表示装置
【課題】光出射側にレンズを配置して損出光を向上させた表示装置において、隔壁に起因する凹レンズ効果を低減させて、上記レンズによる集光効果を高める。
【解決手段】光出射側の第2電極5と、レンズ8との間に、平坦化層7を配置して、隔壁3によって第2電極5の表面に形成された凹形状による凹レンズ効果を低減する。
【解決手段】光出射側の第2電極5と、レンズ8との間に、平坦化層7を配置して、隔壁3によって第2電極5の表面に形成された凹形状による凹レンズ効果を低減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフラットパネルディスプレイに用いられる、有機EL素子を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1対の電極間に有機発光層を挟持する有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)からなる表示装置が盛んに開発されている。特にマトリクス状に多数の微小な画素を配置し、異なる発光色の画素を組み合せてカラー画像を表示する方式が盛んである。画素は開口を有する隔壁で発光領域が規定される場合が多い。また、有機EL素子は酸素や水分と著しく反応するため、無機材料からなる封止保護膜で外気と遮断する構成も知られている。このような表示装置において、有機EL素子から放出された光は四方八方に分散される。基板面に斜めに放出された光は、その基板と外部空気の境界又は表示装置の最外層の保護部材と外部空気の境界で反射され、表示装置の外部に放出されず損出光となるものが60%から70%にも及んでいた。そのため、発光層から発光する光を効率よく取り出し、光量の増大及び所望方向の輝度の向上のために、有機EL素子に対応して光取り出し側にレンズを設ける構成が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この提案によれば、発光層から放出された光はレンズによって集光されてから表示装置の外へ放出される。そのため、発光層から発光した光の内で、基板面に対して斜めに放出された光でも、レンズによって基板面に垂直方向に屈折されて装置の外部へ放出される。従って、表示装置の外部に放出されない損出光を低減し有機EL素子から放出された光を効率よく利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−39500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような構成の表示装置においては、画素の発光領域を規定する隔壁の端部に傾斜を持たせてなだらかにする場合が多いが、発光領域と隔壁の上面では高低差が生じ、凹形状となる。この凹形状の上に無機材料からなる封止保護膜を形成すると、発光領域と隔壁の上面で形成される凹形状をなぞるように、封止保護膜の表面にも同様の凹形状が形成される。この封止保護膜の上方にレンズを設けることにより、出射光を所望の方向に集めることができるが、封止保護膜の屈折率とレンズ材料の屈折率を合わせることは容易ではなく、屈折率に差が生じ、凹レンズ効果を生じてしまう。即ち、封止保護膜表面の凹形状で出射光の一部が所望の方向からずれ、輝度が低下するという課題が生じる場合がある。
【0006】
本発明の課題は、レンズを用いて損出光を向上させた表示装置において、隔壁に起因する凹レンズ効果を低減させて、上記レンズによる集光効果を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に配置された、少なくとも発光層を含む有機化合物層と、を有する有機EL素子が複数配置されてなり、前記複数の有機EL素子が隔壁によって分離され、前記有機EL素子及び前記隔壁上に封止保護膜が形成されており、前記基板とは反対側に集光レンズが形成された表示装置において、
前記隔壁によって前記第2電極表面が段差を有しており、前記段差が、前記第2電極と前記集光レンズとの間に形成された平坦化層によって平坦化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、平坦化層によって隔壁に起因する凹レンズ効果が低減し、レンズによって高い集光効果が得られ、輝度の高い表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の表示装置の第1の実施形態の構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の構成から平坦化層を除いた構成を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の表示装置の第1の実施形態に係る(1)式の説明図である。
【図4】凹レンズ効果による本発明の表示装置の視野角改善効果を示す図である。
【図5】本発明の表示装置の第1の実施形態の他の構成例を模式的に示す図である。
【図6】本発明の表示装置の第1の実施形態の他の構成例を模式的に示す図である。
【図7】図1に示した表示装置の製造工程を示す断面図である。
【図8】図1に示した表示装置の製造工程を示す断面図である。
【図9】図5に示した表示装置の製造工程を示す断面図である。
【図10】図5に示した表示装置の製造工程を示す断面図である。
【図11】本発明の表示装置の第2の実施形態の構成例を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明の表示装置の第2の実施形態の他の構成例を模式的に示す断面図である。
【図13】本発明の実施例の結果を示すグラフである。
【図14】本発明の実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の表示装置は、基板上に有機EL素子を複数配置してなり、複数の有機EL素子が互いに隔壁によって分離されている。そして、有機EL素子及び隔壁上に封止保護膜が形成され、さらに、有機EL素子毎に基板とは反対側に集光レンズが形成された構成を有している。有機EL素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に挟持された、少なくとも発光層を含む有機化合物層とを有している。
【0011】
本発明の特徴は、隔壁によって前記第2電極表面が段差を有しており、前記段差が、前記第2電極と前記集光レンズとの間に形成された平坦化層によって平坦化されていることにある。ここで、本発明においては、平坦化層を封止保護膜と集光レンズとの間に形成した第1の実施形態と、第2電極と前記封止保護膜との間に形成した第2の実施形態とが挙げられる。以下、各実施形態に分けて構成を説明する。
【0012】
〔第1の実施形態〕
図1を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。図中の矢印は発光層で発光した光の進行方向を示す。先ず、後述する第2の実施形態と共通する構成について説明する。
【0013】
基板1の上に、画素電極となる光反射性の第1電極2をマトリクス状に多数形成する。基板1には各有機EL素子を独立に駆動できるように画素回路が形成されている。これらの画素回路は、複数のトランジスタから構成されている(不図示)。このトランジスタが形成された基板1は、トランジスタと第1電極2とを電気的に接続するためのコンタクトホールが形成された半導体保護層に覆われている(不図示)。更に半導体保護層上には、画素回路による表面凹凸を低減し、表面を比較的平坦にするための平坦化層が形成されていてもよい(不図示)。
【0014】
第1電極2は、例えばAg等の高い反射率を持つ導電性の金属材料から形成される。また、Ag等の金属材料からなる層とホール注入特性に優れたITO(Indium−Tin−Oxide)などの透明導電性材料からなる層との積層体から構成しても良い。
【0015】
次いで、第1電極2の端部を覆い、画素の発光領域となる開口を有する絶縁性の隔壁3を形成する。隔壁3の厚みは0.5μm乃至5μm程度が好ましく、製造には感光性ポリイミドなどの樹脂材料や窒化シリコン、酸化シリコン等の無機材料が使用できる。開口はフォトリソグラフィ技術やエッチング技術を利用して形成する。開口の端部は10°乃至50°程度の傾斜(テーパー形状)とするが、開口形成時の樹脂の選定やエッチングの条件により傾斜を形成できる。
【0016】
隣接する画素に異なる発光色の有機化合物層4を蒸着法や塗布法で形成する。有機化合物層4は、少なくとも発光層を含む単層又は複数の層からなる。例えば、第1の電荷輸送層、発光層、第2の電荷輸送層及び電荷注入層からなる4層構成や、第1の電荷輸送層、発光層及び第2の電荷輸送層からなる3層構成等が挙げられる。有機化合物層4を構成する材料は、公知の材料を使用することができる。正孔輸送性と電子輸送性及び正孔注入性と電子注入性はどちらの極性も選択できる。
【0017】
有機化合物層4の上に、共通電極となる光透過性の第2電極5をスパッタリング法等で形成し、第1電極2、有機化合物層4、第2電極5からなる有機EL素子が形成される。この場合は基板1とは反対側を光取り出し側としている。近年、高精細の表示装置が主流であり、画素の幅は数100μmから数μmへと細かくなっている。第2電極5は、有機化合物層4で発光した光を素子外部に取り出し可能な半反射性或いは光透過性の構成を有している。具体的には、素子内部での干渉効果を高めるために第2電極5を半反射性の構成とする場合、第2電極5は、AgやAgMgなどの電子注入性に優れた導電性の金属材料からなる層を2乃至50nmの膜厚で形成することにより構成されている。尚、半反射性とは、素子内部で発光した光の一部を反射し、一部を透過する性質を意味し、可視光に対して20乃至80%の反射率を有するものをいう。また、光透過性とは、可視光に対して80%以上の透過率を有するものをいう。尚、アノードとカソードの役割は、材料の選択により第1電極2と第2電極5のどちらにすることも可能である。
【0018】
第2電極5の表面には、隔壁3に起因する段差が形成されている。より具体的には、隔壁3の開口部によって規定される、有機EL素子の発光領域が隔壁3の上面よりも低い凹形状が形成されている。本発明では、係る段差を平坦化層によって平坦化するが、第1の実施形態においては、係る平坦化層を封止保護膜と集光レンズとの間に配置する。この平坦化を行う目的は、後述する凹レンズ効果を低減して凸レンズによる集光効果を高めるものである。
【0019】
第1の実施形態では、図1に示すように、第2電極5上に、封止保護膜6を配置する。封止保護膜6はプラズマCVD法などによる窒化シリコンや酸窒化シリコンなどの無機材料で形成し、異なる材料を多層に形成してもよい。屈折率は一般的に1.5乃至2.0である。封止保護膜6の厚みは特に制限はないが、実用的には1μm乃至50μm程度が好ましい。図1に示すように、有機EL素子の発光領域と隔壁3の上面では高低差が生じ、隔壁3の形状にならった凹形状となる。この凹形状の上に無機材料からなる封止保護膜6を形成すると、発光領域と隔壁3の上面で形成される凹形状をなぞるように、封止保護膜6の表面にも同様の凹形状が形成される。
【0020】
