説明

表示装置

【課題】全ての環境下でより高画質の表示を与える表示装置
【解決手段】第一の基板側31の各画素に対応する領域に、光を発光する発光領域41と光を透過する光透過領域42とを設け、第二の基板側32に光反射層13を設け、発光領域41を各画素のほぼ中央に配置する。このように、画素中央にフロントライトを内蔵させて、明所から暗所を含む広範な環境において、より高画質の表示が行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントライトを内蔵した表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される携帯型情報機器は、情報化社会のキーデバイスであり、今後も記憶装置の容量を増大し、通信速度を高速化しながら多機能化、高機能化していくことが予想される。現状においても、携帯型情報機器を活用すれば大量の情報を持ち運ぶことが可能であり、かつ、どこからでもサーバやインターネットにアクセス可能な状況が実現しつつある。
【0003】
携帯型情報機器のインターフェイスである表示装置には、大容量で高画質の画像情報に対応することが要求される。そのために、携帯型情報機器の表示装置には高画質、高精細化が要求され、限られた重量と容積の携帯型情報機器により多種のデバイスを組み込むことから、同時に薄型、軽量、低消費電力化も求められる。
【0004】
携帯型情報機器は、持ち運び可能であるため、多様な環境下で用いられることを想定しなければならない。表示装置には主に周囲の明るさが関係し、多様な明るさの下でより高画質の表示を行うことが要求される。明るい環境の極限としては、例えば真夏の直射日光下が挙げられる。暗い環境の極限としては、例えば暗室が挙げられる。
【0005】
現在、携帯型情報機器の大部分には液晶表示装置が用いられているが、使用環境を限定せず、特に明るい環境下での表示特性を重要視する場合には半透過型液晶表示装置が用いられる。
【0006】
半透過型液晶表示装置は、一画素を2つの部分に面積分割しており、そのうち一方を反射表示部とし、他方を透過表示部としている点が構造上の特徴である。反射表示部は周囲から入射する光を反射して表示を行い、周囲の明るさによらずコントラスト比が一定であるため、比較的明るい環境下での使用に適する。透過表示部では背後に配置したバックライトを用いており、環境によらず輝度が一定であるため、比較的暗い環境下での使用に適する。半透過型液晶表示装置はこの両者を有するため、広範な環境下で比較的良好に表示することを特徴とする。
【0007】
半透過型液晶表示装置は、広範な環境下で比較的良好な画質を表示するものの、暗い環境下で透過型液晶表示装置と、明るい環境下で反射型表示装置とそれぞれ比較すれば、何れの場合も画質が劣って見える。半透過型液晶表示装置は、個々の環境下で他の表示装置と比較して最高の画質を与えるわけではない。その原因は、半透過型液晶表示装置が一画素を反射表示部と透過表示部に面積分割していることである。一画素の全面積を反射表示と透過表示兼用にし、かつ、全透過型液晶表示装置と同様の画質の透過表示と、全反射型液晶表示装置と同様の画質の反射表示ができれば、個々の環境下において最高の画質を表示可能になるはずである。
【0008】
例えば、一画素を全て反射表示部として、その前面にフロントライトを配置し、明るい環境下では一画素の全面積で反射表示を行い、暗い環境下ではフロントライトを点灯して一画素の全面積を照明すれば、一画素の全面積を反射表示と透過表示に兼用できる。この場合、光源に冷陰極管を用いて反射型液晶表示装置の側面に配置し、その光を反射型液晶表示装置の前面に配置した導光体で面状に広げれば、反射型液晶表示装置を前面から照明できる。このようなフロントライトと反射型液晶表示装置の組合せが、一部の携帯型情報機器に適用されたことがある。しかし、フロントライト点灯時には導光体が光源光を漏洩し、反射表示時には導光体が周囲からの入射光を乱反射するため、反射表示、透過表示とも低コントラスト比となった。
【0009】
近年有機材料や無機材料を用いたエレクトロルミネッセンス表示装置の技術開発が進展しており、発光効率も向上を続けている。R(赤)、G(緑)、B(青)の各画素の表示色に対応した発光層を用いれば、白色光をカラーフィルタで着色する透過型液晶表示装置を上回る高色純度の表示が可能になる。あるいはまた、発光層は青色発光とし、R、G、Bの各画素の表示色に対応した蛍光体若しくはカラーフィルタで色を変換しても、同様の効果が得られる。
【0010】
下記特許文献1では、エレクトロルミネッセンス表示装置を、画素間隙に対応するようにパターンニングし、液晶表示装置の前面に配置してフロントライトとして利用している。しかし、画素間隙に対応して発光しているので画素周辺部を主に照明することになるため、高画質が得られないことが予想される。また、R、G、Bの各画素に対して、各画素の表示色に対応した波長の光を選択的に照射できない。そのため、エレクトロルミネッセンス表示装置をフロントライトに用いながらも、その特徴である高色純度の表示ができないことが予想される。
【特許文献1】特開2000−75287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、これまで液晶表示装置やエレクトロルミネッセンス表示装置を含む各種の表示装置が提案されてきたが、全ての環境下で他の表示装置と比較して最高の画質を与える表示装置は実現できなかった。本発明は、全ての環境下でより高画質の表示を与える表示装置の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る表示装置は、第一の基板と、第二の基板と、これらに挟持された光シャッタ層から構成される。各画素領域に、光を発光する発光領域と光を透過する光透過領域とを設ける。第二の基板側には光反射層を設け、発光領域を各画素のほぼ中央に配置する。
【0013】
光反射層は光散乱部としても機能し、これによって発光領域からの発光を基板法線に対して斜めの方向に反射する特性を付与する。
【0014】
発光領域の発光は白色光としてもよく、この場合には、各画素にカラーフィルタと透明領域とを設け、発光領域を中心にしてカラーフィルタを配置する。
【0015】
発光領域の発光を白色光とする以外にも、発光領域の発光層を着色した光とし、対応する画素の表示色に概略一致する波長の光を発光する。
【0016】
