説明

表面への分子の非特異的結合を低減するためのフッ素化非イオン性界面活性剤の使用

本発明は、固相材料を、2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤と接触させることにより、特定的には固相材料中、より特定的には疎水性部分を含む固相材料中の表面への分子の非特異的結合を低減するための材料、方法、およびキットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多くの生物学的アッセイでは、ポリペプチドのような標的分子は、精製が必要である。これは、たとえば、アフィニティー分離を用いて達成可能である。
【0002】
アフィニティー分離は、1種の分子または一群の分子に他の分子または一群の分子が特異的に結合することを利用して達成される任意の分離として定義されうる。アフィニティー分離は、血清や血漿のような複合混合物から分析物(たとえば、典型的には、タンパク質や核酸のような高分子)を捕捉するために使用される。分析物を捕捉した後、夾雑物は、洗浄除去され、分析物(すなわち、標的分子)は、周知のアッセイプロトコルを用いて検出され、かつ/またはさらなる処理に供すべく固相材料から取り出される。
【0003】
これらの分離は、バッチ法またはクロマトグラフィー法として実施可能であり、一般的には、固体担体材料を含む。アフィニティークロマトグラフィーに一般に好適な固体担体材料(すなわち固相材料)は、周知であり、典型的には、キャリヤーへのリガンドまたは結合剤の結合を含む。しかしながら、多くの固体担体材料は、リガンドと特異的に相互作用しないタンパク質のような望ましくない成分に非特異的に結合することが実証されている。
【0004】
アフィニティー担体に改良を加える試みでは、高フッ素化イソシアネートアンカー基を介してリガンドまたは結合剤を表面に結合して有する不活性なペルフルオロカーボンポリマーキャリヤーを使用することが必要とされている(たとえば、米国特許第4,954,444号明細書(エヴリー(Eveleigh)ら)を参照されたい)。また、米国特許第4,619,897号明細書(羽藤(Hato)ら)には、所定の深さまでペルフルオロアルキル界面活性剤を浸透させることにより片側に親水性をもたせたフッ素樹脂メンブレン上への酵素の固定が開示されている。こうして得られた非対称機能性メンブレンは、その後、酵素固定を達成するために、酵素および架橋剤(たとえばグルタルアルデヒド)で処理される。
【0005】
アフィニティー分離および固体担体を必要とする他の分離がそのような有効な技術であるので、しかも現在利用可能な担体が種々の欠点を抱えているので、改良された方法および材料(アフィニティー担体として実際に機能するものであってもよいしそうでなくてもよい)が必要とされている。
【0006】
既公開情報および他の予備知識について論述したが、そのような物質が報告済み、既知、または一般常識の一部であることを承認するものではない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、表面への分子の非特異的結合を低減するための材料、方法、およびキットを提供する。より詳細には、特定の実施形態では、本発明は、サンプルから特定の標的分子(たとえばポリペプチド)を単離するための、より特定的には、固相材料への非特異的結合に基づく標的物質の損失を減少させるための、材料、方法、およびキットを提供する。
【0008】
一実施形態では、本発明は、表面への標的分子の非特異的結合を低減する方法を提供する。この方法は、標的分子を含むサンプルを提供するステップと;疎水性部分と捕捉部位とを含む固相材料を提供するステップと;2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤を提供するステップと;任意に、二次ブロッキング剤を提供するステップと;固相材料をフッ素化非イオン性界面活性剤に接触させて、かつ任意に、固相材料を二次ブロッキング剤に接触させて、固相材料の疎水性部分(すなわち、非特異的結合に関与する表面)の少なくとも一部をブロッキングするステップと;ブロッキングされた固相材料をサンプルに接触させて、サンプルの標的分子の少なくとも一部を捕捉部位に固着させるステップと;任意に、ブロッキングされた固相材料からサンプルの固着された標的分子の少なくとも一部を取り出すステップと;を含む。捕捉部位は、疎水結合または共有結合された基または分子を含みうる。
【0009】
