説明

表示装置及びその表示装置に用いる希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体

【課題】高輝度と短残光性を両立し安定かつ輝度飽和を起こしにくいEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を提供することを目的とする。
【解決手段】Eu3+で付活した希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を用いた表示装置であって、前記希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、波長146nmの真空紫外線で励起したときに蛍光体が放つ赤色光の光成分において、619nm付近の主発光成分のピーク高さに対する614nm付近の副発光成分のピーク高さを第1の副発光成分割合とし、前記主発光成分のピーク高さに対する697nm付近の副発光成分のピーク高さを第2の副発光成分割合としたとき、前記第1の副発光成分割合と前記第2の副発光成分割合が、35.0%以上41.5%未満であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光ランプ、及び、フィールドエミッションディスプレイ(FED)などの表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表示装置に用いられる蛍光体材料として、母体結晶がLn(P,V)O4(但し、Lnは、Sc、Y、La、Gd、および、Luの中から選ばれる少なくとも1種の元素を示す。)で表され、付活剤として少なくともEu3+イオンを含有する希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体(Eu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体)が知られている。
【0003】
この代表例として、Y(P,V)O4:Eu3+赤色蛍光体(以後、YPVと記する。)があり、蛍光ランプやプラズマディスプレイパネル(PDP)などで実用または実用検討されている(例えば、特許文献1〜5、非特許文献1参照)。
【0004】
なお、Eu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、りんとバナジウムの比率を変えることによって、発光スペクトル形状や発光強度が変わることが知られている。りんの割合が少ない組成物では、赤色純度の面で優れる赤色光が得られるものの、真空紫外線(VUV)励起下における発光強度が下がり、りん割合(りんとバナジウムの総原子数に対するりんの原子数をりん割合と定義する。)が約65原子%となる組成物では、赤色光の赤色純度の面で僅かに劣るものの、VUV励起下での発光強度は最大となることが知られている(例えば、特許文献2、非特許文献1参照)。
【0005】
なお、従来から、電子デバイス用として実用されているEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、一般的な固相反応で製造されており、反応促進剤としてアルカリ金属化合物や硼素化合物を加えた蛍光体原料を1050〜1250℃の焼成温度で反応させて製造している(例えば、特許文献2、3および5、非特許文献1参照)。
【0006】
固相反応以外では、例えば、当該蛍光体の構成元素を含有する溶液(原料溶液)の液滴を加熱することにより熱分解合成する噴霧熱分解法によって製造されるEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体が知られている。固相反応で製造した蛍光体が、一般に、不規則な形状の粒子が凝集した粉末からなるのに対して、噴霧熱分解法で製造した蛍光体は、実質的に球状の外形を有する蛍光体粒子になることが知られている。なお、噴霧熱分解法では、前記原料溶液を、例えば1500〜1700℃の温度で瞬時(反応時間として、1〜10分)に加熱する(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
従来の発光装置では、赤色蛍光体として、これまで、このような製造方法で製造したEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を用いている。そして、短残光性の蛍光体が求められる、例えば、立体映像表示機能付きのPDP(以後、3D−PDPと記す。)でも、短残光性を有する組成物とした、このような希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体が利用または利用検討されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3417027号明細書
【特許文献2】特公昭57−352号公報
【特許文献3】特許第3988337号公報
【特許文献4】特開2004−256763号公報
【特許文献5】特開2009−256529号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】蛍光体ハンドブック、オーム社、pp.233−235、pp.332−333
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、従来のEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、特にVUV励起下において、強い発光と短残光性を両立するものがなく、3D−PDPの輝度水準を下げる一因になっていた。
【0011】
比較的短残光性のPDP赤色光を得るためには、Eu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体においてバナジウム割合を増すことが効果的であるが、バナジウム割合を増すほどVUVの励起効率は下がる。また、バナジウムはイオンの価数の面で不安定なために、バナジウム割合の多い蛍光体ほどPDPの製造工程中や、PDP駆動に伴う蛍光体劣化が顕著になる課題もあった。
【0012】
さらに、従来のEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、強いVUV励起下で、輝度が飽和現象を起こす課題もあった。
【0013】
一方で、発明者らは、従来から知られるEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体の結晶が不完全であり、完成度が高いとみなせる実用蛍光体でさえ、1500℃程度の大気中における数時間の熱処理で発光特性が変わることを見出した。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、高輝度と短残光性を両立し安定かつ輝度飽和を起こしにくいEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明は、Eu3+で付活した希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を用いた表示装置であって、前記希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、波長146nmの真空紫外線で励起したときに蛍光体が放つ赤色光の光成分において、619nm付近の主発光成分のピーク高さに対する614nm付近の副発光成分のピーク高さを第1の副発光成分割合とし、前記主発光成分のピーク高さに対する697nm付近の副発光成分のピーク高さを第2の副発光成分割合としたとき、前記第1の副発光成分割合と前記第2の副発光成分割合が、35.0%以上41.5%未満であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、Eu3+で付活した希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体であって、波長146nmの真空紫外線で励起したときに蛍光体が放つ赤色光の光成分において、619nm付近の主発光成分のピーク高さに対する614nm付近の副発光成分のピーク高さを第1の副発光成分割合とし、前記主発光成分のピーク高さに対する697nm付近の副発光成分のピーク高さを第2の副発光成分割合としたとき、前記第1の副発光成分割合と前記第2の副発光成分割合が、35.0%以上41.5%未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高輝度と短残光性を両立し安定かつ輝度飽和を起こしにくいEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を提供できる。