説明

表示装置

【課題】 異なる色を発する有機EL素子に共通に形成された発光層を有する表示装置において、電荷阻止層を発光層間に設けずに、各有機EL素子を効率よく発光させる。
【解決手段】 第1の有機EL素子3Gの第1の発光層13Gが第2の有機EL素子3Rに共通に形成され、第2の有機EL素子3Rの第2の発光層13Rが第1の発光層13Gに接して陰極15側に配置され、第1の発光層は、ホスト材料と第2の発光層に正孔を輸送するためのアシストドーパント材料とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機EL素子を備えた表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年盛んに開発されている有機EL素子は、陽極と、少なくとも発光層を含む有機化合物と、陰極と、が積層された構成を成している。また、赤、緑、青の三色の有機EL素子を用いた多色表示装置では、赤、緑、青それぞれの発光層が各色の画素形状に合わせたパターニング用の金属マスクを用いて真空蒸着されるのが一般的な製造方法である。
【0003】
表示装置における画素サイズの微細化が進み、画素形状に合わせたパターニング用の金属マスクも高精細なものになっている。その結果、高精細な金属マスクの製造および維持管理が困難になっている。
【0004】
特許文献1では、青色発光層を画素領域の全面に渡って形成し、赤発光層および緑色発光層は青色発光層の上層に積層して形成される構成が開示されている。青色発光層に関しては高精細マスクを使用することなく画素領域の全面に形成することで、パターニング用の金属マスクの使用回数を減らし、且つ、発光効率の低い青色の画素面積を大きくすることにより、表示装置の寿命を改善することができるとしている。
【0005】
上記構成では、赤色および緑色の有機EL素子において、画素領域全面に形成された青色発光層は発光させずに、積層された赤色および緑色発光層のみを発光させる必要がある。しかし、赤色発光層や緑色発光層の構成によっては、赤色発光層、緑色発光層内を電子が通り抜けて、青色発光層まで電子が漏れ、青色発光層が発光してしまい、赤色発光層および緑色発光層を効率よく発光させることが困難な場合がある。
【0006】
また、特許文献1では、赤色発光層と青色発光層の間、および緑色発光層と青色発光層の間に電子阻止層を設けてもよいことが開示されているが、電子阻止層などの電荷阻止層を設ける構成では素子の駆動電圧が上昇してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−066862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、異なる色を発する有機EL素子に共通に形成された発光層を有する表示装置において、電荷阻止層を発光層間に設けずに、各有機EL素子を効率よく発光させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの形態は、第1の色を発する第1の有機EL素子と、前記第1の色とは異なる第2の色を発する第2の有機EL素子と、を有し、前記有機EL素子は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間にある発光層とを備えている表示装置であって、前記第1の有機EL素子の第1の発光層は、前記第2の有機EL素子に共通に形成されており、前記第2の有機EL素子の第2の発光層は、前記第1の発光層に接しかつ、前記第1の発光層よりも前記陰極側に形成されており、前記第1の発光層は、ホスト材料と、前記第2の発光層に正孔を輸送するアシストドーパント材料と、を含み、前記第2の有機EL素子は、下記の関係式(1)乃至(3)を満たすように構成されていることを特徴とする。
|HOMO|>|A| ・・・(1)
|HOMO|>|HOMO| ・・・(2)
|A|+|HOMO|−|HOMO|<|HOMO|<|HOMO| ・・・(3)
ここで、HOMOは前記第1の発光層に含まれる前記ホスト材料のHOMO準位エネルギー、HOMOは前記第1の発光層に含まれる前記アシストドーパント材料のHOMO準位エネルギー、HOMOは前記第2の発光層のHOMO準位エネルギー、Aは前記第1の発光層と前記陽極とが接する場合における前記陽極の仕事関数、または前記第1の発光層と前記陽極との間に前記第1の発光層と接して有機化合物層が配置された場合における前記有機化合物層のHOMO準位エネルギーを表している。
【0010】
また、本発明の別の形態は、第1の色を発する第1の有機EL素子と、前記第1の色とは異なる第2の色を発する第2の有機EL素子と、を有し、前記有機EL素子は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間にある発光層とを備えている表示装置であって、前記第1の有機EL素子の第1の発光層は、前記第2の有機EL素子に共通に形成されており、
前記第2の有機EL素子の第2の発光層は、前記第1の発光層に接しかつ、前記第1の発光層よりも前記陽極側に形成されており、前記第1の発光層は、ホスト材料と、前記第2の発光層に電子を輸送するアシストドーパント材料と、を含み、前記第2の有機EL素子は、下記の関係式(4)乃至(6)を満たすように構成されていることを特徴とする。
|LUMO|<|B| ・・・(4)
|LUMO|<|HOMO| ・・・(5)
|LUMO|<|LUMO|<|B|+|LUMO|−|LUMO| ・・・(6)
ここで、LUMOは前記第1の発光層に含まれる前記ホスト材料のLUMO準位エネルギー、LUMOは前記第1の発光層に含まれる前記アシストドーパント材料のLUMO準位エネルギー、LUMOは前記第2の発光層のLUMO準位エネルギー、Bは前記第1の発光層と前記陰極とが接する場合における前記陰極の仕事関数、または前記第1の発光層と前記陰極との間に前記第1の発光層と接して有機化合物層が配置された場合における前記有機化合物層のLUMO準位エネルギーを表している。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、異なる色を発する有機EL素子に共通に形成された発光層を有する表示装置において、電荷阻止層を発光層間に設けずに、各有機EL素子を効率よく発光させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る表示装置の一例を示す模式図