あるいはまた、発光領域の発光を主に可視波長域の短波長域に分布する発光とし、発光領域の発光が対応する光反射層に向かう光路上に光変換層を備え、光変換層は、対応する画素の表示色に一致するように発光の波長を変換するようにする。
【0017】
発光領域の使用者に面する側に光吸収層を配置する。
【0018】
光変換層を用いる場合には、発光領域を覆うように光変換層を積層し、使用者側から見て両者を被覆するように光吸収層を配置する。すなわち、光変換層の分布域は、発光領域の分布域よりも広く、光変換層と発光領域の分布域は基板法線方向で重畳しており、重畳側とは反対側に光吸収層を被覆する。
【0019】
光反射層は、発光領域の発光を主に基板法線方向に向けて反射し、外部からの入射光を拡散反射する特性を付与する。
【0020】
光シャッタ層には、液晶表示装置、電気泳動表示装置、エレクトロクロミック表示装置を用い、発光部にはエレクトロルミネッセンスを原理とする発光装置を用いる。
【0021】
光シャッタ層に液晶表示装置を用いた場合には、液晶層として二色性色素を含むゲストホスト型液晶を用い、また、液晶層の上下に自然光を直線偏光に変換する偏光手段を配置する。あるいはまた、液晶層と偏光手段との間に位相差制御層を設ける。
【0022】
液晶層は、電圧無印加時に基板法線方向に配向しており、液晶層は負の誘電率異方性を有し、液晶層の上下に配置された偏光手段の吸収軸は互いに直交し、位相差制御層の層内での2方向の屈折率をそれぞれnx、nyとし、層厚方向の屈折率をnzとすると、nz<nx、nz<nyの関係を満足する。
【0023】
発光領域は、エレクトロルミネッセンスを原理とし、発光領域に電圧を供給する陽極配線と陰極配線を有し、陽極配線と陰極配線は各画素の発光領域において交差する。または、陽極配線と陰極配線は非画素部分に分布する幹線と、幹線から各画素の中心部に向かって伸びた枝線から構成され、陽極配線と陰極配線の枝線は各画素の発光領域において重畳する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る表示装置において、第二の基板側に光反射層を配置し、発光領域は各画素のほぼ中央に配置したことにより、暗い環境下では、各画素の中心部を発光領域で照明して表示を行うことが可能になる。また、明るい環境下では発光領域を発光せずに、消費電力を低減しながら、光透過領域を通じて周囲から入射する光を用いた反射表示が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を用いて、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0026】
本発明に係る表示装置を構成する1画素の断面図を図1に、第一の基板を法線方向から観察した上面図を図2にそれぞれ示す。図2は、主に第一の基板側に形成された構成物の平面分布を表しており、第二の基板側に形成された構成物は光反射層のみを破線で示し、第二の基板側との対応関係を示した。
【0027】
この表示装置は、主に第一の基板31と光シャッタ層と第二の基板32から構成され、第一の基板31と第二の基板32は光シャッタ層を挟持する。第一の基板31は光シャッタ層を照明する機能を有し、周囲からの入射光を通過させる光透過領域42と、光照射する発光領域41からなる。前者は明るい環境で、後者は暗い環境で表示に必要な光を供給する。光シャッタ層は、第一の基板31の照明光を使用者に向けて反射するとともに、反射の割合を変化させる機能を有する。第二の基板32は光シャッタ層を制御する機能を有する。
【0028】
以上が本発明に共通する第一の基板31と光シャッタ層と第二の基板32との役割の概略である。また、機能分担の観点から本発明は上記の三要素に分類されるものの、各要素の積層構造は連続的であり、例えば、光シャッタ層の構成要素が第一の基板31上、第二の基板32上に積層されている。
【0029】
次に、本実施例についてより具体的に説明する。図1に示したように、第一の基板31は、発光領域41と光透過領域42を有し、このうち光透過領域42は透明であり、周囲から入射する光を通過させる。
【0030】
図2に示したように、発光領域41は、第二の基板側の光反射層13に対してそのほぼ中心部に位置し、両者とも格子状に分布する。また、発光領域41は、陽極配線43と陰極配線44の交差部に位置しており、陽極配線43と陰極配線44は、光反射層13のほぼ中央を通る。また、陽極配線43と陰極配線44の交差部には、光吸収層48が分布しており、光吸収層48は使用者側から見て発光領域41を遮蔽する。光吸収層48はブラックマトリクスに用いられる材料で構成し、黒色色素を含む有機膜や界面に酸化膜を有する低反射率の金属膜が適用可能である。
【0031】
このように、発光領域41は一対の電極(陽極と陰極)を備え、その内の一方が金属反射を示す場合がある。これに外部からの光が入射すれば、使用者の方向に直接反射することが起こりうる。この時の反射光は光シャッタ層を通過しないため、画像データを参照にした制御を受けないノイズとなり、コントラスト低下の原因になる。また、発光領域41における発光が光反射層に向かわず直接使用者に向かうことが考えられ、その場合にも同様にしてコントラスト低下の原因になる。したがって、使用者に面する側に光吸収層48を配置することにより、反射光の発生と使用者に直接向かう発光を防ぎ、かつコントラストの低下を防ぐことができる。
【0032】
発光領域41は無機材料からなるエレクトロルミネッセンス発光装置であり、図1に示したように、陰極配線44と誘電体層46と発光層45と陽極配線43と黄色光変換層47yの順の積層構造を有する。陽極配線43と陰極配線44の間に電圧を印加すると誘電体層46から陽極配線43に向けて電子が放出され、これが発光層45中の発光中心に衝突して青色の光が発せられる。黄色光変換層47yは黄色の蛍光体からなり、発光層45の青色発光の一部を黄色の光に変換し、両者が混合して白色光になる。
【0033】
この光変換層47yは蛍光体からなるため、外部からの光を吸収して発光することがあり、コントラスト低下の原因になる。光変換層47yと発光領域41の両者を被覆するように光吸収層48を配置することにより、上記した反射光低減等に加えて、外部からの光による発光を低減できる。
【0034】