また、Eu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を用いた表示装置、特に立体映像の表示装置において、表示品位に優れる装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明におけるプラズマディスプレイ装置を構成するPDPの構成を示す断面斜視図
【図2】PDPを用いたプラズマディスプレイ装置の駆動回路構成を示す図
【図3】PDPの構成を示す断面図
【図4】プラズマディスプレイ装置を用いた立体画像表示装置の一例を示す斜視図
【図5】蛍光体粉末の1/10残光時間を求める測定データの一例を示す図
【図6】赤色蛍光体のりん割合と輝度相対値および総光子数相対値との関係を示す図
【図7】りん割合が異なる赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図
【図8】りん割合が異なる赤色蛍光体の残光特性を示す図
【図9】りん割合が異なる赤色蛍光体の輝度飽和現象を示す図
【図10】赤色蛍光体の残光特性を示す図
【図11】赤色蛍光体の残光特性を示す参考図
【図12】赤色蛍光体のXRDパターンにおける主ピークを示す図
【図13】赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図
【図14】赤色蛍光体の残光特性を示す図
【図15】赤色蛍光体の輝度飽和現象を示す図
【図16】赤色蛍光体の発光スペクトルの一例を示す図
【図17】発光ピーク高さとりん割合の関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態による表示装置及びその表示装置に用いる希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体について説明する。なお、本発明は、プラズマディスプレイパネルやフィールドエミッションディスプレイや蛍光ランプ、LEDなどの発光装置を用いた表示装置に使用できるが、その表示装置の一例として、以下プラズマディスプレイパネルを例にとって説明する。
【0020】
図1は本発明において、プラズマディスプレイ装置を構成するPDPの構成を示す断面斜視図である。PDP10は、前面板20と背面板30とで構成されている。前面板20は前面ガラス基板21を有し、前面ガラス基板21上には平行に配置された走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして、走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。
【0021】
一方、背面板30は背面ガラス基板31を有し、背面ガラス基板31上には、平行に配列されたアドレス電極32が複数形成されている。さらに、アドレス電極32を覆うように下地誘電体層33が形成され、その上に隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および下地誘電体層33上には、アドレス電極32に対応して順次、赤色、緑色および青色の各色に発光する赤色蛍光体層35R、緑色蛍光体層35G、青色蛍光体層35Bが設けられている。
【0022】
これらの前面板20と背面板30とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対24とアドレス電極32とが交差するように対向配置され、その外周部がガラスフリットなどの封着部材によって封着されている。そして、放電空間には、例えばネオン(Ne)とキセノン(Xe)などの混合ガスが、放電ガスとして55kPa〜80kPaの圧力で封入されている。
【0023】
放電空間は隔壁34によって、複数の区画に仕切られ、表示電極対24とアドレス電極32とが交差する部分に放電セル36が形成される。そして、上記の電極間に放電電圧を印加すると、これらの放電セル36内で放電が起こり、その放電により発生した紫外線によってそれぞれの赤色蛍光体層35R、緑色蛍光体層35G、青色蛍光体層35Bの蛍光体が励起されて発光しカラー画像が表示される。なお、PDP10の構造は上述したものに限られるわけではない。隔壁34の構造として、井桁状の隔壁を備えた構造であってもよい。
【0024】
本発明では、前記赤色蛍光体層35Rが、少なくとも希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を含むようにし、好ましくは、前記赤色蛍光体層35Rが含む蛍光体の全てを前記希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体にする。
【0025】
なお、前記赤色蛍光体層35Rが含む前記希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体以外の赤色蛍光体としては、例えば、Y23:Eu3+、(Y,Gd)23:Eu3+、(Y,Gd)Al3(BO34:Eu3+などのEu3+付活蛍光体が挙げられる。
【0026】
前記緑色蛍光体層35Gが含む緑色蛍光体としては、例えば、Zn2SiO4:Mn2+、BaMgAl1017:Mn2+、YBO3:Tb3+、(Y,Gd)Al3(BO34:Tb3+、Y3Al512:Ce3+、Y3(Al,Ga)512:Ce3+、Ba3Si6122:Eu2+など、Mn2+付活蛍光体、Tb3+付活蛍光体、Ce3+付活蛍光体、および、Eu2+付活蛍光体から選ばれる少なくとも一つの蛍光体が挙げられる。
【0027】
なお、緑色光の色調と短残光性を併せ持つ緑色蛍光体が3D用として求められ、この視点から、好ましい緑色蛍光体は、Mn2+付活蛍光体と、Ce3+付活蛍光体またはEu2+付活蛍光体との混合緑色蛍光体であり、例えば、Zn2SiO4:Mn2+とY3Al512:Ce3+またはY3(Al,Ga)512:Ce3+のいずれかの蛍光体を組み合わせてなる混合緑色蛍光体である。
【0028】
前記青色蛍光体層35Bが含む青色蛍光体としては、例えば、BaMnAl1017:Eu2+やCaMgSi26:Eu2+などの、Eu2+付活蛍光体が挙げられる。
【0029】
図2は、PDP10を用いたプラズマディスプレイ装置の構成を示す図である。プラズマディスプレイ装置は、PDP10と、それに接続された駆動回路40とから構成される。駆動回路40は、表示ドライバ回路41、表示スキャンドライバ回路42、アドレスドライバ回路43とを備え、それぞれ、PDP10の維持電極23、走査電極22およびアドレス電極32に接続されている。また、コントローラ44はこれらの各種電極に印加する駆動電圧を制御している。
【0030】
次に、PDP10における放電の動作について説明する。まず、点灯させるべき放電セル36に対応する走査電極22とアドレス電極32とに所定電圧を印加することでアドレス放電を行う。これにより、表示データに対応する放電セル36に壁電荷が形成される。その後、維持電極23と走査電極22間に維持放電電圧を印加すると、壁電荷が形成された放電セル36で維持放電が起こり紫外線を発生する。この紫外線によって励起された赤色蛍光体層35R、緑色蛍光体層35G、青色蛍光体層35B中の蛍光体が発光することで放電セル36が点灯する。各色の放電セル36の点灯、非点灯の組み合わせによって画像が表示される。
