説明

表示装置

【課題】逆テーパ形状の隔壁が備えられる表示装置において、複数の有機EL素子にわたって連なる第2電極が形成されうる表示装置を提供する。
【解決手段】支持基板と、前記支持基板上に設けられる複数の有機EL素子と、平面視で各有機EL素子の外周をそれぞれ囲むように設けられる隔壁とを備える表示装置であって、前記隔壁は、平面視で、前記有機EL素子の外周のうちの一部に面して設けられる第1の隔壁と、前記有機EL素子の外周のうちの前記一部を除く残余の部分に面して設けられる第2の隔壁とを有し、前記第1の隔壁は、その側面とその底面との成す角が鋭角の順テーパ形状の隔壁であり、前記第2の隔壁は、その側面とその底面との成す角が鈍角の逆テーパ形状の隔壁である、表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置にはその構成や原理を異にする種々の装置がある。そのひとつとして、画素の光源に有機EL(Electro Luminescence)素子を利用した表示装置が実用化されつつある。
【0003】
上記表示装置は、支持基板と、この支持基板上に設けられる多数の有機EL素子とを備える。支持基板上には画素領域を区画する隔壁が設けられており、上記多数の有機EL素子は、隔壁によって区画された領域にそれぞれ整列して配置される。
【0004】
各有機EL素子は、第1電極、有機層、第2電極を支持基板側からこの順で積層することにより形成される。
【0005】
上記有機層はたとえば塗布法によって形成することができる。図16を参照して有機層18の形成方法について説明する。図16(1)に示すように、まず支持基板12上に第1電極16および隔壁13を形成する。つぎに、隔壁13に囲まれた領域(凹部)15に、有機層18となる材料を含むインク17を供給する。供給されたインク17は隔壁13に囲まれた領域15に収容される(図16(2)参照)。その後、インク17の溶剤成分が気化することにより、有機層18が形成される(図16(3)参照)。つぎに図16(4)に示すように第2電極19を形成する。この第2電極19はたとえば複数の有機EL素子にわたって共通する電極として設けられる。たとえば隣り合う有機EL素子の間に介在する隔壁13上にも導電性薄膜を形成することにより、複数の有機EL素子にわたって連なる第2電極19を形成する。このような第2電極19はたとえば真空蒸着法によって形成される。
【0006】
なお図16(2)において、隔壁13がインク17に対して親液性を示す場合、特定の凹部15に供給されたインクが、隔壁13の表面を伝って隣の凹部15にまで流出することがある。このようなインクの流出を防ぐために、一般に支持基板12上にはある程度撥液性を示す隔壁13が設けられている。
【0007】
しかしながら隔壁13が撥液性を示す場合、凹部15に供給されたインクは、隔壁13に弾かれつつ気化し、薄膜化する。そのため膜厚が不均一な有機層18が形成されることがある。たとえば凹部15の形状によっては、有機層18の隔壁13に接する所定の部位(すなわち有機層18の周縁部)が、中央部の膜厚に比べて薄くなることがある。そうすると、有機層18の周縁部の電気抵抗が中央部に比べて低くなり、有機EL素子を駆動するさいに周縁部に電流が集中して流れ、中央部が周縁部に比べて暗くなることがある。また逆に、有機層18の周縁部に所望の膜厚の層が形成されないため、有機層18の周縁部が意図したとおりには発光しないこともある。
【0008】
このような問題を解決するために、いわゆる逆テーパ形状の隔壁を設けた表示装置がある。その模式図を図17に示す。逆テーパ形状の隔壁13は、支持基板12から離間するにしたがってその断面形状が幅広になるように形成されている。そのため隔壁13の側面と第1電極16とが接する部位に、先細状の領域が形成される。このような逆テーパ形状の隔壁13に囲まれた領域15にインクを供給すると、隔壁13の側面に接触したインクは、毛細管現象によって上記先細状の領域に吸い込まれるように充填される。この状態を維持したままインクの溶剤成分が気化すると、第1電極16と隔壁13とが接する部位にも有機層18が形成される。このように、いわゆる逆テーパ形状の隔壁13を設けることによって、たとえ撥液性を示す隔壁13が設けられていたとしても、有機層18の所定の部位が薄膜化するという問題を防ぐことができる(図17(2)参照)(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−227289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図17に示すような逆テーパ形状の隔壁13が設けられた基板に、上記共通の第2電極19を真空蒸着法によって形成すると、第2電極19の膜厚が薄い場合には、隔壁の端部で第2電極19が切断されることがある(図17(3)参照)。その結果、表示装置を駆動するさいに、意図したとおりには電力が供給されずに、発光しない有機EL素子が形成されることがある。
【0011】
したがって本発明の目的は、逆テーパ形状の隔壁が備えられる表示装置において、複数の有機EL素子にわたって連なる第2電極が形成されうる表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、支持基板と、
前記支持基板上に設けられる複数の有機EL素子と、
平面視で各有機EL素子の外周をそれぞれ囲むように設けられる隔壁とを備える表示装置であって、
前記隔壁は、平面視で、前記有機EL素子の外周のうちの一部に面して設けられる第1の隔壁と、前記有機EL素子の外周のうちの前記一部を除く残余の部分に面して設けられる第2の隔壁とを有し、
前記第1の隔壁は、その側面とその底面との成す角が鋭角の順テーパ形状の隔壁であり、前記第2の隔壁は、その側面とその底面との成す角が鈍角の逆テーパ形状の隔壁である、表示装置に関する。
【0013】
また本発明は、前記第1の隔壁は、前記支持基板の厚み方向に垂直な第1の方向にそれぞれ延在し、前記厚み方向および前記第1の方向にそれぞれ垂直な第2の方向に所定の間隔をあけて配置される複数本の順テーパ隔壁から構成され、
平面視で前記第1の隔壁と前記第2の隔壁とが重なる部位では、前記第2の隔壁は、前記支持基板と前記第1の隔壁との間に設けられる、前記の表示装置に関する。
【0014】
また本発明は、前記有機EL素子は前記支持基板の厚み方向に垂直な所定の方向に延在する形状を有し、
前記第1の隔壁は、前記有機EL素子の短手方向の一方および他方の端面に面して配置され、
前記第2の隔壁は、前記有機EL素子の長手方向の一方および他方の端面に面して前記第2の隔壁が配置される、前記の表示装置に関する。
【0015】
また本発明は、前記隔壁が、感光性樹脂組成物がパターニングされることにより得られる、前記の表示装置に関する。
【0016】
また本発明は、前記の表示装置の製造方法であって、
支持基板上に隔壁を形成する工程と、
支持基板上に複数の有機EL素子を形成する工程とを含み、
隔壁を形成する工程では、フォトリソグラフィ法によって感光性樹脂組成物をパターニングすることにより、第1の隔壁と第2の隔壁とを形成する、表示装置の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、逆テーパ形状の隔壁が備えられる表示装置において、複数の有機EL素子にわたって連なる第2電極が形成される表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】表示装置1の一部を拡大して模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す切断面線A−Aで切断した表示装置を拡大して模式的に示す断面図である。
【図3】図1に示す切断面線B−Bで切断した表示装置を拡大して模式的に示す断面図である。
