説明

表示装置

【課題】良好な発光特性を備え、より容易かつ安定に製造することが可能な表示装置を提供する。
【解決手段】基板10上に設けられる複数種類の画素(2R、2G、2B)が、基板10上に設けられる第一電極21と、第二電極27と、第一電極21と第二電極27との間に挟持され少なくとも発光層を含む有機化合物層と、からなる白色有機発光素子20を有し、基板10が、第一電極21の下方に設けられる反射層3を画素ごとに有し、白色有機発光素子20上に、画素(2R、2G、2B)から出力される光の色を画素の種類ごとに異ならせる色変換部材(32、33)が設けられる。そして、複数種類の画素10のうち少なくとも一種類の画素において、前記色変換部材を透過する光に対して、前記発光層と反射層3との膜厚方向の距離が、前記発光層と反射層3との間における光学干渉による光の強めあい条件を満足する距離である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、特に、(有機エレクトロルミネッセンス素子、以下、単に「素子」と記載する場合がある。)有機発光素子を利用した表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、有機発光素子について盛んに研究開発がなされている。ここで有機発光素子は、陽極と陰極とからなる一対の電極と、この一対の電極の間に設けられ少なくとも発光層を含む単数あるいは複数の有機化合物層とからなる電子素子である。
【0003】
最近、従来から使用されているブラウン管(CRT)や液晶ディスプレイ(LCD)等に替わる表示装置として、発光色が異なる複数の有機発光素子を用いた複数の発光色を示す表示装置が注目されている。ここで有機発光素子は、自発光デバイスであるため、有機発光素子を用いた表示装置は、コントラストや色再現性に関して優れた性能を示す。
【0004】
有機発光素子を用いたフルカラーの発光装置として、例えば、発光色が白色である有機発光素子を用いた有機発光装置がある。この表示装置は、具体的には、装置上内に設けられている全ての画素について、白色発光する有機発光素子を一様に形成し、この有機発光素子が出力する白色光をカラーフィルタ等の光変換部材により赤、緑、青の3原色に変換する方式の表示装置である。
【0005】
発光色が白色である有機発光素子を用いた有機発光装置の具体例として、特許文献1にて提案されている表示装置がある。この表示装置は、基板側に設けられている反射層上に透明バリア層を設け、この透明バリア層の膜厚を適宜設定するという構成を採用している。これにより、全ての画素において画素を構成する有機発光素子が一様の構成でありながら、発光色別に異なる光学干渉条件によって、効率よく赤、緑、青等の発光を出力させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−093401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1にて提案されている表示装置では、反射層上に設ける透明バリア層の膜厚を画素の種類毎に変更する必要がある。ここで透明バリア層の膜厚の変更を実現するためには、基板を作製する際にフォトリソグラフィ処理工程を追加し、パターニングとエッチング処理を複数回繰り返し行う必要がある。そのため、工程が複雑になり、表示装置の製造のスループットが低いという課題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、良好な発光特性を備え、より容易かつ安定に製造することが可能な表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の表示装置は、基板と、
前記基板上に設けられる複数種類の画素と、から構成され、
前記画素が、基板上に設けられる第一電極と、第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に挟持され少なくとも発光層を含む有機化合物層と、からなる白色有機発光素子を有し、
前記基板が、前記第一電極の下方に設けられる反射層を前記画素ごとに有し、
前記白色有機発光素子上に色変換部材が設けられ、
前記色変換部材により前記白色有機発光素子から出力された光のスペクトルを変化させることで、前記画素から出力される光の色が前記画素の種類ごとに異なっており、
