説明

表示装置

【課題】 簡単な操作で画面を部分的に鮮明に拡大することができる示装置を提供すること。
【解決手段】 画面10Aが形成されていない部位の本体11内に埋設されており画面10Aの平面形状に対応する形状に形成されている座標検出手段20と、座標検出手段20に近接された部位の座標に対応する画面10Aの座標における情報を拡大して表示する制御手段40と、情報拡大機能をオン・オフする切換手段43とを有し、切換手段43を操作して情報拡大機能をオンにしたうえで、座標検出手段20の上方に指をかざすことにより、その座標に対応する部位の画面の情報を拡大するようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に係り、特に、携帯電話機やナビゲーション装置、PDA(Personal Digital Assistant)などの表示装置において画面中の特定の部位の情報を拡大表示することのできる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機においては、画面の大きさに対して表示する情報量が膨大になりつつある。したがって、画面に表示される文字の大きさを小さくして画面中に一度に表示される情報量を増大するようにしている。このため、視力弱者や高齢者にとっては画面に表示される情報を読み取りにくくなっている。
【0003】
携帯電話機が受信した情報を携帯電話機に接続された携帯電話機の画面に比してはるかに大きな寸法とされている画面拡大表示部に表示するもの(例えば、特許文献1参照)や、樹脂製のレンズを彎曲させて携帯電話機の画面の上方に位置するように固定するもの(例えば、特許文献2参照)があった。
【0004】
【特許文献1】特開2002−164968号公報
【特許文献2】特開2003−179677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1に記載のものにおいては、携帯電話機とは別の画面拡大表示部を用意して携帯電話機に接続しなければならないため、コスト高になるし、操作も煩雑であった。
【0006】
また、前述した特許文献2に記載のものは、樹脂製のレンズを彎曲させて携帯電話機の画面の上方に固定するようになっているが、携帯電話機の画面を鮮明に拡大させることはできなかった。
【0007】
そこで、本発明は、簡単な操作で画面を部分的に鮮明に拡大することができる携帯電話機やナビゲーション装置その他の表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明の表示装置の特徴は、本体に形成されており情報を表示する画面を有する表示装置であって、前記画面が形成されていない部位の前記本体内に埋設されており前記画面の平面形状に対応する形状に形成されている座標検出手段と、前記座標検出手段に近接された部位の座標に対応する前記画面の座標における情報を拡大して表示する制御手段と、前記情報拡大機能をオン・オフする切換手段とを有する点にある。そして、このような構成を採用したことにより、切換手段を操作して情報拡大機能をオンにしたうえで、座標検出手段の上方に指をかざせば、その座標に対応する部位の画面の情報が拡大される。
【0009】
本発明の他の表示装置の特徴は、前記制御手段が、指が位置する座標の変化に応じて前記情報の拡大される座標を変更するように構成されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、指が位置する座標を変更することにより拡大される画面の座標を変更することができる。
【0010】
本発明のさらに他の表示装置の特徴は、前記座標検出手段と指との距離は複数の範囲に分割されており、前記制御手段は前記範囲が異なるごとに情報の拡大倍率を変更するように構成されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、座標検出手段と指との距離を変更することにより画面の座標部位の拡大率を変更することができる。
【発明の効果】
【0011】
前述した本発明の表示装置によれば、簡単な操作で画面の情報を部分的に鮮明に拡大することができる。
【0012】
すなわち、座標検出手段の上方に指をかざすだけで、その座標に対応する部位の画面の座標部位の情報を部分的に鮮明に拡大することができる。
【0013】
また、指が指す座標を変更することにより画面の拡大部位を変更することができる。
【0014】
さらに、指と座標検出手段の距離を変更することにより画面の情報の拡大率を変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
まず、本発明の表示装置の実施形態としての携帯電話機の概略について説明する。
【0016】
図1は、携帯電話機10の操作部(本体)11を示したものである。図1に示すように操作部11には一般的なキー配列からなる複数の操作キー12が配列されている。図2に示すように、前記操作部11は、上部ケース11Aと下部ケース11Bとが一体的に組み合わされて構成されている。前記上部ケース11Aには複数の開口11a,11a…が形成されており、前記操作キー12の表面であるキートップ12aがこれらの開口11aを介して外部に露出されている。前記キートップ12aには、文字、記号あるいは図形などが印刷されている。
