表示装置及びその駆動方法
【課題】非線形二端子素子を用いて有機EL表示装置をマトリクス駆動する。
【解決手段】 第1組のストライプ電極104と、該第1組のストライプ電極に交差する第2組のストライプ電極116と、該第1組および第2組のストライプ電極の各電極の交差する点にある複数の画素とを基板102上に備え、画素のそれぞれには、前記第1組のストライプ電極に電気的に接続された非線形二端子素子からなるスイッチング素子114と、該スイッチング素子と電気的に接続され、前記第2組のストライプ電極に電気的に接続された発光部110と、有機誘電体を誘電層として含み、該発光部に並列となるように、該スイッチング素子及び前記第2組のストライプ電極に電気的に接続されたコンデンサー部106とが備えられている表示装置。
【解決手段】 第1組のストライプ電極104と、該第1組のストライプ電極に交差する第2組のストライプ電極116と、該第1組および第2組のストライプ電極の各電極の交差する点にある複数の画素とを基板102上に備え、画素のそれぞれには、前記第1組のストライプ電極に電気的に接続された非線形二端子素子からなるスイッチング素子114と、該スイッチング素子と電気的に接続され、前記第2組のストライプ電極に電気的に接続された発光部110と、有機誘電体を誘電層として含み、該発光部に並列となるように、該スイッチング素子及び前記第2組のストライプ電極に電気的に接続されたコンデンサー部106とが備えられている表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイパネルの自発光表示装置および該表示装置の駆動方法に関する。より具体的には、本発明は、複数の行と複数の列よりなるマトリックス構成になされた発光する画素をスイッチング素子によって駆動する表示装置、その製造方法、及び表示装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器用のフラットディスプレイとして液晶ディスプレイの普及が目覚しい。液晶ディスプレイは、液晶の光シャッター機能によりバックライトの光をon/off制御し、カラーフィルターを用いて色彩を得る。これに対し、有機ELディスプレイ、あるいは有機LEDディスプレイは、各画素が個々に自発光するため、カラーフィルターが不要になるために視野角が広くなるという利点があるばかりでなく、バックライトが不要であることから薄型化が可能になり、かつフレキシブルな基板上に形成が可能である等、多くの利点を持っている。このため、有機ELディスプレイは次世代のディスプレイとして期待されている。
【0003】
この有機ELディスプレイパネルの駆動方式は、大別して2つの種類に分けることができる。第1の駆動方式は、パッシブマトリックス型(あるいは、デューティー駆動方式、単純マトリックス方式)と呼ばれているものである。これは、複数のストライプ電極が行と列にマトリックス状に組み合わされ、行電極と列電極のそれぞれの交点に位置する画素を行電極と列電極に加えた駆動信号により発光させる。発光制御のための信号は、通常、行方向には1行毎に時系列で走査され、同一行の各列には同時に印加される。このパッシブマトリクス型の駆動方式は、各画素には通常はアクティブ素子を設けず、行の走査周期のうち各行のデューティー期間にのみ発光制御するようにした方式である。第2の駆動方式は、各画素にスイッチング素子を持ち、行の走査周期内にわたって発光が可能なアクティブマトリックス型と呼ばれるものである。
【0004】
アクティブマトリクス型の駆動方式の利点について説明する。例として、100行×150列のパネル全面を100Cd/m2の表示輝度で発光させる場合を想定する。この場合、アクティブマトリックス型では各画素は基本的に常時発光しているため、画素の面積率や各種の損失を考慮しない場合には、100Cd/m2で発光させれば良い。しかし、パッシブマトリックス型で同じ表示輝度を得ようとすると、各画素を駆動するデューティー比が1/100になり、そのデューティー期間(選択期間)のみが発光時間となるため、発光時間内の発光輝度を100倍の10000Cd/m2とする必要がある。
【0005】
ここで、発光輝度を増すためには有機EL素子に流す電流を増大させればよい。しかし、電流を増大させるとともに有機EL発光の効率が低下することが知られている。この効率の低下により、アクティブマトリックス型の駆動方式とパッシブマトリックス型の駆動方式を同じ表示輝度で比較した場合、パッシブマトリクス型では相対的に消費電力が大きくなる。また、有機EL素子に流す電流を増すと、発熱等による材料の劣化が生じやすく、表示装置の寿命が短くなるという不都合がある。一方、これらの効率及び寿命の観点から最大電流を制限すると、同じ表示輝度を得るために発光期間を長くする必要が生じる。しかしながら、パッシブマトリックス型駆動方式での発光時間を定めるデューティー比はパネルの行数の逆数であることから、発光期間の延長は、表示容量(駆動ライン数)の制限に結びつく。これらの点から、大面積、高精細度のパネルを実現するにはアクティブマトリックス型の駆動方式を用いる必要があった。
【0006】
大面積、高精細度に適したアクティブマトリックス型の駆動方式では、画素のスイッチング素子としてポリシリコンを用いた薄膜トランジスタ(TFT)が用いられる。しかしながら、例えば、ポリシリコンを用いるTFTを形成するプロセス温度は少なくとも250℃以上の高温であり、フレキシブルなプラスティック基板を用いることが困難である問題点がある。また、アクティブマトリクス型の駆動方式を用いる表示装置は、製造コストが高くなる問題点がある。例えば、アクティブマトリクス基板の製造コストがディスプレイパネル全体のコストの50%以上を占めてしまう。
【0007】
こういった従来の有機ELディスプレイパネルが有する種々の問題点に対処するため、特開2001−160492号公報(特許文献1)には、新しいタイプの有機薄膜EL素子が開示されている。
【0008】
この特許文献1には、「従来の有機薄膜EL素子とは異なり、発光・非発光状態が過去の印加電圧の加え方に応じたメモリ性を有し、この結果、ON/OFF信号を加えることにより発光・非発光状態を制御できるような新しいタイプの有機薄膜EL素子とその駆動方法」が記載されている。より具体的に述べると、「有機薄膜と電極の片面又は両面との間に、所定の値以上の電圧を印加することによって絶縁体から導体に転移する物質の薄膜から形成された電流スイッチング層を設ける。電極に所定電圧を印加して、電流スイッチング層を絶縁体から導体に転移させることによって有機薄膜エレクトロルミネッセンス素子を発光状態を出現させ、さらに、電圧を電流スイッチング層が導体から絶縁体に転移するまで減ずることによって有機薄膜エレクトロルミネッセンス素子の非発光状態を出現させるように駆動する。特に好ましい態様として、該有機薄膜エレクトロルミネッセンス素子に一定電圧を印加した状態に保持し、この一定電圧に正負のパルス電圧を重畳することにより発光状態と非発光状態をスイッチングするよう駆動することができる。」という点が開示されている。
【0009】
また、国際公開第01/15233号パンフレット(特許文献2)には有機薄膜トランジスタにより画素の駆動制御を行う事が開示されている。これによれば、駆動素子が有機材料より成るため、低温での製造プロセスが可能であり、従ってフレキシブルなプラスティック基板を用いることが可能となる。また、安価な材料やプロセスを選定できるため低コスト化も可能となる。
【0010】
また、上記のスイッチング素子に関連する従来技術として、有機LEDの駆動を可能にするための「真空蒸着法によるCu:TCNQ錯体薄膜の形成とスイッチング素子」(第49回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集、2002年3月 東海大学 湘南校舎、第3分冊、27a−M−5)(非特許文献1)が知られている。さらに、L.P.Ma氏らによる論文「Organic electrical bistable devices and rewritable memory cells」(Applied Physics Letters,Vol.80,number 16,22 April 2002,2002 American Institute of Physics)(非特許文献2)には、アミノイミダゾールジカーボネト(AIDCN)を用いたスイッチング素子を用いて有機EL素子を2値で駆動しメモリ等への適用可能性を示している。これらの素子は、いずれも、ある電圧に対して2値の抵抗値を持ち、その切り替えは適切なパルスを印加することにより行われるものである。この抵抗値切り替えに要する時間は10nsec程度であることから、通常のディスプレイ駆動には充分な応答性が確保できるが、マトリクス構成(ドットマトリクス表示)のディスプレイ装置を駆動する具体的な方法については、いずれの文献にも開示されていない。
【0011】
通常、マトリクス構成の表示素子は以下のように駆動される。まず単一の画素の場合について述べる。ここで例示したスイッチング素子は、高抵抗特性114A(off状態)と低抵抗特性114B(on状態)の2つの電圧・電流特性を持つものであり(図11参照)、バイアスVbをかけた状態で印加電圧をVth2以上にするとoff→onに遷移し、印加電圧をVth1以下にするとon→offへと遷移する、特性を有している。従ってoff→onへの遷移にはVth2以上のパルス、on→offへの遷移にはVth1以下のパルスを印加することにより、抵抗値の切り替えが可能である。
【0012】
図9に示すような積層構造にされた表示画素を有する表示装置12において、図10のように、各行が順次選択されて走査表示を行い、各行においては、その選択期間にある行にデータを書き込む動作を行なう。ドットマトリックスに構成されたディスプレイ装置において、このように列と行を定義してマトリックス状に複数の画素を配列したドットマトリクス表示を行なう場合を想定して以下説明する。なお、図9の表示装置12においては、ガラス基板120の片面に、行電極104、発光部110、画素電極112、スイッチング素子114、列電極116が形成されている。
【0013】
このようなマトリックス状に配置された複数の表示画素においては、ある行の画素につき上記の制御を行い、次の走査周期までバイアスをVth1からVth2の範囲に維持することにより、デューティー期間に制限されることなく、スイッチング素子をon/offいずれか一方の状態に維持することが可能となる。このような制御を行った場合に生ずる問題点としては以下のものがある。すなわち、上述したようなスイッチング素子(図9参照)を用いて走査周期中(フレーム期間中)にスイッチング素子への電圧印加を維持する必要があるため、常にマトリックス全面の画素に電圧を印加しなくてはならず、選択された行以外の行の回路も接続状態に維持する必要がある。これにより、一つの行の切り替え信号が他の行全てに印加されることになる。その結果、図9に示したようなスイッチング素子114を用いた場合に、従来のパッシブマトリックス方式の駆動方法をそのまま用いてマトリックス全面にある画素のon/off制御を行うことは困難である。
【特許文献1】特開2001−160492号公報
【特許文献2】国際公開第01/15233号パンフレット
【非特許文献1】小山田崇人、「真空蒸着法によるCu:TCNQ錯体薄膜の形成とスイッチング素子」(第49回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集、2002年3月 東海大学 湘南校舎、第3分冊、27a−M−5)
【非特許文献2】L.P.Ma et al.,″Organic electrical bistable devices andrewritable memory cells″,Applied Physics Letters,Vol.80,number 16,22April 2002,2002 American Institute of Physics
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記問題点を解決するために、本願の発明者の一部による特許出願(特願2002−255763号)には、マトリックス構成の表示素子の駆動方法として、行方向には1行毎に順次デューティー駆動し且つ同一行内の該当する列には発光制御のための信号を同時に付加することにより、当該画素を電流駆動で発光させる発光パネルの駆動方法であって、予め定めたウインドウ期間中に供給される発光指示信号もしくは消光指示信号に応答して特定の画素を発光もしくは消光させる際に、デューティー駆動される行については所定電圧を印加するとともに、その他の行については前記ウインドウ期間中のみ該所定電圧を既定オフセット値だけオフセットさせた電圧を印加する方法が記載されている。
【0015】
特願2002−255763号に記載された上記方法によれば、マトリックス構成の表示素子を実現することができる。この方法では各画素で得られる発光状態はON/OFFの2値であり、階調性を得るには画面のデューティー駆動周波数を増加させ、周期毎での発光レベルを変えるか、画素面積による階調を得る手段を取る必要があった。しかしながら、これらの方法では駆動素子に高い応答性が求められ、あるいは画像の解像度に影響を与えるなどの制限から、得られる階調レベルは充分なものでは無かった。例えばデューティー駆動周波数を通常の60Hzから480Hzとする事により8階調の制御を行う事が可能である。しかし、所謂フルカラー(1677万色)を得るには3色で各256階調が必要とされる。素子の応答性等の点からは、駆動周波数をこれ以上大きくすることが困難であり、パッシブマトリクス方式で周波数を増加させてフルカラー表示を得るのは困難である。
【0016】
また、従来のシリコン製のTFT等を用いる事により、フルカラー表示を得る事は可能である。しかし、前述のように、フレキシブルなプラスティック基板においてシリコンによるTFTを作製することは、困難であり、また、高コストである。
【0017】
よって本発明の目的は、上述の点に鑑み、有機ELディスプレイパネルなどの表示装置において、多階調表示を低コストで実現し、フレキシブル基板上に作製し得る表示装置、及びその駆動方法を提供するものである。
【0018】
また、有機EL素子において、発光輝度が高いほど効率が低くなり、寿命も短くなる点に鑑み、本発明の他の目的は、コンデンサーが有機EL発光素子と並列接続された薄膜発光素子において、発光素子やコンデンサーの面積を十分に確保して良好な表示特性の得られる表示装置及びその製造方法を提供するものである。
【0019】
さらに、図3に例示するように、一般に有機ELの電気抵抗は低電圧では著しく高いため、キャパシタ電荷の放電は一定電圧に到達すると減衰が著しく遅くなる。このため図15のようにキャパシタの電荷が次のデューティー期間まで残留することとなり、次のフレーム期間の発光量に影響を与える。これを防止するためには、キャパシタの残留電荷を一旦消去して前歴の影響を抑制することが必要となる。特に発光しないフレームで光が残る場合はON/OFF比が低下することとなる。この対策として、例えば特開2001−350431号公報には、キャパシタと発光部は別の配線に接続し、非発光時にはキャパシタ部に逆バイアスの電圧をかけて残留電荷を消去する方法が開示されておいる。また、特開2003−228326にも同様の方法が開示されている。これらの手段により前歴の消去は可能になる。しかしながら、この時に放電される電力は発光に寄与しないので無効な電力となり、ディスプレーパネルの消費電力を増大させる原因となる。また蓄積させた電荷の総てが発光に寄与するものとならない事は、発光量にばらつきを生じさせるという問題を生じる。また、画素への配線を増やす必要が生じる事から、製造コストをも増大させるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明においては、互いに平行に複数形成された第1組のストライプ電極と、該第1組のストライプ電極に交差する方向に、互いに平行に複数形成された第2組のストライプ電極と、該第1組のストライプ電極の各電極と、第2組のストライプ電極の各電極との立体的に交差する点にある複数の画素とを基板上に備えてなり、該複数の画素のそれぞれには、前記第1組のストライプ電極の一つに電気的に接続された非線形二端子素子からなるスイッチング素子と、該スイッチング素子と電気的に接続され、前記第2組のストライプ電極の一つに電気的に接続された発光部と、有機誘電体を誘電層として含み、該発光部に電気的に並列となるように、該スイッチング素子及び前記第2組のストライプ電極の該電極に電気的に接続されたコンデンサー部とが備えられている表示装置が提供される。
【0021】
パッシブマトリックス型(あるいは、デューティー駆動方式、単純マトリックス方式)による駆動方法に類似の駆動方法を用い、非線形二端子素子をスイッチング素子として用いると、スイッチング素子の作用によってホールド形表示(デューティー期間のみならず、非デューティー期間においても表示に寄与する表示)が可能となる。この際、コンデンサー部は非デューティー期間における発光表示に必要な電荷を蓄積するために用いられる。このコンデンサー部を用いることにより、二端子素子においてもホールド型表示が実現する。
【0022】
本発明においては、この誘電体層を有機誘電体よりなるものとする事により、成膜温度を高温とする必要がなく、基板の変形にも対応することができる。
【0023】
本発明においては、コンデンサー部には、誘電層として、有機誘電体ではなく、セラミクス系材料を用いることもできる。つまり、チタン酸バリウムストロンチウム酸化物を誘電層として含み、該発光部に電気的に並列となるように、該スイッチング素子及び前記第2組のストライプ電極の該電極に電気的に接続されたコンデンサー部を有する表示装置も提供される。
【0024】
本発明において、誘電体層に有機誘電体を用いる場合において、前記誘電層を分散された多数の導電性微粒子をさらに含むものとすることが好適である。また、前記スイッチング素子は、双安定素子またはダイオード素子とすることが好適である。金属微粒子を分散した場合、蒸着条件に依存するものの、実効的な比誘電率は50〜150の値が得られる。本発明では、有機誘電体を用いる場合において、好ましくは、比誘電率が50以上、さらに好ましくは100以上の有機誘電体を用いることができる。
【0025】
本発明において、チタン酸バリウムストロンチウム酸化物を誘電層に含む場合には、比誘電率は250〜800程度の値が得られる。また、チタン酸バリウムストロンチウム酸化物では、電気耐圧が高く、50MV/m程度の値を得ることができ、最大150MV/mもの値が得られる。本発明では、セラミクス系材料を用いる場合において、好ましくは、比誘電率が250以上の材料とすることができる。また、本発明では、セラミクス系材料を用いる場合において、好ましくは電気耐圧が50MV/mである材料とすることができる。
【0026】
本発明においては、前記スイッチング素子は、アルミニウム/ジシアノ系化合物/アルミニウムの積層構造を有するものや、ポリエチレンジオキシチオフェン膜とポリフェニレンビニレン膜の積層膜を有するものや、アルミニウム薄膜/フラーレン薄膜/銅薄膜の積層構造を有するものや、アルミニウム電極/ブタジエン化合物/金電極の積層構造を有するものが好適である。
【0027】
本発明においては、前記ダイオードがC60またはペンタセンの何れかを有しているものが好適である。
【0028】
導電性微粒子を用いると、誘電層の実効誘電率が上昇するために、小さな面積で十分な容量を備えるコンデンサー部を形成することができる。これにより、発光部の面積を大きくすることができ、発光部の電流密度を低下させて、発光部の発光効率及び寿命の改善を図ることができる。また、本発明の表示装置において双安定素子を用いると、非デューティー期間における発光を維持するコンデンサー部と協働して、より高い表示容量(表示ライン数)での表示と発光効率や寿命の両立が可能となる。ダイオード素子を用いる場合にも、ダイオード素子が導通状態にあるときにコンデンサー部への十分な充電が可能となり、高い表示容量での表示と発光効率や寿命の両立が可能となる。また本発明において、C60またはペンタセン有するダイオードでは、電圧印加時の電圧降下が他の有機材料に比して低い。即ち、電力損失が抑制されるため消費電力の点で極めて有利となる。
【0029】
本発明において、前記発光部と前記コンデンサー部とが同一平面に配置されているものや、前記発光部と前記コンデンサー部の前記誘電体層とを電気的に分離する絶縁部をさらに有するものが好適である。発光部とコンデンサー部とが同一平面に配置されていると、簡単な構造で本発明の表示装置を作成することができる。
【0030】
本発明において、前記基板を可撓性基板とすることも好適である。本発明においては、処理温度の高いプロセスを用いることなく表示装置を作製することが可能であるため、可撓性基板を用いることができる。可撓性基板により、ガラス基板を用いる場合に比べて、軽量で高い耐衝撃性を備える表示装置が実現される。
【0031】
本発明において、前記発光部と前記コンデンサー部と前記スイッチング素子とは、基板上に形成され、薄膜からなるとともに、それぞれが両面に電極層を備えており、該発光部と該コンデンサー部と前記スイッチング素子とは、それぞれの電極層とともに、その順もしくは逆の順に前記基板上に順次積層されており、前記発光部のコンデンサー側の電極と前記スイッチング素子のコンデンサー側の電極との電気的接続は、前記コンデンサー部に設けられ、第1のバイアを介してなされており、前記コンデンサー部の発光部側の電極と前記第2組のストライプ電極の前記電極との電気的接続は、前記発光部に設けられ、第2のバイアを介してなされており、前記発光部と前記コンデンサー部とを絶縁する絶縁部をさらに備えたものである表示装置も好適である。
【0032】
ここで、バイアは、スルーホールともいい、層間の電気的接続を行なうための手段として、当業者には周知である。積層配置された発光部とコンデンサー部を用いると、発光部とコンデンサー部とに広い面積を用いることができ、発光部の効率や寿命と、コンデンサー部の容量とを両立することができる。
【0033】
本発明において、前記第1のバイアは、前記コンデンサー部の領域のある辺に沿って、該コンデンサー部の側面を経由するように設けられ、絶縁体で内張りされており、前記第2のバイアは、前記発光部の領域のある辺に沿って、該発光部の側面を経由するように設けられ、絶縁体で内張りされており、該絶縁体が前記絶縁部と連続しているもの、とすることも好適である。
【0034】
コンデンサー部と発光部を積層する場合に、コンデンサー部の側面や発光部の側面を経由して電気的接続を確保するためのバイアを配置することにより、簡単な構造でバイアを構成することができる。このバイアは、絶縁部と連続した絶縁体で内張りされているものとすることもできる。これにより、表示装置の構造がより簡単になる。
【0035】
本発明においては、前記第1組または前記第2組のストライプ電極として、前記基板上に備えられた電極層を備え、該電極層のストライプ電極の向きに交差するように複数延在し、該電極層のストライプ電極の向きに隣り合った画素を仕切るとともに、前記基板に平行な方向に突出するオーバーハング部を上部に有する電気絶縁性の隔壁をさらに有することが好適である。
【0036】
また、本発明においては、表示装置の製造方法も提供される。即ち、電極層を含む前記発光部を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップと、前記絶縁部を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップと、電極層を含む前記コンデンサー部を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップと、電極層を含む前記スイッチング素子を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップとを含む、上記に記載された表示装置を製造する方法が提供される。
【0037】
オーバーハング部を用いることにより、高コストなフォトプロセスを用いずに作製可能な表示装置が提供される。このような表示装置では、マスクを介する成膜工程であるマスクデポ工程を極力配して良好な表示の表示装置を製造することが可能となる。
【0038】
本発明の他の態様においては、前記表示装置が、前記第1組および前記第2組のストライプ電極を組合わせた行電極と列電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行うものであり、ある選択された行のデューティー期間において、前記スイッチング素子を導電状態とする信号を該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第1のステップと、次いで、前記発光部を発光させるための電荷を、導通状態にある前記スイッチング素子を介して、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって前記コンデンサー部に蓄積する第2のステップと、次いで、前記スイッチング素子を非導電状態とする信号を該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第3のステップとを有し、前記選択された行の非デューティー期間において、前記コンデンサー部に蓄積した電荷を、前記発光部を通じて放電させることにより、該発光部を発光させるステップを有する上記いずれかの表示装置の駆動方法が提供される。
【0039】
本発明では、行と列(あるいは、XとY)により各画素が指定され、画素により表示画像を得るドットマトリクス駆動を行なう駆動方法が提供される。この際、非線形二端子素子を導通状態とする信号は、非線形二端子素子がヒステリシス特性を示さない素子である場合や、ヒステリシス特性を示す素子(例:双安定素子)である場合においても用いることができ、通常は、高い電圧を印加する信号とする。その後に電荷を蓄積する際には、その非線形に端子素子の特性に応じて、電荷の蓄積に十分な電流を流せる信号を印加する。
【0040】
ここで、発光部を発光させるための電荷は、所要の発光輝度を実現するための電荷とすることにより、この電荷量に応じて階調表示を行なうことが可能となる。
【0041】
さらに、非導通状態とする場合には、スイッチング素子を通じて漏れるリーク電流を実用上非導通状態とみなせる程度に抑えることができるような信号とする。このような信号は、行電極と列電極とによって、スイッチング素子及びそれに直列に接続されて、互いに並列に接続されている発光部及びコンデンサー部に印加されるが、スイッチング素子の開閉動作を適切に行なわせる信号とすることが好適である。非導通状態とする信号は、特に双安定素子を用いる場合に有効である。
【0042】
また、上記第1のステップと第2のステップは、それぞれ、予め定められた第1のウインドウ期間と予め定められた第2のウインドウ期間において行なうことができる。この第1および第2のウインドウ期間は、ある選択される行ごとに定まるデューティー期間に、この順に定められる時間間隔である。
【0043】
