説明

表示装置

【課題】 正負の極性が周期的に反転する波形を有する駆動電圧を、簡単な構成で、電力損失が少なく、表示素子に供給する。
【解決手段】 駆動回路は、電圧を供給する電源部と、電流の経路を切換える電流経路切換部と、駆動電圧が発生する共振部と、共振部で発生した駆動電圧を臨界状態に抑制する共振抑制部とを備える。駆動電圧は、基準電圧に対する極性が異なる一対以上の連続した波形を有する。駆動電圧の波形は、電源部が供給する電圧よりも高いピーク電圧を有する。基準電圧に対する極性が異なる一対以上の連続した波形が表示素子に印加された後、波形が収束する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば無機EL(エレクトロルミネッセンス)素子などの発光素子を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無機EL素子は、蛍光体層及び誘電体層を含む発光層を一対の電極間に挟んだ構造を有し、一対の電極間に電圧パルスを印加することにより発光する。無機EL素子を備えた表示装置(以下、「無機EL表示装置」という)の表示パネルでは、この無機EL素子からなる多数の画素がマトリクス状に配置されている。例えば、ガラス等の基板上に、データ電極として第1方向に平行な複数本のストライプ状電極を相互に離間して形成し、このデータ電極上に発光層を形成し、発光層上に走査電極として第1方向と直交する第2方向に平行な複数本のストライプ状電極を相互に離間して形成する。これにより、データ電極のストライプ状電極と走査電極のストライプ状電極との各交差点に、発光層をデータ電極と走査電極とで挟んだ無機EL素子が形成される。かくして、表示画素としての無機EL素子が2次元配列されたパッシブマトリクス型の表示パネルが形成される。
【0003】
無機EL素子は、容量性の素子であるため、発光層に駆動電圧を印加したときに発光に寄与する電流は、コンデンサに電圧を印加したときの充電電流と同様の挙動を示す。電流が流れる時間は数μ秒という短い時間であり、電流が流れた後に印加される電圧は発光には寄与しない。従って、駆動電圧として直流電圧を印加したのでは、連続した発光を得ることができない。
【0004】
よって、無機EL表示装置は、フィールド毎に発光層に印加する電圧の極性を反転させる、いわゆるフィールド反転駆動により駆動される(例えば特許文献1)。そのために、例えば、走査電極を駆動する走査側駆動回路は、データ電極に対して負極性の電圧を発生する出力素子と正極性の電圧を発生する出力素子とを有し、一方、データ電極を駆動するデータ側駆動回路は、発光層に印加する変調電圧を発生する出力素子を有している。これにより、発光層に対して対称性の良い交流パルスをフレーム周期で印加することができ、信頼性の高い表示を行うことができる。
【0005】
しかし、反転駆動では、1フレームを構成するために電圧の極性が互いに異なる一対のフィールドが必要となり、フィールド数がフレーム数の2倍になってしまう。一対のフィールドを用いなければ最適な画質を得ることは出来ない。
【0006】
ところが、フィールド数が多くなると無効期間が増え、画素数が多いディスプレイには対応できない。そこで、1フレームの1つのライン選択期間に極性が異なる連続したパルス電圧を印加する駆動方法が提案されている(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−312245号公報
【特許文献2】特許第2682886号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、従来の無機EL表示装置の駆動回路は、発光層に対して周期的に極性が反転する電圧を印加するために、正極性の電源と負極性の電源とを備え、それぞれが正極性の駆動波形と負極性の駆動波形を作成している。
【0008】
無機EL素子を発光させるための閾値電圧は200V程度であるから、駆動回路は比較的高い駆動電圧を印加する必要がある。従って、正極性の電源と負極性の電源とを別個に備えることは、装置を複雑にし、コスト低減の障害となる。
【0009】
