説明

表示装置

【課題】透明な表示板に印刷された画像を画像に応じた適切な態様で簡便に表示する。
【解決手段】透明な板状部材である表示板の表面に透明インクで画像を印刷し、表示板の端面から光を入射することによって、透明インクによる画像を光らせて表示する。
表示板には、印刷された画像に対応する所定の情報(特定情報)を読み出し可能に記憶しておき、画像を表示する際には、特定情報を読み出して、特定情報に応じた態様で光を入射することによって画像を表示する。こうすれば、表示板に印刷された画像に応じて適切な特定情報を、表示板に予め記憶しておくことで、印刷された画像を適切な態様で表示することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な表示板に文字や図形などの画像を表示する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透明な表示板上に文字や図形などを形成しておき、光を用いて、これら画像を表示する技術は、種々の技術が提案されている。その多くのものは、表示板の背面側から光を照射することで、表示板に形成された文字や図形を表示しようとする技術である。
【0003】
これに対して、透明な表示板の表面に略三角形断面の溝を掘って図形を描いておき、表示板の側面から表示板内に光を導入することによって、文字や図形を浮き上がらせて表示しようとする技術も提案されている(特許文献1)。
【0004】
このような提案されている技術によれば、透明な表示板の側面から光を導入するために、背面から光を照射する方法に較べて表示部分を薄くすることが可能であり、また、いわゆる液晶画面を用いる方法に較べて遙かに簡単に文字や、図形、画像などを表示することが可能である。
【0005】
【特許文献1】特許第3864342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、提案されている技術では、表示板の表面に溝を掘って図形を描いておく必要があり、このような図形を描くことはそれほど容易ではない。そこで、本願の発明者は、光の散乱微粒子を分散させた透明なインクを用いて、透明な表示板の表面に画像を印刷し、表示板の側面から光を導入することによって画像を表示する技術を開発して、既に出願済みである。かかる出願中の技術を用いれば、透明なインクで画像を印刷するだけでよいので、より簡単に画像を表示させることができる。また、透明板の表面に印刷する画像を変えることで、異なる画像を表示することも可能である。もっとも、表示する画像が異なれば、画像をより適切に表示するために、透明板に入射する最適な光の強さが異なる場合が起こり得る。また、画像によっては、特定の色の光や、光の強さを特定なパターンで増減させることによって、より適切に表示することが可能となる場合も起こり得る。だからといって、透明板に入射する光の強さや、光の色、光の強さの増減パターンを自由に変更できるようにしたのでは、表示装置の構造が複雑になってしまう。加えて、表示しようとする画像に応じて、種々の設定が必要となってのでは、簡便に画像を表示することができるという特長を大きく減殺する結果となってしまう。
【0007】
この発明は、上述した課題に対応してなされたものであり、透明な表示板に印刷された画像を簡便に表示可能という特長を損なうことなく、画像に応じた適切な態様で表示可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の表示装置は次の構成を採用した。すなわち、
所定の画像を表示する表示装置であって、
透明な板状部材の表面に透明なインクによる前記所定の画像が印刷された表示板と、
前記表示板が着脱可能な態様で立設されるベース部と、
前記ベース部に立設された前記表示板の端面から、該表示板の内部に向けて光を入射する光入射部と
を備え、
前記表示板は、前記表面に印刷された画像に対応する所定の特定情報が読み出し可能に記憶された表示板であり、
前記ベース部は、立設された前記表示板から前記特定情報を読み出す特定情報読出部を備えており、
前記光入射部は、読み出された前記特定情報に応じた態様で、前記表示板の内部に光を入射する光入射部であることを要旨とする。
【0009】
このような本発明の表示装置においては、透明な板状部材である表示板の表面に、表示しようとする画像を、透明なインクを用いて予め印刷しておく。尚、画像を印刷するインクは、透明なインクであれば良く、例えば色つきのインクであっても良いが、無色のインクで印刷することが望ましい。こうすれば、透明な表示板の上に印刷された画像を、そのままではほとんど目立たないようにすることができる。画像を表示しようとする際には、表示板をベース部に立設して、表示板の端面から表示板の内部に光を入射する。すると、入射された光は、表示板の表面で反射を繰り返しながら内部を伝播していき、透明なインクによって画像が印刷された部分に到達して、印刷された画像が光って表示されることになる。また、表示板には、印刷された画像に対応する所定の情報(特定情報)が読み出し可能に記憶されており、表示板をベース部に立設すると、ベース部に設けられた特定情報読出部によって特定情報が読み出される。そして、読み出された特定情報に応じた態様で、表示板の内部に光が入射されて、表示板の表面に印刷された画像が表示されるようになっている。
【0010】
このような方法で画像を表示する場合、表示板の端面から光を入射する態様に応じて、画像が表示される態様も異なってくる。例えば、入射する光の強さによって、表示される画像の明るさを変えることができる。また、入射する光の色によって、表示される画像の色を変えることも可能である。従って、表示する画像に応じて、画像を最も適切に表示するような光の入射態様が存在すると考えられる。そこで、表示板に印刷された画像に応じて、適切な特定情報を表示板に予め記憶しておき、ベース部に立設された表示板から特定情報を読み出して、読み出した特定情報に応じた態様で、表示板の内部に光を入射してやれば、表示板に印刷された画像を、画像に応じて適切な態様で表示することが可能となる。
【0011】
また、このような本発明の表示装置においては、次のようにしても良い。表示板の内部に向けて光を入射する態様を記述した態様記述データを、特定情報として表示板に予め記憶しておく。そして、ベース部に立設された表示板から、態様記述データを読み出すと、読み出した態様記述データに記述された態様で、表示板の内部に光を入射するようにしてもよい。
