説明

表面の被覆プロセス

【課題】ポリマー及び有機高分子、電着され得て特定の金属の中にある固体、最終的に沈殿又は重力により堆積され得る固体を表面に確実に位置決めし、その材料を表面に付着させる共通のプロセスを提案すること
【解決手段】本発明は、表面上に材料を堆積又は付着することに関する。本発明は、第1材料及び第2材料による表面の被覆プロセスに関し、次の諸工程を含む:
− 前記表面上に前記第1材料をする工程、
− 前記表面上に配置された前記第1材料の中に前記第2材料の前駆体分子を挿入する工程、
− 被覆された前記表面上で、且つ前記表面上に配置された前記第1材料内部に前記第2材料が形成されるように、前記第1材料の中に挿入された前記第2材料の前駆体分子を前記第2材料へ転化する工程。
本発明のプロセスの目的は、あらゆるタイプの表面上にあらゆるタイプの材料を堆積することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面上に材料を堆積又は付着することに関する。
【0002】
本発明は、特に表面の被覆プロセスに関し、とりわけ表面上に材料を極めて密着性よく堆積するプロセスに関する。
【0003】
本発明のプロセスは、あらゆるタイプの表面上にあらゆるタイプの材料の密着性堆積物を作製することを目的とする。
【背景技術】
【0004】
今日まで、表面の被覆全般に関して、そして特に導電性又は半導体性の表面上に材料を付着することに関して多数の技術が説明されてきた。本発明の種々の長所を実証するために、導電性又は半導体性の表面上へのポリマーの密着性堆積、導電性又は半導体性の表面上への金属の密着性堆積、及び導電性又は半導体性の表面上へのイオン性絶縁材料の密着性堆積が、この順序で本明細書の下記で考察されている。
【0005】
対象分子、例えば特定の特性を有する分子、が、その特性の全て、又は幾つかを表面上に保持するように、或る表面上に付着される操作は、機能化(functionalize)として知られている。表面の機能化は、付着される対象分子、及び表面上の前記分子を付着する好適なプロセスを利用できることを前提とする。対象分子は、有機又は有機金属分子であるのが普通なので、広く使用されるプロセスは、適合する、即ち容易に−そしてもし可能ならば、速やかに−互いに反応できる官能基を各々、表面上で及び対象分子上で見つけようとすることにより、有機化学反応の極めて大きいライブラリー(library)を訪ねることにある。
【0006】
例えば、ヒドロキシル基−OH又はアミン基−NHを含む表面を利用するとき、その表面は、対象分子に、例えばイソシアネート、シロキサン、酸塩化物、等の基を付与することによって機能化されてもよい。対象分子が、表面の官能基に直接適合するいずれの官能基も含まないとき、この表面は、二官能性中間体有機分子で事前に機能化されてもよく、このうちの1つの官能基が、表面の官能基に適合し、もう1つの官能基は付着するのが望まれる分子の官能基に適合する。中間体分子は、文献[1]に記載されているように、時々、密着性プライマーと呼ばれることがある。
【0007】
この観点から、表面の機能化は単に有機化学反応の特別な事例であり、この場合、2種類の試薬のうちの1種類は、溶液の中の分子よりむしろ表面であることが判る。明らかに、溶液と表面との間の不均一反応が関与する速度論は、均一相での類似の反応とは実質的に異なるが、反応メカニズムは原理的に同一である。
【0008】
或る事例では、より速い反応を得るために、より大きい反応性を持つ官能基を表面上に生成するように、表面を事前に処理して、その表面が活性化される。とりわけ、これらの基は、一時的に形成される不安定な官能基、例えば化学的か又は照射かのどちらかにより、表面の激しい酸化により形成されるラジカルでもよい。これらの技術では、表面又は対象分子のどちらかは、−一旦、修飾されると−2種類の種の間の付着は、結局、有機化学反応のライブラリーの他の場所で知られる反応になるように修飾される。
【0009】
残念ながら、これらの方法は、化学蒸着(CVD)、プラズマアシスト化学蒸着(PACVD)、照射、等のようなプラズマ法の場合の真空設備の使用のような比較的複雑で高価な事前処理を必要とし、しかも、これらは必ずしも前駆体の化学的完全性を保持するとは限らない。
【0010】
更に、これらの方法は、処理される表面が絶縁材の電子構造と類似の構造を有する場合に限り、優れた操作性があることが観察されている:物理学者の言葉では、表面は局在化状態を有することが必要であると言う場合もある。化学学者の言葉では、表面は官能基を含むことが必要であると言う場合もある。例えば、金属の上では、反応性堆積処理(CVD、PACVD、プラズマ、等)によって、酸化物層へ、又はともかく実質的な絶縁性偏析層へ堆積物を比較的容易に付着できる。
【0011】
しかしながら、表面が導電体又は非ドープ半導体であるとき、前記のような局在化状態は存在しない:この表面の電子状態は非局在化状態である。言い換えれば、有機化学的意味での“官能基”の概念は意味を持たず、従って表面上に有機対象分子を付着するために有機化学反応のライブラリーを使用することは不可能である。
【0012】
2つの注目すべき例外が存在する:この2つは、とりわけ、文献[2]に記載されているチオールの、及び例えば、文献[3]に記載されている金属表面上での、そしてとりわけ金の表面上でのイソニトリルの自発的化学反応である。
【0013】
しかしながら、これらの反応は必ずしも全ての状況で利用できるとは限らない。具体的には、例えばチオールによって硫黄/金属の弱い結合が生成する。この結合は、例えば、金属が、引き続いて陰極分極又は陽極分極を受けるとき、切断され、各々、脱着するチオラート及びスルホネートを生成する。
【0014】
導電性又は半導体性の表面上に有機分子を付着するのに現在最も広く使用されている手段は、難題を既知の問題と同等に取り扱うことにより難題を避けることである。これは、金属の上で全部又は部分的な水和酸化物層の促進を確実に行なうことにより、導電性又は半導体性の表面上で前出のヒドロキシル基−OHを形成する問題である。それにも拘らず、固体酸化物を有しないグラファイトの上で、陽極処理によってヒドロキシル基が生成するが、これは利用されてもよい。表面上にヒドロキシル基を形成することが可能であるとき、この表面は、局在化した表面電子状態、即ち官能基を有する表面と同一視され、状況は既知の問題と同一視される。特に、この時は、表面を絶縁するために前掲の機能化プロセスを全て適用できる。
【0015】
しかしながら、金の上に、又は多くの貴金属の上に酸化物層を形成することは不可能であると言う事実とは別に、対象有機分子と金属表面との間に作られる界面の堅実性は酸化物によって決まる。今、或る酸化物、特に酸化物が化学量論的ではないとき、被覆性がない、又は均一に密着しない。更に、この経路は、対象分子を付着させるためには、少なくとも2工程又は3工程を必要とする、と言うのは、この分子それ自体を付着する前に、酸化物層が先ず構成されなければならない(2工程)、又はこれとは別に、対象分子を付着させる密着性プライマーを付着する前に酸化物層が先ず構成されなければならない(3工程)からである。
【0016】
導電性及び半導体性の表面上に有機フラグメントを電気化学的に付着することも可能である。従って、例えば文献[4]に記載されているプロセスによると、導電性表面上に有機官能基を付着させることができる。このことは、表面上に付着されるのが望ましい官能基で機能化されたアリールジアゾニウム塩を含む溶液の中で、電位(陰極)のもとに導電性表面が配置されるプロセスによる。現在、アリールジアゾニウム塩は、例えば塩化水素媒体の中で亜硝酸ナトリウムを使うジアゾ化反応により芳香族アミンから作製される。この工程は極めて低いpHを必要とし、従って、必ずしも全ての官能基に適合するとは限らない。例えば、コハク酸イミドを含む芳香族アミンをジアゾ化することは不可能であることが知られていて、これは、この基が水酸化物基若しくはアミン基を含む対象分子、又はアミン基を含む対象分子を付着するのに有用である。更に、アリールジアゾニウム塩から調製される溶液は、とりわけ、これらの塩が熱的−及び光学的に開裂可能であると言う事実によって、短期間では不安定であることが一般に観察されている:従って、これによって、これらの塩の工業的適用範囲が制約される。
【0017】
しかしながら、官能基が、対象分子の官能基にもジアゾ化反応にもに適合しないとき、ジアゾニウム塩のグラフト化プロセスを使用すると、この場合、電解グラフト化層が二官能密着性プライマーで機能化される中間工程の介入を必要とし、前記二官能密着性プライマーの基の少なくとも1個は対象分子の官能基に適合する。
【0018】
加えて、実際には、このプロセスでは厚手の層が生成できず、表面の極めて近傍で比較的小数のグラフト化官能基が生成する。グラフト化された官能基は、有機分子による後続の機能化反応には全体的に緩やかな影響を受け易い。この説明からの最も直接的な工業上の結果は、本発明のプロセスによる有機層で覆われた導電性表面上でのポスト機能化反応は遅いことである。
【0019】
例えば、文献[5]に記載されているポリマーの電解グラフト化によって、ポリマー鎖、とりわけビニル鎖、の成長は、開始剤として作用する分極型金属表面によって開始できる。先行プロセスとは対照的に、ポリマーの電解グラフト化によって、調節可能な厚さの膜を作製できる。現場で得られた経験によると、2nm〜1μmの範囲がこのタイプのプロセスに利用できることが判っている。
【0020】
ポリマーの電解グラフト化の特別な特徴の1つは、電解グラフト化によってポリマーと表面との間に炭素/金属の真の共有結合が形成されことである。付図3に示している反応メカニズムの直接の帰結であるこの結果は、導電性及び半導体性の表面上への有機フラグメントの強固な付着には極めて有利な経路である。
【0021】
しかしながら、このプロセスは、表面上でのポリマーのその場の合成に基づいているので、適切な前駆体モノマーの性質、及び従って本プロセスによって導電性又は半導体性の表面上に堆積され得るポリマーのタイプの性質に関して大きい制約が生じる:
【0022】
− 求核攻撃又は求電子攻撃により開裂可能なビニルモノマー及び環式分子、例えばラクトン、だけがイオン的化学成長によって重合できる最適の分子であると言う事実によって、これらのメカニズムに適合すると思われる。
【0023】
− 前記モノマーのなかで、電子求引基又は電子供与基を含むモノマーだけが、成長が有効とるなように前駆体を充分に活性化することができる。
【0024】
− 成長は、表面の近くでは比較的遅くなるので、電解グラフト化は比較的短いポリマー鎖だけを生成することが一般に観察され、これによって、適切ではあるけれども、高分子量を持つ構造のポリマーを付着するこのプロセスは使用できない。
【0025】
従って、これらの制約事項の結果として、残念ながら、電解グラフト化は、表面上にあらゆるタイプのポリマー材料を付着するための系統的解決策を提供できない。
【0026】
しかしながら、電解グラフト化は、有機物/導電体界面の問題を解決する有用な手段を構成するので、例えばこの電解グラフト化によって、金属の上に電解グラフト化鎖の強い密着性、及び或る導電性ポリマー、例えばポリピロール、の耐食性を同時に利用するように、電解グラフト化膜/導電性ポリマー混合膜用の成長マトリックスとして前記手段を使用するようにしていて、参考文献の添付のリストの文献[6]に記載されているように、前記ポリマーそれ自体は、合成された基板には殆ど密着性を示さない。これらの著者により形成された被膜は複合被膜であり、この被膜では、導電性ポリマーは、その耐食保護性を確実にするために金属/有機物界面で埋め込まれていて、言ってみれば、X線光電子分光法(XPS)の中で表面分析によっても明らかにされるように、電解グラフト化ポリマーによって“内部封入”される。
【0027】
プロセスの別の例は、ポリマーの電着、又は電気泳動であり、これは、参考文献の添付リストの文献[7]に記載されているように、導電性又は半導体性の表面上に、溶液の中に存在している荷電ポリマー(高分子電解質)を本質的に静電的相互作用によって引き寄せる電気化学プロセスである。仮令、ポリマー/金属結合が存在しないことによって、操作条件に敏感な界面になるとしても、本プロセスによって導電性又は半導体性の表面上に比較的密着性のある被覆物を得ることができる。しかしながら、それは、荷電ポリマーに限られていて、電気制御型反応によって進行するが、その厚さは、局所的電流に密接に依存する。従って、厚さが薄い比較的実質的に非均一な堆積物が一般に観察され、平準化効果は、一般に数ミクロン以上の厚い層に対してのみ観察される。
【0028】
ポリマーの堆積を振り返ることに関連して、導電性及び半導体性の表面上への金属の堆積について主として2つの重要な経路が目立つ:
【0029】
− 電気化学的経路、又は電着(“電気めっき”又は“電気化学的析出”(ECD))であり、それによって作用電極として使用される対象表面上へ堆積されるのが望ましい金属の塩を含む溶液の還元が図式通り行なわれる。選ばれる溶媒及び選ばれる支持体電解質に必要な還元電位が適合するならば、この溶液の電解分解によって表面上に対象金属の堆積が可能である。しかしながら、優れた品質の均一な堆積物を得るために、界面活性剤、光沢剤等のような種々の添加剤が必要であることが一般に観察される。加えて、これらの添加剤を使用しても、界面で合着を起こすために高温アニーリング作業を行なわないならば、このプロセスによって一貫性のない、従って弱い界面が構成される。更に、とりわけ電着反応は、電気制御型反応であり、従って抵抗降下位相に極めて敏感なので、とりわけ半導体表面が精巧に加工されているとき、及び精巧な加工とマッチする堆積物が必要なときは、半導体表面上への金属の電着は相変わらず可能である。この問題は、例えば添付の参考文献リストの文献[8]に記載されている相互接続銅配線を製造する場合のマイクロエレクトロニクスで使用されるダマシン(Damascene)プロセスで発生した:銅の帯状体(lane)は益々狭くなってきていて、現在は約100ナノメートルのエッチングで堆積されていて、半導体材料、例えば数百ミクロオーム・センチメートルの抵抗率を有する窒化チタン又は窒化タンタル、から成るバリヤー層で被覆される。このような適度の抵抗率にも拘らず、堆積の均一性の問題は、電着による銅堆積物の均質性を改善するために、CVD又はPVD(物理蒸着)により極めて微細な銅の下地層(シード層)を導入することを犠牲にしてのみ解決できる。
【0030】
− 吹付けプロセス、例えば、CVD、PVD並びにPACVD及びALCVD(原子層CVD)のような関連方法。前述のように、これらの方法は、ダマシンプロセスでの電着による銅の堆積の場合のシード層を作製するために使用される。しかしながら、CVD又はPVDによってシード層の銅と半導体表面と間によって構成されて、バリヤー層として知られる界面は一貫性がない。これらのバリヤー材料に対する銅の親和性が極めて低いので、とりわけ、極めて薄い厚さ(<50nm)では、銅/バリヤー界面で密着性の問題が発生する。これらの密着性問題は、アニーリング時の機械的束縛、界面破損の、及び従ってプロセスにおける収量の低下の発生源である。これらの問題は、現在でも尚、ダマシンプロセスを、特に0.1μm以下の極めて微細なエッチングで成功させるための問題、及び重要な挑戦事項を構成していて、シード層と半導体バリヤー材料との界面を強化する補助手段を必要とする。
【0031】
絶縁性固体の堆積に関しては、これらの固体は、前述のようなポリマーではない材料である。具体的に言うと、この場合に、イオン性固体は、例えばハロゲン化銀、ヒドロキシアパタイト、炭酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属、酒石酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属、クエン酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属、シュウ酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属、等のような不溶性塩が考えられる。
【0032】
本来、これらの材料は、導電性及び半導体性の材料の電子構造とは大きく違っていて、余りにも違うので、イオン性絶縁体/導電体界面、又はイオン性絶縁体/半導体界面で結合を促進すると考えることは難しい。これらの沈殿塩と導電性又は半導体性の表面との界面は、こうして一貫性のないままであり殆ど管理されていない。
【0033】
例えば、医学インプラントの、そして特に股関節の人工器官の、又は歯科インプラントのチタン表面上にカルシウムヒドロキシアパタイトの密着性があり、再生可能な被膜堆積物を作ること、他方、バリヤー層を作ること、並びに金属の腐食、及び金属イオン−炎症の発生源である−の拡散を防ぐこと、そしてもう一方で、人工器官の表面上に、骨細胞の付着と成長を促進するのに、そして周辺組織によるインプラント物品の再定着化を促進するのに充分にバイオミメティック(biomimetic)である領域を提供することは有利であることが知られている。金属の表面に固体が高品質で付着する必要性は、例えば股関節の人工器官の場合のように、器官それ自体が機械的応力を受ける時の使用条件のもとでは認識されている。
【0034】
今日、使用条件のもとで股関節の人工器官のセラミック部品が崩れて、局所的炎症の発生源である微細部品及び超微細部品が局所的に離れると、取り換えるための外科手術が必要となることがあることが頻繁に見受けられる。
【0035】
以上のような状況の中で、現在、次のことが実施されている:
− 金属インプラント、例えば股関節の人工器官尾部、の上へのプラズマ吹付けによるリン酸カルシウムの堆積;
【0036】
− 間質液の特性を模擬している流体(模擬体液)の中に浸漬することにより炭酸塩含有アパタイト層の形成。
【0037】
これらの方法は、本質的に、従来の表面処理に適応され、随意に前処理されている表面上に固体を沈殿することが特徴である。前述の電子構造体の違いによって、これらの固体と導電性又は半導体性の表面との間の界面の強化は問題を抱えたままであり、前記の欠点は解決されていない。
【0038】
参考文献