【0031】
次に、PDP10の背面板30の構造とその製造方法について、図3を参照しながら説明する。図3はPDP10の背面板30の構成を示す断面図である。背面ガラス基板31上に、電極用の銀ペーストをスクリーン印刷し、焼成することによって複数のアドレス電極32をストライプ状に形成する。これらのアドレス電極32を覆うようにガラス材料を含むペーストをダイコータ法またはスクリーン印刷法で塗布、焼成して下地誘電体層33を形成する。
【0032】
形成された下地誘電体層33上に隔壁34を形成する。隔壁34の形成方法としては、ガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷法によりアドレス電極32を挟んでストライプ状に繰り返し塗布して焼成する方法がある。また、アドレス電極32を覆って下地誘電体層33上にペーストを塗布してパターンニングして焼成する方法などもある。この隔壁34によって放電空間が区画され、放電セル36が形成される。隔壁34の間隙は、例えば、42インチ〜50インチのフルHDテレビやHDテレビに合わせて130μm〜240μmに設定する。
【0033】
隣接する2本の隔壁34間の溝に、それぞれの蛍光体材料の粒子を含むペーストをスクリーン印刷法やインクジェット法などによって塗布し、焼成することによって赤色蛍光体層35R、緑色蛍光体層35G、青色蛍光体層35Bを形成する。
【0034】
このようにして作製された背面板30と、表示電極対24および誘電体層25、保護層26が形成された前面板20とを、それぞれ前面板20の走査電極22と背面板30のアドレス電極32とが直交するように対向させて重ね合わせ、周辺部に封着用ガラスを塗布して前面板20と背面板30を封着する。そして、一旦、放電空間内を高真空に排気した後、ネオン(Ne)とキセノン(Xe)などの混合ガスを55kPa〜80kPaの圧力で封入して、本実施の形態のPDP10を作製する。
【0035】
このようにして作製したPDP10に駆動回路40を接続し、さらに筐体などを配置することによってプラズマディスプレイ装置とする。
【0036】
次に、このようなプラズマディスプレイ装置を立体画像表示装置に適用する場合の一例を説明する。図4(A)は、プラズマディスプレイ装置を用いた立体画像表示装置の一例を示す斜視図であり、図4(B)は立体画像表示装置が表示した映像を視聴する際に用いる映像視聴用眼鏡の外観を示す斜視図である。立体画像表示装置の表示面に表示する映像を、視聴者が、映像視聴用眼鏡を通して見ることで、立体映像として視聴できるようにしている。
【0037】
図4において、プラズマディスプレイ装置を用いた立体画像表示装置100の同期信号送信部110から、表示面に出力される映像と同期した信号が送信され、映像視聴用眼鏡120の同期信号受信部130で受信する。映像視聴用眼鏡120は、この同期信号に基づいて、左右の目へ入射する光に所定の光学処理を施す。これにより、映像視聴用眼鏡120をつけた視聴者が、立体画像表示装置100が表示する映像を立体映像として視聴することができる。
【0038】
なお、映像視聴用眼鏡120が液晶シャッターを備える場合には、立体画像表示装置100の同期信号送信部110としては赤外線エミッターを用い、映像視聴用眼鏡120の同期信号受信部130としては赤外線センサーを用いることができる。
【0039】
すなわち、立体画像表示装置100は、上述のプラズマディスプレイ装置と、120Hzの周波数で開閉する液晶シャッターを用いた映像視聴用眼鏡120とを組み合わせて構成しており、立体画像表示装置100の表示面からは、立体映像(3D映像)の所定の処理を施され、左目用の映像と右目用の映像で視差の分だけ映像が異なる映像が表示される。視聴者は、左目と右目で視聴する映像から視差を感知して、立体画像表示装置100が表示する映像が立体的な映像であることを知覚することができる。
【0040】
ここで、立体画像表示装置100においては、液晶シャッターを周波数120Hzで開閉しても、画像が二重に見える現象であるクロストークが発生しないようにする必要がある。そのためには、PDPの各色蛍光体から発光される発光の残光時間が3.5msec以下、特に3.0msec以下であれば、目に優しい立体画像表示が可能になり、さらに、一層の迫力を伴う立体映像を視聴することができる。
【0041】
次に、本発明のプラズマディスプレイ装置に用いる蛍光体について説明する。
【0042】
発明者らは、従来から知られるEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体の結晶が不完全であり、1500℃程度の大気中における数時間の熱処理で発光特性が変わり、残光が短くなることを見出した。また、Eu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体と同等の短残光性が、徹底的な製造条件の最適化によって実現できることが判った。さらに、大きなりん割合は、VUV励起下の輝度や蛍光体の安定性だけでなく、輝度飽和に好影響を与えることも判り、この結果、希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を用いる3D用のプラズマディスプレイ装置で生じていた課題を解決できることも判った。
【0043】
ここで、「りん割合」と「第1の副発光成分割合」と「第2の副発光成分割合」と「1/10残光時間」は、各々、次のように定義している。
【0044】
りん割合(at.%):
希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体中に含まれる、りんとバナジウムの総原子数に対するりんの原子数割合を意味するものである。また、りんとバナジウムの原子数は、ICP発光分光分析法(例えば、SII製SRS1700VR利用)によって精密に定量分析したものとする。
【0045】
第1の副発光成分割合:
VUVで励起したときに蛍光体が放つ赤色光の分光分布において、619nm付近の主発光成分のピーク高さに対する614nm付近の副発光成分のピーク高さの割合を意味するものである。
【0046】
第2の副発光成分割合:
VUVで励起したときに蛍光体が放つ赤色光の分光分布において、619nm付近の主発光成分のピーク高さに対する697nm付近の副発光成分のピーク高さの割合を意味するものである。
【0047】
1/10残光時間(msec):
励起光を蛍光体に照射することを完全に止めた後、一定時間経過後の燐光強度を100として、その経過時間を基準時間(t0=0)とした時に、この燐光強度が1/10の10にまで低下するまでの時間を意味するものである。測定の便宜上、蛍光体粉末の1/10残光時間は、波長250nmの紫外線を蛍光体に照射し、励起光源側に設けたシャッターを閉じた後の蛍光体の残光特性(光の時間変化)から算出したものとする。なお、蛍光体粉末に波長250nmの紫外線ではなく、VUVを蛍光体に照射した場合でも、定性的には同様の結果が得られることを確認している。
【0048】
なお、上記分光分布(発光スペクトル)は、エキシマランプ(ウシオ電機(株)、ピーク146nm)をVUV励起光源として、10-4Pa台の真空中に配置した蛍光体サンプル(室温)にVUVを照射し、1024chの電子冷却型CCDリニアイメージセンサを検出素子とするマルチチャネル光検出器(例えば、C−7473(浜松ホトニクス(株))、測定波長範囲:200〜950nm、素子分解能:約0.8nm))を備えるマルチチャネル分光測光装置を用いて得たデータから算出によって得られるものとする。より詳しくは、前記マルチチャネル分光測光装置で得られる分光分布データをソフトウエア上で近似計算し、波長範囲350〜750nmの1nm毎のデータをつないで得られる分光分布とする。また、総光子数は前記分光分布から算出によって得たものである。なお、前記分光分布において、赤色光を放つ希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体の619nm付近の主発光ピークの高さは、バックグランドのノイズ強度の100倍以上であるものとする。
