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表面に微細な凹凸構造を有するフィルムおよびその製造方法
説明

表面に微細な凹凸構造を有するフィルムおよびその製造方法

【課題】表面に50nm以上の深さの微細凹凸構造を有し、耐溶剤性にも優れたフィルムを提供すること。
【解決手段】光の作用により変形を誘起する光応答性部位を含む3官能のシラン化合物(A)1〜25モル%と、芳香環を1つ以上有し且つ前記光応答性部位を含まない3官能のシラン化合物(B)70〜98モル%と、4官能のシラン化合物(C)1〜25モル%とを混合して調製したゾル溶液を用いて前駆体フィルムを作製し、該前駆体フィルムの表面に微細凹凸構造を形成し、該微細凹凸構造を有する前駆体フィルムに加熱処理を施すことによって得られるフィルムであり、
前記加熱処理後のフィルムの微細凹凸構造の深さが50nm以上であり、
前記加熱処理後のフィルムをアセトンに室温で5分間浸漬した場合に、波長480nmにおける、前記加熱処理を施す前の前駆体フィルムの吸光度に対する浸漬後のフィルムの吸光度の残存率が90%以上である、
ことを特徴とする表面に微細な凹凸構造を有するフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に微細な凹凸構造を有するフィルムおよびその製造方法に関し、より詳しくは、フィルムを構成するネットワーク構造に光の作用により変形を誘起する光応答性部位を導入することによって光の作用により表面に微細な凹凸構造を形成させたフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光の作用により材料の表面形状が変化することを利用して、材料表面に微細な凹凸構造を形成する技術が提案されており、このような技術は、光記録媒体やプロテインチップ、フォトニック結晶などに利用されている。
【0003】
Appl.Phys.Lett.、1995年、第66巻、第10号、1166〜1168頁(非特許文献1)およびAppl.Phys.Lett.、1995年、第66巻、第2号、136〜138頁(非特許文献2)には、アゾベンゼン骨格含有ポリマーからなるフィルムに二光束干渉露光を施すことにより、表面レリーフ回折格子(SRG)を形成させることが開示されており、SRGの深さが120〜600nmであることも開示されている。また、特開2005−234016号公報(特許文献1)およびAppl.Phys.Lett.、2006年、第88巻、204107−1〜3頁(非特許文献3)には、アゾベンゼン骨格含有ポリマーからなるフィルムに二光束干渉露光を施すことにより、フィルムの表面に微細な凹凸構造を形成させ、この微細な凹凸構造を有するフィルムをテンプレートとして微小物体を2次元配列させて固定化する方法が開示されている。
【0004】
このようなSRGや微細凹凸構造は、フィルムをアゾベンゼン骨格含有ポリマーのガラス転移温度以上に加熱することによって消去できるものの、有機溶媒に可溶であるため、有機溶媒を使用する用途には利用できず、適用範囲が制限されていた。例えば、特許文献1や非特許文献3に記載の微細凹凸構造を有するフィルムは、微小物体が水に分散するものであれば適用可能であるが、有機溶媒に分散させる必要がある微小物体を固定化することは困難であった。
【0005】
一方、特開2003−5325号公報(特許文献2)には、光の作用により材料の体積変化を起こす光反応性成分が組み込まれた光記録用材料として、アゾベンゼン骨格含有有機無機ハイブリッド材料が開示されており、この材料が耐熱性および硬度に優れたものであることも開示されている。しかしながら、この光記録用材料の表面に、光照射により形成できる微細凹凸構造の最大深さは20nm程度であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−234016号公報
【特許文献2】特開2003−5325号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】D.Y.Kimら、Appl.Phys.Lett.、1995年、第66巻、第10号、1166〜1168頁
【非特許文献2】P.Rochonら、Appl.Phys.Lett.、1995年、第66巻、第2号、136〜138頁
【非特許文献3】O.Watanabeら、Appl.Phys.Lett.、2006年、第88巻、204107−1〜3頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、表面に50nm以上の深さの微細凹凸構造を有し、耐溶剤性にも優れたフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、光の作用により変形を誘起する光応答性部位を含む3官能のシラン化合物と4官能のシラン化合物に加えて、芳香環を1つ以上有し且つ前記光応答性部位を含まない3官能のシラン化合物を所定の割合で加水分解反応および重縮合反応させることによって、得られるフィルムの表面に深さが50nm以上の微細凹凸構造を形成することが可能となり、さらに、前記4官能のシラン化合物を所定の割合で加水分解反応および重縮合反応させることによって、耐溶剤性に優れたフィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の表面に微細な凹凸構造を有するフィルムは、