本発明において、第2電極5上に封止保護膜6を設けた場合には、隔壁3に起因する封止保護膜6表面の凹形状によって、有機EL素子から出射された光を発散する作用(本明細書では凹レンズ効果という)を生じてしまう。また、この凹レンズ効果は以下の(1)式を満たすことで顕著になる。即ち、隔壁3の開口部の開口径をL、隔壁3の膜厚をD、封止保護膜6の膜厚をT、隔壁3のテーパー部の幅をAとした時、
0.1<(T×D)/(L×A)<1 (1)
を満たす。
【0021】
尚、隔壁3の開口部の開口径Lは、互いに向かい合う画素端辺を直交する線分の中で、最も短い長さで示される。具体的には、例えば開口部の形状が円形であればその直径であり、楕円形であれば短径であり、長方形であれば短辺の長さである。また、隔壁3のテーパー部の幅Aは、隔壁3の平均膜厚が10%から90%まで変化するのに要する距離である。
【0022】
(1)式の物理的意味について以下に図3を参照して説明する。尚、図3においては、便宜上、第1電極2、有機化合物層4、第2電極5を省略する。第1電極2は発光層よりも下方にあるため、有機化合物層4と第2電極5とは合わせても100乃至200nm程度であるため、それぞれ影響がほとんどないためである。また、図3中の3aは隔壁3のテーパー部である。
【0023】
先ず画素上に凹形状があることによる発散効果は凹レンズ領域31の幅R/画素径(隔壁3の開口部の開口径)Lに比例する。ここで凹レンズ領域31の幅Rは、隔壁3のテーパー角をθとするとR=T×tan(θ/2)と計算される。さらに近似式によりtan(θ/2)≒(1/2)×tanθ=(1/2)×(D/A)と表わされ、R=T×(1/2)×(D/A)であり、R/L=(1/2)×(T×D)/(L×A)である。以上より、発散効果は(T×D)/(L×A)に比例すると言える。
【0024】
次にさまざまなT,D,L,Aの値に対して発光光の発散効果、つまりは視野角分布の改善効果を光学シミュレーションにより計算したところ、図4のような結果が得られた。グラフの縦軸はパネルを斜め(50°方向)から見た時の輝度に対する正面輝度の比である。この正面輝度/斜方輝度の値は通常凹レンズ効果がない場合3.5乃至4程度であるが、0.1<(T×D)/(L×A)の範囲では正面輝度/斜方輝度が低減し、正面方向への輝度が相対的に低下する。但し(T×D)/(L×A)≧1の範囲になると正面輝度よりも斜方輝度の方が大きくなり、ディスプレイとしての用途に適さないものとなってしまうため、(T×D)/(L×A)<1である必要がある。
【0025】
本発明において、凹レンズ効果が得られる凹形状を作製できるのは封止保護膜6を熱CVD法やプラズマCVD法といった化学気相成長(CVD)法により成膜した場合であり、係る成長法における膜成長の方向性に起因する。CVD法によって封止保護膜6を成膜すると、被成膜物の表面形状に対して法線方向に膜が成長形成されるため、封止保護膜6が厚くなるほど、封止保護膜6の水平面と傾斜面の交点は画素中央方向へシフトする。この結果、隔壁3の開口部の開口径Lに対する凹レンズ領域31の幅Rが拡がり、発光光の発散効果が強く現れる。
【0026】
本発明においては、封止保護膜6の膜厚Tを厚膜化すると、より(1)式の条件を満たすことになる。
【0027】
また、隔壁3の膜厚Dを厚膜化すると、隔壁3のテーパー部3aの角度が大きくなり、テーパー部3aにおける封止保護膜6の成長方向がより画素中央方向に向くこととなる。その結果、封止保護膜6の膜厚Tが同じでも凹レンズ領域31の幅Rは広くなり、凹レンズ効果が強くなる。
【0028】
また、隔壁3の開口部の開口径Lを小さくすることで、TとDとAにより決定される凹レンズ領域31の幅Rに対して開口径Lが小さくなるので、全体的に凹レンズ領域31の幅Rの占める割合が増加し、凹レンズ効果が強調されることとなる。
【0029】
その他に、隔壁3のテーパー部3aの幅Aを狭くすることにより隔壁3のテーパー部3aの角度が大きくなり、テーパー部3aにおける封止保護膜6の成長方向がより画素中央方向に向くこととなる。その結果、封止保護膜6の膜厚Tが同じでも凹レンズ領域31の幅Rは広くなり、凹レンズ効果が強くなる。
【0030】
本発明においては、上記凹レンズ効果によるレンズ8の集光効果の低下を抑制するために、封止保護膜6の上に平坦化層7を設ける。平坦化層7を設けることにより、封止保護膜6表面の凹形状をなだらかにするが、必ずしも完全に平坦にする必要はない。また、必ずしも全面に一様に設ける必要もなく、レンズ8を設ける部分に対応して必要充分な領域のみにパターニングされていても良い。平坦化層7の厚みは所望の光学機能にあわせて選択するが、具体的には1μm乃至50μm程度が好ましい。平坦化層7の屈折率は封止保護膜6に近いほど、本発明の効果が発揮できるが、表面形状を平滑にできる材料である必要がある。具体的には酸化ジルコニウムや酸化チタンなどの高屈折率材料の微粒子を分散したアクリル系の樹脂や、ノボラック系の樹脂、シロキサン系のCVD膜などが用いられる。
【0031】
平坦化層7で平坦化した表面に集光レンズ8を設ける。レンズ8の材料の屈折率はレンズ面での屈折効果を利用するためには、より外側の屈折率より大きい必要があり、高屈折率の材料が好ましい。ノボラック系の樹脂や窒化シリコン、酸窒化シリコンなどの材料が利用できるが、レンズ形状を形成する必要性から封止保護膜6と同じ屈折率にすることは容易ではない。一般的に屈折率が低くなる場合が多い。光硬化性樹脂(JSR社製「KZ6666」、東洋インキ製造社製「TYZ74」など)を使用すると、屈折率は1.7乃至1.8程度を選択することができる。
【0032】
レンズ8は、平坦化層7上に直接形成してもよいし、別工程で形成したレンズ8を平坦化層7上に貼り合わせてもよい。レンズ8を貼り合せる接着剤は、薄い方がよく、2乃至3μm程度、またそれ以下が好ましい。また、レンズ8の材料は、無機材料でも、有機材料でもよい。無機材料としては、窒化シリコン、酸化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウムなどが挙げられる。有機材料としては、エポキシ樹脂、ブチル樹脂が挙げられる。
【0033】
レンズ8は、例えば、次のようにして形成できる。レンズ材料である樹脂層を10μm乃至100μm程度、平坦化層7上に塗布する。樹脂層としては熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化型樹脂を用いることができ、熱硬化型樹脂と光硬化型樹脂については、スピンコート法、ディスペンス法などを用いる。光硬化型樹脂としては、ポジ型のレジスト(AZエレクトロニックマテリアルズ社製「AZ10XT」など)が好ましく用いられる。屈折率は1.65程度にできる。熱可塑性樹脂については、膜厚10μm乃至100μm程度のフィルムを真空下にて貼りつけてもよい。材料としては、エポキシ樹脂、ブチル樹脂が好適に用いられる。
【0034】
次に、レンズ8を成形するための型を用意し、樹脂層などに気泡が混入しないように、樹脂層と型とを密着させる。型は、一般的な金属を用いることができるが、樹脂層に光硬化型樹脂を用いる場合は、光を透過することが可能な石英基板が好ましい。また、型の表面には、フッ素樹脂などの膜を形成することにより、樹脂層と型との剥離性を良好にすることができる。さらに、樹脂層に熱硬化型樹脂を用いる場合は、型における各レンズの凸部の頂点と、有機化合物層がなす画素の中心とが一致するようにアライメントしながら、温度を80℃に加熱して、樹脂を硬化させる。次に、型を硬化した樹脂層から剥がすと、係る樹脂層にはレンズ8が形成されている。この時、型の表面に、濡れ性を下げる効果を有するフッ素樹脂などの膜を成膜しておけば、剥がす作業を簡単に実行することができる。このように形成されたレンズ8は、後述する図6或いは図11に示すように、平坦化層7上に途切れることなく連続して形成された樹脂層8aに、複数の集光レンズ8を備えた構成となっている。
【0035】
また、フォトリソや印刷によってパターニングされた樹脂層を加熱し、リフローによって樹脂層をレンズ形状に変形させてレンズ8を形成することもできる。
【0036】
レンズ8は、画素毎、即ち、有機EL素子毎に1つ形成されていることが好ましいが、1つの画素に複数のレンズを形成したり、複数の画素に1つのレンズを形成してもよい。また、レンズの上に円偏光部材を配置してもよい。
【0037】
図2に、平坦化層7を設けなかった以外は図1の表示装置と同じ構成の表示装置の断面図を示す。図中の矢印は発光層で発光した光の進行方向を示す。図1,図2に示すように、封止保護膜6に屈折率の近い平坦化層7を設けることで、隔壁3に起因する凹レンズ効果によって、出射光の一部が所望の方向からずれて輝度が低下するという問題を低減することができる。
【0038】
本実施形態の表示装置の製造工程について図7,図8を用いて説明する。図7,図8は図1の構成の表示装置の製造工程の一例を示す断面図である。尚、第2電極5の形成までは周知な製造工程であるため、ここでは説明を省略する。先ず、図7(a)に示すように、トップエミッション型の有機EL素子が複数形成された基板1を用意する。この基板1には、不図示のアクティブマトリクス型の画素回路、半導体保護層、平坦化層が形成されており、係る基板1上に、第1電極2、隔壁3、有機化合物層4、第2電極5が形成されている。
【0039】
次に、図7(a)に示すように無機材料からなる封止保護膜6を取り出し端子部以外の表示領域の全域に形成する。封止保護膜6は、水分や酸素が有機EL素子に接触することを遮断するための、言わば封止機能を有する部材である。そのため、封止保護膜6は、光の透過率が高く、防湿性に優れた部材であることが好ましい。尚、図7(a)では封止保護膜の表面は第2電極4におおむね倣った形状をしている。窒化シリコンを用いる場合、屈折率は1.8乃至2.0程度にできる。
【0040】
次に図7(b)に示すように、平坦化層7を取り出し端子部以外の表示領域の全域に形成する。
【0041】
次に図7(c)に示すように、ポジ型の光硬化型樹脂からなるレンズ材料18を表示領域の全域に形成する。
【0042】
次に、図8(a)に示すように、フォトマスク20を使い、レンズを形成したい部分以外を露光する。その後現像を行うことで、図8(b)のようにレンズ材料18をマスクパターンにパターニングする。これを所定の温度で加熱することでレンズ材料18がリフローし、表面張力により図8(c)のような、概略球レンズ形状のレンズ8が形成できる。必要な光学機能にあわせて高さ、曲率半径を選択する。いずれも数μm乃至数100μmから選択できる。曲率半径をより短くすると発光光を集光し、所望の方向の明るさを増すことができるが、所望方向以外の光量は低下するため、用途によって選択することが必要である。
【0043】
次に、図5、図6を用いて、本実施形態の他の構成例を説明する。図5(a)、図6(a)は断面図、図5(b)、図6(b)は上面図であり、図5(a)、図6(a)は図5(b)、図6(b)のC−C’断面に相当する。また、図中の矢印は発光層で発光した光の進行方向を示す。
【0044】
図5の構成例は、封止保護膜6の表面に遮光層9を形成し、さらに、発光領域の中心Aとレンズの中心Bとを故意にずらすことにより、斜め方向の輝度を高めている。
【0045】
