説明

表示装置

【課題】一部の有機電界発光素子に色変換層を組み合わせた表示装置において、各色光の取り出し強度を高めることが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】反射電極層11、発光層13-3を含む機能層13、および光透過性電極層14をこの順または逆の順に積層した状態で基板2上に配列された複数の発光素子3b,3g,3rと、これらのうちの一部の発光素子3g,3rにおける光透過性電極層14側に設けられ、発光層13-3で生じた発光光を色変換する色変換層7g,7rとを備えた表示装置1において、色変換層7g,7rが設けられていない発光素子3bと、設けられた発光素子3g,3rとで、反射電極層11と発光層13-2との間の光学的距離db,dg,drが異なることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜発光素子を用いてカラー表示を行う表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence)を利用した有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に、正孔輸送層や発光層等の有機層を積層させた発光ユニットを設けてなり、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。
【0003】
このような有機電界発光素子を用いたフルカラーの表示装置の1つに、有機電界発光素子と、色変換層とを組み合わせた構成がある。色変換層を用いることにより、有機電界発光素子の作製において発光層を含む有機層を作り分けることなく、すなわちメタルマスクを用いた高精細な塗り分けを行わずにフルカラーの表示装置を作製することが可能である。
【0004】
上記色変換層を用いた表示装置においては、有機電界発光素子として青色発光素子が用いられ、各色発光の全ての画素には青色発光素子が設けられる。そして、赤色発光の画素および緑色発光の画素には、青色発光素子の光取り出し側に、吸収した青色発光を、蛍光または燐光、または両者の混合によって赤色または緑色に再発光させる色変換層がそれぞれ設けられる。一方、青色発光の画素には色変換層を設けず、青色発光素子での青色発光をそのまま取り出す構成とする(以上、下記特許文献1参照)。
【0005】
このような色変換層を用いた表示装置に用いられる有機電界発光素子(青色発光素子)は、発光層を狭持する陽極または陰極のうちの一方が反射電極層、他方が光透過性電極層として構成され、光透過性電極層側から発光光が光取り出される。このため、青色発光素子の発光層で生じた発光光のうち、光透過性電極層側に直接向かう青色光と、反射電極層で反射して光透過性電極層側に向かう青色光とが干渉して強め合うように、発光層と反射電極層との間の光学的距離が最適化されている。
【0006】
また、以上説明したような色変換層を用いた表示装置においては、青色発光光の緑色への変換効率は比較的高くできるものの、赤色への変換効率が充分ではない。そこで、赤色への変換効率をよくするため、赤色変換層の吸収波長に近い黄色発光成分を青色発光素子に加える構成が提案されている。これにより、赤色変換層での変換効率が向上し、赤色発光の取り出し強度が向上するとしている(以上、下記非特許文献1,2参照)。
【0007】
【特許文献1】特願平5−258860号公報
【非特許文献1】「フラットパネル・ディスプレイ2004<実務編>」2003年1月、p.258
【非特許文献2】「フラットパネル・ディスプレイ20044<戦略編>」2003年1月、p.194
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、青色発光素子に黄色発光成分を加えることにより、有機電界発光素子での発光光のスペクトルは、青色と黄色との2色発光となるため、発光エネルギーが2種の発光に分散される。このため、有機電界発光素子自体の発光効率は低下し、青色発光の画素および緑色発光の画素においては、光の取り出し強度が低下してしまう問題がある。
【0009】
