説明

表示装置

【課題】ピンホールマスクを備えた表示装置において、より高いコントラスト比を確保する。
【解決手段】ピンホールマスク4に、所定の開口面積を有するとともに、各々が単一のドットに対応するピンホール41を複数配置する。光源3とピンホールマスク4との間に、複数のピンホールにそれぞれ対応する複数の光学素子21からなる光学素子アレイ2を設ける。光学素子21を、駆動部5により電圧を印加することにより、エレクトロウェッティング効果を利用して焦点距離、及び光軸を電気的に制御可能な液体レンズにより構成する。各々の光学素子21を、必要応じて対応するピンホール41に表示用の光を収束させる第1の状態(a)と、対応するピンホール41から外れた位置に表示用の光を収束させる第2の状態(b)とに個別に制御する。第2の状態にある光学素子21に対応するピンホール41が暗いドットとして認識され、かつ輝度がゼロとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピンホールマスクを備えた表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像等を表示する表示装置として、例えば下記特許文献1には、単一のドットを構成するピンホール(微細な開口部)が複数配置されたピンホールマスクと、ピンホールマスクの後方にピンホール毎に配置され、焦点距離をピンホールに入射する光を集束、又は拡散すべく調整可能な複数の可変焦点レンズとを備えたものが記載されている。
【0003】
係る表示装置においては、各々の可変焦点レンズの焦点距離を調整し、ピンホールマスクの前方から観察される各ピンホールの輝度を制御することによって、明るい領域と暗い領域とを確保することができる。つまり任意の画像等を表示することができる。しかも、画像等の表示に使用する光を偏光させる必要がないことから、光の利用効率が高く、画像等を高コントラスト、及び高輝度で表示することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−500606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の表示装置においては、暗い領域を確保する際には、対応するピンホールへの入射光を可変焦点レンズによって拡散させるが、入射光を最大に拡散させたとしても、ごく一部の光はピンホールを通過する。そのため、表示装置に確保可能なコントラスト比には自ずと限界があるという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、ピンホールマスクを備えた表示装置において、より高いコントラスト比を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1記載の発明に係る表示装置にあっては、最小の表示単位である単一のドットに対応した所定の開口面積を有するピンホールが複数配置されたピンホールマスクと、前記ピンホールマスクが有する複数のピンホール毎に設けられるとともに、エレクトロウェッティング効果を利用して、対応するピンホールに表示用の光を収束させる第1の状態と、対応するピンホールから外れた位置に表示用の光を収束させる第2の状態とに制御される複数の光学素子とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2記載の発明に係る表示装置にあっては、前記光学素子における第1の状態と第2の状態とは、光軸の向きが互いに異なる状態であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3記載の発明に係る表示装置にあっては、前記光学素子は、前記第2の状態に制御されている間、焦点位置が、エレクトロウェッティング効果を利用して前記ピンホールマスクにおける前記光の入射側又は射出側のいずれか一方に制御されることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4記載の発明に係る表示装置にあっては、前記光学素子は、前記第1の状態と前記第2の状態とに加え、エレクトロウェッティング効果を利用して、前記第1の状態及び前記第2の状態に制御されているときとは光軸の向きが異なる第3の状態に制御されるとともに、当該第3の状態にあるとき、表示用の光の収束位置とピンホールとの間に位置ずれが生じることによって、対応するピンホールに、収束した表示用の光の一部のみを通過させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5記載の発明に係る表示装置にあっては、前記ピンホールマスクが有する複数のピンホールに反射ミラーがそれぞれ設けられ、前記ピンホールマスクの前記反射ミラーを除いた一般部に反射防止処理が施されたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6記載の発明に係る表示装置にあっては、前記複数のピンホールにそれぞれ対応するとともに、対応するピンホールを通過した表示用の光により個別に励起される複数のドット領域を有する蛍光体が、前記ピンホールマスクに対向して設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ピンホールマスクを備えた表示装置において、より高いコントラスト比を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態を示す表示装置の概略構成図である。
【図2】光学素子、及び駆動部の詳細を示す図である。
【図3】光学素子の駆動時の状態を示す図である。
【図4】第2の実施形態を示す表示装置の概略構成図である。
【図5】第3の実施形態を示す表示装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(実施形態1)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明に係る表示装置1の概略構成を示した図である。図1に示したように、表示装置1は主として光学素子アレイ2と、バックライト3と、ピンホールマスク4と、駆動部5とから構成されている。
【0016】
バックライト3は、例えばLED(Light Emitting Diode)等の発光素子と、発光素子が発する光を内部で光学素子アレイ2に向けて反射する導光板とからなる面光源であり、表示装置1において表示用の光を生成する。
【0017】
光学素子アレイ2は、バックライト3が発する光(入射光)を個別に収束する複数の光学素子21から構成されている。各々の光学素子21は、駆動部5により電圧を印加することにより、エレクトロウェッティング効果を利用して焦点距離、及び光軸を電気的に制御可能な液体レンズである。光学素子21の詳細については後述する。
【0018】
ピンホールマスク4には、最小の表示単位である単一のドットを構成するピンホール41が複数配置されている。複数のピンホール41は、光学素子アレイ2を構成する複数の光学素子21に対応する位置にそれぞれ配置されている。より具体的には、各々のピンホール41は、対応する光学素子21の軸心(図示せず)の延長線上に配置されている。
【0019】
次に、光学素子21及び駆動部5の詳細について説明する。図2(a)は、光学素子21の断面構造を示した図である。光学素子21は、互いに平行な2枚の透明基板22,23の間に、同一の外形寸法を有するリング状の第1の電極24と第2の電極25とが軸方向に並んで収容された構成である。第2の電極25は、図2(b)に示したように、周方向に2分割された一方の分割体25aと他方の分割体25bとから構成されている。
【0020】
第1の電極24と第2の電極25との間、及び第2の電極25の内周面の全域には絶縁層26が設けられており、光学素子21の内部に露出する絶縁層26の表面には撥水性が確保されている。また、第2の電極25を構成する一方の分割体25aと他方の分割体25bとの間も絶縁層26によって絶縁されている。
【0021】
光学素子21の内部は密閉されており、その内部には第1の電極24及び第2の電極25とに接する導電性液体31と、第2の電極25のみに接する絶縁性液体32とが封入されている。導電性液体31は、無機塩の水溶液や、有機液体等のように、それ自身が導電性を有するもの、或いはイオン性成分を付加することによって導電性が確保された液体である。他方、絶縁性液体32は、シリコーンオイルやパラフィンオイル等のような導電性液体31と混合しない液体であるとともに、屈折率が導電性液体31よりも大きな液体である。これにより、導電性液体31と絶縁性液体32とは互いに分離しており、双方の液体間には界面Sが形成されている。
【0022】
ここで、光学素子21の内部においては、絶縁層26と導電性液体31との間、導電性液体31と絶縁性液体32との間、絶縁層26と絶縁性液体32との間にそれぞれ界面が存在しており、係る3つの界面に生じる界面張力のバランスによって界面Sの基本形状が決まる。本実施形態においては、絶縁層26の表面の撥水性を調整することによって、界面Sの基本形状が、図2(a)に示したように界面Sと絶縁層26となす角度が小さい平坦な形状となっている。
【0023】
