有機EL素子と、前記支持基板上に設けられ、前記複数の有機EL素子に対応する位置に開口が形成され、当該開口により前記各有機EL素子を個別に規定する絶縁膜と、前記絶縁膜上において前記第2の方向に隣り合う有機EL素子間に配置され、第1の方向に延在する複数本の隔壁部材からなる隔壁とを備える表示装置であって、前記各隔壁部材は、当該隔壁部材の第2の方向の中心位置を、前記第2の方向に隣り合う開口間の中心とは第2の方向の一方にずらして配置されている、表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置には種々のタイプのものがある。そのひとつに、有機EL(Electro Luminescence)素子を画素の光源として用いた表示装置がある。この表示装置は、支持基板と、第1の方向に延在する複数本の隔壁部材20からなる隔壁17と、隔壁部材20間において第1の方向Xに沿って等間隔をあけて配置される複数の有機EL素子とを含んで構成される(図4参照)。
【0003】
有機EL素子は、第1の電極12、1層以上の機能層、および第2の電極が、支持基板寄りからこの順序で積層されて構成される。
【0004】
機能層は塗布法によって形成することができる。たとえば機能層は、当該機能層となる材料を含むインキを隔壁部材20と隔壁部材20との間の凹部に供給し、さらにこれを固化することにより形成できる。インキの供給はたとえばノズルプリンティング法によりおこなわれる。ノズルプリンティング法によって機能層を形成したのちに、さらに上部電極を所定の方法によって形成することで、支持基板上に複数の有機EL素子を形成ることができる(たとえば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−218250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図4は表示装置の一部を模式的に示す平面図であり、図5は表示装置の断面図である。
【0007】
図4中、矢印はノズルプリンティング装置のノズル4の経路を模式的にあらわしている。このようにノズルプリンティング法では一筆書きでインキを塗布する。なおこのような系ではノズルプリンティング装置の動作をどのように設定したとしても、図5に示すように、乾燥後の機能層の形状が隔壁間で対称にならないことがあり、本発明者等はこのような現象が発生することを見出した。隔壁部材間で非対称に形成された機能層を有する有機EL素子は、対称に形成された機能層を有する有機EL素子と比べると、その発光特性が低下することがある。
【0008】
したがって本発明の目的は、ノズルプリンティング法によって表示装置を作製する場合に、有機EL素子の発光特性の低下を抑制することが可能な発光装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、支持基板と、
当該支持基板上において、第1の方向および当該第1の方向と交差する第2の方向にそれぞれ所定の間隔をあけてマトリクス状に配置される複数の有機EL素子と、
前記支持基板上に設けられ、前記複数の有機EL素子に対応する位置に開口が形成され、当該開口により前記各有機EL素子を個別に規定する絶縁膜と、
前記絶縁膜上において前記第2の方向に隣り合う有機EL素子間に配置され、第1の方向に延在する複数本の隔壁部材からなる隔壁とを備える表示装置であって、
前記各隔壁部材は、当該隔壁部材の第2の方向の中心位置を、前記第2の方向に隣り合う開口間の中心とは第2の方向の一方にずらして配置されている、表示装置に関する。
【0010】
また本発明は、支持基板と、当該支持基板上において、第1の方向および当該第1の方向と交差する第2の方向にそれぞれ所定の間隔をあけてマトリクス状に配置される複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子に対応する位置に開口が形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上において前記第2の方向に隣り合う有機EL素子間に配置され、第1の方向に延在する複数本の隔壁部材からなる隔壁とを備える表示装置の製造方法であって、
前記複数の有機EL素子の画素電極と、当該画素電極が前記開口から露出するように配置された前記絶縁膜とが設けられた支持基板を用意する工程と、
前記絶縁膜上に、複数本の隔壁部材を形成し隔壁を設ける工程と、
前記隔壁部材間にノズルプリンティング法により所定のインキを供給し、これを固化することにより、有機EL素子の所定の機能層を形成する工程と、
前記機能層上に上部電極を形成する工程とを有し、
前記隔壁を設ける工程では、前記隔壁部材の第2の方向の中心位置を、前記第2の方向に隣り合う開口間の中心とは第2の方向の一方にずらすように前記隔壁部材を形成する、表示装置の製造方法に関する
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノズルプリンティング法によって表示装置を作製する場合に、有機EL素子の発光特性の低下を抑制することが可能な発光装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態の発光装置21を模式的に示す平面図である。
【図2】発光装置21を模式的に拡大して示す断面図である。
【図3】発光装置21の断面について機能層等の形状を誇張して示す図である。
【図4】ノズルプリンティング法でインキを塗布するときの動作を模式的に示す図である。
【図5】発光装置21の断面について機能層等の形状を誇張して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の表示装置は、支持基板と、当該支持基板上において、第1の方向および当該第1の方向と交差する第2の方向にそれぞれ所定の間隔をあけてマトリクス状に配置される複数の有機EL素子と、前記支持基板上に設けられ、前記複数の有機EL素子に対応する位置に開口が形成され、当該開口により前記各有機EL素子を個別に規定する絶縁膜と、