【図2】第1の実施形態に係る各発光層のエネルギーバンドを示す模式図
【図3】第2の実施形態に係る表示装置の一例を示す模式図
【図4】第2の実施形態に係る各発光層のエネルギーバンドを示す模式図
【図5】第3の実施形態に係る表示装置の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の表示装置について、実施形態を挙げて図面を参照して説明する。尚、本明細書で特に図示又は記載されない部分に関しては、当該技術分野の周知又は公知技術を適用する。また以下に説明する実施の形態は、発明の一つの実施形態であって、これらに限定されるものではない。
【0014】
特に、以下の実施形態では、第1の色、第2の色、第3の色をそれぞれ青色、赤色、緑色としている。また、第1の有機EL素子、第2の有機EL素子、第3の有機EL素子をそれぞれ、青色の有機EL素子、赤色の有機EL素子、緑色の有機EL素子としている。また、第1の発光層、第2の発光層、第3の発光層をそれぞれ青色の発光層、赤色の発光層、緑色の発光層としている。しかし、本発明は、この構成に限られるものではない。
【0015】
(第1の実施形態)
図1(a)は、第1の実施形態に係る表示装置を示す斜視模式図である。本実施形態の表示装置は、有機EL素子を備える画素1を複数有している。そして、複数の画素1はマトリックス状に配置され、表示領域2を形成している。なお、画素とは1つの発光素子の発光領域に対応した領域を意味している。本実施形態の表示装置では、発光素子は有機EL素子であり、画素1のそれぞれに1つの色の有機EL素子が配置されている。有機EL素子の発光色としては、赤色、緑色、青色、黄色、シアン、マゼンタ、白色などが挙げられる。また、本実施形態の表示装置には、発光色の異なる複数の画素(例えば赤色を発する画素、緑色を発する画素、及び青色を発する画素)からなる画素ユニットが複数配列されている。画素ユニットとは、各画素の混色によって所望の色の発光を可能とする最小の単位を示す。
【0016】
図1(b)は、図1(a)のA−B線における部分断面模式図である。画素1は、基板10上に、陽極11と、正孔輸送層12と、有機化合物を含む発光層13R(13G,13B)と、電子輸送層14と、陰極15と、を備える有機EL素子3R(3G,3B)からなる。また、有機EL素子3Rは、赤色を発する有機EL素子であり、素子内の赤色発光層13Rが発光する。同様に、有機EL素子3G,3Bは、それぞれ緑色を発する有機EL素子、青色を発する有機EL素子であり、それぞれ素子内の緑色発光層13G、青色発光層13Bが発光する。
【0017】
陽極11は隣の画素の陽極11と分離されて形成されており、陰極15との異物によるショートを防ぐために、画素(より具体的には、陽極11)間に絶縁層20が設けられている。また、正孔輸送層12、電子輸送層14、陰極15は、図1(b)のように隣の画素と共通で形成されていてもよいし、画素毎にパターニングされて形成されてもよい。
【0018】
各有機EL素子は、外部の酸素や水分が侵入しないように、封止キャップ30によって封止されている。また、封止キャップ30の内側には、乾燥剤が入れられている。
【0019】
本実施形態では、青色の有機EL素子3Bの青色発光層13Bが、有機EL素子3R,13Gの領域にわたって一体で形成されており、いわゆる青色発光層13Bはコモン発光層となっている。この構成により、発光層をパターニングする高精細な金属マスクの使用回数を減らすことができる。
【0020】
さらに、赤色の有機EL素子3Rにおいては、赤色発光層13Rが青色発光層13Bに接して、陰極15側に配置されている。同様に、緑色の有機EL素子3Gにおいては、緑色発光層13Gが青色発光層13Bに接して、陰極15側に配置されている。つまり、本実施形態では、赤色発光層13Rとコモン発光層である青色発光層13Bとの間、緑色発光層13Gとコモン発光層である青色発光層13Bとの間に電荷阻止層を設けない構成である。このため、有機EL素子の駆動電圧を大きくすることがない。
【0021】
さらに、電荷阻止層を設けない構成でも、赤色の有機EL素子3R、緑色の有機EL素子3Gを効率よく発光させるために、青色発光層13Bの構成を工夫している。すなわち、本実施形態では、青色発光層13Bは、ホスト材料と、発光層13R,13Gに正孔を輸送するためのアシストドーパント材料と、を含んでいる。さらに、赤色の有機EL素子3R(もしくは緑色の有機EL素子3G)は、下記の関係式(1)乃至(3)を満たすように構成されている。
|HOMO|>|A| ・・・(1)
|HOMO|>|HOMO| ・・・(2)
|A|+|HOMO|−|HOMO|<|HOMO|<|HOMO| ・・・(3)
ここで、HOMOは青色発光層13Bに含まれるホスト材料のHOMO(最高被占軌道)準位エネルギー、HOMOは青色発光層13Bに含まれるアシストドーパント材料のHOMO準位エネルギーを表している。また、HOMOは赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のHOMO準位エネルギーを表している。そして、Aは青色発光層13Bと陽極11とが接する場合における陽極11の仕事関数、または青色発光層13Bと陽極11との間に青色発光層13Bと接して有機化合物層が配置された場合における有機化合物層のHOMO準位エネルギーを表している。
【0022】
なお、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のHOMO準位エネルギーとは、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)に含まれる材料のHOMO準位エネルギーの中で、絶対値が最も小さいHOMO準位エネルギーのことである。例えば、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)が発光材料のみからなる場合は、その発光材料のHOMO準位エネルギーのことである。また、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)がホスト材料と発光ドーパント材料からなる場合は、ホスト材料と発光ドーパント材料のHOMO準位エネルギーのうち絶対値が小さい方のHOMO準位エネルギーが赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のHOMO準位エネルギーである。有機化合物層のHOMO準位エネルギーとは、この有機化合物層が1つの材料のみからなる場合はその材料のHOMO準位エネルギーであり、2つ以上の材料から成る場合には最も成分の多い材料のHOMO準位エネルギーのことである。