光の作用により変形を誘起する光応答性部位を含む3官能のシラン化合物(A)1〜25モル%と、芳香環を1つ以上有し且つ前記光応答性部位を含まない3官能のシラン化合物(B)70〜98モル%と、4官能のシラン化合物(C)1〜25モル%とを混合して調製したゾル溶液を用いて前駆体フィルムを作製し、該前駆体フィルムの表面に微細凹凸構造を形成し、該微細凹凸構造を有する前駆体フィルムに加熱処理を施すことによって得られるフィルムであり、
前記加熱処理後のフィルムの微細凹凸構造の深さが50nm以上であり、
前記加熱処理後のフィルムをアセトンに室温で5分間浸漬した場合に、波長480nmにおける、前記加熱処理を施す前の前駆体フィルムの吸光度に対する浸漬後のフィルムの吸光度の残存率が90%以上である、ことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の表面に微細な凹凸構造を有するフィルムの製造方法は、
光の作用により変形を誘起する光応答性部位を含む3官能のシラン化合物(A)1〜25モル%と、芳香環を1つ以上有し且つ前記光応答性部位を含まない3官能のシラン化合物(B)70〜98モル%と、4官能のシラン化合物(C)1〜25モル%とを混合して調製したゾル溶液を用いて前駆体フィルムを作製する製膜工程と、
該前駆体フィルムの表面に深さが50nm以上の微細凹凸構造を形成する凹凸形成工程と、
該微細凹凸構造を有する前駆体フィルムに100℃以上の加熱処理を施して、加熱処理後のフィルムをアセトンに室温で5分間浸漬した場合に、波長480nmにおける、前記加熱処理を施す前の前駆体フィルムの吸光度に対する浸漬後のフィルムの吸光度の残存率が90%以上であり、且つ表面の微細凹凸構造の深さが50nm以上であるフィルムを作製する加熱工程と、
を備えることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の表面に微細な凹凸構造を有するフィルムおよびその製造方法において、前記光応答性部位を含む3官能のシラン化合物(A)としては、アゾベンゼン骨格を備えるものが好ましい。また、前記ゾル溶液中のシラン化合物(C)の含有率としては、10〜25モル%であることが好ましい。
【0013】
本発明の表面に微細な凹凸構造を有するフィルムの製造方法において、前記加熱工程における加熱温度としては200℃以上が好ましい。また、前記加熱工程の前に、前記凹凸形成工程で得られた微細凹凸構造を有する前駆体フィルムに100℃未満の予備加熱処理を施す予備加熱工程を備えることが好ましい。さらに、前記凹凸形成工程において、前記前駆体フィルムの表面に光を照射して微細凹凸構造を形成することが好ましい。
【0014】
なお、本発明の表面に微細な凹凸構造を有するフィルムにおいて、深さが50nm以上の微細凹凸構造を形成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。一般に、3官能のシラン化合物と4官能のシラン化合物とを加水分解反応および重縮合反応させて架橋構造を形成させると架橋点が密となり、より剛直な架橋構造が形成される。このため、架橋構造に柔軟性を付与する場合には、通常、2官能のシラン化合物が使用される。
【0015】
本発明の表面に微細な凹凸構造を有するフィルムにおいては、光応答性部位を含む3官能のシラン化合物(A)と芳香環を1つ以上有し且つ前記光応答性部位を含まない3官能のシラン化合物(B)と4官能のシラン化合物(C)とが加水分解および重縮合して架橋構造を形成しているため、上記知見によれば、架橋点が密となり、架橋構造は剛直になると考えられる。しかしながら、本発明の前記フィルムにおいては、芳香環を1つ以上有する3官能のシラン化合物(B)を使用するため、芳香環の嵩高さに起因する立体障害により、架橋点が適度に疎となるため、2官能のシラン化合物を使用しなくても、架橋構造に柔軟性を付与することが可能となり、その結果、前記光応答性部位が光の作用により変形を誘起しやすくなり、深い微細凹凸構造が形成されると推察される。
【0016】
一方、前記シラン化合物(B)を使用しなかった場合や、前記シラン化合物(B)の代わりにアルキル基を有し且つ前記光応答性部位を含まない3官能のシラン化合物を使用した場合には、架橋構造が形成される際に上記のような立体障害が起こらず、架橋点が密となり、剛直な架橋構造が形成されるため、前記光応答性部位が変形を誘起しにくく、微細凹凸構造が浅くなると推察される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、表面に50nm以上の深さの微細凹凸構造を有し、耐溶剤性にも優れたフィルムを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例および比較例で使用したフィルムの表面に微細凹凸構造を形成するための光学系を示す概略図である。
【図2】実施例1において前駆体フィルムの表面に形成した微細凹凸構造のAFM像を示す図である。
【図3】PhTEOS含有率と微細凹凸構造の深さとの関係を示すグラフである。
【図4】1段の加熱処理における処理温度と微細凹凸構造の深さとの関係を示すグラフである。
【図5】2段の加熱処理における処理温度と微細凹凸構造の深さとの関係を示すグラフである。
【図6】2段の加熱処理における処理温度と微細凹凸構造の深さとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0020】