そこで本発明は、有機電界発光素子と色変換層とを組み合わせたフルカラーの表示装置において、有機電界発光素子の発光効率を低下させることなく、色変換層における色変換効率を高めることができ、これによりさらに各色光の取り出し強度を高めることが可能な表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するための本発明の表示装置は、基板上に配列された複数の発光素子を備えている。これらの発光素子は、光透過性電極層、発光層を含む機能層、および対向電極層を、この順または逆の順に積層した構成となっている。また、複数の発光素子のうちの一部の発光素子における光透過性電極層側には、当該発光素子における発光層で生じた発光光を色変換する色変換層が設けられている。そして、各発光素子は、光透過性電極層との間で発光層を狭持する位置に反射面を有しており、さらに色変換層が設けられていない発光素子と、色変換層が設けられた発光素子とで、反射電極層と発光層との間の光学的距離が異なることを特徴としている。
【0011】
このような構成の表示装置によれば、各発光素子の光学的距離を異なる値としているため、例えば色変換層を設けた素子と設けていない素子とで、それぞれの光取り出し強度が高くなるように、それぞれを最適な光学設計とすることができる。つまり、色変換層を設けていない発光素子における光学的距離を、当該発光素子の発光層での発光光が干渉する距離に設定することで、干渉によって強められた発光光がそのまま取り出される構成となる。一方、色変換層が設けられた発光素子における光学的距離を、色変換層で変換された発光色の光が最も高い強度で取り出される距離に設定することで、各色光の取り出し強度が高められる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明の表示装置によれば、一部の発光素子に色変換層を組み合わせて設けた構成において、発光素子における発光強度を弱めることなく、色変換層においての色変換効率を高めることができ、これによりさらに各色光の取り出し強度を効果的に高めることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の表示装置の構成を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の表示装置を示す断面構成図である。この図に示す表示装置1は、基板2の上部に複数の発光素子3b,3g,3rを配列してなる。また、これらの発光素子3b,3g,3rの上方には、基板2に対向させて封止基板4が設けられている。この封止基板4における発光素子3b,3g,3r側の面には、各発光素子3b,3g,3rに対応させてカラーフィルタ層5b、5g、5rが設けられている。さらに一部のカラーフィルタ5g、5rの上部には、一部の発光素子3g,3rに対応させて色変換層7g,7rが設けられた構成となっている。そして、これらの基板2−封止基板4間には、ここでの図示を省略した樹脂が充填されており、発光素子3b,3g,3r、カラーフィルタ層5b、5g、5r、および色変換層7g,7rが封止された完全固体型の表示装置1を構成している。
【0015】
基板2は、例えば画素駆動用の薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)やこれを駆動する駆動回路を備えた、いわゆるTFT基板であることとする。
【0016】
各発光素子3b,3g,3rは、薄膜発光素子であって、ここでは有機電界発光素子であることとし、青色画素Bに発光素子3bが、緑色画素Gに発光素子3gが、赤色画素Rに発光素子3rが設けられている。これらの各発光素子3b,3g,3rは、基板2側から順に、反射電極層11、透明電極層12、発光層を含む機能層13、光透過性電極層14を積層した構成となっている。ここでは、反射電極層11と透明電極層12との積層体が対向電極層として用いられている。そして、反射電極層11と透明電極層12との界面、すなわち透明電極層12側に向いた反射電極層11の表面が反射面Aとなっている。これにより、これらの発光素子3b,3g,3rを備えた表示装置1は、各発光素子3b,3g,3rでの発光光を基板2と反対の光透過性電極層14側から取り出す、いわゆるトップエミッション構造となっている。
【0017】
このうち、反射電極層11および透明電極層12は、発光素子3b,3g,3rにおいて陽極(または陰極)として用いられるもので、画素電極としてパターニングされている。そして、反射電極層11は、銀(Ag)のような光反射特性の良好な材料からなり、透明電極層12はITO(Indium Tin Oxide)のような透明電極材料からなる。そして特に、透明電極層12は、各発光素子3b,3g,3r毎に設定される光学構成に従い、その膜厚が個別に設定されていることが第1実施形態に特徴的な構成となる。この光学構成については、表示装置1の全体構成を説明した後に詳細に説明する。