【0012】
こうすれば、ベース部は表示板から読み出した態様記述データに従って、表示板の内部に光を入射すればよいので、ベース部の構成を簡素なものとすることができる。
【0013】
あるいは、上述した本発明の表示装置においては、次のようにしても良い。先ず、表示板の内部に向けて光を入射する態様を記述した態様記述データを、ベース部に複数種類記憶しておく。また、表示板には、複数種類の態様記述データの中から1の態様記述データを特定するための特定情報を、予め記憶しておく。そして、ベース部に立設された表示板から、態様記述データを特定するための特定情報を読み出すと、ベース部に記憶されている複数種類の態様記述データの中から、特定情報によって1の態様記述データを特定した後、特定された態様記述データに従って、表示板の内部に光を入射するようにしてもよい。
【0014】
こうすれば、表示板には、態様記述データを特定するための特定情報のみを記憶しておけば足りるので、表示板の構成を簡素なものとすることができる。
【0015】
また、ベース部に態様記述データを記憶しておく本発明の表示装置においては、態様記述データを書き換え可能な態様で記憶しておき、この態様記述データを書き換える機能を、ベース部に搭載することとしても良い。
【0016】
こうすれば、ベース部に新たな態様記述データを追加することで、表示板の画像を新たな態様で表示することが可能となるので好ましい。
【0017】
また、上述した本発明の表示装置においては、表示板に記憶されている特定情報を書き換え可能な態様で記憶しておき、表示板がベース部に立設された状態で、ベース部の側から表示板の特定情報を書き換えるようにしても良い。
【0018】
こうすれば、表示板に予め記憶されている特定情報を、好みの特定情報に書き換えて、より好ましい態様で画像を表示することが可能となる。また、表示板の特定情報を書き換える際には、ベース部に設けられた特定情報読出部を利用して書き換えることで、特別な装備を用いることなく簡便に書き換えることが可能となるので好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.装置構成:
B.画像の表示原理:
C.第1実施例:
D.第2実施例:
【0020】
A.装置構成 :
図1は、本実施例の表示装置100の大まかな構成を示した説明図である。図示されているように、本実施例の表示装置100は、大きくは、画像が表示される表示板110と、表示板110が立設されるベース部120とから構成されている。表示板110は、アクリル板やガラス板などの透明な板状部材によって形成されており、表示板110の表面には、表示しようとする画像が透明インクによって印刷されてインク層112が形成されている。後述するように透明インクには光を散乱させるための微粒子が僅かに混入されているが、透明な表示板110の上に透明インクによるインク層112が形成されているだけなので、注意深く観察しない限り、表示板110の表面に、透明インクによる画像が印刷されていることには気が付かないようになっている。
【0021】
尚、本実施例では、表示板110も、透明インクも、何れも無色透明であるものとして説明するが、表示板110の表面に透明インクで印刷された画像が目立たなければ十分であり、必ずしも無色透明である必要はない。例えば、表示板110が僅かに色を帯びている場合は、同じ色を僅かに帯びた透明インクを用いて印刷された画像は目立たない。従って、透明インクが僅かに色を帯びていた場合でも、その色が表示板110と同じ系統の色であれば、本実施例の透明インクとして好適に用いることができる。もちろん、透明インクが無色透明であれば、表示板110がどのような色を帯びていている場合でも、好適に用いることが可能である。
【0022】
このような表示板110を、ベース部120の上面に設けられた溝に装着する。溝の底部には、発光ダイオード(以下、LED)などの複数の発光体が設けられており、表示板110をベース部120に装着すると、表示板110の端面が、複数の発光体と向き合う位置に来るようになっている。そして、ベース部120に設けられた操作スイッチ122を操作して発光体を点灯させると、表示板110の表面に形成されたインク層112の部分のみが光るようになる。その結果、点灯前は単なる透明な板にしか見えなかったにも拘わらず、点灯後は、透明インクで印刷した画像が光って浮き上がることとなり、たいへん効果的に画像を表示することが可能となる。表示板110の表面に透明インクで印刷された画像が、浮き上がるように光って表示されるメカニズムについては後述する。
【0023】
図2は、ベース部120の構造を示した説明図である。上述したように、ベース部120の上面には表示板110が装着される溝が設けられており、溝の底部には、複数の発光体が一列に配列して設けられている。図2には、複数の発光ダイオード(LED)124が搭載されたLED基板126が、溝の底部に設けられている様子が示されている。尚、ここでは、LED124は、白色の光を放射する白色LEDであるものとして説明するが、白色LEDに限らずどのようなLEDを用いても良い。あるいは、異なる色の光を放射する種々のLEDを混在させて用いることもできる。更には、LEDに限らず、豆電球など、他の発光体を用いてもよい。
【0024】
また、ベース部120の内部には、LED124の発光動作を制御する制御部128が設けられており、この制御部128は、溝の側壁に設けられたデータ読取部132に接続されている。このデータ読取部132は、表示板110をベース部120の溝に装着した時に、表示板110の表面に貼付されたタグ130と、ちょうど向き合う位置に設けられている。後述するように、タグ130には、表示板110の表面に印刷された画像に対応する所定のデータ(特定情報)が記憶されており、表示板110を装着すると、タグ130に記憶されている特定情報を、データ読取部132を用いて読み出すことが可能となっている。ベース部120に搭載された制御部128は、こうして読み出された特定情報をデータ読取部132から受け取ると、特定情報に応じた態様でLED124の発光動作を制御する。その結果、表示板110をベース部120に装着すると、表示板110の表面に透明インクで印刷された画像が、表示板110のタグ130に記憶されている特定情報に応じた態様で、浮き上がって表示されるようになっている。この点については、後ほど詳しく説明する。
