説明

表示装置

【課題】小型化及びコストダウンを図りながら、野外から屋内まで視認性に優れた表示装置を提供する。
【解決手段】表示画素内に、液晶表示素子20が外光4を反射させて表示を行なう非発光表示素子からなる反射領域11と、有機EL発光素子40が直接変調し表示を行なう発光表示素子からなる透過領域12とが併設されている。互いに対向してなる絶縁性基板21と絶縁性基板29とを備える。液晶表示素子20及び有機EL発光素子40はいずれも絶縁性基板21と絶縁性基板29との間に設けられる。透過領域12には、絶縁性基板21上に順に有機EL発光素子40と液晶表示素子20の液晶層26とが積層されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置等の非発光表示装置、有機EL発光素子等を用いた発光表示装置等の表示装置に関するものである。詳細には、表示領域内に、非発光表示領域と発光表示領域とが併設されている表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話をはじめとして、携帯情報端末(PDA:Personal Data Assistant) 等が広く普及している。これに伴い、これらの端末に搭載される情報表示用のディスプレイの開発が近年、非常に盛んになっている。
【0003】
上記ディスプレイは、非発光表示装置と発光表示装置とに大別される。前者は、光変調素子により太陽光、室内光、バックライト又はフロントライト等の外部光源からの光を変調して表示を行なうものであり、この代表として液晶表示素子が知られている。一方、後者は、外部光源を必要とせず、発光素子が自ら発光することにより表示を行なうものであり、この代表としてEL(Electro Luminescence) が非常に注目されている。以下、これらの表示装置について、さらに詳細に説明を行なう。
【0004】
先ず、外部光源を利用する非発光表示装置である透過型液晶表示装置では、バックライトを光源としているので、消費電力の増加及び形状の拡大となり携帯用には課題を残していた。そこで、上記課題の一つである消費電力を抑えるために、液晶層の下部電極をアルミニウム等の光を反射する金属にて形成することにより光源として太陽光や室内灯等の外光を利用する反射型液晶表示装置が開発されている。しかし、この反射型液晶表示装置は、外光を利用するため暗い場所での使用には難があった。
【0005】
こうした問題を解決するため、液晶層の下部電極をハーフミラーにて形成し、明るい環境下ではバックライトを使わないで反射型表示を行ない、暗い場所ではバックライトを点灯して透過型表示を行なう半透過型表示装置が開発された。しかしながら、上記半透過型表示装置では、光を反射する部分と光を透過する部分との相反する特性を用いるため、光利用効率が低く消費電力低減のための決定的な改善には至っていない。
【0006】
こうした問題を解決するため、本発明者らは、明るい環境下ではバックライトを使用しない反射型として用いることができる一方、暗い場所ではバックライトを点灯して透過型として用いることのできる液晶表示装置を考案した(特許文献1参照)。この液晶表示装置は、膜厚を薄くして半透過性を持たせた反射板を用いる従来の液晶表示装置とは異なり、液晶表示装置における各表示画素を反射領域と透過領域との2つの領域に分割している。すなわち、上記液晶表示装置では、各表示画素の一つの領域として反射電極を形成して反射領域とする一方、各表示画素の他の領域には透過電極を形成して透過領域としている。また、反射領域の液晶層の厚みと透過領域の液晶層の厚みとを異ならせている。これにより、反射領域及び透過領域の各々の領域にて最適な明るさを実現することが可能となっている。
【0007】
しかしながら、上記の画素分割型の液晶表示装置では、各画素の全領域に対してバックライト光を後方から照射する一方、このバックライト光が利用されるのは各画素の透過領域のみである。したがって、バックライト光の利用効率が低いという課題を有していた。特に、反射電極の領域比率が高い場合には必然的に透過領域が狭くなるので、バックライト光の利用効率が低くなる。
【0008】
そこで、上記画素分割型の液晶表示装置に対してそのバックライト光の利用効率を高めるものとして、例えば、特許文献2に開示された画素分割型の液晶表示装置がある。この液晶表示装置100では、図15に示すように、先ず、液晶パネル101における各画素102…に配された反射電極103の一部に透過開口部104…を設けることにより、画素分割型の液晶表示装置としている。また、この液晶表示装置100では、バックライトとして有機EL(Electro Luminescence) 素子110からなる発光素子を用いる一方、この有機EL素子110の発光部111…を、各画素102…の全領域に配置するのではなく、透過開口部104…に対応する領域にのみ配置している。これにより、パターン化した有機EL素子をバックライトとして組み合わせるので、光の利用効率を向上させ、消費電力の低減を図ることができるものとなっている。
【0009】
一方、発光表示装置の代表である上記有機EL発光素子を使った表示装置は、薄型、軽量の特徴を持ち、発光素子であるため液晶表示装置のようにバックライトが不要で暗い環境でも使用が可能となり、しかも、出射した光の略全てを表示に用いるため光利用効率も高い。しかしながら、この有機EL発光素子を用いた表示装置は、常に発光する必要があり、特に明るい環境下で表示品位を上げるには発光量を増す必要があるため、低消費電力化には難があった。
【特許文献1】特開平11−101992号公報
【特許文献2】特開2001−66593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記図15に示した画素分割型の液晶表示装置では、液晶パネル101の外側に発光素子としての有機EL素子110を配置しているために、反射電極103の透過開口部104…と有機EL素子110との間に位相差板105と偏光板106とガラス基板2枚つまりガラス基板107及びガラス基板112とが存在する。現在、一般的な画素ピッチは80ミクロン程度であるが、この場合、透過開口部104の幅はさらにその2分の1から6分の1、およそ15ミクロンから40ミクロンとなる。これに対し、偏光板106の厚みは約300ミクロンであるとともに、500から700ミクロン厚のガラスが、液晶パネル101のガラス基板107と有機EL素子110のガラス基板112とで2枚存在する。したがって、反射電極103の透過開口部104と有機EL素子110との距離は1300ミクロンから1700ミクロンにもなる。そのため、有機EL素子110の発光部111…を透過開口部104…に対応する位置に設置したとしても、透過開口部104…へ有機EL素子110の発光部111から出射する全ての光を入射させることは不可能である。したがって、やはり、有機EL素子110の照射効率がよくないという問題点を有している。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、小型化及びコストダウンを図りながら、野外から屋内まで視認性に優れた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の表示装置は、上記課題を解決するために、表示領域内に、光変調素子が外光を反射させて表示を行なう非発光表示素子からなる第1表示領域と、反射性の電極を含む発光素子が直接変調し表示を行なう発光表示素子からなる第2表示領域とが併設されているとともに、互いに対向してなる第1基板と第2基板とを備え、上記光変調素子及び発光素子はいずれも上記第1基板と第2基板との間に設けられ、かつ、上記第2表示領域には、上記第1基板上に順に上記発光素子と光変調素子の光変調層とが積層されており、同一画素中の第1表示領域もしくは第2表示領域の何れか一方が表示状態である場合に、他方は外光の有無によらず常に黒状態であることを特徴としている。