さらに、走査側駆動回路の電源部は、正極性の電圧及び負極性の電圧を1フレームの1つのライン選択期間内に連続して発生させる必要がある。このとき切り換えられる電圧範囲は約+200V〜−200Vと非常に大きく、切換素子の消費電力が大きい。また、極性切換えの際に無機EL素子に蓄積された電荷を放電させることが出来ず、発光に支障が生じる。また、高画素数の表示装置では切換時間の裕度がない。さらに、極性が異なる高電圧を印加するために、駆動回路として正極用と負極用の2種が必要となってしまい、さらに高コストなものとなってしまう。
【0010】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、正負の極性が周期的に反転する波形を有する駆動電圧を、簡単な構成で、電力損失が少なく、表示素子に印加することが可能な駆動回路を備えた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の表示装置は、表示素子と、前記表示素子に駆動電圧を印加する駆動回路とを備える。前記駆動回路は、電圧を供給する電源部と、電流の経路を切換える電流経路切換部と、前記駆動電圧が発生する共振部と、前記共振部で発生した前記駆動電圧を臨界状態に抑制する共振抑制部とを備える。前記駆動電圧は、基準電圧に対する極性が異なる一対以上の連続した波形を有する。前記駆動電圧の前記波形は、前記電源部が供給する前記電圧よりも高いピーク電圧を有する。前記基準電圧に対する極性が異なる一対以上の連続した波形が前記表示素子に印加された後、前記波形が収束する。
【0012】
ここで、「基準電圧」とは、例えば2端子型の表示素子であれば、その2端子のうちの一方の端子に駆動電圧を印加する場合に、他方の端子の電位を意味する。「基準電圧に対する極性」とは、一方の端子に印加される駆動電圧から他方の端子の電位(基準電位)を差し引いた相対的な電位の極性を意味する。「極性が異なる一対」とは、正極性を有する波形と負極性を有する波形とからなる対を意味する。「一対以上の連続した波形」とは、正極性を有する波形と負極性を有する波形とが、実質的に電圧がゼロとなる期間を介在させずに交互に繰り返された波形を意味する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、正(又は負)極性のみ電圧を供給する電源部を用いて、正極性と負極性とを有する共振電圧波形を発生させ、これを駆動電圧として表示素子に印加するすることができる。さらに、電源部が供給する電圧は、表示素子に印加される駆動電圧波形のピーク電圧(p−p)の1/4程度で足りる。また、駆動電圧波形の正及び負の電圧のうちの一方は電源部から供給される電圧に依存しない。従って、省電力で、電源制御配線を少なくでき、この結果、消費電力の低減と、駆動回路の低コスト化とを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
上記の本発明の表示装置において、前記表示素子が容量素子であり、前記共振部が前記表示素子を含むことが好ましい。
【0015】
これにより、表示素子を共振回路の一部として利用できるので、部品点数の削減、回路の簡素化を実現できる。また、発光と同時に共振部内に共振が発生する。
【0016】
上記の本発明の表示装置が複数の前記表示素子を備え、前記複数の表示素子のうち前記駆動電圧が印加される表示素子を選択する選択部を更に備えることが好ましい。
【0017】
これにより、複数の表示素子のうちの任意の1又は複数の表示素子のみを、共振電圧波形により選択的に発光させることができる。よって、例えばセグメント駆動を実現できる。
【0018】
上記の本発明の表示装置が、第1方向と平行な複数の走査電極と、前記複数の走査電極に走査電圧を順次印加する走査側駆動回路と、前記第1方向と直交する第2方向と平行な複数のデータ電極と、前記複数のデータ電極にデータ信号に応じたデータ電圧をそれぞれ印加するデータ側駆動回路とを更に備えていても良い。この場合、前記複数の走査電極と前記複数のデータ電極との各交差点に前記表示素子からなる画素が配置されていることが好ましい。そして、前記選択部は、前記複数の走査電極と前記走査側駆動回路との間に配置されて、前記走査電圧が印加される走査電極を選択することが好ましい。
【0019】
これにより、線順次走査、面順次走査、または点順次走査などによるマトリックス駆動を行う高画素数のディスプレイを実現できる。従って、本発明の表示装置をTVやモニターなどに応用することができる。また、走査電圧が本発明の上記の共振電圧波形を有するので、省電力化が可能である。
【0020】
