説明

表示部材

【課題】 構造色による表示色について、高い色濃度が得られる表示部材の提供。
【解決手段】 表示部材は、構造色を発現する、球体およびマトリックスよりなる第1の周期構造体層と、この第1の周期構造体層において発現される構造色と同じ色域の構造色を発現する、球体およびマトリックスよりなる第2の周期構造体層とが、粒子配列による構造色を発現しない中間層を介して積層されてなる表示層を有することを特徴とする。この表示部材においては、前記第1の周期構造体層および前記第2の周期構造体層が、各々、反射スペクトルについて、{(ベースライン強度)/(ピーク強度)−(ベースライン強度)}×100で表される白濁度が50%以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサー、ディスプレイ、パネル、シート、ラベルなどとして利用できる、構造色を発現する表示部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、球体により形成された周期構造体層により構造色を発現する表示部材が各種提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【0003】
しかしながら、これらのものは表示部材として使用する場合に、実用上十分な色濃度が得られない、という問題がある。
具体的には、一般的に、表示部材の色濃度は、周期構造体層の厚みが大きくなるに従って色濃度も大きくなるが、周期構造体層が過度に厚い場合は強い反射光が得られるものの視認される構造色が白濁化して高い色濃度が得られない。また、周期構造体層が過度に薄い場合は視認される構造色の白濁化は抑制されるものの反射光が弱くて高い色濃度が得られず、従って、実用上十分な色濃度が得られる表示部材は、未だ実現されていないのである。
【0004】
【特許文献1】特開2004−27195号公報
【特許文献2】特開2006−28202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、構造色による表示色について、高い色濃度が得られる表示部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表示部材は、構造色を発現する、球体およびマトリックスよりなる第1の周期構造体層と、
この第1の周期構造体層において発現される構造色と同じ色域の構造色を発現する、球体およびマトリックスよりなる第2の周期構造体層とが、
粒子配列による構造色を発現しない中間層を介して積層されてなる表示層を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の表示部材においては、前記第1の周期構造体層および前記第2の周期構造体層が、各々、反射スペクトルについて、{(ベースライン強度)/(ピーク強度)−(ベースライン強度)}×100で表される白濁度が50%以下であることが好ましい。
【0008】
また、本発明の表示部材においては、前記第1の周期構造体層および前記第2の周期構造体層の層厚が、各々15μm以下であることが好ましい。また、前記中間層の層厚が、20nm以上であることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明の表示部材においては、前記第1の周期構造体層および前記第2の周期構造体層の少なくとも1層が、外部からの刺激を受けることにより不可逆的な構造色変化を生じ、この構造色変化により得られる構造色が維持される構成とすることができる。
また、前記第1の周期構造体層および前記第2の周期構造体層の少なくとも1層が、外部からの刺激を受けることにより可逆的な構造色変化を生じ、かつ、前記外部からの刺激が解除されたときに元の構造色に復帰する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の表示部材によれば、一般に、周期構造体層の層厚が大きくなるに従って光の散乱の度合いは大きくなるが、より高い量の反射光が得られるように周期構造体層の層厚を、第1の周期構造体層と第2の周期構造体層とに分割させて、互いに離間された状態で積層された構成とされているために、全体として光の散乱の度合いが抑制され、従って、全体として光の散乱による白濁化が抑制されながら十分な量の選択光の反射が得られ、その結果、高い色濃度の表示色が視認される。
【0011】
また、複数の周期構造体層が、互いに粒子配列による構造色を発現しない中間層を介して、この周期構造体層による構造色の色域と同じ色域の構造色を発現する状態に多層薄膜干渉を生ずるよう積層された表示部材によれば、各周期構造体層によって発現される構造色と多層薄膜干渉によって発現される構造色とが重複して視認されるために、表示色がより高い色濃度のものとされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0013】
本発明の表示部材は、図1に示されるように、少なくとも、構造色を発現する、球体12およびマトリックスMよりなる第1の周期構造体層10と、この第1の周期構造体層10において発現される構造色と同じ色域の構造色を発現する、球体12bおよびマトリックスMbよりなる第2の周期構造体層20とが、粒子配列による構造色を発現しない中間層40を介して積層されてなる表示層3を有するものである。
【0014】
表示層3を構成する各周期構造体層10,20は、各々、観察角に基づいて規定される波長の光を選択的に反射することのできる構造を有して構造色の発現が視認されるものである。
そして、各周期構造体層10,20が互いに同じ色域の構造色を発現するものであるため、表示層3全体として前記色域の構造色が表示色として高い色濃度で視認される。
これらの各周期構造体層10,20は、その発現される構造色が互いに同じ色域の色であれば、その具体的な構成は同じであっても異なっていてもよい。
【0015】
