説明

表示装置

【課題】MEMSによるシャッタ組立体Mにおける歪みの発生を抑えた表示装置を提供する。
【解決手段】板状に形成されるシャッタ板SHと、アクチュエータ部ACと、を有する複数の画素を備えた表示装置であって、アクチュエータ部ACは、シャッタ板SHに接続される梁部Bと、電圧が印加されることにより、梁部Bを湾曲させてシャッタ板SHを駆動する駆動電極Eと、駆動電極Eを支持し、基板B1上に固定される第1支持部S1と、梁部Bを支持し、基板上に固定される第2支持部と、を有し、第1支持部S1および第2支持部の少なくとも一方は、基板から離れた平面部分Spと、平面部分Spから窪み、基板に接続する凹部Scと、を有し、凹部Scは、平面部分からほぼ垂直に傾斜して形成される垂直形成部分Svと、垂直形成部分Svから開始して、基板B1側に進むに従って傾斜が緩くなるように形成される部分Sgを有する、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の各画素に、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)によるシャッタを配置し、シャッタの開閉により画像を形成するディスプレイが知られている。
【0003】
このような表示装置としては、例えば、特許文献1に、MEMSベースの機械的光変調器を使用するバックライト付きのディスプレイが開示されている。また、特許文献2においても、MEMSベースの光変調器を組み込んだディスプレイ装置が開示されており、当該ディスプレイ装置の製造方法が、液晶ディスプレイの製造プロセスと互換性がある旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−197668号公報
【特許文献2】特表2008−533510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、複数の画素に光変調器としてのシャッタ組立体を有する表示装置において、シャッタ組立体は、板状に形成されるシャッタ板と、静電力により、シャッタ板を駆動するアクチュエータ部とを有して構成される。
【0006】
シャッタ板は、基板上で移動可能に浮遊させる必要があるため、シャッタ組立体を製造するプロセスとしては、例えば、犠牲層を利用してリソグラフィ工程により加工するものが考えられる。
【0007】
図8A〜図8Hは、犠牲層を用いてシャッタ組立体を製造する方法として考えられる1つの参考例を示す図である。参考例における製造工程では、まず、図8Aおよび図8Bで示されるように、2回のリソグラフィ工程により犠牲層となるレジストRSaとレジストRSbが形成され、次に、図8Cで示されるように、導体層ASと金属層ALが成膜される。その後、さらなるリソグラフィ工程を経て、金属層AL上に塗布されたレジストRScが図8Dのように加工され、さらに、ウェットエッチングにより金属層ALが除去され(図8E)、異方性ドライエッチングによりレジストRSbの側壁に形成された部分を除いて導体層ASが除去される(図8F)。そして、この異方性ドライエッチングののちに、レジストRSaとレジストRSbが除去され(図8G)、残された構造の全体に絶縁層ISが成膜されて、第1支持部S1と、シャッタ板SH等が形成される(図8H)。
【0008】
したがって、上記の参考例では、図8Hの第1支持部S1に見受けられるように、基板上で浮遊せずに形成される構造の下側の部分と、上側の部分とが異なるリソグラフィ工程で形成されることとなる。
【0009】
しかしながら、図8A〜図8Hのようにしてシャッタ組立体を製造する場合には、異なるリソグラフィ工程間で生じうる位置合わせのズレに起因して膜応力の不均一性が生じ、シャッタ組立体に歪みが発生する場合がある。
【0010】
本発明は、上記のような課題に着目するものであり、MEMSによるシャッタ組立体を有する表示装置において、シャッタ組立体の歪みの発生を抑えた表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る表示装置は、板状に形成されるシャッタ板と、前記シャッタ板を静電力により駆動するアクチュエータ部と、を有する複数の画素を備えた表示装置であって、前記アクチュエータ部は、前記シャッタ板に接続される梁部と、電圧が印加されることにより、前記梁部を湾曲させて前記シャッタ板を駆動する駆動電極と、前記駆動電極を支持し、基板上に固定される第1支持部と、前記梁部を支持し、前記基板上に固定される第