一方、図2(a)に示したように、駆動部5は、各々の光学素子21が有する第1の電極24と第2の電極25とに接続された電圧印加部51と電圧制御部52とから構成される。なお、図2(a)では省略するが、第2の電極25を構成する一方の分割体25aと他方の分割体25bとは駆動部5に個別に接続されており、また、各々の光学素子21は、それぞれが独立して駆動部5と接続されている。
【0024】
電圧印加部51は、各々の光学素子21の駆動時に、光学素子21が有する第1の電極24と一方の分割体25aとの間(以下、一方の電極間という。)、及び第1の電極24と他方の分割体25bとの間(以下、他方の電極間という。)に所定の駆動電圧を印加する。また、電圧制御部52は、電圧印加部51が一方の電極間に印加する駆動電圧と、他方の電極間に印加する駆動電圧とを、必要に応じて同じ電圧、又は互いに異なる電圧に制御する。
【0025】
なお、以下の説明においては、電圧制御部52が一方の電極間と他方の電極間とに同一の電圧を印加するときの光学素子21の駆動形態を第1の駆動形態と呼び、電圧制御部52が一方の電極間と他方の電極間とに互いに異なる電圧を印加するとまの光学素子21の駆動形態を第2の駆動形態と呼ぶこととする。
【0026】
光学素子21においては、電圧印加部51によって第1の電極24と第2の電極25との間に駆動電圧が印加された駆動時にはエレクトロウェッティング効果によって界面Sの形状が以下のように変化する。
【0027】
まず、光学素子21が第1の駆動形態で駆動される場合について説明する。電圧印加部51によって第1の電極24と第2の電極25との間に同一の駆動電圧が印加されると、導電性液体31と絶縁層26との界面に電荷が生じる。このとき、導電性液体31と絶縁層26との界面に生じる電荷は界面Sの全周において均一であるため、導電性液体31には、絶縁層26とがなす角度を大きくしようとする力が界面Sの全周において均一に働く。
【0028】
その結果、図3に実線で示したように界面Sは中心部が導電性液体31側へ向い凸である形状に変化する。かかる状態において光学素子21は正のレンズとして機能する。また、このとき、光学素子21の光軸Oは、平行する2枚の透明基板22,23と直角をなすこととなる。すなわち光軸Oは光学素子21の軸心と一致することとなる。
【0029】
次に、光学素子21が第2の駆動形態で駆動される場合について説明する。電圧印加部51によって、光学素子21の一方の電極間と他方の電極間とに互いに異なる駆動電圧が印加されると、導電性液体31と絶縁層26との界面に電荷が生じる。
【0030】
しかし、このとき導電性液体31と絶縁層26との界面に生じる電荷は、第2の電極25の一方の分割体25aが位置する側と、第2の電極25の他方の分割体25aが位置する側とにおいて非対称となる。そのため、導電性液体31には、界面Sが絶縁層26となす角度を大きくしようとする力として、一方の分割体25aが位置する側と、他方の分割体25aが位置する側とにおいて非対称の力が働くこととなる。
【0031】
その結果、図3に破線で示したように界面Sは、中心部が導電性液体31側へ向い凸であるものの、光学素子21の軸心に対して非対称となった形状に変形する。そのため、かかる状態においても光学素子21は正のレンズとして機能するが、このとき、光学素子21の光軸O'は、光学素子21の軸心(光軸O)に対して所定の傾きγを生じることとなる。
【0032】
一方、電圧印加部51が第1の駆動形態において光学素子21の第1の電極24と第2の電極25との間に印加する電圧、及び電圧印加部51が第2の駆動形態において光学素子21の一方の電極間と他方の電極間とにそれぞれ印加する駆動電圧とは予め決められている電圧である。そして、第1の駆動形態、及び第2の駆動形態での駆動時には、電圧印加部51が光学素子21に規定の電圧を印加することにより、光学素子21の界面Sの形状が以下のように制御される。
【0033】
すなわち第1の駆動形態での駆動時において光学素子21の界面Sは、光学素子21の光軸Oを軸心と一致させる対称形状であるとともに、図1(a)に示したように、光学素子21の焦点位置を対応するピンホール41の位置と一致させる形状に制御される。また、第2の駆動形態での駆動時において光学素子21の界面Sは、光学素子21の光軸Oを軸心に対して傾かせる非対称形状であるとともに、図1(b)に示したように、光学素子21の焦点位置を対応するピンホール41から外れた位置とする形状に制御される。
【0034】
つまり光学素子21は、第1の駆動形態での駆動時には、ピンホールマスク4に向かうバックライト3の光を対応するピンホール41に収束させる状態(第1の状態)に制御され、第2の駆動形態での駆動時には、ピンホールマスク4に向かうバックライト3の光を対応するピンホール41から外れた位置に収束させる状態(第2の状態)に制御される。