前記複数種類の画素のうち少なくとも一種類の画素において、前記色変換部材を透過する光に対して、前記発光層と前記反射層との膜厚方向の距離が、前記発光層と前記反射層との間における光学干渉による光の強めあい条件を満足する距離であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、良好な発光特性を備え、より容易かつ安定に製造することが可能な表示装置を提供することができる。即ち、本発明の表示装置は、画素の種類毎に、反射層と発光領域(発光層)との間の光学距離が異なるように設定しているため、光学干渉効果を利用して発光層からの発光を所望の発色を示す発光へ変換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の表示装置における実施形態の例を示す断面模式図である。
【図2】実施例1で作製された表示装置が有するカラーフィルタの分光透過特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の表示装置は、基板と、この基板上に設けられる複数種類の画素と、から構成される。
【0013】
本発明の表示装置において、装置を構成する画素は、基板上に設けられる第一電極と、第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に挟持され少なくとも発光層を含む有機化合物層と、からなる白色有機発光素子を有している。
【0014】
また本発明の表示装置において、装置を構成する基板は、第一電極の下方に設けられる反射層を前記画素ごとに有している。
【0015】
ここで白色有機発光素子上には色変換部材が設けられ、この色変換部材により白色有機発光素子から出力された光のスペクトルを変化させることができる。これにより、画素から出力される光の色は、画素の種類ごとに異なっている。
【0016】
そして本発明の表示装置において、複数種類の画素のうち少なくとも一種類の画素において、前記色変換部材を透過する光に対して、発光層と反射層との膜厚方向の距離が、発光層と反射層との間における光学干渉による光の強めあい条件を満足する距離である。好ましくは、色変換部材を透過する光のうち最も透過率が高い波長の光に対して、発光層と反射層との膜厚方向の距離が、発光層と反射層との間における光学干渉による光の強めあい条件を満足する距離とする。
【0017】
本発明においては、反射層の膜厚方向の配置位置が画素の種類ごとに異なっており、各画素において、前記色変換部材を透過する光に対して、発光層と反射層との膜厚方向の距離が、発光層と反射層との間における光学干渉による光の強めあい条件を満足する距離であることが好ましい。
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の表示装置を具体的に説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の表示装置における実施形態の例を示す断面模式図である。図1の表示装置1は、基板10上に各画素ごとに白色有機発光素子20が設けられている。また図1の表示装置1は、赤色を出力する赤色画素2Rと、緑色を出力する緑色画素2Gと、青色を出力する青色画素2Bと、を有している。ここで各画素(2R、2G、2B)には、それぞれ有機発光素子20が含まれている。
【0020】
図1の表示装置1において、基板10は、基材11と、駆動回路12と、層間絶縁層13、15、16と、配線層14と、反射層3と、平坦化層17と、コンタクトホール18と、から構成される部材である。ここで、本発明において、反射層3は各画素においてそれぞれ設けられる部材である。一方、本発明においては、全ての画素において配線層14を必ずしも設ける必要はない。
【0021】
一方、図1の表示装置1において、白色有機発光素子20は、第一電極21(下部電極)と、ホール輸送層22と、第一発光層23と、第二発光層24と、電子輸送層25と、電子注入層26と、第二電極27(上部電極)と、から構成される部材である。
【0022】
以下、図1の表示装置1に含まれる基板10の構成部材について説明する。基材11は、特に限定されるものではないが、金属、セラミックス、ガラス、石英、シリコン等が用いられる。またプラスティックシート等のフレキシブルシートを用いたフレキシブル基板とすることをも可能である。
【0023】
