説明

表示装置

4分の1波長板WPと発光層64との間に配置され、所定の螺旋ピッチで配列された液晶分子を含み、第1円偏光を透過するとともに第1円偏光とは逆極性の所定波長の第2円偏光を選択反射する選択反射層SRを備え、発光層64は少なくとも1つのピーク波長を有し、ピーク波長の数をmとしたとき、選択反射層SRの選択反射波長域がm個あり、発光層64から出射された光のピーク波長をλ
p(k)(波長の短い順にk=1,2,…,m)としたとき、各ピーク波長λp(k)が各選択反射波長域を形成する選択反射層SRの異常光屈折率ne(k)と螺旋ピッチP(k)とを乗じた値ne(k)P(k)より小さく、常光屈折率no(k)と螺旋ピッチP(k)とを乗じた値no(k)P(k)より大きい値であり、なおかつ、各選択反射波長域を形成する選択反射層SR間で、ne(k−1)P(k−1)<no(k)P(k)であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示装置に係り、特に、円偏光板を具備し高コントラスト化が可能な自己発光素子を搭載した表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示装置に搭載可能な自己発光素子として代表的な有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子は、それに適用される有機発光材料が実用域に達し、低消費電力、広視野角、薄型軽量などの特徴を有する表示素子として注目されている。
【0003】
一般的な有機EL素子は、主に光反射性を有する第1電極と主に光透過性を有する第2電極との間に発光層を挟持した構造を有している。このような構造の有機EL素子では、発光層で発光した光を第2電極側から取り出す。すなわち、発光層で発光した光の一部は第2電極から観察者側に向けて出射され、発光層から第1電極側に向かって出射された光は第1電極にて第2電極に向けて反射される。つまり、第1電極は、発光した光をなるべく観察者側に出射させる機能を有している。
【0004】
しかしながら、こうした構造の有機EL素子の場合、反射層としての機能を有する第1電極の反射率が高いほど、コントラスト特性を低下させてしまう。すなわち、発光層を発光させない状態つまり黒表示状態で外光が入射した場合、第1電極が外光を反射してしまうので、黒表示の黒レベルが劣化してしまう。また、発光層を発光させた状態で外光が入射した場合も、外光が表示画面に映り込んでしまいコントラストを低下させてしまう。
【0005】
このような問題を回避するには、反射層の反射率を下げる方法(極端に言えばゼロに近づける方法)や、外光の反射成分を円偏光板にて吸収する方法が考えられている。後者の方法は、次のような原理でコントラストを改善しようとするものである。
【0006】
すなわち、有機EL素子の第2電極側から入射した外光は、偏光板及び4分の1波長板を透過することにより例えば右回りの円偏光となる。この右円偏光は、基板界面や反射層にて反射されると、右円偏光の位相が180度ずれるため、左回りの円偏光となる。この左円偏光は、4分の1波長板を透過すると入射したときとは直交する方位の直線偏光となる。このため、この直線偏光は、偏光板の吸収軸と平行であり、偏光板にて吸収される。
【0007】
したがって、反射層の反射率に関係なく外光は反射層にて反射されないのと同様の効果を得る。また、同様の効果は反射層に限らず、基板界面での誘電反射や配線電極での反射に対しても有効なので、偏光板及び4分の1波長板を設けない場合と比較して、コントラスト特性の改善が可能である(例えば、特開平9−127885号公報参照。)。
【0008】
しかしながら、発光層にて発光した光も右円偏光及び左円偏光を含んでおり、右円偏光は偏光板を透過するが、左円偏光は偏光板にて吸収される。つまり、発光層を出射した光のうち少なくとも50%は偏光板で吸収される。このため、表示輝度自体が低下するという問題が生ずる。現状実用化されている偏光板を用いた場合、偏光板及び4分の1波長板を設けない場合と比較して、約56%程度の表示輝度が低下する。
【0009】
上述したように、有機EL素子などの自己発光素子では、発光層にて発光した光を効率良く取り出すために設けられた反射層は、コントラスト特性の低下を招く。この問題は、特に明るい環境、つまり外光が強い条件下で顕著となる。これに対処するために、偏光板及び4分の1波長板を設けることにより、コントラスト特性が改善されるものの、表示輝度の低下を招く。
【発明の開示】
【0010】
この発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、自己発光素子を搭載した表示装置であって、コントラスト特性を改善することが可能であるとともに、表示輝度を向上することが可能な表示装置を提供することにある。
【0011】
この発明の第1の様態による表示装置は、
反射層、発光層、4分の1波長板、及び、偏光板を備え、前記偏光板と前記発光層との間に前記4分の1波長板が位置するとともに、前記4分の1波長板と前記反射層との間に前記発光層が位置する表示装置であって、
前記4分の1波長板と前記発光層との間に配置され、所定の螺旋ピッチで配列された液晶分子を含み、第1円偏光を透過するとともに第1円偏光とは逆極性の所定波長の第2円偏光を選択反射する選択反射層を備え、
前記発光層は少なくとも1つのピーク波長を有し、ピーク波長の数をmとしたとき、前記選択反射層はm個の選択反射波長域を有し、
前記発光層から出射された光のピーク波長をλp(k)(波長の短い順にk=1,2,…,m)としたとき、各ピーク波長λp(k)が前記各選択反射波長域を形成する前記選択反射層の異常光屈折率ne(k)と螺旋ピッチP(k)とを乗じた値ne(k)P(k)より小さく、常光屈折率no(k)と螺旋ピッチP(k)とを乗じた値no(k)P(k)より大きい値であり、
なおかつ、前記各選択反射波長域を形成する前記選択反射層間で、ne(k−1)P(k−1)<no(k)P(k)であることを特徴とする。
【0012】
この発明の第2の様態による表示装置は、
反射層、発光層、カラーフィルター、4分の1波長板、及び、偏光板を備え、前記偏光板と前記カラーフィルターとの間に前記4分の1波長板が位置するとともに、前記4分の1波長板と前記発光層との間に前記カラーフィルターが位置する表示装置であって、
前記4分の1波長板と前記カラーフィルターとの間に配置され、所定の螺旋ピッチで配列された液晶分子を含み、第1円偏光を透過するとともに第1円偏光とは逆極性の所定波長の第2円偏光を反射する選択反射層を備え、
前記発光層から出射され前記カラーフィルターを透過した光は少なくとも1つ以上のピーク波長を有し、ピーク波長の数をmとしたとき、前記選択反射層はm個の選択反射波長域を有し、