【0017】
前記操作キー12は透明または半透明な樹脂により形成されており、例えば各操作キー12がフープ部(図示せず)を介して一体的に連結されたキーマットとして形成されている。したがって、各操作キー12は、本体側となるキーマットに対し、前記フープ部を介して下方に弾性変形可能な状態で連結されている。各操作キー12の背面には、円柱形状からなるステム12bが一体に突出形成されており、各ステム12bは下方に延在している。
【0018】
前記下部ケース11Bには回路基板13が固定されており、この回路基板13には、複数の電子部品15と光源14とが設けられている。前記操作キー12は、前記ステム12bの先端が各電子部品15に対向するように配置されている。
【0019】
前記電子部品15は、例えばドーム形状からなる金属製の反転板と接触電極とを有している。前記反転板の基端部は回路基板13に設けられたリング状の電極に固定されており、反転板の内面が接触電極に対向している。そして、前記反転板が反転し、反転板の内面が前記接触電極に接触することにより、前記接触電極とリング状電極とが導通されるスイッチ構造となっている。また、前記光源14はLEDなどにより構成されており、この光源14は、前記電子部品15の周囲に設けられている。
【0020】
図2に示すように、前記操作部11の内部には座標検出手段20が設けられており、この座標検出手段20は接着剤16を介して前記キーマットの下面に固定されている。なお、この座標検出手段20は、前記携帯電話機10の長方形をなす画面10Aの形状に対応するように全体を長方形に形成されている。
【0021】
前記座標検出手段20は可撓性に優れたフィルム状の基材シート21を有している。前記基材シート21は誘電体で形成されているものが好ましい。
【0022】
図4に示すように、基材シート21の一方の面には、Y方向に延在するとともにX方向へ所定の間隔を隔てて配置された複数のX検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xと、同じくY方向に延在するとともにX方向へ所定の間隔を隔て、かつ前記個々のX検出電極の間に配置された複数のコモン電極1k,2k,3k,4k,5kとが互いに接触しないように配線されている。前記各コモン電極1k,2k,3k,4k,5kはY2側の端部で1本に接続されており、コモン電極Kとして基材シート21の外部に引き出されている。
【0023】
また、図5に点線で示すように、基材シート21の他方の面には、X方向に延在するとともにY方向へ所定の間隔を隔てて配置された複数のY検出電極1y,2y,3y,4y,5y,6y,7y,8yが設けられている。なお、図5においては前記基材シート21の一方の面に設けられた前記コモン電極1k,2k,3k,4k,5kを実線で示している。
【0024】
前記基材シート21の一方に設けられた複数のX検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xと、他方に設けられた複数のY検出電極1y,2y,3y,4y,5y,6y,7y,8yとは、前記基材シート21の両面において互いに垂直に交差するように配置されている。
【0025】
図4および図5に示すように、前記コモン電極1k,2k,3k,4k,5kには、X方向の両側に向かって所定の長さ寸法で直線状に延在する複数のコモン枝電極22が形成されている。個々の前記コモン枝電極22は、Y方向に一定の間隔を隔てて前記各コモン電極1k,2k,3k,4k,5kに交差するように設けられており、両側(X1およびX2)方向の先端は基本的に前記X検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xに交差する寸前の位置まで延在している。
【0026】
図4に示すように、個々のX検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xには、X方向の両側に平行に延在する複数の第1の補助電極23が形成されている。前記第1の補助電極23は、基本的には一対の平行電極23a,23bにより形成されており、Y方向に一定の間隔を隔てるとともに前記X検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xに交差するように配置されている。そして、前記第1の補助電極23を形成する一方の平行電極23aと他方の平行電極23b間には前記コモン枝電極22の先端部が挿入されており、前記コモン枝電極22の先端部が前記平行電極23a,23bに対して部分的に対向するように配置されている。
【0027】