前記絶縁膜上において前記第2の方向に隣り合う有機EL素子間に配置され、第1の方向に延在する複数本の隔壁部材からなる隔壁とを備える表示装置であって、前記各隔壁部材は、当該隔壁部材の第2の方向の中心位置を、前記第2の方向に隣り合う開口間の中心とは第2の方向の一方にずらして配置されている、表示装置である。
【0014】
表示装置には主にアクティブマトリクス駆動型の装置と、パッシブマトリクス駆動型の装置とがある。本発明は両方の型の表示装置に適用することができるが、本実施形態では一例としてアクティブマトリクス駆動型の表示装置に適用される発光装置について説明する。
【0015】
<発光装置の構成>
まず発光装置の構成について説明する。図1は本実施形態の発光装置21を模式的に示す平面図であり、図2は発光装置21を模式的に拡大して示す断面図である。発光装置21は主に支持基板11と、この支持基板上に設けられる複数の有機EL素子22とを含んで構成される。
【0016】
本実施形態では複数の有機EL素子22は、支持基板11上において、第1の方向Xおよび当該第1の方向Xと交差する第2の方向Yにそれぞれ所定の間隔をあけてマトリクス状に配置される。なお本実施形態では有機EL素子22は、第1の方向Xに等しい間隔をあけて配置されるとともに、第2の方向Yにも等しい間隔をあけて配置される。
【0017】
本実施形態では第1の方向Xと第2の方向Yとは、それぞれ支持基板11の厚み方向Zに対して垂直な方向である。また本実施形態では第1の方向Xと第2の方向Yとは、互いに垂直な方向である。以下では、支持基板11の厚み方向Zをたんに厚み方向Zということがある。
【0018】
前記支持基板上には、各有機EL素子22を個別に規定する絶縁膜15が設けられる。この絶縁膜15には、前記複数の有機EL素子に対応する位置に開口が形成されている。各有機EL素子22は、厚み方向Zの一方から見て(以下、平面視ということがある。)、絶縁膜15の開口の形成される部位に設けられる。後述するように有機EL素子を構成する機能層は、第1の方向Xに隣り合う有機EL素子22と連なるように形成されており、物理的には連続しているが、上記の絶縁膜15によって、第1の方向Xに隣り合う有機EL素子22は電気的に絶縁されている。
【0019】
絶縁膜15の開口は、各有機EL素子22が設けられる位置に形成されるため、有機EL素子22と同様にマトリクス状に配置される。このように絶縁膜15にはマトリクス状に開口が形成される。換言すると絶縁膜15は平面視で格子状に形成される。絶縁膜15の開口は平面視で、後述する画素電極12と略一致するように形成され、たとえば略矩形、略円形および略楕円形などに形成される。格子状の絶縁膜15は平面視で、画素電極12を除く領域に主に形成され、その一部が画素電極12の周縁を覆って形成されている。
【0020】
本実施形態では絶縁膜15上に、第1の方向Xに延在する複数本の隔壁部材20から構成される隔壁17が設けられる。各隔壁部材20は、第2の方向Yに隣り合う有機EL素子間に配置される。このように本実施形態ではいわゆるストライプ状の隔壁17が絶縁膜15上に設けられる。
【0021】
有機EL素子22は隔壁17によって画定される区画に設けられる。本実施形態では複数の有機EL素子22は、第2の方向Yに隣り合う隔壁部材20間(すなわち凹部18)に設けられ、各隔壁部材20間において、第1の方向Xに所定の間隔をあけて配置されている。なお各有機EL素子22は物理的に離間している必要はなく、個別に駆動できるように電気的に絶縁されていればよい。そのため有機EL素子を構成する一部の層(電極や機能層)は他の有機EL素子と物理的につらなっていてもよい。
【0022】
有機EL素子22は、第1の電極12、機能層13,14、第2の電極16が支持基板11寄りからこの順に配置されて構成される。本明細書では、第1の電極12を画素電極12と記載し、第2の電極16を上部電極16と記載する。
【0023】
画素電極12および上部電極16は、陽極と陰極とからなる一対の電極を構成する。すなわち画素電極12および上部電極16のうちの一方が陽極として設けられ、他方が陰極として設けられる。また画素電極12および上部電極16のうちの画素電極12が支持基板11寄りに配置され、上部電極16が、画素電極12よりも支持基板11から離間して配置される。
【0024】
有機EL素子22は1層以上の機能層を備える。なお機能層は本明細書において画素電極12と上部電極16とに挟持される全ての層を意味する。有機EL素子22は機能層として少なくとも1層以上の発光層を備える。また電極間には発光層に限らず、必要に応じて所定の層が設けられる。たとえば陽極と発光層との間には、機能層として正孔注入層、正孔輸送層、および電子ブロック層などが設けられる。発光層と陰極との間には、機能層として正孔ブロック層、電子輸送層、および電子注入層などが設けられる。
【0025】
本実施形態の有機EL素子22は画素電極12と発光層14との間に、機能層として正孔注入層13を備える。
【0026】
以下では実施の一形態として、陽極として機能する画素電極12と、正孔注入層13と、発光層14と、陰極として機能する上部電極16とが、支持基板11寄りからこの順番で積層されて構成される有機EL素子22について説明する。
【0027】
本実施形態の発光装置21はアクティブマトリクス型の装置であり、各有機EL素子22を個別に駆動することを可能にするために、画素電極12は有機EL素子22ごとに個別に設けられる。すなわち有機EL素子22の数と同数の画素電極12が支持基板11上に設けられる。たとえば画素電極12は薄膜状であって、平面視で略矩形状に形成される。画素電極12は支持基板11上において、各有機EL素子が設けられる位置に対応して、マトリクス状に設けられる。複数の画素電極12は、第1の方向Xに所定の間隔をあけるとともに、第2の方向Yに所定の間隔をあけて配置される。なお画素電極12は平面視で、第2の方向Yに隣り合う隔壁部材20間に設けられ、各隔壁部材20間において、第1の方向Xに所定の間隔をあけて配置されている。