基材11上に設けられる駆動回路12は、有機発光素子20を駆動・発光させるために設けられる部材である。図1の表示装置1において、駆動回路12は、層間絶縁層13に被覆されると共に、コンタクトホール18によって第一電極21と電気的に接続されている。本発明において、駆動回路12の構成材料は、特に限定されるものではないが、公知の導電性材料が用いられる。
【0024】
層間絶縁層13は、駆動回路12を被覆する機能を有すると共に、駆動回路12と駆動回路12との間、及び駆動回路12と配線層14又は反射層3との間を電気的に分離する目的で設けられる。層間絶縁層13の構成材料として、例えば、酸化シリコン(SiO2)等の無機絶縁性材料が挙げられる。
【0025】
反射層3は、層間絶縁層13上に設けられる部材であって、白色有機発光素子(の発光層)から出力された光(白色光)を反射する機能を備えている。ここで反射層3は、層間絶縁層13上であって層間絶縁層13に接する態様で設けてもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。図1の表示装置1を構成する緑色画素2Gや青色画素2Bのように、層間絶縁層13と反射層3(3G、3B)との間に、介在層として配線層14や層間絶縁層15、16を設けてもよい。また各画素(2R、2G、2B)にそれぞれ設けられている反射層3(3R、3G、3B)は、図1に示されるように、膜厚方向の設置位置が画素の種類ごとに異なっていてもよい。尚、ここで言う配置位置とは、第一電極21に対する反射層3(3R、3G、3B)の膜厚方向の相対的な配置位置を言う。
【0026】
反射層3の構成材料として、アルミニウム(Al)、銀(Ag)等の金属材料、これら金属材料を複数種組み合わせた合金材料が挙げられる。また屈折率の異なる無機材料を複数積層して形成した誘電体ミラー等を反射層3として用いてもよい。尚、光の反射率が高い材料を反射層3の構成材料として使用すると、発光の取り出し効率を高めることができるので好ましい。
【0027】
配線層14は、信号や電源を供給するために層間絶縁層13と反射層3との間に設けられる部材である。尚、配線層14は、以下に説明するように、導電性の材料からなる部材であるが、同じ導電性の部材である駆動回路12や反射層3とは異なる部材である。ところで近年、表示装置の小型化、高解像度化、狭額縁化に伴い、基材11上に設けられる駆動回路12、配線層14は、複数層にわたって積層される態様でレイアウトされていたり高度に集積化されていたりすることがある。本発明において、配線層14は、層間絶縁層を挟んで複数の層にわたって形成されていてもよい。例えば、図1の青色画素2Bのように、層間絶縁層15を挟んで2層にわたって配線層14を設けてもよい。ただし本発明の表示装置において、配線層14は、必ずしも全ての画素に設ける必要はない。例えば、図1に示されるように、配線層14を設けない画素(赤色画素2R)があってもよい。
【0028】
配線層14の構成材料として、例えば、アルミニウム(Al)等の導電性材料が用いられる。尚、反射層3R、3G、3Bをそれぞれ導電性が高い材料で形成して配線層14としての機能(信号や電源を供給する機能)を持たせてもよい。
【0029】
また所定の画素に設けられる反射層3を形成する際に、この反射層3の形成工程と他の画素に設けられる配線層14の形成工程とを同時に行ってもよい。例えば、図1の表示装置1の製造するにあたり、層間絶縁層13上に、反射層3R及び配線層14の基礎となる導電性薄膜を成膜してフォトリソグラフィーによるパターン形成を行って反射層3R及び配線層14を一括して形成する。こうすることで、赤色画素2Rの領域に反射層3Rを形成する工程と、他の画素領域に配線層14を形成する工程と、を同時に行ってもよい。また図1の表示装置1の製造するにあたり、層間絶縁層15上に、反射層3Gと配線層14とを設ける際にも同様の方法を採用することができる。
【0030】
層間絶縁層15、16は、層間絶縁層13と反射層3との間に配線層14を設けた際に、配線層14と配線層14との間及び反射層3と配線層14との間をそれぞれ電気的に分離する目的で設けられる。層間絶縁層15,16の構成材料としては、層間絶縁層13と同様に、酸化シリコン(SiO2)等の無機絶縁性材料が挙げられる。
【0031】
平坦化層17は、駆動回路12や配線層14等を設けたことによって生じた凹凸を埋めて基板10を平坦にするために設けられる。平坦化層17の構成材料として、例えば、ポリイミド等の有機絶縁性材料や、酸化シリコン(SiO2)等の無機絶縁性材料が用いられる。
【0032】