ここに、互いに同じ色域の構造色を発現するとは、各周期構造体層10,20を単層として作製したものを、それぞれ、分光測色計「CM−3600d」(コニカミノルタセンシング社製)によって観察角が8度の状態において測定した反射スペクトルのピーク波長のずれが、互いに20nm以下であることをいう。
ただし、「赤色」と認識される構造色については、波長590〜780nmの範囲内に各周期構造体層10,20のピーク波長が存在し、かつ、そのピーク波長のずれが190nm以下である場合も同じ色域とみなせる。また、「緑色」と認識される構造色については、波長480〜570nmの範囲内に各周期構造体層10,20のピーク波長が存在し、かつ、そのピーク波長のずれが90nm以下である場合も同じ色域とみなせる。
【0016】
各周期構造体層10,20は、上記と同様に測定した反射スペクトルについて、{(ベースライン強度)/(ピーク強度)−(ベースライン強度)}×100で表される白濁度が50%以下であることが好ましい。白濁度は、20%以下であることがより好ましい。
ここに、反射スペクトルのピーク強度は、分光測色計によって測定した反射スペクトルのピークトップの強度であり、ベースライン強度は、ベースラインの近似直線とピークトップからの垂線との交点の強度である。なお、ベースラインとは、反射スペクトルに微分処理を施し、所期の微分値を基準値としてベースラインとピークラインに分割し、分割されたベースラインを直線近似したものである。
【0017】
各周期構造体層10,20の厚みは、当該周期構造体層10,20のそれぞれの屈折率や求める色濃度に基づいて決定される白濁度に従って、適宜に決定することができるが、例えば0.1〜15μmとすることができる。
【0018】
以下に、表示層3を構成する各周期構造体層10,20を代表して、第1の周期構造体層(以下、単に「周期構造体層」という。)10について、その具体的な構成を説明する。
【0019】
〔周期構造体層〕
周期構造体層10は、具体的には、マトリックスM中に例えば固体の粒子よりなる球体12同士が面方向に接触して規則的に形成される球体層15が、厚み方向においても球体12同士が接触する状態で規則的に配された構成を有するものである。
また例えば、図2に示されるように、マトリックスM中に例えば固体の粒子よりなる球体12同士が面方向に非接触状態で規則的に配されて形成される球体層15が、厚み方向においても球体12同士が非接触状態で規則的に配された構成を有していてもよい。
この球体層15は、光が入射する方向に対して一方向に規則的に球体12が配列された構成を有しており、特に、球体層15が最密充填構造を呈するよう球体12が配列された構成を有することが好ましい。
【0020】
周期構造体層10においては、球体12の屈折率とマトリックスMの屈折率との差の絶対値(以下、「屈折率差」という。)が、0.02〜2.0であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.6である。
この屈折率差が0.02未満である場合は、構造色が発色しにくくなり、この屈折率差が2.0より大きい場合は、光の散乱が大きく生じることによって視認される構造色が白濁化してその表示色が認識されにくいものとなるおそれがある。
【0021】
〔構造色〕
この周期構造体層10において発現される構造色は、当該周期構造体層10において観察角に基づいて規定されて選択的に反射される光によって発現される色である。
【0022】
周期構造体層10において選択的に反射される光は、ブラッグの法則、スネルの法則より、下記式(1)で表される波長の光とされる。
なお、下記式(1)および下記式(2)は近似式であり、実際上はこれらの計算値に完全には合致しない場合もある。
式(1):λ=2nD(cosθ)
この式(1)において、λは構造色のピーク波長、nは下記式(2)で表される周期構造体層10の屈折率、Dは球体層15の層間隔(球体12の表示部材の垂線方向における間隔)、θは表示部材の垂線との観察角である。
式(2):n={na・c}+{nb・(1−c)}
この式(2)において、naは球体12の屈折率、nbはマトリックスMの屈折率、cは周期構造体層10における球体12の体積率である。
ここに、構造色のピーク波長λは、分光測色計「CM−3600d」(コニカミノルタセンシング社製)を用いて測定されるものである。
【0023】
周期構造体層10における球体層15の厚みは、例えば0.1〜15μmであることが好ましい。
球体層の厚みが0.1μm未満である場合は、視認される構造色が色濃度の小さいものとなる。
【0024】
周期構造体層10における球体層15の周期数は、少なくとも1以上である必要があり、好ましくは5〜150である。
周期数が1未満である場合は、周期構造体層が構造色を発現するものとならない。
【0025】
本発明の表示部材において、その構造色は、可視域にピーク波長を有する色に限らず、紫外域または赤外域にピーク波長を有する色であってもよい。
【0026】
周期構造体層10における層間隔Dは、50〜500nmであることが好ましい。
層間隔Dが上記の範囲にあることにより、得られる周期構造体層において発現する構造色が近紫外〜可視〜近赤外域にピーク波長を有する表示色となる。一方、層間隔Dが500nmよりも大きい場合は、得られる周期構造体層が構造色を発現するものとならないおそれがある。
【0027】
〔球体〕
本発明において、球体とは、3次元において球体形状を有する物質のことであり、真球に限定されるものではなく、おおよそ球体形状を有すればよい。この物質は、マトリックスの屈折率と異なる屈折率を有していれば、固体、液体、気体のどの形態を有していてもよい。
周期構造体層10を構成する球体12を形成すべき材料としては、その屈折率がマトリックスMの屈折率と異なるものであること、およびマトリックスMを構成する材料と非相溶性であるものを、適宜に選択することができる。
また、周期構造体層10を構成する球体12は、マトリックスMを形成すべき材料との親和性の高い材料よりなることが好ましい。