他の実施形態では、本発明は、表面への標的分子の非特異的結合を低減する方法を提供する。この方法は、標的分子を含むサンプルを提供するステップと;ポリテトラフルオロエチレンフィブリルマトリックスとマトリックスに絡ませた収着性粒子(すなわち、捕捉部位を含む粒子)とを含む固相材料を提供するステップと;2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤を提供するステップと;任意に、二次ブロッキング剤を提供するステップと;固相材料をフッ素化非イオン性界面活性剤に接触させて、かつ任意に、固相材料を二次ブロッキング剤に接触させて、ポリテトラフルオロエチレンフィブリルマトリックス(すなわち、非特異的結合に関与する固相材料の表面)の少なくとも一部をブロッキングするステップと;ブロッキングされた固相材料をサンプルに接触させて、生物学的サンプルの標的分子の少なくとも一部を収着性粒子に固着させるステップと;ブロッキングされた固相材料からサンプルの固着された標的分子の少なくとも一部を取り出すステップと;を含む。
【0010】
他の実施形態では、本発明は、表面への分子の非特異的結合を低減する方法を提供する。この方法は、疎水性部分を含む固相材料を提供するステップと;2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤を提供するステップと;任意に、二次ブロッキング剤を提供するステップと;固相材料をフッ素化非イオン性界面活性剤に接触させて、かつ任意に、固相材料を二次ブロッキング剤に接触させて、疎水性部分(すなわち、非特異的結合に関与する固相材料の表面)の少なくとも一部をブロッキングするステップと;を含む。
【0011】
他の実施形態では、本発明は、表面への標的分子の非特異的結合を低減する方法を提供する。この方法は、標的分子を含むサンプルを提供するステップと;疎水性部分と1種以上の疎水結合された捕捉タンパク質とを含む固相材料を提供するステップと;2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤を提供するステップと;固相材料をフッ素化非イオン性界面活性剤に接触させて、固相材料の疎水性部分の少なくとも一部をブロッキングするステップと;ブロッキングされた固相材料をサンプルに接触させて、サンプルの標的分子の少なくとも一部を1種以上の捕捉タンパク質に固着させるステップと;任意に、ブロッキングされた固相材料からサンプルの固着された標的分子の少なくとも一部を取り出すステップと;を含む。
【0012】
他の実施形態では、表面を改質する方法を提供する。この方法は、疎水性部分を含む固相材料を提供するステップと;タンパク質を提供しかつタンパク質を固相材料に接触させて、タンパク質を疎水結合させるステップと;2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤を提供するステップと;固相材料をフッ素化非イオン性界面活性剤に接触させて、固相材料への他の分子の非特異的結合を低減するステップと;を含む。
【0013】
本発明はまた、本発明に係る種々の方法を実施するためのキットを提供する。
【0014】
一実施形態では、キットは、疎水性部分を含む固相材料と;2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤と;任意選択の二次ブロッキング剤と;本発明に係る方法を実施するための説明書と;を含む。所望により、キットにおいて、フッ素化非イオン性界面活性剤は、固相材料上に配置されている。
【0015】
他の実施形態では、キットは、ポリテトラフルオロエチレンフィブリルマトリックスとマトリックスに絡ませた収着性粒子とを含む固相材料と;2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤と;任意選択の二次ブロッキング剤と;本発明に係る方法を実施するための説明書と;を含む。
【0016】
本発明はまた、固相材料を提供する。一実施形態では、本発明は、フッ素化非イオン性界面活性剤が上に配置された固相材料を含む材料であって;固相材料が、ポリテトラフルオロエチレンフィブリルマトリックスとマトリックスに絡ませた収着性粒子とを含み;かつフッ素化非イオン性界面活性剤が、2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含む;材料を提供する。
【0017】
他の実施形態では、本発明は、フッ素化非イオン性界面活性剤が上に配置された固相材料を含む材料であって;固相材料が熱誘起相分離メンブレンを含み;かつフッ素化非イオン性界面活性剤が、2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含む;材料を提供する。
【0018】
他の実施形態では、本発明は、フッ素化非イオン性界面活性剤が上に配置された固相材料を含む材料であって;固相材料が高内相エマルジョンフォームを含み;かつフッ素化非イオン性界面活性剤が、2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含む;材料を提供する。