【0013】
本発明の表示装置によれば、外光を反射させて表示を行う非発光表示素子と自発光の発光表示素子とを同一表示装置内に組み込んだ構成とすることにより、バックライト等の別体光源を付設することが不要となるため、低消費電力化と小型化とを同時に実現することができる。また、非発光表示素子と自発光の発光表示素子とを同一表示装置内に組み込むに際し、電極、配線、駆動素子、絶縁体等の部材の製造工程を共通化できるので、従来、バックライト等の光源製造及びアセンブリ等にかかっていた時間・コストを大幅に軽減できる。
【0014】
以下、さらに本発明の作用・効果について詳細に説明を行う。
【0015】
先ず、上述したように、一般に、ディスブレイは非発光表示装置と発光表示装置とに大別される。非発光表示装置は太陽光、室内光、バックライト、フロントライト等の外部光源からの光を非発光表示素子である光変調素子に透過させることにより変調するものであり、この非発光表示素子には、外部光源からの光を反射させる反射手段を持つ反射型と反射手段を持たない透過型とがある。一方、発光表示装置は発光素子を有する表示装置である。通常、発光素子又は発光層と称する部分が自発光する。なお、ここでは、上記光変調素子における透過光の制御を光変調と呼ぶのに対し、発光素子での発光のことを直接変調と呼ぶことにする。
【0016】
ところで、透過型液晶表示装置に代表される透過型の非発光表示装置の場合、通常、暗表示から明表示までバックライト光の輝度は一定であり、常時点灯している。したがって、透過型の非発光表示装置は常時外部光源で電力を消費することになる。また、透過型の非発光表示装置では、光変調素子とバックライトとに対してそれぞれ電源供給及び制御が必要となるため部品点数が多く、小型化するのにも制限があり、コストダウンを図るのが難しかった。
【0017】
一方、EL表示装置に代表される発光表示装置は、発光輝度を変調するため暗表示と明表示とでは消費電力が異なり、消費電力は暗表示では少なく明表示では多くなる。
【0018】
ここで、これら透過型の非発光表示素子又は発光表示素子と反射型の非発光表示素子とを同一パネル内に組込んで双方を表示に用いる場合と、本発明とを比較する。つまり、透過型の非発光表示素子と反射型の非発光表示素子とを組込んだ従来の表示装置すなわち従来技術として説明した画素分割型の液晶表示装置等と本発明の表示装置とを比較する。
【0019】
従来の液晶表示装置は、図2に破線L1で示すように、明環境下から暗環境下まで光源であるバックライトを常時点灯させる必要から、略一定の消費電力が必要である。これに対し、発光表示素子と反射型の非発光表示素子とを同一パネル内に組込んだ本発明の表示装置は、周りの環境に合わせて発光表示素子の輝度を調整して表示できる。このため、図2に実線L2で示すように、明環境下では発光輝度を絞り、反射型の非発光表示素子を最大限利用できる一方、暗環境下では発光表示素子の発光輝度を上げて表示することができる。したがって、明環境下では従来の透過型の非発光表示装置においてバックライト点灯にかかっていた電力を低く抑えることができる。
【0020】
したがって、本発明の表示装置は、明環境下では、透過型の非発光表示素子と反射型の非発光表示素子とを組込んだ表示装置よりも低消費電力化が可能であり、輝度を絞って表示することによって、長寿命化及び信頼性向上を実現することができる。さらに、本発明の表示装置は、別体としてバックライトを設ける必要がないので、従来の液晶表示装置と比較して、薄型化及び小型化が可能であり、電源供給手段及び制御等も不要であるためコストダウンを図ることができる。
【0021】
また、本発明による表示装置を発光表示素子のみの表示装置と比較すれば、図3の通りとなる。すなわち、図3において破線L1’で示すように、発光表示素子のみで構成された表示装置の場合、環境が明るくなるに伴って、発光輝度を上げていかなければ表示が見難くなる。
【0022】
一方、本発明の表示装置では、明環境下では反射型の非発光表示素子が表示特性を向上させるので、発光表示素子は、同図において実線L2’で示すように、輝度を落として表示することが可能である。これは、従来の発光表示素子のみで使用される場合には無かった概念であり、本発明の構成によって独自になすことのできる輝度制御方法である。
【0023】
このように、本発明の表示装置によれば、最大輝度を発光表示素子のみである場合よりも低く設定することが可能となり、長寿命化、信頼性向上を実現することができる。
【0024】
具体的には、本発明の表示装置は、先ず、表示領域内に、光変調素子が外光を反射させて表示を行なう非発光表示素子からなる第1表示領域と、発光素子が直接変調し表示を行なう発光表示素子からなる第2表示領域とが併設されている。
【0025】
したがって、発光素子は表示面側に向けて自ら発光して直接的に表示するので、従来のように、発光素子をバックライトやフロントライトとして使用するものではない。これによって、発光素子からの光の利用効率を高めることができるとともに、表示装置の厚みも薄くなる。すなわち、バックライトの厚みは、通常3〜6ミリメートル程度であるために、バックライトが不要になることによる厚み減少のメリットは非常に大きい。また、バックライトが不要になることは、従来、液晶パネルの背面パネルとバックライトとの間に設置されていた偏光板、位相差板及びガラス基板も不要となることを意味する。したがって、これら偏光板、位相差板及びガラス基板が不要になることによっても表示装置の厚みをより薄くすることができる。
【0026】
また、パターン化した発光素子バックライトを位置決めして固定する必要もないので、これにかかる専用装置、固定機構が省略でき、部品点数の削減及び工程短縮等によるコストダウンを図ることが可能となる。
【0027】
さらに、バックライトと背面側の偏光板及び位相差板が不要となるメリットは、単に表示装置全体の厚みが薄くなることだけではない。すなわち、部材点数が減ることは、材料費だけでなく組み立て工数や各々の部材の検査等に要するコストも削減できるため、表示装置全体の製造コストを下げることができる。
【0028】
また、本発明のような例えば画素分割方式等の表示領域分割方式の表示装置では、第1表示領域と第2表示領域との比率をある程度任意に設計することが可能である。このため、例えば、携帯電話や情報携帯端末(PDA)等のモバイル機器への使用を前提とする場合は、反射領域である第1表示領域の比率を大きくすることが一般的である。例えば、表示画素の画素面積のうち80%を反射領域とした場合には、発光領域である第2表示領域は20%になるため、発光素子の発光面積は最大でも画素面積の5分の1で済む。このことは、消費電力の低減を図ることが可能となることを意味する。
【0029】
したがって、小型化及びコストダウンを図りながら、野外から屋内まで視認性に優れた表示装置を提供することができる。
【0030】