また、図5に示すように、個々のY検出電極1y,2y,3y,4y,5y,6y,7y,8yには、Y方向の両側に平行に延在する第2の補助電極24が形成されている。前記第2の補助電極24も、基本的には一対の平行電極24a,24bにより形成されており、X方向に一定の間隔を隔てて前記Y検出電極1y,2y,3y,4y,5y,6y,7y,8yに交差するように配置されている。図5に示すように、基材シート21の他方の面に設けられた前記コモン電極1k,2k,3k,4k,5kは、前記基材シート21の他方の面に設けられ、かつ前記第2の補助電極24を形成する一方の平行電極24aと他方の平行電極24bとの間を通るように配置されている。
【0028】
なお、前記座標検出手段20は、図4に示す前記X検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xおよびコモン電極1k,2k,3k,4k,5kが配線された基材シート21の一方の面上には、前記X検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xおよびコモン電極1k,2k,3k,4k,5kを覆う表面シート(図示せず)が積層されている。また、図5に示す前記Y検出電極1y,2y,3y,4y,5y,6y,7y,8yが配線された基材シート21の他方の面上にも前記Y検出電極1y,2y,3y,4y,5y,6y,7y,8yを覆う裏面シート(図示せず)が積層されている。
【0029】
なお、前記基材シート21が誘電体で形成されている場合には、前記表面シートおよび裏面シートは透明な絶縁シートであることが好ましい。また、前記基材シート21が誘電体で形成されていない場合には、前記表面シートおよび裏面シートは誘電性を有する透明なシートであることが好ましい。
【0030】
図2に示すように、前記基材シート21(表面シートおよび裏面シートも同様)には、前記ステム12bを通過させるための孔21aや、光源14が発した光を操作キー12の背面に導く通路として機能する孔21bが形成されている。よって、操作キー12を押下したときに、前記ステム12bが前記電子部品15の反転板を反転動作させることができるため、操作者に心地よいクリック感を与えることができる。
【0031】
また光源14から発せられた光は、前記孔21bを通路として通過することができるため、前記キー(操作部材)12の背面を明るく照らし出すことができる。この場合、前記照明用の光源14を前記基材シート21に形成された孔21bに対向させて配置すると、暗闇の中でもキートップ12aに印字等されている前記文字、文字、記号あるいは図形をはっきりと認識させることが可能である。
【0032】
つぎに、前記座標検出手段の動作について説明する。
【0033】
最初に、前記コモン電極K、コモン枝電極22、X検出電極およびY検出電極だけが設けられている場合、すなわち前記第1の補助電極23および第2の補助電極24が設けられていない場合の座標検出手段の動作について説明する。
【0034】
図6は基準となるコモン電極とこれに隣接する2つのX検出電極を示す拡大して示す平面図、図7は基準となるコモン電極に設けられたコモン枝電極と隣接するX検出電極に設けられた平行電極との関係を拡大して示す平面図である。
【0035】
図6に示すように、複数のコモン電極1k,2k,3k,4k,5kのうちのいずれか1つ、例えばコモン電極3kを基準コモン電極とすると、この基準コモン電極3kに隣接する一方の側(例えば右側)に位置するX検出電極は4x、他方(左側)に位置するX検出電極は3xとなる。
【0036】
前記基準コモン電極3kとX検出電極3xとの間は静電容量C1で結合された状態にあり、また、前記基準コモン電極3kと検出電極4xとの間は静電容量C2で結合された状態にある。このため、図示しない発振手段などを用いて前記基準コモン電極3kに対してパルス状の電圧Vinを印加すると、前記X検出電極3xには静電容量C1を通して前記電圧Vinが印加され、同じくX検出電極4xには静電容量C2を通して前記電圧Vinが印加される。
【0037】
なお、基準コモン電極3kと左側のX検出電極3xとの間の電極間距離dおよび電極間の対向長さ寸法が、基準コモン電極3kと右側のX検出電極4xとの間の電極間距離dおよび電極間の対向長さ寸法に等しい場合には、両静電容量はC1=C2となり、両電極3x、4x間はバランス調整された状態にある。
【0038】
この状態から、前記基準コモン電極3kを覆う前記表面シート上に指など接地状態にある導電体を接触または近接させると、前記基準コモン電極3kと前記X検出電極3x、4x間に生じている誘電束の一部が前記導電体側に引き抜かれるため、前記静電容量C1,C2が減少させられる。このため、前記X検出電極3x、4xからは前記静電容量C1,C2の変化に応じた検出電圧Voutが出力される。前記検出電圧Voutは、導電体とX検出電極との距離が近いほどが小さな電圧値として出力される。すなわち、X検出電極3x,4xから出力される電圧値が最も小さく、それ以外のX検出電極1x,2x,5xから出力される電圧値は大きいままである。このため、X検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xの電圧値を、一定の周期で順次検出することにより、導電体のX方向の座標位置を決定することが可能となっている。