【0023】
図2を用いて上記の関係式について説明する。図2は、関係式(1)乃至(3)を満たす青色発光層13Bと赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のエネルギーバンドを示している。図2では、青色発光層13Bと陽極11との間に青色発光層13Bと接して正孔輸送層12が配置された場合を示しており、A=HOMOHTLである。
【0024】
赤色の有機EL素子3R(もしくは緑色の有機EL素子3G)が効率よく発光するためには、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)正孔と電子を効率よく注入される必要がある。ここで、図2(a)で示すように、青色発光層13BのHOMO準位エネルギーの絶対値が正孔輸送層12のHOMO準位エネルギーの絶対値、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のHOMO準位エネルギーの絶対値よりも大きい場合を考える(|HOMO|>|A|、|HOMO|>|HOMO|)。この場合、青色発光層13Bと正孔輸送層12の界面には、正孔注入障壁(青色発光層13Bと正孔輸送層12のHOMO準位エネルギーの差)が生じてしまい、正孔が青色発光層13B内に注入されにくい。その結果、正孔が青色発光層13B内を輸送されて赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)に注入されにくくなる。このため、赤色の有機EL素子3R(もしくは緑色の有機EL素子3G)が効率よく発光できない。
【0025】
これに対して、正孔を輸送するためのアシストドーパント材料を青色発光層13Bに混合させることにより、正孔が青色発光層13Bのアシストドーパント材料のHOMO準位に注入され、その準位から赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)に注入される。この結果、赤色の有機EL素子3R(もしくは緑色の有機EL素子3G)が効率よく発光することができる。
【0026】
このために、アシストドーパント材料のHOMO準位エネルギーの絶対値は、青色発光層13Bのホスト材料のHOMO準位エネルギーの絶対値よりも小さい必要がある。つまり、
|HOMO|<|HOMO| ・・・(3A)
を満たす必要がある。
【0027】
一方、図2(b)で示すように、アシストドーパント材料のHOMO準位エネルギーの絶対値は、正孔輸送層12のHOMO準位エネルギーの絶対値よりも小さくてもよい。しかし、アシストドーパント材料のHOMO準位に注入された正孔は、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のHOMO準位に注入されるためには、以下の正孔注入障壁を超える必要がある。すなわち、アシストドーパント材料と赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のHOMO準位エネルギーの差で表される正孔注入障壁である。この正孔注入障壁が、もともと考慮していた青色発光層13Bと正孔輸送層12のHOMO準位エネルギーの差で表される正孔注入障壁よりも大きくなると、アシストドーパント材料を混合させる効果を得ることができない。このため、アシストドーパント材料と赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のHOMO準位エネルギーの差は、青色発光層13Bと正孔輸送層12のHOMO準位エネルギーの差よりも小さい必要がある。つまり、
|HOMO|−|HOMO|<|HOMO|−|A| ・・・(3B)
を満たす必要がある。
【0028】
そして、上記式(3A)及び式(3B)から関係式(3)が導かれる。
【0029】
このように、コモン発光層(青色発光層13B)と赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)とが上記の関係式(1)乃至(3)を満たすことによって、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)への正孔注入性が向上する。その結果、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)内での正孔と電子とが再結合する確率が増え、その再結合エネルギーを利用して有機EL素子3R,3Gを効率よく発光させることができる。なお、コモン発光層と称してはいるが、赤色の有機EL素子3Rおよび緑色の有機EL素子3Gにおいては、コモン発光層は発光しない。本発明において、発光しないとは、全く発光しない、あるいは視認されない程度の強度でしか発光しないことをいう。
【0030】
また、本実施形態の青色発光層13Bは、ホスト材料とアシストドーパント材料の他に青色を発する発光ドーパント材料を含んでいる。発光ドーパント材料は青色発光層13Bに含まれる成分中で10重量%以下であることが好ましい。発光ドーパント材料が10重量%より大きくなると濃度消光により発光効率の低下がおこる可能性があるためである。そして、効率よく正孔を輸送するために、アシストドーパント材料は、発光ドーパント材料より多く、ホスト材料より少ないことが好ましい。より具体的には、アシストドーパント材料の濃度は15重量%以上45重量%以下であり、さらに25重量%以上45重量%以下であることがより好ましい。
【0031】
