説明

表示装置

【課題】 比較的低コストで、さらに文字情報などのOSD表示に依らずに台形歪み補正が施されていることをユーザに知らしめることを可能にした、画像変形処理通知手段を提供することである。
【解決手段】 映像を投射する投射光学系と、前記投射光学系と投射面の角度によって発生する台形歪みを補正する台形歪み補正回路と、前記台形歪み補正によって生じた非入力映像部分に特定画像を重畳する画像重畳手段を有し、台形歪み補正が施された時に前記画像重畳手段を使って特定画像を重畳し、台形歪み補正が施されていることを警告することを特徴としたプロジェクタ装置であることを特徴とする構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台形補正による画像変形処理が有効になっていることを使用者に知らしめる手段に関し、特に非映像領域を有効に使った警告/注意喚起方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、台形歪みを補正する台形歪み補正回路が提案されており、プロジェクタ等の表示装置に搭載されている。該装置は前記台形歪み補正回路によってスクリーンの歪みやスクリーンとプロジェクタの角度によって発生する歪みを補正することにより、歪みのない映像の投射の実現を可能にしている。しかしながら、ユーザによっては台形歪み補正による映像変形処理によって発生する折り返しノイズなどの画像劣化を好まない場合があり、その際は、OSD(on screen display)と呼ばれる画像に重畳されたメニュー上で該補正の変更可能に設計されている場合が多い。
【0003】
例えば、特許文献1では、画像が劣化している場合に警告を表示する表示装置の例が記されている。画像表示機能を有する情報処理システムにおいて、表示対象画像の表示領域内にある画素数と表示領域サイズとのを算出する第一の算出手段と、前記算出した画素数と表示領域サイズとに基づき前記表示対象画像の表示解像度を算出する代2の算出手段と、前記算出した表示解像度が表示装置の解像度より低い場合に、その旨警告する警告手段とを有することを特徴とする警告装置が開示されている。
【0004】
また、該特許の実施例では、警告に際してOSDと呼ばれているダイアログボックスを表示し、ユーザーに画像劣化を知らしめると共に、その画像劣化に対するユーザーの同意確認を行うように設計さえれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−132151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献に開示された従来技術では、請求項には警告する手段について具体的な記載がなく、実施例から読みとれるのはOSD(on screen display)を使って文字による警告表示をすることであり、このような警告ではどうしても本来表示すべき外部から入力された映像信号に被ってしまう。このような処理は、台形歪み補正が施されている画像設定で十分満足しているユーザにとっては極めて不快であり、また、そのようなOSD表示を消すために何らかの操作が必要になっている場合も多く更に煩雑でもある。
【0007】
さらに、このような文字情報を含め、現在の設定状態に関する情報を表示しない場合、ユーザが台形歪み補正による画像変形処理が施されていることを知るにはメニュー内の該当項目表示をみる以外に方法がないため、画質が劣化していることに気がつかず、高周波画像表示時の折り返しノイズを発見したときにはじめて該当機能が有効になっていることに気がつき、残念な気持ちになることも多い。
【0008】
そこで、本発明の目的はOSDなどの文字情報に依ることなく台形歪み補正による画像変形処理が施されていることをユーザに知らしめることを可能にした、画像変形処理通知手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、映像を投射する投射光学系と、
前記投射光学系と投射面の角度によって発生する台形歪みを補正する台形歪み補正回路と、
前記台形歪み補正によって生じた非入力映像部分に特定画像を重畳する画像重畳手段を有し、
台形歪み補正が施された時に前記画像重畳手段を使って特定画像を重畳し、台形歪み補正が施されていることを警告するプロジェクタ装置を提供する特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば台形歪みが施されていることをユーザに知らしめる警告表示を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1におけるプロジェクタ装置のブロック図
【図2】実施例1におけるプロジェクタのメインフローチャート図
【図3】実施例1における非画像領域の駆動映像パターン
【図4】実施例1のおける液晶部
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態にかかわるプロジェクタ装置のブロック図である。
【0013】
