説明

表示装置

【課題】ツイストボールを用いる表示装置において、コントラストが低下することを抑制する。
【解決手段】正と負との極性の電圧が印加される複数の表示電極と、他の電極と、の間に配置され、異なる着色領域に異なる帯電極性を有する球状粒子に電圧を印加する表示部と、複数の表示電極のうち一方の極性の電圧が印加される時間が他の表示電極よりも短い表示電極に他の表示電極よりも絶対値が大きい電圧を印加する制御を行なう表示装置を提供する。また、正と負との極性の電圧が印加される複数の表示電極と、他の電極と、の間に配置され、異なる着色領域に異なる帯電極性を有する球状粒子に電圧を印加して表示を行う表示部を有する表示装置の制御方法であって複数の表示電極のうち一方の極性の電圧が印加される時間が他の表示電極よりも短い表示電極に他の表示電極よりも絶対値が大きい電圧を印加することを特徴とする制御方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。特に、異なる着色領域に異なる帯電極性を有する粒子が分散された表示媒体を用いて画像の表示を行う表示装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
電子値札や棚札などにおける数値や文字情報の表示、また、電子書籍などに用いられる電子ペーパーにおける数値や文字情報の表示を行う反射型の表示装置として、異なる着色領域に異なる帯電極性を有する球状粒子であるツイストボールを表示媒体として用いた画像表示装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。このようなツイストボールを用いた表示装置は、他の表示装置、特に液晶表示装置に比べて、視野角が広く、低消費電力性であるため、電子棚札やデジタルサイネージ、電子ペーパーなどの分野に広く採用されている。
【0003】
一般的に、画像表示装置の表示媒体として用いられるツイストボールは、有色彩相/白色相(例えば、黒色/白色、赤色/白色など)或いは有色彩相/有色彩色相(例えば、黒色/赤色、青色/赤色など)の異なる少なくとも2色相に塗り分けられた少なくとも2つの着色領域を有し、少なくとも2色相が異なる帯電極性を有している。ツイストボールの異なる帯電極性を有する少なくとも2つの着色領域に対応した電圧を印加することによってツイストボールを回転させることで所望する画像の表示を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−047614号公報
【特許文献2】特開2007−206365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ツイストボールを用いた表示装置を、それぞれの桁の数字を7セグメント(7表示領域)により表示するデジタル時計や計時装置に応用を試みたところ、最も頻繁に表示が変更される桁、例えば1秒桁、のセグメントの一部にコントラストが低くなる現象が発生することを本願発明者が発見した。そこで、以下では、コントラストの低下を抑制する表示装置について開示を行なう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態として、それぞれ正と負との極性の電圧が印加される複数の表示電極と他の電極との間に配置され、異なる着色領域に異なる帯電極性を有する球状粒子に電圧を印加して表示を行う表示部と、前記複数の表示電極のうち、一方の極性の電圧が印加される時間が他の表示電極よりも短い表示電極に、前記他の表示電極よりも絶対値が大きい電圧を印加する制御を行なう電圧印加制御部と、を有する表示装置を提供する。
【0007】
本発明の一実施形態として、複数の表示電極と他の電極との間に配置され、異なる着色領域に異なる帯電極性を有する球状粒子に電圧を印加して表示を行う第1表示部および第2表示部と、前記第1表示部の行なう表示の継続時間が前記第2表示部の行なう表示の継続時間よりも短いとき、前記第1表示部の前記複数の表示電極に、前記第2表示部の前記複数の表示電極よりも絶対値が大きい電圧を印加する制御を行なう電圧印加制御部と、を有する表示装置を提供する。
【0008】
本発明の一実施形態として、それぞれ正と負との極性の電圧が印加される複数の表示電極と他の電極との間に配置され、異なる着色領域に異なる帯電極性を有する球状粒子に電圧を印加して表示を行う表示部を有する表示装置の制御方法であって、前記複数の表示電極のうち、一方の極性の電圧が印加される時間が他の表示電極よりも短い表示電極に、前記他の表示電極よりも絶対値が大きい電圧を印加することを特徴とする制御方法を提供する。
【0009】