【0049】
また、蛍光体粉末の前記1/10残光時間は、例えば、分光蛍光光度計(FP−6500:日本分光(株))を利用し、専用ソフト(「スペクトルマネージャー」の「燐光寿命測定」)を利用して判るものである。なお、測定条件の具体例は、励起バンド幅:1nm、蛍光バンド幅:20nm、感度:Low、励起波長:250.0nm、蛍光波長:619.0nm、遅延時間:0.0msec、測定時間:25msec、データ取込間隔:0.1msecである。前記1/10残光時間は、例えば、励起光源側のシャッターが閉まった状態となっており、かつ、蛍光体粉末の残光特性がモニターできているとみなせる、データ取込開始後7.0msec経過した後を基準時間(t=0)として、データ取込開始後25.0msecまでの間の残光特性から求められる。
【0050】
参考のために、蛍光体粉末の残光特性評価データの具体例を図5に示した。図5において、横軸はデータ取り込みの時間であり、前記励起光源側に設けたシャッターを開けた後の時間(最大25msec)を実スケールで示している。また、縦軸は検出器に取り込まれた発光強度(データ取込間隔:0.1msec)を実スケールで示している。図5は、0msecの時間の時に前記シャッターが開き始め、約5msecの時間の時にシャッターが閉じ始め、約6msecの時間以降は、シャッターが閉じる速度に対して十分長い蛍光体の残光特性が検出器に取り込まれているとみなせる様子を示している。
【0051】
本発明において、蛍光体粉末の1/10残光時間(tAG)は、種々の蛍光体の実測データを考慮し、図5に示す測定データの、データ取込み開始後7.0msec経過後の時間を基準時間(t0=0)とし、前記基準時間(t0)における発光強度を100として、この発光強度が10に低下するまでの時間と定義した。
【0052】
次に、りん割合が異なるEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体に共通して認められる特性を、前記YPV赤色蛍光体、すなわち、化合物(Y1-xEux)(Py1-y)O4を主体にしてなる蛍光体組成物の場合を一例に挙げて概説する。
【0053】
図6は、YPV赤色蛍光体の前記りん割合と輝度相対値(a)および総光子数相対値(b)との関係を示す図である。図7は、りん割合が異なるYPV赤色蛍光体の発光スペクトルを示す図である。なお、図7において、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)、(k)、および(l)は、各々、りん割合が、0at%、10at%、20at%、30at%、40at%、50at%、60at%、65at%、70at%、80at%、90at%、および100at%の場合を示す。
【0054】
図8は、りん割合が異なるYPV赤色蛍光体の残光特性を示す図である。なお、図8において、(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、および(f)は、各々、りん割合が、0at%、20at%、40at%、60at%、80at%、および100at%の場合を示す。
【0055】
図9は、りん割合が40〜100原子%の範囲内となるYPV赤色蛍光体の輝度飽和現象を示す図である。なお、図9は、強度の異なるVUV(波長146nm)をYPV赤色蛍光体とBAM(BaMgAl1017:Eu2+)青色蛍光体に照射し、BAM青色蛍光体の輝度を各々100としてYPV赤色蛍光体の輝度を規格化し、さらに、最も弱いVUVで励起した時の輝度を100として規格化した図であり、縦軸を輝度相対値、横軸をVUV強度の相対値としてまとめた図である。図9において、(a)、(b)、(c)、および(d)は、りん割合が、各々、40at%、60at%、80at%、および100at%の場合を示しており、(e)は、リファレンスとしているBAM青色蛍光体のデータである。
【0056】
図6に示すように、YPV赤色蛍光体の輝度相対値と総光子数相対値は、りん割合を増加させるにつれて増加し、りん割合が65〜80原子%で最大値を示したあと、次第に減少する。つまり、りん割合が70原子%以下のYPVの輝度は、りん割合が少なければ少ないほど低下し、多ければ多いほど増加する。
【0057】
図7から判るように、YPV赤色蛍光体の発光スペクトルは、りん割合を増加させるにつれて、前記第1の副発光成分割合は減少し、前記第2の副発光成分割合および593nm付近の副発光成分割合(以後、第三の副発光成分割合と記する。)は増加する。なお、図7から判るように、前記第1の副発光成分割合と前記第2(および第三の副発光成分割合)とは相反するものである。
【0058】
また、図8から判るように、りん割合が増加するとYPVの残光は長くなる。
【0059】
なお、図7と図8とを対比しても判るように、りん割合を増加させて前記第2および第三の副発光成分割合が増加したYPVにすると、赤色光の1/10残光時間は長くなることが広く知られている。
【0060】
また、図9に示すように、YPV赤色蛍光体は、励起密度の高いVUVで励起すると輝度が飽和する課題を抱える。そして、少なくとも、りん割合が40原子%以上のYPV赤色蛍光体では、りん割合が増すと、輝度飽和は抑制される。また、データは省略するが、この傾向は図9の縦軸を総光子数とした場合にも、定性的に同様の結果となる。
【0061】
なお、VUV励起下におけるYPVの輝度飽和は、発明者らが初めて提起する課題である。
【0062】
図6〜図9の実験結果から、発明者らは、3D−PDP用として適する高輝度と短残光性と輝度飽和レスを全て兼ね備える赤色蛍光体の実現には、40〜80原子%の範囲内のYPVにおいて、相対的に高いりん割合で、どこまでの短残光性を実現できるかが技術ポイントとなることを見出した。
【0063】
なお、入手し得たYPV量産試作品の特性評価とPDPの試作評価とを通して、従来から広く知られるYPV蛍光体を利用して、前記クロストークが実質に認められない3D−PDPを得る場合には、りん割合として60原子%程度のYPVが好ましいことが判っている。
【0064】
図6、図8、および図9から判るように、りん割合が60原子%程度のYPVは、りん割合が70〜80原子%程度のYPVに比較して、輝度水準は最大6%程度低く、さらに、輝度飽和特性の面でも劣るものの、1/10残光特性が4msec未満の短残光性を示す。このため、3D−PDPで必須とされる前記クロストークの抑制に有効な、りん割合の上限値は60原子%程度となる。
【0065】
このように、3D−PDP用としての要件を満たすYPV赤色蛍光体としては、りん割合の上限を60原子%程度とするYPVであり、輝度水準などを犠牲にする必要性が生じていた。
【0066】
以下、YPV赤色蛍光体の性能改善を模索する中で見出した知見を説明する。
【0067】
なお、以下の図10および図11に示す特性は、実用水準を満たす特性を持つ量産試作レベルのYPV赤色蛍光体で認められる特性であり、これまでの技術水準で、電子デバイス用として完成度を極限にまで高められたYPVとみなせる蛍光体の特性である。
【0068】
図10は、従来のYPV赤色蛍光体を、1500℃の大気中で2時間加熱する前(a)と後(b)の残光特性を示す図である。
【0069】
図11は参考のために示した、組成の面で異なる従来のYPV赤色蛍光体の残光特性を示す図であり、(a)と(b)とは、各々、りん割合が67原子%の組成物(Y0.92Eu0.08)(P0.670.33)O4と、りん割合が61原子%の組成物(Y0.96Eu0.04)(P0.610.39)O4のデータである。
【0070】
