説明

表面が自然に老化した、塩化ビニルポリマーを含むポリマー組成物から製造された製品の処理方法

【課題】表面が自然に老化した製品の表面の呈色を回復することを可能にするとともに従来技術の方法に対してその欠点を示さずに多くの利点を示す方法を提供する。
【解決手段】使用している間に呈色が変化した、塩化ビニルポリマーを含むポリマー組成物から製造された製品の表面を処理する方法であって、該製品の該表面を周囲空気中で有機ペルオキシドと有機溶媒を含む有機溶液(溶液(S))で処理する段階(E)を含み、該処理が製品の表面層のみへ該溶液を拡散させることからなる、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面が自然に老化した、塩化ビニルポリマーを含むポリマー組成物から製造された製品の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、表面が自然に老化した、塩化ビニルポリマーを含むポリマー組成物から製造された製品の処理方法に関する。
使用中に熱、寒冷、人工光、太陽光、暗さ、雨、霧、周囲大気湿度、溶媒液又は洗剤液のような分解原因に曝された又は接触した塩化ビニルポリマーを含むポリマー組成物から製造された古い製品の表面の着色は自然に老化することがあり、新しい製品の表面がもつ呈色に対してかなり変化することが既知である。
特に、太陽光の作用を受けた塩化ビニルポリマーと二酸化チタンを含むポリマー組成物から製造された古い製品、特に古いプロファイルの、最初の白い表面が黄色、赤色、ピンク色又は茶色に変化し得ることが既知である。
【0003】
呈色の変化は、分解原因の種類や強度だけでなく、ポリマー組成物中に存在する物質のそれぞれの種類や量、特に二酸化チタン、にも関係する複雑で不明なメカニズムによる塩化ビニルポリマーの分解に起因する。
よく知られた例は、塩化ビニルポリマーと二酸化チタンを含むポリマー組成物から製造された最初に白色の古いプロファイルの表面の支配的な色としてピンク色による呈色に変化することである。“ピンキング”の名前で知られるこの現象は、標準的な寿命(即ち、少なくとも10年間)にまだ達してなく、低日射や多湿の条件下で太陽光に曝された古いプロファイルにしばしば見られる。そのような気候条件が一定の地理的な領域に遭遇した場合に、その領域に取り付けられたプロファイルが高割合でピンキングに影響され得る。
【0004】
自然に老化した製品の表面の呈色の変化の問題、特にプロファイルのピンキングの問題を、表面を再塗装することにより克服する試みは既に行なわれた。この解決法には多くの欠点がある。まず、分解したポリマーは“修理”されず、製品から除去もされない。次に、塗装した製品の呈色の安定性を保証することは可能でない。最後に、塗装した製品は塗料自体によって脆化する。
呈色が自然老化や製品の再研磨によって損傷した製品の層を研摩することによるこの問題を解決するための試みも既に行なわれた。この方法は人手に費用がかかる。壁部の近くの角や枠に適用することが難しい。その高品質の実現には、熱心な人員が必要である。更に、研摩し且つ再研磨した製品の老化に対する耐性は平凡なものである。
【0005】
実際に、表面が自然に老化した製品の問題を克服するために知られた唯一の確実な手段は、そのものの交換である。この作業には、かなりの経費が必要となる。更に、PVC製品を早期に交換しなければならないという事実は、特に建築分野でのケースのように長寿命がしばしば必要とされる用途には、そのイメージに対して非常に悪い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、表面が自然に老化した製品の表面の呈色を回復することを可能にするとともに従来技術の方法に対してその欠点を示さずに多くの利点を示す方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これを目的として、本発明は、表面が自然に老化した、塩化ビニルポリマーを含むポリマー組成物から製造された製品の処理方法であって、該製品の該表面を周囲空気中で有機ペルオキシドと有機溶媒を含む有機溶液(溶液(S))で処理する段階(E)を含む、前記方法に関する。
有利には、該溶液(S)がUV安定剤を更に含むか又は本発明の方法が、段階(E)に続いて、該製品の該表面が、溶液(S)と異なる、UV安定剤と有機溶媒を含む有機溶液(溶液(S’))で処理される段階(E’)を更に含んでいる。“UV安定剤”という用語は、紫外線から保護する物質を示すものである。
好ましくは、本発明の方法は、段階(E)と別に、段階(E’)を含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の方法によって処理された製品は、有利に形成、処理、完成又は半完成した製品であり、組成物でも粉末でも顆粒でもない。