本発明においては、前記第1のステップにおいて、前記選択された行以外の行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と同極性の電圧オフセット信号を印加することが好適である。また、前記第1のステップにおいて、前記選択された行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と逆極性の電圧オフセット信号を印加することも好適である。加えて、前記第3のステップにおいて、前記選択された行以外の行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と同極性の電圧オフセット信号を印加することも好適である。さらには、第3のステップにおいて、前記選択された行以外の行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と同極性の電圧オフセット信号を印加することも好適である。
【0044】
選択された行のデューティー期間における第1のステップ、第3のステップにおいて、選択されていない行(選択された行以外の行)の行電極に、列電極に印加した電圧信号(電圧パルス等)をキャンセルするような同極性のオフセット信号を印加すると、選択された行においてのみ、スイッチング素子を導通状態へ遷移させたり、非導通状態へ遷移させたりすることができる。また、選択された行の行電極に、列電極に印加した電圧信号(電圧パルス等)に加算されるように逆極性のオフセット信号を印加すると、列電極の電圧に重ねてそのオフセット電圧が印加されるため、同様に、選択された行においてのみ、スイッチング素子を導通状態へ遷移させたり、非導通状態へ遷移させたりすることができる。
【0045】
スイッチング素子を導通状態にしたり、非導通状態にするためには、スイッチング素子の特性と、さらに、それに直列に接続されて電圧が分配される素子の電圧の分担率とを考慮して、スイッチング素子を導通状態にするしきい値を越えるような、あるいは、非導通状態にするしきい値を下回るような電圧信号を、選択された行の行電極と列電極により印加する。また、選択されていない行の行電極に印加するオフセット電圧は、これらのしきい値を越えないよう(あるいは、下回らないよう)に設定される。
【0046】
本発明の他の態様として、上記いずれかに記載の表示装置を駆動する方法であって、前記表示装置が、前記第1組および前記第2組のストライプ電極を組合わせた行電極と列電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行うものであり、ある選択された行のデューティー期間において、前記スイッチング素子を導電状態とし、さらに、前記発光部を発光させるための電荷を、導通状態にある前記スイッチング素子を介して、該行電極と該列電極によって前記コンデンサー部に蓄積する第1のステップを有し、前記選択された行の非デューティー期間において、前記コンデンサー部に蓄積した電荷を、前記発光部を通じて放電させることにより、該発光部を発光させるステップを有する表示装置の駆動方法も提供される。
【0047】
また、本発明のさらに他の態様として、前記表示装置が、前記第1組および前記第2組のストライプ電極を組合わせた行電極と列電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行なうものであり、あるフレーム期間中の選択された行のデューティー期間において、前記スイッチング素子に逆方向バイアス電圧を印加し、前記スイッチング素子を介して前記コンデンサー部に蓄積した電荷を放電可能な状態とするための信号を、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第1のステップと、前記スイッチング素子に順方向バイアス電圧を印加して、前記スイッチング素子を導電状態とすることにより、前記発光部を発光させるための電荷を、導通状態にある前記スイッチング素子を介して、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって前記コンデンサー部に蓄積する第2のステップとを有し、前記フレーム期間中の前記選択された行の非デューティー期間において、前記コンデンサー部に蓄積した電荷を、前記発光部を通じて放電させることにより、該発光部を発光させるステップを有し、前記選択された行について、前記フレーム期間の次のフレーム期間におけるデューティー期間の前記第1のステップにより、前記コンデンサー部に残存している電荷を放電する表示装置の駆動方法も提供される
【0048】
スイッチング素子が、高電圧において低抵抗を示し低電圧で高い抵抗を示すようなダイオード素子である場合、スイッチング素子に高い電圧がかかると、ダイオード素子を介したコンデンサーへの充電が可能となり、電圧が下がると充電された電荷はダイオード素子を通じて漏れることが無く、マトリクス駆動が可能となる。
【0049】
また、デューティー期間において、それまでにコンデンサーに蓄積している電荷を放電させる逆方向バイアスを用いれば、確実に前のフレームで充電された電荷を放電させることができる。
【0050】
本発明の表示装置において、整流素子を用いた場合の画素発光制御の手順例を以下に示す。これは、図6に示したような列電極(データ信号線、あるいはY電極)116と、行電極(タイミング信号線、あるいはX電極)104のストライプ電極を組合わせた列電極と行電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行うものであり、ある選択された行のデューティー期間において、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって前記整流素子を導通状態とし前記キャパシタ部に電荷を蓄積する第1のステップと、次いで、前記整流素子を非導電状態とする信号を該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第2のステップとを有し、前記選択された行の非デューティー期間においては、前記キャパシタ部に蓄積した電荷により該発光部に流れる電流を保持させる第3のステップを有する。また、次のデューティー期間においては、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって該発光部を導通状態とし、前記キャパシタ部に残存する電荷を放出する第4のステップと、前記該発光部を非導電状態とする信号を該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第5のステップからなる。
【0051】
整流素子を介してキャパシタ部に電荷を蓄積する際には、その整流素子の特性に応じて、電荷の蓄積に十分な電流を流せる信号を印加する。またこの電荷は、所要の発光輝度を実現するための電荷とすることができ、電荷量に応じて階調表示を行なうことが可能となる。
【0052】
さらに、非導通状態とする場合にリーク電流を実用上非導通状態とみなせる程度に抑えることができるような信号とすることも好適である。
【0053】
また、上記第4、5のステップを予め定められた第1のウインドウ期間706に行い、第1、2のステップを予め定められた第2のウインドウ期間705において行なうことができる。この第1および第2のウインドウ期間は、ある選択される行ごとに定まるデューティー期間に、この順に定められる時間間隔である。第4、5のステップは残留電荷の放出による前歴の消去であり、第1、2のステップは次の信号の書込みに相当するので、上記の順序で行うことが好適である。
【0054】
整流素子は、高電圧において低抵抗を示し低電圧で高い抵抗を示す場合、整流素子に高い電圧がかかると整流素子を介したキャパシタへの充電が可能となり、電圧が下がると充電された電荷は整流素子を通じて漏れることが無く、マトリクス駆動が可能となる。
【0055】
本発明においては、第1電極と、第2電極と、該第1電極に電気的に接続された整流素子と、該整流素子と電気的に接続され該第2組の電極に電気的に接続された発光部と、該発光部に電気的に並列となるように該整流素子及び前記第2組の電極に電気的に接続されたキャパシタ部とを備えてなる表示装置の駆動方法であって、デューティー期間において、前記第1電極と前記第2電極の両方、もしくはいずれか一方に電圧オフセット信号を印加し、前記キャパシタ部に残存する電荷を発光部を介して放電させる第1のステップと、次いで、前記発光部を発光させるための電荷を前記キャパシタ部に蓄積する第2のステップとを有し、非デューティー期間において、前記キャパシタ部に蓄積した電荷を、前記発光部を通じて放電させて、該発光部を発光させるステップを有する、表示装置の駆動方法が提供される。
【0056】
デューティー期間に第1のステップとしてその以前の駆動によってキャパシタに残留している電荷を放電させることにより、非発光の表示にそれ以前の駆動の影響による発光が影響しないという効果を有する。
【0057】
さらに、上記表示装置の駆動方法において、前記第1電極が互いに平行に複数形成された第1組のストライプ電極の一つであり、前記第2電極が該第1組のストライプ電極に交差する方向に互いに平行に複数形成された第2組のストライプ電極の一つであり、前記表示装置は、該第1組のストライプ電極の各電極と第2組のストライプ電極の各電極との交差する点にある複数の画素を基板上に備えており、前記整流素子が、前記第1組のストライプ電極の一つに電気的に接続され、該複数の画素のそれぞれに備えられた整流素子であり、前記発光部が、前記整流素子と前記第2組のストライプ電極の一つとに電気的に接続され、該複数の画素のそれぞれに備えられた発光部であり、キャパシタ部が、該発光部に並列となるように、該整流素子及び前記第2組のストライプ電極の該電極に電気的に接続され、該複数の画素のそれぞれに備えられたキャパシタ部であり、前記表示装置が、前記第1組および前記第2組のストライプ電極を組合わせた行電極と列電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行ないうものであることを特徴とすると、好適である。これにより、多数のストライプ電極を用いてドットマトリクス表示を行なうことができる。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、スイッチング素子、発光素子、コンデンサーの総てを厚さ100nm程度の有機電子材料薄膜と金属電極薄膜よりなるものとする事ができる。これにより、表示装置の低コスト化、大面積化や、表示装置への可撓性基板の適用が容易となる効果がある。また、多階調表示が低コストで実現される。コンデンサーが有機EL発光素子と並列接続された薄膜発光素子において、発光素子やコンデンサーへの面積的な制限を最小限にする表示装置やその製法が提供される。
【0059】
また、コンデンサー部の誘電層に、比誘電率の高い材料である分散された多数の導電性微粒子を含む有機誘電体層を用いたり、比誘電率の高いチタン酸バリウムストロンチウム酸化物を用いる本発明の好ましい構成によれば、誘電率が高くて少ない面積で多くの電荷を蓄えることができ、発光部とコンデンサー部を物理的に並置する場合に発光部の面積を稼ぎ、電流密度を小さくして高い発光効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明における表示素子の構成例を示す説明図である。
【図2】スイッチング素子として双安定素子を用いる場合の表示素子の等価回路を例示した説明図である。
【図3】スイッチング素子として双安定素子を用いる場合の表示素子にかかる電圧と発光状態の一例を示す説明図である。
【図4】直列に接続された有機EL素子および双安定素子に電圧を印加した時の電圧配分を示す説明図である。
【図5】デューティー期間、非デューティー期間に各表示素子にかかる電圧印加方法の一例を示す説明図である。
【図6】スイッチング素子として整流素子を用いる場合の等価回路を示す説明図である。
【図7】スイッチング素子として整流素子を用いる場合の表示素子にかかる電圧と発光状態の一例を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態における表示装置の構造と製造方法を示す説明図である。
【図9】従来の、有機EL素子とスイッチング素子を直列接続(積層)した構成例を示す断面図である。
【図10】ディスプレイ装置用のマトリックス構成を例示した説明図である。
【図11】Off信号電圧がプラスの場合のスイッチング素子の電圧・電流特性を示す図である。
【図12】スイッチング素子として整流素子を用いる場合の表示素子にかかる電圧と発光状態の図7の他の例を示す説明図である。
【図13】有機電子材料としてC60を用いたダイオード素子の電圧・電流特性の一例を示す図である。
【図14】有機電子材料としてペンタセンを用いたダイオード素子の電圧・電流特性の一例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態における有機EL素子に流れる電流の時間変化を示す図である。
【図16】有機電子材料としてポリエチレンジオキシチオフェン膜とポリフェニレンビニレン膜を用いたダイオード素子の電圧・電流特性の一例を示す図である。
【図17】実施例2における有機EL素子の電圧・電流特性の一例を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態における各電極に印加する電圧波形及び各電極や素子に印加される電圧波形、並びに、発光強度の時間変化を示す特性図である。
【図19】電圧波形及び発光強度の時間変化における一部を拡大した特性図である。
【図20】本発明の発光素子の電気特性例を示す説明図である。
【図21】本発明の実施の形態における表示装置のある画素の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
102、802 プラスティック基板
104、804 行電極、タイミング信号線、X電極
116、834 列電極、データ信号線、Y電極
110 発光部
114 スイッチング素子
106 コンデンサー部
112 画素電極
702 デューティー期間
704 非デューティー期間
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
[実施の形態1]
[概要]
以下に実施の形態1を詳述する。実施の形態1においては、デューティー期間においてマトリックスのデューティー駆動される行の画素に並列に接続されたコンデンサーへ発光量に応じた電荷を蓄積し、デューティー期間外の時間には当該コンデンサーからの放電によって発光を継続する。
【0063】
従来、コンデンサーに用いる誘電体としてセラミック酸化物系の材料が多く用いられてきたが、基板の変形に追従できないなどの問題があった。本実施の形態は、導電性微粒子を分散させた有機誘電体によって誘電体層を構成する事により、従来のコンデンサーの欠点を解消したものである。また、本実施の形態におけるスイッチング素子としては、印加される電圧が第1の閾値より大きくなった後は導電状態を呈し、第2の閾値より小さくなった後は非導電状態を呈するスイッチング素子(双安定素子)、もしくは整流素子(ダイオード素子)を用いる。これらの素子は薄膜面の垂直方向に電流を流すため発光素子との積層状態で用いることが容易であるとともに、薄膜の面内方向に電流を流すのに比べて電流経路の面積が大きくとれるため大きな電流を得やすいという特徴がある。特に双安定素子はパルス状の電界を印加することにより電気抵抗を数桁のオーダーで変化させる事が可能であり、制御性、発光素子とのマッチングの点で簡便であり、かつ電流有効面積が大きいことから大電流を得やすく、また転移速度も大きいなど、好適なスイッチング素子である。
【0064】
これらのスイッチング素子を介して、各行にはそのデューティー期間において、各発光部に並列に接続されたコンデンサーへ電荷が蓄積される。非デューティー期間には、各画素はスイッチング素子により信号線(例えば、列電極)から電気的に隔離され、コンデンサーに蓄積された電荷により発光を継続する。蓄積される電荷量は所要の発光強度に応じて調整可能であるので、容易に階調表示を得ることができる。
【0065】
なお、本発明においては、好ましくは、コンデンサとしてセラミック酸化物系を用いることが可能である。例えば、代表的な強誘電体であるチタン酸バリウムストロンチウムをRFマグネトロンスパッタ法により数100nmの厚さで成膜し、これを約650℃で熱処理をすることにより良好なコンデンサを得ることが出来る。なお、例えば、特開2002−280380号公報に記載があるように、プラズマアニールをすることで、チタン酸バリウムストロンチウムを低温成膜した場合であっても、例えば、比誘電率が40を超えるような高い誘電率が得られることが知られている。
【0066】
[詳細]
図1は本実施の形態における表示装置10について、そのうちの一つの画素の断面構造を示す断面図である。プラスティック基板102の一方の面に、ITO(インジウムスズ酸化物)による透明電極材料により、行電極104が形成されている。この行電極104は、タイミング信号線やX電極などと呼ばれることもある(例えば、図2)。この行電極104は、互いに平行なストライプ状の複数の電極にパターニングされている。図では、その1画素を拡大しているため、パターニングされている全体は示していない。行電極104には、隔壁108によって分離されるように、有機EL素子による発光部110とコンデンサー部106が並置されている。さらに、金属(例えば、アルミニウム)によって作製された画素電極112が形成され、スイッチング素子114が形成されて、金属によって作製され、行電極104に交差するように互いに平行なストライプ状の複数の電極にパターニングされた列電極116が形成されている。この列電極116は、データ信号線やY電極などと呼ばれることもある(例えば、図2)。各電極や有機EL素子、スイッチング素子、コンデンサー部などは薄膜により形成され、有機EL素子やスイッチング素子の電流は膜面に垂直に流れる。
【0067】
スイッチング素子114として双安定素子202を用いる場合について説明する。図2はこの場合の表示装置10のある画素についての等価回路図であり、図3は、ある画素について、列電極(データ信号線、あるいはY電極)116に印加される電圧波形(図3a)と、行電極(タイミング信号線、あるいはX電極)104に印加される電圧波形(図3b)と、それらから算出される、発光部110及びスイッチング素子114にかかる電圧波形(図3c)を概略的に示す図である。発光部110の発光状態314も、図3cに示されている。
【0068】
各画素の双安定素子202は、その画素が属する行のデューティー期間302内(選択期間内)に、まず、列電極116のオン信号306の電圧と行電極104の電圧の差のうち、双安定素子202に分配される電圧によって導電状態となる。そして、充電電圧310にされている列電極(データ信号線)116からの電流が、コンデンサー部106に流れ込んで蓄積される。デューティー期間302以外の期間(非デューティー期間304)になる直前に、双安定素子202が、列電極116のオフ信号308の電圧と行電極104の信号キャンセル用オフセット電圧312の差のうち、双安定素子202に分配される電圧によって非導電状態となり、画素電極112が列電極116から切断される。この切断の後は、コンデンサー106が放電することにより発光状態314が継続する。
【0069】
図4は、デューティー期間302、非デューティー期間304に発光部110と双安定素子202に分配される電圧の関係を示す。図4のコンデンサー402aは、双安定素子202が非導通状態(off状態)にある場合を示し、抵抗402bは、双安定素子202が導通状態(on状態)にある場合を示す等価回路要素である。行電極と列電極の間の電位差は、非導通状態においては全て双安定素子202に分配されるが、導通状態においてはα(0<α<1)だけの割合が双安定素子202に分配される。なお、双安定素子202の動作は、図11の従来の双安定素子の動作特性図に示されたものと概ね同様である。
【0070】
次に、図5について詳細に説明する。図5aは選択行のデューティー期間における当該選択行の電圧波形を示し、図5bは、図5aと同じ時間における、非選択行の電圧波形を示す。なお、比較しているのは、選択行に属するある画素と、その画素と同じ列の非選択行に属す別の画素との2つの画素における波形である。列電極116はこれらの両画素に共通しているものであり、電圧波形516が印加される。
【0071】
選択行においては、タイミング信号線104の電圧波形508には何らのバイアス電圧も印加されていない。これに対し、非選択行においては、タイミング信号線104の電圧波形510にオフセット電圧Vcと−Vdがオン信号502とオフ信号506に合わせて印加されている。双安定素子202に対する電圧は、選択行においては、電圧波形516のうちのα倍が印加されるのに対し、非選択行においては、電圧波形VdからVcを除いた電圧(オン信号502の期間)や電圧波形VdにVcを加えた電圧(オフ信号506の期間)が印加される。非選択行において加えられたオフセット電圧は、データ信号線116からの導通、非導通の切替信号の影響を非選択行において回避するためのものである。なお、この方法とは逆に、デューティー期間においてタイミング信号線に適切なバイアスを印加することにより導通、非導通の切替信号を与え、非デューティー期間はバイアスを与えない方法も当然可能である。
【0072】
次に、これらの電圧の関係について説明する。このスイッチング素子にはバイアス電圧Vbが印加されており、当初off状態であったものが、デューティー期間の最初の時点でonへの切替信号(Von)が印加されて電流が立ち上がり、デューティー期間の間on状態が維持される。デューティー期間終了の時点でoffへの切替信号(−Voff)により電流が立ち下がる。VonおよびVoffは、切り替えの閾値Vth1,Vth2に対し、Vb+Von>Vth2,Vb−Voff<Vth1となるよう設定される。当該行以外の行では、図5に示すようにそれぞれのウインドウ内でのバイアスを−Vc,Vdだけオフセットさせ、該当行以外の行でスイッチングが起こることを防ぐ。この方法による場合の電圧値を、双安定素子の特性、特に閾値電圧と以下の関係式を満たすように設定することで、良好な動作を得ることができる。
α(Vb−Voff)<Vth1<αVb (式1)
Vth1<(Vb−Vc)<Vth2 (式2)
Vth1<(Von+Vb−Vc)<Vth2 (式3)
Vth1<(Vb+Vd)<Vth2 (式4)
Vth1<(Vb+Vd−Voff)<Vth2(式5)
【0073】
図6はスイッチング素子として整流素子602を用いる場合の等価回路であり、図7は、ある画素について、列電極(データ信号線、あるいはY電極)116に印加される電圧波形(図7a)と、行電極(タイミング信号線、あるいはX電極)104に印加される電圧波形(図7b)と、それらから算出される、発光部110及びスイッチング素子114にかかる電圧波形(図7c)を概略的に示す図である。発光部110の発光状態710も、図7cに示されている。その場合の電圧と発光状態の一例を示す説明図である。整流素子は高い電圧領域で抵抗が小さくなる非線形性を有している。デューティー期間702内にはタイミング信号線(行電極)104にマイナスバイアス−Vbを印加し、整流素子の抵抗を小さくすることで導通状態を得る。データ信号線に印加されるのがVonである場合には整流素子に印加される電圧はVon+Vbとなる。非デューティー期間704にはバイアスを印加せず、低電圧での駆動とすることで実質的に非導電状態となる。
【0074】
また、図7においては、発光部があるフレーム期間に発光状態に制御されると、そのフレームの終了時においてもコンデンサに電荷が残留し、次のフレーム期間の発光部の状態(発光状態、もしくは非発光状態)に影響を与える可能性がある。特に、次のフレームが非発光状態である場合には、適切な消光信号によって前の発光状態の履歴を消去する必要がある。のために、本実施の形態では、例えば図12に示すように、各行のデューティー期間を2つに分割し、各列電極には、ある期間内において電圧VLonの発光信号電圧、もう一つの期間内において電圧−VLoffの非発光(消光)信号電圧を印加し、各行電極には、選択期間(デューティー期間)内のそれぞれの期間において電圧VAonの電圧と電圧−VAoffの電圧を印加している。本実施の形態では、発光信号電圧を印加する期間はデューティー期間の後半であり、消光電圧信号を印加する期間はデューティー期間の前半である。また、各行電極において印加する電圧波形は、発光信号、非発光信号とは逆極性のバイアス電圧となる。このような行電極と列電極の電圧波形によって、デューティー期間の後半に発光部110が発光し、非デューティー期間にはコンデンサの作用によってその発光が継続し、次のフレームのデューティー期間の前半に発光部110の発光が停止する(発光強度変化150)。図13に例示するように、有機電子材料としてC60を用いたダイオード素子602の逆バイアス電流は逆バイアス電圧とともに大きくなるので、充分な逆バイアス電圧を印加することにより、コンデンサ106に残留した電荷を放電させることが可能である。なお、図13ではフレーム期間の開始をデューティー期間の開始と一致させて描いているが、一般には、この期間の開始のタイミングは必ずしも一致するとは限らない。
【実施例1】
【0075】
ITO付ポリエチレンテレフタラート基板上にフォトプロセスにより絶縁性の隔壁を作製し、区切られた2つの領域を一組として、その一方に発光素子、一方にコンデンサーを形成した。それぞれの面積は同一とした。更にこの2つの素子の両方を覆う形でスイッチング素子を形成した。ITOは1.0mmピッチ、幅0.7mmで15列のストライプ電極となるようパターニングが予めなされている。
【0076】
まず発光素子としてポリエチレンジオキシチオフェン膜とポリフェニレンビニレン膜をインクジェット法により順次形成し、その後、カルシウム膜を真空蒸着により成膜して有機EL層を形成した。各層の厚さは、それぞれ100nm、100nm、100nmとした。
【0077】
次に、コンデンサー素子は真空蒸着法により、絶縁性有機物としてアミノイミダゾールジシアネート(化合物1)、導電性微粒子としてアルミニウムを用いてこれらを共蒸着法にて誘電体層を形成し、その後、電極層としてアルミニウムを順次連続して薄膜を形成し、コンデンサーを形成した。なお、電極層、誘電体層、電極層は、それぞれ、130nm、40nm、130nmの厚さとなるように成膜した。また、蒸着装置は拡散ポンプ排気で、4×10−4Pa(3×10−6torr)の真空度で行なった。また、アルミニウムの蒸着は抵抗加熱方式により成膜速度は30nm/secで行い、導電性微粒子としてアルミニウムを含有するアミノイミダゾールジシアネートは、共蒸着法により作製した。蒸着は抵抗加熱方式であり、成膜速度はアミノイミダゾールジシアネートが20nm/sec、アルミニウムが10nm/secである。各層の蒸着は同一蒸着装置で連続して行い、蒸着中に試料が空気と接触しない条件で行った。
【0078】
これに連続してアルミニウム、ジシアノ系化合物(化合物1)、アルミニウムを順次、それぞれ100nm、30nmと100nm厚さで2つの素子の両方を覆う形で真空蒸着成膜することにより、有機ELとコンデンサーに直列にスイッチング素子部を形成した。この層構成で、スイッチング素子部は後述するような双安定特性を示した。スイッチング素子部の最後の電極は、前記ITO電極とは直交して、1mmピッチ、幅0.7mmで10行のストライプ電極となるようパターニングを行った。これによって15列,10行のマトリックスを形成して、実施例1の表示装置を作製した。