次に、図1の表示装置1に含まれる白色有機発光素子20の構成部材について説明する。図1の表示装置1において、白色有機発光素子20は、下部電極(第一電極21)と、上部電極(第二電極27)と、下部電極と上部電極との間に配置される有機化合物層と、から構成される。
【0033】
本発明において、下部電極である図1中の第一電極21は、陽極としての機能を有しているが、これに限定されるものではなく、陰極としての機能を持たせてもよい。また第一電極21は、発光層(第一発光層23、第二発光層24)から反射層(3R、3G、3B)へ向かう光及び反射層(3R、3G、3B)にて反射された光を透過することができる透明電極層である。第一電極21の構成材料として、例えば、金属酸化物導電膜、具体的には、酸化インジウムと酸化錫との化合物膜(ITO)や、酸化インジウムと酸化亜鉛との化合物膜等を用いることができる。
【0034】
本発明において、第一電極21の形成方法としては特に限定されないが、例えば、スパッタ法を利用して形成される。
【0035】
有機化合物層は、少なくとも発光層を有する構成であればその層構成は特に限定されるものではない。例えば、図1の表示装置1に示されるように、ホール輸送層22と、第一発光層23と、第二発光層24と、電子輸送層25と、電子注入層26と、がこの順に積層されてなる積層体としてもよい。ここで有機化合物層に含まれ得る層としては、発光層の他に、ホール注入層、ホール輸送層、電子ブロック層、ホールブロック層、電子輸送層、電子注入層等が挙げられる。尚、本発明においては、有機化合物層は、形成工程の簡便化という観点から、各画素においてその層構成が共通しているのが好ましい。
【0036】
ところで図1の表示装置1には、発光層が2層(第一発光層23、第二発光層24)で構成されているが、本発明においてはこれに限定されるものではない。一方、白色有機発光素子20が白色光を出力することを考慮すると、発光層は白色発光する白色発光層とする。ここで白色発光層を設ける方法としては、赤色、緑色、青色の発光材料を全て一の発光層に含ませる方法、発光色が赤色、緑色あるいは青色又はマゼンダ、シアンあるいは黄色である複数の発光層を適宜組み合わせて設ける方法等が挙げられる。
【0037】
ホール輸送層22、第一発光層23、第二発光層24又は電子輸送層25に用いられる有機化合物としては、低分子材料であってもよいし、高分子材料であってもよい。また低分子材料と高分子材料との両方を用いて層を形成してもよい。
【0038】
ここで第一発光層23、第二発光層24において使用される発光材料としては、蛍光発光材料、燐光発光材料等が挙げられるが特に限定されるものではない。必要に応じて周知の材料を使用できる。尚、本発明では、第一発光層23には二種類の発光ドーパントが、第二発光層24には一種類の発光ドーパントが、それぞれ含まれているが、これらの発光ドーパントとして、公知のものを使用することができる。
【0039】
また電子注入層26の構成材料として、例えば、フッ化リチウムや、アルカリ金属、アルカリ土類金属等のような広く一般に用いられる電子注入材料を用いることができる。また、電子輸送性の有機材料中に、アルカリ金属やアルカリ土類金属、もしくはその化合物を0.1%〜数十%含有させることにより、電子注入層とすることもできる。その際、電子注入層26の膜厚を10nm〜100nm程度とすると、この後に形成する第二電極27、封止層31及びカラーフィルタ(33R,33G,33B)の成膜ダメージを緩和できるため好ましい。
【0040】
本発明の表示装置において、有機化合物層を構成する各層は、一般には、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマあるいは、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、インクジェット法等)により形成することができる。
【0041】
本発明において、上部電極である図1中の第二電極27は、陰極としての機能を有していが、これに限定されるものではなく、第一電極を陰極とした場合は陽極としての機能を持たせてもよい。第二電極27としては、例えば、透明な金属酸化物導電膜、具体的には、酸化インジウムと酸化錫の化合物膜(ITO)や、酸化インジウムと酸化亜鉛の化合物(IZO)等が挙げられる。これら透明な金属酸化物からなる導電膜を第二電極27に適用する場合、その膜厚は10nm以上1000nm以下、より好ましくは、30nm以上300nmの範囲で設定しておく。そうすると、電極のシート抵抗の低減と高い光学透過率とを両立できるため好ましい。
