表示装置
【課題】透過型でも使用が可能であり、高いコントラスト比を可能とする高品質な鏡面状態を有する表示装置を提供する。
【解決手段】一対の基板と、一対の基板の対向する面に形成される一対の電極と、一対の電極の間に挟持され、銀を含むエレクトロクロミック材料及びメディエータを含む電解質層と、を有する表示装置とする。この場合において、一対の電極のうちの一方が、ITO粒子修飾電極であることが好ましく、また、メディエータは、銅を含むことが好ましい。
【解決手段】一対の基板と、一対の基板の対向する面に形成される一対の電極と、一対の電極の間に挟持され、銀を含むエレクトロクロミック材料及びメディエータを含む電解質層と、を有する表示装置とする。この場合において、一対の電極のうちの一方が、ITO粒子修飾電極であることが好ましく、また、メディエータは、銅を含むことが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、より詳細には反射率の高い鏡面表示モードを有するエレクトロクロミック表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビやパソコンモニタ、携帯電話ディスプレイを始めとした情報を表示するための装置(表示装置)は、近年の情報化社会において欠かすことのできない装置である。
【0003】
表示装置の表示方式は、一般に反射型、透過型、発光型の3つに大きく分けることができる。表示装置を製造する者は、表示装置の製造において、表示装置の置かれる環境を想定して好ましい表示方式を選択するのが一般的である。
【0004】
ところで近年の表示装置の小型化、薄膜化により表示装置の携帯性が向上し、様々な明るさの環境に携帯移動して表示装置を使用する機会が非常に多くなってきており、ユーザーのニーズも多様化してきている。表示装置のモードとして、例えば、明暗の表示だけでなく、表示画面を鏡面状態にするニーズ等も求められてきている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、一対の基板の一方にミラー層が形成されているエレクトロクロミックミラーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平10−500225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の表示装置では、ミラー層は固定されたものであって、エレクトロクロミック表示素子の鏡面状態を変化させるものに過ぎず、表示装置としての使用については検討しておらず、仮に使用したとしても反射型の表示装置でしか使用できないといった課題がある。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、透過型でも使用が可能であり、高いコントラスト比を可能とする高品質な鏡面状態を有する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点に係る表示装置は、一対の基板と、一対の基板の対向する面に形成される一対の電極と、一対の電極の間に挟持され、銀を含むエレクトロクロミック材料及びメディエータを含む電解質層と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明により、透過型でも使用が可能であり、高いコントラスト比を可能とする高品質な鏡面状態を有する表示装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る表示装置の概略断面を示す図である。
【図2】メディエータに関する説明のための図である。
【図3】実施形態にかかる表示装置の表示原理を説明する図である。
【図4】実施例に係る表示装置のITO電極及びITO粒子修飾電極の表面プロファイルを示す図である。
【図5】実施例に係る表示装置の透過スペクトル測定の結果を示す図である。
【図6】実施例に係る表示装置の反射スペクトル測定の結果を示す図である。
【図7】実施例に係る表示装置の透過状態の写真図である。
【図8】実施例に係る表示装置の鏡状態の写真図である。
【図9】実施例に係る表示装置の黒態の写真図である。
【図10】実施例に係る表示装置に対し電圧を変化させた場合の透過率及び反射率を示す図である。
【図11】実施例に係る表示装置に対し電圧を変化させた場合の透過率及び反射率を示す図である。
【図12】実施例に係る表示装置に対し電圧を変化させた場合の透過率及び反射率を示す図である。
【図13】実施例に係る表示装置に対し電圧を変化させた場合の透過率及び反射率を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る表示装置(以下「本表示装置」という。)1の概略断面を示す図である。図1で示すように、本表示装置1は、一対の基板2、3と、一対の基板の対向する面に形成される一対の電極21、31と、一対の電極21、31の間に挟持され、銀を含むエレクトロクロミック材料及びメディエータを含む電解質層4と、を有する。