【0025】
尚、本実施例では、タグ130は、ICチップとアンテナとがシール状に形成されており、ICチップに記憶されたデータを非接触で読み出し可能に構成されたタグであるものとして説明するが、タグの態様はこうした態様に限られるものではなく、種々の態様のタグを用いることができる。例えば、ICチップと電極とがシール状に形成されており、端子を接触させることでICチップ内のデータを読み出すことが可能に構成されたタグを用いることができる。あるいは、電磁気的な方法でデータを記憶するのではなく、バーコードや、小さな凹凸の組合せなどによってデータを記憶する方式のタグを用いることも可能である。
【0026】
B.画像の表示原理 :
図3は、透明な表示板110の表面に透明インクで印刷された画像が、LEDを点灯することで浮かび上がるように表示される原理を示した説明図である。前述したように、表示板110をベース部120の溝に装着すると、表示板110の端面が、溝の底部に設けられたLED124と向かい合う位置にくる。図3(a)には、ベース部120に装着した表示板110と、LED124との位置関係が示されている。このような状態でLED124を点灯させると、LED124から放射された光は、表示板110の端面に入射して、表示板110の内部を進行する。そして、大部分の光は、表示板110の表面と浅い角度で交差する。このように浅い角度で表示板110の表面に達した光は、表面から表示板110の外部に透過することなく、全ての光が表面で反射して、再び表示板110の内部を進行する。そして反対側の表面に浅い角度で達した後、反対側の表面で全ての光が反射して、再び表示板110の内部を進行する。LED124から放射されて表示板110の端面から入射した大部分の光は、こうして表示板110の表面で反射を繰り返しながら、表示板110の内部を伝播していく。このような現象は、光の屈折の一態様として現れる現象であり、「完全反射」と呼ばれることがある。本実施例の表示装置100では、この完全反射と呼ばれる現象を利用して透明な表示板110の内部で光を伝播させて、透明インクで印刷された画像を浮かび上がらせている。そこで、完全反射と呼ばれる現象について、簡単に説明しておく。
【0027】
図3(b)は、光が屈折する様子を概念的に示した説明図である。光の屈折は、屈折率の異なる2つの媒質の境界面を光が通過しようとするときに生じる現象であり、「スネルの法則」としてまとめられている。ここで屈折率とは、媒質中での光の通り易さに関連する物性値である。スネルの法則によれば、ある屈折率の媒質中を進行している光が、異なる屈折率を有する媒質との境界面に達すると、一部の光は境界面で反射し、残りの光は境界面を通過して異なる屈折率の媒質中を進行する。このとき、境界面で反射する光は、境界面に光が入射する角度(入射角θi )と境界面から光が反射する角度(反射角θr )とが等しくなる方向に反射する。ここで、入射角θi は、通常、境界面から法線を立てて、法線と境界面に入射する光(入射光)の進行方向との間の角度によって表され、反射角θr は、境界面の法線と境界面で反射した光(反射光)の進行方向とのなす角度によって表されている。
【0028】
また、異なる屈折率の媒質中を進行する光(透過光)の進行方向は、上流側の媒質の屈折率をn1 、下流側の媒質の屈折率をn2 とし、下流側の媒質中を進行する透過光の角度(透過角度θt )とすると、
n1 ・sinθi =n2 ・sinθt
を満足するような透過角度θt の方向に、下流側の媒質中を進行する。ここで、透過角度θt は、屈折率の異なる媒質間の境界面の法線と、透過光の進行方向との間の角度によって表されている。図3(b)には、このようなスネルの法則に従って、入射光の一部が反射するとともに、残りの光が透過光として、異なる媒質中を進行する様子が概念的に示されている。例えば、アクリル樹脂の板の中を進行している光が樹脂の表面に達すると、スネルの法則によって、表面部分で進行方向が曲げられた後に、空気中を進行することになる。ここで、アクリル樹脂の屈折率は約1.5、空気の屈折率は約1.0であり、屈折率の高い媒質から低い媒質中に侵入する場合に相当するから、空気中に入った透過光は、境界面(すなわち、アクリル樹脂の表面)に近付く方向に進行方向が曲げられて、空気中を進行することになる。また逆に、空気中を進行する光がアクリル樹脂内に侵入する場合のように、屈折率の低い媒質から高い媒質中に侵入する場合は、境界面から離れる方向に、光の進行方向が曲げられることになる。
【0029】
上述したスネルの法則から、屈折率の高い媒質中を進行していた光が屈折率の低い媒質との境界に達した場合には、全ての光が反射するような特別な条件が存在していることが分かる。すなわち、上述したように、屈折率の高い媒質から低い媒質中に光が進行する場合、下流側の媒質中を進行する光は、入射してきた方向に対して、若干、境界面の側に進行方向が曲げられる。従って、境界面に入射する光の角度を次第に寝かせて(入射角θi を大きくして)いくと、境界面の向こう側に透過した光の向きは、スネルの法則によって境界面に近付く方向に曲げられるので、ある入射角θi に達した時点で透過光の進行方向が境界面と平行になってしまう。このような状態は、下流側の媒質中に光が侵入できない状態である。更に、この入射角θi よりも寝かせて(大きな角度入射角θi で)境界面に光が入射すると、全ての光が境界面で反射してしまうことを意味している。図3(c)には、このような状態が概念的に示されている。また、このような状態(透過光の進行方向が境界面と平行になる状態)となる入射角θi は、臨界角θc と呼ばれている。
【0030】
これに対して、屈折率の低い媒質中から屈折率の高い媒質中に光が進行しようとする場合には、境界面を透過した光は、スネルの法則によって境界面から遠ざかる方向に曲げられる。このため、透過光の進行方向が境界面と平行になる状態は起こり得ず、臨界角θc は存在しない。
【0031】