【0028】
周期構造体層10を構成する球体12としては、種々のものを挙げることができる。
具体的には例えば、スチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、クロルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸(イソ)プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸などのカルボン酸単量体などの重合性単量体のうちの1種を重合した粒子、または2種以上を共重合した有機粒子を挙げることができる。
また、重合性単量体に架橋性単量体を加えて重合した有機粒子であってもよく、架橋性単量体としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどを挙げることができる。
また例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、硫酸バリウム、酸化第二鉄などの無機酸化物および複合酸化物などや、ガラス、セラミックスなどにより形成された無機粒子を挙げることができる。
また例えば、上記の有機粒子または無機粒子をコア粒子として、これの表面に当該コア粒子を構成する材料と異なる材料のシェル層が形成されてなるコア−シェル型粒子を挙げることができる。シェル層は、金属微粒子、チタニアなどよりなる金属酸化物微粒子、チタニアなどよりなる金属酸化物ナノシートなどを用いて形成することができる。
さらに例えば、上記のコア−シェル型粒子から、焼成、抽出などの方法によってコア粒子を除去することにより得られる中空型粒子を挙げることができる。
これらの粒子のうち、有機粒子が好適に用いられる。
【0029】
球体層15を構成する球体12は、単一組成の単一物であっても複合物であってもよいが、球体の表面に球体同士を接着させる物質が付着されたものとしてもよく、あるいは、球体の内部に球体同士を接着させる物質が導入されたものとしてもよい。このような接着物質を用いることによって、球体層15を形成する際に自己配列などを生じにくい物質による球体であっても、球体同士を接着させることができる。また、屈折率が高い材料によって球体を形成する場合は低屈折率物質を内添するなどしてもよい。
【0030】
球体12の平均粒径は、当該球体12の屈折率およびマトリックスMの屈折率との関係において設定する必要があり、さらに少なくともその分散液が安定したコロイド溶液となる大きさであることが好ましいところ、例えば50〜500nmであることが好ましい。
球体12の平均粒径が上記の範囲にあることにより、その分散液を安定したコロイド溶液とすることができ、また、得られる表示部材において発現する構造色が近紫外〜可視〜近赤外域にピーク波長を有する色となる。
一方、球体の平均粒径が50nm未満である場合は、視認される構造色が色濃度の小さいものとなるおそれがあり、球体の平均粒径が500nmよりも大きい場合は、光の散乱が大きく生じることによって視認される構造色が白濁化してその表示色が認識されにくいものとなることがある。
【0031】
また、粒径分布を表すCV値は20以下であることが好ましく、より好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。
CV値が20より大きい場合は、規則的に配列されるべき球体層が大きな乱れが生じたものとなって得られる周期構造体層が白濁化してその構造色が認識されにくいものとなることがある。
平均粒径は、球体12について走査型電子顕微鏡「JSM−7410」(日本電子社製)を用いて50,000倍の写真を2枚撮影し、この2枚の写真画像における球体12の100個ずつについて、それぞれ最大長を測定し、その個数平均値を算出することにより、得られるものである。ここに、「最大長」とは、球体12の周上の任意の2点による2点間距離のうち、最大のものをいう。
なお、球体12が凝集体として撮影される場合には、凝集体を形成する一次粒子(球体)の最大長を測定するものとする。
CV値は、個数基準の粒度分布における標準偏差および上記の平均粒径の値を用いて下記式(CV)より算出されるものである。
式(CV):CV値=((標準偏差)/(平均粒径))×100
【0032】
球体12の屈折率は公知の種々の方法で測定することができるところ、本発明における球体12の屈折率は、液浸法によって測定した値とする。
球体12の屈折率の具体的な例としては、例えばポリスチレンが1.59、ポリメタクリル酸メチルが1.49、ポリエステルが1.60、フッ素変性ポリメタクリル酸メチルが1.40、ポリスチレン・ブタジエン共重合が1.56、ポリアクリル酸メチルが1.48、ポリアクリル酸ブチルが1.47、シリカが1.45、酸化チタン(アナターゼ型)が2.52、酸化チタン(ルチル型)が2.76、酸化銅が2.71、酸化アルミニウムが1.76、硫酸バリウムが1.64、酸化第二鉄が3.08である。
【0033】
周期構造体層10を構成する球体12は、周期構造体層10を形成させる際に規則配列させやすいことから、単分散性の高いものであることが好ましい。
単分散性の高い球体を得るために、球体12が有機物による粒子である場合は、球体12は、通常一般的に用いられるソープフリー乳化重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの重合法によって得ることが好ましい。
【0034】
粒子12は、マトリックスMとの親和性を高いものとするために、各種の表面処理を行ってもよい。
【0035】
〔マトリックス〕
周期構造体層10を構成するマトリックスMとしては、気体状、液体状などのものであってもよいが、得られる表示部材が高い強度、球体剥離抑制能および可撓性を有するものとなることから、固体状またはゲル状のものを用いることが好ましい。