【0014】
本実施形態において一対の基板2、3は、電解質層4を挟み保持するために用いられるものであって、基板2、3の少なくとも一方が透明であればよいが、双方透明であれば、透過型の表示装置を実現することができる。本実施形態では説明のため双方透明な場合で説明する。なお、基板2、3の材料としては、ある程度の硬さ、化学的安定性を有し、安定的に材料層を保持することができる限りにおいて限定されるわけではないが、ガラス、プラスチック、金属、半導体等を採用することができ、透明な基板として用いる場合はガラスやプラスチックを用いることができる。
【0015】
また本実施形態において、一対の基板2、3のそれぞれには、対向する面側(内側)に電極21、31が形成されている。この電極は一対の電極2、3によって挟持される材料層に電圧を印加するために用いられるものである。電極の材料としては、好適な導電性を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば基板2、3の材質が透明な基板である場合はITOやIZO等の透明電極であることが好ましい。
【0016】
また本実施形態において、電極21、31のいずれか一方が、比較的大きな凹凸が付された粒子修飾電極であり、他方が平滑な電極であることが好ましい。ここで粒子修飾電極とは粒子が電極表面に固定され比較的大きな凹凸が形成された電極をいう。粒子修飾電極の凹凸の大きさとしては限定されるわけではないが、高低差が100nm以上500nm以下の範囲にあることが好ましく、例えば、粒径が100nm以上500nm以下の粒子を基板に配置、固定したもので実現することができる。粒子の材料としては限定されるわけではないが、ITO、IZO、酸化チタン、NiO等を例示することができ、ITO、IZOの粒子、特にITOであることは導電性を確実にすることができる観点からより好ましい。
【0017】
また本実施形態に係る電極は、基板上に、表示したい文字などのパターンにあわせた形状として形成してもよく、また、同じ複数の領域毎に区分された電極パターンを複数基板上に並べて形成したものであってもよい。複数の領域毎に区分すると、この各領域を画素とし、画素毎に表示を制御し、複雑な形状の表示にも対応できるといった利点がある。
【0018】
電極間の距離としては、後に詳述するエレクトロクロミック材料における銀が微粒子として十分析出し、消失する電界を印加することができる限りにおいて限定されるわけではないが、1μm以上10mm以下が可能であり、望ましくは1μm以上1mm以下の範囲である。
【0019】
なお本実施形態に係る電極は、それぞれ導電性を有する配線を介して電源に接続されており、この電源のON、OFFにより材料層に電圧の印加、印加の解除を制御することができる。
【0020】
また本実施形態に係る電解質層4は、支持塩としての電解質を含むとともに、銀イオンを含むエレクトロクロミック材料及びメディエータを含んでいる。また本実施形態に係る電解質層4は、上記銀を含むエレクトロクロミック材料及びメディエータのほか、これら材料を保持するための溶媒を含んでいる。
【0021】
本実施形態の電解質層における電解質は、エレクトロクロミック材料の酸化還元等を促進するためものであり支持塩である。電解質は、臭素イオンを含むことが好ましく、例えばLiBr、KBr、NaBr、臭化テトラブチルアンモニウム(TBABr)等を例示することができる。なお、電解質の濃度としては、限定されるわけではないが、エレクトロクロミック材料の5倍程度含んでいることが好ましく、例えば5mM以上5M以下であることは好ましく、より好ましくは25mM以上500mM以下である。
【0022】
また本実施形態において溶媒は、上記エレクトロクロミック材料、電気化学発光材料及び電解質を安定的に保持することができる限りにおいて限定されるわけではないが、水等の極性溶媒であってもよいし、極性のない有機溶媒等一般的なものも用いることができる。溶媒としては、限定されるわけではないが、例えばDMSOを用いることができる。
【0023】
本実施形態においてエレクトロクロミック材料とは、直流電圧を印加することによって酸化還元反応を起こす材料であり、銀イオンを含む塩であることが好ましい。このエレクトロクロミック材料は酸化還元反応によって銀微粒子を析出、又は消失させ、これに基づく色の変化を生じさせ表示を行なうものである。銀を含むエレクトロクロミック材料としては限定されるわけではないが、AgNO3、AgClO4、AgBr、を挙げることができる。なお、エレクトロクロミック材料の濃度については、上記機能を有する限りにおいて特に限定されるわけではなく、材料によって適宜調整が可能であるが、5M以下であることが望ましく、より望ましくは1mM〜1M、さらに望ましくは5mM〜100mMである。
