説明

表面の湿潤性を改良するための組成物

【課題】表面の湿潤性を改良する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、疎水性支持体の湿潤性/親水性を改良する方法であって、ブロックコポリマーを該支持体に適用するものであり、上記ブロックコポリマーは第四級アンモニウムポリマーブロックと疎水性ブロックを含む。本発明の方法は、不織布の湿潤性を改良するために使用する場合、及び汚れ残留物の蓄積を防止するため家庭で行なわれる疎水性表面の処理の際に、特に利点がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両親媒性ブロックコポリマーを含む組成物を支持体に適用することにより疎水性支持体の湿潤性/親水性を改良する方法であって、前記両親媒性ブロックコポリマーは、親水性(A)ブロックと疎水性(B)ブロックを含む。親水性ブロック(A)はビニル系アミン又はアリル系アミン又はそれらの第四級塩から形成されるカチオンモノマーであり、そして疎水性ポリマーブロック(B)は疎水性エチレン性不飽和モノマーから形成される。本発明の方法は、不織布の湿潤性を改良するために使用する場合、及び汚れ残留物の蓄積を防止するため家庭で行なわれる疎水性表面の処理の際に(硬質表面洗浄剤)、特に利点がある。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、インフレートフィルム及びキャストフィルム、押出シート、射出成形品、発泡体、吹込成形品、押出パイプ、モノフィラメント、繊維及び不織ウェブを含む多種の製品を生産するために、広範囲に使用されている。ポリオレフィンのようなある種のプラスチックは、元来、疎水性である。プラスチックの疎水性がそれらの有用性を制限するか、又は、プラスチックから製造された成形品の表面特性を改良するために少なからず努力を必要とする、多くのプラスチックの用途がある。
【0003】
例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンのようなポリオレフィンは、おむつ、女性用介護用品、失禁用品、小児用トレイニングパンツ、手拭等々のような使い捨ての吸収用品を構成する際に用いられるポリマー織布を製造するために使用される。しばしば、そのようなポリマー織布は、水又は水ベースの液体に湿潤性であることが要求される。湿潤性は、織布に、該織布の形成中又は形成後に、界面活性剤溶液を噴霧するか、又は他のコーティング(即ち、表面処理又は局部処理)をし、その後、ウェブを乾燥することにより得ることができる。
【0004】
ポリオレフィン繊維もまたカーペット等に使用される。これらの繊維又はカーペットを染色することは、繊維の疎水性のために難しさがある。従って、染料水溶液で濡らすことはしばしば困難である。
【0005】
疎水性支持体が直面する別の問題は、台所及び浴室で使用されるビニル、ポリカーボネート、ポリオレフィン又はポリメチルメタクリレートに対するような、家庭用途において通常直面する土壌の蓄積である。通常、洗剤及び他の添加剤を含む水溶液を用いてこれらの疎水性表面が洗浄される場合には、脱濡れ(dewetting)が疎水性表面に起こり、潜在的な縞発生/薄膜化を生じさせる。従って、支持体の疎水性を低下させる方法は、良好な表面外観を与える助けになる。例えば、“日常のシャワー”噴霧の適用の際に、プラスチック表面又はポリマー表面への、或いは湿潤表面への直接噴霧、その後の乾燥、次の例えばシャワー中の水への暴露、乾燥放置により疎水性が低下し、目には見えないけれども、残留分は、表面の均一な濡れ(wetting)及び容易な洗浄を可能にする。
【0006】
これらの場合には、低レベルの残留分(残留分は、非揮発性活性成分として定義される。)は、続く適用において更に良好な濡れを提供することにより、次回の洗浄を更に容易にし、従って、非常な疎水性表面において特に重要であるところの、溶液脱濡れを最小にすることにより、潜在的な縞発生/薄膜化を減少させる。有効な濡れの利点は、配合者が組成物中の他の成分、例えば、典型的に濡れに関与する界面活性剤を最小に保持することを可能にする。これは、過剰な活性成分及び/又は他の物質が表面に存在することにより、染みを生じさせ得る及び/又は表面粘着性を引き起こす薄膜を生成する可能性を減少さ
せる。
【0007】
両親媒性ブロックコポリマー自体は、技術的に良く知られている。例えばポリオレフィンセグメントとカチオンセグメントを含む両親媒性ブロックコポリマーは知られている。例えば、サンドリン,エル.(Sandrine,L.)他、ジャーナル オブ ポリマー サイエンス(J.of Polymer Science):部門A ポリマー ケミストリー(Part A Polymer Chemistry)、第44巻、第1214〜1224頁(非特許文献1)は、エチレン−コ−ブチレンとメタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチルとの、第四級化したジブロックコポリマーを開示している。ザング,エックス(Zhang,X)他、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1999年、32、第1763〜1766頁(非特許文献2)、及びケルファラー,エヌ.エス.(Khelfallah, N.S.)他、ポリマー バレチン(Polymer Bulletin)53、第295〜304頁(2005年) (非特許文献3)は、スチレンとメタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチルとのジブロックコポリマーを開示している。アレン,エイ.(Allen,A.)他、デザインド モノマー アンド
ポリマー(Designed Monomers and Polymer)、第2巻、第29〜52頁(1999年)(非特許文献4)は、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチルでグラフトしたイソブチレンを開示している。
【0008】
マクロモレキュールズ(Macromolecules)、2005年、第38巻、第7580〜7592頁(非特許文献5)では、疎水性ブロックと親水性ブロックからなる両親媒性ブロックコポリマーが議論され、そしてアクリル酸(メタクリル酸)エステルブロックと共にカチオンブロックを含むブロックコポリマーの具体が示されている。
【0009】
ナライネン,エイ.(Larraine,A.)他、ジャーナル オブ ポリマー サイエンス(J.of Polymer Science):部門A ポリマー ケミストリー(Part A Polymer Chemistry)、第40巻、第439〜450頁(非特許文献6)は、ポリ(メタクリル酸n−ブチル)と第四級化したポリ[メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル]とのブロックコポリマーを開示している。タル’ロゼ,アール.ブイ(Tal’rose,R.V)他、マクロモレキュール ラピッド
コミニュケーション(Macromol.Rapid Commun.)19、第517〜522頁(1998年)(非特許文献7)は、ポリ(N,N−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)ブロック−ポリ(アクリル酸セチル)ポリマーを開示している。
【0010】
バット−コートロ,ディー.(Batt−Coutro,D.)他、ヨーロピアン ポリマー ジャーナル(European Polymer Journal)39(2003年)第2243〜2252頁(非特許文献8)は、疎水性ブロックがポリ酢酸ビニルであり、そしてカチオンブロックが第四級化したポリ[メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル]である両親媒性カチオンブロックコポリマーを開示している。
アキレオス,エム.(Achileos M.)他、ポリマー プレプリンツ(Polymer Preprints)、2006年、47(2)、第640頁(非特許文献9)は、親水性のポリ[メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル]セグメント及び、ポリスチレン、ポリアクリル酸ブチル又はポリメタクリル酸ブチルのいずれかの疎水性セグメントを含む両親媒性ブロックコポリマーを開示している。
【0011】
これらの参考文献のいずれにも、硬質表面洗浄剤中でブロックコポリマーを使用すること又は湿潤性を改良するため不織布を処理するのにブロックコポリマーを使用することは、示唆されていない。
【0012】
ブロックコポリマーは表面改良剤としても知られている。例えば、米国特許第5, 46
4,691号明細書(特許文献1)は、ポリオレフィンの表面エネルギーを改質するために両親媒性樹脂を使用することを開示している。前記両親媒性樹脂は、炭化水素部分と極性部分から構成されている。炭化水素部分は例えば長鎖脂肪族カルボン酸から誘導され、そして極性部分はテレケリックジオール(telechelic diol)、例えばポリエチレングリコールから誘導される。
【0013】
米国特許第5,240, 985号明細書(特許文献2)、同第5, 272, 196号明細書(特許文献3)、同第5, 281, 438号明細書(特許文献4)、同第5, 328、951号明細書(特許文献5)は、ポリオレフィンの表面エネルギーを増加させるために両親媒性を使用している。両親媒性は、1個の中央の親水性成分と2個の親油性成分からなる。親水性成分は例えば、ポリグリコールから誘導され、そして親油成分は例えば、脂肪酸から誘導される。
【0014】
ブロックコポリマーは、洗剤における泡立ち強化材(suds enhancer)としても知られている。例えば、米国特許第6, 864, 314号明細書(特許文献6)は、カチオン帯電していてもよいブロックコポリマー材を開示している。前記ポリマー材は、泡立ち強化材として使用される.
【0015】
米国特許第6, 437, 040号明細書(特許文献7)は、すすぎ洗い後の持続効果を伴う、多少疎水性の表面のコーティング用の湿潤剤又は親水性化剤として、親水性ブロックコポリマーを開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】サンドリン,エル.(Sandrine,L.)他、ジャーナル オブ ポリマー サイエンス(J.of Polymer Science):部門A ポリマー ケミストリー(Part A Polymer Chemistry)、第44巻、第1214〜1224頁
【非特許文献2】ザング,エックス(Zhang,X)他、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1999年、32、第1763〜1766頁
【非特許文献3】ケルファラー,エヌ.エス.(Khelfallah, N.S.)他、ポリマー バレチン(Polymer Bulletin)53、第295〜304頁(2005年)
【非特許文献4】アレン,エイ.(Allen,A.)他、デザインド モノマー アンド ポリマー(Designed Monomers and Polymer)、第2巻、第29〜52頁(1999年)
【非特許文献5】マクロモレキュールズ(Macromolecules)、2005年、第38巻、第7580〜7592頁
【非特許文献6】ナライネン,エイ.(Larraine,A.)他、ジャーナル オブ ポリマー サイエンス(J.of Polymer Science):部門A ポリマー ケミストリー(Part A Polymer Chemistry)、第40巻、第439〜450頁
【非特許文献7】タル’ロゼ,アール.ブイ(Tal’rose,R.V)他、マクロモレキュール ラピッド コミニュケーション(Macromol.Rapid Commun.)19、第517〜522頁(1998年)
【非特許文献8】バット−コートロ,ディー.(Batt−Coutro,D.)他、ヨーロピアン ポリマー ジャーナル(European Polymer Journal)39(2003年)第2243〜2252頁
【非特許文献9】アキレオス,エム.(Achileos M.)他、ポリマー プレプリンツ(Polymer Preprints)、2006年、47(2)、第640頁
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5, 464,691号明細書
【特許文献2】米国特許第5,240, 985号明細書
【特許文献3】米国特許第5, 272, 196号明細書
【特許文献4】米国特許第5, 281, 438号明細書
【特許文献5】米国特許第5, 328, 951号明細書
【特許文献6】米国特許第6, 864, 314号明細書
【特許文献7】米国特許第6, 437, 040号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明者等は、疎水性支持体を、親水性ブロック(A)と疎水性ブロック(B)を含む特定の両親媒性ブロックコポリマーで処理することにより、表面が親水性化され得ることを発見した。従って、ポリアルキレンテレフタレート、例えばポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(ブチレンテレフタレート)のような疎水性表面、及びポリプロピレンの不織布は湿潤性になる。
【0019】
硬質支持体、例えば調理台、浴室及び台所に存在するポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン及びポリメタクリル酸メチルを湿潤性にすることができるので、疎水性表面の洗浄特性が改良される。
【0020】
ポリアミド[例えばナイロン(登録商標)]、ポリオレフィン例えばポリプロピレン、ポリエステル例えばポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンアジペート、並びにポリアクリロニトリルのような疎水性ポリマーから形成された合成織布又はカーペットも、染色又は印刷目的のために湿潤性にされ得る。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、両親媒性ブロックコポリマーを含む組成物を支持体に適用する段階を含む、疎水性支持体の湿潤性/親水性を改良する方法であって、
前記両親媒性ブロックコポリマーは、親水性(A)ブロックと疎水性(B)ブロックを含み、
前記親水性ブロック(A)は、次式(I)又は次式(II):
【化1】