周期構造体層10を構成するマトリックスMを形成すべき材料としては、その屈折率が球体12の屈折率と異なるものであり、球体12を構成する材料と非相溶性であるものを、適宜に選択することができる。
また、マトリックスMを形成すべき材料としては、球体12との親和性の高い材料が好ましい。
【0036】
マトリックスMを形成すべき材料としては、例えば有機溶剤に可溶である樹脂や水に可溶である樹脂、ヒドロゲル、オイルゲル、光硬化剤、熱硬化剤および湿気硬化剤などが挙げられる。
有機溶剤に可溶である樹脂としては、具体的には、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、水に可溶である樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
ヒドロゲルとしては、具体的にはゼラチン、カラギナン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウムなどのゲル化剤と水とを混合して得られるゲルが挙げられ、オイルゲルとしては、シリコーンゲル、フッ素変性シリコーンゲルなどや、アミノ酸系誘導体、シクロヘキサン系誘導体、ポリシロキサン系誘導体などのゲル化剤とシリコーンオイル、有機溶剤とを混合して得られるゲルが挙げられる。
【0037】
マトリックスMの屈折率は、公知の種々の方法で測定することができるところ、本発明におけるマトリックスMの屈折率は、別個にマトリックスMのみよりなる薄膜を作成し、この薄膜をアッベ屈折率計にて測定した値とされる。
マトリックスの屈折率の具体的な例としては、例えばシリコーンゲルが1.41、フッ素変性シリコーンゲルが1.34、ゼラチン/アラビアゴムが1.53、ポリビニルアルコールが1.51、ポリアクリル酸ナトリウムが1.51、フッ素変性アクリル樹脂が1.34、N−イソプロピルアミドが1.51、発泡アクリル樹脂が1.43である。
【0038】
〔周期構造体層の製造方法〕
このような周期構造体層10は、例えば、球体12の水分散液を調製し、基板などの表面に塗布して自己配列させて球体12が規則的に配列された球体配列層を形成させた後乾燥させ、この球体配列層に液体状に調製したマトリックスMを形成すべき溶液を塗布して球体12間に隙間なく充填させた後固形化させ、これを基板から剥離する方法などによって製造することができる。
球体12の水分散液の塗布方法としては、スクリーン塗布法、ディップ塗布法、スピンコート塗布法、カーテン塗布法、LB(Langmuir−Blodgett)膜作成法などを利用することができる。
【0039】
〔中間層〕
本発明の表示部材の表示層3を構成する中間層40は、透光性を有し、粒子配列による構造色を発現しないものである。ここに、「中間層が透光性を有する」とは、少なくとも当該中間層よりも光の照射方向に対して下方向にある周期構造体層が所期の構造色を発現するために必要とされる波長の光を、透過する能力を有することをいう。
具体的には、中間層40は、各周期構造体層10,20を構成するマトリックスM,Mbを形成する材料として挙げた材料による層、または、当該層中に、各周期構造体層10,20を構成する球体12,12bと同じ大きさ、またはそれ以下の大きさの球体が、構造色が発現されない状態に不規則に配列された層よりなる。
この中間層40の構成材料は、各周期構造体層10,20を構成するマトリックスM,Mbを形成する材料と同じものであってもよく、また、異なるものであってもよい。
また、中間層40が球体を含有するものである場合は、当該球体の大きさは例えば1〜500nmとすることができる。
【0040】
この中間層40は、周期構造体層10を構成する球体12のうち最下層に配置された球体と周期構造体層20を構成する球体12bのうち最上層に配置された球体との間に形成される空間が、光の散乱が生じない程度に大きなものとなる厚みを有することが必要であり、中間層40の厚みは、各周期構造体層10,20の具体的な構成によっても異なるが、例えば20nm以上とされる。
なお、中間層40の構成材料が周期構造体層10,周期構造体層20を構成するマトリックスM,Mbの構成材料と同じである場合など、周期構造体層10,20と中間層40の境界が断面において認識できない場合においても、周期構造体層10の最下層に配置された球体12と周期構造体層20の最上層に配置された球体12bとの間に介在される層状空間を、中間層という。
【0041】
〔表示部材〕
以上のような表示部材は、具体的には、例えば、基板13上に表示層3が積層されたシート状のものとして構成することができる。
【0042】
基板13としては、例えばゴム、ガラス、セラミックスやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のフィルムやシートなどを使用することができ、当該基板13としては、色表示の効果を向上させるために、黒色、灰色など、所望に応じた光を吸収する色のものを使用することが好ましい。
また、周期構造体層10を球体12の水分散液を用いて作製する場合は、基板13としては、表面の水に対する接触角はある程度低いものが好ましい。また、表面平滑性は高いものが好ましいことから、基板13について適宜の表面処理を行ってもよい。また、ブラスト処理などを行って球体が付着し易い状態にして使用することもできる。
【0043】
また、表示部材は、基板13上に表示層3が形成され、この表示層3上に粘着層を介して表面被覆層が設けられたものとして構成することもできる。
このような表示部材において、基板13、粘着層および表面被覆層は、用途などに応じて必要に応じて設けられるものであり、また、基板13の裏面に、ラベル用粘着層を設けた構成としてもよい。
表面被覆層を設ける場合は、当該表面被覆層として、透明性が高く、周期構造体層10において発現される構造色の視認を阻害しないポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などよりなるフィルム、UV硬化樹脂よりなるフィルムなどを用いることができる。