前記カラーフィルターを透過した光のピーク波長をλp(k)(波長の短い順にk=1,2,…,m)としたとき、各ピーク波長λp(k)が前記各選択反射波長域を形成する前記選択反射層の異常光屈折率ne(k)と螺旋ピッチP(k)とを乗じた値ne(k)P(k)より小さく、常光屈折率no(k)と螺旋ピッチP(k)とを乗じた値no(k)P(k)より大きい値であり、
なおかつ、前記各選択反射波長域を形成する前記選択反射層間で、ne(k−1)P(k−1)<no(k)P(k)であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
[図1]図1は、この発明の一実施の形態に係る有機EL表示装置の構成を概略的に示す斜視図である。
[図2]図2は、図1に示した有機EL表示装置の構造を概略的に示す断面図である。
[図3]図3は、有機EL表示装置を構成する各画素の発光スペクトルの分布を概略的に説明するための図である。
[図4]図4は、図2に示した有機EL表示装置における選択反射層の構造例を概略的に示す図である。
[図5]図5は、各画素で発光した左円偏光成分の反射率と、選択反射層における選択反射機能との関係を説明するための図である。
[図6]図6は、上面発光方式の表示装置における光学的機能を説明するための図である。
[図7]図7は、この発明の実施例に係る表示装置の構成を概略的に示す図である。
[図8]図8は、選択反射層を設けない表示装置と、選択反射層を設けた表示装置とでの発光光の透過率の相対比較結果を示す図である。
[図9]図9は、選択反射層を設けた表示装置における反射防止機能を説明するための図である。
[図10]図10は、この発明の他の実施例に係る表示装置の構成を概略的に示す図である。
[図11]図11は、この発明の他の実施例に係る表示装置の構成を概略的に示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の一実施の形態に係る表示装置について図面を参照して説明する。なお、この実施の形態では、表示装置として、自己発光型表示装置、例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置を例にして説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、有機EL表示装置1は、画像を表示する表示エリア102を有するアレイ基板100と、アレイ基板100の少なくとも表示エリア102を密封する封止部材200とを備えて構成されている。アレイ基板100の表示エリア102は、マトリクス状に配置された複数の画素PX(R、G、B)によって構成されている。
【0016】
各画素PX(R、G、B)は、オン画素とオフ画素とを電気的に分離しかつオン画素への映像信号を保持する機能を有する画素スイッチ10と、画素スイッチ10を介して供給される映像信号に基づき表示素子へ所望の駆動電流を供給する駆動トランジスタ20と、駆動トランジスタ20のゲート−ソース間電位を所定期間保持する蓄積容量素子30とを備えて構成されている。これら画素スイッチ10及び駆動トランジスタ20は、例えば薄膜トランジスタにより構成され、ここではそれらの半導体層にポリシリコンを用いている。
【0017】
また、各画素PX(R、G、B)は、表示素子としての有機EL素子40(R、G、B)をそれぞれ備えている。すなわち、赤色画素PXRは、赤色に発光する有機EL素子40Rを備えている。緑色画素PXGは、緑色に発光する有機EL素子40Gを備えている。青色画素PXBは、青色に発光する有機EL素子40Bを備えている。
【0018】
各種有機EL素子40(R、G、B)の構成は、基本的に同一であって、有機EL素子40は、マトリクス状に配置され画素PX毎に独立島状に形成された第1電極60と、第1電極60に対向して配置され全画素PXに共通に形成された第2電極66と、これら第1電極60と第2電極66との間に保持された有機活性層64と、によって構成されている。
【0019】
アレイ基板100は、画素PXの行方向(すなわち図1のY方向)に沿って配置された複数の走査線Ym(m=1、2、…)と、走査線Ymと略直交する方向(すなわち図1のX方向)に沿って配置された複数の信号線Xn(n=1、2、…)と、有機EL素子40の第1電極60側に電源を供給するための電源供給線Pと、を備えている。
【0020】
電源供給線Pは、表示エリア102の周囲に配置された図示しない第1電極電源線に接続されている。有機EL素子40の第2電極66側は、表示エリア102の周囲に配置されコモン電位ここでは接地電位を供給する図示しない第2電極電源線に接続されている。
【0021】
また、アレイ基板100は、表示エリア102の外周に沿った周辺エリア104に、走査線Ymに走査信号を供給する走査線駆動回路107と、信号線Xnに映像信号を供給する信号線駆動回路108と、を備えている。すべての走査線Ymは、走査線駆動回路107に接続されている。また、すべての信号線Xnは、信号線駆動回路108に接続されている。
【0022】
画素スイッチ10は、ここでは走査線Ymと信号線Xnとの交差部近傍に配置されている。画素スイッチ10のゲート電極は走査線Ymに接続され、ソース電極は信号線Xnに接続され、ドレイン電極は蓄積容量素子30を構成する一方の電極及び駆動トランジスタ20のゲート電極に接続されている。駆動トランジスタ20のソース電極は蓄積容量素子30を構成する他方の電極及び電源供給線Pに接続され、ドレイン電極は有機EL素子40の第1電極60に接続されている。
【0023】
図2に示すように、アレイ基板100は、配線基板120上に配置された有機EL素子40を備えている。なお、配線基板120は、ガラス基板やプラスチックシートなどの絶縁性支持基板上に、画素スイッチ10、駆動トランジスタ20、蓄積容量素子30、走査線駆動回路107、信号線駆動回路108、各種配線(走査線、信号線、電源供給線等)などを備えて構成されたものとする。
【0024】
有機EL素子40を構成する第1電極60は、配線基板120の絶縁膜上に配置されている。この第1電極60は、主に光透過性を有する透過膜60Tと、主に光反射性を有する反射膜60Rとで構成され、陽極として機能する。ここでは、透過膜60Tは、駆動トランジスタ20に電気的に接続され、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム・ティン・オキサイド)やIZO(インジウム・ジンク・オキサイド)などの光透過性導電部材によって形成されている。また、反射膜60Rは、絶縁層HRCを介して透過膜60Tの下層すなわち配線基板120側に配置され、例えばモリブデン(Mo)/アルミニウム(Al)/モリブデン(Mo)の積層膜によって形成されている。この反射膜60Rは、ここでは、透過膜60Tと同様に駆動トランジスタ20に電気的に接続されているが、必ずしも駆動トランジスタ20に接続されている必要はない。つまり、第1電極60においては、陽極として機能するのは透過膜60Tを構成する導電部材であって、反射膜60Rは、有機活性層64で発生した所定波長の光を反射するように構成されていれば良い。また、第1電極60は、単層にて形成することも可能である。すなわち図2における透過膜60Tの代わりに陽極になり得る性質と光反射性とを兼ね備える材料を用いることができ、この場合には図2における反射膜60Rは不要となる。このような単層の第1電極に適する材料は例えばPt等がある。