特に、本実施形態では、青色発光層Bのホスト材料としてアントラセン誘導体を用いた場合に、アシストドーパントを導入して得られる効果が大きい。アントラセン誘導体を青色発光層13Bのホスト材料として用いた青色の有機EL素子3Bは高い発光効率が確認され、表示装置などの低消費電力化に対して効果的であると考えられる。しかし、青色発光層13Bのホスト材料の条件を満たすアントラセン誘導体はHOMO準位エネルギーの絶対値が大きいものが多く、正孔輸送層12からの正孔注入障壁が大きくなる。このため、本実施形態のようなコモン発光層として青色発光層13Bを設ける構成では、隣接する赤色発光層13R,緑色発光層13Gまで正孔が注入されにくく、赤色発光層13R,緑色発光層13Gで効率よく発光しない恐れが生じる。そのため、アントラセン誘導体をホスト材料として用いた青色発光層13Bにおいて、電アシストドーパント材料を導入した際に得られる効果は大きくなる。
【0032】
青色発光層13Bのホスト材料に用いられるアントラセン誘導体は、化合物1から化合物4が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、化合物1,2,3,4のHOMO準位エネルギーの絶対値は、5.89eV,5.88eV,5.76eV,5.86eVである。
【0033】
【化1】

【0034】
赤色の有機EL素子3R(もしくは緑色の有機EL素子3G)に関しては、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)から青色発光層13Bに電子が注入されにくい構成であることがより好ましい。例えば、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)と青色発光層13Bとの間に電子注入障壁が形成されるように各発光層を構成することが望ましい。
【0035】
本実施形態では、コモン発光層として青色発光層13Bを例に挙げたが、特にこれに限定されるものではない。コモン発光層として、緑色発光層13Gや赤色発光層13Rなどの他の色の発光層を適用することもできる。
【0036】
本実施形態は、基板10側から陽極11、正孔輸送層12、発光層、電子輸送層14、陰極15の順で積層されているが、逆の構成、つまり、基板10側から陰極15、電子輸送層14、発光層、正孔輸送層12、陽極11の順で積層されていてもよい。
【0037】
また、本発明の表示装置は、基板10側から有機EL素子の光が出射されるボトムエミッション型の表示装置でもいいし、基板10とは反対側から有機EL素子の光が出射されるトップエミッション型の表示装置であってもよい。
【0038】
次に、各部材に関して具体的に説明する。
【0039】
基板10は、ガラス、プラスチック等の絶縁性の基板や、シリコン基板などを用いることができる。また、基板10は、トランジスタやMIM素子等のスイッチング素子が上記絶縁性の基板等に形成されていてもよい。また、その場合には、基板10には、スイッチング素子の凹凸を平坦化するための平坦化膜を有していてもよい。
【0040】
陽極11および陰極15は、酸化錫、酸化インジウム、酸化インジウム錫、酸化インジウム亜鉛などの透明酸化物導電層や、Al,Ag,Cr,Ti,Mo,W,Au,Mg,Csなどの金属単体やそれらの合金からなる金属層などを用いることができる。さらには、陽極11および陰極15は、透明酸化物導電層と金属層の積層膜や、複数の金属層の積層膜で構成されていてもよい。
【0041】
正孔輸送層12は、正孔注入性、正孔輸送性を備える有機化合物の単層又は複数の層からなる。一方、電子輸送層14は、電子注入性、電子輸送性を備える有機化合物の単層又は複数の層からなる。また、必要に応じて、正孔輸送層12として、発光層から陽極11側に電子が移動するのを抑制するために、電子阻止層を設けることもできる。また、電子輸送層14として、正孔阻止層を設けることもできる。また、正孔輸送層12、電子輸送層14として、発光層で発生した励起子の拡散を抑制するための励起子阻止層を設けることもできる。なお、正孔輸送層12と電子輸送層14は、必須ではなく、有機EL素子の構成によってはなくてもよい。
【0042】
発光層としては、特に制限はなく公知の材料を適用することが可能である。また、赤色発光層13Rや緑色発光層13Gは、発光材料のみで構成されていてもよいし、発光ドーパント材料とホスト材料との混合層であってもよく、さらにはアシストドーパント材料を含んでいてもよい。また、本発明において、ホスト材料とは、発光層内の成分のうち最も重量成分が多い材料のことをいう。また、発光材料、発光ドーパント材料は、蛍光材料、燐光材料のどちらでもよい。
【0043】
絶縁層20としては、アクリル樹脂や、ポリイミド樹脂などの樹脂材料、窒化珪素などの無機材料を用いることができ、また樹脂材料と無機材料との積層膜も用いることができる。また、絶縁層20は必須ではなく、陽極11と陰極15とがショートしない構成であればなくてもよい。
【0044】
封止キャップ30としては、ガラスやプラスチックなどのキャップ上の部材を用いることができる。また、封止キャップ30は、例えばガラス板などの板状の部材と、この部材と基板10とを接着するために表示領域2の周囲に配置されたシール剤と、で構成されてもよい。また、封止キャップ30と有機EL素子の陰極15との間の空間は、窒素やアルゴン等のガスが封入されていてもよいし、アクリル樹脂などの樹脂材料で充填されていてもよい。
【0045】
有機EL素子を封止する構成であればどんなものでもよく、封止キャップ30の代わりに、有機EL素子の陰極15上に、窒化珪素や酸化珪素、酸化アルミナなどの無機材料からなる封止膜が配置された構成でもよい。さらに封止膜は、2層以上の無機材料からなる積層膜で構成されていてもよし、無機材料と樹脂材料の積層膜で構成されていてもよい。
【0046】
本発明の表示装置としては、テレビ受像機、パーソナルコンピュータの表示部に用いられる。他には、デジタルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮像装置の表示部や電子ビューファインダに用いられてもよい。撮像装置は、撮像するための撮像光学系やCMOSセンサなどの撮像素子をさらに有している。
【0047】
また、本実施形態の表示装置は、携帯電話の表示部、携帯ゲーム機の表示部等に用いられてもよいし、さらには、携帯音楽再生装置の表示部、携帯情報端末(PDA)の表示部、カーナビゲーションシステムの表示部に用いられてもよい。