[1]イーピー・プルードマン(E.P.Plueddmann),"接着の基礎(Fundamentals of Adhesion)",エルエッチ・リー(L,H.Lee)(編集),プレナム・プレス(Plenum Press),ニューヨーク(New York),1990年,p.279
[2]ゼッド・メカーリフ(Z.Mekhalif),ジェイ・リガ(J.Riga),ジェイ-ジェイ・ピロークス(J.-J Pireaux)及びジェイ・デルハール(J.Delhalle),ラングミュア(Langmuir),1997年,第13巻,p.2285
[3]ヴィ・ヒュック(V.Huc),ジェイピー・ブールゴイン(J.P.Bourgoin),シー・ビューロ(C.Bureau),エフ・ヴァリン(F.Valin),ジー・ザルクゼール(G,Zalczer)及びエス・パラシン(S.Palacin)," ゴールド上の、フェニル−ジイソシアニド及びルテニウムフタロシアニンから自己組織化単分子膜及び多分子膜(Self-assembled mono-and multi-layers on gold from phenyl-diisocyanides and ruthenium phthalocyanines)",ジャーナル・オブ・フィジカルケミストリー B(Jouunal of Physical Chemistry B).1999年 第103巻,p.10489
[4]国際公開第9844172号パンフレット
[5]欧州特許出願公開第665275A号明細書
[6]シー・ジェローム(C.Jerome) 等,ケミカル・マテリアルズ(Chem.Mater).2001年.第13巻.p.1656
[7]米国特許第4975475号明細書
[8]米国特許第6171661号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
従って、先行技術の前記の多くの問題及び欠点を解消し、表面全般を被覆する新規技術に対する正真正銘のニーズが存在する。
【0040】
具体的には、本発明の目的は、特に、前述のニーズを全て満足させ、前記の規準及び要求事項を満足させ、先行技術のプロセスの欠点、制約事項、欠陥及び短所を有せず、そして特に表面の性状、及び前記表面を被覆することが意図される被膜の性質と関連する先行技術のプロセスの問題を解決するプロセスを提供することである。
【0041】
前掲の材料、即ちポリマー及び有機高分子、電着され得て特定の金属の中にある固体、最終的に沈殿又は重力により堆積され得る固体は、極めて異なる構造及び挙動を有する。本発明の1つの目的は、前記材料を表面に確実に位置決めし、その材料を表面に付着させる共通のプロセスを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明のプロセスは、第1材料及び第2材料による表面の被覆プロセスであり、次の諸工程を含む:
− 前記表面上に前記第1材料を配置する工程、
− 前記表面上に前記第1材料を配置することにある工程と同時に又はその後で、前記第1材料の中に前記第2材料の前駆体を挿入する工程、
− 被覆された前記表面上で、且つ前記表面上に配置された前記第1材料の内部に前記第2材料が形成されるように、前記第1材料の中に挿入された前記第2材料の前駆体を前記第2材料へ転化する工程。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明のプロセスは、あらゆるタイプの表面に、例えば先行技術の項で前記した表面のような表面に適用できる。
【0044】
本発明により、この表面は、一般に、例えば、表面を保護すること、表面が使用される環境を保護すること、表面を機能化、等をすることが意図される用途で、関連する基板が使用され得るように被膜が堆積されることが意図される基板の表面である。その表面は、絶縁性でも導電性でも半導体性の表面でもよい。その表面は、例えば無機物表面、例えば金属表面又はセラミック表面;有機表面、例えばポリマー表面でもよい。これらの表面は、また、本明細書では“被覆される表面”としても知られる。多数の用途例を下記に示しているが、その他の用途も当業者には明らかになるであろう。
【0045】
本発明のプロセスは、とりわけ、本発明の意味の範囲内で第1材料又は第2材料とすることがある機能を、“対象材料”と本明細書の下記で呼ぶ材料の強力な密着性堆積物を表面上に作製できるのに対して、先行技術のプロセスを使うと前記対象材料は前記表面に密着しなかいか又は殆ど密着しない。更に詳細には、本発明のプロセスは、この堆積物を、補充材料としても知られる別の材料の堆積物と組み合わせることにより、表面上に対象材料の密着性堆積物を作製できる。本発明の目的に対して、対象材料は第1材料であり、その時は、補充材料は第2材料であり、またその逆でもよい。
【0046】
具体的には、表面上への、とりわけ導電性又は半導体性の表面上への強力な密着性で堆積可能である材料は、表面上の堆積の順序によって決まるが、2つのカテゴリーに分けることが可能である。
【0047】
本発明の目的に対する第1材料のカテゴリーは、本発明を使用することによって、本明細書の下記で、“層状化可能な材料”又は“保護材料”と呼ばれる。この材料は、本発明を実施できる当業者には知られているいずれのポリマーでも、いずれの有機高分子でもよい。この材料は、表面上に被覆される前記材料の、好ましくは膜の形の、堆積物を得るいずれのプロセスによっても堆積され得る有機材料の事例が好ましい。本発明により、第1材料は、遠心分離(“スピン−コーティング”又は“スピン−オン”)、吹付け、浸漬(“ディップ−コーティング”)、電解重合、電解グラフト化、等から選ばれる技術によって表面上に有利に配置され得る材料である。例えば、ピロール、アニリン、チオフェン、エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、エチレンジアミン、フェノール、等、ポリマー及びそれの誘導体についても触れておいてもよい。これらのポリマーは、例えば電解重合には好適である。言及してもよい例には、求核又は求電子攻撃によって開裂可能である活性化された環式ビニルモノマーから得られるポリマーが挙げられる。これらのポリマーは、例えば電解グラフト化には好適である。更なる例を下記で説明する。
【0048】
本発明の目的に対する第2材料のカテゴリーは、本発明により、第1材料の付着を第2材料が強化するとき本明細書の下記で“強化材料”とも呼ばれる。この材料は、無機材料であるのが有利であり、この材料は表面上で凝集状なることがある、即ち、表面上でこの材料が堆積した状態となる:沈殿、即ち自然重力又は人工的重力による堆積;又は結晶化、例えば結晶成長;又は無定形での堆積物;又は無定形又は結晶形の電着物;又は凝集体又は凝集の形での堆積物のいずれかである。好ましくは、第2材料は電着され得る材料である。
【0049】
本発明により、“強化”材料は、被覆されることが意図される表面を構成する材料と同じでもよく、異なってもよい。
【0050】
本発明の説明を読むと明らかなように、“強化”と言う用語は、本発明の中の第2材料の役割を予期したものではない:具体的には、第2材料に該当する“強化”材料は、表面への第1材料の密着性を強化することもでき、又はそれ自体強化されることもでき、又はこれとは別に、本発明の目的に対して第1材料が保護を機能する場合には、第1材料を介して表面との密着性を強化することもできる。
【0051】
第2材料のカテゴリーで、本発明で使用してよい材料のなかには次の材料を特別に挙げてもよい:
【0052】
− 電着可能な材料:これらの材料は電気化学的に析出可能な無機材料又は有機材料であり、導電性又は半導体性の表面上でこれらの析出物は、電気制御反応、即ち析出する材料の量が、電着セルを通る電荷(=電流の積分値)にリンクし、通常は比例する電気化学反応から得られるのが好ましい。具体的には、電気制御型反応によって、第2材料の前駆体からの第2材料の析出の制御及び/又は形成を制御が可能である。従って、第2材料の前駆体はこの材料のイオンであるのが有利である。この反応は、とりわけ、この金属の前駆体イオンの溶液から金属を析出する反応でもよく、例えば銅(II)イオンを含む溶液からの銅の析出、及び同様に、次の金属の各イオンからの析出物、即ち亜鉛、金、錫、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、リチウム、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、イットリウム、ニオビウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ランタニド及びアクチニド、これの各イオン;前駆体モノマー、例えばエチレンジアミン又はフェノール、の電解重合による絶縁性ポリマーの析出物;前駆体モノマー、例えばピロール、アニリン、チオフェン、メチルチオフェン、エチレンジオキシチオフェン(EDOT)及びその誘導体の電解重合による導電性ポリマーの析出物;前記を含む溶液から電着による高分子電解質の析出物を析出する反応でもよい;並びに
【0053】
− 電着できない材料:これらの材料は、沈殿、結晶化、架橋、凝集、等により表面上に堆積可能である材料である。沈殿物は、自然重力又は人工的重力の影響のもとで、凝集体、小球体又は塊状物の形で作製可能である。これらの反応は、とりわけ、イオン性塩、例えばヒドロキシアパタイト、リン酸水素カルシウム及び/又はマグネシウム、ハロゲン化銀、等、そしてより一般には全ての不溶性塩、とりわけ水に不溶性塩の沈殿反応又は結晶化反応;二機能化合物、例えばエピクロロヒドリン、無水グルタール酸、グルタールアルデヒド又はビス−エポキシ化合物、によるアミノオリゴマー又はポリマーの架橋反応;二機能化合物、例えば無水グルタール酸又はジカルボン酸、例えばアゼライン酸、によるヒドロキシル化オリゴマー又はポリマーの架橋反応;ポリビニル架橋剤、例えばジビニルベンゼン又はペンタエリトリチルテトラメチルアクリレート、によるビニルポリマーの架橋反応でもよい。更なる例を下記に示す。
【0054】
本発明の中の“第2材料の前駆体”と言う表現には、明らかに、第2材料の単一の前駆体、又は本明細書に記載の第2材料の前駆体から選ばれる少なくとも2種類の前駆体の混合物が挙げられる。従って、例えば、第2材料の前駆体は、前記前駆体のような前駆体の、例えば前駆体塩の混合物の、溶液又は浴によって第1材料の中に挿入されてもよい。
【0055】
少なくとも2種類の前駆体が、本発明の実施の際に使用されるとき、種々の前駆体を、同時に、又は互いに独立して次々と、例えば好適な沈殿、電着、等の条件を適用することにより転化するように、第1材料の内部の第2材料の中に前駆体を転化することが行なわれてもよい。本発明のこれらの特定の実施態様は、例えば触媒の製造のために使用されてもよい。
【0056】
本発明により、表面上に堆積される対象材料は、前記の2つのカテゴリーのどちらに属してもよい。言い換えれば、前述のように、本発明の目的に対して、対象材料は第1材料でも第2材料でもよい。
【0057】
例えば、第1材料が対象材料であるならば、そしてそれが層状化可能な材料であるならば、表面上へのその材料の密着性堆積は第2材料を堆積することにより行なわれるか、又は改善される。一旦、このプロセスが完結すると、対象材料、即ちこの場合の第1材料、は表面上を第2材料で被覆されてしまったと言ってもよい。
【0058】
例えば、また、第2材料が対象材料であるならば、そして表面上へのその材料の密着性堆積は、前記層状化可能な材料から選ばれる第1材料によって行なわれるか、又は改善されるならば、一旦、このプロセスが完結すると、この第2材料は表面上の第1材料で強化されてしまったと言ってもよい。
【0059】
対象材料が、本発明による第1材料でも第2材料でも、本発明のプロセスを実施するための原理は、次のように同じであるのが普通である、即ちこれらの表現は、材料の堆積を促進させる問題よりもそのような材料の中に見られる問題に対する程度まで、比較的微細な程度、そして意図される用途に対してでありプロセスに対してではなく、或る程度の定量的些細な事柄は妥協すること:こうして、材料の前記のリストの間に1対1の関係が存在する。材料が本発明のプロセスの定義の中で“第1”材料及び“第2”材料と呼ばれるのはこのような理由からである。
【0060】
本発明の特に重要な1つの態様は、これら2つのカテゴリーの1つから選ばれる対象材料の極めて優れた密着性は、前記の1つのカテゴリーの堆積物を、別のカテゴリーから選ばれる補充材料の堆積と組み合わせることにより達成されることである。
【0061】
こうして、本発明のプロセスの第1実施態様によって、第1材料が、保護材料と表面との間に発生する貫通接続により表面への第2材料の付着材として機能するか又は付着材を強化する保護材料の形で、例えば化学吸着又は電解グラフト化によって表面に付着されてもよい:本発明により、表面上の第2材料の堆積物は第1材料で強化されることが明言される。この実施態様は付図1に概略で示されている。この実施態様は、例えば次の手法で実施されてもよい:第1材料は、例えば表面上へ電解グラフト化されたポリマー、例えば有機ポリマーである。第2材料は、例えば層の形で前記ポリマーの内部に堆積された金属である。こうして、ポリマーは金属層に付着するために“保護物”として機能する。この実施態様によると、第1材料は、第2材料の中に埋め込まれてもよい。
【0062】
本発明のプロセスの第2実施態様によると、第1材料は、例えば化学吸着又は電解グラフト化により表面に付着されてもよい、或いは層状化材料の形で、表面上に密着しない手法で単純に堆積されてもよい、そして第1材料の内部に形成される第2材料は、この第2材料と表面との間に発生する貫通接続によって表面への第1材料の付着を強化する:本発明により、表面上の第1材料の付着又は堆積は、第2材料によって強化されることが明言される。この実施態様によって、第1材料は単独の時の第1材料と表面との間に存在する界面より、確実に強固な界面となる。この実施態様は、前述と同じ方法で説明可能であるが、対象材料が第1材料であるので、第2材料の前駆体からこの第2材料を形成する過程で第1材料は第2材料によって埋め込まれないことを確認するよう注意が払われる。例えば、第2材料、この場合は強化材料、は例えば電気制御型反応により堆積されるので、第1材料又は層状化可能な材料の内部での第2材料の成長は第1材料の内部でのみ起こり、前記材料を埋め込まないように、電着過程で電荷は有利に制御され得る。本発明のこの実施態様により、第1材料の発生源、この場合はポリマー、は所謂、第2材料の中に“浸漬され”るが、この第2材料は、表面との界面適合性で選ばれ得るのが好ましい。この例は、付図2の中で概略で示されている。
【0063】
本発明者等に、“電気化学的層状化”と言う名称を示唆したのは本発明のプロセスのこの第2実施態様であり、層状化は、枝が土壌から突き出るように、地面の中に枝を挿入することにより、枝から根を再生させるために植物学で使用されるプロセスである。
【0064】
本発明により特に好ましいとされる1つの態様によると、本発明のプロセスが、導電性又は半導体性の表面である表面上で実施されてもよく、第1材料はビニルポリマーであり、第2材料は金属であり、そしてこの金属の前駆体はこの金属のイオンである。
【0065】
本発明のプロセスにより第2材料の前駆体を第1材料の中に挿入する工程は、決定的工程である。具体的には、第1材料の前駆体が第2材料の中に挿入されたのち、その中で第2材料へ転化され得ることはこの工程の過程においてでである。この第2工程に対しては、本発明の明細書の中に含まれる種々の技術を使用してよい。これらの技術は、例えば表面上に配置された第1材料を前記前駆体の好適な溶液の中に浸漬することにより、表面上に配置された第1材料と接触して第2材料の前駆体を単純に配置することから、電解質浴を使用するような、更に工夫を凝らした技術までの範囲を含む。
【0066】
第1材料が、第2材料の前駆体を第1材料の中に簡単に挿入できないならば、或いはこの挿入を促進又は強要しなければならないならば、本発明により、第2材料の前駆体に対する溶媒、又は輸送体でもあり、第1材料を膨潤する溶媒及び/又は溶液でもある挿入溶液が使用されるのが有利であって、前記挿入溶液は第2材料の前駆体分子を含む。
【0067】
例えば、第1材料がポリマーのとき、この第1材料用溶媒は、このポリマー用の溶媒である。
【0068】
“第1材料を膨潤する溶液”と言う表現は、第1材料の中に挿入され、しかも前記材料の構造を整えて、第1材料が含む第2材料の前駆体の、第1材料への挿入を可能にする溶液を意味する。例えば、それは、例えば第1材料を水和する水溶液でもよい。水で膨潤されるビニルポリマー、とりわけ、水に不溶であるポリ(4−ビニルピリジン)、即ちP4VP、又は水に可溶であり、この溶媒によっても膨潤されるポリヒドロキシエチルメタクリレート、即ちPHEMA、が知られている。これらのポリマーは、本発明により、第1材料として使用してよい。
【0069】
このような挿入溶液は、また、第2材料の前駆体を第1材料の内部に運搬できる溶液でもある。従って、これは、本発明を実施する場合の、前駆体の充分な可溶化又は分散を可能にする溶液となるだろう。具体的には、第2材料の不溶性塩の場合、この溶液は、好ましくは第2材料の前駆体を充分に分散できて、この前駆体を第1材料の中に挿入できることが必要がある。
【0070】
従って、挿入溶液は、非常に多数の規準の機能として選ばれる。これらの規準のなかから次の事項に触れておくことができる:表面の機能として:例えば、本発明を実施する過程で表面の酸化のような化学相互作用を防止するため;第1材料の機能として:この溶液が、この第1材料が堆積している表面からこの材料を取り除かないように;第2材料の前駆体の機能として:第2材料の前駆体は前駆体を溶解させなければならない、しかも前駆体を第2材料へも転化させなければならない;第2材料の機能として:第2材料は、第1材料の内部で第2材料を形成させなければならない、そしてとりわけ、第2材料の堆積プロセス、例えば第2材料の電着を実施させなければならない。
【0071】
例えば、先行技術は、第1に先ず、水溶液から電着による金属膜の作製に関して、そして第2に、水中におけるそれらの溶解度に関して豊富な情報を含むので、本発明により、特に第1材料が水で膨潤でき、例えば電解グラフト化保護膜の形のポリマーであるとき、好ましい適切な挿入溶液は水溶液である。第2材料の前駆体を第1材料へ挿入するための他の挿入溶液及びプロセスは下記に説明されている。当業者は、本発明を実施するために、例えば前記の“強化”材料のカテゴリーの前駆体を使って、なお別の好適な挿入溶液を選択できる。