【0018】
また機能層13は、各発光素子3b,3g,3rに共通層として設けられ、基板2上にベタ膜形成されていて良い。尚、図面においては、説明のため機能層13が画素毎にパターニングされている状態を示している。
【0019】
機能層13の拡大図に示すように、この機能層13は、陽極(ここでは例えば反射電極層11および透明電極層12)側から正孔注入層13-1、正孔輸送層13-2、発光層13-3、および電子輸送層13-4、電子注入層13-5等をこの順に積層させてなる。ただし、少なくとも発光層13-3を備えていれば良く、この発光層13-3において高輝度の発光が得られるように他の層が必要に応じて設けられていることとする。例えばここでは、発光層13-3において高輝度発光が得られるように、青色の発光光を発生するように機能層13が構成されていることとする。
【0020】
尚、各層13-1〜13-5は、それぞれが単層で構成されても良いし積層構造であっても良い。また、1つの層が複数の機能を備えてもよく、例えば発光層13-3が電子輸送層としての機能を有していても良い。
【0021】
光透過性電極層14は、反射電極層11および透明電極層12が陽極として用いられる場合いは陰極として用いられ、その逆である場合は陽極として用いられる。このような光透過性電極14は、各発光素子3b,3g,3rに共通層として設けられ、基板2上にベタ膜形成されていて良い。尚、図面においては、説明のため光透過性電極層14が画素毎にパターニングされている状態を示している。
【0022】
以上のように、各発光素子3b,3g,3rは、透明電極層12の膜厚がそれぞれ個別に設定されていること以外は同一の構成であり、発光層13-3において同一波長の青色の発光光を発生させる構成となっている。また、各発光素子3b,3g,3rからは、各発光層13-3で発生した発光光のうち、各発光層13-3から透明電極層14側に直接向かう光h1と、反射電極層11で反射して透明電極層14側に向かう光h2とが取り出される構成となる。
【0023】
一方、対向基板4は、各発光素子3b,3g,3rからの発光光を取り出す光透過性材料からなる。
【0024】
カラーフィルタ5b,5g,5rは、青、緑、赤の各色の光のみを透過して取り出す構成であり、青色画素Bには青色フィルタ5bが、緑色画素Gには緑色フィルタ5gが、赤色画素Rには赤色フィルタ5rが設けられている。
【0025】
また色変換層7g,7rは、緑色画素Gと赤色画素Rのみに設けられている。緑色画素Gには、発光素子3gで発生した青色の発光光を吸収し、蛍光によって緑色に再発光させる蛍光媒体を含有する緑色変換層7gが設けられている。また、赤色画素Rには、発光素子3rで発生した青色の発光光を吸収し、蛍光によって赤色に再発光させる蛍光媒体を含有する赤色変換層7rが設けられている。
【0026】
尚、以上説明した各層は、通常の有機電界発光素子を用いた表示装置で用いる材料であれば、特に限定されることなく適用して構成することができる。例えば、色変換層7g,7rとしては、有機蛍光色素溶解含有層、有機蛍光顔料分散層、無機蛍光体結晶分散層、量子ドット蛍光体分散層などを用いることができる。
【0027】
次に、以上のように構成された表示装置1において、本実施形態の特徴となる発光素子3b,3g,3rの光学構成について説明する。
【0028】
これらの発光素子3b,3g,3rは、上述したように、透明電極層12の膜厚がそれぞれ個別に設定されていること以外は同一の構成であり、発光層13-3において同一波長の青色の発光光を発生させる。そして、各発光素子3b,3g,3rからは、各発光層13-3で発生した発光光のうち、各発光層13-3から透明電極層14側に直接向かう光h1と、反射電極層11で反射して透明電極層14側に向かう光h2とが取り出される構成となる。
【0029】
このような構成において、青色画素Bに配置される発光素子3bは、発光層13-3と反射電極層11との間の光学的距離dbが、上述した光h1とh2とが干渉して最も強め合う最適距離に設定されている。このような光学的距離dbは、発光層13-3において発生する青色の発光光の波長と、発光層13-3と反射電極層11とのに配置される各層の屈折率とに基づいて算出するか、また予備実験によって求められる。
【0030】