また、本発明では、互いに対向してなる第1基板と第2基板とを備え、上記光変調素子及び発光素子はいずれも上記第1基板と第2基板との間に設けられている。そして、第2表示領域には、上記第1基板上に順に上記発光素子と光変調素子の光変調層とが積層されている。このため、光変調素子及び発光素子はいずれも、第1基板と第2基板との間に収容されるので、表示装置の厚みを確実に薄くすることができる。さらに、発光素子の表面側に光変調層が積層されていても、発光素子は第1基板と第2基板との間に設けられているので、発光素子の表示光が全て第2表示領域に出射される。そのため、光の利用効率は非常に高くなる。
【0031】
したがって、より高い照射効率を確保して、明るさ向上のみならず、表示装置の厚みの低減及び部材コストの低減を図り得る表示装置を提供することができる。
【0032】
さらに、同一画素中の第1表示領域もしくは第2表示領域の何れか一方が表示状態である場合に、他方は外光の有無によらず常に黒状態となるように構成している。このため、発光素子を発光駆動することによるコントラストの低下を防止することができる。
【0033】
また、本発明の表示装置は、上記記載の表示装置において、発光素子は、第2表示領域の面積と略同じか又はそれよりも小さい面積を有していることを特徴としている。
【0034】
すなわち、発光素子は必ずしも第2表示領域の全てに形成する必要は無く、必要とされる画面輝度に応じて、必要な面積に形成すれば良い。この点、本発明では、発光素子は、第2表示領域の面積と略同じか又はそれよりも小さい面積を有している。したがって、発光表示素子について、さらに消費電力を少なくすることが可能となる。
【0035】
また、本発明の表示装置は、上記記載の表示装置において、発光素子が有機エレクトロルミネッセンス素子からなっていることを特徴としている。
【0036】
このため、容易に、光変調素子と有機エレクトロルミネッセンス素子とを第1基板と第2基板との間に内蔵することができる。
【0037】
また、発光素子として電流駆動型の有機エレクトロルミネッセンス素子を使用することによって、発光素子の消費電力は発光面積に比例するため、本発明による表示装置の消費電力は、有機エレクトロルミネッセンス素子をバックライトとして用いる場合と比べて、消費電力は例えば5分の1となる。したがって、確実に消費電力の低減を図ることができる。
【0038】
また、本発明の表示装置は、上記記載の表示装置において、光変調素子は、液晶表示素子であることを特徴としている。
【0039】
上記の発明によれば、光変調素子及び発光素子を表示領域内に形成したときに、小型化及びコストダウンを図りながら、野外から屋内まで視認性に優れた表示装置を提供することができる。
【0040】
また、本発明の表示装置は、上記記載の表示装置において、発光素子と光変調素子とは信号ラインを共有して駆動されることを特徴としている。
【0041】
上記の発明によれば、発光素子と光変調素子とは信号ラインを共有して駆動される。このため、発光素子と光変調素子との駆動回路の構成が複雑になるのを防止し、確実に、小型化及びコストダウンを図りながら、野外から屋内まで視認性に優れた表示装置を提供することができる。
【0042】
また、本発明の表示装置は、上記記載の表示装置において、液晶表示素子の光変調層である液晶層は、第1表示領域では水平配向モードであり、かつ第2表示領域では垂直配向モードであることを特徴としている。
【0043】
この結果、光変調素子に電圧を印加しない状態においては、第1表示領域は白表示である一方、光変調素子に電圧を印加したときには、反射率がゼロとなって第1表示領域は黒表示となる。
【0044】
したがって、本発明では、発光素子と光変調素子とを同時に駆動したときには、発光素子の表示領域である第2表示領域の周りは黒表示となるので、発光素子を発光駆動することによるコントラストの低下を防止することができる。
【0045】
また、光変調素子の特性を水平配向モードとした場合、発光素子が表示を行なう第2表示領域では、液晶表示素子を駆動するための画素電極が形成されていないので、初期配向の水平配向を維持する。したがって、水平配向を維持した状態では、野外等の外光が多い場所では、発光素子へ入射する外光が多くなり、例えば、発光素子が反射板の機能を有している場合にはその外光による反射光が増加する。
【0046】
この点、本発明では、発光素子に積層される液晶層の配向は垂直配向であり、かつ第1表示領域の液晶層の配向は水平配向となっている。したがって、光変調素子を駆動せずに発光素子のみを発光した場合に、第2表示領域において外光の反射光が重畳することよるコントラストの低下及び表示品質への悪影響を防止することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明の表示装置は、以上のように、表示領域内に、光変調素子が外光を反射させて表示を行なう非発光表示素子からなる第1表示領域と、反射性の電極を含む発光素子が直接変調し表示を行なう発光表示素子からなる第2表示領域とが併設されているとともに、
互いに対向してなる第1基板と第2基板とを備え、上記光変調素子及び発光素子はいずれも上記第1基板と第2基板との間に設けられ、かつ、
上記第2表示領域には、上記第1基板上に順に上記発光素子と光変調素子の光変調層とが積層されており、同一画素中の第1表示領域もしくは第2表示領域の何れか一方が表示状態である場合に、他方は外光の有無によらず常に黒状態である。
【0048】
それゆえ、発光素子は表示面側に向けて自ら発光して直接的に表示するので、従来のように、発光素子をバックライトやフロントライトとして使用するものではない。これによって、発光素子の光の利用効率を高めることができるとともに、表示装置の厚みも薄くなる。
【0049】
また、バックライトと偏光板、位相差板が不要となることによって、部材点数が減る。このため、材料費だけでなく組み立て工数や各々の部材の検査等に要するコストも削減できるため、表示装置全体の製造コストを下げることができる。 また、本発明のような画素分割方式の表示装置では、第1表示領域と第2表示領域との比率をある程度任意に設計することが可能である。このため、例えば、表示画素の画素面積のうち80%を反射領域とした場合には、発光領域である第2表示領域は20%になるため、発光素子の発光面積は最大でも画素面積の5分の1で済む。
【0050】
したがって、小型化及びコストダウンを図りながら、野外から屋内まで視認性に優れた表示装置を提供することができるという効果を奏する。
【0051】
さらに、同一画素中の第1表示領域もしくは第2表示領域の何れか一方が表示状態である場合に、他方は外光の有無によらず常に黒状態となるように構成しているため、発光素子を発光駆動することによるコントラストの低下を防止することができる。
【0052】
また、本発明の表示装置は、上記記載の表示装置において、発光素子は、第2表示領域の面積と略同じか又はそれよりも小さい面積を有しているものである。 それゆえ、発光素子について、さらに消費電力を少なくすることが可能となる。
【0053】
また、本発明の表示装置は、上記記載の表示装置において、発光素子が有機エレクトロルミネッセンス素子からなっているものである。
【0054】
それゆえ、容易に、光変調素子と有機エレクトロルミネッセンス素子とを第1基板と第2基板との間に内蔵することができる。
【0055】
また、発光素子として電流駆動型の有機エレクトロルミネッセンス素子を使用することによって、発光素子の消費電力は発光面積に比例するため、本発明による表示装置の消費電力は、有機エレクトロルミネッセンス素子をバックライトとして用いる場合と比べて、消費電力は例えば5分の1となる。したがって、確実に消費電力の低減を図ることができるという効果を奏する。
