表示装置
【課題】 表示ユニットを回転・移動させることなく、表示ユニット自体を擬態化させる技術を提供する。
【解決手段】 速度情報およびアンダーバー51を図5(a)の第一段階から図5(e)の第五段階まで、1秒程度の間で連続的に変化させる。この結果、運転者は第二表示器35自体が上方向へ回転した(見上げた)かのように錯覚する。このため、第二表示器35が単に固定的に速度情報を表示させているだけの場合よりも運転者の注意を引くことができる。
【解決手段】 速度情報およびアンダーバー51を図5(a)の第一段階から図5(e)の第五段階まで、1秒程度の間で連続的に変化させる。この結果、運転者は第二表示器35自体が上方向へ回転した(見上げた)かのように錯覚する。このため、第二表示器35が単に固定的に速度情報を表示させているだけの場合よりも運転者の注意を引くことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運行に伴う情報を運転者へ報知するための表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人は、人や動物の体の部分に似せた形状の物や、人間的・動物的な動きをする物に対して愛着を感じたり、強く意識が向いたりする傾向がある。したがって、車両の運行に伴う情報を、人や動物に擬態化させた物により報知することには大きな意味がある。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、表示装置に人間や動物の容姿をしたエージェントを表示させ、車両の運行状況にしたがってそのエージェントの行動を変化させ、運行状況に伴う情報を運転者に伝達する技術が記載されている。具体的には、例えば、エンジンの冷却水温度が低い場合には、エンジンの調子に合わせてエージェントが眠そうに行動する。また、急ブレーキが踏まれたことを条件としてエージェントがしりもちをついたり、驚き声を出したりする。したがって、運転者は、このようなエージェントの行動を介して、現在の運行状況を把握することができる。
【0004】
しかしながら、エージェントが行うことができる表現のバリエーションには限りがある上、どうしても抽象的な表現となりやすく、エージェントの表現によって運転者に伝達できる情報には限界がある。例えば、エージェントの表情によって、車速が何km/hであるかを具体的に運転者に伝達することは難しい。
【0005】
そこで本願発明者らは、車両に伴う情報は従来通り計器類によって表示させ、その計器類自体を擬態化させることを考えた。具体的には、本願発明者らが考えた、特定方向に回転可能な表示ユニット(下記の先行出願1を参照)を用い、状況に応じて回転させることにより、うなずき動作や見上げる動作を表現することを考えた。
【特許文献1】特開2000−314635号公報
【先行出願1】
【0006】
特願2005−172683号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような表示ユニットは、通常、ダッシュボード付近に配置されるため、太陽光による熱や車両内に存在する埃等の影響により、回転機構に動作不良等の故障が発生するおそれが高いと想像される。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、表示ユニットを回転・移動させることなく、表示ユニット自体を擬態化させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の表示装置は、表示面を有する表示手段と、車両の運行に伴う情報をオブジェクトを用いて表示手段に表示させる制御手段と、を備え、制御手段がオブジェクトを変化させて表示手段を擬態化させる演出を行うことを特徴とする。なお、ここで言う「オブジェクト」というのは、文字や図形等の目に見える表示物を意味する。
【0010】
本願発明者らは、表示手段自体を動かさなくても(表示手段本体を回転させたり、移動させたりしなくても)、そこに表示されるオブジェクトを変化させることにより、表示手段が動いているように見せられることに着眼した。その結果、請求項1に記載の表示装置が考え出された。この表示装置によれば、表示手段自体は動かないため(回転したり移動したりしないため)上述した故障の発生を排除しながら、表示手段が動いているように運転者に見せることができる。そしてその結果、表示手段に表示された車両の運行に伴う情報が、運転者にとって注意を引くものとなり、運転者により確実に情報を認識させることができる。
【0011】
また、上記課題を解決するためになされた請求項2に記載の表示装置は、表示面を有する表示手段と、車両の運行に伴う情報をオブジェクトを用いて表示手段に表示させる制御手段と、を備え、制御手段が、さらに別のオブジェクトを表示させると共にそのオブジェクトを変化させて、表示手段を擬態化させる演出を行うことを特徴とする。なお、ここで言う「オブジェクト」というのは、文字や図形等の目に見える表示物を意味する。
【0012】
このような表示装置であっても、上述した故障の発生を排除しながら、表示手段が動いているように運転者に見せることができる。そしてその結果、表示手段に表示された車両の運行に伴う情報が、運転者にとって注意を引くものとなり、より確実に運転者へ情報を認識させることができる。
【0013】
ところで、制御手段が行う演出というのは、請求項3に記載のような、表示手段を人の顔または目に擬態化させる演出であると特によい。人は、他人の顔の表情の変化や目の変化に特に注目しやすい。例えば、無意識に他人の視線方向を見てしまうほどである。したがって、このように、表示手段を人の顔または目に擬態化させる演出を制御手段が行うことにより、運転者に認識させるべき情報を、より確実に運転者に認識させることができる。
【0014】
なお、制御手段が行う演出における「オブジェクトの変化」というのは、例えば、請求項4に記載のように、オブジェクトを所定の方向へ移動させることであるとよい。人は動くものに対して、特に注意が向く傾向がある。したがって、オブジェクトを所定の方向へ移動させるようになっていれば、運転者に認識させるべき情報を、より確実に運転者へ認識させることができる。
【0015】
また、制御手段が行う演出における「オブジェクトの変化」としては、例えば、請求項5に記載のように、オブジェクトを拡大または縮小することであるとよい。このようにオブジェクトが拡大や縮小することにより、運転者自身に対して表示手段が向かってくるように感じさせたり、遠ざかっていくように感じさせることができるため、効果的に運転者の注意を引くことができる。
【0016】
なお、これらの演出を行うタイミングとしては、特に、車両の運行に伴う情報が変化した際に演出を行うようにするとよい(請求項6)。
このようになっていれば、車両の運行に伴う情報の変化を、より確実に運転者へ認識させることができる。
【0017】
ところで、表示装置において、表示手段は1つのみであってもよいが、複数存在していてもよい。つまり、物理的に分離した表示面が複数存在していてもよい。そして、その場合には、制御手段は一の表示手段における演出と他の表示手段における演出とを連携させるようになっているとよい(請求項7)。
【0018】
このようになっていれば、より運転者の注意を引くような演出を行うことが可能になり、結果的に、運転者に認識させるべき情報を、より確実に認識させることができる。
なお、このように演出を連携させた場合の具体的な演出方法としては、例えば、一の表示手段に表示させたオブジェクトと他の表示手段に表示させたオブジェクトとを同一方向に同時に移動させる演出が考えられる(請求項8)。
【0019】
このようになっていれば、一の表示手段においてのみオブジェクトを移動させる場合よりも、運転者の注意を引くことができる。
また、他の演出方法としては、例えば、オブジェクトを、一の表示手段と他の表示手段との間で移動させる演出が考えられる(請求項9)。
【0020】
このようになっていれば、通常時はそれほど重要度が高くない情報であるため、その情報のオブジェクトを運転者の視線方向から遠い位置に設置された表示手段に表示させておき、その情報の重要度が高くなった際に、運転者の視線方向に近い位置に設置された表示手段にその情報のオブジェクトを移動させることが可能となる。つまり、状況に応じて運転者への訴求度合いを効果的に変化させることができる。したがって、運転者に認識させるべき情報を、より確実に認識させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。尚、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0022】
[構成の説明]
図1は、本発明の表示装置の機能が組み込まれたナビゲーションシステム11の概略構成を示すブロック図である。ナビゲーションシステム11は、以下に説明する部品から構成され、車両に搭載されて用いられるものである。
【0023】
<アンテナ13>
アンテナ13は、GPS(Global Positioning System)衛星からの信号を受信するためのアンテナであり、受信した信号を後述するGPSモジュール15へ出力するように構成されている。
【0024】
<GPSモジュール15>
GPSモジュール15は、上述したアンテナ13から入力された信号を処理するための電子回路等から構成され、入力された信号を処理することにより、現在位置を算出するために必要なデータを抽出する。そして、その抽出したデータを後述するナビ制御回路25へ出力する。
【0025】
<Gセンサ17>
Gセンサ17は、車両の前後左右方向の加速度を検出するためのセンサ類から構成され、それらのセンサ類が出力した信号を後述するナビ制御回路25に出力するようになっている。
【0026】
<ジャイロスコープ19>
ジャイロスコープ19は、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するためのジャイロスコープであり、その検出した信号を後述するナビ制御回路25に出力するようになっている。
【0027】
<地図データ入力器21>
