説明

表示装置及びその製造方法

【課題】表示画素の画素形成領域の略全域に膜厚が均一な発光機能層(有機EL層)が形成された表示パネルを備えた表示装置、及び、当該表示装置を実現するための製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る表示装置は、表示パネル10に配列される各表示画素に設けられる有機EL素子OELの有機EL層16を形成するための有機化合物含有液を塗布する工程において、絶縁性基板11に配設されたバンク18に対応する基板ステージSTGの特定領域Rtmhに設定される温度を、その周辺領域の温度よりも高くなるように温度分布を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及びその製造方法に関し、特に、発光機能材料からなる液状材料を塗布することにより発光機能層が形成された有機エレクトロルミネッセンス素子等の発光素子を有する表示画素を、複数配列した表示パネルを備えた表示装置、及び、該表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータや映像機器、携帯情報機器等のモニタ、ディスプレイとして多用されている液晶表示装置(LCD)に続く次世代の表示デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略記する)や発光ダイオード(LED)等のような自発光素子を2次元配列した発光素子型の表示パネルを備えたディスプレイ(表示装置)の本格的な実用化、普及に向けた研究開発が盛んに行われている。
【0003】
特に、アクティブマトリックス駆動方式を適用した発光素子型ディスプレイにおいては、液晶表示装置に比較して、表示応答速度が速く、視野角依存性もなく、また、高輝度・高コントラスト化、表示画質の高精細化等が可能であるとともに、液晶表示装置のようにバックライトを必要としないので、一層の薄型軽量化が可能であるという極めて優位な特徴を有している。
【0004】
ここで、発光素子型ディスプレイに適用される自発光素子の一例として、周知の有機EL素子の基本構造について簡単に説明する。
図12は、有機EL素子の基本構造を示す概略断面図である。
図12に示すように、有機EL素子は、概略、ガラス基板等の絶縁性基板111の一面側(図面上方側)に、アノード(陽極)電極112、有機化合物等(有機材料)からなる有機EL層(発光機能層)113、及び、カソード(陰極)電極114を順次積層した構成を有している。
【0005】
有機EL層113は、例えば、正孔輸送材料(正孔注入層形成材料)からなる正孔輸送層(正孔注入層)113aと、電子輸送性発光材料からなる電子輸送性発光層(発光層)113bとを積層して構成されている。なお、有機EL層113(正孔輸送層113a及び電子輸送性発光層113b)に適用される正孔輸送材料や電子輸送性発光材料としては、低分子系や高分子系の種々の有機材料が知られている。
【0006】
ここで、低分子系の有機材料の場合、一般に、有機EL層における発光効率は比較的高いものの、製造プロセスにおいて蒸着法を適用する必要があるため、画素形成領域のアノード電極上にのみ当該低分子系の有機膜を選択的に薄膜形成する際に、上記アノード電極以外の領域への低分子材料の蒸着を防止するためのマスクを用いる必要があり、当該マスクの表面にも低分子材料が付着することになるため、製造時の材料ロスが大きいうえ、画素の高精細化が困難であるという問題を有している。
【0007】
一方、高分子系の有機材料を適用した場合には、有機EL層における発光効率は上記低分子系の有機材料を適用した場合に比較して低くなるものの、湿式成膜法としてインクジェット法(液滴吐出法)等を適用することができるので、画素形成領域(アノード電極上)にのみ選択的に上記有機材料の溶液を塗布して、効率的かつ良好に有機EL層(正孔輸送層及び電子輸送性発光層)の薄膜を形成することができる。
【0008】
このような高分子系の有機材料からなる有機EL層を備えた有機EL素子の製造プロセスにおいては、概略、ガラス基板等の絶縁性基板(パネル基板)上の、各表示画素が形成される領域(画素形成領域)ごとにアノード電極(陽極)を形成した後、隣接する表示画素との境界領域に絶縁性の樹脂材料等からなる隔壁(バンク)を形成して、当該隔壁に囲まれた領域を画素形成領域として画定し、インクジェット装置を用いて、当該領域に高分子系の有機材料からなる正孔輸送材料を溶媒に分散、又は、溶解させた液状材料を塗布した後、加熱乾燥処理を行うことにより、図12に示した正孔輸送層113aを形成する工程と、高分子系の有機材料からなる電子輸送性発光材料を溶媒に分散、又は、溶解させた液状材料を塗布した後、加熱乾燥処理を行うことにより、図12に示した電子輸送性発光層113bを形成する工程を順次施すことにより、有機EL層113が形成される。
【0009】
すなわち、インクジェット法等を適用した製造方法においては、上述した隔壁により各画素形成領域を画定して、高分子系有機材料からなる液状材料を塗布する際に、隣接する画素形成領域に異なる色の液状材料が混入して表示画素間で発光色の混合(混色)等を生じる現象を防止する機能を有している。このような隔壁を備えた有機EL素子(表示パネル)の構成や、有機EL層(正孔輸送層及び電子輸送性発光層)を形成するためにインクジェット法を適用した製造方法については、例えば、特許文献1等に詳しく説明されている。
【0010】
そして、上述したような素子構造を有する有機EL素子においては、図12に示すように、直流電圧源115からアノード電極112に正電圧、カソード電極114に負電圧を印加することにより、正孔輸送層113aに注入されたホールと電子輸送性発光層113bに注入された電子が有機EL層113内で再結合する際に生じるエネルギーに基づいて光(励起光)hνが放射される。このとき、光hνの発光強度は、アノード電極112とカソード電極114間に流れる電流量に応じて制御される。
【0011】
ここで、アノード電極112及びカソード電極114のいずれか一方を光透過性を有する電極材料を用いて形成し、他方を遮光性及び反射特性を有する電極材料を用いて形成することにより、図12に示したように、絶縁性基板111の他面側(図面下方)に光hνを放射するボトムエミッション型の発光構造を有する有機EL素子や、絶縁性基板111の一面側(図面上方)に光hνを放射するトップエミッション型の発光構造を有する有機EL素子を実現することができる。
【0012】
【特許文献1】特開2003−257656号公報 (第4頁〜第6頁、図2〜図5、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述したようなインクジェット法等を適用した有機EL層(正孔輸送層及び電子輸送性発光層)の製造方法においては、各表示画素(画素形成領域)間の境界領域に突出して設けられた隔壁表面の特性(撥水性)や、有機材料からなる液状材料(塗布液)の表面張力に起因して、図13に示すように、隔壁121の側面に沿って塗布液LQDの液面端部が迫り上がる現象が生じるため、有機材料の塗布領域(画素形成領域)の中央領域においては有機EL層が薄く形成されるのに対して、周辺領域においては有機EL層が厚くなり、画素全体として厚さが不均一に形成されることになる。なお、図13は、従来技術における有機EL素子の製造プロセスの問題点を説明するための概略図である。
【0014】
このように、画素形成領域内に形成される有機EL層の膜厚が当該領域の周辺と中央で異なると、発光動作時に供給される発光駆動電流が膜厚の比較的薄い中央領域に集中して流れやすくなることになるため、当該中央領域においてのみ上記光hνが放射されることになり、表示パネル(又は、画素形成領域)に占める発光領域の割合(いわゆる、開口率)が低下して表示画質が劣化するとともに、上記中央領域に流れる発光駆動電流が過大となるため、上記中央領域での有機EL層(有機EL素子)の劣化が著しくなり表示パネルの信頼性や寿命が低下するという問題を有していた。
【0015】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑み、表示画素の画素形成領域の略全域に膜厚が均一な発光機能層(有機EL層)が形成された表示パネルを備えた表示装置、及び、当該表示装置を実現するための製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の発明は、表示素子を備える表示パネルを備えた表示装置の製造方法において、