【0035】
以上の構成からなる表示装置1においては、光学素子21を第1の駆動形態で駆動させれば、図1(a)に示したように、バックライト3からの光がピンホール41に収束され、収束された光の全てがピンホール41を通過する。そのため、ピンホール41が、ピンホールマスク4の前方側(光が射出する側)から観たとき明るいドットとして認識されることとなる。
【0036】
また、光学素子21を第2の駆動形態で駆動させれば、図1(b)に示したように、バックライト3からの光がピンホール41から外れた位置に収束され、ピンホール41を通過する入射光が皆無となる。そのため、ピンホール41が、ピンホールマスク4の前方側から観たとき暗いドットとして認識されることとなる。
【0037】
したがって、例えば外部から入力する表示信号に基づいて、電圧制御部52に、電圧印加部51による個々の光学素子21の駆動形態を制御させれば、複数のピンホール41によって明るい領域や暗い領域を表現することができる。つまり複数のピンホール41を画素として画像等を表示することができる。また、画像等の表示に際しては、バックライト3の光を偏光させる必要がないことから、光の利用効率が高く、画像等を高コントラスト、及び高輝度で表示することができる。
【0038】
しかも、表示装置1においては、任意のピンホール41を暗いドットとして観察させるときには、対応する光学素子21に、バックライト3からの光をピンホール41から外れた位置に収束させることにより、ピンホール41を通過する入射光を皆無とすることができる。つまり輝度をゼロとすることができる。よって、従来のものに比べより高いコントラスト比を確保することができる。
【0039】
ここで、本実施形態においては、図1(b)に示したように、光学素子21が、第2の駆動形態での駆動時においてバックライト3の光をピンホールマスク4の1点に収束させる構成について説明した。しかし、光学素子21は、第2の駆動形態での駆動時に、少なくともピンホール41から外れた位置であれば、バックライト3の光をある程度の面積を有する領域に収束させる構成であってもよい。
【0040】
また、本実施形態においては、任意のピンホール41を暗いドットとして観察させるとき、そのピンホール41に対応する光学素子21の光軸O'をその軸心に対して傾かせることによって、バックライト3の光をピンホール41から外れた位置に収束させる構成について説明した。つまり本実施形態においは、光学素子21の光軸の向きを変化させることによって、任意のピンホール41を明るい画素、又は暗い画素として観察させる構成について説明した。
【0041】
しかし、本発明の実施に際しては、光学素子21に、例えば特開2002−055286号公報や特開2006−520918号公報に記載されている公知の液体レンズを使用し、光学素子21の光軸を、それと垂直をなす方向に平行移動させることにより、バックライト3の光をピンホール41から外れた位置に収束させるようにしてもよい。
【0042】
また、本実施形態においては、光学素子21が、第1の駆動形態、又は第2の駆動形態で駆動されることにより、内部に存在する界面Sの形状が図2(b)に示したように導電性液体31側へ向い凸である形状に変化し、それにより本発明における第1の状態と第2の状態とに制御されるものである場合について説明した。
【0043】
しかし、光学素子21は、非駆動時において、内部に存在する界面Sが図3に実線で示したように中心部が導電性液体31側へ向い凸である対称形状をなし、第2の駆動形態でのみ駆動される構成であっても構わない。すなわち光学素子21は、非駆動時に本発明における第1の状態となり、駆動時に本発明における第2の状態となる構成であっても構わない。
【0044】
また、逆に、光学素子21は、非駆動時において、内部に存在する界面Sが図3に破線で示したように中心部が導電性液体31側へ向い凸である対称形状をなし、第1の駆動形態でのみ駆動される構成であっても構わない。すなわち光学素子21は、非駆動時に本発明における第2の状態となり、駆動時に本発明における第1の状態となる構成であっても構わない。
【0045】
また、本実施形態においては、バックライト3を備えた表示装置1について説明したが、本発明において表示用の光は自然光であっても構わない。したがって、表示装置1のバックライト3は廃止することができる。また、表示用の光として自然光を利用する場合には、バックライト3を光学素子アレイ2に自然光を均一に入射させる導光板等に変更することができる。