【0039】
一方、図3ないし図5に示すものでは、前記コモン電極1k,2k,3k,4k,5kには、X方向に延在する複数のコモン枝電極22がY方向に所定のピッチで7列形成されている。すなわち、X方向に一列に並ぶ1組のコモン枝電極22が全部で7組形成されている。前記Y方向に所定のピッチで並ぶ7組のコモン枝電極22と、その間に設けられた前記Y検出電極1y,2y,3y,4y,5y,6y,7y,8yとは互いに対向している。
【0040】
前記7組のコモン枝電極22のうちの1組を基準コモン電極とすると、前記基準コモン電極とY方向に隣接する2つのY検出電極との間にも前記同様の静電容量C1,C2がそれぞれ形成されている。よって、X検出電極の場合と同様に、コモン電極K側に所定周期のパルス電圧Vinを与えるとともに、前記Y検出電極1y,2y,3y,4y,5y,6y,7y,8yから出力される検出電圧Voutを所定の周期で順次検出することにより、導電体のY方向の座標位置を決定することが可能である。
【0041】
そして、座標検出手段20は、このようなX方向の座標位置とY方向の座標位置を取得することにより、導電体の座標情報を携帯電話機10に入力することが可能となっている。
【0042】
しかしながら、図2に示すように、前記基材シート21(表面シートおよび裏面シートも同様)には、前記ステム12bを通過させるための孔21aや、光源14が発した光を操作キー12の背面に導く通路として機能する孔21bが形成されている。このため、前記コモン電極、コモン枝電極22、X検出電極およびY検出電極を、前記基材シート21上に直線的に形成することができず、前記孔21aを避けた迂回路26が部分的に形成されている。
【0043】
しかし、コモン電極1k,2k,3k,4k,5k、コモン枝電極22、X検出電極およびY検出電極に部分的な迂回路を形成すると、前記コモン電極1k,2k,3k,4k,5kと、これに隣接するX検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xとの間の個々の静電容量、および前記Y方向に所定のピッチで並ぶ7組のコモン枝電極22とこれに隣接する前記Y検出電極1y,2y,3y,4y,5y,6y,7y,8yとの間の個々の静電容量は、互いの電極間距離の違いにより異なる大きさで形成されることになる。すなわち、基準コモン電極と、これに隣接するX検出電極(またはY検出電極)との間に形成される前記静電容量C1,C2が一定の大きさではないため、前記前記X検出電極またはY検出電極から検出される電圧値からでは前記導電体のX座標およびY座標を正しく検出することができない。
【0044】
そこで、本発明では、前述したように前記X検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xに複数の第1の補助電極23を形成し、また、Y検出電極1y,2y,3y,4y,5y,6y,7y,8yに複数の第2の補助電極24を形成することで対処している。
【0045】
以下、その動作を説明する。
【0046】
図7に示すように、複数のコモン電極1k,2k,3k,4k,5kのうちのいずれか1つを基準コモン電極BKとし、この基準コモン電極BKに隣接する一方の側(例えば右側)に位置するX検出電極を第1の検出電極XR、他方(左側)に位置するX検出電極を第2の検出電極XLとする。なお、前記第1の検出電極XRおよび第2の検出電極XLは、前記X検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xのうち隣接するいずれか2つである。
【0047】
また、前記基準コモン電極BKからX1方向に延在するコモン枝電極22の先端が、前記第1の検出電極XRからX2方向に延在する1対の平行電極(第1の補助電極)23a,23b間に対向配置される箇所を第1の容量調整部25A、同様に前記基準コモン電極BKからX2方向に延在するコモン枝電極22の先端が、前記第2の検出電極XLからX1方向に延在する1対の平行電極(第2の補助電極)23a,23b間に対向配置される箇所を第2の容量調整部25Bとする。
【0048】
第1の補助電極および第2の補助電極における前記平行電極23a,23bとコモン枝電極22とが対向する部分の長さ寸法(対向長さ寸法)をL、前記平行電極23a,23bとコモン枝電極22との電極間距離をd、基材シート21の誘電率をεとし、各電極のZ方向の膜厚寸法をδ(図示せず)すると、第1の容量調整部25Aにおける静電容量Cは以下の式(数1)の値となる。
【0049】
【数1】

【0050】
同様に、第2の容量調整部25Bにおける静電容量Cは以下の式(数2)で表わせる。
【0051】
【数2】

【0052】
前記誘電率ε、各電極の膜厚寸法δは一定値とみなすことができるため、結果として前記静電容量C,Cはともに電極間の対向長さ寸法Lに比例する。
【0053】