【図4】図1に示す切断面線C−Cで切断した表示装置を拡大して模式的に示す断面図である。
【図5】図1に示す切断面線D−Dで切断した表示装置を拡大して模式的に示す断面図である。
【図6】図1に示す切断面線E−Eで切断した表示装置を拡大して模式的に示す断面図である。
【図7】製造装置の製造工程を説明するための図である。
【図8】製造装置の製造工程を説明するための図である。
【図9】製造装置の製造工程を説明するための図である。
【図10】製造装置の製造工程を説明するための図である。
【図11】製造装置の製造工程を説明するための図である。
【図12】製造装置の製造工程を説明するための図である。
【図13】製造装置の製造工程を説明するための図である。
【図14】製造装置の製造工程を説明するための図である。
【図15】製造装置の製造工程を説明するための図である。
【図16】表示装置の製造工程を説明するための図である。
【図17】表示装置の製造工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の表示装置は、支持基板と、前記支持基板上に設けられる複数の有機EL素子と、平面視で各有機EL素子の外周をそれぞれ囲むように設けられる隔壁とを備える表示装置であって、前記隔壁は、平面視で、前記有機EL素子の外周のうちの一部に面して設けられる第1の隔壁と、前記有機EL素子の外周のうちの前記一部を除く残余の部分に面して設けられる第2の隔壁とを有し、前記第1の隔壁は、その側面とその底面との成す角が鋭角の順テーパ形状の隔壁であり、前記第2の隔壁は、その側面とその底面との成す角が鈍角の逆テーパ形状の隔壁である、表示装置である。
【0020】
本発明は複数の有機EL素子の各第2電極が連なって形成される表示装置に適用される。このような表示装置として本実施形態では一例としてアクティブマトリクス駆動型の表示装置について説明する。
【0021】
<表示装置の構成>
まず表示装置の構成について説明する。図1は本実施形態の表示装置1の一部を拡大して模式的に示す断面図である。図2は図1に示す切断面線A−Aで切断した表示装置を拡大して模式的に示す断面図である。図3は図1に示す切断面線B−Bで切断した表示装置を拡大して模式的に示す断面図である。図4は図1に示す切断面線C−Cで切断した表示装置を拡大して模式的に示す断面図である。図5は図1に示す切断面線D−Dで切断した表示装置を拡大して模式的に示す断面図である。図6は図1に示す切断面線E−Eで切断した表示装置を拡大して模式的に示す断面図である。
【0022】
表示装置1はおもに支持基板2と、この支持基板2上において予め設定される区画を画成する隔壁3と、隔壁3によって画成される区画に設けられる複数の有機EL素子4とを含んで構成される。
【0023】
隔壁3は平面視で各有機EL素子4の外周をそれぞれ囲むように設けられる。なお本明細書において「平面視で」とは、支持基板2の厚み方向Zの一方から支持基板2を見た態様を意味する。隔壁3は平面視で各有機EL素子4の外周をそれぞれ囲むように設けられればよく、たとえば平面視で各有機EL素子4が設けられる領域を除く領域に設けられる。本実施形態では後述するように複数の有機EL素子4はそれぞれマトリクス状に配置されており(図1参照)、隔壁3は、マトリクス状に配置される有機EL素子4を除く領域に設けられる。そのため隔壁3は支持基板2上において格子状に形成される。なお図1では有機EL素子4の設けられる領域にハッチングを施している。
【0024】
支持基板2上には、隔壁3と支持基板2とによって規定される複数の凹部5が設定される。この凹部5が、隔壁3によって画成される区画に相当する。
【0025】
支持基板2上には格子状の隔壁3が設けられるため、本実施形態では平面視で複数の凹部5がマトリクス状に配置されている。すなわち凹部5は行方向Xに所定の間隔をあけるとともに、列方向Yにも所定の間隔をあけて整列して設けられている。各凹部5の平面視における形状はとくに限定されない。たとえば凹部5は、平面視で略矩形状や略楕円形状などに形成される。本実施形態では平面視で略楕円形状の凹部5が設けられている。なお本明細書において上記の行方向Xおよび列方向Yは、支持基板の厚み方向Zに垂直な方向であって、かつ互いに垂直な方向を意味する。
【0026】
隔壁3は第1の隔壁3aと第2の隔壁3bとを含んで構成されている。第1の隔壁3aは、平面視で、有機EL素子4の外周のうちの一部に面して設けられる。第2の隔壁3bは、前記有機EL素子4の外周のうちの前記一部を除く残余の部分に面して設けられる。すなわち有機EL素子4の外周は、一部が第1の隔壁3aに接しており、前記一部を除く残部が第2の隔壁3bに接している。このように有機EL素子4の外周は、第1の隔壁3aと第2の隔壁3bとによって囲まれている(とくに図1、図2、図5参照)。
【0027】
本実施形態では隔壁は格子状に形成されるため、隔壁は、行方向Xに延在する複数本の隔壁部材と、列方向Yに延在する複数本の隔壁部材とを含んで構成される。本実施形態における隔壁3は、列方向Yに延在する複数本の第1の隔壁3aと、行方向Xに延在する複数本の第2の隔壁3bとから構成される。複数本の第1の隔壁3aは、それぞれ行方向Xに隣り合う有機EL素子4の間に設けられる。また複数本の第2の隔壁3bは、それぞれ列方向Yに隣り合う有機EL素子4の間に設けられる。このように隔壁3を配置することにより、有機EL素子4の行方向Xの一方および他方の端面には第1の隔壁3aが接して設けられる(図2参照)。他方、有機EL素子4の列方向Yの一方および他方の端面には、第2の隔壁3bが接して設けられる(図5参照)。
【0028】
第1の隔壁3aは、その側面とその底面との成す角θ1が鋭角の順テーパ形状の隔壁である(図2参照)。他方、第2の隔壁3bは、その側面とその底面との成す角θ2が鈍角の逆テーパ形状の隔壁である(図5参照)。
【0029】
なお第1の隔壁3aの底面とは、第1の隔壁3aの外周面のうちで最も支持基板2寄りの平面を意味する。また第1の隔壁3aの側面とは、第1の隔壁3aの外周面のうちで最も支持基板2から離間した平面(上面)と底面とを除く面を意味する。そして、第1の隔壁3aの側面と、第1の隔壁3aの底面との成す角θ1とは、第1の隔壁3aの延在する方向(本実施形態では列方向Y)に垂直な平面で第1の隔壁3aを切断したときの断面における角度を意味する。
【0030】
第2の隔壁3bの底面とは、第2の隔壁3bの外周面のうちで最も支持基板2寄りの平面を意味する。また第2の隔壁3bの側面とは、第2の隔壁3bの外周面のうちで最も支持基板2から離間した平面(上面)と底面とを除く面を意味する。そして、第2の隔壁3bの側面と、第2の隔壁3bの底面との成す角θ2とは、第1の隔壁3aの延在する方向(本実施形態では行方向X)に垂直な平面で第1の隔壁3bを切断したときの断面における角度を意味する。
【0031】
本実施形態では列方向Yに延在する複数本の第1の隔壁3aと行方向Xに延在する複数本の第2の隔壁3bとは平面視で重なる。第1の隔壁3aと第2の隔壁3bとが重なる部位では第1の隔壁3aと第2の隔壁3bとのうちで、どちらが支持基板2寄りに配置されてもよいが、第2の隔壁3bが、第1の隔壁3aよりも支持基板2寄りに配置されることが好ましい。すなわち第1の隔壁3aと第2の隔壁3bとが重なる部位では、前記第2の隔壁は、前記支持基板と前記第1の隔壁との間に設けられることが好ましい。このように第1の隔壁3aを配置すると、後述するように第1の隔壁3a上に形成される導電性薄膜10aが切断されるおそれがなくなり、第1の隔壁3aの延在方向(本実施形態では列方向Y)に隣り合う有機EL素子4の第2電極10が、第1の隔壁3a上の導電性薄膜10aを介して確実に連なるからである。
【0032】
角θ1は、通常10°〜85°であり、30°〜60°が好ましい。また角θ2は通常95°〜170°であり、110°〜135°が好ましい。