これに対して、色変換層7g,7rが設けられた発光素子3g,3rでは、発光層13-2と反射電極層11との間の光学的距離dg,drは、発光素子3g,3rからの光h1,h2が色変換層7g,7rにて変換された各色光hg、hrの光強度が最も高くなる最適距離に設定されている。このような緑色画素Gおよび赤色画素Rにおける光学的距離dg、drは、例えば予備実験によって求められる。
【0031】
ここで、光学的距離d(db,dg,dr)は、各層の屈折率をn1,n2,n3,…、各層の膜厚をd1,d2,d3,…とした場合、d=n1・d1+n2・d2+n3・d3+…である。
【0032】
そして、本実施形態においては、以上のような各発光素子3b,3g,3rの光学的距離db,dg,drが、透明電極層12の膜厚によって調整された構成となっている。尚、このように膜厚が異なる透明電極層12の形成は、スパッタ方によるITO(酸化インジウムすず)膜の成膜と、フォトリソグラフィー法によって形成したレジストパターンをマスクに用いてのITO膜のパターンエッチングとを繰り返すことよって形成される。また他の方法としては、複数枚のマスクを用いた複数回の成膜により、それぞれの膜厚の透明電極層12が形成される。
【0033】
以上のような構成の表示装置1によれば、発光素子3b,3g,3rは、発光層13-3において青色の発光光が高輝度で得られるように構成されている。そして、青色画素Bの発光素子3bにおける発光層13-3−反射電極層11間の光学的距離dbは、各発光層13-3から透明電極層14側に直接向かう光h1と、反射電極層11で反射して透明電極層14側に向かう光h2とが干渉して最も強め合う最適距離に設定されている。このため、青色画素Bにおいては、発光層13-3で高輝度に発生した青色の発光光が干渉によってさらに強められ、青色フィルター5bを透過して対向基板4側から取り出される。したがって、青色画素Bにおいては、最も効果的に青色光hbを取り出すことが可能である。
【0034】
一方、青色画素Bの発光素子3bとは別に、緑色画素Gおよび赤色画素Rの発光素子3g,3rにおける発光層13-3と反射電極層11との間の光学的距離dg,drは、発光層13-3で発生して色変換層7g,7rにて変換された各色光hg、hrの光強度が最も高くなる最適距離に設定されている。これにより緑色画素Gおよび赤色画素Rにおいては、最も高い光強度となるように変換された各色光hg、hrが対向基板4側から取り出される。
【0035】
以上の結果本発明の表示装置1によれば、各色画素B,G,Rに、同一の機能層13を備えた発光素子3b,3g,3rを設け、一部の発光素子3g,3rのみに対して色変換層7g,7rを組み合わせて設けた構成において、各発光素子3b,3g,3rにおける発光強度を弱めることなく、すなわち発光素子3b,3g,3rの構成は光強度の高い発光が得られる構成としつつ、色変換層7g,7rにおいての色変換効率を高めることができる。これにより色変換層7g,7rを設けた発光素子3g,3rおよび設けていない発光素子3bの両方ともに、各色光hb,hg,hrの取り出し強度を効果的に高めることができる。
【0036】
また、各発光素子3b,3g,3rにおける発光層13-3−反射電極層11間の光学的距離db,dg,drを透明電極層12の膜厚によって調整する構成であるため、機能層13の全ての層を、全画素で共通とすることができる。したがって、機能層13の形成において、メタルマスクを用いた高精細な塗り分けを行う必要がなく、画素の微細化が進んだ高精細な表示装置に好ましく適用可能である。
【0037】
さらに、上述した第1実施形態においては、本発明をトップエミッション構造の表示装置1に適用したことにより、反射電極層11が設けられた基板2上において、異なる膜厚の透明電極層12をパターン形成すれば良い。したがって、特に発光層13-3に対してダメージを与えることなく、すなわちマスク蒸着法によらずにリソグラフィー法やエッチング法を適用して透明電極層12の形成を行うことが可能である。
【0038】
尚、上述した第1実施形態においては、各発光素子3b,3g,3rにおける光学的距離db,dg,drを、透明電極層12の膜厚によって調整する構成を説明した。しかしながら、各発光素子3b,3g,3rにおける発光層13-3での発光強度を低下させることのない範囲であれば、これらの光学的距離db,dg,drは、反射電極層11と発光層13-3との間に設けられたどの層で調整しても良く、例えば、正孔注入層13-1や正孔輸送層13-2の膜厚、さらには透明電極層12の膜厚を組み合わせて調整しても良い。