図9は図4の構成例の製造工程の一例を示す断面図である。図9(a)に示すように、封止保護膜6まで形成した後、図9(b)に示すように、全面に遮光層材料19を形成する。遮光層材料19としては、例えばネガ型のブラックレジストなどが好ましく用いられる。次いで、図9(c)に示すようにマスク21を用いて、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして画素に対応する開口部分を有する遮光層9を形成する(図9(d))。
【0046】
その後、図7(c)乃至図8(c)の工程と同様にして、平坦化層7及びレンズ8を形成する。
【0047】
或いは、図10(a)に示すように、全面にポジ型の光硬化型樹脂からなるレンズ材料18を形成した後、図10(b)に示すように、グレースケールマスク22を用いて露光し、現像して図10(c)のレンズ8を得る。グレースケールマスク22は、遮光領域(図中のハッチング領域)の光透過性に分布を持たせたものである。
【0048】
図6の構成例は、封止保護膜6の表面に、フォトリソグラフィ技術を用いて画素に対応する周回部分に平坦化層材料をためる土手部材9を形成した例である。土手部材9は、発光領域よりは広く、レンズの光学機能部より狭いほうが好ましい。感光性ポリイミド樹脂やMEMS用ネガレジスト(日本化薬社製「SU−8」)などが使用できる。土手部材9を設けた上に平坦化層7を設けると、土手部材9が凹形状の部分に平坦化層材料をためる役割をし、平坦化を容易にできる。
【0049】
また、これとは別に保護部材11に低屈折率樹脂10を塗布し、レンズ形状のニッケルメッキで作製した型を押し当て、レンズ8の型となる形状を作製する。低屈折率樹脂10としては、紫外線硬化型の低屈折率樹脂(DIC(大日本インキ)社製「ディフェンサ」など)で屈折率は1.4程度が可能である。これを、エポキシ系樹脂等のレンズ8となる材料で貼り合せて、表示装置が作製できる。エポキシ系樹脂は屈折率は1.6程度が可能である。この時、図5の構成例と同様に、発光領域の中心Aとレンズの中心Bを故意にずらし、所望の方向の輝度を高めることも可能である。
【0050】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態は、第2電極と封止保護膜との間に平坦化層を設けた構成である。図11,図12にその構成例を示して説明する。尚、基板1上に第1電極2、隔壁3、有機化合物層4、第2電極5を設けるまでは、第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。尚、本実施形態でも式(1)を満たす構成であれば凹レンズ効果が顕著になってしまう点では第1の実施形態と共通であり、その効果を抑制するために、第2電極と封止保護膜との間に平坦化層を設けている。
【0051】
図11,図12に示すように、本例では、第2電極5上に、平坦化層27を設けて第2電極5表面の凹形状を平坦化する。平坦化層27は、テトラエトキシオルソシリケイト(TEOS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、(ビスターシャルブチルアミノ)シラン(BTBAS)、オクタメチルシクロテトラシロキシサン(OMCTS)を用いて形成される。特に、OMCTSから形成されたSiOCH材料からなる平坦化層27が好ましい。平坦化層27は、これら材料を用い、真空紫外光CVD法により形成される。ここで、真空紫外光CVD法による平坦化層27を第2電極5の上に直接形成した場合、有機EL素子の初期輝度が低下する恐れがある。
【0052】
そこで、平坦化層27の下層に紫外光を吸収する紫外光遮断層28を形成することが望ましい。紫外光遮断層28は、真空紫外CVD法による真空紫外光から有機EL素子を保護する役割を果たす。紫外光遮断層28は、有機材料でも、無機材料でもよく、200nm以下の波長を吸収することが望ましく、パリレン、窒化シリコン、酸化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウムなどが挙げられる。また、紫外光遮断層28は、その上に形成される平坦化層27の広がり性、密着性が必要であり、紫外光遮断層28は、窒化シリコン、酸化シリコン、酸窒化シリコンなどのケイ素を含む材料が好ましい。
【0053】
本実施形態では、平坦化層27の上に封止保護膜26が形成される。封止保護膜26の構成材料としては、例えば、窒化シリコン、酸窒化シリコン等が挙げられるが、これらに限定されない。特に窒化シリコンを使用することが好ましく、これは窒化シリコンの水分透過性が酸窒化シリコンに比べて低いからである。この封止保護膜26は、例えば、プラズマCVD法、スパッタ法等で形成することができるが、これらの形成方法に限定されない。具体的には、例えば、SiH4ガス、NH3ガス、N2ガスを供給して、プラズマを発生させ、窒化シリコン膜を形成する。また、亜酸化窒素ガス等の酸素を有するガスを添加し、酸窒化シリコン膜を形成する。
【0054】
封止保護膜26上に、レンズ8が形成される。レンズ8の形成方法としては、先に示した第1の実施形態と同様に形成することができる。図12は、別途成形したレンズ8を接着剤層29により平坦化層26に接着した構成例である。
【0055】
このように、平坦化層27を設けた上に封止保護膜26を形成することにより、隔壁3に起因する凹レンズ効果を低減させ、レンズ8の集光効果を高めることができる。また、レンズ8と有機化合物層4との距離が大きくなればなるほど、レンズ8の集光効率は低下するが、真空紫外光CVD法によって平坦化特性に優れた平坦化層26を形成することができ、集光効率の低下を抑えることができる。さらに、平坦化層26を形成する際の紫外光による有機EL素子への影響も、紫外光遮光層28を設けることで効率良く低減することができる。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
図7,図8に示す工程に従って、図1の構成の表示装置を作製した。以下に各工程を説明する。
【0057】
ガラス基板上に、低温ポリシリコンTFTで画素回路(不図示)を形成し、その上に窒化シリコンからなる半導体保護層とポリイミド樹脂からなる平坦化層を、この順番で形成して図7(a)に示す基板1を作製した。この基板1上にAlNd膜とITO膜をスパッタリング法にて100nmと38nmの厚さでこの順に形成し、AlNd膜とITO膜を画素毎にパターニングし、第1電極2を形成した。
【0058】
この上に東レ社製ポリイミド樹脂をスピンコートし、フォトリソグラフィ技術により、第1電極2が形成された部分に開口(発光領域に相当)が形成されるようにパターニングし、隔壁3を形成した。加熱し、重合させる時に開口の端部は傾斜となる材料を選択し、厚みは1μmとした。各画素のピッチは30μm、開口による第1電極2の露出部の大きさは10μm、テーパー角は2μmとした。
【0059】
これをイソプロピルアルコール(IPA)で超音波洗浄し、次いで、煮沸洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄してから有機化合物層4を真空蒸着により成膜した。有機化合物層4としては、始めに、ホール輸送層を全ての画素に87nmの厚さで成膜した。この際の真空度は1×10-4Pa、蒸着レートは0.2nm/secであった。
【0060】
次に、シャドーマスクを用いて、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層をそれぞれ厚さ30nm、40nm、25nmで成膜した。図1では2色分、2画素の図となっているが同様の構成の繰り返しであるため省略している。尚、白色の発光を得る場合は、同じ材料を一様に設けてよい。
【0061】
続いて、全ての画素に共通の電子輸送層としてバソフェナントロリン(Bphen)を真空蒸着法にて10nmの厚さで形成した。蒸着時の真空度は1×10-4Pa、成膜速度は0.2nm/secの条件であった。その後、共通の電子注入層として、BphenとCs2CO3を共蒸着(質量比90:10)して40nmの厚さで形成した。蒸着時の真空度は3×10-4Pa、成膜速度は0.2nm/secの条件であった。
【0062】
次に、上記ホール輸送層から電子注入層までの有機化合物層4を成膜した基板を、真空を破ること無しにスパッタ装置に移動し、第2電極5として極薄Ag及び透明電極層をそれぞれ10nm及び50nmの厚さで順に成膜した。透明電極層の材料としては、酸化インジウムと酸化亜鉛の混合物を用いた。
【0063】
上述の場合、電極2,5や有機化合物層4の厚みは薄く、発光領域と隔壁3の上面では隔壁3の厚み1μmに相当する高低差が生じ、凹形状となっていた。
【0064】
次に、図7(a)に示すように、窒化シリコンからなる封止保護膜6を、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法で6μmの厚みに成膜した。屈折率は1.9であった。封止保護膜6の表面も発光領域と隔壁3の上面の高低差による凹形状をなぞるように凹形状となった。
【0065】
次に、図7(b)に示すように、平坦化層7として、紫外線硬化性樹脂(東洋インキ製造社製「TYZ74」)を、スピンコーターにて塗布した。その後、取出し端子部(不図示)以外の紫外線硬化樹脂を露光し、硬化させた。膜厚は2μmとした。屈折率は1.74であった。
【0066】
次に、図7(c)に示すように、レンズ材料8として、ポジ型レジストであるAZエレクトロニックマテリアルズ製「AZ10XT」を、スピンコーターにて塗布した。膜厚は10μmとした。そして、図8(a)に示すように、φ25μm、ピッチ30μmのドットパターンを有するフォトマスク20にて露光し、図8(b)に示すように、現像することによりレンズ材料8をパターニングした。さらに、図8(c)に示すように、加熱してリフローさせることによりレンズ8を形成した。レンズ8として、高さ14μm、曲率半径20μmの概略球形のレンズ形状が形成できた。
【0067】
このようにして作製した表示装置は、L=10μm、D=1μm、T=6μm、A=2μmであり、(T×D)/(L×A)=0.3であり、凹レンズ効果にかかる前記(1)式が満たされている。
【0068】
また、本例の表示装置は、レンズ8による正面方向での集光効果が著しく、明るい表示が可能となった。また、同じ輝度で比較した場合は、消費電力が著しく低減できた。
【0069】
(比較例1)
平坦化層7を設けない以外は実施例1と同様にして、図2の構成の表示装置を作製した。本例の表示装置は、正面の輝度は実施例1にくらべ3割ほど低下した。これは封止保護膜6の表面の凹形状で光が正面方向からずれる割合が多くなったためであった。
【0070】
(実施例2)
図5の構成の表示装置を、図9,図10に示す工程で作製した。
【0071】
図9(a)に示すように封止保護膜6までは実施例1と同様に作製し、該封止保護膜6の上に、図9(b)に示すように、遮光層材料19として東京応化工業製ブラックレジストをスピンコーターにて塗布した。膜厚は1μmとした。その後、図9(c)に示すように、画素ピッチ30μmでφ20μmのドットが並んだフォトマスク21を用い、ブラックレジストを露光、現像し、図9(d)に示す、画素に対応して開口を有する遮光層9のパターンを形成した。
【0072】