そして、このような第1の容量調整部25A、第2の容量調整部25Bは、1つの基準コモン電極BKの左右両側に複数(図3ないし図5に示す例ではそれぞれ7箇所だが、ここではn箇所とする)設けられている。また、元から前記基準コモン電極BKと第1の検出電極XR間に存在している静電容量をC1、元から前記基準コモン電極BKと第2の検出電極XL間に存在する静電容量をC2とすると、前記基準コモン電極BKと第1の検出電極XRの間には、前記静電容量C1と前記n箇所の第1の容量調整部25Aに形成される前記静電容量Cとが並列接続された状態で存在するのと等価であるため、この間の合成容量CRはCR=C1+n・Cである。同様に、前記基準コモン電極BKと第2の検出電極XLの間には、前記静電容量C2とn箇所の第2の容量調整部25Bに形成される前記静電容量Cとが並列接続された状態で存在するのと等価であるため、この間の合成容量CLはCL=C2+n・Cである。
【0054】
ところで、コモン電極1k,2k,3k,4k,5kに所定の電圧Vinを印加して、前記X検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xから検出電圧Voutを取得する場合、1つのX検出電極には、その両側に位置する2つのコモン電極から電圧Vinが与えられる。例えば、X検出電極2xから電圧を検出する場合、前記X検出電極2xには隣接するコモン電極1kとコモン電極2kの双方から電圧Vinが作用するため、前記X検出電極2xに対する合成容量Cは、コモン電極1kとX検出電極2xとの間の静電容量C1と、コモン電極2kとX検出電極2xとの間の静電容量C2とが並列接続された値(C=C1+C2)となる。
【0055】
よって、前記基準コモン電極BKと第1の検出電極XRおよび第2の検出電極XLとの間の総合的な合成容量Cは以下の式(数3)の値となる。
【0056】
【数3】

【0057】
すなわち、複数の第1の容量調整部25Aおよび第2の容量調整部25A,25Bを形成することにより、基準コモン電極BKと第1の検出電極XRおよび第2の検出電極XLとの間の静電結合を高め、総合的な合成容量Cを大きくすることにより、導電体が近接したときの静電容量の変動を大きくすることができる。このため、各X検出電極およびY検出電極から検出される電圧値の変化を確実に捕らえることができ、座標検出手段の検出精度を高めることが可能となる。
【0058】
しかも、前記式(数3)はn・(C+C)に相当する静電容量を有することにより、総合的な合成容量Cの調整の幅を広げることが可能である。すなわち、前記n・(C+C)に相当する静電容量は複数の第1,第2の容量調整部25A,25Bにより形成されているため、これらを適正に調整することにより、前記総合的な合成容量Cの変動を低く抑えること、すなわち各電極間に形成される合成容量Cを一定に維持することができる。
【0059】
つぎに、合成容量Cの調整手法の一例について説明する。
【0060】
まず、図7に示す関係を有する状態、すなわち、元々の基準コモン電極BKと第1の検出電極XRとの間の静電容量C1と、元々の基準コモン電極BKと第2の検出電極XLとの間の静電容量C2とが同じ大きさ(C1=C2)にあり、かつ、複数の第1の容量調整部25Aの静電容量n・Cと複数の第2の容量調整部25Bの静電容量n・Cとが同じ大きさ(n・C=n・C)にある場合(CL(=C1+n・C)=CR(=C2+n・C))を、バランス調整が維持された基準状態とする。なお、基準状態における総合的な合成容量Cは前記式(数3)となる。
【0061】
つぎに、図4を参考に、コモン電極1kを基準コモン電極BKとし、X1側のX検出電極2xを第1の検出電極XR、X2側のX検出電極1xを第2の検出電極XLとした場合について説明する。
【0062】
図4に示すように、X検出電極2xが延在するY方向の途中には、「OFF」,「1」、「4」、「7」、「*」等の文字が印字された操作キー12のステム21aが挿通されるための5つの孔21aが所定のピッチで形成されている。そして、この孔21aの側方には、前記X検出電極2xを形成する5つの迂回路26(個別に26a,26b,26c,26d,26eで示す。)が形成されている。前記各迂回路26は前記孔21aを避けるようにほぼ円弧形状に形成されており、すべての迂回路26は前記基準コモン電極BKであるコモン電極1kから見て図示X1方向に凸状に突出するように形成されている。また、各孔21aに隣接し、かつ、前記第1の検出電極XR(X検出電極2x)の右側に設けられる複数の第1の容量調整部25Aのほとんどは、平行電極23a,23bの一方または双方をX2方向に延在することができない状態にある。
【0063】
このため、前記基準コモン電極BKであるコモン電極1kと、第1の検出電極XRであるX1側のX検出電極2xとの間では、元々の静電容量C1および複数の第1の容量調整部25Aで形成される静電容量n・Cがともに小さく、この間の合成容量CRは前記基準状態よりも小さい状態にある。
【0064】
一方、前記基準コモン電極BKであるコモン電極1kと、第2検出電極XLあるX1側のX検出電極1xの間では、コモン電極1kとX検出電極1xとが一定の距離が維持されているため、この間の元々の静電容量C1は前記基準状態の場合とほぼ同じである。ただし、X検出電極1xからX1方向に延在する平行電極23a,23bの長さ寸法が前記基準状態における長さ寸法より長めに形成されており、前記平行電極23a,23bとコモン枝電極22との間の対向長さ寸法Lが長くなっている。