本発明の方法によって処理され得る製品の例としては、パイプや取付物(剛性又は可撓性)、ケーブル(可撓性)、フィルムやシート(剛性又は可撓性)、コーティング布(可撓性)、プロファイル(剛性又は可撓性)、シーティング(剛性)、ビンやフラスコ(剛性)、射出製品(剛性)、床材や壁装材(可撓性)、マスチックス(可撓性)、成形製品(可撓性)、靭性製品(可撓性)を挙げることができる。
本発明の方法は、シーティングやプロファイルの処理に特によく適し、プロファイルの処理に特に非常によく適している。
プロファイルの例としては、プロファイルそれだけや完成品の製造に組立てられるプロファイル、例えば、ドア(ガレージドアを含む)、窓枠、シャッター(折たたみシャッター又はルーバシャッター)、壁装材、フェンス、家具のプロファイルを挙げることができる。
【0009】
“表面が自然に老化した”という製品の記載は、製品の使用中に表面が熱、寒冷、人工光、太陽光、暗さ、雨、霧、周囲大気湿度、溶媒液又は洗剤液のような分解原因に曝された又は接触した古い製品であることを意味するものである。
本発明の方法は、次に説明されるように個々の条件に曝された自然に表面が老化した製品の処理に特によく適している。
まず、本発明の方法は、表面の少なくとも一部を直接太陽光に断続的に曝すことにより自然に表面が老化した製品の処理に特によく適している。直接太陽光に断続的に曝すことが少なくとも1年間行なわれて日照時間が2000時間以内であった場合に特に非常に適している。断続的に曝すことが少なくとも1年間行なわれ、日照時間が1500時間以内であった場合に優れている。
次に、本発明の方法は、表面の少なくとも一部を水又は相対湿度が50%より大きい空気と少なくとも1年間接触させることにより表面が自然に老化した製品の処理に特によく適している。
【0010】
本発明の方法は、次に説明される外観に対して個々の結果で表面が老化した製品の処理に特によく適している。
本発明の方法は、表面の少なくとも一部の呈色が、処理された直後の新しいときの製品の同じ部分の呈色と異なる点で、表面が自然に老化した製品の処理に特によく適している。
【0011】
“呈色が異なる”という用語は、老化した表面の一部の呈色と製品が新しいときの同じ部分の呈色と間のCIELAB(登録商標)空間(1976)における全体の比色差:

(L*は輝度であり、a*は緑-赤軸に沿った色度であり、b*は黄-青軸に沿った色度であり、L*、a*、b*の下の指数νは老化した表面の部分を示し、指数nは物体が新しかったときの同じ部分を示す。)
が1より大きいことを意味するものである。
【0012】
本発明の方法は、製品が新しいときに白色であった表面の少なくとも一部が支配的な色として黄色、ピンク色、赤色、茶色又は灰色による呈色を得た点で表面が自然に老化した製品の処理に特に非常によく適している。本発明の方法は、製品が新しいときに白色であった表面の少なくとも一部が支配的な色としてピンクの呈色を得た点で、即ち、製品が新しいときに白色であった表面の100×(a*+0.5×b*)/L*であると定義されるピンク指数PIと、自然老化後に支配的な色としてピンクの呈色を得た表面のピンク指数PIとの間の差が1より大きいような表面が自然に老化した製品の処理に優れている。L*、a*、b*は上で定義した通りである。
【0013】
本発明の方法によって処理した製品が製造されたポリマー組成物は、塩化ビニルポリマーを含む組成物であり得る。
“塩化ビニルポリマー”という用語は、塩化ビニルホモポリマーと、塩化ビニルと塩化ビニル以外の少なくとも1つのエチレン系不飽和モノマーとによって形成された少なくとも50質量%の-CH2-CHCl-単位を有するコポリマーの双方を示すものである。
塩化ビニル以外のエチレン系不飽和モノマーの例としては、フルオロビニルモノマー、例えば、フッ化ビニリデン、ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、アクリルモノマーやメタクリルモノマー、例えば、n-ブチルアクリレート、スチレンモノマー、例えば、スチレン、又はオレフィンモノマー、例えば、エチレン、プロピレン又はブタジエンを挙げることができる。
塩化ビニルポリマーは、好ましくは少なくとも70質量%の-CH2-CHCl-単位、特に好ましくは少なくとも85質量%の-CH2-CHCl-単位を有する。
【0014】
本発明の方法は、塩化ビニルポリマーに加えて二酸化チタンを含むポリマー組成物から製造された製品を処理するのに特によく適している。二酸化チタンは、アナターゼ形又はルチル形であり得る。本発明の方法は、二酸化チタンがルチル形であるときに特に非常によく適している。本発明の方法は、二酸化チタンがルチル形であり且つ被覆されている場合に優れている。