【0024】
本実施形態においてメディエータとは、銀よりも電気化学的に低いエネルギーで酸化還元を行なうことのできる材料をいう。メディエータの酸化体が銀から随時電子を授受することによって酸化による消色反応を補助することができる。この場合のイメージ図を図2に示しておく。なお、メディエータとしては、上記機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、銅(II)イオンの塩であることが好ましく、例えばCuCl2、CuSO4、CuBr2を挙げることができる。なおメディエータの濃度としては、上記機能を奏する限りにおいて限定されず、また材料によって適宜調整が可能であるが、5mM以上20mM以下であることが望ましく、より望ましくは15mM以下である。20mM以下とすることで過度の色付きを防止することができる。なお、銀イオンと銅(II)イオンの濃度比としては、限定されるわけではないが、銀イオンを10とした場合、銅(II)イオンは1以上3以下の範囲であることが好ましい。
【0025】
また、本実施形態においては、上記構成要件のほか、例えば増粘剤を加えることができる。増粘剤を加えることでエレクトロクロミック素子のメモリ性を向上させることができる。なお増粘剤の例としては、特に限定されるわけではないが、例えばポリビニルアルコール等を例示することができる。なお増粘剤の濃度としては、特に限定されるわけではないが、例えば5重量%以上20重量%以下の範囲で含ませておくことは好ましい。
【0026】
本表示装置は、例えば電圧を引加した状態で反射状態又は黒状態を、電圧を解除した状態で透過状態を実現することができる。本実施形態に係る素子の状態の概念図を図2に示しておく。
【0027】
本表示装置では、電極間に電圧を印加すると、一方の電極ではエレクトロクロミック中の銀イオンが還元されて銀41として析出する一方、電圧を解除すると、銀は再び銀イオンとして溶解する。この場合において、銀41が平滑な電極状に形成されれば鏡状態となり(図3(A))、粒子修飾電極上に形成されれば、光は乱反射され黒状態となる(図3(B))。なおこの場合において、観測者にとって、平滑な電極が形成される基板が手前、凹凸のある粒子修飾電極が形成された基板が奥側となる。なお、この直流電圧印加の際の電圧の強度としては、一対の基板間の距離、一対の電極間の距離によって適宜調整が可能であり、限定されるものではなく、電界強度として例えば1.0×103V/m以上1.0×105V/m以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.0×104V/m以下の範囲内である。
【0028】
以上、本発明により、透過型でも使用が可能であり、高いコントラスト比を可能とする高品質な鏡面状態を有する表示装置となる。特に本実施形態では、メディエータを有しており、銀よりも低いエネルギーで酸化還元材料が可能となり、繰り返し耐久性が非常に優れたものとなっている。
【実施例】
【0029】
ここで、実際に上記表示装置について作成し、その効果の確認を行なった。以下説明する。
【0030】
一対の基板としてガラス基板を用い、一対の電極としてITO電極を用い、エレクトロクロミック材料としてAgNO3を用い、溶媒としてDMSOを、支持電解質(対極反応材料)としてTBABrを、メディエータとしてCuCl2を用いた。なお本実施例において、一方の電極は平滑なITOが形成された電極基板(ITO電極)とし、他方はITO電極上に100nm〜300nm程度の粒径のITO粒子分散液をスピンコート(500rpm×5秒、1500rpm×15秒)で塗布し、250℃で1時間焼成したもの(ITO粒子修飾電極)を用いた。また、本実施例において、AgNO3の濃度は50mM、TBABrの濃度は250mM、メディエータの濃度は10mMとした。また、スペーサーを用い、一対の電極間の距離を500μmとして上記電解質層を一対の基板間に挟持させた。図4に、ITO電極及びITO粒子修飾電極の表面プロファイルを示しておく。
【0031】
次に、この電極間に、+2.5V〜−2.5Vの電圧を印加した際の透過スペクトル測定を行った。この結果を図5に示しておく。この結果、+2.5V及び−2.5Vのいずれの状態においても、光を十分に遮断させていることが確認でき、消色時には十分光を透過できていることが確認できた。
【0032】
