説明

表示装置

【課題】有機EL素子を用いた表示装置において、金属を接合部材として用いることによって外部の水分や酸素の影響を防止すると同時に、金属接合部に起因する寄生容量の発生を防止する。
【解決手段】有機EL素子を形成した第1基板26と、第2基板27とを、共通電極11を介して金属接合部25により接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を備えた表示装置に関し、特に、空気中の水蒸気や酸素の影響を防止した表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、第1電極と第2電極との間に薄膜からなる発光層を含む有機化合物層を狭持してなり、電流の注入によって高輝度発光が可能な素子として知られている。一方で、空気中に放置しておくと空気中の水分(水蒸気)或いは酸素により、有機化合物層が形成された領域に斑点状の非発光部(ダークスポット)が発生し、さらにそれが拡大するという課題があることが知られている。このような欠陥が発生する理由は、有機化合物層上に形成された電極層にピンホール等の欠陥があり、ピンホールを介して水分或いは酸素が侵入するためである。このため水分或いは酸素の侵入を防止するために封止しておく必要がある。
【0003】
このような封止の問題を解決すべく、従来の表示装置では取出し電極を除く有機化合物層の形成された領域を覆い隠す封止部材と基板とを有機材料からなる接着剤を用いて接着し、空気中の水分や酸素を含まない機密状態を構成している。一般に封止部材は透湿性の低い無機材料を適用し、例えば無アルカリガラス等が適用される。
【0004】
しかしながら、有機材料からなる接着剤では十分に水分の浸透を遮断することはできない。有機EL素子は微量の水分に対しても非常に敏感であり、表示装置の信頼性を保証するために必要な期間(例えば、60℃90%RH環境で1000時間)に渡って侵入する水分及び酸素を防止する必要がある。
【0005】
このような問題に対し、特許文献1には、接着部に金属接合を適用する封止方法が知られている。この金属によって接合することで微量の水分をほぼ完全に遮断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−219492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した金属を接合部材として適用する場合、表示装置の一部に駆動用配線或いは駆動用回路等の情報信号線と接合用金属が絶縁層を挟んで重なる領域が形成され、そこで寄生容量を作ってしまう課題がある。
【0008】
上記の寄生容量が大きくなると、抵抗と容量の積で決まる電気の時定数の式に則り、有機化合物層に流れる電流を制御するための容量への書き込み時間が長くなる。一般的な回路設計においては、1H時間内に十分にデータ信号が立ち上がる(例えば99.6%以上)ように設計されるが、寄生容量が大きくなると1H時間内にデータ信号が立ち上がりきらなくなる。その結果として、所望の階調とは異なる情報が上記容量に保持され、所望の発光状態とは異なる輝度で発光する表示不良が発生する。表示装置の高精細化に伴ってデータ書き込み時間が短くなる場合、また取出し配線が細く、長くなることにより配線抵抗が増加する場合、上記寄生容量の影響が深刻化する問題がある。
【0009】
特許文献1などで知られる金属を接合部材として用いた封止形態においては、金属接合部は封止機能を果たすものとしてのみ説明され、特に金属接合部の電位に関する記載がない。このことは、公知の金属接合部の電位はフロートとして扱われていると解釈される。このような場合、金属接合部の電位変動により、上記寄生容量を介して制御線の電位が変動し、表示ムラ等の表示不良を引き起こす。例えば外的な要因に伴って接合部の金属電位が変動し、寄生容量が意図せず増大する方向に変動するリスクを持っている。このような点で実用上の不具合を招きかねない問題がある。
【0010】
また上記に付随する課題として、表示領域の周囲(以下、額縁領域と記載)に配置される金属からなる接合部材に給電するには、額縁領域に給電パッドを配置する必要がある。しかし、このような給電パッドの面積に相当する領域を額縁領域に追加する場合、額縁領域を狭く設計することに対しての制約事項になる課題がある。
【0011】