先ず、本発明の表面に微細な凹凸構造を有するフィルム(以下、単に「本発明のフィルム」という)について説明する。本発明のフィルムは、光の作用により変形を誘起する光応答性部位を含む3官能のシラン化合物(A)1〜25モル%と、芳香環を1つ以上有し且つ前記光応答性部位を含まない3官能のシラン化合物(B)70〜98モル%と、4官能のシラン化合物(C)1〜25モル%とを混合して調製したゾル溶液を用いて前駆体フィルムを作製し、該前駆体フィルムの表面に微細凹凸構造を形成し、該微細凹凸構造を有する前駆体フィルムに加熱処理を施すことによって得られるものである。このような本発明のフィルムにおいて、前記光応答性部位は、フィルムを構成する架橋構造に結合した状態で導入されている。
【0021】
本発明のフィルム(すなわち、前記加熱処理後のフィルム)において、微細凹凸構造の深さは50nm以上であり、このような微細凹凸構造の深さは、有機ポリマーからなるフィルムの表面に光照射により形成された微細凹凸構造の深さに匹敵するものであるが、従来の有機無機ハイブリッド材料からなるフィルムにおいては形成することが困難であった深さである。このような微細凹凸構造の深さとしては90nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましく、150nm以上がさらに好ましく、200nm以上が特に好ましい。なお、微細凹凸構造の深さの上限としては特に制限はないが、2000nm以下が好ましい。また、前記微細凹凸構造のピッチとしては特に制限はないが、50〜4000nm好ましく、200〜2000nmがより好ましく、300〜2000nmが特に好ましい。
【0022】
また、本発明のフィルムは耐溶剤性に優れたものである。この耐溶剤性は、以下の方法により評価することができる。すなわち、先ず、前記加熱処理を施す前の前駆体フィルムの波長480nmにおける吸光度を測定する。次に、前記加熱処理後のフィルム(すなわち、本発明のフィルム)をアセトンに室温(20〜28℃、好ましくは25℃)で5分間浸漬し、浸漬後のフィルムの波長480nmにおける吸光度を測定する。そして、このようにして測定した吸光度から、前駆体フィルムの吸光度に対するアセトン浸漬後のフィルムの吸光度の割合(残存率)を求める。このような吸光度の残存率は、フィルムの耐溶剤性の優劣を表す指標であるとともに、フィルムを構成する架橋構造の架橋度合いを間接的に表すものである。すなわち、架橋度が低いフィルムにおいては、架橋構造を形成していない遊離のシラン化合物(A)が多く存在している。アセトンはこのような遊離のシラン化合物(A)を溶解することが可能な溶媒であり、フィルムをアセトンに浸漬することによって、フィルム中の遊離のシラン化合物(A)が溶出し、これに伴い、遊離の(架橋構造に導入されていない)光応答性部位も溶出する。その結果、架橋度が低いフィルムにおいては、アセトン浸漬後のフィルムの吸光度が低下し、前記吸光度の残存率が低くなる。一方、架橋度が高いフィルムにおいては、アセトンに浸漬しても、このような光応答性部位の溶出が少なく、光応答性部位は架橋構造に結合した状態であり、アセトン浸漬後のフィルムの吸光度はほとんど低下せず、前記吸光度の残存率は高い値を示す。
【0023】
本発明のフィルムにおいて、前記吸光度の残存率は90%以上である。前記吸光度の残存率が90%未満のフィルムは架橋度が低く、耐溶剤性に劣るものである。したがって、架橋度が高く、耐溶剤性に優れているという観点から、前記吸光度の残存率は93%以上であることが好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
【0024】
次に、本発明のフィルムを形成するためのシラン化合物について説明する。本発明のフィルムを形成するためのシラン化合物(A)は、光の作用により変形を誘起する光応答性部位を含む3官能のシラン化合物である。前記光応答性部位としては、光の作用により変形(例えば、直線構造から屈曲構造への変形)を誘起するものであれば特に制限はないが、例えば、光異性化反応を起こし得る光異性化成分から誘導される光異性化構造、光重合反応を起こし得る光重合性成分から誘導される光重合性構造などが挙げられる。このような光応答性部位として具体的には、−N=N−、−C=C−および−C=N−のうちの少なくとも1種の結合を備えるものが好ましく、アゾベンゼン骨格を備えるものが特に好ましい。アゾベンゼン骨格を備える光応答性部位を誘導する光応答性成分としては特に制限はないが、アゾベンゼン骨格のフェニル残基の一方に電子供与基を有し、他方に電子吸引基を有する分子内電荷移動型アゾベンゼン化合物、置換基を有しないアミノ型アゾベンゼン化合物が好ましく、下記式(1):
【0025】
【化1】

【0026】
で表される色素Disperse Red 1(DR1)が特に好ましい。また、アゾベンゼン骨格を備える光応答性部位が導入されたシラン化合物としては特に制限はないが、前記分子内電荷移動型アゾベンゼン化合物や前記アミノ型アゾベンゼン化合物などの光応答成分1分子を、末端イソシアナート基含有トリアルコキシシランや末端イソシアナート基含有トリクロロシランなどの末端イソシアナート基含有3官能シラン化合物1分子に結合させたものが好ましく、下記式(2):
【0027】
【化2】

【0028】
(式(2)中、Rはアルキレン基を表し、Xはアルコキシ基または塩素原子を表す。)
で表される3官能シラン化合物が特に好ましい。