【0042】
尚、上述した「透明」とは、可視光に対する透過率が70%〜100%であることであり、より具体的には、消衰係数κが0.05以下、好ましくは、0.01以下であることをいう。このように減衰係数が小さければ小さいほど透明導電層として機能しつつ発光の減衰を抑える観点では好ましい。
【0043】
また、透明な金属酸化物導電膜の代わりに、半透明状にした金属薄膜を用いることもできる。この場合、具体的には、銀、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム等の金属単体や、これら金属単体を複数種組み合わせた合金を用いる。特に、銀とマグネシウムとからなる合金(銀マグネシウム)は、電子注入性及び発光の反射性の観点から好ましい。また、半透明状の金属薄膜を採用する際にその膜厚は、2nm以上50nm以下程度とする。そうすると、発光の一部が透過するため、発光の取り出し効率の観点で好ましい。
【0044】
本発明において、第二電極27の形成方法としては特に限定されないが、例えば、スパッタ法を利用して形成される。
【0045】
図1の表示装置1において、有機発光素子20を構成する第二電極27上には、有機発光素子20を封止するための封止層31が設けられている。そしてこの封止層31上には、カラーフィルタ基板32と各色のカラーフィルタ(33R,33G,33B)とからなる色変換部材が設けられている。
【0046】
封止層31は、有機発光素子20を封止して保護するために設けられている。封止層31の構成材料として、例えば、酸化シリコン(SiO2)、窒素化シリコン(SiN)等の光透過性の無機材料が挙げられる。
【0047】
色変換部材を構成するカラーフィルタ基板32、カラーフィルタ(33R,33G,33B)は、第一発光層23又は第二発光層24から発せられた光を、赤、緑、青の3原色のいずれかに変調して外部へ出力させるために設けられる。ここでカラーフィルタ(33R,33G,33B)は、例えば、樹脂に所望の色(赤色、緑色又は青色)の顔料が混入されてなる部材である。また各色のカラーフィルタ(33R,33G,33B)は、それぞれ第一電極21、第二電極27に対応した位置に設けられている。
【0048】
尚、本発明において、カラーフィルタの種類は、例えば、図1の表示装置1で示されるように三種類であるがこれに制限されるものではなく、必要に応じて二種類に減らしたり四種類以上に増やしたりすることが可能である。
【0049】
次に、光学干渉条件について説明する。有機発光素子では、光学距離Lが、下記数式(1)を満足すると、光学干渉による光の強めあい条件を利用することが可能となる。
【0050】
【数1】

【0051】
式(1)において、λは、共振波長であり、Lは、光学距離であり、φtは、上下各電極で発光が反射する際の位相シフトの和(rad)であり、mは、正の整数である。
【0052】
式(1)中の光学距離Lは、発光層内の発光領域から基板10が有する反射層3までにある各層の屈折率nとその膜厚dとの積ndの総和(n11+n22+・・・・)で表される。
【0053】
尚、mは、整数であることが望ましい。ただし干渉による光の強めあいが発現するものであれば、厳密に整数にする必要はなく、±10%の範囲内の誤差は許容される。
【0054】
また、反射界面での位相シフトΦにおいて、反射界面を形成する2つの材料のうち、光が入射する側にある材料を媒質I、他方の材料を媒質IIとし、それぞれの光学定数を(n1,k1)、(n2,k2)とする。そうすると、Φは、下記式(2)で表すことができる。尚、これら光学定数は、例えば、分光エリプソメーター等を用いて測定することができる。
【0055】
【数2】

(ただし、0≦φ<2π)
【0056】
本発明においては、表示装置に備える複数種の画素のうち少なくとも一種類の画素に関して、光学距離が式(1)を満足するように反射層3の位置を設定されていればよい。尚、本発明において、光学距離が式(1)を満足するように反射層3の位置を設定する画素の種類は、特に制限はない。どの画素においても適用可能であるが、適用される画素の種類は多ければ多いほど好ましい。
【0057】