【0048】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態を表す部分断面模式図である。本実施形態は、赤色発光層13R、緑色発光層13Gがともに、青色発光層13Bに接して陽極11側に配置されている点が第1の実施形態と異なる。さらに、本実施形態では、青色発光層13Bは、ホスト材料と、発光層13R,13Gに電子を輸送するためのアシストドーパント材料と、を含んでいる点が第1の実施形態と異なる。また、赤色の有機EL素子3R(もしくは緑色の有機EL素子3G)は、下記の関係式(4)乃至(6)を満たすように構成されている点が第1の実施形態と異なる。
|LUMO|<|B| ・・・(4)
|LUMO|<|HOMO| ・・・(5)
|LUMO|<|LUMO|<|B|+|LUMO|−|LUMO| ・・・(6)
ここで、LUMOは青色発光層13Bに含まれるホスト材料のLUMO(最低空軌道)準位エネルギー、LUMOは青色発光層13Bに含まれるアシストドーパント材料のLUMO準位エネルギーを表している。また、LUMOは赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のLUMO準位エネルギーを表している。そして、Aは青色発光層13Bと陰極15とが接する場合における陰極15の仕事関数、または青色発光層13Bと陰極15との間に青色発光層13Bと接して有機化合物層が配置された場合における有機化合物層のLUMO準位エネルギーを表している。
【0049】
なお、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のLUMO準位エネルギーとは、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)に含まれる材料のLUMO準位エネルギーの中で、絶対値が最も大きいLUMO準位エネルギーのことである。例えば、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)が発光材料のみからなる場合は、その発光材料のLUMO準位エネルギーのことである。また、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)がホスト材料と発光ドーパント材料からなる場合は、ホスト材料と発光ドーパント材料のLUMO準位エネルギーのうち絶対値が大きい方のLUMO準位エネルギーが赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のLUMO準位エネルギーである。有機化合物層のLUMO準位エネルギーとは、この有機化合物層が1つの材料のみからなる場合はその材料のLUMO準位エネルギーであり、2つ以上の材料から成る場合には最も成分の多い材料のLUMO準位エネルギーのことである。
【0050】
図4を用いて上記の関係式(4)乃至(6)について説明する。図4は、関係式(4)乃至(6)を満たす青色発光層13Bと赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のエネルギーバンドを示している。図4では、青色発光層13Bと陰極15との間に青色発光層13Bと接して電子輸送層14が配置された場合を示しており、B=LUMOETLである。
【0051】
赤色の有機EL素子3R(もしくは緑色の有機EL素子3G)が効率よく発光するためには、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)正孔と電子を効率よく注入される必要がある。ここで、図4(a)で示すように、青色発光層13BのLUMO準位エネルギーの絶対値が電子輸送層14のLUMO準位エネルギーの絶対値、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のLUMO準位エネルギーの絶対値よりも小さい場合を考える(|LUMO|<|B|、|LUMO|<|LUMO|)。この場合、青色発光層13Bと電子輸送層14の界面には、電子注入障壁(青色発光層13Bと電子輸送層14のLUMO準位エネルギーの差)が生じてしまい、電子が青色発光層13B内に注入されにくい。その結果、電子が青色発光層13B内を輸送されて赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)に注入されにくくなる。このため、赤色の有機EL素子3R(もしくは緑色の有機EL素子3G)が効率よく発光できない。
【0052】
これに対して、電子を輸送するためのアシストドーパント材料を青色発光層13Bに混合させることにより、電子が青色発光層13Bのアシストドーパント材料のLUMO準位に注入され、その準位から赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)に注入される。この結果、赤色の有機EL素子3R(もしくは緑色の有機EL素子3G)が効率よく発光することができる。
【0053】
このために、アシストドーパント材料のLUMO準位エネルギーの絶対値は、青色発光層13Bのホスト材料のLUMO準位エネルギーの絶対値よりも大きい必要がある。つまり、
|LUMO|>|LUMO| ・・・(6A)
を満たす必要がある。
【0054】
一方、図4(b)で示すように、アシストドーパント材料のLUMO準位エネルギーの絶対値は、電子輸送層14のLUMO準位エネルギーの絶対値よりも大きくてもよい。しかし、アシストドーパント材料のLUMO準位に注入された電子は、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のLUMO準位に注入されるためには、以下の電子注入障壁を超える必要がある。すなわち、アシストドーパント材料と赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のLUMO準位エネルギーの差で表される正孔注入障壁である。この正孔注入障壁が、もともと考慮していた青色発光層13Bと正孔輸送層12LUMO準位エネルギーの差で表される電子注入障壁よりも大きくなると、アシストドーパント材料を混合させる効果を得ることができない。このため、アシストドーパント材料と赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)のLUMO準位エネルギーの差は、青色発光層13Bと正孔輸送層12のLUMO準位エネルギーの差よりも小さい必要がある。つまり、
