説明

表面の汚れを除去する特性を持つコーティング組成物

【課題】屋内または屋外環境のような環境に左右されず、半永久的におよび単一のコーティングで、表面の汚れを除去する優れた特性、特に脂性のしみ、たとえば白かび、糸状菌、藻または汚れに対する優れた汚れ浄化活性を示すことができ、かつ、これに加えて耐磨耗性があるコーティング組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも−有効な量の光触媒性二酸化チタン粒子、−不透明化剤、−無機バインダーの粒子、−有機バインダー、および−溶媒を含み、当該有機バインダーおよび光触媒性二酸化チタン粒子が、0.1〜6の範囲の光触媒性二酸化チタン/有機バインダーの重量比で存在する、基体の表面上に無機層を形成するためのコーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体の表面上に、塗料の無機層並びに/または汚れ浄化性、汚れ除去性および/若しくは防汚性のコーティングを形成するのに有用なコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
物質の表面を汚れ浄化性にする慣用の方法は、表面を処理して、表面上に堆積されたしみや汚れを除去する能力を与えることを含む。他の方法では、表面上に堆積された有機物またはしみまたは汚れおよび当該表面に接触する任意の気体状汚染物質をも分解するために、該表面上に固定された光触媒の優れた酸化分解活性が利用される。
【0003】
流体、たとえば水および空気からの望ましくない化合物を酸化しそれによって除去するために、特に不均一光触媒反応が効果的に使用されてきた。たとえば、紫外線を照射された触媒、たとえば二酸化チタンは紫外光を吸収し、これは触媒の表面に移動する電子および正孔を生成する。表面において、電子は吸着された酸素を還元し、一方、正孔は有機化合物または吸着された水分子を酸化する。
【0004】
しかし、十分な汚れ除去特性は、このような単一の光触媒性コーティング組成物のみによっては、長い耐用期間、すなわち5年超の期間では付与されないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、屋内または屋外環境のような環境に左右されず、半永久的におよび単一のコーティングで、表面の汚れを除去する優れた特性、特に脂性のしみ、たとえば白かび、糸状菌、藻または汚れに対する優れた汚れ浄化活性を示すことができ、かつ、これに加えて耐磨耗性があるコーティング組成物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の面に従うと、基体の表面上に無機層を形成するためのコーティング組成物が提供され、当該コーティング組成物は、少なくとも
− 有効な量の光触媒性二酸化チタン粒子、
− 不透明化剤、
− 無機バインダーの粒子、
− 有機バインダー、および
− 溶媒
を含み、ここで当該光触媒性二酸化チタン粒子および有機バインダーは、0.1〜6の範囲の光触媒性二酸化チタン/有機バインダーの重量比で存在する。
【0007】
特定の実施態様に従うと、当該組成物はケイ酸塩エマルション塗料である。
【0008】
本発明の第二の面に従うと、基体上に汚れ除去性および/または汚れ浄化性コーティングを付与する方法が提供され、該方法は、少なくとも
− 基体の表面上に本発明に従うコーティング組成物を施与して、コーティングを形成すること、および
− 該コーティングを固定して、基体の表面上に無機層を得ること
の段階を含む。
【0009】
本発明の第三の面に従うと、基体上の白かび、糸状菌、藻および/または細菌を予防しおよび/または処理する方法が提供され、該方法は、少なくとも
− 基体の表面上に本発明に従うコーティング組成物を施与して、コーティングを形成すること、および
− 該コーティングを固定して基体の表面上に無機層を得ること
の段階を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
無機バインダー
【0011】
無機バインダーは、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ジルコン酸塩、アルカリ金属ホウ酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属ホスホン酸塩およびこれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも1の非晶質金属酸化物を含む。
【0012】
好まれる無機バインダーの特定の例は、式