発光領域41の発光層45は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法で成膜したものを焼成して形成する方法が最も一般的である。この場合、焼成温度を高くすればより緻密な膜にできるので、発光効率を向上できる。しかし、発光領域41をガラス製の第一の基板上に形成する場合には、焼成温度は第一の基板の耐熱性により制限される。しかし、ALD(Atomic Layer Deposition)法は、単層の原子膜を堆積する方法であり、CVD法に比較して緻密な膜を形成することが可能である。ALD法を用いて発光層を成膜すれば、焼成温度を低くしても緻密な膜が形成できるため、発光効率に優れた発光領域41を第一の基板上に形成可能になる。
【0035】
このように、発光領域41にエレクトロルミネッセンスを原理とする発光装置を用いれば、微細なパターンニングが可能なことから、高精細の画素に対応した微細な発光領域を形成可能であり、なおかつ発光領域を薄型にできる。
【0036】
本実施例において、光シャッタ層は液晶表示装置であり、液晶層10の上下に自然光を直線偏光に変換する偏光手段(第一の偏光層22と第二の偏光層14)を備え、第一の基板31上の発光領域41での光及び周囲からの入射光が第二の基板32に到達する割合を制御する。図1に示したように、カラーフィルタ25、第一の偏光層22、共通電極23、配向制御突起(図示せず)、第一の配向層24、液晶層10、第二の配向層16、画素電極15、第二の偏光層14、凹凸形成層12からなる積層構造を有する。このうちカラーフィルタ25、共通電極23、第一の偏光層22、第一の配向層24、配向制御突起は第一の基板31上に積層されており、第二の配向層16、画素電極15、第二の偏光層14、凹凸形成層12は第二の基板32上に積層されている。
【0037】
液晶層10は負の誘電率異方性を有し、室温を含む広い温度範囲にてネマチック相を示す液晶材料からなり、アクティブ素子11を用いた駆動において保持期間中に液晶配向状態をほぼ一定に保つに充分な高抵抗値を示す。第一の配向層24、第二の配向層16はポリイミド系の有機高分子膜であり、側鎖にアルキル基を有する。膜表面には電気的に中性なアルキル基が分布しているため表面エネルギーが低く、近接する液晶層10を膜面に対して垂直に配向させる性質を有する。
【0038】
このような第一の配向層24と第二の配向層16の性質により、電圧無印加時において液晶層10は基板平面に対して垂直な配向状態を取る。液晶層10の厚さは、画素電極の間隙に配置された柱状スペーサによって保持する。
【0039】
液晶層10の配向状態は、共通電極23と画素電極15間に電圧を印加することにより制御する。画素電極15は第二の基板32上に格子状に分布し、個々の画素電極15が1画素を形成する。これに対し、共通電極23は画素電極15全体を覆うように連続して分布する。
【0040】
配向制御突起は有機膜からなり、電圧印加時に自らを貫く電気力線を放射状に変形する。画素電極15の端部でも電気力線が放射状に形成される。液晶層10は負の誘電率異方性を有するため電気力線に対して垂直方向を向くように配向変化し、1画素内の液晶層10の配向状態も放射状に変形する。
【0041】
カラーフィルタ25はストライプ状で、赤、緑、青の色を呈する3種類が順次配列し、各色のカラーフィルタ25は画素の作る格子に平行である。
【0042】
第一の偏光層22と第二の偏光層14は二色性色素からなり、二色性色素は第一の偏光層22と第二の偏光層14の全域で一様に配向している。二色性色素の配向方向に対して平行な直線偏光成分を通過し、配向方向に対して垂直な直線偏光成分を吸収する。第一の偏光層22は平坦化層21に形成されたカラーフィルタ25に近接し、第二の偏光層14は絶縁層17に近接しており、各偏光層を塗布形成する際の塗布面を平坦にすれば、一様な配向が可能になる。
【0043】
液晶層10は、電圧無印加時に垂直配向であり、基板法線方向では屈折率異方性を示さないため、そのリタデーションは0である。これに加えて、第一の偏光層22と第二の偏光層14は吸収軸が基板法線方向から見て直交配置しているため、第一の偏光層22を基板法線方向から通過した光は、第二の偏光層14によって吸収され、反射率は極小になる。しかし、基板法線方向に対して傾いた方向では、液晶層10のリタデーションが0にならないことが一因となり暗表示の反射率が増大し、コントラスト比が低下する。外光や発光領域の発光は角度分布を有し、必ずしも液晶層10を法線方向から通過しないため、コントラスト比が低下する。
【0044】
そこで、光シャッタ層の黒表示時における視角特性を向上するには、第一の偏光層22と第二の偏光層14との間の何れかに、例えば、第一の偏光層22と共通電極23の間に位相差制御層を配置する。ここで、位相差制御層の層内の屈折率をn‖、層厚方向の屈折率をn⊥とすると、n‖とn⊥はn‖<n⊥の関係にする。
【0045】
すなわち、厚さdの光学異方性媒体を方位角Φ、極角θにて通過する光に作用するリタデーションは、(Φ、θ)に垂直な屈折率楕円体の断面(一般には楕円)の長軸の長さnlと短軸の長さnsから、(nl−ns)d/cosθで求められる。電圧無印加時において液晶層は垂直配向であるため、法線方向では屈折率楕円体の断面は円であるが、法線方向に対して傾いた方向では楕円となる。液晶層のn‖とn⊥はn‖>n⊥の関係にあるため、nlはP偏光方向、nsはS偏光方向になり、液晶層を斜めに通過した光のP偏光成分の位相はS偏光よりも遅れることになる。
【0046】
したがって、位相差制御層では、液晶層とは逆にn‖<n⊥であるため、nlはS偏光方向、nsはP偏光方向になり、P偏光成分の位相はS偏光よりも早まることになる。これは液晶層と逆であるため、液晶層を通過した光が位相差制御層を通過すれば、液晶層通過時において、P偏光の位相の遅れは位相差制御層通過時に減少し、P偏光とS偏光の位相差は0に近づく。液晶層に位相差制御層を組み合わせることにより、何れの角度でもこれらのリタデーションの合計は0に近づく。これにより斜め方向での反射率増大が抑えられ、暗表示の反射率を低減できる。
【0047】
すなわち、液晶層は、電圧無印加時に基板法線方向に配向しており、液晶層は負の誘電率異方性を有し、液晶層の上下に配置された偏光手段の吸収軸は互いに直交し、位相差制御層の層内での2方向の屈折率をそれぞれnx、nyとし、層厚方向の屈折率をnzとすると、nz<nx、nz<nyの関係を満足する。
【0048】
第一の偏光層22と第二の偏光層14を吸収軸が互いに直交するように形成し、かつ液晶層10は電圧無印加時に垂直配向で、屈折率異方性がゼロであるため偏光状態を変換しない。これより本実施例の光シャッタ層は、電圧無印加時の反射率が極小であり、電圧印加とともに増大するノーマリクローズ型の電圧−反射率特性を示す。また、電圧印加時に液晶層10は、放射状配向となることから、放射状配向の各部分の有する視角特性が平均化され、方位角の変化に伴う反射率変化を示さない。