本発明の一実施形態として、複数の表示電極と他の電極との間に配置され、異なる着色領域に異なる帯電極性を有する球状粒子に電圧を印加して表示を行う第1表示部および第2表示部を有する表示装置の制御方法であって、前記第1表示部の行なう表示の継続時間が前記第2表示部の行なう表示の継続時間よりも短いとき、前記第1表示部の前記複数の表示電極に、前記第2表示部の前記複数の表示電極よりも絶対値が大きい電圧を印加する制御を行なうことを特徴とする制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ツイストボールを用いる表示装置において、コントラストが低下することを抑制することができる。これにより、表示領域間でのコントラストの違いをより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る表示装置の機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る表示装置の表示部の分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る表示装置の表示部の表示電極の配置図と電圧印加の制御を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る表示装置の表示部の表示電極の領域での白反射率とコントラストとの測定結果を示す図である。
【図5】ツイストボールの回転を説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る表示装置の表示部の表示電極の配置図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る表示装置の表示部の表示電極の領域での白反射率とコントラストとの測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を実施形態として説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に何ら限定されることはない。以下に説明する実施形態を種々に変形して本発明を実施することが可能である。
【0013】
(実施形態1)
図1は、本発明の一実施形態に係る表示装置の機能ブロック図を示す。表示装置100は、電圧発生回路101と、電圧印加制御部102と、電圧印加部103と、表示部104とを有する。
【0014】
電圧発生回路101は、表示部104に印加する電圧を発生する。本発明の一実施形態においては、電圧発生回路101は、絶対値が異なる2つの電圧を発生させる。例えば、絶対値が175Vの電圧と190Vの電圧とを発生させる。ただし、電圧発生回路101が発生する電圧の絶対値は2つに限定されることはなく、3つ、4つなど複数の絶対値の電圧を発生してもよい。また、170V、190Vは例示であって、表示部104の特性に合わせた値とすることができる。
【0015】
電圧印加制御部102は、電圧発生回路101により発生された電圧を表示部104の有する電極に印加する制御を行なう。すなわち、表示部104に所望の表示がされるように、表示部104の電極に印加する電圧を制御する。例えば、表示部104のそれぞれの電極に印加する電圧を、電圧発生回路101により発生される電圧の中から時間の経過に従って選択する。電圧印加制御部102により選択された結果は、制御信号として電圧印加部103に供給される。
【0016】
電圧印加部103は、電圧印加制御部102から供給される制御信号に従い電圧発生回路101により発生された電圧を表示部104のそれぞれの電極に印加する。なお、本実施形態では、同じ表示が継続する間、電極への電圧の印加が継続される。
【0017】
表示部104は、ツイストボールを含む材料に電圧を印加するための電極を有し、電極に印加された電圧に応じて、ツイストボールを回転させて、所望の表示を行なう。
【0018】
図2は、表示部104の構造の一例の分解斜視図である。図2に示すように、表示部104は、共通電極層201と、第一フィルム層202と、ツイストボール層203と、第二フィルム層205と、表示電極層206と、配線層209と、第三フィルム層212とを有し、表示部104は複数の層構造となっている。
【0019】
共通電極層201は、共通電極としての透明電極を有する。共通電極層201の材料としては、例えば、ITO、IZO、SnO、カーボンナノチューブ、PEDOT/PSSやZnO:Alなどの透明な導電性材料を使用することができる。また、透明なフィルムに、Al、Cu、Ag、カーボン等の導電性材料を用いてメッシュ状に電極が共通電極層201に形成されていてもよい。また、共通電極層201には、一定の電圧、例えばGND電圧、が印加されてもよく、あるいは、電圧印加部103から変化する電圧が印加されてもよい。
【0020】