ここで表示装置に含まれる全ての種類の画素に関し、式(1)を満足するように光学距離を設定すると、光学干渉効果を最大限に活用できるので、好ましい。この場合、相対的に発光効率の低い画素については、式(1)中のmの値を他の画素よりも小さく設定(例えば、m=1)し、反射層から発光層までの間の光学距離を短く設定するのが好ましい。式(1)を満足すると共に、次数をより低く設定して光学距離を短くするほど、より強い光学干渉を利用できるためである。
【0058】
ところで、本発明において、発光層と反射層3との膜厚方向の相対的距離を調整する方法としては、例えば、反射層3と発光層との間に設けられる層の膜厚を調整する方法、反射層3と層間絶縁層13との間に設ける介在層の膜厚を調整する方法がある。反射層3と発光層との間に設けられる層の膜厚を調整する方法としては、例えば、図1の表示装置を構成する層間絶縁層(15、16)、平坦化層17、第一電極21及びホール輸送層22について、数式(1)を満足するように膜厚を調整する。一方、反射層3と層間絶縁層13との間に設ける介在層の膜厚を調整する方法としては、例えば、図1の表示装置を構成する配線層14を所定の画素に限定して所望の膜厚で形成する。
【0059】
本発明の表示装置は、照明や、電子機器のディスプレイとして、また、表示装置用のバックライト等の様々な用途に適用することができる。電子機器のディプレイとしては、テレビ受像機、パーソナルコンピュータのディスプレイ、撮像装置の背面表示部、携帯電話の表示部、携帯ゲーム機の表示部等が挙げられる。その他、携帯音楽再生装置の表示部、携帯情報端末(PDA)の表示部、カーナビゲーションシステムの表示部等の用途がある。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
[実施例1]
図1に示される表示装置を、以下に説明する方法で作製した。
【0062】
シリコン基板(基材11)上に、駆動回路12を形成した後、基材11及び駆動回路12上に、酸化シリコン(SiO2)を成膜して層間絶縁層13を形成した。このとき層間絶縁層13の膜厚を200nmとした。尚、層間絶縁層13は、酸化シリコン膜の成膜後に平坦化処理を行った。
【0063】
次に、スパッタリング法より、アルミニウム合金からなる膜(AlNd膜)を成膜した。このときAlNd膜の膜厚を60nmとした。次に、このAlNd膜を所定のパターン形状になるように加工して、赤色画素2Rを設ける領域においては反射層3Rを、他の画素(緑色画素2G,青色画素2B)を設ける領域においては配線層14を、それぞれ形成した。次に、層間絶縁層13、反射層3R及び配線層14上に、酸化シリコン(SiO2)を成膜して層間絶縁層15を形成した。このとき層間絶縁層15の膜厚を234nmとした。尚、層間絶縁層15は、酸化シリコン膜の成膜後に平坦化処理を行った。
【0064】
次に、スパッタリング法より、アルミニウム合金からなる膜(AlNd膜)を成膜した。このときAlNd膜の膜厚を60nmとした。次に、このAlNd膜を所定のパターン形状になるように加工して、緑色画素2Gを設ける領域においては反射層3Gを、青色画素2Bを設ける領域においては配線層14を、それぞれ形成した。次に、層間絶縁層15、反射層3G及び配線層14上に、酸化シリコン(SiO2)を成膜して層間絶縁層16を形成した。このとき層間絶縁層16の膜厚を170nmとした。尚、層間絶縁層16は、酸化シリコン膜の成膜後に平坦化処理を行った。
【0065】
次に、スパッタリング法より、アルミニウム合金からなる膜(AlNd膜)を成膜した。このときAlNd膜の膜厚を60nmとした。次に、このAlNd膜を所定のパターン形状になるように加工して、青色画素2Bを設ける領域において反射層3Bを形成した。次に、層間絶縁層16及び反射層3B上に、酸化シリコン(SiO2)を成膜して平坦化層17を形成した。このとき平坦化層17の膜厚を77nmとした。尚、平坦化層17は、酸化シリコン膜の成膜後に平坦化処理を行った。次に、平坦化層17及び層間絶縁層(16、15、13)の一部を加工して、コンタクトホール18を、各画素(2R、2G,2B)につき1つずつ形成した。
【0066】
次に、スパッタリング法により、平坦化層17上に、ITOを成膜してITO膜を形成した。このときITO膜の膜厚を46nmとした。次に、このITO膜を、所定のパターン形状になるように加工して、各画素(2R、2G,2B)を設ける領域において第一電極21を形成した。尚、この第一電極21は、陽極として機能し、コンタクトホール18を通じて駆動回路12と電気接続されている。
【0067】
