説明

表示装置アッセンブリー

【課題】 タッチパネルを介して見る表示装置の画像にニュートンリングを発生させることを効果的に防ぎ、同時に、表示装置用タッチパネルを介して見る表示装置の画像が不鮮明になることを防ぐ。
【解決手段】 タッチパネル10と液晶表示装置30との間に、透明スペーサ31を配置する。透明スペーサ31の基材32を、透明性フィルム又はガラス板で構成し、透明スペーサ31を配置することに起因する、タッチパネル10の光線透過率の低下を可能な限り防ぎ、ヘイズ値の増加防止を図る。また、基材32およびドットスペーサ33の機械的構造によって、タッチパネル10と液晶表示装置30との間に、ニュートンリングの発生を防止するための、所定の空隙を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示装置等の表示装置の表示面側に近接配置され、操作者がその表示面に表示された情報に基づいて表示面に対応するパネル面の所望位置をペンや指で押圧することにより、その押圧位置に応じた所定の信号を発生する表示装置アッセンブリーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の、タッチパネルを備える表示装置アッセンブリーは、表示装置の表示面に対応する領域を、情報表示と情報入力の双方に利用できることから、当該領域の利用率が高められ、小型の情報処理装置や通信機器、特に携帯型の通信端末機等において、その需要が益々高まってきている。
【0003】図2は、従来のこの種の表示装置アッセンブリーのタッチパネル(特開2000−187197号公報中の図2に示されたタッチパネル)に更なる改良を加えたものであり、本出願人が特願2001−10201号明細書に開示したものである。この図に示すように、タッチパネル10は、基本的には複数の絶縁性ドットスペーサ11を挟んで対向配置された一対の抵抗体層(第1及び第2の抵抗体層)12,13と、IΤO膜保護用の透光性平板体としてPETフィルム16aとを備える。第2のIΤO膜13はPETフィルム16a上に形成されており、タッチパネル10は、このPETフィルム16a側を表示装置、ここでは液晶表示装置30の表示面側に向けて当該液晶表示装置30に近接配置される。
【0004】このような構成において、第1の抵抗体層12の外面が押圧されると、その押圧された第1の抵抗体層12部分が、そこに対向する第2の抵抗体層13部分に接触し、その接触位置(押圧位置)に応じた信号を発生する。実際には、第1の抵抗体層12の外面にも抵抗体層保護用の透明な層、例えばポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)フィルム15が形成されるので、押圧操作はこのPETフィルム15上で行われる。なお、第1及び第2の抵抗体層12,13相互は、それらの周辺部分でシール材14によって結合され、防塵、防水が図られている。
【0005】ところで、上記液晶表示装置30には、表示面を明るく照らして見やすくする必要がある場合には、ライトユニットが付設される。ライトユニットとしては、近年では、表示面の表側(表示面側)から光を当てるフロントライトユニット20が多用されている。
【0006】上掲図2は、このようなフロントライトユニット20を備えた液晶表示装置30に組み付けられたタッチパネル10を示している。図2に示すように、フロントライトユニット20は、液晶表示装置30の表示面側に導光板22を配置し、その側方に位置する光源21からの光を、導光板22を通して液晶表示装置30の表示面に向けて照射する。表示面に達した光は、その表示面あるいは表示装置内部で反射し、導光板22及びタッチパネル10を透過して外方に向かい(図中、波線矢印A参照)、表示面の表示内容を視認可能とする。上記のように導光板22は、側方からの光を下方の液晶表示装置30の表示面に向けて照射するため、前記導光板22における当該液晶表示装置30に対向する面とは反対側の面に、各稜線が相互に平行なプリズムアレイが形成されている。