【0029】
本発明のフィルムを形成するためのゾル溶液において、このような光応答性部位を有する3官能のシラン化合物(A)の含有率は、原料であるシラン化合物全体に対して1〜25モル%である。シラン化合物(A)の含有率が前記下限未満になると、得られるフィルムに導入される光応答性部位の量が少なくなるため、光の作用による変形を誘起しにくく、所望の深さの微細凹凸構造を形成することが困難となる。他方、前記上限を超えた場合に、シラン化合物(B)の含有率が低くなり過ぎると、架橋構造に柔軟性が十分に付与されず、所望の深さの微細凹凸構造を形成することが困難となり、あるいは、シラン化合物(C)の含有率が低くなり過ぎると、フィルムの耐溶剤性が低下する。また、フィルムの耐溶剤性を維持しながら、架橋構造に十分な柔軟性を付与し、光の作用による変形量を増大させて、より深い微細凹凸構造を形成できるという観点から、シラン化合物(A)の含有率としては3〜15モル%が好ましく、5〜10モル%が特に好ましい。
【0030】
本発明のフィルムを形成するためのシラン化合物(B)は、芳香環を1つ以上有し且つ前記光応答性部位を含まない3官能のシラン化合物である。このようなシラン化合物(B)としては特に制限はないが、例えば、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、[3−(フェニルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(フェニルアミノ)プロピル]トリエトキシシランといったアリール基を1つ有するトリアルコキシシラン;フェニルトリクロロシランに代表されるアリール基を1つ有するトリクロロシランなどの1個のアリール基を有する3官能シラン化合物が好ましい。
【0031】
上述したように、芳香環を有しない3官能のシラン化合物では、架橋構造が形成される際に、架橋点が密となるが、このような芳香環を1つ以上有する3官能のシラン化合物は、本発明にかかる架橋構造が形成される際に、芳香環の嵩高さに起因して立体障害が起こり、架橋点が適度に疎となるため、架橋構造に柔軟性を付与することが可能になると推察される。その結果、光の作用により前記光応答性部位が変形を誘起することにより、柔軟性が付与された架橋構造が大きく変形し、深い微細凹凸構造が形成されると推察される。
【0032】
本発明のフィルムを形成するためのゾル溶液において、このような芳香環を1つ以上有し且つ前記光応答性部位を含まない3官能のシラン化合物(B)の含有率は、原料であるシラン化合物全体に対して70〜98モル%である。シラン化合物(B)の含有率が前記下限未満になると、架橋構造に柔軟性が十分に付与されないため、所望の深さの微細凹凸構造を形成することが困難となる。他方、前記上限を超えた場合に、シラン化合物(A)の含有率が低くなり過ぎると、得られるフィルムに導入される光応答性部位の量が少なくなり、光の作用による変形が誘起しにくく、所望の深さの微細凹凸構造を形成することが困難となり、あるいは、シラン化合物(C)の含有率が低くなり過ぎると、フィルムの耐溶剤性が低下する。また、フィルムの耐溶剤性を維持しながら、架橋構造に十分な柔軟性を付与し、光の作用による変形量を増大させて、より深い微細凹凸構造を形成できるという観点から、シラン化合物(B)の含有率としては70〜85モル%が好ましく、70〜80モル%が特に好ましい。
【0033】
本発明にかかるシラン化合物(C)としては4官能のシラン化合物であれば特に制限はなく、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシランといったテトラアルコキシシラン;テトラクロロシランが挙げられる。
【0034】
本発明のフィルムを形成するためのゾル溶液において、このような4官能のシラン化合物(C)の含有率は、原料であるシラン化合物全体に対して1〜25モル%である。シラン化合物(C)の含有率が前記下限未満になると、架橋度が低下するため、フィルムの耐溶剤性が低下する。他方、前記上限を超えた場合に、シラン化合物(A)の含有率が低くなり過ぎると、得られるフィルムに導入される光応答性部位の量が少なくなり、光の作用による変形が誘起しにくく、所望の深さの微細凹凸構造を形成することが困難となり、あるいは、シラン化合物(B)の含有率が低くなり過ぎると、架橋構造に柔軟性が十分に付与されず、所望の深さの微細凹凸構造を形成することが困難となる。また、後述する加熱処理において、高温で加熱しても微細凹凸構造の深さが減少しにくく、また、低い加熱温度でも耐溶剤性に優れたフィルムが得られるという観点から、シラン化合物(C)の含有率としては10〜25モル%が好ましく、15〜25モル%が特に好ましい。シラン化合物(C)の含有率が前記下限未満になると、低い加熱温度では加水分解反応および重縮合反応が十分に進行せず、架橋度が低くなり、フィルムの耐溶剤性が低下する傾向にある。
【0035】
本発明のフィルムは、このようなシラン化合物(A)〜(C)を所定の割合で混合して調製したゾル溶液を用いて前駆体フィルムを作製し、得られた前駆体フィルムの表面に微細凹凸構造を形成し、この微細凹凸構造を有する前駆体フィルムに加熱処理を施すことによって得られるものである。このような本発明のフィルムの製造方法としては特に制限はないが、以下に説明する方法、すなわち、本発明の表面に微細な凹凸構造を有するフィルムの製造方法により製造することが好ましい。
【0036】