【0028】
前述したように格子状の絶縁膜15は平面視で画素電極12を除く領域に主に形成され、その一部が画素電極12の周縁を覆って形成される。すなわち絶縁膜15には画素電極12上に開口が形成され、この開口によって画素電極12の表面が絶縁膜15から露出している。
【0029】
正孔注入層13は隔壁部材20に挟まれた領域に第1の方向Xに延在して配置される。すなわち正孔注入層13は、第2の方向Yに隣り合う隔壁部材20によって画定される凹部18に、帯状に形成されており、第1の方向Xに隣り合う有機EL素子22にわたって連続して形成されている。
【0030】
発光層14は隔壁部材20挟まれた領域に第1の方向Xに延在して配置される。すなわち発光層14は、第2の方向Yに隣り合う隔壁部材20によって画定される凹部18に、帯状に形成されており、第1の方向Xに隣り合う有機EL素子にわたって連続して形成されている。帯状の発光層14は帯状の正孔注入層13上に積層される。
【0031】
本発明はモノクロ表示装置にも適用できるが、本実施形態では一例としてカラー表示装置について説明する。カラー表示装置の場合、赤色、緑色および青色のいずれか1種の光を放つ3種類の有機EL素子が支持基板11上に設けられる。カラー表示装置はたとえば以下の(I)(II)(III)の行を、この順序で、第2の方向Yに繰り返し配置することにより実現することができる。
【0032】
(I)赤色の光を放つ複数の有機EL素子22Rが第1の方向Xに所定の間隔をあけて配置される行。
(II)緑色の光を放つ複数の有機EL素子22Gが第1の方向Xに所定の間隔をあけて配置される行。
(III)青色の光を放つ複数の有機EL素子22Bが第1の方向Xに所定の間隔をあけて配置される行。
【0033】
このように発光色の異なる3種類の有機EL素子を形成する場合、通常は素子の種類ごとに発光色の異なる発光層が設けられる。本実施形態では以下の(i)(ii)(iii)の行を、この順序で、第2の方向Yに繰り返し配置する。
【0034】
(i)赤色の光を放つ発光層14Rが設けられる行。
(ii)緑色の光を放つ発光層14Gが設けられる行。
(iii)青色の光を放つ発光層14Bが設けられる行。
【0035】
この場合、第1の方向Xに延在する帯状の3種類の発光層14R,14G,14Bが、それぞれ第2の方向Yに2行の間隔をあけて順次正孔注入層13上に積層される。
【0036】
上部電極16は発光層14上に設けられる。なお本実施形態では上部電極16は複数の有機EL素子22にまたがって連続して形成され、複数の有機EL素子に共通の電極として設けられる。上部電極16は、発光層14上だけでなく、隔壁17上にも形成され、発光層14上の電極と隔壁17上の電極とが連なるように一面に形成されている。
【0037】
図3は、発光装置21の断面について機能層等の形状を誇張して示す図である。図3では、理解の容易のために、画素電極12、上部電極16の図示を省略している。
【0038】
前記各隔壁部材20は、当該隔壁部材20の第2の方向Yの中心位置を、前記第2の方向Yに隣り合う開口間の中心とは第2の方向の一方にずらして配置されている。すなわち第2の方向Yに隣り合う開口間には、絶縁膜15が形成されており、この絶縁膜15の第2の方向Yの中心に、当該隔壁部材20の第2の方向Yの中心位置を合わせるのではなく、絶縁膜15の第2の方向Yの一方にかたよって隔壁部材20が配置される。図3に照らして説明すると、台形状の隔壁部材20は、矩形状の絶縁膜15上において、その中心から左にずれて配置されている。
【0039】
隔壁部材20の第2の方向Yの中心位置と、前記第2の方向Yに隣り合う開口間の中心位置との第2の方向Yのずれ幅Mは、機能層の形状に応じて適宜設定されるが、前記第2の方向Yに隣り合う開口間の距離をWとすると、次式(1)の関係を満たすことが好ましい。
【0040】
c<M/W≦b・・・式(1)
上記式(1)において、bは0.2が好ましく、0.1がより好ましい。また上記式(1)において、cは、0.02が好ましく、0.05がより好ましい。
【0041】
機能層は、隔壁部材20間において非対称に形成されるが、その厚みが最小になる位置が、開口の第2の方向の中心に一致するように、前記ずれ幅を設定することが好ましい。なお、開口の第2の方向の位置をその一端からの距離であらわし、その他端の距離をXとすると、機能層の厚みが最小になる位置Aは、次式(2)の関係を満たすことが好ましい。
【0042】
|A/X−0.5|≦a・・・式(2)
上記式(2)において、aは0.2が好ましく、0.1がより好ましい。
【0043】
また所定の凹部18において、第2の方向Yの一方の隔壁部材20と機能層の表面との切片H1と、他方の隔壁部材20と機能層の表面との切片H2とを比較したときに、切片の高い方に、隔壁部材20の第2の方向Yの中心位置がずれるように、隔壁部材20を配置することが好ましい。なお記号H1、H2は、それぞれ支持基板11からの高さを表す。このように隔壁部材20を配置することにより、たとえば上記式(2)の関係を満たすことができる。
【0044】
たとえば図3に照らすと、左方の切片H1が、右方の切片H2よりも高いので、隔壁部材20の第2の方向Yの中心位置が、前記第2の方向Yに隣り合う開口間の中心位置よりも、左方にずれる方が好ましい。
【0045】
なお隔壁部材20の第2の方向Yの中心位置と、前記第2の方向Yに隣り合う開口間の中心位置との第2の方向Yのずれ幅Mおよびそのずれる向きは、試作として実際に支持基板11上に隔壁部材17を形成し、そこに薄膜を形成することにより、H1、H2の関係を把握し、この関係をもとに決定することができる。
【0046】
以上のように隔壁部材20を配置することにより、開口内では、第2の方向Yにおいて機能層を略対称に形成することができる。これによって平面視で開口内において略均一に発光する有機EL素子を実現することができ、有機EL素子の発光特性を向上することができる。
【0047】
<発光装置の製造方法>
つぎに発光装置の製造方法について説明する。
【0048】