地図データ入力器21は、図示しない地図データ記憶媒体(例えばハードディスクやDVD−ROM等)に記憶された各種データを入力するための部品である。地図データ記憶媒体には、地図データ(ノードデータ、リンクデータ、コストデータ、背景データ、道路データ、名称データ、マークデータ、交差点データ、施設のデータ等)、案内用の音声データ、音声認識データ等が記憶されている。なお、地図データ記憶媒体からこれらのデータを入力する代わりに、通信ネットワークを介してこれらのデータを入力するようになっていてもよい。
【0028】
<操作スイッチ群23>
操作スイッチ群23は、センターコンソール部等に設けられたメカニカルなキースイッチから構成される。なお、操作スイッチ群23は、リモートコントローラとして構成されていてもよい。
【0029】
<ナビ制御回路25>
ナビ制御回路25は、CPU,ROM,RAM,SRAM,I/O及びこれらを接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM及びRAMに記憶されたプログラムに基づいてナビゲーションに関連する各種処理を実行する。その際にはGPSモジュール15,Gセンサ17,ジャイロスコープ19,地図データ入力器21,操作スイッチ群23,後述するメータ制御回路43,後述する共有メモリ45,後述する車両LAN47から信号を入力し、メータ制御回路43,共有メモリ45,車両LAN47へ信号を出力する。なお、ナビ制御回路25は、特許請求の範囲に記載の制御手段に相当する。
【0030】
<スピーカ27>
スピーカ27は、後述するオーディオI/F29からの信号に基づいて各種の案内音声を出力する。
【0031】
<オーディオI/F29>
オーディオI/F29は、信号切替器や信号増幅器等から構成され、後述するメータ制御回路43から音声信号を入力し、入力した信号を増幅してスピーカ27へ出力する。
【0032】
<第一表示器31>
第一表示器31は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等から構成され、後述するメータ制御回路43からの信号に基づいて様々な情報を表示可能となっている。なお、第一表示器31は、後述する第二表示器35と比べて大型であるため、第二表示器35よりも詳しい情報を表示することが可能になっている。なお、第一表示器31は、特許請求の範囲に記載の表示手段に相当する。
【0033】
<第一表示器LED33>
第一表示器LED33は、第一表示器31の周囲に配置された複数個のLEDから構成され、後述するメータ制御回路43からの信号に基づいて発光するようになっている。
【0034】
<第二表示器35>
第二表示器35は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等から構成され、後述するメータ制御回路43からの信号に基づいて様々な情報を表示可能となっている。なお、第二表示器35は、上述した第一表示器31と比べて小型であるため、第一表示器31よりも少ない情報しか表示することができない。なお、第二表示器35は、特許請求の範囲に記載の表示手段に相当する。
【0035】
<第二表示器LED37>
第二表示器LED37は、第二表示器35の周囲に配置された複数個のLEDから構成され、後述するメータ制御回路43からの信号に基づいて発光するようになっている。
【0036】
<速度メータ39>
速度メータ39は、車両の速度を表示するためのメータであり、後述するメータ制御回路43からの信号に基づいて動作するように構成されている。なお、メータ制御回路43は、後述する車両LAN47を介して図示しない速度センサから車両の速度情報を取得してその速度情報に対応した信号を速度メータ39へ出力するようになっている。
【0037】
<タコメータ41>
タコメータ41は、エンジンの回転数を表示するためのメータであり、後述するメータ制御回路43からの信号に基づいて動作するように構成されている。なお、メータ制御回路43は、後述する車両LAN47を介して図示しないエンジンECUからエンジンの回転数情報を取得してその回転数情報に対応した信号をタコメータ41へ出力するようになっている。なお、メータ制御回路43には、図示しない、燃料メータや、積算距離メータや、水温メータ等も接続されている。
【0038】
<メータ制御回路43>
メータ制御回路43は、CPU,ROM,RAM,SRAM,I/O及びこれらを接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM及びRAMに記憶されたプログラムに基づいてメータ類の制御に関連する各種処理を実行する。その際にはナビ制御回路25,後述する共有メモリ45,後述する車両LAN47から信号を入力し、オーディオI/F29,第一表示器31,第一表示器LED33,第二表示器35,第二表示器LED37,速度メータ39,タコメータ41,共有メモリ45,車両LAN47へ信号を出力する。なお、メータ制御回路43は、特許請求の範囲に記載の制御手段に相当する
<共有メモリ45>
共有メモリ45は、ナビ制御回路25およびメータ制御回路43の両方がアクセス可能なメモリであり、データの受け渡しに用いられる。
【0039】
<車両LAN47>
車両LAN47は、車両内に張り巡らされたLANであり、図示しない各種ECUやセンサ等が接続されており、車両LAN47を介してそれらが通信を行うことができるようになっている。
【0040】
次に、図2の説明図を用いて、第一表示器31および第二表示器35の設置状態等について説明する。
図2(a)は、車両内におけるハンドル49付近を表した模式図である。第一表示器31は、運転席前方のダッシュボード上に配置され、ハンドル49の輪の中を通して運転者が視認するようになっている。また、第二表示器35は、第一表示器31の上方のダッシュボード上に配置されている。したがって、第一表示器31、第二表示器35共に、運転者の運転時の周辺視野内に配置されているため、センターコンソール等に配置されている場合と比較して視認の際の視線移動が少ない。
【0041】
図2(b)は、第一表示器31の正面図である。第一表示器31は円形の表示面を有しており、その周囲にはリング状の枠部31aが設けられ、その枠部31aには第一表示器LED33が配置されている。なお、枠部31aには第一表示器LED33を覆うように半透明の拡散板が配置され、第一表示器LED33の光を拡散させるようになっている。
【0042】
また、第二表示器35についても、第一表示器31と同様に円形の表示面を有し、その周囲にはリング状の枠部が設けられ、その枠部には第二表示器LED37が配置されている。拡散板も同様に配置されている
[動作の説明]
次に、ナビ制御回路25およびメータ制御回路43にて実行される処理について説明するが、通常のナビゲーションシステムが実行する経路案内処理等については説明を省略する。以下においては、本発明に関連する演出処理についてのみ説明する。この演出処理は、様々な情報を第一表示器31や第二表示器35へ表示させる際に実行される処理である。なお、演出処理の説明においては、ナビ制御回路25とメータ制御回路43とを区別せず、両回路を合わせた処理として説明するが、実際には、いずれか一方の回路が、主体的に演出制御処理を実行してもよいし、分担して実行してもよい。
【0043】
ナビ制御回路25およびメータ制御回路43が、演出制御処理の実行を開始すると、図3のフローチャートに示すように、まず、ナビ制御回路25およびメータ制御回路43が実行している他の処理から報知情報(演出対象の情報)を受け取り、演出方法を決定する(S110)。これは、他の処理における報知ステップより、報知情報種別と緊急度と視線誘導有無とを受け取り、その受け取った情報に基づいて演出テーブルを参照し、該当する演出手順データを読み出すことを意味する。ここで、この演出テーブルについて図4のテーブルレイアウト図を用いて説明する。
【0044】
演出テーブルは、各レコードが、報知情報種別と、緊急度と、視線誘導方向と、演出手順データとから構成されている。そして、報知情報種別、緊急度および視線誘導方向が一意キーとなっており、報知情報に対応する演出手順データを特定できるようになっている。なお、報知情報種別は報知情報の種別(例えば、「速度超過」、「危険箇所」、「右折」等を意味する情報)であり、緊急度は報知情報の緊急度(例えば、「高い」、「普通」、「低い」等を意味する情報)である。また、視線誘導方向は、報知する際に誘導すべき方向を示すものであり、例えば、報知情報が危険箇所を示すものであってそれが車両の進行方向の左方に存在するのであるならば、視線誘導方向は「左」である。
【0045】
図3のフローチャートに説明を戻し、続いて、S110で読み出した演出手順データに基づいて、描画処理を開始する(S120)。そして、演出手順データに含まれる全ての演出を終えると、描画処理を終了し(S130)、本処理(演出処理)を終了する。
【0046】
次に、この演出処理による演出例を説明する。
(1)演出例1
図5の表示例を用いて演出例1を説明する。図5(a)〜図5(e)は、第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図5(a)は、第一段階の状態であり、速度情報(70km/h)がアンダーバー51と共に第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。図5(b)は、第二段階の状態であり、速度情報がアンダーバー51と共に第二表示器35の中心よりやや上方に表示されていることが確認できる。
【0047】
図5(c)は、第三段階の状態であり、速度情報がアンダーバー51と共に第二表示器35の上方に表示され、速度情報の一部は表示領域をはみ出していることが確認できる。図5(d)は、第四段階の状態であり、速度情報がアンダーバー51と共に第二表示器35の中心よりやや上方に表示されていることが確認できる。図5(e)は、第五段階の状態であり、速度情報がアンダーバー51と共に第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。演出例1では、このような図5(a)の第一段階から図5(e)の第五段階まで、1秒程度の間で連続的に変化するようになっている。
【0048】
この結果、運転者は第二表示器35自体が上方向へ回転した(見上げた)かのように錯覚する。このため、第二表示器35が単に固定的に速度情報を表示させているだけの場合よりも運転者の注意を引くことができる。
【0049】
(2)演出例2