次に、図9(e)に示すように、紫外線硬化樹脂(東洋インキ製造社製「TYZ74」)をスピンコーターにて塗布し、硬化させた。膜厚は2μmとした。
【0073】
次に、図10(a)に示すように、レンズ材料8として、ポジ型レジストであるAZエレクトロニックマテリアルズ製「AZ10XT」を、スピンコーターにて塗布した。膜厚は10μmとした。
【0074】
実施例1における図8(a)のフォトマスク20を用いる代わりに、凸版印刷製グレースケールマスク22を用い、キヤノン製露光機「MPA−600F」で露光した(図10(b))。
【0075】
これをAZエレクトロニックマテリアルズ製現像液「AZ400K」で現像することで、図10(c)の所望のレンズ形状を得た。この時、図5に示すように、発光領域の中心Aとレンズ8の中心Bを故意に6μmずらすことにより、約20°の斜め方向の輝度を高めることができた。
【0076】
このようにして作製した表示装置は、前記式(1)を満たしており、レンズ8による20°の斜め方向の集光効果が著しく、明るい表示が可能となった。また、同じ輝度で比較した場合は、消費電力が著しく低減できた。
【0077】
(比較例2)
平坦化層7を設けない以外は実施例2と同様にして、表示装置を作製した。本例の表示装置は、20°の斜め方向の輝度が実施例2にくらべ3割ほど低下した。これは封止保護膜6の表面の凹形状で光が20°の斜め方向からずれる割合が多くなったためであった。
【0078】
(実施例3)
図6の構成の表示装置を作製した。封止保護膜6までは実施例1と同様にして作製し、係る封止保護膜6の表面に、MEMS用ネガレジスト(日本化薬社製「SU−8」)を用い、フォトリソグラフィ技術にて土手部材9を設けた。土手部材9は、内径25μm、外形30μm、厚みは5μmとした。
【0079】
その上に平坦化層7を東洋インキ製造社製「TYZ74」を用いて設けた。
【0080】
これとは別に保護部材11として屈折率1.5のガラス基板に、低屈折率樹脂(DIC(大日本インキ)社製「ディフェンサ」)を塗布し、ニッケルメッキでレンズの形状に作製した型を押し当て、先の低屈折率樹脂に凹レンズ形状を作製した。屈折率は1.4であった。これを、レンズ8となる光硬化性のエポキシ樹脂で貼り合せて、表示装置を作製した。エポキシ系樹脂は屈折率は1.6程度であった。この時、実施例2と同様に、発光領域の中心Aとレンズ8の中心Bを故意に6μmずらし、20°の方向の輝度を高めることができた。
【0081】
(実施例4,5、比較例3)
図11の構成の表示装置を作製した。
【0082】
まず、ガラス基板上にTFTと、膜厚300nmの絶縁層と、膜厚1μmの有機平坦化層と、をこの順で積層し、基板1とした。
【0083】
上記基板1の絶縁層と有機平坦化層とに、フォトリソグラフィ工程によりコンタクトホールを形成した。次に、有機平坦化層上に、コンタクトホールと電気的に接続するように、画素単位でアルミニウム(Al)膜とインジウム錫酸化物(ITO)膜とからなる第1電極2を形成した。この第1電極2の膜厚は150nmとした。
【0084】
次に、フォトリソグラフィ工程によりポリイミド製の隔壁3を形成し、画素を形成する部分の周囲を隔壁3で覆った。
【0085】
隔壁3まで形成された基板1を純水により約5分間洗浄した後、この基板1を約200℃で2時間ベークすることで、脱水処理を行った。そして、第1電極2にUV/オゾン洗浄を施した。
【0086】
次に、第1電極2上に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層からなる有機化合物層4を形成した。この有機化合物層4の具体的な形成方法を以下に説明する。
【0087】
先ず、真空蒸着装置内の圧力を1×10-3Paとしてから、第1電極2上にN,N’−α−ジナフチルベンジジン(α−NPD)を成膜し、正孔輸送層を形成した。この正孔輸送層の膜厚は40nmとした。
【0088】
次に、正孔輸送層上に、緑色発光するクマリン色素(クマリン−540)と、トリス[8−ヒドロキシキノリナート]アルミニウム(Alq3)とを、クマリン色素とAlq3との体積比が1.0:99.0となるように共蒸着することで発光層を形成した。この発光層の膜厚は30nmとした。
【0089】
次に、下記式(I)で示される構造のフェナントロリン化合物を成膜し、電子輸送層を形成した。この電子輸送層の膜厚は10nmとした。
【0090】
【化1】
【0091】
次に、電子輸送層上に、炭酸セシウム(2.9体積%)と上記式(I)で示される構造のフェナントロリン化合物とを、炭酸セシウムとフェナントロリン化合物との体積比が2.9:97.1となるように共蒸着することで、電子注入層を形成した。この電子注入層の膜厚は40nmとした。
【0092】
次に、電子注入層まで成膜した基板を、別のスパッタ装置へ移動させ、この電子注入層上にインジウム錫酸化物(ITO)をスパッタ法にて成膜し、第2電極5を形成した。この第2電極5の膜厚は60nmとした。
【0093】
第2電極5まで形成した後、紫外光遮断層28を形成した。紫外光遮断層28は、基板1の略全領域において、次のように形成した。
【0094】
堆積膜形成装置の高周波電極と、この高周波電極に対向する100℃に過熱された接地電極とが基板1の裏面に接するように固定した。そして、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスをフローしながら、高周波電極と接地電極との間の反応空間圧力を制御した。次に、高周波電力を高周波電極に供給しながら窒化シリコンからなる紫外光遮断層28を堆積形成した。この紫外光遮断層の膜厚は約1μmとした。
【0095】
次に、真空紫外光CVD法により、基板1の画素エリア全領域を覆うように平坦化層27を形成した。具体的には、先ず堆積膜形成装置に基板1を挿入した。OMCTSガスを、真空状態の堆積膜形成装置内に導入し、圧力を制御した。次に、Xe2エキシマランプ(波長172nmフォトンエネルギー7.2eV)の真空紫外光を石英板を通して、照射して、SiOCHからなる平坦化層27を堆積形成した。この膜厚は1.5μmとした。
【0096】
次に、プラズマCVD法により、基板1の略全領域において、封止保護膜26を形成した。先ず、堆積膜形成装置の高周波電極と、この高周波電極に対向する80℃に過熱された接地電極と、が基板1の裏面に接するように固定した。そして、SiH4ガス、N2ガス、NH3ガスをフローしながら、高周波電極と接地電極との間の反応空間圧力を制御した。次に、高周波電力を高周波電極に供給しながら封止保護膜26を堆積形成した。この封止保護膜26の膜厚は約1μmとした。
【0097】
次に、封止保護膜26の上にレンズ8を形成した。先ず、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、粘度3000mPa・sの熱硬化性の樹脂材料(エポキシ樹脂)を精密描画が可能なディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製SHOT MINI SL)を用いて塗布した。樹脂材料を熱硬化する前に、別途用意したレンズ8を成形するための型を、樹脂材料の表面に押し当てた。押し当てる際、型に形成してあるアライメントマークと基板に形成してあるアライメントマークを合わせる事により位置決めを行った。その結果、画素に合わせてレンズ8が形成された。型は、画素ピッチと同じピッチで凹状に窪みが形成されており、その窪みの表面には離形剤としてテフロン(登録商標)系の樹脂がコートされている。窪みの形状、即ちレンズ8の形状は、曲率半径30μmで形成した。ピッチ30μmであるので、レンズ8の頂点から底部の上面までの間の高さは4μm程度になった。高さとは、レンズ部底部と頂上部の差である。エポキシ樹脂は、真空環境下で100℃の温度で15分間加熱して硬化させ、レンズ8を形成した。
【0098】
次に、基板1の外部接続端子とFPC(フレキシブルプリント基板)との間に異方性導電フィルム(ACF)を挟み込んだ後、外部接続端子とFPCとを熱圧着し、表示装置を得た。
【0099】
また、比較例3として、紫外光遮断層28と平坦化層27を設けない以外は上記実施例4と同じ構成の表示装置を作製した。また、比較例4として、紫外光遮断層28,平坦化層27,レンズ8を設けない以外は上記実施例4と同じ構成の表示装置を作製した。さらに、実施例5として、紫外光遮断層28を設けない以外は上記実施例4と同じ構成の表示装置を作製した。
【0100】
図13に、平坦化層27の有無による輝度の違いを示す。図13に示すように、平坦化層27もレンズ8もない比較例4の視野角0°を相対輝度1とし、平坦化層27なしでレンズ8を形成した比較例3と、平坦化層27及びレンズ8を形成した実施例4とを比較した。図13より明らかなように、レンズ8を形成した比較例3の輝度と、形成しない比較例4の輝度とを比較すると、真正面から見た時に1.5倍程度の輝度向上が得られた。また、レンズ8のみを形成した比較例3に対して、さらに平坦化層27を設けた実施例4では相対輝度が大幅に向上した。
【0101】
図14は、紫外線遮断層28の有無を比較した結果である。図14より明らかなように、紫外光遮断層28を設けて平坦化層27を形成した実施例4に対して、紫外光遮断層28を設けずに平坦化層27を形成した実施例5では、正面輝度が10%程度低下した。
【符号の説明】
【0102】
1:基板、2:第1電極、3:隔壁、4:有機化合物層、5:第2電極、6,26:封止保護膜、7,27:平坦化層、8:集光レンズ、28:紫外光遮断層
【技術分野】
【0001】
本発明はフラットパネルディスプレイに用いられる、有機EL素子を用いた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1対の電極間に有機発光層を挟持する有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)からなる表示装置が盛んに開発されている。特にマトリクス状に多数の微小な画素を配置し、異なる発光色の画素を組み合せてカラー画像を表示する方式が盛んである。画素は開口を有する隔壁で発光領域が規定される場合が多い。また、有機EL素子は酸素や水分と著しく反応するため、無機材料からなる封止保護膜で外気と遮断する構成も知られている。このような表示装置において、有機EL素子から放出された光は四方八方に分散される。基板面に斜めに放出された光は、その基板と外部空気の境界又は表示装置の最外層の保護部材と外部空気の境界で反射され、表示装置の外部に放出されず損出光となるものが60%から70%にも及んでいた。そのため、発光層から発光する光を効率よく取り出し、光量の増大及び所望方向の輝度の向上のために、有機EL素子に対応して光取り出し側にレンズを設ける構成が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この提案によれば、発光層から放出された光はレンズによって集光されてから表示装置の外へ放出される。そのため、発光層から発光した光の内で、基板面に対して斜めに放出された光でも、レンズによって基板面に垂直方向に屈折されて装置の外部へ放出される。従って、表示装置の外部に放出されない損出光を低減し有機EL素子から放出された光を効率よく利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−39500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような構成の表示装置においては、画素の発光領域を規定する隔壁の端部に傾斜を持たせてなだらかにする場合が多いが、発光領域と隔壁の上面では高低差が生じ、凹形状となる。この凹形状の上に無機材料からなる封止保護膜を形成すると、発光領域と隔壁の上面で形成される凹形状をなぞるように、封止保護膜の表面にも同様の凹形状が形成される。この封止保護膜の上方にレンズを設けることにより、出射光を所望の方向に集めることができるが、封止保護膜の屈折率とレンズ材料の屈折率を合わせることは容易ではなく、屈折率に差が生じ、凹レンズ効果を生じてしまう。即ち、封止保護膜表面の凹形状で出射光の一部が所望の方向からずれ、輝度が低下するという課題が生じる場合がある。