【0072】
本発明のプロセスの第3実施態様によると、前記表面上に配置された第1材料の中に第2材料の前駆体を挿入することにある工程は、前記第1材料又は第2材料の前駆体も、第2材料の前駆体も含む溶液を使って、前記表面上に第1材料を配置することにある工程と同時に実施してもよい。この実施態様は、例えば、基板の上に配置された第1材料を膨潤するために挿入溶液を見つけることが難しい時に特に有利である。従って、基板上に第1材料を配置することにある第1工程の過程で、第2材料の前駆体は、第1材料の中に取り込まれ、そして第1材料が表面上に配置されるとき、第2材料の前駆体を前記第1材料の内部の前記第2材料へ転化することにある、本発明のプロセスの工程を適用する。
【0073】
本発明の転化工程は、被覆された表面上で、且つ第1材料の内部で第2材料の前駆体を前記第2材料へ転化できるので、この転化工程も重要である。この転化の態様は前述されていて、下記で更に詳細に説明されている。第2材料の前駆体は、電着及び沈殿から選ばれる技術によって、前記に対応する第2材料へ転化され得るのが好ましい。
【0074】
一旦、被覆されることが意図される表面及び対象材料が決まると、こうして本発明のプロセスは、好適な補充材料の選択、及び本発明のプロセスによるこれらの2種類の材料の各々を堆積するためのプロセスの選択を含むことが可能であり、これによって、前記表面への前記対象材料の極めて強力な密着性を生成できる。
【0075】
本発明の第1の適用例では、前記の第1実施態様に従い、その実施態様では、例えば前記で分類されて、第2材料のカテゴリーの中の金属材料(A)である対象材料を、基板、例えば半導体(B)、の表面上へ密着して堆積することが望まれていて、本発明のプロセスは次の諸工程を含むことが可能である:
【0076】
− 保護材料、又は本発明の意味の範囲内の第1材料、例えばポリマー、の選択;
【0077】
− 表面、例えば半導体(B)、の上に保護材料を堆積するプロセスの選択;この例では対象材料と金属(A)と表面、この場合は半導体(B)、との間の接続の強固さを殆ど決めるのはこの堆積プロセスである。本発明により、当業者は、勿論、この強固さの規準の機能として、このプロセスを選択してもよいが、その他の考察に基づいても、とりわけ所望の層状化可能な材料の厚さ、例えば膜の形で、に基づいても、この材料の厚さの所望の均一性に基づいても、コスト等に基づいても選択してよい。例えば、もし保護(armouring)材料が、表面、例えば半導体B、上に電解グラフト化され得るポリマーであるならば、保護材料を、例えば半導体Bの表面に極めて強固に固定することは可能である、と言うのは、このプロセスによって、ポリマーと導電体又は半導体との間の共有化学結合を生成することができるからである;
【0078】
− 本発明の意味の範囲内の第2材料、この場合は金属A、を堆積するプロセスが、第1材料、即ち保護材料を堆積するプロセスに適合するように、第2材料を堆積するプロセスの選択。“適合性”と言う用語は、このプロセスが、保護材料の内部で強化材料を成長させるのが好ましいことを意味する:このことは、とりわけ、第2材料の前駆体は、先ず第1に、保護材料又は第1材料の内部に、即ち内側に挿入される、即ち拡散された状態にすることができる、そしてこのプロセスが第1材料に適用されて、保護材料の内部で第2材料を形成させることができると考えられる;
【0079】
前記で定義された本発明のプロセスの実施:第2材料が金属ならば、この金属(A)の金属イオンは第2材料の前駆体として使用され、保護材料、例えばポリマー、用の溶媒及び/又は膨潤剤の中に有利に溶解され、第2材料の前駆体の溶液を形成する;この溶液は、ポリマーの内部の前駆体のイオンを拡散させ、その拡散後の、例えば直流型のプロセス、例えば電着(電気めっき、又は電気化学析出(ECD))、が適用されると、ポリマー内部に金属(A)が形成する。このプロセスは、電気制御型なので、電荷の制御によって、金属(A)の成長が、第1材料、この例ではポリマー、の全厚にわたって起こり、保護材料を形成し、その後で第1材料の表面全体に起こることを、有利に監視できる。
【0080】
このように、層状化可能な材料、即ちポリマー又は第1材料、は、層状化可能な材料が、保護材料と半導体(B)との間に生じる貫通接続によって金属表面(B)に付着するための“保護物(armouring)”として作用する金属(A)の中に最終的に埋込まれる:表面、この場合は半導体、上の第1材料、この場合は金属(A)、の堆積物は、第1材料、この場合はポリマー、によって強化されていると言われる。この適用例は付図1に図示されている。
【0081】
例えば、金の表面上に電着した銅の層の密着性、又は金属表面上への塩化銀膜の密着性は、2つの金属の間の界面、又は金属と塩化銀との間の界面の埋込まれたポリマーによる強化を発現する前処理によって驚くほど強化されることは、後記の“実施例”の中で実証される。
【0082】
前記第2実施態様による本発明の第2適用例の中で、この実施態様では、例えば導電性基板、例えば金属で作られている、の表面上への対象の層状化可能な材料としてポリマー(P)を堆積することが望まれ、プロセスの原理は、最終実施工程を除いて、前述の工程と同じ諸工程に基づいている。具体的には、前述のように、この最終工程では、第1材料がこの第2材料を埋込まないように、第1材料の内部で第2材料の成長を制御することが好ましい。
【0083】
例えば、下記の“実施例”の項で、本発明のこの第2実施態様により遠心分離によって、金の表面上に堆積されたポリ(4−ビニルピリジン)(P4VP)の膜が或る1種の溶媒による激しい濯ぎにも耐えるように、遠心分離によって金の表面へこの膜を付着することは意外に可能であるのに対して、同じ表面上のP4VP単味の膜は、本発明による処理を受けない場合の同じ濯ぎによって取り除かれることが実証されている。
【0084】
本発明により、本発明のプロセスの実施が完結したとき、目標が、対象材料は表面に存在している唯一の第1材料及び第2材料であるとき、本明細書でも説明しているように、本発明のプロセスは、第1材料が第2材料から現われるように、又は第2材料が第1材料を埋め込むか、又は被覆するかのどちらかになるように適応する。
【0085】
有利なのは、本発明により、保護又は層状化の後に、例えば本発明のプロセスによって、表面上に2種類の材料によって形成される全厚の少なくとも20%に等しい厚さだけ本発明の選ばれた実施態様により対象材料は現われるか又は被覆する。この現われる部分の厚さは、明らかにこの表面が意図される用途の機能として適応される。
【0086】
本発明のプロセスを実施することにより、表面上に第1材料及び第2材料により形成される被膜の厚さは、一般に1nm〜100μmである。これは、明らかに材料の性質によって及び所望の被膜のタイプによって決まる。
【0087】
従って、本発明のプロセスによって得られる被膜は、混合される第1材料及び第2材料を含み、使用される材料の化学的性質によって、それの材料間の化学的結合又は相互作用があったり、或いは無かったりする。
【0088】
従って、本発明のプロセスは、当業者が本発明の説明を読むとき、自分で発見できる多数の用途を持っている。
【0089】
これらの用途のなかで、言及してもよい非限定例には次が挙げられる:
【0090】
それは、導電性又は半導体性の基板と金属との間の界面強化は、付図1に図示している方法で、例えば基板の上に事前グラフト化されたポリマー保護物によって可能になる。この適用は、とりわけマイクロエレクトロニクスでの銅の接続において、特にダマシン(Damascene)又は二重ダマシンプロセスにより、TiN、TaN、TiNSi、等のような、銅/非拡散層の界面の機械的強化には有利である。
【0091】
それは、更に一般に、金属/金属、金属/導電性ポリマー、導電性ポリマー/半導体、又は金属/半導体の各界面における密着性下地層に有用な代替物を提供する。
【0092】
例えば、それは、また、自動車防錆、光学、ファッション界の物品、機械給油用の導電性又は半導体性の基板上への強い密着性有機層の堆積、“フリップ−チップ”ポリマー用途のための、又はこれらとは別に、センサーの感応部品の機能化のためのホット−メルトポリマー層の堆積を可能にする。従って、それは、また、金属表面の防錆処理において、本発明のプロセスを使用することに関連がある。
【0093】
例えば、それによって、生体適合性ポリマー及び/又は被包用のレザーバーの堆積、導電性移殖型物体上への活性分子の放出、例えば形成外科での移殖片を保持するための刷込み、又は血管インプラント(ステント)、移殖蝸牛装置電極、カテーテル誘導(導子)、整形外科インプラント、及び特に股関節人工器官、及び歯科インプラントで、の堆積物のような極めて強力な密着性有機層の堆積も可能である。
【0094】
例えば、それによって、生体高分子、又は生体分子を取り入れる、若しくはカプセル化する生体分子の堆積、例えばペプチド、タンパク質、多糖類、オリゴヌクレオチド又はDNA若しくはRNAフラグメント、特にDNA又はタンパク質バイオチップの製造のための堆積のような極めて強力な密着性有機層の堆積も可能である。従って、それは、バイオチップを製造するために本発明のプロセスを使用することにも関連がある。
【0095】
本発明のプロセスにより、例えば第2材料の前駆体として前記金属前駆体又はその混合物、例えばロジウム、白金、パラジウム、コバルト、銅、等の前駆体又はその混合物を使用することにより触媒の製造が可能である。この用途では、第1材料は、本明細書で触れている材料のうちの1種類でもよく、有利なのは、第2材料、例えばポリ(4−ビニルピリジン)(P4VP)の前駆体を錯化するための配位子として作用できる機能を含むポリマーであり、また、表面に触媒の塩、例えばパラジウムの塩、の付着を生じさせるのに使用されてもよい、システイン基を含むいずれのポリマーでもよい。第1材料の膜の内部での還元と、多分、有機残基のカ焼の後に、触媒は、金属、例えばパラジウム金属、の形で膜の形又は金属凝集体の形のどちらかで得られる。こうして得られる触媒は、具体的には、無電解プロセスには、種々の金属の層の、そして特にマイクロエレクトロニクスに関連する用途では、銅の堆積を開始する利点を有する(例えば、エス・ジェームス、エッチ・チョー(S.James,H.Cho)等、"VLSI用の無電解銅(Electroless Cu for VLSI)、"エム・アール・エス、ブレティン(MRS,Bulletin),1993年、第20巻、p.31−38を参照されたい)。
【0096】
前記の分類の証明の基盤を成す考えは、プロセスが次のことで知られていることにある:
− 有機材料、とりわけ高分子材料及び、特にポリマーと導電性及び半導体性の表面との間の極めて強固な界面を構成することであるが、関係する有機材料のリストは限られている;
− 他の金属上に金属の密着性堆積物を作製することであるが、完全に適合する金属/表面の一対のリストは限られている。
【0097】
前述のように、ビニルモノマーの、又は求核若しくは求電子攻撃により開裂できる環式分子、例えばラクトン及びエポキシ化合物、の電解グラフト化によりポリマーと導電性又は半導体性の表面との間の極めて強固な化学結合の形成の仕方が実際に知られている。ジアゾニウム塩又はスルホニウム塩から出発して機能化された芳香核の共有結合の電解グラフト化をいかに実施するかも知られている。
【0098】
補足的方法では、銅の上に又は大抵の遷移金属の上に、例えば電着により銅の密着性堆積物を作製する方法が知られている。
【0099】
本発明により、これらの堆積方法は、入り組んだ方法で、例えば、各々、或る表面上へ電解グラフト化できないポリマー材料の堆積、及び或る表面へ、例えば対象の導電性又は半導体性の基板へ、密着性が劣る金属の堆積を促進するのに旨く使用される。
【0100】
更に、本発明は、或る表面上に、例えば導電性又は半導体性の表面上に、即ちイオン性固体上に、密着性堆積物を通常通り形成しない材料の密着性を促進するためにこれらの方法の1つを使用する。
【0101】
本発明のプロセスを実施することにより表面上に形成される被覆物は、被覆物の全ての特性を有するので、この被覆物は複合被覆物であると考えもよい。具体的には、この被覆物は、一般に、有機物であるのが好ましい第1材料、及び無機物であるのが好ましい第2材料を含む。
【0102】
従って、本発明により、目的が、2種の材料、例えば付図1に示されているような金属と半導体性基板、の間の界面を強化することであるとき、本発明の意味の範囲内の第1材料をこのように構成する保護材料は、例えば、前記表面、例えば半導体性基板の表面、上で電解グラフト化により堆積され、そして本発明の意味の範囲内の第2材料を構成する別の材料、例えば金属、は、保護材料の内部でこの前駆体から形成される。例えば、第2材料が金属であるとき、第2材料の形成は、この第2材料の前駆体の電着、又は化学的沈殿のどちらかにより得られるのが有利である。この例では操作が完了しると保護材料は埋込まれている。
【0103】
本発明により、目的が、本発明の意味の範囲内の第1材料を構成する有機材料を、例えば導電性又は半導体性の基板の表面上に層状化することであるとき、本発明の意味の範囲内の第2材料を構成する強化材料は、前記有機材料の内部に、電着、例えば電気分解、により構成されるのが有利であり、前記有機材料は、あらゆる好適な手段により、例えば遠心分離、浸漬又は吹付けにより基板上に堆積されている。
【0104】
表面への被覆物の密着性の評価は、この被覆物が、引き続いて作業条件のもとで負荷される応力によって決まるので、この密着性の見解は比較的主観的見解となる。従って、例えば電解グラフト化は、超音波による濯ぎに耐えるポリマー膜を導電体又は半導体の上で形成することが知られているプロセスである。
【0105】
付図1及び4に示されているように、本発明により、簡単な遠心分離で表面上に堆積されたのち、本発明の意味の範囲内の第2材料、例えば金属、で強化されたいずれのポリマーも、前記表面上で強化されていない、或いは強化材料と表面との間で構成される界面の性質が前処理されていないポリマー単味の堆積物と比較すると、表面への密着性が改善された強化被膜を形成する。
【0106】
多くの場合、ポリマーが基板の表面からこのように“剥れ難いこと”は、上掲のプロセスが、この剥れ難いことを考慮して終了され得る程度まで、付図1に示されている界面強化に対して充分であると証明され得る:
【0107】
− 第1材料を構成する保護ポリマー又は高分子材料は、電解グラフト化、遠心分離、浸漬又は吹付けにより堆積可能である;
【0108】
− 第2材料を構成する強化材料は、電着又は化学沈殿によって堆積可能である。
【0109】
保護材料及び層状化可能な材料を当初の分類により同じカテゴリーの中に入れるのはこの理由からである:例えばポリマー状又は高分子状有機材料が強化材料の堆積後に完全に埋込まれるならば、それは“保護”材料であると言える、一方、その材料が必ずしも完全に埋込まれるとは限らないならば、それは“層状化されている”と言える。最初のケースでは、強化材料が対象材料であるので、ユーザーはその材料を埋込むことを選択するだろう;第2のケースでは、一旦、強化が達成されれば、ユーザーはその材料の特性を活用するためにその材料を埋込むことを選択しないだろう。
【0110】
従って、例えば、マイクロエレクトロニクスでのダマシンプロセスでTiN上に銅の帯状体を密着するのに本発明を適用する場合、対象材料は、機械的理由から改善することが望まれるTiNとの界面を持つ銅である:図1に示されているように、電着銅の層の中にP4VP膜を埋込む前に、電解グラフト化又は遠心分離によってTiN上にP4VP膜を堆積してもよい。逆に、高分子量のP4VPが大表面積のステンレス鋼又は黒鉛の表面上に堆積されて、液体排液を処理する装置に使用可能である錯体形成フィルターを製造することが可能であり、そしてこれを実施するために、この表面をP4VPで含浸し、次いでポリマー膜の中に金属イオンを挿入するために、金属イオンを含む溶液の中にこの表面を浸漬し、そして最終的にこうして捕捉された銅は、錯化ピリジン基が矢張り強化金属の上に接近し易いように還元される。
【0111】
更に、好適なプロセスにより表面上に配置された第1材料は、この表面に対して強い密着性を示すならば、そしてこの第1材料とは別に、第2材料自体もこの表面に強い密着性を示すならば、本発明のプロセスは有利に前記表面にこれら2つの材料の密着性を、言わば、積み重ねることができる。こうして、本発明は、種々の用途を持つ超耐久性(ultra resistant)被膜を提供する。
【0112】
1種類以上の材料の埋込む必要はないことは明らかである。勿論、本発明のプロセスは、被膜が意図される用途によって適応される。
【0113】
本発明の考えられる用途、特に選択された堆積プロセス、に関係なく、保護材料又は層状化される材料を堆積する工程は、付図1、2及び4に示されていように、本発明の目的のための第2材料を構成する強化材料の堆積工程の前に、常に実施されることが留意される。
【0114】
第1材料、例えばポリマー状又は高分子状有機材料、が基板、例えば導電性又は半導体性の基板、の表面上に一旦、配置されると、こうして、第2材料の前駆体、例えば強化材料、を例えば電着又は沈殿によって第1材料の中に挿入できることが必要である。
【0115】
この挿入は、好ましくはその溶液を使い第2材料の前駆体と、表面上に配置されている第1材料との単純な接触によって行なってもよい。
【0116】
こうして、本発明により、挿入工程用の溶媒は、前駆体の挿入を最適化するように、この溶媒が、第2材料の前駆体の溶解物も、もし必要ならば、第1材料の膨潤物及び/又は溶解物も、例えば有機保護膜又は膜も層状化できるように有利に選ばれる。
【0117】
例えば、第1材料がポリマーである場合、第2材料の前駆体を含む溶液は、膨潤するがポリマー用の溶媒ではなくてもポリマー用の溶媒であってもよい液体から有利に選ばれてもよい。特に、第1材料が、電解グラフト化されているポリマーであるならば、ポリマー用の溶媒ではない膨潤液体を選ぶことができるが、このポリマーをこれらの溶媒によって表面から、そして従って、これらの溶媒が形成する前駆体の溶液によって表面から離すことができないので、ポリマー用の溶媒も選ぶことができる。
【0118】