以上に説明したように、屈折率の高い媒質中から低い媒質中に光が出ようとする場合には、臨界角θc を考えることができ、境界面に対して臨界角θc よりも大きな角度で(すなわち、境界面に対して寝かせて)光が入射すると、全ての光が境界面で反射してしまい、屈折率の低い媒質中に出ていくことができなくなる。本明細書中では、このような条件を、「完全反射の条件」と呼ぶことにする。ちなみに、アクリル樹脂(屈折率は約1.5)内から空気(屈折率は約1.0)中に光が出ようとする場合には、臨界角θc は約42度となる。
【0032】
本実施例の表示装置100では、上述した完全反射の条件を利用することにより、LED124からの光を、表示板110の表面に印刷されたインク層112まで効率よく導いて、インク層112を光らせている。すなわち、表示板110は、アクリル樹脂あるいはガラスなどの透明材料によって形成されているが、これらの材料は何れも、空気よりは屈折率が大きな媒質である。また、薄い表示板110の端面から光を入射すると、入射された光の大部分は、表示板110の表面に対して浅い角度で(大きな入射角で)進行する。結局、端面から入射した光の中で、表示板110の表面に対して臨界角θc よりも大きな入射角で入射した光については完全反射の条件が成り立ち、その結果、端面から入射した光の多くは表示板110の表面で反射を繰り返しながら、表示板110の内部を進行していくことになる。
【0033】
図3(a)には、透明な表示板110の端面から入射した光が、表示板110の表面で反射を繰り返しながら内部を進行していく様子を、太い破線あるいは太い一点鎖線の矢印によって表されている。尚、端面の近傍では、臨界角θc よりも小さな角度で(すなわち、表面に対して垂直に近い方向から)、表示板110の表面に入射する光も存在する。図3(a)中に細い二点差線で示した矢印は、臨界角θc よりも小さな角度で、表示板110の表面に入射する光を例示したものである。このような光については、完全反射の条件が成り立たないので、光の一部は表示板110の表面を透過して空気中に進行し、残りの光は表示板110の内部に反射する。反射した光は表示板110の内部を通過して反対側の表面に達するが、反対側の表面でも完全反射の条件は成り立っていないので、この表面でも一部の光は空気中に進行し、残りの光は反射して再び表示板110の内部を通過する。完全反射の条件を満たさない光は、こうしたことを繰り返しながら減衰するため、端面から少し進行するまでにほとんど消滅してしまう。そして、それより先の領域では、完全反射の条件を満たした光のみが、表示板110の内部を進行することになる。
【0034】
こうして表示板110の内部を進行した光は、やがて表示板110の表面にインク層112が形成された領域(透明インクで画像が印刷された部分)に到達する。インク層の材質は、表示板110の材質とは違うので、屈折率も完全には一致していないが、表示板110と空気との違いに比べれば、表示板110とインク層112とでは、屈折率が大きく異なることはない(実際には、表示板110の屈折率よりも若干大きく、例えば表示板110がアクリル材料で形成されている場合であれば、アクリルの屈折率である約1.5に対して、1.6程度の屈折率であることが望ましい)。このため、表示板110とインク層112との境界面に達した光は、ほとんど進行方向を曲げられることなく、そのまま境界面を通過して、インク層112の内部を進行する。
【0035】
ここで、画像の印刷には、僅かに微粒子が分散された透明インクが用いられており、表示板110の表面に形成されたインク層112にも、僅かに光散乱微粒子112pが分散した状態となっている。このため、インク層112内を進行する光の一部は、光散乱微粒子112pに衝突して周囲に散乱する。インク層112には、光散乱微粒子112pが均一に分散しているため、透明インクで印刷された画像全体が明るく光って表示されることになる。また、以上の説明から明らかなように、透明インク内に光散乱微粒子を分散させる濃度を上げれば、透明インクで印刷された画像を、より明るく光らせることも可能となる。図3(a)には、インク層112を進行する光が、光散乱微粒子112pに衝突して散乱する様子が、太い破線の矢印、あるいは太い一点鎖線の矢印によって表示されている。
【0036】
一方、光散乱微粒子112pに衝突しなかった光は、そのままインク層112の内部を進行して、インク層112の表面に到達する。上述したように、インク層112の屈折率と表示板110の屈折率とはほぼ同じであるから、インク層112の表面でも完全反射の条件が成立する。このため、インク層112の表面に到達した光は、表面で完全反射した後、インク層112の内部を進行し、更に、表示板110の中へと戻っていく。図3(a)には、インク層112の表面で完全反射した後、再び表示板110の中へと光が戻っていく様子が、細い破線の矢印によって表示されている。
【0037】
尚、表示板110の表面に透明インクによる画像を印刷する場合に限らず、透明インクによる画像を印刷した透明シートを、表示板110の表面に貼り付けた場合にも、同様の現象によって、画像を光らせることができる。すなわち、透明シートの屈折率は、表示板110の屈折率とほぼ同じであるから、表示板110の内部を進行する光にとっては、透明シートも表示板110も、大きな違いはない。このため、透明シートが貼り付けられている部分に到達すると、そのまま直進して、透明シートの表面に到達し、表面に透明インクによる画像が印刷されていれば、上述した原理によって画像を光らせることができる。
【0038】
本実施例の表示装置100は、透明な表示板110の表面に形成されたインク層112の光散乱微粒子112pを光らせることによって、画像を表示している。LED124から放射された光が表示板110の内部を伝播していても、そのことは見えないから、観察者にはあたかも画像自体が光を発しているように見える。しかも、LED124を点灯させていない場合は、表示板110は、注意深く観察しない限り、単なる透明な板にしか見えないから、透明な板の中から光って画像が浮き上がってきたような、たいへんに印象深い表示を行うことが可能となるのである。
【0039】