【0007】一方、液晶表示装置30の表示面を明るく照らす必要のない条件で使用される装置に用いられる場合には、ライトユニットを備えず、図3に示すように、タッチパネル10のPETフィルム16aと液晶表示装置30とが、直接的に対面する配置となる。また、ライトユニットの配置の関係等から、いわゆるバックライト方式を採用する場合にも、ライトユニットは液晶表示装置30の下方に位置することとなるので、やはり、図3に示すように、タッチパネル10のPETフィルム16aと液晶表示装置30とが、直接的に対面する配置となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】さて、図3に示す従来技術にあっては、次のような問題が生じた。すなわち、ライトユニットを備えない場合や、いわゆるバックライト方式を採用する場合には、フロントライトユニット20の導光板22が、タッチパネル10と液晶表示装置30との間に介在せず、タッチパネル10と液晶表示装置30との距離は自ずと接近するような部品配置となる。すると、タッチパネル10と液晶表示装置30との位置関係は、ニュートンリングの発生環境(平面ガラスの上に、曲率半径が数メートル以上の平凸レンズの、凸面を下にして重ね、上から単色光を当てることにより生じる。)に近似して、タッチパネル10のPETフィルム16aと液晶表示装置30の表示面との間に挟まれた空気層の、上下の面で反射された光波が干渉し(矢印B、C参照)、タッチパネル10を介して見る液晶表示装置30の画像に、ニュートンリングを発生させることになってしまう。
【0009】また、タッチパネル10は、操作者がその表示面に表示された情報に基づいて表示面に対応するパネル面の所望位置をペンや指で押圧するものであることから、かかる操作によって、タッチパネル10のPETフィルム16aと液晶表示装置30の表示面との空隙が変化した場合に発生するニュートンリングは、タッチパネル10と液晶表示装置30の組付時の位置関係を如何に考慮しても、防ぐことができなかった。
【0010】なお、当該課題は、タッチパネル10のPETフィルム16aがガラス板によるものである場合も同様である。すなわち、ニュートンリングの発生という課題は、一般に製品単体として高い平面度を有する、タッチパネル10と液晶表示装置30とを、図3の例のごとく近接配置することと一体不可分の関係にある。
【0011】よって、従来は、図3に示す例におけるニュートンリングの発生を防ぐために、PETフィルム16aにアンチグレアー処理を施したものを用い、ニュートンリングを目立たなくさせるという手法を採っていた。しかしながら、PETフィルム16aにアンチグレアー処理を施すことで、タッチパネル10の光線透過率は低下し、ヘイズ値の増加を来たすので、かかるPETフィルム16aを備えるタッチパネル10を介して見る液晶表示装置30の画像は、不鮮明で、表示装置としての機能、品質等を低下させることになった。
【0012】本発明は、上記従来技術の問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、表示装置アッセンブリーの照明方法の如何に係わり無く、タッチパネルを介して見る表示装置の画像にニュートンリングを発生させることを効果的に防ぐことにある。同時に、表示装置用タッチパネルを介して見る表示装置の画像が不鮮明になることを防ぎ、表示装置アッセンブリーとしての機能、品質等を向上させることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための、本発明の請求項1に係る表示装置アッセンブリーは、複数の絶縁性ドットスペーサを挟んで対向配置された一対の抵抗体層のうちの一方の抵抗体層が、ポリエチレンテレフタレート・フィルムからなる透光性平板体上に形成され、この透光性平板体側が表示装置の表示面側に向けて当該表示装置に近接配置され、他方の抵抗体層の外面が押圧されることによりその押圧位置に応じた信号を発生する表示装置用タッチパネルを有する表示装置アッセンブリーであって、前記表示装置用タッチパネルと前記表示装置との間に、透明スペーサを介在させたことを特徴とするものである。
【0014】本発明によれば、前記透明スペーサの機械的構造により、当該表示装置用タッチパネルと前記表示装置との間に所定の空隙を確保することができる。この所定の空隙を確保することにより、ニュートンリングの発生を防止する。なお、本説明において、「透明」の用語は、意図的にヘイズ値を増加させるような処理を行わず、素材自体の透明度を維持している状態を意味する。
【0015】また、本発明の請求項2記載の表示装置アッセンブリーは、請求項1記載の表示装置アッセンブリーにおいて、前記透明スペーサは、表裏両面に複数のドットスペーサを備える透明性フィルムまたはガラス板を用いるものである。