またさらに、表示領域の近くに金属接合部を配置する表示装置の構成の場合、表示領域に配置される有機EL素子の電極と金属接合部の電位が異なる場合、互いの電位差による弊害が危惧され、例えば電極の腐食等の表示装置の信頼性問題が懸念される。
【0012】
本発明の課題は、有機EL素子を用いた表示装置において、金属を接合部材として用いることによって外部の水分や酸素の影響を防止すると同時に、金属接合部に起因する寄生容量の発生を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1基板と、前記第1基板の表示領域に、画素単位にパターン化された画素電極と共通電極と有機化合物層とを備える有機EL素子と、前記第1基板と対向する前記第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とを金属で接合する金属接合部と、を備える表示装置であって、前記金属接合部と前記共通電極が導通するように接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金属を接合部に用いた密閉性に優れた封止形態を適用した場合において、駆動用配線或いは駆動用回路に形成される寄生容量の不安定さを解消することができる。また、金属接合部に有機EL素子を構成する共通電極と同じ電位を供給することで、給電部を共通化することが可能となり、省スペース化を図ることができ、電位差による弊害リスクも解消することができる。さらに、有機EL素子を構成する電極のうち、金属接合部と導通するように連結される共通電極が透明導電膜(例えば、ITO)のように高抵抗膜の場合、共通電極面内に生じる電圧降下を低減化することができ、表示性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の表示装置の一例を示す概略平面図である。
【図2】図1のA−A’で示される概略断面図である。
【図3】本発明の表示装置の他の構成を示す概略断面図である。
【図4】図1のB−B’で示される概略断面図である。
【図5】本発明の表示装置の他の構成を示す概略断面図である。
【図6】本発明の表示装置の1画素の等価回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
図1に、本発明の表示装置の好ましい一実施形態の概略平面図を示す。係る表示装置はトップエミッション型である。図1で示す表示装置において、第1基板26と第2基板27とが対向配置されており、接合部材として金属が用いられている。第1基板26の第2基板27に対向する面上の表示領域10には複数の画素が構成され、各画素に対応してTFT(薄膜トランジスタ)を備えている。画素電極は画素単位でパターン化されて基板上に周期的に配列されており、上記TFTのドレイン電極と導通するように電気的に接続され、それぞれの画素電極の周囲に絶縁性を有するバンクが形成されている。各画素の画素電極上の発光領域はバンクで囲まれた領域で規定される。尚、ここで説明する画素とは、独立して光を発光することのできる領域に相当する。また発光のオン、オフにはTFTのスイッチング機能を利用するものである。
【0018】
図2に、図1中のA−A’で示された概略断面図を示した。ここに示すトップエミッション型の表示装置を構成している画素は、反射性を有する画素電極21と透光性或いは半透光性を有する共通電極11との間に発光材料を含む有機化合物層22が形成された構造を備えている。尚、以下の説明においては、画素電極21をアノード電極と、共通電極をカソード電極として説明する。有機化合物層22は、アノード電極21側から正孔輸送層、発光層、電子輸送層の順に積層され、その上にカソード電極11が形成されている。尚、図中の24a,24bは絶縁層である。
【0019】
図1で示すように、有機化合物層22を含む表示領域10を覆い、少なくとも端子パッド16を露出するように配置された第2基板27を、その周囲に設けている金属接合部25(破線で囲む領域)により第1基板26と接合する。これにより、第1基板26と第2基板27の間に機密性の高い密閉空間を形成している。
【0020】
金属接合部25の断面構成を示した図2によれば、表示領域10の画素回路17及びその周囲(図中右側)のゲート駆動回路12の外側に給電パッドが13が配置され、該給電パッド13にカソード電極11が導通するように電気的に接続されている。そして、カソード電極11を介して金属接合部25が第2基板27と第1基板26とを接合し、表示領域に機密性の高い密閉空間を形成している。