以上のような表示原理から明らかなように、LED124の発光強度を変えれば、表示板110に表示される画像の明るさを変えることができる。また、LED124の明るさを、一定のパターンで変更すれば、表示される画像の明るさも一定のパターンで変更することができる。あるいは、LED124が光の色を変更可能なLEDであれば、表示される画像の色を変更することも可能である。従って、表示板110の表面に印刷された画像に応じて、適切な光強度で、あるいは適切な発光パターンでLED124を発光させれば、より適切に画像を表示することが可能である。もっとも、どのような光強度、あるいはどのような発光パターンなどが適しているかを、画像に応じて試行錯誤しながら、探さなければならないのでは煩雑である。また、種々の光強度や発光パターンなどを試せるように、観察者がベース部120に設定できるようにしたのでは、ベース部120の構成がたいへんに大掛かりになってしまう。加えて、種々の光強度や発光パターンなどを設定する手間もかかってしまうので、簡便に画像を表示可能であるという表示装置100の特長が大きく減殺されてしまう。こうした点に鑑みて、本実施例の表示装置100では、次のような構成を採用することで、表示板110に印刷された画像を、画像に応じた最適な光強度あるいは発光パターンで表示することを可能としている。
【0040】
C.第1実施例 :
図4は、第1実施例の表示装置100で用いられるベース部120の構成を概念的に示した説明図である。図示されているように、ベース部120にはLED基板126が設けられており、LED基板126は制御部128によって制御されている。第1実施例の表示装置100では、制御部128内には、LED基板126に接続されて個々のLED124を駆動するLEDドライバ128dや、各LED124を駆動する駆動パターンを複数種類記憶したメモリ128mなどが設けられている。図示した例では、パターンA1、パターンA2、パターンB1、パターンB2、パターンC、パターンDの6種類の駆動パターンが記憶されている。
【0041】
また、ベース部120には、データ読取部132も設けられており、ベース部120に表示板110が立設されると、表示板110の表面に貼付されたタグ130からデータを読み出すことが可能となっている。
【0042】
図5は、表示板110の表面に貼付されたタグ130の構造を示した説明図である。図示されるように、タグ130は、ICチップやアンテナが樹脂シート内に埋め込まれて形成されたタグシート130aと、アルミ蒸着された樹脂製の反射シート130bとが接着層によって貼り合わされた二層構造となっている。表示板110の所定位置(図中では、細い破線の矩形で囲った位置)には、このようなタグ130が接着層を介して貼り付けられている。そして、表示板110をベース部120に立設すると、表示板110に貼り付けられたタグ130と、ベース部120に設けられたデータ読取部132とが、ちょうど向き合う位置となるように構成されている。その結果、タグ130のICチップ内に記憶されたデータを、アンテナを介して非接触で読み出すことが可能となる。
【0043】
尚、図3を用いて前述したように、表示板110の内部は、LED124から入射された光が表面で完全反射しながら伝播するようになっている。ここで、タグ130は接着層で貼り付けられているので、接着層の屈折率によっては、前述した完全反射の条件が成り立ち難くなる。また、タグシートを構成する樹脂シートの屈折率も表示板110の屈折率とは異なっており、樹脂シートの屈折率によっては完全反射の条件が成り立ち難くなる。更に加えて、樹脂シート内にはICチップやアンテナなどが埋め込まれているので、これらICチップやアンテナなどに衝突した光は周囲に散乱する。このような理由から、表示板110の端面から入射された光が、タグ130を貼付した箇所で減衰してしまい、それより下流側の画像が暗くなってしまうことも起こり得る。そこで、本実施例では、タグシート130aの上から反射シート130bで覆った二層構造のタグ130が採用されている。こうすれば、タグ130が貼付された箇所で完全反射の条件が崩れたとしても、タグシート130aを突き抜けて表面から出ようとする光を、全て反射シート130bによって反射して、表示板110内に戻すことができるので、タグ130の位置で光が減衰することを抑制することが可能となる。
【0044】
図6は、制御部128のメモリ128m内に記憶された駆動パターンを例示した説明図である。駆動パターンのそれぞれにはパターン番号が付されており、パターン番号によって駆動パターンを特定することが可能である。例えば、パターン番号A1によって特定される駆動パターン(パターンA1)は、時間の経過とともにLED124の発光する光強度が増加し、ある光強度に達するとその光強度を暫く保った後、ゆっくりと光強度が低下して最後には消灯することを繰り返すようなパターンに設定されている。また、パターン番号A2によって特定される駆動パターン(パターンA2)は、パターンA1に較べて、全体的に光強度が弱くなったパターンに設定されている。あるいは、パターン番号B1によって特定される駆動パターン(パターンB1)は、時間の経過とともに光強度がゆっくりと増加し、ある光強度に達すると突然、消灯することを繰り返すようなパターンに設定されている。あるいは、全てのLED124が一斉に光強度を変えるのではなく、例えば一端側のLED124から少しずつタイミングをずらして点灯させ、一定時間経過した後に消灯させるようにすることで、一端側から他端側に向かって光の帯が移動するようなパターンを設定することも可能である。このように、制御部128のメモリ128m内には、複数種類の駆動パターンが記憶されており、これら駆動パターンは、パターン番号によって特定可能となっている。
【0045】
図5を用いて前述したタグ130のICチップ内には、駆動パターンを特定するパターン番号が記憶されている。そして、表示板110をベース部120に装着すると、タグ130のICチップ内に記憶されたパターン番号が、ベース部120のデータ読取部132によって読み出されて、制御部128に入力される。そして、制御部128内のメモリ128mに記憶されている駆動パターンの中から、パターン番号に応じた駆動パターンが特定され、特定された駆動パターンに従ってLEDドライバ128dがLED基板126を駆動することによって、各LED124から駆動パターンに応じて光が放射される。
【0046】