第一フィルム層202は、透明な材料により形成されたフィルムである。第一フィルム層202は、絶縁性を有していなくてもよいが、共通電極層201が導電性であるので、第一フィルム層202は絶縁性を有していることが好ましい。第一フィルム層202の材料としては、透明性を有する材料であれば特に限定されることはない。例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、シクロオレフィンコポリマー、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂を使用することができる。また、第一フィルム層202は、ラミネート加工が可能なベースフィルム材料とシーラントフィルム材料が積層された基材であることが好ましい。ベースフィルム材料としては、ラミネート加工時の加熱圧着による耐熱性を考慮して、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂を使用してもよい。シーラントフィルム材料としては、無延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用してもよい。また、ポリウレタン、ポリアクリル、エポキシ樹脂、シリコーン等の熱シール性を有する材料からなる塗膜等を用いてもよい。
【0021】
ツイストボール層203は、低極性溶媒と複数のツイストボール204とを含むエラストマーシートとして形成される。具体的には、エラストマー材料を用いて形成されるエラストマーシートに、複数のツイストボール204を分散させた後、エラストマーシートを低極性溶媒中に浸漬させてエラストマーシートを低極性溶媒で膨潤させて形成する。これにより、ツイストボール204が低極性溶媒により覆われ、ツイストボール204が回転可能となる。
【0022】
エラストマー材料としては、熱硬化型樹脂を挙げることができる。例えば、シリコーン樹脂、微架橋したアクリル樹脂、微架橋したスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂などを使用することができる。低極性溶媒は、エラストマーシートに膨潤されて使用される。このような低極性溶媒として、例えば、ジメチルシリコーンオイル、イソパラフィン系溶媒、直鎖パラフィン系溶媒、ドデカン、トリデカンなどを使用することができる。
【0023】
ツイストボール204は、50μm以上1000μm以下、好ましくは100μm以上700μm以下、より好ましくは200μm以上500μm以下の直径を有する略球体である。ツイストボール204は、また、異なる少なくとも2色に着色された少なくとも2つの着色領域を有し、異なる着色領域が異なる帯電極性を有する双極性球状粒子である。例えば、正(+)に帯電した黒色相と負(−)に帯電した白色相とを有する。但し、色相は上述の黒色/白色に限定されず、例えば、有色彩相/白色相(例えば、黒色/白色、赤色/白色など)或いは有色彩相/有色彩相(例えば、黒色/赤色、青色/赤色など)であってもよい。
【0024】
ツイストボール204の色相を形成させる着色剤としては、後述する重合性樹脂成分を含有する流動性分散媒体に不溶性又は均一に分散される染料又は顔料であれば、特に限定されず、適宜選択して使用することができる。使用される着色剤の添加量は、その着色粒子の用途等によっても所望される色調が異なり、また、後述する着色連続相中での分散性等から、本発明においては、着色連続相中の重合硬化成分である全重合性樹脂成分100重量部当たり、0.1重量部〜80重量部で、好ましくは2〜10重量部の範囲で適宜好適に添加することができる。
【0025】
ツイストボール204は、例えば、マイクロチャンネル製造方法において製造することができる。すなわち、重合性樹脂成分を含有する油性又は水性の流動性分散媒体中に、この媒体不溶性の着色剤を含有する2色に分相させた着色連続相中の重合性樹脂成分を異なる極性に帯電する重合性モノマーで形成させて、第1マイクロチャンネルに移送させる。次いで、この着色連続相を第2マイクロチャンネル内を流れる水性又は油性の球状粒子化相中に連続又は不連続的に順次吐出させる。球状粒子化相中に吐出された吐出物は、マイクロチャンネル内での一連の吐出・分散・移送中に球状粒子化されながら、球状粒子化相中で順次球状化される。この球状化された粒子中の重合性樹脂成分を紫外線照射下及び/又は加熱下で重合硬化させることにより、異なる2色に着色された2つの着色領域を有し、異なる着色領域が異なる帯電極性を有する双極性2色相球状粒子であるツイストボール204が形成される。
【0026】
本発明のツイストボール204に用いる重合性樹脂成分、又は重合性モノマーとして、重合性モノマーの官能基又は置換基の種類によって、ツイストボール204の帯電性がそれぞれ負(−)帯電性と正(+)帯電性とを示す傾向にあるモノマー種を挙げることができる。従って、少なくとも2種以上の複数種のモノマーを本発明のツイストボール204の重合性樹脂成分として使用する場合には、その(+)及び(−)帯電性を示す傾向を踏まえて、好ましくは、同種帯電性の傾向にあるモノマー同士を複数組み合わせて適宜好適に使用することができる。
【0027】