【0025】
有機活性層64は、少なくとも発光機能を有する有機化合物を含み、各色共通に形成されるホールバッファ層、エレクトロンバッファ層、及び各色毎に形成される発光層の3層積層で構成されても良く、機能的に複合された2層または単層で構成されても良い。例えば、ホールバッファ層は、陽極および発光層間に配置され、芳香族アミン誘導体やポリチオフェン誘導体、ポリアニリン誘導体などの薄膜によって形成される。発光層は、赤、緑、または青に発光する発光機能を有する有機化合物によって形成される。この発光層は、例えば高分子系の発光材料を採用する場合には、PPV(ポリパラフェニレンビニレン)やポリフルオレン誘導体またはその前駆体などの薄膜により構成される。
【0026】
第2電極66は、有機活性層64上に各有機EL素子40に共通に配置される。この第2電極66は、主に光透過性を有する金属膜によって形成され、陰極として機能する。ここでは、第2電極66は、例えばCa(カルシウム)、Al(アルミニウム)、Ba(バリウム)、Ag(銀)、Yb(イッテルビウム)などの電子注入機能を有する金属膜によって形成されている。この第2電極66は、陰極として機能する金属膜の表面をカバーメタルで被覆した2層構造であっても良い。カバーメタルは、例えばアルミニウムによって形成される。
【0027】
この第2電極66の表面は、乾燥剤として吸湿性を有する材料で被覆されることが望ましい。すなわち、有機EL素子40は、水分に触れると、その発光特性が急速に劣化する。このため、有機EL素子40を水分から保護する目的で、その表面に相当する第2電極66上に乾燥剤68が配置される。この乾燥剤68は、吸湿性を有する材料であれば良く、例えばリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)などのアルカリ金属単体またはその酸化物、あるいは、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)などのアルカリ土類金属またはその酸化物などで形成される。
【0028】
また、アレイ基板100は、表示エリア102において、少なくとも隣接する色毎に画素RX(R、G、B)間を分離する隔壁70を備えている。隔壁70は、各画素を分離するよう形成することが望ましく、ここでは、隔壁70は、各第1電極60の周縁に沿って格子状に配置され、また、第1電極60を露出する隔壁の開口形状が円形または多角形となるよう形成されている。
【0029】
さらに、アレイ基板100は、配線基板120における一方の主面のうち、少なくとも有効部106を覆うように配置された封止体300を備えている。ここでは、有効部106は、少なくとも画像を表示するための複数の画素PX(R、G、B)を備えた表示エリア102を含むものとするが、走査線駆動回路107や信号線駆動回路108などを備えた周辺エリア104を含んでも良い。この封止体300の表面は、ほぼ平坦化されている。
【0030】
封止部材200は、封止体300の表面全体に塗布された接着剤により封止体300に接着されている。この封止部材200は、プラスチックシートなどの光透過性を有する絶縁性フィルムや、ダイアモンドライクカーボン等によって構成される。
【0031】
封止体300は、少なくとも1層のバッファ層311…と、バッファ層より形成面積が大きなパターンであってしかもバッファ層を外気から遮蔽するよう被覆する少なくとも2層のバリア層320、321…と、を積層した構造を有している。ここでは、封止体300は、第1バリア層320、第1バリア層320上において有効部106に対応するように配置されたバッファ層311、及び、バッファ層311の側面を含む全体を被覆する第2バリア層321によって構成されている。
【0032】
バッファ層311…は、例えばアクリル系樹脂などの有機樹脂材料により、例えば0.1〜2μm程度の膜厚で形成される。特に、ここでは、このバッファ層311…を形成する材料としては、比較的粘性の低い液体の状態で塗布され下層の凹凸を吸収した状態で硬化するような材料を選択することが望ましい。このような材料を用いて形成されたバッファ層311…は、それらの表面を平坦化する平坦化層としての機能を有する。
【0033】
各バリア層320、321…は、例えば、アルミニウムやチタンなどの金属材料、ITOやIZOなどの金属酸化物材料、または、アルミナなどのセラミック系材料などの無機系材料により、例えば0.1μmオーダの膜厚で形成される。EL発光を第1電極60側から取り出す下面発光方式の場合、バリア層320、321…の少なくとも1層として適用される材料は、遮光性及び光反射性を有していることが望ましい。また、EL発光を第2電極66側から取り出す上面発光方式の場合、バリア層320、321…として適用される材料は光透過性を有していることが望ましい。
【0034】
このように構成された有機EL素子40では、第1電極60と第2電極66との間に挟持された有機活性層64にホール及び電子を注入し、これらを再結合させることにより励起子を生成し、この励起子の失活時に生じる所定波長の光放出により発光する。すなわち、各画素PX(R、G、B)を構成する有機EL素子40は、有機活性層(発光層)64からそれぞれ異なる単一ピーク波長のEL発光を放出する。例えば、3種の画素を1ピクセル単位とした場合、赤色のピーク波長(620nm付近)を有する赤色画素PXR、緑色のピーク波長(550nm付近)を有する緑色画素PXG、及び、青色のピーク波長(440nm付近)を有する青色画素PXBによってカラー表示及び白黒表示を可能としている。
【0035】
上述した構成の上面発光方式では、有機活性層64の発光層からのEL発光は、アレイ基板100の上面側すなわち第2電極66側から出射され、また、第1電極60側に向かって出射されたEL発光は反射膜60Rにて反射され第2電極66側から出射される。
【0036】
ところで、上述した上面発光方式の表示装置は、EL発光の出射面側すなわち封止部材200上に、順に積層配置された選択反射層SR、4分の1波長板WP、及び、偏光板PPを備えている。すなわち、図2に示した構成例では、偏光板PPと有機活性層(発光層)64との間に4分の1波長板WPが位置するとともに、4分の1波長板WPと反射膜60Rとの間に有機活性層64が位置する。
【0037】
選択反射層SRは、所定の螺旋ピッチで配列された液晶分子を含むとともに、第1円偏光(例えば右円偏光)を透過するとともに第1円偏光とは逆極性の所定波長の第2円偏光(例えば左円偏光)を反射する機能を有している。この選択反射層SRは、有機活性層64が発生するEL発光のピーク波長の数をmとしたときに、m個の選択反射波長域を有するように構成されている。