【0006】
本発明の課題は、レンズを用いて損出光を向上させた表示装置において、隔壁に起因する凹レンズ効果を低減させて、上記レンズによる集光効果を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に配置された、少なくとも発光層を含む有機化合物層と、を有する有機EL素子が複数配置されてなり、前記複数の有機EL素子が隔壁によって分離され、前記有機EL素子及び前記隔壁上に封止保護膜が形成されており、前記基板とは反対側に集光レンズが形成された表示装置において、
前記隔壁によって前記第2電極表面が段差を有しており、前記段差が、前記第2電極と前記集光レンズとの間に形成された平坦化層によって平坦化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、平坦化層によって隔壁に起因する凹レンズ効果が低減し、レンズによって高い集光効果が得られ、輝度の高い表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の表示装置の第1の実施形態の構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】図1の構成から平坦化層を除いた構成を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の表示装置の第1の実施形態に係る(1)式の説明図である。
【図4】凹レンズ効果による本発明の表示装置の視野角改善効果を示す図である。
【図5】本発明の表示装置の第1の実施形態の他の構成例を模式的に示す図である。
【図6】本発明の表示装置の第1の実施形態の他の構成例を模式的に示す図である。
【図7】図1に示した表示装置の製造工程を示す断面図である。
【図8】図1に示した表示装置の製造工程を示す断面図である。
【図9】図5に示した表示装置の製造工程を示す断面図である。
【図10】図5に示した表示装置の製造工程を示す断面図である。
【図11】本発明の表示装置の第2の実施形態の構成例を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明の表示装置の第2の実施形態の他の構成例を模式的に示す断面図である。
【図13】本発明の実施例の結果を示すグラフである。
【図14】本発明の実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の表示装置は、基板上に有機EL素子を複数配置してなり、複数の有機EL素子が互いに隔壁によって分離されている。そして、有機EL素子及び隔壁上に封止保護膜が形成され、さらに、有機EL素子毎に基板とは反対側に集光レンズが形成された構成を有している。有機EL素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に挟持された、少なくとも発光層を含む有機化合物層とを有している。
【0011】
本発明の特徴は、隔壁によって前記第2電極表面が段差を有しており、前記段差が、前記第2電極と前記集光レンズとの間に形成された平坦化層によって平坦化されていることにある。ここで、本発明においては、平坦化層を封止保護膜と集光レンズとの間に形成した第1の実施形態と、第2電極と前記封止保護膜との間に形成した第2の実施形態とが挙げられる。以下、各実施形態に分けて構成を説明する。
【0012】
〔第1の実施形態〕
図1を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。図中の矢印は発光層で発光した光の進行方向を示す。先ず、後述する第2の実施形態と共通する構成について説明する。
【0013】
基板1の上に、画素電極となる光反射性の第1電極2をマトリクス状に多数形成する。基板1には各有機EL素子を独立に駆動できるように画素回路が形成されている。これらの画素回路は、複数のトランジスタから構成されている(不図示)。このトランジスタが形成された基板1は、トランジスタと第1電極2とを電気的に接続するためのコンタクトホールが形成された半導体保護層に覆われている(不図示)。更に半導体保護層上には、画素回路による表面凹凸を低減し、表面を比較的平坦にするための平坦化層が形成されていてもよい(不図示)。
【0014】
第1電極2は、例えばAg等の高い反射率を持つ導電性の金属材料から形成される。また、Ag等の金属材料からなる層とホール注入特性に優れたITO(Indium−Tin−Oxide)などの透明導電性材料からなる層との積層体から構成しても良い。
【0015】
次いで、第1電極2の端部を覆い、画素の発光領域となる開口を有する絶縁性の隔壁3を形成する。隔壁3の厚みは0.5μm乃至5μm程度が好ましく、製造には感光性ポリイミドなどの樹脂材料や窒化シリコン、酸化シリコン等の無機材料が使用できる。開口はフォトリソグラフィ技術やエッチング技術を利用して形成する。開口の端部は10°乃至50°程度の傾斜(テーパー形状)とするが、開口形成時の樹脂の選定やエッチングの条件により傾斜を形成できる。
【0016】
隣接する画素に異なる発光色の有機化合物層4を蒸着法や塗布法で形成する。有機化合物層4は、少なくとも発光層を含む単層又は複数の層からなる。例えば、第1の電荷輸送層、発光層、第2の電荷輸送層及び電荷注入層からなる4層構成や、第1の電荷輸送層、発光層及び第2の電荷輸送層からなる3層構成等が挙げられる。有機化合物層4を構成する材料は、公知の材料を使用することができる。正孔輸送性と電子輸送性及び正孔注入性と電子注入性はどちらの極性も選択できる。
【0017】
有機化合物層4の上に、共通電極となる光透過性の第2電極5をスパッタリング法等で形成し、第1電極2、有機化合物層4、第2電極5からなる有機EL素子が形成される。この場合は基板1とは反対側を光取り出し側としている。近年、高精細の表示装置が主流であり、画素の幅は数100μmから数μmへと細かくなっている。第2電極5は、有機化合物層4で発光した光を素子外部に取り出し可能な半反射性或いは光透過性の構成を有している。具体的には、素子内部での干渉効果を高めるために第2電極5を半反射性の構成とする場合、第2電極5は、AgやAgMgなどの電子注入性に優れた導電性の金属材料からなる層を2乃至50nmの膜厚で形成することにより構成されている。尚、半反射性とは、素子内部で発光した光の一部を反射し、一部を透過する性質を意味し、可視光に対して20乃至80%の反射率を有するものをいう。また、光透過性とは、可視光に対して80%以上の透過率を有するものをいう。尚、アノードとカソードの役割は、材料の選択により第1電極2と第2電極5のどちらにすることも可能である。
【0018】
第2電極5の表面には、隔壁3に起因する段差が形成されている。より具体的には、隔壁3の開口部によって規定される、有機EL素子の発光領域が隔壁3の上面よりも低い凹形状が形成されている。本発明では、係る段差を平坦化層によって平坦化するが、第1の実施形態においては、係る平坦化層を封止保護膜と集光レンズとの間に配置する。この平坦化を行う目的は、後述する凹レンズ効果を低減して凸レンズによる集光効果を高めるものである。
【0019】
第1の実施形態では、図1に示すように、第2電極5上に、封止保護膜6を配置する。封止保護膜6はプラズマCVD法などによる窒化シリコンや酸窒化シリコンなどの無機材料で形成し、異なる材料を多層に形成してもよい。屈折率は一般的に1.5乃至2.0である。封止保護膜6の厚みは特に制限はないが、実用的には1μm乃至50μm程度が好ましい。図1に示すように、有機EL素子の発光領域と隔壁3の上面では高低差が生じ、隔壁3の形状にならった凹形状となる。この凹形状の上に無機材料からなる封止保護膜6を形成すると、発光領域と隔壁3の上面で形成される凹形状をなぞるように、封止保護膜6の表面にも同様の凹形状が形成される。
【0020】
本発明において、第2電極5上に封止保護膜6を設けた場合には、隔壁3に起因する封止保護膜6表面の凹形状によって、有機EL素子から出射された光を発散する作用(本明細書では凹レンズ効果という)を生じてしまう。また、この凹レンズ効果は以下の(1)式を満たすことで顕著になる。即ち、隔壁3の開口部の開口径をL、隔壁3の膜厚をD、封止保護膜6の膜厚をT、隔壁3のテーパー部の幅をAとした時、
0.1<(T×D)/(L×A)<1 (1)
を満たす。
【0021】
尚、隔壁3の開口部の開口径Lは、互いに向かい合う画素端辺を直交する線分の中で、最も短い長さで示される。具体的には、例えば開口部の形状が円形であればその直径であり、楕円形であれば短径であり、長方形であれば短辺の長さである。また、隔壁3のテーパー部の幅Aは、隔壁3の平均膜厚が10%から90%まで変化するのに要する距離である。
【0022】
(1)式の物理的意味について以下に図3を参照して説明する。尚、図3においては、便宜上、第1電極2、有機化合物層4、第2電極5を省略する。第1電極2は発光層よりも下方にあるため、有機化合物層4と第2電極5とは合わせても100乃至200nm程度であるため、それぞれ影響がほとんどないためである。また、図3中の3aは隔壁3のテーパー部である。
【0023】
先ず画素上に凹形状があることによる発散効果は凹レンズ領域31の幅R/画素径(隔壁3の開口部の開口径)Lに比例する。ここで凹レンズ領域31の幅Rは、隔壁3のテーパー角をθとするとR=T×tan(θ/2)と計算される。さらに近似式によりtan(θ/2)≒(1/2)×tanθ=(1/2)×(D/A)と表わされ、R=T×(1/2)×(D/A)であり、R/L=(1/2)×(T×D)/(L×A)である。以上より、発散効果は(T×D)/(L×A)に比例すると言える。
【0024】
次にさまざまなT,D,L,Aの値に対して発光光の発散効果、つまりは視野角分布の改善効果を光学シミュレーションにより計算したところ、図4のような結果が得られた。グラフの縦軸はパネルを斜め(50°方向)から見た時の輝度に対する正面輝度の比である。この正面輝度/斜方輝度の値は通常凹レンズ効果がない場合3.5乃至4程度であるが、0.1<(T×D)/(L×A)の範囲では正面輝度/斜方輝度が低減し、正面方向への輝度が相対的に低下する。但し(T×D)/(L×A)≧1の範囲になると正面輝度よりも斜方輝度の方が大きくなり、ディスプレイとしての用途に適さないものとなってしまうため、(T×D)/(L×A)<1である必要がある。