【0019】
定義
本明細書中で使用される「ポリペプチド」は、アミノ酸よりなるポリマーを意味し、アミノ酸よりなる特定の長さのポリマーを意味するものではない。したがって、ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質、および酵素という用語は、天然に存在するかまたは合成に由来するか(たとえば、組換え法によりもしくは化学的にもしくは酵素的に合成されるか)にかかわらず、ポリペプチドの定義の範囲内に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、たとえば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化などをも包含する。
【0020】
「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、同義的に用いられて、任意の長さの高分子形のヌクレオチドを意味し、さらには、DNA(たとえば、ゲノムDNA、cDNA、またはプラスミドDNA)、RNA(たとえば、mRNA、tRNA、またはrRNA)、およびPNAを意味する。それは、たとえば、限定されるものではないが、二本鎖もしくは一本鎖の構造、環状プラスミド、比較的短いオリゴヌクレオチド、PNAとも呼ばれるペプチド核酸(ニールセン(Nielsen)ら,化学会総説誌(Chem.Soc.Rev.),第26巻,p.73−78(1997年)に記載されている)などの多種多様な形態をとりうる。核酸は、全染色体または染色体の一部を含みうるゲノムDNAでありうる。DNAは、コード配列(たとえば、mRNA、tRNA、および/もしくはrRNAをコードする配列)ならびに/または非コード配列(たとえば、セントロメア、テロメア、遺伝子間領域、イントロン、トランスポゾン、および/もしくはマイクロサテライト配列)を含みうる。核酸は、天然に存在するヌクレオチド、さらには人造ヌクレオチドもしくは化学修飾ヌクレオチド、突然変異ヌクレオチドなどのいずれをも含みうる。核酸は、非核酸成分、たとえば、ペプチド(PNAに見られるようなペプチド)、標識(放射性同位体または蛍光マーカー)などを含みうる。
【0021】
「単離された」とは、標的分子(すなわち標的物質)がそれらが最初に見いだされたサンプルから取り出されていることを意味する。これは、元のサンプル中に元々存在していた溶媒以外の任意の他の物質を必ずしも除去することなく標的分子を単に濃縮することを含む。それはまた、他の物質(たとえば、脂質、塩などのような細胞成分)から標的分子を分離することを含む。より好ましくは、単離された標的分子は、本質的に精製されたものである。「本質的に精製された」とは、夾雑物(たとえば、脂質や塩のような細胞成分)の除去に関して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも95%の純度の標的物質を意味する。これらのパーセントは、標的分子とサンプル中の溶媒以外の夾雑物との全量を基準にした標的分子(たとえば、タンパク質、DNA、RNA、PNA)の量を意味する。したがって、「本質的に精製された」という用語は、一般的には、単離された標的分子の後続使用を妨害する可能性のある化合物が除去されるように、細胞成分または反応夾雑物の大部分をサンプルから分離することを意味する。
【0022】
「固着する」または「固着」または「結合」とは、ファンデルワールス相互作用、静電相互作用、アフィニティー結合、または物理的捕捉のような弱い相互作用を含めて多種多様な機構による可逆的保持を意味する。この用語の使用は、作用機序を示唆するものではないが、吸着機序および吸収機序を含む。
【0023】
「捕捉部位」とは、物質が固着する固相材料上の部位を意味する。典型的には、捕捉部位は、固相材料に共有結合または疎水結合のいずれかで結合された官能基または分子を含む。
【0024】
「非特異的結合」とは、材料の構成により規定されない形で分子が疎水性相互作用を介して固相材料の表面に固着することを意味する。
【0025】
「固相材料」とは、多種多様な有機材料および/または無機材料を含んでいてもよい材料を意味する。そのような材料は、天然源および/または合成源の有機化合物および/または無機化合物の反復単位(同一であっても異なっていてもよい)で構成されたポリマーから作製可能である。
【0026】
「界面活性剤」とは、それが溶解されている媒体の表面張力または界面張力を低下させる物質を意味する。
【0027】
「comprises(含む)」という用語およびその変化形は、これらの用語が明細書および特許請求の範囲に現われた場合、限定的な意味を有するものではない。