次に、真空蒸着法により、全ての画素において、下記式に示される化合物[I]を成膜しホール輸送層22を形成した。
【0068】
【化1】

【0069】
このときホール輸送層22の膜厚を19nmとし、成膜時の真空度を1×10-4Paとし、蒸着レートを0.2nm/secとした。尚、このホール輸送層22は、各画素に共通する層として形成されている。
【0070】
次に、真空蒸着法により、ホール輸送層22上に、シアン色の発光を示すドーパントを含む発光層(第一発光層23)を形成した。このとき第一発光層23の膜厚を10nmとした。次に、真空蒸着法により、第一発光層23上に、イエロー色の発光を示すドーパントを含む発光層(第二発光層24)を形成した。このとき第二発光層24の膜厚を14nmとした。
【0071】
次に、真空蒸着法により、第二発光層24上に、バソフェナントロリン(Bphen)を成膜して電子輸送層25を形成した。このとき、電子輸送層25の膜厚を13nmとし、蒸着時の真空度を1×10-4Paとし、蒸着レートを0.2nm/secとした。
【0072】
次に、真空蒸着法により、電子輸送層25上に、BphenとCs2Co3とを重量比にして90:10(=Bphen:Cs2Co3)の割合で共蒸着して電子注入層26を形成した。このとき、電子注入層26の膜厚を46nmとし、蒸着時の真空度を3×10-4Paとし、蒸着レートを0.2nm/secとした。
【0073】
次に、電子注入層26まで成膜した基板を、真空を破ることなくスパッタ装置に移動した後、スパッタ法により、電子注入層26上にITOを成膜し第二電極27を形成した。このとき、第二電極27の膜厚を34nmとした。尚、この第二電極27は、陰極として機能する。
【0074】
次に、第二電極27まで成膜した基板を、真空を破ることなく別のCVD装置に移動した後、CVD法により、第二電極27上にSINを成膜して封止層31を形成した。このとき封止層31の膜厚を2000nmとした。
【0075】
次に、封止層31上にアクリル樹脂からなる薄膜を膜厚500nmで形成した後、各画素領域に対応する位置に各色のカラーフィルタ(赤色カラーフィルタ33R、緑色カラーフィルタ33G、青色カラーフィルタ33B)を、膜厚2μmで形成した。尚、図2は、本実施例で作製された表示装置が有するカラーフィルタの分光透過特性を示す図である。
この後、透明なアクリル樹脂を膜厚500nmで成膜してカラーフィルタ基板32を形成した。以上により、表示装置を得た。
【0076】
本実施例で作製した表示装置において、各画素における共振波長及びmは、下記表1に示される通りである。
【0077】
【表1】

【0078】
表1より、本実施例で作製した表示装置は、赤色画素、緑色画素、青色画素において、それぞれm=3、m=2、m=1の強め合いの条件を適用することができる。ただし、赤色画素におけるm=3の光の強めあい条件は、m=1、2での強め合いの条件に比べ弱く、表示装置の発光特性への寄与は弱い。
【0079】
また本実施例で作製した表示装置について、NTSC比に基づいて得られる色再現範囲及び消費電力をそれぞれ評価した。結果を表6に示す。
【0080】
[実施例2]
実施例1において、層間絶縁層13上に成膜されたAlNd膜を、所定のパターン形状になるように加工して、全ての画素(赤色画素2R、緑色画素2G,青色画素2B)を設ける領域において配線層14を、それぞれ形成した。また層間絶縁層15上に成膜されたAlNd膜を、所定のパターン形状になるように加工した。これにより赤色画素2Rを設ける領域において反射層3Rを形成し、緑色画素2Gを設ける領域において反射層3Gを形成し、青色画素2Bを設ける領域において配線層14を、それぞれ形成した。そして層間絶縁層15、層間絶縁層16、平坦化層17、第一電極21、ホール輸送層22、第一発光層23、第二発光層24、電子輸送層25、電子注入層26及び第二電極27の膜厚を、それぞれ下記表2に示されるように変更した。
【0081】
【表2】

【0082】
これらを除いては、実施例1と同様の方法により表示装置を作製した。本実施例で作製した表示装置において、各画素における共振波長及びmは、下記表3に示される通りである。
【0083】
【表3】

【0084】
表3より、本実施例で作製した表示装置は、緑色画素、青色画素において、それぞれm=2、m=1の強め合いの条件を適用することができる。
【0085】