【0056】
また、本発明の表示装置は、上記記載の表示装置において、光変調素子は、液晶表示素子であるものである。
【0057】
それゆえ、容易に、光変調素子及び発光素子を表示領域内に形成したときに、小型化及びコストダウンを図りながら、野外から屋内まで視認性に優れた表示装置を提供することができるという効果を奏する。
【0058】
また、本発明の表示装置は、上記記載の表示装置において、発光素子と光変調素子とは信号ラインを共有して駆動されるものである。
【0059】
それゆえ、発光素子と光変調素子との駆動回路の構成が複雑になるのを防止し、確実に、表示装置の厚みの低減及び部材コストの低減を図り得る表示装置を提供することができるという効果を奏する。
【0060】
また、本発明の表示装置は、上記記載の表示装置において、液晶表示素子の光変調層である液晶層は、第1表示領域では水平配向モードであり、かつ第2表示領域では垂直配向モードであるものである。
【0061】
それゆえ、光変調素子に電圧を印加しない状態においては、第1表示領域は白表示である一方、光変調素子に電圧を印加したときには、反射率がゼロとなって第1表示領域は黒表示となる。
【0062】
したがって、本発明では、発光素子と光変調素子とを同時に駆動したときには、発光素子の表示領域である第2表示領域の周りは黒表示となるので、発光素子を発光駆動することによるコントラストの低下を防止することができる。
【0063】
また、発光素子に積層される液晶層の配向は垂直配向であり、かつ第1表示領域の液晶層の配向は水平配向となっている。したがって、光変調素子を駆動せずに発光素子のみを発光した場合に、第2表示領域において外光の反射光が重畳することよるコントラストの低下及び表示品質への悪影響を防止することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1、図4ないし図10に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0065】
本実施の形態の表示装置1は、図4に示すように、縦方向に複数設けられたデータ信号線としてのソースバスライン2a…と横方向に複数設けられた走査信号線としてのゲートバスライン3…とによって表示領域としての各表示画素10…がマトリクス状に形成されている。
【0066】
上記表示画素10は、本実施の形態では、反射性を有する第1表示領域としての反射領域11と透過性を有する第2表示領域としての透過領域12とに分割されて形成されている。すなわち、図1に示すように、上記反射領域11には、光変調素子としての反射型の液晶表示素子20を構成するアルミニウム(Al)等の金属からなる画素電極25が形成されており、これによって、外光4がこの画素電極25に反射されるようになっている。
【0067】
一方、同図に示すように、画素電極25の中央部には矩形の開口部25aが形成されており、この開口部25aが上記透過領域12となっている。画素電極25の開口部25aの下方つまり画素電極25の後方には、透明絶縁層24を介して発光素子としての有機EL(Electro Luminescence) 発光素子40が設けられており、この有機EL発光素子40は、自ら表示光5を発光することにより、直接的に表示を行なう。すなわち、本実施の形態では、従来のように有機EL発光素子をバックライトやフロントライトとして使用するのではなく、有機EL発光素子40が直接的な表示を行なうので、本実施の形態の表示装置1は、液晶表示素子20にて構成される反射型液晶表示装置と有機EL発光素子40にて構成される有機EL(Electro Luminescence) 表示装置とが一体化された表示装置であるといえる。
【0068】
ここで、上記の有機EL発光素子40は、透過領域12の面積と略同じか又はそれよりも小さい面積とすることが可能である。すなわち、有機EL発光素子40は必ずしも透過領域12の全てに形成する必要は無く、必要とされる画面輝度に応じて、必要な面積に形成すれば良いためである。このため、有機EL発光素子40の面積を透過領域12よりも小さくすることによって、有機EL発光素子40の消費電力を少なくすることが可能となる。また、有機EL発光素子40が透過領域12の面積と略同じというのは、有機EL発光素子40が透過領域12の面積よりも少し大きいものであっても良いことを意味する。すなわち、有機EL発光素子40が透過領域12の面積よりも少しだけ大きいものであれば、有機EL発光素子40の照射効率は害されないと考えられるためである。また、有機EL発光素子40が透過領域12の面積よりも少し大きいものであっても、画素電極25がブラックマトリリスクの役割を果たすので問題となることはない。
【0069】
上記の表示装置1は、同図に示すように、ガラス基板等の第1基板としての絶縁性基板21上に液晶用薄膜トランジスタ素子(以下、「液晶用TFT素子:Thin Film Transistor)」という。)22を有している。この液晶用TFT素子22は、図4に示すように、前記ゲートバスライン3…及びソースバスライン2a…に接続され、ドレイン電極22aを通して画素電極25に電圧を印加するためのスイッチング素子として機能する。なお、本実施の形態では、このスイッチング素子として液晶用TFT素子22を使用しているが、必ずしもこれに限らず、例えば、液晶用MIM(Metal Insulator Metal)素子であってもよい。
【0070】
一方、上記液晶表示素子20のドレイン電極22aは、同図に示すように、有機EL発光素子40を駆動するためのEL用薄膜トランジスタ素子(以下、「EL用TFT素子」という。)42のゲート電極42aに接続されている。また、このEL用TFT素子42のソース側には、電流供給ライン2bが接続されており、EL用TFT素子42がONすることによって、後述する供給電圧Vddにより電流供給ライン2b及びEL用TFT素子42のドレイン電極42aを通して有機EL発光素子40の有機EL層41に駆動電流が流れて有機EL層41が発光するようになっている。なお、液晶表示素子20及び有機EL発光素子40の駆動回路については後に詳述する。
【0071】
ここで、上記表示装置1の構成についてより詳細に説明すべく製造方法の説明を兼ねて、図1及び図4に基づいて以下に説明する。
【0072】
先ず、図1に示すように、ガラス基板等の絶縁性基板21上に液晶用TFT素子22を形成する。このとき、EL用TFT素子42も同時に形成される。次いで、感光性のアクリル樹脂により平坦化膜23を例えば2μmの厚みに形成した後、有機EL発光素子40を構成する反射性の陽極43をスパッタリング法によりクロム(Cr)にて2000Åの厚みに形成する。さらに、スパッタリング法により二酸化珪素(SiO2 )を2000Åの厚みに形成し、所定形状となるようにエッチングを行なうことにより絶縁層44を形成する。
【0073】
続いて、蒸着法により発光層である有機EL層41を形成する。有機EL層41は、マスク蒸着により赤・緑・青の発光材料を各々の表示画素10…に対応させて形成する。次いで、電子を効率よく有機EL層41へ注入するため蒸着法によりマグネシウムと銀との図示しない合金を100Åの厚みに形成した後、透明性を有する陰極45としてスパッタリング法によりインジウム−亜鉛の酸化物(IZO)を2000Åの厚みで形成する。次いで、スパッタリング法により透明絶縁層24として五酸化タンタル(Ta25 )を7000Åの厚みで形成した後、液晶表示素子20を構成する液晶層26を駆動するための反射性を有する画素電極25をアルミニウム(Al)により形成する。