次に、図6の表示例を用いて演出例2を説明する。図6(a)〜図6(e)は、第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図6(a)は、第一段階の状態であり、速度情報(70km/h)が第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。図6(b)は、第二段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の中心よりやや下方に表示されていると共に、第二表示器35の上方に三日月状のオブジェクト53が表示されていることが確認できる。
【0050】
図6(c)は、第三段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の下方に表示され、速度情報の一部は表示領域をはみ出していることが確認できる。また、三日月状のオブジェクト53が図6(b)の場合よりもさらに下方に張り出していることが確認できる。図6(d)は、第四段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の中心よりやや下方に表示されていると共に、第二表示器35の上方に三日月状のオブジェクト53が、図6(b)の場合と同程度に下方に張り出していることが確認できる。図6(e)は、第五段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。演出例2では、このような図6(a)の第一段階から図6(e)の第五段階まで、1秒程度の間で連続的に変化するようになっている。
【0051】
この結果、運転者は第二表示器35自体が下方向へ回転した(うつむいた)かのように錯覚する。このため、第二表示器35が単に固定的に速度情報を表示させているだけの場合よりも運転者の注意を引くことができる。
【0052】
(3)演出例3
次に、図7の表示例を用いて演出例3を説明する。図7(a)〜図7(e)は、第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図7(a)は、第一段階の状態であり、速度情報(70km/h)が第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。図7(b)は、第二段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の中心よりやや右方に表示されていると共に、第二表示器35の左方に三日月状のオブジェクト55が表示されていることが確認できる。
【0053】
図7(c)は、第三段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の右方に表示され、速度情報の一部は表示領域をはみ出していることが確認できる。また、三日月状のオブジェクト55が図7(b)の場合よりもさらに右方に張り出していることが確認できる。図7(d)は、第四段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の中心よりやや右方に表示されていると共に、第二表示器35の左方に三日月状のオブジェクト53が、図7(b)の場合と同程度に右方に張り出していることが確認できる。図7(e)は、第五段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。演出例3では、このような図7(a)の第一段階から図7(e)の第五段階まで、1秒程度の間で連続的に変化するようになっている。
【0054】
この結果、運転者は第二表示器35が右方向へ回転した(右方向へ振り向いた)かのように錯覚する。このため、第二表示器35が単に固定的に速度情報を表示させているだけの場合よりも運転者の注意を引くことができる。
【0055】
(4)演出例4
次に、図8の表示例を用いて演出例4を説明する。図8(a)〜図8(e)は、第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図8(a)は、第一段階の状態であり、横断歩道標識が第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。図8(b)は、第二段階の状態であり、横断歩道標識が第二表示器35の中心よりやや左方に表示されていると共に、第二表示器35の右方に三日月状のオブジェクト57が表示されていることが確認できる。
【0056】
図8(c)は、第三段階の状態であり、横断歩道標識が第二表示器35の左方に表示され、横断歩道標識の一部は表示領域をはみ出していることが確認できる。また、三日月状のオブジェクト57が図8(b)の場合よりもさらに左方に張り出していることが確認できる。図8(d)は、第四段階の状態であり、横断歩道標識が第二表示器35の中心よりやや左方に表示されていると共に、第二表示器35の右方に三日月状のオブジェクト57が、図8(b)の場合と同程度に左方に張り出していることが確認できる。図8(e)は、第五段階の状態であり、横断歩道標識が第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。演出例4では、このような図8(a)の第一段階から図8(e)の第五段階まで、1秒程度の間で連続的に変化するようになっている。
【0057】
この結果、運転者は第二表示器35が左方向へ回転した(左方向へ振り向いた)かのように錯覚する。このため、第二表示器35が単に固定的に横断歩道標識を表示させているだけの場合よりも運転者の注意を引くことができる。
【0058】
(5)演出例5
次に、図9の表示例を用いて演出例5を説明する。図9(a)〜図9(e)は、第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図9(a)は、第一段階の状態であり、図示していないが、車両に搭載された赤外線カメラによって撮影された車両前方画像が第二表示器35に表示されている。また、円形のオブジェクト59が上下左右方向の補助線と共に第二表示器35の中心に表示されている。図9(b)は、第二段階の状態であり、円形のオブジェクト59と上下左右方向の補助線とが、第二表示器35の中心よりもやや右下の位置に表示されていることが確認できる。なお、この第二段階の状態においても第二表示器35には赤外線カメラにより撮影された車両前方画像が表示されており、そのアングルは、第一段階の状態において表示される車両前方画像と同一のアングルである(もちろん車両の移動に伴う画像の変化はある)。
【0059】
図9(c)は、第三段階の状態であり、第二段階の状態のときよりも、円形のオブジェクト59と上下左右方向の補助線とが、さらに第二表示器35の右下の位置に表示されていることが確認できる。なお、この第三段階の状態においても第二表示器35には赤外線カメラにより撮影された車両前方画像が表示されており、そのアングルは、第一段階の状態において表示される車両前方画像と同一のアングルである(もちろん車両の移動に伴う画像の変化はある)。図9(d)は、第四段階の状態であり、円形のオブジェクト59と上下左右方向の補助線とが、第二表示器35の中心よりもやや右下の位置(図9(b)の場合と同一の位置)に表示されていることが確認できる。なお、この第四段階の状態においても第二表示器35には赤外線カメラにより撮影された車両前方画像が表示されており、そのアングルは、第一段階の状態において表示される車両前方画像と同一のアングルである(もちろん車両の移動に伴う画像の変化はある)。
【0060】
図9(e)は、第五段階の状態であり、円形のオブジェクト59が上下左右方向の補助線と共に第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。なお、この第五段階の状態においても第二表示器35には赤外線カメラにより撮影された車両前方画像が表示されており、そのアングルは、第一段階の状態において表示される車両前方画像と同一のアングルである(もちろん車両の移動に伴う画像の変化はある)。
【0061】
このように、車両前方画像のアングルは変化しなくても、円形のオブジェクト59の表示位置が変化するだけでも、運転者は第二表示器35が右下方向へ回転した(右下方向へ視線をやった)かのように錯覚する。このため、第二表示器35が単に車両前方画像を表示させているだけの場合よりも運転者の注意を引くことができる。また、円形のオブジェクト59の移動方向に意味(例えば、右下方向に危険物があり、注意すべきである等の意味)を持たせることにより、運転者に伝える情報を増やすこともできる。
【0062】
(6)演出例6
次に、図10の表示例を用いて演出例6を説明する。図10(a)〜図10(e)は、第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図10(a)は、第一段階の状態であり、一時停止標識が第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。図10(b)は、第二段階の状態であり、一時停止標識が、第一段階のときよりも大きいサイズで第二表示器35の中心に表示されている。また、第二表示器35の外周にリング状のオブジェクト61が表示されていることが確認できる。
【0063】
図10(c)は、第三段階の状態であり、一時停止標識が、第二段階のときよりもさらに大きいサイズで第二表示器35の中心に表示されている。また、第二表示器35の外周にリング状のオブジェクト61が、第二段階のときよりもさらに中心方向にせり出すようにして表示されていることが確認できる。図10(d)は、第四段階の状態であり、一時停止標識が、第二表示器35の中心に図10(b)の場合と同程度の大きさで表示されていることが確認できる。また、第二表示器35の外周にリング状のオブジェクト61が、図10(b)の場合と同程度に中止方向にせり出した状態で表示されていることが確認できる。図10(e)は、第五段階の状態であり、一時停止標識が、第二表示器35の中心に図10(a)の場合と同程度の大きさで表示されていることが確認できる。演出例6では、このような図10(a)の第一段階から図10(e)の第五段階まで、1秒程度の間で連続的に変化するようになっている。
【0064】
この結果、運転者は第二表示器35がせり出してきたかのように錯覚する。このため、第二表示器35が単に固定的に一時停止標識を表示させているだけの場合よりも運転者の注意を引くことができる。
【0065】