この場合において、前記選択部が、前記複数のデータ電極と前記データ側駆動回路との間に更に配置されて、前記データ電圧が印加されるデータ電極を選択しても良い。
【0021】
これにより、データ電圧も本発明の上記の共振電圧波形を有するので、更に省電力化された高画素数のディスプレイを実現できる。
【0022】
上記において、前記電源部が供給する前記電圧の波形がゼロ以外の値を有する期間は、選択された特定の走査電極に前記走査電圧が印加される期間より短いことが好ましい。また、前記電源部が供給する前記電圧の波形がゼロ以外の値を有する期間は、選択された特定のデータ電極に前記データ電圧が印加される期間より短いことが好ましい。ここで、「電圧の波形がゼロ以外の値を有する期間」とは、例えば、電源部がパルス状の電圧を印加する場合であれば、その単位パルス幅を意味する。
【0023】
これにより、電源部は電圧を常時供給する必要がなく、共振電圧波形を発生させる初期の必要最小限の期間のみ供給すれば足りるので、省電力化を実現できる。
【0024】
前記電流経路切換部は少なくとも2つのスイッチ素子を含むことが好ましい。ここで、「スイッチ素子」とは、例えばダイオード、トランジスタ、FETを例示できる。
【0025】
これにより、汎用のスイッチ部品を使用することができ、安価な電流経路切換部を実現できる。
【0026】
前記共振部は少なくとも1つの誘導素子を含むことが好ましい。ここで、「誘導素子」とは例えばコイルを例示できる。
【0027】
これにより、安価な共振部を実現できる。
【0028】
前記誘導素子は可変誘導素子であることが好ましい。
【0029】
これにより、共振部を構成する容量素子のバラツキなどに起因する共振周波数のバラツキを、誘導素子のインダクタンスを調整することにより補正することができる。
【0030】
前記共振抑制部は少なくとも1つの抵抗器を含むことが好ましい。
【0031】
これにより、抵抗器の抵抗値を最適に選択することにより、抵抗器に共振電流が流れる時にこれを臨界振動とすることができ、望まない共振を抑制できる。
【0032】
前記抵抗器は可変抵抗器であることが好ましい。
【0033】
これにより、抵抗器の抵抗値を調整して臨界振動の減衰率を調整することにより、所望の駆動波形を得ることができる。
【0034】
前記表示素子は誘電体層及び蛍光体層を含む無機EL素子であることが好ましい。
【0035】
これにより、極性が変化する高電圧で駆動する必要がある無機EL素子を省電力且つ低コストで駆動することができる。
【0036】
前記電源部が供給する前記電圧の波形がゼロ以外の値を有する期間は、基準電圧に対して正極性又は負極性を有する前記駆動電圧の波形部分の期間の1/2であることが好ましい。
【0037】
これにより、駆動電圧の連続する正負の駆動波形の正側のピーク電圧値と負側のピーク電圧値とを同じにすることができ最適な駆動ができる。
【0038】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【0039】
図1は、本発明の表示装置の一実施形態の概略構成を示したブロック図である。本発明の表示装置は、共振を発生させるのに必要な期間だけ正又は負の電圧を供給する電源部1と、電流の経路を切り換えることにより、必要な期間だけ共振を発生させ、その後減衰させる電流経路切換部2と、共振する駆動電圧が発生する共振部6と、必要期間の共振後臨界振動を起こして共振を停止させる共振抑制部5とを備える。表示素子4は共振部6に含まれる。
【0040】
図1の表示装置の動作を説明する。電源部1から供給された電圧は、電流経路切換部2を通って共振部6内に共振を起こさせ、同時に表示素子4を発光させる。共振開始後所定期間が経過した後、電源供給が停止されると、電流経路切換部2の電流経路が切換わる。その後、電流経路切換部2に電流が流れなくなり、表示素子4を流れる電流は共振抑制部5を通ることにより共振が停止される。
【0041】
図2は図1の表示装置を実現するための回路図の一例である。図1の電源部1は汎用のパルス電源7で構成される。図1の電流経路切換部2は抵抗器9,11とフォトカプラ8とダイオード10で構成される。図1の共振部6はコイル13と表示素子14で構成される。図1の共振抑制部5は抵抗器12で構成される。図2では、表示素子14は単一容量として示されているが、実際には、単一の表示素子、及び、複数の表示素子(例えば1走査電極に並列接続された複数の表示素子)のいずれであっても良い。複数の表示素子の場合には、表示素子14はこれらの合成容量を意味することになる。