ツイストボール204の少なくとも2つの着色領域は、異なる正負の帯電状態であれば、どちらの帯電状態であってもよい。ツイストボール204が、正(+)に帯電した黒色相と負(−)に帯電した白色相とを有する場合、ツイストボール層203を挟持する2つの電極に電圧が印加されると、ツイストボール204の正(+)に帯電した黒色相と負(−)に帯電した白色相とが、それぞれの帯電極性とは逆の極性の電圧を印加された電極と対向するようにツイストボール204が回転する。これにより、共通電極層201を方向213から見た場合に、白色または黒色が現れる。
【0028】
第二フィルム層205は、透明な材料により形成されたフィルムであり、第一フィルム層202と同様の材料により形成される。ただし、表示部104において、第二フィルム層205の材料と第一フィルム層202の材料は同じである必要はない。
【0029】
表示電極層206は、絶縁性のフィルムの上に、所望の形状にパターニングされた表示電極207、208を有する。表示電極207、208は、インクジェット法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、凸印刷法その他印刷法により、絶縁性の透明な材料(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、シクロオレフィンコポリマー、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂その他絶縁性樹脂)の上に、Au、Al、Ni、Cuなどの金属、ITO、IZO、SnO2、ZnO:Alなどの透明導電体、導電剤を溶媒或いは合成樹脂バインダに混合したもの等の導電性材料を配置して形成される。
【0030】
この表示電極207、208には、後述の配線210、211により、電圧印加部103より出力される電圧が印加される。これにより、表示電極207、208それぞれと、共通電極層201との間に電圧が印加され、方向213から見た場合に、表示電極207、208それぞれの部分が同じ色の領域として見ることが可能となる。したがって、図2において、表示電極207、208の下の領域が表示領域(セグメント)となる。
【0031】
配線層209は、絶縁性の樹脂材料などのフィルムに設けられた貫通電極を介して表示電極と接続する配線が形成されたフィルムである。絶縁性の樹脂材料としては、上述した樹脂材料等を用いることができる。
【0032】
第三フィルム層212は、絶縁性の樹脂材料などにより形成される。絶縁性の樹脂材料としては、上述した樹脂材料等を用いることができる。
【0033】
なお、方向213から見た場合に、表示電極以外の部分の色がツイストボール204の色相の一つと同等となるように、共通電極層201にさらにマスク層を設けたり、表示電極層206の表示電極以外の部分に、共通電極層201との間で一定の電圧が印加されるように、背景用の電極を設けたりしてもよい。
【0034】
また、共通電極層201の方向213の側に、反射防止フィルム(Anti−Reflectionフィルム)や映込防止フィルム(Anti−Glareフィルム)、アクリル板やガラス板などを設置してもよい。これにより、反射特性の向上や強度の向上を得ることができる。
【0035】
図3(a)は、表示電極層206における表示電極の配置の一例を示す。この例では、符号「a」、「b」、「c」、「d」、「e」、「f」、「g」それぞれにより示される白色の合計7つの領域に矩形の表示電極が、全体として「8」字形を成して配置される。また、表示電極の領域以外の領域は黒色の背景となっている。これにより、電圧印加制御部102により、表示電極「a」〜「g」への電圧の印加を制御し、次に述べるように、0から9の数字を表示することが可能となる。なお、図3(a)においては、背景は黒色として示したが、これはツイストボール204の有する色相のいずれかであればよい。ツイストボールが白色の色相を有していれば、背景は白色としてもよいことは上述の通りである。以下、説明を簡潔に行なうために、ツイストボールは白色と黒色との2つの色相を有し、表示電極層206以外の領域による背景の色は黒色であるとして説明する。
【0036】
図3(b)は、図3(a)に示した表示電極の配置において、0から9の数字を表示するために電圧を印加するときの制御を示す表である。「○」は表示電極の領域に白色を表示する電圧(例えば−170V)をその表示電極に印加し、「●」は表示電極の領域に黒色を表示する電圧(例えば+170V)をその表示電極に印加することを表す。例えば、0を表示するためには、表示電極「a」〜「f」に、白色を表示するための電圧を印加し、表示電極「g」に、黒色を表示するための電圧を印加する。これにより、表示電極「g」の部分は背景と同化し、表示電極「a」〜「f」の部分が全体として数字の「0」の形状に見えることになる。
【0037】