【0074】
一方、他方のガラス基板等の透明の第2基板としての絶縁性基板29上には、カラーフィルタ層28とインジウム−スズの酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)からなる対向電極27とを順に形成する。
【0075】
次に、液晶分子を絶縁性基板29に対して垂直に配向させる性質を有する図示しない配向膜(商品名「JALS204(日本合成ゴム社製)」)をスピンコート法により塗布した後焼成して形成する。
【0076】
次いで、有機EL発光素子40を形成した部分以外の領域にのみ露光するように開口部を形成した図示しないマスクを介して、絶縁性基板21側の成形基板に紫外光を照射する。一方、絶縁性基板29側の成形基板に対しても、絶縁性基板21と貼り合せた場合に、有機EL発光素子40と対向する部分以外の領域に紫外光を照射する。これら2枚の成形基板をラビングすることにより図示しない配向膜に一軸配向処理を施した後、シール樹脂を介して貼り合せた後、誘電異方性が正で△nが0.06の液晶材料(メルク社製)を注入して液晶表示素子20を作製する。さらに、絶縁性基板29の表面に、位相差板31と偏光板32とを順に貼り付けることにより、表示装置1が完成する。なお、位相差板31の位相差はλ=550nmの光に対して1/4となるものを用いた。
【0077】
このようにして作製した表示装置1を、外光4の下で電圧無印加の状態で観察すると、後述する図8に示すように、有機EL発光素子40の上部に位置する部分は黒表示、有機EL発光素子40を形成していない部分は白表示となる。これは、紫外光を照射した部分は配向膜の垂直配向性を発現する官能基が切断されることにより、液晶分子が絶縁性基板21及び絶縁性基板29に対し平行に配向したためである。
【0078】
この結果、液晶層26の表示モードは、電圧無印加の状態で白を表示し、電圧印加により徐々に反射率が減少して黒表示するノーマリーホワイトモードとなる。
【0079】
次に、上記構成の表示装置1を駆動するための駆動回路の一例について説明する。
【0080】
図5に示すように、表示装置1には、データ線信号を順に送るためのソースドライバ6がソースバスライン2a…に接続されており、表示画素10…を選択するゲートドライバ7はゲートバスライン3…に接続されている。また、1つの表示画素10内の表示回路は、光変調素子である液晶表示素子20と発光素子である有機EL発光素子40とによって構成されている。
【0081】
これら液晶表示素子20及び有機EL発光素子40は、それぞれ表示装置1の表示領域内に、マトリクス状に並べられ、液晶表示素子20の対向電極27、EL用TFT素子42の電流供給ライン2b及び有機EL発光素子40の陰極45が、それぞれ液晶表示素子20及び有機EL発光素子40毎に共通に接続されている。すなわち、この駆動回路では、マトリクス状に形成された表示領域としての各表示画素10…をアクティブ駆動すべく、液晶表示素子20及び有機EL発光素子60の駆動について信号ライン及び走査信号線であるゲートバスライン3…及び信号ライン及びデータ信号線であるソースバスライン2a…を共用するものとなっている。ただし、本発明においては、必ずしもこれに限らず、単純マトリクスに適用することも可能である。
【0082】
上記構成の表示装置1における1画素分の回路構成は、図6にも示すように、液晶用TFT素子22のゲート電極がゲートバスライン3に接続され、ソースバスライン2aが液晶用TFT素子22のソース電極に接続されている。また、液晶用TFT素子22のドレイン電極22aは、液晶表示素子20と、液晶補助容量35と、EL用TFT素子42のゲート電極とに接続している。また、EL用TFT素子42のソース電極は電流供給ライン2bに接続し、EL用TFT素子42のドレイン電極は有機EL発光素子40の陽極43に接続している。なお、上記の構成では、有機EL発光素子40はEL用TFT素子42のドレイン側に設けられているが、必ずしもこれに限らず、例えば、図7に示すように、EL用TFT素子42のソース側に設けることも可能である。
【0083】
このように構成された表示装置1の駆動回路では、ゲートバスライン3…からの走査線信号により液晶用TFT素子22が駆動してソースバスライン2a…の信号を切替える。そして、図8に示すように、データ線信号VsがEL用TFT素子42のEL用閾値電圧Vth(OLED)よりも小さい場合、有機EL発光素子40は発光せずに液晶表示素子20が反応し、明表示から暗表示、つまり黒表示を行なう。また、データ線信号VsがEL用TFT素子42のEL用閾値電圧Vth(OLED)よりも大きい場合には、液晶表示素子20は暗表示を行なっているが、データ線信号VsによりEL用TFT素子42のドレイン電流が変化し、有機EL発光素子40の発光量を調整して発光型表示を行なう。なお、有機EL発光素子40の発光量の調整は、供給電圧Vddを調整することによっても行なうことができる。また、本実施の形態の表示装置1は、この駆動方法には限定されず他の駆動方法でもよいが、図8に示す駆動方法は駆動回路が共通であるので最適である。
【0084】
上記の表示動作について、図9〜図11に基づいて詳細に説明する。なお、図9〜図11では反射率が最も高くなる条件である液晶層26の電圧無印加時の複屈折がλ/4の場合の光の状態を記載した。
【0085】
先ず、外光4の下で表示装置1を使用する場合において、データ線信号Vsが電圧無印加のとき又は液晶用TFT素子22のドレイン電圧Vdが液晶用閾値電圧Vth(LC)以下のときには、図9に示すように、外光4は偏光板32及び位相差板31を透過した後、円偏光となり液晶層26へ入射する。次いで、液晶層26はλ/4の位相差を有するために反射性の画素電極25に到達した時点ではλ/2の位相差となり、直線偏光として反射する。反射した後、外光4は入射時とは逆の経路を経て直線偏光となるため、偏光板32を透過し白表示となる。
【0086】
このとき、液晶用TFT素子22のドレイン電圧VdはEL用TFT素子42が動作するEL用閾値電圧Vth(OLED)以下であるため、有機EL発光素子40には電流は供給されず非発光状態となる。
【0087】
次に、外光4の下で表示装置1を使用する場合において、液晶用閾値電圧Vth(LC)よりも大きく、液晶用TFT素子22のドレイン電圧Vdを印加したときの液晶表示素子20の黒表示について説明する。
【0088】
図10に示すように、液晶層26の複屈折は略ゼロであるため、外光4は、反射性の画素電極25に到達した時点では例えば右円偏光の円偏光の状態を保っているが、反射した時点で例えば左円偏光の逆周りの円偏光となる。このため、外光4の反射光は、位相差板31を透過した後は、偏光板32の透過軸とは90度直交した角度の直線偏光となる。そのため、外光4の反射光は、偏光板32を透過することができず表示は黒となる。
【0089】
また、この時、液晶用TFT素子22のドレイン電圧VdはEL用TFT素子42が動作するEL用閾値電圧Vth(OLED)以下であるため、有機EL発光素子40には電流は供給されず非発光状態を維持している。
【0090】
次に、外光4の強度が弱い場合に、有機EL発光素子40を発光する場合について説明する。
【0091】