(7)演出例7
次に、図11の表示例を用いて演出例7を説明する。図11(a)〜図11(c)は、第一表示器31および第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図11(a)は、第一段階の状態であり、第一表示器31には速度情報(70km/h)が表示され、第二表示器35には経路案内情報(左折指示)が表示されている。図11(b)は、第二段階の状態であり、第一表示器31の表示面の上部には速度情報(80km/h)が表示され、第二表示器35の表示面の上部には経路案内情報(左折指示)の一部が表示されている。図11(c)は、第三段階の状態であり、第一表示器31には経路案内情報(左折指示)が表示され、第二表示器35には速度情報(90km/h)が表示されている。演出例7では、このような図11(a)の第一段階から図11(c)の第三段階までが、車両の加速状況に連動して、例えば5秒程度の間で連続的に変化するようになっている。
【0066】
このように、車速が70km/h(第一段階)のときには、第二表示器35の方に経路案内情報を表示され、車速が90km/h(第三段階)のときには速度情報が第二表示器35に表示されるようになっていれば、運転者は車速の上昇を認識しやすい。なぜなら、第二表示器35の方が、運転者の視線方向に近いからである。
【0067】
したがって、この演出例7のように車速の上昇に伴い第一表示器31と第二表示器35とで表示される情報が連続的に移動して表示されるようになっていれば、運転者の注意を引くことができるため、運転者に意識させたい情報(例えば速度が速すぎる等の情報)を従来よりも意識させることができる。
【0068】
(8)演出例8
次に、図12の表示例を用いて演出例8を説明する。図12(a)〜図12(e)は、第一表示器31および第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図12(a)は、第一段階の状態であり、第一表示器31には経路案内情報(300m先を左折する旨の指示)が表示され、第二表示器35には速度情報(90km/h)が表示されている。
【0069】
図12(b)は、第二段階の状態であり、第一表示器31には経路案内情報(200m先を左折する旨の指示)が表示され、第二表示器35には速度情報(70km/h)が表示されている。また、第一表示器31の下方に三日月状のオブジェクト63bが表示され、第二表示器35の下方に三日月状のオブジェクト65bが表示されている。
【0070】
図12(c)は、第三段階の状態であり、第一表示器31の上部には経路案内情報の一部(100m先を左折する旨の指示のうちの「100m」)が表示され、第一表示器31の株には速度情報(50km/h)が表示されている。また、第二表示器35には経路案内情報の一部(100m先を左折する旨の指示のうちの「左折」)が表示されている。なお、第一表示器31の中央部分には略楕円状のオブジェクト63cが表示され、第二表示器35の上部に三日月状のオブジェクト65cが表示されている。
【0071】
図12(d)は、第四段階の状態であり、第一表示器31には速度情報(30km/h)が表示され、第二表示器35には経路案内情報(30m先を左折する旨の指示)が表示されている。なお、第二表示器35に表示されている経路案内情報のうち、「30m」という情報だけは第二表示器35の下方に表示されている。また、第一表示器31の上部に三日月状のオブジェクト63dが表示されている。
【0072】
図12(e)は、第五段階の状態であり、第一表示器31には速度情報(20km/h)が表示され、第二表示器35には経路案内情報(10m先を左折する旨の指示)が表示されている。
【0073】
演出例8では、このような図12(a)の第一段階から図12(d)の第五段階までが、車両の減速状況に連動して、例えば5秒程度の間で連続的に変化するようになっている。
【0074】
このように、第一表示器31と第二表示器35とがそれぞれ上方に回転しているように運転者へ見せることにより、それぞれに表示されていた表示オブジェクト(速度情報や経路案内情報)が第一表示器31と第二表示器35とで連続的に入れ替わったように運転者差へ見せることができる。したがって、運転者の注意を十分に引くことができる。
【0075】
[実施形態の効果]
このように、第一表示器31や第二表示器35自体を動かさなくても(第一表示器31や第二表示器35本体を回転させたり、移動させたりしなくても)、そこに表示されるオブジェクトを変化(移動、拡大、縮小、追加、消去等)させることにより、第一表示器31や第二表示器35が動いているように見せられることができる。その結果、第一表示器31や第二表示器35の故障の発生をできるだけ抑えながら第一表示器31や第二表示器35に表示された情報(速度情報や経路案内情報等)が、運転者にとって注意を引くものとなり、運転者により確実にその情報を認識させることができる。
【0076】
また、第一表示器31や第二表示器35は円形であるため、これらを運転者が人の顔や目と同視しやすい。このため、第一表示器31や第二表示器35が回転したように見せることによって、第一表示器31や第二表示器35が上方向へ視線をやったり、下方向へうつむいたりしたように運転者に錯覚させることができる。つまり、より運転者の注意を引くことできる。
【0077】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、第一表示器31と第二表示器35とが縦方向に並ぶように配置されていたが、第一表示器31と第二表示器35とを同じ大きさにして横に並べるようにしてもよい。このようにすれば、第一表示器31と第二表示器35とが「両目」のように錯覚されやすくなり、報知効果がより高まる。
【0078】
(2)他の演出例として、運転者の操作正否を判定し、その判定結果に応じた演出を行うようになっていてもよい。例えば、正しい地点で運転者が右折操作を行った場合に、二度、三度、第二表示器35が下方向へ回転往復運動したかのように見せる表示を行い、第二表示器35がうなずいたかのように運転者に思わせる演出である。また逆に、運転者が間違った運転操作を行った場合に、第二表示器35が左右方向に往復運動したかのように見せる表示を行うことも考えられる。
【0079】
このようになっていれば、運転者は積極的に正しい運転を行うことを心がけるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】ナビゲーションシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】第一表示器および第二表示器を説明するための説明図である。
【図3】演出処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】演出テーブルのテーブルレイアウト図である。
【図5】演出例1を説明するための表示例である。
【図6】演出例2を説明するための表示例である。
【図7】演出例3を説明するための表示例である。
【図8】演出例4を説明するための表示例である。
【図9】演出例5を説明するための表示例である。
【図10】演出例6を説明するための表示例である。
【図11】演出例7を説明するための表示例である。
【図12】演出例8を説明するための表示例である。
【符号の説明】
【0081】
11…ナビゲーションシステム、13…アンテナ、15…GPSモジュール、17…Gセンサ、19…ジャイロスコープ、21…地図データ入力器、23…操作スイッチ群、25…ナビ制御回路、27…スピーカ、29…オーディオI/F、31…第一表示器、33…第一表示器LED、35…第二表示器、37…第二表示器LED、39…速度メータ、41…タコメータ、43…メータ制御回路、45…共有メモリ、47…車両LAN。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運行に伴う情報を運転者へ報知するための表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人は、人や動物の体の部分に似せた形状の物や、人間的・動物的な動きをする物に対して愛着を感じたり、強く意識が向いたりする傾向がある。したがって、車両の運行に伴う情報を、人や動物に擬態化させた物により報知することには大きな意味がある。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、表示装置に人間や動物の容姿をしたエージェントを表示させ、車両の運行状況にしたがってそのエージェントの行動を変化させ、運行状況に伴う情報を運転者に伝達する技術が記載されている。具体的には、例えば、エンジンの冷却水温度が低い場合には、エンジンの調子に合わせてエージェントが眠そうに行動する。また、急ブレーキが踏まれたことを条件としてエージェントがしりもちをついたり、驚き声を出したりする。したがって、運転者は、このようなエージェントの行動を介して、現在の運行状況を把握することができる。
【0004】
しかしながら、エージェントが行うことができる表現のバリエーションには限りがある上、どうしても抽象的な表現となりやすく、エージェントの表現によって運転者に伝達できる情報には限界がある。例えば、エージェントの表情によって、車速が何km/hであるかを具体的に運転者に伝達することは難しい。
【0005】
そこで本願発明者らは、車両に伴う情報は従来通り計器類によって表示させ、その計器類自体を擬態化させることを考えた。具体的には、本願発明者らが考えた、特定方向に回転可能な表示ユニット(下記の先行出願1を参照)を用い、状況に応じて回転させることにより、うなずき動作や見上げる動作を表現することを考えた。
【特許文献1】特開2000−314635号公報
【先行出願1】
【0006】
特願2005−172683号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような表示ユニットは、通常、ダッシュボード付近に配置されるため、太陽光による熱や車両内に存在する埃等の影響により、回転機構に動作不良等の故障が発生するおそれが高いと想像される。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、表示ユニットを回転・移動させることなく、表示ユニット自体を擬態化させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の表示装置は、表示面を有する表示手段と、車両の運行に伴う情報をオブジェクトを用いて表示手段に表示させる制御手段と、を備え、制御手段がオブジェクトを変化させて表示手段を擬態化させる演出を行うことを特徴とする。なお、ここで言う「オブジェクト」というのは、文字や図形等の目に見える表示物を意味する。