【0033】
有機EL素子4は隔壁3によって画成される区画(すなわち凹部5)に設けられる。本実施形態のように格子状の隔壁3が設けられる場合、各有機EL素子4はそれぞれ各凹部5に設けられる。すなわち有機EL素子4は、各凹部5と同様にマトリクス状に配置され、支持基板2上において、行方向Xに所定の間隔をあけるとともに、列方向Yにも所定の間隔をあけて整列して設けられている。
【0034】
本実施形態では3種類の有機EL素子4が設けられる。すなわち(1)赤色の光を出射する赤色有機EL素子4R、(2)緑色の光を出射する緑色有機EL素子4G、および(3)青色の光を出射する青色有機EL素子4Bが設けられる。これら3種類の有機EL素子4R,4G,4Bは、たとえば以下の(I)(II)(III)の行を、列方向Yにこの順で繰り返し配置することによって、それぞれ整列して配置される(図1参照)。
(I)赤色有機EL素子4Rが行方向Xにそれぞれ所定の間隔をあけて配置される行。
(II)緑色有機EL素子4Gが行方向Xにそれぞれ所定の間隔をあけて配置される行。
(III)青色有機EL素子4Bが行方向Xにそれぞれ所定の間隔をあけて配置される行。
【0035】
なお他の実施の形態として、上記3種類の有機EL素子に加えて、たとえば白色の光を出射する有機EL素子がさらに設けられてもよい。また1種類のみの有機EL素子を設けることによって、モノクロ表示装置を実現してもよい。
【0036】
有機EL素子4は、第1電極、有機層、第2電極が、支持基板側からこの順で積層されて構成される。有機EL素子4は有機層として少なくとも1層の発光層を備える。なお有機EL素子は、1層の発光層に加えて、必要に応じて発光層とは異なる層をさらに備えることもある。たとえば第1電極6と第2電極10との間には、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、電子輸送層、および電子注入層などが設けられる。また第1電極6と第2電極10との間には2層以上の発光層が設けられることもある。さらには第1電極6と第2電極10との間には無機層、または有機物と無機物とを含む混合層が設けられることもある。
【0037】
有機EL素子4は、陽極および陰極からなる一対の電極として、第1電極6と第2電極10とを備える。第1電極6および第2電極10のうちの一方の電極は陽極として設けられ、他方の電極は陰極として設けられる。
【0038】
本実施形態では一例として、陽極として機能する第1電極6、正孔注入層として機能する第1の有機層7、発光層として機能する第2の有機層9、陰極として機能する第2電極10がこの順で支持基板2上に積層されて構成される有機EL素子4について説明する。
【0039】
本実施形態では3種類の有機EL素子が設けられるが、これらは第2の有機層(本実施形態では発光層)9の構成がそれぞれ異なる。赤色有機EL素子4Rは赤色の光を放射する赤色発光層9Rを備え、緑色有機EL素子4Gは緑色の光を放射する緑色発光層9Gを備え、青色有機EL素子4Bは青色の光を放射する青色発光層9Bを備える。
【0040】
本実施形態では第1電極6は有機EL素子4ごとに設けられる。すなわち有機EL素子4と同数の第1電極6が支持基板2上に設けられる。第1電極6は有機EL素子4の配置に対応して設けられ、有機EL素子4と同様にマトリクス状に配置される。なお本実施形態の隔壁3は、おもに第1電極6を除く領域に格子状に形成されるが、さらに第1電極6の周縁部を覆うように形成されている(図2、図3、図5参照)。
【0041】
正孔注入層として機能する第1の有機層7は、凹部5において第1電極6上にそれぞれ設けられる。この第1の有機層7は、必要に応じて、有機EL素子の種類ごとにその材料または膜厚を異ならせて設けられる。なお第1の有機層7の形成工程の簡易さの観点からは、同じ材料、同じ膜厚で全ての第1の有機層7を形成することが好ましい。
【0042】
発光層として機能する第2の有機層9は、凹部5において第1の有機層7上に設けられる。上述したように発光層は有機EL素子の種類に応じて設けられる。そのため赤色発光層9Rは赤色有機EL素子4Rが設けられる凹部5に設けられ、緑色発光層9Gは緑色有機EL素子4Gが設けられる凹部5に設けられ、青色発光層9Bは青色有機EL素子4Bが設けられる凹部5に設けられる。
【0043】
本実施形態では、有機EL素子4が設けられる表示領域において一面に導電性薄膜が形成される。すなわち導電性薄膜は、第2の有機層9上のみならず隔壁3上にも形成される。この導電性薄膜のうちで、第2の有機層9上に設けられるものを本明細書では第2電極10と記載する。
【0044】
なお第2電極10は、逆テーパ形状の第2の隔壁3bの端部で切断されることがある。たとえば図3および図5では、平面視で有機EL素子4と第2の隔壁3bとが接する第2の隔壁3bの端部で、第2電極10が切断された状態を示している。他方、図2および図5に示すように、順テーパ形状の第1の隔壁3aの端部では、第2電極10が切断されることはない。このように第1の隔壁3a上に形成された導電性薄膜10aと、有機EL素子4の第2電極10とは連なって形成される。そのため、行方向Xに隣り合う有機EL素子4の第2電極10が、第1の隔壁3a上の導電性薄膜10aを介して連なって形成されている。さらに本実施形態では第1の隔壁3aが列方向Yに延在して形成されているため、列方向Yに隣り合う有機EL素子4の第2電極10が、第1の隔壁3a上の導電性薄膜10aを介して連なって形成されている。これによって、第1の隔壁3a上の導電性薄膜10aを介してすべての有機EL素子の第2電極10が連なるように形成される。そのため第2電極10がすべての有機EL素子4に共通する電極として機能する。
【0045】
以上の実施形態では隔壁3は、第1電極6の周縁部を覆って、支持基板2に接して設けられているが、他の実施形態として、隔壁3と支持基板2との間に、さらに絶縁膜を設けてもよい。絶縁膜はたとえば隔壁と同様に格子状に形成され、第1電極6の周縁部を覆って形成される。このような絶縁膜は好ましくは隔壁3よりも親液性を示す材料によって形成される。
【0046】
以下、図7〜図15を参照しつつ表示装置の製造方法について説明する。なお各図中の(1)は形成途中の1つの有機EL素子を拡大して模式的に示す平面図であり、(2)は図1の切断面線A−Aで切断したときの表示装置に対応する位置での形成途中の1つの有機EL素子を拡大して模式的に示す断面図であり、(3)は図1の切断面線D−Dで切断したときの表示装置に対応する位置での形成途中の1つの有機EL素子を拡大して模式的に示す断面図である。なお各図の各(1)〜(3)において、対応する部材の縮尺は必ずしも相互に対応しているわけではない。
【0047】
(支持基板を用意する工程)
本工程では第1電極6がそのうえに形成された支持基板2を用意する(図7参照)。なお本工程では第1電極6がそのうえに形成された支持基板を市場から入手することによって、第1電極6が形成された支持基板2を用意してもよい。また本工程において支持基板2上に第1電極6を形成してもよい。
【0048】
アクティブマトリクス型の表示装置の場合、複数の有機EL素子を個別に駆動するための回路が予め形成された基板を支持基板2として用いることができる。たとえばTFT(Thin Film Transistor)およびキャパシタなどが予め形成された基板を支持基板として用いることができる。
【0049】
まず支持基板2上に複数の第1電極6をマトリクス状に形成する。第1電極6は、たとえば支持基板2上の一面に導電性薄膜を形成し、これをフォトリソグラフィー法によってマトリクス状にパターニングすることによって形成される。またたとえば所定の部位に開口が形成されたマスクを支持基板2上に配置し、このマスクを介して支持基板2上の所定の部位に導電性材料を選択的に堆積することにより第1電極6をパターン形成してもよい。第1電極6の材料については後述する。