【0025】
本発明において、凹レンズ効果が得られる凹形状を作製できるのは封止保護膜6を熱CVD法やプラズマCVD法といった化学気相成長(CVD)法により成膜した場合であり、係る成長法における膜成長の方向性に起因する。CVD法によって封止保護膜6を成膜すると、被成膜物の表面形状に対して法線方向に膜が成長形成されるため、封止保護膜6が厚くなるほど、封止保護膜6の水平面と傾斜面の交点は画素中央方向へシフトする。この結果、隔壁3の開口部の開口径Lに対する凹レンズ領域31の幅Rが拡がり、発光光の発散効果が強く現れる。
【0026】
本発明においては、封止保護膜6の膜厚Tを厚膜化すると、より(1)式の条件を満たすことになる。
【0027】
また、隔壁3の膜厚Dを厚膜化すると、隔壁3のテーパー部3aの角度が大きくなり、テーパー部3aにおける封止保護膜6の成長方向がより画素中央方向に向くこととなる。その結果、封止保護膜6の膜厚Tが同じでも凹レンズ領域31の幅Rは広くなり、凹レンズ効果が強くなる。
【0028】
また、隔壁3の開口部の開口径Lを小さくすることで、TとDとAにより決定される凹レンズ領域31の幅Rに対して開口径Lが小さくなるので、全体的に凹レンズ領域31の幅Rの占める割合が増加し、凹レンズ効果が強調されることとなる。
【0029】
その他に、隔壁3のテーパー部3aの幅Aを狭くすることにより隔壁3のテーパー部3aの角度が大きくなり、テーパー部3aにおける封止保護膜6の成長方向がより画素中央方向に向くこととなる。その結果、封止保護膜6の膜厚Tが同じでも凹レンズ領域31の幅Rは広くなり、凹レンズ効果が強くなる。
【0030】
本発明においては、上記凹レンズ効果によるレンズ8の集光効果の低下を抑制するために、封止保護膜6の上に平坦化層7を設ける。平坦化層7を設けることにより、封止保護膜6表面の凹形状をなだらかにするが、必ずしも完全に平坦にする必要はない。また、必ずしも全面に一様に設ける必要もなく、レンズ8を設ける部分に対応して必要充分な領域のみにパターニングされていても良い。平坦化層7の厚みは所望の光学機能にあわせて選択するが、具体的には1μm乃至50μm程度が好ましい。平坦化層7の屈折率は封止保護膜6に近いほど、本発明の効果が発揮できるが、表面形状を平滑にできる材料である必要がある。具体的には酸化ジルコニウムや酸化チタンなどの高屈折率材料の微粒子を分散したアクリル系の樹脂や、ノボラック系の樹脂、シロキサン系のCVD膜などが用いられる。
【0031】
平坦化層7で平坦化した表面に集光レンズ8を設ける。レンズ8の材料の屈折率はレンズ面での屈折効果を利用するためには、より外側の屈折率より大きい必要があり、高屈折率の材料が好ましい。ノボラック系の樹脂や窒化シリコン、酸窒化シリコンなどの材料が利用できるが、レンズ形状を形成する必要性から封止保護膜6と同じ屈折率にすることは容易ではない。一般的に屈折率が低くなる場合が多い。光硬化性樹脂(JSR社製「KZ6666」、東洋インキ製造社製「TYZ74」など)を使用すると、屈折率は1.7乃至1.8程度を選択することができる。
【0032】
レンズ8は、平坦化層7上に直接形成してもよいし、別工程で形成したレンズ8を平坦化層7上に貼り合わせてもよい。レンズ8を貼り合せる接着剤は、薄い方がよく、2乃至3μm程度、またそれ以下が好ましい。また、レンズ8の材料は、無機材料でも、有機材料でもよい。無機材料としては、窒化シリコン、酸化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウムなどが挙げられる。有機材料としては、エポキシ樹脂、ブチル樹脂が挙げられる。
【0033】
レンズ8は、例えば、次のようにして形成できる。レンズ材料である樹脂層を10μm乃至100μm程度、平坦化層7上に塗布する。樹脂層としては熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化型樹脂を用いることができ、熱硬化型樹脂と光硬化型樹脂については、スピンコート法、ディスペンス法などを用いる。光硬化型樹脂としては、ポジ型のレジスト(AZエレクトロニックマテリアルズ社製「AZ10XT」など)が好ましく用いられる。屈折率は1.65程度にできる。熱可塑性樹脂については、膜厚10μm乃至100μm程度のフィルムを真空下にて貼りつけてもよい。材料としては、エポキシ樹脂、ブチル樹脂が好適に用いられる。
【0034】
次に、レンズ8を成形するための型を用意し、樹脂層などに気泡が混入しないように、樹脂層と型とを密着させる。型は、一般的な金属を用いることができるが、樹脂層に光硬化型樹脂を用いる場合は、光を透過することが可能な石英基板が好ましい。また、型の表面には、フッ素樹脂などの膜を形成することにより、樹脂層と型との剥離性を良好にすることができる。さらに、樹脂層に熱硬化型樹脂を用いる場合は、型における各レンズの凸部の頂点と、有機化合物層がなす画素の中心とが一致するようにアライメントしながら、温度を80℃に加熱して、樹脂を硬化させる。次に、型を硬化した樹脂層から剥がすと、係る樹脂層にはレンズ8が形成されている。この時、型の表面に、濡れ性を下げる効果を有するフッ素樹脂などの膜を成膜しておけば、剥がす作業を簡単に実行することができる。このように形成されたレンズ8は、後述する図6或いは図11に示すように、平坦化層7上に途切れることなく連続して形成された樹脂層8aに、複数の集光レンズ8を備えた構成となっている。
【0035】
また、フォトリソや印刷によってパターニングされた樹脂層を加熱し、リフローによって樹脂層をレンズ形状に変形させてレンズ8を形成することもできる。
【0036】
レンズ8は、画素毎、即ち、有機EL素子毎に1つ形成されていることが好ましいが、1つの画素に複数のレンズを形成したり、複数の画素に1つのレンズを形成してもよい。また、レンズの上に円偏光部材を配置してもよい。
【0037】
図2に、平坦化層7を設けなかった以外は図1の表示装置と同じ構成の表示装置の断面図を示す。図中の矢印は発光層で発光した光の進行方向を示す。図1,図2に示すように、封止保護膜6に屈折率の近い平坦化層7を設けることで、隔壁3に起因する凹レンズ効果によって、出射光の一部が所望の方向からずれて輝度が低下するという問題を低減することができる。
【0038】
本実施形態の表示装置の製造工程について図7,図8を用いて説明する。図7,図8は図1の構成の表示装置の製造工程の一例を示す断面図である。尚、第2電極5の形成までは周知な製造工程であるため、ここでは説明を省略する。先ず、図7(a)に示すように、トップエミッション型の有機EL素子が複数形成された基板1を用意する。この基板1には、不図示のアクティブマトリクス型の画素回路、半導体保護層、平坦化層が形成されており、係る基板1上に、第1電極2、隔壁3、有機化合物層4、第2電極5が形成されている。
【0039】
次に、図7(a)に示すように無機材料からなる封止保護膜6を取り出し端子部以外の表示領域の全域に形成する。封止保護膜6は、水分や酸素が有機EL素子に接触することを遮断するための、言わば封止機能を有する部材である。そのため、封止保護膜6は、光の透過率が高く、防湿性に優れた部材であることが好ましい。尚、図7(a)では封止保護膜の表面は第2電極4におおむね倣った形状をしている。窒化シリコンを用いる場合、屈折率は1.8乃至2.0程度にできる。
【0040】
次に図7(b)に示すように、平坦化層7を取り出し端子部以外の表示領域の全域に形成する。
【0041】
次に図7(c)に示すように、ポジ型の光硬化型樹脂からなるレンズ材料18を表示領域の全域に形成する。
【0042】
次に、図8(a)に示すように、フォトマスク20を使い、レンズを形成したい部分以外を露光する。その後現像を行うことで、図8(b)のようにレンズ材料18をマスクパターンにパターニングする。これを所定の温度で加熱することでレンズ材料18がリフローし、表面張力により図8(c)のような、概略球レンズ形状のレンズ8が形成できる。必要な光学機能にあわせて高さ、曲率半径を選択する。いずれも数μm乃至数100μmから選択できる。曲率半径をより短くすると発光光を集光し、所望の方向の明るさを増すことができるが、所望方向以外の光量は低下するため、用途によって選択することが必要である。
【0043】
次に、図5、図6を用いて、本実施形態の他の構成例を説明する。図5(a)、図6(a)は断面図、図5(b)、図6(b)は上面図であり、図5(a)、図6(a)は図5(b)、図6(b)のC−C’断面に相当する。また、図中の矢印は発光層で発光した光の進行方向を示す。
【0044】
図5の構成例は、封止保護膜6の表面に遮光層9を形成し、さらに、発光領域の中心Aとレンズの中心Bとを故意にずらすことにより、斜め方向の輝度を高めている。
【0045】
図9は図4の構成例の製造工程の一例を示す断面図である。図9(a)に示すように、封止保護膜6まで形成した後、図9(b)に示すように、全面に遮光層材料19を形成する。遮光層材料19としては、例えばネガ型のブラックレジストなどが好ましく用いられる。次いで、図9(c)に示すようにマスク21を用いて、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして画素に対応する開口部分を有する遮光層9を形成する(図9(d))。
【0046】
その後、図7(c)乃至図8(c)の工程と同様にして、平坦化層7及びレンズ8を形成する。
【0047】
或いは、図10(a)に示すように、全面にポジ型の光硬化型樹脂からなるレンズ材料18を形成した後、図10(b)に示すように、グレースケールマスク22を用いて露光し、現像して図10(c)のレンズ8を得る。グレースケールマスク22は、遮光領域(図中のハッチング領域)の光透過性に分布を持たせたものである。
【0048】
図6の構成例は、封止保護膜6の表面に、フォトリソグラフィ技術を用いて画素に対応する周回部分に平坦化層材料をためる土手部材9を形成した例である。土手部材9は、発光領域よりは広く、レンズの光学機能部より狭いほうが好ましい。感光性ポリイミド樹脂やMEMS用ネガレジスト(日本化薬社製「SU−8」)などが使用できる。土手部材9を設けた上に平坦化層7を設けると、土手部材9が凹形状の部分に平坦化層材料をためる役割をし、平坦化を容易にできる。
【0049】
また、これとは別に保護部材11に低屈折率樹脂10を塗布し、レンズ形状のニッケルメッキで作製した型を押し当て、レンズ8の型となる形状を作製する。低屈折率樹脂10としては、紫外線硬化型の低屈折率樹脂(DIC(大日本インキ)社製「ディフェンサ」など)で屈折率は1.4程度が可能である。これを、エポキシ系樹脂等のレンズ8となる材料で貼り合せて、表示装置が作製できる。エポキシ系樹脂は屈折率は1.6程度が可能である。この時、図5の構成例と同様に、発光領域の中心Aとレンズの中心Bを故意にずらし、所望の方向の輝度を高めることも可能である。