本発明の発光装置の製造方法は、支持基板と、当該支持基板上において、第1の方向および当該第1の方向と交差する第2の方向にそれぞれ所定の間隔をあけてマトリクス状に配置される複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子に対応する位置に開口が形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上において前記第2の方向に隣り合う有機EL素子間に配置され、第1の方向に延在する複数本の隔壁部材からなる隔壁とを備える表示装置の製造方法であって、前記複数の有機EL素子の画素電極と、当該画素電極が前記開口から露出するように配置された前記絶縁膜とが設けられた支持基板を用意する工程と、前記絶縁膜上に、複数本の隔壁部材を形成し隔壁を設ける工程と、前記隔壁部材間にノズルプリンティング法により所定のインキを供給し、これを固化することにより、有機EL素子の所定の機能層を形成する工程と、前記機能層上に上部電極を形成する工程とを有し、前記隔壁を設ける工程では、前記隔壁部材の第2の方向の中心位置を、前記第2の方向に隣り合う開口間の中心とは第2の方向の一方にずらすように前記隔壁部材を形成する、表示装置の製造方法に関する。
【0049】
(支持基板を用意する工程)
本工程では複数の有機EL素子の画素電極12と、当該画素電極12が前記開口から露出するように配置された前記絶縁膜15とがその上に設けられた支持基板11を用意する。アクティブマトリクス型の表示装置の場合、複数の有機EL素子を個別に駆動するための回路が予め形成された基板を、支持基板11として用いることができる。たとえばTFT(Thin Film Transistor)およびキャパシタなどが予め形成された基板を支持基板として用いることができる。なお画素電極12を以下のように本工程で形成することによって、画素電極12および絶縁膜15がその上に設けられた支持基板11を用意してもよいが、画素電極12および絶縁膜15が予めその上に設けられた支持基板11を市場から入手することにより支持基板11を用意してもよい。
【0050】
まず支持基板11上に複数の画素電極12をマトリクス状に形成する。画素電極12は、たとえば支持基板11上の一面に導電性薄膜を形成し、これをフォトリソグラフィ法によってマトリクス状にパターニングすることによって形成される。またたとえば所定の部位に開口が形成されたマスクを支持基板11上に配置し、このマスクを介して支持基板11上の所定の部位に導電性材料を選択的に堆積することにより画素電極12をパターン形成してもよい。画素電極12の材料については後述する。
【0051】
つぎに格子状の絶縁膜15を支持基板11上に形成する。絶縁膜15は有機物または無機物によって構成される。絶縁膜15を構成する有機物としてはアクリル樹脂、フェノール樹脂、およびポリイミド樹脂などの樹脂を挙げることができる。また絶縁膜15を構成する無機物としてはSiOやSiNなどを挙げることができる。
【0052】
無機物からなる絶縁膜15を形成する場合、たとえば無機物からなる薄膜をプラズマCVD法やスパッタ法などによって一面に形成し、次に所定の部位を除去することにより格子状の絶縁膜15を形成する。所定の部位の除去はたとえばフォトリソグラフィ法によって行われる。
【0053】
有機物からなる絶縁膜15を形成する場合、まずたとえばポジ型またはネガ型の感光性樹脂を一面に塗布し、所定の部位を露光、現像する。さらにこれを硬化することによって、格子状の絶縁膜15が形成される。なお感光性樹脂としてはフォトレジストを用いることができる。
【0054】
つぎに隔壁17を形成する。すなわち前記絶縁膜15上に、複数本の隔壁部材20を形成し隔壁17を設ける。本工程では、前記隔壁部材20の第2の方向の中心位置を、前記第2の方向に隣り合う開口間の中心とは第2の方向の一方にずらすように前記隔壁部材20を形成する。
【0055】
隔壁17はたとえば絶縁膜15の材料として例示した材料を用いて、絶縁膜15を形成する方法と同様にしてストライプ状に形成することができる。
【0056】
なお隔壁17は有機物によって構成することが好ましい。隔壁17で囲まれた凹部18に供給されるインキを凹部18内で保持するためには、隔壁は撥液性を示すことが好ましい。一般に無機物よりも有機物の方がインキに対して撥液性を示すので、有機物によって隔壁を構成することにより、凹部18内にインキを保持する能力を高めることができる。
【0057】
隔壁17の形状、並びにその配置は、画素数および解像度などの表示装置の仕様や製造の容易さなどに応じて適宜設定される。たとえば隔壁部材20の第2の方向Yの幅L1は、5μm〜50μm程度であり、隔壁部材20の高さL2は0.5μm〜5μm程度であり、凹部18の第2の方向Yの幅L3は、10μm〜200μm程度である。また画素電極12の第1の方向Xおよび第2の方向Yの幅はそれぞれ10μm〜400μm程度である。
【0058】
(機能層を形成する工程)
本工程では、前記隔壁部材間にノズルプリンティング法により所定のインキを供給し、これを固化することにより、有機EL素子の所定の機能層を形成する。なお所定のインキとは機能層(本実施形態では正孔注入層および発光層)となる材料を含むインキを意味する。なお本工程では機能層が複数層設けられる場合、少なくとも1層をノズルプリンティング法によって形成する。
【0059】
本実施形態では全ての有機EL素子に共通する正孔注入層13を形成するため、隔壁部材20間に限って正孔注入層13となる材料を含むインキ(以下、正孔注入層用インキということがある。)を供給する必要はなく、全面に正孔注入層用インキを供給してもよい。そのためどのような方法で正孔注入層用インキを供給してもよい。たとえばスピンコート法、スリットコート法、インクジェットプリント法、ノズルプリンティング法、凸版印刷法、凹版印刷法などによって正孔注入層用インキを供給することができる。正孔注入層用インキの供給方法としては短時間で均一に正孔注入層用インキを供給可能な方法が好ましく、このような観点からはスピンコート法、スリットコート法またはノズルプリンティング法が好ましい。なお全面に正孔注入層用インキを塗布した場合、隔壁表面の性状によっては隔壁上にまで正孔注入層が形成されることがあり、これを避けるために、凹部18にのみ正孔注入層用インキを供給することが好ましい場合もある。この場合、正孔注入層用インキを凹部18にのみ選択的に供給することが可能な塗布法によって正孔注入層用インキを供給する。本実施形態では正孔注入層用インキを選択的に供給することが可能な塗布法として、ノズルプリンティング法によって正孔注入層用インキを供給する。