[式中、R1 は水素原子又はメチル基を表し、
2 は分枝した又は分枝していない炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、
3 及び/又はR4 は独立して、分枝した又は分枝していない炭素原子数1ないし22のアルキル基、炭素原子数1ないし4のアルキルヒドロキシ基又はベンジル基を表すか、又は、
3 とR4 は結合して、窒素原子と共に5又は6員環を形成してもよく、前記環は1個以上のヘテロ原子を含んでおり、
- は酸の共役塩基を表し、
Xは酸素原子又は−NR5 基(式中、R5 は、上記R1 において定義されたものと同じ意味を表す。)を表し、
Aは1ないし4個の炭素原子からなるアルキレン基を表し、
6 とR7 は分枝した又は分枝していない炭素原子数1ないし22のアルキル基、ベンジル基又は炭素原子数1ないし4のアルキルヒドロキシ基を表し、
nとmは2以上である。]により定義されたカチオンモノマーユニット少なくとも1個を含み、そして、
前記疎水性ポリマーブロック(B)は、エチレン性不飽和疎水性モノマーから形成される方法に関するものである。
【0022】
また本発明は、上記両親媒性ブロックコポリマー及び所望により非イオン又はイオン界面活性剤を含む硬質表面洗浄剤を含む。非イオン界面活性剤が好ましい。
【0023】
本発明の第3の態様は、上記両親媒性ブロックコポリマーでコートされた繊維、不織布、カーペット又は織布である。繊維、不織布、カーペット又は織布支持体のこのコーティングは、処理された支持体の疎水性を増加し、従って、印刷適性と可染性を改良する。
【0024】
従って、本発明は、疎水性支持体の親水性及び/又は湿潤性を増加させるために、該支持体を処理する方法であって、上記両親媒性ブロックコポリマーを含む組成物を前記支持体に適用することによる方法を表す。両親媒性ブロックコポリマーは、所望により非イオン又はイオン界面活性剤を更に含む水性溶液に分散されていてもよい。
【0025】
硬質表面を洗浄する方法は、疎水性表面を、上記両親媒性ブロックコポリマーを含む有効量の洗浄製剤と接触させることを含む。
【0026】
本発明は、上記両親媒性ブロックコポリマーを製造する方法も含む。この方法は、次式(III)又は次式(IV):
【化2】

で表されるカチオンモノマーを、官能基又は連鎖移動基により末端閉鎖されている疎水性(B)ブロックポリマーの存在下で重合させる段階を含む。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ここで使用される“ブロックコポリマー”は、共有結合して単一のポリマー分子を形成する2種以上の異なるポリマーユニットを含むことを意味している。典型的には、ブロックコポリマーはジ−、トリ−及びマルチ−ブロックポリマーの形で存在する。例えば、ブロックコポリマーは、Aブロック−Bブロックのようなジブロックコポリマー或いはAブロック−Bブロック−Aブロック又はBブロック−Aブロック−Bブロックのようなトリブロックコポリマーを含み得る。AB−ABの構造も可能である。
【0028】
従って、本発明の別の一側面は、親水性ブロックに結合した疎水性ブロックを含む両親媒性ブロックコポリマーであって、親水性ブロック(A)が、疎水性非イオンブロック(B)に結合した、式(I)又は式(II)により定義されるモノマーユニット少なくとも1個を含む両親媒性ブロックコポリマーを提供することである。
【0029】
ブロックは、ポリマー名により又はそれが誘導されるモノマー名により定義され得る。
【0030】
本発明の目的のために、モノマーユニットは、重合後に形成されたユニットとして定義される。
【0031】
用語モノマー自体は、重合前のモノマーに関するものである。
【0032】
ブロックは、複数種の反復ユニット又はモノマーユニットを含み、複数のモノマーから誘導されるコポリマーであってよい。AブロックとBブロックは異なるポリマーであり、異なるモノマーから誘導されるが、しかし、それらは、数個の通常の反復単位又はモノマーユニットを含んでよい(コポリマー)。
【0033】
両親媒性ブロックコポリマーは、特に、線−、グラフト−、櫛−、架橋−又は星−構造であってよい。
【0034】
線構造は通常は、架橋構造以外のものである。
【0035】
星構造は一般的に、少なくとも3個の官能基を放射状に広げる一つの核を必要とする。核の官能基は、Aブロック又はBブロックのいずれかと共有結合を形成するように反応させ得る。Aブロック又はBブロックを含んで形成された腕は、どのブロックが核から放射状に出る最初の配列を形成するかによって、AB又はBA構造のいずれかを取り込むために、その後更に反応され得る。
【0036】
本発明の目的のために、用語“ポリマーブロック”は、ブロックコポリマーのブロックの一つ(親水性ブロック又は疎水性ブロックのいずれか)を意味する。
【0037】
両親媒性ブロックコポリマーは通常、疎水性ブロックと親水性のブロック又はセグメントを含むブロックコポリマーとして定義される。
【0038】
本発明のブロックコポリマーでは、Aブロックは親水性であり、そしてBブロックは疎水性である。ブロックの親水性又は疎水性の性質は、他のブロック無しでも前記ブロックが持つ性質を指し、前記ブロックと同じ反復ユニットからなり且つ同じ平均分子量を持つポリマーの性質である。
【0039】
用語“疎水性”と“親水性”は、本発明のブロックコポリマーに適用される場合は、それらの通常の意味で使用される。即ち、“親水性”は、ポリマーについて使用される場合は、該ポリマーは水と結合するか又は水を吸収する強い傾向を有し、それは、ポリマーの水溶液又は膨潤及び/又はゲル形成をもたらし得る。この性質は、極性又はイオンモノマーから製造されたポリマーの特徴である。同様に、“疎水性”は、疎水性ブロックについて使用される場合は、該ポリマーは撥水性であり且つ通常、水に溶解され得ないか又は水により膨潤され得ない。この性質は、比較的無極性のモノマーから製造されたポリマーの特徴である。
【0040】
疎水性ブロックは、水にいくぶん溶解性のメタクリル酸メチルのようなモノマーから誘導されてもよい。疎水性ブロックの重要な寄与は、一旦それが形成されると、得られたブロックは水に不溶であるか又は水中で膨潤性でないことである。
【0041】
形成された両親媒性ブロックコポリマーは、水に溶解性であるか又は分散性であり得る。両親媒性ブロックコポリマーは、例えば水に分散性であり得る。両親媒性コポリマーは、ミセルも形成し得る。好ましくは、両親媒性ブロックコポリマーは、水溶液に分散性である。前記水溶液は、好ましくは非イオン又はイオン界面活性剤を更に含む。
【0042】
低級の分枝した又は分枝していない炭素原子数1ないし4のアルキル基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基及び第二−ブチル基である。
【0043】
本発明の目的のための炭素原子数1ないし4のアルキルヒドロキシ基は例えば、1個のヒドロキシル基により置換され得る分枝した又は分枝していないアルキル基を意味する。この例は、−CH2 CH2 OH基、−CH2 CH2 CH2 OH基及び次式:
【化3】