また、ラベルとして使用する場合は、ラベル用粘着層として、例えばアクリル系粘着剤、アクリル・オレフィン共重合粘着剤などの接着性の粘着材を用いることができる。
【0044】
本発明の表示部材によれば、一般に、周期構造体層の層厚が大きくなるに従って光の散乱の度合いは大きくなるが、より高い量の反射光が得られるように周期構造体層の層厚を、第1の周期構造体層10と第2の周期構造体層20とに分割させて、互いに離間された状態で積層された構成とされているために、全体として光の散乱の度合いが抑制され、従って、全体として光の散乱による白濁化が抑制されながら十分な量の選択光の反射が得られ、その結果、高い色濃度の表示色が視認される。
【0045】
以上の表示部材は、上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【0046】
(1)例えば、表示層は、例えば図3に示されるように、構造色を発現する周期構造体層を互いの層間に中間層を介在させた状態で3層以上有する構成であってもよく、各周期構造体層の層厚によっても異なるが、全体として例えば3〜2000層有する構成とすることができる。なお、図3において、4は表示層、30は第3の周期構造体層、12cは球体、Mcはマトリックス、50は第2の中間層であり、その他の符号は図1に係る符号と同じものを示す。
表示層は、すべての周期構造体層の厚みを合計した厚みが100μm以下であることが好ましい。
【0047】
(2)また例えば、表示部材は、外部からの刺激(以下、「外部刺激」ともいう。)を受けることにより可逆または不可逆の構造色変化を生じる(以下、「構造色変化能を有する」ともいう。)ものとして構成することができる。
なお、「不可逆の構造色変化」とは、この構造色変化により得られる構造色が外部刺激の解除後も維持されることを意味し、初期の構造色を発現する構造から、新たな構造色を発現する秩序立った構造へと変化するものであって、初期の構造からランダムに変化して秩序を失い構造色が発現しなくなるものではない。不可逆の構造色変化能を有する表示部材においては、一度の外部刺激を受けて変化し、維持される構造色が、再度の外部刺激を受けることにより再び構造色変化を生じさせてさらに別の構造色に変化する。
【0048】
表示部材が構造色変化能を有するものである場合、構造色変化能は、少なくとも1層の周期構造体層に備わっていればよい。複数の周期構造体層が構造色変化能を有する場合は、各周期構造体層における構造色を変化させる外部刺激の大きさまたは種類が同じであってもよく、異なっていてもよい。各周期構造体層における構造色変化能を異なるものとして構成することにより、複数種類の外部刺激を検知するものとすることができる。
【0049】
構造色変化能を有する周期構造体層においては、当該周期構造体層が外部刺激を受けることによりマトリックスが変容し、これによりマトリックス中における球体層の位置が厚み方向に可逆または不可逆に変位して層間隔が変化し、その結果、構造色変化を生ずる。ここに、マトリックスの変容による層間隔の変化とは、マトリックスの変容に伴って球体が変形した結果の変化も含むものである。この球体の変形の影響は微細であると考えられる。
そして、層間隔が変化することにより、構造色のピーク波長が変化、すなわち外部刺激を受けた後の構造色が変化する。
【0050】
ここに、外部刺激とは、マトリックスMを変容させて上記式(1)における層間隔を変化させる力をいい、具体的には、例えば、加熱、冷却などの温度変化、外力および湿度変化が挙げられる。
この表示層においては、外部刺激の大きさに基づいて、変化後の構造色が決定される。
外部刺激とは、その大きさに具体的な規定はないが、表示層が示す上記式(1)における構造色のピーク波長λを30nm以上変化させうるものをいうことが好ましい。
【0051】
本発明の表示部材において、その構造色および/または外部刺激を受けた後の構造色は、可視域にピーク波長を有する色に限らず、紫外域または赤外域にピーク波長を有する色であってもよい。
このような紫外域または赤外域にピーク波長を有する色の表示部材は、例えば、紫外線または赤外線を認識できる検出装置などに組み込んだ状態センサーとして使用することができる。
【0052】
周期構造体層が構造色変化能を有するものである場合、当該周期構造体層における層間隔は、外部刺激を受ける前後にかかわらず、50〜500nmであることが好ましい。
層間隔が50nm未満である場合は、明確に視認できるほどの構造色変化が得られないおそれがあり、一方、層間隔が500nmよりも大きい場合は、得られる周期構造体層が構造色を発現するものとならないおそれがある。
【0053】
以上のような構造色変化能を有する周期構造体層のマトリックスを形成する材料としては、温度変化により変容するものとしては、ガラス転移点または融解点を有してこれにより変容するものが挙げられ、であり、具体的には、ポリビニルアルコールなどの種々のポリマー、天然物などが挙げられる。
また、外力により変容するものとしては、降伏点から破断点までの間に塑性変形するものが挙げられ、具体的には、(低密度)ポリエチレン、ポリスチレン、ゼラチン、オイルゲルおよびヒドロゲルなどが挙げられる。降伏点の高いものは、降伏点が低いものと併用することによって小さい外力でも塑性変形を生じるよう設計することができる。
さらに、湿度変化により変容するものとしては、一旦水分を吸水すると当該水分を放出しないか、放出しても長時間を要するものであり、例えばポリアクリル酸塩系ポリマー、リグニン系ポリマー、キトサン系ポリマー、ポリアスパラギン酸系ポリマーなどの吸水性ポリマーが挙げられる。
【0054】
以上のような構造色変化能を有する表示部材によれば、少なくとも変化前の表示色が高い色濃度で視認されるので、その変化を確実に認識することができる。
【0055】