もう一方で、第1材料、例えば有機材料、は遠心分離又は浸漬により堆積され、保護物又は層状化物を形成するならば、ポリマー用で、可能な限り溶媒性の少ない単純な膨潤溶媒から成る溶液は、ポリマーが事前堆積されている表面からポリマーを洗い落とさないように使用されるのが好ましい。
【0119】
例えば、第1材料がP4VPである場合、このポリマーは、ポリマーにとって優れた溶媒であるジメチルホルムアミド(DMF)の溶液から遠心分離又は浸漬により、容易に電解グラフト化又は堆積されてもよい。一旦、溶媒が蒸発されてしまうと、いずれの場合も、水は優れた膨潤剤であるが、P4VPには貧溶媒であるので、この第1材料が水溶液の中に配置されている表面を浸漬することができる。
【0120】
これらの条件下で、本発明により、第2材料の前駆体、例えばイオン、の挿入が、例えば第2材料の前駆体イオンを含む溶液の中に浸漬することによりポリマーの中に単純に拡散して“自然に”生じてもよい。この拡散は、一般に、前駆体浴が濃厚なほど比例して速くなる。
【0121】
こうして、本発明者等は、表面が、20g/リットルの硫酸銅を含む溶液の中に浸漬されるとき、ステンレス鋼の上の厚さ約100ナノメートルのP4VPの膜は、室温で数分以内に銅(II)イオンで飽和されることを観察した。
【0122】
有利なのは、例えば膜の形の第1材料を第2材料の前駆体で飽和することは、前駆体が前駆体イオンの形であるとき、例えば前駆体を錯化することにより第2材料の前駆体を保持することが可能である官能基の第1材料の内部に存在していることによっても促進可能である。このような保持力は、イオン結合、配位結合又はルイス(Lewis)酸−ルイス塩基タイプの相互作用、共有結合又は水素結合、或いは更に、例えば第2材料の前駆体が第1材料の内部に沈殿するとき、機械的保持力(第1材料からの拡散の可能性はない)によって提供されてもよい。
【0123】
例えば、前記例では、銅である第2材料の前駆体を形成する銅(II)イオンは、第1材料を形成するP4VPのピリジン窒素の孤立電子対によって極めて効率よく錯化される。
【0124】
有利なのは、こうして、第2材料の前駆体がポリマーの内部に挿入されたままにするために、この第1材料が、前駆体を充分に錯化する基を含むように、特にこの第2材料がイオンの形であるとき、第1材料、例えばポリマー、は第2材料の前駆体の役割として選ばれてもよい。
【0125】
一旦、第2材料の前駆体が第1材料の中に、例えばポリマー膜の中に、挿入されると、前記第1材料の内部で前記第2材料を形成するように、膜の内部で前記前駆体の電解還元又は沈殿のいずれかを有利に行なうことができる。
【0126】
例えば、ダマシンプロセスにおける界面強化の場合、目的が、第1材料を使って第2材料の保護物を作製することならば、第2材料、例えば銅、の前駆体の電解還元は、膜を前記前駆体で飽和するのに使用するのと同じ浴の中で有利に実施可能である、と言うのは、この例の目的は、強化材料の成長が保護材料の厚さを超えて続くことであるからである。図1及び4は、この例を概略的に説明している。
【0127】
例えば、反対に、目的が、第1材料を形成する有機膜を層状化することであるならば、前駆体イオンで膨潤された有機膜を含む表面は、有利に前駆体溶液から取り外されたのち、前駆体イオンを含まない電解浴の中で浸漬されてもよい。
【0128】
この後者の例では、本発明により、第1材料の中に挿入された前駆体と前駆体溶液との間、及び第1材料の中に挿入された前駆体と前駆体を含まない電解浴によって形成された溶液との間の濃度勾配の反転は、前駆体拡散電流の反転をもたらすので、膜の中のイオンを錯化する官能基の存在は、膜から新しい溶液へのイオンの流出を有利に遅らせる。本発明者等は、ステンレス鋼上にあって、銅(II)イオンで飽和された厚さ100nmのP4VP膜が、塩化ナトリウムの飽和溶液の中で数時間滞留した後でさえ、銅(II)イオンを保持することを、赤外反射吸収分光法(IRRAS)により具体的に観察した。
【0129】
第2材料が、その前駆体から電着により形成されるならば、第1材料の中に堆積された第2材料の、例えば層状化された膜の、量は、電着電位を制御することにより有利に制御が可能である。更に、第2材料は、第1材料に挿入された第2材料の前駆体から、及び第2材料の前駆体を何等含まない電解浴の中で専ら調製されると言う事実によって、層状化される膜は第2材料により埋込まれないことが有利に確認される。従って、本発明のこの特有の実施態様によって、第1材料が層状化材料であるとき、この第1材料が第2材料によって埋込まれないことを、必要に応じて確認できる。
【0130】
本発明の説明で判るように、第1材料は、当業者に周知のあらゆるプロセスにより表面上に配置されてもよい。“配置される”と言う用語は、一般に当業者に周知のあらゆるタイプの堆積、例えば吹付け、浸漬、遠心分離、電解グラフト化、電着、等を表すのに本明細書では使用される。本発明により、表面上に第1材料を配置するプロセスは、とりわけ表面の性状の、及び本発明のプロセスを実施することにより製造される被膜の意図される用途の、特に表面上で所望のタイプの密着性の役割として操業者により選ばれる。
【0131】
本発明により、表面上に第1材料を配置するために選ばれるプロセスに関係なく、第1材料は、好ましくは膜又は層の形で、更に好ましくは、有機膜又は層の形で、被覆される表面上に配置されてもよい。
【0132】
好ましくは、本発明により、及び表面の性状の理由から前記のことが可能であるとき、第1材料は、電解グラフト化によって、被覆される表面上に配置されることが可能である。具体的に言うと、電解グラフト化は、本発明のプロセスにより被覆されることが意図される表面が導電性又は半導体性の表面であるとき有利に使用されることが可能である。これによって、表面上への第1材料の強い付着が得られる。
【0133】
本発明により、第1材料は、本明細書に下記で呼ばれる第1材料の前駆体として第1材料の前駆体から有利に調製可能であり、活性化又は環式ビニルモノマー、機能化又は非機能化ジアゾニウム塩、機能化又は非機能化スルホニウム塩、機能化又は非機能化ホスホニウム塩及び機能化又は非機能化ヨードニウム塩から成る群から選ばれてもよい。具体的には、第1材料は、1種以上のこれらの前駆体の膜から、例えば導電性又は半導体性の支持体の表面上での、例えば電解グラフト化反応により有利に得られてもよい。具体的には、表面上でのこれらの前駆体の電解グラフト化によって、本発明の意味の範囲内で表面上に配置されている第1材料の膜が有利に得られる。
【0134】
本発明により、第1材料は、活性化ビニルモノマー、求核攻撃により開裂可能な環式分子、及びジアゾニウム塩から成る群から選ばれる第1材料の前駆体として知られるこれの前駆体を有利に得ることが可能である。
【0135】
例えば、本発明で使用可能である活性化ビニルモノマーは、下記の構造式(I)を有するモノマーが可能である:
【0136】
【化2】

【0137】
式中、R、R、R及びRは、次の有機官能基から成る群から互いに独立して選ばれる有機基である:水素(H)、ヒドロキシル(−OH)、アミン(例えば−NH、但しx=1又は3)、チオール(−SH)、カルボン酸(−COOH)、エステル(例えば、−COOR、但しRはCl又はC6アルキル)、アミド(例えば−C(=O)NH、但しy=1又は2)、イミド、イミドエステル、酸ハロゲン化物(例えばC(=O)X、X=F、Cl、Br又はI)、酸無水物(例えば−C(=O)OC(=O))、ニトリル、コハク酸イミド、フタルイミド、イソシアネート、エポキシド、シロキサン(例えば−Si(OH)z、但しz=1又は3)、ベンゾキノン、ベンゾフェノン、カルボニルジイミダゾール、パラ−トルエンスルホニル、パラ−ニトロフェニル、クロロフォルマート、エチレン系、ビニル、芳香族、例えばトルエン、ベンゼン、ハロベンゼン、等。
【0138】
更に、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つは、例えば、アミン、アミド、エーテル、カルボニル、カルボキシル及びカルボキシレート、ホスフィン、ホスフィンオキシド、チオエーテル、ジスルフィド、尿素、クラウンエーテル、クラウンアザ、クラウンチオ、クリプタンド、セプルクレート(sepulcrate)、ポダンド(podand)、ポルフィリン、カリックスアレーン、ピリジン、ビピリジン、ターピリジン、キノリン、オルト−フェナントロリン化合物、ナフトール、イソナフトール、チオウレア、親鉄剤、抗生物質、エチレングリコール及びシクロデキストリンから成る群から選ばれるカチオン及びとりわけ還元性金属カチオン、例えば銅、鉄、ニッケル等を錯化できる官能基が可能である。
【0139】
第1材料の膜は、前記官能基からの置換及び/又は機能化分子構造体からも得ることが可能である。前記の基のようなビニル基を持つ分子又は高分子サイズのいずれの化合物、例えばビニル末端基を持つテレキリック化合物、及び特にテレキリックモノメタクリレート及びジメタクリレート、例えばポリエチレングリコールジメタクリレート又はポリジメチルシロキサンジメタクリレート、或いはこれらとは別にビニルマクロマー、即ちビニル基で一機能化又は二機能化された高分子化合物も第1材料の前駆体として好適としてもよい。この最後のカテゴリーには、例えば、ポリマー(ビニルポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸、ポリアリルアミン等;重縮合物、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリアミド等、ポリエチレンイミド等)、又はコポリマーが挙げられ、これらのポリマーでは、側鎖官能基の全て又は幾つかはビニル基で機能化されている。従って、例えば塩化メタクリロイル又はメタクリル酸グリシジルを、ポリマー、例えばポリビニルアルコール又はポリアリルアミン、のOH又はNHの官能基の全て又は幾つかと反応させることにより、第1材料の前駆体を得て、各々、メタクリレート基で機能化されたポリビニルアルコール又はポリアリルアミンを生成できる。更に一般に、非ポリマー高分子、例えば多糖類(デキストラン、セルロース、ヘパリン、キトサン等)、タンパク質(フィブリン、カゼイン等)、オリゴヌクレオチド(一重鎖及び二重鎖のDNA又はRNA、等)、ペプチドグリカン、では、これらの或る官能基の全て又は幾つかはビニル基で機能化され、第1材料の前駆体を構成可能である。メタクリル酸グリシジル基で機能化されたデキストラン−GMAは、例えば、次の参考文献によって記載されている実施手順によって、質量M=15000のデキストランから、及びメタクリル酸グリシジル(メチルプロペン酸2,3−エポキシプロピル)から得られる;即ち、ダブリュネヌイー・ヴァン・ディジェック-ボルチュイス(WNE van Dijk-Wolthuis),オー・フランセーン、(O.Franssen),エッチ・タルスマ(H.Talsma),エムジェイ・ヴァン・ステーンベルゲン(M.J.van Steenbergen),ジェイジェイ・ケッテンス-ヴァン・デン・ボッシュ(J.J.Kettens-van den Bosch),ダブリュイー・ヘニンク(W.E.Hennink),による、マクロモレキュールズ(Macromolecules)、1995年、第28巻,p.6317。10−2モル/リットルのTEAPで、デキストラン−GMA0.25gを50mlのDMFに溶解することにより得られる溶液(従って、この溶液はデキストラン−GMA約3.3×10−4モル/リットルである)の中に、3本電極組立体の中の作用電極として使用する金の薄片を浸漬し、100mV/秒の速度で、E開始=−0.6V/(Ag/Ag)〜E終点=−2.8V/(Ag/Ag)で15回掃引するボルタンメトリー条件下で金の上に電解グラフト化することにより、厚さ200nmの膜が得られる。電解グラフト化により堆積されると言う事実により、この膜は、表面に強く密着し、とりわけ超音波での濯ぎに耐える。従って、これは、溶媒又は第2材料の金属前駆体を含む膨潤剤の中で、とりわけ、金の薄片を浸漬することにより第2材料の前駆体、そして特に金属塩を受け入れることができる、選り抜きの第1材料を構成する。
【0140】
最後に、恐らくジアゾニウム塩で開始され、本発明の意味の範囲内で第1材料を構成するコポリマー膜を得るように、第1材料の膜は前記化学前駆体化合物の混合物からも得ることが可能である。
【0141】
例えば、本発明により、第1材料がビニル前駆体モノマーの重合により得られるポリマーであるとき、そのモノマーは、ビニルモノマー、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、アクリルアミド、特にアミノ−エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシルメタクリアミド、シアノアクリレート、シアノメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、及び更に一般に、テレキリックジアクリレート又はジメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、パラ−クロロスチレン、N−ビニルピロリドン、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ハロゲン化ビニル、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル、ジビニルベンゼン(DVB)、テトラメタクリル酸ペンタエリトリトール、及び更に一般にアクリレート系、メタクリレート系又はビニル系の架橋剤及びそれの誘導体から成る群から選ばれるのが有利である。
【0142】
例えば、求核攻撃によって開裂可能であり、本発明で使用可能である環式分子は、下記の構造式(II)を有する分子が可能である:
【0143】
【化3】

【0144】
式中、R及びRは、前記の定義のようには独立していて、そして式中、n、m及びpは、各々、独立して0〜20の整数である。このカテゴリーの中に挙げられるのは、例えばエチレンエポキシド(R=H、R=H)のようなエポキシド(Rは前掲のようなアルキル基であり、R=H、n=1、m=0、p=1);ラクトン(R及びRは前掲のようなアルキル基であり、m=1、p=1)、例えばブチロラクトン(n=2;R=H、R=H、R=H、R=H;m=1、p=1)、ε−カプロラクトン(n=5:R=H、R=H、1≦i≦5;m=1、p=1)、等である。
【0145】
例えば、本発明で使用可能であるジアゾニウム塩は下記の構造式(III)を有する塩が可能である:

X−,N−Φ−R (III)

式中、Rは前記の定義通りであり、Φは芳香核であり、そしてXは、例えば、テトラフルオロボレート、ハライド、スルフェート、ホスフェート、カルボキシレート、パークロレート、ヘキサフルオロホスフェート、フェロシアニド又はフェリシアニドから成る群から選ばれる陰荷電対イオンである。
【0146】
本発明の意味の範囲内で第1材料を構成するのに使用されてもよいジアゾニウム塩の例は、例えばテトラフルオロホウ酸4−ニトロフェニルジアゾニウム(この化合物では、ニトロ基は錯化特性を持つアミンに還元され得る)、テトラフルオロホウ酸4−カルボキシベンゼンジアゾニウム(R=COOH)、及び更に一般に、錯化特性を有する基でパラ置換されたテトラフルオロホウ酸ベンゼンジアゾニウム、及びとりわけ、カルボン酸基((−CH−COOH、但しnは1〜10の範囲の整数である)を持つジアゾニウム塩、EDTA(エチレンジアミンテトラアセテート)及び同類の配位子等;ビピリジン、キノリン、アミノ酸及びタンパク質、単糖及び多糖類、等である。
【0147】
第1材料の前駆体であるこれらの全ての化合物は、勿論、本発明を実施する操業者の目的によって単独でも、混合物としても使用してよい。
【0148】
勿論、第1材料は、種々の規準の機能として、とりわけ、表面、即ち対象材料の化学的性質、対象材料が第1材料でないならば第2材料の化学的性質、及び本発明のプロセスによって製造される被膜の意図される用途も選ばれる。例えば、本発明のプロセスを実施することにより金属層を強化することが望まれる場合、ポリマーの形の第1材料の前駆体モノマーが使用され得るのが有利であり、例えば第2材料がイオンの形であるとき、前記ポリマーは、第2材料の前駆体の錯化を可能にする官能基の保有基であるのが有利である。
【0149】
例えば第1材料の前駆体である全ての化合物の重合が、付図3に示されている方法での電位のもとで配置された金属表面によって直接開始されるとき、これら全ての化合物は、この表面上で直接使用され得るのが有利である;或いはこれとは別に、表面上で、一旦、還元又は酸化されると、自体で重合を開始する電気活性型開始剤との混合物として:ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、ペルオキソジスルフェート、ペルスルフェート、チオスルフェート、フェロセン、カルボン酸及び特に安息香酸、過酸、等、及び一旦、還元された又は酸化された開始ラジカルの形成につながる概ねあらゆる電気活性化合物として使用されるのが有利である。
【0150】
第1材料を表面上に堆積することにある本発明のプロセスの工程は、前記の第1材料の化学前駆体化合物から第1材料の有機層又は膜を得ることにある工程でもよい。その工程は、当業者に周知の電位のもとに配置するための種々の実施手順に従って、例えば全部又は部分的有機媒体の中で電気分解によって行なわれるのが有利である。これらのなかで、次のことに触れることが可能である:インテンシオスタット条件下の公称電流、ボルタンメトリー、ボルタンメトリー条件下での掃引回数、電位マルチパルス、インテンシオスタットジャンプ、定電位ジャンプ、等。
【0151】
これらの技術により、表面上に第1材料を配置するのに使用される媒体は、例えば有機溶媒、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、水、アルコール又はこれらの溶媒の混合物、及び随意に、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム又はテトラブチルアンモニウムの各過塩素酸塩(各々、TMAP、TEAP、TPAP又はTBAP)、リチウム、ナトリウム又はカリウムの各過塩素酸塩、ナトリウム又はカリウムの各塩化物、ナトリウム又はカリウムの各硝酸塩、並びに更に一般に、電解合成媒体に実質的に可溶であるあらゆる塩のような支持電解質を含むことが可能である。