本発明の表面に微細な凹凸構造を有するフィルムの製造方法(以下、単に「本発明のフィルムの製造方法」という)は、光の作用により変形を誘起する光応答性部位を含む3官能のシラン化合物(A)と、芳香環を1つ以上有し且つ前記光応答性部位を含まない3官能のシラン化合物(B)と、4官能のシラン化合物(C)とを所定の割合で混合して調製したゾル溶液を用いて前駆体フィルムを作製する製膜工程と、得られた前駆体フィルムの表面に所定の深さの微細凹凸構造を形成する凹凸形成工程と、この微細凹凸構造を有する前駆体フィルムに加熱処理を施して、所定の深さの微細凹凸構造を有し、且つ所定の吸光度残存率を有するフィルムを作製する加熱工程とを備える方法である。
【0037】
前記製膜工程においては、先ず、上述したシラン化合物(A)〜(C)を上述した割合で溶媒に添加して混合する。ここで使用される溶媒としては前記シラン化合物(A)〜(C)を溶解するものであれば特に制限はなく、例えば、アセトン;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エトキシエタノールといったアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサンといったエーテル系溶媒;これら2種以上の混合溶媒などが挙げられる。また、必要に応じて、水、触媒、その他の添加剤を添加してもよい。
【0038】
このようにして得られた混合溶液を室温(20〜28℃、好ましくは25℃)で静置することによって、シラン化合物(A)〜(C)が部分加水分解および部分重縮合し、ゾル溶液が形成される。静置時間としては5時間以上が好ましい。静置時間が前記下限未満になると、溶液組成によっては、前駆体フィルムの外観が悪化しやすくなる傾向にある。
【0039】
次に、このようにして得られたゾル溶液に、必要に応じて触媒を添加した後、公知の方法により製膜し、乾燥により溶媒を除去するとともに、加水分解反応および重縮合反応をさらに進行させることによって前駆体フィルムを形成させる。
【0040】
このようにして作製した前駆体フィルムの表面に、深さが50nm以上の微細凹凸構造を所定のピッチで形成する(凹凸形成工程)。微細凹凸構造の形成方法としては特に制限はないが、前駆体フィルムの表面に光を照射して形成する方法が好ましい。光照射により微細凹凸構造を形成する方法としては、光照射により前記光応答性部位が変形を誘起して微細凹凸構造が形成される方法であれば特に制限はなく、例えば、
(i)前駆体フィルムの表面にフォトマスクを介して光を照射することによって、光が照射された領域の光応答性部位の変形を誘起させて微細凹凸構造を形成する方法、
(ii)前駆体フィルムの表面に二光束干渉露光を施し、干渉光の光強度の強弱が規則的に繰り返されるという特徴を利用して微細凹凸構造を形成する方法、
(iii)前駆体フィルム上に微粒子を均一に配置し、微粒子分散液を塗布するなどして微粒子を配置した表面に光を照射した後、洗浄などによって微粒子を除去することによって、微粒子が配置されていた部分に窪みを形成して微細凹凸構造を形成する方法、
などが挙げられる。これらの方法のうち、微細凹凸構造の規則性が、方法(i)においてはフォトマスクの規則性、方法(iii)においては微粒子の配置の規則性に依存するため、より規則的な微細凹凸構造を形成できるという観点から、方法(ii)が好ましい。
【0041】
また、照射する光としては、本発明にかかる光応答性部位の吸収帯の波長を有する光であれば特に制限はなく、例えば、光応答性部位がジアゾベンゼン骨格を備えるものである場合には、波長488nmのアルゴンイオンレーザー光を照射することが好ましい。
【0042】
次に、このようにして表面に微細凹凸構造を形成した前駆体フィルムに100℃以上の加熱処理を施して(加熱工程)、加水分解反応および重縮合反応をさらに進行させることによって、本発明のフィルムを得ることが可能となる。具体的には、シラン化合物(C)の含有率が10〜25モル%(好ましくは15〜25モル%)の前駆体フィルムを加熱する場合には、加熱温度は100℃以上であれば特に制限はない。一方、シラン化合物(C)の含有率が1モル%以上10モル%未満の前駆体フィルムを加熱する場合には、加熱温度は200℃以上にする必要がある。言い換えれば、前駆体フィルムを100℃以上200℃未満の温度で加熱する場合には、前駆体フィルム中のシラン化合物(C)の含有率は10〜25モル%(好ましくは15〜25モル%)である必要があるが、200℃以上の温度で加熱する場合には、シラン化合物(C)の含有率は1〜25モル%の範囲内にあれば特に制限はない。これにより、50nm以上の深さの微細凹凸構造を有し、前記吸光度の残存率が90%以上である本発明のフィルムを得ることができる。
【0043】
また、前記加熱工程においては、加熱処理を1段で実施してもよいが、2段以上で実施することが好ましく、特に、前記凹凸形成工程で得られた微細凹凸構造を有する前駆体フィルムに100℃未満の予備加熱処理を施した後、100℃以上の加熱処理を施すことが好ましい。このように、予め100℃未満の予備加熱処理を施すことによって、加熱処理による微細凹凸構造の深さの減少を、100℃以上の温度で1段の加熱処理を施した場合に比べて抑制することが可能となる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
(参考例1)