(3)さらに例えば、表示層は、図4に示されるように、構造色を発現する、球体12dおよびマトリックスMdよりなる周期構造体層60が、複数、互いに粒子配列による構造色を発現しない中間層70を介して多層薄膜干渉を生じるよう積層され、かつ、この多層薄膜干渉による構造色の色域が、周期構造体層60において発現される構造色の色域と同じである構成とされていてもよい。なお、図4において、5は表示層であり、各周期構造体層60の構成は、上述した周期構造体層10の構成と同様の構成とされる。また、中間層70の構成も、上述した中間層40の構成と同様の構成とされる。
この周期構造体層60による構造色の色域、および多層薄膜干渉による構造色の色域は、通常、それぞれ、観察角θを変化させるに従って変化するが、その変化の程度は一致しなくてもよく、周期構造体層60による構造色の色域と多層薄膜干渉による構造色の色域とが同じとされる観察角度範囲が存在すればよい。
周期構造体層60による構造色の色域と多層薄膜干渉による構造色の色域とがずれたときは、構造色として異なる色が混ざり合うため表示色の視認が困難となる。
【0056】
この表示層5の構造色は、理論的には、下記式(3)で表される。
式(3):mλ=2(nA・dA+nB・dB)cosθ
この式(3)において、λは構造色のピーク波長、nA,nBは上記式(2)で表される周期構造体層60、中間層70の屈折率、dA,dBは周期構造体層60、中間層70の層厚、θは表示部材の垂線との観察角、mは自然数である。
ここに、構造色のピーク波長λは、分光測色計「CM−3600d」(コニカミノルタセンシング社製)を用いて測定されるものである。
【0057】
表示層5を構成する各周期構造体層60は、各々、観察角に基づいて規定される波長の光を選択的に反射することのできる構造を有して構造色の発現が視認されるものであり、この構造色の色域が、上記式(3)で表される多層薄膜干渉による構造色の色域と同じとされている。
【0058】
ここに、周期構造体層60の色域と多層薄膜干渉による構造色の色域が同じであるとは、当該表示層5そのものと、周期構造体層60を単層として作製したものとを、それぞれ、分光測色計「CM−3600d」(コニカミノルタセンシング社製)によって観察角が8度の状態において測定した反射スペクトルのピーク波長のずれが、互いに20nm以下であることをいう。
ただし、「赤色」と認識される構造色については、波長590〜780nmの範囲内に各周期構造体層10,20のピーク波長が存在し、かつ、そのピーク波長のずれが190nm以下である場合も同じ色域とみなせる。また、「緑色」と認識される構造色については、波長480〜570nmの範囲内に各周期構造体層10,20のピーク波長が存在し、かつ、そのピーク波長のずれが90nm以下である場合も同じ色域とみなせる。
【0059】
以上の表示部材によれば、各周期構造体層60によって発現される構造色と多層薄膜干渉によって発現される構造色とが重複して視認されるために、図1および図3に係る表示部材に比して、表示色がより高い色濃度のものとされる。
【0060】
この多層薄膜干渉による構造色が重複して得られる表示部材は、上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、1種類の周期構造体層および1種類の中間層による多層構造に限定されず、互いの構造色の色域、および全体による多層薄膜干渉によって生じる構造色の色域が同じであり、かつ、周期構造体層の間に中間層が介在されて積層されていれば、球体やマトリックスの種類など、具体的な構成の異なる複数種類の周期構造体層および/または中間層を用いて構成されていてもよい。
【0061】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明の実施の形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、平均粒径、CV値および屈折率の測定は、上述の方法と同様の方法によって行った。
【0063】
〔粒子合成例1〕
スチレン71質量部、n−ブチルアクリレート20質量部およびメタクリル酸9質量部を80℃に加温して単量体溶液を調製した。一方、ドデシルスルホン酸ナトリウム0.4質量部をイオン交換水263質量部に溶解させた界面活性剤溶液を80℃に加熱し、この界面活性剤溶液と上記の単量体混合液とを混合した後、機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック社製)によって30分間分散処理することにより、乳化分散液を調製した。
撹拌装置、加熱冷却装置、窒素導入装置、および原料・助剤仕込み装置を備えた反応容器に、上記乳化分散液とドデシルスルホン酸ナトリウム0.1質量部をイオン交換水142質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下200rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。この溶液に過硫酸カリウム1.4質量部、水54質量部を投入し、3時間重合を行うことによって微粒子の分散液を得、これ遠心分離機により大径粒子/小径粒子を分離し、単分散性の高い真球微粒子の分散液(以下、「球体分散液」という。)〔1〕を得た。この球体分散液〔1〕中の球体〔1〕は平均粒径が205nm、CV値が2.8、屈折率が1.55であった。
【0064】
〔球体分散液の調製例2〕
チタンアルコキシド重合法によって合成した球状の酸化チタン(ルチル型、平均粒径:150nm、CV値:7.4、屈折率:2.76)20質量部をドデシルスルホン酸ナトリウム0.02質量部をイオン交換水100質量部に溶解させた界面活性剤溶液中に分散させることにより、球体〔2〕による球体分散液〔2〕を得た。
【0065】
<実施例1>
(表示部材の製造例1)