塩化ビニルポリマーの質量に対する二酸化チタンの質量は、少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも1%である。更に、有利には多くても20%、好ましくは多くても10%である。
【0015】
本発明の方法は、塩化ビニルポリマーと二酸化チタンに加えて、熱安定剤を含むポリマー組成物から製造された製品を処理するのに特に非常によく適している。
熱安定剤の例としては、スズ、バリウム、カルシウム、カドミウム、亜鉛、又は鉛の有機又は無機塩、又はこれらの金属の酸化物又は水酸化物を挙げることができる。
本発明の方法は、熱安定剤が鉛を含む熱安定剤から選ばれた場合に特に非常によく適している。
鉛を含む熱安定剤の例としては、塩基性炭酸鉛(2PbCO3・Pb(OH)2)、二塩基性亜リン酸鉛(2PbO・PbHPO3・1/2H2O)、ステアリン酸鉛(Pb(C17H35COO)2)、二塩基性ステアリン酸鉛(2PbO・Pb(C17H35COO)2)を挙げることができる。
塩化ビニルポリマーの質量に対する熱安定剤の質量は、有利には少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも1%である。更に、塩化ビニルポリマーの質量に対する熱安定剤の質量は、多くても20%、好ましくは多くても15%、特に非常に好ましくは多くても10%である。
【0016】
ポリマー組成物は、上記成分に加えて、可塑材、衝撃補強剤、充填剤、二酸化チタン以外の顔料、内部潤滑剤、外部潤滑剤、希釈剤、粘度調節剤、発泡剤、殺真菌剤又は殺菌剤のようなポリマー組成物に慣用の添加剤を特に含むことができる。ポリマー組成物は、塩化ビニルポリマーの質量に対して、好ましくは少なくとも150質量%のそのような添加剤を含んでいる。特に好ましい方法においては、多くても50質量%、特に非常に好ましい方法においては、多くても20質量%を含んでいる。
【0017】
有利には、段階(E)の前に、製品の表面は、例えば、布でほこりを払い及び/又は石鹸水で洗浄することにより洗浄される。
段階(E)での処理は、有利には、製品の表面層へ溶液(S)を拡散させることからなる。
そのような処理の例としては、特に、
- 製品の表面を溶液(S)を含む浴に浸漬する工程、
- 製品の表面に溶液(S)を注ぐ工程、
- 製品の表面上に溶液(S)を噴霧する工程、
- 製品の表面を溶液(S)でコーティングする工程、
を挙げることができる。
更に、有利には、段階(E)での処理は、あまり製品の底の範囲までは溶液を拡散しないことからなる。特に、段階(E)での処理が製品の表面を溶液(S)を含む浴に浸漬することからなる場合には、溶液(S)があまり製品の底の範囲まで拡散する前に浴から取り出すことが有利である。
【0018】
段階(E)での処理は、製品の表面を溶液(S)でコーティングすることからなることが好ましい。
製品の表面を溶液(S)でコーティングすることは、単一方向の運動又は往復運動によって行なうことができる。更に、表面を強制的に摩擦せずに行なうことが有利である。
処理表面を未処理表面から分ける先端の進行速度は、有利には100 mm/s未満、好ましくは50 mm/s未満である。更に、処理表面を未処理表面から分ける先端の進行速度は、有利には1 mm/sより大きく、好ましくは5 mm/sより大きい。
溶液(S)の製品の表面のコーティングは、木綿又は他の適切な材料から製造され得る適切な手段によって、例えば、ブラシ又は布で行なうことができる。好ましくは布で行なわれる。
処理すべき製品の形がそれを可能にする場合、布をコーティングツールに取り付けることができる。コーティングツールは、有利には、布を支持する硬いパッドと、ハンドルを含んでいる。
【0019】
段階(E)の処理は、分解原因に曝された製品の表面又はそのような分解原因と接触した製品の表面の全体にわたって行なうことが有利である。このことは、曝された表面の部分だけが、処理された直後に、新しかった製品の表面の呈色と異なる場合でさえ適用される。例として、製品が窓枠である場合には、外面は太陽光にその全体が曝されていることが有利であり、段階(E)の処理は、その上、その外面の一部だけ呈色の変化が有害であっても、これらの枠の外面の全体にわたって行われることが有利である。
段階(E)は、処理すべき表面すべてが溶液(S)によって湿潤するまで行なわれることが有利である。老化した製品の表面の呈色が新しい製品の表面と異なる場合、段階(E)は、少なくとも前記製品の表面の全部の呈色の回復まで行なうことが好ましい。特に好ましい方法においては、段階(E)は、少なくともこれらの製品の表面の少なくとも一部の呈色の安定な回復まで行なわれる。“呈色の安定な回復”という用語は、段階(E)の終わりの1/2時間後以内に呈色が変化しないことを意味するものである。