例えば、図10に示すように、従来から広く知られるY(P,V)O4:Eu3+赤色蛍光体は、少なくとも前記1500℃の熱処理によって、僅かな発光スペクトル変化を伴い短残光化する。
【0071】
図11に示すように、りん割合が67原子%の1/10残光時間は3.4〜3.5msec程度であり、りん割合が61原子%の1/10残光の約3.3〜3.4msecよりも長い。
【0072】
なお、データは省略するが、Eu付活量の違いによる1/10残光時間の大きな違いはほとんど認められていない。
【0073】
図10から判るように、熱処理前の1/10残光時間は3.3〜3.4msecであるのに対して、1500℃熱処理後は3.2〜3.3msecであり、1500℃熱処理によって、3%程度の短残光化が認められる。また、程度の差こそあれ、他のYPV赤色蛍光体でも同様の傾向は認められている。
【0074】
なお、ICP発光分光による蛍光体構成元素の定量分析等では、少なくともりん割合の減少は認められないし、比較的多くの金属不純物の混入なども認められない。
【0075】
通常、YPVが1050〜1350℃の焼成温度で量産試作されることを考慮すると、上記の結果は、過去に長期継続して製造条件の最適化がなされ、完成度の面で十分高められた実用水準のYPV蛍光体でさえ、結晶が不完全であり、今なお、改善の余地を残すことを示唆するものであると考えられる。
【0076】
同時に、徹底的な製造条件の最適化によって、従来、3D−PDP用として実用検討されてきたYPV赤色蛍光体と同等の短残光性が、過去に知られてきたよりも大きなりん割合で実現できる可能性を示唆するものである。
【0077】
また、図8との対比によって、りん割合が60原子%付近のYPVの3%程度の短残光化は、5原子%程度のりん割合の増加によって、熱処理前と同等の短残光性を実現できる可能性を示唆するものとなる。
【0078】
以下、本発明の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体の実施の形態を説明する。
【0079】
本発明の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、Eu3+で付活した希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体であって、波長146nmの真空紫外線で励起したときに蛍光体が放つ赤色光の光成分において、619nm付近の主発光成分のピーク高さに対する614nm付近の副発光成分のピーク高さを第1の副発光成分割合とし、前記主発光成分のピーク高さに対する697nm付近の副発光成分のピーク高さを第2の副発光成分割合としたとき、前記第1の副発光成分割合と前記第2の副発光成分割合が、35.0%以上41.5%未満であることを特徴とする。
【0080】
本発明の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体の好ましい形態では、りんとバナジウムの総原子数に対するりんの原子数割合をりん割合と定義した時、前記りん割合は、62原子%を超え70原子%未満、好ましくは63原子%以上68原子%未満である。より好ましい前記第2の副発光成分割合は36.0%以上であり、さらに好ましくは38.0%以上である。
【0081】
このような赤色光を放つEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、VUV励起下で高輝度を期待できる、60原子%を超え70原子%未満の範囲内の相対的に高いりん割合でもって結晶品位に秀でるので、高い発光性能を発揮し、VUV励起下において、高輝度と短残光性と輝度飽和レスなど、特に3D−PDP用の赤色蛍光体として好ましい特性を兼ね備えるものになる。
【0082】
また、従来と同じりん割合の組成物とした場合には、従来のEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体よりも、相対的に前記第3の副発光成分割合が小さく、赤色純度の面で良好な赤色光を放つ蛍光体になるだけでなく、第2(および第3)の副発光成分割合が小さいために、相対的に短残光性の蛍光体になる。
【0083】
これによって、高輝度と赤色光の良好な色調と短残光性とを兼ね備えるEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を提供できることになる。
【0084】
逆に、所望とする赤色光の色調と残光とを得る場合には、従来のEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体よりも、幾分りん割合が多い組成物として、Eu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を構成することもできる。
【0085】
この時には、先に説明した図6から判るように、VUV励起下での輝度がより高く、総光子数がより多いEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体になるし、イオンの価数の面で不安定なバナジウムの割合が減るので、PDPの製造工程中やPDP駆動に伴う蛍光体劣化の少ないEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体にもなる。さらに、図10から判るように、高密度のVUV励起条件下でも高い輝度水準の赤色光を放つ輝度飽和レスのEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体になる。
【0086】
これによって、安定性と一層の高輝度とを兼ね備えるEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を提供できることになる。
【0087】
本発明の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、実質的に(Ln1-xEux)(Py1-y)O4の化学式で表される化合物であり、Lnは、Sc、Y、およびGdから選ばれ、少なくともYを含む希土類であり、xは、0.01≦x≦0.1、好ましくは0.03≦x≦0.08を満足する数値であることが好ましい。なお、前記yは、0.62<y<0.70、好ましくは0.63≦y<0.68を満足する数値であることが好ましい。
【0088】
このようにすると、輝度が最大となる65〜80原子%のりん割合かこれに近いYPVであるので、相対的にVUV励起下での発光強度が大きく、輝度飽和の少ない赤色蛍光体になる。
【0089】
なお、本発明の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、粒子形状については特に限定されるものではない。実質的に球状の粒子形状を有するものにすると、緻密な蛍光膜を形成し得る蛍光体になるので、発光装置用として好ましいものになる。
【0090】
一方、不規則な形状の粒子が凝集した粒子形状を持つものにすると、あらかじめ混合した原料粉末の固相反応によって比較的容易に製造でき、製造上の特別の配慮を必要としないので、工業生産の面で好ましいものとなる。
【0091】
本発明の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、10分を超える反応時間によって製造された蛍光体であることが好ましい。
【0092】
このような希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、長い反応時間を経て形成されるので、結晶の完全性がより大きいものとなり、先に説明したように、赤色純度の面で良好な赤色光を放ち、短残光性の面でも優れる蛍光体になる。また、例えば、所望とする赤色光の色調と残光とを得る場合には、りん割合を多くでき、安定性と一層の高輝度とを兼ね備え、高密度のVUV励起下でも輝度飽和しにくい蛍光体になる。
【0093】