洗浄した黒色のゴムシートに、球体分散液〔1〕をバーコート法によって塗布・乾燥させて厚み15μmの球体配列層を形成させた後、シリコーンゲルを当該球体配列層の上から塗布し、球体間に塗布液を浸透させ、60℃で1時間加熱して固形化することにより、第1の周期構造体層を形成させた(以下、この操作を「操作a」という。)。次いで、フッ素ゲルをバーコート法によって塗布し、100℃で30分間加熱硬化させることにより、厚み3μmの第1の中間層を形成させた(以下、この操作を「操作b」という。)。次いで、球体配列層の厚みを10μmとしたことの他は上記操作aと同様にして第1の中間層上に第2の周期構造体層を形成させ、次いで、厚みを2μmとしたことの他は上記操作bと同様にして第2の周期構造体層上に第2の中間層を形成させ、さらに、球体配列層の厚みを5μmとしたことの他は上記操作aと同様にして第2の中間層上に第3の周期構造体層を形成させることにより、シート状の表示部材〔1〕を得た。
この表示部材〔1〕は、当該表示部材〔1〕の正面方向(表示部材の垂線との観察角θ=8度)から目視で観察したところ、緑色の構造色を呈するものであった。
この表示部材〔1〕について、観察角θ=8度の状態において分光測色計「CM−3600d」(コニカミノルタセンシング社製)によって反射スペクトルを測定し、式:(ピーク強度−ベースライン強度)によって色濃度を算出した。また、上記の方法と同様にして白濁度を算出した。結果を表1に示す。なお、色濃度は50%以上であれば合格レベルであると判断され、白濁度は50%以下であれば合格レベルであると判断される。
また、この表示部材〔1〕に引っ張り用持具を接着させ、10kgfの引張力で横方向に引っ張ったところ青色に変色し、この引張力を解除したところ、緑色に戻ることが観察され、この表示部材〔1〕が引張力を可逆的に検知することが確認された。
【0066】
<実施例2>
洗浄した黒色のゴムシートに、球体配列層の厚みを5μmとしたことの他は同様にして操作aを行うことにより、第1の周期構造体層を形成させた(以下、この操作を「操作c」という。)。次いで、厚みを2μmとしたことの他は同様にして操作bを行うことにより、第1の中間層を形成させた(以下、この操作を「操作d」という。)。さらに、上記の操作cおよび操作dを2回ずつ交互に繰り返すことにより、6層からなるシート状の表示部材〔2〕を得た。
この表示部材〔2〕は、当該表示部材〔2〕の正面方向(表示部材の垂線との観察角θ=8度)から目視で観察したところ、緑色の構造色を呈するものであった。
この表示部材〔2〕について、実施例1と同様にして色濃度および白濁度を算出した。結果を表1に示す。
また、この表示部材〔2〕に引っ張り用持具を接着させ、10kgfの引張力で横方向に引っ張ったところ青色に変色し、この引張力を解除したところ、緑色に戻ることが観察され、この表示部材〔2〕が引張力を可逆的に検知することが確認された。
【0067】
<実施例3>
洗浄した黒色のポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、操作cを行うことにより、第1の周期構造体層を形成させた。次いで、ゼラチン/アラビアゴム(9/1)10質量%水溶液を、バーコート法によって塗布・乾燥させて厚み2μmの第1の中間層を形成させた(以下、この操作を「操作e」という。)。さらに、上記の操作cおよび操作eを2回ずつ交互に繰り返すことにより、6層からなるシート状の表示部材〔3〕を得た。
この表示部材〔3〕は、当該表示部材〔3〕の正面方向(表示部材の垂線との観察角θ=8度)から目視で観察したところ、緑色の構造色を呈するものであった。
この表示部材〔3〕について、実施例1と同様にして色濃度および白濁度を算出した。結果を表1に示す。
また、この表示部材〔3〕に引っ張り用持具を接着させ、10kgfの引張力で上方向に引っ張ったところ赤色に変色した。次いで、この引張力を解除し、1日間放置したところ、1日後においても当該赤色を維持していることが観察され、この表示部材〔3〕が引張力を不可逆的に検知することが確認された。
【0068】
<実施例4>
洗浄した黒色のポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、球体分散液〔2〕をスピンコート法によって塗布・乾燥させて球体が面方向に並んだ単球体層が3層分、積層された球体配列層(厚み400nm)を形成させた後、固形分2wt%のポリビニルアルコール溶液を当該球体配列層の上から塗布し、球体間に浸透させて乾燥させることにより、第1の周期構造体層を形成させた(以下、この操作を「操作f」という。)。次いで、固形分0.5wt%のポリメチルメタクリレート(PMMA)/トルエン溶液をスピンコート法によって塗布・乾燥させることにより、厚み50nmの第1の中間層を形成させた(以下、この操作を「操作g」という。)。さらに、上記の操作fおよび操作gを10回ずつ交互に繰り返すことにより、20層からなるシート状の表示部材〔4〕を得た。
この表示部材〔4〕は、当該表示部材〔4〕の正面方向(表示部材の垂線との観察角θ=8度)から目視で観察したところ、赤色の構造色を呈するものであった。この赤色の構造色は、多層薄膜干渉による発色が重複して得られたものであると推測される。
この表示部材〔4〕について、実施例1と同様にして色濃度および白濁度を算出した。結果を表1に示す。
【0069】
<実施例5>
洗浄した黒色のポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、操作cを行うことにより、第1の周期構造体層を形成させた。次いで、酸化チタン(後記のポリエステルに対して20質量%)を含有するポリエステル/トルエン20質量%液を塗布し、60℃で1時間加熱してトルエンを除去することにより、厚み2μmの酸化チタン粒子が規則配列していない第1の中間層を形成させた(以下、この操作を「操作h」という。)。さらに、上記の操作cおよび操作hを2回ずつ繰り返すことにより、6層からなるシート状の表示部材〔5〕を得た。
この表示部材〔5〕は、当該表示部材〔5〕の正面方向(表示部材の垂線との観察角θ=8度)から目視で観察したところ、緑色の構造色を呈するものであった。
