説明

表示装置

【目的】 時間的な分割によって立体表示を行なわせるときにも、左眼と右眼との間で画像のクロスト−クを低減させることが可能である。
【構成】 画面を走査線により走査して表示ユニット13から表示光が出射すると、偏光制御ユニット14は、表示ユニット13からの表示光に対し、その偏光方向を制御する。すなわち、偏光制御ユニット14は、電極制御部50からの制御に基づき、表示ユニット13の走査線に対応して設けられた一対の電極9a,11a;9b,11b;9c,11c;9d,11d;9e,11eを表示ユニット13の走査線の走査と同期させて駆動し、これにより、左眼,右眼用の偏光方向の制御を時分割で行なう。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コンピュ−タ用の3次元表示や3次元テレビ受信機,人工現実感装置などに利用される表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、表示ユニットとしてCRTディスプレイを用い、また、左眼と右眼とに互いに直交する異なる検出子(偏光子)をもつメガネを設けて、左右眼に異なる画像を表示させ、画像の立体表示を行なう表示装置が知られている。この種の表示装置としては、例えば特開平3−120517号に開示されているように空間的な分割によって、1つの画面を左右眼用に分割して立体表示を行なわせるものと、例えば文献「テレビジョン学会誌 Vol.143,NO.8,1989,第763頁」に開示されているように時間的な分割によって、1つの画面を左右眼用に分割して立体表示を行なわせるものとがある。
【0003】空間的な分割によって1つの画面を左右眼用にそれぞれ分割して立体表示しようとする場合には、左眼用Lと右眼用Rとで空間的に異なる画素が用いられるので、左眼と右眼との間で画像のクロスト−クは存在しないが、実質的な(すなわち有効な)画素が半分になるという問題がある。
【0004】一方、時間的な分割によって1つの画面を左右眼用にそれぞれ分割して立体表示する装置では、人間の眼が60Hz程度でフリッカが目立たなくなるのを利用して、同一の画素を時間的に交互に(通常は100〜120Hzで交互に)左眼用L,右眼用Rとして切り換えるようになっている。従って、この場合には、左眼用Lと右眼用Rとで同一の画素を共用することができ、空間的な分割による上記の問題を回避することが可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、時間的な分割によって立体表示を行なわせる上述の文献に開示の装置では、CRTディスプレイの画面前面で,あるいは画面を上下に2分割して、画面をステレオシャッタで左眼用L,右眼用Rと時間的に切り換えているので、左眼と右眼との間で後述のように画像のクロスト−クが生じるという問題があり、またシャッタ切り換えにより輝度が低くなるという問題があった。
【0006】本発明は、時間的な分割によって、立体表示を行なわせるときにも、左眼と右眼との間で画像のクロスト−クを低減させることの可能な表示装置を提供することを目的している。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の表示装置は、画面を走査線により走査して表示光を出射する表示ユニットと、該表示ユニットからの表示光に対し、その偏光方向を制御する偏光制御ユニットとを備え、偏光制御ユニットは、表示ユニットの走査線に対応して設けられた偏光方向制御手段と、該偏光方向制御手段に対し駆動制御を行なう駆動制御手段とを有し、駆動制御手段は、表示ユニットの走査線の走査と同期させて、該走査線に対応した偏光方向制御手段を駆動するようになっていることを特徴としている。
【0008】請求項2記載の表示装置では、上記表示ユニットが、液晶ディスプレイであることを特徴としている。
【0009】請求項3記載の表示装置では、上記偏光方向制御手段が、対向する電極と、これらの電極間に設けられている電気光学効果をもつ物質層とを有し、前記電極の一方は、表示ユニットの全走査線に共通のものとなっていることを特徴としている。
【0010】請求項4記載の表示装置では、上記駆動制御手段が、表示ユニットの画面ごとに表示光の偏光方向を切り換えるよう偏向方向制御手段を制御するようになっていることを特徴としている。