【0046】
また、本実施形態においては、光学素子アレイ2を構成する複数の光学素子21が、バックライト3の光を対応するピンホール41に収束させる状態(第1の状態)と、バックライト3の光を対応するピンホール41から外れた位置に収束させる状態(第2の状態)とに制御されるものについて説明した。つまり、ピンホールマスク4の各ピンホール41(各ドット)の輝度を最大と最小(ゼロ)との2段階に制御するものについて説明した。しかし、本発明による前述した効果は、表示装置1が、各ピンホール41の輝度を多段階に制御することにより、画素毎に階調制御を行う場合においても得ることができる。
【0047】
一方、表示装置1において各ピンホール41の輝度を多段階に制御する場合には、以下の構成を採用すればよい。
【0048】
ピンホール41の輝度を多段階に制御する構成としては、例えば光学素子21を第1の駆動形態で駆動する間に駆動電圧の電圧値を調整して光学素子21の焦点距離を変化させることにより、各ピンホール41の通過光量を多段階に調整する構成がある。
【0049】
また、ピンホール41の輝度を多段階に制御する構成としては、例えば光学素子21を、第1の駆動形態と第2の駆動形態とによって交互に駆動するとともに、単位時間内での第1の駆動形態による駆動時間の比率を変化させることによって、各ピンホール41の通過光量を多段階に調整する構成がある。
【0050】
さらに、ピンホール41の輝度を多段階に制御する構成としては、例えば次の構成がある。すなわち各ピンホール41に、可能な範囲内で大きな開口面積を確保し、光学素子21を第1の駆動形態、及び第2の駆動形態で駆動するとき、光学素子21にバックライト3の光をピンホール41の開口面積と等しい領域に収束させるものとする。
【0051】
一方、光学素子21を第2の駆動形態で駆動するとき、光学素子21の光軸の傾き度合を、バックライト3の光を対応するピンホール41から外れた位置に収束させる状態(第2の状態)のときとは異なる傾き度合に調整して、光学素子21を以下の状態に制御する。すなわち光学素子21を、バックライト3の光の収束位置とピンホール41との間に位置ずれが生じることによって、対応するピンホール41に、収束したバックライト3の光の一部のみを通過させる状態(本発明における第3の状態)に制御する。そして、光学素子21を第2の駆動形態で駆動するとき、光学素子21の光軸の傾き度合を多段階に変化させることによって、各ピンホール41の通過光量を多段階に調整するものである。
【0052】
さらに、本実施形態の表示装置1は、画像等をカラーで表示する場合にも対応することかできる。その場合、カラー表示方式として、例えば空間分割方式や、色面順次(フィールドシーケンシャルカラー)方式を採用することができる。
【0053】
空間分割方式を採用する場合には、ピンホールマスク4において隣接する3つのピンホール41を一組として、各組のピンホール41に光の3原色である赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルタを設け、各ピンホール41をサブピクセルとして使用すればよい。また、色面順次方式を採用する場合には、例えばバックライト3を赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の光を個別に発光可能な構成とし(光源は単一でよいし、複数でもよい。)、表示用の光の色を時分割で切り替えればよい。
【0054】
(実施形態2)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図4は、本発明に係る他の表示装置101の要部における概略構成を示した図である。図4に示したように本実施形態の表示装置101は、以下の点において第1の実施形態の表示装置1とは異なっている。
【0055】
すなわち本実施形態の表示装置101においてはバックライト3が廃止されている。また、ピンホールマスク4が有する複数のピンホール41には、反射ミラー111がそれぞれ設けられている。さらに、ピンホールマスク4の光学素子アレイ2と対向する表面4aには、反射ミラー111(ピンホール41)を除いた一般部に、例えば黒色塗料の塗布や、反射防止膜の形成といった光の反射を防止するための反射防止処理が施されている。なお、光学素子アレイ2を構成する光学素子21の詳細については、第1の実施形態と同一である。
【0056】