本願発明者は、表示部104の図3(a)に示した表示電極の配置において、電圧印加部102により、図3(b)に示した電圧の印加の制御を行ない、数字の0から9の数字を表示部に順次表示させることを行なったところ、表示電極「a」の部分と表示電極「c」の部分におけるコントラストが、他の表示電極の部分におけるコントラストより低下する現象が発生することを発見した。また、このコントラストの低下は、時計表示などを行なう際に、一秒ごとに数字の0から9の数字を表示部に順次表示させる場合に特に顕著になることを発見した。
【0038】
そこで、本願発明者は、この現象の発生を抑制するために検討を進めた結果、コントラストの低下する表示電極に印加する電圧の絶対値を、他の表示電極に印加する電圧の絶対値よりも大きくすることに想到した。例えば、表示電極「a」および「c」に印加する電圧の絶対値を、他の表示電極に印加する電圧の絶対値よりも大きくする。あるいは、一秒桁の表示電極に印加する電圧の絶対値を、他の桁の表示電極に印加する電圧の絶対値よりも大きくする。これにより、上述の現象の抑制ができることを確認したので、以下、これについて説明する。
【0039】
なお、コントラストの測定に用いたツイストボール層の製造手順は次の通りである。ツイストボールとして、黒色で正(+)に帯電した黒色相および白色で負(−)に帯電した白色相を有し、粒子径が約100μmとなるものを複数個準備した。これらのツイストボールを、熱硬化型シリコーン樹脂中に分散し、コーターにより、ガラス基板上に塗布して熱処理することにより、ツイストボールが分散された厚さ300μmのシートを作製した。このシートをシリコーンオイル中に24時間浸漬し、膨潤させた。次いで、ITOがPET面に形成されたラミネートフィルム(CPP/PET)を共通電極側の基材として準備した。また、アルミ蒸着により、ラミネートフィルム(CPP/PET)のPET面に図3(a)の表示絵柄をパターニングして表示電極側の基材を得た。共通電極側の基材のITO面を外側にし、表示電極側の基材のアルミ面を外側にして、内側にシートを挟みラミネート加工をしてツイストボール層を得た。
【0040】
図4(a)は、共通電極に印加する電圧の絶対値を175Vと190Vとのそれぞれの場合において、この表示装置を用いて一秒ごとに数字の0から9の数字を表示部に順次表示させながら、各表示電極の表示領域の白反射率を測定した結果を示す。すなわち、一秒ごとに数字の0から9の数字を表示部に順次表示させる場合に、共通電極に印加する電圧の絶対値を175Vとした場合の各表示領域の白反射率は、表示電極「a」〜「g」において、10.22、11.36、10.05、10.95、13.13、11.09、11.24となり、これらの数字の平均は、11.15となり、標準偏差は1.00、最大値と最小値との差は3.07となった。なお、白反射率の測定は、井原電子工業が製造した反射濃度計R700(ISO5/4、ANSI PH2.17、DIN16536)を用いた。
【0041】
一方、一秒ごとに数字の0から9の数字を表示部に順次表示させる場合に、表示電極に印加する電圧の絶対値を190Vとした場合における、各表示電極の表示領域の白反射率は、表示電極「a」〜「g」において、10.86、11.34、10.64、11.08、12.98、10.94、11.55となり、これらの数字の平均は11.34となり、標準偏差は0.78、最大値と最小値との差は2.34となった。
【0042】
すなわち、白色を表示するために共通電極と表示電極との間に印加する電圧を175Vから190Vに上げることにより、白反射率が大きくなり、標準偏差および最大値と最小値との差が減少し、白色がより明りょうに表示され、表示電極間でのばらつきも小さくなった。
【0043】
また、図4(b)は、白反射率を背景の黒色の反射率で除したコントラストを算出した結果を示す。すなわち、一秒ごとに数字の0から9の数字を表示部に順次表示させる場合に、表示電極に印加する電圧の絶対値を175Vとしたときの各表示領域におけるコントラストは、表示電極「a」〜「g」において5.10、5.66、5.01、5.46、6.54、5.53、5.60となり、これらの数字の平均は5.56であり、標準偏差は0.50、最大値と最小値との差は1.53となった。
【0044】
一方、一秒ごとに数字の0から9の数字を表示部に順次表示させる場合に、表示電極に印加する電圧の絶対値を190Vとした場合の各数字の表示における各表示電極におけるコントラストは、表示電極「a」〜「g」において、6.15、6.42、6.03、6.27、7.35、6.20、6.54となり、これらの数字の平均は6.42であり、標準偏差は0.44、最大値と最小値との差は1.32となる。
【0045】
すなわち、表示電極に印加する電圧の絶対値を175Vから190Vに上げることにより、コントラストが大きくなり、標準偏差および最大値と最小値との差が減少し、黒色の背景に対して白色が際立って表示され、表示電極間でのばらつきも小さくなった。