【0011】請求項5記載の表示装置では、上記駆動制御手段が、一画面内において走査線ごとに表示光の偏光方向を切り換えるように、また、最初の画面と次の画面とで、同じ走査線に対する表示光の偏光状態が異なるように、偏光方向制御手段を制御するようになっていることを特徴としている。
【0012】請求項6記載の表示装置では、上記偏光方向制御手段にさらに、カラ−フィルタおよび/またはブラックマトリックスが設けられていることを特徴としている。
【0013】
【作用】画面を走査線により走査して表示ユニットから表示光が出射すると、偏光制御ユニットは、表示ユニットからの表示光に対し、その偏光方向を制御する。すなわち、偏光制御ユニットは、前記表示ユニットの走査線に対応して設けられた偏光方向制御手段を表示ユニットの走査線の走査と同期させて駆動し、これにより、左眼,右眼用の偏光方向の制御を時分割で行なう。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る表示装置の第1の実施例の構成図である。図1の表示装置は、表示ユニット13と、表示ユニット13からの表示光に対しその偏光方向を制御する偏光制御ユニット14とを有している。
【0015】この実施例では、表示ユニット13には、アクティブ・マトリックスの液晶ディスプレイが用いられており、この表示ユニット13は、z方向の偏光のみを通過させる偏光子1,7と、基板ガラス2,6と、走査電極3a,3b,3c,3d,3eと、TN液晶層4と、信号線5a,5b,5cとを有している。
【0016】また、偏光制御ユニット14は、基板ガラス8,12と、表示ユニット13の各走査電極3a,3b,3c,3d,3eにそれぞれ対応させて走査方向に平行に分割されて設けられた一対の電極9a,11a;9b,11b;9c,11c;9d,11d;9e,11eと、液晶層10と、一対の各電極への印加電圧を制御する電極制御部50とを有している。
【0017】また、この実施例の表示装置は、左眼と右眼とに互いに直交する異なる検出子(偏光子)15a,15bをもつ偏光メガネ16を用いるようになっている。
【0018】図2(a),(b),(c)は上記表示ユニット13および偏光制御ユニット14の基本的な機能を説明するための図である。表示ユニット13において、偏光子1は、z方向の偏光のみを透過させ、これをTN液晶層4に与えるようになっている。この場合、走査線3と信号線5との間に電圧が印加されていない画素のTN液晶部分は、図2(a)に示すように、偏光子1から透過光の偏光方向を90°回転しx方向の偏光にして偏光子7に与える。しかしながら、偏光子7はz方向の偏光のみを透過させるので、表示ユニット13は、走査線3と信号線5との間に電圧が印加されていない画素については、偏光子7から表示光として透過させない。信号線5との間に電圧が印加された画素のTN液晶は、図2(b),または図2(c)に示すように、偏光子1からの透過光の偏光方向を変化させないで、これを偏光子7に与える。すなわち偏光子1からのz方向の偏光をそのままの偏光状態で偏光子7に与える。偏光子7はz方向の偏光のみを透過させるので、表示ユニット13は、走査線3と信号線5との間に電圧が印加された画素については、偏光子7から表示光として透過させることができる。さらに、偏光子7,すなわち表示ユニット13を透過した表示光は、偏光制御ユニット14によって、左眼用L,右眼用Rの制御,すなわち偏光方向の制御がなされ、左眼に画像情報を表示させる場合には、偏光制御ユニット14の一対の電極,例えば9a,11a間に電圧を印加する。これにより、図2(b)に示すように、表示ユニット13からのz方向に偏光した表示光を、偏光方向を変化させずにそのままの状態で偏光制御ユニット14を透過させ、メガネ16の偏光子15aを介し、左眼に入射させることができる。一方、右眼に画像情報を表示させる場合には、偏光制御ユニット14の一対の電極,例えば9a,11a間に電圧を印加しない。これにより、図2(c)に示すように、表示ユニット13からのz方向に偏光した表示光の偏光方向を液晶層10において90°回転してx方向に変化させて偏光制御ユニット14を透過させ、メガネ16の偏光子15bを介し、右眼に入射させることができる。