【0049】
光反射層13は、アルミニウムや銀などの高反射率の金属膜である。凹凸形成層12は二次曲面状の滑らかな断面形状を有し、光反射層13に滑らかな凹凸を付与する。このような断面形状は、有機膜を円柱状にパターンニングして、これを加熱溶融し、溶融時の表面張力で生じるメニスカスを固化することにより形成する。これにより、光反射層13は拡散反射を示す。
【0050】
また、発光領域41と対向する光反射層13の部分には、発光領域から基板法線方向に発した光が到達する。この光を基板法線方向に向けて反射すれば、再び発光領域41に向かい、使用者には到達しない。そこで、発光領域41と対向する光反射層13の部分を、光散乱部として、光を基板法線に対して斜めの方向に反射することにより、この反射光が、表示装置を斜め方向から観察する使用者に到達するので表示に活用できる。
【0051】
第二の基板32は光シャッタ層の個々の画素に一対一に対応するアクティブ素子11を有し、アクティブ素子11はスルーホール18を通じて画素電極15に接続されている。アクティブ素子11の切換はゲート配線と信号配線で制御されている。ゲート配線と信号配線はいずれもストライプ状に配列しており、かつゲート配線と信号配線は交差しており、ゲート配線と信号配線の交差部にアクティブ素子11が位置する。更に、ゲート配線と平行に保持配線が配列しており、保持配線と対応するアクティブ素子の間には保持期間中に液晶層の配向状態を一定に保つための保持容量が形成されている。
【0052】
以上により実現される表示装置の光路を図3に示す。図3は図1と同様の断面図であり、充分に明るい環境下では発光領域は発光させずに、光透過領域を通じて入射した光35を用いて表示を行う。発光領域に対して光透過領域の占める面積が充分に大きいため、周囲からの光を充分に取り込むことが可能であり、明るい表示が可能である。暗い環境下では発光領域の発光36を用いて表示を行う。
【0053】
使用者は表示装置を基板法線方向から観察する頻度が高いため、発光領域の発光を主に基板法線方向に向けて反射すれば高輝度の表示が可能になる。また、外部からの入射光を利用する場合には、基板法線に対して傾いた方向から入射する光を利用する。これを拡散反射すれば基板法線方向に向かう成分を増やすことができ、高輝度の表示が可能になる。光反射層がこれらの性質を兼ね備えることにより、発光領域の発光を利用した場合にも、周囲からの入射光を利用した場合にも高効率の表示が可能になる。
【0054】
従来の透過型液晶表示装置では光源にLEDを用いていたが、導光体を用いて点状の発光を面状に拡大し、プリズムシートを用いて正面方向に向け、拡散板を用いて視角依存性を平均化しており、各過程において光損失が生じるため効率が低かった。
【0055】
しかし、本発明では発光領域が画素電極を直接照明するため光損失が少なく、高効率の表示が可能になる。高効率であれば発光領域の面積を小さくできるため、光透過領域の面積比を増大できる。以上により、暗い環境から明るい環境まで良好な表示を与える表示装置が実現できる。
【0056】
なお、第一の基板31には、発光領域を発光させるために電力を要し、陰極と陽極に電力を供給するための発光用端子部が必要である。第二の基板32には、光シャッタ層を制御するための電力を要し、光シャッタ層用端子部が必要である。
【0057】
そのために、第一の基板31と第二の基板32を図4(a)のように積層すれば、発光用端子部33と光シャッタ層用端子部34をそれぞれ個別に形成可能である。あるいはまた、図4(b)に示したように発光用端子部33を第二の基板32上に形成し、第一の基板31と第二の基板32との間の導通部37を通じて第一の基板31上の発光部に電力を供給することも可能である。この場合には、発光用端子部33と光シャッタ層用端子部34を第二の基板32側に集約できるため、表示装置のサイズを低減できる。
【実施例2】
【0058】
本実施例では、図5にその断面構造を示したように実施例1の表示装置から第二の偏光層14と画素電極15を除去し、光反射層13に代えて、微小なストライプ構造を有するアルミニウム反射層19を形成して、スルーホール18を通じてアクティブ素子11に接続した。ストライプ構造の幅と間隙を可視光の波長以下、例えば100nmとすると、光反射層13は、グリッド偏光板になる。
【0059】
すなわち、アルミニウム等の金属膜での金属反射は、金属膜膜中の自由電子の運動によって生じるが、ストライプ構造とした場合に自由電子は、主にストライプ方向に移動可能なことから、ストライプ方向に平行な直線偏光成分を反射し、ストライプ方向に垂直な直線偏光成分を通過する性質を示す。このように、グリッド偏光板は、反射型の偏光板である。
【0060】
したがって、アルミニウム反射層19のストライプ方向を第一の偏光層22の吸収軸に平行にすれば、実施例1と同様に第一の偏光層22と直交ニコル配置が形成されるため、ノーマリクローズ型の電圧−反射率特性が得られる。この場合、アルミニウム反射層19は実施例1における第二の偏光層14と画素電極15の機能を兼用するため、構成要素並びに構造を著しく簡略化できる。
【0061】
また、グリッド偏光板は二色性色素を用いた偏光層よりも偏光度が高く、特に凹凸形成層等の影響により表面に凹凸がある場合でも高い偏光度が保持されるという特徴を有する。そのため、本発明に適用した場合には、形成時の膜面の条件に依存せずにより高いコントラスト比の表示が得られる。
【0062】
さらに、グリッド偏光板は反射型の偏光板であるため、反射光の偏光状態と透過光の偏光状態が異なり、振動方向が直交する直線偏光になる。グリッド偏光板の透過光と反射光が両方存在する場合には、何れか一方を吸収する条件にて他方は通過するため、コントラスト比が著しく低下する。本発明では反射型の光シャッタ層を用いており、グリッド偏光板の反射光のみを利用する。そのため、グリッド偏光板が有する高偏光度の偏光機能を生かした高コントラスト比の表示が可能になる。
【実施例3】
【0063】
実施例1において、カラーフィルタは画素全体を覆う分布としたが、本実施例では図6に、その断面構造を示すように画素を部分的に覆う分布に変更した。カラーフィルタ25は、画素中心に分布する発光領域を含む領域に分布し、画素周辺にはカラーフィルタ25が分布しない透明領域とした。
【0064】