【0010】
本願発明者らは、表示手段自体を動かさなくても(表示手段本体を回転させたり、移動させたりしなくても)、そこに表示されるオブジェクトを変化させることにより、表示手段が動いているように見せられることに着眼した。その結果、請求項1に記載の表示装置が考え出された。この表示装置によれば、表示手段自体は動かないため(回転したり移動したりしないため)上述した故障の発生を排除しながら、表示手段が動いているように運転者に見せることができる。そしてその結果、表示手段に表示された車両の運行に伴う情報が、運転者にとって注意を引くものとなり、運転者により確実に情報を認識させることができる。
【0011】
また、上記課題を解決するためになされた請求項2に記載の表示装置は、表示面を有する表示手段と、車両の運行に伴う情報をオブジェクトを用いて表示手段に表示させる制御手段と、を備え、制御手段が、さらに別のオブジェクトを表示させると共にそのオブジェクトを変化させて、表示手段を擬態化させる演出を行うことを特徴とする。なお、ここで言う「オブジェクト」というのは、文字や図形等の目に見える表示物を意味する。
【0012】
このような表示装置であっても、上述した故障の発生を排除しながら、表示手段が動いているように運転者に見せることができる。そしてその結果、表示手段に表示された車両の運行に伴う情報が、運転者にとって注意を引くものとなり、より確実に運転者へ情報を認識させることができる。
【0013】
ところで、制御手段が行う演出というのは、請求項3に記載のような、表示手段を人の顔または目に擬態化させる演出であると特によい。人は、他人の顔の表情の変化や目の変化に特に注目しやすい。例えば、無意識に他人の視線方向を見てしまうほどである。したがって、このように、表示手段を人の顔または目に擬態化させる演出を制御手段が行うことにより、運転者に認識させるべき情報を、より確実に運転者に認識させることができる。
【0014】
なお、制御手段が行う演出における「オブジェクトの変化」というのは、例えば、請求項4に記載のように、オブジェクトを所定の方向へ移動させることであるとよい。人は動くものに対して、特に注意が向く傾向がある。したがって、オブジェクトを所定の方向へ移動させるようになっていれば、運転者に認識させるべき情報を、より確実に運転者へ認識させることができる。
【0015】
また、制御手段が行う演出における「オブジェクトの変化」としては、例えば、請求項5に記載のように、オブジェクトを拡大または縮小することであるとよい。このようにオブジェクトが拡大や縮小することにより、運転者自身に対して表示手段が向かってくるように感じさせたり、遠ざかっていくように感じさせることができるため、効果的に運転者の注意を引くことができる。
【0016】
なお、これらの演出を行うタイミングとしては、特に、車両の運行に伴う情報が変化した際に演出を行うようにするとよい(請求項6)。
このようになっていれば、車両の運行に伴う情報の変化を、より確実に運転者へ認識させることができる。
【0017】
ところで、表示装置において、表示手段は1つのみであってもよいが、複数存在していてもよい。つまり、物理的に分離した表示面が複数存在していてもよい。そして、その場合には、制御手段は一の表示手段における演出と他の表示手段における演出とを連携させるようになっているとよい(請求項7)。
【0018】
このようになっていれば、より運転者の注意を引くような演出を行うことが可能になり、結果的に、運転者に認識させるべき情報を、より確実に認識させることができる。
なお、このように演出を連携させた場合の具体的な演出方法としては、例えば、一の表示手段に表示させたオブジェクトと他の表示手段に表示させたオブジェクトとを同一方向に同時に移動させる演出が考えられる(請求項8)。
【0019】
このようになっていれば、一の表示手段においてのみオブジェクトを移動させる場合よりも、運転者の注意を引くことができる。
また、他の演出方法としては、例えば、オブジェクトを、一の表示手段と他の表示手段との間で移動させる演出が考えられる(請求項9)。
【0020】
このようになっていれば、通常時はそれほど重要度が高くない情報であるため、その情報のオブジェクトを運転者の視線方向から遠い位置に設置された表示手段に表示させておき、その情報の重要度が高くなった際に、運転者の視線方向に近い位置に設置された表示手段にその情報のオブジェクトを移動させることが可能となる。つまり、状況に応じて運転者への訴求度合いを効果的に変化させることができる。したがって、運転者に認識させるべき情報を、より確実に認識させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。尚、本発明の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0022】
[構成の説明]
図1は、本発明の表示装置の機能が組み込まれたナビゲーションシステム11の概略構成を示すブロック図である。ナビゲーションシステム11は、以下に説明する部品から構成され、車両に搭載されて用いられるものである。
【0023】
<アンテナ13>
アンテナ13は、GPS(Global Positioning System)衛星からの信号を受信するためのアンテナであり、受信した信号を後述するGPSモジュール15へ出力するように構成されている。
【0024】
<GPSモジュール15>
GPSモジュール15は、上述したアンテナ13から入力された信号を処理するための電子回路等から構成され、入力された信号を処理することにより、現在位置を算出するために必要なデータを抽出する。そして、その抽出したデータを後述するナビ制御回路25へ出力する。
【0025】
<Gセンサ17>
Gセンサ17は、車両の前後左右方向の加速度を検出するためのセンサ類から構成され、それらのセンサ類が出力した信号を後述するナビ制御回路25に出力するようになっている。
【0026】
<ジャイロスコープ19>
ジャイロスコープ19は、車両に加えられる回転運動の大きさを検出するためのジャイロスコープであり、その検出した信号を後述するナビ制御回路25に出力するようになっている。
【0027】
<地図データ入力器21>
地図データ入力器21は、図示しない地図データ記憶媒体(例えばハードディスクやDVD−ROM等)に記憶された各種データを入力するための部品である。地図データ記憶媒体には、地図データ(ノードデータ、リンクデータ、コストデータ、背景データ、道路データ、名称データ、マークデータ、交差点データ、施設のデータ等)、案内用の音声データ、音声認識データ等が記憶されている。なお、地図データ記憶媒体からこれらのデータを入力する代わりに、通信ネットワークを介してこれらのデータを入力するようになっていてもよい。
【0028】
<操作スイッチ群23>
操作スイッチ群23は、センターコンソール部等に設けられたメカニカルなキースイッチから構成される。なお、操作スイッチ群23は、リモートコントローラとして構成されていてもよい。
【0029】
<ナビ制御回路25>
ナビ制御回路25は、CPU,ROM,RAM,SRAM,I/O及びこれらを接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM及びRAMに記憶されたプログラムに基づいてナビゲーションに関連する各種処理を実行する。その際にはGPSモジュール15,Gセンサ17,ジャイロスコープ19,地図データ入力器21,操作スイッチ群23,後述するメータ制御回路43,後述する共有メモリ45,後述する車両LAN47から信号を入力し、メータ制御回路43,共有メモリ45,車両LAN47へ信号を出力する。なお、ナビ制御回路25は、特許請求の範囲に記載の制御手段に相当する。
【0030】
<スピーカ27>
スピーカ27は、後述するオーディオI/F29からの信号に基づいて各種の案内音声を出力する。
【0031】
<オーディオI/F29>
オーディオI/F29は、信号切替器や信号増幅器等から構成され、後述するメータ制御回路43から音声信号を入力し、入力した信号を増幅してスピーカ27へ出力する。
【0032】
<第一表示器31>
第一表示器31は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等から構成され、後述するメータ制御回路43からの信号に基づいて様々な情報を表示可能となっている。なお、第一表示器31は、後述する第二表示器35と比べて大型であるため、第二表示器35よりも詳しい情報を表示することが可能になっている。なお、第一表示器31は、特許請求の範囲に記載の表示手段に相当する。
【0033】
<第一表示器LED33>
第一表示器LED33は、第一表示器31の周囲に配置された複数個のLEDから構成され、後述するメータ制御回路43からの信号に基づいて発光するようになっている。
【0034】
<第二表示器35>
第二表示器35は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等から構成され、後述するメータ制御回路43からの信号に基づいて様々な情報を表示可能となっている。なお、第二表示器35は、上述した第一表示器31と比べて小型であるため、第一表示器31よりも少ない情報しか表示することができない。なお、第二表示器35は、特許請求の範囲に記載の表示手段に相当する。
【0035】
<第二表示器LED37>
第二表示器LED37は、第二表示器35の周囲に配置された複数個のLEDから構成され、後述するメータ制御回路43からの信号に基づいて発光するようになっている。
【0036】
<速度メータ39>
速度メータ39は、車両の速度を表示するためのメータであり、後述するメータ制御回路43からの信号に基づいて動作するように構成されている。なお、メータ制御回路43は、後述する車両LAN47を介して図示しない速度センサから車両の速度情報を取得してその速度情報に対応した信号を速度メータ39へ出力するようになっている。
【0037】