以上に説明したように、本実施例の表示装置100では、表示板110をベース部120に装着すると、タグ130からパターン番号が読み出されて、パターン番号によって特定される駆動パターンに従ってLED124が駆動される。従って、表示板110の表面に透明インクで印刷されている画像に応じて、適切なパターン番号をタグ130に記憶させておけば、表示板110をベース部120に装着するだけで、適切なパターンでLED124を光らせて、表示板110に画像を浮かび上がらせて表示することが可能となる。また、異なる画像が印刷された表示板110に取り替えれば、新たに装着された表示板110のタグ130から新たなパターン番号が読み出され、読み出されたパターン番号に対応する新たな駆動パターンに従ってLED124が駆動される。このように、本実施例の表示装置100では、表示板110を取り替えるだけで、LED124が発光するパターンが切り替わり、表示板110の表面に透明インクで印刷され画像を適切に表示することが可能となる。
【0047】
尚、上述した表示装置100では、タグ130から読み出したパターン番号に対応する駆動パターンが、制御部128のメモリ128mに記憶されていない場合も起こり得る。そこで、メモリ128mに記憶されている複数の駆動パターンの中で標準の駆動パターンを予め決めておき、タグ130から読み出されたパターン番号に対応に対応する駆動パターンがメモリ128mに記憶されていない場合は、標準の駆動パターンを用いてLED124を発光させるようにしても良い。
【0048】
あるいは、記憶したデータを書き換え可能なメモリによってメモリ128mを構成しておき、ベース部120に設けたデータ書込部129を用いて、メモリ128mに新たな駆動パターンを記憶可能としても良い。新たな駆動パターンは、例えば、ベース部120の前面に設けられた操作スイッチ122を用いて作成しても良いし、あるいは外部のコンピュータや携帯電話などから新たな駆動パターンを取得しても良い。更には、タグ130として、外部からデータを書込可能なタグを採用しておき、タグ130内に記憶されているパターン番号を変更可能としても良い。このとき、図4中に破線の矢印で示したように、データ書込部129からデータ読取部132を介して、タグ130のICチップ内に記憶されているパターン番号を書き換えるようにしても良い。データ読取部132は、タグ130内のICチップにアクセスして、記憶されているデータを読み出すことが可能に構成されているから、タグ130内のデータを書き換える際にもデータ読取部132を介してアクセスすれば、特別な装備を追加することなく、タグ130内のデータを簡単に書き換えることが可能となる。
【0049】
また、上述した実施例では、表示板110のタグ130には、1つのパターン番号のみが記憶されているものとして説明した。しかし、タグ130内に複数のパターン番号を記憶しておき、それらのパターン番号に対応する複数の駆動パターンを順繰りに用いてLED124を発光させても良い。あるいは、それら複数の駆動パターンの中から、実際にLED124を駆動するパターンを、ベース部120の操作スイッチ122を用いて切り替えるようにしても良い。
【0050】
上述した実施例では、実際にLED124を駆動するための複数の駆動パターンは、ベース部120側に記憶されており、表示板110側のタグ130には、複数の駆動パターンの中から1つのパターンを特定するためのパターン番号のみが記憶されているものとして説明した。しかし、LED124を駆動するための駆動パターン自体を、表示板110のタグ130に記憶しておくこととしても良い。
【0051】
図7には、このような変形例の表示装置100の大まかな構成が示されている。図7(a)に示されているように、変形例の表示装置100では、表示板110に貼付されたタグ130内に、駆動パターン(図示した例では、パターンA1)が記憶されている。そして、このような表示板110をベース部120に装着すると、タグ130内から駆動パターンが読み出され、データ読取部132を介してベース部120に供給され、供給された駆動パターンに従って、LEDドライバ128dが各LED124を駆動する。このような構成によっても、表示板110の表面に印刷された画像に応じて、適切な駆動パターンをタグ130内に記憶しておくことで、画像に応じた適切なパターンでLED124を発光させ、適切に画像を表示することが可能となる。もちろん表示板110を差し替えてやれば、差し替えた表示板110の画像に応じた新たな駆動パターンが読み出されるので、単に表示板110を差し替えるだけで、LED124の発光パターンを画像に応じた適切な態様に変更することが可能となる。
【0052】
尚、このような変形例の表示装置100では、ベース部120内の制御部128に、複数の駆動パターンを記憶しておく必要がないので、ベース部120の構成を簡素なものとすることができる。これに対して前述した本実施例の表示装置100では、表示板110のタグ130には、パターン番号のみを記憶しておけばよい。従って、例えばバーコードなどのような簡単なタグ130を用いることも可能となる。
【0053】
あるいは、タグ130を、ICチップなど、外部からデータを書き換え可能なメモリによって構成しておき、タグ130に記憶されている駆動パターンを、外部から書き換え可能としてもよい。このとき、図7(b)に示したように、ベース部120にデータ書込部129を設けておき、タグ130から駆動パターンを読み出すデータ読取部132を介して、タグ130のICチップ内に記憶されているパターン番号を書き換えるようにしても良い。図7(b)中に示した破線の矢印は、データ書込部129からデータ読取部132を介して、タグ130内の駆動パターンを書き換える様子を表している。データ読取部132は、タグ130内のICチップにアクセスして、記憶されているデータを読み出すことが可能に構成されているから、タグ130内のデータを書き換える際にもデータ読取部132を介してアクセスすれば、タグ130内のデータを簡単に書き換えることが可能となる。
【0054】
D.第2実施例 :
上述した実施例では、表示板110は1枚だけであるものとして説明した。しかし、前述したように、表示板110は透明な板状部材によって形成されており、表面の画像も透明インクで印刷されているので、LED124の光を入射しない限り、向こうが見通せる状態となっている。そこで、複数枚の表示板110を重ね合わせて、1枚の表示板110を構成しても良い。そして、3枚の表示板110を重ね合わせれば、カラー画像を表示することも可能となる。
【0055】