【0039】
また、各発光素子3b,3g,3rにおける光学的距離db,dg,drを規定する反射面Aは、反射電極層11の表面である必要はなく、反射面として屈折率差のある界面を用いる構成であっても良い。
【0040】
また上述した第1実施形態においては、発光素子3b,3g,3rの構成をトップエミッション構造としたが、本発明はボトムエミッション構造であっても良く、同様の効果を得ることができる。この場合、基板2を光透過性材料で構成し、発光素子3b,3g,3rの積層順を逆にして基板2側を光透過型電極層14とすれば良い。
【0041】
<第2実施形態>
図2は、第2実施形態の表示装置の構成を示す断面模である。この図に示す表示装置1’が図1を用いて説明した第1実施形態の表示装置1と異なるところは、反射電極層11と光透過性電極層14との間に、複数の機能層13を中間電極層21を介して積層したところにあり、他の構成は同様であることとする。図面においては、機能層13を3層積層した状態を図示したが、機能層13の積層数は2層以上であれば良く、4層以上であっても良い。
【0042】
各機能層13および中間電極層21は、各画素B,G,Rに共通層として設けられ、基板2上にベタ膜形成されていて良い。尚、図面においては、説明のため機能層13および中間電極層21がパターニングされている状態を示している。
【0043】
このような各機能層13の積層構成は、第1実施形態と同様でよく、例えば発光層13-3において高輝度発光が得られるように、青色の発光光を発生する構成であることとする。また、積層された各機能層13は、その層構成が同一であっても良く、異なっていても良い。
【0044】
中間電極層21は、各機能層13を直列に接続するための層であり、例えばITOのような透明電極材料を高抵抗として用いている。スパッタ法により製膜時の酸素濃度を調整することにより容易に抵抗値を制御できる
【0045】
このように構成された表示装置1’において、これらの発光素子3b’,3g’,3r’は、透明電極層12の膜厚がそれぞれ個別に設定されていること以外は同一の構成であり、各機能層13の発光層13-3において略同一波長の青色の発光光を発生させる。そして、各発光素子3b,3g,3rからは、3層の各発光層13-3で発生した発光光のうち、透明電極層14側に直接向かう光h1と、反射電極層11で反射して透明電極層14側に向かう光h2とが取り出される構成となる。
【0046】
このような構成において、各発光素子3b,3g,3rにおける各発光層13-3−反射電極層11間の光学的距離は1つの素子において3つ設定される。例えば青色画素Bを例に取ると、基板2側の1層目の発光層13-3−反射電極層11間の第1光学的距離db-1、基板2側の2層目の発光層13-3−反射電極層11間の第2光学的距離db-2、および基板2側の3層目の発光層13-3−反射電極層11間の第3光学的距離db-3である。そして、緑色画素Gおよび赤色画素Rにおいても、同様に3つの光学的距離が設定されている。そして、これらの光学的距離db-1〜dr-3は、第1実施形態と同様に設定されている。
【0047】
すなわち、青色画素Bに配置される発光素子3b’においては、第1実施形態と同様に、各発光層13-3と反射電極層11との間の光学的距離db-1,db-2,db-3が、上述した光h1とh2とが干渉する最適距離に設定されている。このような光学的距離db-1,db-2,db-3は、発光層13-3において発生する青色の発光光の波長と、発光層13-3と反射電極層11とのに配置される各層の屈折率とに基づいて算出するか、また予備実験によって求められる。
【0048】
また、色変換層7g,7rが設けられた発光素子3g’,3r’においては、発光層13-2と反射電極層11との間の光学的距離dg-1,dg-2,dg-3,dr-1,dr-2,dr-3は、第1実施形態と同様に、上述した光h1,h2が色変換層7g,7rにて変換された各色光hg、hrの光強度が最も高くなる最適距離に設定されている。このような光学的距離dg-1,…は、例えば予備実験によって求められる。
【0049】
そして、第1実施形態と同様に、以上のような各発光素子3b’,3g’,3r’の光学的距離db-1〜dr-3は、透明電極層12の膜厚によって調整されている。
【0050】