|LUMO|−|LUMO|<|LUMO|−|B| ・・・(6B)
を満たす必要がある。
【0055】
そして、上記式(6A)及び式(6B)から関係式(6)が導かれる。
【0056】
このように、コモン発光層(青色発光層13B)と赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)とが上記の関係式(4)乃至(6)を満たすことによって、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)への電子注入性が向上する。その結果、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)内での正孔と電子とが再結合する確率が増え、その再結合エネルギーを利用して有機EL素子3R,3Gを効率よく発光させることができる。なお、コモン発光層と称してはいるが、赤色の有機EL素子3Rおよび緑色の有機EL素子3Gにおいては、コモン発光層は発光しない。本発明において、発光しないとは、全く発光しない、あるいは視認されない程度の強度でしか発光しないことをいう。
【0057】
また、本実施形態の青色発光層13Bは、ホスト材料とアシストドーパント材料の他に青色を発する発光ドーパント材料を含んでいる。発光ドーパント材料は青色発光層13Bに含まれる成分中で10重量%以下であることが好ましい。発光ドーパント材料が10重量%より大きくなると濃度消光により発光効率の低下がおこる可能性があるためである。そして、効率よく正孔を輸送するために、アシストドーパント材料は、発光ドーパント材料より多く、ホスト材料より少ないことが好ましい。より具体的には、アシストドーパント材料の濃度は15重量%以上45重量%以下であり、さらに25重量%以上45重量%以下であることがより好ましい。
【0058】
赤色の有機EL素子3R(もしくは緑色の有機EL素子3G)に関しては、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)から青色発光層13Bに正孔が注入されにくい構成であることがより好ましい。例えば、赤色発光層13R(もしくは緑色発光層13G)と青色発光層13Bとの間に正孔注入障壁が形成されるように各発光層を構成することが望ましい。
【0059】
本実施形態では、コモン発光層として青色発光層13Bを例に挙げたが、特にこれに限定されるものではない。コモン発光層として、緑色発光層13Gや赤色発光層13Rなどの他の色の発光層を適用することもできる。
【0060】
本実施形態は、基板10側から陽極11、正孔輸送層12、発光層、電子輸送層14、陰極15の順で積層されているが、逆の構成でもよい。
【0061】
また、本発明の表示装置は、基板10側から有機EL素子の光が出射されるボトムエミッション型の表示装置でもいいし、基板10とは反対側から有機EL素子の光が出射されるトップエミッション型の表示装置であってもよい。
【0062】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の第3の実施形態を表す部分断面模式図である。本実施形態は、緑色発光層13Gが青色発光層13Bに接して陽極11側に配置されている点が第1の実施形態と異なる。本実施形態では、青色発光層13Bは、ホスト材料の他に、赤色発光層13Rに正孔を輸送するための正孔輸送アシストドーパント材料と緑色発光層13Gに電子を輸送するための電子輸送アシストドーパント材料のうち少なくとも一方を含んでいる。また、青色発光層13が赤色発光層13Rに正孔を輸送するための正孔輸送アシストドーパント材料を含む場合、青色発光層13Bと赤色発光層13Rは、上記の関係式(1)乃至(3)を満たすように構成されている。また、青色発光層13が緑色発光層13Gに電子を輸送するための電子輸送アシストドーパント材料を含む場合、青色発光層13Bと緑色発光層13Gは、上記の関係式(4)乃至(6)を満たすように構成されている。
【0063】
ただし、関係式(1)、(3)においてHOMOとあるのは、赤色発光層13Rに正孔を輸送するための正孔輸送アシストドーパント材料のHOMO準位エネルギーと読み替える。同様に、関係式(4)、(6)においてLUMOとあるのは、緑色発光層13Gに電子を輸送するための電子輸送アシストドーパント材料のLUMO準位エネルギーと読み替える。
【0064】
必要に応じて、このような構成にすると、赤色の有機EL素子3Rにおいては、青色発光層13Bからの赤色発光層13Rへの正孔注入性が向上する、あるいは、緑色の有機EL素子3Gにおいては、青色発光層13Bからの緑色発光層13Gへの電子注入性が向上する。そのため、赤色の有機EL素子3R、緑色の有機EL素子3Gを効率よく発光させることができる。
【0065】
なお、青色発光層13Bは、正孔輸送アシストドーパント材料と電子輸送アシストドーパント材料の両方を含んでもよい。この場合、正孔輸送アシストドーパント材料と電子輸送アシストドーパント材料とは、同一の材料であってもよいし異なる材料であってもよい。
【0066】
また、本実施形態では、赤色発光層13Rが青色発光層13Bに接して陰極15側に配置され、緑色発光層13Gが青色発光層13Bに接して陽極11側に配置されている例を示したが、その構成は逆でもよい。つまり、赤色発光層13Rが青色発光層13Bに接して陽極11側に配置され、緑色発光層13Gが青色発光層13Bに接して陰極15側に配置されていてもよい。この場合、青色発光層13Bと赤色発光層13Rは、上記の関係式(4)乃至(6)を満たし、青色発光層13Bと緑色発光層13Gは、上記の関係式(1)乃至(3)を満たすように構成されていればよい。
【0067】
本実施形態では、コモン発光層として青色発光層13Bを例に挙げたが、特にこれに限定されるものではない。コモン発光層として、緑色発光層13Gや赤色発光層13Rなどの他の色の発光層を適用することもできる。
【0068】
本実施形態は、基板10側から陽極11、正孔輸送層12、発光層、電子輸送層14、陰極15の順で積層されているが、逆の構成でもよい。