【0019】ところで、この第1の実施例では、偏光制御ユニット14の電極制御部50は、1画面ごとに偏光方向の切換え,すなわち左眼用L,右眼用Rの切換えが交互になされるよう電極対9a,11a;9b,11b;9c,11c;9d,11d;9e,11eの駆動制御を行なうようになっている。すなわち、右眼用Rの画面では、この1画面中、全ての電極対の駆動は行なわないようになっている。また、左眼用Lの画面では、1走査線ごとにこれに対応して設けられている各電極対9a,11a;9b,11b;9c,11c;9d,11d;9e,11eを時分割で順次に駆動するようになっている。
【0020】次にこのような構成の表示装置の動作について説明する。図3には、表示ユニット13の走査電極の駆動例が示されている。図3を参照すると、最初の画面において走査線,すなわち走査電極は、左眼用Lの画像として3a,3b,3c,3d,3eの順にパルス電圧印加によって駆動され、次の画面においては、右眼用Rの画像として3a,3b,3c,3d,3eの順にパルス電圧印加によって駆動される。なお、表示ユニット13がアクティブ・マトリックス液晶ディスプレイであって、各走査線3a,3b,3c,3d,3eにパルス電圧を印加した後もコンデンサ効果により実効的な電圧が電極間に印加される駆動では(図3の破線部参照)、パルス電圧が印加された後、次の画面における走査が始まるまでの間もTN液晶層4には電圧が印加されている。すなわち、次の画面における走査が始まる直前まで表示光を透過させており、これが表示光の輝度に大きく関与している。実際のアクティブ・マトリックス駆動では、さらに2つ以上のフィ−ルドに分割して駆動するなどしているが、ここでは、簡単のため、図3のように、TN液晶層4の偏光方向を変化させるのに必要なパルス電圧,または実効的な電圧の2つだけが走査線に印加されるとする。また、このとき、TN液晶層4は、印加電圧にほぼ比例した偏光作用を示すと考える。
【0021】図3のように、走査線3a,3b,3c,3d,3eを、左眼用Lの画像表示用に順次に駆動し、次いで、右眼用Rの画像表示用に順次に駆動するときに、先づ、図4Aに示すように、全ての走査線3a,3b,3c,3d,3eに対する偏光制御ユニット14の各電極対9a,11a;9b,11b;9c,11c;9d,11d;9e,11eの全てに、(ア)の時期に同時にパルス電圧を印加する場合を考える。なお、この際、各電極対9a,11a;9b,11b;9c,11c;9d,11d;9e,11eにおいても、各走査線3b,3c,3d,3eにおけるのと同様に、パルス電圧を印加した後もコンデンサ効果により実効的な電圧が電極間にも印加されるようになっている(図4Aの破線部分)。
【0022】図4Aのような制御の仕方では、走査線3aの表示については、左右の画像を完全に分離することができるが、走査線3a以外の走査線については、3b,3c,3d,3eの順に左右の画像クロスト−クが大きくなり、立体視が不可能となる。例えば、走査線3eに着目すると、図3に示すように、(オ)の時期のパルス電圧による左眼表示用の表示光は、(オ)から(ケ)の時期まで表示ユニット13から透過する。一方、図4Aを参照すると、走査線3eに対応した電極対9e,11eは、(ア)から(オ)の時期まで駆動されるが、(カ)から(コ)までの期間は駆動されない。換言すれば、偏光制御ユニット14の電極対9e,11eは、(ア)から(オ)の時期までは、表示ユニット13からの透過光をz方向の偏光状態でメガネ16に向けて出射させる一方、(カ)から(コ)までの期間は、表示ユニット13からの透過光をx方向の偏光状態でメガネ16に向けて出射させる。この結果、走査線3eの左眼用Lの画像は(オ)の時期では左眼に入射するが、(カ)から(ケ)までの時期では右眼に入射してしまう。すなわち、本来左眼に表示されるべき画像のほとんどが右眼に表示されてしまう。このようなクロスト−クは、走査線数が増加すればするほど、増加し、このときには、複雑な画像の立体表示が困難となる。なお、図4Aのような制御の仕方は、前述した従来技術に対応したものとなっており、ディスプレイの画面全面で左眼用L,右眼用Rと時間的に切り換える制御となっている。