表示画素の形成領域を画定する基板の一面側に形成された隔壁の一部の領域を第1の温度に設定するとともに、当該領域以外の前記表示画素の形成領域を、前記第1の温度よりも低い第2の温度に設定する温度分布設定工程と、
前記表示画素の形成領域に電荷輸送性材料を含む含有液を塗布する含有液塗布工程と、
を含むことを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の表示装置の製造方法において、前記隔壁の前記一部の領域は、前記表示画素の形成領域が角となる領域であることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の表示装置の製造方法において、前記含有液塗布工程は、前記隔壁に囲まれた領域の前記複数の前記表示画素の形成領域に対して、インクジェット法又はノズルコート法を用いて前記含有液を塗布することを特徴とする。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の表示装置の製造方法において、前記隔壁は、少なくとも一部の表面が金属単体又は合金により形成されていることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の表示装置の製造方法において、前記隔壁は、前記表示素子に直接的又は間接的に接続される配線層の一部をなしていることを特徴とする。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の表示装置の製造方法において、前記表示画素は、各々トランジスタを有する発光駆動回路を備え、前記表示素子は、前記発光駆動回路に接続されていることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の表示装置の製造方法において、前記電荷輸送性材料は高分子系の有機材料からなり、前記表示素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする。
請求項8記載の発明に係る表示装置は、請求項1乃至7のいずれかに記載の表示装置の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る表示装置及びその製造方法においては、発光素子を有する各表示画素の画素形成領域の略全域に膜厚が均一な電荷輸送層が形成された表示パネルを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る表示装置及びその製造方法について、実施の形態を示して詳しく説明する。ここで、以下に示す実施形態においては、表示画素の一部を構成する発光素子として、高分子系の有機材料からなる有機EL層を備えた有機EL素子を適用した場合について説明する。また、表示パネルをアクティブマトリックス型の駆動方式で表示駆動するために、各表示画素には、有機EL素子を所望の輝度階調で発光させるための発光駆動回路が設けられている。なお、発光駆動回路は、例えば1乃至複数のトランジスタ等の機能素子と配線層を備えており、トランジスタの形成工程で施される熱処理に適用される温度条件が、有機EL素子の有機EL層の有機材料の特性を維持することができる温度範囲(耐熱温度)よりも高いため、トランジスタは、各表示画素の有機EL素子よりも先の工程で形成され、有機EL素子よりも絶縁性基板側に設けられている。
【0022】
(表示パネル)
まず、本発明に係る表示装置に適用される表示パネル及び表示画素について説明する。
図1は、本発明に係る表示装置に適用される表示パネルの画素配列状態の一例を示す要部概略平面図であり、図2は、本発明に係る表示装置の表示パネルに2次元配列される各表示画素(発光素子及び発光駆動回路)の回路構成例を示す等価回路図である。なお、図1に示す平面図においては、説明の都合上、表示パネル(絶縁性基板)を視野側から見た、各表示画素(色画素)に設けられる画素電極の配置と、上述した従来技術に示した隔壁(本実施形態においては、「バンク」と呼称する)の配設構造との関係のみを示し、各表示画素の有機EL素子(発光素子)を発光駆動するために、各表示画素に設けられる図2に示す発光駆動回路DC内のトランジスタ等の表示を省略した。また、図1においては、画素電極及びバンクの配置を明瞭にするために、便宜的にハッチングを施して示した。
【0023】
本発明に係る表示装置(表示パネル)は、図1に示すように、ガラス基板等の絶縁性基板11の一面側に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色からなる色画素PXr、PXg、PXbが図面横方向に順次繰り返し複数(3の倍数)配列されるとともに、図面縦方向に同一色の色画素PXr、PXg、PXbが複数配列されている。ここでは、隣接する3色の色画素PXr、PXg、PXbを一組として一の表示画素PIXがなされている。
【0024】
表示パネル10は、各々、絶縁性基板11の一面側から突出し、柵状又は格子状の平面パターンを有して配設されたバンク(隔壁)18により、絶縁性基板11の一面側に2次元配列された複数の表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)のうち、図面縦方向に配列された同一色の複数の色画素PXr、又は、PXg、PXbの画素形成領域からなる領域が画定される。また、当該領域に含まれる複数の色画素PXr、又は、PXg、PXbが形成される各画素形成領域には、各々、画素電極15が形成されている。
【0025】
表示画素PIXの各色画素PXr、PXg、PXbの具体的な回路構成としては、例えば図2に示すように、絶縁性基板11上に1乃至複数のトランジスタ(例えば、アモルファスシリコン薄膜トランジスタ等)からなる発光駆動回路DCと、当該発光駆動回路DCにより生成される発光駆動電流が、上記画素電極15に供給されることにより発光駆動する有機EL素子(発光素子)OELと、を備えている。
【0026】
発光駆動回路DCは、例えば図2に示すように、表示パネル10(絶縁性基板11)の行方向(図面左右方向)に配設された供給電圧ライン(例えばアノードライン)Laと、列方向(図面上下方向)に配設された共通電圧ライン(例えばカソードライン)Lcとの各交点近傍に配置されている。
【0027】
供給電圧ラインLaは、例えば所定の高電位電源に直接又は間接的に接続され、各表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)に設けられる有機EL素子OELの画素電極(例えばアノード端子、アノード電極)に表示データに応じた階調電流Idataが流れるための所定の高電圧(供給電圧Vsc)を印加し、共通電圧ラインLcは、例えば所定の低電位電源に直接又は間接的に接続され、有機EL素子OELの対向電極(例えばカソード端子、カソード電極)に所定の低電圧(共通電圧Vcom;例えば、接地電位Vgnd)を印加するように設定されている。
【0028】
発光駆動回路DCは、例えば図2に示すように、ゲート端子が表示パネル10(絶縁性基板11)の行方向に配設された選択ラインLsに、ドレイン端子が上記供給電圧ラインLaに、ソース端子が接点N11に各々接続されたトランジスタTr11と、ゲート端子が選択ラインLsに、ソース端子が表示パネル10の列方向に配設されたデータラインLdに、ドレイン端子が接点N12に各々接続されたトランジスタTr12と、ゲート端子が接点N11に、ドレイン端子が供給電圧ラインLaに、ソース端子が接点N12に各々接続されたトランジスタTr13と、接点N11及び接点N12間(トランジスタTr13のゲート−ソース間)に接続されたコンデンサCsと、を備えている。ここでは、トランジスタTr11〜Tr13はいずれもnチャネル型薄膜トランジスタである。
【0029】
有機EL素子OELは、アノード端子(画素電極15)が上記発光駆動回路DCの接点N12に接続され、カソード端子(対向電極)が表示パネル10の列方向に配設された共通電圧ラインLcに接続されている。また、図2において、CsはトランジスタTr13のゲート−ソース間に形成される寄生容量(保持容量)、又は、該ゲート−ソース間に付加的に形成される補助容量である。
【0030】