によって表されるアルカリ金属ケイ酸塩を含み、ここでMはアルカリ金属を表し、nは2.0〜3.0である。
【0013】
本発明に従うと、無機バインダーは、ルビジウム、カリウム、ナトリウム、およびリチウムからなる群から選ばれた少なくとも1の金属を含む。好まれるアルカリ金属ケイ酸塩は、たとえばケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、および/またはケイ酸リチウムを含む。
【0014】
複数のアルカリ金属ケイ酸塩の組み合わせ使用は、無機層の耐水性、耐アルカリ性および耐酸性を改善することができる。水性溶液の形で商業的に手に入るアルカリ金属ケイ酸塩もまた溶解性である。
【0015】
アルカリ金属ケイ酸塩の使用は、約5℃の低温度においてさえも基体の表面への良好な接着性を持つ無機層を形成することができる。
【0016】
本発明の好まれる実施態様に従うと、コーティング組成物中の無機バインダー、特にアルカリ金属ケイ酸塩の濃度は、固形分基準で、好ましくは0.5〜35重量%、特には1〜30重量%、より特には2〜25重量%である。このような濃度は、良好な汚れ浄化性および良好な強度を持つ表面を得るのに好都合である。
【0017】
無機バインダー系中のアルカリ金属ケイ酸塩は、種々の様式で硬化されることができる。所望の硬化は、大気中の二酸化炭素によって引き起こされることができる。
【0018】
また、コーティングは、水の脱離によって硬化されることもできる。好都合なことには、このようにして得られたコーティングは、十分に高い水蒸気透過性を与えるのに十分な孔を持つ無機構造を形成する。
【0019】
有機バインダー
【0020】
長い耐用期間を持つ光触媒活性のコーティングを得るのに、このような化合物が特に好都合であることを、本発明者らは思いがけず見出した。
【0021】
本発明の場合には、有機バインダーは、予定されるコーティングの形成の間に分解されてはならない。しかし、紫外光への長期の曝露の後、有機バインダーの初期含有量は、徐々に減少し、ついには完全に分解されるだろう。
【0022】
より特には、有機バインダーは、スチレン/ブタジエンの共重合体、アクリル酸のエステルの重合体および共重合体並びに特にポリビニルアクリルの共重合体およびスチレン/アクリル酸エステルの共重合体の中から選ばれることができる。
【0023】
本発明では、スチレンアクリル共重合体は、そのスチレン/アクリル酸エステルの共重合体を包含する。
【0024】
この化合物がスチレン/アクリル共重合体であり、かつより特に、0.3〜4.5、特に0.5〜3.6、より特に1〜2.5の範囲の光触媒性TiO粒子/有機バインダーの重量比、特には光触媒性TiO粒子/(スチレン/アクリル共重合体)の重量比で使用される場合に、このような効果は特に認められる。
【0025】
特に、スチレンアクリルエマルション、たとえばBASF社からのACRONAL 290Dが使用されることができる。
【0026】
光触媒性粒子
【0027】
本発明では、本明細書で使用される「光触媒性粒子」の語は、その物質の結晶の伝導帯と価電子帯との間のエネルギーギャップより高いエネルギー(すなわち、より短い波長)を持つ光(励起光)に曝露されたときに、価電子帯において電子の励起(光励起)を引き起こして、伝導帯電子を生成し、そして価電子帯に正孔を残すことができるところの物質に基づく粒子を言う。
【0028】
より特には、光触媒性二酸化チタン粒子は、任意の型、たとえばアナターゼまたはルチルであってもよい酸化チタンからなる群から選ばれる。とはいえ、アナターゼを含有する酸化チタンが、そのより高い光活性のためにとりわけ好まれる。
【0029】
コーティングの二酸化チタン粒子については、該粒子の性質は、好ましくは主としてアナターゼ結晶形である。「主として」とは、コーティングの二酸化チタン粒子中のアナターゼのレベルが50質量%超であることを意味する。コーティングの粒子は、好ましくは80%超のアナターゼのレベルを示す。
【0030】
結晶化度および結晶相の性質は、X線回折によって測定される。
【0031】
コーティング中に取り込まれた結晶質の二酸化チタン粒子は、5〜80nm、好ましくは5〜50nm、さらにより好ましくは10〜40nmの平均サイズを示す。直径は、透過型電子顕微鏡法(TEM)およびまたXRDによって測定されることができる。
【0032】
好まれる光触媒粒子は、BET法によって測定された、たとえば30m/gより高い、好ましくは50m/gより上また最も好ましくは約100m/gより大きい、グラム当りの高い表面積を持つ。
【0033】
本発明に特に便利なのは、Millennium Inorganic Chemicals社によってPC 105の名称の下に販売されている光触媒性二酸化チタン粒子である。