また、本発明の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、蛍光体が放つ赤色光の1/10残光時間は、3.4msecよりも短く、好ましくは3.3msec以下であることが好ましい。
【0094】
このような希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、3D−PDP用として好ましいものであり、3D−PDPの映像の二重映り現象(クロストーク)を抑制するものになる。
【0095】
また、本発明の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、結晶の完全性が高いものであるので、発揮性能や安定性の面で優れるものとなる。また、従来と同等の残光特性を、比較的高いりん割合で実現することもできるので、輝度および輝度飽和特性の面で優れるものにもなり得る。
【0096】
本発明は、発光スペクトル形状によって特定されるEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体が、上記したような総合的に優れる特性を示すことを見出し、なし得たものである。従って、少なくともりんとバナジウムの双方を含むEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体であれば特に限定されるものではない。例えば、構成元素の一部を他の元素で置換した蛍光体、数ppmから数%オーダーの微量の金属不純物(例えば、Tb)を含む蛍光体、焼結助剤となり得るSiO2などの化合物を少量添加した蛍光体、化学量論的組成から幾分ずれた組成の蛍光体、粒子表面を他の物質でコートした蛍光体など、言うまでもなく様々な変形例がある。
【0097】
次に、本発明の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体の製造方法を説明する。
【0098】
本発明の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、あらかじめ混合した原料粉末を固相反応によって製造することができる。
【0099】
原料としては、希土類を含む物質、りんを含む物質、バナジウムを含む物質から適宜選択すれば足りる。
【0100】
希土類を含む物質としては、金属希土類または希土類化合物から選択できるが、入手や取扱が容易な希土類酸化物を利用することが好ましい。なお、希土類酸化物としては、Sc23、Y23、La23、Eu23、Gd23、Lu23、(Y,Eu)23、(Gd,Eu)23、(Y,Sc,Eu)23、(Y,Gd,Eu)23などがあり、これらの中から適宜選択して利用する。
【0101】
なお、希土類酸化物以外では、希土類炭酸塩、希土類蓚酸塩、希土類硝酸塩、希土類ハロゲン化物などが利用可能である。
【0102】
りんを含む物質としては、金属りんまたはりん化合物から選択できるが、入手および取扱いが容易なりん酸アンモニウム塩類((NH42HPO4など)を用いることが好ましい。
【0103】
なお、上記りん化合物は、りん酸などの液体状のりん化合物も利用できる。バナジウムを含む物質としては、金属バナジウムまたはバナジウム化合物から選択できるが、入手および取扱いが容易な酸化バナジウム(V25など)やバナジン酸のアンモニウム塩(NH4VO3)を用いることが好ましい。
【0104】
なお、希土類、りん、バナジウムの中から選ばれる複数の元素を含んでなる複合化合物も利用できる。前記複合化合物の具体例としては、希土類りん酸塩(YPO4や(Y,Eu)PO4など)、希土類バナジン酸塩(YVO4や(Y,Eu)VO4など)、りん酸バナジウム(VPO3など)などが挙げられる。
【0105】
また、必要に応じて反応促進剤を利用する。反応促進剤は、ホウ素やアルカリ金属を含む物質などから選択でき、例えば、ホウ素化合物(H3BO3やB23など)や、アルカリ金属化合物(特に、アルカリ金属炭酸塩(Li2CO3、Na2CO3、K2CO3ほか)、アルカリ金属硝酸塩(LiNO3、NaNO3、KNO3ほか)、アルカリ金属を含むバナジン酸塩(例えば、NaVO3)、アルカリ金属を含むりん酸塩(例えば、NaH2PO4)など)が利用可能である。
【0106】
次に、化学量論的組成かこれに近い原子割合の蛍光体が得られるよう、上記原料を秤量し、調合し、混合する。
【0107】
混合は乾式混合であっても湿式混合であっても良いが、混合状態が良好な混合原料を得る目的では湿式混合が好ましい。混合原料は、スラリー状、あるいは溶液状として使用することもできる。なお、湿式混合した場合には、その後、乾燥工程を経るなどして、あらかじめ乾燥原料としておくことが好ましい。
【0108】
混合原料については、必要に応じて、仮焼成(分解焼成)を行い、本来不要な元素(例えば、水素、窒素、炭素など)を事前除去する。
【0109】
焼成容器に前記混合原料を仕込み、混合原料を加熱すると、固相反応によって希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体が生成する。
【0110】
本発明の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体の製造方法では、希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体の結晶の完全性が高くなる固相反応であれば特に限定されるものではないが、前記固相反応の反応時間は10分を越えることが好ましく、1時間を越えることがより好ましい。このようにすると反応時間が長いので、結晶の完全性が高くなり、前記したように、色純度の面で良好な赤色光を放ち、短残光性の面でも優れる蛍光体、または、りん割合が比較的多く、安定性と一層の高輝度および耐輝度飽和特性とを兼ね備える蛍光体を合成することになる。
【0111】
このような固相反応を利用する製造方法はオーソドックスな蛍光体の製造方法なので、蛍光体粒子の形状は不規則な形状の粒子が凝集した形状になるが、高度な技術を必要としないので、比較的容易に製造でき、工業生産の面で好ましいものとなる。なお、PDPや冷陰極蛍光ランプ(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)などへの応用を目的として、粒子サイズの比較的小さな蛍光体(中心粒径:1〜5μm)を得る目的では、焼成温度は比較的低温の1050℃以上1300℃未満での製造が望まれる。一方、蛍光ランプや電子管などへの応用を目的として、粒子サイズの比較的大きな蛍光体(中心粒径:5〜20μm)を得る目的では、焼成温度は比較的高温の1300℃以上1600℃未満での製造が望まれる。
【0112】
なお、一般的には、焼成温度を比較的低温の1050℃以上1300℃未満とする場合には、蛍光体原料を十分に反応させるために、比較的長い時間を要し、例えば、5〜20時間である。また、焼成温度を比較的高温の1300℃以上1600℃未満とする場合には、焼成時間は比較的短い時間で足り、例えば、1〜5時間である。
【0113】
また、反応促進剤を用いる時は、本焼成前の原料や仮焼成物や前駆体などに微量または少量(蛍光体1モルに対して、0.01モル%〜30モル%程度)混合する。反応促進剤の添加量を増すにつれて、蛍光体の合成を低い温度でできるようになるが、一方で、反応促進剤を構成する元素が不純物として混入し、所望とする希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体が製造できなくなる恐れが増す。このため、反応促進剤の添加量は、焼成温度を比較的高温の1300℃以上1600℃未満とする場合には、蛍光体1モルに対して、0.1モル%以下の微量であることが好ましく、反応促進剤を用いないことも好ましい。
【0114】
一方、焼成温度を比較的低温の1050℃以上1300℃未満とする場合には、蛍光体1モルに対して、0.1モル%以上100モル%以下の多量であることが好ましい。
【0115】