【0028】
本明細書中で使用する場合、単数形(「a」、「an」、「the」)、「at least one(少なくとも1)」、および「one or more(1以上)」は、同義的に用いられて、1以上を意味する。
【0029】
同様に、本明細書中では、終点による数値範囲の記述は、その範囲内に入るすべての数値を包含する(たとえば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを包含する)。
【0030】
上記の発明の概要は、本発明の開示された各実施形態やすべての実施態様について記載することを意図したものではない。
【0031】
以下の説明により、例示的な実施形態をより具体的に示す。本出願全体を通していくつか箇所では、具体例のリストにより模範的内容が提供されるが、具体例は、種々の組合せで使用可能である。
【0032】
いずれの場合においても、記載のリストは、代表群としての役割を果たすにすぎず、排他的リストとして解釈されるべきものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、表面への分子の非特異的結合を低減するための方法およびキットを提供する。より詳細には、本発明に係る方法およびキットは、固相材料への非特異的結合に基づく標的物質の損失を低減するのに有用である。さらにより詳細には、本発明は、ポリペプチドおよびポリヌクレオチド(すなわち核酸)ならびに小有機分子のような標的分子をサンプルから単離する方法、好ましくは精製および回収する方法を提供する。他の選択肢として、本発明に係る特定の方法およびキットは、分子の望ましくない結合を低減するのに有用であり、これは、ELISAおよび他のイムノアッセイ、タンパク質ブロッティングアッセイ、およびタンパク質−タンパク質相互作用アッセイに有用である。
【0034】
固相材料は、疎水性部分と捕捉部位とを含む。これらの捕捉部位は、さまざまな方法で固相材料に結合させることが可能である。たとえば、それらは、固相材料に共有結合させるかまたは疎水結合させることが可能である。たとえば、固相材料が収着性粒子を含む場合、これらの粒子は、典型的には、捕捉部位を含み、捕捉部位は、典型的には、標的分子に結合しうる(すなわち、標的分子を捕捉しうる)リガンドにより提供される。他の選択肢として、固相材料がそのような収着性粒子を有していない場合、疎水性捕捉分子は、たとえば、疎水性相互作用を介して固相材料の疎水性部分に結合させることが可能である。そのような疎水結合される分子は、典型的には、標的分子に結合しうる(すなわち、標的分子を捕捉しうる)タンパク質である。
【0035】
驚くべきことに、疎水性部分を含む固相材料への分子の非特異的結合(たとえば、標的物質に見られるような非特異的結合)は、固相材料を対象のサンプルに接触させる前に固相材料をフッ素化非イオン性界面活性剤に接触させることにより減少させることが可能であることを見いだした。フッ素化非イオン性界面活性剤は、2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含む。特定の状況下では、非特異的結合をさらに低減するために、固相材料を二次ブロッキング剤(たとえばブロッキングタンパク質)に接触させることも可能である。したがって、表面への分子の非特異的結合の低減(すなわち減少)は、フッ素化非イオン性界面活性剤で前処理されていない表面を基準にしたものである。
【0036】
さらに、固相材料に疎水結合された捕捉分子(たとえば捕捉タンパク質)により捕捉部位が提供される場合、驚くべきことに、本明細書に記載の界面活性剤はそのような捕捉部位を除去しないことを見いだした。
【0037】
本発明に従って単離される物質は、たとえば、サンプル中の特定の標的分子(たとえば、核酸またはタンパク質)の存在を検出するためのアッセイに有用であろう。そのようなアッセイは、疾患の予測および診断、法医学、疫学、ならびに公衆衛生において重要である。たとえば、単離されたDNAは、個人において感染性ウイルスまたは突然変異遺伝子の存在を検出するために、ハイブリダイゼーションおよび/または増幅に付すことが可能であり、これにより、個体が感染または遺伝的原因の疾患を患う可能性を決定することが可能になる。他の例では、単離された抗体または抗原を用いて、疾患を診断することが可能である。スクリーニングされる何百もしくは何千ものサンプル中の1つのサンプルで感染性ウイルスまたは突然変異を検出する能力は、疾患を患う危険性の高い人々の早期診断または疫学において、たとえば、HIV感染、癌、もしくは癌への罹患性の早期発見、または疾患に関する新生児のスクリーニング(早期発見が診断および治療に役立つ可能性がある)において、実質的な重要性をもつようになっている。このほか、本方法はまた、培養細胞または生化学反応系から核酸またはタンパク質を単離するために、基礎研究実験室で使用することも可能である。