(化合物1)
【化1】
【0079】
スイッチング素子の性能は、Vth1が0.0V、Vth2が5.0V、バイアス4.0Vでのon状態での電流密度が40mA/cm2、off状態での電流密度が0.1mA/cm2であった。on状態での有機EL素子の電圧降下は3.5V、発光強度は30Cd/m2であり、off状態での電圧降下、発光は観測されなかった。
【0080】
パネル全体の走査周波数を240Hz、すなわち走査周期を約4.2msecとすると、各行あたりのデューティー期間は0.42msecとなる。スイッチング素子(双安定素子)のon/offの切替えのためのウインドウ時間幅を0.01msec、切替信号のパルス幅を0.005msecとし、Vb=4.0V、Von=1.5V、Voff1=4.0V,Voff2=5.5V、Vc=1.5V、Vd=0.8Vと設定することにより、パネルは順調に動作した。この時のコンデンサーに蓄積される電荷量は最大約12μQ/cm2、双安定素子の最大電流密度は約40mA/cm2であった。最大電流密度に関しては、スイッチング素子の有効面積が、コンデンサーや発光素子の約2倍であることから、その分だけ低い値で動作可能であった。また、これによりパネルの平均輝度として25Cd/m2を得た。また、デューティー期間中の充電電荷量の総量は電流時間を変えることで容易に制御可能であり、これにより発光輝度の階調を得る事ができた。
【実施例2】
【0081】
コンデンサーに導電性微粒子を分散させて、誘電率を増大させる実施例について説明する。この導電性微粒子として金を用い、電極層、誘電体層、電極層の膜厚を、それぞれ、110nm、80nm、110nmとした他は実施例1と同様に試料を作製し、実施例1と同様の試験を行った。同様の条件でパネルは順調に動作し、コンデンサーに蓄積される電荷量は最大約15μQ/cm2、双安定素子の最大電流密度は約40mA/cm2であった。また、これによりパネルの平均輝度として30Cd/m2を得た。発光輝度の階調は実施例1と同様に容易に得る事ができた。
【実施例3】
【0082】
ITO付ポリエチレンテレフタラート基板上にフォトプロセスにより絶縁性の隔壁を作製した後、ポリエチレンジオキシチオフェン膜とポリフェニレンビニレン膜をインクジェット法により順次形成し、その後、カルシウム膜を真空蒸着により成膜して整流素子を形成した。各層の厚さはそれぞれ200nm、40nm、120nm厚さであった。その後、同隔壁の半分の領域に有機EL層として、銅フタロシアニン(CuPC)/ナフチルフェニルジアミン(NPB)/アルミニウムキノリン(Alq3)/カルシウム電極を順次真空蒸着で成膜した。各層の厚さは、それぞれ100nm、50nm,50nm、100nmとした。この後、残りの半分の領域にコンデンサー部を実施例1と同様に構成した。有機EL部とコンデンサー部の蒸着領域の選択はメタルマスクによった。有機EL部とコンデンサー部の蒸着の後、両素子を被う共通電極としてアルミニウム膜を蒸着した。このアルミニウム膜は前記ITO電極とは直交して、1mmピッチ、幅0.7mmで10行のストライプ電極となるようパターニングを行った。これによって15列,10行のマトリックスを形成している。
【0083】
上記の整流素子と有機EL素子の順方向の電流電圧特性を図16、17に示す。また、電圧降下を測定したところ、例えば電流密度が40mA/cm2とするための電圧降下は、整流素子では約3.5Vであるのに対し、有機EL素子部では6.2Vであった。即ち、本実施例においては、合計9.7Vの印加により、コンデンサーを6.2Vで充電することが可能であった。また、この際、最大電荷蓄積量として約19μQ/cm2を得た。本実施例においては、パネルの平均輝度として50Cd/m2を得た。デューティー期間における充電電荷量は、電流時間を変えること、もしくは電圧値を変えることで容易に制御可能であり、これにより発光輝度の階調を得る事ができた。
【実施例4】
【0084】
コンデンサーに用いる導電性微粒子として金を用い、電極層、誘電体層、電極層の膜厚を、それぞれ、110nm、80nm、110nmとした他は実施例3と同様に試料を作製し、印加電圧を15Vとした他は実施例3と同様の試験を行った。同様の条件でパネルは順調に動作し、コンデンサーに蓄積される電荷量は最大約30μQ/cm2、双安定素子の最大電流密度は約60mA/cm2であった。また、これによりパネルの平均輝度として50Cd/m2を得た。発光輝度の階調は実施例3と同様に容易に得る事ができた。
【実施例5】
【0085】
ITO付ポリエチレンテレフタラート基板上にフォトプロセスにより絶縁性の隔壁を作製した後、各画素のうち同隔壁によって仕切られた一方の半分の領域に有機EL層として銅フタロシアニン(CuPC)/ナフチルフェニルジアミン(NPB)/アルミキノリン(Alq3)/カルシウム電極を順次真空蒸着で成膜した。各層の厚さは、それぞれ100nm、50nm、50nm、100nmとした。この後、各画素のうち隔壁によって仕切られた残りの半分の領域にコンデンサー部を実施例1と同様に構成した。有機EL部とコンデンサー部の蒸着領域の選択はメタルマスクにより行なった。EL部とコンデンサー部の蒸着の後、整流素子として、両素子を被うようにアルミニウム膜を蒸着し、その上にフラーレン(C60)、銅を連続して蒸着した。各層の膜厚は、100nm、100nm、100nmとした。最後の銅膜は、前記ITO電極とは直交して、1mmピッチ、幅0.7mmで10行のパターニングを行なった。これによって、15列10行の画素マトリクスを形成している。
【0086】
上記の整流素子と有機EL素子の電圧降下を測定したところ、例えば電流密度が40mA/cm2とするための電圧降下では、整流素子では約0.5Vであるのに対し、有機EL素子部では6.2Vであった。即ち、本実施例においては、合計6.7Vの印加により、コンデンサーを6.2Vで充電することが可能であった。また、この際、最大電荷蓄積量として約19μQ/cm2を得た。これにより、パネルの平均輝度として50Cd/m2を得た。デューティー期間内充電電荷量は充電時間を変えること、若しくは、電圧値を変えることで容易に制御可能であり、これにより発光輝度の階調を得ることができた。
【実施例6】
【0087】
試料ITO電極と銅電極のピッチをともに0.5mm、幅0.3mmとし、それぞれ100列および100行を形成した他は、実施例5と同様にして実施例6の試料を得た。この結果、電気特性、発光特性は実施例5と同等の値を得た。このようにして得られた試料を用いて、電圧8V、フレーム周波数120Hzの条件で駆動を行った。
【0088】
このように駆動した試料を用いて電圧降下を測定したところ、整流素子では約0.7Vであるのに対し、有機EL素子部では7.3Vであった。即ち、本実施例においては、合計8Vの印加により、コンデンサーを7.3Vで充電することが可能であった。また、この際、最大電荷蓄積量は約21μQ/cm2であった。本実施例においては、パネルの平均輝度として70Cd/m2を得た。図15にはこの時の有機EL素子に流れる電流の時間変化を示す。
【実施例7】
【0089】
ITO付ポリエチレンテレフタラート基板上にフォトプロセスにより絶縁性の隔壁を作製した後、各画素のうち同隔壁によって仕切られた一方の半分の領域に有機EL層として銅フタロシアニン(CuPC)/ナフチルフェニルジアミン(NPB)/アルミキノリン(Alq3)/アルミニウム電極を順次真空蒸着で成膜した。各層の厚さは、それぞれ100nm、50nm、50nm、100nmとした。この後、各画素のうち隔壁によって仕切られた残りの半分の領域にコンデンサー部を実施例1と同様に構成した。有機EL部とコンデンサー部の蒸着領域の選択はメタルマスクによった。EL部とコンデンサー部の蒸着の後、整流素子として、有機EL部とコンデンサー部を被って画素ごとの島状の電極になるようにマスク蒸着を行なって金膜を蒸着し、その上にペンタセン膜、アルミ膜を連続して蒸着した。各層の膜厚は、それぞれ、100nm、100nm、100nmとした。最後のアルミ膜は、前記ITO電極とは直交して、1mmピッチ、幅0.7mmで10行のパターニングを行った。これによって、15列10行の画素マトリクスを形成している。
【0090】
上記の整流素子と有機EL素子の順方向の電圧降下を測定したところ、例えば電流密度が40mA/cm2とするための電圧降下は、整流素子では約2.0Vであるのに対し、有機EL素子部では6.2Vであった。即ち、本実施例においては、合計8.2Vの印加により、コンデンサーを6.2Vで充電することが可能であった。また、この際、最大電荷蓄積量として約19μQ/cm2を得た。これによりパネルの平均輝度として54Cd/m2を得た。デューティー期間内充電電荷量は充電時間を変えること、若しくは、電圧値を変えることで容易に制御可能であり、これにより発光輝度の階調を得ることができた。また、実施例5に比して高い平均輝度が得られたのは、本実施例で用いた整流素子の電気特性(図14)においては、実施例5の整流素子の電気特性(図13)よりも逆バイアスでの漏れ電流が小さく、有機ELに流れる電流効率が高くなったためと推定される。
【実施例8】
【0091】
ガラス基板上に、厚さ100nmのITO膜をRFマグネトロンスパッタ法により成膜した後、通常のフォトリソグラフ法を用いて1.0mmピッチ、幅0.7mmでストライプ状に15列の電極列を形成した。更に当該ITO電極上に1.0mmピッチ、幅0.3mmで白金膜を50nmの厚さで形成し、チタン酸バリウムストロンチウム酸化物を形成する下地電極をITO電極上に島状に形成した。更にその上にRFマグネトロンスパッタ法と通常のフォトリソグラフ法を用いて、白金膜上にチタン酸バリウムストロンチウム酸化物を厚さ100nmで形成し、その後酸素雰囲気中1時間の熱処理を行ってコンデンサーとした。その後、そのコンデンサーに接する形で隔壁を形成し、実施例5と同様にして発光素子を形成した。その後は実施例5と同様にして実施例8の試料を得た。
【0092】
上記の整流素子と有機EL素子に順方向に電圧を印加した際の電圧降下は、例えば電流密度が40mA/cm2とするための電圧降下では、整流素子では約0.5Vであるのに対し、有機EL素子部では6.2Vであった。即ち、本実施例においては、合計6.7Vの印加により、コンデンサーを6.2Vで充電することが可能であり、最大電荷蓄積量として約40μQ/cm2を得た。これにより、パネルの平均輝度として100Cd/m2を得た。デューティー期間内充電電荷量は充電時間を変えること、若しくは、電圧値を変えることで容易に制御可能であり、これにより発光輝度の階調を得ることができた。
【実施例9】
【0093】
ITO電極と銅膜の列、行のマトリックス数を50列、50行とした他は実施例5と同様として実施例6の試料を作製した。駆動電圧波形は、図12に示すような波形とした。このとき、フレーム周波数は600Hz(フレーム周期:約1.7ms)とした。各行のデューティ期間は1.7ms/50=35μsとなる。VLonとVAonをともに3.35Vとすることにより、デューティ期間の後半で実施例5と同様にコンデンサーには約19μQ/cm2の電荷が蓄積される。コンデンサーに蓄積された電荷は非デューティ期間に有機ELの発光部110を通じて放電される。有機EL発光部110の電圧電流特性は非線形であるので放電特性は単純な数式では表されないが、フレーム周期である1.7ms経過後の残留電位(発光部110およびコンデンサー106にかかる電位差)は約2.8Vであった。次のフレームのデューティ期間の前半で、VLoffとVAoffをともに4Vとする消去信号を印加した。この時、発光部110およびコンデンサー106にかかる電位差はVLoffの印加により一旦VLoff分だけ上昇し、X(タイミング信号線)電極を基準にした場合のY電極の電位、即ち、ダイオード602にかかる逆方向バイアス電圧は約10Vとなる。図13に例示したように逆バイアス8Vでは100mA/cm2以上の電流密度が得られることから、コンデンサー106に残留した電荷はダイオード602を通して放出される。これを繰返し印加する事により、各フレームの発光状態を、発光させるべき画素において適切に発光させ、同じ画素が消光させるときには適切に消光させることができ、良好に制御できる事を確認した。
【0094】
また特に、整流素子の有機材料として、C60、もしくはペンタセンを用いた場合、電圧印加時の電圧降下が他の有機材料に比して低い。即ち、整流素子における電力損失が抑制されるため消費電力の点で極めて有利となる。これは、これらの材料の電荷移動度が他の材料に比して高いことに起因するものである。
【0095】
[実施の形態2]
[概要]
上述した実施の形態1では、有機誘電体よりなるコンデンサーを有機EL発光素子と並列接続し、これにスイッチング素子を直列接続することにより、すべての素子を有機薄膜で構成した。ここで、実施の形態1においては、発光部と、それに並列に接続されたコンデンサーとが限られた画素面積を分け合っている。具体的には、実施の形態1の表示装置(図1の構成)では、発光部110の領域とコンデンサー部106の領域が平面的に配置されている。このため、大きな面積が取れないことが制約となる場合がある。この面積の制限を無くすことにより、発光素子にかかる電流負荷を低減し、コンデンサーの面積も大きく取ることができる実施の形態2について、以下説明する。
【0096】
本実施の形態では、表示装置の構成要素である発光装置(発光部)、コンデンサー部、スイッチング装置を基板上にほぼ画素面積に近い面積となるように形成し、素子間の配線を素子の側面を利用して行う事により、発光部及びコンデンサー部について実施の形態1の場合よりも広い面積を確保し、性能の改善を図る。当該配線は、素子側面を絶縁体で覆ったバイアを経由して接続されて、短絡などの障害が起こりにくいようにされる。このような表示装置は、オーバーハング部を持つ隔壁を用い、斜め蒸着法によってその隔壁をマスクとして利用することにより実現される。
【0097】
[詳細]
具体的には、実施の形態2においては、図8hに示される構造の表示装置を実現し、図1に示した構成の回路と同様の電気的な接続関係をそのままにして、発光部110とコンデンサー部106を積層配置する。これにより、より広い発光領域とコンデンサー領域を実現する。各素子が薄膜として形成され、電流が各素子中を膜面に垂直に流れる構成となっている点は、実施の形態1と同様である。以下、この構造を実現するための表示装置の製造方法について説明する。
【0098】
まず図8aに示されるように、プラスティック基板802のある面に透明導電材料よりなる電極膜804を、たとえば0.2μmの膜厚に成膜する。表示装置をマトリックス構成にして複数の画素を形成する場合には、電極膜804をさらにフォトリソグラフィー法およびエッチングによってパターニングし、例えば、0.3mmピッチ、0.28mm幅の帯状の形状のストライプ電極に形成される。図8では、そのようなストライプ電極の延びる方向は、図面内左右方向である。
【0099】
次に、図8bに示されるように隔壁806を形成する。この工程では、隔壁のベース部808の材料として例えば非感光性のポリイミドを、スピンコート法で4μm膜厚に透明電極上に形成し、さらに隔壁の上部のオーバーハング部810の材料としてSiO2を、ポリイミド膜上に例えばスパッタリング法で0.5μm膜厚に形成する。その後SiO2膜、及びポリイミド膜を、フォトプロセスによりパターニンングし、オーバーハング部810を持った隔壁806を形成する。このようなT字型の断面の隔壁810は、初めにO2などのガスを用いてリアクティブイオンエッチング(異方性エッチング)を行い、ポリイミド膜70をアンダーカットがないように垂直にドライエッチングし(図の矢印812)、その後、アルカリ溶液で30秒間程度ウエットエッチングを行いポリイミド膜の側面816を等方的にエッチングすることで形成できる(図の矢印814)。
【0100】
次に、図8cに示されるように発光部110として例えば薄膜の有機EL素子を、プラスティック基板802の法線方向に対して一定角度θをなすような斜めの方向から蒸着する。斜め蒸着を行うことにより、隔壁806により影になる部分には発光素子は形成されず、プラスティック基板上の電極は露出したままとなっている。発光部110は、電子輸送層、再結合層、ホール輸送層からなるEL発光層818と、金属電極層820とからなる。
【0101】
次に、図8dに示されるように有機絶縁膜822をプラスティック基板802に垂直方向から蒸着する。この場合、隔壁806のオーバーハング部810の影となるため、隔壁沿いの部分には絶縁膜822は蒸着されない。
【0102】
次に、図8eに示されるように図8cとは逆の方向に傾けた斜め蒸着によりコンデンサー部106を蒸着する。コンデンサーの一方の電極は、絶縁膜822で内張りされたバイア830(図8d)を介してプラスティック基板上の電極膜804と接続するように金属電極824によって形成され、その後、コンデンサーを構成する誘電体層826を形成する。さらに金属電極828を形成する。この際、透明電極材料からなる電極膜804が図8の紙面内左右方向に延びる複数のストライプ状の平行な行電極とされて、紙面に垂直な方向にパターニングされて区切られている場合には、金属電極824および金属電極828も電極膜804に合わせて紙面に垂直な方向に区切られて島状にされていなくてはならない。このため、電極膜804がストライプ状である場合には、図8eの蒸着において金属電極824および金属電極828が透明電極のパターンに合わせてパターニングされるように、適当な開口部を有する蒸着マスクとしてメタルマスク(図示しない)を介して蒸着する。
【0103】
図8eに示したように、コンデンサー部106と発光部110は有機絶縁膜822により隔てて形成される。ここで、図8dまでで形成されたEL発光層818から金属電極828までの膜厚は合計して約300nmであり、透明電極材料からなる電極膜804が露出しているバイア830(図8d)の図面左右方向の幅(約2μm)に比べて充分に小さいので、これのマスクとしての作用はほとんど無視することができるため、図8eにおける金属電極824の成膜に影響することは無い。
【0104】
次に、図8fに示されるように図8dと同様にして有機絶縁膜822aをガラス基板に垂直に蒸着し、有機絶縁膜822と連続するように形成する。発光部110の金属電極820に接続可能なバイア832は、この絶縁膜822aによって内張りされる。次いで、図8gに示されるように金属電極828aを、バイア832を介して金属電極822に接続されるように隔壁の両側から隔壁間全面に蒸着する。この際、金属電極828の場合と同様に、電極膜804がストライプ状である場合には、蒸着マスクを用いてパターニングも行なう。金属電極828と828aが図1の画素電極112の作用をする。さらに、図8hに示されるように、スイッチング素子114、電極層834を隔壁の両側から隔壁間全面に蒸着する。
【0105】
以上の工程により、薄膜発光素子と薄膜コンデンサーが互いに並列接続され、その双方に薄膜スイッチング素子が直列接続された構成において、発光部とコンデンサー部の面積を拡大した表示装置80を作製する事ができる。
【実施例10】
【0106】
ポリエチレンテレフタラート基板上に厚さ0.2μmのITO電極を形成した後、フォトプロセスにより1.0mmピッチ、幅0.7mmで15列のパターニングを施した。次に日本ゼオン製ネガフォトレジストLAX−1を4μmスピンコートにより塗布し、SiO2膜を0.5μm厚だけスパッタにより成膜した。その後、前述と同様の方法にてエッチングすることにより、前記ITO電極とは直角方向に1.0mmピッチで10行の隔壁を得た。隔壁の幅は300μm、高さ4.5μm、オーバーハングは2μmであった。
【0107】
次に発光素子として、Li/アルミニウムキノリン(Alq3)(化合物2)/ナフチルフェニルジアミン(NPB)(化合物2)/銅フタロシアニン(CuPC)を図8cに示す方向から順次真空蒸着で成膜した。各層の厚さは、それぞれ5nm、50nm、50nm、100nmとした。これらの蒸着源は基板から垂直方向に200mmの距離、基板中心から紙面左側に100mmの距離に配置され、開口直径が5mmのルツボを用いた。その後、絶縁層としてパーフルオロテトラコサン(n−C24F50)を100nm、図8dに示す方向から蒸着した。
(化合物2)
【化2】
(化合物3)
【化3】
【0108】
次に、コンデンサー素子は図8eに示す方向から、電極としてアルミニウム、誘電体層としてアミノイミダゾールジシアネートと導電性微粒子としてアルミニウムを共蒸着法にて形成し、その後、電極層としてアルミニウムを順次連続して斜め蒸着して形成した。誘電体層を蒸着する前後のアルミニウムの蒸着においては、ITO電極のパターンのスペース部分に相当する場所にアルミニウムの蒸着を防止するメタルマスクを用いた。各層の膜厚は、100nm、40nm、100nmの厚さとした。この時の蒸着源は基板から垂直方向に200mmの距離、基板中心から紙面右側に100mmの距離に配置され、開口直径が5mmのルツボを用いた。
【0109】
その後、絶縁層としてパーフルオロテトラコサン(n−C24F50)を100nm、図8fに示す方向から蒸着した。
【0110】
続いて、図8g、hに示す方向から、ダイオード素子としてアルミニウム電極/ブタジエン化合物(化合物4)/金電極を膜厚100nm,80nm,100nmとして成膜した。
(化合物4)
【化4】
【0111】
以上の真空蒸着を行った蒸着装置は拡散ポンプ排気で、4×10−4Pa(3×10−6torr)の真空度で行なった。また、アルミニウムの蒸着は抵抗加熱方式により成膜速度30nm/secで行い、導電性微粒子としてアルミニウムを含有するアミノイミダゾールジシアネートは、共蒸着法により作製した。蒸着は抵抗加熱方式であり、成膜速度はアミノイミダゾールジシアネートが20nm/sec、アルミニウムが10nm/secである。各層の蒸着は同一蒸着装置で連続して行い、蒸着中に試料が空気と接触しない条件で行った。
【0112】
上記の構成において、パネルの平均輝度として25Cd/m2を得る条件は以下の通りであった。即ち、パネル全体の走査周波数を240Hz、すなわち走査周期を約4.2msecとすると、各行あたりのデューティー期間は0.42msecとなる。発光素子面積は1画素の約49%を占めるので、約50Cd/m2での発光が必要であった。当該発光素子の効率は約2.5Cd/Aであるので、発光を走査周期4.2msecの間継続するには、50/2.5×4.2×10−3=0.084Q/m2=8.4μQ/cm2以上の電荷がコンデンサーに充電される必要があった。これをデューティー期間0.42msecの間にコンデンサーへ注入するには、スイッチング素子には20mA/cm2以上の電流が流れる必要がある。実際には、デューティー期間中にも発光素子に電流は流れるので、スイッチング素子にはこれらの電流が重畳され、最高約22mA/cm2の電流が流れた。
【0113】
これを従来の図1の構成の場合と比較した。図1の構成では、発光素子の面積が本実施例の約半分であるので発光面での輝度は100Cd/m2が必要となり、コンデンサーに蓄積されるべき電荷量は前記の2倍の約17μQ/cm2が必要であった。デューティー期間でのスイッチング素子の電流密度は最高約22mA/cm2であり、実施例1と大きな違いは無かった。
【実施例11】
【0114】
ポリエチレンテレフタラート基板上に厚さ0.2μmのアルミニウム電極を形成した後、フォトプロセスにより1.0mmピッチ、幅0.7mmで15列のストライブ電極となるようにパターニングを施した。次に日本ゼオン製ネガフォトレジストLAX−1を4μmスピンコートにより、SiO2膜を0.5μmスパッタにより成膜した。その後、前述と同様の方法にてエッチングすることにより、前記アルミニウム電極とは直角方向に1.0mmピッチで10行の隔壁を得た。隔壁の幅は300μm、高さ4.5μm、オーバーハングは2μmであった。
【0115】
次にダイオード素子として、金電極/ブタジエン化合物(化合物4)/アルミニウム電極を膜厚100nm,80nm,100nmとして成膜し、その後、図8cのような斜め蒸着を用いて実施例1のコンデンサーを成膜し、図8dのように有機絶縁膜を形成した。発光素子としては、だけ図8eのように、銅フタロシアニン(CuPC)/ナフチルフェニルジアミン(NPB)/アルミニウムキノリン(Alq3)をそれぞれ100nm、50nm、50nm蒸着した後、Liを5nm蒸着し、図8fのように有機絶縁膜を形成した後に、図8gのように、その上にITOをスパッタにより成膜した。このようにして、実施例11の表示装置を得た。
【0116】
上記の構成において、パネルの平均輝度として50Cd/m2を得る条件は以下の通りであった。即ち、パネル全体の走査条件を実施例1と同じに設定した時、当該発光素子の効率は約2.0Cd/Aであるので、発光を走査周期4.2msecの間継続するには、50/2.0×4.2×10−3=0.105Q/m2=10.5μQ/cm2以上の電荷がコンデンサーに充電される必要があった。これをデューティー期間0.42msecの間にコンデンサーへ注入するには、スイッチング素子には25mA/cm2以上の電流が流れる必要がある。実際には、デューティー期間中にも発光素子に電流は流れるので、スイッチング素子にはこれらの電流が重畳され、最高約28mA/cm2の電流が流れた。
これを従来の構成と比較すると、実施例1と同様に発光素子の面積が約半分であるので発光面での輝度は100Cd/m2が必要となり、コンデンサーに蓄積されるべき電荷量は前記の2倍の約21μQ/cm2が必要であった。
【実施例12】
【0117】
ガラス基板上に、厚さ100nmのITO膜をRFマグネトロンスパッタ法により成膜した後、通常のフォトリソグラフ法を用いて1.0mmピッチ、幅0.7mmでストライプ状に15列の列電極を形成した。更に1.0mmピッチ、幅0.6mmのストライプ形状となるように、RFマグネトロンスパッタ法と通常のフォトリソグラフ法を用いて、10行のチタン酸バリウムストロンチウム酸化物のコンデンサ領域を厚さ100nmだけ形成した。そして、RFマグネトロンスパッタ法と通常のフォトリソグラフ法を用いて、画素単位の島状の形状になるようにITOによる電極を厚さ100nmだけ形成した。さらに、酸素雰囲気中1時間の熱処理を行ってコンデンサーを作製した。当該コンダンサーは実質的にほとんど透明であり、その後に形成される発光部110の光は、このコンデンサーを通して外部へ出射される。次に、日本ゼオン製ネガフォトレジストLAX−1をスピンコートにより4μm厚に成膜し、SiO2膜をスパッタにより0.5μm厚に成膜した。その後、前述と同様の方法にてエッチングすることにより、前記ITO電極とは直角方向に1.0mmピッチで10行の隔壁を得た。隔壁の幅は300μm、高さ4.5μm、オーバーハングは2μmであった。前記コンデンサーはこれらの隔壁の間に配される。
【0118】
次に発光素子として、銅フタロシアニン(CuPC)/ナフチルフェニルジアミン(NPB)/アルミニウムキノリン(Alq3)をそれぞれ100nm、50nm、50nm厚だけ蒸着した後、Liを5nm蒸着し、ダイオード素子として、銅電極/C60/アルミニウム電極を膜厚100nm,80nm,100nmに成膜した。
【0119】