以上の構成からなる表示装置101においては、光学素子アレイ2を構成する光学素子21を第1の駆動形態で駆動させれば、図4(a)に示したように、図で左側から入射した周囲の自然光や任意の人工光が、光学素子アレイ2によって反射ミラー111に収束される。そして、収束された光は反射ミラー111に反射された後、そのほとんどが光学素子21を通り図で左側に向かって射出される。そのため、反射ミラー111が、図で左側から観たとき明るいドットとして認識されることとなる。
【0057】
また、光学素子21を第2の駆動形態で駆動させれば、図4(b)に示したように、自然光等が光学素子アレイ2によって反射ミラー111から外れた位置に収束され、反射ミラー111から光学素子アレイ2に向かう反射光が皆無となる。そのため、反射ミラー111が、図で左側から観たとき暗いドットとして認識されることとなる。
【0058】
したがって、例えば外部から入力する表示信号に基づいて、電圧制御部52に、電圧印加部51による個々の光学素子21の駆動形態を制御させれば、複数の反射ミラー111によって明るい領域や暗い領域を表現することができる。つまり複数の反射ミラー111を画素として画像等を表示することができる。
【0059】
そして、本実施形態の表示装置101においては、複数の反射ミラー111を暗いドットとして観察させるとき、対応する光学素子21に、自然光等を反射ミラー111から外れた位置に収束させることによって、反射ミラー111から光学素子アレイ2に向かう反射光を皆無とすることができる。つまり輝度をゼロとすることができる。よって、より高いコントラスト比を確保することができる。
【0060】
なお、本実施形態の表示装置101においても、光学素子アレイ2を構成する光学素子アレイ2の具体的な構造や、エレクトロウェッティング効果を利用した状態の制御方法については、第1の実施形態において既説したように適宜変更することができる。
【0061】
また、本実施形態の表示装置101も、第1の実施形態で説明したものと同様、画像等をカラーで表示する場合にも対応することかできる。なお、カラー表示方式として空間分割方式を採用する場合には、反射ミラー111の表面に赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルタのいずれかを規則的に配置して設ければよい。
【0062】
(実施形態3)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図5は、本発明に係る他の表示装置201の要部における概略構成を示した図である。図5に示したように本実施形態の表示装置201は、以下の点において第1の実施形態の表示装置1とは異なっている。
【0063】
すなわち本実施形態の表示装置201においては、ピンホールマスク4の前方側に蛍光体211が対向して設けられている。蛍光体211は、例えば透明な基板に可視光の発光を示す蛍光材料を塗布することにより形成されたものや、可視光の発光を示す蛍光材料が分散された透光性を有する樹脂により形成されたものである。
【0064】
蛍光体211は、各ピンホール41に対応した複数の領域(以下、ドット領域という。)211a,211b,211c,・・・に区画されている。各々のドット領域211a,211b,211c,・・・は、隣接する他のドット領域とは独立して励起されるよう構成されている。なお、表示装置201の他の構成については、第1の実施形態と同一である。
【0065】
以上の構成からなる表示装置201においては、光学素子アレイ2を構成する光学素子21を第1の駆動形態で駆動させれば、図5(a)に示したように、バックライト3からの光が光学素子21によってピンホール41に収束され、収束された光の全てがピンホール41を通過する。その結果、ピンホール41にそれぞれ対応するドット領域211a,211b,211c,・・・が励起され、各々において可視光が発光する。そのため、画素領域211a,211b,211c,・・・が明るいドットとして認識されることとなる。
【0066】
また、光学素子21を第2の駆動形態で駆動させれば、図5(b)に示したように、バックライト3からの光がピンホール41から外れた位置に収束され、ピンホール41を通過する入射光が皆無となる。そのため、各々のドット領域211a,211b,211c,・・・が暗いドットとして認識されることとなる。
【0067】
したがって、例えば外部から入力する表示信号に基づいて、電圧制御部52に、電圧印加部51による個々の光学素子21の駆動形態を制御させれば、複数のドット領域211a,211b,211c,・・・により明るい領域や暗い領域を表現することができる。つまりドット領域211a,211b,211c,・・・を画素として画像等を表示することができる。
【0068】