【0152】
例として、本発明で使用可能である、金の上の厚さ20〜40nmのポリ(4−ビニルピリジン)(P4VP)の膜は、5×10−2モル/リットルのTEAPの存在で、DMFの中に95容量%の4−ビニルピリジンを含む溶液の中に浸漬された金の表面の上で200mV/秒で−0.7〜−2.9V/(Ag/Ag)のボルタンメトリー掃引を実施することにより得ることが可能である。前記の厚さのウインドウ(window)は、ボルタンメトリー掃引の種々の回数に対応し、中央値の厚さ(30nm)は50回の掃引で得られる。他の全てのファクターは等しく、厚さ100〜150nmの膜は、5容量%のテトラメタクリル酸ペンタエリトリトールを前記溶液に加え、そして同時にこれら2種類のモノマーを共重合することにより得られる。
【0153】
これも例として、本発明で使用できる、金の上の厚さ約50nmのポリメタクリロニトリル(PMAN)の膜は、類似の方法で、5×10−2モル/リットルのTEAPの存在で、DMFの中に2.5モル/リットルのメタクリロニトリルを含む溶液の中に浸漬された金の表面の上で50mV/秒で−0.5〜−2.7V/(Ag/Ag)で10回のボルタンメトリー掃引を実施することにより得られる。形成されたポリマーのニトリル基は、IRRASの中の2235cm−1のバンドにより同定される。
【0154】
これも例として、本発明でも使用できる、金の上の厚さ約40nmのポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)の電解グラフト化膜の形成は、5×10−2モル/リットルのTEAP(過塩素酸テトラエチルアンモニウム)の存在で、DMFの中に0.4モル/リットルのメタクリル酸ヒドロキシエチルを含む溶液の中に浸漬された金の表面の上で50mV/秒で+1.0〜−3.0V/(Ag/Ag)で10回のボルタンメトリー掃引を実施することにより得られる。
【0155】
これも例として、本発明でも使用できる、316Lステンレス鋼の上のPHEMAの300nmの膜は、2.5×10−2モル/リットルのNaNO及び10−2モル/リットルのテトラフルオロホウ酸4−ニトロフェニルジアゾニウムの存在で、DMFの中に3.5モル/リットルのメタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)を含む溶液の中に浸漬されたステンレス鋼の上で100mV/秒で−0.6〜−3.0V/(Ag/Ag)で40回のボルタンメトリー掃引を実施することにより得られる。
【0156】
これも例として、本発明で使用できる、50nm未満の推定厚さを持つアルキルベンゼン(R−Φ−)の超薄の被覆グラフト化膜(そしてアルキル基Rのサイズに実質的に比例する)は、5×10−2モル/リットルのTEAPの存在で、アセトニトリルの中に5×10−3モル/リットルのテトラフルオロホウ酸アルキルフェニルジアゾニウムを含む溶液の中に浸漬されたTiNの薄片上で20mV/秒で+1.15〜−1.52V/(Ag/Ag)で3回のボルタンメトリー掃引を実施することにより窒化チタン表面上で得られる。
【0157】
本発明の意味の範囲内の第1材料の前駆体、例えばモノマー又はジアゾニウム塩、の濃度条件は、或る前駆体から別の前駆体へ変更でき、本発明を実施する操業者の目的によって決まる。具体的には、第1材料の前駆体の濃度は、本発明のプロセスの第1工程で表面上の第1材料の配列に影響を及ぼすが、本発明のその他の諸工程にも、即ち第2材料の前駆体を第1材料へ挿入する工程、及び第2材料の前駆体から第2材料を形成する工程、そして得られる被膜の特性にも影響を及ぼす。
【0158】
しかしながら、モノマーの0.1〜10モル/リットル、そして特に0.1〜5モル/リットルの濃度、及びジアゾニウム塩の10−4〜1モル/リットル、そして特に10−3〜0.1モル/リットルの濃度が優先的であると考えてもよい。当業者は、これらの濃度範囲を、本発明の利用する際に容易に適応させることができる。
【0159】
第1材料の前駆体であるこれら全ての化合物は、付図1の上部に描かれているように、“ブラシ(brush)”タイプの構造の形成で有利になると言う事実を共通に持っていて、この構造は、本発明のプロセスに従って通常の非密着性固体の堆積に対して保護構造として機能するように旨く配置されている。
【0160】
図1の構成は、高度のグラフト化、即ち単位面積当りポリマー茎の数、で得られることの徴候を示している。
【0161】
グラフト化の程度が低いと、表面上に層状化された“ヘア(hair)”又はポリマー構造体が得られるのが普通であり、それの保護特性はブラッシ構造体の保護特性よりも実質的に劣ることがあるが、本発明によって所望の機能が概ね満足される。
【0162】
一般に、それが、ジアゾニウム塩タイプの第1材料の前駆体化合物の電解グラフト化を実施する問題にせよ、モノマータイプの同様な問題にせよ、グラフト化の程度は、使用される電気回路を通る電流の量によって有利に調整可能である。具体的には、これら全ての電解グラフト化反応は、電解開始反応であって、付図3で示されているように、その反応では第1前駆体の付着の工程だけが電子を消費し、その工程は表面のサイトを占有する工程と等価である。成長が存在する、即ちポリマーのモノマー前駆体の場合に、そのとき、その成長は純粋に化学的である。通過した電流、或いはもっと具体的に言うと、通過した電荷、即ち電流の積分電荷は、占有された表面の数に、従って、形成される膜のモルフォロジーに関連付けられる。こうして、当業者は、本発明を適用するのに最も適合する解決策を見出すために、操作条件によって得られるグラフト化度を、例えば電気化学インピーダンス分光法によって測定することにより所与のモルフォロジーの膜を得る条件を容易に予め決めることができる。
【0163】
第1材料の層が、前記の技術の1つによって堆積されるとき、第2材料は、本発明のプロセス従って、第1材料を形成するこの層の中に挿入され得る。本明細書の中に挙げられている多数の技術は、この工程のために使用してよい。しかしながら、本発明者等は、次の技術が本発明を実施するのに特に有利であることに注目してきた。
【0164】
従って、本発明の1つの好ましい実施態様に従って、この第2材料のイオン前駆体の溶液を使って第2材料は第1材料の中に挿入される。例えばそれは次の事項でもよい:
【0165】
− 金属塩の浴のような、電着により第1材料の内部で第2材料の形成を開始するための電解浴であり、例えば銅、亜鉛、金、錫、等の堆積には好適である;荷電ポリマー又は高分子電解質、等の浴。合金(数種の金属前駆体)又は有機金属複合体(金属前駆体+有機前駆体)を生成するように、浴は、随意にこれらの前駆体混合物を含んでよい。
【0166】
− 不溶性塩の形で第2材料の前駆体から第2材料を沈殿するための沈殿浴。この場合も、また、第1材料の中に数種の別の第2材料の共沈殿物を生成するように、浴は随意に数種類の前駆体を含んでもよい。
【0167】
これら2つの事例では、重要な工程は、確実にイオン前駆体を有機保護膜の中に浸透させることにある。
【0168】
このことは、第1材料、例えば有機膜、が第2材料のこの前駆体を受け入れることができると考えられる。第1材料が第2材料の前駆体を第1材料の内部に容易に受け入れるならば、次の予防策が必ずしも必要であるとは限らない。
【0169】
もう一方で、第1材料が、第1材料の前駆体を受け入れるのが容易ではない、又は難しいならば、この挿入を可能にする又は挿入を改善することが必要であるかも知れない。これを実行するには、この難しい挿入の出発点次第であるが、種々の解決策を採り入れてもよい。このような容易ではない挿入の出発点が、よく見かける何時ものケースと思われる第1材料の形態による三次元的大きさならば、解決策は、好適な溶媒を使って、第1材料を膨潤することにあるのかも知れない。第1材料がポリマーである場合、このような好適な溶媒、例えば前記ポリマー用溶媒及び/或いは前記ポリマーを“膨潤”するための溶媒又は溶液でもよい。
【0170】
有利なことには、第1材料が第2材料のイオン前駆体を含む液相によって少なくとも膨潤され得る。
【0171】
例えば、第2材料の前駆体がイオン性であるならば、第2材料の前駆体を第1材料の中に挿入する場合、第2材料の前駆体を含む溶液は、高度の無極性溶媒を除いて、比較的高い誘電体誘電率の液体であるのが好ましい。
【0172】
水溶液からの電着による金属膜の作製に関して、及び水中の溶解性(溶解度積)に関しても、先行技術情報は豊富にあるので、水によって膨潤される膜の電解グラフト化保護膜が、本発明において好適なのは有利である。
【0173】
付図5Aの結果によって判るように、例えば、第1材料としてのP4VPは水で膨潤される:厚さ100nmのP4VP膜を、5g/リットルの硫酸銅を含む水溶液の中に10分間浸漬すると、銅(II)イオンが膜の中に浸透することを示す赤外(IRRAS)で特に見易いピリジン/銅(II)イオン錯体の形成に繋がるのに対して、水は、溶媒ではなくP4VPにとっては膨潤剤に過ぎない。
【0174】
同じ膜を硫酸銅溶液から取り出し、CuSOを含まない水の中に30分間浸漬し、再び取り出し、乾燥すると、付図5Bのスペクトルと同じスペクトルとなり、銅(II)イオンが電解グラフト化膜の中で“捕捉さえされ”得ることが判る。この結果は、電解グラフト化膜が錯化基を含むこと、及び形成されたピリジン/銅(II)イオン錯体が水/銅(II)イオン錯体より安定であることの事実に明白に関連付けることができる。本発明者等は、銅(II)イオンを含む特に安定な錯体となる、アンモニアを含む溶液の中に浸漬することにより、銅(II)イオンが膜から“取り外され”得るが、この銅(II)イオンは最初に膜の中に形成されるピリジン/銅(II)イオン錯体より明らかに安定であることを実際に確認した。
【0175】
電解グラフト化ポリマーの形の第1材料への同じタイプの浸透が、前記ポリマーに対する真の溶媒の中で実施されるならば、このタイプの浸透を得ることが可能である:従って、銅(II)イオン又は亜鉛(II)イオンをP4VP膜の中へ、又はポリアクリロニトリル(PAN)膜の中へ浸透することは、P4VP及びPANが可溶である(溶液になる)有機液体であるDMFの中に銅(II)イオン又は亜鉛(II)イオン(各々)のDMF溶液を使って極めて容易に達成される。
【0176】
一般に、挿入溶液の中の前駆体イオンは水の中より可溶性が低いので、水の誘電率より低い誘電率を持つ有機溶媒は、水の中で考えられる同じ高濃度の挿入溶液を第2材料の前駆体イオンの中で調製することはできない。しかしながら、この短所は、例えば相間移動触媒の中で、又は液/液抽出プロセスの中で使用される有機相に極めて可溶性である有機対イオンのような特定の有機対イオンを使うと解消され得る:例えば脂肪酸カルボキシレート(石けん)、スルホン酸アルキル、ホスホン酸アルキル、リン酸アルキル、等あるが、これらにより配合物は更に高価になる。本発明者等は、浸漬浴の中の濃度が低くなるとき、電解グラフト化膜の中への前駆体イオンの浸透は、一般に遅くなることを観察した。
【0177】
例えば、第1材料にとって優れた膨潤剤であり、そして第2材料の前駆体も溶解され得る液体を見つけることが難しい場合、本発明の第3の実施態様を使用するのが有利である。この第3実施態様は、例えば第1材料の前駆体も第2材料の前駆体も含む表面上に第1材料をグラフト化するための溶液を使用することにより実施可能である。表面上への第1材料の電解グラフト化は、前述の方法で、又は他のいずれの好適な技術によっても実施してよい。第1材料のグラフト化の実施が終わると、既に第2材料の前駆体を含むポリマー膜が得られる。従って、本発明の第3実施態様によると、前駆体を挿入する工程は、基板の表面上に第1材料を配置する工程と同時に実施される。第2材料の前駆体を第1材料の中に挿入する独立工程、及びその前駆体を第2材料へ転化する前の、表面の考えられる洗浄も省くこの実施態様によって、本発明のプロセスの適用に当っては時間を節約できる。第2材料の前駆体を第2材料へ転化する工程は、本発明の他の実施態様におけると同じ様に実施してよい。
【0178】
一旦、電解グラフト化膜の中への第2材料の前駆体イオンの浸透が本発明により実施されると、第1材料の中に挿入された第2材料の前駆体の前記イオンは、被覆された前記表面との接触時にこの第2材料が形成されて前記表面上に配置された前記第1材料の内部になるように、前記第2材料へ転化される。
【0179】
本発明により、この転化は、第2材料の前駆体を第1材料の中に挿入するのに使用される溶液を同じ溶液の中でも、別の溶液の中でも実施可能である。
【0180】
例えば、第2材料がその前駆体を第1材料の中に電着することにより得られるとき、このことは、前駆体イオンを含む電解浴を使って実施可能である。第2材料を第1材料の中に電着することは、電着物を調製する場合に、当業者によって周知されている手順によって実施可能である。電解グラフト化膜を電着される材料の中で“表面下に埋める”ことが望まれるならば、電解グラフト化膜にある第2材料の前駆体イオンが前駆体イオンを転化するための溶液の中にも存在していることが好ましい。具体的には、陰極析出が始まると、その析出は膜の内部で、先ず底部から、被覆される表面上の金属層の製造に通じる:膜のイオンは、底部により引き寄せられるが、この膜は、溶液のイオンを膜の中に引き寄せて、膜の中で第2材料の堆積による成長を続ける。
【0181】
本発明により、こうして、強化浴は、膜を前駆体イオンで充満させる浸漬浴と同じでよい。従って、浸漬溶液の中の第1材料を構成する“空いている(empty)”膜を浸漬すること、イオンが電解グラフト化膜の中に拡散するのを待つこと、その次に膜の中の第2材料の電着のための実施手順を促進することが有利である。
【0182】
本発明により、例えばニッケル上にあり、200nmのP4VP膜で強化された高品質の銅堆積物は、次の諸工程を実施することにより得られる:(I)蒸留水50ml、[CuSO・5HO]11g、HSO(d=1.83)3g及びNaCl6mgを含む水溶液の中に前記膜を30分間浸漬する工程;(II)電磁攪拌機を使って、平衡電位で15秒間、その次に−0.5V/(Ag/Ag)(2〜4A/dmの電流密度)で1分間の電気分解する工程。
【0183】
例えば、第2材料が沈殿によりその前駆体から得られるとき、この沈殿は、前記第2材料の前駆体の塩を沈殿するための対イオンを含む浴を使って実施してよい。勿論、この手順は、必ずしも全ての強化浴の中で沈殿が起こるとは限らないように、浸漬用に使用される浴とは異なる浴で実施されるのが好ましい。
【0184】
例えば、この実施手順により、P4VPで強化されたニッケル表面上の塩化銀の堆積物は、厚さ200nmの電解グラフト化P4VP膜を含むニッケル薄片を5g/リットルの硝酸銀溶液の中に30分間浸漬したのち、その薄片を取り出し、脱イオン水で濯いだのち、その薄片を数分間10g/リットルの塩化ナトリウム溶液の中に浸漬することにより得られる。
【0185】
例えば、電解グラフト化P4VP膜を含まないニッケル薄片の上に同じ操作を実施しても、NaCl溶液で処理した後には何の堆積物も得られない。
【0186】
電解グラフト化保護有機被膜の内部に堆積物を形成する原理を詳細に説明してきたので、本発明のプロセスの有利な変形体を下記で説明する:
【0187】
− 第2材料の前駆体が前駆体カチオンの形であるならば、第2材料の前駆体を第1材料に浸透させることは、浸透が僅かな陰極電位で実施されると、カチオンを膜に引き付けることができ有利に促進され得る。唯一の問題となるパラメータは、2つの工程を同時に実施することが望まれないならば、クーロン引力及び泳動電流を確実にするのに充分なカソード性であり、及び第2材料を形成するために前駆体のこれらのイオンの還元を実施するのに可成り低いカソード性である電位を見つけることができるパラメータである;
【0188】
− 第2材料の前駆体の転化が前駆体イオンの還元から成るとき、この転化は電着ではなく、第1材料を構成していて前駆体イオンを含む電解グラフト化有機膜を化学還元剤の溶液の中に浸漬することにより化学的レドックス経路により実施され得るのも有利かも知れない。例えば、ニッケル上の強化銀の膜は、電解グラフト化された200nmのP4VP膜で被覆されたニッケル薄片を、5g/リットルの硝酸銀溶液の中に30分間浸漬したのに続いて、脱イオン水で濯いだのち、80℃に加熱したグルコース溶液の中にその薄片を数分間浸漬することにより得られる。しかしながら、第2材料の前駆体を第2材料へ転化するプロセスにより消費される前駆体イオンの量を構成する溶液の中に第2材料の前駆体のイオンが存在しないならば、電解グラフト化膜の中への拡散によってこのタイプの実施手順は保護層を、一般に、必ずしも第2材料の中に完全に埋め込むことができるとは限らないことが注目される。
【0189】
例えば、電解グラフト化は、表面/第1材料の界面での共有結合の形成により、特に表面と補充材料との間に強固な保護物を生成できる。
【0190】
前述のように、前記第1材料の電解グラフト化より弱い結合になる表面上の第1材料の堆積も、本発明のプロセスにより実施することが可能である。このことは、例えば、本来的に強固さが劣るけれども、それでも意図される用途によっては受け入れられる、第1材料から成る保護に通じる。
【0191】
このことは、電解グラフト化より簡単である、浸漬(“ディップ−コーティング”)、遠心分離(“スピン−コーティング”)又は吹付けのようなプロセスにより、例えば有機被膜の形で第1材料を堆積することにより実施してもよい。これらの3種類の堆積方法は当業者にはよく知られている。
【0192】
遠心分離を使い浸漬溶液の中のポリマーの濃度、装置の回転速度及び運転時間を調整することにより、有機堆積物の厚さを制御できることが知られている。浸漬の実施手順では、遠心分離の回転速度パラメータを変更してポリマーの厚さを旨く制御できるのは、ポリマー溶液の中の対象物の降下速度であるが、とりわけ上昇速度である。吹付け実施手順では、厚さは、液滴のサイズ、液滴の噴出速度(とりわけ、ノズルの形状特性及びキャリヤガスの圧力による)及びノズルと処理される表面との距離を制御することにより制御可能である。これらの因子により本発明のプロセスの表面上への第1材料の堆積を調整できるので、これらの因子は完全に本発明の実施の範囲内にある。
【0193】