【0065】
すなわち、前記基準コモン電極BKであるコモン電極1kと、第2の検出電極XLとの間では、前記複数の第2の容量調整部25Bで形成される静電容量n・Cは大きくなるように形成されており、この間の合成容量CLは前記基準状態よりも大きな状態にある。
【0066】
そして、総合的な合成容量C=CR+CLは、前記基準状態に一致するように設定されている。すなわち、基準コモン電極BKに対し右側となる一方の合成容量CRの減少分を、左側となる他方の合成容量CLで補完することにより、全体としての総合的な合成容量(基準コモン電極BKと第1,第2の検出電極XR,XL間の合成容量)Cが一定値に維持されている。
【0067】
またコモン電極3kが延在するY方向の途中には、「2」、「5」、「8」、「0」の文字が印字された操作キー12のステム12bが挿通されるための4つの孔21aが所定のピッチで形成されているが、この場合も前記同様の処置を施すことにより、コモン電極3kに対し一方のX検出電極4xとの間の合成容量CRの減少分または増加分を、他方のX検出電極3xとの間の合成容量CLで補完することにより、全体としての総合的な合成容量(基準コモン電極BKと第1,第2の検出電極XR,XL間の合成容量)Cが基準状態に一致するように一定に維持されている。
【0068】
このように、本発明では、基準コモン電極BKと、その一側に隣位する第1の検出電極XRとの間の前記合成容量CLと、その他側に隣位する第2の検出電極XLとの間の前記合成容量CLうち、一方の合成容量が減少状態にある場合には、他方の合成容量を増加させることにより、あるいは一方の合成容量が増加状態にある場合には、他方の合成容量を減少させることにより、全体としての総合的な合成容量C(=CL+CR)が常に一定となるように、前記静電容量n・Cおよび静電容量n・Cを形成する複数の第1の容量調整部25Aおよび第2の容量調整部25Bの調整がなされている。すなわち、一方の合成容量CLが、他方の合成容量CRの増減を補完できるように、各電極パターンが形成されている。
【0069】
なお、前述した構成は、Y方向に所定のピッチで並ぶ7組のコモン枝電極22とY検出電極1y,2y,3y,4y,5y,6y,7y,8yとの間でもそれぞれ前記同様の処置が施されている。
【0070】
このため、本発明の座標検出手段20では、基材シートに孔などが形成されており、各電極を直線状に配線することができない場合でも、コモン電極Kと各X検出電極またはY検出電極間の静電容量を場所によらず一定に維持することができる。よって、指など接地状態にある導電体を前記座標検出手段20の表面に接触または近接させたときに、導電体が接触または近接したX方向の座標位置を高い精度で検出することが可能である。
【0071】
図8はX検出電極側の等価回路とその電圧検出手段の構成を示す概念図である。
【0072】
図8に示す電圧検出手段では、所定周波数の電圧Vinを発振することが可能な発振手段31などを用いて前記コモン電極Kに対して所定の電圧Vinを印加すると、各X検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xには前記合成容量CRおよびCLに応じた検出電圧Voutが出力される。よって、例えばマルチプレクサ32などを駆使し、所定のサンプリング周期で前記X検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xを順次選択しつつ、図示しないA/D変換手段を用いて前記X検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xに出力される各検出電圧Voutを高い精度で取得することが可能となっている。
【0073】
図9は、前記座標検出手段20を駆動するための構成を示すものである。
【0074】
図9において、携帯電話機10の全体の制御をつかさどる制御手段であるCPU40には、前記座標検出手段20が接続されているほか、メモリの一種であるRAM41およびROM42がそれぞれ接続されている。また、前記CPU40には、情報拡大機能をオン・オフする切換手段43が接続されている。この切換手段43は、本実施形態においては前記携帯電話機10の前記オンキー12nおよびオフキー12fが対応しており、前記オンキー12nを瞬間的に押圧したときに情報拡大機能がオンされ、また、前記オフキー12offを瞬間的に押圧したときに情報拡大機能がオフされるようになっている。なお、この情報拡大機能のために別のキー12を割り当ててもよいし、また、新たなキーを設けてもよい。
【0075】
前記座標検出手段20は、前記オンキー12onが瞬間的に押圧されて情報拡大機能がオンされると、情報が表示されている携帯電話機10の画面10Aにおいて情報を拡大したいと希望する画面10A内の特定部位に相当する携帯電話機10の操作部11上の特定部位に指のような接地状態にある導電体を近接させることにより、この導電体の位置の座標を検出しうるようになっている。