【0023】これに対し、第1の実施例の表示装置では、偏光制御ユニット14の電極制御部50は、例えば、図4Bに示すように、各走査線3a,3b,3c,3d,3eの駆動順序に対応させて各電極対9a,11a;9b,11b;9c,11c;9d,11d;9e,11eを時分割で順次に駆動制御する。すなわち、電極対9a,11aには、走査線3aへのパルス電圧印加と同期させてパルス電圧を印加し、また、電極対9e,11eには走査線3eへのパルス電圧印加と同期させてパルス電圧を印加するというように制御する(この場合、表示部分と同じ2端子または3端子等のアクティブ駆動となる)。このような制御の仕方では、表示ユニット13から左眼用L,右眼用Rとして出射された表示光を、ほとんどクロスト−クさせずに、左眼,右眼にそれぞれ入射させることができる。例えば、走査線3bの着目すると、図3に示すように、(イ)の時期のパルス電圧による左眼表示用の表示光は、(イ)から(カ)の時期まで表示ユニット13から透過する。一方、図4Bを参照すると、走査線3bに対応した電極対9b,11bも、(イ)から(カ)の時期まで駆動される。これにより、(イ)から(カ)までの走査線3b駆動の全時間を通じて、表示ユニット13からの透過光をz方向の偏光状態でメガネ16に向けて出射させ、その全てを左眼のみに入射させることができて、クロスト−クは生じない。他の走査線,例えば3eについて同様にして、(オ)から(ケ)までの走査線3e駆動の全期間を通じて、表示ユニット13からの透過光をz方向の偏光状態でメガネ16に向けて出射させ、その全てを左眼のみに入射させることができて、この場合にもクロスト−クは生じない。
【0024】このように図4Bの制御の仕方では、全ての走査線3a,3b,3c,3d,3eの表示について、左右の画像をほぼ完全に分離することができて、表示ユニット13から左眼用L,右眼用Rにそれぞれ出射された表示光をほとんどクロスト−クすることなく左眼,右眼にそれぞれ入射させ、表示することができる。なお、図4Bの制御例において、各走査線の駆動と偏光制御ユニット14の各電極対の駆動との間の同期は、液晶層4と10とに同じものが用いられる場合には、走査線駆動用の電源からの各電圧を単に各電極対に入力させるように電極制御部50を構成することによって達成される。また、液晶層4と10との間に応答速度や偏光度の制御性等の相違がある場合には、電極制御部50としては、液晶層4との相違に基づき、液晶層10の駆動タイミングを適宜に調節する構成のものを用いる必要がある。
【0025】また、電極制御部50は、必ずしも図4Bのように液晶層10をアクティブ駆動する必要はなく、例えば図4Cのように、ある走査線が反対の眼に対応した次の画像表示を行なう直前まで、液晶層10に電圧を印加するように構成されていても良い。また、この場合の方が偏光制御ユニット14をより簡単に構成することができる。
【0026】また、上述の例では、偏光制御ユニット14の電極対は、表示ユニット13における1本の走査線に対応させて走査線ごとに分割されており、従って、走査線数と同じ個数の電極対が設けられており、左右眼のクロスト−クを生じさせないためにはこれが最も望ましいが、走査線の本数が多いときには、偏光制御ユニット14の電極対を2本以上の複数本の走査線に対応させて分割し、複数本の走査線に同期させて1つの電極対を駆動するようにしても良い。この場合にも、クロスト−クの比較的少ない画像表示が可能である。
【0027】また、上記例において表示ユニット13として用いられた液晶ディスプレイは、その多くが液晶の電気光学効果を利用しており、偏光方向の制御によるシャッタ−効果を利用するものは、表示光の偏光方向がx方向かz方向に予めなっているものが多く、CRT前面に新たに偏光子を設ける必要がないため(すなわち、これによる光量の低下が全くないため)、偏光を利用した立体表示に向いている。もちろん、表示ユニット13にCRTディスプレイ等を用いる場合においても、偏光制御ユニット14を設け、走査線ごとに対応させて偏光制御ユニット14の電極対を駆動することにより、偏光方向を変化させることができ、クロスト−クを減少させることが可能である。ただし、CRTの表示面は曲面であるので、偏光制御ユニット14の各電極との間で位置ずれが生じやすい。この位置ずれを防止するためには、偏光制御ユニット14にプラスティックフィルムLCD等を用いるのが良く、これにより、走査線1本1本に対応した偏光方向制御ユニット14を簡単に作製することができる。