ここで、発光領域が発する白色光をカラーフィルタ25で着色してカラー表示を行う場合に、表示色をより高色純度とするためには、カラーフィルタ25の色純度を向上すればよい。しかし、カラーフィルタ25は光吸収を原理とするため、色純度を向上すると透過率が減少する傾向にある。すなわち、発光領域の発光は発光領域の近傍で強く、遠ざかるにつれて弱くなる。これに対して、周囲から入射する光の強度は画素全域で一様である。
【0065】
したがって、高色純度のカラーフィルタを用いた場合に、外光表示時の明るさを保つためには、カラーフィルタ25を発光領域が分布する画素中心を含む領域に分布させ、画素周辺にはカラーフィルタ25の存在しない透明領域を配置すればよい。
【0066】
外光表示時には、外光の強度は画素全域において一様であるため、カラーフィルタ25を二回通過する光路35とカラーフィルタ25を通過しない光路38の両方が生じる。そのため、外光表示時には、カラーフィルタ25と透明領域を面積平均した明るさが得られる。また、カラーフィルタ25での色純度向上による反射率低下は、透明領域で補うことができる。
【0067】
発光表示時には、発光領域の発光は、発光領域の近傍で強く画素周辺で弱いため、カラーフィルタ25を2回通過する光路36が主要であり、画素周辺の寄与は小さい。そのため、画素周辺にカラーフィルタ25の存在しない透明領域を配置しても、発光表示時の色純度の低下はほとんど生じない。
【0068】
このように、発光領域の発光を白色光として、かつ、発光領域を中心にカラーフィルタを分布させることにより、発光領域の発光は、主にカラーフィルタを通過するため、暗い環境下において、発光領域を発光させる場合には、より高色純度の表示が得られる。またこの時、光透過領域を通過して周囲から入射する光は、主にカラーフィルタの存在しない透明領域を通過するため、明るい環境下では、より高反射率の明るい表示が得られる。
【0069】
さらに、発光領域の発光層を着色した光とし、かつ、その波長域を対応する画素の表示色に概略一致させれば、白色光をカラーフィルタで着色するよりも、高色純度の表示が得られる。あるいはまた、発光領域の発光を、主に可視波長域の短波長域に分布する発光とし、光変換で対応する画素の表示色に概略一致するように波長を変換してもよく、この場合にも白色光をカラーフィルタで着色するよりも高色純度の表示が得られる。
【0070】
以上のようにして、本実施例においては、外光表示時の明るさを低下せずに、高色純度の発光表示が得られる。
【実施例4】
【0071】
本実施例では、図7にその断面を示したように、実施例1の表示装置から第一の偏光層22と第二の偏光層14を除き、実施例1の液晶層10に代えて二色性色素10”を含む正の誘電率異方性の液晶10’からなるゲストホスト液晶層29に変更した。
【0072】
二色性色素を含む液晶は、一般にゲストホスト液晶29と呼ばれる。二色性色素10”には、アントラキノン系やジアミン系の有機化合物が適している。すなわち、これらの有機化合物を、ネマチック相を示す液晶層中に添加すると、吸収軸が液晶の配向方向に対してほぼ平行になるように配向するからである。そのため、ゲストホスト液晶層29の光吸収は異方性を示し、液晶配向方向の吸光係数が高く、その垂直方向では小さい。
【0073】
第一の配向層24と第二の配向層16を水平配向性のポリイミド膜に換えてこれにラビング処理を施し、さらに、ゲストホスト液晶層29にカイラル剤を添加して、電圧無印加時の配向状態を捩れ配向にした。
【0074】
カイラル剤は、不斉中心を有する旋光性の有機化合物であり、ゲストホスト液晶層29の配向状態を捩れ配向にし、かつ、添加量に応じて捩れのピッチを調節する効果がある。ゲストホスト液晶のような光学異方性媒体中を通過する光は2つの固有偏光に分解されるが、捩れ配向では2つの固有偏光は楕円偏光になり、二色性色素10”により何れも吸収可能になる。そのため、ゲストホスト液晶層29が捩れ配向になる電圧無印加時が暗表示となる。
【0075】
ゲストホスト液晶層29は、正の誘電率異方性のため、電界を印加すれば電界方向に配向して、液晶配向状態は垂直配向に近づく。液晶配向状態の変化と共に二色性色素10”の配向も変化し、光吸収率が減少して反射率が増大する。以上のようにして、ノーマリクローズ型の反射率−電圧特性が得られる。
【0076】
実施例1では液晶層10と第一の偏光層22、第二の偏光層14の組合せが光シャッタ層の役割を果たしたが、本実施例では、ゲストホスト液晶層29自体が光シャッタ層の役割を果たすため、構成と製造工程をより簡略化できる。
【0077】
このように、本実施例では、光シャッタ層に液晶表示装置を用いた場合に、液晶層として二色性色素を含むゲストホスト型液晶とすれば、液晶層自体が印加電圧とともに光反射率を変化する機能を有するため、最も単純な構成で光シャッタ層としての機能を実現できる。なお、液晶層の上下に自然光を直線偏光に変換する偏光手段を配置すれば、構成要素は増加するものの、より高コントラストの表示が得られる。
【実施例5】
【0078】
本発明係る表示装置の光シャッタ層は、液晶表示装置に限らず、反射型の表示装置ならば適用可能であり、例えば、電気泳動型表示装置を用いてもよい。電気泳動型表示装置は、一般に着色した帯電微粒子を溶液中に保持し、電界を利用して帯電微粒子を移動することにより反射率を制御する。
【0079】
本実施例では、図8(a)(b)にその断面を示したように、白色で正に帯電した微粒子(白色粒子71)と、黒色で負に帯電した微粒子(黒色粒子72)を含む透明溶液73を用いる。白色粒子71と黒色粒子72は、逆に帯電していることから、電圧印加時に常に異なる電極上に集まる。
【0080】
図8(a)に示したように、白色粒子71を第一の基板31上(使用者側)の電極に集めれば、発光領域の光や外光を反射し、明表示になる。図8(b)に示したように、黒色粒子72を、第一の基板31上の電極に集めれば、発光領域の光や外光を吸収し、暗表示になる。白色粒子71と黒色粒子72の帯電は、透明溶液分子と微粒子表面の電気親和力の差で決定されるものであり、ζ(ゼータ)電位と呼ばれている。
【0081】
この他にも、図9(a)(b)に示したように、溶液を黒色等に着色して、不透明溶液74にし、白色粒子71のみを用いた構成としてもよい。この場合には、白色粒子71を第一の基板31上の電極に集めれば、発光領域の光や外光を反射し、明表示になる(図9(a))。また、白色粒子71を、第二の基板32上の電極に集めれば、不透明溶液74が発光領域の光や外光を吸収し、暗表示になる(図9(b))。
【0082】