<タコメータ41>
タコメータ41は、エンジンの回転数を表示するためのメータであり、後述するメータ制御回路43からの信号に基づいて動作するように構成されている。なお、メータ制御回路43は、後述する車両LAN47を介して図示しないエンジンECUからエンジンの回転数情報を取得してその回転数情報に対応した信号をタコメータ41へ出力するようになっている。なお、メータ制御回路43には、図示しない、燃料メータや、積算距離メータや、水温メータ等も接続されている。
【0038】
<メータ制御回路43>
メータ制御回路43は、CPU,ROM,RAM,SRAM,I/O及びこれらを接続するバスラインなどからなる周知のマイクロコンピュータを中心に構成されており、ROM及びRAMに記憶されたプログラムに基づいてメータ類の制御に関連する各種処理を実行する。その際にはナビ制御回路25,後述する共有メモリ45,後述する車両LAN47から信号を入力し、オーディオI/F29,第一表示器31,第一表示器LED33,第二表示器35,第二表示器LED37,速度メータ39,タコメータ41,共有メモリ45,車両LAN47へ信号を出力する。なお、メータ制御回路43は、特許請求の範囲に記載の制御手段に相当する
<共有メモリ45>
共有メモリ45は、ナビ制御回路25およびメータ制御回路43の両方がアクセス可能なメモリであり、データの受け渡しに用いられる。
【0039】
<車両LAN47>
車両LAN47は、車両内に張り巡らされたLANであり、図示しない各種ECUやセンサ等が接続されており、車両LAN47を介してそれらが通信を行うことができるようになっている。
【0040】
次に、図2の説明図を用いて、第一表示器31および第二表示器35の設置状態等について説明する。
図2(a)は、車両内におけるハンドル49付近を表した模式図である。第一表示器31は、運転席前方のダッシュボード上に配置され、ハンドル49の輪の中を通して運転者が視認するようになっている。また、第二表示器35は、第一表示器31の上方のダッシュボード上に配置されている。したがって、第一表示器31、第二表示器35共に、運転者の運転時の周辺視野内に配置されているため、センターコンソール等に配置されている場合と比較して視認の際の視線移動が少ない。
【0041】
図2(b)は、第一表示器31の正面図である。第一表示器31は円形の表示面を有しており、その周囲にはリング状の枠部31aが設けられ、その枠部31aには第一表示器LED33が配置されている。なお、枠部31aには第一表示器LED33を覆うように半透明の拡散板が配置され、第一表示器LED33の光を拡散させるようになっている。
【0042】
また、第二表示器35についても、第一表示器31と同様に円形の表示面を有し、その周囲にはリング状の枠部が設けられ、その枠部には第二表示器LED37が配置されている。拡散板も同様に配置されている
[動作の説明]
次に、ナビ制御回路25およびメータ制御回路43にて実行される処理について説明するが、通常のナビゲーションシステムが実行する経路案内処理等については説明を省略する。以下においては、本発明に関連する演出処理についてのみ説明する。この演出処理は、様々な情報を第一表示器31や第二表示器35へ表示させる際に実行される処理である。なお、演出処理の説明においては、ナビ制御回路25とメータ制御回路43とを区別せず、両回路を合わせた処理として説明するが、実際には、いずれか一方の回路が、主体的に演出制御処理を実行してもよいし、分担して実行してもよい。
【0043】
ナビ制御回路25およびメータ制御回路43が、演出制御処理の実行を開始すると、図3のフローチャートに示すように、まず、ナビ制御回路25およびメータ制御回路43が実行している他の処理から報知情報(演出対象の情報)を受け取り、演出方法を決定する(S110)。これは、他の処理における報知ステップより、報知情報種別と緊急度と視線誘導有無とを受け取り、その受け取った情報に基づいて演出テーブルを参照し、該当する演出手順データを読み出すことを意味する。ここで、この演出テーブルについて図4のテーブルレイアウト図を用いて説明する。
【0044】
演出テーブルは、各レコードが、報知情報種別と、緊急度と、視線誘導方向と、演出手順データとから構成されている。そして、報知情報種別、緊急度および視線誘導方向が一意キーとなっており、報知情報に対応する演出手順データを特定できるようになっている。なお、報知情報種別は報知情報の種別(例えば、「速度超過」、「危険箇所」、「右折」等を意味する情報)であり、緊急度は報知情報の緊急度(例えば、「高い」、「普通」、「低い」等を意味する情報)である。また、視線誘導方向は、報知する際に誘導すべき方向を示すものであり、例えば、報知情報が危険箇所を示すものであってそれが車両の進行方向の左方に存在するのであるならば、視線誘導方向は「左」である。
【0045】
図3のフローチャートに説明を戻し、続いて、S110で読み出した演出手順データに基づいて、描画処理を開始する(S120)。そして、演出手順データに含まれる全ての演出を終えると、描画処理を終了し(S130)、本処理(演出処理)を終了する。
【0046】
次に、この演出処理による演出例を説明する。
(1)演出例1
図5の表示例を用いて演出例1を説明する。図5(a)〜図5(e)は、第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図5(a)は、第一段階の状態であり、速度情報(70km/h)がアンダーバー51と共に第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。図5(b)は、第二段階の状態であり、速度情報がアンダーバー51と共に第二表示器35の中心よりやや上方に表示されていることが確認できる。
【0047】
図5(c)は、第三段階の状態であり、速度情報がアンダーバー51と共に第二表示器35の上方に表示され、速度情報の一部は表示領域をはみ出していることが確認できる。図5(d)は、第四段階の状態であり、速度情報がアンダーバー51と共に第二表示器35の中心よりやや上方に表示されていることが確認できる。図5(e)は、第五段階の状態であり、速度情報がアンダーバー51と共に第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。演出例1では、このような図5(a)の第一段階から図5(e)の第五段階まで、1秒程度の間で連続的に変化するようになっている。
【0048】
この結果、運転者は第二表示器35自体が上方向へ回転した(見上げた)かのように錯覚する。このため、第二表示器35が単に固定的に速度情報を表示させているだけの場合よりも運転者の注意を引くことができる。
【0049】
(2)演出例2
次に、図6の表示例を用いて演出例2を説明する。図6(a)〜図6(e)は、第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図6(a)は、第一段階の状態であり、速度情報(70km/h)が第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。図6(b)は、第二段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の中心よりやや下方に表示されていると共に、第二表示器35の上方に三日月状のオブジェクト53が表示されていることが確認できる。
【0050】
図6(c)は、第三段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の下方に表示され、速度情報の一部は表示領域をはみ出していることが確認できる。また、三日月状のオブジェクト53が図6(b)の場合よりもさらに下方に張り出していることが確認できる。図6(d)は、第四段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の中心よりやや下方に表示されていると共に、第二表示器35の上方に三日月状のオブジェクト53が、図6(b)の場合と同程度に下方に張り出していることが確認できる。図6(e)は、第五段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。演出例2では、このような図6(a)の第一段階から図6(e)の第五段階まで、1秒程度の間で連続的に変化するようになっている。
【0051】
この結果、運転者は第二表示器35自体が下方向へ回転した(うつむいた)かのように錯覚する。このため、第二表示器35が単に固定的に速度情報を表示させているだけの場合よりも運転者の注意を引くことができる。
【0052】
(3)演出例3
次に、図7の表示例を用いて演出例3を説明する。図7(a)〜図7(e)は、第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図7(a)は、第一段階の状態であり、速度情報(70km/h)が第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。図7(b)は、第二段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の中心よりやや右方に表示されていると共に、第二表示器35の左方に三日月状のオブジェクト55が表示されていることが確認できる。
【0053】
図7(c)は、第三段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の右方に表示され、速度情報の一部は表示領域をはみ出していることが確認できる。また、三日月状のオブジェクト55が図7(b)の場合よりもさらに右方に張り出していることが確認できる。図7(d)は、第四段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の中心よりやや右方に表示されていると共に、第二表示器35の左方に三日月状のオブジェクト53が、図7(b)の場合と同程度に右方に張り出していることが確認できる。図7(e)は、第五段階の状態であり、速度情報が第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。演出例3では、このような図7(a)の第一段階から図7(e)の第五段階まで、1秒程度の間で連続的に変化するようになっている。
【0054】