上記の構成において、パネルの平均輝度として70Cd/m2を得る条件は以下の通りであった。即ち、パネル全体の走査条件を実施例1と同じに設定した時、当該発光素子の効率は約2.0Cd/Aであるので、発光を走査周期4.2msecの間継続するには、70/2.0×4.2×10−3=0.147Q/m2=14.7μQ/cm2以上の電荷がコンデンサーに充電される必要があった。これをデューティー期間0.42msecの間にコンデンサーへ注入するには、スイッチング素子には35mA/cm2以上の電流が流れる必要がある。実際には、デューティー期間中にも発光素子に電流は流れるので、スイッチング素子にはこれらの電流が重畳され、最高約37mA/cm2の電流が流れた。
これを従来の構成と比較すると、実施例1と同様に発光素子の面積が約半分であるので発光面での輝度は140Cd/m2が必要となり、コンデンサーに蓄積されるべき電荷量は前記の2倍の約30μQ/cm2が必要であった。
【0120】
このように同じ平均輝度を得るのに必要な発光素子の輝度は、図1の実施の形態1の構成に比べて実施例1では1/2となり、素子寿命が約2倍になることが期待できる。もしくは同じ寿命で2倍の輝度を得ることも可能である。
【0121】
[実施の形態3]
[概要]
本発明の駆動方法の例を図18を用いて示す。本駆動方法は、例えば、図6に示した構成において用いられる。図6はスイッチング素子として整流素子602を用いる場合の等価回路であり、図18は、ある画素に関連し、1フレーム期間において、列電極(データ信号線、あるいはY電極)116に印加される電圧波形(図18a)と、行電極(タイミング信号線、あるいはX電極)104に印加される電圧波形(図18e)と、それらから算出される、発光部110及びスイッチング素子114の接合部Aにかかる電圧波形(図19c)、及びそれらの電位差(図18b、図18d)を示したものである。また、あわせて、発光部110の発光状態も図18eに示す。
【0122】
さらに、図19a〜fにより、図18a〜fそれぞれのデューティー期間内における変化を時間を拡大して詳細に示す。整流素子602(図6)は、高い電圧領域で抵抗が小さくなる非線形性を有している。デューティー期間702の後半705内には、タイミング信号線X(行電極)104にマイナスバイアス−VXonを印加し(図19e)、整流素子の抵抗を小さくさせて導通状態とする。このとき、データ信号線116に印加される電圧をVYonとすると(図19a)、X−Y間の電位差(図示しない)はVXon+VYonとなる。整流素子602、発光素子110、キャパシタ106の電気的接合点をA部と呼ぶ(図6)と、整流素子の順方向抵抗が発光素子の順方向抵抗より充分小さくなるようにすれば、データ信号線Y116の電位とA部の電位はほぼ等しくなる。この結果、A部の電位はYの電位に近いVAonとなり、A−X間の電位差は(VXon+VAon)となる。非デューティー期間704にはタイミング信号線X104の電圧はVXonから0Vにされるが、この時、A部は絶縁状態となっており(即ち、整流素子に対し逆バイアスの関係になっており)、電荷のやり取りがなくなる。その結果、A部の電圧はVXon分だけ低下して、(VXon+VAon)となる。
【0123】
非デューティー期間704においては、タイミング信号線X104およびデータ信号線Y116にはバイアスを印加せず、低電圧で駆動することで整流素子602を実質的に非導電状態とする。このとき、各画素の発光強度は画素毎のVYonの大きさによって制御する事ができる。
【0124】
前述のように、あるフレーム期間が発光状態に制御されると、そのフレーム期間終了時にキャパシタに電荷が残留し、次のフレーム期間の発光状態、もしくは非発光状態に影響を与える可能性がある。特に次のフレーム期間が非発光状態である場合には、適切な消光信号によって前の発光状態の履歴を消去する必要がある。そこで、例えば図7に示すように、各行のデューティー期間を前半706と後半705の2つに分割し、前半706の期間内に残留電荷を放電させる。次のフレーム期間の信号は、デューティー期間の後半705に付加する事により、次のフレームの表示を所望のものとすることができる。
【0125】
[詳細]
本実施の形態の駆動方法においては、タイミング信号線X(行電極)104とデータ信号線Y(列電極)116の両方、もしくはいずれか一方に、それぞれ−VXe、−VYeのバイアス電圧を印加する(図19aおよび図19c)。これによりキャパシタに残留した電荷が発光素子110を介して放電されて、上記の課題を解決することができる。直前の非デューティー期間の終わりにA部に残留した電位をVArとすると(図19c)、タイミング信号線X(行電極)104とデータ信号線Y(列電極)116にバイアス電圧−VXeおよび−VYeをそれぞれ印加することにより、AとXの電位差はVAr+VXeとなり、YとAの電位差は−VAr−VYeとなる。ここで、AとXの電位差はVAr+VXeとなるために、整流素子の順方向したがってAからXへは電流が流れるが、YからAへは逆バイアスとなり電流は流れない。AとXの電位差は非デューティー期間内のVArより大きくなるため放電は速やかに進み、Aの電位はXの電位に近づく。特にVXe<VYeの場合は、Aの電位が−VYeに達すると整流素子602を介してYからの電荷注入が起こり、電位はそれ以上低下しなくなる。この場合はAの電位はより安定化することが可能であるが、一定値になった後にYからXへ電流が流れて発光部106は発光しつづける状態となりコントラスト比(on/off比)が低下する可能性がある。これに対しVXe>VYeとすると(図19d)、Yからの電荷注入は抑制されるので、残留電荷のみが発光に寄与する事となり、コントラスト比の制御が容易になる。いずれの場合も、VYeはデータ信号線Y(列電極)116を介して付加されるため、各画素の履歴を反映させることが可能であり、求められる画質に対して最適な値を選定する事が出来る。
【0126】
本実施の形態においては、前記整流素子は、例えば、アルミニウム薄膜/フラーレン薄膜/銅薄膜の積層構造を有するものや、アルミニウム電極/ペンタセン化合物/金電極の積層構造を有するものが好適であるがそれに限定されるものではなく、多くの有機電子材料が適用可能である。
【0127】
キャパシタについては、各種金属酸化物、例えばシリコン、アルミ、タンタル、チタン、ストロンチウム、バリウムなどの酸化物、あるいはこれらの混合酸化物を用いることが可能である。また、導電性微粒子を有機材料に分散させると、誘電層の実効誘電率が上昇するために、小さな面積で十分な容量を備えるキャパシタ部を形成することができるので、これを用いる事も可能である。特に後者の場合は低温プロセスでの形成が可能であり、プラスチック基板を用いる場合には好適である。
【0128】
本実施の形態においては、デューティー期間においてマトリックスのデューティー駆動される行の画素中のキャパシタへ、発光量に応じた電荷を第1の整流素子を介して蓄積し、デューティー期間外の時間には当該キャパシタで保持される電位によって発光部へ流れる電流保持して発光を継続する。
【0129】
本実施の形態におけるスイッチング素子としては、高速動作が可能な整流素子を用いている。また、基板として耐熱性を有するガラス等を基板として用いる場合は、キャパシタとしてセラミック酸化物系を用いることが可能である。例えば、代表的な強誘電体であるチタン酸バリウムストロンチウムをRFマグネトロンスパッタ法により数100nmの厚さで成膜し、これを約650℃で熱処理をすることにより良好なキャパシタを得ることが出来る。また、プラスチック基板を用いる場合はキャパシタとしては、導電性微粒子を分散させた有機誘電体によって誘電体層を構成する事が出来る。
【0130】
これらの整流素子を介して、各行にはそのデューティー期間において、各発光部に並列に接続されたキャパシタへ電荷が蓄積される。非デューティー期間には、各画素は整流素子により信号線(例えば、列電極)から電気的に隔離され、キャパシタに蓄積された電荷により発光を継続する。蓄積される電荷量は所要の発光強度に応じて調整可能であるので、容易に階調表示を得ることができる。
【0131】
図21は本実施の形態における表示装置について、そのうちの一つの画素の構造例を示す断面図である。透明基板102の一方の面に、ITO(インジウムスズ酸化物)による透明電極材料により、行電極104が形成される。この行電極104は、互いに平行なストライプ状の複数の電極にパターニングされている。このように形成された行電極104上とその周辺に隔壁108をフォトレジスト等により形成する。次に、行電極104上の隔壁によって仕切られた部分に、有機EL素子等による発光部110とキャパシタ部106を並置するように形成する。次に、画素単位に孤立した島状の電極面(画素電極)112、薄膜整流素子602を形成する。次に整流素子602の上に、行電極104に交差するように互いに平行なストライプ状の複数の電極にパターニングされた金属により列電極116を形成する。各電極や有機EL素子、薄膜整流素子、キャパシタ部などは薄膜により形成され、有機EL素子や薄膜整流素子の電流は膜面に垂直に流れる。
【実施例13】
【0132】
ポリエチレンテレフタラート基板上に通常のフォトプロセスとスパッタにより行電極としてITO(インジウムスズ酸化物)透明電極よりなるストライプ電極を100組形成した。100組の電極のピッチは500μmとし、各電極の幅は450μmとした。また、各電極の厚さは100nmとした。その後、絶縁性の隔壁をフォトプロセスにより電極の長手方向に100組形成した。パターンのピッチは500μmとし、各組は隔壁により2つの領域に分けられる。これにより、100×100組の画素が形成された。次いで、ITO電極の長手方向に上には、区切られた2つの領域を一組として、その一方に発光素子、一方にキャパシタを形成した。それぞれの面積は220μm×450μmで同一とした。
【0133】
発光素子として有機EL層を、銅フタロシアニン(CuPC)(アルドチッチ社製)/ナフチルフェニルジアミン(NPB)(アルドチッチ社製)/アルミニウムキノリン(Alq3)(アルドチッチ社製)/カルシウム電極を順次真空蒸着で成膜した。各層の厚さは、それぞれ100nm、50nm、50nm、100nmとした。
【0134】
また、キャパシタ素子は真空蒸着法により、絶縁性有機物としてアミノイミダゾールジシアネート(化合物1)、導電性微粒子としてアルミニウムを用いてこれらを共蒸着法にて誘電体層を形成した。具体的には、アルミニウム層、アミノイミダゾールジシアネート層、アミノイミダゾールジシアネートとアルミニウムの共蒸着層、アミノイミダゾールジシアネート層、アルミニウム層を順次連続して薄膜を形成した。各層の膜厚は、それぞれ、60nm、40nm、30nm、40nm、60nmの厚さとした。
【0135】
整流素子については、アルミニウムよりなる電極上にC60(アルドチッチ社製)(120nm厚)とCu電極(60nm厚)を成膜して作製した。その後、列電極116をアルミニウム蒸着により形成した。上記の成膜に用いた蒸着装置は拡散ポンプ排気で、蒸着は4×10−4Pa(3×10−6torr)の真空度で行った。また、アルミニウムの蒸着は抵抗加熱方式により成膜速度は30nm/secで行い、導電性微粒子としてアルミニウムを含有するアミノイミダゾールジシアネートは、共蒸着法により作製した。蒸着は抵抗加熱方式であり、成膜速度はアミノイミダゾールジシアネートが20nm/sec、アルミニウムが10nm/secである。
【実施例14】
【0136】
整流素子として、アルミニウム膜(100nm)、ペンタセン膜(50nm)、金膜(100nm)を連続して蒸着して形成した以外は、実施例13と同様にして実施例14の試料を得た。
【実施例15】
【0137】
基板としてガラスを用い、基板上に、行電極としてITO(インジウムスズ酸化物)透明電極よりなるストライプ電極を交互に50組形成した後、ITO電極上に白金膜を50nmの厚さで形成し、更にRFマグネトロンスパッタ法と通常のフォトリソグラフ法を用いて、白金膜上にチタン酸ストロンチウム・バリウム酸化物を厚さ100nmで形成し、その後酸素雰囲気中1時間の熱処理を行ってキャパシタとした。その他は実施例13と同様の工程として、実施例15の試料を得た。
【0138】
以上の実施例の試料をフレーム周波数60Hz、フレーム期間は約17msとした。各行のデューティ期間は17ms/100=170μsとなる。各実施例における整流素子抵抗、キャパシタンス容量とそれらから求められる充電プロセスの時定数は表1に示す通りであり、このデューティ期間170μs内で充分な応答が可能であった。
【表1】
【0139】
一方、非デューティ期間における放電プロセスの時定数は表2の通りであった。ここで、有機ELの素子抵抗値は、電圧8V付近までを直線近似した値を用いている。
【表2】
【0140】
このように上記の試算では放電プロセスの時定数はフレーム期間17msに比して充分小さいが、前述のように有機ELの素子抵抗値は低電圧では大きくなるため、各フレーム期間の間にはキャパシタからの放電は終了しなかった。各実施例における残留電圧と本発明の方法による電圧印加条件、及び、本発明の方法を用いない場合の特性(それぞれ比較例1,2,3)を下表に示す。本発明の駆動方法を用いることにより、残留電圧の影響が抑制され、高いON/OFF比が得られることがわかる。ここで、ON/OFF比は下表で示す発光状態と、VYon=−VXonとした非発光状態を交互に繰り返した時の発光強度比をしめしており、本発明の方法を用いない場合には残留電位による発光強度に相当するものである。表3から明らかなように、残留電位の影響を本発明の駆動方法により抑制できた。また、キャパシタに蓄積された電荷はそのほとんどが発光素子を通して放電されるため消費電力が抑制されることは明らかである。
【表3】
【0141】
なお、上記の実施例では、整流素子と有機EL素子の極性が、図2の例とは逆になっており、それに伴い電圧値も図1、図7とは逆の極性となるが、理解を容易にするため、上表では図1、図7の極性に合わせて数値を示している。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明によれば、整流素子を用いた有機ELディスプレイパネルなどの表示装置の駆動方法において、低コストで発光量が安定であり、特にコントラスト比(ON/OFF比)が高く、かつ消費電力の少ない駆動方法を提供することが出来る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイパネルの自発光表示装置および該表示装置の駆動方法に関する。より具体的には、本発明は、複数の行と複数の列よりなるマトリックス構成になされた発光する画素をスイッチング素子によって駆動する表示装置、その製造方法、及び表示装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器用のフラットディスプレイとして液晶ディスプレイの普及が目覚しい。液晶ディスプレイは、液晶の光シャッター機能によりバックライトの光をon/off制御し、カラーフィルターを用いて色彩を得る。これに対し、有機ELディスプレイ、あるいは有機LEDディスプレイは、各画素が個々に自発光するため、カラーフィルターが不要になるために視野角が広くなるという利点があるばかりでなく、バックライトが不要であることから薄型化が可能になり、かつフレキシブルな基板上に形成が可能である等、多くの利点を持っている。このため、有機ELディスプレイは次世代のディスプレイとして期待されている。
【0003】
この有機ELディスプレイパネルの駆動方式は、大別して2つの種類に分けることができる。第1の駆動方式は、パッシブマトリックス型(あるいは、デューティー駆動方式、単純マトリックス方式)と呼ばれているものである。これは、複数のストライプ電極が行と列にマトリックス状に組み合わされ、行電極と列電極のそれぞれの交点に位置する画素を行電極と列電極に加えた駆動信号により発光させる。発光制御のための信号は、通常、行方向には1行毎に時系列で走査され、同一行の各列には同時に印加される。このパッシブマトリクス型の駆動方式は、各画素には通常はアクティブ素子を設けず、行の走査周期のうち各行のデューティー期間にのみ発光制御するようにした方式である。第2の駆動方式は、各画素にスイッチング素子を持ち、行の走査周期内にわたって発光が可能なアクティブマトリックス型と呼ばれるものである。
【0004】
アクティブマトリクス型の駆動方式の利点について説明する。例として、100行×150列のパネル全面を100Cd/m2の表示輝度で発光させる場合を想定する。この場合、アクティブマトリックス型では各画素は基本的に常時発光しているため、画素の面積率や各種の損失を考慮しない場合には、100Cd/m2で発光させれば良い。しかし、パッシブマトリックス型で同じ表示輝度を得ようとすると、各画素を駆動するデューティー比が1/100になり、そのデューティー期間(選択期間)のみが発光時間となるため、発光時間内の発光輝度を100倍の10000Cd/m2とする必要がある。
【0005】
ここで、発光輝度を増すためには有機EL素子に流す電流を増大させればよい。しかし、電流を増大させるとともに有機EL発光の効率が低下することが知られている。この効率の低下により、アクティブマトリックス型の駆動方式とパッシブマトリックス型の駆動方式を同じ表示輝度で比較した場合、パッシブマトリクス型では相対的に消費電力が大きくなる。また、有機EL素子に流す電流を増すと、発熱等による材料の劣化が生じやすく、表示装置の寿命が短くなるという不都合がある。一方、これらの効率及び寿命の観点から最大電流を制限すると、同じ表示輝度を得るために発光期間を長くする必要が生じる。しかしながら、パッシブマトリックス型駆動方式での発光時間を定めるデューティー比はパネルの行数の逆数であることから、発光期間の延長は、表示容量(駆動ライン数)の制限に結びつく。これらの点から、大面積、高精細度のパネルを実現するにはアクティブマトリックス型の駆動方式を用いる必要があった。
【0006】
大面積、高精細度に適したアクティブマトリックス型の駆動方式では、画素のスイッチング素子としてポリシリコンを用いた薄膜トランジスタ(TFT)が用いられる。しかしながら、例えば、ポリシリコンを用いるTFTを形成するプロセス温度は少なくとも250℃以上の高温であり、フレキシブルなプラスティック基板を用いることが困難である問題点がある。また、アクティブマトリクス型の駆動方式を用いる表示装置は、製造コストが高くなる問題点がある。例えば、アクティブマトリクス基板の製造コストがディスプレイパネル全体のコストの50%以上を占めてしまう。
【0007】
こういった従来の有機ELディスプレイパネルが有する種々の問題点に対処するため、特開2001−160492号公報(特許文献1)には、新しいタイプの有機薄膜EL素子が開示されている。
【0008】
この特許文献1には、「従来の有機薄膜EL素子とは異なり、発光・非発光状態が過去の印加電圧の加え方に応じたメモリ性を有し、この結果、ON/OFF信号を加えることにより発光・非発光状態を制御できるような新しいタイプの有機薄膜EL素子とその駆動方法」が記載されている。より具体的に述べると、「有機薄膜と電極の片面又は両面との間に、所定の値以上の電圧を印加することによって絶縁体から導体に転移する物質の薄膜から形成された電流スイッチング層を設ける。電極に所定電圧を印加して、電流スイッチング層を絶縁体から導体に転移させることによって有機薄膜エレクトロルミネッセンス素子を発光状態を出現させ、さらに、電圧を電流スイッチング層が導体から絶縁体に転移するまで減ずることによって有機薄膜エレクトロルミネッセンス素子の非発光状態を出現させるように駆動する。特に好ましい態様として、該有機薄膜エレクトロルミネッセンス素子に一定電圧を印加した状態に保持し、この一定電圧に正負のパルス電圧を重畳することにより発光状態と非発光状態をスイッチングするよう駆動することができる。」という点が開示されている。
【0009】
また、国際公開第01/15233号パンフレット(特許文献2)には有機薄膜トランジスタにより画素の駆動制御を行う事が開示されている。これによれば、駆動素子が有機材料より成るため、低温での製造プロセスが可能であり、従ってフレキシブルなプラスティック基板を用いることが可能となる。また、安価な材料やプロセスを選定できるため低コスト化も可能となる。
【0010】
また、上記のスイッチング素子に関連する従来技術として、有機LEDの駆動を可能にするための「真空蒸着法によるCu:TCNQ錯体薄膜の形成とスイッチング素子」(第49回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集、2002年3月 東海大学 湘南校舎、第3分冊、27a−M−5)(非特許文献1)が知られている。さらに、L.P.Ma氏らによる論文「Organic electrical bistable devices and rewritable memory cells」(Applied Physics Letters,Vol.80,number 16,22 April 2002,2002 American Institute of Physics)(非特許文献2)には、アミノイミダゾールジカーボネト(AIDCN)を用いたスイッチング素子を用いて有機EL素子を2値で駆動しメモリ等への適用可能性を示している。これらの素子は、いずれも、ある電圧に対して2値の抵抗値を持ち、その切り替えは適切なパルスを印加することにより行われるものである。この抵抗値切り替えに要する時間は10nsec程度であることから、通常のディスプレイ駆動には充分な応答性が確保できるが、マトリクス構成(ドットマトリクス表示)のディスプレイ装置を駆動する具体的な方法については、いずれの文献にも開示されていない。
【0011】
通常、マトリクス構成の表示素子は以下のように駆動される。まず単一の画素の場合について述べる。ここで例示したスイッチング素子は、高抵抗特性114A(off状態)と低抵抗特性114B(on状態)の2つの電圧・電流特性を持つものであり(図11参照)、バイアスVbをかけた状態で印加電圧をVth2以上にするとoff→onに遷移し、印加電圧をVth1以下にするとon→offへと遷移する、特性を有している。従ってoff→onへの遷移にはVth2以上のパルス、on→offへの遷移にはVth1以下のパルスを印加することにより、抵抗値の切り替えが可能である。
【0012】
図9に示すような積層構造にされた表示画素を有する表示装置12において、図10のように、各行が順次選択されて走査表示を行い、各行においては、その選択期間にある行にデータを書き込む動作を行なう。ドットマトリックスに構成されたディスプレイ装置において、このように列と行を定義してマトリックス状に複数の画素を配列したドットマトリクス表示を行なう場合を想定して以下説明する。なお、図9の表示装置12においては、ガラス基板120の片面に、行電極104、発光部110、画素電極112、スイッチング素子114、列電極116が形成されている。
【0013】
このようなマトリックス状に配置された複数の表示画素においては、ある行の画素につき上記の制御を行い、次の走査周期までバイアスをVth1からVth2の範囲に維持することにより、デューティー期間に制限されることなく、スイッチング素子をon/offいずれか一方の状態に維持することが可能となる。このような制御を行った場合に生ずる問題点としては以下のものがある。すなわち、上述したようなスイッチング素子(図9参照)を用いて走査周期中(フレーム期間中)にスイッチング素子への電圧印加を維持する必要があるため、常にマトリックス全面の画素に電圧を印加しなくてはならず、選択された行以外の行の回路も接続状態に維持する必要がある。これにより、一つの行の切り替え信号が他の行全てに印加されることになる。その結果、図9に示したようなスイッチング素子114を用いた場合に、従来のパッシブマトリックス方式の駆動方法をそのまま用いてマトリックス全面にある画素のon/off制御を行うことは困難である。
【特許文献1】特開2001−160492号公報
【特許文献2】国際公開第01/15233号パンフレット
【非特許文献1】小山田崇人、「真空蒸着法によるCu:TCNQ錯体薄膜の形成とスイッチング素子」(第49回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集、2002年3月 東海大学 湘南校舎、第3分冊、27a−M−5)
【非特許文献2】L.P.Ma et al.,″Organic electrical bistable devices andrewritable memory cells″,Applied Physics Letters,Vol.80,number 16,22April 2002,2002 American Institute of Physics
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記問題点を解決するために、本願の発明者の一部による特許出願(特願2002−255763号)には、マトリックス構成の表示素子の駆動方法として、行方向には1行毎に順次デューティー駆動し且つ同一行内の該当する列には発光制御のための信号を同時に付加することにより、当該画素を電流駆動で発光させる発光パネルの駆動方法であって、予め定めたウインドウ期間中に供給される発光指示信号もしくは消光指示信号に応答して特定の画素を発光もしくは消光させる際に、デューティー駆動される行については所定電圧を印加するとともに、その他の行については前記ウインドウ期間中のみ該所定電圧を既定オフセット値だけオフセットさせた電圧を印加する方法が記載されている。
【0015】
特願2002−255763号に記載された上記方法によれば、マトリックス構成の表示素子を実現することができる。この方法では各画素で得られる発光状態はON/OFFの2値であり、階調性を得るには画面のデューティー駆動周波数を増加させ、周期毎での発光レベルを変えるか、画素面積による階調を得る手段を取る必要があった。しかしながら、これらの方法では駆動素子に高い応答性が求められ、あるいは画像の解像度に影響を与えるなどの制限から、得られる階調レベルは充分なものでは無かった。例えばデューティー駆動周波数を通常の60Hzから480Hzとする事により8階調の制御を行う事が可能である。しかし、所謂フルカラー(1677万色)を得るには3色で各256階調が必要とされる。素子の応答性等の点からは、駆動周波数をこれ以上大きくすることが困難であり、パッシブマトリクス方式で周波数を増加させてフルカラー表示を得るのは困難である。
【0016】
また、従来のシリコン製のTFT等を用いる事により、フルカラー表示を得る事は可能である。しかし、前述のように、フレキシブルなプラスティック基板においてシリコンによるTFTを作製することは、困難であり、また、高コストである。
【0017】
よって本発明の目的は、上述の点に鑑み、有機ELディスプレイパネルなどの表示装置において、多階調表示を低コストで実現し、フレキシブル基板上に作製し得る表示装置、及びその駆動方法を提供するものである。
【0018】
また、有機EL素子において、発光輝度が高いほど効率が低くなり、寿命も短くなる点に鑑み、本発明の他の目的は、コンデンサーが有機EL発光素子と並列接続された薄膜発光素子において、発光素子やコンデンサーの面積を十分に確保して良好な表示特性の得られる表示装置及びその製造方法を提供するものである。
