説明

表示装置

【課題】視野角特性の問題を解消することを目的とする。
【解決手段】表示装置は、光がそれぞれ透過する複数の固定開口36が形成された遮光膜34と、それぞれの固定開口36の上方に配置されたレンズ44と、遮光膜34とレンズ44の間に配置され、複数の固定開口36にそれぞれ対応して光の透過及び遮断を制御するための複数のシャッタ14と、複数のシャッタ14を、固定開口36の上方の位置と固定開口36から退避した位置との間を移動するように駆動する駆動部40と、を有し、複数の固定開口36は、それぞれ長手方向Y及び短手方向Xを有する長尺状であり、レンズ44は、長手方向Yよりも短手方向Xに光の屈折力が強い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMSディスプレイ(Micro Electro Mechanical System Display)は、液晶ディスプレイに取って代わると期待されているディスプレイである(特許文献1参照)。このディスプレイは、偏光を利用した液晶シャッタ方式とは異なり、固定開口及びシャッタを有するシャッターユニットによって機械的に光の透過窓を開閉することにより明暗を表示する。詳しくは、固定開口の上方にシャッタを配置することで光を遮り、固定開口の上方からシャッタを退避させることで光を透過させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−197668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固定開口は遮光膜に形成された開口からなり、シャッタは、遮光膜から間隔をあけて配置されることで駆動できるようになっている。そのため、シャッタが固定開口の上方から退避しているとき、画面に対して垂直に進む光は固定開口を透過するが、退避しているシャッタの方向に斜めに進む光はシャッタによって遮られてしまう。そのため、見る方向によって輝度が異なるという視野角特性の問題があった。
【0005】
本発明は、視野角特性の問題を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る表示装置は、光がそれぞれ透過する複数の固定開口が形成された遮光膜と、それぞれの前記固定開口の上方に配置されたレンズと、前記遮光膜と前記レンズの間に配置され、前記複数の固定開口にそれぞれ対応して前記光の透過及び遮断を制御する複数のシャッタと、前記複数のシャッタを、前記固定開口の上方の位置と前記固定開口から退避した位置との間(即ち、前記光を透過する位置と前記光を遮断する位置との間)を移動するように駆動する駆動部と、を有し、前記複数の固定開口は、それぞれ長手方向及び短手方向を有する長尺状であり、前記レンズは、前記長手方向よりも前記短手方向に光の屈折力が強いことを特徴とする。本発明によれば、短手方向に光を屈折させることで、この方向に光を分散することができるので、視野角特性の問題を解消することができる。
【0007】
(2)(1)に記載された表示装置において、前記レンズは、凹レンズであり、前記長手方向の曲率よりも前記短手方向の曲率が大きいことを特徴としてもよい。
【0008】
(3)(1)に記載された表示装置において、前記レンズは、平凹シリンドリカルレンズであることを特徴としてもよい。
【0009】
(4)(2)に記載された表示装置において、前記複数の固定開口は、複数列で配列され、少なくとも1列に並ぶ前記固定開口に対して、1つの前記平凹シリンドリカルレンズが配置されることを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る表示装置の概略を示す断面図である。
【図2】シャッタ及びその駆動部を示す図である。
【図3】シャッタとレンズの配置を説明するための図である。
【図4】レンズの作用効果を説明するための図である。
【図5】本実施形態に係る表示装置の明るさの特性を示すグラフである。
【図6】実施形態に係る表示装置のレンズの変形例を示す図である。
【図7】図6に示すレンズのVII−VII線断面図である。
【図8】図6に示すレンズのVIII−VIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る表示装置の概略を示す断面図である。図2は、表示装置の内部構造の一部を拡大した斜視図である。
【0012】
表示装置は、一対の光透過性基板10,12(例えばガラス基板)を有する。一対の光透過性基板10,12は、間隔をあけて対向するように配置されている。一方の光透過性基板10には、他方の光透過性基板12に対向する側に遮光膜34が形成されている。遮光膜34には、図2に示すように、光がそれぞれ透過する複数の固定開口36が形成されている。複数の固定開口36は、それぞれ長手方向Y及び短手方向Xを有する長尺状である。
【0013】
図2に示すように、複数のシャッタ14が、遮光膜34から間隔をあけて配置されている。シャッタ14は、固定開口36に対応して光の透過及び遮断を制御する。シャッタ14が固定開口36を覆うことで光は遮断され、シャッタ14が固定開口36の上方を避けることで光が透過する。駆動開口16を有するシャッタ14であれば、駆動開口16と固定開口36が一致する(駆動開口16を固定開口36の上方に配置する)ことで光が透過する。図2の例では、1つの固定開口36と1つの駆動開口16が対応している。あるいは、駆動開口を有しないシャッタ14(図示せず)であれば、シャッタ14が固定開口36の上方から退避することで光が透過する。