この場合には、図11に示すように、液晶用TFT素子22のドレイン電圧VdをEL用TFT素子42が動作するEL閾値電圧Vth(OLED)以上とする。これにより、有機EL発光素子40に電流が供給され発光する。この時、前記図5に示すように、ドレイン電圧Vdは充分に高く液晶層26は黒表示となっているので、有機EL発光素子40の発光に影響しない。
【0092】
ここで、本実施の形態では、有機EL発光素子40を構成する陽極43は反射性の金属からなり、表示信号に関わらず常に光を反射する。このため、携帯電話等戸外で使用する機会の多い製品に有機ELディスプレイ搭載する場合には、観察者側に円偏光板を貼り付ける必要があるが、本実施の形態では、図11に示すように、液晶層26の表示に必要な偏光板32とλ/4波長の位相差を有する位相差板31とが、こうした外光4の反射を殆ど零とする機能を有している。また、有機EL発光素子40と偏光板32との間には液晶層26が存在するが、この部分の液晶層26は対向電極27のような電極が絶縁性基板29側にしか形成されていない。このため、液晶層26は印加電圧に関わらず常にOFF状態であり、外光4の反射の抑制に悪影響を及ぼさない。
【0093】
なお、本実施の形態においては、透明絶縁層24が有機EL発光素子40の全面を覆うように形成されているため、液晶層26の液晶が有機EL発光素子40に浸透することもなくかつ液晶表示素子20との干渉作用もないので、有機EL発光素子40の信頼性を向上させることが可能となる。
【0094】
このように、本実施の形態の表示装置1では、各表示画素10…内に、液晶表示素子20が外光4を反射させて表示を行なう非発光表示素子からなる反射領域11と、有機EL発光素子40が直接変調し表示を行なう発光表示素子からなる透過領域12とが併設されている。
【0095】
したがって、有機EL発光素子40は表示面側に向けて自ら発光して直接的に表示するので、従来のように、有機EL発光素子40をバックライトやフロントライトとして使用するものではない。これによって、有機EL発光素子40の光の利用効率を高めることができるとともに、表示装置の厚みも薄くなる。すなわち、バックライトの厚みは、通常3〜6ミリメートル程度であるために、バックライトが不要になることによる厚み減少のメリットは非常に大きい。また、バックライトが不要になることは、従来、液晶パネルの背面パネルとバックライトとの間に設置されていた偏光板、位相差板及びガラス基板も不要となることを意味する。したがって、これら偏光板、位相差板及びガラス基板が不要になることによっても表示装置の厚みをより薄くすることができる。
【0096】
さらに、バックライトと背面側の偏光板及び位相差板が不要となるメリットは、単に表示装置全体の厚みが薄くなることだけではない。すなわち、部材点数が減ることは、材料費だけでなく組み立て工数や各々の部材の検査等に要するコストも削減できるため、表示装置全体の製造コストを下げることができる。
【0097】
また、本実施の形態のような画素分割方式の表示装置1では、反射領域11と透過領域12との比率をある程度任意に設計することが可能である。このため、例えば、携帯電話や情報携帯端末(PDA)等のモバイル機器への使用を前提とする場合は、反射領域11の比率を大きくすることが一般的である。例えば、表示画素10…の画素面積のうち80%を反射領域11とした場合には、透過領域12は20%になるため、有機EL発光素子40の発光面積は最大でも表示画素10の画素面積の5分の1で済む。このことは、消費電力の低減を図ることが可能となることを意味する。
【0098】
また、本実施の形態では、互いに対向してなる絶縁性基板21と絶縁性基板29とを備え、有機EL発光素子40及び液晶表示素子20はいずれも絶縁性基板21と絶縁性基板29との間に設けられている。そして、透過領域12には、絶縁性基板21上に順に有機EL発光素子40と液晶表示素子20の液晶層26とが積層されている。このため、液晶表示素子20及び有機EL発光素子40はいずれも、絶縁性基板21と絶縁性基板29との間に収容されるので、表示装置1の厚みを確実に薄くすることができる。さらに、有機EL発光素子40の表面側に液晶層26が積層されていても、有機EL発光素子40は絶縁性基板21と絶縁性基板29との間に設けられているので、有機EL発光素子40の表示光が全て透過領域12に出射される。そのため、光の利用効率は非常に高くなる。
【0099】
したがって、小型化及びコストダウンを図りながら、野外から屋内まで視認性に優れた表示装置1を提供することができる。
【0100】
ところで、有機EL発光素子40は必ずしも透過領域12の全てに形成する必要は無く、必要とされる画面輝度に応じて、必要な面積に形成すれば良い。この点、本実施の形態の表示装置1では、有機EL発光素子40は、透過領域12の面積と略同じか又はそれよりも小さい面積を有している。したがって、有機EL発光素子40について、さらに消費電力を少なくすることが可能となる。
【0101】
また、本実施の形態の表示装置1では、発光素子が有機EL発光素子40からなっている。このため、容易に、液晶表示素子20と有機EL発光素子40とを一対の絶縁性基板21と絶縁性基板29との間に内蔵することができる。
【0102】
また、発光素子として電流駆動型の有機EL発光素子40を使用することによって、発光素子の消費電力は発光面積に比例するため、本実施の形態の表示装置1の消費電力は、有機EL発光素子40をバックライトとして用いる場合と比べて、消費電力は5分の1となる。したがって、確実に消費電力の低減を図ることができる。
【0103】
また、本実施の形態の表示装置1では、光変調素子は、液晶表示素子20である。したがって、容易に、液晶表示素子20及び有機EL発光素子40を1画素内に形成したときに、より高い照射効率で光を開口部25aへ入射させることにより、小型化及びコストダウンを図りながら、野外から屋内まで視認性に優れた表示装置1を提供することができる。
【0104】
また、本実施の形態の表示装置1では、有機EL発光素子40と液晶表示素子20とは、ソースバスライン2a…及びゲートバスライン3…を共有して駆動される。このため、有機EL発光素子40と液晶表示素子20との駆動回路の構成が複雑になるのを防止し、確実に、表示装置1の厚みの低減及び部材コストの低減を図り得る表示装置1を提供することができる。
【0105】
ところで、本実施の形態では、有機EL発光素子40が発光している場合、例えば、白表示を行なっている場合、液晶表示素子20が白表示を行なうと、一つの表示画素10のコントラストが低下する。
【0106】
そこで、本実施の形態では、液晶表示素子20の液晶層26は、反射領域11では水平配向モードであり、かつ透過領域12では垂直配向モードであるとしている。したがって、液晶表示素子20に電圧を印加しない状態においては、反射領域11は白表示である一方、液晶表示素子20に電圧を印加したときには、反射率がゼロとなって反射領域11は黒表示となる。
【0107】
したがって、本実施の形態では、有機EL発光素子40の表示領域である透過領域12の周りは黒表示となるので、有機EL発光素子40を発光駆動することによるコントラストの低下を防止することができる。
【0108】
また、液晶表示素子20の液晶層26のうち、有機EL発光素子40が表示を行なう透過領域12を水平配向とした場合、液晶表示素子20を駆動するための画素電極25が形成されていないので、初期配向の平行配向を維持する。したがって、特に、野外等の外光4が多い場所でこの表示装置1を用いる場合、水平配向を維持した透過領域12は、外光4による反射光が増加する。つまり、外光4が液晶表示素子20を透過し、さらに有機EL発光素子40にて反射するからである。