安定な方法で呈色を回復させるために連続して数時間溶液(S)で処理することが必要となることがあり、スタボーン染色は、特に、処理後の10分以内に現れてくることがある。
安定な方法で呈色を回復させるために溶液(S)で4回を超える連続処理を適用することが必要なことはほとんどない。これらの処理の間、製品は少なくとも1分間放置することが有利である。
【0020】
製品の表面が溶液(S)で処理される周囲空気の温度は、有利には40℃未満、好ましくは35℃未満、特に好ましい方法では30℃未満である。更に、有利には0℃より高く、好ましくは10℃より高く、特に好ましい方法では15℃より高い。
溶液(S)は、有機ペルオキシドと有機溶媒を含む有機溶液であり得る。どのような方法を用いても、特に混合、溶解、相分離法を用いて調製することができる。
溶液(S)中の有機ペルオキシドの濃度は、g/kg溶液で表され、有利には少なくとも2、好ましくは少なくとも5、特に好ましい方法では少なくとも10である。更に、有利には多くても500、好ましくは多くても200、特に好ましい方法では多くても100である。
【0021】
溶液(S)による処理が行なわれた直後に製品の表面に又は製品の内部に保持される有機ペルオキシドの質量は、g/m2で表され、有利には少なくとも0.1、好ましくは少なくとも1、特に好ましい方法では少なくとも5である。更に、有利には多くても1000、好ましくは多くても200、特に好ましくは多くても100である。
有機ペルオキシドは、ジアシルペルオキシド、例えば、ジベンゾイルペルオキシド、ペルエステル、例えば、tert-ブチルペルベンゾエート、ペルケタール、例えば、2,2-ビス[t-ブチルペルオキシ]ブタン、ジア(ラ)ルキルペルオキシド、例えば、ジ(t-ブチル)ペルオキシド又はジクミルペルオキシド、ア(ラ)ルキルヒドロペルオキシド、例えば、tert-ブチルヒドロペルオキシド又はクメンヒドロペルオキシド、又は有機過酸、そのナトリウム、カリウム又はアンモニウム塩より選ばれることが有利である。
好ましくは、有機ペルオキシドは、有機過酸、そのナトリウム、カリウム又はアンモニウム塩より選ばれる。特に好ましい方法では有機ペルオキシドが有機過酸である。
【0022】
有機過酸の例としては
- 脂肪族一過酸、例えば、過ギ酸、過酢酸、過プロピオン酸、過酪酸、過吉草酸、過カプロン酸又は過カプリル酸、これらは-OCH3基、例えば、過メトキシ酢酸、-OH基、例えば、過乳酸、-Cl基、例えば、過クロロ酢酸、-NO2基、例えば、過ニトロプロピオン酸、又は他の基で置換されていてもよい、
- エチレン系不飽和一過酸、例えば、ペルアクリル酸、
- 芳香族一過酸、例えば、過安息香酸、-OCH3、-OH、-Cl又は-NO2のような基で置換されていてもよい、
- 脂肪族二過酸、例えば、過シュウ酸、過マロン酸、過コハク酸、過グルタル酸、過アジピン酸、過セバシン酸又はジペルドデカン二酸、
- 芳香族二過酸、例えば、過フタル酸、-OCH3、-OH、-Cl又は-NO2のような基で置換されていてもよい、
- ポリ過酸、例えば、ニトリロトリ過酢酸又は過クエン酸
を挙げることができる。
【0023】
有機過酸の第一の好ましい特性は脂肪族であることである。
有機過酸の第二の好ましい特性は一過酸であることである。
有機過酸の第三の好ましい特性は多くても10個の炭素原子を有することである。特に好ましい方法では、多くても6個の炭素原子を有し、特に非常に好ましい方法では、多くても3個の炭素原子を有する。
すべての有機過酸のうち過酢酸が好ましい。
【0024】
有機ペルオキシドが有機過酸である場合、溶液(S)は有機過酸と有機溶媒に加えて有機酸を含むことが有利である。溶液(S)中の有機酸の濃度は、g/kg溶液で表され、好ましくは少なくとも2、特に好ましい方法では少なくとも10、特に非常に好ましい方法では少なくとも20である。更に、好ましくは多くても200、特に好ましい方法では多くても100である。
有機酸は、過酸のペルカルボキシル基がカルボキシル基で置換されていること以外は有機過酸と同じ化学式を有する。
【0025】
該溶液(S)が有機過酸と有機溶媒に加えて有機酸を含む場合、該溶液は次の工程(方法(M)):
- 該有機溶媒を、多くても250 g/kg水溶液の割合の該有機過酸と、多くても500 g/kg水溶液の割合の該有機酸と、多くても250 g/kg水溶液の割合の過酸化水素と、水とを含む水溶液と、有機相と水相を含む2相混合液が形成されるまで混合する工程と、
- 該有機相と該水相を分離する工程と、
- 該有機相を回収し、有機相が前記溶液(S)を構成している工程と、
を順次行なうことにより調製されることが有利である。