【0050】
(隔壁を形成する工程)
本工程では隔壁を形成する。隔壁は、たとえば(1)フォトリソグラフィ法によって感光性樹脂組成物をパターニングすることにより、逆テーパ形状の隔壁および順テーパ形状の隔壁を形成することができ、また(2)フォトリソグラフィ法で感光性樹脂組成物をパターニングしてまず逆テーパ形状の隔壁を形成し、次に、形成した逆テーパ形状の隔壁のうちで逆テーパ形状の隔壁として残す部分をレジストで覆い、ドライエッチング法によって隔壁を順テーパ形状に加工することにより、逆テーパ形状の隔壁および順テーパ形状の隔壁を形成することができる。
【0051】
本実施形態ではまず第2の隔壁3bを形成する。フォトリソグラフィ法によって隔壁を形成する場合、まず感光性樹脂組成物を前記支持基板上に塗布成膜する(図8参照)。感光性樹脂組成物の塗布方法としては、たとえばスピンコート法やスリットコート法などを挙げることができる。
【0052】
感光性樹脂組成物を前記支持基板2上に塗布成膜した後、通常はプリベークをおこなう。たとえば80℃〜110℃の温度で、60秒〜180秒間、支持基板を加熱することによってプリベークをおこなう。このプリベークをおこなうことによって、感光性樹脂組成物中の溶剤成分を除去し、第2の隔壁形成用膜8bを形成する。
【0053】
つぎに支持基板上に所定のパターンの光を遮光するフォトマスク21bを配置し、このフォトマスク21bを介して、第2の隔壁形成用膜8bを露光する。感光性樹脂には、ポジ型およびネガ型の樹脂があるが、本工程ではいずれの樹脂を用いてもよい。ポジ型の感光性樹脂を使用した場合には、第2の隔壁形成用膜8bのうち、主に第2の隔壁3bが形成されるべき部位を除く残余の部位に光を照射する。またネガ型の感光性樹脂を使用した場合には、第2の隔壁形成用膜8bのうち、主に第2の隔壁3bが形成されるべき部位に光を照射する。本工程ではネガ型の感光性樹脂を使用した場合について、図8を参照して説明する。図8に示すように、支持基板2上にフォトマスク21bを配置し、このフォトマスク21bを介して光を照射することによって、第2の隔壁形成用膜8bのうち、主に第2の隔壁3bが形成されるべき部位に光を照射する。なお図8(1)では露光時に遮光される領域にハッチングを施している。また図8(2)(3)では第2の隔壁形成用膜8bに照射する光を模式的に矢印記号で示している。
【0054】
つぎに現像をおこなう。これによって第2の隔壁3bがパターン形成される(図9参照)。現像後、ポストベークをおこなう。たとえば200℃〜230℃の温度で、15分〜60分間、基板を加熱することによってポストベークをおこない、第2の隔壁3bを硬化する。このようにポストベークをおこなうことにより、後述する第1の隔壁3aを形成するさいの現像工程において、第2の隔壁3bがエッチングされることを防ぐことができる。なお図9(1)では第2の隔壁3bに対応する部位にハッチングを施している。
【0055】
本実施形態ではいわゆる逆テーパ形状の第2の隔壁3bを形成するが、隔壁側面と底面との成す角θ2は、後述する要素を適宜調整することによって、適宜調整することができる。
【0056】
つぎに本実施形態では第1の隔壁3aを形成する。フォトリソグラフィ法によって隔壁を形成する場合、まず感光性樹脂組成物を前記支持基板上に塗布成膜する(図10参照)。感光性樹脂組成物の塗布方法としては、たとえばスピンコート法やスリットコート法などを挙げることができる。
【0057】
感光性樹脂組成物を前記支持基板2上に塗布成膜した後、通常はプリベークをおこなう。たとえば80℃〜110℃の温度で、60秒〜180秒間、基板を加熱することによってプリベークをおこなう。このプリベークによって溶剤成分を除去し、第1の隔壁形成用膜8aを形成する。
【0058】
つぎに支持基板上に所定のパターンの光を遮光するフォトマスク21aを配置し、このフォトマスク21aを介して、第1の隔壁形成用膜8aを露光する。感光性樹脂には、ポジ型およびネガ型の樹脂があるが、本工程ではいずれの樹脂を用いてもよい。ポジ型の感光性樹脂を使用した場合には、第1の隔壁形成用膜8aのうち、主に第1の隔壁3aが形成されるべき部位を除く残余の部位に光を照射する。またネガ型の感光性樹脂を使用した場合には、第1の隔壁形成用膜8aのうち、主に第1の隔壁3aが形成されるべき部位に光を照射する。本工程ではポジ型の感光性樹脂を使用した場合について、図10を参照して説明する。図10に示すように、支持基板2上にフォトマスク21aを配置し、このフォトマスク21aを介して光を照射することによって、第1の隔壁形成用膜8aのうち、主に第1の隔壁3aが形成されるべき部位を除く残余の部位に光を照射する。なお図10(1)では露光時に遮光される領域にハッチングを施している。また図10(2)(3)では第1の隔壁形成用膜8aに照射する光を模式的に矢印記号で示している。
【0059】
つぎに現像をおこなう。これによって第1の隔壁3aがパターン形成される(図11参照)。第1の隔壁形成用膜8aを現像するさいには、現像液が第2の隔壁3bに接触することになるが、前述したように第2の隔壁3bにはポストベークが施されているため、たとえ現像液に接したとしても、第2の隔壁3bはエッチングされない。
【0060】
現像後、ポストベークをおこなう。たとえば200℃〜230℃の温度で、15分〜60分間、支持基板を加熱することによってポストベークをおこない、第1の隔壁3aを硬化する。
【0061】
本実施形態では順テーパ形状の第1の隔壁3aを形成するが、隔壁の側面と底面との成す角θ1は、以下の要素を適宜調整することによって、適宜調整することができる。
【0062】
隔壁の側面と底面との成す角θ1、θ2は主に使用する感光性樹脂の種類によって定まる。そこでたとえば市場から入手可能な複数の種類の感光性樹脂のなかから、順テーパ形状の隔壁となる材料、または逆テーパ形状の隔壁となる材料を適宜選択し、これを使用して隔壁を形成すればよい。
【0063】
なお現像時間を調整することによっても隔壁の側面と底面との成す角を調整することができる。一般にネガ型の感光性樹脂の場合、現像時間を長くするほど、隔壁の側面と底面との成す角θ2が大きくなる傾向にある。
【0064】
また露光量を調整することによっても隔壁の側面と底面との成す角を調整することができる。一般にネガ型の感光性樹脂の場合、露光量を小さくするほど、隔壁の側面と底面との成す角θ2が小さくなる傾向にある。
【0065】
またフォトマスクと基板との距離を調整することによっても隔壁の側面と底面との成す角を調整することができる。一般にネガ型の感光性樹脂の場合、フォトマスクと基板との距離を小さくするほど、隔壁の側面と底面との成す角θ1が大きくなる傾向にあり、θ2が小さくなる傾向にある。
【0066】
隔壁の形成に使用される感光性樹脂としては、たとえばネガ型とポジ型がある。
ネガ型感光性樹脂は、光の照射部分が、現像液に対して不溶化し残存するものである。
【0067】
感光性樹脂組成物には一般にバインダー樹脂、架橋材、光反応開始材、溶媒、およびその他の添加剤を配合したものが使用される。
【0068】
バインダー樹脂は、予め重合されたものである。その例としては、自ら重合性を有しない非重合性バインダー樹脂、重合性を有する置換基が導入された重合性バインダー樹脂が挙げられる。バインダー樹脂は、ポリスチレンを標準としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で求められる重量平均分子量が5,000〜400,000の範囲にある。
【0069】
バインダー樹脂としては、たとえばフェノール樹脂、ノボラック樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。バインダー樹脂としては、単量体はそれぞれ単独または2種以上を組み合わせた共重合体を使用することもできる。バインダー樹脂は、上記感光性樹脂を含むインクの全固形分に対して、質量分率で通常5%〜90%である。