この結果、運転者は第二表示器35が右方向へ回転した(右方向へ振り向いた)かのように錯覚する。このため、第二表示器35が単に固定的に速度情報を表示させているだけの場合よりも運転者の注意を引くことができる。
【0055】
(4)演出例4
次に、図8の表示例を用いて演出例4を説明する。図8(a)〜図8(e)は、第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図8(a)は、第一段階の状態であり、横断歩道標識が第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。図8(b)は、第二段階の状態であり、横断歩道標識が第二表示器35の中心よりやや左方に表示されていると共に、第二表示器35の右方に三日月状のオブジェクト57が表示されていることが確認できる。
【0056】
図8(c)は、第三段階の状態であり、横断歩道標識が第二表示器35の左方に表示され、横断歩道標識の一部は表示領域をはみ出していることが確認できる。また、三日月状のオブジェクト57が図8(b)の場合よりもさらに左方に張り出していることが確認できる。図8(d)は、第四段階の状態であり、横断歩道標識が第二表示器35の中心よりやや左方に表示されていると共に、第二表示器35の右方に三日月状のオブジェクト57が、図8(b)の場合と同程度に左方に張り出していることが確認できる。図8(e)は、第五段階の状態であり、横断歩道標識が第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。演出例4では、このような図8(a)の第一段階から図8(e)の第五段階まで、1秒程度の間で連続的に変化するようになっている。
【0057】
この結果、運転者は第二表示器35が左方向へ回転した(左方向へ振り向いた)かのように錯覚する。このため、第二表示器35が単に固定的に横断歩道標識を表示させているだけの場合よりも運転者の注意を引くことができる。
【0058】
(5)演出例5
次に、図9の表示例を用いて演出例5を説明する。図9(a)〜図9(e)は、第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図9(a)は、第一段階の状態であり、図示していないが、車両に搭載された赤外線カメラによって撮影された車両前方画像が第二表示器35に表示されている。また、円形のオブジェクト59が上下左右方向の補助線と共に第二表示器35の中心に表示されている。図9(b)は、第二段階の状態であり、円形のオブジェクト59と上下左右方向の補助線とが、第二表示器35の中心よりもやや右下の位置に表示されていることが確認できる。なお、この第二段階の状態においても第二表示器35には赤外線カメラにより撮影された車両前方画像が表示されており、そのアングルは、第一段階の状態において表示される車両前方画像と同一のアングルである(もちろん車両の移動に伴う画像の変化はある)。
【0059】
図9(c)は、第三段階の状態であり、第二段階の状態のときよりも、円形のオブジェクト59と上下左右方向の補助線とが、さらに第二表示器35の右下の位置に表示されていることが確認できる。なお、この第三段階の状態においても第二表示器35には赤外線カメラにより撮影された車両前方画像が表示されており、そのアングルは、第一段階の状態において表示される車両前方画像と同一のアングルである(もちろん車両の移動に伴う画像の変化はある)。図9(d)は、第四段階の状態であり、円形のオブジェクト59と上下左右方向の補助線とが、第二表示器35の中心よりもやや右下の位置(図9(b)の場合と同一の位置)に表示されていることが確認できる。なお、この第四段階の状態においても第二表示器35には赤外線カメラにより撮影された車両前方画像が表示されており、そのアングルは、第一段階の状態において表示される車両前方画像と同一のアングルである(もちろん車両の移動に伴う画像の変化はある)。
【0060】
図9(e)は、第五段階の状態であり、円形のオブジェクト59が上下左右方向の補助線と共に第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。なお、この第五段階の状態においても第二表示器35には赤外線カメラにより撮影された車両前方画像が表示されており、そのアングルは、第一段階の状態において表示される車両前方画像と同一のアングルである(もちろん車両の移動に伴う画像の変化はある)。
【0061】
このように、車両前方画像のアングルは変化しなくても、円形のオブジェクト59の表示位置が変化するだけでも、運転者は第二表示器35が右下方向へ回転した(右下方向へ視線をやった)かのように錯覚する。このため、第二表示器35が単に車両前方画像を表示させているだけの場合よりも運転者の注意を引くことができる。また、円形のオブジェクト59の移動方向に意味(例えば、右下方向に危険物があり、注意すべきである等の意味)を持たせることにより、運転者に伝える情報を増やすこともできる。
【0062】
(6)演出例6
次に、図10の表示例を用いて演出例6を説明する。図10(a)〜図10(e)は、第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図10(a)は、第一段階の状態であり、一時停止標識が第二表示器35の中心に表示されていることが確認できる。図10(b)は、第二段階の状態であり、一時停止標識が、第一段階のときよりも大きいサイズで第二表示器35の中心に表示されている。また、第二表示器35の外周にリング状のオブジェクト61が表示されていることが確認できる。
【0063】
図10(c)は、第三段階の状態であり、一時停止標識が、第二段階のときよりもさらに大きいサイズで第二表示器35の中心に表示されている。また、第二表示器35の外周にリング状のオブジェクト61が、第二段階のときよりもさらに中心方向にせり出すようにして表示されていることが確認できる。図10(d)は、第四段階の状態であり、一時停止標識が、第二表示器35の中心に図10(b)の場合と同程度の大きさで表示されていることが確認できる。また、第二表示器35の外周にリング状のオブジェクト61が、図10(b)の場合と同程度に中止方向にせり出した状態で表示されていることが確認できる。図10(e)は、第五段階の状態であり、一時停止標識が、第二表示器35の中心に図10(a)の場合と同程度の大きさで表示されていることが確認できる。演出例6では、このような図10(a)の第一段階から図10(e)の第五段階まで、1秒程度の間で連続的に変化するようになっている。
【0064】
この結果、運転者は第二表示器35がせり出してきたかのように錯覚する。このため、第二表示器35が単に固定的に一時停止標識を表示させているだけの場合よりも運転者の注意を引くことができる。
【0065】
(7)演出例7
次に、図11の表示例を用いて演出例7を説明する。図11(a)〜図11(c)は、第一表示器31および第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図11(a)は、第一段階の状態であり、第一表示器31には速度情報(70km/h)が表示され、第二表示器35には経路案内情報(左折指示)が表示されている。図11(b)は、第二段階の状態であり、第一表示器31の表示面の上部には速度情報(80km/h)が表示され、第二表示器35の表示面の上部には経路案内情報(左折指示)の一部が表示されている。図11(c)は、第三段階の状態であり、第一表示器31には経路案内情報(左折指示)が表示され、第二表示器35には速度情報(90km/h)が表示されている。演出例7では、このような図11(a)の第一段階から図11(c)の第三段階までが、車両の加速状況に連動して、例えば5秒程度の間で連続的に変化するようになっている。
【0066】
このように、車速が70km/h(第一段階)のときには、第二表示器35の方に経路案内情報を表示され、車速が90km/h(第三段階)のときには速度情報が第二表示器35に表示されるようになっていれば、運転者は車速の上昇を認識しやすい。なぜなら、第二表示器35の方が、運転者の視線方向に近いからである。
【0067】
したがって、この演出例7のように車速の上昇に伴い第一表示器31と第二表示器35とで表示される情報が連続的に移動して表示されるようになっていれば、運転者の注意を引くことができるため、運転者に意識させたい情報(例えば速度が速すぎる等の情報)を従来よりも意識させることができる。
【0068】
(8)演出例8
次に、図12の表示例を用いて演出例8を説明する。図12(a)〜図12(e)は、第一表示器31および第二表示器35の連続的な表示状態を表したものである。図12(a)は、第一段階の状態であり、第一表示器31には経路案内情報(300m先を左折する旨の指示)が表示され、第二表示器35には速度情報(90km/h)が表示されている。
【0069】
図12(b)は、第二段階の状態であり、第一表示器31には経路案内情報(200m先を左折する旨の指示)が表示され、第二表示器35には速度情報(70km/h)が表示されている。また、第一表示器31の下方に三日月状のオブジェクト63bが表示され、第二表示器35の下方に三日月状のオブジェクト65bが表示されている。
【0070】
図12(c)は、第三段階の状態であり、第一表示器31の上部には経路案内情報の一部(100m先を左折する旨の指示のうちの「100m」)が表示され、第一表示器31の株には速度情報(50km/h)が表示されている。また、第二表示器35には経路案内情報の一部(100m先を左折する旨の指示のうちの「左折」)が表示されている。なお、第一表示器31の中央部分には略楕円状のオブジェクト63cが表示され、第二表示器35の上部に三日月状のオブジェクト65cが表示されている。
【0071】
図12(d)は、第四段階の状態であり、第一表示器31には速度情報(30km/h)が表示され、第二表示器35には経路案内情報(30m先を左折する旨の指示)が表示されている。なお、第二表示器35に表示されている経路案内情報のうち、「30m」という情報だけは第二表示器35の下方に表示されている。また、第一表示器31の上部に三日月状のオブジェクト63dが表示されている。
【0072】
図12(e)は、第五段階の状態であり、第一表示器31には速度情報(20km/h)が表示され、第二表示器35には経路案内情報(10m先を左折する旨の指示)が表示されている。