次に、上記電圧を印加した際の反射スペクトルについても測定を行った。この結果を図6に示しておく。この結果、−2.5Vでは、十分な反射特性を有している一方、+2.5Vでは、非常に低い反射率を示していることが確認でき、黒状態となっていることが確認できた。即ち、上記の結果から−2.5Vでは、反射状態即ち鏡状態を実現でき、+2.5Vでは黒状態、消色時には光透過状態を実現できていることが確認できた。また、このそれぞれの状態における写真図を図7乃至9に示しておく。図7は消色時、図8は反射表示時、図9は黒表示時をそれぞれ示している。
【0033】
また、−2.5Vを10秒、0.5Vを20秒、2.5Vを10秒、−0.5Vを20秒行なった場合の700nmの透過率及び反射率を図9に示しておく。この結果、ITO電極側では、−2.5V印加時では反射率が上昇する一方透過率が下がり反射状態であることが確認でき、0.5Vでは透過率が上昇する一方反射率が減少し透過状態となっていることが確認でき、2.5Vでは透過率が下がる一方反射率も減少した状態であり黒状態であることが確認でき、−0.5Vでは透過率が上昇し反射率が減少したままであるため透過状態であることが確認できた。しかも、この状態は、上記電圧サイクルを1000回繰り返し行なっても維持できていることが確認できた。この結果を図11に示しておく。
【0034】
本実施例の素子に対し、改めて繰り返し特性について確認した。この結果を図12及び図13に示しておく。図12は、−2.5Vを10秒、−0.5Vを15秒を4000回程度繰り返し行なった場合の700nmの透過率を、図13はそのうち10回程度間での範囲を拡大したものである。なお、比較例として、本実施例と同様の素子であるが、CuCl2を含ませていない素子を作成して同様の評価を行なっている(図13参照)。この結果、CuCl2を含ませることで極めて優れた繰り返し耐久性を有していることが確認できた。
【0035】
以上、本実施例により、本発明の効果を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、表示装置として産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0037】
1…表示装置,2、3…基板,4…電解質層
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、より詳細には反射率の高い鏡面表示モードを有するエレクトロクロミック表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビやパソコンモニタ、携帯電話ディスプレイを始めとした情報を表示するための装置(表示装置)は、近年の情報化社会において欠かすことのできない装置である。
【0003】
表示装置の表示方式は、一般に反射型、透過型、発光型の3つに大きく分けることができる。表示装置を製造する者は、表示装置の製造において、表示装置の置かれる環境を想定して好ましい表示方式を選択するのが一般的である。
【0004】
ところで近年の表示装置の小型化、薄膜化により表示装置の携帯性が向上し、様々な明るさの環境に携帯移動して表示装置を使用する機会が非常に多くなってきており、ユーザーのニーズも多様化してきている。表示装置のモードとして、例えば、明暗の表示だけでなく、表示画面を鏡面状態にするニーズ等も求められてきている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、一対の基板の一方にミラー層が形成されているエレクトロクロミックミラーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平10−500225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の表示装置では、ミラー層は固定されたものであって、エレクトロクロミック表示素子の鏡面状態を変化させるものに過ぎず、表示装置としての使用については検討しておらず、仮に使用したとしても反射型の表示装置でしか使用できないといった課題がある。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を鑑み、透過型でも使用が可能であり、高いコントラスト比を可能とする高品質な鏡面状態を有する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点に係る表示装置は、一対の基板と、一対の基板の対向する面に形成される一対の電極と、一対の電極の間に挟持され、銀を含むエレクトロクロミック材料及びメディエータを含む電解質層と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明により、透過型でも使用が可能であり、高いコントラスト比を可能とする高品質な鏡面状態を有する表示装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る表示装置の概略断面を示す図である。
【図2】メディエータに関する説明のための図である。