【0038】
すなわち、この実施の形態では、赤色画素PXR、緑色画素PXG、及び、青色画素PXBの3種の画素を平面状に配列し1ピクセル単位を構成する場合、それぞれの画素PX(R、G、B)に設けられた有機EL素子40の有機活性層64は単一のピーク波長のEL発光を出射する。このため、ピーク波長数mは3である。例えば、図3に示すように、青色画素PXBの有機活性層64から出射されるEL発光は、440nm付近において単一の第1ピーク波長λp(1)を有する。また、緑色画素PXGの有機活性層64から出射されるEL発光は、550nm付近において単一の第2ピーク波長λp(2)を有する。赤色画素PXRの有機活性層64から出射されるEL発光は、620nm付近において単一の第3ピーク波長λp(3)を有する。つまり、有機活性層64から出射された光のピーク波長は、短い順に、λp(1)、λp(2)、λp(3)となる。
【0039】
したがって、この実施の形態では、選択反射層SRは、3個の選択反射波長域を有するように構成されている。すなわち、選択反射層SRは、図4に示すように、第1反射層SR1、第2反射層SR2、及び、第3反射層SR3を備えている。
【0040】
第1反射層SR1は、第1ピーク波長λp(1)に対応する第1螺旋ピッチP(1)で配列された液晶分子を含んでいる。この第1反射層SR1は、第1円偏光を透過するとともに第1円偏光とは逆極性の第1ピーク波長λp(1)を含む所定波長の第2円偏光を反射する。
【0041】
第2反射層SR2は、第2ピーク波長λp(2)に対応する第2螺旋ピッチP(2)で配列された液晶分子を含んでいる。この第2反射層SR2は、第1円偏光を透過するとともに第1円偏光とは逆極性の第2ピーク波長λp(2)を含む所定波長の第2円偏光を反射する。なお、第2螺旋ピッチP(2)は、第1螺旋ピッチP(1)より大きく設定されている。
【0042】
第3反射層SR3は、第3ピーク波長λp(3)に対応する第3螺旋ピッチP(3)で配列された液晶分子を含んでいる。この第3反射層SR3は、第1円偏光を透過するとともに第1円偏光とは逆極性の第3ピーク波長λp(3)を含む所定波長の第2円偏光を反射する。なお、第3螺旋ピッチP(3)は、第2螺旋ピッチP(2)より大きく設定されている。
【0043】
各反射層SR(1,2,3)は、螺旋ピッチの異なるコレステリック液晶層を備えて構成されている。各反射層SR(1,2,3)ともに、図示するように液晶分子(一般的にはネマティック液晶分子)LMが水平面(各反射層の主平面)Hとほぼ平行な方向に配列し、かつ法線方向(層厚方向;各反射層の主平面に対して垂直な方向)Vに捩れを持って配列している。上述した各反射層SR(1,2,3)の螺旋ピッチとは、液晶分子LMが水平面内で1回転する各反射層の法線方向Vの長さに相当する。ここでは、螺旋ピッチは、短い順に、P(1)、P(2)、P(3)としている。
【0044】
このような反射層SR(1,2,3)は、コレステリック液晶層、コレステリック液晶層をポリマー化させたもの、若しくは、コレステリック液晶層をフィルム化させたもののいずれかによって構成されることが望ましい。図2に示したような構成例の場合、封止部材200または4分の1波長板WP上に順次複数の反射層SR(1,2,3)を直接積層して選択反射層SRを形成しても良いし、ポリイミド樹脂膜などのベースフィルム上に複数の反射層SR(1,2,3)を積層して選択反射層SRを形成した後に封止部材200または4分の1波長板WP上に接着されても良い。また、選択反射層SRが十分に高い外気に対する(つまり水分や酸素に対する)遮蔽性能を有している場合には、封止部材200としての機能を兼ね備えて封止体300上に配置されても良いし、封止体300としての機能を兼ね備えて有機EL素子40上に直接配置されても良い。
【0045】
各反射層SR(1,2,3)の螺旋ピッチは、液晶材料や液晶分子を配向するためのカイラル材の種類を適宜最適な組み合わせで選択することで制御可能であるし、同一カイラル材を用いた場合であってもカイラル材の濃度を調整することでも制御可能である(濃度が高いほど螺旋ピッチが短い)。
【0046】
図3に示したように、発光ピーク波長は赤色、緑色、青色の3つであり、各々波長の短い順にλp(1)、λp(2)、λp(3)としたとき、λp(1)の波長近傍における選択反射層SR(特に第1反射層SR1)の常光屈折率no(1)と選択反射層SRの螺旋ピッチ(特に第1反射層SR1の螺旋ピッチ)P(1)とを乗じた値no(1)P(1)、及び、異常光屈折率ne(1)と螺旋ピッチP(1)とを乗じた値ne(1)P(1)は、ピーク波長λp(1)に対して、no(1)P(1)<λp(1)<ne(1)P(1)となるように設定されている。
【0047】
同様に、λp(2)の波長近傍における選択反射層SR(特に第2反射層SR2)の常光屈折率no(2)と選択反射層SRの螺旋ピッチ(特に第2反射層SR2の螺旋ピッチ)P(2)とを乗じた値no(2)P(2)、及び、異常光屈折率ne(2)と螺旋ピッチP(2)とを乗じた値ne(2)P(2)は、ピーク波長λp(2)に対して、no(2)P(2)<λp(2)<ne(2)P(2)となるように設定されている。
【0048】
同様に、λp(3)の波長近傍における選択反射層SR(特に第3反射層SR3)の常光屈折率no(3)と選択反射層SRの螺旋ピッチ(特に第3反射層SR3の螺旋ピッチ)P(3)とを乗じた値no(3)P(3)、及び、異常光屈折率ne(3)と螺旋ピッチP(3)とを乗じた値ne(3)P(3)は、ピーク波長λp(3)に対して、no(3)P(3)<λp(3)<ne(3)P(3)となるように設定されている。
【0049】
同時に、選択反射層SRを構成するそれぞれ固有の選択反射波長域を有する各反射層SR(1,2,3)間では、ne(1)P(1)<no(2)P(2)、ne(2)P(2)<no(3)P(3)となるように、各反射層の螺旋ピッチP(1)、P(2)、P(3)が設定されている。
【0050】
こうした構造から成る選択反射層SRにおいては、その液晶分子LMの螺旋方向と同じ回転方向の円偏光に対する反射率の波長分散は図5のようになる。図5では、選択反射層SRの螺旋方向が左回りの場合の左円偏光に対する反射率の波長分散を示している。図3及び図5に示すように、選択反射層SRは、選択反射層SRにおける液晶分子LMの螺旋方向と同じ回転方向の円偏光のうち、有機活性層64から出射されるEL発光の発光スペクトルのみ(ピーク波長を含む所定波長の光)を反射する機能を有するものとなっている。
【0051】
なお、図5に示すように、選択反射層SRを構成する各反射層SR(1,2,3)の平均屈折率n(k)(=({ne(k)+no(k)}/2)1/2;但し、異常光線波長λe>常光線波長λo)と螺旋ピッチP(k)を乗じた値n(k)P(k)がピーク波長λp(k)と略等しくすることが望ましい。このように設定することにより、発光光のスペクトルと選択反射層の反射率波長分散とがより一致するので、前述した効果がさらに高まる。