特開2003−5325号公報に記載の方法に従って、光応答成分としてアゾベンゼン構造を有する色素Disperse Red 1(DR1)を、1分子の3−(トリエトキシシリル)プロピルイソシアナートに結合させたDR1TEOSを合成した。
【0046】
次に、シラン化合物(A)としてDR1TEOS、シラン化合物(B)としてフェニルトリエトキシシラン(PhTEOS)、およびシラン化合物(C)としてテトラエトキシシラン(TEOS)を、それぞれ表1に記載の混合量でアセトンに添加して溶解させ、この溶液に0.01Nの塩酸水溶液を添加して十分に撹拌して溶液I〜Vを得た。なお、アセトンの量は、シラン化合物(A)〜(C)のモル数の合計に対して6当量とした。また、塩酸水溶液の添加量は、添加する塩酸水溶液中の水の量が2.5当量となる量とした。
【0047】
前記溶液I〜Vを室温で3時間または5時間静置した。静置後の溶液に、シランのモル数に対して3.4当量のピリジンを添加して十分に撹拌した後、孔径0.5μmのフィルターでろ過し、ろ液をスライドガラス上にスピンコートし、風乾により溶媒を除去することによって厚さ0.7μmの前駆体フィルムを作製した。この前駆体フィルムの外観を目視により観察し、下記基準で判定した。その結果を表1に示す。
A:外観良好。製膜後直ぐに、本発明にかかる前駆体フィルムとして使用可能。
B:外観良好。ただし、製膜直後のものは、本発明にかかる前駆体フィルムとしての使用が困難であったが、1日間静置すると使用可能となった。
C:外観不良。1日間静置しても使用困難。
【0048】
【表1】

【0049】
表1に示した結果から明らかなように、塩酸水溶液を添加した後、5時間静置することによっていずれの組成においても、外観が良好な前駆体フィルムを得ることが可能なゾル溶液が得られることがわかった。また、溶液I、IVおよびVにおいては、3時間の静置でも外観が良好な前駆体フィルムを得ることができたが、溶液IVおよびVにおいては、3時間静置では外観が良好な前駆体フィルムが得ることが困難であった。この理由としては、3時間の静置ではゾルが十分に形成されていないことが考えられる。なお、このような観点から、以下の実施例等においては、調製した溶液I〜Vを5時間静置したものをそれぞれゾル溶液I〜Vとして前駆体フィルムの作製に供した。
【0050】
(実施例1)
(1)アセトン耐性
参考例1と同様にしてゾル溶液III(DR1TEOS:6モル%、PhTEOS:81モル%、TEOS:13モル%)を用いて厚さ0.7μmの前駆体フィルムを4枚作製し、これらの前駆体フィルムの波長480nmにおける吸光度を測定した。
【0051】
次に、これらの前駆体フィルムに、室温での30分間の静置、100℃での30分間の加熱、150℃での30分間の加熱、または200℃での30分間の加熱の各処理を施した。処理後の各フィルムをアセトンに室温℃で5分間浸漬した後、浸漬後の各フィルムの波長480nmにおける吸光度を測定した。前駆体フィルムの吸光度に対する浸漬後のフィルムの吸光度の割合を吸光度の残存率とした。その結果を表2に示す。
【0052】
(2)微細凹凸構造の形成性
参考例1と同様にしてゾル溶液III(DR1TEOS:6モル%、PhTEOS:81モル%、TEOS:13モル%)を用いて厚さ0.7μmの前駆体フィルムを作製した。この前駆体フィルムの表面に、水冷式アルゴンイオンレーザー(出力380mW)を用いて、図1に示す光学系により波長488nmの二光束干渉光を30分間照射して、ピッチが1050nmの微細凹凸構造を形成した。なお、入射角は、微細凹凸構造が所定のピッチで形成されるように、次式:
ΛGR=λ/(2・sinθ)
(式中、ΛGRは微細凹凸構造のピッチ(nm)、λは入射光の波長(nm)、θは入射角を表す。)
を用いて決定した。
【0053】
レーザー照射後の前駆体フィルムの表面を原子間力顕微鏡(AFM、デジタルインスツルメンツ社製「ナノスコープE」)を用いて観察し、微細凹凸構造のピッチおよび深さを測定した。その結果、前駆体フィルムの表面には、図2に示すようなピッチ1050nmの微細凹凸構造が形成されていることが確認された。また、微細凹凸構造の深さを図3に示す。
【0054】
(3)表面微細凹凸構造を有するフィルムの作製1
参考例1と同様にしてゾル溶液III(DR1TEOS:6モル%、PhTEOS:81モル%、TEOS:13モル%)を用いて厚さ0.7μmの前駆体フィルムを3枚作製した。この前駆体フィルムの表面に、上記(2)と同様にしてピッチが1050nmの微細凹凸構造を形成した。レーザー照射後の前駆体フィルムの表面を、上記(2)と同様にして原子間力顕微鏡を用いて観察し、微細凹凸構造のピッチが1050nmであることを確認するとともに、深さを測定した。その結果を、処理温度を室温(25℃)として図4に示す。
【0055】
次に、微細凹凸構造を備える3枚の前駆体フィルムに、200℃、250℃または300℃で30分間の加熱処理を施した。加熱処理後の各フィルムの表面を、上記(2)と同様にして原子間力顕微鏡を用いて観察し、微細凹凸構造の深さを測定した。その結果を図4に示す。
【0056】
(4)表面微細凹凸構造を有するフィルムの作製2
参考例1と同様にしてゾル溶液III(DR1TEOS:6モル%、PhTEOS:81モル%、TEOS:13モル%)を用いて厚さ0.7μmの前駆体フィルムを作製した。この前駆体フィルムの表面に、上記(2)と同様にしてピッチが1050nmの微細凹凸構造を形成した。レーザー照射後の前駆体フィルムの表面を、上記(2)と同様にして原子間力顕微鏡を用いて観察し、微細凹凸構造のピッチが1050nmであることを確認するとともに、深さを測定した。その結果を、処理温度を室温(25℃)として図5に示す。