で表される基である。
【0044】
3 とR4 は結合して1以上のヘテロ原子を含む環、例えばピロリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンを形成することができる。
【0045】
分枝した又は分枝していない炭素原子数1ないし22のアルキル基は、例えば、炭素原子数1ないし18、炭素原子数1ないし16、炭素原子数1ないし12、炭素原子数1ないし8、炭素原子数1ないし6又は好ましくは炭素原子数1ないし4のアルキル基を意味する。或いは、炭素原子数1ないし22のアルキル基は、炭素原子数4ないし22、炭素原子数6ないし22、炭素原子数8ないし22、炭素原子数10ないし22又は炭素原子数12ないし22であってもよい。この例は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、第二−ブチル基、イソブチル基、第三−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ラウリル基、ステアリル基、セチル基、ベヘニル基又はそれらの混合を表す。炭素原子数8ないし22のアルキル基は例えば、2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ラウリル基、ステアリル基、セチル基、ベヘニル基又はそれらの混合を表す。
【0046】
- は対イオンであってよく、クロリド、ブロミド、ヨージド、フルオリド、置換された又は未置換のアリールスルホネート、スルフェート;メチルスルホネート、エチルスルホネートのようなアルキルスルホネート、カルボキシレート、ニトレート、ホスフェート、テトラフルオロボレート、テトラアルキルボレート、テトラアリールボレート、パークロレート及びヘキサフルオロホスフェートにより表されるが、それらに限定されない。
【0047】
カチオンモノマーユニットは、潜在的カチオンモノマー又はカチオンモノマーから形成されてよい。例えば、更なるカチオンモノマー又は潜在的カチオンモノマーは、第四級化されたN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、第四級化されたN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド又は第四級化されたジアリルメチルアミンであってよい。
【0048】
親水性ブロック(A)を含むカチオンモノマーユニットは、第四級化されており、従って、ブロックコポリマーに永久カチオン電荷を与える。
【0049】
親水性ポリマーブロック(A)が形成された後、式(I)及び式(II)により表され
る相当するアミンは、第四級アンモニウム塩を形成するためにアルキル化されてよい。
【0050】
ブロックコポリマーの親水性ブロックの第3級アミノ基を第四級化するのに使用し得る第四級化剤についての特別な制約はない。例えば、第四級化剤は、塩化メチル、臭化メチル、沃化メチルのようなハロゲン化アルキル、及び炭素原子数6ないし24のハロゲン化アルキルのような長鎖ハロゲン化アルキル;ハロゲン化アルキルカルボン酸塩例えばクロロ酢酸ナトリウム、ブロモ酢酸ナトリウム及びヨード酢酸ナトリウム、ハロゲン化ベンジル例えば塩化ベンジル、臭化ベンジル及び沃化ベンジル、スルホン酸エステル誘導体例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸、o−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸メチル、o−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸メチル及びベンゼンスルホン酸エチルを含んでよい。
【0051】
親水性ポリマーブロック(A)は、式(I)又は式(II)で表されるモノマーユニットを含む。
【0052】
式(I)又は式(II)で表されるモノマーユニットを形成し得るモノマーの代表例は、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル・塩化メチル第4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル・硫酸メチル第4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル・塩化ベンジル第4級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル・硫酸メチル第4級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル・塩化ベンジル第4級塩、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル・塩化メチル第4級塩、メタクリル酸ジエチルアミノエチル・塩化メチル第4級塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、アクリルアミドプロピルヂメチルアミン、塩化アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド・硫酸メチル第4級塩、ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、臭化ジアリルジメチルアンモニウム、硫酸ジアリルジメチルアンモニウム、リン酸ジアリルジメチルアンモニウム、塩化ジアリルジ(β−ヒドロキシエチル)アンモニウム及び塩化ジアリルメチルベンジルアンモニウムからなる群から選択される。
【0053】
親水性及び/又は疎水性ブロックは、ヒドロキシ基を含んでいてもよいし又は含んでいなくてもよい。両ブロックは、いかなるヒドロキシ基も含まないモノマーユニットを含む。
【0054】
親水性のAは式(I)又は式(II)で表されるモノマーユニットを含まねばならないが、親水性ブロック(A)は、更なるカチオン−、潜在的カチオン−、アニオン−、潜在的アニオン−、非イオン−、双性イオン−モノマーユニット又はそれらの混合物を含んでもよい。
【0055】
従って、親水性ブロックAは、例えばホモポリマー又はコポリマーであってよい。
【0056】
形成された親水性ブロック(A)ポリマーは、全体にわたるカチオン電荷を持ってもよい。例えば、親水性ブロックは、式(III)で表されるモノマー、式(IV)で表されるモノマー及びビニル又はアリル系非イオンモノマーからなる群から選択されたモノマーから形成されるカチオンモノマーユニットを含み、又は、親水性(A)ブロックは、式(III)で表されるモノマー、式(IV)で表されるモノマー及びアニオンモノマーからなる群から選択されたモノマーから形成されるカチオンモノマーユニットを含み、この場合、式(III)で表されるモノマーと式(IV)で表されるモノマーにより定義されるモノマーのモル%はアニオンモノマーのモル%を超える。親水性ブロックAポリマーのた
めの更なる組み合わせは、式(III)で表されるモノマー、式(IV)で表されるモノマー及び双性イオンモノマーからなる群から選択されたモノマーから形成されるモノマーユニットであってよい。
【0057】
本発明の目的のために、(メタ)アクリル酸誘導体は、アクリル酸及びメタクリル酸の誘導体を含む。
【0058】
更なるカチオンモノマーの代表例は、アクリル酸ジメチルアミノエチル・塩化メチル第4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル・硫酸メチル第4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル・塩化ベンジル第4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル硫酸塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル塩酸塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル・塩化メチル第4級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル・硫酸メチル第4級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル・塩化ベンジル第4級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル硫酸塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル塩酸塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル・塩化メチル第4級塩、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル・塩化メチル第4級塩、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、塩化アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド・硫酸メチル第4級塩、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド硫酸塩、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩酸塩、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアリルアルキルアミン及びビニルピリジンを含む、適切にカチオン帯電した又は潜在的にカチオン帯電したモノマーからなる群から選択されてよい。
【0059】
非イオンモノマーは、重合可能なアリル系又はビニル系化合物であり且つ電気的に中性である。代表的な非イオンモノマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセタミド、N−ビニル−N−メチルアセタミド、フマル酸アミド、N−ビニル−2−ピロリドン、グリセリン モノ((メタ)アクリレート)、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ビニルメチルスルホン、酢酸ビニル、ジアセトンアクリルアミド;マレイン酸、フマル酸、コハク酸及びイタコン酸のジエステル類を含む。
【0060】
非イオンモノマーは、ビニル又はアリル官能価を含むマクロマーであってよい。マクロマーは、末端アリル基、ビニル基又はエチレン性不飽和末端基を含むポリマーとして定義され得る。例えば、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレートは、マクロマーである。
【0061】
親水性ブロック(A)は、アクリルアミド又はポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルモノ(メタ)アクリレートのマクロマーのような非イオン親水性モノマーから形成されたモノマーユニットも含み得る。
【0062】
従って、両親媒性ブロックコポリマーは、コポリマーであり且つ更にアルキレングリコールユニットを含む親水性ブロックAを含んでいてよい。
【0063】
親水性ブロックAを形成してよい親水性非イオンモノマーの質量%は、ポリマーブロックAの全質量の約0ないし約30モル%、ポリマーブロックAの全質量の約1%ないし約20モル%、約1ないし約10モル%又は約1ないし約5モル%の範囲にあってよい。
【0064】
疎水性非イオンモノマーは、親水性ブロックA内に取り込まれ且つ(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、ステアリルエトキシ(メタ)アクリレートステアリルエトキシアリルエーテル及びそれらの混合のようなアクリレ−トを含み得る。
【0065】
疎水性非イオンモノマーは、親水性ブロックA内に含まれ得るが、そのブロックAが依然として保持すべきなのは親水性特性である。従って、式(I)及び/又は式(II)で表されるモノマーユニットの質量%は、ポリマーブロックA内の非イオン疎水性モノマーの質量%を超える。例えば、親水性ブロックA内の疎水性非イオンモノマーの質量%は、ポリマーブロックAの全質量の約0ないし30モル%、ポリマーブロック(A)の全質量の約1%ないし約20モル%、約1ないし約10モル%又は約1ないし5モル%の範囲にあってよい。親水性ブロック(A)中へ取り込まれた疎水性モノマーが存在しないのが好ましい。
【0066】
アニオンモノマーユニット又は潜在的アニオンモノマーユニットは、アニオンモノマー又は潜在的アニオンモノマーから形成されてよい。そのアニオンモノマー又は潜在的アニオンモノマーは、ホスフェート基又はホスホネート基を含むα−エチレン性不飽和モノマー、α−エチレン性不飽和モノカルボン酸、α−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル、α−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルアミド、スルホン酸基を含むα−エチレン性不飽和化合物、スルホン酸基を含むα−エチレン性不飽和化合物の塩及びそれらの混合物からなる群から選択されたα−エチレン性不飽和モノマーから誘導される。
【0067】
アニオンモノマー又は潜在的アニオンモノマーの代表例は、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸塩、ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸塩、α−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、α−アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸塩、メタクリル酸2−スルホエチル、メタクリル酸2−スルホエチルの塩、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の塩、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、スチレンスルホネート及びその塩又はそれらの混合を含む。
【0068】
双性イオンモノマー又はモノマー類は、エチレン性不飽和モノマー又はモノマー類から誘導される。本発明の目的のための双性イオンモノマーは、アニオン電荷及びカチオン電荷の両方又は潜在的アニオン電荷及び潜在的カチオン電荷の両方を含むモノマーとして定義される。
【0069】
代表例は、
N,N−ジメチル−N−アクリロイルオキシエチル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン、
N,N−ジメチル−N−アクリロイルオキシエチル−N−(2−カルボキシメチル)−アンモニウムベタイン、
N,N−ジメチル−N−アクリルアミドプロピル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン、
N,N−ジメチル−N−アクリルアミドプロピル−N−(2−カルボキシメチル)−アンモニウムベタイン、
2−(メチルチオ)エチルメタクリロイル−S−(スルホプロピル)−スルホニウムベタイン、
2−[(2−アクリロイルエチル)ジメチルアンモニオ]エチル2−メチルホスフェー
ト、
2−(アクリロイルオキシエチル)−2’(トリメチルアンモニウム)エチルホスフェート、
[(2−アクリルオキシエチル)ジメチルアンモニオ]メチルホスホン酸、
2−メタクリルロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)、
2−[(3−アクリルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]エチル2’−イソプロピルホスフェート(AAPI)、
1−ビニル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムヒドロキシド、
(2−アクリルオキシエチル)カルボキシメチルメチルスルホニウムクロリド、
1−(3−スルホプロピル)−2−ビニルピリジニウムベタイン、
N−(4−スルホブチル)−N−メチル−N,N−ジアリルアミンアンモニウムベタイン(MDABS)、
N,N−ジアリル−N−メチルーN−(2−スルホエチル)アンモニウムベタイン又はそれらの混合物である。
【0070】
親水性ポリマーブロック(A)は、ホモポリマー又はランダムコポリマー、ブロックコポリマー又はグラフトポリマー又はグラフトコポリマーであってよい。
【0071】
親水性ブロック(A)は、ビニル系又はアリル系カチオンモノマーから全てが形成されていてもよい。親水性ブロック(A)は例えば、ペンダントヒドロキシル基を含まない。親水性ブロック上のカチオン荷電は好ましくは永続的である。従って、例えば、親水性ブロックを形成するカチオンモノマー又は潜在的カチオンモノマーは第四級化される。
【0072】
親水性ポリマーブロック(A)の平均分子量は、約200g/モルないし約1000000g/モル、約200g/モルないし約500000g/モル、約200g/モルないし約50000g/モル、そしてより好ましくは約200g/モルないし約100000g/モル、例えば、約200g/モルないし約10000g/モル、約200g/モルないし約5000g/モル又は約200g/モルないし約3000g/モルなどに変化する。
【0073】
疎水性ブロック(B)
疎水性ブロック(B)は、エチレン性不飽和疎水性モノマーから形成される。好ましいのは、疎水性ブロック(B)が疎水性オレフィンモノマー又は疎水性エチレン性不飽和ビニルモノマーから形成される方法である。
【0074】
エチレン性不飽和疎水性モノマーは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン、ビニルシクロヘキセン、シクロペンタジエン、β−ピネン、スチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−メチルスチレン、塩化ビニル及びそれらの混合物からなる群から選択されたオレフィンポリマーを含む。
【0075】
エチレン性不飽和ビニル疎水性モノマーも、用語エチレン性不飽和モノマーの下に含まれる。エチレン性不飽和ビニル疎水性ポリマーは、分枝した又は分枝していない炭素原子数1ないし22の(メタ)アクリル酸エステル、分枝した又は分枝していない炭素原子数1ないし22の(メタ)アクリルアミドであってよい。例えば、疎水性モノマーは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、メチル(メタ
)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、プロピル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、ペンチル(メタ)アクリルアミド、ヘキシル(メタ)アクリルアミド、2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、セチル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミド及びそれらの混合物からなる群から選択されてよい。
【0076】
疎水性ポリマーブロック(B)は、例えば、上に列記したオレフィンポリマー又はエチレン性不飽和ビニルモノマー(下記の式III)から形成され、該エチレン性不飽和ビニルモノマーは、(メタ)アクリル酸の分枝した又は分枝していない炭素原子数4ないし22のアルキルエステル、炭素原子数4ないし22のアルキル基でN置換された(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸の炭素原子数6ないし22アルキルエステル又は炭素原子数6ないし22のアルキル基でN置換された(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸の炭素原子数8ないし22のアルキルエステル又は炭素原子数8ないし22のアルキル基でN置換された(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリル酸の炭素原子数10ないし22のアルキルエステル又は炭素原子数10ないし22のアルキル基でN置換された(メタ)アクリルアミドからなる群から選択される。(メタ)アクリルアミドの窒素は、モノ又はジアルキル置換されていてよい。
【0077】
式(III)は、次式:
【化4】