[実施例1]
以下、図1を参照して、本発明の第1の実施例による、液晶プロジェクタ(画像投射装置)の構成について説明する。
【0014】
同図において、1は液晶プロジェクタである。液晶プロジェクタ1としては、透過型液晶プロジェクタでも、反射型プロジェクタでもよい。
【0015】
不図示のパーソナルコンピュータ、DVDプレーヤ、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、アンテナ・チューナユニット等の画像情報供給装置から供給される画像信号V0は、入力信号処理回路10でその入力信号の形態に応じたデコードが行われ、メイン画像処理回路11に入力される。
【0016】
メイン画像処理回路11では、IP(インターレースプログレッシブ)変換、フレームレート変換、拡大縮小などの幾何学的信号処理や、カラーコントロールなどの色処理、γ補正などの輝度処理といった各種信号処理が行われる。台形補正回路12は、このメイン画像処理回路11に設けられ上記幾何学的信号処理の一部である台形歪み補正処理を行う。
【0017】
台形歪み補正回路12内部には、台形歪み補正回路12から出力される信号が入力映像信号領域の写像画素かどうかを判定する回路が内蔵されており、台形補正歪み補正回路12への入力信号に台形補正変換を施した出力映像信号V3と、入力画像写像領域かどうかを判定するSW信号が出力される。
【0018】
映像生成回路13は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)に後述する内臓されたプログラムによって制御され、台形補正によって生じた映像信号領域に重畳するための入力映像外信号V4を生成する。
【0019】
マルチプレクサ14は、台形歪み補正回路12から出力される映像領域とその外部を識別するためのSWによって出力映像信号を切り替える仕組みになっており、映像信号領域では台形補正処理後の映像信号V3を出力し、映像信号外の領域では非映像領域信号V4を出力する。
【0020】
色むら補正回路15は、メイン画像処理回路11から出力された映像信号V5の映像階調情報および同期信号やドットクロックから算出した画素位置情報から補正量を算出し、加算することにより、パネル面内のVR特性むらを補正する回路である。
【0021】
LCD駆動回路16は、入力された画像信号V6(R,G,B信号成分)をR,G,Bそれぞれに対して設けられた画像形成素子としての液晶パネル17に供給する。これにより、R,G,Bの各色液晶パネル17には、画像情報供給装置から入力された画像信号V0に応じた各色用の減画像が形成(表示)される。
【0022】
ここで、図示はしていないが、プロジェクタ1内には、光源と、該光源から発せられた光束を集光および平行光束化する照明光学系と、該光束R,G,Bの3つの成分に分解して各色液晶パネル17に導く色分解光学系と、各液晶パネル17にて減画像に応じて変調された各色光学成分を合成する色合成光学系とを有する。さらに、図1に示すように、色合成された変調光をスクリーン等の非投射面(以下、スクリーンと略す)に投影する投射光学系としての投影レンズ40を有する。
【0023】
CPU30は、操作パネル31やリモコンからの制御信号を受信するリモコン受光部32からの信号により、前述した各種ICの初期化や制御パラメータの変更などを行う中央処理装置であり、内部に組み込まれたROMに書き込まれたプログラムに即してプロジェクタの制御を行う。
【0024】
EEPROM33は、例えば本特許の台形補正通知の有効/無効を設定するなどの制御フラグやメニュー項目設定情報などを不揮発記憶するために使用される。
【0025】
次にCPU30において行われる全体制御フローを図2を使って説明する。
【0026】
図2は、電源投入100からコンセントを抜かれるまでの大まかな流れを示したものである。
【0027】
CPU30に電源が投入されるとCPU内のリセットベクタから図2に示される制御フローの処理が開始される。
【0028】
リセットベクタから呼ばれたメインフローは、各種初期化処理101を呼び出す。ここでは、CPUを正常に動作させるためのスタック配置や各種パラメータの初期値設定、およびプロジェクタに実装された各種ICの初期化を行い、操作パネル31およびリモコン受光部32からのランプ点灯指示を待ち続ける。
【0029】
ランプON指示待ちをしているのが102である。このルーチンでは、リモコンコードのデコードによる電源ON指示待ちや操作パネルによる電源ONの待ちを行っている。
【0030】
ランプON指示に伴い、各種ICの初期化を行っているのが103である。103では、画像処理のための各種ICへの給電開始や初期値の設定を行う。
【0031】
ランプ点灯104では、ランプへの給電を開始する。動作上、各種ICの初期化103と本処理104の順番が逆になっていてもプロジェクタとしての動作上正常に動作するが、ランプ点灯時のノイズによってICの初期値が書き換えられない場合以外は本シーケンスの順に処理するのが望ましい。安全のために、ランプ点灯処理後にもう一度各種ICのレジスタ値を上書きや、定期的に書き込みを行う処理も考えられるが、本特許と直接関連しないため詳細は省く。