【0057】
次に、微細凹凸構造を備える前駆体フィルムに、75℃で30分間の加熱処理を施した後、100℃、150℃、200℃での加熱処理を順次30分間ずつ施した。各加熱処理後にフィルムの表面を、上記(2)と同様にして原子間力顕微鏡を用いて観察し、微細凹凸構造の深さを測定した。その結果を図5に示す。
【0058】
(実施例2)
ゾル溶液IIIの代わりにゾル溶液II(DR1TEOS:6モル%、PhTEOS:75モル%、TEOS:19モル%)を用いた以外は、実施例1と同様にして、前駆体フィルムを作製して(1)アセトン耐性および(2)微細凹凸構造の形成性を評価し、実施例1の(4)に記載の方法に従って表面微細凹凸構造を有するフィルムを作製し、微細凹凸構造の深さを測定した。これらの結果を表2、図3および図5に示す。
【0059】
(実施例3)
ゾル溶液IIIの代わりにゾル溶液IV(DR1TEOS:6モル%、PhTEOS:88モル%、TEOS:6モル%)を用いた以外は、実施例1と同様にして、前駆体フィルムを作製して(1)アセトン耐性および(2)微細凹凸構造の形成性を評価し、実施例1の(4)に記載の方法に従って表面微細凹凸構造を有するフィルムを作製し、微細凹凸構造の深さを測定した。これらの結果を表2、図3および図5に示す。
【0060】
(実施例4)
前駆体フィルムの表面にピッチが1500nmの微細凹凸構造を形成し、75℃で30分間の加熱処理を85℃で30分間の加熱処理に変更した以外は、実施例1の(4)に記載の方法に従って表面微細凹凸構造を有するフィルムを作製し、微細凹凸構造の深さを測定した。その結果を図6に示す。
【0061】
(実施例5)
ゾル溶液IIIの代わりにゾル溶液II(DR1TEOS:6モル%、PhTEOS:75モル%、TEOS:19モル%)を用いた以外は、実施例4と同様にして表面微細凹凸構造を有するフィルムを作製し、微細凹凸構造の深さを測定した。その結果を図6に示す。
【0062】
(実施例6)
ゾル溶液IIIの代わりにゾル溶液IV(DR1TEOS:6モル%、PhTEOS:88モル%、TEOS:6モル%)を用いた以外は、実施例4と同様にして表面微細凹凸構造を有するフィルムを作製し、微細凹凸構造の深さを測定した。その結果を図6に示す。
【0063】
(比較例1)
ゾル溶液IIIの代わりにゾル溶液I(DR1TEOS:6モル%、PhTEOS:63モル%、TEOS:31モル%)を用いた以外は、実施例1と同様にして、前駆体フィルムを作製して(1)アセトン耐性および(2)微細凹凸構造の形成性を評価した。これらの結果を表2および図3に示す。
【0064】
(比較例2)
ゾル溶液IIIの代わりにゾル溶液V(DR1TEOS:6モル%、PhTEOS:94モル%、TEOS:0モル%)を用いた以外は、実施例1と同様にして、前駆体フィルムを作製して(1)アセトン耐性および(2)微細凹凸構造の形成性を評価した。これらの結果を表2および図3に示す。
【0065】
(比較例3)
溶液IIIのフェニルトリエトキシシラン(PhTEOS、13モル、81モル%)の代わりに、メチルトリメトキシシラン(MeTEOS、13モル、81モル%)を用いた以外は、参考例1と同様にして参考例1と同様(5時間静置)にしてゾル溶液(DR1TEOS:6モル%、MeTEOS:81モル%、TEOS:13モル%)を調製した。
【0066】
ゾル溶液IIIの代わりにこのゾル溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして前駆体フィルムを作製して(2)微細凹凸構造の形成性を評価した。その結果、前駆体フィルムの表面には微細凹凸構造は形成されていなかった。
【0067】
【表2】

【0068】
表2に示した結果から明らかなように、PhTEOSを含有している場合であっても、TEOSの含有率が13モル%以上の場合(実施例1〜2および比較例1)には、100℃以上の加熱処理を施すことによりアセトン耐性に優れたフィルムが得られた。また、TEOSの含有率が13モル%未満の場合(実施例3)であっても、200℃以上の加熱処理を施すことにより、アセトン耐性に優れたフィルムが得られた。一方、PhTEOSを含有していても、TEOSを含有していない場合(比較例2)には、アセトン耐性に優れたフィルムを得ることができなかった。
【0069】
図3に示した結果から明らかなように、PhTEOSの含有率が高くなるにつれて微細凹凸構造の深さが深くなり、PhTEOS含有率が75モル%以上のゾル溶液を用いることによって、前駆体フィルムの表面に深さが90nm以上の微細凹凸構造を形成できることが確認された。
【0070】
図4に示した結果から明らかなように、微細凹凸構造を備える前駆体フィルムに200℃以上の温度での1段の加熱処理を施した場合には、微細凹凸構造の深さは100nm以上浅くなったが、100nm以上の深さは維持されていた。一方、図5〜6に示した結果から明らかなように、100℃未満の温度で加熱した後、100℃以上の温度で加熱する2段以上の加熱処理を施すことによって、図4に示したような1段の加熱処理による微細凹凸構造の深さの大幅な減少が抑制されることがわかった。例えば、図4に示した処理温度200℃での結果と図5に示したゾル溶液IIIについての200℃での結果を比較すると、1段の加熱処理では微細凹凸構造の深さが100nm以上減少したのに対して、2段の加熱処理では50nm以下の減少に抑制された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上説明したように、本発明によれば、表面に50nm以上の深さの規則的な微細凹凸構造を有し、耐溶剤性に優れたフィルムを得ることが可能となる。