【0060】
以下、図4を参照して本工程を説明する。図4はノズルプリンティング法でインキを塗布するときの動作を模式的に示す図である。なお本図4は、課題の項において引用した図と同じものを使用しているが、本実施形態の表示装置と課題の項において説明した従来の表示装置とは、隔壁部材の配置が異なる。
【0061】
ノズルプリンティング法では一筆書きで各行(各凹部18)に正孔注入層用インキを供給する。すなわち支持基板11の上方に配置されるノズルから液柱状の正孔注入層用インキを吐出したまま、ノズル4を第1の方向Xに往復移動させつつ、ノズル4の往復移動の折り返しの際に、支持基板を第2の方向Yに所定の距離だけ移動させることによって、各行に正孔注入層用インキを供給する。たとえばノズル4の往復移動の折り返しの際に、支持基板を第2の方向Yに1行分だけ移動することによって、全ての行に正孔注入層用インキを供給することができる。
【0062】
より具体的にはノズル4から液柱状の正孔注入層用インキを吐出したまま、以下の(1)〜(4)の工程をこの順序で繰り返すことにより、全ての隔壁部材20間(凹部18)に正孔注入層用インキを供給することができる。
(1)ノズル4を第1の方向Xの一端から他端に移動する工程。
(2)支持基板11を第2の方向Yの一方に1行分だけ移動する工程。
(3)ノズル4を第1の方向Xの他端から一端に移動する工程。
(4)支持基板を第2の方向Yの一方に1行分だけ移動する工程。
【0063】
以上のようにノズルプリンティング法によって正孔注入層用インキを供給することにより、正孔注入層用インキからなる薄膜が形成される。
【0064】
前述したように、本実施形態では、各隔壁部材は、当該隔壁部材の第2の方向の中心位置を、前記第2の方向に隣り合う開口間の中心とは第2の方向の一方にずらして配置されている。このように隔壁部材を配置することにより、ノズルプリンティング法でインキを塗布したとしても、図3に示すように、開口内では、第2の方向Yにおいて正孔注入層を略対称に形成することができる。
【0065】
(発光層を形成する工程)
つぎに発光層を形成する。前述したようにカラー表示装置を作製する場合、3種類の有機EL素子を作製する必要がある。そのため発光層の材料を行ごとに塗りわける必要がある。たとえば3種類の発光層を行ごとに形成する場合、赤色の光を放つ材料を含む赤インキ、緑色の光を放つ材料を含む緑インキ、青色の光を放つ材料を含む青インキを、それぞれ第2の方向Yに2行の間隔をあけて塗布する必要がある。これら赤インキ、緑インキ、青インキを所定の行に順次塗布することによって、各発光層を塗布成膜することができる。
【0066】
赤インキ、緑インキ、青インキを所定の行に順次塗布する方法としては、隔壁部材間にインキを選択的に供給することが可能な塗布法であればどのような方法でもよい。たとえばインクジェットプリント法、ノズルプリンティング法、凸版印刷法、凹版印刷法などによってインキを供給することができる。インキの供給方法としては、短時間で均一にインキを供給可能な方法が好ましく、このような観点からはノズルプリンティング法が好ましい。本実施形態では前述した正孔注入層を形成する方法と同様に、ノズルプリンティング法によってインキを供給する。
【0067】
より具体的にはノズル4から液柱状の赤インキを吐出したまま、以下の(1)〜(4)の工程をこの順序で繰り返すことにより、第2の方向Yに2行の間隔をあけて隔壁部材20間(凹部18)に赤インキを供給することができる。
(1)ノズル4を第1の方向Xの一端から他端に移動する工程。
(2)支持基板11を第2の方向Yの一方に3行分だけ移動する工程。
(3)ノズル4を第1の方向Xの他端から一端に移動する工程。
(4)支持基板を第2の方向Yの一方に3行分だけ移動する工程。
【0068】
上述の赤インキと同様にして緑インキ、青インキをそれぞれ供給することによって、第2の方向Yに2行の間隔をあけて隔壁部材20間(凹部18)にそれぞれ緑インキ、青インキを供給することができる。
【0069】
なお赤インキ、緑インキ、青インキに使用される発光材料については後述する。なお各インキは、エネルギーを加えることによって重合可能な重合性化合物を含んでいてもよい。インキとしては、エネルギーを加えることによって重合可能な重合性基を有する発光材料を重合性化合物として含む赤インキ、緑インキ、青インキを使用してもよく、また、自身は重合しない発光材料と、この発光材料に加えて、重合可能な重合性基を有する重合性化合物とを含む赤インキ、緑インキ、青インキを使用してもよい。
【0070】
重合性基としては、ビニル基、エチニル基、ブテニル基、アクリロイル基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイル基、メタクリロイルアミノ基、ビニルオキシ基、ビニルアミノ基、シラノール基、シクロプロピル基、シクロブチル基、エポキシ基、オキセタニル基、ジケテニル基、エピチオ基、ラクトニル基、及びラクタムニル基などがあげられる。
【0071】