【0019】
さらに、図3に例示するように、一般に有機ELの電気抵抗は低電圧では著しく高いため、キャパシタ電荷の放電は一定電圧に到達すると減衰が著しく遅くなる。このため図15のようにキャパシタの電荷が次のデューティー期間まで残留することとなり、次のフレーム期間の発光量に影響を与える。これを防止するためには、キャパシタの残留電荷を一旦消去して前歴の影響を抑制することが必要となる。特に発光しないフレームで光が残る場合はON/OFF比が低下することとなる。この対策として、例えば特開2001−350431号公報には、キャパシタと発光部は別の配線に接続し、非発光時にはキャパシタ部に逆バイアスの電圧をかけて残留電荷を消去する方法が開示されておいる。また、特開2003−228326にも同様の方法が開示されている。これらの手段により前歴の消去は可能になる。しかしながら、この時に放電される電力は発光に寄与しないので無効な電力となり、ディスプレーパネルの消費電力を増大させる原因となる。また蓄積させた電荷の総てが発光に寄与するものとならない事は、発光量にばらつきを生じさせるという問題を生じる。また、画素への配線を増やす必要が生じる事から、製造コストをも増大させるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明においては、互いに平行に複数形成された第1組のストライプ電極と、該第1組のストライプ電極に交差する方向に、互いに平行に複数形成された第2組のストライプ電極と、該第1組のストライプ電極の各電極と、第2組のストライプ電極の各電極との立体的に交差する点にある複数の画素とを基板上に備えてなり、該複数の画素のそれぞれには、前記第1組のストライプ電極の一つに電気的に接続された非線形二端子素子からなるスイッチング素子と、該スイッチング素子と電気的に接続され、前記第2組のストライプ電極の一つに電気的に接続された発光部と、有機誘電体を誘電層として含み、該発光部に電気的に並列となるように、該スイッチング素子及び前記第2組のストライプ電極の該電極に電気的に接続されたコンデンサー部とが備えられている表示装置が提供される。
【0021】
パッシブマトリックス型(あるいは、デューティー駆動方式、単純マトリックス方式)による駆動方法に類似の駆動方法を用い、非線形二端子素子をスイッチング素子として用いると、スイッチング素子の作用によってホールド形表示(デューティー期間のみならず、非デューティー期間においても表示に寄与する表示)が可能となる。この際、コンデンサー部は非デューティー期間における発光表示に必要な電荷を蓄積するために用いられる。このコンデンサー部を用いることにより、二端子素子においてもホールド型表示が実現する。
【0022】
本発明においては、この誘電体層を有機誘電体よりなるものとする事により、成膜温度を高温とする必要がなく、基板の変形にも対応することができる。
【0023】
本発明においては、コンデンサー部には、誘電層として、有機誘電体ではなく、セラミクス系材料を用いることもできる。つまり、チタン酸バリウムストロンチウム酸化物を誘電層として含み、該発光部に電気的に並列となるように、該スイッチング素子及び前記第2組のストライプ電極の該電極に電気的に接続されたコンデンサー部を有する表示装置も提供される。
【0024】
本発明において、誘電体層に有機誘電体を用いる場合において、前記誘電層を分散された多数の導電性微粒子をさらに含むものとすることが好適である。また、前記スイッチング素子は、双安定素子またはダイオード素子とすることが好適である。金属微粒子を分散した場合、蒸着条件に依存するものの、実効的な比誘電率は50〜150の値が得られる。本発明では、有機誘電体を用いる場合において、好ましくは、比誘電率が50以上、さらに好ましくは100以上の有機誘電体を用いることができる。
【0025】
本発明において、チタン酸バリウムストロンチウム酸化物を誘電層に含む場合には、比誘電率は250〜800程度の値が得られる。また、チタン酸バリウムストロンチウム酸化物では、電気耐圧が高く、50MV/m程度の値を得ることができ、最大150MV/mもの値が得られる。本発明では、セラミクス系材料を用いる場合において、好ましくは、比誘電率が250以上の材料とすることができる。また、本発明では、セラミクス系材料を用いる場合において、好ましくは電気耐圧が50MV/mである材料とすることができる。
【0026】
本発明においては、前記スイッチング素子は、アルミニウム/ジシアノ系化合物/アルミニウムの積層構造を有するものや、ポリエチレンジオキシチオフェン膜とポリフェニレンビニレン膜の積層膜を有するものや、アルミニウム薄膜/フラーレン薄膜/銅薄膜の積層構造を有するものや、アルミニウム電極/ブタジエン化合物/金電極の積層構造を有するものが好適である。
【0027】
本発明においては、前記ダイオードがC60またはペンタセンの何れかを有しているものが好適である。
【0028】
導電性微粒子を用いると、誘電層の実効誘電率が上昇するために、小さな面積で十分な容量を備えるコンデンサー部を形成することができる。これにより、発光部の面積を大きくすることができ、発光部の電流密度を低下させて、発光部の発光効率及び寿命の改善を図ることができる。また、本発明の表示装置において双安定素子を用いると、非デューティー期間における発光を維持するコンデンサー部と協働して、より高い表示容量(表示ライン数)での表示と発光効率や寿命の両立が可能となる。ダイオード素子を用いる場合にも、ダイオード素子が導通状態にあるときにコンデンサー部への十分な充電が可能となり、高い表示容量での表示と発光効率や寿命の両立が可能となる。また本発明において、C60またはペンタセン有するダイオードでは、電圧印加時の電圧降下が他の有機材料に比して低い。即ち、電力損失が抑制されるため消費電力の点で極めて有利となる。
【0029】
本発明において、前記発光部と前記コンデンサー部とが同一平面に配置されているものや、前記発光部と前記コンデンサー部の前記誘電体層とを電気的に分離する絶縁部をさらに有するものが好適である。発光部とコンデンサー部とが同一平面に配置されていると、簡単な構造で本発明の表示装置を作成することができる。
【0030】
本発明において、前記基板を可撓性基板とすることも好適である。本発明においては、処理温度の高いプロセスを用いることなく表示装置を作製することが可能であるため、可撓性基板を用いることができる。可撓性基板により、ガラス基板を用いる場合に比べて、軽量で高い耐衝撃性を備える表示装置が実現される。
【0031】
本発明において、前記発光部と前記コンデンサー部と前記スイッチング素子とは、基板上に形成され、薄膜からなるとともに、それぞれが両面に電極層を備えており、該発光部と該コンデンサー部と前記スイッチング素子とは、それぞれの電極層とともに、その順もしくは逆の順に前記基板上に順次積層されており、前記発光部のコンデンサー側の電極と前記スイッチング素子のコンデンサー側の電極との電気的接続は、前記コンデンサー部に設けられ、第1のバイアを介してなされており、前記コンデンサー部の発光部側の電極と前記第2組のストライプ電極の前記電極との電気的接続は、前記発光部に設けられ、第2のバイアを介してなされており、前記発光部と前記コンデンサー部とを絶縁する絶縁部をさらに備えたものである表示装置も好適である。
【0032】
ここで、バイアは、スルーホールともいい、層間の電気的接続を行なうための手段として、当業者には周知である。積層配置された発光部とコンデンサー部を用いると、発光部とコンデンサー部とに広い面積を用いることができ、発光部の効率や寿命と、コンデンサー部の容量とを両立することができる。
【0033】
本発明において、前記第1のバイアは、前記コンデンサー部の領域のある辺に沿って、該コンデンサー部の側面を経由するように設けられ、絶縁体で内張りされており、前記第2のバイアは、前記発光部の領域のある辺に沿って、該発光部の側面を経由するように設けられ、絶縁体で内張りされており、該絶縁体が前記絶縁部と連続しているもの、とすることも好適である。
【0034】
コンデンサー部と発光部を積層する場合に、コンデンサー部の側面や発光部の側面を経由して電気的接続を確保するためのバイアを配置することにより、簡単な構造でバイアを構成することができる。このバイアは、絶縁部と連続した絶縁体で内張りされているものとすることもできる。これにより、表示装置の構造がより簡単になる。
【0035】
本発明においては、前記第1組または前記第2組のストライプ電極として、前記基板上に備えられた電極層を備え、該電極層のストライプ電極の向きに交差するように複数延在し、該電極層のストライプ電極の向きに隣り合った画素を仕切るとともに、前記基板に平行な方向に突出するオーバーハング部を上部に有する電気絶縁性の隔壁をさらに有することが好適である。
【0036】
また、本発明においては、表示装置の製造方法も提供される。即ち、電極層を含む前記発光部を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップと、前記絶縁部を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップと、電極層を含む前記コンデンサー部を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップと、電極層を含む前記スイッチング素子を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップとを含む、上記に記載された表示装置を製造する方法が提供される。
【0037】
オーバーハング部を用いることにより、高コストなフォトプロセスを用いずに作製可能な表示装置が提供される。このような表示装置では、マスクを介する成膜工程であるマスクデポ工程を極力配して良好な表示の表示装置を製造することが可能となる。
【0038】
本発明の他の態様においては、前記表示装置が、前記第1組および前記第2組のストライプ電極を組合わせた行電極と列電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行うものであり、ある選択された行のデューティー期間において、前記スイッチング素子を導電状態とする信号を該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第1のステップと、次いで、前記発光部を発光させるための電荷を、導通状態にある前記スイッチング素子を介して、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって前記コンデンサー部に蓄積する第2のステップと、次いで、前記スイッチング素子を非導電状態とする信号を該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第3のステップとを有し、前記選択された行の非デューティー期間において、前記コンデンサー部に蓄積した電荷を、前記発光部を通じて放電させることにより、該発光部を発光させるステップを有する上記いずれかの表示装置の駆動方法が提供される。
【0039】
本発明では、行と列(あるいは、XとY)により各画素が指定され、画素により表示画像を得るドットマトリクス駆動を行なう駆動方法が提供される。この際、非線形二端子素子を導通状態とする信号は、非線形二端子素子がヒステリシス特性を示さない素子である場合や、ヒステリシス特性を示す素子(例:双安定素子)である場合においても用いることができ、通常は、高い電圧を印加する信号とする。その後に電荷を蓄積する際には、その非線形に端子素子の特性に応じて、電荷の蓄積に十分な電流を流せる信号を印加する。
【0040】
ここで、発光部を発光させるための電荷は、所要の発光輝度を実現するための電荷とすることにより、この電荷量に応じて階調表示を行なうことが可能となる。
【0041】
さらに、非導通状態とする場合には、スイッチング素子を通じて漏れるリーク電流を実用上非導通状態とみなせる程度に抑えることができるような信号とする。このような信号は、行電極と列電極とによって、スイッチング素子及びそれに直列に接続されて、互いに並列に接続されている発光部及びコンデンサー部に印加されるが、スイッチング素子の開閉動作を適切に行なわせる信号とすることが好適である。非導通状態とする信号は、特に双安定素子を用いる場合に有効である。
【0042】
また、上記第1のステップと第2のステップは、それぞれ、予め定められた第1のウインドウ期間と予め定められた第2のウインドウ期間において行なうことができる。この第1および第2のウインドウ期間は、ある選択される行ごとに定まるデューティー期間に、この順に定められる時間間隔である。
【0043】
本発明においては、前記第1のステップにおいて、前記選択された行以外の行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と同極性の電圧オフセット信号を印加することが好適である。また、前記第1のステップにおいて、前記選択された行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と逆極性の電圧オフセット信号を印加することも好適である。加えて、前記第3のステップにおいて、前記選択された行以外の行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と同極性の電圧オフセット信号を印加することも好適である。さらには、第3のステップにおいて、前記選択された行以外の行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と同極性の電圧オフセット信号を印加することも好適である。
【0044】
選択された行のデューティー期間における第1のステップ、第3のステップにおいて、選択されていない行(選択された行以外の行)の行電極に、列電極に印加した電圧信号(電圧パルス等)をキャンセルするような同極性のオフセット信号を印加すると、選択された行においてのみ、スイッチング素子を導通状態へ遷移させたり、非導通状態へ遷移させたりすることができる。また、選択された行の行電極に、列電極に印加した電圧信号(電圧パルス等)に加算されるように逆極性のオフセット信号を印加すると、列電極の電圧に重ねてそのオフセット電圧が印加されるため、同様に、選択された行においてのみ、スイッチング素子を導通状態へ遷移させたり、非導通状態へ遷移させたりすることができる。
【0045】
スイッチング素子を導通状態にしたり、非導通状態にするためには、スイッチング素子の特性と、さらに、それに直列に接続されて電圧が分配される素子の電圧の分担率とを考慮して、スイッチング素子を導通状態にするしきい値を越えるような、あるいは、非導通状態にするしきい値を下回るような電圧信号を、選択された行の行電極と列電極により印加する。また、選択されていない行の行電極に印加するオフセット電圧は、これらのしきい値を越えないよう(あるいは、下回らないよう)に設定される。
【0046】
本発明の他の態様として、上記いずれかに記載の表示装置を駆動する方法であって、前記表示装置が、前記第1組および前記第2組のストライプ電極を組合わせた行電極と列電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行うものであり、ある選択された行のデューティー期間において、前記スイッチング素子を導電状態とし、さらに、前記発光部を発光させるための電荷を、導通状態にある前記スイッチング素子を介して、該行電極と該列電極によって前記コンデンサー部に蓄積する第1のステップを有し、前記選択された行の非デューティー期間において、前記コンデンサー部に蓄積した電荷を、前記発光部を通じて放電させることにより、該発光部を発光させるステップを有する表示装置の駆動方法も提供される。
【0047】
また、本発明のさらに他の態様として、前記表示装置が、前記第1組および前記第2組のストライプ電極を組合わせた行電極と列電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行なうものであり、あるフレーム期間中の選択された行のデューティー期間において、前記スイッチング素子に逆方向バイアス電圧を印加し、前記スイッチング素子を介して前記コンデンサー部に蓄積した電荷を放電可能な状態とするための信号を、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第1のステップと、前記スイッチング素子に順方向バイアス電圧を印加して、前記スイッチング素子を導電状態とすることにより、前記発光部を発光させるための電荷を、導通状態にある前記スイッチング素子を介して、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって前記コンデンサー部に蓄積する第2のステップとを有し、前記フレーム期間中の前記選択された行の非デューティー期間において、前記コンデンサー部に蓄積した電荷を、前記発光部を通じて放電させることにより、該発光部を発光させるステップを有し、前記選択された行について、前記フレーム期間の次のフレーム期間におけるデューティー期間の前記第1のステップにより、前記コンデンサー部に残存している電荷を放電する表示装置の駆動方法も提供される
【0048】
スイッチング素子が、高電圧において低抵抗を示し低電圧で高い抵抗を示すようなダイオード素子である場合、スイッチング素子に高い電圧がかかると、ダイオード素子を介したコンデンサーへの充電が可能となり、電圧が下がると充電された電荷はダイオード素子を通じて漏れることが無く、マトリクス駆動が可能となる。
【0049】
また、デューティー期間において、それまでにコンデンサーに蓄積している電荷を放電させる逆方向バイアスを用いれば、確実に前のフレームで充電された電荷を放電させることができる。
【0050】
本発明の表示装置において、整流素子を用いた場合の画素発光制御の手順例を以下に示す。これは、図6に示したような列電極(データ信号線、あるいはY電極)116と、行電極(タイミング信号線、あるいはX電極)104のストライプ電極を組合わせた列電極と行電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行うものであり、ある選択された行のデューティー期間において、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって前記整流素子を導通状態とし前記キャパシタ部に電荷を蓄積する第1のステップと、次いで、前記整流素子を非導電状態とする信号を該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第2のステップとを有し、前記選択された行の非デューティー期間においては、前記キャパシタ部に蓄積した電荷により該発光部に流れる電流を保持させる第3のステップを有する。また、次のデューティー期間においては、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって該発光部を導通状態とし、前記キャパシタ部に残存する電荷を放出する第4のステップと、前記該発光部を非導電状態とする信号を該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第5のステップからなる。
【0051】
整流素子を介してキャパシタ部に電荷を蓄積する際には、その整流素子の特性に応じて、電荷の蓄積に十分な電流を流せる信号を印加する。またこの電荷は、所要の発光輝度を実現するための電荷とすることができ、電荷量に応じて階調表示を行なうことが可能となる。
【0052】
さらに、非導通状態とする場合にリーク電流を実用上非導通状態とみなせる程度に抑えることができるような信号とすることも好適である。
【0053】
また、上記第4、5のステップを予め定められた第1のウインドウ期間706に行い、第1、2のステップを予め定められた第2のウインドウ期間705において行なうことができる。この第1および第2のウインドウ期間は、ある選択される行ごとに定まるデューティー期間に、この順に定められる時間間隔である。第4、5のステップは残留電荷の放出による前歴の消去であり、第1、2のステップは次の信号の書込みに相当するので、上記の順序で行うことが好適である。
【0054】
整流素子は、高電圧において低抵抗を示し低電圧で高い抵抗を示す場合、整流素子に高い電圧がかかると整流素子を介したキャパシタへの充電が可能となり、電圧が下がると充電された電荷は整流素子を通じて漏れることが無く、マトリクス駆動が可能となる。
【0055】
本発明においては、第1電極と、第2電極と、該第1電極に電気的に接続された整流素子と、該整流素子と電気的に接続され該第2組の電極に電気的に接続された発光部と、該発光部に電気的に並列となるように該整流素子及び前記第2組の電極に電気的に接続されたキャパシタ部とを備えてなる表示装置の駆動方法であって、デューティー期間において、前記第1電極と前記第2電極の両方、もしくはいずれか一方に電圧オフセット信号を印加し、前記キャパシタ部に残存する電荷を発光部を介して放電させる第1のステップと、次いで、前記発光部を発光させるための電荷を前記キャパシタ部に蓄積する第2のステップとを有し、非デューティー期間において、前記キャパシタ部に蓄積した電荷を、前記発光部を通じて放電させて、該発光部を発光させるステップを有する、表示装置の駆動方法が提供される。
【0056】
デューティー期間に第1のステップとしてその以前の駆動によってキャパシタに残留している電荷を放電させることにより、非発光の表示にそれ以前の駆動の影響による発光が影響しないという効果を有する。
【0057】
さらに、上記表示装置の駆動方法において、前記第1電極が互いに平行に複数形成された第1組のストライプ電極の一つであり、前記第2電極が該第1組のストライプ電極に交差する方向に互いに平行に複数形成された第2組のストライプ電極の一つであり、前記表示装置は、該第1組のストライプ電極の各電極と第2組のストライプ電極の各電極との交差する点にある複数の画素を基板上に備えており、前記整流素子が、前記第1組のストライプ電極の一つに電気的に接続され、該複数の画素のそれぞれに備えられた整流素子であり、前記発光部が、前記整流素子と前記第2組のストライプ電極の一つとに電気的に接続され、該複数の画素のそれぞれに備えられた発光部であり、キャパシタ部が、該発光部に並列となるように、該整流素子及び前記第2組のストライプ電極の該電極に電気的に接続され、該複数の画素のそれぞれに備えられたキャパシタ部であり、前記表示装置が、前記第1組および前記第2組のストライプ電極を組合わせた行電極と列電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行ないうものであることを特徴とすると、好適である。これにより、多数のストライプ電極を用いてドットマトリクス表示を行なうことができる。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、スイッチング素子、発光素子、コンデンサーの総てを厚さ100nm程度の有機電子材料薄膜と金属電極薄膜よりなるものとする事ができる。これにより、表示装置の低コスト化、大面積化や、表示装置への可撓性基板の適用が容易となる効果がある。また、多階調表示が低コストで実現される。コンデンサーが有機EL発光素子と並列接続された薄膜発光素子において、発光素子やコンデンサーへの面積的な制限を最小限にする表示装置やその製法が提供される。
【0059】
また、コンデンサー部の誘電層に、比誘電率の高い材料である分散された多数の導電性微粒子を含む有機誘電体層を用いたり、比誘電率の高いチタン酸バリウムストロンチウム酸化物を用いる本発明の好ましい構成によれば、誘電率が高くて少ない面積で多くの電荷を蓄えることができ、発光部とコンデンサー部を物理的に並置する場合に発光部の面積を稼ぎ、電流密度を小さくして高い発光効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明における表示素子の構成例を示す説明図である。
【図2】スイッチング素子として双安定素子を用いる場合の表示素子の等価回路を例示した説明図である。
【図3】スイッチング素子として双安定素子を用いる場合の表示素子にかかる電圧と発光状態の一例を示す説明図である。
【図4】直列に接続された有機EL素子および双安定素子に電圧を印加した時の電圧配分を示す説明図である。
【図5】デューティー期間、非デューティー期間に各表示素子にかかる電圧印加方法の一例を示す説明図である。
【図6】スイッチング素子として整流素子を用いる場合の等価回路を示す説明図である。
【図7】スイッチング素子として整流素子を用いる場合の表示素子にかかる電圧と発光状態の一例を示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態における表示装置の構造と製造方法を示す説明図である。
【図9】従来の、有機EL素子とスイッチング素子を直列接続(積層)した構成例を示す断面図である。
【図10】ディスプレイ装置用のマトリックス構成を例示した説明図である。
【図11】Off信号電圧がプラスの場合のスイッチング素子の電圧・電流特性を示す図である。
【図12】スイッチング素子として整流素子を用いる場合の表示素子にかかる電圧と発光状態の図7の他の例を示す説明図である。
【図13】有機電子材料としてC60を用いたダイオード素子の電圧・電流特性の一例を示す図である。
【図14】有機電子材料としてペンタセンを用いたダイオード素子の電圧・電流特性の一例を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態における有機EL素子に流れる電流の時間変化を示す図である。
【図16】有機電子材料としてポリエチレンジオキシチオフェン膜とポリフェニレンビニレン膜を用いたダイオード素子の電圧・電流特性の一例を示す図である。
【図17】実施例2における有機EL素子の電圧・電流特性の一例を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態における各電極に印加する電圧波形及び各電極や素子に印加される電圧波形、並びに、発光強度の時間変化を示す特性図である。
【図19】電圧波形及び発光強度の時間変化における一部を拡大した特性図である。
【図20】本発明の発光素子の電気特性例を示す説明図である。
【図21】本発明の実施の形態における表示装置のある画素の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0061】
102、802 プラスティック基板
104、804 行電極、タイミング信号線、X電極
116、834 列電極、データ信号線、Y電極
110 発光部
114 スイッチング素子
106 コンデンサー部
112 画素電極
702 デューティー期間
704 非デューティー期間
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
[実施の形態1]
[概要]
以下に実施の形態1を詳述する。実施の形態1においては、デューティー期間においてマトリックスのデューティー駆動される行の画素に並列に接続されたコンデンサーへ発光量に応じた電荷を蓄積し、デューティー期間外の時間には当該コンデンサーからの放電によって発光を継続する。