【0032】
台形補正の有無を判定しているのが114であり、台形補正が施されていなければ次の台形補正領域外への画像効果処理105は実行しない。台形補正が施されていた場合のみ台形補正領域外への画像効果処理105をおこなう。
【0033】
台形補正領域外画像効果処理105はフローチャートの都合上シーケンシャルな処理ブロックとして記述しているが、実装上はタイマー割り込みにより実装することを想定している。ここでは、台形補正外画像処理に関するパラメータの初期化をするとともに、割り込みを許可している。該タイマー割り込みハンドラでは、予め決められたシーケンス、例えば一定時間台形補正外領域に赤表示をさせた後黒表示に戻すというシーケンスを実現するため、次のタイマー割り込みを設定するコードと、タイマー割り込みに同期して映像生成回路13に適切な値を書き込むコードが書かれている。本コードは、タイマー割り込みで実装しているため、メインフローと平行して処理が進められる。
【0034】
ランプ準備中表示106の処理の多くもタイマー割り込みによって実装される場合が多い。本処理は、ランプを点灯して直後は急激に明るくなると共にパネルの温度特性により本来表示したい色と異なった色を表示してしまうことが多いため、適切に表示できるようになるため一定時間カウントダウン等の表示を行うシーケンスである。本シーケンスは、プロジェクタ本体およびリモコンの操作によりスキップする仕様になっている場合も多いが、直接本特許と関連しないため詳細は省く。
【0035】
待機状態処理107は、ユーザからの支持がない場合の処理シーケンスであり、何らかしらの影響により、ICに設定しているレジスタ値が想定している値とは違った値になっている場合があるため、一定時間毎に各種ICのレジスタ設定値を上書きする処理や、プロジェクタの温度や重力センサーなどの異常を監視し、異常を検出した場合には強制的にランプを消灯するなどの処理が含まれている。
【0036】
ユーザからの指示有り108を判別しているフローでは、リモコンや操作パネルによるユーザ指示を監視している。ユーザからの操作がなければフローを107へ戻し、操作を監視し続ける。ユーザからの操作を検出した場合、フローを109へ進める。
【0037】
電源OFF109を判定しているフローでは、108で検出したユーザの指示が電源OFFかどうかを判定しているシーケンスで、電源OFFが指示されていた場合にはフローを110へ進め、その他の指示であった場合には、電源OFF処理110では、ランプ消灯処理および、待機状態で給電する必要のなくなったICへの給電を停止し、ランプ冷却のためのファン制御などを行うシーケンスである。
【0038】
本処理によって待機状態への遷移が可能になった段階でフローを電源ON監視フェーズである102へ進める。
【0039】
ステップ115では、台形補正処理が施されているかどうかを判定し、台形補正処理が施されている場合には、さらに台形補正領域外画像効果処理によってユーザに台形補正処理が施されているかどうかを判定するステップ111を実行する。この段階で台形補正処理が施されていないと判断出来た場合には、ステップ111とステップ112は実行する必要がないため、フローをステップ113へ移動し、ボタンに応じた処理を行う。
【0040】
フロー111では、数あるボタンのうちメニューボタンまたは台形補正ボタンがONされたかどうかを判定するフローで、該ボタンが押された場合にはフローを112へ、それ以外であればフローを113へ移す。
【0041】
台形補正領域外画像効果II112では、台形補正領域外を一瞬点滅させる等の処理を想定している。
【0042】
ボタンに応じた処理113では、ボタンに応じた処理を行っているシーケンスである。このシーケンスがある意味プロジェクタ装置の中枢機能となるが、本特許とは関連しないため、詳細は省略する。
【0043】
以上のシーケンスにより、電源ONからプロジェクタの準備が完了するまでの間、台形補正が掛かっていることを感覚的にユーザが知ることができると共に、メニューや台形補正ボタンが押された際に台形補正が掛かっているかどうかや補正の強さが瞬時にわかるプロジェクタを実現できる。
【0044】
図3は、台形歪み補正によって発生した非映像部への表示に関するテーブル情報である。本テーブル情報は、図2で説明したフローでは台形補正領域外画像効果処理105および台形補正領域外画像効果処理112で使用される。本実施例では、このテーブルに基づいた処理に基づき非画像領域を使ってユーザに台形補正処理が有効になっていることを知らしめる。201は、台形補正領域外画像効果105および台形補正領域外効果処理112が実行された直後に設定される処理であり、非画像領域に白表示(255,255,255)を行う。その次の行のinterval=100msは、前記201の表示を保持する時間を示しており、ソフトウェアタイマやタイマー割り込みなどの設定によって実現される。100ms経過後、202の情報に従い非画像領域に黒表示(0,0,0)を行う。次の行にinterval=100msの記載があるため前記と同様に100msこの状態を保持する。203では赤表示(255,0,0)を行い、この表示を100ms保持後204に示している黒表示を行う。