【0016】本発明によれば、透明性フィルム又はガラス板によって、前記透明スペーサの透明性を確保し、かつ、それら透明性フィルム又はガラス板の表裏両面に複数のドットスペーサを配置することによって、当該透明スペーサと前記表示装置用タッチパネルとの空隙、当該透明スペーサと前記表示装置との空隙を、夫々確保する。それによって、前記表示装置用タッチパネルと前記表示装置との間に、所定の空隙を確保する。また、前記ドットスペーサの機械的性質を利用して、前記表示装置アッセンブリーに振動や衝撃が加わった場合でも、前記表示装置に伝わる振動や衝撃を減衰させる。
【0017】また、本発明の請求項3記載の表示装置アッセンブリーは、請求項1または2記載の表示装置アッセンブリーにおいて、前記透明スペーサによって表裏両面に形成される空隙を、1μm〜100μmとしたものである。本発明によれば、前記透明スペーサによって形成される空隙を、1μm〜100μmとすることで、前記表示装置用タッチパネルと前記表示装置との間に挟まれた空気層の上下の面で反射された光波が干渉し、実際にニュートンリングを発生させることを、効果的に防止する。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。従来技術と同一部分または相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明は省略する。
【0019】図1は、本発明による表示装置アッセンブリーの実施の形態を示す断面図である。この図に示すように、本発明の実施形態に係るタッチパネル10は、基本的には、複数の絶縁性ドットスペーサ11を挟んで対向配置された一対の抵抗体層、例えばIΤO膜(第1及び第2の抵抗体層)12,13と、IΤO膜保護用の透光性平板体、本発明ではPETフィルム16aとを備える。第2のIΤO膜13はPETフィルム16a上に形成されており、タッチパネル10は、このPETフィルム16a側を表示装置、ここでは液晶表示装置30の表示面側に向けて当該液晶表示装置30に近接配置される。
【0020】さらに、PETフィルム16aの、液晶表示装置30の表示面側には、液晶表示装置30との間に介在する、透明スペーサ31を備える。この透明スペーサ31は、PETフィルム16aと同様の透明フィルムや、ガラス板等、透明性の高い基材32の表裏両面に、複数のドットスペーサ33を印刷したものである。
【0021】なお、図1は、説明の便宜上、透明スペーサ31の絶縁性ドットスペーサ33を相対的に大きく示しており、実際には、タッチパネル10の厚さDが例えば0.4mm程度であるとき、透明スペーサ31の基材32の厚さは25〜100μm程度、ドットスペーサ33の高さ(空隙に対応)は片面で10μm程度である。よって、本発明の実施の形態に係る表示装置アッセンブリーが、タッチパネル10と、液晶表示装置30との間に介在する透明スペーサ31を備えることによる厚みの増加分Eは、実質的に、透明スペーサ31の基材32の厚さ0.1mm程度である。このため、本発明の実施の形態に係る表示装置アッセンブリーを、小型の情報処理装置や通信機器、特に携帯型の通信端末機等に組み込むに際して、タッチパネル10と液晶表示装置30とで構成される部分の大型化が、特に憂慮されるものではない。
【0022】また、透明スペーサ31のドットスペーサ33は、タッチパネル10の絶縁性ドットスペーサ11のように、「絶縁性」が必須のものではないが、例えば、静電気等の悪影響を最小に抑える目的で、ドットスペーサ33に絶縁性を持たせてもよい。さらに、透明スペーサ31は、タッチパネル10のPETフィルム16aの液晶表示装置30の側に固定して、タッチパネル10と一体に取扱われるものであってもよく、また、タッチパネル10を液晶表示装置30に取り付ける際に、これらの間に配置するものであってもよい。
【0023】上記構成を有する本発明の実施の形態に係る、表示装置アッセンブリーによれば、以下のような作用効果を得ることができる。まず、透明スペーサ31の基材32を、透明性フィルム又はガラス板で構成したことで、透明スペーサ31の透明性が確保される。よって、透明スペーサ31を配置することに起因する、タッチパネル10の光線透過率の低下を可能な限り防ぎ、ヘイズ値の増加防止を図り、タッチパネル10を介して見る液晶表示装置30の画像の鮮明化による、表示装置アッセンブリーとしての機能、品質等の向上を図ることができる。
【0024】また、透明スペーサ31の機械的構造によって、タッチパネル10と液晶表示装置30との間に、ニュートンリングの発生を防止するための所定の空隙を、確保することができる。なお、かかる空隙を、1μm〜100μmとすることによって、タッチパネル10のPETフィルム16aと液晶表示装置30の表示面との間に挟まれた空気層の、上下の面で反射された光波が干渉してニュートンリングが発生することを、効果的に防ぐことが可能である。