【0063】
従来、コンデンサーに用いる誘電体としてセラミック酸化物系の材料が多く用いられてきたが、基板の変形に追従できないなどの問題があった。本実施の形態は、導電性微粒子を分散させた有機誘電体によって誘電体層を構成する事により、従来のコンデンサーの欠点を解消したものである。また、本実施の形態におけるスイッチング素子としては、印加される電圧が第1の閾値より大きくなった後は導電状態を呈し、第2の閾値より小さくなった後は非導電状態を呈するスイッチング素子(双安定素子)、もしくは整流素子(ダイオード素子)を用いる。これらの素子は薄膜面の垂直方向に電流を流すため発光素子との積層状態で用いることが容易であるとともに、薄膜の面内方向に電流を流すのに比べて電流経路の面積が大きくとれるため大きな電流を得やすいという特徴がある。特に双安定素子はパルス状の電界を印加することにより電気抵抗を数桁のオーダーで変化させる事が可能であり、制御性、発光素子とのマッチングの点で簡便であり、かつ電流有効面積が大きいことから大電流を得やすく、また転移速度も大きいなど、好適なスイッチング素子である。
【0064】
これらのスイッチング素子を介して、各行にはそのデューティー期間において、各発光部に並列に接続されたコンデンサーへ電荷が蓄積される。非デューティー期間には、各画素はスイッチング素子により信号線(例えば、列電極)から電気的に隔離され、コンデンサーに蓄積された電荷により発光を継続する。蓄積される電荷量は所要の発光強度に応じて調整可能であるので、容易に階調表示を得ることができる。
【0065】
なお、本発明においては、好ましくは、コンデンサとしてセラミック酸化物系を用いることが可能である。例えば、代表的な強誘電体であるチタン酸バリウムストロンチウムをRFマグネトロンスパッタ法により数100nmの厚さで成膜し、これを約650℃で熱処理をすることにより良好なコンデンサを得ることが出来る。なお、例えば、特開2002−280380号公報に記載があるように、プラズマアニールをすることで、チタン酸バリウムストロンチウムを低温成膜した場合であっても、例えば、比誘電率が40を超えるような高い誘電率が得られることが知られている。
【0066】
[詳細]
図1は本実施の形態における表示装置10について、そのうちの一つの画素の断面構造を示す断面図である。プラスティック基板102の一方の面に、ITO(インジウムスズ酸化物)による透明電極材料により、行電極104が形成されている。この行電極104は、タイミング信号線やX電極などと呼ばれることもある(例えば、図2)。この行電極104は、互いに平行なストライプ状の複数の電極にパターニングされている。図では、その1画素を拡大しているため、パターニングされている全体は示していない。行電極104には、隔壁108によって分離されるように、有機EL素子による発光部110とコンデンサー部106が並置されている。さらに、金属(例えば、アルミニウム)によって作製された画素電極112が形成され、スイッチング素子114が形成されて、金属によって作製され、行電極104に交差するように互いに平行なストライプ状の複数の電極にパターニングされた列電極116が形成されている。この列電極116は、データ信号線やY電極などと呼ばれることもある(例えば、図2)。各電極や有機EL素子、スイッチング素子、コンデンサー部などは薄膜により形成され、有機EL素子やスイッチング素子の電流は膜面に垂直に流れる。
【0067】
スイッチング素子114として双安定素子202を用いる場合について説明する。図2はこの場合の表示装置10のある画素についての等価回路図であり、図3は、ある画素について、列電極(データ信号線、あるいはY電極)116に印加される電圧波形(図3a)と、行電極(タイミング信号線、あるいはX電極)104に印加される電圧波形(図3b)と、それらから算出される、発光部110及びスイッチング素子114にかかる電圧波形(図3c)を概略的に示す図である。発光部110の発光状態314も、図3cに示されている。
【0068】
各画素の双安定素子202は、その画素が属する行のデューティー期間302内(選択期間内)に、まず、列電極116のオン信号306の電圧と行電極104の電圧の差のうち、双安定素子202に分配される電圧によって導電状態となる。そして、充電電圧310にされている列電極(データ信号線)116からの電流が、コンデンサー部106に流れ込んで蓄積される。デューティー期間302以外の期間(非デューティー期間304)になる直前に、双安定素子202が、列電極116のオフ信号308の電圧と行電極104の信号キャンセル用オフセット電圧312の差のうち、双安定素子202に分配される電圧によって非導電状態となり、画素電極112が列電極116から切断される。この切断の後は、コンデンサー106が放電することにより発光状態314が継続する。
【0069】
図4は、デューティー期間302、非デューティー期間304に発光部110と双安定素子202に分配される電圧の関係を示す。図4のコンデンサー402aは、双安定素子202が非導通状態(off状態)にある場合を示し、抵抗402bは、双安定素子202が導通状態(on状態)にある場合を示す等価回路要素である。行電極と列電極の間の電位差は、非導通状態においては全て双安定素子202に分配されるが、導通状態においてはα(0<α<1)だけの割合が双安定素子202に分配される。なお、双安定素子202の動作は、図11の従来の双安定素子の動作特性図に示されたものと概ね同様である。
【0070】
次に、図5について詳細に説明する。図5aは選択行のデューティー期間における当該選択行の電圧波形を示し、図5bは、図5aと同じ時間における、非選択行の電圧波形を示す。なお、比較しているのは、選択行に属するある画素と、その画素と同じ列の非選択行に属す別の画素との2つの画素における波形である。列電極116はこれらの両画素に共通しているものであり、電圧波形516が印加される。
【0071】
選択行においては、タイミング信号線104の電圧波形508には何らのバイアス電圧も印加されていない。これに対し、非選択行においては、タイミング信号線104の電圧波形510にオフセット電圧Vcと−Vdがオン信号502とオフ信号506に合わせて印加されている。双安定素子202に対する電圧は、選択行においては、電圧波形516のうちのα倍が印加されるのに対し、非選択行においては、電圧波形VdからVcを除いた電圧(オン信号502の期間)や電圧波形VdにVcを加えた電圧(オフ信号506の期間)が印加される。非選択行において加えられたオフセット電圧は、データ信号線116からの導通、非導通の切替信号の影響を非選択行において回避するためのものである。なお、この方法とは逆に、デューティー期間においてタイミング信号線に適切なバイアスを印加することにより導通、非導通の切替信号を与え、非デューティー期間はバイアスを与えない方法も当然可能である。
【0072】
次に、これらの電圧の関係について説明する。このスイッチング素子にはバイアス電圧Vbが印加されており、当初off状態であったものが、デューティー期間の最初の時点でonへの切替信号(Von)が印加されて電流が立ち上がり、デューティー期間の間on状態が維持される。デューティー期間終了の時点でoffへの切替信号(−Voff)により電流が立ち下がる。VonおよびVoffは、切り替えの閾値Vth1,Vth2に対し、Vb+Von>Vth2,Vb−Voff<Vth1となるよう設定される。当該行以外の行では、図5に示すようにそれぞれのウインドウ内でのバイアスを−Vc,Vdだけオフセットさせ、該当行以外の行でスイッチングが起こることを防ぐ。この方法による場合の電圧値を、双安定素子の特性、特に閾値電圧と以下の関係式を満たすように設定することで、良好な動作を得ることができる。
α(Vb−Voff)<Vth1<αVb (式1)
Vth1<(Vb−Vc)<Vth2 (式2)
Vth1<(Von+Vb−Vc)<Vth2 (式3)
Vth1<(Vb+Vd)<Vth2 (式4)
Vth1<(Vb+Vd−Voff)<Vth2(式5)
【0073】
図6はスイッチング素子として整流素子602を用いる場合の等価回路であり、図7は、ある画素について、列電極(データ信号線、あるいはY電極)116に印加される電圧波形(図7a)と、行電極(タイミング信号線、あるいはX電極)104に印加される電圧波形(図7b)と、それらから算出される、発光部110及びスイッチング素子114にかかる電圧波形(図7c)を概略的に示す図である。発光部110の発光状態710も、図7cに示されている。その場合の電圧と発光状態の一例を示す説明図である。整流素子は高い電圧領域で抵抗が小さくなる非線形性を有している。デューティー期間702内にはタイミング信号線(行電極)104にマイナスバイアス−Vbを印加し、整流素子の抵抗を小さくすることで導通状態を得る。データ信号線に印加されるのがVonである場合には整流素子に印加される電圧はVon+Vbとなる。非デューティー期間704にはバイアスを印加せず、低電圧での駆動とすることで実質的に非導電状態となる。
【0074】
また、図7においては、発光部があるフレーム期間に発光状態に制御されると、そのフレームの終了時においてもコンデンサに電荷が残留し、次のフレーム期間の発光部の状態(発光状態、もしくは非発光状態)に影響を与える可能性がある。特に、次のフレームが非発光状態である場合には、適切な消光信号によって前の発光状態の履歴を消去する必要がある。のために、本実施の形態では、例えば図12に示すように、各行のデューティー期間を2つに分割し、各列電極には、ある期間内において電圧VLonの発光信号電圧、もう一つの期間内において電圧−VLoffの非発光(消光)信号電圧を印加し、各行電極には、選択期間(デューティー期間)内のそれぞれの期間において電圧VAonの電圧と電圧−VAoffの電圧を印加している。本実施の形態では、発光信号電圧を印加する期間はデューティー期間の後半であり、消光電圧信号を印加する期間はデューティー期間の前半である。また、各行電極において印加する電圧波形は、発光信号、非発光信号とは逆極性のバイアス電圧となる。このような行電極と列電極の電圧波形によって、デューティー期間の後半に発光部110が発光し、非デューティー期間にはコンデンサの作用によってその発光が継続し、次のフレームのデューティー期間の前半に発光部110の発光が停止する(発光強度変化150)。図13に例示するように、有機電子材料としてC60を用いたダイオード素子602の逆バイアス電流は逆バイアス電圧とともに大きくなるので、充分な逆バイアス電圧を印加することにより、コンデンサ106に残留した電荷を放電させることが可能である。なお、図13ではフレーム期間の開始をデューティー期間の開始と一致させて描いているが、一般には、この期間の開始のタイミングは必ずしも一致するとは限らない。
【実施例1】
【0075】
ITO付ポリエチレンテレフタラート基板上にフォトプロセスにより絶縁性の隔壁を作製し、区切られた2つの領域を一組として、その一方に発光素子、一方にコンデンサーを形成した。それぞれの面積は同一とした。更にこの2つの素子の両方を覆う形でスイッチング素子を形成した。ITOは1.0mmピッチ、幅0.7mmで15列のストライプ電極となるようパターニングが予めなされている。
【0076】
まず発光素子としてポリエチレンジオキシチオフェン膜とポリフェニレンビニレン膜をインクジェット法により順次形成し、その後、カルシウム膜を真空蒸着により成膜して有機EL層を形成した。各層の厚さは、それぞれ100nm、100nm、100nmとした。
【0077】
次に、コンデンサー素子は真空蒸着法により、絶縁性有機物としてアミノイミダゾールジシアネート(化合物1)、導電性微粒子としてアルミニウムを用いてこれらを共蒸着法にて誘電体層を形成し、その後、電極層としてアルミニウムを順次連続して薄膜を形成し、コンデンサーを形成した。なお、電極層、誘電体層、電極層は、それぞれ、130nm、40nm、130nmの厚さとなるように成膜した。また、蒸着装置は拡散ポンプ排気で、4×10−4Pa(3×10−6torr)の真空度で行なった。また、アルミニウムの蒸着は抵抗加熱方式により成膜速度は30nm/secで行い、導電性微粒子としてアルミニウムを含有するアミノイミダゾールジシアネートは、共蒸着法により作製した。蒸着は抵抗加熱方式であり、成膜速度はアミノイミダゾールジシアネートが20nm/sec、アルミニウムが10nm/secである。各層の蒸着は同一蒸着装置で連続して行い、蒸着中に試料が空気と接触しない条件で行った。
【0078】
これに連続してアルミニウム、ジシアノ系化合物(化合物1)、アルミニウムを順次、それぞれ100nm、30nmと100nm厚さで2つの素子の両方を覆う形で真空蒸着成膜することにより、有機ELとコンデンサーに直列にスイッチング素子部を形成した。この層構成で、スイッチング素子部は後述するような双安定特性を示した。スイッチング素子部の最後の電極は、前記ITO電極とは直交して、1mmピッチ、幅0.7mmで10行のストライプ電極となるようパターニングを行った。これによって15列,10行のマトリックスを形成して、実施例1の表示装置を作製した。
(化合物1)
【化1】
【0079】
スイッチング素子の性能は、Vth1が0.0V、Vth2が5.0V、バイアス4.0Vでのon状態での電流密度が40mA/cm2、off状態での電流密度が0.1mA/cm2であった。on状態での有機EL素子の電圧降下は3.5V、発光強度は30Cd/m2であり、off状態での電圧降下、発光は観測されなかった。
【0080】
パネル全体の走査周波数を240Hz、すなわち走査周期を約4.2msecとすると、各行あたりのデューティー期間は0.42msecとなる。スイッチング素子(双安定素子)のon/offの切替えのためのウインドウ時間幅を0.01msec、切替信号のパルス幅を0.005msecとし、Vb=4.0V、Von=1.5V、Voff1=4.0V,Voff2=5.5V、Vc=1.5V、Vd=0.8Vと設定することにより、パネルは順調に動作した。この時のコンデンサーに蓄積される電荷量は最大約12μQ/cm2、双安定素子の最大電流密度は約40mA/cm2であった。最大電流密度に関しては、スイッチング素子の有効面積が、コンデンサーや発光素子の約2倍であることから、その分だけ低い値で動作可能であった。また、これによりパネルの平均輝度として25Cd/m2を得た。また、デューティー期間中の充電電荷量の総量は電流時間を変えることで容易に制御可能であり、これにより発光輝度の階調を得る事ができた。
【実施例2】
【0081】
コンデンサーに導電性微粒子を分散させて、誘電率を増大させる実施例について説明する。この導電性微粒子として金を用い、電極層、誘電体層、電極層の膜厚を、それぞれ、110nm、80nm、110nmとした他は実施例1と同様に試料を作製し、実施例1と同様の試験を行った。同様の条件でパネルは順調に動作し、コンデンサーに蓄積される電荷量は最大約15μQ/cm2、双安定素子の最大電流密度は約40mA/cm2であった。また、これによりパネルの平均輝度として30Cd/m2を得た。発光輝度の階調は実施例1と同様に容易に得る事ができた。
【実施例3】
【0082】
ITO付ポリエチレンテレフタラート基板上にフォトプロセスにより絶縁性の隔壁を作製した後、ポリエチレンジオキシチオフェン膜とポリフェニレンビニレン膜をインクジェット法により順次形成し、その後、カルシウム膜を真空蒸着により成膜して整流素子を形成した。各層の厚さはそれぞれ200nm、40nm、120nm厚さであった。その後、同隔壁の半分の領域に有機EL層として、銅フタロシアニン(CuPC)/ナフチルフェニルジアミン(NPB)/アルミニウムキノリン(Alq3)/カルシウム電極を順次真空蒸着で成膜した。各層の厚さは、それぞれ100nm、50nm,50nm、100nmとした。この後、残りの半分の領域にコンデンサー部を実施例1と同様に構成した。有機EL部とコンデンサー部の蒸着領域の選択はメタルマスクによった。有機EL部とコンデンサー部の蒸着の後、両素子を被う共通電極としてアルミニウム膜を蒸着した。このアルミニウム膜は前記ITO電極とは直交して、1mmピッチ、幅0.7mmで10行のストライプ電極となるようパターニングを行った。これによって15列,10行のマトリックスを形成している。
【0083】
上記の整流素子と有機EL素子の順方向の電流電圧特性を図16、17に示す。また、電圧降下を測定したところ、例えば電流密度が40mA/cm2とするための電圧降下は、整流素子では約3.5Vであるのに対し、有機EL素子部では6.2Vであった。即ち、本実施例においては、合計9.7Vの印加により、コンデンサーを6.2Vで充電することが可能であった。また、この際、最大電荷蓄積量として約19μQ/cm2を得た。本実施例においては、パネルの平均輝度として50Cd/m2を得た。デューティー期間における充電電荷量は、電流時間を変えること、もしくは電圧値を変えることで容易に制御可能であり、これにより発光輝度の階調を得る事ができた。
【実施例4】
【0084】
コンデンサーに用いる導電性微粒子として金を用い、電極層、誘電体層、電極層の膜厚を、それぞれ、110nm、80nm、110nmとした他は実施例3と同様に試料を作製し、印加電圧を15Vとした他は実施例3と同様の試験を行った。同様の条件でパネルは順調に動作し、コンデンサーに蓄積される電荷量は最大約30μQ/cm2、双安定素子の最大電流密度は約60mA/cm2であった。また、これによりパネルの平均輝度として50Cd/m2を得た。発光輝度の階調は実施例3と同様に容易に得る事ができた。
【実施例5】
【0085】
ITO付ポリエチレンテレフタラート基板上にフォトプロセスにより絶縁性の隔壁を作製した後、各画素のうち同隔壁によって仕切られた一方の半分の領域に有機EL層として銅フタロシアニン(CuPC)/ナフチルフェニルジアミン(NPB)/アルミキノリン(Alq3)/カルシウム電極を順次真空蒸着で成膜した。各層の厚さは、それぞれ100nm、50nm、50nm、100nmとした。この後、各画素のうち隔壁によって仕切られた残りの半分の領域にコンデンサー部を実施例1と同様に構成した。有機EL部とコンデンサー部の蒸着領域の選択はメタルマスクにより行なった。EL部とコンデンサー部の蒸着の後、整流素子として、両素子を被うようにアルミニウム膜を蒸着し、その上にフラーレン(C60)、銅を連続して蒸着した。各層の膜厚は、100nm、100nm、100nmとした。最後の銅膜は、前記ITO電極とは直交して、1mmピッチ、幅0.7mmで10行のパターニングを行なった。これによって、15列10行の画素マトリクスを形成している。
【0086】
上記の整流素子と有機EL素子の電圧降下を測定したところ、例えば電流密度が40mA/cm2とするための電圧降下では、整流素子では約0.5Vであるのに対し、有機EL素子部では6.2Vであった。即ち、本実施例においては、合計6.7Vの印加により、コンデンサーを6.2Vで充電することが可能であった。また、この際、最大電荷蓄積量として約19μQ/cm2を得た。これにより、パネルの平均輝度として50Cd/m2を得た。デューティー期間内充電電荷量は充電時間を変えること、若しくは、電圧値を変えることで容易に制御可能であり、これにより発光輝度の階調を得ることができた。
【実施例6】
【0087】
試料ITO電極と銅電極のピッチをともに0.5mm、幅0.3mmとし、それぞれ100列および100行を形成した他は、実施例5と同様にして実施例6の試料を得た。この結果、電気特性、発光特性は実施例5と同等の値を得た。このようにして得られた試料を用いて、電圧8V、フレーム周波数120Hzの条件で駆動を行った。
【0088】
このように駆動した試料を用いて電圧降下を測定したところ、整流素子では約0.7Vであるのに対し、有機EL素子部では7.3Vであった。即ち、本実施例においては、合計8Vの印加により、コンデンサーを7.3Vで充電することが可能であった。また、この際、最大電荷蓄積量は約21μQ/cm2であった。本実施例においては、パネルの平均輝度として70Cd/m2を得た。図15にはこの時の有機EL素子に流れる電流の時間変化を示す。
【実施例7】
【0089】
ITO付ポリエチレンテレフタラート基板上にフォトプロセスにより絶縁性の隔壁を作製した後、各画素のうち同隔壁によって仕切られた一方の半分の領域に有機EL層として銅フタロシアニン(CuPC)/ナフチルフェニルジアミン(NPB)/アルミキノリン(Alq3)/アルミニウム電極を順次真空蒸着で成膜した。各層の厚さは、それぞれ100nm、50nm、50nm、100nmとした。この後、各画素のうち隔壁によって仕切られた残りの半分の領域にコンデンサー部を実施例1と同様に構成した。有機EL部とコンデンサー部の蒸着領域の選択はメタルマスクによった。EL部とコンデンサー部の蒸着の後、整流素子として、有機EL部とコンデンサー部を被って画素ごとの島状の電極になるようにマスク蒸着を行なって金膜を蒸着し、その上にペンタセン膜、アルミ膜を連続して蒸着した。各層の膜厚は、それぞれ、100nm、100nm、100nmとした。最後のアルミ膜は、前記ITO電極とは直交して、1mmピッチ、幅0.7mmで10行のパターニングを行った。これによって、15列10行の画素マトリクスを形成している。
【0090】
上記の整流素子と有機EL素子の順方向の電圧降下を測定したところ、例えば電流密度が40mA/cm2とするための電圧降下は、整流素子では約2.0Vであるのに対し、有機EL素子部では6.2Vであった。即ち、本実施例においては、合計8.2Vの印加により、コンデンサーを6.2Vで充電することが可能であった。また、この際、最大電荷蓄積量として約19μQ/cm2を得た。これによりパネルの平均輝度として54Cd/m2を得た。デューティー期間内充電電荷量は充電時間を変えること、若しくは、電圧値を変えることで容易に制御可能であり、これにより発光輝度の階調を得ることができた。また、実施例5に比して高い平均輝度が得られたのは、本実施例で用いた整流素子の電気特性(図14)においては、実施例5の整流素子の電気特性(図13)よりも逆バイアスでの漏れ電流が小さく、有機ELに流れる電流効率が高くなったためと推定される。
【実施例8】
【0091】
ガラス基板上に、厚さ100nmのITO膜をRFマグネトロンスパッタ法により成膜した後、通常のフォトリソグラフ法を用いて1.0mmピッチ、幅0.7mmでストライプ状に15列の電極列を形成した。更に当該ITO電極上に1.0mmピッチ、幅0.3mmで白金膜を50nmの厚さで形成し、チタン酸バリウムストロンチウム酸化物を形成する下地電極をITO電極上に島状に形成した。更にその上にRFマグネトロンスパッタ法と通常のフォトリソグラフ法を用いて、白金膜上にチタン酸バリウムストロンチウム酸化物を厚さ100nmで形成し、その後酸素雰囲気中1時間の熱処理を行ってコンデンサーとした。その後、そのコンデンサーに接する形で隔壁を形成し、実施例5と同様にして発光素子を形成した。その後は実施例5と同様にして実施例8の試料を得た。
【0092】
上記の整流素子と有機EL素子に順方向に電圧を印加した際の電圧降下は、例えば電流密度が40mA/cm2とするための電圧降下では、整流素子では約0.5Vであるのに対し、有機EL素子部では6.2Vであった。即ち、本実施例においては、合計6.7Vの印加により、コンデンサーを6.2Vで充電することが可能であり、最大電荷蓄積量として約40μQ/cm2を得た。これにより、パネルの平均輝度として100Cd/m2を得た。デューティー期間内充電電荷量は充電時間を変えること、若しくは、電圧値を変えることで容易に制御可能であり、これにより発光輝度の階調を得ることができた。
【実施例9】
【0093】
ITO電極と銅膜の列、行のマトリックス数を50列、50行とした他は実施例5と同様として実施例6の試料を作製した。駆動電圧波形は、図12に示すような波形とした。このとき、フレーム周波数は600Hz(フレーム周期:約1.7ms)とした。各行のデューティ期間は1.7ms/50=35μsとなる。VLonとVAonをともに3.35Vとすることにより、デューティ期間の後半で実施例5と同様にコンデンサーには約19μQ/cm2の電荷が蓄積される。コンデンサーに蓄積された電荷は非デューティ期間に有機ELの発光部110を通じて放電される。有機EL発光部110の電圧電流特性は非線形であるので放電特性は単純な数式では表されないが、フレーム周期である1.7ms経過後の残留電位(発光部110およびコンデンサー106にかかる電位差)は約2.8Vであった。次のフレームのデューティ期間の前半で、VLoffとVAoffをともに4Vとする消去信号を印加した。この時、発光部110およびコンデンサー106にかかる電位差はVLoffの印加により一旦VLoff分だけ上昇し、X(タイミング信号線)電極を基準にした場合のY電極の電位、即ち、ダイオード602にかかる逆方向バイアス電圧は約10Vとなる。図13に例示したように逆バイアス8Vでは100mA/cm2以上の電流密度が得られることから、コンデンサー106に残留した電荷はダイオード602を通して放出される。これを繰返し印加する事により、各フレームの発光状態を、発光させるべき画素において適切に発光させ、同じ画素が消光させるときには適切に消光させることができ、良好に制御できる事を確認した。
【0094】
また特に、整流素子の有機材料として、C60、もしくはペンタセンを用いた場合、電圧印加時の電圧降下が他の有機材料に比して低い。即ち、整流素子における電力損失が抑制されるため消費電力の点で極めて有利となる。これは、これらの材料の電荷移動度が他の材料に比して高いことに起因するものである。
【0095】
[実施の形態2]
[概要]
上述した実施の形態1では、有機誘電体よりなるコンデンサーを有機EL発光素子と並列接続し、これにスイッチング素子を直列接続することにより、すべての素子を有機薄膜で構成した。ここで、実施の形態1においては、発光部と、それに並列に接続されたコンデンサーとが限られた画素面積を分け合っている。具体的には、実施の形態1の表示装置(図1の構成)では、発光部110の領域とコンデンサー部106の領域が平面的に配置されている。このため、大きな面積が取れないことが制約となる場合がある。この面積の制限を無くすことにより、発光素子にかかる電流負荷を低減し、コンデンサーの面積も大きく取ることができる実施の形態2について、以下説明する。
【0096】
本実施の形態では、表示装置の構成要素である発光装置(発光部)、コンデンサー部、スイッチング装置を基板上にほぼ画素面積に近い面積となるように形成し、素子間の配線を素子の側面を利用して行う事により、発光部及びコンデンサー部について実施の形態1の場合よりも広い面積を確保し、性能の改善を図る。当該配線は、素子側面を絶縁体で覆ったバイアを経由して接続されて、短絡などの障害が起こりにくいようにされる。このような表示装置は、オーバーハング部を持つ隔壁を用い、斜め蒸着法によってその隔壁をマスクとして利用することにより実現される。
【0097】
[詳細]
具体的には、実施の形態2においては、図8hに示される構造の表示装置を実現し、図1に示した構成の回路と同様の電気的な接続関係をそのままにして、発光部110とコンデンサー部106を積層配置する。これにより、より広い発光領域とコンデンサー領域を実現する。各素子が薄膜として形成され、電流が各素子中を膜面に垂直に流れる構成となっている点は、実施の形態1と同様である。以下、この構造を実現するための表示装置の製造方法について説明する。