なお、反応促進剤を用いて焼成した時など、焼成後に不要な物質が生成する場合には、酸、アルカリ、温水などを用いて適宜洗浄処理してこれを除去する。
【0116】
次に、具体的な実施例を説明する。
【0117】
本発明の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体の特性を、比較例を交え、オーソドックスな固相反応で製造する本発明の製造方法とともに説明する。
【0118】
希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体の具体例として、一般的なYPV赤色蛍光体を選択した。
【0119】
YPV赤色蛍光体の原料としては、以下に示す所定量の化合物粉末を用い、都合上、蛍光体組成が、(Y0.92Eu0.08)(P0.670.334となる混合割合とした。
【0120】
酸化イットリウム(Y23):20.92g
酸化ユーロピウム(Eu23):2.82g
りん酸二アンモニウム((NH42HPO4):17.70g
五酸化バナジウム(V25):6.02g
モーターグラインダーを用いて、これら原料を、適量の水(純水)とともに十分湿式混合した。
【0121】
湿式混合後の混合原料を蒸発皿に移し、乾燥機を用いて、120℃で一晩乾燥させた。乾燥後の混合原料を粗解砕した後、500℃の大気中で2時間の仮焼成をした。
【0122】
仮焼成物を、モーターグラインダーを用いて十分解砕し、焼成原料とした。
【0123】
前記焼成原料を蓋付きのアルミナるつぼに移し、箱型電気炉を用いて、1300℃、1400℃、および、1500℃の大気中で2時間焼成して、Eu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体であるY(P,V)O4:Eu3+赤色蛍光体を得た。なお、実験の簡略化のため、後処理については省略した。
【0124】
ここで、1300℃、1400℃、そして、1500℃の大気中で2時間焼成して得たEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、各々、比較例1、比較例2、そして実施例のYPV赤色蛍光体である。
【0125】
図12に、焼成温度を変えて焼成して得たYPV赤色蛍光体のXRDパターンの主ピーク付近の様子を示す。図12には、参考のために、PDF(Powder Diffraction Data)から算出した、りんを含まない化合物YVO4と、バナジウムを含まない化合物YPO4のXRDパターンの主ピーク位置も示した。
【0126】
図12において、(a)、(b)、および(c)は、各々、焼成温度が1300℃、1400℃、および1500℃の時のXRDパターンであり、(d)と(e)は、各々、化合物YVO4と化合物YPO4のXRDパターンの主ピーク位置である。
【0127】
また、図13と図14には、図12にXRDパターンを示したYPVの発光スペクトルと残光特性とを各々示した。図13および図14において、(a)、(b)、および(c)は、各々、焼成温度が1300℃、1400℃、および1500℃の時のデータである。
【0128】
なお、図13の発光スペクトルは、619nm付近の発光ピークを100として規格化したものを拡大してまとめたものである。
【0129】
図12に示すように、焼成温度が低い場合、25.5°付近の主XRDピーク位置は広角側に位置し、主XRDピークは狭角側に比較的大きな肩を持つ形状となる。この結果、XRDピークの半値幅は大きくなる。焼成温度を上げるにつれて、1500℃までの焼成温度では、主XRDピーク位置は狭角側にシフトし、主XRDピークの狭角側に認められる肩は減少し、XRDピークの半値幅は小さくなる。
【0130】
図12と、図13および図14とを対比して判るように、主XRDピーク位置の狭角側シフトと、主XRDピークの狭角側に認められる肩の減少に伴い、前記第2および第3の副発光成分割合は次第に小さくなり、短残光化する。
【0131】
なお、ICP発光分光による組成分析では、1500℃までの焼成温度では、りん割合が仕込み組成よりも若干多い約69原子%の(Y0.92Eu0.08)(P0.690.314にほぼ近い組成となっていたが、焼成温度の違いによる実組成の変化はほとんど認められていない。
【0132】
図12の(d)および(e)に示す、化合物YVO4および化合物YPO4の主XRDピーク位置と、図12の(a)〜(c)に示すデータとの対比から、Y(P,V)O4:Eu3+赤色蛍光体は、例えば、焼成温度が低いなどの理由で反応条件が悪い場合には、YVO4:Eu3+とYPO4:Eu3+の固溶が不十分で結晶が不完全であることが判る。また、図12に示すデータと、図13および図14に示すデータの対比から、Y(P,V)O4:Eu3+赤色蛍光体は、反応条件が悪くて結晶が不完全な場合には、前記第2(および第3の)副発光成分割合が大きくなり、長残光化するといえる。
【0133】
さらに、図14の(c)に示す1500℃で焼成したYPV赤色蛍光体(実施例)は、実際のりん割合が69原子%と比較的多く、図11の(a)に示すりん割合が67原子%の従来のYPV赤色蛍光体(比較例3)よりも大きい残光時間が予想されるにも関わらず、1/10残光時間は約3.3msecであり、前記りん割合が67原子%の従来のYPV赤色蛍光体の1/10残光時間(3.4〜3.5msec)よりも小さなものとなっている。
【0134】
なお、図11の(b)に残光特性を示す従来のYPV赤色蛍光体(比較例4)はりん割合が61原子%であり、1/10残光時間は3.3msec程度の短いものである。
【0135】
これらの結果から、図10に示す従来のYPV赤色蛍光体の高温熱処理に伴う短残光化は、従来のYPV赤色蛍光体が結晶性の面で必ずしも完全なものではなかった証拠となる特性であると考えられる。また、従来から知られてきたYPV赤色蛍光体の発光特性は、YPV赤色蛍光体が本来備える真の特性ではなかった証拠となる特性であるともいえる。
【0136】
なお、このことはY(P,V)O4:Eu3+赤色蛍光体に限定されるものではなく、材料物性の類似性から、程度の差こそあれ、少なくともりんとバナジウムの双方を含むEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体に共通する特性であることは明らかである。
【0137】
また、反応促進剤を用いる製造方法でも、製造ノウハウや製造条件の最適化を徹底的に行うことによって、このようなYPV赤色蛍光体が実現できることも十分予想されることである。
【0138】
なお、このような結晶の完全性が高い希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、結晶の完全性が高いものであるので、発揮性能や安定性の面で優れるものとなる。データは省略するが、例えば、1500℃で2時間の大気中の加熱処理に伴う1/10残光時間の減少は0.1msec未満であり、高温加熱をしても特性変動は小さい。また、X線回折パターンにおいて、25.5°付近の回折角2θでピークを持つ主回折ピークの半値幅が、0.09°、特に、0.08°よりも狭い特徴も有している。
【0139】
また、従来と同等の残光特性を、比較的高いりん割合で実現することもできるので、短残光性を同等とした場合では、輝度および輝度飽和特性の面で優れるものになり得る。
【0140】
図15は、図14の(c)に示す1500℃で焼成したYPV赤色蛍光体の輝度飽和を示す図である。図15において、(a)と(b)は、各々、前記図14の(c)に示す1500℃で焼成したYPV赤色蛍光体と、前記りん割合が61原子%の従来のYPVの輝度飽和特性を示す図である。
【0141】
なお、図15では、りん割合が61原子%の従来の(Y0.96Eu0.04)(P0.610.39)O4との違いをより明示するために、各々のYPV赤色蛍光体を、最も弱いVUVで励起した時の輝度による規格化は行っていない。
【0142】