【0109】
この点、本実施の形態では、有機EL発光素子40に積層される液晶層26の配向は垂直配向であり、かつ反射領域11の液晶層26の配向は水平配向となっている。したがって、液晶表示素子20を駆動せずに有機EL発光素子40のみを発光した場合に、透過領域12において外光4の反射光が重畳することよるコントラストの低下及び表示品質への悪影響を防止することができる。
【0110】
また、本実施の形態では、絶縁性基板29上に形成するカラーフィルタ層28を反射領域11及び透過領域12に対向する全ての部分に形成したが、必ずしもこれに限らず、例えば、透過領域12に対向する部分つまり有機EL発光素子40に対向する領域にはカラーフィルタ層28を形成しなくてもよい。これにより、有機EL層41から発光した光は、カラーフィルタ層28に吸収されることがなくなるため、より明るい表示が可能となる。また、通常、有機EL層41の色純度はカラーフィルタ層28の色純度よりも優れているため、より色鮮やかな表示ができる。
【0111】
なお、本実施の形態では、光変調素子として反射型の液晶表示素子20を使用したが、必ずしもこれに限らず、例えば、ミラー等を使って光の反射量を変化させて表示することができる表示素子を用いても良い。また、電気泳動型ディスプレイ、ツイストボール型ディスプレイ、微細なプリズムフィルムを用いた反射型ディスプレイ、デジタルミラーデバイス等の反射型の光変調素子を用いることが可能である。
【0112】
また、発光素子として、本実施の形態では、有機EL発光素子40を用いたが、必ずしもこれに限らず、例えば、無機EL発光素子、LED(Light Emitting Diode) 等の発光輝度が可変の素子であれば適用が可能である。また、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイ等の発光素子を用いることも可能である。
【0113】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図12ないし図14に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0114】
本実施の形態では、液晶表示素子20と有機EL発光素子40とを同時に駆動する場合について説明する。なお、ここでの駆動とは、液晶表示素子20に単に電圧が印加されたり、有機EL発光素子40に単に電流が流れている状態を示すのではなく、その電圧又は電流が表示する情報に応じて制御され、反射光強度や発光素子の発光強度が変化し、表示を行なう状態をいう。
【0115】
本実施の形態では、表示装置1の製造に際して、前記図1に示す液晶分子を絶縁性基板29に対して垂直に配向させる性質を有する図示しない配向膜(商品名「JALS204(日本合成ゴム社製)」)を形成後、ラビングにより配向処理を施した後、図示しないシール樹脂を介して、絶縁性基板29側の成形基板と絶縁性基板21側の成形基板との2枚の成形基板を貼り合わせ、液晶層26として誘電異方性が負の液晶材料(商品名「MLC6608(メルク社製)」)を注入し、液晶表示素子20を作成する。さらに、絶縁性基板29の表面に、位相差板31と偏光板32とを順に貼り付けることにより、表示装置1を完成させる。なお、本実施の形態においても、位相差板31の位相差はλ=550nmの光に対して1/4となるものを用いた。
【0116】
なお、本実施の形態においては、駆動回路については、前記実施の形態1とは異なる駆動回路を用いている。すなわち、本実施の形態では、液晶表示素子20と有機EL発光素子40とは、互いに独立して駆動されるようになっている。
【0117】
上記構成の表示装置1の具体的な表示動作について、図12ないし図14に基づいて説明する。
【0118】
先ず、図12に示すように、液晶層26の表示モードは、上述したように、誘電異方性が負の液晶材料からなる液晶層26と垂直配向性の図示しない配向膜とを用いているため、電圧無印加の状態にて黒を表示する一方、図13に示すように、電圧印加により徐々に反射率が増加して白表示を行なうノーマリーブラックモードとなる。
【0119】
すなわち、外光4の下で表示装置1を使用する場合、電圧無印加又はドレイン電圧Vdが共用閾値電圧Vth以下のときには、図12に示すように、外光4は偏光板32及び位相差板31を透過した後、円偏光となり液晶層26へ入射する。液晶用TFT素子22によって液晶層26に共用閾値電圧Vth以下のドレイン電圧Vdが印加されている場合、液晶層26の複屈折は0であるため、反射性の画素電極25に到達した時点では例えば右円偏光の円偏光の状態を保っているが、画素電極25にて反射した時点で例えば左円偏光の逆周りの円偏光となる。このため、反射光は、位相差板31を透過した後は偏光板32の透過軸とは90度直交した角度の直線偏光となる。これにより、外光4の反射光は偏光板32を透過することができず表示は黒となる。したがって、図14(a)に示すように、液晶表示素子20の輝度は略0となる。また、このとき、図14(b)に示すように、有機EL発光素子40も共用閾値電圧Vth以下であるのでOFF状態であり、前記有機EL層41にも電流は供給されず非発光の状態となる。
【0120】
次に、電圧を印加して白表示を行なう場合について、図13に基づいて説明する。なお、同図においては反射率が最も高くなる条件である液晶層26の複屈折がλ/4の光の状態を記載した。
【0121】
図13に示すように、液晶層26に共用閾値電圧Vth以上のドレイン電圧Vdが印加された場合、液晶層26は複屈折性を有するために円偏光状態を保持することができない。そのため、反射性の画素電極25からの外光4の反射光は偏光板32を透過し、図14(a)に示すように、液晶表示素子20の輝度表示は白となる。
【0122】
このとき、図13に示すように、EL用TFT素子42もON状態であるため、前記電流供給ライン2bから供給される電流により、図14(b)に示すように、有機EL発光素子40は発光状態となる。
【0123】
ここで、前記図1に示すように、有機EL発光素子40を構成する陽極43は反射性の金属からなり、表示信号に関わらず常に光を反射する。したがって、携帯電話等の戸外で使用する機会の多い製品に有機ELディスプレイ搭載する場合には、観察者側に円偏光板を貼り付ける必要があるが、本実施の形態では、液晶層26の表示に必要な偏光板32とλ/4波長の位相差を有する位相差板31とが、こうした外光4の反射を殆ど零とする機能を有している。
【0124】
また、有機EL発光素子40と偏光板32との間には液晶層26が存在するが、この透過領域12の液晶層26の部分には電極が対向電極27のように絶縁性基板29側にしか形成されていない。このため、図12及び図13に示すように、液晶層26は印加電圧に関わらず常にOFF状態であり、垂直配向性を維持するので、外光4の反射の抑制に悪影響を及ぼさない。
【0125】
なお、本実施の形態では、液晶層26と有機EL発光素子40とを同時に駆動する例を示したが、外光4が強い場合には有機EL発光素子40への電流の供給を絶つことにより、液晶層26のみで表示を行い消費電力を低減することも可能である。
【0126】