以上のような構成の表示装置1’であっても、青色画素Bの発光素子3bにおける発光層13-3と反射電極層11との間の光学的距離db-1,db-2,db-3、および色変換層7g,7rを設けた緑色画素Gおよび赤色画素Rの発光素子3g,3rにおける発光層13-3と反射電極層11との間の光学的距離dg-1,dg-2,dg-3,dr-1,dr-2,dr-3は、第1実施形態と同様に個別に設定されるため、発光素子3b’,3g’,3r’の構成を光強度の高い発光が得られる構成としつつ、色変換層7g,7rにおいての色変換効率を高めることができ、各色光hb,hg,hrの取り出し強度を効果的に高めることが可能になる。
【0051】
尚、上述した第2実施形態においては、各発光素子3b’,3g’,3r’における光学的距離db-1〜dr-3を、透明電極層12の膜厚によって調整する構成を説明した。しかしながら、各発光素子3b’,3g’,3r’における発光層13-3での発光強度を低下させることのない範囲であれば、これらの光学的距離db-1〜dr-3は、反射電極層11と発光層13-3との間に設けられたどの層で調整しても良く、例えば、正孔注入層13-1や正孔輸送層13-2の膜厚、さらには透明電極層12の膜厚を組み合わせて調整しても良い。特に正孔注入層13-1や正孔輸送層13-2は、複数の機能層13毎に設けられているため、これらの膜厚を調整することにより、各発光素子3b’,3g’,3r’におけるそれぞれの発光層13-3に対応する各光学的距離を細かく最適化することができる。このような場合であっても、各発光層13-3は全ての発光素子3b’,3g’,3r’に共通層として用いることができる。
【0052】
また、各発光素子3b’,3g’,3r’における光学的距離db-1〜dr-3を規定する反射面は、反射電極層11の表面である必要はなく、反射面として屈折率差のある界面を用いる構成であっても良い。
【0053】
また上述した第2実施形態に対してもボトムエミッション構造適用しても良く、この場合、基板2を光透過性材料で構成し、発光素子3b,3g,3rの積層順を逆にして基板2側を光透過型電極層14とすれば良い。
【0054】
さらに、上述した第1実施形態および第2実施形態においては、発光素子として有機電界発光素子を用いた表示装置に本発明を適用した構成を説明した。しかしながら、本発明は、これに限定されることはなく、光を取り出す側の光透過性電極層に対向させて反射面を備えた薄膜発光素子を用いた表示装置に広く適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【実施例1】
【0055】
以下、本発明の実施例および比較例1,2を説明する。
【0056】
<実施例>
先ず、図3に示すように、青色の発光素子30をテストサンプルとして作製した。この発光素子30は、図1を用いて説明した発光素子3b,3g,3rに対応するトップエミッション構造のものであり、以下のような層構成として作製した。尚、ここでは、正孔注入層13-1の膜厚を上記の範囲で調整することにより、反射電極層11−発光層13-3間の光学的距離(ここでは、光学的距離に換算しないそのまま距離dとして表示)を変化させた複数の発光素子30をテストサンプルとして作製した。
【0057】
基板2 :ガラス
反射電極層11 :Ag(50nm)
透明電極層12 :ITO(11nm)
正孔注入層13-1 :m−MTDATA(70nm〜170nm)
正孔輸送層13-2 :αNPD(11nm)
発光層13-3 :DPAVBi+5%BCzVBi(30nm)
電子輸送層13-4 :Alq3(10nm)
電子注入層13-5 :LiF(0.3nm)
光透過性電極層14 :MgAg(1nm)/ITO(100nm)積層
【0058】
以上の成膜においては、反射電極11:Ag(50nm)/透明電極12:ITO(11nm)成膜後に酸素プラズマによる前処理を行った。その後、正孔注入層13-1:m−MTDATA〜光透過性電極14:MgAgまでは、真空蒸着にて成膜し、圧力1E−4Paにて抵抗加熱法による真空蒸着にて成膜した。ITO(100nm)の成膜は、DCマグネトロンスパッタ方式にて行い、0.3Pa、1%O2/Arガス、5sccm、150Wの条件で行った。
【0059】
次に、距離dを因子として作製した各青色の発光素子30について、図4に示すように、分光放射強度を測定した。測定は、電流密度10mA/cm2として行った。この結果、青色光(波長460nm)の発光強度は、距離d=131nmにおいて最も高くなることが確認された。このことから、青色画素Bに設ける発光素子3bにおける光学的距離dbとして、距離d=131nm(正孔注入層13-1:m−MTDATAの膜厚110nm)を選択した。尚、この値は、光学干渉理論によって説明される値である。