【0072】
したがって、本発明の表面に微細凹凸構造を有するフィルムは、微細凹凸構造の凹部が深く、耐溶剤性に優れるため、モノマーに分散させたコロイド結晶を配列させるためのテンプレートなど、有機化合物に分散させた微小物体を配列させるためのテンプレートなどとして有用である。
【0073】
例えば、本発明のフィルムの微細凹凸構造を有する表面にコロイド結晶が分散したモノマー溶液を滴下してコロイド結晶を所定の配列に配置した後、前記モノマーを重合させることによって、コロイド結晶を、その配列構造を十分に維持したまま固定化することが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1:アルゴンイオンレーザー(λ=488nm)、2:ミラー、3:λ/4フィルター、4:レンズ、5:前駆体フィルム、6:回転ステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の作用により変形を誘起する光応答性部位を含む3官能のシラン化合物(A)1〜25モル%と、芳香環を1つ以上有し且つ前記光応答性部位を含まない3官能のシラン化合物(B)70〜98モル%と、4官能のシラン化合物(C)1〜25モル%とを混合して調製したゾル溶液を用いて前駆体フィルムを作製し、該前駆体フィルムの表面に微細凹凸構造を形成し、該微細凹凸構造を有する前駆体フィルムに加熱処理を施すことによって得られるフィルムであり、
前記加熱処理後のフィルムの微細凹凸構造の深さが50nm以上であり、
前記加熱処理後のフィルムをアセトンに室温で5分間浸漬した場合に、波長480nmにおける、前記加熱処理を施す前の前駆体フィルムの吸光度に対する浸漬後のフィルムの吸光度の残存率が90%以上である、
ことを特徴とする表面に微細な凹凸構造を有するフィルム。
【請求項2】
前記光応答性部位を含む3官能のシラン化合物(A)がアゾベンゼン骨格を備えるものであることを特徴とする請求項1に記載の表面に微細な凹凸構造を有するフィルム。
【請求項3】
前記ゾル溶液中のシラン化合物(C)の含有率が10〜25モル%であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面に微細な凹凸構造を有するフィルム。
【請求項4】
光の作用により変形を誘起する光応答性部位を含む3官能のシラン化合物(A)1〜25モル%と、芳香環を1つ以上有し且つ前記光応答性部位を含まない3官能のシラン化合物(B)70〜98モル%と、4官能のシラン化合物(C)1〜25モル%とを混合して調製したゾル溶液を用いて前駆体フィルムを作製する製膜工程と、
該前駆体フィルムの表面に深さが50nm以上の微細凹凸構造を形成する凹凸形成工程と、
該微細凹凸構造を有する前駆体フィルムに100℃以上の加熱処理を施して、加熱処理後のフィルムをアセトンに室温で5分間浸漬した場合に、波長480nmにおける、前記加熱処理を施す前の前駆体フィルムの吸光度に対する浸漬後のフィルムの吸光度の残存率が90%以上であり、且つ表面の微細凹凸構造の深さが50nm以上であるフィルムを作製する加熱工程と、
を備えることを特徴とする表面に微細な凹凸構造を有するフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記光応答性部位を含む3官能のシラン化合物(A)がアゾベンゼン骨格を備えるものであることを特徴とする請求項4に記載の表面に微細な凹凸構造を有するフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記ゾル溶液中のシラン化合物(C)の含有率が10〜25モル%であることを特徴とする請求項4または5に記載の表面に微細な凹凸構造を有するフィルムの製造方法。
【請求項7】
前記加熱工程における加熱温度が200℃以上であることを特徴とする請求項4または5に記載の表面に微細な凹凸構造を有するフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記加熱工程の前に、前記凹凸形成工程で得られた微細凹凸構造を有する前駆体フィルムに100℃未満の予備加熱処理を施す予備加熱工程を備えることを特徴とする請求項4〜7のうちのいずれか一項に記載の表面に微細な凹凸構造を有するフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記凹凸形成工程において、前記前駆体フィルムの表面に光を照射して微細凹凸構造を形成することを特徴とする請求項4〜8のうちのいずれか一項に記載の表面に微細な凹凸構造を有するフィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−57081(P2012−57081A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203042(P2010−203042)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】