[式中、R8 は水素原子又はメチル基を表し、そしてR9 は分枝した又は分枝していない炭素原子数1ないし22のアルキル基、アリール基又はベンジル基を表し、そしてXは酸素原子又は−NR5 基(式中、R5 は上記において定義されたものと同じ意味を表わす。)を表す。]のように定義される。炭素原子数6ないし22のアルキル基としてのR9 が好ましい。
【0078】
分枝した又は分枝していない炭素原子数1ないし22のアルキル基は上記のとおり定義される。
【0079】
本発明の好ましい態様は、疎水性ブロック(B)が、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2 −メチル−1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン、ビニルシクロヘキセン、シクロペンタジエン、β−ピネン、スチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−メチルスチレン、次式(V):
【化5】

[式中、R8 は水素原子又はメチル基を表し、
9 は分枝した又は分枝していない炭素原子数1 ないし22のアルキル基、アリール基又はベンジル基を表し、
Xは酸素原子又は−NR5 基(式中、R5 は式(I)において定義されたものと同じ意味を表す。)を表す。]により定義されるモノマー、及びそれらの混合物からなるモノマー群から選択された少なくとも1種のモノマーから形成される方法を含む。
【0080】
非常に好ましい態様では、R9 は2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ラウリル基、ステアリル基、セチル基、ベヘニル基又はそれらの混合を表す。
【0081】
疎水性ポリマーブロックは、いかなる分子量であってもよい。好ましい分子量は、200g/モルないし約1000000g/モル、約200g/モルないし約500000g/モル、約200g/モルないし約50000g/モル、そしてより更に好ましくは200g/モルないし約10000g/モル、又は約200g/モルないし約5000g/モルに変化する。
【0082】
疎水性ポリマーブロックは、ホモポリマー又はランダムコポリマー、ブロックコポリマー又はグラフトポリマー又はグラフトコポリマーであってよい。従って例えば、疎水性ポリマーブロックは、エチレンとブチレンとの線状コポリマーから形成されてよい。
【0083】
疎水性ブロック(B)は、更なるカチオン−、潜在的カチオン−、アニオン−、潜在的アニオン−、非イオン−、双性イオン−モノマーユニット又はそれらの混合物を含んでもよい。
【0084】
これら更なるのカチオン−、潜在的カチオン−、アニオン−、潜在的アニオン−、非イオン−、双性イオン−モノマーユニットは、親水性ブロック(A)の下で上記において定義されたものと同じ意味を有する。
【0085】
疎水性ブロック(B)は、更なる親水性モノマーを含んでいてもよいが、疎水性ブロックBはその疎水性を保持すべきである。従って、疎水性ブロック(B)は、コポリマーであってよい。
【0086】
疎水性ブロック(B)を構成しているオレフィン性又はエチレン性不飽和ビニルモノマーユニットは、通常は、カチオン−、アニオン−、非イオン−親水性モノマーユニット(上で列記したオレフィンと異なる)又は双性イオンモノマーユニットを上回り得る。例え
ば、疎水性ブロック(B)内の親水性非イオンモノマーの質量%は、ポリマーブロック(B)の全質量の約0ないし約30モル%、ポリマーブロック(B)の全質量の約1%ないし約20モル%、約1ないし約10モル%又は約1ないし約5モル%の範囲にあってよい。例えば、疎水性ブロック(B)内の親水性非イオンモノマーの質量%は、0質量%であってよい。
【0087】
疎水性ブロック(B)は、好ましくは非電荷又は中性である。これは、疎水性ブロック(B)が、好ましくは、帯電せず且つカチオン−、アニオン−又は双性イオン−モノマー以外のエチレン性不飽和モノマーから形成されるを意味している。
【0088】
疎水性ブロック(B)は、ポリマーブロック(B)の全質量に基づいて、30質量%未満、20質量%未満、又は10質量%未満の親水性モノマーから形成されてよい。
【0089】
疎水性ポリマーは、ホモポリマー又はランダムコポリマー、ブロックコポリマー又はグラフトポリマー又はグラフトコポリマーであってよい。
【0090】
両親媒性ブロックコポリマーの製造
親水性ブロック(A)及び疎水性ブロック(B)は別々に製造されてよく、その後、共有結合されて両親媒性ブロックコポリマーを形成する。
【0091】
両親媒性ブロックコポリマーも、技術的に周知のリビング重合法により製造されてよい。例えば、原子移動ラジカル重合(atom transfer radical polymerization)(ATRP)が挙げられる。ATRPは周知であり、参考として本明細書に全体的に取り込まれている、米国特許第6, 512, 060号明細書、同第6, 407, 187号明細書、同第5, 763, 548号明細書及び同第5, 807, 937号明細書に開示されている。この方法によると、異なる酸化状態[例えばCu(I)及びCu(II)]にある遷移金属の酸化還元系の存在下、ハロゲン化物ラジカルのようなラジカル原子を発生し、“リビング”又は制御ラジカル重合をもたらす開始剤が使用される。
【0092】
具体的な開始剤は、α、α' −ジクロロ−又はα、α' −ジブロモキシレン、p−トルエンスルホニルクロリド(PTS)、ヘキサキス(α−クロロ−又はα−ブロモメチル)ベンゼン、2−クロロ−又は2−ブロモプロピオン酸、2−クロロ−又は2−ブロモイソ酪酸、1−フェネチルクロリド又はブロミド、2−クロロ−又は2−ブロモプロピオン酸のメチル又はエチルエステル、2−ブロモ−又は2−クロロイソ酪酸のエチルエステル、クロロ−又はブロモアセトニトリル、2−クロロ−又は2−ブロモプロピオニトリル、α−ブロモ−ベンズアセトニトリル及びα−ブロモ−γ−ブチロラクトン[=2−ブロモ−ジヒドロ−2(3H)−フラノン]からなる群から選択される。
【0093】
両親媒性ブロックポリマーを形成するための別のそしてより直接的な方法は、本開示の実施例4に記載されている。
【0094】
上記の両親媒性ブロックポリマーを製造する方法は、式(III)又は式(IV)で表されるカチオンモノマーを、官能基又は連鎖移動基で末端閉鎖されている疎水性(B)ブロックポリマーの存在下で重合する工程を含む。
【0095】
官能基又は連鎖移動基で末端閉鎖された疎水性(B)ブロックポリマーは例えば、参考として本明細書に全体的に取り込まれている、米国特許第6,552、131号明細書に記載されている。この参考文献には、熱分解により得られる低分子量オレフィンの記載がある。そのようにして得られたポリオレフィンは、1分子当たり平均1ないし1.5個の
末端二重結合を含む。これらの末端不飽和ポリオレフィンは、不飽和末端基を更に官能化するために変性されてもよい。
【0096】
末端が官能化されたポリオレフィンは、サイテンティフィック ポリマー プロダクツ(Scientific Polymer Products)社、三井ケミカルズ(Mitsui Chemicals)社、ベーカー ペトロライト アンド アルドリッチ(Baker Petrolite and Aldrich)社のような供給業者から直接購入してもよい。例えば、末端がモノ又はジヒドロキシ末端閉鎖された、エチレンとブチレンのコポリマー、エチレン、ブチレンとプロピレンのコポリマー及びスチレンホモポリマーは、平均分子量(1700〜4200)の範囲内で、サイテンティフィック ポリマー プロダクツ社から、商業的に利用可能である。ポリエチレンモノ−オールは、Mn 約700で、ベーカー ペトロライト社から得られる。ポリ(エチレン−コ−1,2−ブチレン)モノオールは、アルドリッチ社から、CAS番号第68954−09−6、Mn 約3750で得られる。
【0097】
チオール末端閉鎖された疎水性ブロックは例えば、末端に二重結合又はヒドロキシル基を有する疎水性樹脂と、チオ酢酸、チオ安息香酸、チオプロピオン酸、チオ酪酸、第二級アルコール又はチオバレリアン酸のような試薬を用いて処理することにより製造されてよい。この合成は、当業者、例えば 日本国特許第3481733号明細書及びイン ジュン ドゥ(Ying Jun Du)他、ジャーナル オブ アプライド ポリマー サイエンス(J.Appli. Polym. Sci.)、2003年、第594頁にて周知である。
【0098】
上記方法の利点の一つは、連鎖移動剤で末端閉鎖された疎水性ブロックポリマーの存在下でカチオンモノマーを直接に重合させることができ、従って、帯電した両親媒性ブロックポリマーに到達することにある。
【0099】
本発明の目的のために連鎖移動基で適切に末端閉鎖されていることは、チオール、キサンテート、ジチオエステル、トリチオエステル、ジチオカーバメート、第2級アルコール又はニトロキシルにより末端閉鎖又はペンダント末端閉鎖(pendant termination)を意味する。
その後、ブロックコポリマーは、カチオン帯電したビニル又はアリル系モノマーを、例えばチオール末端閉鎖された疎水性ブロックの存在下で重合することにより直接形成され得る。カチオン帯電したビニル又はアリル系モノマーの重合は、開始剤の存在下で実施され得る。
【0100】
従って、例えば親水性ブロック(A)と疎水性ブロック(B)は、その後、硫黄原子を介して共有結合して両親媒性ブロックコポリマーを形成する。
【0101】
連鎖移動剤が硫黄であり、且つモノマーがカチオンである場合、得られる両親媒性ブロックコポリマーは例えば、下記の式(VI)又は式(VII):
【化6】