【0046】
共通電極と表示電極との間に印加する電圧を上げると、白反射率およびコントラストが改善する理由は次の通りであると考えられる。図3(b)を参照すると、0から9の数字を順次表示した場合、各電極における黒色が表示される時間の長さと白色が表示される時間の長さとを表の最右端の「黒」、「白」という列に示した。これを見ると、コントラストが低下する表示電極「a」において、黒色が表示される時間の長さが2であるのに対し、白色が表示される時間の長さは8であり、表示電極「c」において、黒色が表示される時間の長さは1であるのに対し、白色が表示される時間の長さは9である。一方、他の表示電極においては、表示電極「b」以外は、黒色が表示される時間の長さは3以上であり、白色が表示される時間の長さは7以下である。
【0047】
黒色が表示される時間の長さが2である表示電極「a」と表示電極「b」とを比較すると、表示電極「a」においては、黒色を表示するのは、1と4とを表示する場合であり、表示電極「b」においては、黒色を表示するのは5と6とを表示する場合であり、表示電極「b」においては黒色は連続して表示されるのに対して、表示電極「a」においては黒色は連続して表示されない。
【0048】
以上のことから、いずれの色である第1色(例えば白色)が連続して表示される表示電極(例えば表示電極「c」)、または、いずれかの色である第1色と異なる第2色(例えば黒色)が連続して表示されない表示電極(例えば表示電極「a」)について、コントラストが低下している。
【0049】
これは、第1色を連続して表示するための電圧が連続して表示電極に印加されるために、ツイストボール204表面に電荷が蓄積し、第2色を表示するために電圧を切り替えても、ツイストボール204表面に蓄積した電荷の消去に時間が消費されるため、ツイストボール204の回転に時間がかかるためであると考えられる。このため、例えば、表示電極「a」において、1を表示するために黒色を表示するための電圧を印加してもツイストボール204が180度回転しないうちに、次に2を表示するために白色を表示するための電圧が印加されるために黒色が完全に表示されない。このためにコントラストが低下すると考えられる。一方、表示電極「b」においては、5と6とを表示するために連続して黒色を表示するための電圧が印加されるので、5と6以外を表示するために連続して白色を表示するための電圧が印加されるので、ツイストボール204表面に電荷が蓄積されていても、ツイストボール204が180度回転し、白色がより完全に表示される。
【0050】
図5は、ツイストボールの回転を説明する図である。図5において、符号501が共通電極であり、符号502が表示電極であるとし、符号500の矢印から表示部を見るとする。
【0051】
図5(a)において、共通電極501に正の電圧を印加し続けると、ツイストボールの白色部分の表面にマイナスの電荷が蓄積し、黒色部分の表面にプラスの電荷が蓄積する。そして、電圧の極性を逆転させると、ツイストボールが回転し、図5(b)のようになる。すなわち、共通電極501の電圧と表示電極502との関係を逆転させた直後には、ツイストボールの表面に蓄積した電荷を消去するために、ツイストボールは共通電極501の電圧と表示電極502との関係の逆転から遅れて回転を開始し、ツイストボールの回転角度は180度未満となる。このため、黒色の表示が不完全となる。黒色の表示が不完全な状態で、しかも、ツイストボールが180度回転せず引き続き回転している途中で共通電極501の電圧と表示電極502との関係を逆転させると、電圧の逆転をしても慣性モーメントによりツイストボールは逆回転を直ちに開始できず、白色の表示も不完全となる。
【0052】
一方、共通電極501と表示電極502との間に印加する電圧を大きくすると、図5(a’)のように、共通電極501に正の電圧を印加し続けることにより、ツイストボールの白色部分の表面にマイナスの電荷が蓄積し、黒色部分の表面にプラスの電荷が蓄積しても、電圧の極性を逆転させると、短時間でツイストボールの表面に蓄積した電荷が消去されるだけの充分な電圧がかかることにより、図5(b’)に示すように、ツイストボールは180度回転し、静止する。そして、共通電極501の電圧と表示電極502との関係を逆転させると、直ちにツイストボールは回転を開始し、図5(c’)に示すようにツイストボールは180度回転し、静止する。これにより、白色の表示がより完全に行なわれると考えられる。
【0053】
したがって、本発明の一実施形態においては、電圧印加制御部102は、以下の条件を満たす表示電極には、他の表示電極よりも絶対値の大きな電圧を印加する制御を行なう。
(A)連続して第1色を表示するための電圧が印加され、かつ、
(B)第2色を表示するための電圧は、連続して印加されない。
ここに「連続」とは、電圧の印加を継続して行なう最小の長さの時間が続くことをいう。