【0021】
このようにカソード電極11を給電パッド13の電極面と金属接合部25との密着層として用いることで、接合工程までの間に給電パッド13の電極面の暴露を防止することができ、金属接合部25の接合不具合を抑制することが可能になる。例えばカソード材料として一般に適用される透明導電膜であるITO、IZO等は密着層として好適である。
【0022】
尚、図2ではカソード電極11の端部が露出しない形態をとっているが、図3で示すようにカソード電極11端部を露出させてもかまわない。カソード電極11の透湿性は、材料或いは製法によって異なってくるが、図3のように端部を露出させる場合には、Ag、Al或いはそれらを含む薄膜合金等の透湿性の低い材料が好適である。また、カソード電極11の透湿性が問題となるような場合には、図2のように、カソード電極11の端部が露出しない形態をとることが好ましい。
【0023】
図4は、図1中のB−B’で示された概略断面図である。係る箇所ではカソード電極11上に金属接合部25が形成されている。本例では、図2に示したように、給電パッド13により金属接合部25の電位を設定しているが、金属接合部25の電位は図4のように直接カソード電極11を経由して設定することも可能である。またカソード電極11の周囲と金属接合部25とを導通するように電気的に接続することにより、カソード電極11で生じる電圧降下を抑制することが可能となる。これにより表示不良の一つであるシェーディングを低減化することができる。或いはカソード電極11をより薄膜化することが可能となり、より透過率を高められる等の表示性能を向上することができるようになる。
【0024】
尚、図4ではカソード電極11の端部を露出させていないが、図5で示すようにカソード電極11端部を露出させた形態をとることも可能である。前記図2,図3と同様に、カソード電極11に適用される材料の透湿性が低い場合には図5の形態でも良く、係る透湿性が問題となる場合には、図4の形態をとることが好ましい。
【0025】
尚、ここでは説明を簡便にするため、有機化合物層20の構成としては正孔輸送層、発光層、電子輸送層の3つの層について記載しているが、本発明は有機化合物層20の積層構成或いはそれらの組み合わせを限定するものではない。従って、公知の有機化合物層を構成する複数の有機化合物層の組み合わせを用いることができる。例えば、正孔注入層、電子注入層、正孔ブロック層、電子ブロック層等の有機化合物層を各層の役割に応じて必要な層間に備えることができる。
【0026】
また以上の説明においては、金属接合部25とカソード電極11或いはカソード電極11用の給電パッド13とが接続される構成について説明をしたが、本発明においては、カソード電極11と金属接合部25とが導通するように電気的に接続されていればよい。よって、額縁領域への制約が気にならない場合には、金属接合部25の給電パッドを別途備えていても良い。
【0027】
また上記の説明では、画素回路17、ゲート駆動回路12、或いは給電パッド等の配線及び回路構成を限定するものではなく、同様の機能を有する公知の構成を任意に適用することができる。
【0028】
図6に本発明の表示装置の画素の等価回路の一例を示す。Nライン目の走査信号線61に選択信号が入力されると、水平走査時間(1H)の間スイッチ62がオン状態になる。それと同時に情報信号線63へ所望の輝度情報に応じた入力アナログ情報(データ信号)が入力されると、1H時間中で容量64に書き込まれる電圧値で確定され、スイッチ64のオン状態が決まる。このオン状態が保持されることによって電流供給ライン66から有機EL素子67へ電流が供給され、次の1H時間までの間、所望の発光状態が維持される。図6の等価回路に示す寄生容量68は、情報信号線63と金属接合部が絶縁層を挟んで重なる領域で形成される容量に相当する。本発明によれば、寄生容量68を形成する金属接合部の電位(Vmetal)は固定され、有機EL素子を構成するカソード電極の電位(Vcathode)と同じとするため、寄生容量68を安定化することができる。つまり想定以上の寄生容量68の変動を防止できる構成となっている。
【0029】
以下、本発明の表示装置の製造方法について一例を説明する。