なお、図2に示した発光駆動回路DCにおいて、選択ラインLsは、図示を省略した選択ドライバに接続され、所定のタイミングで表示パネル10の行方向に配列された複数の表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)を選択状態に設定するための選択信号Sselが印加される。また、供給電圧ラインLaは、図示を省略した電源ドライバに接続され、上記選択信号Sselと同期したタイミングで同じ行に配列された表示画素PIXに所定の供給電圧Vscが印加される。データラインLdは、図示を省略したデータドライバに接続され、上記表示画素PIXの選択状態に同期するタイミングで表示データに応じた階調電流Idataが供給される。
【0031】
そして、このような回路構成を有する発光駆動回路DCを備えた表示画素PIX(表示パネル10)における駆動制御動作は、まず、書込動作期間において、図示を省略した選択ドライバから選択ラインLsに対して、選択レベル(ハイレベル)の選択信号Sselを印加するとともに、該選択信号Sselに同期して図示を省略した電源ドライバから反転極性を有するローレベルの供給電圧Vscを供給電圧ライン(アノードライン)Laに対して印加する。また、このタイミングに同期して、図示を省略したデータドライバから表示データに応じた電流値の階調電流IdataがデータラインLdを流れるように制御する。つまり、データドライバは、表示データに応じた階調電流Idataの電流値を制御するドライバであり、固定電圧である供給電圧Vscに対してデータラインLdの電位を低くして、表示画素PIX(発光駆動回路DC)側からデータラインLd方向に階調電流Idataを引き抜くように流すものとする。
【0032】
書込動作時に選択ドライバから出力された選択信号Sselにより、発光駆動回路DCのトランジスタTr11及びTr12がオン動作して、ローレベルの供給電圧Vscが接点N11に印加されるとともに、階調電流Idataの引き込み動作によりトランジスタTr12を介してローレベルの供給電圧Vscよりも低電位の電圧レベルが接点N12に印加され、トランジスタTr13にはデータドライバで設定された階調電流Idataが強制的に流されることになる。nチャネル型トランジスタでは一般にドレイン−ソース間を流れる電流の電流値は、ゲート−ソース間の電位に依存する。このとき、トランジスタTr13では、階調電流Idataの電流値に応じた電位差が接点N11及びN12間(トランジスタTr13のゲート−ソース間)に自動的に設定されることになる。
【0033】
このとき、コンデンサCsには、接点N11及びN12間に生じた電位差に対応する電荷が蓄積され、電圧成分として保持される(充電される)。この蓄積された電荷の量は、書込動作時にトランジスタTr13のドレイン−ソース間を流れる階調電流Idataの電流値によって自動的に設定される。また、このとき、ローレベルの供給電圧Vscは、共通電圧ライン(カソードライン)Lcを介してカソード端子に印加される共通電位Vcom(接地電位Vgnd)以下なので、階調電流Idataは、供給電圧ラインLaから、トランジスタTr13のドレイン−ソース間を経由して、有機EL素子OELに流れることなくデータラインLdに流れるため、書込動作時にトランジスタTr13のドレイン−ソース間を流れる階調電流Idataの電流値は、書込動作時にデータラインLdに流れる階調電流Idataの電流値と一致する。したがって、有機EL素子OELには、順バイアス電圧が印加されないため、書込動作時に有機EL素子OELには発光駆動電流が流れず、発光動作は行われない。
【0034】
次いで、発光動作期間においては、選択ドライバから選択ラインLsに対して、非選択レベル(ローレベル)の選択信号Sselを印加するとともに、電源ドライバから供給電圧ラインLaに対して、ハイレベルの供給電圧Vscを印加する。また、このタイミングに同期して、データドライバによる階調電流Idataの引き抜き動作を停止する。
【0035】
これにより、トランジスタTr11及びTr12がオフ動作して、接点N11への供給電圧Vscの印加が遮断されるとともに、接点N12への階調電流Idataの引き込み動作に起因する電圧レベルの印加が遮断されるので、コンデンサCsは、上述した書込動作において蓄積された電荷を保持する。
【0036】
このように、コンデンサCsが書込動作時に蓄積された電荷(充電電圧)を保持することにより、接点N11及びN12間(トランジスタTr13のゲート−ソース間)の電位差が保持されることになり、トランジスタTr13が階調電流Idataの電流値に応じた電流値の電流を流すことができるような状態を維持する。また、供給電圧ラインLaには、共通電圧Vcom(接地電位Vgnd)よりも高い電圧レベルで且つ、発光動作期間にトランジスタTr13を流れる電流が飽和電流となるようにドレイン−ソース間電位差が十分高くなるような所定の電圧値の供給電圧Vscが印加されると、トランジスタTr13は、書込動作時に蓄積された電荷によるゲート−ソース間電位差によって、書込動作時に流れる階調電流Idataの電流値に応じた発光駆動電流を有機EL素子OELに順バイアス方向に流し、有機EL素子OELは、階調電流Idataひいては表示データにしたがった輝度で発光動作する。
【0037】
すなわち、コンデンサCsが、書込動作時に蓄積された充電電圧を発光動作時まで保持しているので、トランジスタTr13は、上記書込動作時においてデータドライバによって制御されていた階調電流Idataを流す状態を、発光動作時にトランジスタTr12がオフ状態となってデータドライバと電気的な接続を絶たれても、保持し続けることになるため、発光動作時に有機EL素子OELに流れる発光駆動電流の電流値は、上記階調電流Idataの電流値にしたがうこととなり、有機EL素子OELは次の書込動作時まで表示データに応じた所望の輝度階調で発光する動作を継続する。
【0038】
そして、このような一連の駆動制御動作を、表示パネル10に2次元配列された全ての表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)について、例えば、各行ごとに順次繰り返し実行することにより、所望の画像情報を表示する画像表示動作を実行することができる。
【0039】
(表示画素のデバイス構造)
次いで、上述したような回路構成を有する表示画素(発光駆動回路及び有機EL素子)の具体的なデバイス構造(平面レイアウト及び断面構造)について説明する。
図3は、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)に適用可能な表示画素の一例を示す平面レイアウト図であり、図4は、本実施形態に係る表示画素の平面レイアウトの要部詳細図である。ここでは、図1に示した表示画素PIXの赤(R)、緑(G)、青(B)の各色画素PXr、PXg、PXbのうちの、特定の一の色画素の平面レイアウトを示す。なお、図3においては、発光駆動回路DCの各トランジスタ及び配線層等が形成された層を中心に示し、図4においては、図3に示した平面レイアウトのうち、共通電圧ラインLcの下層に形成される各トランジスタ及び配線層等を具体的に示す。また、図4において、丸数字は、各導電層(配線層を含む)の上下の順を表し、数字が小さいほど下層側(絶縁性基板11側)に形成され、大きいほど上層側(視野側)に形成されていることを示す。また、図5、図6は、各々、図3に示した平面レイアウトを有する表示画素PIXにおけるA−A断面及びB−B断面を示す概略断面図である。
【0040】
図2に示した表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)は、具体的には、絶縁性基板11の一面側に設定された画素形成領域(各色画素PXr、PXg、PXbの形成領域)Rpxにおいて、図3に示した平面レイアウトの上方及び下方の縁辺領域にX方向(左右方向)に延在するように選択ラインLs及び供給電圧ラインLaが各々配設されるとともに、これらのラインに直交するように、上記平面レイアウトの左方及び右方の縁辺領域にY方向(上下方向)に延在するようにデータラインLd及び共通電圧ラインLcが各々配設されている。
【0041】