【図3】実施形態にかかる表示装置の表示原理を説明する図である。
【図4】実施例に係る表示装置のITO電極及びITO粒子修飾電極の表面プロファイルを示す図である。
【図5】実施例に係る表示装置の透過スペクトル測定の結果を示す図である。
【図6】実施例に係る表示装置の反射スペクトル測定の結果を示す図である。
【図7】実施例に係る表示装置の透過状態の写真図である。
【図8】実施例に係る表示装置の鏡状態の写真図である。
【図9】実施例に係る表示装置の黒態の写真図である。
【図10】実施例に係る表示装置に対し電圧を変化させた場合の透過率及び反射率を示す図である。
【図11】実施例に係る表示装置に対し電圧を変化させた場合の透過率及び反射率を示す図である。
【図12】実施例に係る表示装置に対し電圧を変化させた場合の透過率及び反射率を示す図である。
【図13】実施例に係る表示装置に対し電圧を変化させた場合の透過率及び反射率を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
【0013】
図1は、本実施形態に係る表示装置(以下「本表示装置」という。)1の概略断面を示す図である。図1で示すように、本表示装置1は、一対の基板2、3と、一対の基板の対向する面に形成される一対の電極21、31と、一対の電極21、31の間に挟持され、銀を含むエレクトロクロミック材料及びメディエータを含む電解質層4と、を有する。
【0014】
本実施形態において一対の基板2、3は、電解質層4を挟み保持するために用いられるものであって、基板2、3の少なくとも一方が透明であればよいが、双方透明であれば、透過型の表示装置を実現することができる。本実施形態では説明のため双方透明な場合で説明する。なお、基板2、3の材料としては、ある程度の硬さ、化学的安定性を有し、安定的に材料層を保持することができる限りにおいて限定されるわけではないが、ガラス、プラスチック、金属、半導体等を採用することができ、透明な基板として用いる場合はガラスやプラスチックを用いることができる。
【0015】
また本実施形態において、一対の基板2、3のそれぞれには、対向する面側(内側)に電極21、31が形成されている。この電極は一対の電極2、3によって挟持される材料層に電圧を印加するために用いられるものである。電極の材料としては、好適な導電性を有する限りにおいて限定されるわけではないが、例えば基板2、3の材質が透明な基板である場合はITOやIZO等の透明電極であることが好ましい。
【0016】
また本実施形態において、電極21、31のいずれか一方が、比較的大きな凹凸が付された粒子修飾電極であり、他方が平滑な電極であることが好ましい。ここで粒子修飾電極とは粒子が電極表面に固定され比較的大きな凹凸が形成された電極をいう。粒子修飾電極の凹凸の大きさとしては限定されるわけではないが、高低差が100nm以上500nm以下の範囲にあることが好ましく、例えば、粒径が100nm以上500nm以下の粒子を基板に配置、固定したもので実現することができる。粒子の材料としては限定されるわけではないが、ITO、IZO、酸化チタン、NiO等を例示することができ、ITO、IZOの粒子、特にITOであることは導電性を確実にすることができる観点からより好ましい。
【0017】
また本実施形態に係る電極は、基板上に、表示したい文字などのパターンにあわせた形状として形成してもよく、また、同じ複数の領域毎に区分された電極パターンを複数基板上に並べて形成したものであってもよい。複数の領域毎に区分すると、この各領域を画素とし、画素毎に表示を制御し、複雑な形状の表示にも対応できるといった利点がある。
【0018】
電極間の距離としては、後に詳述するエレクトロクロミック材料における銀が微粒子として十分析出し、消失する電界を印加することができる限りにおいて限定されるわけではないが、1μm以上10mm以下が可能であり、望ましくは1μm以上1mm以下の範囲である。
【0019】
なお本実施形態に係る電極は、それぞれ導電性を有する配線を介して電源に接続されており、この電源のON、OFFにより材料層に電圧の印加、印加の解除を制御することができる。
【0020】
また本実施形態に係る電解質層4は、支持塩としての電解質を含むとともに、銀イオンを含むエレクトロクロミック材料及びメディエータを含んでいる。また本実施形態に係る電解質層4は、上記銀を含むエレクトロクロミック材料及びメディエータのほか、これら材料を保持するための溶媒を含んでいる。
【0021】
本実施形態の電解質層における電解質は、エレクトロクロミック材料の酸化還元等を促進するためものであり支持塩である。電解質は、臭素イオンを含むことが好ましく、例えばLiBr、KBr、NaBr、臭化テトラブチルアンモニウム(TBABr)等を例示することができる。なお、電解質の濃度としては、限定されるわけではないが、エレクトロクロミック材料の5倍程度含んでいることが好ましく、例えば5mM以上5M以下であることは好ましく、より好ましくは25mM以上500mM以下である。