【0098】
まず図8aに示されるように、プラスティック基板802のある面に透明導電材料よりなる電極膜804を、たとえば0.2μmの膜厚に成膜する。表示装置をマトリックス構成にして複数の画素を形成する場合には、電極膜804をさらにフォトリソグラフィー法およびエッチングによってパターニングし、例えば、0.3mmピッチ、0.28mm幅の帯状の形状のストライプ電極に形成される。図8では、そのようなストライプ電極の延びる方向は、図面内左右方向である。
【0099】
次に、図8bに示されるように隔壁806を形成する。この工程では、隔壁のベース部808の材料として例えば非感光性のポリイミドを、スピンコート法で4μm膜厚に透明電極上に形成し、さらに隔壁の上部のオーバーハング部810の材料としてSiO2を、ポリイミド膜上に例えばスパッタリング法で0.5μm膜厚に形成する。その後SiO2膜、及びポリイミド膜を、フォトプロセスによりパターニンングし、オーバーハング部810を持った隔壁806を形成する。このようなT字型の断面の隔壁810は、初めにO2などのガスを用いてリアクティブイオンエッチング(異方性エッチング)を行い、ポリイミド膜70をアンダーカットがないように垂直にドライエッチングし(図の矢印812)、その後、アルカリ溶液で30秒間程度ウエットエッチングを行いポリイミド膜の側面816を等方的にエッチングすることで形成できる(図の矢印814)。
【0100】
次に、図8cに示されるように発光部110として例えば薄膜の有機EL素子を、プラスティック基板802の法線方向に対して一定角度θをなすような斜めの方向から蒸着する。斜め蒸着を行うことにより、隔壁806により影になる部分には発光素子は形成されず、プラスティック基板上の電極は露出したままとなっている。発光部110は、電子輸送層、再結合層、ホール輸送層からなるEL発光層818と、金属電極層820とからなる。
【0101】
次に、図8dに示されるように有機絶縁膜822をプラスティック基板802に垂直方向から蒸着する。この場合、隔壁806のオーバーハング部810の影となるため、隔壁沿いの部分には絶縁膜822は蒸着されない。
【0102】
次に、図8eに示されるように図8cとは逆の方向に傾けた斜め蒸着によりコンデンサー部106を蒸着する。コンデンサーの一方の電極は、絶縁膜822で内張りされたバイア830(図8d)を介してプラスティック基板上の電極膜804と接続するように金属電極824によって形成され、その後、コンデンサーを構成する誘電体層826を形成する。さらに金属電極828を形成する。この際、透明電極材料からなる電極膜804が図8の紙面内左右方向に延びる複数のストライプ状の平行な行電極とされて、紙面に垂直な方向にパターニングされて区切られている場合には、金属電極824および金属電極828も電極膜804に合わせて紙面に垂直な方向に区切られて島状にされていなくてはならない。このため、電極膜804がストライプ状である場合には、図8eの蒸着において金属電極824および金属電極828が透明電極のパターンに合わせてパターニングされるように、適当な開口部を有する蒸着マスクとしてメタルマスク(図示しない)を介して蒸着する。
【0103】
図8eに示したように、コンデンサー部106と発光部110は有機絶縁膜822により隔てて形成される。ここで、図8dまでで形成されたEL発光層818から金属電極828までの膜厚は合計して約300nmであり、透明電極材料からなる電極膜804が露出しているバイア830(図8d)の図面左右方向の幅(約2μm)に比べて充分に小さいので、これのマスクとしての作用はほとんど無視することができるため、図8eにおける金属電極824の成膜に影響することは無い。
【0104】
次に、図8fに示されるように図8dと同様にして有機絶縁膜822aをガラス基板に垂直に蒸着し、有機絶縁膜822と連続するように形成する。発光部110の金属電極820に接続可能なバイア832は、この絶縁膜822aによって内張りされる。次いで、図8gに示されるように金属電極828aを、バイア832を介して金属電極822に接続されるように隔壁の両側から隔壁間全面に蒸着する。この際、金属電極828の場合と同様に、電極膜804がストライプ状である場合には、蒸着マスクを用いてパターニングも行なう。金属電極828と828aが図1の画素電極112の作用をする。さらに、図8hに示されるように、スイッチング素子114、電極層834を隔壁の両側から隔壁間全面に蒸着する。
【0105】
以上の工程により、薄膜発光素子と薄膜コンデンサーが互いに並列接続され、その双方に薄膜スイッチング素子が直列接続された構成において、発光部とコンデンサー部の面積を拡大した表示装置80を作製する事ができる。
【実施例10】
【0106】
ポリエチレンテレフタラート基板上に厚さ0.2μmのITO電極を形成した後、フォトプロセスにより1.0mmピッチ、幅0.7mmで15列のパターニングを施した。次に日本ゼオン製ネガフォトレジストLAX−1を4μmスピンコートにより塗布し、SiO2膜を0.5μm厚だけスパッタにより成膜した。その後、前述と同様の方法にてエッチングすることにより、前記ITO電極とは直角方向に1.0mmピッチで10行の隔壁を得た。隔壁の幅は300μm、高さ4.5μm、オーバーハングは2μmであった。
【0107】
次に発光素子として、Li/アルミニウムキノリン(Alq3)(化合物2)/ナフチルフェニルジアミン(NPB)(化合物2)/銅フタロシアニン(CuPC)を図8cに示す方向から順次真空蒸着で成膜した。各層の厚さは、それぞれ5nm、50nm、50nm、100nmとした。これらの蒸着源は基板から垂直方向に200mmの距離、基板中心から紙面左側に100mmの距離に配置され、開口直径が5mmのルツボを用いた。その後、絶縁層としてパーフルオロテトラコサン(n−C24F50)を100nm、図8dに示す方向から蒸着した。
(化合物2)
【化2】
(化合物3)
【化3】
【0108】
次に、コンデンサー素子は図8eに示す方向から、電極としてアルミニウム、誘電体層としてアミノイミダゾールジシアネートと導電性微粒子としてアルミニウムを共蒸着法にて形成し、その後、電極層としてアルミニウムを順次連続して斜め蒸着して形成した。誘電体層を蒸着する前後のアルミニウムの蒸着においては、ITO電極のパターンのスペース部分に相当する場所にアルミニウムの蒸着を防止するメタルマスクを用いた。各層の膜厚は、100nm、40nm、100nmの厚さとした。この時の蒸着源は基板から垂直方向に200mmの距離、基板中心から紙面右側に100mmの距離に配置され、開口直径が5mmのルツボを用いた。
【0109】
その後、絶縁層としてパーフルオロテトラコサン(n−C24F50)を100nm、図8fに示す方向から蒸着した。
【0110】
続いて、図8g、hに示す方向から、ダイオード素子としてアルミニウム電極/ブタジエン化合物(化合物4)/金電極を膜厚100nm,80nm,100nmとして成膜した。
(化合物4)
【化4】
【0111】
以上の真空蒸着を行った蒸着装置は拡散ポンプ排気で、4×10−4Pa(3×10−6torr)の真空度で行なった。また、アルミニウムの蒸着は抵抗加熱方式により成膜速度30nm/secで行い、導電性微粒子としてアルミニウムを含有するアミノイミダゾールジシアネートは、共蒸着法により作製した。蒸着は抵抗加熱方式であり、成膜速度はアミノイミダゾールジシアネートが20nm/sec、アルミニウムが10nm/secである。各層の蒸着は同一蒸着装置で連続して行い、蒸着中に試料が空気と接触しない条件で行った。
【0112】
上記の構成において、パネルの平均輝度として25Cd/m2を得る条件は以下の通りであった。即ち、パネル全体の走査周波数を240Hz、すなわち走査周期を約4.2msecとすると、各行あたりのデューティー期間は0.42msecとなる。発光素子面積は1画素の約49%を占めるので、約50Cd/m2での発光が必要であった。当該発光素子の効率は約2.5Cd/Aであるので、発光を走査周期4.2msecの間継続するには、50/2.5×4.2×10−3=0.084Q/m2=8.4μQ/cm2以上の電荷がコンデンサーに充電される必要があった。これをデューティー期間0.42msecの間にコンデンサーへ注入するには、スイッチング素子には20mA/cm2以上の電流が流れる必要がある。実際には、デューティー期間中にも発光素子に電流は流れるので、スイッチング素子にはこれらの電流が重畳され、最高約22mA/cm2の電流が流れた。
【0113】
これを従来の図1の構成の場合と比較した。図1の構成では、発光素子の面積が本実施例の約半分であるので発光面での輝度は100Cd/m2が必要となり、コンデンサーに蓄積されるべき電荷量は前記の2倍の約17μQ/cm2が必要であった。デューティー期間でのスイッチング素子の電流密度は最高約22mA/cm2であり、実施例1と大きな違いは無かった。
【実施例11】
【0114】
ポリエチレンテレフタラート基板上に厚さ0.2μmのアルミニウム電極を形成した後、フォトプロセスにより1.0mmピッチ、幅0.7mmで15列のストライブ電極となるようにパターニングを施した。次に日本ゼオン製ネガフォトレジストLAX−1を4μmスピンコートにより、SiO2膜を0.5μmスパッタにより成膜した。その後、前述と同様の方法にてエッチングすることにより、前記アルミニウム電極とは直角方向に1.0mmピッチで10行の隔壁を得た。隔壁の幅は300μm、高さ4.5μm、オーバーハングは2μmであった。
【0115】
次にダイオード素子として、金電極/ブタジエン化合物(化合物4)/アルミニウム電極を膜厚100nm,80nm,100nmとして成膜し、その後、図8cのような斜め蒸着を用いて実施例1のコンデンサーを成膜し、図8dのように有機絶縁膜を形成した。発光素子としては、だけ図8eのように、銅フタロシアニン(CuPC)/ナフチルフェニルジアミン(NPB)/アルミニウムキノリン(Alq3)をそれぞれ100nm、50nm、50nm蒸着した後、Liを5nm蒸着し、図8fのように有機絶縁膜を形成した後に、図8gのように、その上にITOをスパッタにより成膜した。このようにして、実施例11の表示装置を得た。
【0116】
上記の構成において、パネルの平均輝度として50Cd/m2を得る条件は以下の通りであった。即ち、パネル全体の走査条件を実施例1と同じに設定した時、当該発光素子の効率は約2.0Cd/Aであるので、発光を走査周期4.2msecの間継続するには、50/2.0×4.2×10−3=0.105Q/m2=10.5μQ/cm2以上の電荷がコンデンサーに充電される必要があった。これをデューティー期間0.42msecの間にコンデンサーへ注入するには、スイッチング素子には25mA/cm2以上の電流が流れる必要がある。実際には、デューティー期間中にも発光素子に電流は流れるので、スイッチング素子にはこれらの電流が重畳され、最高約28mA/cm2の電流が流れた。
これを従来の構成と比較すると、実施例1と同様に発光素子の面積が約半分であるので発光面での輝度は100Cd/m2が必要となり、コンデンサーに蓄積されるべき電荷量は前記の2倍の約21μQ/cm2が必要であった。
【実施例12】
【0117】
ガラス基板上に、厚さ100nmのITO膜をRFマグネトロンスパッタ法により成膜した後、通常のフォトリソグラフ法を用いて1.0mmピッチ、幅0.7mmでストライプ状に15列の列電極を形成した。更に1.0mmピッチ、幅0.6mmのストライプ形状となるように、RFマグネトロンスパッタ法と通常のフォトリソグラフ法を用いて、10行のチタン酸バリウムストロンチウム酸化物のコンデンサ領域を厚さ100nmだけ形成した。そして、RFマグネトロンスパッタ法と通常のフォトリソグラフ法を用いて、画素単位の島状の形状になるようにITOによる電極を厚さ100nmだけ形成した。さらに、酸素雰囲気中1時間の熱処理を行ってコンデンサーを作製した。当該コンダンサーは実質的にほとんど透明であり、その後に形成される発光部110の光は、このコンデンサーを通して外部へ出射される。次に、日本ゼオン製ネガフォトレジストLAX−1をスピンコートにより4μm厚に成膜し、SiO2膜をスパッタにより0.5μm厚に成膜した。その後、前述と同様の方法にてエッチングすることにより、前記ITO電極とは直角方向に1.0mmピッチで10行の隔壁を得た。隔壁の幅は300μm、高さ4.5μm、オーバーハングは2μmであった。前記コンデンサーはこれらの隔壁の間に配される。
【0118】
次に発光素子として、銅フタロシアニン(CuPC)/ナフチルフェニルジアミン(NPB)/アルミニウムキノリン(Alq3)をそれぞれ100nm、50nm、50nm厚だけ蒸着した後、Liを5nm蒸着し、ダイオード素子として、銅電極/C60/アルミニウム電極を膜厚100nm,80nm,100nmに成膜した。
【0119】
上記の構成において、パネルの平均輝度として70Cd/m2を得る条件は以下の通りであった。即ち、パネル全体の走査条件を実施例1と同じに設定した時、当該発光素子の効率は約2.0Cd/Aであるので、発光を走査周期4.2msecの間継続するには、70/2.0×4.2×10−3=0.147Q/m2=14.7μQ/cm2以上の電荷がコンデンサーに充電される必要があった。これをデューティー期間0.42msecの間にコンデンサーへ注入するには、スイッチング素子には35mA/cm2以上の電流が流れる必要がある。実際には、デューティー期間中にも発光素子に電流は流れるので、スイッチング素子にはこれらの電流が重畳され、最高約37mA/cm2の電流が流れた。
これを従来の構成と比較すると、実施例1と同様に発光素子の面積が約半分であるので発光面での輝度は140Cd/m2が必要となり、コンデンサーに蓄積されるべき電荷量は前記の2倍の約30μQ/cm2が必要であった。
【0120】
このように同じ平均輝度を得るのに必要な発光素子の輝度は、図1の実施の形態1の構成に比べて実施例1では1/2となり、素子寿命が約2倍になることが期待できる。もしくは同じ寿命で2倍の輝度を得ることも可能である。
【0121】
[実施の形態3]
[概要]
本発明の駆動方法の例を図18を用いて示す。本駆動方法は、例えば、図6に示した構成において用いられる。図6はスイッチング素子として整流素子602を用いる場合の等価回路であり、図18は、ある画素に関連し、1フレーム期間において、列電極(データ信号線、あるいはY電極)116に印加される電圧波形(図18a)と、行電極(タイミング信号線、あるいはX電極)104に印加される電圧波形(図18e)と、それらから算出される、発光部110及びスイッチング素子114の接合部Aにかかる電圧波形(図19c)、及びそれらの電位差(図18b、図18d)を示したものである。また、あわせて、発光部110の発光状態も図18eに示す。
【0122】
さらに、図19a〜fにより、図18a〜fそれぞれのデューティー期間内における変化を時間を拡大して詳細に示す。整流素子602(図6)は、高い電圧領域で抵抗が小さくなる非線形性を有している。デューティー期間702の後半705内には、タイミング信号線X(行電極)104にマイナスバイアス−VXonを印加し(図19e)、整流素子の抵抗を小さくさせて導通状態とする。このとき、データ信号線116に印加される電圧をVYonとすると(図19a)、X−Y間の電位差(図示しない)はVXon+VYonとなる。整流素子602、発光素子110、キャパシタ106の電気的接合点をA部と呼ぶ(図6)と、整流素子の順方向抵抗が発光素子の順方向抵抗より充分小さくなるようにすれば、データ信号線Y116の電位とA部の電位はほぼ等しくなる。この結果、A部の電位はYの電位に近いVAonとなり、A−X間の電位差は(VXon+VAon)となる。非デューティー期間704にはタイミング信号線X104の電圧はVXonから0Vにされるが、この時、A部は絶縁状態となっており(即ち、整流素子に対し逆バイアスの関係になっており)、電荷のやり取りがなくなる。その結果、A部の電圧はVXon分だけ低下して、(VXon+VAon)となる。
【0123】
非デューティー期間704においては、タイミング信号線X104およびデータ信号線Y116にはバイアスを印加せず、低電圧で駆動することで整流素子602を実質的に非導電状態とする。このとき、各画素の発光強度は画素毎のVYonの大きさによって制御する事ができる。
【0124】
前述のように、あるフレーム期間が発光状態に制御されると、そのフレーム期間終了時にキャパシタに電荷が残留し、次のフレーム期間の発光状態、もしくは非発光状態に影響を与える可能性がある。特に次のフレーム期間が非発光状態である場合には、適切な消光信号によって前の発光状態の履歴を消去する必要がある。そこで、例えば図7に示すように、各行のデューティー期間を前半706と後半705の2つに分割し、前半706の期間内に残留電荷を放電させる。次のフレーム期間の信号は、デューティー期間の後半705に付加する事により、次のフレームの表示を所望のものとすることができる。
【0125】
[詳細]
本実施の形態の駆動方法においては、タイミング信号線X(行電極)104とデータ信号線Y(列電極)116の両方、もしくはいずれか一方に、それぞれ−VXe、−VYeのバイアス電圧を印加する(図19aおよび図19c)。これによりキャパシタに残留した電荷が発光素子110を介して放電されて、上記の課題を解決することができる。直前の非デューティー期間の終わりにA部に残留した電位をVArとすると(図19c)、タイミング信号線X(行電極)104とデータ信号線Y(列電極)116にバイアス電圧−VXeおよび−VYeをそれぞれ印加することにより、AとXの電位差はVAr+VXeとなり、YとAの電位差は−VAr−VYeとなる。ここで、AとXの電位差はVAr+VXeとなるために、整流素子の順方向したがってAからXへは電流が流れるが、YからAへは逆バイアスとなり電流は流れない。AとXの電位差は非デューティー期間内のVArより大きくなるため放電は速やかに進み、Aの電位はXの電位に近づく。特にVXe<VYeの場合は、Aの電位が−VYeに達すると整流素子602を介してYからの電荷注入が起こり、電位はそれ以上低下しなくなる。この場合はAの電位はより安定化することが可能であるが、一定値になった後にYからXへ電流が流れて発光部106は発光しつづける状態となりコントラスト比(on/off比)が低下する可能性がある。これに対しVXe>VYeとすると(図19d)、Yからの電荷注入は抑制されるので、残留電荷のみが発光に寄与する事となり、コントラスト比の制御が容易になる。いずれの場合も、VYeはデータ信号線Y(列電極)116を介して付加されるため、各画素の履歴を反映させることが可能であり、求められる画質に対して最適な値を選定する事が出来る。
【0126】
本実施の形態においては、前記整流素子は、例えば、アルミニウム薄膜/フラーレン薄膜/銅薄膜の積層構造を有するものや、アルミニウム電極/ペンタセン化合物/金電極の積層構造を有するものが好適であるがそれに限定されるものではなく、多くの有機電子材料が適用可能である。
【0127】
キャパシタについては、各種金属酸化物、例えばシリコン、アルミ、タンタル、チタン、ストロンチウム、バリウムなどの酸化物、あるいはこれらの混合酸化物を用いることが可能である。また、導電性微粒子を有機材料に分散させると、誘電層の実効誘電率が上昇するために、小さな面積で十分な容量を備えるキャパシタ部を形成することができるので、これを用いる事も可能である。特に後者の場合は低温プロセスでの形成が可能であり、プラスチック基板を用いる場合には好適である。
【0128】
本実施の形態においては、デューティー期間においてマトリックスのデューティー駆動される行の画素中のキャパシタへ、発光量に応じた電荷を第1の整流素子を介して蓄積し、デューティー期間外の時間には当該キャパシタで保持される電位によって発光部へ流れる電流保持して発光を継続する。
【0129】
本実施の形態におけるスイッチング素子としては、高速動作が可能な整流素子を用いている。また、基板として耐熱性を有するガラス等を基板として用いる場合は、キャパシタとしてセラミック酸化物系を用いることが可能である。例えば、代表的な強誘電体であるチタン酸バリウムストロンチウムをRFマグネトロンスパッタ法により数100nmの厚さで成膜し、これを約650℃で熱処理をすることにより良好なキャパシタを得ることが出来る。また、プラスチック基板を用いる場合はキャパシタとしては、導電性微粒子を分散させた有機誘電体によって誘電体層を構成する事が出来る。
【0130】
これらの整流素子を介して、各行にはそのデューティー期間において、各発光部に並列に接続されたキャパシタへ電荷が蓄積される。非デューティー期間には、各画素は整流素子により信号線(例えば、列電極)から電気的に隔離され、キャパシタに蓄積された電荷により発光を継続する。蓄積される電荷量は所要の発光強度に応じて調整可能であるので、容易に階調表示を得ることができる。
【0131】
図21は本実施の形態における表示装置について、そのうちの一つの画素の構造例を示す断面図である。透明基板102の一方の面に、ITO(インジウムスズ酸化物)による透明電極材料により、行電極104が形成される。この行電極104は、互いに平行なストライプ状の複数の電極にパターニングされている。このように形成された行電極104上とその周辺に隔壁108をフォトレジスト等により形成する。次に、行電極104上の隔壁によって仕切られた部分に、有機EL素子等による発光部110とキャパシタ部106を並置するように形成する。次に、画素単位に孤立した島状の電極面(画素電極)112、薄膜整流素子602を形成する。次に整流素子602の上に、行電極104に交差するように互いに平行なストライプ状の複数の電極にパターニングされた金属により列電極116を形成する。各電極や有機EL素子、薄膜整流素子、キャパシタ部などは薄膜により形成され、有機EL素子や薄膜整流素子の電流は膜面に垂直に流れる。
【実施例13】
【0132】
ポリエチレンテレフタラート基板上に通常のフォトプロセスとスパッタにより行電極としてITO(インジウムスズ酸化物)透明電極よりなるストライプ電極を100組形成した。100組の電極のピッチは500μmとし、各電極の幅は450μmとした。また、各電極の厚さは100nmとした。その後、絶縁性の隔壁をフォトプロセスにより電極の長手方向に100組形成した。パターンのピッチは500μmとし、各組は隔壁により2つの領域に分けられる。これにより、100×100組の画素が形成された。次いで、ITO電極の長手方向に上には、区切られた2つの領域を一組として、その一方に発光素子、一方にキャパシタを形成した。それぞれの面積は220μm×450μmで同一とした。
【0133】
発光素子として有機EL層を、銅フタロシアニン(CuPC)(アルドチッチ社製)/ナフチルフェニルジアミン(NPB)(アルドチッチ社製)/アルミニウムキノリン(Alq3)(アルドチッチ社製)/カルシウム電極を順次真空蒸着で成膜した。各層の厚さは、それぞれ100nm、50nm、50nm、100nmとした。
【0134】
また、キャパシタ素子は真空蒸着法により、絶縁性有機物としてアミノイミダゾールジシアネート(化合物1)、導電性微粒子としてアルミニウムを用いてこれらを共蒸着法にて誘電体層を形成した。具体的には、アルミニウム層、アミノイミダゾールジシアネート層、アミノイミダゾールジシアネートとアルミニウムの共蒸着層、アミノイミダゾールジシアネート層、アルミニウム層を順次連続して薄膜を形成した。各層の膜厚は、それぞれ、60nm、40nm、30nm、40nm、60nmの厚さとした。
【0135】
整流素子については、アルミニウムよりなる電極上にC60(アルドチッチ社製)(120nm厚)とCu電極(60nm厚)を成膜して作製した。その後、列電極116をアルミニウム蒸着により形成した。上記の成膜に用いた蒸着装置は拡散ポンプ排気で、蒸着は4×10−4Pa(3×10−6torr)の真空度で行った。また、アルミニウムの蒸着は抵抗加熱方式により成膜速度は30nm/secで行い、導電性微粒子としてアルミニウムを含有するアミノイミダゾールジシアネートは、共蒸着法により作製した。蒸着は抵抗加熱方式であり、成膜速度はアミノイミダゾールジシアネートが20nm/sec、アルミニウムが10nm/secである。
【実施例14】
【0136】
整流素子として、アルミニウム膜(100nm)、ペンタセン膜(50nm)、金膜(100nm)を連続して蒸着して形成した以外は、実施例13と同様にして実施例14の試料を得た。
【実施例15】
【0137】
基板としてガラスを用い、基板上に、行電極としてITO(インジウムスズ酸化物)透明電極よりなるストライプ電極を交互に50組形成した後、ITO電極上に白金膜を50nmの厚さで形成し、更にRFマグネトロンスパッタ法と通常のフォトリソグラフ法を用いて、白金膜上にチタン酸ストロンチウム・バリウム酸化物を厚さ100nmで形成し、その後酸素雰囲気中1時間の熱処理を行ってキャパシタとした。その他は実施例13と同様の工程として、実施例15の試料を得た。
【0138】
以上の実施例の試料をフレーム周波数60Hz、フレーム期間は約17msとした。各行のデューティ期間は17ms/100=170μsとなる。各実施例における整流素子抵抗、キャパシタンス容量とそれらから求められる充電プロセスの時定数は表1に示す通りであり、このデューティ期間170μs内で充分な応答が可能であった。
【表1】
【0139】
一方、非デューティ期間における放電プロセスの時定数は表2の通りであった。ここで、有機ELの素子抵抗値は、電圧8V付近までを直線近似した値を用いている。
【表2】
【0140】
このように上記の試算では放電プロセスの時定数はフレーム期間17msに比して充分小さいが、前述のように有機ELの素子抵抗値は低電圧では大きくなるため、各フレーム期間の間にはキャパシタからの放電は終了しなかった。各実施例における残留電圧と本発明の方法による電圧印加条件、及び、本発明の方法を用いない場合の特性(それぞれ比較例1,2,3)を下表に示す。本発明の駆動方法を用いることにより、残留電圧の影響が抑制され、高いON/OFF比が得られることがわかる。ここで、ON/OFF比は下表で示す発光状態と、VYon=−VXonとした非発光状態を交互に繰り返した時の発光強度比をしめしており、本発明の方法を用いない場合には残留電位による発光強度に相当するものである。表3から明らかなように、残留電位の影響を本発明の駆動方法により抑制できた。また、キャパシタに蓄積された電荷はそのほとんどが発光素子を通して放電されるため消費電力が抑制されることは明らかである。
【表3】
【0141】
なお、上記の実施例では、整流素子と有機EL素子の極性が、図2の例とは逆になっており、それに伴い電圧値も図1、図7とは逆の極性となるが、理解を容易にするため、上表では図1、図7の極性に合わせて数値を示している。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明によれば、整流素子を用いた有機ELディスプレイパネルなどの表示装置の駆動方法において、低コストで発光量が安定であり、特にコントラスト比(ON/OFF比)が高く、かつ消費電力の少ない駆動方法を提供することが出来る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に複数形成された第1組のストライプ電極と、