[式中、R1 、R2 、n及びZ- は、上記式(II)において定義されたものと同じ意味を表し、そしてnは少なくとも2を表し、
Sは硫黄原子を表し、そして
ブロック(B)は疎水性ブロックであり且つポリオレフィンを表し得るか又はエチレン性不飽和疎水性モノマーから形成され得る。]により定義される。
【0102】
疎水性ブロックがチオールのようなペンダント連鎖移動基によりグラフトされてることも可能である。カチオンモノマー、例えばジアリルジアルキルアンモニウム塩は、その後、チオールペンダント基を持つ疎水性ポリマーの存在下で重合され、グラフトされたブロックコポリマーを与える。
【0103】
従って、両親媒性ブロック(B)は、カチオンブロック(A)でグラフトされて、櫛構造の両親媒性ブロックコポリマーを形成し得る。
【0104】
重合は、熱、光又は電磁照射より活性化されるような重合開始剤を使用して開始され得る。
【0105】
典型的な開始剤は、アゾビス化合物のようなもの、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩、アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩及び4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、過酸化物開始剤
のようなもの、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化−2,4−ジクロロベンゾイル、過酸化ジ第三ブチル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化二炭酸ジイソプロピル、クメンヒドロペルオキシド、第三ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ジクミル、p−メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、過酸化メチルエチルケトン、過酸化シクロヘキサノン、ペルオキシ二炭酸ジイソプロピル、ペルオキシラウリン酸第三ブチル、ペルオキシフタル酸ジ第三ブチル、ジベンジルオキシド及び2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、及びレドックス開始剤例えば過酸化ベンゾイル−N,N−ジメチルアニリン、ペルオキソ二硫酸−亜硫酸水素ナトリウム及び過硫酸塩例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウムである。
【0106】
光開始剤も予想される。
【0107】
反応溶媒は、例えば脂肪族炭化水素例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン及びテトラデカン、脂環式炭化水素例えばシクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン及びシクロヘキセン、芳香族炭化水素例えばベンゼン、トルエン及びキシレン、ハロゲン化炭化水素例えばジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン及び2,4−ジクロロトルエン、エステル例えば酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ブチル、ケトン例えばアセトン及びメチルエチルケトン、並びにジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びアルコール例えばエタノール、プロパノール、n−ブタノール及び第二ブタノールを含む。
【0108】
溶媒への界面活性剤の添加も予想される。
【0109】
それらは、単独で又はそれらの混合物として使用することができる。ブロックが異なる場合は、混合物溶媒が好適であり得る。そのような溶媒は、好ましくは炭素原子数2ないし6のアルコール、及び/又はN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、或いはN,N−ジメチルアセトアミドを含み、そして他の溶媒例えばトルエン又はテトラヒドロフランと混合してもよい。
【0110】
炭素原子数2ないし6のアルコールは例えば、n−プロパノール、n−ブタノール、第二ブタノール、シクロペンタノール、n−ペンタノール、ヘキサノール及びシクロヘキサノールである。
【0111】
疎水性ブロックは、広範囲にわたって溶媒の選択を決定する。例えば、ポリオレフィン(ブロックB)がポリスチレンである場合には、ポリスチレンブロックを分散させるためにN,N−ジメチルホルムアミドが使用され得る。ジアリルジアルキルアンモニウム塩モノマーは、炭素原子数2ないし6のアルコールに分散され得、その後、分散されたポリスチレンに添加され、そして重合されて両親媒性ブロックコポリマーを形成する。
反応が溶媒系で行われる場合には、溶媒系が、疎水性ブロック及び形成される親水性ブロックの両方を良好に分散させるのを可能にすることが重要である。特定の溶媒系は、各々のブロックの組成と分子量に非常に大きく依存し、実験的に決定する必要がある。
【0112】
界面活性剤を含む水ベース系も、ブロックコポリマーの合成のために使用され得る。
【0113】
両親媒性ブロックコポリマーの適用
親水性ポリマーブロック(A)と疎水性ブロック(B)を含む両親媒性ブロックコポリマーは、形成された両親媒性ブロックコポリマーが界面活性剤の存在下で水性媒体に分散し得るようなものである。
疎水性支持体をブロックコポリマーの水性分散物で処理すると、該支持体の親水性と湿潤性が増加する。
【0114】
本明細書において使用されるとき、用語“疎水性支持体”は、それが疎水性表面の全部又は一部を成す場合には、いかなる成形物をも含むことを意味する。疎水性表面は、多孔性であってもよいし又は非多孔性であってもよい。例えば、支持体はシート様材料、例えば発泡材料のシートのようなものであってもよい。シート様材料は、繊維ウェブ、例えば織った又は織っていない織布又はウェブであってもよい。支持体は、それ自体、疎水性ポリマー繊維であるか、又は繊維ウェブ中に形成された疎水性ポリマー繊維であってもよい。繊維ウェブは、望ましくは、不織ウェブ例えば、溶融吹き込み(meltblown)ウェブ及び不織ウェブ(spunbonded web)、カーデッドウェブ(carded web)又はエアーレイドウェブ(airlaid web)であるが、これらに限定されない。支持体は、シ−ト様材料の二層以上の積層体であってもよい。例えば、前記層は独立して、溶融吹き込みウェブ及び不織ウェブからなる群から選択されてよい。しかし、他のシート様材料例えばフィルム又は発泡体が、溶融吹き込みウェブ及び不織ウェブに追加して又はその替りに、使用されてもよい。更に、積層体の層は同じ疎水性ポリマー又は異なる疎水性ポリマーから製造されてもよい。
【0115】
疎水性支持体は、天然繊維並びに合成繊維を含んでいてよい疎水性プラスチック又は疎水性不織布を含む。本発明の望ましい態様によれば、支持体の繊維は、親水性処理により実質的に一様にコートされている。一例として、疎水性合成繊維例えばポリオレフィン繊維から製造された不織布は、本発明の方法により、両親媒性ブロックコポリマーを含む組成物で処理され、湿潤性のポリオレフィン不織布を提供する。織布を形成するポリオレフィン繊維は、ポリエチレン及び/又はポリプロピレン繊維、並びにポリエチレン樹脂及び/又はポリプロピレン樹脂を含む組成物又はブレンドから製造される繊維を含んでよく、様々な既知の方法により製造され得る。
【0116】
疎水性支持材料は、ポリエステル例えばポリ(エチレンテレフタレート)又はポリオレフィン例えばポリプロピレンから形成される不織布であってよい。
【0117】
用語“ポリオレフィン”は、本明細書においては、炭素原子及び水素原子のみを含む1種以上の不飽和モノマーの付加重合により製造されるポリマーを意味するために使用される。このようなポリオレフィンの例は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(2−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(2−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等々を含む。加えて、そのような用語は、2種以上のポリオレフィンのブレンド及び2種以上の異なる不飽和モノマーから製造されるランダムコポリマー及びブロックコポリマーを含むことを意味する。それらの商業的重要性のために、最も望ましいポリオレフィンは、ポリエチレン及びポリプロピレンである。ポリオレフィンは、技術的に知られ又は常用されている添加剤を含み得る。例えば、ポリオレフィンは、顔料、乳白剤、充填剤、艶消剤、抗酸化剤、帯電防止剤、安定剤、酸素掃去剤等々を含み得る。
【0118】
好ましい疎水性プラスチック材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル及びポリカーボネートが例示されるが、これらに限定されない。
【0119】
本明細書に記載されているブロックコポリマーコーティングは、ガラス繊維及びプラスチックを含む多くの種類の硬質表面にも適用され得るが、しかしそれらに限定されない。ガラス繊維表面は、樹脂、ポリマー、強化織布及び強化繊維を含む。ガラス繊維から作られる硬質表面は、バスタブ、ボート、モーターサイクル、車体、カヌー、飛行機、航空機
模型、ジェットスキー、彫刻並びに伝来の工業用塑型及び模型製作用品を含むが、しかしそれらに限定されない。
【0120】
ポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル(プレキシグラス)、ポリカーボネート、ポリスチレン、テフロン(登録商標)、メラミンポリマー及びそれらの混合物を含む硬質表面プラスチックには、いくつかの基本的種類がある。これらの種類のプラスチックは、全ての種類の複合材料を製造するために、ナノ粒子を含む他の材料と混合してもよいが、しかし、これに限定されない。炭素繊維及びグラファイト繊維は、プラスチック複合材料内の補強材として使用される高強度材料である。
【0121】
支持体の親水性/疎水性の性質を評価するための好適な尺度は、それぞれの表面における水との接触角である。用語疎水性は通常、水との接触角が90度を越える場合に使用される。
【0122】
本発明のブロックコポリマーの使用は、未変性の疎水性支持体の接触角と比較して、接触角の、少なくとも5度、少なくとも10度、そして特に少なくとも15度の減少をもたらす。
【0123】
驚くべきことに、疎水性支持体を本発明の両親媒性ブロックコポリマーの水性分散液により処理すると、接触角は10度、15度又は20度と同じか又はそれより多く減少する。
【0124】
水性分散液内の本発明の両親媒性ブロックコポリマーの濃度は、水性分散液の全質量に基づいて、典型的には約0.01質量%ないし約5.0質量%、好ましくはその濃度は約0.01質量%ないし約2.0質量%、例えば、0. 01質量%ないし約1.0質量%である。
【0125】
本発明で使用されるポリマーは、当業者に知られているいかなる種類の洗浄製剤中にも含ませてよい。ポリマーは、洗浄製剤中に質量%で0.01%ないし20%、又は好ましくは0.05%ないし5%そしてより好ましくは0.1%ないし2%の範囲の量で存在していてよい。洗浄製剤は、水、界面活性剤、溶媒、ビルダー、増粘剤、染料、香料、塩類、ヒドロトロープ、殺生物剤、殺菌剤なども含んでよい。洗浄製剤は、他の種類の汚れ放出ポリマー、着色剤、防腐剤、抗微生物剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、他の光処理剤、イオン化剤、消泡剤、酵素、漂白剤、酸化触媒、ゼオライト及び/又は、シクロデキストリン及びその誘導体を含むが、しかしそれらに限定されない臭抑制剤、並びにそれらの混合物も含んでいてよい。
【0126】
疎水性支持体は好ましくは、繊維、不織布、カーペット又は織布であり、或いは疎水性支持体は不織布又は疎水性プラスチックであり、その場合好ましくは、不織布はポリオレフィン又はポリエステルから形成され、そしてその場合好ましくは、疎水性プラスチックは硬質表面であり且つ疎水性プラスチックは、ポリアルキレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、メラミンポリマー、ポリメタクリル酸メチル(プレキシグラス)、テフロン(登録商標)及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0127】
上記のカーペット又は織布は、好ましくは合成繊維から形成され、特に合成繊維は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル又はポリアクリロニトリルから形成される。ポリオレフィンは好ましくはポリプロピレンであり、そしてポリエステルは好ましくはポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンアジペートである。
【0128】
ブロックコポリマーが、非イオン界面活性剤を含む水溶液に更に分散されている、本発明の両親媒性ブロックコポリマーを含む硬質表面洗浄剤が挙げられる。
【0129】
本発明は、疎水性表面を、本発明の両親媒性ブロックコポリマーを含む有効量の洗浄製剤と接触させることを含む、硬質表面を洗浄する方法も含む。
【0130】
本発明の別の実施態様は、本発明によるブロックコポリマーでコートされた繊維、不織布、カーペット又は織布を含む。
【0131】
本発明の別の実施態様は、本発明の両親媒性ブロックコポリマーで不織布をコートすることによる、不織布の可染性を改良する方法を含む。
【0132】
表面洗浄剤の製剤中で使用される界面活性剤は、典型的には水溶性又は水分散性である。界面活性剤は、技術的に周知である。
【0133】
本発明で使用される界面活性剤は、1種以上の界面活性剤から選択されてよく、該界面活性剤は、アニオン、カチオン、非イオン又は双性イオン界面活性剤であってよい。本発明において最も好ましいのは、ポリマーのカチオンが特定のアニオン界面活性剤と不混和性であり得るので、カチオン及び非イオン界面活性剤である。
【0134】
本発明に使用されてよい非イオン界面活性剤は、エトキシル化又はプロポキシル化されたアルコールを含むアルコキシル化されたアルコール、並びにエトキシル化又はプロポキシル化されたアルキルフェノールを含むが、しかしこれらに限定されない。他の群は、ソルビタン脂肪酸エステル及び不飽和アルコールの脂肪酸エステルを含む。
【0135】
他の種類の非イオン界面活性剤は、米国特許第4,565,647号明細書に記載されているアルキル多糖類を含み、これは約6ないし30個の炭素原子、好ましくは、約10ないし16個の炭素原子を含む疎水性基並びにポリグリコシドのような多糖類である親水性基を有する。
【0136】