【0052】
また、選択反射層が反射する第2円偏光に対する反射率は、ピーク波長λp(k)において50%以上とすることが望ましい。このように設定することにより、各有機EL素子40の輝度は、選択反射層を設けない従来の素子と比較して5割以上高くなり、十分な輝度特性を得ることができる。
【0053】
次に、図6を参照して、上述した上面発光方式の表示装置における光学的機能を説明する。なお、ここでは、説明を簡略化するために、偏光板PP、4分の1波長板WP、選択反射層SR、有機活性層(発光層)64、反射膜60R、有機活性層(発光層)64を設けた配線基板120のみを図示し、これら記載の順に各層を配置した構成を例に説明する。また、ここでは、便宜上、外部から表示装置に入射する外光と、有機活性層64にて発光した発光光とを別々の光路で図示している。
【0054】
すなわち、偏光板PPは、その面内において、互いに異なる方向に吸収軸及び透過軸を有している。4分の1波長板WPは、所定波長の光に対して常光線と異常光線との間に4分の1波長の位相差を与える。これら偏光板PP及び4分の1波長板WPは、入射した外光(非偏光)をほぼ円偏光例えば右円偏光となるようにそれぞれの光軸が設定されている。
【0055】
これにより、表示装置に入射した外光(非偏光)は、これら偏光板PP及び4分の1波長板WPを透過して右円偏光となる。選択反射層SRを構成する液晶分子は、左捻れの配向としているため、4分の1波長板WPを通過した右円偏光は反射せずに、その偏光状態を維持して透過する。したがって、入射した外光は、波長に関わらず右円偏光となって有機活性層64を通過して反射膜60Rにて反射される。
【0056】
反射膜60Rで反射された反射光は、位相が180度ずれるため、左円偏光となる。選択反射層SRは、この左円偏光のうち、螺旋ピッチに対応する所定波長(有機活性層64にて発光する発光光のピーク波長を含む所定波長)の左円偏光は反射するが、それ以外の波長の左円偏光は透過するため、大半の反射光は左円偏光のまま選択反射層SRを透過する。
【0057】
選択反射層SRを透過した透過光は、4分の1波長板WPにて、偏光板PPの吸収軸と平行な直線偏光に変換されるため、偏光板PPにて吸収される。かくして、外光の大半は、反射膜60Rで反射されても偏光板PPで吸収されるため、十分な反射防止機能を得ることができる。
【0058】
これに対して、3種の画素においてそれぞれの有機活性層64にて発光した発光光は、λp(1)、λp(2)、λp(3)のピーク波長を有した非偏光であり、これを成分分離すると左円偏光及び右円偏光に分類できる。λp(1)、λp(2)、λp(3)のピーク波長を有した発光光のうちの右円偏光成分は、選択反射層SRを透過する。一方、λp(1)のピーク波長を有した発光光のうちの左円偏光成分は、選択反射層SRを構成する第1反射層SR1が選択的に反射する機能を有しているため、第1反射層SR1にて左円偏光として反射膜60R側に向けて反射される。同様に、λp(2)のピーク波長を有した発光光のうちの左円偏光成分は、選択反射層SRを構成する第2反射層SR2が選択的に反射する機能を有しているため、第2反射層SR2にて左円偏光として反射膜60R側に向けて反射される。同様に、λp(3)のピーク波長を有した発光光のうちの左円偏光成分は、選択反射層SRを構成する第3反射層SR3が選択的に反射する機能を有しているため、第3反射層SR3にて左円偏光として反射膜60R側に向けて反射される。
【0059】
選択反射層SRにて反射された左円偏光は、反射膜60Rにて再び選択反射層SRに向けて反射される。反射膜60Rで反射された反射光は、位相が180度ずれるため、右円偏光となる。したがって、この反射光は、λp(1)、λp(2)、λp(3)のピーク波長を有した発光光のうちの右円偏光成分と同様に選択反射層SRを透過する。かくして、有機活性層64にて発光した発光光の全ては、右円偏光となり選択反射層SRを透過する。
【0060】
選択反射層SRを透過した右円偏光は、4分の1波長板WPにて、偏光板PPの透過軸と平行な直線偏光となるので、偏光板PPを透過する。かくして、有機活性層64にて発光した発光光は、全て偏光板PPを透過することとなり、表示に寄与する。
【0061】
したがって、上述した表示装置によれば、入射した外光の殆どの波長に対し、反射防止機能を有し、なおかつ偏光板を用いているにもかかわらず、有機EL素子にて発光した発光光の殆どは偏光板を透過するので、優れたコントラスト特性と高い表示輝度とを両立することができる。つまり、この実施の形態によれば、コントラスト特性及び表示輝度がともに優れた表示装置を得ることができる。
【実施例】
【0062】
図7に示すように、配線基板120上に反射膜60R及び有機活性層64を含む有機EL素子40を配置し封止した後に、有機活性層64側から順に選択反射層SR、4分の1波長板WP、及び、偏光板PPを配置した表示装置を作成した。なお、ここでは、説明を簡略化するために、偏光板PP、4分の1波長板WP、選択反射層SR、有機活性層(発光層)64、反射膜60R、有機活性層(発光層)64を設けた配線基板120のみを図示し、他の構成は省略した。
【0063】
まず、選択反射層SRは、第1反射層としてのコレステリック液晶ポリマー(BASF製)、第2反射層としてのコレステリック液晶ポリマー(BASF製)、及び、第3反射層としてのコレステリック液晶ポリマー(BASF製)を各々プレーナー配向となるように積層した。第1反射層のコレステリック液晶ポリマーは、螺旋ピッチが275nmであり波長440nmにおける常光屈折率が1.53、異常光屈折率が1.65である。第2反射層のコレステリック液晶ポリマーは、螺旋ピッチが350nmであり、550nmにおける常光屈折率が1.52、異常光屈折率が1.62である。第3反射層のコレステリック液晶ポリマーは、螺旋ピッチが400nmであり、620nmにおける常光屈折率が1.51、異常光屈折率が1.61である。
【0064】
各反射層の膜厚は、それぞれの液晶分子の螺旋ピッチの略10倍(1ピッチを液晶分子1回転分とすると液晶分子が10回転した状態の膜厚)とした。各反射層における螺旋ピッチと平均屈折率とを乗じた値は、有機活性層の3つのピーク波長λp(1)、λp(2)、λp(3)と実効的に一致するように設定されている。これにより、各反射層は、螺旋ピッチに平均屈折率を乗じた値の波長の光のうち、捻れ方向と同じ向きの円偏光、たとえば左円偏光を反射する。各反射層の反射率は、膜厚に依存し、螺旋ピッチの10倍程度の膜厚ではほぼ100%となる。
【0065】
したがって、各反射層は、左円偏光のうちそれぞれの螺旋ピッチに平均屈折率を乗じた値の波長の光を中心として異常光屈折率と常光屈折率との差Δnに螺旋ピッチを乗じたバンド幅の光を反射する。前述したように、螺旋ピッチの異なる3種の反射層を各層で左円偏光の反射率が100%となる膜厚にて作成し、各層にてΔnと螺旋ピッチとを乗じたバンド幅の光の反射を可能としているので、ほぼ発光光のバンド幅に等しい波長域の左円偏光を選択的に反射する機能を得る。