【0042】
パルス電源7の一方の端子は接地され、他方の端子はスイッチ素子であるフォトカプラ8の入力側プラス端子と抵抗器9の一方の端子とダイオード10のカソード側端子とに接続される。フォトカプラ8の入力側のもう一方の端子は抵抗器11の一方の端子に接続される。抵抗器11の他方の端子は接地される。抵抗器9の他方の端子はフォトカプラ8の出力側プラス端子に接続され、フォトカプラ8の出力側のもう一方の端子はダイオード10のアノード側端子とコイル13の一方の端子と抵抗器12の一方の端子とに接続される。抵抗器12の他方の端子は接地される。コイル13の他方の端子は表示素子14の一方の端子に接続される。表示素子14の他方の端子は接地される。
【0043】
以下、図2の表示装置の動作を説明する。
【0044】
パルス電源7から電圧が印加されるとフォトカプラ8の入力側に電流が流れ、フォトカプラ8の出力側がオンされる。そのため、パルス電源7からの電流は、フォトカプラ8の出力側、コイル13、及び表示素子14を通る。このとき、コイル13及び表示素子14に共振電流が生じる。次に、コイル13及び表示素子14に生じた共振電流の共振周期の約1/4の期間でパルス電源7からの電圧供給を停止すると、フォトカプラ8の出力側がオフされるために、共振電流はダイオード10を通って接地面に流れる。そして、表示素子14に生じる電圧が負電圧のピークとなると、ダイオード10には逆方向に電流が流れず、且つ、フォトカプラ8の出力側がオフされているために、抵抗器12を共振電流が通る。このとき抵抗器12の抵抗値が共振が臨界状態になるように設定されているために、共振電圧が収束する。
【0045】
図2の表示装置の一実施例を示す。パルス電源7から、120V(p−0)の電圧を50μsの期間供給した。フォトカプラ8及びダイオード10は汎用品を用いた。抵抗器9は10Ω、抵抗器11は10kΩ、抵抗器12は25kΩ、コイル13は300mH、表示素子14は1nFとした。但し、これらは一例であって、目標の電圧及び電流に応じて各素子の定数は適宜設定される。
【0046】
上記実施例の各部の電圧電流波形を説明する。図3において、「a」は表示素子14を流れる電流波形で20.5mA(p−p)、「b」は表示素子14に印加される駆動電圧波形で480V(p−p)、「c」はパルス電源7から供給される電圧波形で50μsの期間に120V(p−0)が供給されている。パルス電源7から正極性の電圧供給が開始されると、表示素子14に印加される駆動電圧波形bが立ち上がり、これが正極性のピークに達した時、パルス電源7から電圧供給が停止される。図4において、「d」はフォトカプラ8の出力側の電流波形で7mA(p−0)である。図5において、「e」はダイオード10の電流で11.5mA(p−0)である。図6において、「f」は共振抑制のための抵抗器12の電流波形で7mA(p−0)である。
【0047】
以上のように、本発明の表示装置によれば、正又は負の一定電圧を供給する電源部を用いて共振部に共振電圧を発生させ、正極性及び負極性を有するこの共振電圧を表示素子に駆動電圧として印加する。このとき、電源部が供給する電圧は表示素子の駆動に必要なピーク・ツゥ・ピーク(p−p)電圧の約1/4で足りる。しかも、表示素子に印加される正及び負の駆動電圧のうちの一方は電源部からの電力供給に依存しない。従って、従来の表示装置に比べて省電力で電源制御配線を少なくすることができる。また、上記の実施例における表示素子14を正負の交流電圧で駆動するためには、スイッチ素子は480V以上の耐電圧特性を有する必要があるが、本発明の上記の実施例では120Vの耐電圧特性を有していれば足りる。そのため、各素子に要求される耐久性が緩和され、安価な素子を用いて駆動回路を構築することができる。従って、高精細で高画質の表示装置を低コストで実現できる。
【0048】
図7は本発明の表示装置の別の実施形態の概略構成を示したブロック図である。図7の表示装置は、表示素子4が共振部3と別に設けられている点で、表示素子4が共振部6に含まれる図1の表示装置と異なる。図7の表示装置を実現するための回路図の図示は省略するが、例えば図2の表示素子14をコンデンサに置き換えて、このコンデンサと並列に表示素子4を接続すれば良い。
【0049】