【0070】
架橋材としては、光を照射することによって光重合開始剤から発生した活性ラジカル、酸などによって重合し得る化合物であって、たとえば、重合性炭素−炭素不飽和結合を有する化合物が挙げられる。架橋材は、分子内に重合性炭素−炭素不飽和結合を1個有する単官能の化合物であってもよいし、重合性炭素−炭素不飽和結合を2個またはそれ以上有する2官能または3官能以上の多官能の化合物であってもよい。上記感光性樹脂を含むインクにおいて、架橋材は、バインダー樹脂と架橋材との合計量を100質量部とすると、通常0.1質量部以上70質量部以下である。また上記感光性樹脂を含むインクにおいて光反応開始材は、バインダー樹脂と架橋材との合計量を100質量部とすると、通常1質量部以上30質量部以下である。
【0071】
一方、ポジ型感光性樹脂は、光の照射部分が現像液に対して、可溶化するものであり一般的には樹脂と光反応で親水化する化合物を複合化することで構成される。
【0072】
ポジ型感光性樹脂は、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリイミドなどの耐薬品性と密着性を有する樹脂と光分解性化合物と組み合わせたものを使用するができる。
【0073】
現像に使用される現像液としては、たとえば塩化カリウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液などを挙げることができる。
【0074】
上述したように、隔壁の側面と底面との成す角θ1、θ2は主に使用する感光性樹脂の種類によって定まるが、市場から入手可能な複数の種類の感光性樹脂のうちの多くは、順テーパ形状の隔壁を形成する材料として使用することができる。なお逆テーパ形状の隔壁を形成するための材料としては、具体的には日本ゼオン株式会社製の材料(ZPN2464、ZPN1168)などを挙げることができる。
【0075】
隔壁3の形状およびその配置は、画素数および解像度などの表示装置の仕様や製造の容易さなどに応じて適宜設定される。たとえば隔壁3の行方向Xまたは列方向Yの幅は、5μm〜50μm程度であり、隔壁3の高さは0.5μm〜5μm程度であり、行方向Xまたは列方向Yに隣り合う隔壁3間の間隔、すなわち凹部5の行方向Xまたは列方向Yの幅は、10μm〜200μm程度である。また第1電極6の行方向Xまたは列方向Yの幅はそれぞれ10μm〜200μm程度である。
【0076】
(有機層を形成する工程)
本工程では有機層を形成する。本実施形態では1層以上の有機層のうち、少なくとも1層の有機層を塗布法によって形成する。本実施形態では、第1の有機層7および第2の有機層9を塗布法によって形成する。
【0077】
まず正孔注入層として機能する第1の有機層7を形成する。まず第1の有機層7となる材料を含むインク22を隔壁3に囲まれた領域(凹部5)に供給する(図11、図12参照)。インクは、隔壁3の形状、成膜工程の簡易さ、および成膜性などを勘案して適宜最適な方法によって供給される。インクはたとえばインクジェットプリント法、ノズルコート法、凸版印刷法、凹版印刷法などによって供給される。
【0078】
つぎに、供給されたインク22を固化し、第1の有機層7を形成する(図13参照)。インクの固化は、たとえば自然乾燥、加熱乾燥、真空乾燥によっておこなうことができる。またインクが、エネルギーを加えることによって重合する材料を含む場合、インクを供給した後に、薄膜を加熱したり、薄膜に光を照射したりすることによって、有機層を構成する材料を重合してもよい。このように有機層を構成する材料を重合することによって、この第1の有機層上に第2の有機層をさらに形成するさいに使用するインクに対して、第1の有機層を難溶化することができる。
【0079】
つぎに、発光層として機能する第2の有機層9を形成する。第2の有機層9は第1の有機層7と同様に形成することができる。すなわち赤色発光層9R、緑色発光層9G、青色発光層9Bとなる材料を含む3種類のインクを、隔壁3に囲まれた領域にそれぞれ供給し、さらにこれを固化することによって各発光層9R,9G,9Bが形成される(図14参照)。
【0080】
(第2電極を形成する工程)
つぎに第2電極10を形成する。本実施形態では、少なくとも複数の有機EL素子が設けられる表示領域において、一面に導電性薄膜を形成する。たとえば蒸着法によって一面に導電性薄膜を形成する。上述したようにこの導電性薄膜のうちで、第2の有機層9上に設けられるものが第2電極10に相当する。図15(3)に示すように、第2電極10の膜厚が薄い場合、たとえ一面に導電性薄膜を形成したとしても、逆テーパ形状の第2の隔壁3b上ではその端部で導電性薄膜10aが切断されることがあり、そのために有機EL素子4の第2電極10と第2の隔壁3b上の導電性薄膜10aとが切断されることがある。他方、図15(2)に示すように、順テーパ形状の第1の隔壁3a上では、その側面上にも導電性薄膜10aが形成されるため、第1の隔壁3aの端部で第2電極10が切断されることがなく、有機EL素子4の第2電極10と第1の隔壁3a上の導電性薄膜10aとが連なるように形成される。そのため、行方向Xに隣り合う有機EL素子4の第2電極10が、第1の隔壁3a上の導電性薄膜10aを介して連なるように形成される。
【0081】
このように有機EL素子4の外周のうちの一部に面して順テーパ形状の第1の隔壁3aが設けられると、有機EL素子4の第2電極10と第1の隔壁3a上の導電性薄膜10aとが連なるように形成される。そのためたとえ逆テーパ形状の第2の隔壁3bが設けられるとしても、有機EL素子4の第2電極10が隔壁の端部で切断されることを防ぐことができ、複数の有機EL素子4に連なる第2電極10を形成することができる。
【0082】
上述したように逆テーパ形状の隔壁が設けられる場合、第2電極の膜厚が薄いと、逆テーパ形状の隔壁の端部で第2電極が切断されることがあるが、順テーパ形状の第1の隔壁3aを設けることにより、第2電極10の膜厚を必要以上に厚くすることなく、各有機EL素子4の第2電極10を連なるように形成することができる。
【0083】
また本実施形態では、第1の隔壁3aは、支持基板2の厚み方向に垂直な第1の方向(本実施形態では行方向)にそれぞれ延在し、前記厚み方向および前記第1の方向にそれぞれ垂直な第2の方向(本実施形態では列方向Y)に所定の間隔をあけて配置される複数本の順テーパ隔壁から構成され、平面視で前記第1の隔壁3aと前記第2の隔壁3bとが重なる部位では、前記第2の隔壁3bは、前記支持基板と前記第1の隔壁との間に設けられる。そのため、平面視で前記第1の隔壁3aと前記第2の隔壁3bとが重なる部位では、前記第2の隔壁3bはその端部が第1の隔壁3aに覆われることになる。このような第1の隔壁3aが設けられた基板上に導電性薄膜を一面に形成すると、第2の隔壁3bの端部が第1の隔壁3aに覆われているため、第1の隔壁3aの延在方向に沿って、当該第1の隔壁3a上に導電性薄膜10aがひとつらなりに形成される。本実施形態では第1の隔壁3aが列方向Yに延在して形成されているため、列方向Yに隣り合う有機EL素子4の第2電極10が、第1の隔壁3a上の導電性薄膜10aを介して連なるように形成されている。これによって、第1の隔壁3a上の導電性薄膜10aを介してすべての有機EL素子の第2電極10が連なるように形成される。そのため第2電極10がすべての有機EL素子4に共通する電極として機能する。
【0084】
また本実施形態では、逆テーパ形状の第2隔壁3bが有機EL素子4に面して配置されるため、隔壁3に囲まれた領域(凹部5)に供給されたインク22は、毛細管現象によって、第1電極16と第2隔壁3bとが接続される先細状の部位に吸い込まれるように充填される。この状態を維持したままインクの溶媒が蒸発することによって、第1電極と隔壁とが接続される部位にも有機層が形成される。これによって均一な膜厚の有機層を得ることができる。