【0066】
ここで適用した液晶ポリマー層は、フィルム状のものや膜状のものとして取り扱えることが望ましく、例えば紫外線硬化型樹脂を含有し、紫外線照射によって生ずる光架橋反応により硬化するものであっても良いし、熱硬化型樹脂を含有し、加熱によって熱重合により硬化するものであっても良い。このような選択反射層SRは、前述したピッチの異なる3種の反射層を積層して得る他に、螺旋ピッチが連続的に変化した層を用いても同様の作用、効果が得られる。また、2枚以上の基板を用いて液晶ポリマーを用いず、液晶層として形成しても光学的効果に変わりはない。
【0067】
続いて、上述したようにして得られた選択反射層SR上に素子の長手方向と125°の角度(半時計まわりに角度を定義する。以下も同様)となるようにアートン樹脂からなるリターデーション値140nmの第1位相差板(日東電工(株)製)を貼り合せる。これに続いて、この第1位相差板の上に素子の長手方向と62.5°の角度となるようにアートン樹脂からなるリターデーション値270nmの第2位相差板(日東電工(株)製)を貼り合せた。
【0068】
しかる後、第2位相差板の上に素子の長手方向と45°の角度となるように偏光板SEG1224DUAGAR(日東電工(株)製)を貼り合せた。第1位相差板、第2位相差板、及び、偏光板を上述した角度構成で貼り合せることにより、可視光全域の波長に対し2枚の位相差板が4分の1波長板WPとして作用し、偏光板PPを含めて左円偏光板として機能する。このようにして、前述したような外光の反射を防止するといった機能、及び、発光光の殆どの光を出射させるといった機能を両立することが可能な表示装置が得られた。
【0069】
従来の表示装置のように選択反射層を設けない構成と、本実施例の構成とで、偏光板を透過した発光光の透過率の相対比較結果を図8に示す。図8に示したように、本実施例に係る表示装置は、従来の表示装置のほぼ倍の透過率を得られることが確認できた。また、本実施例の反射防止効果として、外光スペクトルに対する本実施例に係る表示装置の反射率の波長分散を図9に示す。図9に示したように、反射光は僅かであり、十分な反射防止効果を得られることが確認できた。以上のことから、本実施例の構成は、高いコントラスト特性及び高い表示輝度双方が得られていることがわかる。
【0070】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0071】
上述した実施の形態では、上面発光方式の表示装置であって、赤色画素PXRが赤色に発光する有機EL素子40Rを備え、緑色画素PXGが緑色に発光する有機EL素子40Gを備え、さらに、青色画素PXBが青色に発光する有機EL素子40Bを備えて構成された場合について説明したが、この発明はこの例に限定されるものではない。
【0072】
例えば、各画素PX(R、G、B)がすべて同一種類の有機EL素子40を備え、有機EL素子40が白色光を発光する有機活性層を備えて構成されても良い。このような構成の場合、各画素PX(R、G、B)は、EL発光の出射面側にそれぞれ赤色カラーフィルター、緑色カラーフィルター、及び、青色カラーフィルターを備えてカラー表示を実現する。つまり、発光層としての機能を有する有機活性層自体は、明確なピーク波長を持たない発光光を出射し、発光光がカラーフィルターを透過することによって所定のピーク波長を有する光となる。
【0073】
すなわち、図10に示すように、配線基板120上に反射膜60R及び有機活性層64を含む有機EL素子40を配置し封止した後に、有機活性層64側から順にカラーフィルターCF、選択反射層SR、4分の1波長板WP、及び、偏光板PPを配置した表示装置を作成した。つまり、偏光板PPとカラーフィルターCFとの間に4分の1波長板WPが位置するとともに、4分の1波長板WPと有機活性層(発光層)64との間にカラーフィルターCFが位置する。なお、ここでは、説明を簡略化するために、偏光板PP、4分の1波長板WP、選択反射層SR、カラーフィルターCF、有機活性層(発光層)64、反射膜60R、有機活性層(発光層)64を設けた配線基板120のみを図示し、他の構成は省略した。
【0074】
カラーフィルターCFとしては、例えば、赤色画素は赤色カラーフィルター(例えば620nmにピーク透過率を有する)CFRを備え、緑色画素は緑色カラーフィルター(例えば550nmにピーク透過率を有する)CFGを備え、青色画素は青色カラーフィルター(例えば440nmにピーク透過率を有する)CFBを備えている。
【0075】
このような構成例においても、有機活性層64から出射されカラーフィルターCFを透過した光について、上述した実施の形態と同様に設定することで、前述した外光の反射防止機能、及び、偏光板におけるカラーフィルターを透過した発光光の吸収の防止効果は同様の原理にて得ることができる。
【0076】
すなわち、選択反射層SRは、所定の螺旋ピッチで配列された液晶分子を含むとともに、第1円偏光(例えば右円偏光)を透過するとともに第1円偏光とは逆極性の所定波長の第2円偏光(例えば左円偏光)を選択反射する。この選択反射層SRは、有機活性層64から出射されカラーフィルターCFを透過した光のピーク波長の数をmとしたときに、m個の選択反射波長域を有するように構成されている。
【0077】
すなわち、このような構成例では、それぞれの画素PX(R、G、B)に設けられた有機EL素子40の有機活性層64から出射された白色のEL発光光は、各カラーフィルターを透過することで単一のピーク波長を有するため、ピーク波長数mは3である。例えば、青色画素PXBのカラーフィルターCFBを透過した光は、440nm付近において単一の第1ピーク波長λp(1)を有する。また、緑色画素PXGのカラーフィルターCFGを透過した光は、550nm付近において単一の第2ピーク波長λp(2)を有する。赤色画素PXRのカラーフィルターCFRを透過した光は、620nm付近において単一の第3ピーク波長λp(3)を有する。つまり、有機活性層64から出射されカラーフィルターCFを透過した光のピーク波長は、短い順に、λp(1)、λp(2)、λp(3)となる。
【0078】
したがって、選択反射層SRは、3個の選択反射波長域を有するように構成され、第1ピーク波長λp(1)の光の左円偏光を反射する第1反射層SR1、第2ピーク波長λp(2)の光の左円偏光を反射する第2反射層SR2、及び、第3ピーク波長λp(3)の光の左円偏光を反射する第3反射層SR3を備えている。
【0079】
そして、カラーフィルターを透過した光のピーク波長は赤色、緑色、青色の3つであり、各々波長の短い順にλp(1)、λp(2)、λp(3)としたとき、λp(1)の波長近傍における選択反射層SR(特に第1反射層SR1)の常光屈折率no(1)と選択反射層SRの螺旋ピッチ(特に第1反射層SR1の螺旋ピッチ)P(1)とを乗じた値no(1)P(1)、及び、異常光屈折率ne(1)と螺旋ピッチP(1)とを乗じた値ne(1)P(1)は、ピーク波長λp(1)に対して、no(1)P(1)<λp(1)<ne(1)P(1)となるように設定されている。