【0034】
本発明は、被覆された二酸化チタン顔料も含むことができる。これは、二酸化チタン粒子、ベースのTiO粒子に接触しているリン酸塩化合物の第一堆積物、該リン酸塩堆積物に接触している高密度のシリカ化合物の任意的な堆積物、該高密度のシリカ化合物に接触しているリン酸塩化合物の任意的な第二堆積物、および該第二のリン酸塩堆積物に接触しているアルミナ化合物の任意的な堆積物を含むことができる。
【0035】
代りの実施態様では、二酸化チタン粒子は、シリカ化合物の代りにジルコニア化合物で被覆されることができる。
【0036】
好ましくは、リン酸塩化合物は、たとえばピロリン酸四カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム(Tetron(商標))、三ポリリン酸ナトリウム、三ポリリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム(Calgon(商標))、リン酸等のような水溶性リン酸塩化合物から形成される。最も好ましくは、水溶性リン酸塩化合物はヘキサメタリン酸ナトリウムである。リン酸塩化合物の重量パーセントは、二酸化チタンベース上に堆積される層に応じて様々であることができる。リン酸塩化合物が各二酸化チタン粒子を被覆する必要はなくて、いくらかのリン酸塩が該粒子上に堆積されるだけでよい。好ましくは、第一層中のリン酸塩化合物は、二酸化チタンベースの重量当り、約0.05%〜約1.0%、より好ましくは約0.05%〜約0.75%、また最も好ましくは約0.05%〜約0.5%の量で堆積される。
【0037】
重量パーセントでのシリカ含有量は、第一のリン酸塩層上に堆積される層に応じて様々であることができる。本発明に使用するのに好適なシリカ化合物は、水溶性アルカリ金属ケイ酸塩を含む。好まれるアルカリ金属ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等を含む。最も好ましくは、シリカ化合物はケイ酸ナトリウムである。好ましくは、シリカ化合物は、二酸化チタンベースの全重量当り、シリカ約0.5重量%〜約5.0重量%の量で堆積される。
【0038】
本発明に使用するのに好適なジルコニア化合物は、ジルコニアの酸性塩、たとえばオキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニル等を含む。最も好ましくは、ジルコニア化合物はオキシ塩化ジルコニウムまたは硫酸ジルコニルである。好ましくは、ジルコニア化合物は、二酸化チタンベースの全重量当り、ジルコニア約0.1重量%〜約5.0重量%の量で堆積される。
【0039】
光触媒活性を持つ粒子は、組成物の全重量の0.5〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、また最も好ましくは3〜12重量%の量で存在する。
【0040】
本発明の1の実施態様では、小さい(1〜8nmの)光触媒性粒子と、より大きい非光触媒性粒子(約250〜350nm)、より特には非光触媒性TiO粒子との組み合わせは、有用な自己浄化性塗料組成物となる。
【0041】
分散剤中への分散によって調製されたゾルとして、水含有若しくは溶媒含有ペーストとして、または粉体として、光触媒性酸化チタン粒子は組成物中に導入されることができる。ゾルを調製するのに使用される分散剤の好まれる例は、水、アルコール、たとえばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよびイソブタノール、並びにケトン、たとえばメチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンを含む。
【0042】
本発明に従う組成物は、少なくとも1種の溶媒を含む。
【0043】
該組成物に使用できる溶媒の例は、水、有機溶媒、および水と有機溶媒とからなる混合溶媒を含む。水、アルコール、または水と有機溶媒とからなる混合溶媒が特に好まれる。
【0044】
溶媒としての水の添加は、しばしば好まれる。
【0045】
不透明化剤
【0046】
本発明に従うと、コーティングに隠蔽力を付与する能力がある任意の有機または無機化合物を、不透明化剤は包含する。それは、以下に列挙される顔料、着色剤および/または充填剤を包含する。より好ましくは、それは二酸化チタンのような少なくとも1の無機化合物を含む。
【0047】
光活性ではないこのような二酸化チタン顔料は、米国特許第6342099号(Millennium Inorganic Chemicals社)に開示されている。