また重合性化合物としては、重合性基を有するPDA(N, N'-テトラフェニル-1,4-フェニレンジアミン)の誘導体、重合性基を有するTPD(N, N'-ビス(3-メチルフェニル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン)の誘導体、重合性基を有するNPD(N, N'-ビス(ナフタレン-1-イル)-N,N'-ビス(フェニル)-ベンジジン)の誘導体、トリフェニルアミンアクリレート、トリフェニレンジアミンアクリレート、フェニレンアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート(大阪ガスケミカル社製、商品名BPEF-A)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬製KAYARD DPHA)、トリスペンタエリスリトールオクタアクリレート(広栄化学製)1,4−ブタンジオールジアクリレート(Alfa Aesar社製)、アロンオキセタン(OXT121;東亞合成製架橋剤)などをあげることができ、これらの中でもフェニルフルオレンアクリレートが好ましい。
【0072】
前述したように、本実施形態では、各隔壁部材は、当該隔壁部材の第2の方向の中心位置を、前記第2の方向に隣り合う開口間の中心とは第2の方向の一方にずらして配置されている。このように隔壁部材を配置することにより、ノズルプリンティング法でインキを塗布したとしても、図3に示すように、開口内では、第2の方向Yにおいて発光層を略対称に形成することができる。
【0073】
発光層を形成した後、必要に応じて所定の有機層や無機層などを所定の方法によって形成する。これらは印刷法、インクジェット法、ノズルプリンティング法などの所定の塗布法、さらには所定の乾式法を用いて形成してもよい。
【0074】
(上部電極を形成する工程)
つぎに上部電極を形成する。前述したように本実施形態では上部電極を支持基板上の全面に形成する。これによって複数の有機EL素子を基板上に形成することができる。
【0075】
以上説明したように、本実施形態では、各隔壁部材は、当該隔壁部材の第2の方向の中心位置を、前記第2の方向に隣り合う開口間の中心とは第2の方向の一方にずらして配置されている。隔壁部材20をこのように配置することにより、開口内では、第2の方向Yにおいて正孔注入層、発光層を略対称に形成することができる。これによって平面視で開口内において略均一に発光する有機EL素子を実現することができ、有機EL素子の発光特性を向上することができる。
【0076】
<有機EL素子の構成>
前述したように有機EL素子は種々の層構成をとりうるが、以下では有機EL素子の層構造、各層の構成、および各層の形成方法についてさらに詳しく説明する。
【0077】
前述したように有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極(画素電極および上部電極)と、該電極間に設けられる1または複数の機能層とを含んで構成され、1または複数の機能層として少なくとも1層の発光層を有する。なお有機EL素子は、無機物と有機物とを含む層、および無機層などを含んでいてもよい。有機層を構成する有機物としては、低分子化合物でも高分子化合物でもよく、また低分子化合物と高分子化合物との混合物でもよい。有機層は、高分子化合物を含むことが好ましく、ポリスチレン換算の数平均分子量が10〜10である高分子化合物を含むことが好ましい。
【0078】
陰極と発光層との間に設けられる機能層としては、電子注入層、電子輸送層、正孔ブロック層などを挙げることができる。陰極と発光層との間に電子注入層と電子輸送層との両方の層が設けられる場合、陰極に近い層を電子注入層といい、発光層に近い層を電子輸送層という。陽極と発光層との間に設けられる機能層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層などを挙げることができる。正孔注入層と正孔輸送層との両方の層が設けられる場合、陽極に近い層を正孔注入層といい、発光層に近い層を正孔輸送層という。
【0079】
本実施の形態の有機EL素子のとりうる層構成の一例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
e)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
g)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
h)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
j)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
k)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
l)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
n)陽極/発光層/電子注入層/陰極
o)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
p)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0080】
本実施の形態の有機EL素子は2層以上の発光層を有していてもよい。上記a)〜p)の層構成のうちのいずれか1つにおいて、陽極と陰極とに挟持された積層体を「構造単位A」とすると、2層の発光層を有する有機EL素子の構成として、下記q)に示す層構成を挙げることができる。なお2つある(構造単位A)の層構成は互いに同じでも、異なっていてもよい。
q)陽極/(構造単位A)/電荷発生層/(構造単位A)/陰極
また「(構造単位A)/電荷発生層」を「構造単位B」とすると、3層以上の発光層を有する有機EL素子の構成として、下記r)に示す層構成を挙げることができる。
r)陽極/(構造単位B)x/(構造単位A)/陰極
なお記号「x」は、2以上の整数を表し、(構造単位B)xは、構造単位Bがx段積層された積層体を表す。また複数ある(構造単位B)の層構成は同じでも、異なっていてもよい。
【0081】
ここで、電荷発生層とは電界を印加することにより正孔と電子を発生する層である。電荷発生層としては、たとえば酸化バナジウム、インジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、酸化モリブデンなどから成る薄膜を挙げることができる。