【0080】
同様に、λp(2)の波長近傍における選択反射層SR(特に第2反射層SR2)の常光屈折率no(2)と選択反射層SRの螺旋ピッチ(特に第2反射層SR2の螺旋ピッチ)P(2)とを乗じた値no(2)P(2)、及び、異常光屈折率ne(2)と螺旋ピッチP(2)とを乗じた値ne(2)P(2)は、ピーク波長λp(2)に対して、no(2)P(2)<λp(2)<ne(2)P(2)となるように設定されている。
【0081】
同様に、λp(3)の波長近傍における選択反射層SR(特に第3反射層SR3)の常光屈折率no(3)と選択反射層SRの螺旋ピッチ(特に第3反射層SR3の螺旋ピッチ)P(3)とを乗じた値no(3)P(3)、及び、異常光屈折率ne(3)と螺旋ピッチP(3)とを乗じた値ne(3)P(3)は、ピーク波長λp(3)に対して、no(3)P(3)<λp(3)<ne(3)P(3)となるように設定されている。
【0082】
同時に、選択反射層SRを構成するそれぞれ固有の選択反射波長域を有する各反射層SR(1,2,3)間では、ne(1)P(1)<no(2)P(2)、ne(2)P(2)<no(3)P(3)となるように、各反射層の螺旋ピッチP(1)、P(2)、P(3)が設定されている。
【0083】
このような構成であっても、コントラスト特性及び表示輝度がともに優れた表示装置を得ることができる。
【0084】
また、上述した上面発光方式の表示装置では、偏光板PP、4分の1波長板WP、選択反射層SR、有機活性層(発光層)64、反射膜60R、有機活性層64を設けた配線基板120の順に各層を配置すれば、有機活性層と反射膜60Rとが隣接するので、選択反射層SRにて反射されたほぼすべての円偏光を反射膜60Rにて反射させることができるので前述した効果を十分に得ることができたが、配線基板120(第1電極側)側からEL発光を取り出す下面発光方式の表示装置にもこの発明を適用できることはいうまでもない。
【0085】
下面発光方式の場合、第1電極60は主に光透過性を有する導電部材によって形成され、第2電極66は主に光反射性を有する導電部材によって形成され、これら第1電極60と第2電極66との間に発光層としての機能を有する有機活性層64を保持して有機EL素子40が構成されている。このよう構成例では、第1電極60は反射膜を含まず、第2電極66が反射膜として機能する。
【0086】
すなわち、図11に示すように、下面発光方式の表示装置は、配線基板120上に反射膜60R及び有機活性層64を含む有機EL素子40を配置し封止した後に、配線基板120側から順に、選択反射層SR、4分の1波長板WP、及び、偏光板PPを配置することで構成可能である。つまり、偏光板PP、4分の1波長板WP、選択反射層SR、有機活性層(発光層)64を設けた配線基板120、有機活性層64、反射膜(第2電極)66の順に各層を配置して構成される。なお、ここでは、説明を簡略化するために、偏光板PP、4分の1波長板WP、選択反射層SR、有機活性層(発光層)64、反射膜60R、有機活性層(発光層)64を設けた配線基板120のみを図示し、他の構成は省略した。
【0087】
このような構成の場合、配線基板120及び有機活性層64の厚みの分だけ、選択反射層SRと反射膜66との距離が離れてしまう。つまり、視差が生じる。この場合、画素サイズに対して選択反射層SRと反射膜66との距離を最適化しないと、有機活性層64から直接選択反射層SRを透過する円偏光と、一旦選択反射層SRで反射された後に反射膜66で反射されて位相が180度ずれた後に再度選択反射層SRを透過した光とがずれてしまう。こうした視差の問題を解消するには、配線基板120の厚みを画素ピッチの10倍以下とすれば、実用的な視野角(一般的な縦横比4:3や16:9のディスプレイにおいて画像の歪が気にならない視野であり角度で言えば±60°)の範疇で視差は気にならなくなる。
【0088】
当然の如く、このような下面発光方式であっても、選択反射層SRを上述した実施の形態と同様の構成とすることにより、コントラスト特性及び表示輝度がともに優れた表示装置を得ることができる。
【0089】
またこの発明は、発光層を有し、外光の反射防止を防ぐ手段として偏光板及び4分の1波長板からなる円偏光板を用いた表示装置であれば、上述したような選択反射層SRを設けることによって全て有効な効果を得ることができる。すなわち、発光層の種類にとらわれることなく、例えば、上述した有機EL素子の他にも、無機EL素子、FED素子、PDP素子などを備えた表示装置でも同様の効果を得ることができるが、特に有機EL素子や無機EL素子の場合、発光輝度を高めるために、発光層の下に反射電極(または反射膜)が設けられているので前述した選択反射層で反射された発光光を観察者側へ出射する機能が高く、より有効な効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明したように、この発明によれば、自己発光素子を搭載した表示装置であって、コントラスト特性を改善することが可能であるとともに、表示輝度を向上することが可能な表示装置を提供することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射層、発光層、4分の1波長板、及び、偏光板を備え、前記偏光板と前記発光層との間に前記4分の1波長板が位置するとともに、前記4分の1波長板と前記反射層との間に前記発光層が位置する表示装置であって、
前記4分の1波長板と前記発光層との間に配置され、所定の螺旋ピッチで配列された液晶分子を含み、第1円偏光を透過するとともに第1円偏光とは逆極性の所定波長の第2円偏光を反射する選択反射層を備え、
前記発光層は少なくとも1つのピーク波長を有し、ピーク波長の数をmとしたとき、前記選択反射層はm個の選択反射波長域を有し、
前記発光層から出射された光のピーク波長をλp(k)(波長の短い順にk=1,2,…,m)としたとき、各ピーク波長λp(k)が前記各選択反射波長域を形成する前記選択反射層の異常光屈折率ne(k)と螺旋ピッチP(k)とを乗じた値ne(k)P(k)より小さく、常光屈折率no(k)と螺旋ピッチP(k)とを乗じた値no(k)P(k)より大きい値であり、
なおかつ、前記各選択反射波長域を形成する前記選択反射層間で、ne(k−1)P(k−1)<no(k)P(k)であることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
反射層、発光層、カラーフィルター、4分の1波長板、及び、偏光板を備え、前記偏光板と前記カラーフィルターとの間に前記4分の1波長板が位置するとともに、前記4分の1波長板と前記発光層との間に前記カラーフィルターが位置する表示装置であって、
前記4分の1波長板と前記カラーフィルターとの間に配置され、所定の螺旋ピッチで配列された液晶分子を含み、第1円偏光を透過するとともに第1円偏光とは逆極性の所定波長の第2円偏光を反射する選択反射層を備え、