【0073】
演出例8では、このような図12(a)の第一段階から図12(d)の第五段階までが、車両の減速状況に連動して、例えば5秒程度の間で連続的に変化するようになっている。
【0074】
このように、第一表示器31と第二表示器35とがそれぞれ上方に回転しているように運転者へ見せることにより、それぞれに表示されていた表示オブジェクト(速度情報や経路案内情報)が第一表示器31と第二表示器35とで連続的に入れ替わったように運転者差へ見せることができる。したがって、運転者の注意を十分に引くことができる。
【0075】
[実施形態の効果]
このように、第一表示器31や第二表示器35自体を動かさなくても(第一表示器31や第二表示器35本体を回転させたり、移動させたりしなくても)、そこに表示されるオブジェクトを変化(移動、拡大、縮小、追加、消去等)させることにより、第一表示器31や第二表示器35が動いているように見せられることができる。その結果、第一表示器31や第二表示器35の故障の発生をできるだけ抑えながら第一表示器31や第二表示器35に表示された情報(速度情報や経路案内情報等)が、運転者にとって注意を引くものとなり、運転者により確実にその情報を認識させることができる。
【0076】
また、第一表示器31や第二表示器35は円形であるため、これらを運転者が人の顔や目と同視しやすい。このため、第一表示器31や第二表示器35が回転したように見せることによって、第一表示器31や第二表示器35が上方向へ視線をやったり、下方向へうつむいたりしたように運転者に錯覚させることができる。つまり、より運転者の注意を引くことできる。
【0077】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、第一表示器31と第二表示器35とが縦方向に並ぶように配置されていたが、第一表示器31と第二表示器35とを同じ大きさにして横に並べるようにしてもよい。このようにすれば、第一表示器31と第二表示器35とが「両目」のように錯覚されやすくなり、報知効果がより高まる。
【0078】
(2)他の演出例として、運転者の操作正否を判定し、その判定結果に応じた演出を行うようになっていてもよい。例えば、正しい地点で運転者が右折操作を行った場合に、二度、三度、第二表示器35が下方向へ回転往復運動したかのように見せる表示を行い、第二表示器35がうなずいたかのように運転者に思わせる演出である。また逆に、運転者が間違った運転操作を行った場合に、第二表示器35が左右方向に往復運動したかのように見せる表示を行うことも考えられる。
【0079】
このようになっていれば、運転者は積極的に正しい運転を行うことを心がけるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】ナビゲーションシステムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】第一表示器および第二表示器を説明するための説明図である。
【図3】演出処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】演出テーブルのテーブルレイアウト図である。
【図5】演出例1を説明するための表示例である。
【図6】演出例2を説明するための表示例である。
【図7】演出例3を説明するための表示例である。
【図8】演出例4を説明するための表示例である。
【図9】演出例5を説明するための表示例である。
【図10】演出例6を説明するための表示例である。
【図11】演出例7を説明するための表示例である。
【図12】演出例8を説明するための表示例である。
【符号の説明】
【0081】
11…ナビゲーションシステム、13…アンテナ、15…GPSモジュール、17…Gセンサ、19…ジャイロスコープ、21…地図データ入力器、23…操作スイッチ群、25…ナビ制御回路、27…スピーカ、29…オーディオI/F、31…第一表示器、33…第一表示器LED、35…第二表示器、37…第二表示器LED、39…速度メータ、41…タコメータ、43…メータ制御回路、45…共有メモリ、47…車両LAN。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面を有する表示手段と、
車両の運行に伴う情報をオブジェクトを用いて前記表示手段に表示させる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記オブジェクトを変化させて前記表示手段を擬態化させる演出を行うこと、
を特徴とする表示装置。
【請求項2】
表示面を有する表示手段と、
車両の運行に伴う情報をオブジェクトを用いて前記表示手段に表示させる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、さらに別のオブジェクトを表示させると共にそのオブジェクトを変化させて、前記表示手段を擬態化させる演出を行うこと、
を特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表示装置において、
前記制御手段が行う演出は、前記表示手段を人の顔または目に擬態化させる演出であること、
を特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の表示装置において、
前記制御手段が行う演出における前記変化というのは、前記オブジェクトを所定の方向へ移動させることであること、
を特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の表示装置において、
前記制御手段が行う演出における前記変化というのは、前記オブジェクトを拡大または縮小することであること、
を特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに記載の表示装置において、
前記制御手段は、前記情報が変化した際に前記演出を行うこと、
を特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れかに記載の表示装置において、
前記表示手段は複数存在し、
前記制御手段は、一の前記表示手段における前記演出と、他の前記表示手段における前記演出とを連携させること、
を特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の表示装置において、
前記制御手段は、一の前記表示手段に表示させたオブジェクトと他の前記表示手段に表示させたオブジェクトとを同一方向に同時に移動させることにより前記連携を実現すること、
を特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項7に記載の表示装置において、
前記制御手段は、前記オブジェクトを、一の前記表示手段と他の前記表示手段との間で移動させることにより前記連携を実現させること、
を特徴とする表示装置。
【請求項1】
表示面を有する表示手段と、
車両の運行に伴う情報をオブジェクトを用いて前記表示手段に表示させる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記オブジェクトを変化させて前記表示手段を擬態化させる演出を行うこと、
を特徴とする表示装置。
【請求項2】
表示面を有する表示手段と、
車両の運行に伴う情報をオブジェクトを用いて前記表示手段に表示させる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、さらに別のオブジェクトを表示させると共にそのオブジェクトを変化させて、前記表示手段を擬態化させる演出を行うこと、
を特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表示装置において、
前記制御手段が行う演出は、前記表示手段を人の顔または目に擬態化させる演出であること、
を特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の表示装置において、
前記制御手段が行う演出における前記変化というのは、前記オブジェクトを所定の方向へ移動させることであること、
を特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の表示装置において、
前記制御手段が行う演出における前記変化というのは、前記オブジェクトを拡大または縮小することであること、
を特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れかに記載の表示装置において、
前記制御手段は、前記情報が変化した際に前記演出を行うこと、
を特徴とする表示装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れかに記載の表示装置において、
前記表示手段は複数存在し、
前記制御手段は、一の前記表示手段における前記演出と、他の前記表示手段における前記演出とを連携させること、
を特徴とする表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の表示装置において、
前記制御手段は、一の前記表示手段に表示させたオブジェクトと他の前記表示手段に表示させたオブジェクトとを同一方向に同時に移動させることにより前記連携を実現すること、
を特徴とする表示装置。
【請求項9】
請求項7に記載の表示装置において、
前記制御手段は、前記オブジェクトを、一の前記表示手段と他の前記表示手段との間で移動させることにより前記連携を実現させること、
を特徴とする表示装置。
【図1】
【図3】
【図4】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4】
【図2】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−22261(P2007−22261A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205734(P2005−205734)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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