【0045】
以上のように、本テーブルにおける動作指示に従い、非映像部に白表示100ms、黒表示100ms、赤表示100ms、そして最後に黒表示を行うことができ、台形歪み補正が施されていることをOSD表示なしに使用者に知らしめることが可能となっている。また、従来のように文字情報を有していないため、表示が気にならず、使用感の良いオペレーションが可能となる。
【0046】
本実施例では、上記のような点滅動作を説明したが、非映像領域に特定のアニメーション(例えば縞模様が上下にスクロールするなど)の効果を施してもよい。
【0047】
図4は、パネルの液晶部分を示している図である。
【0048】
領域300は、液晶の最外部に設けられた共通電極部分で、この部分には画素が形成されておらず、共通電位制御可能な単一画素と見ることが出来る。本実施例ではこのような領域が液晶に設けられている前提で書かれているが、必ずしもこのような領域が確保されている必要はない。もし、このような領域が確保されていた場合、この領域も台形歪み補正が施されていることを知らしめる手段として使っても良い。
【0049】
領域301は、画素が形成されている領域であるが、目的としてはパネル固着時の位置ずれを補正するための余裕画素の領域を示している。前述の300の領域と同様、本実施例ではこのような領域が液晶に設けられている前提で書かれているが、必ずしもこのような領域が確保されている必要はない。もし、このような領域が確保されていた場合、この領域も台形歪み補正が施されていることを知らしめる手段として使っても良い。
【0050】
領域302は、台形補正によって生じた非映像画素部であり、通常黒が表示されている箇所である。本領域に特定映像処理を施すことにより、ユーザーに台形歪みが施されていることを知らせることが本特許の特徴となっている。
【0051】
領域303は、外部から入力された映像に変形処理を施し、投射時に歪みが少ない画像を投影する目的で形成された画素領域である。
【0052】
以上のように、本来使われない非画素領域を有効に使うことにより、映像部に余計なOSD等の表示を重畳をなくし、さらにユーザーに台形歪み補正が施されていることを簡単な回路で実現できる。
【符号の説明】
【0053】
40 投射光学系
21 台形歪み補正回路
14 画像重畳手段
31 操作手段である操作パネル(ボタン)
32 操作手段であるリモコン受光部
301 余裕画素
300 非画素形成部
302 非入力映像部分
303 入力映像部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を投射する投射光学系と、
前記投射光学系と投射面の角度によって発生する台形歪みを補正する台形歪み補正回路と、
前記台形歪み補正によって生じた非入力映像部分に特定画像を重畳する画像重畳手段を有し、
台形歪み補正が施された時に前記画像重畳手段を使って特定画像を重畳し、台形歪み補正が施されていることを警告することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
操作手段を有し、台形補正が施されているときには前記操作手段からの入力の応じて台形歪み補正が施されていることを警告することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
映像を投射する投射光学系と、
前記投射光学系と投射面の角度によって発生する台形歪みを補正する台形歪み補正回路と、
前記台形歪み補正によって生じた非入力映像部分および映像の位置あわせのために設けられた余裕画素部分に特定画像を重畳する画像重畳手段を有し、
台形歪み補正が施された時に前記画像重畳手段を使って特定画像を重畳し、台形歪み補正が施されていることを警告することを特徴とした表示装置。
【請求項4】
映像を投射する投射光学系と、
前記投射光学系と投射面の角度によって発生する台形歪みを補正する台形歪み補正回路と、
前記台形歪み補正によって生じた非入力映像部分および映像の位置あわせのために設けられた余裕画素部分および、その外周に設けられた非画素形成部に特定画像を重畳する画像重畳手段を有し、
台形歪み補正が施された時に前記画像重畳手段を使って特定画像を重畳し、台形歪み補正が施されていることを警告することを特徴とした表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−109187(P2013−109187A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254599(P2011−254599)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】