【0054】
なお、本実施形態を変形した実施形態として、第1色を表示するときには、上記の条件を満たす表示電極と、他の表示電極とに、同じ値の電圧を印加し、第2色を表示するときには、上記の条件を満たす表示電極には、他の表示電極よりも絶対値の大きな電圧を印加してもよい。
【0055】
この変形された実施形態においては、例えば、図3(a)と(b)とにおいて、表示電極「a」が上記の条件を満たす表示電極とすると、○に対応して白色を表示するとき表示電極「a」と他の表示電極とには、同じ大きさの電圧を印加し、●に対応して黒色を表示するとき表示電極「a」に印加される電圧を、他の表示電極に印加される電圧よりも絶対値を大きくしてもよい。すなわち、表示電極「a」の領域に白色を表示するために表示電極「a」に印加される電圧と、他の表示電極のうち例えば表示電極「f」の領域に白色を表示するために表示電極「f」に印加される電圧とを−175Vとし、表示電極「a」の領域に黒色を表示するために表示電極「a」に印加される電圧を190Vとし、表示電極「f」の領域に黒色を表示するために表示電極「f」に印加される電圧は175Vとしてもよい。
【0056】
(実施形態2)
本発明の実施形態2として、図3(a)に示した表示を複数用いる場合について説明する。
【0057】
実施形態1において参照した図4(b)によれば、表示電極に絶対値がより大きな電圧を印加することにより、高いコントラストでの表示が得られる。しかし、時間の表示などにおいては、複数の桁の表示が必要となり、絶対値が大きな電圧を印加すると消費電力が増大してしまう。そこで、本実施形態においては、実施形態1におけるよりも多くの表示(例えば多くの桁数の表示)を行なう場合に、高く均一なコントラストを維持しつつ、消費電力の増大を抑制する技術について開示を行なう。
【0058】
図6は、図3(a)に示した表示を、6個並べて時計表示を行なう場合の表示電極の配置の一例を示す。図6では、左の桁から10時間桁、1時間桁、10分桁、1分桁、10秒桁、1秒桁となっている。すなわち、それぞれの桁は、10時間毎、1時間毎、10分毎、1分毎、10秒毎、1秒毎に表示が変化する。
【0059】
図7(a)は、各桁の表示電極に絶対値が190Vの電圧を印加した場合に測定した白反射率とコントラストを示す。すなわち、白反射率は、10時間桁、1時間桁、10分桁、1分桁、10秒桁、1秒桁それぞれについて、12.53、13.16,11.69、14.20,12.47、11.30となり、平均は12.56、標準偏差は1.04、最大値と最小値との差は2.90となった。これは、図4(a)に示した標準偏差よりも大きな標準偏差であるので、桁間のばらつきが発生している。同様に、コントラストについては、6.19、6.51、5.78、7.50、6.59、6.40となり、平均は6.5となり、標準偏差は0.57、最大値と最小値との差は1.72となり、桁間のばらつきが発生している。
【0060】
また、図7(b)は、各桁の表示電極に絶対値が175Vの電圧を印加した場合に測定した白反射率とコントラストを示す。すなわち、白反射率は、12.13、11.79、11.43、12.75、12.90、11.10となり、平均は12.02、標準偏差は0.72、最大値と最小値との差は1.80となった。また、コントラストは、6.71、6.53、6.32、6.54、6.61、5.60となり、平均は6.39、標準偏差は0.41、最大値と最小値との差は1.11となる。これは、図7(a)よりも標準偏差が小さくなっており、桁間でのばらつきは改善している。
【0061】
すなわち、絶対値の大きな電圧(例えば190V)を印加するよりも、絶対値の小さな電圧(例えば175V)を印加すると、表示の継続期間の長さが異なる各桁間でのコントラストのばらつきが小さくなるという効果が得られる。また、表示の継続期間の短い桁、特に1分桁、10秒桁、1秒桁のコントラストが低くなり、看者に違和感を与えることとなる。
【0062】
そこで、本実施形態では、より短時間で表示が変化する桁の表示電極には、より長時間で表示が変化する桁の表示電極よりも絶対値が大きな電圧を印加するように、電圧印加制御部102が制御する。
【0063】
図7(c)は、10時間桁、1時間桁および10分桁の表示電極には、絶対値が175Vの電圧を印加し、1分桁、10秒桁、1秒桁には、絶対値が190Vの電圧を印加した場合の白反射率とコントラストとを測定した結果を示す。白反射率は、12.13、11.79、11.43、14.20、12.47、11.30となり、平均は、12.22,標準偏差は、1.06、最大値と最小値との差は2.90となった。また、コントラストは、6.71、6.53、6.32、7.50、6.59、6.40となり、平均は6.68,標準偏差は0.43、最大値と最小値との差は1.18となる。
【0064】