【0028】図5は本発明に係る表示装置の第2の実施例の構成図である。なお、図5において、図1と同様の箇所には同じ符号を付している。この第2の実施例の表示装置では、偏光制御ユニット24には、電極対の一方の電極に、表示ユニット13全面と同じ大きさをもち、かつ表示ユニット13の全走査線3a,3b,3c,3d,3eに共通な1枚の透明電極17が設けられている。表示ユニット13としての液晶ディスプレイは、走査線3a,3b,3c,3d,3eごとに時分割されて駆動されるので、偏光制御ユニット24としては、信号線5の方向に電圧を印加する部分を分割する必要はない。すなわち、液晶層10を挾む2つの電極のうちの一方を全面に共通のものとしても問題はない。これにより、第1の実施例に比べ、偏光制御ユニットの構造をより簡単なものにすることができる。なお、図5においては、全面に共通な電極を表示ユニット13側に設けたが、これを観察者側に設けても良い。
【0029】図6は本発明に係る表示装置の第3の実施例の構成図である。この第3の実施例の表示装置では、偏光制御ユニット14の観測者側に、R,G,Bに相当するカラ−フィルタ32と、ブラックマトリックス33とが設けられている。このように、カラ−フィルタ32と、ブラックマトリックス33とを設けることにより、カラ−の立体表示を行なわせることが可能となる。なお、カラ−フィルタ32とブラックマトリックス33とのいずれか一方が設けられている場合にも、カラ−の立体表示が可能である。また、カラ−フィルタ32やブラックマトリックス33を例えば表示ユニット13の電極5a,5b,5cと基板ガラス6との間に設けることも考えられる。しかしながら、表示部分としての表示ユニット13にカラ−フィルタやブラックマトリックスを設けるときには、表示光をその後、偏光制御ユニット14に通過させるので、表示画像のコントラストが低下したり、また液晶層10等の電気光学効果を有する材料の影響によって、もとのカラ−フィルタといくらか異なる色が表示されることがある。従って、カラ−フィルタ32またはブラックマトリックス33は、図6に示したように、偏光制御ユニット14の一部に設けられるのが良く、最良には、観測者に近い側に設けられるのが良い。この場合には、偏光制御ユニット14の液晶層10等の影響を受けず、コントラストに優れた色再現性の高い立体表示が可能となる。なお、図6の例は、図1の表示装置の偏光制御ユニット14にカラ−フィルタ32,ブラックマトリックス33をさらに付加した構成となっているが、これらを図5の構成の表示装置の偏光制御ユニット24に付加することももちろん可能であり、この場合にも、上述したと同様にカラ−の立体表示が可能となる。
【0030】上述の各実施例では、偏光制御ユニット14,または24の電極制御部50は、各電極対への印加電圧を制御することで、表示ユニット13からの表示光の偏光方向を最初の画面と次の画面とで左眼用L,右眼用Rに切り換え制御していた。すなわち、例えば図1の構成において、電極制御部50は、図3,図4Bに示したように、最初の画面では、表示ユニット13の各走査線に対応させて偏光制御ユニット14の各電極対を時分割で順次に駆動し、表示光の偏光状態をz方向にして左眼に入射させ、これにより1画面分の左眼用Lの画像表示を行ない、次いで、次の画面では、偏光制御ユニット14の各電極対を駆動せず、各走査線に対応させて表示光の偏光状態をx方向にして右眼に入射させ、これにより1画面分の右眼用Rの画像表示を行なっていた。
【0031】これに対し、一画面内において、各走査線ごとに左眼用L,右眼用Rの偏光制御を交互に行なうように偏光制御ユニット14,または24の電極制御部50を構成することもできる。すなわち、最初の画面では、走査線ごとにL,R,L,R,…の順で切り換え制御がなされ、次の画面では、走査線ごとに、最初の画面とは、反対にR,L,R,L,…の順で切り換え制御がなされるよう電極制御部50を構成することもできる。図7には、この場合に、走査線に印加した電圧が、左右どちらの画像情報によるものであるかが示されており、図7では、簡単のため、走査線数を6本ととし、60Hzの通常の走査がなされるとしている。