【0050】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態は、第2電極と封止保護膜との間に平坦化層を設けた構成である。図11,図12にその構成例を示して説明する。尚、基板1上に第1電極2、隔壁3、有機化合物層4、第2電極5を設けるまでは、第1の実施形態と同様であり、説明を省略する。尚、本実施形態でも式(1)を満たす構成であれば凹レンズ効果が顕著になってしまう点では第1の実施形態と共通であり、その効果を抑制するために、第2電極と封止保護膜との間に平坦化層を設けている。
【0051】
図11,図12に示すように、本例では、第2電極5上に、平坦化層27を設けて第2電極5表面の凹形状を平坦化する。平坦化層27は、テトラエトキシオルソシリケイト(TEOS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、(ビスターシャルブチルアミノ)シラン(BTBAS)、オクタメチルシクロテトラシロキシサン(OMCTS)を用いて形成される。特に、OMCTSから形成されたSiOCH材料からなる平坦化層27が好ましい。平坦化層27は、これら材料を用い、真空紫外光CVD法により形成される。ここで、真空紫外光CVD法による平坦化層27を第2電極5の上に直接形成した場合、有機EL素子の初期輝度が低下する恐れがある。
【0052】
そこで、平坦化層27の下層に紫外光を吸収する紫外光遮断層28を形成することが望ましい。紫外光遮断層28は、真空紫外CVD法による真空紫外光から有機EL素子を保護する役割を果たす。紫外光遮断層28は、有機材料でも、無機材料でもよく、200nm以下の波長を吸収することが望ましく、パリレン、窒化シリコン、酸化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウムなどが挙げられる。また、紫外光遮断層28は、その上に形成される平坦化層27の広がり性、密着性が必要であり、紫外光遮断層28は、窒化シリコン、酸化シリコン、酸窒化シリコンなどのケイ素を含む材料が好ましい。
【0053】
本実施形態では、平坦化層27の上に封止保護膜26が形成される。封止保護膜26の構成材料としては、例えば、窒化シリコン、酸窒化シリコン等が挙げられるが、これらに限定されない。特に窒化シリコンを使用することが好ましく、これは窒化シリコンの水分透過性が酸窒化シリコンに比べて低いからである。この封止保護膜26は、例えば、プラズマCVD法、スパッタ法等で形成することができるが、これらの形成方法に限定されない。具体的には、例えば、SiH4ガス、NH3ガス、N2ガスを供給して、プラズマを発生させ、窒化シリコン膜を形成する。また、亜酸化窒素ガス等の酸素を有するガスを添加し、酸窒化シリコン膜を形成する。
【0054】
封止保護膜26上に、レンズ8が形成される。レンズ8の形成方法としては、先に示した第1の実施形態と同様に形成することができる。図12は、別途成形したレンズ8を接着剤層29により平坦化層26に接着した構成例である。
【0055】
このように、平坦化層27を設けた上に封止保護膜26を形成することにより、隔壁3に起因する凹レンズ効果を低減させ、レンズ8の集光効果を高めることができる。また、レンズ8と有機化合物層4との距離が大きくなればなるほど、レンズ8の集光効率は低下するが、真空紫外光CVD法によって平坦化特性に優れた平坦化層26を形成することができ、集光効率の低下を抑えることができる。さらに、平坦化層26を形成する際の紫外光による有機EL素子への影響も、紫外光遮光層28を設けることで効率良く低減することができる。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
図7,図8に示す工程に従って、図1の構成の表示装置を作製した。以下に各工程を説明する。
【0057】
ガラス基板上に、低温ポリシリコンTFTで画素回路(不図示)を形成し、その上に窒化シリコンからなる半導体保護層とポリイミド樹脂からなる平坦化層を、この順番で形成して図7(a)に示す基板1を作製した。この基板1上にAlNd膜とITO膜をスパッタリング法にて100nmと38nmの厚さでこの順に形成し、AlNd膜とITO膜を画素毎にパターニングし、第1電極2を形成した。
【0058】
この上に東レ社製ポリイミド樹脂をスピンコートし、フォトリソグラフィ技術により、第1電極2が形成された部分に開口(発光領域に相当)が形成されるようにパターニングし、隔壁3を形成した。加熱し、重合させる時に開口の端部は傾斜となる材料を選択し、厚みは1μmとした。各画素のピッチは30μm、開口による第1電極2の露出部の大きさは10μm、テーパー角は2μmとした。
【0059】
これをイソプロピルアルコール(IPA)で超音波洗浄し、次いで、煮沸洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄してから有機化合物層4を真空蒸着により成膜した。有機化合物層4としては、始めに、ホール輸送層を全ての画素に87nmの厚さで成膜した。この際の真空度は1×10-4Pa、蒸着レートは0.2nm/secであった。
【0060】
次に、シャドーマスクを用いて、赤色発光層、緑色発光層、青色発光層をそれぞれ厚さ30nm、40nm、25nmで成膜した。図1では2色分、2画素の図となっているが同様の構成の繰り返しであるため省略している。尚、白色の発光を得る場合は、同じ材料を一様に設けてよい。
【0061】
続いて、全ての画素に共通の電子輸送層としてバソフェナントロリン(Bphen)を真空蒸着法にて10nmの厚さで形成した。蒸着時の真空度は1×10-4Pa、成膜速度は0.2nm/secの条件であった。その後、共通の電子注入層として、BphenとCs2CO3を共蒸着(質量比90:10)して40nmの厚さで形成した。蒸着時の真空度は3×10-4Pa、成膜速度は0.2nm/secの条件であった。
【0062】
次に、上記ホール輸送層から電子注入層までの有機化合物層4を成膜した基板を、真空を破ること無しにスパッタ装置に移動し、第2電極5として極薄Ag及び透明電極層をそれぞれ10nm及び50nmの厚さで順に成膜した。透明電極層の材料としては、酸化インジウムと酸化亜鉛の混合物を用いた。
【0063】
上述の場合、電極2,5や有機化合物層4の厚みは薄く、発光領域と隔壁3の上面では隔壁3の厚み1μmに相当する高低差が生じ、凹形状となっていた。
【0064】
次に、図7(a)に示すように、窒化シリコンからなる封止保護膜6を、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスを用いたプラズマCVD法で6μmの厚みに成膜した。屈折率は1.9であった。封止保護膜6の表面も発光領域と隔壁3の上面の高低差による凹形状をなぞるように凹形状となった。
【0065】
次に、図7(b)に示すように、平坦化層7として、紫外線硬化性樹脂(東洋インキ製造社製「TYZ74」)を、スピンコーターにて塗布した。その後、取出し端子部(不図示)以外の紫外線硬化樹脂を露光し、硬化させた。膜厚は2μmとした。屈折率は1.74であった。
【0066】
次に、図7(c)に示すように、レンズ材料8として、ポジ型レジストであるAZエレクトロニックマテリアルズ製「AZ10XT」を、スピンコーターにて塗布した。膜厚は10μmとした。そして、図8(a)に示すように、φ25μm、ピッチ30μmのドットパターンを有するフォトマスク20にて露光し、図8(b)に示すように、現像することによりレンズ材料8をパターニングした。さらに、図8(c)に示すように、加熱してリフローさせることによりレンズ8を形成した。レンズ8として、高さ14μm、曲率半径20μmの概略球形のレンズ形状が形成できた。
【0067】
このようにして作製した表示装置は、L=10μm、D=1μm、T=6μm、A=2μmであり、(T×D)/(L×A)=0.3であり、凹レンズ効果にかかる前記(1)式が満たされている。
【0068】
また、本例の表示装置は、レンズ8による正面方向での集光効果が著しく、明るい表示が可能となった。また、同じ輝度で比較した場合は、消費電力が著しく低減できた。
【0069】
(比較例1)
平坦化層7を設けない以外は実施例1と同様にして、図2の構成の表示装置を作製した。本例の表示装置は、正面の輝度は実施例1にくらべ3割ほど低下した。これは封止保護膜6の表面の凹形状で光が正面方向からずれる割合が多くなったためであった。
【0070】
(実施例2)
図5の構成の表示装置を、図9,図10に示す工程で作製した。
【0071】
図9(a)に示すように封止保護膜6までは実施例1と同様に作製し、該封止保護膜6の上に、図9(b)に示すように、遮光層材料19として東京応化工業製ブラックレジストをスピンコーターにて塗布した。膜厚は1μmとした。その後、図9(c)に示すように、画素ピッチ30μmでφ20μmのドットが並んだフォトマスク21を用い、ブラックレジストを露光、現像し、図9(d)に示す、画素に対応して開口を有する遮光層9のパターンを形成した。
【0072】
次に、図9(e)に示すように、紫外線硬化樹脂(東洋インキ製造社製「TYZ74」)をスピンコーターにて塗布し、硬化させた。膜厚は2μmとした。
【0073】
次に、図10(a)に示すように、レンズ材料8として、ポジ型レジストであるAZエレクトロニックマテリアルズ製「AZ10XT」を、スピンコーターにて塗布した。膜厚は10μmとした。
【0074】
実施例1における図8(a)のフォトマスク20を用いる代わりに、凸版印刷製グレースケールマスク22を用い、キヤノン製露光機「MPA−600F」で露光した(図10(b))。
【0075】
これをAZエレクトロニックマテリアルズ製現像液「AZ400K」で現像することで、図10(c)の所望のレンズ形状を得た。この時、図5に示すように、発光領域の中心Aとレンズ8の中心Bを故意に6μmずらすことにより、約20°の斜め方向の輝度を高めることができた。
【0076】
このようにして作製した表示装置は、前記式(1)を満たしており、レンズ8による20°の斜め方向の集光効果が著しく、明るい表示が可能となった。また、同じ輝度で比較した場合は、消費電力が著しく低減できた。
【0077】
(比較例2)
平坦化層7を設けない以外は実施例2と同様にして、表示装置を作製した。本例の表示装置は、20°の斜め方向の輝度が実施例2にくらべ3割ほど低下した。これは封止保護膜6の表面の凹形状で光が20°の斜め方向からずれる割合が多くなったためであった。
【0078】
(実施例3)
図6の構成の表示装置を作製した。封止保護膜6までは実施例1と同様にして作製し、係る封止保護膜6の表面に、MEMS用ネガレジスト(日本化薬社製「SU−8」)を用い、フォトリソグラフィ技術にて土手部材9を設けた。土手部材9は、内径25μm、外形30μm、厚みは5μmとした。
【0079】
その上に平坦化層7を東洋インキ製造社製「TYZ74」を用いて設けた。
【0080】
これとは別に保護部材11として屈折率1.5のガラス基板に、低屈折率樹脂(DIC(大日本インキ)社製「ディフェンサ」)を塗布し、ニッケルメッキでレンズの形状に作製した型を押し当て、先の低屈折率樹脂に凹レンズ形状を作製した。屈折率は1.4であった。これを、レンズ8となる光硬化性のエポキシ樹脂で貼り合せて、表示装置を作製した。エポキシ系樹脂は屈折率は1.6程度であった。この時、実施例2と同様に、発光領域の中心Aとレンズ8の中心Bを故意に6μmずらし、20°の方向の輝度を高めることができた。
【0081】