2支持部と、を有し、前記第1支持部および前記第2支持部の少なくとも一方は、前記基板から離れて平面状に形成される平面部分と、前記平面部分から窪んで形成されて、前記基板に接続する凹部と、を有し、前記凹部は、前記平面部分からほぼ垂直に傾斜して形成される垂直形成部分と、前記垂直形成部分から開始して、前記基板側に進むに従って傾斜が緩くなるように形成される部分を有する、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる表示装置の一態様では、前記駆動電極および前記梁部は、前記平面部分を基準として前記基板側に形成される、ことを特徴としてもよい。
【0013】
また、本発明にかかる表示装置の一態様では、前記駆動電極および前記梁部は、幅方向よりも深さ方向に大きくなるアスペクト比により形成される、ことを特徴としてもよい。
【0014】
また、本発明にかかる表示装置の一態様では、前記第1支持部は、前記凹部を有し、前記駆動電極は、平面的にみて、前記アスペクト比を有する構造により外延が形成され、内側が中空となるように形成される、ことを特徴としてもよい。
【0015】
また、本発明にかかる表示装置の一態様では、前記駆動電極および前記梁部は、前記シャッタ板よりも深い位置まで形成される、ことを特徴としてもよい。
【0016】
また、本発明にかかる表示装置の一態様では、前記駆動電極および前記梁部は、前記基板側の先端が尖って形成される、ことを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シャッタ組立体における歪みの発生が抑えられた表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる表示装置を概略的に示す模式図である。
【図2】第1の実施形態における第1基板の等価回路を示す図である。
【図3A】第1の実施形態の表示装置における画素領域の様子を示す平面図である。
【図3B】第1の実施形態の表示装置における画素領域の様子を示す平面図である。
【図4】図3AにおけるIV−IV断面を示す断面図である。
【図5A】第1の実施形態におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図5B】第1の実施形態におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図5C】第1の実施形態におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図5D】第1の実施形態におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図5E】第1の実施形態におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図5F】第1の実施形態におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図5G】第1の実施形態におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図5H】第1の実施形態におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図6】第2の実施形態におけるシャッタ組立体Mの断面の様子を示す図である。
【図7A】第2の実施形態におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図7B】第2の実施形態におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図7C】第2の実施形態におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図8A】参考例におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図8B】参考例におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図8C】参考例におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図8D】参考例におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図8E】参考例におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図8F】参考例におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図8G】参考例におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【図8H】参考例におけるシャッタ組立体が製造される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる表示装置DPの模式図である。