そして、本実施形態の表示装置201においても、ドット領域211a,211b,211c,・・・を暗いドットとして観察させるときは、光学素子21に、バックライト3からの光をピンホール41から外れた位置に収束させることによって、ドット領域211a,211b,211c,・・・の入射光を皆無とすることができる。つまり輝度をゼロとすることができる。よって、より高いコントラスト比を確保することができる。
【0069】
なお、本実施形態の表示装置201においても、光学素子アレイ2を構成する光学素子アレイ2の具体的な構造や、エレクトロウェッティング効果を利用した状態の制御方法については、第1の実施形態において既説したように適宜変更することができる。
【0070】
また、本実施形態の表示装置201も、第1の実施形態で説明したものと同様、画像等をカラーで表示する場合にも対応することかできる。但し、採用可能なカラー表示方式は空間分割方式である。
【0071】
空間分割方式によって画像等をカラーで表示する場合には、例えば蛍光体211において一組のサブピクセルを構成するドット領域211a,211b,211c,・・・を、ピンホール41を通過した光によって励起されたとき赤(R)、緑(G)、青(B)の異なる光を発する蛍光材料を使用すればよい。また、例えば蛍光体211の表面(観察面)に、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色のカラーフィルタを設ければよい。
【符号の説明】
【0072】
1 表示装置
2 光学素子アレイ
3 バックライト
4 ピンホールマスク
5 駆動部
21 光学素子
22,23 透明基板
24 第1の電極
25 第2の電極
25a 一方の分割体
25b 他方の分割体
26 絶縁層
31 導電性液体
32 絶縁性液体
41 ピンホール
51 電圧印加部
52 電圧制御部
O,O' 光軸
S 界面
111 反射ミラー
211 蛍光体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最小の表示単位である単一のドットに対応した所定の開口面積を有するピンホールが複数配置されたピンホールマスクと、
前記ピンホールマスクが有する複数のピンホール毎に設けられるとともに、エレクトロウェッティング効果を利用して、対応するピンホールに表示用の光を収束させる第1の状態と、対応するピンホールから外れた位置に表示用の光を収束させる第2の状態とに制御される複数の光学素子と
を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記光学素子における第1の状態と第2の状態とは、光軸の向きが互いに異なる状態であることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記光学素子は、前記第2の状態に制御されている間、焦点位置が、エレクトロウェッティング効果を利用して前記ピンホールマスクにおける前記光の入射側又は射出側のいずれか一方に制御されることを特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記光学素子は、前記第1の状態と前記第2の状態とに加え、エレクトロウェッティング効果を利用して、前記第1の状態及び前記第2の状態に制御されているときとは光軸の向きが異なる第3の状態に制御されるとともに、当該第3の状態にあるとき、表示用の光の収束位置とピンホールとの間に位置ずれが生じることによって、対応するピンホールに、収束した表示用の光の一部のみを通過させることを特徴とする請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記ピンホールマスクが有する複数のピンホールに反射ミラーがそれぞれ設けられ、
前記ピンホールマスクの前記反射ミラーを除いた一般部に反射防止処理が施された
ことを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の表示装置。
【請求項6】
前記複数のピンホールにそれぞれ対応するとともに、対応するピンホールを通過した表示用の光により個別に励起される複数のドット領域を有する蛍光体が、前記ピンホールマスクに対向して設けられたことを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−68332(P2012−68332A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211490(P2010−211490)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】