他の種類の好適な界面活性剤は、本発明の硬質表面洗浄組成物中で使用するための特定のモノ長鎖アルキルカチオン界面活性剤を含む。この種類のカチオン界面活性剤は、一般式R10203040+ - [式中、R基群は長鎖又は短鎖の炭化水素鎖、典型的にはアルキル基、ヒドロキシアルキル基又はエトキシル化されたアルキル基を表し、そしてXは対イオン(例えば、R10が炭素原子数8ないし22の、好ましくは炭素原子数8ないし10又は炭素原子数12ないし14のアルキル基を表し、R20がメチル基を表し、そしてR30とR40が、それらは同じであっても異なっていてもよくて、メチル基又はヒドロキシエチル基を表す化合物)、及びカチオンエステル(例えば、コリンエステル)を表す。]により表される第四級アンモニウムを含む。Xは好ましくは、ハロゲン化物対イオン、例えばクロリド又はブロミドを表す。
【0137】
洗浄製剤は、すぐ使用できるスプレー、液体又はペーストとして、表面に直接適用されてよく、その後、ペーパータオル、スポンジ、布、モップ又は他の適する拭き用具を使用して拭かれる。他の方法として、組成物は先ず拭き用具に適用され、その後、表面に適用されてよい。組成物は、最終的に洗浄組成物にするために水で稀釈されてよい固体又は液体濃厚液である稀釈可能な形態で供給されてもよい。例えばそれは、稀釈可能な粉末状又は顆粒状製剤、或いは錠剤、袋入り(pouch)又は小袋入り(sachet)の形態であってもよい。
【0138】
組成物は、再利用可能又は使い捨てのどちらかの拭き用具又はパッドに添加しよく、その後、拭くことにより表面を処理するために使用される。組成物は、拭き用具又はパッド内に又は上に吸収される、即ち、拭き用具又はパッドは、水性洗浄組成物により含浸される。このような拭き用具は、天然又は合成繊維、例えばセルロース系材料、ポリエステル、ポリオレフィン、織布繊維又は不織布繊維、或いは他の材料又は当業者に知られているような拭き用布を製造するために適する材料の組み合わせから構成されてもよい。そのような拭き布は、典型的には、不織型材料から構成される。ポリオレフィンは、例えばポリプロピレン又はポリプロピレンコポリマー又はブレンドである。セルロース系は、セルロースベースを意味する。
【0139】
洗浄製剤中にポリマーを含む組成物は、典型的には3ないし12、好ましくは4ないし11のpHを示す。
【0140】
本発明は更に、表面を、本発明の洗浄製剤の有効量と接触させることを含む、硬質表面の洗浄方法に関するものである。
【0141】
このような方法の一つにおいて、本発明の洗浄製剤は汚れた硬質表面上に噴霧される。湿潤化された表面はその後、ペーパータオル又は他の適する適用用具を使用して清浄に拭かれる。
【0142】
代わりの方法では、本発明の洗浄製剤は、前処理段階として、清浄表面に適用され得、この結果、ポリマーを表面に付着せしめる。この処理において適用された親水性能は、汚れの減少及び急速な湿潤化のような特定の洗浄利点をもたらす。更に、本発明のブロックコポリマーは、水すすぎ洗いに安定である。従って、ブロックコポリマーの利点は、湿潤環境において維持される。
【0143】
本発明の組成物を用いる処理により利益が得られる支持体は織布、編物、プラスチック、カーペット、不織布及び、表面の湿潤性を改良することにより利益を受け得る他の支持体を含むが、しかしこれらに限定されない。
【0144】
本発明のブロックコポリマーは、様々なコーティング用途において非常に有用であるけれども、それらの有用性は、慣用のコーティングを超えている。これらは、可染性又は印刷適性を改良するために、繊維、編物、カーペット又は不織布の湿潤性を改良するような最終用途を含む。
【0145】
従って、本発明は、編物、カーペット又は織布の可染性又は印刷適性を改良する方法であって、編物、カーペット又は織布が上記ブロックコポリマーを用いて処理される方法に関するものである。好ましくは、編物、カーペット又は織布は、ブロックコポリマーと界面活性剤との水性製剤でコートされる。
【0146】
織布は合成疎水性繊維から形成されてよい。疎水性繊維の例は、ポリアミド、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリアルキレンテレフタレートのようなポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレート、及びポリアクリロニトリルを含む。
【0147】
カーペットは、合成疎水性繊維から形成されてよい。疎水性繊維の例は、ナイロン(登録商標)、ポリオレフィン、特にポリプロピレンを含む。
【実施例】
【0148】
実施例における全てのパーセントは全て質量基準であり、そして分子量値は平均分子量
である。
【0149】
実施例1
エチレン−コ−ブチレンとメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリドのブロックポリマーの合成
ポリ(エチレン−コ−ブチレン)モノオール(アルドリッチ社製、Mn 約3800、92g)をテトラヒドロフラン(THF)300mLに溶解し、そして分子篩上に24時間保持した。電磁撹拌棒と滴下漏斗を備えた3首フラスコを窒素で置換し、そしてTHF溶液を入れた。ピリジン(11mL)を添加した。滴下漏斗に2−ブロモメチルプロピオニルブロミド(7.4mL)と乾燥THF50mL を入れた。この混合物をフラスコ中に滴下した。混合物を室温で24時間撹拌した。混合物を濾過し、そしてメタノールで沈殿させた。生成物をメタノールですすぎ洗いし、そして真空中で乾燥した。このマクロ開始剤(macroinitiator)を臭化銅(I)1.75gと共にフラスコに入れた。フラスコを脱気し、そして窒素を4回再充填した。窒素を1時間吹き込んだTHF50mLを添加した。マクロ開始剤を溶解した後、窒素を1時間吹き込んだペンタメチルジエチレントリアミン(2.6mL)を添加し、その後、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(52mL、これも添加前に窒素を1時間吹き込んだ)を添加した。混合物に窒素を10分間吹き込み、その後、混合物を60℃に設定した油浴に浸し、窒素下で6時間撹拌した。フラスコを氷浴に入れ且つ混合物をTHF(150mL)で希釈することにより、反応を止めた。混合物を、水60mL中のエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(Na4 EDTA)2.5gの溶液で処理した。溶媒を蒸散除去し、そして水分を、イソプロパノールとの共沸蒸留により除いた。生成物をTHFに再溶解し、塩基性アルミナを通して流した。溶媒の蒸散後、ブロックコポリマーを得た。カチオンブロックのMn 1HNMR解析によると1700であった。
ブロックコポリマー(41g)をクロロホルム50mLに溶解し、そしてクロロホルム30mLを使用して、100mLシュレンク管に移した。混合物を氷/イソプロパノール浴中で冷却し、そして塩化メチル8.9gを管中に凝縮して入れた。混合物を室温にまで暖まるのに任せ、そして3日間放置し、その後、60℃で3時間加熱した。管を、エチレンジアミントラップを通して大気に開放した。溶媒を蒸散させ、そして酢酸エチルですすぎ洗いし、そして真空中で乾燥した。
【0150】
実施例2
エチレン−コ−ブチレンと塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムとのブロックポリマーの合成
ポリ(エチレン−コ−ブチレン)モノオール(アルドリッチ社製、Mn 約3800、83g)をテトラヒドロフラン(THF)300mLに溶解し、そして分子篩上に一夜保持した。電磁撹拌棒と滴下漏斗を備えた3首フラスコを窒素で置換した後、THF溶液を濾過して入れた。ピリジン(10mL)を添加した。滴下漏斗に2−ブロモメチルプロピオニルブロミド(6.7mL)と乾燥THF67mL を入れた。この混合物をフラスコ中に滴下した。混合物を室温で24時間撹拌した。混合物を濾過し、そしてメタノール400mLで沈殿させた。生成物をメタノールですすぎ洗いし、そして真空中で乾燥した。このマクロ開始剤44.75gを臭化銅(I)853mgと共にフラスコに入れた。フラスコを脱気し、そして窒素を4回再充填した。窒素を1時間吹き込んだTHF25.3mLを添加した。マクロ開始剤を溶解した後、窒素を1時間吹き込んだペンタメチルジエチレントリアミン(1.26mL)を添加し、その後、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(50.6mL,これも添加前に窒素を1時間吹き込んだ)を添加した。混合物に窒素を10間分吹き込み、その後、混合物を60℃に設定した油浴に浸し、この温度で窒素下で6時間撹拌した。フラスコを氷浴に入れ且つ混合物をTHF(50mL)で希釈することにより、反応を止めた。混合物を、水60mL中のNa4 EDTA2.5gの溶液で処理した。溶媒を蒸散除去し、そして水分を、イソプロパノールとの共沸蒸留により除いた。生成
物をTHFに再溶解し、塩基性アルミナを通して濾過して流し、その後、Na4 EDTA溶液で再処理した。溶媒の蒸散後、ブロックコポリマーを得た。カチオンブロックのMn 1HNMR解析によると3600であった。ブロックコポリマーをジメチルホルムアミド(DMF)127gに溶解し、そしてシュレンク管に移した。塩化メチル29.14gを管中に凝縮して入れ、20時間放置した。生成物を酢酸エチルで沈殿させ、真空中で乾燥した。
【0151】
実施例3
アクリル酸ラウリルと塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムとのブロックコポリマー
メタクリル酸ジメチルアミノエチル5.1mL、ジチオ安息香酸シアノプロピル52mg、トルエン1.0mL及びアゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)3.8gの混合物に30分間窒素を吹き込み、その後、70℃で51時間加熱した。生成物を、ヘキサンで沈澱させることにより精製し、そして真空中で乾燥した。生成物をトルエン1.0mLに溶解し、そしてアクリル酸ラウリル5.3mL及びAIBN3.8mgを添加した。混合物に1時間窒素を吹き込み、その後、70℃で48時間加熱した。生成物は25000のMn を有していた。生成物をメタノール30mLに溶解し、シュレンク管に移した。塩化メチル2.73gを溶液中に凝縮していれ、そして混合物を一夜放置した。生成物を酢酸エチルで沈殿させ、そして真空中で乾燥した。
【0152】
実施例4
エチレン−コ−ブチレンと塩化ジアリルジメチルアンモニウムとのブロックコポリマー
トルエン80mL 中のポリ(エチレン−コ−ブチレン)モノオール[サイエンティフィック ポリマー プロダクツ(Scientific Polymer Products)社製、Mn 約3800]55gの溶液に、メルカプト酢酸3.0mL及び濃硫酸2滴を添加した。混合物に30分間窒素を吹き込み、2時間還流した。生成物をメタノールで沈殿させ、真空中で乾燥した。このチオール22.5gの溶液を、n−ブタノール56mL中の塩化ジアリルジメチルアンモニウム45gの分散液及び2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩開始剤1.125gと混合した。混合物に3時間窒素を吹き込み、70℃で48時間加熱した。生成物をアセトンで沈殿させ、真空中で乾燥した。生成物をTHF1000mLで処理し、そして遠心分離した。不溶分を真空中で乾燥した。
【0153】
実施例5
スチレンと塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムとのブロックポリマー
メタクリル酸ジメチルアミノエチル5.1mL、ジチオ安息香酸シアノプロピル52mg、トルエン1.0mL及びAIBN3.8mgの混合物に、30分間窒素を吹き込み、その後、70℃で51時間加熱した。生成物を、ヘキサンで沈殿させることにより精製し、そして真空中で乾燥した。混合物をトルエン1.0mLに溶解し、そしてスチレン2.2mL及びAIBN3.8mgを添加した。混合物に1時間窒素を吹き込み、その後、70℃で48時間加熱した。生成物は14100のMn を有していた。生成物をメタノール25mLに溶解し、シュレンク管に移した。塩化メチル9.34gを溶液中に凝縮して入れ。そして混合物を一夜放置した。生成物を酢酸エチルで沈殿させ、真空中で乾燥した。
【0154】
実施例6
エチレン−コ−ブチレンと塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムとのブロックコポリマー
トルエン80mL中のポリ(エチレン−コ−ブチレン)モノオール(サイエンティフィック ポリマー プロダクツ社製、Mn 約3800)55gの溶液に、メルカプト酢酸3.0mL及び濃硫酸2滴を添加した。混合物に30分間窒素を吹き込み、そして2時間還
流した。生成物をメタノールで沈殿させ、そして真空中で乾燥した。このチオール22.5gの溶液を、n−ブタノール56mL中の塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム41gの分散液及び2,2’アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩開始剤1.125gを混合した。混合物に3時間窒素を吹き込み、70℃で48時間加熱した。生成物をアセトンで沈殿させ、真空中で乾燥した。生成物をTHF1000mLで処理し、そして遠心分離した。不溶分を真空中で乾燥した。
【0155】
適用結果
製剤
全てのブロックポリマーを0.125質量%で、非イオン界面活性剤であるトマドール(TOMADOL)91−8,1質量%及び非イオン界面活性剤であるニノール(NINOL)11−CM,1質量%と水溶液中で混合した。
【0156】
不織布の“濡れまでの時間”の決定
不織布の処理片を一片の吸い取り紙上に平らに置き、そして布上1cmに位置する使い捨てプラスチックピペットを使用して、脱イオン水の液滴を表面に添加した。このようにして、約5滴を布の別々の部分に添加し、そして液滴が布に吸収されるのに要する時間を記録した。
【0157】
ポリプロピレン不織布の表面処理
室温処理
変性に先立ち、ポリプロピレン不織布(40g/m2 )4cm×4cm片の質量を測定した。トマドール91−8の1%溶液(10mL)及びニノール11−CMの1%溶液(10mL)中の、実施例3からのブロックコポリマー及び実施例4からのブロックコポリマーの0.125%溶液を、ねじ付き蓋を持つ小型びんに入れた。不織布小片を溶液に入れ、そして容器を短時間振り、そして5分間放置した。その後小片をピンセットで取り出し、そして噴霧ノズル付き蛇口からの脱イオン水流の下で1分間すすぎ洗いした。その後、試験片を絞って余分の水を除き、風乾した。比較として、同様の小片を、2種の異なるカチオン界面活性剤で処理した。下記表に示すように、ブロックコポリマー処理した小片は水で急速に濡れるが、カチオン界面活性剤又は非イオン界面活性剤だけで処理した小片は完全に疎水性であった。
【表1】