つまり、先に図15を用いて説明した場合と同様に、強度の異なるVUV(波長146nm)を、YPV赤色蛍光体とBAM青色蛍光体に照射し、BAM青色蛍光体の輝度水準を基準として、まず、りん割合が61原子%の前記従来のYPVの輝度をプロットし、その従来のYPV赤色蛍光体に対する前記1500℃で焼成したYPV赤色蛍光体の輝度水準をプロットした図である。なお、図15は、縦軸を輝度相対値としてまとめたものであるが、縦軸を総光子数とした場合でも同様の傾向が認められている。
【0143】
図15に示すように、前記1500℃で焼成したYPV赤色蛍光体は、りん割合が61原子%の前記従来のYPV(比較例4)に比較して、輝度(および総光子数)が相対的に多く高効率(VUVの赤色光への波長変換効率が良好)である。また、VUVの励起強度を大きくした時の輝度飽和も少なく、高密度のUVU励起下での輝度水準差は一層大きくなる。前記1500℃で焼成したYPV赤色蛍光体で認められるこれらの利点は、比較的多いりん割合に起因すると考えられる。
【0144】
なお、これらの残光特性については、図10および図14に示す通りである。
【0145】
図16に、実施例のYPV赤色蛍光体の分光分布を示す。
【0146】
結晶の完全性が高い実施例の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、理由は不明確ながらも、698nm付近の前記第2の副発光成分割合だけでなく、613nm付近の前記第1の副発光成分割合も、同じりん割合のYPVと比較して、相対的に小さい傾向が観察され、分光分布における、前記第1の副発光成分割合と前記第2の副発光成分割合の一例は、いずれも35.0%以上41.5%未満、特に、38.0%以上41.5%未満の範囲内にあった。
【0147】
参考のため、図17には、図15に示したりん割合が異なる従来のYPV赤色蛍光体の発光スペクトルを元に、横軸をりん割合、縦軸を前記第1の副発光成分割合および前記第2の副発光成分割合としてまとめた。
【0148】
図17において、(a)と(b)は、各々、前記第1の副発光成分割合と前記第2の副発光成分割合とを示している。
【0149】
なお、図17中の斜線部は、前記第1の副発光成分割合と前記第2の副発光成分割合が、いずれも35.0%以上41.5%未満の範囲内となる領域であり、本発明のYPVの分光分布で認められる領域となる。
【0150】
図17から判るように、図13に発光スペクトルを示す従来の製造技術で試作したYPV赤色蛍光体の場合では、りん割合など、YPV赤色蛍光体の組成を変えても、前記第1の副発光成分割合と前記第2の副発光成分割合が、いずれも35.0%以上41.5%未満の範囲内となる発光スペクトルは認められなかった。
【0151】
表1は、念のため、入手し得たYPV赤色蛍光体(比較例5〜14)の、前記第1の副発光成分割合と前記第2の副発光成分割合を同様に調べた結果をまとめた表である。
【0152】
【表1】

【0153】
表1から判るように、入手し得た大半のYPV赤色蛍光体は、前記第1の副発光成分割合は比較的大きく41.5%以上であり、前記第1の副発光成分割合と前記第2の副発光成分割合が、いずれも35.0%以上41.5%未満の範囲内となる条件を満たすものは無かった。
【0154】
なお、図12と実施例との類推から、上記比較例5〜14のYPV赤色蛍光体は、りん割合が50〜70原子%程度のYPV赤色蛍光体であり、結晶性の完全性の面で、実施例ほどでは無いにせよ、図12に示したYPV試作蛍光体よりは良好なYPVであることが推察される。
【産業上の利用可能性】
【0155】
以上説明したように、本発明によれば、高輝度と短残光性を両立し、安定かつ輝度飽和を起こしにくいEu3+付活希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を実現できて、高輝度かつ高色域表示が可能なプラズマディスプレイ装置などの表示装置に有用な発明である。
【符号の説明】
【0156】
10 PDP
20 前面板
21 前面ガラス基板
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
25 誘電体層
26 保護層
30 背面板
31 背面ガラス基板
32 アドレス電極
33 下地誘電体層
34 隔壁
35 蛍光体層
35R 赤色蛍光体層
35G 緑色蛍光体層
35B 青色蛍光体層
36 放電セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Eu3+で付活した希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体を用いた表示装置であって、前記希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体は、波長146nmの真空紫外線で励起したときに蛍光体が放つ赤色光の光成分において、619nm付近の主発光成分のピーク高さに対する614nm付近の副発光成分のピーク高さを第1の副発光成分割合とし、前記主発光成分のピーク高さに対する697nm付近の副発光成分のピーク高さを第2の副発光成分割合としたとき、前記第1の副発光成分割合と前記第2の副発光成分割合が、35.0%以上41.5%未満であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
蛍光体が放つ赤色光の1/10残光時間は、3.4msecよりも短いことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
Eu3+で付活した希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体であって、波長146nmの真空紫外線で励起したときに蛍光体が放つ赤色光の光成分において、619nm付近の主発光成分のピーク高さに対する614nm付近の副発光成分のピーク高さを第1の副発光成分割合とし、前記主発光成分のピーク高さに対する697nm付近の副発光成分のピーク高さを第2の副発光成分割合としたとき、前記第1の副発光成分割合と前記第2の副発光成分割合が、35.0%以上41.5%未満であることを特徴とする希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体。
【請求項4】
りんとバナジウムの総原子数に対するりんの原子数割合をりん割合と定義した時、前記りん割合は、62原子%を超え70原子%未満である請求項3に記載の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体。
【請求項5】
(Ln1-xEux)(Py1-y)O4の化学式で表される化合物で、Lnは、Sc、Y、およびGdの中から選ばれるもので、少なくともYを含む希土類であり、xが0.01≦x≦0.1を満足し、yが0.62<y<0.70を満足することを特徴とする請求項3に記載の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体。
【請求項6】
蛍光体が放つ赤色光の1/10残光時間は、3.4msecよりも短いことを特徴とする請求項3に記載の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体。
【請求項7】
X線回折パターンにおいて、25.5°付近の回折角2θでピークを持つ主回折ピークの半値幅が、0.08°よりも狭いことを特徴とする請求項3に記載の希土類フォスフォバナジン酸塩蛍光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−14679(P2013−14679A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147960(P2011−147960)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】