【0048】
特に、二酸化チタン顔料は、Millennium Inorganic Chemicals社によって販売されているTiona 595の粒子であることができる。
【0049】
必要ならば、各種の他の化合物が、本発明の組成物に加えられることができるが、ただし、得られたコーティングの品質保持期間、紫外線耐久性または非汚染特性を、当該添加が損なわないことが条件である。
【0050】
追加されるこのような化合物の例は、充填剤(一または複数の充填剤)、たとえば石英、方解石、粘土、タルク、重晶石および/またはNa−Al−ケイ酸塩;顔料、たとえばTiO、リトポンおよび他の無機顔料;分散剤、たとえばポリリン酸塩、ポリアクリレート、ホスホン酸塩、ナフテンおよびスルホン酸リグニン;湿潤剤、たとえばアニオン性、カチオン性、両性および非イオン性の界面活性剤;消泡剤、たとえばシリコンエマルション、炭化水素、長鎖アルコール等;安定剤、たとえばほとんどの場合にカチオン性化合物;合体剤、たとえばアルカリ安定性エステル、グリコール、炭化水素;レオロジー添加剤、たとえばセルロース誘導体(CMCカルボキシメチルセルロース、HECヒドロキシエチルセルロース)、キサンタンガム、ポリウレタン、ポリアクリレート、変性デンプン、ベントン(bentone(商品名))および他の層状ケイ酸塩;撥水剤、たとえばアルキルシリコネート、シロキサン、ワックスエマルション、脂肪酸Li塩および慣用の殺菌剤または殺生物剤を含む。
【0051】
もちろん、いずれの添加剤も出来上がったコーティングのアルカリ度(pH値約11.5)においてケン化性または別様に不安定であってはならない。
【0052】
本発明は、物質の表面に組成物を接触させることによって、該物質上に当該組成物のコーティングを堆積することを含む、光触媒活性な被覆された基体を製造する方法も提供する。
【0053】
本発明の組成物は、任意の適当な方法によって物質の表面上に施与されることができ、適当な方法の例は、吹き付け塗装、浸漬塗装、流し塗り、スピンコーティング、ロール塗り、刷毛塗り、およびスポンジ塗りを含む。
【0054】
基体の表面上に施与された後の組成物はそれから、一般に乾燥または硬化によって固定されて、一般に薄膜の形をとって無機層を形成する。本明細書で使用される「乾燥または硬化」の語は、組成物中に含有されたバインダーが、本発明に従って、膜に転化されることを意味する。したがって、乾燥は空気乾燥によって遂行されることができる。
【0055】
好都合なことに、該コーティングの形成は、50〜450℃のような高温度で数時間の熱処理を要求しない。
【0056】
本発明に従う組成物は、非常に多様な物質の表面上に施与されることができる。
【0057】
該物質は特に限定されず、その例は、金属、セラミックス、ガラス、木、石、セメント、コンクリート、および上記の物質の組み合わせ並びに上記の物質の積層物を含む。該組成物が施与されることができる具体的な例は、住居、建築材料;建物の外部;建物の内部;サッシ;ガラス;構造材料;機械および物品の外面;防塵カバーおよび防塵コーティング;並びにフィルム、シートおよびシールを含む。
【0058】
本発明の好まれる実施態様を調製する際に、本発明の目的を促進するために各種の代替物が使用されることができる。
【0059】
以下の実施例が、本発明の理解を助けるために提供され、これらはいかなる様式においても本発明を限定することを意図するものでなく、かつそのように解釈されてはならない。本発明の開示を読んで当業者に明らかになりうるすべての代替事物、変形および均等事物は、本発明の精神および範囲内に包含される。
【0060】
本発明は、以下の実施例のみに限定されないけれども、これらの実施例を引用してもっと詳細に説明される。
【実施例1】
【0061】
本発明に従う3のコーティング組成物が、以下の成分を用いて調製される。
− 光触媒性二酸化チタン:Millennium Inorganic Chemicals社からのPC 105(ヘキサメタリン酸ナトリウム1%を含有する水中のTiO30重量%)、
− 二酸化チタン顔料:Millennium Inorganic Chemicals社からのTiona595、
− 炭酸カルシウム(充填剤):Omya UK社からのOmyacarb 5GUおよびSetacarb 850 OG、
− スチレンアクリル共重合体ラテックス(有機バインダー):BASF社からのAcronal 290D(ドライウォーター中50重量%)、
− ケイ酸カルシウム溶液(無機バインダー)モル比>3.2:Woellner Silikat社からのBetolin P35、
− エチレンジアミン四酢酸四カリウム:Woellner Silikat社からのBetolin A11、