表示装置DPは、マトリクス状に配置される複数の画素のそれぞれに、光変調器としてのシャッタ組立体Mを有している。図1の模式図では、画素PX1及びPX4は、開状態になってアパーチャAPからのバックライトBLの光を通過可能にし、画像IMにおいて白を表示する。また、画素PX2及びPX3は、閉状態になってバックライトBLの光の通過を妨げており、画像IMにおいて黒を表示する。
【0021】
また、表示装置DPは、複数の画素のそれぞれにスイッチング素子を有する第1基板と、第1基板に対向して配置される第2基板を含んで構成される。シャッタ組立体Mは、第1基板と第2基板の間に配置される。
【0022】
図2は、本実施形態における第1基板の等価回路を示す図である。同図で示されるように、多数の走査信号線GLおよび共通信号線CLが図中横方向に延びており、また、多数の第1の映像信号線DL1および第2の映像信号線DL2が図中縦方向に延びている。また、各画素PXは、2つの薄膜トランジスタT1,T2と、2つのキャパシタC1,C2を含んで構成される。薄膜トランジスタT1のゲートは、走査信号線GLに電気的に接続され、ドレインは、第1の映像信号線DL1に電気的に接続され、ソースは、キャパシタC1およびシャッタ組立体Mのアクチュエータ部に電気的に接続される。薄膜トランジスタT2も同様に接続される。
【0023】
走査信号線GLは、所定のタイミングで電圧を印加することにより、画素行の選択を行う。走査信号線GLによる画素行の選択は順次行われ、シャッタ組立体Mには、その選択のタイミングにあわせて、第1の映像信号線DL1および第2の映像信号線DL2の一方、或いは、その両方から映像信号が供給される。
【0024】
第1の映像信号線DL1および第2の映像信号線DL2(以下、これらを単に映像信号線DLともいう)は、シャッタ組立体Mを開状態あるいは閉状態にするための映像信号をシャッタ組立体Mに供給する。具体的には、第1の映像信号線DL1からの映像信号により、画素PXを開状態にするようにシャッタ組立体Mが駆動され、第2の映像信号線DL2からの映像信号により、画素PXを閉状態にするようにシャッタ組立体Mが駆動される。映像信号の書き込み後は、書き込まれた画素に接続される走査信号線GLは接地され、シャッタ組立体Mの状態が維持される。
【0025】
共通信号線CLは、シャッタ組立体Mに、所定の基準電位を供給する。後に詳しく説明するように、本実施形態におけるシャッタ組立体Mは、映像信号線DLからの映像信号と、共通信号線CLから基準電位との電位差によって生じる静電気力で駆動されるものとなっている。
【0026】
また、複数の第1の映像信号線DL1および複数の第2の映像信号線DL2には、図2において不図示の映像信号線駆動回路が接続される。本実施形態における映像信号線駆動回路は、まず、映像信号が入力される画素の状態に基づいて、シャッタ組立体Mが有するシャッタ板を開状態の側に移動させるべきか、閉状態の側に移動させるべきかを決定する。そして、シャッタ板を閉状態の側に移動させる場合には、第1の映像信号線DL1に映像信号を出力してシャッタ組立体Mが有するアクチュエータ部の動作に必要な電圧を供給し、第2の映像信号線DL2を接地する。一方、シャッタ板を開状態の側に移動させる場合には、第2の映像信号線DL2に映像信号を出力してアクチュエータ部の動作に必要な電圧を供給し、第1の映像信号線DL1を接地する。
【0027】
ここで、本実施形態におけるシャッタ組立体Mについて説明をする。
【0028】
図3Aおよび図3Bは、本実施形態の表示装置における画素領域の様子を示す拡大平面図である。シャッタ組立体Mは、板状に形成されるシャッタ板SHと、2つのアクチュエータ部ACを有して構成され、シャッタ板SHの位置は、アクチュエータ部ACによって制御される。また、図3Aは、2つのアクチュエータ部ACに映像信号が供給されていない状態を示しており、図3Bは、第1の映像信号線DL1から映像信号が入力されて黒表示となる様子を示している。