【0069】
また、本発明の表示装置は、基板10側から有機EL素子の光が出射されるボトムエミッション型の表示装置でもいいし、基板10とは反対側から有機EL素子の光が出射されるトップエミッション型の表示装置であってもよい。
【実施例】
【0070】
本実施例におけるHOMO(最高被占軌道)準位エネルギーは、大気下光電子分光法(測定器名AC−2、理研機器製)を用いて測定した。また、LUMO(最低空軌道)準位エネルギーは、HOMO準位エネルギーから紫外・可視分光法(UV/VIS V−560、日本分光製)を用いて測定したスペクトルの吸収端から求めたバンドギャップを差し引いて算出した。
【0071】
(実施例1)
図1に示す構成の表示装置を作製した。本実施例は、第1の実施形態に対応している。また、本実施例は、基板10とは反対側の面から光を取り出すトップエミッション型の表示装置である。
【0072】
まず、ガラス基板上に低温ポリシリコンTFT(薄膜トランジスタ)を形成し、その上に窒化珪素からなる層間絶縁膜とアクリル樹脂からなる平坦化膜を形成して、図1(a)に示す基板10を作製した。この基板10上にアルミニウム合金を200nmの厚さで成膜した後、ITO膜を20nmの厚さで成膜した。続いて、アルミニウム合金とITO膜を画素毎にパターニングして陽極11を形成した。
【0073】
陽極11の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法によりパターニングして絶縁層20を形成した。次に、イソプロピルアルコール(IPA)で超音波洗浄して煮沸洗浄後に乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄した後、以下の有機化合物層を真空蒸着法により下記の構成で成膜した。
【0074】
まず、表示領域2の全体に化合物1を60nmの厚さで蒸着して、共通の正孔輸送層12を成膜した。なお、化合物1のHOMO準位エネルギーは、5.30eVであった。
【0075】
【化2】

【0076】
次に、正孔輸送層12の上に、化合物1で表されるホスト材料と化合物6で表されるアシストドーパント材料と化合物7で表される青色発光ドーパント材料を共蒸着(体積比69:30:1)して、膜厚20nmの青色発光層13Bを表示領域2の全面にわたって成膜した。なお、化合物1、化合物6のHOMO準位エネルギーは、5.86eV、5.68eVであった。
【0077】
【化3】

【0078】
次に、赤色の有機EL素子3Rの画素に対応する位置に、化合物8で表されるホスト材料と化合物9で表される赤色発光ドーパント材料とを共蒸着(体積比99:1)して、膜厚20nmの赤色発光層13Rをマスクで成膜した。また同様にして、緑色の有機EL素子3Gの画素に対応する位置に、化合物10で表されるホスト材料と化合物11で表される緑色発光ドーパント材料とを共蒸着(体積比95:5)して、膜厚20nmの緑色発光層13Gをマスクで成膜した。
【0079】
なお、化合物8のHOMO準位エネルギーは5.50eVであった。また、化合物10のHOMO準位エネルギーは5.72eVであった。
【0080】
【化4】

【0081】
次に、表示領域2の全体に化合物12を10nmの厚さで蒸着して、共通の正孔阻止層を成膜した(不図示)。続いて、表示領域2の全体に化合物13を30nmの厚さで蒸着して、共通の電子輸送層14を成膜した。
【0082】
【化5】

【0083】
次に、表示領域2の全体にマグネシウム金属と銀金属とを共蒸着して、膜厚20nmの陰極15を成膜した。最後に、窒素雰囲気中のグローブボックスにおいて、乾燥剤を入れた封止キャップ30により表示領域2の全体を封止した。
【0084】
赤色の有機EL素子3Rでは、|HOMO|=5.86eV,|HOMO|=5.68eV,|A|=5.30eV,|HOMO|=5.50eVなので、関係式(1)乃至(3)を満たしていた。青色の有機EL素子3Bでは、|HOMO|=5.86eV,|HOMO|=5.68eV,|A|=5.30eV,|HOMO|=5.72eVなので、関係式(1)乃至(3)を満たしていた。
【0085】
このようにして得られた表示装置の特性を評価した。各画素に所望の電流を通電すると、
赤色の有機EL素子3Rと、緑色の有機EL素子3Gと、青色の有機EL素子3Bのそれぞれが良好な赤色発光、緑色発光、青色発光の発光特性を示した。
【0086】
(実施例2)
本実施例は、緑色発光層13Gの構成が実施例1とは異なっている。具体的には、緑色発光層13Gのホスト材料として青色発光層13Bに含まれるアシストドーパント材料と同じ材料、つまり、化合物6で表される材料を用いた。それ以外の構成は実施例1と同じである表示装置を作製した。
【0087】
この場合、青色の有機EL素子3Bでは、|HOMO|=5.86eV,|HOMO|=5.68eV,|A|=5.30eV,|HOMO|=5.68eVなので、関係式(1)乃至(3)を満たしていた。
【0088】
このようにして得られた表示装置の特性を評価した。各画素に所望の電流を通電すると、
赤色の有機EL素子3Rと、緑色の有機EL素子3Gと、青色の有機EL素子3Bのそれぞれが良好な赤色発光、緑色発光、青色発光の発光特性を示した。
【0089】
(比較例1)
本比較例は、青色発光層13Bが、化合物1で表されるホスト材料と化合物7で表される青色発光ドーパント材料とを、体積比99:1で共蒸着した点、つまりアシストドーパント材料を含まない点が実施例1と異なる。それ以外の構成は実施例1と同様の表示装置を作製した。
【0090】
このようにして得られた表示装置の特性を評価した。各画素に所望の電流を通電すると、青色の有機EL素子3Bに関しては良好な青色発光の特性を示した。しかし、赤色の有機EL素子3Rと緑色の有機EL素子3Gに関しては、発光強度が小さく、さらに単色の赤色発光と緑色発光の特性が得られずに、それぞれ青色発光の成分が混ざった不十分な発光特性を示した。
【0091】
(実施例3)
図3に示す構成の有機EL素子が配置された表示装置を作製した。本実施例は、赤色発光層13Rと緑色発光層13Gとが青色発光層13Bの陽極11側に配置された点、青色発光層13Bの構成が実施例1とは異なっている。以下に実施例1とは異なる部分のみ説明する。
【0092】