また、本実施の形態においても、前記実施の形態1と同様に、透明絶縁層24が有機EL発光素子40の全面を覆うように形成されているため、液晶層26の液晶が有機EL発光素子40に浸透することもなくかつ液晶表示素子20との干渉作用もないので、有機EL発光素子40の信頼性を向上させることが可能となる。
【0127】
このように、本実施の形態の表示装置1では、有機EL発光素子40と液晶表示素子20とは、互いに独立して駆動される。このため、有機EL発光素子40と液晶表示素子20とを個別に駆動することが可能となる。なお、有機EL発光素子40と液晶表示素子20とを互いに独立して駆動するための構成としては、例えば、有機EL発光素子40と液晶表示素子20とのそれぞれがソースバスライン2a…及びゲートバスライン3…を有している場合、又は、ソースバスライン2a…をそれぞれに設けるがゲートバスライン3…を共有している場合がある。
【0128】
また、本実施の形態の表示装置1では、液晶表示素子20は、ノーマリーブラックとなっている。したがって、液晶表示素子20と有機EL発光素子40とを独立して駆動する際に、液晶表示素子20を駆動せず有機EL発光素子40のみを駆動した場合には、有機EL発光素子40の表示領域である透過領域12の周りは光を反射しない黒表示となる。
【0129】
したがって、有機EL発光素子40のみ発光駆動したときのコントラストの低下を防止することができる。
【0130】
なお、本実施の形態においては、液晶表示素子20がノーマリーブラックとなっている構成以外については、実施の形態1と同様の構成及び機能を有している。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明における表示装置の実施の一形態を示すものであり、表示装置における1画素分を示す図4のA−A線断面図である。
【図2】本発明の概念を示すものであり、表示環境と消費電力との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の概念を示すものであり、表示環境と輝度との関係を示すグラフである。
【図4】上記表示装置における1画素分を示す平面図である。
【図5】上記表示装置を示す全体構成図である。
【図6】上記表示装置の1画素分を示す駆動回路図である。
【図7】上記表示装置の1画素分を示す他の駆動回路図である。
【図8】上記表示装置の駆動時における信号波形図である。
【図9】上記表示装置がノーマリーホワイトモードである場合において、ドレイン電圧Vdが液晶用閾値電圧Vth(LC)よりも小さいときの液晶表示素子及び有機EL発光素子の表示状態を示す説明図である。
【図10】上記表示装置がノーマリーホワイトモードである場合において、ドレイン電圧Vdが液晶用閾値電圧Vth(LC)よりも大きくかつEL用閾値電圧Vth(OLED)よりも小さいときの液晶表示素子及び有機EL発光素子の表示状態を示す説明図である。
【図11】上記表示装置がノーマリーホワイトモードである場合において、ドレイン電圧Vdが液晶用閾値電圧Vth(LC)よりも大きくかつEL用閾値電圧Vth(OLED)よりも大きいときの液晶表示素子及び有機EL発光素子の表示状態を示す説明図である。
【図12】上記表示装置がノーマリーブラックモードである場合において、ドレイン電圧Vdが共用閾値電圧Vthよりも小さいときの液晶表示素子及び有機EL発光素子の表示状態を示す説明図である。
【図13】上記表示装置がノーマリーブラックモードである場合において、ドレイン電圧Vdが共用閾値電圧Vthよりも大きいときの液晶表示素子及び有機EL発光素子の表示状態を示す説明図である。
【図14】(a)は表示装置がノーマリーブラックモードである場合における液晶表示素子の輝度状態を示す説明図であり、(b)は表示装置がノーマリーブラックモードである場合における有機EL発光素子の輝度状態を示す説明図である。
【図15】従来の表示装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0132】
1 表示装置
2a ソースバスライン
2b 電流供給ライン
3 ゲートバスライン
4 外光
5 表示光
6 ソースドライバ
7 ゲートドライバ
10 表示画素(表示領域)
11 反射領域(第1表示領域)
12 透過領域(第2表示領域)
20 液晶表示素子(光変調素子)
21 絶縁性基板(第1基板)
22 液晶用TFT素子
22a ドレイン電極
24 透明絶縁層
25 画素電極
25a 開口部
26 液晶層
27 対向電極
29 絶縁性基板(第2基板)
31 位相差板
32 偏光板
40 有機EL発光素子(発光素子、有機エレクトロルミネッセンス素子)
42 EL用TFT素子
Vdd 供給電圧
Vth 共用閾値電圧
Vth(LC) 液晶用閾値電圧
Vth(OLED) EL用閾値電圧
Vs データ線信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域内に、光変調素子が外光を反射させて表示を行なう非発光表示素子からなる第1表示領域と、反射性の電極を含む発光素子が直接変調し表示を行なう発光表示素子からなる第2表示領域とが併設されているとともに、
互いに対向してなる第1基板と第2基板とを備え、上記光変調素子及び発光素子はいずれも上記第1基板と第2基板との間に設けられ、かつ、
上記第2表示領域には、上記第1基板上に順に上記発光素子と光変調素子の光変調層とが積層されており、
同一画素中の第1表示領域もしくは第2表示領域の何れか一方が表示状態である場合に、他方は外光の有無によらず常に黒状態であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
第2表示領域の光変調素子は、発光素子上に透明な絶縁層を介して形成されていることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
発光素子は、第2表示領域の面積と略同じか又はそれよりも小さい面積を有していることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
発光素子が有機エレクトロルミネッセンス素子からなっていることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項5】
光変調素子は、液晶表示素子であることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項6】
発光素子と光変調素子とは信号ラインを共有して駆動されることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項7】
光変調素子は、液晶表示素子であり、液晶表示素子の光変調層である液晶層は、第1表示領域では水平配向モードであり、かつ第2表示領域では垂直配向モードであることを特徴とする請求項1記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−108771(P2007−108771A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313606(P2006−313606)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【分割の表示】特願2001−271058(P2001−271058)の分割
【原出願日】平成13年9月6日(2001.9.6)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】