【0029】
図3Bにおいては、シャッタ板SHと重複する位置に不図示のアパーチャAPが配置され、バックライトBLからの光がシャッタ板SHによって遮られて黒表示となる。また、図3Bとは逆に、図中右方向に偏った位置にシャッタ板SHが移動すると、シャッタ板SHが有する2つの開口OPと不図示のアパーチャAPとが重複し、バックライトBLからの光が遮られず白表示となる。
【0030】
アクチュエータ部ACは、映像信号線DLからの信号によって静電力を発生させて、シャッタ板SHの位置を変化させる機能を有している。本実施形態におけるアクチュエータ部ACは、駆動電極Eと、シャッタ板SHに接続される梁部Bと、該駆動電極Eを支持する第1支持部S1と、梁部Bを支持する第2支持部S2とを含んで構成される。図3A等で示されるように、梁部Bは、シャッタ板SHの中央から上下に派生する梁状の構造物であって、第1基板上に形成された第2支持部S2により支持される。また、駆動電極Eは、第1基板上の第1支持部S1により支持されて梁部Bに対向するように配置されており、上記の薄膜トランジスタT1またはT2のソースと電気的に接続される。
【0031】
図4は、図3AにおけるIV−IV断面の様子を示す図である。同図で示されるように、アクチュエータ部ACおよびシャッタ板SHは、導電性を有する導体層ASと、金属層ALと、これらの周囲を覆う絶縁層ISを含んで構成される。映像信号線DLからの映像信号がアクチュエータ部ACに入力されると、第1支持部S1を経て駆動電極Eの導体層ASに電荷が蓄積される。一方、シャッタ板SHには、第2支持部S2および梁部Bを経て共通信号線CLからの基準電位が入力されるようになっており、映像信号の入力にともなって、駆動電極Eと梁部Bとの間に静電気力が生じて互いに接触するようになっている。そして接触の際には、絶縁層ISにより駆動電極Eおよび梁部Bの絶縁性が維持され、生じた静電気力により梁部Bが駆動電極Eに引きつけられて変形し、変形による復元力と静電気力とが釣り合う位置まで、シャッタ板SHが基板面内方向にスライドさせられることとなる(図3B参照)。
【0032】
ここで特に、図5A〜図5Hを用いて、本実施形態におけるシャッタ組立体Mの製造工程を説明し、製造工程の観点から、シャッタ組立体Mの機械的構造を説明する。図5A〜図5Hは、それぞれ、図3AにおけるIV−IV断面に対応する部分の様子を示す図になっている。
【0033】
シャッタ組立体Mを製造する際には、まず、図5Aで示されるように、第1基板B1上に厚膜のレジストRS1が塗布され、リソグラフィ工程によりレジストRS1が加工される(第1のリソグラフィ工程)。本実施形態の第1のリソグラフィ工程では、ハーフトーンマスクが用いられ、第1支持部S1と、第2支持部S2と、駆動電極Eと、梁部Bと、シャッタ板SHのそれぞれを形成するために必要となるレジストRS1の加工が一回のリソグラフィ工程でなされる。なお、本実施形態におけるハーフトーンマスクのマスクパターンは、フル露光部が、図3Aにおける第1支持部S1及び第2支持部S2のホール形成箇所に対応し、ハーフ露光部が、図3Aにおける駆動電極Eの外側であって梁部Bの内側の領域と、格子部分GRの内側の領域に対応し、非露光部分は、駆動電極Eの内側の領域と、第1支持部S1においてコの字状に形成される部分の内側と、梁部Bおよび格子部分GRの外側に対応している。
【0034】
次に、図5Bおよび図5Cで示されるように、まず、レジストRS1上に、導体層ASが成膜され、さらに、金属層ALが成膜される。本実施形態では、導体層ASは、PECVD法により、アモルファスシリコンに不純物が添加されつつ成膜されるが、他の半導体、例えばSiGe、GaAs、CdSe、InPなどが用いられてもよい。また、本実施形態の金属層ALは、アルミニウム(Al)を主体とした合金であるが、他の金属、例えばCu、Ni、Mo、Taなどが用いられてもよく、この金属層ALによりアパーチャAPからの光が遮光される。
【0035】
その後、図5Dで示されるように、第2のリソグラフィ工程を経て、レジストRS2が塗布・露光・現像される。なお、第2のリソグラフィ工程におけるレジストRSが形成される領域は、図3Aにおいてトーンが付された領域(すなわち第1支持部S1、第2支持部S2、シャッタ板SHの領域)に対応する。
【0036】
次に、図5Eおよび図5Fで示されるように、レジストRS2から露出した部分の金属層ALが、ウェットエッチングで除去され、導体層ASが、異方性ドライエッチングにより除去される。