【0158】
60℃での処理
変性に先立ち、ポリプロピレン不織布(40g/m2 )4cm×4cm片の質量を測定した。トマドール91−8の1%溶液(5mL)及びニノール11−CMの1%溶液(5mL)中の、実施例1で製造したポリマーの0.125%溶液を、ねじ付き蓋を持つ小型びんに入れた。小型びんを密封し、そして熱対流炉に入れて溶液を60℃まで予熱した。一旦、その温度に到達したら、不織布小片を溶液に入れ、小型びんを密封し、短時間振り、炉に30分間戻した。所望の処理時間後、小片をピンセットで取り出し、そして噴霧ノズル付き蛇口からの脱イオン水流の下で1分間すすぎ洗いした。次いで試験片を絞って余分の水を除き、風乾した。60℃で30分間処理した小片の濡れまでの時間を下に示す。下記表IIに示すように、ブロックコポリマー処理により、急速に濡れる不織布になったが、第四級界面活性剤処理によっては、永続的な表面変性をなし得なかった。
【表2】

【0159】
60℃での時間変更
ポリプロピレン不織布の小片を、上記実施例1のブロックコポリマーで処理したが、しかし、下記のように処理時間を15秒から60分まで様々に変更した。急速に濡れる表面(濡れまでの時間<15秒)が、15秒程度の短い全ての処理時間で得られた。
【表3】