ここで、図3、図4に示すように、供給電圧ラインLaは、共通電圧ラインLcよりも下層側(絶縁性基板11側)に設けられ、選択ラインLs及びデータラインLdは、供給電圧ラインLaよりも下層側に設けられている。選択ラインLsは、トランジスタTr11〜Tr13のソース、ドレインを形成するためのソース、ドレインメタル層をパターニングすることによってソース、ドレインとともに形成される。データラインLdは、トランジスタTr11〜Tr13のゲートを形成するためのゲートメタル層をパターニングすることによってゲートとともに形成される。
【0042】
すなわち、表示画素PIXは、図5、図6に示すように、絶縁性基板11上に表示画素PIX内の発光駆動回路DCの複数のトランジスタTr11〜Tr13やコンデンサCs、及び、選択ラインLsやデータラインLdを含む各種配線層が設けられ、当該トランジスタTr11〜Tr13及び配線層を被覆するように順次形成された保護絶縁膜13及び平坦化膜14を介して、その上層に、上記発光駆動回路DCに接続されて所定の発光駆動電流が供給される画素電極(例えばアノード電極)15、有機EL層16、及び、共通電圧Vcomが印加される対向電極(例えばカソード電極)17からなる有機EL素子OELが形成されている。
【0043】
また、発光駆動回路DCは、より具体的には、図3、図4に示すように、図2に示したトランジスタTr11が選択ラインLsに沿ってX方向に延在するように配置され、トランジスタTr12がデータラインLdに沿ってY方向に延在するように配置され、トランジスタTr13が共通電圧ラインLcに沿ってY方向に延在するように配置されている。
【0044】
特に、トランジスタTr11及びTr13は、例えば、図3〜図5に示すように、平坦化膜14上に形成される共通電圧ラインLcの下層に配置されて、平面的に重なるように形成されている。ここで、各トランジスタTr11〜Tr13は、周知の電界効果型トランジスタ構造を有し、各々、絶縁性基板11上に形成されたゲート電極Tr11g〜Tr13gと、ゲート絶縁膜12を介して各ゲート電極Tr11g〜Tr13gに対応する領域に形成された半導体層SMCと、該半導体層SMCの両端部に延在するように形成されたソース電極Tr11s〜Tr13s及びドレイン電極Tr11d〜Tr13dと、を有している。
【0045】
なお、各トランジスタTr11〜Tr13のソース電極とドレイン電極が対向する半導体層SMC上には当該半導体層SMCへのエッチングダメージを防止するための酸化シリコン又は窒化シリコン等のブロック層BLが形成され、また、ソース電極とドレイン電極が接触する半導体層SMC上には、当該半導体層SMCとソース電極及びドレイン電極とのオーミック接続を実現するための不純物層OHMが形成されている。トランジスタTr11〜Tr13のゲート電極Tr11g〜Tr13gはいずれも同一のゲートメタル層をパターニングすることによって形成されている。トランジスタTr11〜Tr13のソース電極Tr11s〜Tr13s及びドレイン電極Tr11d〜Tr13dはいずれも同一のソース、ドレインメタル層をパターニングすることによって形成されている。
【0046】
そして、図2に示した発光駆動回路DCの回路構成に対応するように、トランジスタTr11は、図3、図4に示すように、ゲート電極Tr11gがゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールHLaを介して選択ラインLsに接続され、同ソース電極Tr11sがゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールHLbを介してコンデンサCsの一端側(接点N11側)の電極Ecaに接続され、同ドレイン電極Tr11dが供給電圧ラインLaの配線層(下層配線層)La1と一体的に形成されている。
【0047】
また、トランジスタTr12は、図3〜図5に示すように、ゲート電極Tr12gがコンタクトホールHLaを介して選択ラインLsに接続され、同ソース電極Tr12sがゲート絶縁膜12に設けられたコンタクトホールHLcを介してデータラインLdに接続され、同ドレイン電極Tr12dがコンデンサCsの他端側(接点N12側)の電極Ecbと一体的に形成されている。
【0048】
トランジスタTr13は、図3〜図5に示すように、ゲート電極Tr13gがコンデンサCsの一端側(接点N11側)の電極Ecaと一体的に形成され、同ソース電極Tr13sがコンデンサCsの他端側(接点N12側)の電極Ecbと一体的に形成され、同ドレイン電極Tr13dが供給電圧ラインLaと一体的に形成されている。
【0049】
また、コンデンサCsは、トランジスタTr13のゲート電極Tr13gと一体的に形成された一端側の電極Ecaと、ソース電極Tr13sと一体的に形成された他端側の電極Ecbと、がゲート絶縁膜12を介して対向して延在してなしている。
さらに、トランジスタTr13のソース電極Tr13s(コンデンサCsの電極Ecb)上の保護絶縁膜13及び平坦化膜14には、図5に示すように、コンタクトホールHLdが形成され、当該ソース電極Tr13sと有機EL素子OELの画素電極15とが電気的に接続されるように、金属材料(コンタクトメタルMTL)が埋め込まれている。
【0050】
供給電圧(アノードライン)Laは、図3、図4、図6に示すように、例えば下層側の配線層(下層配線層)La1及び上層側の配線層(上層配線層)La2の2層の積層配線構造を有し、下層側の配線層La1は、ゲート絶縁膜12上に延在して、上記トランジスタTr11のドレイン電極Tr11d、及び、トランジスタTr13のドレイン電極Tr13dと一体的に形成されている。また、上層側の配線層La2は、保護絶縁膜13及び平坦化膜14に形成された配線用溝部に埋め込まれて、上記下層配線層La1と電気的に接続されるとともに、図1、図3の左右方向(行方向)に配設されており、上面が窒化シリコン等のキャップ層21によって絶縁されている。
【0051】
そして、各画素形成領域Rpxの平坦化膜14上には、図5、図6に示すように、例えばアノード電極となる画素電極15、正孔輸送層16a(電荷輸送層)及び電子輸送性発光層16b(電荷輸送層)からなる有機EL層16、及び、例えばカソード電極となる対向電極17を順次積層した有機EL素子が設けられている。ここで、表示パネル10が各表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の有機EL層16において発光した光を、発光駆動回路DCが形成されている絶縁性基板11を介して出射するボトムエミッション構造の場合、画素電極15が光透過性を有し、対向電極17が光反射特性を有することになる。また、表示パネル10が表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の有機EL層16において発光した光を、後述する封止基板20を介して出射するトップエミッション構造の場合、画素電極15が少なくとも光反射特性を有し、対向電極17が光透過性を有することになり、画素電極15は、光反射特性を有する単層の導電層からなる電極構造を有するものであってもよいし、後述する製造方法において説明するように、例えば反射金属層と透明な酸化金属層からなる積層構造を有しているものであってもよい。
【0052】
また、各画素形成領域Rpx間(厳密には、各表示画素PIXの有機EL素子OELの形成領域相互の境界領域)には、有機EL素子OELの形成領域(厳密には、有機EL層16の形成領域)を画定するためのバンク(隔壁)18が平坦化膜14(絶縁性基板11)から突出するように設けられている。ここで、本実施形態においては、当該バンク18は、例えば、図5、図6に示すように、各画素形成領域Rpx間の層間絶縁膜としての機能も果たす下層側の下地層18xと、導電性材料からなる上層側のバンクメタル部18a(共通電圧ライン(カソードライン)Lc)からなる積層構造を有している。
【0053】
バンク18は、より具体的には、隣接する表示画素PIX間の境界領域付近に露出する平坦化膜14上から、有機EL素子OELの画素電極15上に一部が延在するようにシリコン窒化膜(SiN)等からなる下地層18xが設けられ、当該下地層18x上に、導電性材料(例えば、金属材料)からなるバンクメタル部18aが突出するように積層形成されている。
【0054】