【0037】
図5Fで示される異方性ドライエッチングの工程では、レジストRS1上に平面的に形成された導体層ASが取り除かれ、レジストRS1のパターン側壁に形成された導体層ASが残される。以上のようにすることで、梁部Bや駆動電極Eにおける導体層ASが、第1のリソグラフィ工程で用いられる露光装置の最小設計寸法よりも小さな幅で形成され、梁部Bや駆動電極Eを弾性変形しやすい構造で形成することができる。
【0038】
図5Fの異方性ドライエッチングの後は、犠牲層として用いられたレジストRS1と、レジストRS2とが除去され(図5G)、CVD法により、残された導体層ASおよび金属層ALの周囲に絶縁層ISが形成される(図5H)。
【0039】
本実施形態におけるシャッタ組立体Mは、以上のような製造工程を経て2回のフォトリソグラフィ工程により形成される。次に、上述の製造工程を踏まえて、シャッタ組立体Mの構造についてさらに具体的に説明をする。
【0040】
まず、図4の断面図で示されるように、第1支持部S1は、平面状に形成される平面部分Spを有しており、凹部Sc(アンカー部)が、平面部分Spから第1基板B1側(下側)に窪んで形成されて、凹部Scの底部で第1基板B1に接続している。平面部分Spは、レジストRS1の上面に形成されるため、第1基板B1から離れて形成され、第1基板B1に対してほぼ平行になっている。
【0041】
凹部Scは、第1のリソグラフィ工程において、ハーフトーンマスクでフル露光される箇所に対応しており、レジストRS1の浅い部分では、マスクのパターンが忠実に転写されて、レジストRS1の側壁がほぼ垂直となるように加工される。一方、レジストRS1の深い部分では、レジスト材料によって生じる露光光の減衰やフォーカスのずれなどの光学的要因により、マスクのパターンが忠実に転写されにくくなる。このため凹部Scは、平面部分Spからほぼ垂直に傾斜して形成される垂直形成部分Svと、垂直形成部分Svの下端から開始して第1基板B1側に進むに従って傾斜が徐々に緩くなる傾斜部分Sgとを有して形成される。この傾斜が徐々に緩くなる傾斜部分Sgは、凹部Scが先細りになるように形成される。なお、ここでいう、ほぼ垂直とは、完全に垂直となる場合に加えて、±5.0度以下の範囲にあるものを含むものとする。また、製造上の誤差も許容されるものとする。
【0042】
また、第1支持部S1は、導体層ASと、導体層AS上に積層される金属層ALと、これらの周囲を覆う絶縁層ISを有している。凹部Scの底部では、導体層ASは、第1基板B1側に進むに従って傾斜が徐々に緩くなるように形成されて、内側へと裾を引くように鍋底状に形成される。導体層ASは、凹部Scにおける底部で第1基板B1に接しており、鍋底状に形成された部分の上端から平面状に形成された部分に至るまで、第1基板B1に対してほぼ垂直に形成されるようになっている。
【0043】
以上のようにして凹部Scが形成されるため、位置合わせマージンのための、第1基板B1に対して平行となる領域が形成されず、絶縁層ISによる膜応力の非対称性の発生が回避される。また、凹部Scの、傾斜が徐々に緩くなる傾斜部分Sgでは、絶縁層ISの付き回り性が改善され、これにより、第1支持部S1の機械的強度が向上してクラック等が生じにくくなる。
【0044】
なお、本実施形態では、1つのアクチュエータ部ACにつき、第2支持部S2が4カ所に形成され、これらの第2支持部S2においても第1支持部S1と同様の凹部Scが形成される。しかしながら、第1支持部S1および4つの第2支持部S2のうちのいずれか1つに、垂直形成部分Svおよび徐々に傾斜が緩くなる傾斜部分Sgを有する凹部Scが形成されればよく、これにより、アクチュエータ部ACで生じうる膜応力の非対称性の発生が緩和され、かつ、機械的強度が向上することとなる。
【0045】
また、本実施形態では、上記したようにハーフトーンマスクが用いられるため、第1基板B1に接続する第1支持部S1の凹部Scと、第1基板B1から浮遊する部分とを形成するためのレジストRS1を加工する工程が共通化され、駆動電極E、梁部B、シャッタ板SHは、ハーフ露光された箇所に形成される。このため、駆動電極E及び梁部Bは、アクチュエータ部ACの平面部分Spを基準として第1基板B1側に形成され、垂直形成部分Svの側方に位置することとなる。このように、ハーフトーンマスクを用いて犠牲層となるレジストRS1を加工することにより、膜応力の非対称性の緩和と機械的強度の向上に加え、さらに製造工程も簡略化される。