【0060】
また、図5に示すように、テストサンプルとして作製した各発光素子30の光取出側、すなわち光透過性電極側に、接着剤樹脂31、および色変換層7g,7rを介して対向基板4を貼り合わせた。
【0061】
緑色変換層7gは、SrGa24:Euからなる粒径〜3μm程度の蛍光体粒子を、役40wt%の割合で樹脂中に分散させたものであり、30μm程度の膜厚でカバーガラス32上に成膜してなる。赤色変換層7rは、SrS:Euからなる粒径〜3μm程度の蛍光体粒子を、役40wt%の割合で樹脂中(波長460nmにおいて屈折率n=1.60)に分散させたものであり、30μm程度の膜厚でカバーガラス32上に成膜してなる。
【0062】
図6には、これらの色変換層7g、7rの蛍光スペクトルを示す。尚、励起光は、青色光(波長460nm)であることとする。これらのスペクトルに示すように、緑色変換層7gは、青色光を緑色の波長領域の光に変換し、赤色変換層7rは青色光を赤色の波長領域の光に変換する。
【0063】
そして、先の図5に示したように、テストサンプルとして作製した各青色発光の発光素子30の光取出側にこのような色変換層7g、7rを設けた状態で、各色変換層7g,7rから取り出される光の発光強度を測定した。
【0064】
図7には、各発光素子30における反射電極層11−発光層13-3間の距離dに対する、各色変換層7g,7rから取り出される光の強度(色変換強度)の測定結果を示す。測定は、電流密度10mA/cm2として行った。尚、図7には、各発光素子30の発光強度(波長465nm)を光源強度として測定した結果を合わせて示す。
【0065】
この測定の結果、緑色変換層7gを介して取り出される光の強度(色変換強度)は、距離d=150nm〜170nm付近で最も高くなることが確認された。また、赤色変換層7rを介して取り出される光の強度(色変換強度)は、距離d=170nm付近で最も高くなることが確認された。このことから、緑色画素Gおよび赤色画素Rに設ける発光素子3g,3rにおける光学的距離dg,drとして、距離d=171nm(正孔注入層13-1:m−MTDATAの膜厚150nm)を選択した。
【0066】
尚、光源強度は、距離dに対してコサインカーブを示し、d=130nm付近において最大値が得られる単純な光学干渉が行われていることがわかる。しかしながら、緑色画素Gおよび赤色画素Rに設ける発光素子3g,3rの構成として採用した距離d=171nm付近においては、光源強度が極端に小さく、色変換層7g,7rなしでは発光光をほとんど取り出すことができないことがわかる。
【0067】
以上のようにして、各画素B,G,Rの発光素子3b,3g,3rにおける光学的距離db,dg,drを選択した後、このような光学的距離db,dg,drが設定された各発光素子3b,3g,3rを備えた図1に示す表示装置1を作成した。この際、透明電極層14〜色変換層7g,7rまでの層の構成は、テストサンプルとして作製した発光素子30および図5を用いて説明したと同様の構成とした。
【0068】
図8には、以上のようにして得られた表示装置1における各画素B,G,Rからの取り出し光の強度(発光強度)の測定値を示す。測定は、電流密度10mA/cm2、駆動電圧約10V、発光面積は4mm2の条件で行った。
【0069】
<比較例1>
図1に示した構成の表示装置において、すべての発光素子3b,3g,3rにおける距離をd1=131nmとした以外は、実施例1と同様の構成の表示装置を作製した。
【0070】
図9には、比較例1の表示装置における各画素B,G,Rからの取り出し光の強度(発光強度)の測定値を示す。測定は、実施例と同様に行った。
【0071】
<比較例2>
図1に示した構成の表示装置において、すべての発光素子3b,3g,3rにおける距離をd1=171nmとした以外は、実施例1と同様の構成の表示装置を作製した。
【0072】
図10には、比較例1の表示装置における各画素B,G,Rからの取り出し光の強度(発光強度)の測定値を示す。測定は、実施例と同様に行った。
【0073】
<評価結果>
以上の図8〜図10を比較すると、本発明を適用した実施例の表示装置においては(図8)と、比較例1,2(図9,10)と比較して、すべての画素R,G,Bにおいて高い発光強度が得られていることが確認された。これにより、色変換層7g,7rが組み合わせられる発光素子3g,3rと、組み合わせずに直接発光光を取り出す発光素子3bとで、光学設計を異なる値とする本発明の効果が確認された。