特に、本実施形態においては、図1に示したように、上記積層構造を有するバンク18を表示パネル10(絶縁性基板11)上に柵状又は格子状の平面パターンを有するように配設することにより、列方向(図面上下方向)に配列された複数の表示画素PIXの画素形成領域(有機EL素子OELの有機EL層16の形成領域)が画定されるとともに、バンク18のバンクメタル部18aにより、表示パネル10の全域に配列された表示画素PIX(有機EL素子OEL)の各々に所定の電圧(共通電圧Vcom)を一括して印加することができる配線層(共通電圧ラインLc)として機能することができる。
【0055】
すなわち、図5、図6に示すように、バンクメタル部18aを備えたバンク18上に、有機EL素子OELの対向電極(カソード電極)17が延在するように形成されるとともに、当該対向電極17がバンク18のバンクメタル部18aと電気的に接続するように接合されることにより、バンク18(バンクメタル部18a)が共通電圧ラインLcを兼ねて、共通のカソードラインとして適用することができる。
なお、上記発光駆動回路DC、有機EL素子OEL及びバンク18が形成された絶縁性基板11上には、図5、図6に示すように、透明な封止樹脂層19を介して、絶縁性基板11に対向するようにガラス基板等からなる封止基板20が接合されている。
【0056】
そして、このような表示パネル10においては、例えば、表示パネル10の下層(有機EL素子OELの絶縁性基板11側の層)に設けられたトランジスタTr11〜Tr13やコンデンサCs、選択ラインLsやデータラインLd、供給電圧ライン(アノードライン)La等の配線層からなる発光駆動回路DCにおいて、データラインLdを介して供給された表示データに応じた階調電流Idataに基づいて、所定の電流値を有する発光駆動電流がトランジスタTr13のドレイン−ソース間に流れ、当該トランジスタTr13(ソース電極Tr13s)からコンタクトホールHLd(コンタクトメタルMTL)を介して、有機EL素子OELの画素電極15に供給されることにより、各表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の有機EL素子OELが上記表示データに応じた所望の輝度階調で発光動作する。
【0057】
このとき、本実施形態に示した表示パネル10、つまり、画素電極15が光反射特性を有し、対向電極17が光透過性を有する場合(すなわち、有機EL素子OELがトップエミッション型である場合)においては、各表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の有機EL層16において発光した光は、光透過性を有する対向電極17を介して直接、あるいは、光反射特性を有する画素電極15で反射して、絶縁性基板11(表示パネル)の一面側(図5、図6の図面上方)に出射される。
【0058】
一方、表示パネルに設けられる有機EL素子OELの画素電極15が光透過性を有し、対向電極17が光反射特性を有する場合、すなわち、有機EL素子OELがボトムエミッション型である場合においては、各表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の有機EL層16において発光した光は、光透過性を有する画素電極15を介して直接、あるいは、光反射特性を有する対向電極17で反射して、絶縁性基板11(表示パネル)の他面側(図5、図6の図面下方)に出射される。
【0059】
なお、本実施形態に係る表示画素においては、図3、図4に示したように、発光駆動回路DCのトランジスタTr11及びTr13のみを、共通電圧ラインLcのバンク18(バンクメタル部18a)の下層に形成したデバイス構造を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、全て又はほとんどのトランジスタTr11〜Tr13及び配線層等を、表示画素PIXの画素形成領域Rpxを画定するバンク18の下層に配置されるように設計レイアウトを行うものであってもよく、この場合には、上述したトップエミッション型の有機EL素子OELにおいて、有機EL層16において発光した光を、発光駆動回路DCのトランジスタTr11〜Tr13等に遮断(遮光)されることなく、あるいは、遮光される光の量を抑制して、絶縁性基板11側に放射させることができ、十分な開口率を有する表示パネルを実現することができる。
【0060】
(表示装置の製造方法)
次に、上述した表示装置(表示パネル)の製造方法について説明する。
図7乃至図9は、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法の一例を示す工程断面図である。ここで、図7乃至図9においては、図3に示したX1−X1断面における工程断面図を示す。図10は、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法における加熱乾燥処理を説明するための概略構成図である。なお、以下の製造方法においては、上述したトップエミッション型の発光構造を有する表示パネルを備えた表示装置について説明するが、ボトムエミッション型の発光構造を有する表示パネルについても、同等の製造方法を踏襲して製造することができる。図10中の有機化合物含有液の塗布ラインは、インクジェット装置やノズルプリンティング装置のヘッドを移動しながら、バンク18に囲まれた画素形成領域Rpx、画素形成領域Rpxの端部に位置するバンク18が角になっている特定領域Rtmh、さらには、基板ステージSTGまで有機化合物含有液を塗布している位置であり、このようにヘッドが画素形成領域Rpxを越えた直後で塗布を停止せずに、画素形成領域Rpxを越えて連続して塗布することによって一定量の有機化合物含有液を画素形成領域Rpx全域にわたって安定して吐出することができる。
【0061】
上述したような表示装置(表示パネル)の製造方法は、まず、図7(a)に示すように、ガラス基板等の絶縁性基板11の一面側(図面上面側)に設定された表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)の画素形成領域Rpxに、発光駆動回路DCのトランジスタTr11〜Tr13やコンデンサCs、各種配線層等を形成する。具体的には、絶縁性基板11上に、ゲート電極Tr11g〜Tr13g、及び、ゲート電極Tr13gと一体的に形成されるコンデンサCsの一方側の電極Eca、データラインLdを同一のゲートメタル層をパターニングすることによって形成し、その後、絶縁性基板11の全域にゲート絶縁膜12を被覆形成する。
【0062】
次いで、ゲート絶縁膜12上の上記各ゲート電極Tr11g〜Tr13gに対応する領域に、例えば、アモルファスシリコンやポリシリコン等からなる半導体層SMCを形成し、当該半導体層SMCの両端部にオーミック接続のための不純物層OHMを介してソース電極Tr11s〜Tr13s及びドレイン電極Tr11d〜Tr13dを形成する。このとき、同一のゲートメタル層をパターニングすることによってソース電極Tr13s及びドレイン電極Tr12dと接続されたコンデンサCsの他方側の電極Ecb、選択ラインLs(図6参照)、ドレイン電極Tr11d及びTr13dと接続された供給電圧ラインLaの下層配線層La1(図6参照)を同時に形成する。
【0063】
ここで、ソース電極Tr11s〜Tr13s及びドレイン電極Tr11d〜Tr13d並びに選択ラインLsは、配線抵抗を低減し、かつ、マイグレーションを低減する目的で、例えば、アルミニウム合金と遷移金属からなる積層配線構造を有しているものであってもよい。
【0064】
次いで、図7(b)に示すように、上記トランジスタTr11〜Tr13及びコンデンサCs、選択ラインLs、供給電圧ラインLaの下層配線層La1を含む絶縁性基板11の一面側全域を被覆するように、窒化シリコン(SiN)等からなる保護絶縁膜(パッシベーション膜)13及び絶縁性材料等からなる平坦化膜14を順次形成した後、当該平坦化膜14及び保護絶縁膜13を貫通して、トランジスタTr13(発光駆動トランジスタ)のソース電極Tr13s(又は、コンデンサCsの他方側の電極Ecb)の上面が露出するコンタクトホールHLd、及び、供給電圧ラインLaの下層配線層La1の上面が露出する配線用溝部(図示を省略)を同時に、又は、順次形成する。
【0065】