【0038】
典型的には、標的物質(すなわち標的分子)を含有するサンプルは、フロースルー型容器中で処理されるが、この容器は、本発明に必要な要件ではない。
【0039】
固相材料
本発明に係る方法に有用な固相材料は、多種多様な有機材料および/または無機材料を含みうる。好ましい材料は、標的分子(たとえば、タンパク質のような生体分子)を保持することが可能である。そのような材料は、疎水性部分を含む。本発明に関連して、疎水性部分とは、水の表面張力未満(たとえば72ダイン/cm未満)、好ましくはナイロンの臨界表面張力未満(たとえば43ダイン/cm未満)の臨界表面張力を有する材料を意味する。典型的には、固相材料は、有機高分子マトリックスを含む。
【0040】
固相材料は、好ましくは、略安定な水分含量になるまで乾燥される。典型的には、次に、その安定な水分含量を保持するように乾燥状態で貯蔵される。
【0041】
一般に好適な材料は、化学的に不活性であり、物理的かつ化学的に安定であり、しかもさまざまな生物学的サンプルに対して適合性がある。好適なポリマーの例としては、たとえば、ポリオレフィンおよびフッ素化ポリマーが挙げられる。固相材料は、典型的には、使用前、塩および他の夾雑物を除去するために洗浄される。固相材料は、好ましくは、たとえば、ピペット、シリンジ、もしくはより大型のカラム、マイクロタイタープレート、またはマイクロ流体デバイスのようなフロースルー型容器中で使用されるが、そのような容器を必要としない懸濁法を使用することも可能である。
【0042】
本発明に係る方法に有用な固相材料は、多種多様な形態の多種多様な材料を含みうる。たとえば、材料は、粒子もしくはビーズ(遊動状態または固定状態でありうる)、繊維、フォーム、フリット、マイクロポーラスフィルム、メンブレン、またはマイクロ複製表面を備えた基材の形態でありうる。固相材料が粒子を含む場合、粒子は、好ましくは、良好な流体流動特性が確保されるように、均一、球状、かつ剛性である。
【0043】
本発明のフロースルー用途では、そのような材料は、大分子が均一にかつ損傷を受けずに送入および送出されるように、しかも大きい表面積が提供されるように、典型的には、遊動多孔性網状構造の形態である。好ましくは、そのような用途では、固相材料は、比較的大きい表面積、たとえば、1平方メートル毎グラム(m2/g)以上の表面積を有する。フロースルー型デバイスを使用する必要のない用途では、固相材料は、多孔性マトリックスであってもなくてもよい。したがって、メンブレンもまた、本発明に係る特定の方法に有用なこともある。
【0044】
粒子またはビーズを使用する用途では、それらをサンプルに導入するかまたはサンプルを粒子/ビーズの床に導入し、たとえば、遠心によりそれから除去することが可能である。他の選択肢として、任意に接着剤がコーティングされていてもよい不活性な基材(たとえば、ポリカーボネートまたはポリエチレン)上に、さまざまな方法(たとえば、噴霧乾燥)により、粒子/ビーズをコーティング(たとえばパターンコーティング)することが可能である。所望により、表面積を増大させて精製機能を強化するために、基材をマイクロ複製することが可能である。また、たとえば、酸素プラズマ法、e−ビーム法もしくは紫外線法、熱処理法、またはコロナ処理法で、前処理することも可能である。この基材は、たとえば、マイクロ流体デバイスのリザーバーで、カバーフィルムとして使用可能であるかまたはカバーフィルムに積層可能である。
【0045】
一実施形態では、固相材料は、フィブリルマトリックスを含み、それに粒子を絡ませてもよいしそうでなくもよい。フィブリルマトリックスは、多種多様な繊維のいずれをも含みうる。典型的には、繊維は、水性環境に不溶である。例としては、ガラス繊維、ポリオレフィン繊維(とくに、ポリプロピレンおよびポリエチレンのマイクロ繊維)、アラミド繊維、フッ素化ポリマー繊維(とくにポリテトラフルオロエチレン繊維)、および天然セルロース系繊維が挙げられる。繊維の混合物を使用することが可能であり、それらは、標的分子の結合に対して活性であっても不活性であってもよい。好ましくは、フィブリルマトリックスは、少なくとも15ミクロンかつ1ミリメートル以下、より好ましくは500ミクロン以下の厚さのウェブを形成する。
【0046】