【0082】
有機EL素子は、陽極および陰極から構成される一対の電極のうちの陽極を陰極よりも支持基板寄りに配置して、支持基板に設けてもよく、また陰極を陽極よりも支持基板寄りに配置して、支持基板に設けてもよい。たとえば上記a)〜r)において、右側から順に各層を支持基板上に積層して有機EL素子を構成してもよく、また左側から順に各層を支持基板上に積層して有機EL素子を構成してもよい。積層する層の順序、層数、および各層の厚さについては、発光効率や素子寿命を勘案して適宜設定することができる。
【0083】
次に、有機EL素子を構成する各層の材料および形成方法についてより具体的に説明する。
【0084】
<陽極>
発光層から放たれる光が陽極を通って素子外に出射する構成の有機EL素子の場合、陽極には光透過性を示す電極が用いられる。光透過性を示す電極としては、金属酸化物、金属硫化物および金属などの薄膜を用いることができ、電気伝導度および光透過率の高いものが好適に用いられる。具体的には酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、および銅などから成る薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、または酸化スズから成る薄膜が好適に用いられる。
【0085】
陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などを挙げることができる。また陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0086】
陽極の膜厚は、求められる特性や成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0087】
<陰極>
陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また陽極側から光を取出す構成の有機EL素子では、発光層から放たれる光を陰極で陽極側に反射するために、陰極の材料としては可視光に対する反射率の高い材料が好ましい。陰極には、たとえばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属および周期表の13族金属などを用いることができる。陰極の材料としては、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、またはグラファイト若しくはグラファイト層間化合物などが用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などを挙げることができる。また陰極としては導電性金属酸化物および導電性有機物などから成る透明導電性電極を用いることができる。具体的には、導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、およびIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などを挙げることができる。なお陰極は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお電子注入層が陰極として用いられることもある。
【0088】
陰極の膜厚は、求められる特性や成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0089】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、また金属薄膜を熱圧着するラミネート法などを挙げることができる。
【0090】
<正孔注入層>
正孔注入層を構成する正孔注入材料としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、および酸化アルミニウムなどの酸化物や、フェニルアミン系化合物、スターバースト型アミン系化合物、フタロシアニン系化合物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、およびポリチオフェン誘導体などを挙げることができる。
【0091】
正孔注入層の膜厚は、求められる特性および成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0092】
<正孔輸送層>
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0093】
正孔輸送層の膜厚は、求められる特性および成膜工程の簡易さなどを考慮して設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0094】
<発光層>
発光層は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、または該有機物とこれを補助するドーパントとから形成される。ドーパントは、たとえば発光効率の向上や、発光波長を変化させるために加えられる。なお発光層を構成する有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよく、塗布法によって発光層を形成する場合には、発光層は高分子化合物を含むことが好ましい。発光層を構成する高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量はたとえば10〜10程度である。発光層を構成する発光材料としては、たとえば以下の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料、ドーパント材料を挙げることができる。
【0095】
(色素系材料)
色素系材料としては、たとえば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などを挙げることができる。