− 不飽和脂肪酸エステル(消泡剤):Tego社からのFoamex K3、
− ヒドロキシエチルセルロース(増粘剤):Hercules社からのNatrosol 250 MR、
− ヘテロ多糖(増粘剤):Woellner Silikat社からのBetolin V30、
− 特別のホスホン酸のアルカリ性塩:Woellner Silikat社からのSapetin D20、および
− 第四級アルキルアンモニウム化合物:Woellner Silikat社からのQuart 25
【0062】
これらの化合物は以下の量で使用された。


【0063】
塗料は2の部分に分けられて調製される。
【0064】
A部分については、以下のもの、すなわち特別のホスホン酸のアルカリ性塩、増粘剤、粘度安定剤および消泡剤が逐次的に水に加えられ、得られた混合物が2分間混合され、それからT595(TiO)が加えられ、引き続いて炭酸カルシウムが加えられる。
【0065】
該成分は高せん断下に20分間混合される。
【0066】
水が光触媒性二酸化チタンに加えられ、続いてスチレンアクリル共重合体ラテックス、消泡剤、Texanol、無機バインダーおよびエチレンジアミン四酢酸四カリウムが加えられる。これら成分は5分間混合されて、B部分を形成する。
【0067】
A部分は、それから高せん断混合下にB部分と混合される。
【0068】
こうして得られた塗料が、その性能について試験された。試験された塗料は、基体の表面上に770g/mの被覆率で施与され、そして被覆された基体は以下の試験に付された。
【0069】
I−コーティングによるNO/NO除去率の測定
【0070】
使用されるNOは450ppmのNOである。最初の測定の後、フィルター付きキセノン光源を使用して300〜400nm領域の範囲の55W/mの紫外線を18時間、塗膜は照射された。NO測定のために、300〜400nmの範囲の10W/mの紫外線を発光する紫外線蛍光管を用いて、サンプルは照射される。
【0071】
1.装置
【0072】
酸化窒素分析器 型式ML9841B
− Monitor Europe社製
紫外線ランプ 型式VL−6LM、365および312ナノメートル波長
− BDH社製
気密サンプル室
3流路ガス混合器
− 蘭国Brooks Instruments社製
【0073】
2.ガス
【0074】
NO 酸化窒素
NO 二酸化窒素
NO NOとNOとの混合物
水蒸気を含有する圧搾空気
【0075】
3.方法
【0076】
最初に塗膜を2時間洗って、ケイ酸カリウム中の過剰の水酸化カリウムと大気からの二酸化炭素との間で生成される溶解性炭酸カリウムを除くことによって、NOの結果は得られた。
【0077】
測定の方法は以下の通りである。
1.分析器および排気ポンプのスイッチを入れる。排気管が大気に通じていることを確かめる。
2.放置暖機する。分析器が操作を開始する前に、いくつかの内部部品は操作温度に達している必要がある。この工程は典型的には周囲温度でのスタートから60分間かかり、そして操作条件が満たされるまでには「開始手順中」とのメッセージが表示されるだろう。
3.暖機後に、ガス混合器への空気および試験用ガスの供給を開始する。
4.メーカーの指示に従って、試験用ガスの供給のみについて(ガス混合器への空気流路を閉じて)、分析器を較正する。
5.較正後に、ガス混合器への試験用ガスの供給を閉じる。
6.試験サンプルを試験室に入れ、そして試験室を密閉する。
7.空気および試験用ガスの両方を開き、そして分析器の出力によって示されるように、試験用ガスの所要のレベルに達するまでそれぞれを調節する。該レベルを記録する。
8.試験用ガスのレベルが所望の点になったときに、紫外線ランプを点ける。
9.照射されたサンプルの値が平衡に達するように、典型的には5分間まで放置する。
10.分析器に示された値を記録する。
11.「初期値」、すなわち紫外線なし、設定された期間の紫外線露光後の「最終値」、Δ値、すなわち初期値引く最終値および削減率%、すなわち(Δ値/初期値)×100を報告する。
【0078】
結果は以下の表に提示される。
【0079】
II−メチレンブルーに対するコーティングの光活性の測定方法
【0080】
二酸化チタンに紫外線光を照射すると正孔および電子の生成をもたらし、これらは次に反応性化学種、たとえば過酸化物、ヒドロペルオキシドおよび水酸基イオンを生成することができる。これらは次に有機分子、たとえばメチレンブルーをその脱色を伴って水、二酸化炭素および窒素含有化学種へと酸化することができる。L(明度)およびb(青色度/黄色度)の値を測定することによって、光活性のレベルは観測される。