使用する場合、粒子は、典型的には、水性環境に不溶である。それらは、1種の材料で作製することも可能であるし、被覆粒子の場合のように材料の組合せで作製することも可能である。それらは、膨潤性であっても非膨潤性であってもよい。それらは、標的分子に対するアフィニティーに関して選択することが可能である。いくつかの水膨潤性粒子の例は、米国特許第4,565,663号明細書(エレーデ(Errede)ら)、同第4,460,642号明細書(エレーデ(Errede)ら)、および同第4,373,519号明細書(エレーデ(Errede)ら)に記載されている。水に対して非膨潤性の粒子は、米国特許第4,810,381号明細書(ハーゲン(Hagen)ら)、同第4,906,378号明細書(ハーゲン(Hagen)ら)、および同第4,971,736号明細書(ハーゲン(Hagen)ら);ならびに同第5,279,742号明細書(マーケル(Markell)ら)に記載されている。粒子の混合物を使用することが可能であり、それらは、標的分子の結合に対して活性であっても不活性であってもよい。
【0047】
被覆粒子を使用する場合、コーティングは、好ましくは、水不溶性または有機溶媒不溶性の材料である。コーティングは、タンパク質のような標的分子が固着するものであってもなくてもよい。したがって、コーティングされるベース粒子は、無機物であっても有機物であってもよい。ベース粒子は、有機基が共有結合されたシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどのような無機酸化物を含みうる。
【0048】
フィブリルマトリックスを含む好適な固相材料の例は、米国特許第5,279,742号明細書(マーケル(Markell)ら)、同第4,906,378号明細書(ハーゲン(Hagen)ら)、同第4,153,661号明細書(リー(Ree)ら)、同第5,071,610号明細書(ハーゲン(Hagen)ら)、同第5,147,539号明細書(ハーゲン(Hagen)ら)、同第5,207,915号明細書(ハーゲン(Hagen)ら)、および同第5,238,621号明細書(ハーゲン(Hagen)ら)に記載されている。
【0049】
ポリテトラフルオロエチレンマトリックス(PTFE)を含むものが、とくに好ましい。たとえば、米国再発行特許第RE.36,811号明細書(マーケル(Markell)ら)には、PTFEフィブリルマトリックスと、マトリックスに絡ませた収着性粒子と、を含む固相抽出媒体が開示されている。ただし、粒子は、30重量パーセント超かつ100重量パーセントまでの多孔性有機粒子と、70重量パーセント未満0重量パーセントまでの多孔性(有機物被覆または有機物非被覆)無機粒子と、を含み、収着性粒子対PTFEの比は、重量基準で40:1〜1:4の範囲内である。
【0050】
とくに好ましい固相材料は、ミネソタ州セントポールのスリーエム・カンパニー(3M Company,St.Paul,MN)からエムポア(EMPORE)という商品名で入手可能である。エムポア(EMPORE)技術の基本原理は、任意の収着剤粒子を用いて粒子担持メンブレンまたはディスクを形成する能力にある。粒子は、ポリテトラフルオロエチレンの不活性マトリックス内に強固に保持一体化される(典型的には、重量基準で90%の収着剤:10%のPTFE)。PTFEフィブリルは、本質的に粒子の活性を妨害しない。エムポア(EMPORE)メンブレン製造法では、結果として、同一サイズの粒子を用いて作製された従来の固相抽出(SPE)カラムまたはカートリッジで達成できるよりも稠密かつ均一な抽出媒体が得られる。
【0051】
他の好ましい実施形態では、固相材料(たとえばマイクロポーラス熱可塑性高分子担体)は、離間してランダムに分布した不均一な形状の複数の等軸熱可塑性ポリマー粒子がフィブリルで結合されていることにより特性付けられるマイクロポーラス構造を有する。粒子は、互いに離間して配置され、それらの間にマイクロポアの網状構造を提供する。粒子は、フィブリルにより互いに結合され、フィブリルは、各粒子から隣接粒子まで放射状に広がる。粒子またはフィブリルは、いずれか一方または両方が疎水性であってもよい。そのような好ましい材料の例は、Hg表面積法により測定したときに大きな表面積、多くの場合40平方メートル/グラム程度の表面積および5ミクロンまでのポアサイズを有する。
【0052】
このタイプの繊維材料は、誘起相分離の使用を伴う好ましい方法により作製可能である。これは、均一な混合物を形成するのに十分な温度で熱可塑性ポリマーを不混和性液体と溶融ブレンドするステップと、物品を溶液から所望の形状に成形するステップと、造形品を冷却して、液体とポリマーとの相分離を誘起し、最終的にポリマーを固化し、液体の実質的部分を除去し、マイクロポーラスポリマーマトリックスが残るようにするステップと、を含む。この方法および好ましい材料については、米国特許第4,726,989号明細書(ムロジンスキー(Mrozinski))、同第4,957,943号明細書(マカリスター(McAllister)ら)、および同第4,539,256号明細書(シップマン(Shipman))に詳細に記載されている。そのような材料は、熱誘起相分離メンブレン(TIPSメンブレン)と呼ばれ、とくに好ましい。