【0076】
なお、ここでは、簡略的に前記コモン電極K、コモン枝電極22、X検出電極およびY検出電極だけが設けられており、前記第1の補助電極23および第2の補助電極24が設けられていない場合について説明する。
【0077】
この実施形態の構成によれば、前述したように、前記基準コモン電極3kを覆う前記表面シート上に指のような接地状態にある導電体を近接させると、前記基準コモン電極3kと前記X検出電極3x、4x間に生じている誘電束の一部が前記導電体側に引き抜かれるため、前記静電容量C1,C2が減少させられる。このため、前記X検出電極3x、4xからは前記静電容量C1,C2の変化に応じた検出電圧Voutが出力される。前記検出電圧Voutは、導電体とX検出電極との距離が近いほどが小さな電圧値として出力される。すなわち、X検出電極3x,4xから出力される電圧値が最も小さく、それ以外のX検出電極1x,2x,5xから出力される電圧値は大きいままである。このため、X検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6xの電圧値を、一定の周期で順次検出することにより、導電体のX方向の座標位置を決定することができる。
【0078】
つぎに、図3ないし図5に示すものでは、前記コモン電極1k,2k,3k,4k,5kには、X方向に延在する複数のコモン枝電極22がY方向に所定のピッチで7列形成されている。すなわち、X方向に一列に並ぶ1組のコモン枝電極22が全部で7組形成されている。前記Y方向に所定のピッチで並ぶ7組のコモン枝電極22と、その間に設けられた前記Y検出電極1y,2y,3y,4y,5y,6y,7y,8yとは互いに対向している。
【0079】
前記7組のコモン枝電極22のうちの1組を基準コモン電極とすると、前記基準コモン電極とY方向に隣接する2つのY検出電極との間にも前記同様の静電容量C1,C2がそれぞれ形成されている。よって、X検出電極の場合と同様に、コモン電極K側に所定周期のパルス電圧Vinを与えるとともに、前記Y検出電極1y,2y,3y,4y,5y,6y,7y,8yから出力される検出電圧Voutを所定の周期で順次検出することにより、導電体のY方向の座標位置を決定することができる。
【0080】
そして、座標検出手段20は、このようなX方向の座標位置とY方向の座標位置を取得することにより、導電体の座標情報をCPU40に入力するようになっている。
【0081】
また、前述したように、指のような導電体の座標検出手段20との距離が小さいほど小さな電圧値が出力される。すなわち、前記X検出電極3x、4xからは前記静電容量C1,C2の変化に応じた検出電圧Voutが出力されるので、CPU40のROM42には、指と座標検出手段20との距離に応じて複数(例えば、1cmごとに4つの範囲)の範囲のテーブルが設定されており、このテーブルは、前述したX検出電極3x、4xからの電圧値から演算された距離が属する範囲に応じて座標情報における変更された情報の拡大率を設定するようになっている。この情報の拡大率としては、125,150,175および200%といった設定が可能であるが、この拡大率には種々の設定が可能である。
【0082】
また、前記CPU40は、指を座標検出手段20の上方において水平方向に移動させて、指の座標が変化すると、新たな座標に相当する部位の画面10A中の情報を拡大するようになっている。
【0083】
前述した構成によれば、キー12nを短く押すことにより情報拡大機能がオンされることになるので、この状態において、画面10Aに表示されている情報のうち拡大したい部位に対応する座標検出手段20の上方に指をかざせば、この指の位置する座標に対応する部位の画面10Aの情報が拡大される。
【0084】
しかも、座標検出手段20の上方にかざした指の座標検出手段20との距離を小さくすれば画面10Aに表示されている情報の拡大率を段階的に増大することができる。
【0085】
また、座標検出手段20の上方にかざした指を水平方向に移動させれば、画面10Aにおける拡大される情報を変更することができる。
【0086】
以上説明したように、本実施形態の携帯電話機10によれば、キー12nを押したうえで、座標検出手段20の上方に指をかざすという簡単な操作で画面10Aの情報を部分的に鮮明に拡大することができる。
【0087】
また、指が指す座標を変更することにより画面10Aの拡大部位を変更することができる。
【0088】
さらに、指と座標検出手段20の距離を変更することにより画面10Aの情報の拡大率を変更することができる。
【0089】
なお、前述した実施の形態においては、コモン電極Kに電圧Vinを与え、X検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6x側から検出電圧Voutを検出するようにしたが、本発明はこれに限られるものではなく、X検出電極1x,2x,3x,4x,5x,6x側に電圧Vinを与えてコモン電極Kから検出電圧Voutを検出するようにしてもよい。