ここで、保護絶縁膜13及び平坦化膜14のうち、少なくとも平坦化膜14を、例えば半導体製造プロセス等における露光工程(フォトリソグラフィ技術)で多用される感光性の樹脂材料を適用して形成することにより、上記コンタクトホールHLdや供給電圧ラインLaの配線用溝部に対応した所定のパターンを有するフォトマスクを用いて平坦化膜14を露光処理してパターニングした後、当該平坦化膜14をマスクにして下層の保護絶縁膜13をエッチング除去して、平坦化膜14及び保護絶縁膜13を貫通する上記コンタクトホールHLdや供給電圧ラインLaの配線用溝部を形成することができる。
【0066】
次いで、図7(c)に示すように、上記コンタクトホールHLdにコンタクトメタルMTLを埋め込むと同時に配線用溝部に供給電圧ラインLaの上層配線層La2を形成する導電性材料(金属材料等)を埋め込んだ後、上層配線層La2上部にキャップ層21を形成する。コンタクトメタルMTL及び上層配線層La2は電解メッキ等により堆積することもできる。そして、有機EL素子OELの形成領域(すなわち、隣接する表示画素PIXとの境界領域を除く領域、又は、後述するバンク18に囲まれた領域に相当する)に当該コンタクトメタルMTLに電気的に接続された画素電極15を形成する。ここで、表示パネル10がトップエミッション構造の場合、画素電極15は、例えば、光反射特性を有する反射金属層と、光透過特性を有する酸化金属層を積層した電極構造を適用することができる。
【0067】
具体的には、例えば、アルミニウム(Al)等の光反射特性を有する反射金属層を薄膜形成してパターニングした後、当該反射金属層を被覆するように、錫ドープ酸化インジウム(ITO;Indium Thin Oxide)や亜鉛ドープ酸化インジウム等の酸化金属層を薄膜形成してパターニングする。上層の酸化金属層をパターニングする際に下層の反射金属層との間で電池反応を引き起こさないようにするとともに、下層の反射金属層がオーバーエッチングされたり、エッチングダメージを受けたりすることを防止するために、反射金属層をパターニング後に酸化金属層となる膜を被膜して反射金属層が露出しないように当該酸化金属層をパターニングすることが好ましい。
【0068】
次いで、隣接する表示画素PIXに形成された画素電極15との間の領域(すなわち、隣接する表示画素PIXとの境界領域)に、図8(d)に示すように、例えば、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の無機の絶縁性材料からなる下地層(層間絶縁膜)18xを化学気相成長法(CVD法)等を用いて成膜後パターニングして、図1に示すように表示パネル10に配設されたバンク18の列方向に延在した複数本の列バンク部と、これら列バンク部の両端を行方向に交差するような行バンク部と、を一体的に形成する。なお、キャップ層21は、下地層18xと同一材料膜をパターニングして一括して形成するようにしてもよい。
【0069】
そして、図8(e)に示すように、当該下地層18xの列バンク部及び行バンク部上に、少なくとも表面が、例えば、銅(Cu)や銀(Ag)、又は、これらを主成分とした金属単体又は合金等の低抵抗の金属材料からなるバンクメタル部18a(供給電圧ラインLc)を形成する。ここで、バンクメタル部18aは、酸化を防止するためにその表面に金メッキ等の酸化防止膜を形成してもよい。バンクメタル部18aはマスクを用いてメッキ処理してもよい。この場合、バンクメタル部18aとしてメッキ下地層をスパッタで成膜パターニング後、マスクを用いて露出したメッキ下地層に電解メッキを施して成膜してもよい。また、バンクメタル部18aの表面に撥液性を発現するためにトリアジンチオール化合物を被膜してもよい。表面に被膜されたトリアジンチオール化合物膜は極めて薄いので、バンクメタル部18aを絶縁することはない。トリアジンチオール化合物膜は構造に選択的に被着するが、ITOのような金属酸化物には十分な撥液性を示す程度に被着されることはない。
【0070】
これにより、表示パネル10に列方向に配列された各々同一の発光色の複数の表示画素PIX(有機EL素子OEL)の画素形成領域を含む領域が、バンクメタル部18a(供給電圧ラインLc)と、下地層18xからなるバンク18に周囲を囲まれて画定される(画素形成領域画定工程)。したがって、後述する有機EL層16を形成する発光層(電子輸送性発光層16b)を形成する際に、当該発光材料の溶液又は分散液(液状材料)を塗布した場合であっても、隣接する表示画素PIX(色画素PXr、PXg、PXb)相互で発光材料がバンク18により隔離されて混合することがないので、隣接する色画素間での混色を防止することができる。
【0071】
次いで、上記バンク18により囲まれた(画定された)各色の複数の画素形成領域(有機EL素子OELの形成領域)に対して、図8(f)に示すように、互いに分離した複数の液滴を所定位置に吐出するインクジェット法、又は、連続した液を吐出するノズルコート法等を適用して同一工程で一時に、正孔輸送材料の溶液又は分散液を塗布した後、当該溶液又は分散液を加熱乾燥させて正孔輸送層16aを形成し、続いて同様に、図9(g)に示すように、電子輸送性発光材料の溶液又は分散液を塗布した後、当該溶液を加熱乾燥させて電子輸送性発光層16bを形成し、正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16bを有する有機EL層(発光機能層)16が得られる(溶液塗布工程、溶液乾燥工程)。
【0072】
具体的には、有機高分子系の正孔輸送材料を含む有機化合物含有液(化合物含有液)として、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸水溶液(PEDOT/PSS;導電性ポリマーであるポリエチレンジオキシチオフェンPEDOTと、ドーパントであるポリスチレンスルホン酸PSSを水系溶媒に分散させた分散液)を、上記画素電極15(酸化金属膜)上に塗布した後、加熱乾燥処理を行って溶媒を除去することにより、当該画素電極15上に有機高分子系の正孔輸送材料(電荷輸送性材料)を定着させて、電荷輸送層である正孔輸送層16aを形成する。
【0073】
また、有機高分子系の電子輸送性発光材料を含む有機化合物含有液(化合物含有液)として、例えば、ポリパラフェニレンビニレン系やポリフルオレン系等の共役二重結合ポリマを含む発光材料を、テトラリン、テトラメチルベンゼン、メシチレン、キシレン等の有機溶媒或いは水に溶解した溶液を、上記正孔輸送層16a上に塗布した後、加熱乾燥処理を行って溶媒を除去することにより、正孔輸送層16a上に有機高分子系の電子輸送性発光材料(電荷輸送性材料)を定着させて、電荷輸送層であり発光層でもある電子輸送性発光層16bを形成する。
【0074】
特に、本実施形態に係る表示装置の製造方法においては、上記正孔輸送材料の溶液又は分散液を画素電極15(酸化金属膜)上に塗布する工程、及び、電子輸送性発光材料溶液を正孔輸送層16a上に塗布する工程に先立って、例えば図10に示すように、絶縁性基板11が搭載された基板ステージSTGの特定領域Rtmhに設定される温度T1(第1の温度)を、その周辺領域の温度T2(第2の温度)よりも高くなるように温度分布を制御する(温度分布設定工程)。
【0075】
具体的には、基板ステージSTGには、絶縁性基板11の特定領域Rtmhに対応する部位に配置され、特定領域Rtmhが第1温度T1に設定されるように温度を制御する第1温度制御ヒータ31が設けられ、さらに絶縁性基板11の特定領域Rtmhを除く画素形成領域Rpxに対応する部位に配置され、特定領域Rtmhを除く画素形成領域Rpxが第1温度T1よりも低い第2温度T2に設定されるように温度を制御する第2温度制御ヒータ33が設けられている。第1温度制御ヒータ31及び第2温度制御ヒータ33はともに発熱電気抵抗体であり、第1温度制御ヒータ31は外部から電圧を供給する配線32と接続され、第2温度制御ヒータ33は外部から電圧を供給する配線34と接続されている。外部コントローラは、配線32、配線34に適宜電圧を出力して、特定領域Rtmhが第1温度T1、特定領域Rtmh以外の画素形成領域Rpxが第2温度T2になるように制御している。
【0076】
有機溶媒としてキシレン(沸点138℃〜145℃)を適用した2.0wt%有機化合物含有液を適用した場合、図面左右方向に延在して配設されたバンク18に対応する基板ステージSTGの特定領域Rtmhの温度は第1温度制御ヒータ31によって50℃に設定され、当該特定領域Rtmhを除く画素形成領域Rpxの温度は第2温度制御ヒータ33によって40℃に設定されることが好ましい。
【0077】