【0081】
該方法は、水で濡れているコーティング、たとえばラテックスまたはエマルション塗料に最も適している。コーティングの多孔度は膜が吸収する汚れの量に影響するだろうが、この影響はメチレンブルー溶液に増粘剤を加えることによって最小化される。pHの影響によるメチレンブルーの色変化も起こりうる。
【0082】
メチレンブルー溶液の調製
【0083】
メチレンブルーが、まず0.05重量%の濃度まで脱イオン水に溶解される。ゆっくりした速度の撹拌を使用して、当量の1%Natrasol MR(商標)(ヒドロキシエチルセルロース)が次に加えられる。Natrasolが水和されるように、希釈されたアンモニアで約8.0までpHが上げられる。これはほんの数滴で済む。溶液はさらに1時間撹拌されて、Natrasolを完全に水和する。
【0084】
塗膜の汚染
【0085】
試験されるべき塗膜は、らせん状に巻かれた棒を使用してメチレンブルー溶液の膜を延ばすことによって該膜でオーバーコートされる。30ミクロン厚さのMelinexまたはMylarのシートに濡れた塗膜を施与することによって、前もって試験膜は調製された。らせん状に巻かれた棒は、各種の膜厚さを与えるように特定されているが、25〜50ミクロンの濡れ膜を与えるものが一般に使用される。コーティングは23℃、50%相対湿度で一晩放置乾燥される。
【0086】
測定
【0087】
コーティングの適当なサイズの領域が膜から切り出され、そして分光光度計を使用してLおよびbの測定がなされる。塗膜はそれから、250〜765nmの550W/Mの発光量を与えるように設定されたAtlas Suntest試験機からの光に曝露される。塗膜は18時間で再測定される。曝露されていない結果と曝露された結果とのLおよびbの差は、自己浄化性へのコーティングの光活性の目安である。
【0088】
データは以下の表に提示される。
【0089】
III−耐久性の測定の方法
【0090】
ステンレス鋼のパネル上にコーティングを調製し、そしてシミュレートされた気候条件にその用途のために設計された機器内でそれを曝露することによって、コーティングの耐久性は評価された。曝露の間にコーティングが失う重量の総計が、その耐久性の目安であった。
【0091】
ステンレス鋼のパネルは75×150mmの大きさであり、0.75mmの厚さであった。コーティングの重量が計算されることができるように、パネルは塗膜の施与前後に0.0001gまで秤量された。
【0092】
パネルは、任意の慣用の手段、たとえば刷毛塗り、吹き付け塗装、スピンコーティングまたはらせん棒塗布具によって被覆されることができる。曝露されることになる表面のみが被覆された。乾燥膜厚さは、典型的には20〜50ミクロンの範囲であった。
【0093】
コーティングは、促進耐候性試験機内での曝露前に7日間放置乾燥された。
【0094】
曝露に使用された促進耐候性試験機は、シカゴ市のAtlas Electric Devices社によって作られたCi65Aであった。光源は、340nmにおける0.5W/mの紫外線を発光する6.5kWのキセノン光源であった。黒いパネルの温度は63℃であった。120分間毎にそのうち18分間水噴霧が掛けられ、暗周期はなかった。
【0095】
このようにして得られた値が、以下の表に提示される。本発明に従う塗料の初期の全重量の約60重量%のみが、760時間の曝露後に有効に失われたことを、これらの値は示す。
【表1】

【0096】
耐白かび性
【0097】
試験された塗料は、アルミニウムに基づく基体の表面上に300g/mの被覆率で施与され、そしてASTM D3274−95の国際方法に従って3月間曝露された。
【0098】
耐性はブランクの塗料、すなわち光触媒を含まないものと比較された。本発明に従って処理された基体は、比較の塗料によって処理された基体の少なくとも2倍の耐性を示すことを、このようにして得られた結果は示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の表面上に無機層を形成するためのコーティング組成物であって、該組成物が、少なくとも
− 有効な量の光触媒性二酸化チタン粒子、
− 不透明化剤、
− 無機バインダーの粒子、
− 有機バインダー、および
− 溶媒
を含み、当該有機バインダーおよび光触媒性二酸化チタン粒子が、0.1〜6の範囲の光触媒性二酸化チタン/有機バインダーの重量比で存在する、上記組成物。
【請求項2】
有機バインダーが、スチレン/ブタジエン共重合体並びにアクリル酸エステルの重合体および共重合体の群から選ばれる、請求項1に従うコーティング組成物。
【請求項3】