【0032】図7の例に基づき、上記制御動作例を説明する。先づ、最初の画面では、(ア),(イ),(ウ),(エ),(オ),(カ)の各時期に、パルス電圧印加により、各走査線3a,3b,3c,3d,3e,3fを順次に駆動し、z方向に偏光した表示光を出射させる。この際、偏光制御ユニット14,または24の電極制御部50では、奇数番目の走査線3a,3c,3eに対応する表示光については、左眼用Lにz方向に偏光して、これを偏光メガネ16から左眼に入射させる。また、偶数番目の走査線3b,3d,3fに対応する表示光については、右眼用Rにx方向に偏光して、これを偏光メガネ16から右眼に入射させるように、偏光制御ユニット14の各電極を制御する。このようにして、最初の画面では、各3a,3b,3c,3d,3e,3fに対応した表示光を、この順序で、左眼,右眼,左眼,右眼,左眼,右眼と交互に順次に入射させることができる。
【0033】最初の画面についての表示を終了後、次の画面では、(キ),(ク),(ケ),(コ),(サ),(シ)の各時期に、同様にして、パルス電圧印加により、各走査線3a,3b,3c,3d,3e,3fを順次に駆動し、z方向に偏光した表示光を出射させる。この際、偏光制御ユニット14の電極制御部50では、奇数番目の走査線3a,3c,3eに対応する表示光については、右眼用Rにx方向に偏光して、これを偏光メガネ16から右眼に入射させる。また、偶数番目の走査線3b,3d,3fに対応する表示光については、左眼用Lにz方向に偏光して、これを偏光メガネ16から左眼に入射させるように、偏光制御ユニット14の各電極を制御する。このようにして、次の画面では、各3a,3b,3c,3d,3e,3fに対応した表示光を、この順序で、右眼,左眼,右眼,左眼,右眼,左眼と交互に順次に入射させることができる。
【0034】以後、同様の仕方で、画面ごとに上記の動作を行なう。このような制御によって、表示画像は、最初の画面では、図8(a)のように、また、次の画面では、図8(b)のように、左右眼それぞれについて、垂直60Hzの走査速度をもつ2:1インタ−レ−スで表示される。この結果、フリッカの少ない立体画像が、現行のNTSCテレビと同様の垂直走査速度で、同様の画質で表示できる。このように、図6のような制御を行なえば、比較的小さい垂直走査速度で、フリッカの少ない高精細な立体表示が可能となる。
【0035】これと同様のことは、CRTの前面に走査線ごとに分割した偏光制御手段またはシャッタを設けノンインタ−レ−スを表示する場合にも可能である。但し、CRTで走査線ごとに分割していない偏光方向を制御する手段をもつものや、液晶シャッタメガネを利用したもので、左右眼それぞれ60Hzの2:1インタ−レ−スを表示するときには、120Hzの4:1インタ−レ−スにする必要があり、従って、その装置の作製は一般に難しくなる。
【0036】
【発明の効果】以上に説明したように、請求項1乃至6記載の発明では、表示ユニットの走査線の走査と同期させて、該走査線に対応した偏光方向制御手段を駆動するようになっているので、時間的な分割によって立体表示を行なわせるときにも、表示ユニットの種類によらずに、左眼と右眼との間での画像のクロスト−クを著しく低減させることができる。
【0037】また、請求項2記載のように表示ユニットに液晶ディスプレイを用いる場合には、CRTディスプレイを用いる場合に比べ、新たな偏光子を設けたりする必要がなくなり、また表示面が平面であることにより、偏光制御ユニットを表示ユニット上に容易に作製することができるなどの利点がある。
【0038】また、請求項3記載の発明では、偏光方向制御手段の電極の一方を表示ユニットの全走査線に共通のものとしているので、偏光方向制御手段をより簡単な仕方で作製することができる。
【0039】また、請求項4記載の発明では、上記駆動制御手段が、表示ユニットの画面ごとに表示光の偏光方向を切り換えるよう偏向方向制御手段を制御するようになっているので、2画面で左右眼にそれぞれ対応する画像を表示させることができる。
【0040】また、請求項5記載の発明では、上記駆動制御手段が、一画面内において走査線ごとに表示光の偏光方向を切り換えるように、また、最初の画面と次の画面とで、同じ走査線に対する表示光の偏向状態が異なるように、前記偏光方向制御手段を制御するようになっているので、請求項4記載の発明と同様に2画面で左右眼にそれぞれ対応する画像を表示させることができるとともに、さらに比較的小さい垂直走査速度で、フリッカの少ない高精細な立体表示が可能となる。