【0085】
なお順テーパ形状の第1電極16と第1隔壁3aとが接する部位では、隔壁3に囲まれた領域(凹部5)に供給されたインク22は第1隔壁3aにはじかれつつ乾燥することもありうるが、有機EL素子に面して逆テーパ形状の第2隔壁3bを設けることにより、少なくとも有機層全体としては、順テーパ形状の隔壁のみに囲まれた凹部に形成される有機層よりも平坦で均一な膜厚の有機層がえられる。
【0086】
なお凹部5において、有機層が薄膜化する部位は、平面視における凹部5の形状に大きく依存する。たとえば順テーパ形状の隔壁のみに囲まれた凹部に、支持基板の厚み方向に垂直な所定の方向に延在する形状を有する有機EL素子を形成する場合、すなわち本実施形態のように列方向Yに延在する有機EL素子を形成する場合、凹部に供給されたインキは、長手方向(列方向Y)の一端および他端のいずれか、または短手方向(行方向X)の中央部に集まる傾向がある。この場合、有機層は、長手方向(列方向Y)の一端および他端のいずれかが薄膜化したり、短手方向(行方向X)の一端および他端が薄膜化したりする傾向にある。このように所定の方向に延在する有機EL素子の場合は、本実施の形態のように第1の隔壁は、前記有機EL素子の短手方向(行方向X)の一方および他方の端面に面して配置され、前記第2の隔壁は、前記有機EL素子の長手方向(列方向Y)の一方および他方の端面に面して配置されることが好ましい。隔壁をこのように配置すると、凹部に供給されたインキは、逆テーパ形状の第2隔壁3bの側面に面する長手方向(列方向Y)の一端および他端に引き寄せられ、第2隔壁3bの側面で拘束されつつ薄膜化するため、順テーパ形状の隔壁のみに囲まれた凹部に形成される有機層よりも平坦で均一な膜厚の有機層がえられる。
【0087】
また第1の隔壁が、前記有機EL素子の短手方向(行方向X)の一方および他方の端面に面して配置され、前記第2の隔壁が、前記有機EL素子の長手方向(列方向Y)の一方および他方の端面に面して配置されると、平面視で第2電極10が切断されるおそれがあるのは長手方向(列方向Y)の一端と他端(短辺)であり、第2電極10は短手方向(行方向X)の一端と他端と(長辺)で隔壁上の導電性薄膜10aと接続している。このような本実施の形態と、短手方向(行方向X)の一端と他端とで切断されている形態と比べると、隔壁上の導電性薄膜10aと切断している領域は本実施の形態の方が少なく、隔壁上の導電性薄膜10aと接続している領域は本実施の形態の方が多くなるため、配線抵抗を小さくすることができる。
【0088】
<有機EL素子の構成>
以下では有機EL素子の構成についてさらに詳しく説明する。有機EL素子は、有機層として少なくとも1層の発光層を有するが、上述したようにたとえば正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層、および電子注入層などの所定の層をさらに備えることがある。
【0089】
本実施の形態の有機EL素子のとりうる層構成の一例を以下に示す。
a)陽極/発光層/陰極
b)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
c)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
d)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/陰極
e)陽極/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
f)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
g)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
h)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
i)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
j)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
k)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
l)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
m)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
n)陽極/発光層/電子注入層/陰極
o)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
p)陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。以下同じ。)
【0090】
上述の実施形態では第1電極が陽極として機能し、第2電極が陰極として機能する有機EL素子について説明したが、この形態では、たとえば上記a)〜p)の各構成要素は、左側の陽極から順次支持基板上に積層される。なお第1電極が陰極として機能し、第2電極が陽極として機能する有機EL素子では、たとえば上記a)〜p)の各構成要素は、右側の陰極から順次支持基板上に積層される。
【0091】
<支持基板>
支持基板には、有機EL素子を製造する工程において化学的に変化しないものが好適に用いられ、たとえばガラス、プラスチック、高分子フィルム、およびシリコン板、並びにこれらを積層したものなどが用いられる。
【0092】
<陽極>
発光層から放射される光が陽極を通って外界に出射する構成の有機EL素子の場合、陽極には光透過性を示す電極が用いられる。光透過性を示す電極としては、金属酸化物、金属硫化物および金属などの薄膜を用いることができ、電気伝導度および光透過率の高いものが好適に用いられる。具体的には酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、および銅などから成る薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、または酸化スズから成る薄膜が好適に用いられる。陽極の作製方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などを挙げることができる。また、該陽極として、ポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などの有機の透明導電膜を用いてもよい。
【0093】
<陰極>
陰極の材料としては、仕事関数が小さく、発光層への電子注入が容易で、電気伝導度の高い材料が好ましい。また陽極側から光を取出す構成の有機EL素子では、発光層から放射される光を陰極で陽極側に反射するために、陰極の材料としては可視光に対する反射率の高い材料が好ましい。陰極には、たとえばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属および周期表の13族金属などを用いることができる。陰極の材料としては、たとえばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウムなどの金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、またはグラファイト若しくはグラファイト層間化合物などが用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金などを挙げることができる。また陰極としては導電性金属酸化物および導電性有機物などから成る透明導電性電極を用いることができる。具体的には、導電性金属酸化物として酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、およびIZOを挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリンもしくはその誘導体、ポリチオフェンもしくはその誘導体などを挙げることができる。なお陰極は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。なお電子注入層が陰極として用いられることもある。