本発明者等は、例えば、DMFの中に5質量%のP4VPを含む溶液の中に薄片を浸漬することによってP4VP堆積物を作製することにより、ニッケル表面上にP4VPで強化された塩化銀の堆積物を得た。こうして調製した薄片を一次真空のもとで40℃の炉の中で4時間乾燥し、5g/リットルの硝酸銀溶液の中に30分間浸漬したのち、取り出して脱イオン水で濯いだのち、10g/リットルの塩化ナトリウム溶液の中に数分間浸漬した。P4VP膜を含まないニッケル薄片について実施した同じ操作では、NaCl溶液で処理した後では堆積物は何も得られない。同じタイプの膜は、遠心分離により堆積したP4VP膜を使って、又はこれとは別に浸漬若しくは遠心分離によって堆積したPHEMA膜によって容易に得ることが可能である。
【0194】
第2材料の前駆体を挿入するプロセス及び第2材料の前駆体を第1材料の内部で第2材料へ転化するプロセスは、電解グラフト化膜を使って先行の文節で考察したプロセスと同じである。前記電解グラフト化ポリマーの場合と比較して、この場合には不溶性ポリマーを選択することが好ましいことだけを留意する。更に、第2材料の前駆体を第1材料の内部に挿入するための溶液で表面を洗浄しないように、これらのポリマーは強化溶液の液体で膨潤され得るが溶解されないのが好ましいように選択されるのが好ましい。原理的には、いずれのポリマーも好適であるかも知れない。ポリマーが好適であるためには、強化材料の前駆体が可溶である、ポリマー用の溶媒及び膨潤剤を知れば十分である。溶媒は、ポリマーを表面に、例えば遠心分離(“スピン−コーティング”)により塗布する時にポリマーを溶解するのに使用され、そして膨潤剤は強化材料の前駆体を挿入するのに使用される。
【0195】
本発明者等は、例えばDMFの中に5質量%のP4VPを含む溶液の中に薄片を浸漬することにより銀イオンで充満され、硝酸銀で飽和されたP4VPの堆積物を作製することにより、ニッケル表面上にP4VPで強化された塩化銀の堆積物を得た。こうして調製した薄片を一次真空のもとで、40℃の炉の中で4時間乾燥し、次いで10g/リットルの塩化ナトリウム溶液の中に数分間浸漬した。
【0196】
第1材料が、例えば導電性又は半導体性の表面上で層状化された第1材料であるとき、この材料は、好ましくは高分子状であり、優先的にはポリマー状であるこの第1材料を含む層状化溶液を使う浸漬又は遠心分離により堆積させてもよい。
【0197】
先に詳述したように、これら2種類の堆積プロセスは、特に有機堆積物の厚さを調整する方法を知っている当業者には周知であり、これらのプロセスによって本発明のプロセスの中で表面上に第1材料の堆積物が調整され得るので、これらのプロセスを本発明で使用できる。
【0198】
従って、例えば、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)(PLAGA、50:50、MM=50−75000g/モル、アルドリッチ(Aldrich))の1質量%をクロロホルムに入れた溶液の中に3分間、316Lステンレス鋼薄片を浸漬し、0.05cm/秒の速度で薄片を取り出すことにより200nmの均一なPLAGA膜(粗面計による薄片の上部及び底部での測定値)が得られ、一方、0.15cm/秒の速度で薄片を取り出すことにより400nmの膜が得られる。
【0199】
一旦、本発明の意味の範囲内の第1材料を構成する、層状化される膜が表面に堆積されると、本発明のプロセスの次の工程、即ち第2材料を第1材料に挿入する工程が実施される。実際に、これは、本発明の意味の範囲内での層状化に該当する。層状化は、この膜を含む表面を、第2材料のイオン前駆体を含む溶液の中に浸漬することにより実施してもよい。強化浴と呼んでもよいこの浴は、例えば、金属カチオン、即ち層状化される及び有機膜の内部に金属層の形である第2材料の前駆体、を含む。この例は、付図2に概略で図示されている。
【0200】
それは、前記のような浴でもよい。この事例でも、重要な工程はイオン前駆体を確実に有機保護膜の中に浸透させることにある。本発明で使用されるプロセス及び溶媒は前述のそれらと同じである。
【0201】
前述の保護実施手順について言えば、層状化されるポリマーの中に、強化溶液のイオンを錯化できる基を配置することが有利となり得る。しかしながら、本発明による層状化は、むしろその特有の特性のために選択された特定の有機材料を導電性又は半導体性の表面に付着するために実施されるので、この材料は錯化基は何も含まなくてもよい。下記の実施例で説明しているように、それにも拘らず、後者の場合には層状化が本発明のプロセスによって可能である。
【0202】
例えば、第1材料に対して優れた膨潤剤であり、しかも第2材料の前駆体も溶解できる液体を見つけることが難しい場合、本発明の第3の実施態様を使用するのが有利である。具体的には、好適な膨潤剤がないならば、本発明により、第2材料の前駆体を溶解する、しかも第1材料を表面上に堆積もできる溶媒を使用することが可能である。このような第3の実施態様は、例えば第1材料、例えば層状化可能なポリマー、も第2材料の前駆体、例えば強化材料も含む溶液を使用することにより実施することが可能である。第1材料の堆積は、例えば遠心分離(“スピン−コーティング”)又は本明細書に記載されているいずれのその他の好適な技術によっても実施してよい。一旦、堆積物が作製されてしまうと、既に第2材料の前駆体を含むポリマー膜が得られる。従って、この第3実施態様によると、前駆体を挿入する工程は、第1材料を基板の表面上に堆積する工程と同時に実施される。第2材料の前駆体を第1材料の中に挿入し、しかも前記前駆体を第2材料へ転化する前に、考えられる表面洗浄の独立工程を避けるこの実施態様によって、本発明のプロセスの適用の際に時間を節約できる。層状化可能な材料の内部に強化材料を構成する工程は変化しないままである。
【0203】
一旦、第1材料への第2材料の前駆体の浸透が実施されてしまうと、この前駆体は、溶液の中で前記プロセスの1個以上を実施できる前記第2材料へ転化される。
【0204】
例えば:
− 電着は、好ましくは前駆体イオンを含まない電解浴の中で実施されてもよく、前駆体の転化は、電解堆積物の調製の場合に当業者に周知の手順に従って実施される。この実施態様によると、図2に示しているように、電解グラフト化膜は、電着材料の中で“表面下に埋められ(submerged)”ない。例えば、ニッケル上の、又は316Lステンレス鋼上のPHEMAの強力な密着性堆積物は、次の諸工程を実施することにより得られる:(I)DMFの中に5質量%のPHEMAを含む溶液の中に薄片を浸漬する工程;(II)前記薄片をヘアドライヤーで20秒間乾燥する工程(得られる膜の厚さは約200nmである);(III)蒸留水50ml、CuSO・5HO 11g、HSO(d=1.83)3g及びNaCl 6mgを含む水溶液の中に前記膜を3分間浸漬する工程;(IV)前記薄片を取り出して、前記薄片を、前記溶液と同じであるが、硫酸銅を含まない溶液の中に浸漬したのち、電磁攪拌機を使って、 平衡電位で15秒間、次に、−0.5V/(Ag/Ag)(2〜4A/dmの電流密度)で30秒間電気分解する工程。最後に、薄片をDMFの中で超音波により2分間濯ぐ。層状化した表面上にPHEMAの膜が観察されるのに対して、層状化されていない同じ薄片上にはPHEMA膜が検出されない(浸漬によるPHEMAの堆積、電気分解のない逐次溶液の中に浸漬);
【0205】
− 膜の中に挿入されている前駆体イオンの塩を沈殿するために対イオンを含む浴の中で沈殿を実施してもよい。勿論、この手順は、必ずしも強化浴の全てで沈殿させるとは限らないように、第1材料への前駆体の挿入に使用される浴とは別の浴を使って実施されるのが好ましい。例えば、ニッケル上の密着性P4VP堆積物は、DMFの中に5%P4VPを含む溶液の中に、次いで5g/リットルの硝酸銀溶液の中にニッケル薄片を3分間浸漬し、その後、薄片を取り出し、薄片を脱イオン水で濯いだのち数分間10g/リットルの塩化ナトリウム溶液の中で浸漬したのち、DMFの中で2分間超音波で濯ぐことにより得られる。硝酸銀溶液の中に第2材料の前駆体を挿入する工程を外して実施した同じ操作では、DMFで濯いだ後にP4VP膜は残らない。既に銀イオンで荷電されたP4VP膜の堆積が実施されている前記の例も参照されたい。
【0206】
前述の本発明のプロセスの2通りの有用な変形体もここで適用できる。第2材料の前駆体のカチオンの促進される浸透について、膜の中に電着される金属の量は、電着過程で通過する電荷を制御することにより有利に制御可能である。
【0207】
次の実施例は、導電性又は半導体性の表面に種々の材料を付着することを説明すること、及び得られる生成物を特徴づけることを意図している。これらの実施例は、付図を参照しながら、説明及び非限定的目的のために説明する。
【実施例】
【0208】
実施例1
電解グラフト化P4VP膜を使う保護物による金の表面への銅の付着
本実施例は、電解グラフト化ポリ(4−ビニルピリジン)(P4VP)膜から成る保護物を使い、金の表面への銅の強い密着性付着を説明する。図1は、本発明による本実施例の略図である。
【0209】
厚さ30nmの電解グラフト化P4VP膜を先ず316Lステンレス鋼薄片上に調製し、その表面を、TEAP5×10−2モル/リットルの存在で、DMFの中に40容量%の4−ビニルピリジンを含む溶液の中に浸漬し、200mV/秒で−0.7〜−2.9V/(Ag/Ag)で50回のボルタンメトリー掃引にかける。
【0210】
こうして処理した薄片をDMFで濯ぎ、アルゴン流のもとで乾燥したのち、脱イオン水200ml中の硫酸銅[CuSO・5HO]10gの溶液の中に25分間浸漬する。次に、薄片を、数回の脱イオン水の噴射で速やかに濯いだのち、DMFの中に浸漬する。次いで、この薄片を−1.15V/SCEの一定電位でT時間、陰極分極にかける。
【0211】
こうして同じ方法で調製した3個の薄片を、各々、T=50(L1)秒、120(L2)秒及び240(L3)秒の分極時間で処理する。
【0212】
次いで、薄片を、2分間超音波によりDMFで濯ぎ、アルゴン流のもとで乾燥する。これらを付図6に示している。
【0213】
薄片を光電子分光法により分析する。この分析の結果を付図に示している。この図では、薄片のスペクトル(a)が、銅(II)イオン溶液に浸漬する工程の直後、即ち強化材料をP4VP膜の中に堆積する前に、銅の2p軌道のゾーンの中で得られたスペクトルである。銅(II)イオンの2p1/2及び2p3/2の各ラインが、スペクトルの中で、各々、約938及び958eVで観察される。スペクトルb)は、50秒間分極した後で得られたスペクトルであり、このスペクトルは、濯ぎの後の、本質的に銅(II)イオン及び金属銅の2p3/2準位に特有の約932eVに極めて小さいショルダー部を示している。スペクトル(c)及び(d)は、各々、120秒及び240秒間の分極後に強化材料を堆積した後に得られたスペクトルである:これらのスペクトルは、銅(II)イオンの2p準位のピークが消滅して、金属銅の2p準位のピークになっていて、P4VP膜の内部の316Lステンレス鋼表面上の強化材料の形成を示している。
【0214】
付図6の画像で判るように、表面上の銅の堆積物の形成は充分な分極が行なわれた薄片の場合には明瞭に観察される。この堆積物は密着性がある。特に、この堆積物はDMFの中での超音波による2分間の濯ぎに耐える。
【0215】
比較すると、同じ条件下ではあるが、P4VP膜が存在しなくて調製された銅の堆積物は、非密着性の粉末状堆積物となり、この堆積物は、超音波を使いDMFで濯ぐことにより殆ど完全に取り除かれる。
【0216】
実施例2
電解グラフト化P4VP膜を使う保護物による金の表面への銅の付着(II)
実施例1の実験を繰り返すが、別の電着溶液を使用し、この実験は使用済みの浴の中での通常の電気めっきで、しかもバレル(barrel)の中の電気めっきでもあり、比較的良い品質の光沢のある堆積物が得られる。本実施例は、保護プロセスと電気めっきプロセスとの適合性を説明していて、従って、銅/金の界面の強化からと同時に、通常と同じプロセスにより銅から成る対象材料を成功裡に堆積することからのメリットを得ることが可能である。
【0217】
これを実施するために、電解グラフト化P4VP膜で被覆された金の薄片を、蒸留水50ml、CuSO・5HO 11g、HSO(d=1.83)3g及びNaCl 6mgを含む水溶液の中に30分間浸漬したのち、この溶液の中で平衡電位で15秒間、次いで磁気攪拌をしながら、−0.5V/(Ag/Ag)(2〜4A/dmの電流密度)で3分間電解する。
【0218】
銅の、極めて光沢性の、均一な堆積物が得られ、この堆積物は、DMFの中で超音波による2分間の濯ぎに耐えるので、表面への優れた密着性を示すのに対して、同じ堆積物は、事前保護を施さないと同じ濯ぎ条件下では劣化する。
【0219】
実施例3
電解グラフト化P4VP膜を使う保護物による金の表面へのニッケルの付着
実施例2と同じ実験を行なうが、ニッケル(II)イオン、金属ニッケルの堆積物の前駆体の強化溶液を使うが、脱イオン水50ml、硫酸ニッケル12.5g、塩化ニッケル3.25g及びホウ酸2gを含む。
【0220】
厚さ30nmの電解グラフト化P4VP膜で被覆された金薄片を、こうして調製した溶液の中に30分間浸漬したのち、前記溶液の中で平衡電位で15秒間、次いで、電磁攪拌機を使って2〜4A/dmの陰極電流密度で3分間電気分解する。
【0221】
DMFの中で超音波による2分間の濯ぎに耐えるので表面が優れた密着性を示すニッケル堆積物が得られるのに対して、同じ堆積物は、事前保護を施さないと同じ濯ぎ条件下では劣化する。
【0222】
実施例4
電解グラフト化PHEMA膜を使う保護物による金の表面への銅の付着
本実施例は、電解グラフト化PHEMA膜による保護物の調製を説明する。実施例2とは対照的に、このポリマーは、強化用溶液の銅(II)イオンに対する錯化剤として作用できる官能基を含まない。
【0223】
TEAP(過塩素酸テトラエチルアンモニウム)5×10−2モル/リットルの存在で、DMFの中にメタクリル酸ヒドロキシエチル0.4モル/リットルを含む溶液の中に浸漬し、50mV/秒で+1.0〜−3.0V/(Ag/Ag)で10回にボルタンメトリー掃引を実施することにより、先行の実施例の金の薄片と類似の金の薄片上に約40nmのポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)の電解グラフト化膜を作製する。
【0224】
こうして得られた薄片を、蒸留水50ml、CuSO・5HO 11g、HSO(d=1.83)3g及びNaCl6mgを含む水溶液の中に30分間浸漬したのち、溶液の中で平衡電位で15秒間、次に電磁攪拌機を使って、−0.5V/(Ag/Ag)(2〜4A/dmの電流密度)で3分間電気分解する。
【0225】
銅の、極めて光沢性の、均一な堆積物が得られ、この堆積物はDMFの中で超音波により2分間の濯ぎに耐えるので、表面は優れた密着性を示すのに対して、同じ堆積物は、事前保護を施さないと同じ濯ぎ条件下で劣化する。
【0226】
実施例5
電解グラフト化PHEMA膜を使う保護物による316Lステンレス鋼の表面への銅の付着
本実施例は、ビニルモノマーだけを含む溶液を使う厳密に電解グラフト化されたポリマー膜を使用するのではなく、ジアゾニウム塩を使い電気開始型(electro-initiated)ポリマー膜、即ちフリーラジカル重合前駆体を使う保護物の調製を説明する。この保護物が電解グラフト化膜で調製されてなくても、優れた品質の保護物が観察される。更に、先行の実施例で使用される堆積物の金属の上に保護物を作製することが観察される。
【0227】
NaNO 2.5×10−2モル/リットル及びテトラフルオロホウ酸4−ニトロフェニルジアゾニウム 10−2モル/リットルの存在で、DMFの中にメタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)3.5モル/リットルを含む溶液の中に浸漬された316Lステンレス鋼表面上に100mV/秒で−0.6〜−3.0V/(Ag/Ag)で40回のボルタンメトリー掃引を実施することにより、316Lステンレス鋼上にPHEMAの300nm膜が形成される。
【0228】
こうして得られた薄片を、蒸留水50ml、CuSO・5HO 11g、HSO(d=1.83)3g及びNaCl 6mgを含む水溶液の中に30分間浸漬したのち、溶液の中で平衡電位で15秒間、次に電磁攪拌機を使って、−0.5V/(Ag/Ag)(2〜4A/dmの電流密度)で5分間電気分解する。
【0229】
銅の、極めて光沢性の、均一な堆積物が得られ、この堆積物はDMFの中で超音波による2分間の濯ぎに耐えるので、表面は優れた密着性を示すのに対して、同じ堆積物は、事前保護を施さないと同じ濯ぎ条件下で劣化する。
【0230】
実施例6
銅を使う電気化学的層状化による金の表面へのP4VPの付着
本実施例は、層状化によりポリマーを金属表面に付着することを説明していて、このポリマーは、付着が望まれるポリマーが表面上に電着することにより簡単に堆積される。
【0231】
DMFの中に5質量%のP4VPを含む溶液を使い、先行実施例と類似の金の薄片上に電着することにより、こうして約100nmのP4VP堆積物を作製する。こうして処理した薄片を、ヘアドライヤーで乾燥したのち、脱イオン水200mlの中に硫酸銅10gを含む溶液の中に25分間浸漬する。次いで、この薄片を脱イオン水で濯いだのち、脱イオン水500mlの中に硫酸銅2gとNaCl 3gを含む電解浴の中に浸漬する。その次に、薄片を、200mV/秒で0〜−0.5V/SCEの10回のボルタンメトリー掃引にかけたのち、薄片を取り出し、脱イオン水で濯ぎ、次に10%のアンモニア水溶液の中に20分間浸漬することにより過剰の銅(II)イオンから錯化を解き(decomplex)、最後にDMF溶液の中に2時間30分浸漬することにより濯ぐ。
【0232】