水溶液中の有機過酸の濃度は、g/kg水溶液で表され、好ましくは多くても200である。
更に、少なくとも50、好ましくは少なくとも100である。
水溶液中の有機酸の濃度は、g/kg水溶液で表され、好ましくは多くても400である。更に、少なくとも100、好ましくは少なくとも200である。
【0026】
水溶液中の過酸化水素の濃度は、g/kg水溶液で表され、好ましくは多くても200である。更に、少なくとも50、好ましくは少なくとも100である。
水溶液の容量に対して有機溶媒の容量は、有利には多くても20、好ましくは多くても10、特に好ましい方法では多くても6である。更に、少なくとも1/4、好ましくは少なくとも1、特に好ましい方法では少なくとも3/2である。
方法(M)の調製は、周囲温度で行なうことが有利である。
【0027】
溶液(S)が含む有機溶媒は、塩化ビニルポリマーの膨潤を引き起こす物質であることが有利である。
塩化ビニルポリマーの膨潤を引き起こす物質は、特にアルコール、アルデヒド、ケトン、モノエステル、ジエステル、エーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、臭素化炭化水素、塩素化炭化水素に見出すことができる。塩化ビニルポリマーの膨潤を引き起こす物質として、シクロヘキサノン、アセトン、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ベンゼン又は塩素化炭化水素、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、ペルクロロエチレン又はクロロベンゼンを挙げることができる。
【0028】
有機溶媒の第一の好ましい特性は、溶解度パラメータδが少なくとも8.5であることである。特に好ましい方法では、δは少なくとも9.0である。特に非常に好ましい方法では、δは少なくとも9.5である。δは、“Handbook of Chemistry and Physics”, CRC Press, 64th edit., p. C-696に定義された有機溶媒の溶解度パラメータである。ヒルデブランド単位(H)で表される。δ(H)の表は、この同じ文献で利用できる。
有機溶媒の第二の好ましい特性は、溶解度パラメータδが多くても10.5であることである。特に好ましい方法では、δは多くても10.0である。
有機溶媒の第三の好ましい特性は、ケトン、モノエステル、エーテル、芳香族炭化水素、臭素化炭化水素及び塩素化炭化水素より選ばれることである。特に好ましい方法では、塩素化炭化水素より選ばれ、特に非常に好ましい方法では、C1塩素化炭化水素より選ばれる。
溶液(S)を調製するために用いたすべての有機溶媒のうち最良の結果を示したものはジクロロメタンである。
【0029】
溶液(S)中の有機溶媒の濃度は、g/kg溶液で表され、有利には少なくとも500、好ましくは少なくとも650、特に好ましい方法では少なくとも800である。更に、有利には多くても990、好ましくは多くても970である。
溶液(S)がUV安定剤を含む場合、UV安定剤は有機ペルオキシドの酸化作用に耐えるUV安定剤より選ばれることが有利である。
有機ペルオキシドの酸化作用に耐えるUV安定剤は、特に、錯化剤、例えば、ニッケル(II)錯体又は有機亜リン酸塩、又はUVスクリーニング剤に見出すことができる。“UVスクリーニング剤”という用語は、紫外線を吸収する物質を示すものである。UVスクリーニング剤は、有利には、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ナフタレン、サリチル酸、安息香酸又はオキサルアニリドの誘導体、又はケトン誘導体である。
溶液(S)中のUV安定剤の濃度は、g/kg溶液で表され、有利には少なくとも1である。更に、有利には多くても100である。
【0030】
上記成分に加えて、溶液(S)は場合によっては下記成分を含んでもよい。
- 多くても50、好ましくは多くても35、g/kg溶液; 特に方法(M)に従って調製した場合に溶液(S)は水をしばしば含んでいる、
- 多くても20、好ましくは多くても10、g/kg溶液の過酸化水素; 特に方法(M)に従って調製した場合に溶液(S)は過酸化水素をしばしば含んでいる、
- 多くても50、好ましくは多くても20、g/kg溶液の添加剤、例えば、非イオン性乳化剤やアニオン乳化剤又は分散剤; 特に好ましい方法では、溶液(S)はそのような添加剤を含まない。
【0031】
本発明の方法が段階(E’)を含む場合、段階(E’)は段階(E)後に少なくとも10分間、特に好ましい方法では、少なくとも20分間行なうことが有利である。
更に、ときには、段階(E)と段階(E’)との間で製品の表面を、好ましくは透明な水ですすぐことが有利である。このことは、特に、製品の表面が所望されるより多量の溶液(S)で処理された場合に適用される。