本実施例は、正孔輸送層12を形成した後、青色発光層13Bを形成する前に、実施例1と同じ構成の赤色発光層13Rと下記構造の緑色発光層13Gとを成膜した。緑色発光層13Gは、化合物4で表されるホスト材料と化合物11で表される緑色発光ドーパント材料とを共蒸着(体積比95:5)して、膜厚20nmで成膜した。なお、化合物8のLUMO準位エネルギーは、2.96eVであり、化合物10のLUMO準位エネルギーはそれぞれ、3.04eVであった。
【0093】
そして、その上に、化合物6で表されるホスト材料と化合物14で表されるアシストドーパント材料と化合物15で表される青色発光ドーパント材料を共蒸着(体積比65:30:5)して、膜厚20nmの青色発光層13Bを表示領域2の全面にわたって成膜した。なお、化合物6、化合物14のLUMO準位エネルギーは、2.74eV、3.01eVであった。
【0094】
【化6】

【0095】
そして、青色発光層13Bの陰極15側で接する正孔阻止層に用いた化合物10のLUMO準位エネルギーは、3.09eVであった。
【0096】
赤色の有機EL素子3Rでは、|LUMO|=2.74eV,|LUMO|=3.01eV,|B|=3.09eV,|LUMO|=2.96eVなので、関係式(4)乃至(6)を満たしていた。青色の有機EL素子3Bでは、|LUMO|=2.74eV,|LUMO|=3.01eV,|B|=3.09eV,|LUMO|=3.04eVなので、関係式(1)乃至(3)を満たしていた。
【0097】
このようにして得られた表示装置の特性を評価した。各画素に所望の電流を通電すると、
赤色の有機EL素子3Rと、緑色の有機EL素子3Gと、青色の有機EL素子3Bのそれぞれが良好な赤色発光、緑色発光、青色発光の発光特性を示した。
【0098】
(比較例2)
本比較例は、青色発光層13Bが、化合物1で表されるホスト材料と化合物7で表される青色発光ドーパント材料とを、体積比99:1で共蒸着した点、つまりアシストドーパント材料を含まない点が実施例1と異なる。それ以外の構成は実施例3と同様の表示装置を作製した。
【0099】
このようにして得られた表示装置の特性を評価した。各画素に所望の電流を通電すると、青色の有機EL素子3Bに関しては良好な青色発光の特性を示した。しかし、赤色の有機EL素子3R、緑色の有機EL素子3Gに関しては、発光強度が小さく、さらに単色の赤色発光、緑色発光の特性が得られずに、青色発光の成分が混ざった不十分な発光特性を示した。
【符号の説明】
【0100】
3R 赤色の有機EL素子
3G 緑色の有機EL素子
3B 青色の有機EL素子
11 陽極
13R 赤色発光層
13G 緑色発光層
13B 青色発光層
15 陰極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の色を発する第1の有機EL素子と、前記第1の色とは異なる第2の色を発する第2の有機EL素子と、を有し、前記有機EL素子は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間にある発光層とを備えている表示装置であって、
前記第1の有機EL素子の第1の発光層は、前記第2の有機EL素子に共通に形成されており、
前記第2の有機EL素子の第2の発光層は、前記第1の発光層に接しかつ、前記第1の発光層よりも前記陰極側に形成されており、
前記第1の発光層は、ホスト材料と、前記第2の発光層に正孔を輸送するアシストドーパント材料と、を含み、
前記第2の有機EL素子は、下記の関係式(1)乃至(3)を満たすように構成されていることを特徴とする表示装置。
|HOMO|>|A| ・・・(1)
|HOMO|>|HOMO| ・・・(2)
|A|+|HOMO|−|HOMO|<|HOMO|<|HOMO| ・・・(3)
ここで、HOMOは前記第1の発光層に含まれる前記ホスト材料のHOMO準位エネルギー、HOMOは前記第1の発光層に含まれる前記アシストドーパント材料のHOMO準位エネルギー、HOMOは前記第2の発光層のHOMO準位エネルギー、Aは前記第1の発光層と前記陽極とが接する場合における前記陽極の仕事関数、または前記第1の発光層と前記陽極との間に前記第1の発光層と接して有機化合物層が配置された場合における前記有機化合物層のHOMO準位エネルギーを表している。
【請求項2】
第1の色を発する第1の有機EL素子と、前記第1の色とは異なる第2の色を発する第2の有機EL素子と、を有し、前記有機EL素子は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間にある発光層とを備えている表示装置であって、
前記第1の有機EL素子の第1の発光層は、前記第2の有機EL素子に共通に形成されており、
前記第2の有機EL素子の第2の発光層は、前記第1の発光層に接しかつ、前記第1の発光層よりも前記陽極側に形成されており、
前記第1の発光層は、ホスト材料と、前記第2の発光層に電子を輸送するアシストドーパント材料と、を含み、
前記第2の有機EL素子は、下記の関係式(4)乃至(6)を満たすように構成されていることを特徴とする表示装置。
|LUMO|<|B| ・・・(4)
|LUMO|<|HOMO| ・・・(5)
|LUMO|<|LUMO|<|B|+|LUMO|−|LUMO| ・・・(6)
ここで、LUMOは前記第1の発光層に含まれる前記ホスト材料のLUMO準位エネルギー、LUMOは前記第1の発光層に含まれる前記アシストドーパント材料のLUMO準位エネルギー、LUMOは前記第2の発光層のLUMO準位エネルギー、Bは前記第1の発光層と前記陰極とが接する場合における前記陰極の仕事関数、または前記第1の発光層と前記陰極との間に前記第1の発光層と接して有機化合物層が配置された場合における前記有機化合物層のLUMO準位エネルギーを表している。
【請求項3】
前記第1の発光層のホスト材料としてアントラセン誘導体を用いることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−51158(P2013−51158A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189132(P2011−189132)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】