【0041】また、請求項6記載の発明では、上記偏光方向制御手段にはさらに、カラ−フィルタおよび/またはブラックマトリックスが設けられているので、コントラストの高い色再現性に優れたカラ−の立体表示を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る表示装置の一実施例の構成図である。
【図2】(a),(b),(c)は図1の表示装置の表示ユニットおよび偏光制御ユニットの基本的な機能を説明するための図である。
【図3】表示ユニットの走査線の駆動例を示す図である。
【図4A】偏光制御ユニットの各電極対の駆動例をそれぞれ示す図である。
【図4B】偏光制御ユニットの各電極対の駆動例をそれぞれ示す図である。
【図4C】偏光制御ユニットの各電極対の駆動例をそれぞれ示す図である。
【図5】本発明に係る表示装置の第2の実施例の構成図である。
【図6】本発明に係る表示装置の第3の実施例の構成図である。
【図7】図1の表示装置の他の偏光制御例を示す図である。
【図8】(a),(b)は図7の偏光制御がなされる場合の最初の画面,次の画面の表示画像をそれぞれ示す図である。
【符号の説明】
1,7 偏光子
2,6 基板ガラス
3a,3b,3c,3d,3e 走査電極
4 TN液晶層
5a,5b,5c 信号線
8,12 基板ガラス
9a,11a 電極対
9b,11b 電極対
9c,11c 電極対
9d,11d 電極対
9e,11e 電極対
10 液晶層
13 表示ユニット
14,24 偏光制御ユニット
15a,15b 偏光子
16 偏光メガネ
32 カラ−フィルタ
33 ブラックマトリックス
50 電極制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 画面を走査線により走査して表示光を出射する表示ユニットと、該表示ユニットからの表示光に対し、その偏光方向を制御する偏光制御ユニットとを備え、前記偏光制御ユニットは、前記表示ユニットの走査線に対応して設けられた偏光方向制御手段と、該偏光方向制御手段に対し駆動制御を行なう駆動制御手段とを有しており、前記駆動制御手段は、表示ユニットの走査線の走査と同期させて、該走査線に対応した偏光方向制御手段を駆動するようになっていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】 請求項1記載の表示装置において、前記表示ユニットは、液晶ディスプレイであることを特徴とする表示装置。
【請求項3】 請求項1記載の表示装置において、前記偏光方向制御手段は、対向する電極と、これらの電極間に設けられている電気光学効果をもつ物質層とを有し、前記電極の一方は、表示ユニットの全走査線に共通のものとなっていることを特徴とする表示装置。
【請求項4】 請求項1記載の表示装置において、前記駆動制御手段は、表示ユニットの画面ごとに表示光の偏光方向を切り換えるよう前記偏向方向制御手段を制御するようになっていることを特徴とする表示装置。
【請求項5】 請求項1記載の表示装置において、前記駆動制御手段は、一画面内において走査線ごとに表示光の偏光方向を切り換えるように、また、最初の画面と次の画面とで、同じ走査線に対する表示光の偏光状態が異なるように、前記偏光方向制御手段を制御するようになっていることを特徴とする表示装置。
【請求項6】 請求項1記載の表示装置において、前記偏光方向制御手段にはさらに、カラ−フィルタおよび/またはブラックマトリックスが設けられていることを特徴とする表示装置。

【図2】
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【図4A】
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【図1】
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【図3】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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