段階(E’)での処理は、優先選択レベルと無関係に、段階(E)での処理と同じ条件下で行なうことが有利であり、同じ特徴を有することが有利である。
しかしながら、段階(E’)は下記の実施条件と特徴によって段階(E)と区別される。
段階(E’)の終わりは、段階(E)の例のように或る呈色の達成に依存しない。
ときには、段階(E’)が行なわれた数時間後にオフホワイトの沈降物が製品の表面に現れることがある。この沈降物は、製品を布又は柔らかい紙で摩擦して乾かすことによりほこりとして難しくなく除去し得る。このことは、製品を損傷する結果にならない。
【0032】
溶液(S’)中のUV安定剤の濃度は、g/kg溶液で表され、有利には少なくとも0.5、好ましくは少なくとも1、特に好ましい方法では少なくとも2、特に非常に好ましい方法では少なくとも5であり、更に、多くても250、好ましくは多くても100、特に好ましい方法では多くても50である。
溶液(S’)による処理が行なわれた直後に製品の表面又は内部に保持されるUV安定剤の質量は、g/m2で表され、有利には少なくとも0.005、好ましくは少なくとも0.05、特に好ましい方法では、少なくとも0.25であり、更に、有利には多くても50、好ましくは多くても10、特に好ましい方法では多くても5である。
溶液(S’)が含むUV安定剤は、錯化剤、例えば、ニッケル(II)錯体又は有機亜リン酸塩、立体障害フェノール又はアミン、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン又はエチレンビスピペラジノン、及びUVスクリーニング剤より選ばれることが有利である。
【0033】
好ましくは、溶液(S’)が含むUV安定剤はUVスクリーニング剤より選ばれる。
UVスクリーニング剤は、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、ナフタレン、サリチル酸、安息香酸又はオキサルアニリドの誘導体、又はケトン誘導体であることが有利である。
ベンゾフェノンから誘導されるUVスクリーニング剤の例としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン又は2-ヒドロキシ-4-(n-オクチルオキシ)ベンゾフェノンを挙げることができる。
ベンゾトリアゾールから誘導されるUVスクリーニング剤の例としては、2-[2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール又は2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ(t-ブチル)フェニル]ベンゾトリアゾールを挙げることができる。
ナフタレンから誘導されるUVスクリーニング剤の例としては、ベンゾールアセトメチルナフタレン又はフルフリリデンアセトメチルナフタレンを挙げることができる。
サリチル酸から誘導されるUVスクリーニング剤の例としては、フェニルサリチレート、レゾルシノールモノベンゾエート又はp-(tert-ブチル)フェニルサリチレートを挙げることができる。
【0034】
オキサルアニリドから誘導されるUVスクリーニング剤の例としては、2-エチル-2’-エトキシオキサルアニリドを挙げることができる。
ケトン誘導体であるUVスクリーニング剤の例としては、β-メチルウンベリフェロン又はジプノンを挙げることができる。
ヒドロキノン又はそのジエチル又はジメチルエーテル、又はトリ(p-クロロフェニル)スチビンのような物質もUVスクリーニング剤である。
特に好ましい方法では、溶液(S’)が含んでいるUV安定剤はベンゾフェノン又はベンゾトリアゾールの誘導体より選ばれる。
【0035】
溶液(S’)の有機溶媒は、その種類に関して優先選択レベルに無関係に、溶液(S)の有機溶媒と同じ特性に対応する。
溶液(S’)の有機溶媒の濃度は、g/kg溶液で表され、有利には少なくとも700、好ましくは少なくとも850、特に好ましい方法では、少なくとも900である。
上記成分に加えて、溶液(S’)は溶液(S)のように非イオン性又はアニオン乳化剤、又は分散剤のような添加剤を含んでもよい。溶液(S’)中の前記添加剤の全濃度は、有利には多くても50 g/kg溶液、好ましくは多くても10 g/kg溶液である。特に好ましい方法では、溶液(S’)はそのような添加剤を含まない。
【0036】
本発明の方法は多くの利点がある。
まず、表面が自然に老化した製品の表面の呈色を永続的方法で回復させることを可能にする。特に、低日射や高湿度の条件下で曝されることからピンク色になったプロファイルの白色の呈色を永続的な方法で回復させることを可能にする。