【0025】しかも、1μm〜100μmの空隙を、透明スペーサ31の機械的構造によって確保しているので、操作者がタッチパネル10の表示面をペンや指で押圧する操作により、タッチパネル10のPETフィルム16aと液晶表示装置30の表示面との空隙が変化するような場合でも、タッチパネル10と液晶表示装置30との間隔が、ニュートンリングが発生し得る範囲となることを、確実に防ぐことができる。なおかつ、ドットスペーサ33の機械的性質を利用して、タッチパネル10に振動や衝撃が加わった場合でも、液晶表示装置30に伝わる振動や衝撃を減衰させることが可能となる。
【0026】よって、本発明の実施の形態によれば、図3R>3に示すように、ライトユニットを備えない場合や、いわゆるバックライト方式を採用する例のごとく、タッチパネル10と液晶表示装置30とを近接配置する場合の、ニュートンリングの発生という課題を、従来のごとくタッチパネル10のPETフィルム16aにアンチグレアー処理を施すことなく、解決することが可能となる。
【0027】
【発明の効果】本発明はこのように構成したので、以下のような効果を有する。まず、本発明の請求項1に係る表示装置アッセンブリーによれば、表示装置アッセンブリーの照明方法の如何に係わり無く、タッチパネルを介して見る表示装置の画像にニュートンリングを発生させることを効果的に防ぐことが可能となる。同時に、表示装置用タッチパネルを介して見る表示装置の画像が不鮮明になることを防ぎ、表示装置アッセンブリーとしての機能、品質等を向上させることが可能となる。
【0028】また、本発明の請求項2に係る表示装置アッセンブリーによれば、表示装置アッセンブリーの光線透過率の低下、ヘイズ値の増加防止を図り、かつ、表示装置用タッチパネルと表示装置との間に、ニュートンリングの発生を防止するための所定の空隙を、機械的構造によって確保することで、表示装置アッセンブリーとしての機能、品質等の向上を図ることができる。
【0029】また、本発明の請求項3に係る表示装置アッセンブリーによれば、前記表示装置用タッチパネルと前記表示装置との間に挟まれた空気層の上下の面で反射された光波が干渉し、実際にニュートンリングを発生させることを、効果的に防止して、表示装置アッセンブリーとしての機能、品質等の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表示装置アッセンブリーの実施形態を示す断面図である。
【図2】従来の、フロントライトユニットを備える表示装置アッセンブリーの断面図である。
【図3】従来の、フロントライトユニットを備えない表示装置アッセンブリーの断面図である。
【符号の説明】
10 タッチパネル
11 絶縁性ドットスペーサ
12,13 第1,第2の抵抗体層(IΤO膜)
16a PETフィルム(IΤO膜保護用の透光性平板体)
30 表示装置(液晶表示装置)
31 透明スペーサ
32 基材
33 ドットスペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の絶縁性ドットスペーサを挟んで対向配置された一対の抵抗体層のうちの一方の抵抗体層が、ポリエチレンテレフタレート・フィルムからなる透光性平板体上に形成され、この透光性平板体側が表示装置の表示面側に向けて当該表示装置に近接配置され、他方の抵抗体層の外面が押圧されることによりその押圧位置に応じた信号を発生する表示装置用タッチパネルを有する表示装置アッセンブリーであって、前記表示装置用タッチパネルと前記表示装置との間に、透明スペーサを介在させたことを特徴とする表示装置アッセンブリー。
【請求項2】 前記透明スペーサは、表裏両面に複数のドットスペーサを備える透明性フィルムまたはガラス板であることを特徴とする請求項1記載の表示装置アッセンブリー。
【請求項3】 前記透明スペーサによって表裏両面に形成される空隙を、1μm〜100μmとしたことを特徴とする請求項1または2記載の表示装置アッセンブリー。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【公開番号】特開2003−84914(P2003−84914A)
【公開日】平成15年3月20日(2003.3.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−273763(P2001−273763)
【出願日】平成13年9月10日(2001.9.10)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】