【0022】
また本実施形態において溶媒は、上記エレクトロクロミック材料、電気化学発光材料及び電解質を安定的に保持することができる限りにおいて限定されるわけではないが、水等の極性溶媒であってもよいし、極性のない有機溶媒等一般的なものも用いることができる。溶媒としては、限定されるわけではないが、例えばDMSOを用いることができる。
【0023】
本実施形態においてエレクトロクロミック材料とは、直流電圧を印加することによって酸化還元反応を起こす材料であり、銀イオンを含む塩であることが好ましい。このエレクトロクロミック材料は酸化還元反応によって銀微粒子を析出、又は消失させ、これに基づく色の変化を生じさせ表示を行なうものである。銀を含むエレクトロクロミック材料としては限定されるわけではないが、AgNO3、AgClO4、AgBr、を挙げることができる。なお、エレクトロクロミック材料の濃度については、上記機能を有する限りにおいて特に限定されるわけではなく、材料によって適宜調整が可能であるが、5M以下であることが望ましく、より望ましくは1mM〜1M、さらに望ましくは5mM〜100mMである。
【0024】
本実施形態においてメディエータとは、銀よりも電気化学的に低いエネルギーで酸化還元を行なうことのできる材料をいう。メディエータの酸化体が銀から随時電子を授受することによって酸化による消色反応を補助することができる。この場合のイメージ図を図2に示しておく。なお、メディエータとしては、上記機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、銅(II)イオンの塩であることが好ましく、例えばCuCl2、CuSO4、CuBr2を挙げることができる。なおメディエータの濃度としては、上記機能を奏する限りにおいて限定されず、また材料によって適宜調整が可能であるが、5mM以上20mM以下であることが望ましく、より望ましくは15mM以下である。20mM以下とすることで過度の色付きを防止することができる。なお、銀イオンと銅(II)イオンの濃度比としては、限定されるわけではないが、銀イオンを10とした場合、銅(II)イオンは1以上3以下の範囲であることが好ましい。
【0025】
また、本実施形態においては、上記構成要件のほか、例えば増粘剤を加えることができる。増粘剤を加えることでエレクトロクロミック素子のメモリ性を向上させることができる。なお増粘剤の例としては、特に限定されるわけではないが、例えばポリビニルアルコール等を例示することができる。なお増粘剤の濃度としては、特に限定されるわけではないが、例えば5重量%以上20重量%以下の範囲で含ませておくことは好ましい。
【0026】
本表示装置は、例えば電圧を引加した状態で反射状態又は黒状態を、電圧を解除した状態で透過状態を実現することができる。本実施形態に係る素子の状態の概念図を図2に示しておく。
【0027】
本表示装置では、電極間に電圧を印加すると、一方の電極ではエレクトロクロミック中の銀イオンが還元されて銀41として析出する一方、電圧を解除すると、銀は再び銀イオンとして溶解する。この場合において、銀41が平滑な電極状に形成されれば鏡状態となり(図3(A))、粒子修飾電極上に形成されれば、光は乱反射され黒状態となる(図3(B))。なおこの場合において、観測者にとって、平滑な電極が形成される基板が手前、凹凸のある粒子修飾電極が形成された基板が奥側となる。なお、この直流電圧印加の際の電圧の強度としては、一対の基板間の距離、一対の電極間の距離によって適宜調整が可能であり、限定されるものではなく、電界強度として例えば1.0×103V/m以上1.0×105V/m以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.0×104V/m以下の範囲内である。
【0028】
以上、本発明により、透過型でも使用が可能であり、高いコントラスト比を可能とする高品質な鏡面状態を有する表示装置となる。特に本実施形態では、メディエータを有しており、銀よりも低いエネルギーで酸化還元材料が可能となり、繰り返し耐久性が非常に優れたものとなっている。
【実施例】
【0029】
ここで、実際に上記表示装置について作成し、その効果の確認を行なった。以下説明する。
【0030】