図8に示すように共振部15が選択部16を備えていてもよい。これにより、点順次走査、線順次走査、面順次走査を実現することができる。図9は図8の表示装置を実現するための回路図の一例である。選択部16は、IC等からなる制御回路17と、トランジスタ、FET、ドライバIC等からなるスイッチ18a〜18eとを含む。スイッチ18a〜18eに表示素子14a〜14eがそれぞれ直列接続されている。表示素子14a〜14eは、単一の表示素子であっても良いし、1ライン上に並列接続された複数の表示素子であっても良いし、所定の領域内に配置された複数の表示素子であっても良い。表示素子及びスイッチの数は図9に示すように5つに限定されない。表示装置が有する複数の表示素子を同時に選択すべき複数の表示素子群に分割し、各表示素子群に1つのスイッチを設ければよい。
【0050】
図8及び図9を、マトリックス駆動を行う表示装置に応用することができる。この表示装置は、周知のように、第1方向と平行な複数の走査電極と、複数の走査電極に走査電圧を順次印加する走査側駆動回路と、第1方向と直交する第2方向と平行な複数のデータ電極と、複数のデータ電極にデータ信号に応じたデータ電圧をそれぞれ印加するデータ側駆動回路とを備える。複数の走査電極と複数のデータ電極との各交差点に表示素子からなる画素が配置されている。
【0051】
選択部16は、複数の走査電極と走査側駆動回路との間に配置される。この場合、選択部16を構成するスイッチは、走査電極の数と同数だけ必要である。例えば、表示装置がnラインの走査電極を備える場合にはn個のスイッチが必要である。個々のスイッチを制御回路17で制御することにより、走査電圧が印加される走査電極が選択される。
【0052】
この場合、走査側駆動回路の電源部が供給する電圧の波形がゼロ以外の値を有する期間(上記の実施例であれば図3の波形cのパルス幅50μs)は、選択された特定の走査電極に走査電圧が印加される期間より短く設定される。
【0053】
更に、選択部16が、複数のデータ電極とデータ側駆動回路との間に配置されても良い。この場合、選択部16を構成するスイッチは、データ電極の数と同数だけ必要である。例えば、表示装置がmラインのデータ電極を備える場合にはm個のスイッチが必要である。個々のスイッチを制御回路17で制御することにより、データ電圧が印加されるデータ電極が選択される。
【0054】
この場合、データ側駆動回路の電源部が供給する電圧の波形がゼロ以外の値を有する期間(上記の実施例であれば図3の波形cのパルス幅50μs)は、選択された特定のデータ電極にデータ電圧が印加される期間より短く設定される。
【0055】
以上のようなマトリックス駆動を行う表示装置によれば、2次元配置された多数の画素のそれぞれに表示素子を備えた表示装置の駆動回路の省電力化と低コスト化とを実現できる。
【0056】
本発明において、抵抗器12は可変抵抗器であっても良い。これにより共振波形の減衰を微調整して、表示素子に印加する駆動電圧波形を最適設定することができる。
【0057】
また、コイル13は可変インダクタンスであっても良い。これにより、コイル13のインダクタンスを微調整して表示素子の容量のばらつきや共振周波数のばらつきを補正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の利用分野は特に制限はないが、正極性と負極性とを含む電圧波形を印加することで駆動される表示素子を備えた表示装置に広く利用することができる。例えば、無機EL素子を備えた表示装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の表示装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図
【図2】図1の表示装置を実現する一例の回路図
【図3】図2の表示装置の一実施例において、表示素子の電流及び電圧と、パルス電源から供給される電圧の各波形図
【図4】図2の表示装置の一実施例において、表示素子の電流、及びフォトカプラの出力側電流の各波形図
【図5】図2の表示装置の一実施例において、表示素子の電流、及びダイオードの電流の各波形図
【図6】図2の表示装置の一実施例において、表示素子の電流、及び共振抑制抵抗の電流の各波形図
【図7】本発明の表示装置の別の実施形態の概略構成を示すブロック図
【図8】本発明の表示装置の更に別の実施形態の概略構成を示すブロック図
【図9】図8の表示装置を実現する一例の回路図
【符号の説明】
【0060】
1 電源部
2 電流経路切換部