該第1組のストライプ電極に交差する方向に、互いに平行に複数形成された第2組のストライプ電極と、
該第1組のストライプ電極の各電極と、第2組のストライプ電極の各電極との立体的に交差する点にある複数の画素と
を基板上に備えてなり、該複数の画素のそれぞれには、
前記第1組のストライプ電極の一つに電気的に接続された非線形二端子素子からなるスイッチング素子と、
該スイッチング素子と電気的に接続され、前記第2組のストライプ電極の一つに電気的に接続された発光部と、
有機誘電体を誘電層として含み、該発光部に電気的に並列となるように、該スイッチング素子及び前記第2組のストライプ電極の該電極に電気的に接続されたコンデンサー部と
が備えられている表示装置。
【請求項2】
互いに平行に複数形成された第1組のストライプ電極と、
該第1組のストライプ電極に交差する方向に、互いに平行に複数形成された第2組のストライプ電極と、
該第1組のストライプ電極の各電極と、第2組のストライプ電極の各電極との立体的に交差する点にある複数の画素と
を基板上に備えてなり、該複数の画素のそれぞれには、
前記第1組のストライプ電極の一つに電気的に接続された非線形二端子素子からなるスイッチング素子と、
該スイッチング素子と電気的に接続され、前記第2組のストライプ電極の一つに電気的に接続された発光部と、
チタン酸バリウムストロンチウム酸化物を誘電層として含み、該発光部に電気的に並列となるように、該スイッチング素子及び前記第2組のストライプ電極の該電極に電気的に接続されたコンデンサー部と
が備えられている表示装置。
【請求項3】
前記誘電層は、分散された多数の導電性微粒子をさらに含むものである、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記スイッチング素子は、双安定素子またはダイオード素子である、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記ダイオードがC60またはペンタセンの何れかを有している、請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記発光部と前記コンデンサー部とが同一平面に配置されている、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項7】
前記基板が可撓性基板である、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項8】
前記発光部と前記コンデンサー部と前記スイッチング素子とは、基板上に形成され、薄膜からなるとともに、それぞれが両面に電極層を備えており、
該発光部と該コンデンサー部と前記スイッチング素子とは、それぞれの電極層とともに、その順もしくは逆の順に前記基板上に順次積層されており、
前記発光部のコンデンサー側の電極と前記スイッチング素子のコンデンサー側の電極との電気的接続は、前記コンデンサー部に設けられ、第1のバイアを介してなされており、
前記コンデンサー部の発光部側の電極と前記第2組のストライプ電極の前記電極との電気的接続は、前記発光部に設けられ、第2のバイアを介してなされており、
前記発光部と前記コンデンサー部とを絶縁する絶縁部をさらに備えたものである、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第1のバイアは、前記コンデンサー部の領域のある辺に沿って、該コンデンサー部の側面を経由するように設けられ、絶縁体で内張りされており、
前記第2のバイアは、前記発光部の領域のある辺に沿って、該発光部の側面を経由するように設けられ、絶縁体で内張りされており、
該絶縁体が前記絶縁部と連続しているものである、請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1組または前記第2組のストライプ電極として、前記基板上に備えられた電極層を備え、
該電極層のストライプ電極に交差する方向に複数延在し、隣り合った画素を該電極層のストライプ電極の向きに仕切るとともに、前記基板に平行な方向に突出するオーバーハング部を上部に有する電気絶縁性の隔壁をさらに有する、請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
電極層を含む前記発光部を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップと、
前記絶縁部を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップと、
電極層を含む前記コンデンサー部を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップと、
電極層を含む前記スイッチング素子を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップと
を含む、請求項10に記載された表示装置を製造する方法。
【請求項12】
前記表示装置が、前記第1組および前記第2組のストライプ電極を組合わせた行電極と列電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行なうものであり、
ある選択された行のデューティー期間において、
前記スイッチング素子を導電状態とする信号を該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第1のステップと、
次いで、前記発光部を発光させるための電荷を、導通状態にある前記スイッチング素子を介して、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって前記コンデンサー部に蓄積する第2のステップと、
次いで、前記スイッチング素子を非導電状態とする信号を該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第3のステップと
を有し、
前記選択された行の非デューティー期間において、前記コンデンサー部に蓄積した電荷を、前記発光部を通じて放電させることにより、該発光部を発光させるステップを有する請求項1〜10のいずれかに記載の表示装置を駆動する方法。
【請求項13】
前記第1のステップにおいて、前記選択された行以外の行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と同極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項12に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項14】
前記第1のステップにおいて、前記選択された行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と逆極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項12に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項15】
前記第3のステップにおいて、前記選択された行以外の行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と同極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項12に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項16】
前記第3のステップにおいて、前記選択された行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と逆極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項12に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項17】
前記表示装置が、前記第1組および前記第2組のストライプ電極を組合わせた行電極と列電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行なうものであり、
あるフレーム期間中の選択された行のデューティー期間において、
前記スイッチング素子に逆方向バイアス電圧を印加し、前記スイッチング素子を介して前記コンデンサー部に蓄積した電荷を放電可能な状態とするための信号を、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第1のステップと、
前記スイッチング素子に順方向バイアス電圧を印加して、前記スイッチング素子を導電状態とすることにより、前記発光部を発光させるための電荷を、導通状態にある前記スイッチング素子を介して、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって前記コンデンサー部に蓄積する第2のステップと
を有し、
前記フレーム期間中の前記選択された行の非デューティー期間において、前記コンデンサー部に蓄積した電荷を、前記発光部を通じて放電させることにより、該発光部を発光させるステップを有し、
前記選択された行について、前記フレーム期間の次のフレーム期間におけるデューティー期間の前記第1のステップにより、前記コンデンサー部に残存している電荷を放電する、請求項1〜10のいずれかに記載の表示装置を駆動する方法。
【請求項18】
前記第1のステップにおいて、前記選択された行以外の行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と同極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項17に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項19】
前記第1のステップにおいて、前記選択された行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と逆極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項17に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項20】
前記第2のステップにおいて、前記選択された行以外の行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と同極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項17に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項21】
前記第2のステップにおいて、前記選択された行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と逆極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項17に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項22】
第1電極と、第2電極と、該第1電極に電気的に接続された整流素子と、該整流素子と電気的に接続され該第2組の電極に電気的に接続された発光部と、該発光部に電気的に並列となるように該整流素子及び前記第2組の電極に電気的に接続されたキャパシタ部とを備えてなる表示装置の駆動方法であって、
デューティー期間において、
前記第1電極と前記第2電極の両方、もしくはいずれか一方に電圧オフセット信号を印加し、前記キャパシタ部に残存する電荷を発光部を介して放電させる第1のステップと、
次いで、前記発光部を発光させるための電荷を前記キャパシタ部に蓄積する第2のステップと
を有し、
非デューティー期間において、前記キャパシタ部に蓄積した電荷を、前記発光部を通じて放電させて、該発光部を発光させるステップを有する、表示装置の駆動方法。
【請求項23】
請求項22に記載の表示装置の駆動方法であって、
前記第1電極が互いに平行に複数形成された第1組のストライプ電極の一つであり、
前記第2電極が該第1組のストライプ電極に交差する方向に互いに平行に複数形成された第2組のストライプ電極の一つであり、
前記表示装置は、該第1組のストライプ電極の各電極と第2組のストライプ電極の各電極との交差する点にある複数の画素を基板上に備えており、
前記整流素子が、前記第1組のストライプ電極の一つに電気的に接続され、該複数の画素のそれぞれに備えられた整流素子であり、
前記発光部が、前記整流素子と前記第2組のストライプ電極の一つとに電気的に接続され、該複数の画素のそれぞれに備えられた発光部であり、
キャパシタ部が、該発光部に並列となるように、該整流素子及び前記第2組のストライプ電極の該電極に電気的に接続され、該複数の画素のそれぞれに備えられたキャパシタ部であり、
前記表示装置が、前記第1組および前記第2組のストライプ電極を組合わせた行電極と列電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行ないうものであることを特徴とする表示装置の駆動方法。
【請求項1】
互いに平行に複数形成された第1組のストライプ電極と、
該第1組のストライプ電極に交差する方向に、互いに平行に複数形成された第2組のストライプ電極と、
該第1組のストライプ電極の各電極と、第2組のストライプ電極の各電極との立体的に交差する点にある複数の画素と
を基板上に備えてなり、該複数の画素のそれぞれには、
前記第1組のストライプ電極の一つに電気的に接続された非線形二端子素子からなるスイッチング素子と、
該スイッチング素子と電気的に接続され、前記第2組のストライプ電極の一つに電気的に接続された発光部と、
有機誘電体を誘電層として含み、該発光部に電気的に並列となるように、該スイッチング素子及び前記第2組のストライプ電極の該電極に電気的に接続されたコンデンサー部と
が備えられている表示装置。
【請求項2】
互いに平行に複数形成された第1組のストライプ電極と、
該第1組のストライプ電極に交差する方向に、互いに平行に複数形成された第2組のストライプ電極と、
該第1組のストライプ電極の各電極と、第2組のストライプ電極の各電極との立体的に交差する点にある複数の画素と
を基板上に備えてなり、該複数の画素のそれぞれには、
前記第1組のストライプ電極の一つに電気的に接続された非線形二端子素子からなるスイッチング素子と、
該スイッチング素子と電気的に接続され、前記第2組のストライプ電極の一つに電気的に接続された発光部と、
チタン酸バリウムストロンチウム酸化物を誘電層として含み、該発光部に電気的に並列となるように、該スイッチング素子及び前記第2組のストライプ電極の該電極に電気的に接続されたコンデンサー部と
が備えられている表示装置。
【請求項3】
前記誘電層は、分散された多数の導電性微粒子をさらに含むものである、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記スイッチング素子は、双安定素子またはダイオード素子である、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記ダイオードがC60またはペンタセンの何れかを有している、請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記発光部と前記コンデンサー部とが同一平面に配置されている、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項7】
前記基板が可撓性基板である、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項8】
前記発光部と前記コンデンサー部と前記スイッチング素子とは、基板上に形成され、薄膜からなるとともに、それぞれが両面に電極層を備えており、
該発光部と該コンデンサー部と前記スイッチング素子とは、それぞれの電極層とともに、その順もしくは逆の順に前記基板上に順次積層されており、
前記発光部のコンデンサー側の電極と前記スイッチング素子のコンデンサー側の電極との電気的接続は、前記コンデンサー部に設けられ、第1のバイアを介してなされており、
前記コンデンサー部の発光部側の電極と前記第2組のストライプ電極の前記電極との電気的接続は、前記発光部に設けられ、第2のバイアを介してなされており、
前記発光部と前記コンデンサー部とを絶縁する絶縁部をさらに備えたものである、請求項1または2に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第1のバイアは、前記コンデンサー部の領域のある辺に沿って、該コンデンサー部の側面を経由するように設けられ、絶縁体で内張りされており、
前記第2のバイアは、前記発光部の領域のある辺に沿って、該発光部の側面を経由するように設けられ、絶縁体で内張りされており、
該絶縁体が前記絶縁部と連続しているものである、請求項8に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1組または前記第2組のストライプ電極として、前記基板上に備えられた電極層を備え、
該電極層のストライプ電極に交差する方向に複数延在し、隣り合った画素を該電極層のストライプ電極の向きに仕切るとともに、前記基板に平行な方向に突出するオーバーハング部を上部に有する電気絶縁性の隔壁をさらに有する、請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
電極層を含む前記発光部を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップと、
前記絶縁部を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップと、
電極層を含む前記コンデンサー部を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップと、
電極層を含む前記スイッチング素子を、前記隔壁をマスクとした斜め蒸着により形成するステップと
を含む、請求項10に記載された表示装置を製造する方法。
【請求項12】
前記表示装置が、前記第1組および前記第2組のストライプ電極を組合わせた行電極と列電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行なうものであり、
ある選択された行のデューティー期間において、
前記スイッチング素子を導電状態とする信号を該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第1のステップと、
次いで、前記発光部を発光させるための電荷を、導通状態にある前記スイッチング素子を介して、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって前記コンデンサー部に蓄積する第2のステップと、
次いで、前記スイッチング素子を非導電状態とする信号を該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第3のステップと
を有し、
前記選択された行の非デューティー期間において、前記コンデンサー部に蓄積した電荷を、前記発光部を通じて放電させることにより、該発光部を発光させるステップを有する請求項1〜10のいずれかに記載の表示装置を駆動する方法。
【請求項13】
前記第1のステップにおいて、前記選択された行以外の行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と同極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項12に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項14】
前記第1のステップにおいて、前記選択された行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と逆極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項12に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項15】
前記第3のステップにおいて、前記選択された行以外の行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と同極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項12に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項16】
前記第3のステップにおいて、前記選択された行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と逆極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項12に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項17】
前記表示装置が、前記第1組および前記第2組のストライプ電極を組合わせた行電極と列電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行なうものであり、
あるフレーム期間中の選択された行のデューティー期間において、
前記スイッチング素子に逆方向バイアス電圧を印加し、前記スイッチング素子を介して前記コンデンサー部に蓄積した電荷を放電可能な状態とするための信号を、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって印加する第1のステップと、
前記スイッチング素子に順方向バイアス電圧を印加して、前記スイッチング素子を導電状態とすることにより、前記発光部を発光させるための電荷を、導通状態にある前記スイッチング素子を介して、該行電極または該列電極あるいはそれらの両方によって前記コンデンサー部に蓄積する第2のステップと
を有し、
前記フレーム期間中の前記選択された行の非デューティー期間において、前記コンデンサー部に蓄積した電荷を、前記発光部を通じて放電させることにより、該発光部を発光させるステップを有し、
前記選択された行について、前記フレーム期間の次のフレーム期間におけるデューティー期間の前記第1のステップにより、前記コンデンサー部に残存している電荷を放電する、請求項1〜10のいずれかに記載の表示装置を駆動する方法。
【請求項18】
前記第1のステップにおいて、前記選択された行以外の行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と同極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項17に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項19】
前記第1のステップにおいて、前記選択された行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と逆極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項17に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項20】
前記第2のステップにおいて、前記選択された行以外の行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と同極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項17に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項21】
前記第2のステップにおいて、前記選択された行の行電極に、前記列電極に印加した電圧信号と逆極性の電圧オフセット信号を印加する、請求項17に記載の表示装置の駆動方法。
【請求項22】
第1電極と、第2電極と、該第1電極に電気的に接続された整流素子と、該整流素子と電気的に接続され該第2組の電極に電気的に接続された発光部と、該発光部に電気的に並列となるように該整流素子及び前記第2組の電極に電気的に接続されたキャパシタ部とを備えてなる表示装置の駆動方法であって、
デューティー期間において、
前記第1電極と前記第2電極の両方、もしくはいずれか一方に電圧オフセット信号を印加し、前記キャパシタ部に残存する電荷を発光部を介して放電させる第1のステップと、
次いで、前記発光部を発光させるための電荷を前記キャパシタ部に蓄積する第2のステップと
を有し、
非デューティー期間において、前記キャパシタ部に蓄積した電荷を、前記発光部を通じて放電させて、該発光部を発光させるステップを有する、表示装置の駆動方法。
【請求項23】
請求項22に記載の表示装置の駆動方法であって、
前記第1電極が互いに平行に複数形成された第1組のストライプ電極の一つであり、
前記第2電極が該第1組のストライプ電極に交差する方向に互いに平行に複数形成された第2組のストライプ電極の一つであり、
前記表示装置は、該第1組のストライプ電極の各電極と第2組のストライプ電極の各電極との交差する点にある複数の画素を基板上に備えており、
前記整流素子が、前記第1組のストライプ電極の一つに電気的に接続され、該複数の画素のそれぞれに備えられた整流素子であり、
前記発光部が、前記整流素子と前記第2組のストライプ電極の一つとに電気的に接続され、該複数の画素のそれぞれに備えられた発光部であり、
キャパシタ部が、該発光部に並列となるように、該整流素子及び前記第2組のストライプ電極の該電極に電気的に接続され、該複数の画素のそれぞれに備えられたキャパシタ部であり、
前記表示装置が、前記第1組および前記第2組のストライプ電極を組合わせた行電極と列電極とによって各画素がアドレスされるデューティー駆動方式のドットマトリクス表示を行ないうものであることを特徴とする表示装置の駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【国際公開番号】WO2005/017859
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【発行日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513176(P2005−513176)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011603
【国際出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【発行日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/011603
【国際出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】
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