以上は平面状の電極対を異なる層に配置し、帯電微粒子を電極対間において、主に基板法線方向に移動させる例である。これ以外にも、例えば、電極対をストライプ状にして基板の片側に配置してもよい。
【0083】
その断面図を図10(a)(b)に示す。この場合には、基板平面に平行な電界成分が発生するため、帯電微粒子を基板平面に平行な方向に移動できる。透明溶液73と黒色粒子72を用いた構成として、第二の基板32側に光反射層13を配置して光反射し、ストライプ状の電極対を用いて黒色粒子72を画素内で平行移動してもよい。黒色粒子72を画素内の一部分、例えば、ストライプ状の電極対上に集めれば光反射層13が露出して、発光領域の光や外光を反射し、明表示になる。黒色粒子を画素全面に分散すれば、光反射層13が黒色粒子72で被覆されて、発光領域の光や外光を吸収し、暗表示になる。
【0084】
なお、図9(a)(b)に示した白色粒子71を溶液中で移動するには帯電が必要であり、溶液界面で安定な電気二重層を形成するために金属以外の材料を用いる場合が多い。そのため、白色粒子71は白色粒子71内部での光拡散を利用して光反射する場合が多い。また、電気泳動の動作スピードから白色粒子71の大きさは制限され、かつ、第一の基板の内側で光散乱することから、白色粒子71の反射は、金属反射に比較して低反射率になる。したがって、図10(a)(b)に示した電気泳動表示装置を光シャッタ層に用いると、金属反射を示す光反射層13で光反射するため、白色粒子71で光反射する場合に比べて高反射率が得られる。
【0085】
また、迷光の原因になる大きい角度での反射光は、発光領域から遠い画素周辺部において発生しやすい。しかし、図10(a)(b)に示した電気泳動表示装置を光シャッタ層に用いる場合には、明表示時に黒色粒子72を画素周辺部に集めることが可能である。この場合、黒色粒子72は画素周辺部での反射光を吸収するため、色純度の低下やコントラスト比の低下を抑えることができる。
【0086】
実施例1では光シャッタ層が液晶表示装置であり、第一の偏光層と第二の偏光層が常に全面に存在した。これらを理想的な直線偏光子と仮定しても、発光領域の光や外光を常に50%の割合で吸収する。本実施例では、光シャッタ層を電気泳動型表示装置としたことにより、光吸収性の層が明表示、暗表示に関わらず、常に全面に存在することはなくなるため、明るさが増大する効果が得られる。
【0087】
また、光シャッタ層をエレクトロクロミック型表示装置としても、同様にして明るさ増大の効果が得られる。エレクトロクロミック型表示装置は、有機化合物若しくは無機化合物の可逆な電気化学反応に伴う着色と透明化を利用する。エレクトロクロミックを示す物質には、有機化合物では、ビオロゲン誘導体や各種の有機金属錯体が挙げられる。無機化合物では、酸化タングステン(WO3)を初めとする各種の金属酸化物(TiO2、MoO3、V25、Nb25)が挙げられる。
【0088】
本実施例の表示装置を明所で使用する場合には、発光領域の発光が不要になることがあり、この場合の消費電力は光シャッタ層のみで決定される。電気泳動型表示装置やエレクトロクロミック型表示装置では、電圧無印加でも、先の書き込み時に書き込んだ表示状態をある一定時間保持できる場合がある。このよう特性はメモリー性と呼ばれ、メモリー性を有する場合には、静止画像を長時間表示する場合などに、消費電力を極めて低くできるという利点がある。
【0089】
このように、光シャッタ層に、液晶表示装置、電気泳動表示装置、エレクトロクロミック表示装置を用いれば、何れも反射率を制御可能なことから、発光領域からの発光を用いた表示と、光透過領域を通じて周囲から入射する光を用いた表示の両方が可能になる。
【実施例6】
【0090】
実施例1では、陰極配線43と陽極配線44をストライプ状にパターンニングし、両者を画素中央で交差させ、交差部を発光領域とした。しかし、表示特性向上やプロセス低減の観点から、これ以外の最適な陰極配線43と陽極配線44の分布形状が考えられる。
【0091】
この陰極配線43と陽極配線44はITO膜であるが、ITO膜は屈折率が約1.9であり、これは表示装置に用いられる透明部材の中では比較的大きい値であり、近接する層と屈折率差が大きい場合には界面反射を生じる。この他に、ITO膜は光吸収を示し、膜厚に依存するものの、透過率は90〜85%である。界面反射は、コントラスト比を低減し、光吸収は明るさを低減するため、何れも表示特性を低下させる要因となる。この比較的大きい屈折率と光吸収は、透明電極と総称される金属酸化膜に共通に見られる特徴である。
【0092】
そこで、本実施例では、その第一の基板の上面図を図11に示したように、陰極配線43と陽極配線44を幹線と枝線からなる平面分布形状とし、幹線は画素間隙に重畳するように分布させる。枝線を画素中央に伸ばし、陰極配線43と陽極配線44の枝線が重畳した部分を発光領域41にする。
【0093】
画素間隙には、通常、ブラックマトリクスが配置されており、ブラックマトリクスと陰極配線43及び陽極配線44は、同層にないため視差が生じるが、少なくとも基板法線方向に近い角度では、両者は重なって見える。ブラックマトリクス以外の表示部分において、陰極配線43と陽極配線44が占める面積が減少して見えるため、陰極配線43と陽極配線44による光吸収が低減し、より明るい表示が得られる。
【0094】
この他にも、プロセス低減を最優先とする見方があり、そのためには陰極配線若しくは陽極配線の何れか一方をパターンニングせずに、全面に分布させると好都合である。陰極と発光層と陽極が積層していなければ発光しないため、この場合にも、画素中央の発光領域のみで発光する。第二の基板側については、実施例2で説明したグリッド偏光板を用いた構造にすれば、大幅に構造を簡略化できるので、これと組み合わせれば、更なるプロセス低減の効果が得られる。
【実施例7】
【0095】
実施例1では発光領域41を無機エレクトロルミネッセンス表示装置としたが、有機エレクトロミネッセンス表示装置も適用可能である。有機エレクトロミネッセンス表示装置は、陰極から電子を、陽極から正孔を、それぞれ注入し、発光層において、電子と正孔が再結合することにより発光する。発光効率を向上するためには、陰極の仕事関数は小さくなければならず、金属が用いられることが多い。
【0096】
発光領域41を発した光は、陽極側に向かう成分と、陰極側に向かい陰極で反射されて陽極側に向かう成分に大別されるが、両者は可干渉である。発光層厚は干渉条件を決定するため、発光強度の極角依存性の一因になる。通常の有機エレクトロミネッセンス表示装置では、陰極よりも陽極が使用者に近くなるよう配置されており、使用者は発光を直接観察する。そのため、基板法線方向が発光強度の極大になるように、発光層厚を調節している。