【0030】
第1基板26上には、基板からの不純物の侵入を防ぐためにSiNx、SiO2を積層したバッファ層が全面に形成されている。バッファ層の上には各画素で有機EL素子を制御するためのTFT及び保持容量が形成されている。表示領域10の周辺(額縁領域)には各画素にデータ信号や走査信号を供給するためのゲート駆動回路12、データ駆動回路15等のTFT及び配線が複数備えられている。
【0031】
尚、本発明に係る表示装置には、公知のTFTを適用することが可能である。例えば次のようなTFTを適用することができる。
【0032】
第1基板26上に形成されたバッファ層上には、半導体層が形成され、これを覆ってゲート絶縁層が形成されている。ゲート絶縁層の上にはゲート電極が形成され、半導体層のゲート電極直下領域がチャネル領域であり、チャネル領域の両側はpチャネル型の場合はB等がドープされ、nチャネル型の場合はP等がドープされ、ソース及びドレイン領域が形成されている。ゲート電極の上には、ゲート電極を含む基板全面を覆うように層間絶縁層が形成されている。
【0033】
また層間絶縁層とゲート絶縁層を貫通したコンタクトホールが形成されている。係るコンタクトホール内にはソース電極、ドレイン電極が形成され、コンタクトホールの下部に露出した半導体層のソース領域にはソース電極、ドレイン領域にはドレイン電極がそれぞれ接続されている。またドレイン電極と同層で給電パッド13を形成する。さらに層間絶縁層、ドレイン電極、ソース電極を覆って絶縁層24bを有する。絶縁層24bには貫通したコンタクトホールが形成されている。後述するように、係るコンタクトホール上には画素電極21が形成され、コンタクトホール下部に露出したドレイン電極に接続される。また絶縁層24bを貫通したその他のコンタクトホールでカソード電極への給電パッド13を露出させる。さらに平坦化層23が基板全面に形成されている。平坦化層23には貫通したコンタクトホールが形成される。係るコンタクトホールは絶縁層24bと重なる位置に形成され、コンタクトホール下部に露出したドレイン電極に画素電極21が接続される。また給電パッド13の露出した部分には平坦化層23を設けない。
【0034】
さらに絶縁性を有する平坦化層23の上には、画素毎にパターニングされた画素電極21が形成されており、有機EL素子のアノード電極として機能する。画素電極21としては、例えばITO、IZOを使用することができる。またトップエミッション型の有機EL素子においては、画素電極21と平坦化層23との間に反射電極としてAg、Al或いはそれを含む合金を使用することができる。尚、画素電極21は平坦化層23に形成されたコンタクトホールを介してTFTのドレイン電極と電気的に接続されている。また図示はしないが、画素電極21のエッチングプロセスで給電パッド13にダメージが生じる場合には、給電パッド13上に画素電極21と同層の材料をパターニングしても良い。
【0035】
以下では、有機化合物層22の形成工程以降について説明を続ける。
【0036】
先ず真空雰囲気下でベーク処理を行い、酸素プラズマによって基板の前処理を行う。次に、真空雰囲気を維持した状態で、画素電極21上に正孔輸送層、発光層、電子輸送層からなる複数の有機化合物層の蒸着を順次行う。特に発光層をRGB画素ごとに塗り分ける工程では、各色の画素に対応した位置に開口を備えた高精細蒸着マスクを用いて、発光層をパターニングする。
【0037】
上記した有機化合物層22を形成した後は、有機化合物層22の上に透光性導電層を形成して共通電極11とする。共通電極11は有機EL素子のカソード電極として機能する。透光性導電層としては、ITO、IZOの透明導電膜、或いはAg薄膜による半透過膜を共通電極11として適用することができる。尚、共通電極11は絶縁層24bのコンタクトホールの下部で露出した給電パッド13上にも形成される。
【0038】
次に、第2基板27となるガラス基板を金属を用いて接合する封止工程について説明する。
【0039】
第1基板26上に形成された有機EL素子を構成する有機化合物層22は、100℃近傍に転移温度を有する材料を含む場合があるため、接合工程における温度上昇には十分な配慮が必要であり、好ましくは低融点金属を選択するのが良い。使用する低融点金属としては、In、Ga、或いはその合金を使用することが可能である。尚、有機化合物層22をその転移温度以上に加熱した場合には、量子効率の低下、或いは非発光化する危険性がある。このため使用する金属材料の選定においては、有機化合物層の限界温度を超えない範囲で接合可能なものを選ぶ必要がある。