【0014】
シャッタ14は、一方の光透過性基板10に設けられている。図2は、シャッタ14及びその駆動部40を示す図である。シャッタ14は、駆動開口16を有するプレートである。駆動開口16で光が通過し、駆動開口16以外の部分で光を遮断する。駆動開口16は一方向に長い形状になっている。なお、光は、図1に示すように、光透過性基板10に重ねられたバックライト18から供給される。
【0015】
シャッタ14は、第1バネ20に支持されて光透過性基板10から浮くようになっている。複数(図2では4つ)の第1バネ20によってシャッタ14が支持されている。第1バネ20は、第1アンカー部22で光透過性基板10に固定されている。
【0016】
第1バネ20は、弾性変形可能な材料からなり、シャッタ14の板面に平行な方向に変形できるように配置されている。詳しくは、第1バネ20は、シャッタ14から離れる方向(駆動開口16の長さ方向に交差(例えば直交)する方向)に延びる第1部24と、駆動開口16の長さ方向に沿った方向であって駆動開口16の長さ方向の中央から外方向に向かって延びる第2部26と、さらにシャッタ14から離れる方向(駆動開口16の長さ方向に交差(例えば直交)する方向)に延びる第3部28と、を有する。そして、シャッタ14は、図2に矢印で示すように、駆動開口16の長さ方向に交差(例えば直交)する方向に移動できるようになっている。
【0017】
光透過性基板10には、第2アンカー部30に支持された第2バネ32が設けられている。第2バネ32は、第1バネ20の第2部26よりもシャッタ14から離れた側で、この第2部26に対向するようになっている。第2アンカー部30に電圧を印加し、第1バネ20の第2部26との電位差による静電引力によって、第2部26が第2アンカー部30に引き寄せられるようになっている。第2部26が引き寄せられると、第2部26と一体的な第1部24を介して、シャッタ14も引き寄せられる。つまり、第1バネ20及び第2バネ32は、シャッタ14を機械的に駆動するための駆動部40を構成するためのものである。
【0018】
シャッタ14の上述した駆動開口16と遮光膜34の固定開口36が連通すれば光が通過し、シャッタ14の移動によって遮光膜34の固定開口36が遮蔽されると光が遮断される。言い換えると、遮光膜34の固定開口36への光の通過及び遮断を制御するように、シャッタ14は機械的に駆動される。対応する1つの駆動開口16及び1つの固定開口36によって1画素が構成され、多数の画素によって画像が表示されるようになっている。そのため、複数(多数)のシャッタ14が設けられている。
【0019】
図1に示すように、シャッタ14の上方(それぞれの固定開口36の上方)にレンズ44が配置されている。図3は、シャッタ14とレンズ44の配置を示す図である。図4は、レンズ44の作用効果を説明するための図である。
【0020】
レンズ44は、光を拡散するものであり、例えば凹レンズである。図3に示すように、複数の固定開口36が複数列で配列されており、少なくとも1列に並ぶ2つ以上の固定開口36に対して、1つの平凹シリンドリカルレンズが配置されている。1つの平凹シリンドリカルレンズの個々の固定開口36に対応する部分が個々のレンズ44である。個々のレンズ44も平凹シリンドリカルレンズである。また、複数の平凹シリンドリカルレンズが一体的に並列されてレンズアレイが構成されている。
【0021】
レンズ44は、光の入射方向によって光の屈折力が異なる。平凹シリンドリカルレンズはその一例である。図4に示すように、レンズ44は、固定開口36の長手方向Yの曲率よりも短手方向Xの曲率が大きくなるように配置されている。平凹シリンドリカルレンズでは、長手方向Yの曲率はゼロ(直線)である。したがって、レンズ44は、固定開口36の長手方向Yよりも短手方向Xに光の屈折力が強くなる。
【0022】
次に、本実施形態に係る表示装置の作用効果を、図4を参照して説明する。本実施形態では、駆動部40(図2参照)によって、複数のシャッタ14は、固定開口36の上方の位置と固定開口36から退避した位置との間を移動する。
【0023】
固定開口36を透過する光は、固定開口36に対して(遮光膜34の表面に対して)垂直に進行する光Lvと、固定開口36に対して(遮光膜34の表面に対して)斜めに進行する光がある。斜めに進行する光は、長手方向Yに(長手方向Yに延びる面に沿って)傾斜する光Lyと、短手方向Xに(短手方向Xに延びる面に沿って)傾斜する光Lxを含む。
【0024】
固定開口36と駆動開口16が連通しているので、固定開口36を垂直に(遮光膜34の表面に直交する方向に)透過した光Lvは、さらに駆動開口16を透過する。長手方向Yに傾斜する光Lyも、固定開口36から、駆動開口16の長手方向Yに傾くので、駆動開口16を透過する。また、短手方向Xに傾斜するがその傾斜角度がわずかである光Lv´は、シャッタ14に遮られずに進行する。短手方向Xに傾斜するがシャッタ14に遮られずに進行する光Lv´の光軸と、垂直に進行する光Lvの光軸とのなす最大角度をαとする。