【0090】
また前述した実施の形態においては、基材シート21の一方の面に形成された電極パターンをコモン電極およびX検出電極とし、他方の面に形成された電極パターンをY検出電極としたものを説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、基材シート21の一方の面に形成された電極パターンをコモン電極とY検出電極とし、他方の面に形成された電極パターンをX検出電極として使用するものであってもよい。さらには、前記一方の面に形成された電極パターンをY検出電極とし、且つ前記他方の面に形成された電極パターンをX検出電極とした構成であってもよい。すなわちX検出電極とY検出電極を入れ替えた構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
前述した実施形態においては、本発明の表示装置を携帯電話機をもって説明したが、本発明の表示装置は、携帯電話機のみならず、ナビゲーション装置やPDAその他の表示装置に適用できることはいうまでもない。また、拡大される情報は文字情報のみに限られるものではなく、地図のような画像情報、あるいは文字と画像の複合情報であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の表示装置としての携帯電話機の実施形態を示す平面図
【図2】図1のII−II線断面図
【図3】本発明に使用される座標検出手段を構成する基材シートに形成された電極パターンを示す平面図
【図4】図3の基材シートの一方の面に形成されたX検出電極とコモン電極とを示す平面図
【図5】図3の基材シートの一方の面に形成されたコモン電極と他方の面に形成されたY検出電極とを図4と同じ方向から見た場合の平面図
【図6】図3の基材シートにおける基準となるコモン電極とこれに隣接する2つのX検出電極を示す拡大して示す平面図
【図7】図3の基材シートにおける基準となるコモン電極に設けられたコモン枝電極と隣接するX検出電極に設けられた平行電極との関係を拡大して示す平面図
【図8】本実施形態におけるX検出電極側の等価回路とその電圧検出手段の構成を示す概念図
【図9】本実施形態における制御手段およびその関連構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0093】
10 携帯電話機
10A 画面
11 操作部
11A 上部ケース
11B 下部ケース
12 操作キー(操作部材)
12a キートップ
12b ステム
12n 情報拡大機能オンキー(切換手段)
12f 情報拡大機能オフキー(切換手段)
14 光源
15 電子部品
20 座標検出手段
21 基材シート
21a,21b 孔
22 コモン枝電極
23 第1の補助電極
23a,23b 平行電極
24 第2の補助電極
24a,24b 平行電極
25A 第1の容量調整部
25B 第2の容量調整部
26,26a,26b,26c,26d,26e 迂回路
31 発振手段
32 マルチプレクサ
40 CPU
41 RAM
42 ROM
43 切換手段
C1 基準コモン電極と第1のX検出電極との間の元々の静電容量
C2 基準コモン電極と第2のX検出電極との間の元々の静電容量
CA 第1の容量調整部における静電容量
CB 第2の容量調整部における静電容量
CR 基準コモン電極と第1の検出電極との間の合成容量
CL 基準コモン電極と第2の検出電極との間の合成容量
C 基準コモン電極と第1,第2の検出電極との間の総合的な合成容量
K,1k,2k,3k,4k,5k コモン電極
1x,2x,3x,4x,5x,6x X検出電極
1y,2y,3y,4y,5y,6y,7y,8y Y検出電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に形成されており情報を表示する画面を有する表示装置であって、
前記画面が形成されていない部位の前記本体内に埋設されており前記画面の平面形状に対応する形状に形成されている座標検出手段と、
前記座標検出手段に近接された部位の座標に対応する前記画面の座標における情報を拡大して表示する制御手段と、
前記情報拡大機能をオン・オフする切換手段と
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、指が位置する座標の変化に応じて前記情報の拡大される座標を変更するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記座標検出手段と指との距離は複数の範囲に分割されており、前記制御手段は前記範囲が異なるごとに情報の拡大倍率を変更するように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−318082(P2006−318082A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138253(P2005−138253)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】