図8は、カラー画像を表示可能な第2実施例の表示板110を示した説明図である。周知のようにカラー画像は、R(赤)色の画像、G(緑)色の画像、B(青)色の画像を重ねることによって表示することが可能である。また、カラー画像を、R色の画像、G色の画像、B色の画像に分解することは、「分版」と呼ばれることがある。そこで先ず初めに、表示しようとするカラー画像を、R色の画像、G色の画像、B色の画像に分版する。そして、R色の画像はR用の表示板110Rに、G色の画像はG用の表示板110Gに、B色の画像はB用の表示板110Bに、それぞれ透明インクを用いて印刷しておく。
【0056】
こうして形成したR用の表示板110R、G用の表示板110G、B用の表示板110Bを重ね合わせて、1枚の表示板110を構成する。ここで、表示板110を重ね合わせた時に表示板110の表面同士が接触しないように、表示板110の表面には小さな突起116が形成されている。この突起116は、透明インクを印刷することによって形成しても良いし、表示板110の表面に小さな部材を接着することによって形成しても良い。表示板110の表面同士が接触してはいけない理由については後述する。また、これら表示板110R,110G,110Bの何れかの表面には、タグ130を貼付しておく。
【0057】
こうして3つの表示板110R,110G,110Bを重ねて構成した表示板110を、ベース部120の上面に設けられた溝に装着する。図9は、カラー画像を表示可能な第2実施例のベース部120の溝に表示板110が装着されている様子を示した説明図である。図9では、ベース部120を、側方(表示板110の表面に沿った方向)から見た様子が示されている。図示されているように、第2実施例では、ベース部120の溝の底部には、赤色の光を発する赤色LED124Rと、緑色の光を発する緑色LED124Gと、青色の光を発する青色LED124Bとが、一列に設けられている。そして、表示板110が装着された時に、赤色LED124Rには、R用の表示板110Rの端面が向かい合う位置となり、緑色LED124Gには、G用の表示板110Gの端面が向かい合い、そして、青色LED124Bには、B用の表示板110Bの端面が向かい合うように構成されている。従って、赤色LED124Rを点灯すれば、赤色の光がR用の表示板110Rの内部に入射され、表示板110Rの表面に透明インクで印刷された画像(分版されたR画像)を赤色に浮き上がらせる。同様に、緑色LED124Gを点灯すれば、G用の表示板110Gに印刷されたG画像が緑色に浮き上がり、青色LED124Bを点灯すれば、B用の表示板110Bに印刷されたB画像が青色に浮き上がる。その結果、これらR画像、G画像、B画像が合成されて、透明な表示板110にカラー画像が表示されることになる。
【0058】
ここで、複数の表示板110を重ね合わせる時に、表示板110の表面同士が接触してはいけない理由について説明する。仮に、表示板110の表面同士が接触している箇所が存在すると、一方の表示板110の内部を伝播してきた光が、接触している箇所から隣の表示板110の中に侵入してしまい、隣の表示板110に印刷された画像を光らせてしまう。上述した例では、R用の表示板110Rを伝播している光は赤色の光であるから、この光が隣にあるG用の表示板110Gの中に侵入すると、本来は緑色に光るべきG画像が赤色に光ってしまう。その結果、元のカラー画像と同じ色合いで画像を表示することができなくなってしまう。また、表示板110の表面同士が接触していると、その周辺には表示板110の表面同士の間隔が光の波長と同程度となる領域が発生し、この部分で光の干渉によってニュートンリングと呼ばれる縞模様が発生することがある。このような縞模様は意図しない邪魔な縞模様であり、画像の表示品質を大きく悪化させることがある。これらの理由から、複数枚の表示板110を重ね合わせる際には、それら表示板110の表面同士が接触しないようにしておくことが重要となる。そこで、第2実施例の表示板110では、表示板110の表面に小さな突起116を形成しておくことで、隣接する表示板110との間に、突起116の高さに相当する隙間が確保されるようになっている。
【0059】
以上に説明したように、第2実施例の表示装置100では、3枚重ねの表示板110にカラー画像が浮かび上がるように表示することができる。また、表示板110の表面に貼付したタグ130に、適切なパターン番号(あるいは駆動パターン)を記憶しておくことで、表示する画像に応じた適切な態様で、画像を表示することが可能となる。
【0060】
加えて、第2実施例の表示装置100では、赤色LED124R、緑色LED124G、青色LED124Bを別々に発光させることができるので、各LEDが発光する光強度を変更することによって、表示するカラー画像の色合いを変更することも可能となる。例えば、初めは赤色LED124Rの光強度を少し強めに設定し、次は緑色LED124Gの光強度を少し強めとし、最後は青色LED124Bの光強度を少し強めとするような駆動パターンを設定しておく。そして、その駆動パターンに対応するパターン番号(あるいは駆動パターン自体)をタグ130に記憶しておけば、表示板110に表示されるカラー画像の色合いを、初めは赤みがかった色合いから、緑がかった色合いとなり、最後に青みがかった色合いに変化させて表示することも可能となる。
【0061】
尚、上述した第2実施例では、表示板110の表面同士が接触しないように、表示板110の表面に小さな突起116を設けるものとして説明した。しかし、突起116を設ける代わりに、細い枠状のスペーサ110Sを表示板110と表示板110との間に挟むようにしてもよい。図10は、スペーサ110Sを挟んで複数の表示板110を重ね合わせている様子を示した説明図である。図示されているように、スペーサ110Sは、画像が表示される部分がくり抜かれて、枠状の形状をしているので、このようなスペーサ110Sを間に挟むようにして表示板110を重ね合わせてやれば、表示板110の表面同士が接触することを回避することができる。
【0062】
また、重ね合わせて形成された表示板110の側面には、表示板110と表示板110との間の隙間がスペーサ110Sによって塞がれているので、埃などの異物が混入する虞もない。
【0063】