また本実施例で作製した表示装置について、NTSC比に基づいて得られる色再現範囲及び消費電力をそれぞれ評価した。結果を表6に示す。ところで、表示装置の色再現範囲と消費電力との間にはトレードオフの関係があり、色再現範囲が広くなると消費電力が高くなる一方で、色再現範囲が狭くなると消費電力が下がる傾向にある。そこで実施例1とほぼ同等の色再現範囲となるように、各層の膜厚を表2に示されるように変更した。
【0086】
[比較例1]
実施例1において、各色の画素において、基板10内に反射層(3R、3G、3B)を設けなかった。また第一電極21を形成する際に、ITOの代わりにアルミニウム合金(AlNd)を使用した。そして第一電極21、ホール輸送層22、第一発光層23、第二発光層24、電子輸送層25、電子注入層26及び第二電極27の膜厚を、それぞれ下記表4に示されるように変更した。尚、下記表4のように各層の膜厚を変更するのは色再現範囲が実施例1とほぼ同等となるようにするためである。
【0087】
【表4】

【0088】
これらを除いては実施例1と同様の方法により表示装置を作製した。つまり、本比較例において、作成される表示装置を構成する第一電極21は、反射電極として機能する。ここで本比較例で作製した表示装置において、各画素における共振波長及びmは、下記表5に示される通りである。
【0089】
【表5】

【0090】
また本実施例で作製した表示装置について、NTSC比に基づいて得られる色再現範囲及び消費電力をそれぞれ評価した。結果を表6に示す。
【0091】
【表6】

【0092】
表6より、実施例1及び2の表示装置は、比較例1に比べて、ほぼ同等の色再現性において、消費電力を半分以下に低減できる。このように、基板に含まれる配線層の一部を有機発光素子から出力される光を反射する反射層として各画素の光学距離を適宜調整することにより、良好な発光特性を示す表示装置が実現できる。
【0093】
また上記実施例は、RGBの色を、最終的にカラーフィルタ(色変換部材)を介して取り出す例であるが、このカラーフィルタを用いずにRGB個別の発光層を用いて本発明にて示される干渉構成を組み合わせた場合でも同様に本発明の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0094】
1:表示装置、2R(2G、2B):反射層、3R(3G、3B):反射層、10:基板、11:基材、12:駆動回路、13(15、16、17):層間絶縁層、14:配線層、18:コンタクトホール、20:白色有機発光素子、21:第一電極、22:ホール輸送層、23:第一発光層、24:第二発光層、25:電子輸送層、26:電子注入層、27:第二電極、31:封止層、32:カラーフィルタ基板、33R(33G、33B):カラーフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられる複数種類の画素と、から構成され、
前記画素が、基板上に設けられる第一電極と、第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に挟持され少なくとも発光層を含む有機化合物層と、からなる白色有機発光素子を有し、
前記基板が、前記第一電極の下方に設けられる反射層を前記画素ごとに有し、
前記白色有機発光素子上に色変換部材が設けられ、
前記色変換部材により前記白色有機発光素子から出力された光のスペクトルを変化させることで、前記画素から出力される光の色が前記画素の種類ごとに異なっており、
前記複数種類の画素のうち少なくとも一種類の画素において、前記色変換部材を透過する光に対して、前記発光層と前記反射層との膜厚方向の距離が、前記発光層と前記反射層との間における光学干渉による光の強めあい条件を満足する距離であることを特徴とする、表示装置。
【請求項2】
前記反射層の膜厚方向の配置位置が前記画素の種類ごとに異なっており、
前記複数種類の画素のそれぞれにおいて、前記色変換部材を透過する光に対して、前記発光層と前記反射層との膜厚方向の距離が、前記発光層と前記反射層との間における光学干渉による光の強めあい条件を満足する距離であることを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−58446(P2013−58446A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197262(P2011−197262)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】