【0097】
そのため、発光領域を発した光は、一旦光反射層に向かい、そこで反射された光を使用者は観察する。法線方向から光反射層に向かった光は再び法線方向、若しくは、これに近い方向に反射される割合が多く、この場合、再び発光領域に向かうことになる。光路上の各層は完全に透明ではないため、この過程を繰り返しているうちに、発光領域を発した光は吸収されて減衰し、使用者に到達しない。
【0098】
また、法線方向から大きく傾いた方向に発した光は迷光になり、色純度低下、コントラスト比低下の原因になる。より具体的には、第一の基板の空気界面における全反射角よりも大きい角度で発した光が迷光となり易い。したがって、本発明では、以上2点を考慮して発光領域の発光の角度分布を決定している。
【実施例8】
【0099】
実施例1では、発光領域41は白色光を発し、カラーフィルタで着色してカラー表示を行った。発光層の発光は青色であり、この一部を黄色光変換層で黄色に変換し、青色と黄色で白色に変換していた。
【0100】
本発明では、発光領域が各画素の中央部に位置しており、かつ、発光領域は各画素に一対一に対応するように分布しているため、発光領域は、それぞれ別々の色に発光し、これを対応する画素に選択的に照射することも可能である。
【0101】
本実施例では、各発光領域の光変換層を、赤光変換層、緑光変換層、青光変換層の3種類とし、発光層の光を各画素の有するR(赤)のカラーフィルタ、G(緑)のカラーフィルタ、B(青)のカラーフィルタの透過波長域と概略一致する波長域の光に変換した。
【0102】
発光層の発光は、もともと青色であるため、Bの画素に対応する光変換層には青色のカラーフィルタを用いて、発光色の色純度を向上した。RとGの画素に対応する光変換層には、蛍光体を形成し、発光層の青色発光を長波長側にシフトした。青の波長域の光を吸収して、緑もしくは赤の波長域の光を発光する蛍光色素には、クマリン系や桂皮酸系化合物が挙げられる。これらの蛍光色素を含むレジストを成膜、パターンニングすることにより、3種類の光変換層を形成した。
【0103】
なお、光吸収は分子の基底状態と励起状態において、遷移則を満足する振動準位の組合せの間で生じる。これに対し、発光は内部転換により最低振動準位から主に生じる。そのため、一般に色素の吸収スペクトルよりも蛍光体の発光スペクトルの方がより半値幅が狭い傾向にある。そのため、光吸収よりも発光を利用した方が高色純度の表示を得やすい。したがって、各画素の有するカラーフィルタの透過波長域と概略一致する発光波長域とすれば、より高色純度でかつ明るい発光表示を実現できる。
【0104】
この他にも、発光層を画素毎に変えて、発光層の波長域を各画素の有するR、G、Bのカラーフィルタの透過波長域と概略一致するようにしても、同様にして、より高色純度でかつ明るい発光表示を実現できる。
【実施例9】
【0105】
本発明の光反射層13は、発光領域の発光を使用者側に反射するとともに、外光を使用者側に反射することが要求される。発光領域の発光と外光は入射角度分布が異なるため、異なる2つの機能が要求されることになる。このうち後者については、反射型液晶表示装置や半透過型液晶表示装置の反射表示部と同様の機能であり、二次曲面状の断面の円形凹凸をランダムに配置する等の設計指針が存在する。
【0106】
一方、画素中央に位置する発光領域は本発明の特徴である。本実施例ではこれを使用者側に高効率で反射する反射層の設計指針を求め、本発明に適用した。
【0107】
図12(a)に示したように、放物面状の反射面の焦点に理想的な点光源をおけば、反射面に達した光は、平行光に変換されることが知られている。点光源を発光領域とし、放物面状の反射面を光反射層とみなせば、図12(a)は、本発明にとって一つの理想系である。実際の発光領域は微小な面状であり、点光源とは異なる。また、放物面状の反射面は近接する光シャッタ層が平面状であるため適合性が悪く、完全な平行光も使用者の観察方向を固定するため好ましくない。
【0108】
図12(b)は図12(a)の放物面を分割して、かつ、平面状の分布になるように各放物面をシフトしたものである。回折の効果を無視できるならば、図12(a)と同様に点光源を発した光を、平行光に変換する作用を有する。しかしながら、図12(b)の放物面を厳密に再現することはもちろんのこと、多数の鋭角を有する構造についても実現は困難である。
【0109】
図12(b)の分割された放物面を二次曲面状の突起で置き換えたのが図12(c)であり、それを簡略化したものが図12(d)である。曲面を二次曲面状にしたことにより、発光領域が点光源に近い特性を示しても、その発光を、平行光ではなく、法線方向に発光分布の極大を有する拡散光に変換する。これにより、使用者の観察方向が法線方向に限定されなくなる。図12(d)を紙面の上方向から観察すれば、図13(a)に示したように、断面が二次曲面のリング状突起12’が同心円を成して分布し、その中心に発光領域41が位置するように見える。
【0110】
二次曲面状の突起の頂点では、光反射層は基板に平行な平面になる。この部分では、基板法線方向に対して、入射角と反射角が等しくなるように、発光領域41の光を反射する。発光領域41から離れた画素の部分では入射角が大きくなりすぎ、反射光は、第一の基板の空気界面に達したとき、全反射されて外部に出て行かない。このような光は、多重反射を繰り返して、色の異なる他の画素に到達する場合がある。また、使用者の方向に反射されれば混色が生じ、色純度低下の原因になる。さらに、本来黒表示であるはずの画素に到達し、そこで使用者の方向に反射されればコントラスト比低下の原因になる。
【0111】
このような迷光の発生を低減するためには、例えば、画素内の発光領域から離れた部分でリングの幅を狭くし、基板に平行若しくはこれに近い傾きの部分の割合を少なくすることが考えられる。その一方で、光反射層13には外光を拡散反射することも要求される。
【0112】
図13(a)のような同心円状のリング状突起12’は、規則性が強いため反射光の干渉を生じやすい。干渉が生じると、表示画面に虹色の縞模様が重畳して観察される。干渉条件は、波長と視角方向に強く依存するため、観察方向の変化に伴い縞模様がめまぐるしく変化し、視認性を低下させる。
【0113】