【0040】
また金属接合部を形成する工程では、まず第2基板27の所定の位置に低融点金属からなる金属線をパターニングし、その後、第1基板26にアライメントして貼り合せ、加熱することで接合する方法をとることができる。
【0041】
金属線のパターニング方法としては、半田を使用する方法、めっきを使用する方法が挙げられる。半田を用いると安価な工程で金属線を形成することができ、一方めっきを使用する場合には、金属線を細線化する或いは任意のパターンで形成することができる。或いは金属線のパターニング方法として、フォトリソグラフィ、エッチング、転写法等その他公知の手法を適用することが可能である。
【0042】
加熱する方法としては、オーブン或いはホットプレート等を用いて基板全体を加熱することで金属を溶融して接合する方法や、レーザー等を用いて局所的な加熱により金属を瞬間的に溶融して接合する方法がある。或いは、それらを組み合わせ、金属溶融以下の温度まで全体的に加熱し、局所的に加熱する個所の溶融前後の温度差を小さくして熱的な衝撃を緩和することで歪を生じにくくする方法などがある。さらに接合時には、基板に加圧し、押しつけた状態で金属を溶融して接合するようにしても良い。
【0043】
また溶融のために加熱した後の除熱過程においては、できるだけ急激な冷却を避け、内部歪による接合不良を起こさないようにするのが良い。
【0044】
また、第2基板27を第1基板26に貼り合せる前工程として、第1基板26上の接合部表面を清浄化するのが好ましく、例えば発光部をマスキングしてArプラズマに曝す方法を用いることができる。
【0045】
以上に説明した製造方法により、金属を接合部に用いて密閉性に優れた封止形態を適用した場合において、駆動用配線或いは駆動用回路に形成される寄生容量の不安定さを解消することができる。また、金属接合部に有機EL素子を構成する共通電極と同じ電位を供給することで、給電部を共通化することが可能となり、省スペース化を図ることができる。また電位差による弊害リスクを解消できる。さらに、有機EL素子を構成する電極のうち、金属接合部と導通するように電気的に連結される共通電極が透明導電膜(例えば、ITO)のように高抵抗膜の場合、共通電極面内に生じる電圧降下を低減化することができ、表示性能を高めることができる。
【実施例】
【0046】
(実施例1)
カソード電極11の端部が図3,図5に示すように露出した以外は図1と同じ構成の表示装置を作製した。
【0047】
TFT、画素電極であるアノード電極21が形成された第1基板26を真空雰囲気下でベーク処理を行い、酸素プラズマによって基板の前処理を行った。その後、真空雰囲気を維持した状態で約80nmの膜厚を有する正孔輸送層を表示領域10の全面に形成した。続いて赤色発光層を形成する成膜室に基板を搬送し、ストライプ開口を有する蒸着マスクと基板26とのアライメント工程後、赤色発光層を成膜した。緑色発光層、青色発光層も同様に成膜した。尚、発光層以外の有機化合物層22は、共通層として各成膜室にて形成される。上記した有機化合物層22を形成した後、有機化合物層22の上に膜厚25nmの半透過性のAg合金薄膜からなる導電層を形成して共通電極であるカソード電極11とした。
【0048】
続いて、第2基板27のガラス基板を以下の手順により低融点金属により第1基板26に接合して封止した。適用した低融点金属はインジウムである。金属接合部25の構成は、銀とインジウムの積層体となっている。先ず、第2基板27のガラス基板上に銀ペーストをスクリーン印刷によりパターニングし、接合領域に対応する銀の枠線を形成した。銀ペーストはパターニング後に焼成して硬化した。次に銀枠線を電極とした電解めっき法により、銀枠線上に約10μm厚のインジウム線を堆積した。その後、基板を洗浄して、乾燥させ脱水した。
【0049】