このような温度分布に設定した状態で、バンク18により画定された各色の有機EL素子OELの形成領域(画素形成領域)に、正孔輸送材料の溶液又は分散液、或いは、電子輸送性発光材料溶液を塗布することにより、特定領域Rtmhに含まれるバンク18近傍の溶液の加熱乾燥速度が早くなる。ここで、上述した本発明の解決課題において説明したように、絶縁性基板上に突出するバンク(隔壁)により画素形成領域(有機EL素子の形成領域)を画定し、有機材料からなる水溶液(液状材料)を塗布する製造方法においては、バンク表面の撥水性や有機材料の水溶液の表面張力に起因して、バンクに接触する水溶液の液面端部が迫り上がる現象(図13参照)が生じ、正孔輸送層及び電子輸送性発光層からなる有機EL層の膜厚が不均一になるという問題を有していることを説明した。
【0078】
特に、図10に示す、バンク18との接触部(液面端部)を含む領域(特定領域Rtmhに対応する)ではバンク18が角になっているので、正孔輸送材料の溶液又は分散液、或いは、電子輸送性発光材料溶液が溜まりやすく且つ乾燥しにくいため、乾燥するまでの時間が長いと、乾燥したときに正孔輸送材料や電子輸送性発光材料が凝集しやすくなり結果として局所的に厚く堆積されやすい構造になっている。
【0079】
これに対して本実施形態に係る製造方法においては、有機化合物含有液の液面が迫り上がり、膜厚が大きくなるバンク18との接触部(液面端部)を含む領域(特定領域Rtmhに対応する)の温度を、予め周辺の温度よりも高く設定することにより、インクジェット装置やノズルプリンティング装置から吐出された有機化合物含有液がバンク18近傍では特定領域Rtmh以外の表示領域よりも迅速に乾燥する。したがって、特定領域Rtmh以外の表示領域に被着された有機化合物含有液が特定領域Rtmhに移動することが抑えられ、ほぼ有機化合物含有液が塗布された位置で概ね有機材料が定着するので、液面端部(バンク18の側面との接触部)に有機化合物含有液が集中して迫り上がる現象を抑制することができ、画素形成領域Rpx内の略全域における有機EL層16の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0080】
ここで、本願発明者等の検証によれば、上述したような組成を有する正孔輸送材料、又は、電子輸送性発光材料の有機化合物含有液を適用して、正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16bからなる有機EL層16を形成する場合にあっては、基板ステージSTGに設置される特定領域Rtmhの温度と、それ以外の領域の温度との差を、概ね10℃程度に設定することにより、上記有機化合物含有液の溶媒が迅速に蒸発して有機材料がほぼ塗布位置付近で良好に定着して、均一な膜厚を有する有機EL層16が形成されることが確認された。ここで、特定領域Rtmhの温度を上げすぎると、画素形成領域Rpx内の膜質が劣化する等の影響が生じるため好ましくない。
【0081】
また、特定領域Rtmh及び特定領域Rtmh以外の画素形成領域Rpxを高温且つ等温にすると、特定領域Rtmhで凝集することは抑えられるが、インクジェット装置やノズルプリンティング装置のヘッドから吐出された有機化合物含有液がバンク18で囲まれた領域全域に広がらずに乾燥してしまい、かえって被着した中央部が特定領域Rtmhを含む周縁部よりも厚く堆積されてしまう。このため、本実施形態では、特定領域Rtmhを特定領域Rtmh以外の画素形成領域Rpxよりも高温にし、換言すれば特定領域Rtmh以外の画素形成領域Rpxを特定領域Rtmhより低温にすることで、比較的有機化合物含有液が特定領域Rtmhで凝集しすぎる前に有機化合物含有液の乾燥を促すとともに、特定領域Rtmh以外の画素形成領域Rpxにおいて乾燥するまでにある程度有機化合物含有液を拡散して画素形成領域Rpxで比較的均等な厚さに有機化合物を成膜することができる。
【0082】
なお、本実施形態においては、絶縁性基板11の図10の上方及び下方の端部領域であって、当該図面の左右方向に延在して配設されたバンク18に対応する基板ステージSTGPSの特定領域Rtmhの温度を、それ以外の領域よりも高く設定した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、有機化合物含有液が凝集しやすい箇所、例えばバンク18全域を、バンク18間の画素形成領域Rpxよりも温度を高く設定するものであってもよいことはいうまでもない。
【0083】
また、上記正孔輸送層16aの形成に先立って、各表示画素PIXの有機EL素子OELの形成領域に形成された画素電極15(酸化金属層)表面を、正孔輸送材料の有機化合物含有液になじみやすくするために親液化処理を施すものであってもよいし、さらに、バンク18表面を、正孔輸送材料の有機化合物含有液及び電子輸送性発光材料の有機化合物含有液をはじくように撥液化処理を施すものであってもよい。
【0084】
その後、図9(h)に示すように、少なくとも各表示画素PIXの画素形成領域Rpxを含む絶縁性基板11上にITO等の光透過性を有する導電層(透明電極層)を形成し、上記有機EL層16(正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16b)を介して画素電極15に対向する対向電極(カソード電極)17を形成する。ここで、対向電極17は、トップエミッション型の場合、例えば、蒸着法等により電子注入層となるバリウム、マグネシウム、フッ化リチウム等の金属材料からなる薄膜を形成した後、その上層にスパッタ法等によりITO等の透明電極層を積層形成した厚さ方向に透明な構造を適用することができ、ボトムエミッション型の場合、上記電子注入層とその上層にアルミニウム等の高仕事関数の金属層を積層した反射性の構造を適用することができる。
【0085】
このとき、対向電極17は、上記画素電極15に対向する領域のみならず、有機EL素子OELの形成領域を画定するバンク18上にまで延在する単一の導電層として形成されるとともに、バンク18を形成するバンクメタル部18aと電気的に接続されるように接合される。これにより、バンク18を形成するバンクメタル部18aを各表示画素PIXに共通に接続された共通電圧ライン(カソードライン)Lcとして適用することができる。このように、有機EL素子OEL同士の間に対向電極17と等電位のバンクメタル部18aを網羅することによってカソード全体のシート抵抗を下げ、表示パネル10全体で均一な表示特性にすることができる。
【0086】
そして、上記対向電極17を形成した後、絶縁性基板11の一面側全域に保護絶縁膜(パッシベーション膜)としてシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等からなる封止層19をCVD法等を用いて形成し、さらに、封止蓋や封止基板20を接合することにより、図5、図6に示したような断面構造を有する表示パネル10が完成する。
【0087】
このように、本実施形態によれば、各表示画素の画素形成領域(有機EL素子の形成領域)を画定するバンクの近傍領域(基板ステージの特定領域)の温度を、他の領域に比較して高くなるように設定することにより、当該バンクの近傍領域に塗布された有機材料を含む有機化合物含有液(化合物含有液)を迅速に加熱乾燥させて定着させることができるので、画素形成領域の略全域で膜厚が略均一な有機EL層を有する表示装置(表示パネル)を形成することができる。したがって、発光動作時に供給される発光駆動電流が有機EL素子(有機EL層)の形成領域の略全域に均一に流れるので、表示パネルの開口率の低下を抑制して表示画質を改善することができるとともに、発光駆動電流の集中による有機EL層(有機EL素子)の劣化を抑制して信頼性や寿命に優れた表示パネルを実現することができる。
【0088】
なお、上述した本実施形態においては、バンクメタル部18aとして、銅(Cu)や銀(Ag)又はその合金を適用する場合について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、例えば、アルミニウム(Al)や金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、タングステン(W)等の金属、又は、これらを主成分とする合金等の、低抵抗の金属材料を適用し、これらの金属層の単層あるいは複数層の積層からなる構造を適用することができる。