尚、スペーサ110Sを透明な材料で形成しておけば、複数の表示板110を重ね合わせて形成された表示板110も、全体を透明に保っておくことができる。もっとも、この場合、スペーサ110Sの部分を介して隣の表示板110の光が侵入してしまうので、この影響を抑制するためには、スペーサ110Sはできるだけ細い(表示板110との接触部分の幅が狭い)形状としておくことが望ましい。これに対して、スペーサ110Sを不透明な材料で構成しておけば、スペーサ110Sの部分を介して隣の表示板110の光が侵入してしまうことを回避することが可能となる。しかし、その反面で、不透明な材料で構成されたスペーサ110Sは目立ち易いので、できるだけ厚さが薄く、幅も狭いスペーサ110Sとしておく必要がある。
【0064】
また、以上では、カラー画像を表示する第2実施例について説明したが、第2実施例の表示装置100は、カラー画像を表示する態様に限られるものではない。例えば、2枚の表示板110a,110bを重ねて1枚の表示板110を構成し、それぞれの表示板110a,110bの端面から、別々にLED124の光を入射可能としておく。このようにしておけば、一方の表示板110aにのみ光を入射してやれば、その表示板110aに印刷された画像のみを表示させることができる。また、他方の表示板110bにのみ光を入射してやれば、表示板110bに印刷された画像のみを表示させることができる。更に、2つの表示板110a,110bに同時に光を入射してやれば、2つの表示板110a,110bに印刷された画像を同時に表示させることができる。このような態様においても、何れか1つの表示板110にタグ130を貼付しておき、タグ130内に適切な駆動パターンを記憶しておけば、それぞれの表示板110に印刷された画像を切り替えながら、適切な態様で光らせて画像を表示することが可能となる。
【0065】
以上、本発明について各種の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施例の表示装置の大まかな構成を示した説明図である。
【図2】ベース部の構造を示した説明図である。
【図3】透明な表示板の表面に透明インクで印刷された画像が浮かび上がるように表示される原理を示した説明図である。
【図4】第1実施例の表示装置で用いられるベース部の構成を概念的に示した説明図である。
【図5】表示板の表面に貼付されたタグの構造を示した説明図である。
【図6】制御部のメモリ内に記憶された駆動パターンを例示した説明図である。
【図7】変形例の表示装置の大まかな構成を示した説明図である。
【図8】カラー画像を表示可能な第2実施例の表示板を示した説明図である。
【図9】カラー画像を表示可能な第2実施例のベース部に表示板が装着されている様子を示した説明図である。
【図10】スペーサを挟んで複数の表示板を重ね合わせている様子を示した説明図である。
【符号の説明】
【0067】
100…表示装置、 110,110B,110G,110B…表示板、
110S…スペーサ、 112…インク層、 112p…光散乱微粒子、
116…突起、 120…ベース部、 122…操作スイッチ、
124…LED、 124B…青色LED、 124G…緑色LED、
124R…赤色LED、 126…LED基板、 128…制御部、
128d…LEDドライバ、 128m…メモリ、 129…データ書込部、
130…タグ、 130a…タグシート、 130b…反射シート、
132…データ読取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の画像を表示する表示装置であって、
透明な板状部材の表面に透明なインクによる前記所定の画像が印刷された表示板と、
前記表示板が着脱可能な態様で立設されるベース部と、
前記ベース部に立設された前記表示板の端面から、該表示板の内部に向けて光を入射する光入射部と
を備え、
前記表示板は、前記表面に印刷された画像に対応する所定の特定情報が読み出し可能に記憶された表示板であり、
前記ベース部は、立設された前記表示板から前記特定情報を読み出す特定情報読出部を備えており、
前記光入射部は、読み出された前記特定情報に応じた態様で、前記表示板の内部に光を入射する光入射部である表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記表示板は、前記光入射部が該表示板の内部に向けて光を入射する態様を記述した態様記述データを、前記特定情報として記憶した表示板であり、
前記光入射部は、前記特定情報の前記態様記述データに記述された態様で、前記表示板の内部に光を入射する光入射部である表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表示装置であって、
前記ベース部は、前記光入射部が該表示板の内部に向けて光を入射する態様を記述した態様記述データを、複数種類記憶している態様記述データ記憶部を備え、
前記表示板は、前記態様記述データ記憶部に記憶されている複数種類の前記態様記述データの中から1の態様記述データを特定するための情報を、前記特定情報として記憶した表示板であり、
前記光入射部は、前記特定情報によって特定された前記態様記述データが記述する態様で、前記表示板の内部に光を入射する光入射部である表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載の表示装置であって、
前記態様記述データ記憶部は、前記態様記述データを書き換え可能な態様で記憶した記憶部であり、
前記ベース部は、前記態様記述データ記憶部に対して前記態様記述データを書き込む態様記述データ書込部を備えている表示装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の表示装置であって、
前記表示板は、前記特定情報を書き換え可能な態様で記憶した表示板であり、
前記特定情報読出部は、前記ベース部に立設された前記表示板に対して、前記特定情報の書き込みが可能に構成された読出部である表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−49118(P2010−49118A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214746(P2008−214746)
【出願日】平成20年8月24日(2008.8.24)
【出願人】(000106690)サン電子株式会社 (161)
【Fターム(参考)】