次に露点−80℃以下の窒素雰囲気を維持できる環境下で作業を実施した。上記の如く共通電極11まで形成した第1基板26と、インジウムパターンを形成した第2基板27とをそれぞれ対向した状態でアライメントし、密着させた。次にアライメント後の状態を維持し密着させたまま、インジウムパターンに沿って半導体レーザーを照射してインジウムを溶着した。尚、半導体レーザーの出力及び照射時間の設定は、照射した瞬間のインジウムの温度が約200℃になるようにした。これにより約10μm厚のインジウムが十分に溶融して、第1基板26上のカソード電極11と接合し、図3で示す金属接合部25を有する封止構造が形成された。尚、表示領域10の温度は瞬間的に約100℃程度まで上昇したが、発光特性への影響はなかった。また図1中のB−B’断面の構成は図5で示すように、カソード電極11の端部が露出した形態とした。
【0050】
以上で説明してきたトップエミッション型の表示装置は、機密性に優れ、また金属接合部25がカソード電極11と同じ電位となるため、長期間の表示評価において寄生容量が不安定化することによる不具合は発生しなかった。また金属接合部25への給電はカソード電極11の給電パッド13を兼用するため、新たに額縁領域を拡張することをしなかった。さらにカソード電極11の周囲に金属接合部25を配置することで、カソード電極面内での電圧降下を抑制することができ、シェーディングを生じることはなかった。
【0051】
(実施例2)
本実施例にかかる表示装置は、有機化合物層22を成膜する工程まで実施例1と同様にして形成した。その後、有機化合物層22の上に膜厚50nmの透過性のITO薄膜からなる導電層を形成してカソード電極11とした。尚ITOの成膜範囲は封止後に膜端部が露出しないよう図2及び図4で示す構成をとった。
【0052】
続いて、第2基板27の無アルカリガラスを以下の手順により低融点金属により接合して封止した。適用した低融点金属はインジウムである。露点−80℃以下の窒素雰囲気を維持できる環境下において、洗浄した第2基板27上にインジウムを超音波ディスペンス法により塗布した。塗布されたインジウムの線幅を0.5mm程度にするため、超音波こての先太さを0.5mmとし、こて先の温度は約250℃で制御した。その後、実施例1と同様にしてカソード電極11まで形成した第1基板26と、インジウムパターンを形成した第2基板27とを接合して封止構造を完成させた。
【0053】
以上で説明してきたトップエミッション型の表示装置は、機密性に優れ、また金属接合部25がカソード電極11と同じ電位となるため、長期間の表示評価において寄生容量が不安定化することによる不具合は発生しなかった。特に防湿性の低い透明導電膜をカソード電極11に用いたが、電極端部の露出をさせないことで、カソード電極11を介して外部から水分が侵入することはなかった。また金属接合部25への給電はカソード電極11の給電パッド13を兼用するため、新たに額縁領域を拡張することをしなかった。さらにカソード電極11の周囲に金属接合部25を配置することで、カソード電極11面内での電圧降下を抑制することができ、シェーディングを生じることはなかった。
【符号の説明】
【0054】
10:表示領域、11:共通電極(カソード電極)、21:画素電極(アノード電極)、22:有機化合物層、25:金属接合部、26:第1基板、27:第2基板、67:有機EL素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、前記第1基板の表示領域に、画素単位にパターン化された画素電極と共通電極と有機化合物層とを備える有機EL素子と、前記第1基板と対向する前記第2基板と、前記第1基板と前記第2基板とを金属で接合する金属接合部と、を備える表示装置であって、
前記金属接合部と前記共通電極が導通するように接続されていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記共通電極は、前記金属接合部と第1基板との間に配置され、密着層を兼ねることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記共通電極の端部は、前記金属接合部の金属で覆われていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−115019(P2013−115019A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263196(P2011−263196)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】