3 共振部
4 表示素子
5 共振抑制部
6 共振部
7 パルス電源
8 フォトカプラ
9 抵抗器
10 ダイオード
11 抵抗器
12 抵抗器
13 コイル
14、14a〜14e 表示素子
15 共振部
16 選択部
17 制御回路
18a〜18e スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子と、前記表示素子に駆動電圧を印加する駆動回路とを備えた表示装置であって、
前記駆動回路は、電圧を供給する電源部と、電流の経路を切換える電流経路切換部と、前記駆動電圧が発生する共振部と、前記共振部で発生した前記駆動電圧を臨界状態に抑制する共振抑制部とを備え、
前記駆動電圧は、基準電圧に対する極性が異なる一対以上の連続した波形を有し、
前記駆動電圧の前記波形は、前記電源部が供給する前記電圧よりも高いピーク電圧を有し、
前記基準電圧に対する極性が異なる一対以上の連続した波形が前記表示素子に印加された後、前記波形が収束することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記表示素子が容量素子であり、前記共振部が前記表示素子を含む請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
複数の前記表示素子を備え、前記複数の表示素子のうち前記駆動電圧が印加される表示素子を選択する選択部を更に備える請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
第1方向と平行な複数の走査電極と、前記複数の走査電極に走査電圧を順次印加する走査側駆動回路と、前記第1方向と直交する第2方向と平行な複数のデータ電極と、前記複数のデータ電極にデータ信号に応じたデータ電圧をそれぞれ印加するデータ側駆動回路とを更に備え、
前記複数の走査電極と前記複数のデータ電極との各交差点に前記表示素子からなる画素が配置されており、
前記選択部は、前記複数の走査電極と前記走査側駆動回路との間に配置されて、前記走査電圧が印加される走査電極を選択する請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記選択部が、前記複数のデータ電極と前記データ側駆動回路との間に更に配置されて、前記データ電圧が印加されるデータ電極を選択する請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記電源部が供給する前記電圧の波形がゼロ以外の値を有する期間は、選択された特定の走査電極に前記走査電圧が印加される期間より短い請求項4に記載の表示装置。
【請求項7】
前記電源部が供給する前記電圧の波形がゼロ以外の値を有する期間は、選択された特定のデータ電極に前記データ電圧が印加される期間より短い請求項5に記載の表示装置。
【請求項8】
前記電流経路切換部は少なくとも2つのスイッチ素子を含む請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記共振部は少なくとも1つの誘導素子を含む請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
前記誘導素子は可変誘導素子である請求項9に記載の表示装置。
【請求項11】
前記共振抑制部は少なくとも1つの抵抗器を含む請求項1に記載の表示装置。
【請求項12】
前記抵抗器は可変抵抗器である請求項11に記載の表示装置。
【請求項13】
前記表示素子は誘電体層及び蛍光体層を含む無機EL素子である請求項1に記載の表示装置。
【請求項14】
前記電源部が供給する前記電圧の波形がゼロ以外の値を有する期間は、基準電圧に対して正極性又は負極性を有する前記駆動電圧の波形部分の期間の1/2である請求項1に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−86686(P2007−86686A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278607(P2005−278607)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(503217783)松下東芝映像ディスプレイ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】