図7(d)は、10時間桁、1時間桁、10分桁、1分桁および10秒桁の表示電極には、絶対値が175Vの電圧を印加し、1秒桁に絶対値が190Vの電圧を印加した場合の白反射率とコントラストとを測定した結果を示す。白反射率は、12.13、11.79、11.43、12.75、12.90、11.30となり、平均は12.05、標準偏差は0.67、最大値と最小値との差は1.60となり、コントラストは、6.71、6.53、6.32、6.54、6.61、6.40となり、平均は6.52、標準偏差は0.14、最大値と最小値との差は0.39となり、(a)〜(d)の中では、(d)が最も改善される。
【0065】
したがって、表示の継続期間の短い桁の表示電極に印加する電圧を高くし、表示の継続時間の長い表示電極に印加する電圧を低くすることにより、コントラストのばらつきを抑制し、看者に与える違和感を現象しつつ、消費電力も小さくすることができる。
【0066】
本明細書では、例えば図6を参照して、表示装置が、10時間桁、1時間桁、10分桁、1分桁、10秒桁、1秒桁を有する場合について説明した。すなわち、表示装置が1日の時間を表示するのに必要な桁を有する場合について説明した。しかし、本発明は、表示装置が1日の時間を表示するのに必要な桁を有する場合に限定されることはない。例えば、表示装置が、カレンダーの表示機能を有しており、1日桁、10日桁、1月桁、10月桁、1年桁および10年桁を有し、これらの桁がそれぞれ、1日間、10日間、1月間、10月間、1年間または10年間を単位として電圧が印加されるようになっていてもよい。また、その他、1週間などの1秒以上の任意の長さの時間を単位としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
100 表示装置
101 電圧発生回路
102 電圧印加制御部
103 電圧印加部
104 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ正と負との極性の電圧が印加される複数の表示電極と、他の電極と、の間に配置され、異なる着色領域に異なる帯電極性を有する球状粒子に電圧を印加して表示を行う表示部と、
前記複数の表示電極のうち、一方の極性の電圧が印加される時間が他の表示電極よりも短い表示電極に、前記他の表示電極よりも絶対値が大きい電圧を印加する制御を行なう電圧印加制御部と、
を有する表示装置。
【請求項2】
前記一方の極性の電圧が印加される時間が他の表示電極よりも短い表示電極には、前記一方の極性の電圧は、連続して印加されないことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
複数の表示電極と他の電極との間に配置され、異なる着色領域に異なる帯電極性を有する球状粒子に電圧を印加して表示を行う第1表示部および第2表示部を有し、
前記第1表示部の行なう表示の継続時間が前記第2表示部の行なう表示の継続時間よりも短いとき、前記第1表示部の前記複数の表示電極に、前記第2表示部の前記複数の表示電極よりも絶対値が大きい電圧を印加する制御を行なう電圧印加制御部と、
を有する表示装置。
【請求項4】
前記第1表示部の行なう表示の継続時間は1分以下であり、前記第2表示部が行なう表示の継続時間は10分以上であることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1表示部の行なう表示の継続時間は1秒であり、前記第2表示部が行なう表示の継続時間は10秒以上であることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項6】
それぞれ正と負との極性の電圧が印加される複数の表示電極と、他の電極と、の間に配置され、異なる着色領域に異なる帯電極性を有する球状粒子に電圧を印加して表示を行う表示部を有する表示装置の制御方法であって、
前記複数の表示電極のうち、一方の極性の電圧が印加される時間が他の表示電極よりも短い表示電極に、前記他の表示電極よりも絶対値が大きい電圧を印加することを特徴とする制御方法。
【請求項7】
複数の表示電極と他の電極との間に配置され、異なる着色領域に異なる帯電極性を有する球状粒子に電圧を印加して表示を行う第1表示部および第2表示部を有する表示装置の制御方法であって、
前記第1表示部の行なう表示の継続時間が前記第2表示部の行なう表示の継続時間よりも短いとき、前記第1表示部の前記複数の表示電極に、前記第2表示部の前記複数の表示電極よりも絶対値が大きい電圧を印加する制御を行なうことを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−230166(P2012−230166A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96988(P2011−96988)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】