【0025】
これに対して、αを超える角度で短手方向Xに傾斜する光Lxは、固定開口36を透過しても、駆動開口16の短手方向Xに進むので、シャッタ14によって進行が遮断される。そのため、シャッタ14で制御される画素は、長手方向Yに斜めに見ると明るく、短手方向Xに斜めに見ると暗く見える。
【0026】
しかし、本実施形態によれば、上述したレンズ44を配置することで、短手方向Xに沿って、光の屈折角を大きくして、短手方向Xに光を拡げるようになっている。すなわち、短手方向Xに傾斜するがシャッタ14に遮られずに進行する光Lv´の光軸と、垂直に進行する光Lvの光軸との角度は、レンズ44への入射角度はα以内であるが、出射角度は屈折してαを超えるようになる。そのため、短手方向Xに光を分散させることができる。これにより視野角特性の問題を解消することができる。
【0027】
図5は、本実施形態に係る表示装置の明るさの特性を示すグラフである。横軸に長手方向Y又は短手方向Xの測定角を示し、縦軸に測定軸が0°(垂直)のときの輝度を1.0としたときの輝度比を表している。グラフから、長手方向Y及び短手方向Xのいずれでも輝度比には大きな差がないことが分かる。
【0028】
図1に示すように、一対の光透過性基板10,12は、シール材38によって間隔をあけて固定されている。シール材38は一対の光透過性基板10,12に密着している。また、シール材38によって、一対の光透過性基板10,12の間に封止空間が区画されている。
【0029】
図1に示すように、封止空間にはオイル42(例えばシリコーンオイル42)が満たされている。シャッタ14及び駆動部40は、オイル42内に配置されている。オイル42によってシャッタ14及び駆動部40の動きによる振動を抑えることができる。また、オイル42を満たすことで、誘電率が上がり、静電引力による駆動電圧を低下させることができる。
【0030】
図6は、実施形態に係る表示装置のレンズの変形例を示す図である。図7は、図6に示すレンズのVII−VII線断面図である。図8は、図6に示すレンズのVIII−VIII線断面図である。
【0031】
この例では、レンズ144は楕円形状の凹レンズである。レンズ144の長手方向Yの曲率半径R(図7参照)は、短手方向Xの曲率半径r(図8参照)よりも大きい。言い換えると、レンズ144は、長手方向Yの曲率よりも短手方向Xの曲率が大きい。図6には複数のレンズ144が一体化されたレンズアレイが示されており、それぞれのレンズ144が個々の固定開口に対応してもよいし、それぞれのレンズ144が2つ以上の固定開口に対応してもよい。このレンズ144を上述したレンズ44の代わりに使用してもよい。
【0032】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0033】
10 光透過性基板、12 光透過性基板、14 シャッタ、16 駆動開口、18 バックライト、20 第1バネ、22 第1アンカー部、24 第1部、26 第2部、28 第3部、30 第2アンカー部、32 第2バネ、34 遮光膜、36 固定開口36、38 シール材、40 駆動部、42 オイル、44 レンズ、144 レンズ、Lv 光、Lv´ 光、Lx 光、Ly 光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光がそれぞれ透過する複数の固定開口が形成された遮光膜と、
それぞれの前記固定開口の上方に配置されたレンズと、
前記遮光膜と前記レンズの間に配置され、前記複数の固定開口にそれぞれ対応して前記光の透過及び遮断を制御する複数のシャッタと、
前記複数のシャッタを、前記光を透過する位置と前記光を遮断する位置との間で移動させる駆動部と、
を有し、
前記複数の固定開口は、それぞれ長手方向及び短手方向を有する長尺状であり、
前記レンズは、前記長手方向よりも前記短手方向に光の屈折力が強いことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載された表示装置において、
前記レンズは、凹レンズであり、前記長手方向の曲率よりも前記短手方向の曲率が大きいことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載された表示装置において、
前記レンズは、平凹シリンドリカルレンズであることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項2に記載された表示装置において、
前記複数の固定開口は、複数列で配列され、
少なくとも1列に並ぶ前記固定開口に対して、1つの前記平凹シリンドリカルレンズが配置されることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−237883(P2012−237883A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107118(P2011−107118)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】