図8は、ポリマーのピリジン環の振動モードの範囲内で前記の種々の工程の中で得られる薄片の赤外スペクトルを示している。スペクトル(a)及び(b)は同じであり、電着により金の表面上に堆積したP4VP膜に対応している。1600cm−1のバンドはピリジン基に特有のものである。スペクトル(b)及び(d)は、P4VP膜で被覆された薄片を濃厚銅溶液の中に浸漬したのちに得られる:前記ピークの分裂が観察されて、約1620cm−1で第2ピークが現われるが、このピークはピリジン環と銅(II)イオンとの間で形成された錯体に特有のものである。スペクトル(c)は、層状化物を形成することなく錯化溶液の中に浸漬した直後に薄片を濯ぐ工程を簡単に実施することにより得られるスペクトルである:この薄片は殆ど完全に洗浄されたことが観察される。対照的に、スペクトル(f)は、濯ぎの実施手順の前に層状化を実施することにより得られるスペクトルである:この膜がDMFによる2時間30分の濯ぎに耐えたことと違って、最初に堆積したままのP4VP膜の特性バンドは明瞭に観察される。簡単な試験によると、この膜は超音波による2分間のDMFでの濯ぎにも耐えることが判り、この膜は金の表面への極めて優れた密着性を発現する。
【0233】
実施例7
銅を使う電気化学的層状化によるニッケル表面へのPHEMAの付着
本実施例は、強化浴の前駆体イオンを錯化する官能基を含まないポリマーの層状化を説明する。層状化はこれらの条件下でも実施してもよいことが観察される。
【0234】
先ず、厚さ約200nmのPHEMA膜を、DMFの中に5%のPHEMAを含む溶液でニッケル薄片上で遠心分離により作製したのち、ヘアドライヤーで乾燥する。
【0235】
こうして得られた薄片を、分割して、蒸留水50ml、CuSO・5HO 11g、HSO(d=1.83)3g及びNaCl 6mgを含む水溶液の中に3分間浸漬したのち、溶液の中で平衡電位で15秒間、次に電磁攪拌機を使って、−0.5V/(Ag/Ag)(2〜4A/dmの電流密度)で30秒間電気分解する。図9Bは、PHEMA膜の存在で得られる電解電流(連続線)と、PHEMA膜が存在しないで得られる電解電流(破線)との比較である。電気分解が完了すると、薄片を先ずDMFで簡単に、次いでDMFの中で超音波によって2分間濯ぐ。
【0236】
非処理部分では、PHEMA膜が全て消失しているのが観察されるのに対して、処理済みの部分では、高い密着性の、銅の層状化PHEMA膜が回収される。この区画のIRRASのスペクトルは、ポリマーが出発PHEMA膜の構造を正確に有することを示している。これらの結果を付図10A〜10Cに示している。
【0237】
実施例8
銅を使う電気化学的層状化によるニッケル表面へのPANの付着
本実施例は、銅を使う層状化による金へのポリアクリロニトリル(PAN)の付着を説明する。
【0238】
PANの特徴は、これが特に疎水性ポリマーであり、このポリマーは水によって溶解もせず、膨潤もされないことである。この場合の層状化は、PANに対する溶媒である10%のDMFを含む電気分解溶液の中で実施する。
【0239】
このプロセスは、実施例7のように、即ちDMFの中に5%のPANを含む溶液を使って遠心分離によりニッケル薄片上に200nmのPANを堆積させることにより実施する。
【0240】
層状化及び濯ぎの各工程は、10%のDMFを電解質混合物に添加すること以外は、実施例7の各工程と全て類似である。
【0241】
IRRASによって厚さ40nmのPAN膜の存在が観察されるが、これは、膜の一部が、恐らく濯ぎ工程の過程で、溶解し、層状化が不充分であったことを示している。
【0242】
20%のDMFを含む層状化溶液を使って実施した同じ実験では、約100nmの膜を有効に得ることができる。
【0243】
実施例9
P4VP膜を使う保護物による金の表面への塩化銀の付着
沈殿により得られる堆積物用の保護物として電解グラフト化P4VP膜を使用することを本実施例で説明する。
【0244】
実施例1の実施手順に従って金の薄片上に厚さ約30nmのP4VP膜を作製する。こうして得られた薄片を、硝酸銀5g/リットルの溶液の中に30分間浸漬し、脱イオン水で速やかに濯いだのち、攪拌しながら10g/リットルの塩化ナトリウム溶液の中に数分間浸漬する。
【0245】
水を使って濯ぎ、そしてDMFの中で超音波による2分間の濯ぎに耐える密着性塩化銀堆積物の膜が観察される。
【0246】
電解グラフト化P4VP膜を含まない金の薄片上に実施した同じ操作では、NaCl溶液を使って処理した後では何の堆積物も見られない。
【0247】
実施例10
電解グラフト化ポリ−ε−カプロラクトン膜を使う保護物による316Lステンレス鋼表面への銅の付着
本実施例は、前駆体が求核又は求電子攻撃により開裂可能な環状分子、この場合はε−カプロラクトン、の電解グラフト化膜を使い、金属膜を強化する可能性を説明する。
【0248】
先行実施例と同じ316Lステンレス鋼薄片を、DMFの中に5モル/リットルのε−カプロラクトンを含み、10−2モル/リットルのテトラフルオロホウ酸4−ニトロフェニルジアゾニウム及び2.5×10−2モル/リットルの硝酸ナトリウム(NaNO)を含む溶液の中に浸漬する。この薄片は、3本電極組立体の中で作用電極として機能し、平衡電位(−0.147V/(Ag/Ag))〜−2.8V/(Ag/Ag)、100mV/秒で40回のボルタンメトリー掃引にかける。薄片を、アセトンで、次いで水で濯ぐと、ポリ−ε−カプロラクトンに特有の1739cm−1で強いIRバンドを示す、厚さ100nmの膜の形成が観察される。
【0249】
こうして得られた膜は、実施例1及び2に記載の実施手順と同じ手順に従って、銅の層の堆積物に対する保護物として使用できる。
【0250】
実施例11
テトラフルオロホウ酸4−カルボキシベンゼンジアゾニウムから得られる膜を使う保護物による鉄表面への銅の付着
本実施例は、第1材料の前駆体として錯化基を含むジアゾニウム塩の使用、及びこうして構成された保護物の基材に密着する金属膜の構成物も説明する。
【0251】
10−2モル/リットルのテトラフルオロホウ酸4−カルボキシベンゼンジアゾニウム及び5×10−3モル/リットルのTEAPを含む溶液の中に、鉄薄片を浸漬する。この薄片は、3本電極組立体の中で作用電極として機能し、平衡電位(≒+0.3V/(Ag/Ag))〜−1.5V/(Ag/Ag)で、200mV/秒で5回のボルタンメトリー掃引にかける。薄片を、アセトンで、次いで水で濯いだのち、カルボキシフェニル基による表面の改善に特有の、3235及び1618cm−1での強いIRバンドを示す、厚さ約20nmの膜の形成が観察される。
【0252】
こうして得られた膜は実施例1及び2に記載の実施手順と同じ手順に従って、銅の層の堆積物に対する保護物として使用できる。
【0253】
具体的には、実施例2と類似の処理により、DMFの中の2分間の超音波処理に耐える金属銅の膜が得られることが観察される。
【0254】
追加実施例
実施例12
特別な本実施例は、電解グラフト化有機層によるシード層の完全な形成、そしてこの層の中に銅前駆体が挿入され、ぴたりと適合して強力な密着性金属銅シード層を提供するように変ること、及びダマシン型相互連結構造体の中のトレンチの電解充填(electrofilling)を得るのにその層を使用することを説明する。電解グラフト化下地層がなければ、銅シード層はTiN表面へ密着しない。
【0255】
基板は、絶縁材料として酸化ケイ素、及び銅の拡散に対するバリヤーとして10nmの有機金属化学蒸着(MOCVD)TiN層で被覆された2×4cmのシリコン板状試験片である。電解グラフト化の前に特別なクリーニングも表面処理も行なわなかった。実験は、クリーンルーム環境の中で行なったのではない。
【0256】
電解グラフト化膜は、アセトニトリルの中のアンモニア官能型テトラフルオロホウ酸アリールジアゾニウムの溶液、及び支持電解質として過塩素酸テトラエチルアンモニウム(TEAP)から得られる。
【0257】
電解グラフト化を、3本電極系の中で管理された電位で実施する。TiN表面を作用電極(わに口クリップによって接続される)として使用し、対電極はグラファイト表面であり、参照電極は銀電極である。これらを、EGG型式283ポテンシオスタット(プリンストン・アプライド・リサーチ(Princeton Applied Research))に接続する。
【0258】
先行実施例のように、厚さ約40nmの極めて適合性のある電解グラフト化層が得られる。
【0259】
金属前駆体の挿入を次の諸工程を使って電解グラフト化層の中で実施する:既に電解グラフト化されたTiN板状試験片をPd(II)溶液の中に浸漬する。電解グラフト化膜の中に存在している錯化アミン基のおかげで膜の内部にパラジウムイオンが挿入されることが観察される。次に、この板状試験片をジメチルアミノボロン(DMAB)で処理し、膜の内部でパラジウムイオンを金属パラジウムに還元したのち、銅無電解溶液の中に浸漬する:電解グラフト化膜の内部に存在しているパラジウムクラスターによる触媒作用のおかげで、処理表面全体に極めて薄く且つ均一な銅層が得られる。高解像度走査型電子顕微鏡(SEM)を使った検証によると、構成されたTiN基板上では薄い銅層は当初と全く同じ様な高度に適合性がある電解グラフト化有機層であり、約10nmの厚さを有することが判る(付図11)。
【0260】
7mA/cmの定電流条件下で硫酸銅の硫酸溶液を使って、この薄いシード層に更に銅の電着を実施する。以前に処理された板状試験片の上に均一な銅の層が速やかに形成される。
【0261】
基板は、更に、へき開され(clived)ていて、破面の断面をSEMにより検証する。トレンチの完全な充填は、極めて微細な空洞を伴って検出され、電解グラフト化層の中に新たに作られた薄い銅の層が、銅の電着の場合のシード層の役割をしたことを示している(付図12)。
【0262】
実施例13
本実施例は、単一浴の中でのビニルモノマーと銅前駆体との混合から電解グラフト化による銅シード層の完全な形成、及びそれを使って、ダマシンタイプの連結構造体の中でトレンチの電解充填を得ることを説明する。電解グラフト化前駆体が存在しないと、TiN表面上にはシード層が全く形成しない。
【0263】
基板は、絶縁材料として酸化ケイ素、及び銅の拡散に対するバリヤーとして10nmの有機金属化学蒸着(MOCVD)TiN層で被覆された2×4cmのシリコン板状試験片である。電解グラフト化の前に特別なクリーニングも表面処理も行なわなかった。実験は、クリーンルーム環境の中で行なったのではない。
【0264】
これらの基板を、先行の実施例の中で使用した3本電極系と類似の系で作用電極として使用すると、電解グラフト化層が得られる。電解グラフト化浴は、支持電解質としてTEAPを使い、ジメチルホルムアミドの中の4−ビニルピリジンと銅臭素(copper bromine)の溶液である。板状試験片は、電解グラフト化浴の中で板状試験片の3分の2の高さまで浸漬され、溶液の中に浸漬しない、わに口クリップに接触されている。
【0265】
華々しい結果が得られる:電極の接触部から数センチメートル離れていても均一な金属被覆物が得られる(メニスカスで5cm下方で行なった厚さ測定はAFMの精度と同じである)。
【0266】
底部から全高の約5分の1のところでSiO下地層まで水平にひと廻りしてTiN表面に引掻き傷を付ける補足実験を行なう。引掻かかれた範囲が浴の中に浸漬するように、引掻かれた板状試験片を引き摺り下ろして電解グラフト化浴の中に浸漬する。前述のように、板状試験片の全高の3分の2が電解グラフト化浴の中に浸漬されるが接点部(わに口クリップ)は浴の中に浸漬されない。
【0267】
電解グラフト化をボルタンメトリー条件下で実施し、メニスカス部から引掻き部まで均一な銅の層が得られるが、板状試験片の引掻き部から底部までの範囲に堆積物はない:電気的に接続されなかったTiN表面の範囲は被覆されない。このことにより、銅の層の成長は実際に電気によって活性化されること、及び堆積物は或る無電解メカニズムでは得られないことが確認される(付図13)。
【0268】
全体が引掻きのない板状試験片を使って観察されるように、AFMによる厚さ測定では、銅の層の優れた均一性、従って当初のTiN基板の抵抗率に対する感度が低いことが判る:銅の前駆体と一緒にされても、成長メカニズムは、電解グラフト化のような電気による開始反応の特性を有する。
【0269】
更に、有機前駆体(4−ビニルピリジン)を使わない類似の試験では、メニスカス部を除いて、TiNバリヤーの上に直接金属層を生成させることができず、その特性は、よく知られている抵抗率効果によると考えられる。
【0270】
しかしながら、電解グラフト化の過程で測定した電流は、単なる電解グラフト化反応を除いた場合の電流よりも急速に大きく(約数mA)なることは注目に値する。この電流の大半は、シード層上で分極の極く最初の瞬間に形成される銅前駆体から金属銅への還元によるものと考えることができる。シード層が及ばないところでの銅自体の成長が始まるとき、電解グラフト化による残りの電流は、恐らく直ぐには検出できない。
【0271】
銅の層の形態的挙動を検討するために、最後に、構成された試料について補足実験を実施した(トレンチ、幅0.22μm、間隔0.22μm、深さ400nm)。
類似のボルタンメトリー条件は、同じ実験計画を使い類似の浴の中で使用する。顕微鏡的に均一な類似の銅の層を得る。
【0272】
シード層が、板状試験片の3分の2を超えて得られ、残りの3分の1が露出したTiNとなるように、板状試験片の高さの3分の2を超えて浸漬する。
【0273】
処理された範囲をSEMで観察すると、バリヤー上には連続状で、且つ適合性のある金属層が明瞭に見られる。この重要な結果は、電解グラフト化膜だけで得られる高度の適合性と一致している。
【0274】
これらのシード層は、工業的な浴からの銅の電気化学析出(ECD)を開始するのに使用される。この目的に対して、電気接点が、以前に電解グラフト化されたゾーンで接合されている。従って、以前に電解グラフト化されなかったゾーンが溶液の中に浸漬されるように、ECD析出の過程で板状試験片は天地を逆にして使用される。
【0275】
ECDの後は、試料の態様に極めて関心がある:板状試験片の中央部の3分の1では、即ち以前に電解グラフト化された表面の上では、均一な優れた銅金属被覆層が得られるが、露出したTiN底部の3分の1では銅の堆積物は観察されない。更に、前述のように、接点部は板状試験片の上部の3分の1の所で接合されていて、ECD浴の中には浸漬しておらず、メニスカスから1cmを超えて配置された:従って、電解グラフト化シード層は、処理されたゾーン上の銅ECD堆積物を浴の中に浸漬させるのに充分な導電性であった(付図14)。付図14では、“x”は電解グラフト化領域を表す;“y”は電解グラフト化用の接点部を表す;“z”は電気めっき用の接点部を表す;そして“t”は電気めっき領域を表す。
【0276】
顕微鏡レベルで、銅の充填は、集束イオンビーム(FIB)を使いSEMで撮影した側面図で検証する。仮令、数個の空洞が観察されても充填は十分である。本発明者等は、更に条件が適切であれば(クリーンルーム、より良い表面管理及び調製、等)、更に良好な充填を得ることができると思われる(図15)。
【図面の簡単な説明】
【0277】
【図1】本発明の第1実施態様により、電解グラフト化ポリマー膜から成る保護物を使って、導電性又は半導体性の表面(基板)への金属(強化材料)の高度密着性付着の略図である。これは、例えば、ポリ(4−ビニルピリジン)膜を使う保護物により、金又は窒化チタンへの銅の付着を含む。
【図2】第1材料が表面上に単純に堆積され、そして第2材料が前記表面上への第1材料の付着を強化するときの、本発明の第2実施態様の略図である。これは、例えば、銅の電着による強化を利用するニッケルへのポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)の層状化を含む。
【図3A.3B】陰極分極によるアクリロニトリルの電解グラフト化に対する反応機構の図解である。グラフト化反応は、成長が表面(S)から起こる図3Aに対応する。図3Bは、非グラフト化ポリマーに繋がる主な寄生化学反応である。
【図4】表面上に単純に堆積した第1材料が第2材料の保護物を形成するときの、本発明の第1実施態様の略図である。
【図5A.5B】5g/リットルの硫酸銅を含む水溶液の中での10分間の浸漬の前(a)と後(b)の、ニッケル上の厚さ100nmのP4VP膜の赤外スペクトル(IRRAS)である。1617cm−1でのピークの分裂は、銅/ピリジン錯体の形成に特有のものであり、溶液の膜への浸透を証明している。
【図6】本発明のプロセスにより電解グラフト化されたP4VP膜から成る保護物により金の表面への銅の付着によって得られる3個の薄片の写真である。堆積する銅は、種々の時間での定電圧電着により得られる。左方から右方へ、各々、50、120及び240秒間の電着の結果が観察される。
【図7】銅の2p軌道の領域において、図6の薄片のX線光電子スペクトル(XPS)を検証する。スペクトル(a)は、電解グラフト化P4VP膜で被覆されたステンレス鋼薄片を銅(II)イオンの溶液の中に浸漬した後で得られるスペクトルである(実施例1を参照されたい);スペクトル(b)、(c)及び(d)は、P4VP膜の中に銅を電着してP4VP膜で保護した後に得られたスペクトルであり、膜の銅(II)イオンが次第に銅原子へ転化していることを示している。
【図8A.8B】層状化が実施されていない赤外スペクトル(8A(a−c))と比較した、P4VP膜が銅を使って層状化により堆積される時に得られる薄片のスペクトル(8B(d−f))である。スペクトル(a)及び(d)は同じであり、遠心分離により金の表面上に堆積されたP4VP膜に対応する。スペクトル(b)及び(d)は、P4VP膜でこうして被覆された薄片を濃厚銅液の中に浸漬した後に得られる。スペクトル(c)は、層状化を行なわずに錯化溶液の中に浸漬した直後に薄片を濯ぐ工程を簡単に実施することにより得られるスペクトルである:薄片は殆ど完全に洗い落とされていることが観察される。対照的に、スペクトル(f)は、原試料を濯ぐ前に層状化を実施することにより得られるスペクトルである:当初堆積したままのP4VP膜の特性バンドが明瞭に観察され、この差異は、この膜が2時間30分のDMFでの濯ぎに耐えたことである。簡単な試験によると、この膜は、DMFを使い2分間の超音波による濯ぎにも耐え、金の表面への極めて優れた密着性を発現することが判る。
【図9A.9B】各々、未使用電極上に銅(II)イオンを堆積するために使用される溶液のボルタンモグラムを示していて、前駆体材料(銅塩)の析出電位を定義できる。ポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)膜が存在しない前記の実施例7で得られたような点線として記録された電解電流に対して、(PHEMA)膜の存在で得られた電解電流を連続線として記録することにより、図9Bは比較が可能である。