【0094】
陰極の作製方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法などを挙げることができる。
【0095】
陽極または陰極の膜厚は、求められる特性や成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0096】
<正孔注入層>
正孔注入層を構成する正孔注入材料としては、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、および酸化アルミニウムなどの酸化物や、フェニルアミン系化合物、スターバースト型アミン系化合物、フタロシアニン系、アモルファスカーボン、ポリアニリン、およびポリチオフェン誘導体などを挙げることができる。
【0097】
正孔注入層の成膜方法としては、たとえば正孔注入材料を含む溶液からの成膜を挙げることができる。たとえば正孔注入材料を含む溶液を所定の塗布法によって塗布成膜し、さらにこれを固化することによって正孔注入層を形成することができる。
【0098】
正孔注入層の膜厚は、求められる特性および工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0099】
<正孔輸送層>
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、ポリビニルカルバゾール若しくはその誘導体、ポリシラン若しくはその誘導体、側鎖若しくは主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリアリールアミン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、又はポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0100】
正孔輸送層の膜厚は、求められる特性および成膜工程の簡易さなどを考慮して設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0101】
<発光層>
発光層は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する有機物、または該有機物とこれを補助するドーパントとから形成される。ドーパントは、たとえば発光効率の向上や、発光波長を変化させるために加えられる。なお発光層を構成する有機物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよく、塗布法によって発光層を形成する場合には、発光層は高分子化合物を含むことが好ましい。発光層を構成する高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量はたとえば10〜10程度である。発光層を構成する発光材料としては、たとえば以下の色素系材料、金属錯体系材料、高分子系材料、ドーパント材料を挙げることができる。
【0102】
(色素系材料)
色素系材料としては、たとえば、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体化合物、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ピロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体などを挙げることができる。
【0103】
(金属錯体系材料)
金属錯体系材料としては、たとえばTb、Eu、Dyなどの希土類金属、またはAl、Zn、Be、Ir、Ptなどを中心金属に有し、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造などを配位子に有する金属錯体を挙げることができ、たとえばイリジウム錯体、白金錯体などの三重項励起状態からの発光を有する金属錯体、アルミニウムキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾリル亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、フェナントロリンユーロピウム錯体などを挙げることができる。
【0104】
(高分子系材料)
高分子系材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、上記色素系材料や金属錯体系発光材料を高分子化したものなどを挙げることができる。
【0105】
発光層の厚さは、通常約2nm〜200nmである。
【0106】
<電子輸送層>
電子輸送層を構成する電子輸送材料としては、公知のものを使用でき、オキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン若しくはその誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアントラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、又は8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などを挙げることができる。
【0107】
電子輸送層の膜厚は、求められる特性や成膜工程の簡易さなどを考慮して適宜設定され、たとえば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0108】
<電子注入層>
電子注入層を構成する材料としては、発光層の種類に応じて最適な材料が適宜選択され、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうちの1種類以上を含む合金、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、およびこれらの物質の混合物などを挙げることができる。アルカリ金属、アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、および炭酸塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、酸化リチウム、フッ化リチウム、酸化ナトリウム、フッ化ナトリウム、酸化カリウム、フッ化カリウム、酸化ルビジウム、フッ化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化セシウム、炭酸リチウムなどを挙げることができる。また、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩の例としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化カルシウム、酸化バリウム、フッ化バリウム、酸化ストロンチウム、フッ化ストロンチウム、炭酸マグネシウムなどを挙げることができる。電子注入層は、2層以上を積層した積層体で構成されてもよく、たとえばLiF/Caなどを挙げることができる。
【0109】
電子注入層の膜厚としては、1nm〜1μm程度が好ましい。