(実施例4,5、比較例3)
図11の構成の表示装置を作製した。
【0082】
まず、ガラス基板上にTFTと、膜厚300nmの絶縁層と、膜厚1μmの有機平坦化層と、をこの順で積層し、基板1とした。
【0083】
上記基板1の絶縁層と有機平坦化層とに、フォトリソグラフィ工程によりコンタクトホールを形成した。次に、有機平坦化層上に、コンタクトホールと電気的に接続するように、画素単位でアルミニウム(Al)膜とインジウム錫酸化物(ITO)膜とからなる第1電極2を形成した。この第1電極2の膜厚は150nmとした。
【0084】
次に、フォトリソグラフィ工程によりポリイミド製の隔壁3を形成し、画素を形成する部分の周囲を隔壁3で覆った。
【0085】
隔壁3まで形成された基板1を純水により約5分間洗浄した後、この基板1を約200℃で2時間ベークすることで、脱水処理を行った。そして、第1電極2にUV/オゾン洗浄を施した。
【0086】
次に、第1電極2上に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及び電子注入層からなる有機化合物層4を形成した。この有機化合物層4の具体的な形成方法を以下に説明する。
【0087】
先ず、真空蒸着装置内の圧力を1×10-3Paとしてから、第1電極2上にN,N’−α−ジナフチルベンジジン(α−NPD)を成膜し、正孔輸送層を形成した。この正孔輸送層の膜厚は40nmとした。
【0088】
次に、正孔輸送層上に、緑色発光するクマリン色素(クマリン−540)と、トリス[8−ヒドロキシキノリナート]アルミニウム(Alq3)とを、クマリン色素とAlq3との体積比が1.0:99.0となるように共蒸着することで発光層を形成した。この発光層の膜厚は30nmとした。
【0089】
次に、下記式(I)で示される構造のフェナントロリン化合物を成膜し、電子輸送層を形成した。この電子輸送層の膜厚は10nmとした。
【0090】
【化1】
【0091】
次に、電子輸送層上に、炭酸セシウム(2.9体積%)と上記式(I)で示される構造のフェナントロリン化合物とを、炭酸セシウムとフェナントロリン化合物との体積比が2.9:97.1となるように共蒸着することで、電子注入層を形成した。この電子注入層の膜厚は40nmとした。
【0092】
次に、電子注入層まで成膜した基板を、別のスパッタ装置へ移動させ、この電子注入層上にインジウム錫酸化物(ITO)をスパッタ法にて成膜し、第2電極5を形成した。この第2電極5の膜厚は60nmとした。
【0093】
第2電極5まで形成した後、紫外光遮断層28を形成した。紫外光遮断層28は、基板1の略全領域において、次のように形成した。
【0094】
堆積膜形成装置の高周波電極と、この高周波電極に対向する100℃に過熱された接地電極とが基板1の裏面に接するように固定した。そして、SiH4ガス、N2ガス、H2ガスをフローしながら、高周波電極と接地電極との間の反応空間圧力を制御した。次に、高周波電力を高周波電極に供給しながら窒化シリコンからなる紫外光遮断層28を堆積形成した。この紫外光遮断層の膜厚は約1μmとした。
【0095】
次に、真空紫外光CVD法により、基板1の画素エリア全領域を覆うように平坦化層27を形成した。具体的には、先ず堆積膜形成装置に基板1を挿入した。OMCTSガスを、真空状態の堆積膜形成装置内に導入し、圧力を制御した。次に、Xe2エキシマランプ(波長172nmフォトンエネルギー7.2eV)の真空紫外光を石英板を通して、照射して、SiOCHからなる平坦化層27を堆積形成した。この膜厚は1.5μmとした。
【0096】
次に、プラズマCVD法により、基板1の略全領域において、封止保護膜26を形成した。先ず、堆積膜形成装置の高周波電極と、この高周波電極に対向する80℃に過熱された接地電極と、が基板1の裏面に接するように固定した。そして、SiH4ガス、N2ガス、NH3ガスをフローしながら、高周波電極と接地電極との間の反応空間圧力を制御した。次に、高周波電力を高周波電極に供給しながら封止保護膜26を堆積形成した。この封止保護膜26の膜厚は約1μmとした。
【0097】
次に、封止保護膜26の上にレンズ8を形成した。先ず、露点温度60℃の窒素雰囲気下で、粘度3000mPa・sの熱硬化性の樹脂材料(エポキシ樹脂)を精密描画が可能なディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製SHOT MINI SL)を用いて塗布した。樹脂材料を熱硬化する前に、別途用意したレンズ8を成形するための型を、樹脂材料の表面に押し当てた。押し当てる際、型に形成してあるアライメントマークと基板に形成してあるアライメントマークを合わせる事により位置決めを行った。その結果、画素に合わせてレンズ8が形成された。型は、画素ピッチと同じピッチで凹状に窪みが形成されており、その窪みの表面には離形剤としてテフロン(登録商標)系の樹脂がコートされている。窪みの形状、即ちレンズ8の形状は、曲率半径30μmで形成した。ピッチ30μmであるので、レンズ8の頂点から底部の上面までの間の高さは4μm程度になった。高さとは、レンズ部底部と頂上部の差である。エポキシ樹脂は、真空環境下で100℃の温度で15分間加熱して硬化させ、レンズ8を形成した。
【0098】
次に、基板1の外部接続端子とFPC(フレキシブルプリント基板)との間に異方性導電フィルム(ACF)を挟み込んだ後、外部接続端子とFPCとを熱圧着し、表示装置を得た。
【0099】
また、比較例3として、紫外光遮断層28と平坦化層27を設けない以外は上記実施例4と同じ構成の表示装置を作製した。また、比較例4として、紫外光遮断層28,平坦化層27,レンズ8を設けない以外は上記実施例4と同じ構成の表示装置を作製した。さらに、実施例5として、紫外光遮断層28を設けない以外は上記実施例4と同じ構成の表示装置を作製した。
【0100】
図13に、平坦化層27の有無による輝度の違いを示す。図13に示すように、平坦化層27もレンズ8もない比較例4の視野角0°を相対輝度1とし、平坦化層27なしでレンズ8を形成した比較例3と、平坦化層27及びレンズ8を形成した実施例4とを比較した。図13より明らかなように、レンズ8を形成した比較例3の輝度と、形成しない比較例4の輝度とを比較すると、真正面から見た時に1.5倍程度の輝度向上が得られた。また、レンズ8のみを形成した比較例3に対して、さらに平坦化層27を設けた実施例4では相対輝度が大幅に向上した。
【0101】
図14は、紫外線遮断層28の有無を比較した結果である。図14より明らかなように、紫外光遮断層28を設けて平坦化層27を形成した実施例4に対して、紫外光遮断層28を設けずに平坦化層27を形成した実施例5では、正面輝度が10%程度低下した。
【符号の説明】
【0102】
1:基板、2:第1電極、3:隔壁、4:有機化合物層、5:第2電極、6,26:封止保護膜、7,27:平坦化層、8:集光レンズ、28:紫外光遮断層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に配置された、少なくとも発光層を含む有機化合物層と、を有する有機EL素子が複数配置されてなり、前記複数の有機EL素子が隔壁によって分離され、前記有機EL素子及び前記隔壁上に封止保護膜が形成されており、前記基板とは反対側に集光レンズが形成された表示装置において、
前記隔壁によって前記第2電極表面が段差を有しており、前記段差が、前記第2電極と前記集光レンズとの間に形成された平坦化層によって平坦化されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記平坦化層が、前記封止保護膜と前記集光レンズとの間に形成されている請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記平坦化層の屈折率が前記集光レンズよりも前記封止保護膜の屈折率に近い請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記平坦化層が前記第2電極と前記封止保護膜との間に形成されている請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記平坦化層が真空紫外光CVD法によって形成されている請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記平坦化層と前記第2電極との間に、200nm以下の波長の紫外光を吸収する紫外光遮断層を有する請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記隔壁の開口部の開口径をL、前記隔壁の膜厚をD、前記封止保護膜の膜厚をT、前記隔壁のテーパー部の幅をAとした時、下記(1)式を満たす請求項1乃至6のいずれか1項に記載の表示装置。
0.1<(T×D)/(L×A)<1 (1)
【請求項1】
第1電極と、第2電極と、前記第1電極と第2電極との間に配置された、少なくとも発光層を含む有機化合物層と、を有する有機EL素子が複数配置されてなり、前記複数の有機EL素子が隔壁によって分離され、前記有機EL素子及び前記隔壁上に封止保護膜が形成されており、前記基板とは反対側に集光レンズが形成された表示装置において、
前記隔壁によって前記第2電極表面が段差を有しており、前記段差が、前記第2電極と前記集光レンズとの間に形成された平坦化層によって平坦化されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記平坦化層が、前記封止保護膜と前記集光レンズとの間に形成されている請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記平坦化層の屈折率が前記集光レンズよりも前記封止保護膜の屈折率に近い請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記平坦化層が前記第2電極と前記封止保護膜との間に形成されている請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記平坦化層が真空紫外光CVD法によって形成されている請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記平坦化層と前記第2電極との間に、200nm以下の波長の紫外光を吸収する紫外光遮断層を有する請求項5に記載の表示装置。
【請求項7】
前記隔壁の開口部の開口径をL、前記隔壁の膜厚をD、前記封止保護膜の膜厚をT、前記隔壁のテーパー部の幅をAとした時、下記(1)式を満たす請求項1乃至6のいずれか1項に記載の表示装置。
0.1<(T×D)/(L×A)<1 (1)
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−114772(P2013−114772A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257208(P2011−257208)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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