一対の基板としてガラス基板を用い、一対の電極としてITO電極を用い、エレクトロクロミック材料としてAgNO3を用い、溶媒としてDMSOを、支持電解質(対極反応材料)としてTBABrを、メディエータとしてCuCl2を用いた。なお本実施例において、一方の電極は平滑なITOが形成された電極基板(ITO電極)とし、他方はITO電極上に100nm〜300nm程度の粒径のITO粒子分散液をスピンコート(500rpm×5秒、1500rpm×15秒)で塗布し、250℃で1時間焼成したもの(ITO粒子修飾電極)を用いた。また、本実施例において、AgNO3の濃度は50mM、TBABrの濃度は250mM、メディエータの濃度は10mMとした。また、スペーサーを用い、一対の電極間の距離を500μmとして上記電解質層を一対の基板間に挟持させた。図4に、ITO電極及びITO粒子修飾電極の表面プロファイルを示しておく。
【0031】
次に、この電極間に、+2.5V〜−2.5Vの電圧を印加した際の透過スペクトル測定を行った。この結果を図5に示しておく。この結果、+2.5V及び−2.5Vのいずれの状態においても、光を十分に遮断させていることが確認でき、消色時には十分光を透過できていることが確認できた。
【0032】
次に、上記電圧を印加した際の反射スペクトルについても測定を行った。この結果を図6に示しておく。この結果、−2.5Vでは、十分な反射特性を有している一方、+2.5Vでは、非常に低い反射率を示していることが確認でき、黒状態となっていることが確認できた。即ち、上記の結果から−2.5Vでは、反射状態即ち鏡状態を実現でき、+2.5Vでは黒状態、消色時には光透過状態を実現できていることが確認できた。また、このそれぞれの状態における写真図を図7乃至9に示しておく。図7は消色時、図8は反射表示時、図9は黒表示時をそれぞれ示している。
【0033】
また、−2.5Vを10秒、0.5Vを20秒、2.5Vを10秒、−0.5Vを20秒行なった場合の700nmの透過率及び反射率を図9に示しておく。この結果、ITO電極側では、−2.5V印加時では反射率が上昇する一方透過率が下がり反射状態であることが確認でき、0.5Vでは透過率が上昇する一方反射率が減少し透過状態となっていることが確認でき、2.5Vでは透過率が下がる一方反射率も減少した状態であり黒状態であることが確認でき、−0.5Vでは透過率が上昇し反射率が減少したままであるため透過状態であることが確認できた。しかも、この状態は、上記電圧サイクルを1000回繰り返し行なっても維持できていることが確認できた。この結果を図11に示しておく。
【0034】
本実施例の素子に対し、改めて繰り返し特性について確認した。この結果を図12及び図13に示しておく。図12は、−2.5Vを10秒、−0.5Vを15秒を4000回程度繰り返し行なった場合の700nmの透過率を、図13はそのうち10回程度間での範囲を拡大したものである。なお、比較例として、本実施例と同様の素子であるが、CuCl2を含ませていない素子を作成して同様の評価を行なっている(図13参照)。この結果、CuCl2を含ませることで極めて優れた繰り返し耐久性を有していることが確認できた。
【0035】
以上、本実施例により、本発明の効果を確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、表示装置として産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0037】
1…表示装置,2、3…基板,4…電解質層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板と、
前記一対の基板の対向する面に形成される一対の電極と、
前記一対の電極の間に挟持され、銀を含むエレクトロクロミック材料及びメディエータを含む電解質層と、を有する表示装置。
【請求項2】
前記一対の電極のうちの一方が、ITO粒子修飾電極である請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記メディエータは、銅を含む、請求項1記載の表示装置。
【請求項1】
一対の基板と、
前記一対の基板の対向する面に形成される一対の電極と、
前記一対の電極の間に挟持され、銀を含むエレクトロクロミック材料及びメディエータを含む電解質層と、を有する表示装置。
【請求項2】
前記一対の電極のうちの一方が、ITO粒子修飾電極である請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記メディエータは、銅を含む、請求項1記載の表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−181389(P2012−181389A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44716(P2011−44716)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【Fターム(参考)】
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