【0096】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、たとえばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、またはAl、Zn、Be、Ir、Ptなどを中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを配位子に有する金属錯体を挙げることができ、たとえばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体などを挙げることができる。
【0097】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素系材料や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどを挙げることができる。
【0098】
発光層の厚さは、通常約2nm〜200nmである。
【0099】
<電子輸送層>
電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、公知のものを使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0100】
電子輸送層の膜厚は、求められる特性や成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0101】
<電子注入層>
電子注入層を構成する材料としては、発光層の種類に応じて最適な材料が適宜選択され、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、またはこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、および炭酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。電子注入層は、2層以上を積層した積層体で構成されてもよく、たとえばLiF/Caなどを挙げることができる。
【0102】
電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
【0103】
機能層のうちで塗布法によって形成することが可能な機能層が複数ある場合には、全ての機能層を塗布法を用いて形成することが好ましいが、たとえば塗布法によって形成することが可能な複数の機能層のうちの少なくとも1層を塗布法を用いて形成し、他の機能層を塗布法とは異なる方法によって形成してもよい。また複数の機能層を塗布法で形成する場合であっても、その塗布法の具体的方法が異なる塗布法によって複数の機能層を形成してもよい。たとえば本実施形態では正孔注入層および発光層をノズルプリンティング法によって形成したが、正孔注入層をスピンコート法で形成し、発光層をノズルプリンティング法によって形成してもよい。
【0104】
なお塗布法では、各機能層となる有機EL材料を含むインキを塗布成膜することによって機能層を形成するが、その際に使用されるインキの溶媒には、たとえばクロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水などが用いられる。
【0105】
また塗布法とは異なる方法として、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、ラミネート法などによって機能層を形成してもよい。
【符号の説明】
【0106】
4 ノズル
11 支持基板
12 画素電極
13 正孔注入層
14 発光層
15 絶縁膜
16 上部電極
17 隔壁
18 凹部
20 隔壁部材
21 発光装置
22 有機EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
当該支持基板上において、第1の方向および当該第1の方向と交差する第2の方向にそれぞれ所定の間隔をあけてマトリクス状に配置される複数の有機EL素子と、
前記支持基板上に設けられ、前記複数の有機EL素子に対応する位置に開口が形成され、当該開口により前記各有機EL素子を個別に規定する絶縁膜と、
前記絶縁膜上において前記第2の方向に隣り合う有機EL素子間に配置され、第1の方向に延在する複数本の隔壁部材からなる隔壁とを備える表示装置であって、
前記各隔壁部材は、当該隔壁部材の第2の方向の中心位置を、前記第2の方向に隣り合う開口間の中心とは第2の方向の一方にずらして配置されている、表示装置。
【請求項2】
支持基板と、当該支持基板上において、第1の方向および当該第1の方向と交差する第2の方向にそれぞれ所定の間隔をあけてマトリクス状に配置される複数の有機EL素子と、前記複数の有機EL素子に対応する位置に開口が形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上において前記第2の方向に隣り合う有機EL素子間に配置され、第1の方向に延在する複数本の隔壁部材からなる隔壁とを備える表示装置の製造方法であって、
前記複数の有機EL素子の画素電極と、当該画素電極が前記開口から露出するように配置された前記絶縁膜とが設けられた支持基板を用意する工程と、
前記絶縁膜上に、複数本の隔壁部材を形成し、隔壁を設ける工程と、
前記隔壁部材間にノズルプリンティング法により所定のインキを供給し、これを固化することにより、有機EL素子の所定の機能層を形成する工程と、
前記機能層上に上部電極を形成する工程とを有し、
前記隔壁を設ける工程では、前記隔壁部材の第2の方向の中心位置を、前記第2の方向に隣り合う開口間の中心とは第2の方向の一方にずらすように前記隔壁部材を形成する、表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−54923(P2013−54923A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192482(P2011−192482)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】