【図10A.10B.10C】前記の実施例7の結果を説明するPHEMA膜の赤外スペクトル(IRRAS)である。図10Aは、金の薄片上に堆積した厚さ150nmのバージンPHEMA膜のスペクトルを示している。図10Bは、金の薄片上に堆積し、銅イオン溶液の中での浸漬により処理したのち、図9Bの条件下で電気分解した厚さ150nmのPHEMA膜のスペクトルを連続線として示している。図10Cは、10Bで説明した条件下で得た後、DMFの中で2分間超音波にかけたPHEMA膜のTrスペクトル(%)=f(数値(cm−1))を示している。
【図11】アリールジアゾニウム電解グラフト化膜から得られる推定10nmの銅シード層を示すへき開型板状試験片の側面のSEM写真である。
【図12】パラジウムで金属被覆されたアリールジアゾニウム電解グラフト化膜から得られたシード層上にECDにより銅で0.22μmのトレンチを充填したことを示すへき開型板状試験片の側面のSEM写真である。
【図13】DMFの中の4−VPと銅前駆体の溶液から電解グラフト化により得られる銅のシード層を含む、400nmSiO及び10nmの上層TiNバリヤー層を有する板状試験片全体の顕微鏡写真である。電解グラフト化に先立って、上層TiN層はSiOまで引掻かれて、溶液の中に浸漬したが接続されていないTiNゾーンには銅堆積物は観察されない。
【図14】4−VP系の電解グラフト化により得られてECDにより処理されたシード層を含む構造化した板状試験片の写真:(1)シード層だけのゾーン;(2)シード層+ECD;(3)露出したTiNゾーン。
【図15】4−VP+銅前駆体系電解グラフト化膜により得られるシード層上にECDにより銅で0.22μmのトレンチを充填したことを示すへき開型板状試験片の側面のSEM写真である。
【符号の説明】
【0278】
“S”は本発明のプロセスにより被覆されることが意図される、又は被覆されている表面;“1M”:は本発明の意味の範囲内の第1材料;“2M”:は本発明の意味の範囲内の第2材料;“P2M”:は本発明の意味の範囲内の第2材料の前駆体;“tr(%)”:はパーセンテージでの透過率;“数値(cm−1)”:はcm−1単位での波数;“cps(任意単位)”:は任意単位での秒当りのカウント数:“Eb(eV)”:はeV単位での結合エネルギー:“I(A)”:はアンペア単位での電流:“U(V)”:はボルト単位での電圧:“t(s)”:は秒単位での時間:を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の諸工程を含むことを特徴とする、第1材料及び第2材料による表面の被覆プロセス:
− 前記表面上に前記第1材料を配置する工程、
− 前記表面上に前記第1材料を配置することにある工程と同時に又はその後で、前記第1材料の中に前記第2材料の前駆体を挿入する工程、
− 被覆された前記表面上で、且つ前記表面上に配置された前記第1材料の内部に前記第2材料が形成されるように、前記第1材料の中に挿入された前記第2材料の前駆体を前記第2材料へ転化する工程。
【請求項2】
前記表面が無機物又は有機物であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第1材料が有機材料であり、前記第2材料が無機材料であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第1材料が有機高分子又はポリマーであり、前記第2材料が無機材料であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第1材料が、ビニルモノマー、機能化又は非機能化ジアゾニウム塩、機能化又は非機能化スルホニウム塩、機能化又は非機能化ホスホニウム塩、及び機能化又は非機能化ヨードニウム塩、並びにそれの混合物から成る群から選ばれるそれの化学前駆体から得られることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第1材料が、下記構造式(I)の1種以上の活性化ビニルモノマー(類)から得られることを特徴とする請求項1に記載のプロセス:
【化1】

式中、R、R、R及びRは、互いに独立して、次の有機官能基から成る群から選ばれる有機基である:水素、ヒドロキシル、アミン、チオール、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、イミド−エステル、酸ハロゲン化物、酸無水物、ニトリル、コハク酸イミド、フタルイミド、イソシアナート、エポキシド、シロキサン、ベンゾキノン、ベンゾフェノン、カルボニルジイミダゾール、パラ−トルエンスルホニル、パラ−ニトロフェニルクロロフォルメート、エチレン系、ビニル及び芳香族。
【請求項7】
、R、R及びRのなかの少なくとも1種類が、カチオンを錯化できる官能基であることを特徴とする請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第1材料が、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、アクリルアミド及びとりわけアミノエチル、アミノプロピル、アミノブチル、アミノペンチル及びアミノヘキシルメタクリルアミド、シアノアクリレート、ポリエチレングリコールジメチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、パラ−クロロスチレン、N−ビニルピロリドン、4−ビニルピリジン、ビニルハロゲン化物、塩化アクリロイル及び塩化メタアクリロイル、並びにそれの誘導体のようなビニルモノマーから成る群から選ばれるビニルモノマーの重合により得られるポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1材料が、膜の形で前記表面上に配置されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1材料が、遠心分離、吹付け、浸漬、電解重合及び電解グラフト化から選ばれる技術により前記表面上に配置されることを特徴とする請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第2材料が、電着され得る材料であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第2材料の前駆体が、前記材料のイオンであることを特徴とする請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第2材料が金属であり、前記第2材料の前駆体がこの金属のイオンであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第2材料の前駆体が、銅イオン、亜鉛イオン、金イオン、錫、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、リチウム、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、イットリウム、ニオビウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ランタニド及びアクチニドの各イオンから成る群から選ばれることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記第2材料が、沈殿、結晶化、架橋及び凝集から選ばれる技術により堆積され得る材料であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記第2材料の前駆体が、前記第2材料の不溶性塩であることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項17】
前記第2材料の前駆体用の溶媒でもあり第1材料用の溶媒でもある挿入溶液であって、前記第2材料の前駆体を含む前記挿入溶液によって前記第2材料の前駆体が、前記表面上に配置された前記第1材料に挿入されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記第2材料の前駆体用の溶媒又は分散剤でもあり、前記第1材料を膨潤する溶液でもある挿入溶液であって、前記第2材料の前駆体を含む前記挿入溶液を使用して、前記第2材料の前駆体が、前記表面上に配置された前記第1材料に挿入されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記表面上に配置された前記第1材料の中に前記第2材料の前駆体を挿入することにある工程が、前記第1材料又は前記第1材料の前駆体も前記第2材料の前駆体も含む溶液を使って前記表面上に前記第1材料を配置することにある工程と同時に実施されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記挿入溶液が水溶液であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
前記第2材料の前駆体が、電着及び沈殿から選ばれる技術により前記第1材料へ転化されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項22】
前記表面が導電性又は半導体性の表面であり、第1材料がビニルポリマーであり、第2材料が金属であり、及びこの金属の前駆体がこの金属のイオンであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項23】
導電性又は半導体性の基板と金属との間の界面強化のための、請求項1に記載のプロセスの使用。
【請求項24】
マイクロエレクトロニクスにおける相互接続部品の製造のための、請求項1に記載のプロセスの使用。
【請求項25】
金属表面の耐食処理における請求項1に記載のプロセスの使用。
【請求項26】
生体内に移殖され得る物体の表面処理における請求項1に記載のプロセスの使用。
【請求項27】
バイオチップの製造のための、請求項1に記載のプロセスの使用。
【請求項28】
触媒特性を持つ表面の製造のための、請求項1に記載のプロセスの使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の諸工程を含むことを特徴とする、第1材料及び第2材料による表面の被覆プロセス:
− 前記表面上に前記第1材料を配置する工程、
− 前記表面上に前記第1材料を配置することにある工程と同時に又はその後で、前記第1材料の中に前記第2材料の前駆体を挿入する工程、
− 被覆された前記表面上で、且つ前記表面上に配置された前記第1材料の内部に前記第2材料が形成されるように、前記第1材料の中に挿入された前記第2材料の前駆体を前記第2材料へ転化する工程。
【請求項2】
前記表面が無機物又は有機物であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第1材料が有機材料であり、前記第2材料が無機材料であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第1材料が有機高分子又はポリマーであり、前記第2材料が無機材料であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第1材料が、ビニルモノマー、機能化又は非機能化ジアゾニウム塩、機能化又は非機能化スルホニウム塩、機能化又は非機能化ホスホニウム塩、及び機能化又は非機能化ヨードニウム塩、並びにそれの混合物から成る群から選ばれるそれの化学前駆体から得られることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第1材料が、下記構造式(I)の1種以上の活性化ビニルモノマー(類)から得られることを特徴とする請求項1に記載のプロセス:
【化1】

式中、R、R、R及びRは、互いに独立して、次の有機官能基から成る群から選ばれる有機基である:水素、ヒドロキシル、アミン、チオール、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、イミド−エステル、酸ハロゲン化物、酸無水物、ニトリル、コハク酸イミド、フタルイミド、イソシアナート、エポキシド、シロキサン、ベンゾキノン、ベンゾフェノン、カルボニルジイミダゾール、パラ−トルエンスルホニル、パラ−ニトロフェニルクロロフォルメート、エチレン系、ビニル及び芳香族。
【請求項7】
、R、R及びRのなかの少なくとも1種類が、カチオンを錯化できる官能基であることを特徴とする請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第1材料が、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸グリシジル、アクリルアミド及びとりわけアミノエチル、アミノプロピル、アミノブチル、アミノペンチル及びアミノヘキシルメタクリルアミド、シアノアクリレート、ポリエチレングリコールジメチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、パラ−クロロスチレン、N−ビニルピロリドン、4−ビニルピリジン、ビニルハロゲン化物、塩化アクリロイル及び塩化メタアクリロイル、並びにそれの誘導体のようなビニルモノマーから成る群から選ばれるビニルモノマーの重合により得られるポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記第1材料が、膜の形で前記表面上に配置されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1材料が、遠心分離、吹付け、浸漬、電解重合及び電解グラフト化から選ばれる技術により前記表面上に配置されることを特徴とする請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第2材料が、電着され得る材料であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第2材料の前駆体が、前記材料のイオンであることを特徴とする請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記第2材料が金属であり、前記第2材料の前駆体がこの金属のイオンであることを特徴とする請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第2材料の前駆体が、銅イオン、亜鉛イオン、金イオン、錫、チタン、バナジウム、クロム、鉄、コバルト、リチウム、ナトリウム、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、イットリウム、ニオビウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ランタニド及びアクチニドの各イオンから成る群から選ばれることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記第2材料が、沈殿、結晶化、架橋及び凝集から選ばれる技術により堆積され得る材料であることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記第2材料の前駆体が、前記第2材料の不溶性塩であることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項17】
前記第2材料の前駆体用の溶媒でもあり第1材料用の溶媒でもある挿入溶液であって、前記第2材料の前駆体を含む前記挿入溶液によって前記第2材料の前駆体が、前記表面上に配置された前記第1材料に挿入されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記第2材料の前駆体用の溶媒又は分散剤でもあり、前記第1材料を膨潤する溶液でもある挿入溶液であって、前記第2材料の前駆体を含む前記挿入溶液を使用して、前記第2材料の前駆体が、前記表面上に配置された前記第1材料に挿入されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記表面上に配置された前記第1材料の中に前記第2材料の前駆体を挿入することにある工程が、前記第1材料又は前記第1材料の前駆体も前記第2材料の前駆体も含む溶液を使って前記表面上に前記第1材料を配置することにある工程と同時に実施されることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記挿入溶液が水溶液であることを特徴とする請求項17又は18に記載のプロセス。
【請求項21】
前記第2材料の前駆体が、電着及び沈殿から選ばれる技術により前記第1材料へ転化されることを特徴とする請求項5および13に記載のプロセス。
【請求項22】
前記表面が導電性又は半導体性の表面であり、第1材料がビニルポリマーであり、第2材料が金属であり、及びこの金属の前駆体がこの金属のイオンであることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項23】
導電性又は半導体性の基板と金属との間の界面強化のための、請求項1に記載のプロセス。
【請求項24】
マイクロエレクトロニクスにおける相互接続部品の製造のための、請求項1に記載のプロセス。
【請求項25】
金属表面の耐食処理のための、請求項1に記載のプロセス。
【請求項26】
生体内に移殖され得る物体の表面処理のための、請求項1に記載のプロセス。
【請求項27】
バイオチップの製造のための、請求項1に記載のプロセス。
【請求項28】
触媒特性を持つ表面の製造のための、請求項1に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2006−519311(P2006−519311A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502178(P2006−502178)
【出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050058
【国際公開番号】WO2004/074537
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】