【0089】
また、上述した実施形態において、表示パネル10の表示動作(有機EL素子OELの発光動作)に伴って流れる電流量が小さい場合には、図5に示したようなバンク18のバンクメタル部18aを共通電圧ラインLcに適用する構造に代えて、図11に示すように、下地層18xとポリイミド等の感光性樹脂材料からなるバンク樹脂部18bにより形成されるバンク18のみを適用して、表示画素PIX(有機EL素子OEL)の形成領域の周囲(四方)を取り囲むように形成して当該画素形成領域を画定するとともに、各表示画素PIXの形成領域に共通に延在して形成された対向電極17により上記共通電圧ラインLcを形成するものであってもよい。なお、図11は、本実施形態に係る表示装置(表示パネル)に適用可能な表示画素の他の構成例を示す概略断面図である。
【0090】
さらに、本実施形態においては、表示パネル10の表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)に設けられる発光駆動回路DCとして、図2に示したように、nチャネル型のトランジスタ(すなわち、単一のチャネル極性を有する薄膜トランジスタ)Tr11〜Tr13を適用した回路構成を示した。このような回路構成によれば、nチャネル型の薄膜トランジスタのみを適用することができるので、既に製造技術が確立されたアモルファスシリコン半導体製造技術を用いて、動作特性が安定したトランジスタを簡易に製造することができ、上記表示画素の発光特性のバラツキを抑制した発光駆動回路を実現することができる。
【0091】
ここで、発光駆動回路DC内のトランジスタTr11〜トランジスタTr13は全てnチャネル型であるが、pチャネルが含まれていてもよい。この場合、pチャネル型トランジスタのソース、ドレインはそれぞれ、nチャネル型トランジスタのソース、ドレインと逆の関係になる。またトランジスタTr11〜トランジスタTr13として、アモルファスシリコン薄膜トランジスタ以外にポリシリコン薄膜トランジスタを適用するものであってもよい。このように、発光駆動回路は、nチャネル型又はpチャネル型のいずれか一方のチャネル極性を有するトランジスタのみを備えるものであってもよいし、nチャネル型及びpチャネル型の双方のチャネル極性を有するトランジスタを備えるものであってもよい。
【0092】
また、本実施形態においては、表示パネル10の表示画素PIX(各色画素PXr、PXg、PXb)として、トランジスタを3個備え、表示データに応じた階調電流Idataを供給することにより、有機EL素子OELの輝度階調を設定する電流指定(電流階調制御)型の発光駆動回路を示したが、本発明に係る表示装置はこれに限定されるものではなく、少なくとも各表示画素において、表示データに基づいて発光駆動電流の電流値が設定され、該電流値に応じた輝度階調で有機EL素子を駆動制御するものであれば、電流指定型の他の回路構成を有するものであってもよいし、表示データに応じた電圧成分(階調電圧)を供給することにより、有機EL素子OELの輝度階調を設定する電圧指定(電圧階調制御)型の発光駆動回路を適用するものであってもよい。
【0093】
また、上記各実施形態では、電荷輸送層である有機EL層16は、正孔輸送層16a及び電子輸送性発光層16bを有していたが、これに限らず、正孔輸送性発光層及び電子輸送層を有していてもよく、正孔輸送性兼電荷輸送性発光層の単層のみでもよく、正孔輸送層、発光層、電荷輸送層の三層構造でもよく、その他の積層構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る表示装置に適用される表示パネルの画素配列状態の一例を示す要部概略平面図である。
【図2】本発明に係る表示装置の表示パネルに2次元配列される各表示画素(発光素子及び発光駆動回路)の回路構成例を示す等価回路図である。
【図3】本実施形態に係る表示装置(表示パネル)に適用可能な表示画素の一構成例を示す平面レイアウト図である。
【図4】本実施形態に係る表示画素の平面レイアウトの要部詳細図である。
【図5】本実施形態に係る平面レイアウトを有する表示画素PIXにおけるA−A断面を示す概略断面図である。
【図6】本実施形態に係る平面レイアウトを有する表示画素PIXにおけるB−B断面を示す概略断面図である。
【図7】本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法の一例を示す工程断面図(その1)である。
【図8】本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法の一例を示す工程断面図(その2)である。
【図9】本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法の一例を示す工程断面図(その3)である。
【図10】本実施形態に係る表示装置(表示パネル)の製造方法における加熱乾燥処理を説明するための概略構成図である。
【図11】本実施形態に係る表示装置(表示パネル)に適用可能な表示画素の他の構成例を示す概略断面図である。
【図12】有機EL素子の基本構造を示す概略断面図である。
【図13】従来技術における有機EL素子の製造プロセスの問題点を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0095】
10 表示パネル
11 絶縁性基板
15 画素電極
16 有機EL層
16a 正孔輸送層
16b 電子輸送性発光層
17 対向電極
18 バンク
18x 下地層
18a バンクメタル部
18b バンク樹脂部
DC 発光駆動回路
Tr11〜Tr13 トランジスタ
OEL 有機EL素子
PIX 表示画素
PXr、PXg、PXb 色画素
Rpx 画素形成領域
Rtmh 特定領域
STG 基板ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子を備える表示パネルを備えた表示装置の製造方法において、
表示画素の形成領域を画定する基板の一面側に形成された隔壁の一部の領域を第1の温度に設定するとともに、当該領域以外の前記表示画素の形成領域を、前記第1の温度よりも低い第2の温度に設定する温度分布設定工程と、
前記表示画素の形成領域に電荷輸送性材料を含む含有液を塗布する含有液塗布工程と、
を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記隔壁の前記一部の領域は、前記表示画素の形成領域が角となる領域であることを特徴とする請求項1記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記含有液塗布工程は、前記隔壁に囲まれた領域の前記複数の前記表示画素の形成領域に対して、インクジェット法又はノズルコート法を用いて前記含有液を塗布することを特徴とする請求項1または2記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記隔壁は、少なくとも一部の表面が金属単体又は合金により形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記隔壁は、前記表示素子に直接的又は間接的に接続される配線層の一部をなしていることを特徴とする請求項4記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記表示画素は、各々トランジスタを有する発光駆動回路を備え、前記表示素子は、前記発光駆動回路に接続されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記電荷輸送性材料は高分子系の有機材料からなり、前記表示素子は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の表示装置の製造方法によって製造されたことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−172896(P2007−172896A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365681(P2005−365681)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】