“呈色を永続的な方法で回復させる”という用語は、処理後、数ヶ月、実際には数年でさえ呈色が変化しないことを意味するものである。
実際に、本発明の方法によって、費用のかかる工程であり且つPVCのイメージを損なうものである、表面が老化した製品そのものの交換が避けられる。
次に、本発明の方法は、専門家でない人によっても行なう非常に簡便な方法である。
最後に、本発明の方法は安価である。製品の回復にはほとんど時間が要らない。更に、処理溶液の原料のコストも低い。
製品がUV安定剤を含む溶液(S)又は(S’)で処理される本発明の方法の代替的形態が特に有利である。その方法で回復した製品は、新規な製品より良好である、光や熱に対する耐性がしばしば注目に値する。
【実施例】
【0037】
次の実施例は本発明を具体的に説明するものであるが、その範囲を制限しない。
処理すべき製品の説明
100部の塩化ビニルホモポリマー、6.2部のコーティングルチル二酸化チタン、8.5部の鉛安定剤、8.7部の慣用の添加剤(6.2部の炭酸カルシウムを含む)を含むポリマー組成物から製造されたプロファイルから形成されたシャッターの外面を引き続き4年間断続的に太陽光に曝すとともに雨水と接触させ、その間日照時間は、それぞれ最初から4年間、約1700時間/年、1300時間/年、1600時間/年及び1400時間/年であった。
シャッターが新しいときに白色であったシャッターの外面の全体は、均一なピンク色になった。ピンク色はMinolta(登録商標)CM-508d分光比色計で測定し、次のL*=88.13、a*=0.37、b*=3.0、PI=2.1を得た。L*、a*、b*、PIは上で定義した通りである。
太陽光に曝されず且つ雨水と接触しなかった同じシャッターの内部は、白色を保持した。その呈色を同様の分光比色計で測定し、次のL*=91.8、a*=-1.11、b*=-2.56、PI=-2.6を得た。L*、a*、b*、PIは上で定義した通りである。
更に、シャッターの外面の呈色とシャッターの内面の呈色(太陽光に曝さず又は雨水と接触していない)との差ΔEab*を計算し、次のΔEab*=6.8を得た。
【0038】
処理溶液の調製
溶液(S)の調製
漏斗がその底にコックを備え、その上の部分に栓を備えている、分液漏斗の栓を取り外した。その分液漏斗に375 cm3のジクロロメタン、次に過酢酸を約150 g/kg溶液の割合で、過酸化水素を約150 g/kg溶液の割合で、酢酸を約300 g/kg溶液の割合で含む125 cm3のProxitane(登録商標)15水溶液を入れた。
分液漏斗の栓を再び挿入した。分液漏斗をさかさまにし、次にコックを直ちに開いた。
コックを約10秒間開けたままにした。次に、コックを再び閉め、分液漏斗を立て直した。
分液漏斗を約10秒間手で振盪した。このようにして有機相と水相を含む2相混合物が生じた。
有機相と水相が完全に分離するまで沈降による分離を行なった。続いて漏斗の底に位置するコックによって濃い有機相を引き出した。有機相は溶液(S)にした。
溶液(S)の組成を求めた。溶液(S)は、過酸を約20 g/kg溶液の割合で、酢酸を約40 g/kg溶液の割合で、過酸化水素を約1 g/kg溶液の割合で、ジクロロメタンを約935 g/kgの割合で含んだ。
【0039】
溶液(S’)の調製
500 cm3のジクロロメタンをビーカーに入れ、次に10 gの2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ(tert-ブチル)フェニル]ベンゾトリアゾール、Tinuvin(登録商標)320をその中に撹拌しながら入れた。
2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ(tert-ブチル)フェニル]ベンゾトリアゾールがジクロロメタンに完全に溶解するまで撹拌を続けた。
【0040】
製品の処理
処理を行なったときの周囲空気の温度は23℃であった。
【0041】
洗浄
シャッターの外面を乾いたぼろきれでほこりを払った。
【0042】
溶液(S)によるコーティング
綿布をハンドルの付いたコーティングツールの硬いパッド上に広げ、その後、綿布を溶液(S)に含浸した。
溶液(S)に含浸した布を、シャッターのピンクになった外面全体を面に対して圧力を加えずに摩擦した。コーティングされない表面からコーティングされた表面を分ける先端が約15 mm/sで進行し、外面全体が白色を再び得たことを確かめた。脱色作用が低下するたびに綿布を溶液(S)に再含浸した。
溶液(S)によるコーティング処理が完了すると、30分間待った。頑固な着色は現れてこなかった。
溶液(S)で処理した後のシャッターの外面の呈色をMinolta(登録商標)CM-508d比色計で測定し、次のL*=91.94、a*=-0.99、b*=-2.76、PI=-2.6を得た。L*、a*、b*、PIは上で定義した通りである。