【0046】
また、本実施形態においては、駆動電極Eおよび梁部Bの導体層ASは、ハーフ露光されたレジストRS1におけるパターンの側壁に形成されるため、駆動電極E等は、幅方向よりも深さ方向に大きくなるアスペクト比を有している。駆動電極E等は、このように細い線幅で形成されるため、絶縁層ISの膜応力の不均一性の影響を受けやすい構造になっていると言える。また、駆動電極Eや梁部Bは、凹部Scの垂直形成部分Svと同様にレジストRS1のパターンの側壁にて形成されるため、図4等で示されるように、駆動電極Eや梁部Bは、垂直形成部分Svの側方に位置して垂直形成部分Svに対してほぼ平行に形成される。
【0047】
またさらに、本実施形態においては、駆動電極Eは、図3A等で示されるように、平面的にみて、前記したアスペクト比の構造で外延が縁取られて、その内側が中空になるように形成される。一方、梁部Bについても、同様に、前述のアスペクト比の構造によって、所定の領域(本実施形態では、第1支持部S1および駆動電極Eが配置される領域)を取り囲むように形成されている。このため、駆動電極Eや梁部Bは、膜応力の不均一性に敏感な構造で形成され、2回のフォトリソグラフィ工程により、前記したアスペクト比の駆動電極Eや梁部Bを有するシャッタ組立体Mを形成することができる。
【0048】
また、板状に形成されるシャッタ板SHは、図3A等で示されるように、格子部分GRを有して形成される。この格子部分GRは、梁部Bに連なって接続されるものとなっており、格子部分GRと梁部Bは、ハーフトーンマスクにおける連続する1つのパターン形状によって形成される。格子部分GRは、板状に形成されたシャッタ板SHにおいて溝状の形状を有しており、シャッタ板SHは、格子部分GRによって補強されて、その駆動に際しシャッタ板SHの剛性が確保されるようになっている。また、格子部分GRは、図3A等で示されるように、シャッタ板SHが有する開口OPを囲むように形成されており、開口OP上を跨って形成される部分も有している。
【0049】
[第2の実施形態]
次に本発明の第2の実施形態を説明する。図6は、第2の実施形態における駆動電極Eと、梁部Bと、シャッタ板SHの断面を示す図であり、図3AのIV−IV断面における駆動電極E〜シャッタ板SHまでの部分を示すものとなっている。第2の実施形態は、駆動電極Eの外側であって梁部Bの内側の領域が、第1のリソグラフィ工程のハーフトーンマスクでフル露光されて形成される点を除き、第1の実施形態の場合とほぼ同様になっている。
【0050】
図7A〜図7Cは、第2の実施形態におけるシャッタ組立体Mを製造する様子を説明する図である。まず、図7Aにおいて示されるように、犠牲層となるレジストRS1において、駆動電極Eおよび梁部Bを形成する箇所が、第1の実施形態で説明した凹部Scの箇所と同様に、フル露光されて加工される。その後、図5B〜図5Eと同様の工程を経て、異方性エッチングを施すと、図7Bで示されるように、レジストRS1のパターン側壁の内側が加工され、レジストRS1の底部に形成された導体層ASが排除される。このため、駆動電極Eおよび梁部Bは、レジストRS1を取り除いて絶縁層ISを成膜すると、図7Cで示されるように、シャッタ板SHよりも下側の位置まで形成され、さらに先端が尖るようになっている。これにより、ハーフトーンで作製した駆動電極Eおよび梁部Bでは、アンダー露光による平面方向および縦方向の寸法ばらつきが大きくなってしまうが、本発明の第2の実施形態では、フル露光されて加工するため均一性よく製造することができる。
【0051】
なお、上記の各実施形態における表示装置DPは、バックライトBLを有するものとなっているが、投射型の表示装置であってもよいし、表示装置の観察者側からもたらされる環境光の反射によって画像を形成する反射型の表示装置であってもよい。
【0052】
なお、上記の各実施形態における表示装置DPにおいては、図1で示されるように、薄膜トランジスタが形成される第1基板B1をバックライトBL側に配置するものとしているが、観察者側に薄膜トランジスタが形成される第1基板B1を配置し、アパーチャAPが形成される基板をバックライトBL側に配置するのであってもよい。
【0053】
なお、バックライトBLとしては、FSC方式(Field Sequential Color)が採用されても良い。また、グレースケールを生成する方式としては、シャッタ板SHが開状態となっている時間を制御する時分割の方式が用いられても良いし、開口した画素から入射した光をバックライトBL側で反射させ、その散乱光を用いる方式であっても良い。