図13(a)において、干渉光を低減するために、規則的な同心円構造に乱雑さを導入する。具体的には、リング状構造を寸断し、更には、寸断した同心円の幅や半径を変える。あるいはまた、図13(b)に示したように、リング状構造は発光領域41近傍のみとし、発光領域41から離れた画素端部には、円形状凸部12”をランダムに分布させてもよい。
【0114】
以上のような凹凸形状を光反射層13に付与することにより、発光領域41の発光を使用者側に高効率で拡散反射するとともに、干渉効果を低減しながら外光を使用者側に拡散反射可能になるという効果が得られる。
【0115】
本発明に係る表示装置を、携帯電話等のモバイル機器のインターフェイスに用いれば、いかなる環境においても高画質の表示が得られる。今後、通信速度の向上に伴い大容量の画像データが扱われるようになる傾向にあるが、その場合にも、高画質のコンテンツを全ての環境下で忠実に再現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明に係る表示装置を構成する1画素の断面図
【図2】図2の上面図
【図3】図1における光路を示す断面図
【図4】表示装置の端子部の概略図
【図5】表示装置を構成する1画素にグリッド偏光板を用いた断面図
【図6】表示装置を構成する1画素に透明領域を設けた断面図
【図7】表示装置を構成する1画素にゲストホスト液晶を用いた断面図
【図8】表示装置を構成する1画素に電気泳動素子を用いた断面図
【図9】表示装置を構成する1画素に電気泳動素子を用いた他の断面図
【図10】表示装置を構成する1画素に電気泳動素子を用いたさらに他の断面図
【図11】表示装置の他の上面図
【図12】光反射層の構造を説明するための断面図
【図13】光反射層の凹凸の平面分布図
【符号の説明】
【0117】
10…液晶層、10’…液晶、10”…二色性色素、11…アクティブ素子、12…凹凸形成層、12’…リング状突起、12”…円形状凸部、13…光反射層、14…第二の偏光層、15…画素電極、16…第二の配向層、17…絶縁層、18…スルーホール、19…アルミニウム反射層、22…第一の偏光層、23…共通電極、24…第一の配向層、25…カラーフィルタ、29…ゲストホスト液晶層、31…第一の基板、32…第二の基板、33…発光用端子部、34…光シャッタ層用端子部、35…光透過領域を通じて入射した光、36…暗い環境下では発光領域の発光、37…導通部、41…発光領域、42…光透過領域、43…陽極配線、44…陰極配線、45…発光層、46…誘電体層、47y…黄色光変換層、71…白色粒子、72…黒色粒子、73…透明溶液、74…不透明溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板と第二の基板との間に挟持された複数の画素が光シャッタ層として機能する表示装置において、前記第一の基板側の各画素に対応する領域に、光を発光する発光領域と光を透過する光透過領域とを設け、前記第二の基板側に光反射層を設け、前記発光領域を各画素のほぼ中央に配置することを特徴とする表示装置
【請求項2】
前記光反射層は、発光領域からの発光を基板法線に対して斜めの方向に散乱反射することを特徴とする請求項1に記載の表示装置
【請求項3】
前記各画素は、カラーフィルタと透明領域とからなり、発光領域の発光を白色光として、発光領域を中心にカラーフィルタを配置することを特徴とする請求項1に記載の表示装置
【請求項4】
前記発光領域の発光層は、対応する画素の備えるカラーフィルタの透過波長域と概略一致する発光波長域を示すことを特徴とする請求項1に記載の表示装置
【請求項5】
前記発光領域の発光は、主に可視波長域の短波長域に分布し、発光領域の発光が対応する光反射層に向かう光路上に光変換層を備え、光変換層は、対応する画素の表示色に一致するように発光の波長を変換することを特徴とする請求項1に記載の表示装置
【請求項6】
前記発光領域に光吸収層を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置
【請求項7】
前記光変換層の分布域は、発光領域の分布域よりも広く、光変換層と発光領域の分布域は基板法線方向で重畳しており、重畳側とは反対側に光吸収層を被覆することを特徴とする請求項4に記載の表示装置
【請求項8】
前記光反射層は、発光領域の発光を主に基板法線方向に向けて反射し、外部からの入射光を拡散反射することを特徴とする請求項1に記載の表示装置
【請求項9】
前記光シャッタ層は、液晶層であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置
【請求項10】
前記光シャッタ層として、電気泳動を用いることを特徴とする請求項1に記載の表示装置
【請求項11】
前記光シャッタ層として、エレクトロクロミックを用いることを特徴とする請求項1に記載の表示装置
【請求項12】
前記液晶層として、二色性色素を含むゲストホスト型液晶層を用いることを特徴とする請求項9に記載の表示装置
【請求項13】
前記液晶層の上下に、光を直線偏光に変換する偏光手段を有することを特徴とする請求項9に記載の表示装置
【請求項14】
前記液晶層と偏光手段との間に、光学異方性を示す位相差制御層を有することを特徴とする請求項13に記載の表示装置
【請求項15】
前記液晶層は、電圧無印加時に基板法線方向に配向しており、液晶層は負の誘電率異方性を有し、液晶層の上下に配置された偏光手段の吸収軸は互いに直交し、位相差制御層の層内での2方向の屈折率をそれぞれnx、nyとし、層厚方向の屈折率をnzとすると、nz<nx、nz<nyの関係を満足することを特徴とする請求項14に記載の表示装置
【請求項16】
前記発光領域は、エレクトロルミネッセンスを原理とする発光領域であることを特徴とする請求項1の表示装置
【請求項17】
前記第一の基板は、発光領域に電圧を供給する陽極配線と陰極配線を有し、陽極配線と陰極配線は各画素の発光領域において交差することを特徴とする請求項16に記載の表示装置
【請求項18】
前記陽極配線と陰極配線は非画素部分に分布する幹線と、幹線から各画素の中心部に向かって伸びた枝線から構成され、陽極配線と陰極配線の枝線は各画素の発光領域において重畳することを特徴とする請求項16に記載の表示装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−171614(P2007−171614A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369940(P2005−369940)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】