前記発光層から出射され前記カラーフィルターを透過した光は少なくとも1つ以上のピーク波長を有し、ピーク波長の数をmとしたとき、前記選択反射層はm個の選択反射波長域を有し、
前記カラーフィルターを透過した光のピーク波長をλp(k)(波長の短い順にk=1,2,…,m)としたとき、各ピーク波長λp(k)が前記各選択反射波長域を形成する前記選択反射層の異常光屈折率ne(k)と螺旋ピッチP(k)とを乗じた値ne(k)P(k)より小さく、常光屈折率no(k)と螺旋ピッチP(k)とを乗じた値no(k)P(k)より大きい値であり、
なおかつ、前記各選択反射波長域を形成する前記選択反射層間で、ne(k−1)P(k−1)<no(k)P(k)であることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
前記選択反射層の平均屈折率n(k)と螺旋ピッチP(k)とを乗じた値n(k)P(k)が前記発光層のピーク波長λp(k)と略等しいことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記選択反射層の平均屈折率n(k)と螺旋ピッチP(k)とを乗じた値n(k)P(k)が前記発光層のピーク波長λp(k)と略等しいことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記選択反射層が反射する第2円偏光に対する反射率は、前記発光層のピーク波長λp(k)において50%以上であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記選択反射層が反射する第2円偏光に対する反射率は、前記発光層のピーク波長λp(k)において50%以上であることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項7】
少なくとも赤色のピーク波長を有する赤色画素、緑色のピーク波長を有する緑色画素、及び、青色のピーク波長を有する青色画素を平面状に配列し、これらの各画素を個別に駆動する手段を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
少なくとも赤色のピーク波長を有する赤色画素、緑色のピーク波長を有する緑色画素、及び、青色のピーク波長を有する青色画素を平面状に配列し、これらの各画素を個別に駆動する手段を有することを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項9】
基板上に、前記反射層、前記発光層、前記選択反射層、前記4分の1波長板、及び、前記偏光板をそれらの順に配置したことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項10】
基板上に、前記反射層、前記発光層、前記選択反射層、前記4分の1波長板、及び、前記偏光板をそれらの順に配置したことを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項11】
基板の一方の主面上に、前記選択反射層、前記4分の1波長板、及び、前記偏光板をそれらの順に配置するとともに、前記基板の他方の主面上に、前記発光層、及び、前記反射層をそれらの順に配置し、
しかも、前記基板の厚みは、前記画素を配列するピッチの10倍以下であることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項12】
基板の一方の主面上に、前記選択反射層、前記4分の1波長板、及び、前記偏光板をそれらの順に配置するとともに、前記基板の他方の主面上に、前記発光層、及び、前記反射層をそれらの順に配置し、
しかも、前記基板の厚みは、前記画素を配列するピッチの10倍以下であることを特徴とする請求項8に記載の表示装置。
【請求項13】
前記発光層は一対の電極間に保持され、EL素子を構成することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項14】
前記発光層は一対の電極間に保持され、EL素子を構成することを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項15】
前記選択反射層は、コレステリック液晶層、コレステリック液晶層をポリマー化させたもの、若しくは、コレステリック液晶層をフィルム化させたもののいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項16】
前記選択反射層は、コレステリック液晶層、コレステリック液晶層をポリマー化させたもの、若しくは、コレステリック液晶層をフィルム化させたもののいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の表示装置。
【請求項17】
反射層、発光層、選択反射層、4分の1波長板、偏光板の順に各層を配置した表示装置であって、
前記発光層は、単一の第1ピーク波長の光を出射する第1発光層及び単一の第2ピーク波長の光を出射する第2発光層を含み、
前記選択反射層は、第1円偏光を透過するとともに第1円偏光とは逆極性の所定波長の第2円偏光を反射するものであって、前記第1ピーク波長に対応する第1螺旋ピッチで配列された液晶分子を含みしかも前記第1ピーク波長を含む所定波長の第2円偏光を反射する第1反射層と、前記第2発光層のピーク波長に対応する第2螺旋ピッチで配列された液晶分子を含みしかも前記第2ピーク波長を含む所定波長の第2円偏光を反射する第2反射層と、を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項18】
反射層、発光層、4分の1波長板、及び、偏光板を備え、前記偏光板と前記発光層との間に前記4分の1波長板が位置するとともに、前記4分の1波長板と前記反射層との間に前記発光層が位置する表示装置であって、
前記4分の1波長板と前記発光層との間に配置され、第1円偏光を透過するとともに第1円偏光とは逆極性の所定波長の第2円偏光を反射する選択反射層を備え、
前記発光層から出射される光は少なくとも1つのピーク波長λpを有し、
前記選択反射層は、前記ピーク波長λpを含む特定範囲の波長域に対応した光を反射することを特徴とする表示装置。

【国際公開番号】WO2005/041155
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【発行日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514984(P2005−514984)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015731
【国際出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】