有機バインダーが、ポリビニルアクリルおよびスチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体からなる群から選ばれる、請求項1または2のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項4】
有機バインダーが、0.3〜4.5また特には0.5〜3.6の範囲の光触媒性TiO粒子/有機バインダーの重量比で存在する、請求項1〜3のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項5】
光触媒性二酸化チタン粒子が、アナターゼ、ルチルまたはこれらの混合物である、請求項1〜4のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項6】
光触媒性二酸化チタン粒子が、結晶質のアナターゼ型二酸化チタンを含む、請求項1〜5のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項7】
結晶質の二酸化チタン粒子が、5〜80nm、特には5〜50nm、さらにより特には10〜40nmの平均サイズを示す、請求項6に従うコーティング組成物。
【請求項8】
光触媒性二酸化チタン粒子が、全組成物の0.5〜20重量%、また好ましくは1〜15重量%、より特には3〜12重量%の量で存在する、請求項1〜7のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項9】
無機バインダーが、アルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ジルコン酸塩、アルカリ金属ホウ酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属ホスホン酸塩およびこれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも1の非晶質金属酸化物を含む、請求項1〜8のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項10】
無機バインダーが、少なくとも1のアルカリ金属ケイ酸塩、特にケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、および/またはケイ酸リチウムを含有する、請求項1〜9のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項11】
アルカリ金属ケイ酸塩の濃度が、固形分基準で、0.5〜35重量%、特には1〜30重量%、より特には2〜25重量%である、請求項10に従うコーティング組成物。
【請求項12】
非光触媒性TiO粒子をさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項13】
溶媒が少なくとも水である、請求項1〜12のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項14】
ケイ酸塩エマルション塗料としての、請求項1〜13のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項15】
基体上に汚れ除去性および/または汚れ浄化性コーティングを付与する方法において、
− 基体の表面上に請求項1〜14のいずれか1項に従うコーティング組成物を施与して、コーティングを形成すること、および
− 該コーティングを固定して、基体の表面上に無機層を得ること
の段階を少なくとも含む、上記方法。
【請求項16】
基体上の白かび、糸状菌、藻および/または細菌を予防しおよび/または処理する方法において、該方法が、
− 基体の表面上に請求項1〜14のいずれか1項に従うコーティング組成物を施与して、コーティングを形成すること、および
− 該コーティングを固定して、基体の表面上に無機層を得ること
の段階を少なくとも含む、上記方法。

【公開番号】特開2012−149258(P2012−149258A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23518(P2012−23518)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【分割の表示】特願2006−550336(P2006−550336)の分割
【原出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(506259450)ミレニアム ケミカルズ ユーケー ホールディングス リミテッド (3)
【Fターム(参考)】