【0054】
なお、上記の各実施形態における表示装置DPでは、シャッタ組立体Mが2つのアクチュエータ部ACを有し、これらがシャッタ板SHの位置を制御するようになっているが、1つのアクチュエータ部ACのみを有するシャッタ組立体Mであっても良い。この場合においては、例えば、画素PXを閉状態から開状態とする際には、アクチュエータ部ACに映像信号が入力され、開状態から閉状態とする際には、アクチュエータ部ACに入力される映像信号がオフになり、梁部Bの復元力によってシャッタ板SHが移動されるようにしてもよい。
【0055】
以上のように、本発明の各実施形態について説明をしたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成、又は同一の目的を達成することができる構成でおきかえることが出来る。
【符号の説明】
【0056】
DP 表示装置、M シャッタ組立体、PX1,PX2,PX3,PX4,PX 画素、AP アパーチャ、GL 走査信号線、DL 映像信号線、DL1 第1の映像信号線、DL2 第2の映像信号線、CL 共通信号線、IM 画像、T1,T2 薄膜トランジスタ、C1,C2 静電容量、SH シャッタ板、AC アクチュエータ部、S1 第1支持部、S2 第2支持部、B 梁部、E 駆動電極、GR 格子部分、OP 開口、B1 第1の基板、AS 導体層、IS 絶縁層、AL 金属層、Sp 平面部分、Sc 凹部、Sv 垂直形成部分、Sg 傾斜部分、RS1,RS2,RSa,RSb,RSc レジスト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成されるシャッタ板と、
前記シャッタ板を静電力により駆動するアクチュエータ部と、を有する複数の画素を備えた表示装置であって、
前記アクチュエータ部は、
前記シャッタ板に接続される梁部と、
電圧が印加されることにより、前記梁部を湾曲させて前記シャッタ板を駆動する駆動電極と、
前記駆動電極を支持し、基板上に固定される第1支持部と、
前記梁部を支持し、前記基板上に固定される第2支持部と、を有し、
前記第1支持部および前記第2支持部の少なくとも一方は、
前記基板から離れて平面状に形成される平面部分と、
前記平面部分から窪んで形成されて、前記基板に接続する凹部と、を有し、
前記凹部は、
前記平面部分からほぼ垂直に傾斜して形成される垂直形成部分と、
前記垂直形成部分から開始して、前記基板側に進むに従って傾斜が緩くなるように形成される部分を有する、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載された表示装置であって、
前記駆動電極および前記梁部は、前記平面部分を基準として前記基板側に形成される、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1乃至2に記載された表示装置であって、
前記駆動電極および前記梁部は、幅方向よりも深さ方向に大きくなるアスペクト比により形成される、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項3に記載された表示装置であって、
前記第1支持部は、前記凹部を有し、
前記駆動電極は、平面的にみて、前記アスペクト比を有する構造により外延が形成され、内側が中空となるように形成される、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載された表示装置であって、
前記駆動電極および前記梁部は、前記シャッタ板よりも深い位置まで形成される、
ことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載された表示装置であって、
前記駆動電極および前記梁部は、前記基板側の先端が尖って形成される、
ことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図8H】
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【公開番号】特開2012−252205(P2012−252205A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125337(P2011−125337)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】