【0110】
上述の各有機層は、たとえばノズルプリンティング法、インクジェットプリンティング法、凸版印刷法、凹版印刷法などの塗布法や、真空蒸着法、スパッタリング法、またはCVD法などによって形成することができる。
【0111】
なお塗布法では、各有機層となる有機EL材料を含むインクを塗布成膜し、さらにこれを固化することによって有機層を形成するが、そのさいに使用されるインクの溶媒には、たとえばクロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテートなどのエステル系溶媒、および水などが用いられる。
【実施例】
【0112】
(実施例1)
第1電極として機能するITO薄膜が形成された支持基板(TFT基板)を用意する(図7)。この支持基板上に、ネガ型感光性樹脂溶液1(日本ゼオン株式会社製ZPN2464)をスピンコータを用いて塗布成膜し、ホットプレート上において110℃で90秒間加熱し、プリベークを施すことによって溶剤成分を気化する(図8)。つぎにプロキシミティ露光機を用いて露光量100mJ/cm2で露光する。さらに現像液(株式会社トクヤマ製SD-1(TMAH2.38wt%))を用いて80秒間現像し、逆テーパ形状の第2の隔壁3bを形成する。つぎに230℃で30分間加熱し、ポストベークを施すことにより樹脂を硬化させ、膜厚が0.8μmの第2の隔壁3bを形成する。このようにして形成された第2の隔壁3bの側面と第2の隔壁3bの底面との成す角θ2は約115°となる。
【0113】
つぎにポジ型感光性樹脂溶液(日本ゼオン株式会社製ZPN6216)をスピンコータを用いて塗布成膜し、ホットプレート上において110℃で90秒間加熱し、プリベークを施すことによって溶剤成分を気化する(図10)。つぎにプロキシミティ露光機によって露光量100mJ/cm2で露光する。さらに現像液(株式会社トクヤマ製SD-1(TMAH2.38wt%))を用いて70秒間現像し、順テーパ形状の第1の隔壁3aを形成する。つぎに230℃で30分間加熱し、ポストベークを施すことにより、樹脂を硬化させ、膜厚が1.0μmの第1の隔壁3aを形成する(図11)。このようにして形成された第1の隔壁3aの側面と第2の隔壁3aの底面との成す角θ1は約30°となる。
【0114】
隔壁が形成された支持基板に酸素プラズマによる表面処理を行い、続いてCF4プラズマによる表面処理を行い、ITO表面を親液化し、バンク表面に撥液性を付与する。
【0115】
つぎにインクジェット装置(ULVAC社製 Litlex142P)を用いてインク(固形分濃度1.5%のポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリスチレンスルホン酸(PSS)水分散液(バイエル社製 AI4083))を塗布する(図12)。隔壁3の上面はインクを弾くため、隔壁3に囲まれた所定の凹部内にインクが充填される。加えて、インクは、凹部の行方向Xの一端および他端に面する逆テーパ形状の第2の隔壁に沿って毛細管現象によってその端部に引き寄せられることにより、画素内に均一に広がる。この基板を200℃で焼成し、均一な膜厚(厚さ50nm)の正孔注入層7を形成する(図13)。
【0116】
つぎに赤色の光を放射する高分子発光材料を、その濃度が0.8wt%となるように有機溶媒に混合して赤インクを調製する。同様に、緑色の光を放射する高分子発光材料を、その濃度が0.8wt%となるように有機溶媒に混合して緑インクを調製する。さらに青色の光を放射する高分子発光材料を、その濃度が0.8wt%となるように有機溶媒に混合して青インクを調製する。これら赤、緑、青インクをそれぞれインクジェット装置(ULVAC社製 Litrex142P)を用いて所定の凹部内に塗布する。
【0117】
隔壁3の上面はインクを弾くため、隔壁3に囲まれた所定の凹部内にインクが充填される。加えて、インクは、凹部の行方向Xの一端および他端に面する逆テーパ形状の第2の隔壁に沿って毛細管現象によってその端部に引き寄せられ、画素内に均一に広がる。この基板を130℃で焼成し、均一な膜厚(厚さ60nm)の発光層9を形成する(図14)。
【0118】
つぎに真空蒸着法により膜厚が20nmのCa層、膜厚が150nmのAl層からなる第2電極(陰極)10を形成する。逆テーパ形状の第2の隔壁3bの端部ではその段差のために第2電極(陰極)10は断線する(図15(3))こともあるが、順テーパ形状の第1の隔壁3aの端部では第2電極(陰極)10は断線することがないため、全ての有機EL素子4の第2電極10が連なるように形成される。これによって意図したとおりに全て発光する有機EL素子を支持基板上に作製することができ、さらに作製した素子はパネル面内において各有機EL素子が相互に同様の輝度で発光するとともに、各有機EL素子が個別に画素内において均一に発光する。
【符号の説明】
【0119】
1 表示装置
2 支持基板
3 隔壁
3a 順テーパ形状の第1の隔壁
3b 逆テーパ形状の第2の隔壁
4 有機EL素子
5 凹部
6 第1電極
7 第1の有機層(正孔注入層)
8 隔壁形成用膜
9 第2の有機層(発光層)
10 第2電極
10a 導電性薄膜
12 支持基板
13 隔壁
15 隔壁に囲まれた領域
16 第1電極
17 インク
18 有機層
19 第2電極
21 フォトマスク
22 インク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板上に設けられる複数の有機EL素子と、
平面視で各有機EL素子の外周をそれぞれ囲むように設けられる隔壁とを備える表示装置であって、
前記隔壁は、平面視で、前記有機EL素子の外周のうちの一部に面して設けられる第1の隔壁と、前記有機EL素子の外周のうちの前記一部を除く残余の部分に面して設けられる第2の隔壁とを有し、
前記第1の隔壁は、その側面とその底面との成す角が鋭角の順テーパ形状の隔壁であり、
前記第2の隔壁は、その側面とその底面との成す角が鈍角の逆テーパ形状の隔壁である、表示装置。
【請求項2】
前記第1の隔壁は、前記支持基板の厚み方向に垂直な第1の方向にそれぞれ延在し、前記厚み方向および前記第1の方向にそれぞれ垂直な第2の方向に所定の間隔をあけて配置される複数本の順テーパ隔壁から構成され、
平面視で前記第1の隔壁と前記第2の隔壁とが重なる部位では、前記第2の隔壁は、前記支持基板と前記第1の隔壁との間に設けられる、請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記有機EL素子は前記支持基板の厚み方向に垂直な所定の方向に延在する形状を有し、
前記第1の隔壁は、前記有機EL素子の短手方向の一方および他方の端面に面して配置され、
前記第2の隔壁は、前記有機EL素子の長手方向の一方および他方の端面に面して前記第2の隔壁が配置される、請求項1または2記載の表示装置。
【請求項4】
前記隔壁が、感光性樹脂組成物がパターニングされることにより得られる、請求項1〜3のいずれかに記載の表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の表示装置の製造方法であって、
支持基板上に隔壁を形成する工程と、
支持基板上に複数の有機EL素子を形成する工程とを含み、
隔壁を形成する工程では、フォトリソグラフィ法によって感光性樹脂組成物をパターニングすることにより、第1の隔壁と第2の隔壁とを形成する、表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−129086(P2012−129086A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280207(P2010−280207)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】