更に、溶液(S)で処理した後のシャッターの内面の呈色とシャッターの外面の呈色との差ΔEab*を計算し、次のΔEab*=0.27を得た。呈色のそのような小さな差は肉眼では認知できない。
【0043】
溶液(S’)によるコーティング
綿布をハンドルの付いたコーティングツールの硬いパッド上に広げ、その後、綿布を溶液(S)に含浸した。
溶液(S)によるコーティング処理の終わりで頑固な着色は現れてこなかった30分後に、溶液(S’)に含浸した布をシャッターの外面全体に面に対して圧力を加えずに摩擦した。
コーティングした表面をコーティングされない表面から分離する先端は約30 mm/sで進行した。布が乾くたびに綿布を溶液(S’)で再含浸した。
溶液(S’)で処理した後のシャッターの外面の呈色をMinolta(登録商標)CM-508d比色計で測定し、次のL*=92.11、a*=-1.23、b*=-2.78、PI=-2.8を得た。L*、a*、b*、PIは上で定義した通りである。
更に、溶液(S)と(S’)で処理した後のシャッターの内面の呈色とシャッターの外面の呈色との差ΔEab*を計算し、次のΔEab*=0.4を得た。呈色のそのような小さな差は肉眼では認知できない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用している間に呈色が変化した、塩化ビニルポリマーを含むポリマー組成物から製造された製品の表面を処理する方法であって、該製品の該表面を周囲空気中で有機ペルオキシドと有機溶媒を含む有機溶液(溶液(S))で処理する段階(E)を含み、該処理が製品の表面層のみへ該溶液を拡散させることからなる、前記方法。
【請求項2】
該溶液(S)がUV安定剤を更に含むか、又は段階(E)に続いて、該製品の該表面が、溶液(S)と異なる、UV安定剤と有機溶媒を含む有機溶液(溶液(S’))で処理される段階(E’)を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
段階(E)と別に、段階(E’)を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
該ポリマー組成物が二酸化チタンを更に含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
段階(E)での処理が、該製品の該表面を該溶液(S)でコーティングすることからなる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該周囲空気の温度が40℃未満である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
該有機ペルオキシドが有機過酸である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
該有機過酸が過酢酸である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
該溶液(S)が有機酸を更に含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
該溶液(S)が
- 該有機溶媒を、多くても250 g/kg水溶液の割合の該有機過酸と、多くても500 g/kg水溶液の割合の該有機酸と、多くても250 g/kgの水溶液の割合の過酸化水素と、水とを含む水溶液と、有機相と水相を含む2相混合液が形成されるまで混合する工程と、
- 該有機相と該水相を分離する工程と、
- 該有機相を回収し、有機相が前記溶液(S)を構成している工程と、
を順次行なうことにより調製される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
該有機溶媒が塩化ビニルポリマーの膨潤を引き起こす物質である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
塩化ビニルポリマーの膨潤を引き起こす該物質がジクロロメタンである、請求項11記載の方法。

【公開番号】特開2009−102667(P2009−102667A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35528(P2009−35528)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【分割の表示】特願2003−529839(P2003−529839)の分割
【原出願日】平成14年9月18日(2002.9.18)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】