【0074】
つまり、青色としては外部に取り出せる光が少ないような光学干渉条件であっても、色変換層によって色変換を行う際には最も高い変換光強度を示し、その場合がその変換層にとって最適な光学条件になるのである。この原因としてはいろいろ考えられるが、発光素子3g,3rから色変換層7g,7rに入射する光は角度依存があり、発光層と反射電極層との距離dがある程度の値(ここでは130nm)を超えると斜め方向の発光が強くなる。このため、色変換層7g.7rに入射する光の強度が、距離d=171nm付近で最大になるのではないかと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】第1実施形態の表示素子の断面構成図である。
【図2】第2実施形態の表示素子の断面構成図である。
【図3】実施例においてテストサンプルとして作製した各青色の発光素子の断面構成図である。
【図4】テストサンプルとして作製した各青色の発光素子の分光放射強度の測定値である。
【図5】テストサンプルの発光素子に色変換層を設けた図である。
【図6】色変換層の蛍光スペクトルである。
【図7】テストサンプルの発光素子における反射電極層−発光層間の距離に対する色変換強度の測定結果である。
【図8】実施例で作製した表示装置における各画素B,G,Rからの取り出し光の強度(発光強度)の測定値である。
【図9】比較例1で作製した表示装置における各画素B,G,Rからの取り出し光の強度(発光強度)の測定値である。
【図10】比較例2で作製した表示装置における各画素B,G,Rからの取り出し光の強度(発光強度)の測定値である。
【符号の説明】
【0076】
1,1’…表示装置、2…基板、3b,3g,3r…発光素子、11…反射電極層、13…機能層、13-3…発光層、14…光透過性電極層、7g…緑色変換層、7r…青色変換層、A…反射面、db,dg,dr,db-1,dg-1,dr-1,db-2,dg-2,dr-2,db-3,dg-3,dr-3…光学的距離、12…透明電極層、21…中間電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性電極層、発光層を含む機能層、および対向電極層をこの順または逆の順に積層した状態で基板上に配列された複数の発光素子と、
前記複数の発光素子のうちの一部の発光素子における光透過性電極層側に設けられ、前記発光素子における発光層で生じた発光光を色変換する色変換層とを備えた表示装置において、
前記各発光素子は、前記光透過性電極層との間で前記発光層を狭持する位置に反射面を有し、
前記複数の発光素子のうち、前記色変換層が設けられていない発光素子と当該色変換層が設けられた発光素子とで、前記反射面と前記発光層との間の光学的距離が異なる
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の表示装置において、
前記色変換層が設けられていない発光素子における前記光学的距離は、当該発光素子の発光層での発光光が干渉する距離に設定され、
前記色変換層が設けられた発光素子における前記光学的距離は、当該色変換層で変換された所定波長の光が最も高い強度で取り出される距離に設定されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の表示装置において、
前記反射面と前記機能層との間に、前記光学的距離を調整するための膜厚を備えた透明電極層が設けられており、
前記機能層は、前記複数の発光素子における共通層として設けられている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1記載の表示装置において、
前記対向電極層と光透過性電極層との間には、複数の機能層が中間電極を介して積層されている
ことを特徴とする表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−157514(P2007−157514A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351488(P2005−351488)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】