この表示部材〔5〕について、実施例1と同様にして色濃度および白濁度を算出した。結果を表1に示す。
【0070】
<比較例1>
洗浄した黒色のゴムシートに、球体配列層の厚みを5μmとしたことの他は同様にして操作aを行うことにより、比較用のシート状の表示部材〔ア〕を得た。
この表示部材〔ア〕は、当該表示部材〔ア〕の正面方向(表示部材の垂線との観察角θ=8度)から目視で観察したところ、緑色の構造色を呈するものであった。
この表示部材〔ア〕について、実施例1と同様にして色濃度および白濁度を算出した。結果を表1に示す。
【0071】
<比較例2>
洗浄した黒色のゴムシートに、球体配列層の厚みを30μmとしたことの他は同様にして操作aを行うことにより、比較用のシート状の表示部材〔イ〕を得た。
この表示部材〔イ〕は、当該表示部材〔イ〕の正面方向(表示部材の垂線との観察角θ=8度)から目視で観察したところ、緑色の構造色を呈するものであった。
この表示部材〔イ〕について、実施例1と同様にして色濃度および白濁度を算出した。結果を表1に示す。
【0072】
<比較例3>
洗浄した黒色のポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、球体分散液〔1〕をバーコート法によって塗布・乾燥させて厚み100μmの球体配列層を形成させた後、シリコーンゲルを当該球体配列層の上から塗布し、球体間に塗布液を浸透させ、60℃で1時間加熱して固形化することにより、比較用のシート状の表示部材〔ウ〕を得た。
この表示部材〔ウ〕は、当該表示部材〔ウ〕の正面方向(表示部材の垂線との観察角θ=8度)から目視で観察したところ、緑色の構造色を呈するものであった。
この表示部材〔ウ〕について、実施例1と同様にして色濃度および白濁度を算出した。結果を表1に示す。
【0073】
<比較例4>
洗浄した黒色のポリエチレンテレフタレート(PET)シートに、シリコーンゲルをバーコート法によって塗布・乾燥させることにより、厚み400nmの第1の球体非含有層を形成させた(以下、この操作を「操作i」という。)。次いで、実施例4に記載の操作gを行うことにより、厚み50nmの第1の中間層を形成させた。さらに、上記の操作iおよび操作gを10回ずつ交互に繰り返すことにより、20層からなるシート状の表示部材〔エ〕を得た。
この表示部材〔エ〕は、当該表示部材〔エ〕の正面方向(表示部材の垂線との観察角θ=8度)から目視で観察したところ、無色に近い僅かな赤色の構造色を呈するものであった。この無色に近い僅かな赤色の構造色は、多層薄膜干渉による発色である。
この表示部材〔エ〕について、実施例1と同様にして色濃度および白濁度を算出した。結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の表示部材は、センサー、ディスプレイ、パネル、シート、ラベルなどとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の表示部材の構成の一例を模式的に示す説明用断面図である。
【図2】本発明の表示部材に係る周期構造体層における球体の別の配列状態を説明するための模式図である。
【図3】本発明の表示部材の構成の別の一例を模式的に示す説明用断面図である。
【図4】本発明の表示部材の構成のさらに別の一例を模式的に示す説明用断面図である。
【符号の説明】
【0077】
3,4,5 表示層
10 第1の周期構造体層
12,12b,12c,12d 球体
13 基板
15 球体層
20 第2の周期構造体層
30 第3の周期構造体層
40,50,70 中間層
60 周期構造体層
D 層間隔
M,Mb,Mc,Md マトリックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造色を発現する、球体およびマトリックスよりなる第1の周期構造体層と、
この第1の周期構造体層において発現される構造色と同じ色域の構造色を発現する、球体およびマトリックスよりなる第2の周期構造体層とが、
粒子配列による構造色を発現しない中間層を介して積層されてなる表示層を有することを特徴とする表示部材。
【請求項2】
前記第1の周期構造体層および前記第2の周期構造体層が、各々、反射スペクトルについて、{(ベースライン強度)/(ピーク強度)−(ベースライン強度)}×100で表される白濁度が50%以下であることを特徴とする請求項1に記載の表示部材。
【請求項3】
前記第1の周期構造体層および前記第2の周期構造体層の層厚が、各々15μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表示部材。
【請求項4】
前記中間層の層厚が、20nm以上であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表示部材。
【請求項5】
前記第1の周期構造体層および前記第2の周期構造体層の少なくとも1層が、外部からの刺激を受けることにより不可逆的な構造色変化を生じ、この構造色変化により得られる構造色が維持されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の表示部材。
【請求項6】
前記第1の周期構造体層および前記第2の周期構造体層の少なくとも1層が、外部からの刺激を受けることにより可逆的な構造色変化を生じ、かつ、前記外部からの刺激が解除されたときに元の構造色に復帰することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の表示部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−60974(P2010−60974A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228019(P2008−228019)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】