【0160】
温度変更
ポリプロピレン不織布小片を上述実施例1のブロックポリマーで処理するが、しかし、処理温度を30℃から75℃まで変更した。各々の小片を下記の温度で5分間処理した。
速く濡れる表面は、60℃又は75℃の処理温度を使用して生じた。
【表4】

【0161】
固体プラスチック支持体の処理
トマドール91−8の1%溶液及びニノール11−CMの1%溶液中に、ブロックコポリマー0.125質量%を溶解した。
【0162】
浸漬処理
プラスチック支持体を皿洗い機中で洗浄するか又は石鹸と水を用いて手により洗い、脱イオン水ですすぎ、そして風乾した。洗浄した支持体をポリマー溶液中に1分間浸漬し、その後取り出し、そして直ちに、脱イオン水流により各側面を5秒間すすいだ。その後支持体を風乾した。接触角を、クラス(KRUSS)DSA−10滴形分析器を使用し、調査溶液として水を使用して測定した。下表に示すように、2種の異なるブロックコポリマー(実施例1及び実施例2)で処理された高密度ポリエチレン(HDPE)、プレキシグラス(PMMA)及びポリカーボネートの表面は、界面活性剤(トマドール91−8の1%溶液及びニノール11−CMの1%溶液)のみで処理された表面に対して、より低い接触角を示した。表中に記載の値は、各々の表面について最低限3回の測定値の平均である。
【表5】

【0163】
拭くことによる個体プラスチック処理
初めに溶液(2mL)を折り重ねたペーパータオルに添加し、その後、プラスチック支持体を30秒間ペーパータオルで拭いたこと以外は、上記と同じ手法を使用して、異なるポリマーによるプラスチック支持体の更なる処理を行なった。その後、支持体を、脱イオン水で30秒間すすいで過剰のポリマーを除き、その後、風乾した。処理表面及び未処理表面の接触角を以下に報告する。
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
両親媒性ブロックコポリマーを含む組成物を支持体に適用する段階を含む、疎水性支持体の湿潤性/親水性を改良する方法であって、
前記両親媒性ブロックコポリマーは、親水性(A)ブロックと疎水性(B)ブロックを含み、
前記親水性ブロック(A)は、次式(I)又は次式(II):
【化1】

[式中、R1 は水素原子又はメチル基を表し、
2 は分枝した又は分枝していない炭素原子数1ないし4のアルキル基を表し、
3 及び/又はR4 は独立して、分枝した又は分枝していない炭素原子数1ないし22のアルキル基、炭素原子数1ないし4のアルキルヒドロキシ基又はベンジル基を表すか、又は、
3 とR4 は結合して、窒素原子と共に5又は6員環を形成してもよく、前記環は1個以上のヘテロ原子を含んでおり、
- は酸の共役塩基を表し、
Xは酸素原子又は−NR5 基(式中、R5 は、上記R1 において定義されたものと同じ意味を表す。)を表し、
Aは1ないし4個の炭素原子からなるアルキレン基を表し、
6 とR7 は分枝した又は分枝していない炭素原子数1ないし22のアルキル基、ベンジル基又は炭素原子数1ないし4のアルキルヒドロキシ基を表し、
nとmは2以上である。]により定義されたカチオンモノマーユニット少なくとも1個を含み、そして、
前記疎水性ポリマーブロック(B)は、エチレン性不飽和疎水性モノマーから形成される方法。
【請求項2】
前記疎水性ブロック(B)が、疎水性オレフィンモノマーから又は疎水性エチレン性不飽和ビニルモノマーから形成される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記疎水性ブロック(B)が、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−オクタデセン、ビニルシクロヘキセン、シクロペンタジエン、β−ピネン、スチレン、α−メチルスチレン、p−
クロロスチレン、p−メチルスチレン、次式(V):
【化2】

[式中、R8 は水素原子又はメチル基を表し、
9 は分枝した又は分枝していない炭素原子数1 ないし22のアルキル基、アリール基又はベンジル基を表し、
Xは酸素原子又は−NR5 基(式中、R5 は請求項1において定義されたものと同じ意味を表す。)を表す。]により定義されるモノマー、及びそれらの混合物からなるモノマー群から選択された少なくとも1種のモノマーから形成される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記式(I)又は前記式(II)のモノマーユニットが、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル・塩化メチル第4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル・硫酸メチル第4級塩、アクリル酸ジメチルアミノエチル・塩化ベンジル第4級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル・硫酸メチル第4級塩、メタクリル酸ジメチルアミノエチル・塩化ベンジル第4級塩、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル・塩化メチル第4級塩、メタクリル酸ジエチルアミノエチル・塩化メチル第4級塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、アクリルアミドプロピルジメチルアミン、塩化アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド・硫酸メチル第4級塩、ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン、塩化ジアリルジメチルアンモニウム、臭化ジアリルジメチルアンモニウム、硫酸ジアリルジメチルアンモニウム、リン酸ジアリルジメチルアンモニウム、塩化ジアリルジ(β−ヒドロキシエチル)アンモニウム及び塩化ジアリルメチルベンジルアンモニウムからなる群から選択されたモノマーから形成される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記R9 が炭素原子数6ないし22のアルキル基を表す、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記R9 が2,4,4−トリメチルペンチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ラウリル基、ステアリル基、セチル基、ベヘニル基又はそれらの混合を表す、請求項3記載の方法。
【請求項7】
前記両親媒性ブロックコポリマーが水溶液に分散され得る、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記両親媒性ブロックコポリマーが直鎖−、グラフト−、櫛−、架橋−又は星−構造である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記水溶液が非イオン又はイオン界面活性剤を更に含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記疎水性支持体が繊維、不織布、カーペット又は織布である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記疎水性支持体が不織布又は疎水性プラスチックである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記不織布がポリオレフィン又はポリエステルから形成される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記疎水性プラスチックが硬質表面であり、且つ該疎水性プラスチックが、ポリアルキレンテレフタレート、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、メラミンポリマー、ポリメタクリル酸メチル(プレキシグラス)、テフロン(登録商標)及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記カーペット又は織布が合成繊維から形成される、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記合成繊維がポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル又はポリアクリロニトリルから形成される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記ポリオレフィンがポリプロピレンである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記ポリエステルがポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンアジペートである、請求項15記載の方法。
【請求項18】
請求項1記載の両親媒性ブロックコポリマーを含む硬質表面洗浄剤であって、前記ブロックコポリマーが、非イオン性界面活性剤を更に含む水溶液に分散されている、硬質表面洗浄剤。
【請求項19】
疎水性表面を、請求項1記載の両親媒性ブロックコポリマーを含む有効量の洗浄製剤と接触させることを含む、硬質表面を洗浄する方法。
【請求項20】
請求項1記載のブロックコポリマーでコートされた繊維、不織布、カーペット又は織布。
【請求項21】
請求項1記載の両親媒性ブロックコポリマーで不織布をコートすることによる、不織布の可染性を改良する方法。
【請求項22】
請求項1記載の両親媒性ブロックコポリマーを製造する方法であって、次式(III)又は次式(IV):
【化3】

で表されるカチオンモノマーを、官能基又は連鎖移動基により末端閉鎖されている疎水性(B)ブロックポリマーの存在下で重合させる段階を含む方法。

【公表番号】特表2009−545642(P2009−545642A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522221(P2009−522221)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057660
【国際公開番号】WO2008/015138
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】