【0053】
他の好適な固相材料は、米国特許第5,328,758号明細書(マーケル(Markell)ら)に開示されているような不織材料を含む。この材料は、高収着効率のクロマトグラフィーグレード粒子を含む圧縮型または融合型微粒子含有不織ウェブ(好ましくはブローンマイクロ繊維)を含む。
【0054】
他の好適な固相材料としては、たとえば、米国特許公開第2003/0011092号明細書(タン(Tan)ら)に記載されているHIPEフォームとして知られる材料が挙げられる。「HIPE」または「高内相エマルジョン」とは、反応性連続相(典型的には油相)と、油相に対して非混和性の不連続相または共連続相(典型的には水相)と、を含むエマルジョンを意味する。ただし、非混和性相は、エマルジョンの少なくとも74体積パーセントを構成する。HIPEから作製される多くの高分子フォームは、典型的には、ほぼ連続気泡である。これは、気泡のほとんどまたはすべてが閉塞されずに隣接気泡と連通した状態にあることを意味する。そのような本質的に連続気泡のフォーム構造中の気泡は、典型的にはフォーム構造内の1つの気泡から他の気泡に流体が移動できる程度に十分に大きい気泡間ウィンドウを有する。
【0055】
好ましくは、固相材料は、標的分子を結合する官能基を含む。たとえば、好ましい一実施形態では、固相材料は、リガンド分子すなわちリガンド分子の基と共有結合を形成しうる反応性官能基を有するかまたは反応性官能基を有するように処理されるであろう。これらの共有結合されたリガンド分子(本発明の特定の実施形態では、捕捉部位を形成する)は、サンプル由来の標的分子に結合するであろう。たとえば、米国特許第5,999,935号明細書(ラスムッセン(Rasmussen)ら)には、連続多孔性マトリックス内に組み込まれた共有結合反応性粒子を含む固相材料が開示されている。ただし、該反応性粒子は、中間活性化工程を必要とすることなく求核性リガンドと共有化学結合を直接形成可能な共有結合反応性官能基を含む表面を有する。
【0056】
これに関連して、固相材料の例は、エムフェイズ(EMPHAZE)(ミネソタ州セントポールのスリーエム・カンパニー(3M Company,Saint Paul,MN))のような反応化学特性を有するいくつかの市販のビーズのいずれか1種を含有する固相材料でありうる。ポリペプチド、核酸、小分子のようなリガンドは、ビーズ製造業者により提供される手順を用いて、これらの固相材料に共有結合させることが可能である。
【0057】
捕捉部位はまた、疎水結合された分子によっても提供可能である。これらとしては、たとえば、アフィニティー化学過程で使用されるようなタンパク質が挙げられる。これらとしては、タンパク質A、プロテインG、アビジン、ストレプトアビジン、レクチン(たとえば、ジャカリンおよびコンカナバリンA)、抗体、ならびにレセプタータンパク質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の捕捉部位としては、金属アフィニティーリガンド、ボロネート、タンパク質結合染料(たとえばシバクロンブルー3GA)、ポリペプチド、プロテインA模擬体、およびオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。そのような捕捉分子は、さまざまな方法で固相材料に添加することが可能である。典型的には、それらは、捕捉分子の水溶液(さまざまな塩濃度を含みうる)で固相材料を飽和させることにより添加される。
【0058】
捕捉部位の種々の組合せまたは混合物を固相材料中に組み込むことが可能である。
【0059】
界面活性剤
固相材料への分子の非特異的結合は、非イオン性フッ素化界面活性剤で処理することにより減少される。フッ素化界面活性剤は、2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含む。
【0060】
これに関連して、疎水性セグメントとは、水相−有機相二相混合物中の界面活性剤の分散体の水相−有機相界面において有機相内に優先的に配向するセグメントとして定義される。親水性セグメントとは、上記の系の水相内に配向するセグメントとして定義される。
【0061】
界面活性剤は、界面活性剤の水溶液を用いて適用可能であるが、所望により、有機溶媒を使用することが可能である。界面活性剤は、そのままの状態でまたは溶液もしくは分散体(広い濃度範囲内にありうる)として、適用可能である。界面活性剤は、ディッピング、フロースルーコーティング、ナイフコーティングなどのようなコーティング法を用いて適用可能である。
【0062】
界面活性剤の適用後、典型的には、過剰の界面活性剤を除去するために表面を洗浄するが、驚くべきことに、このようにしても、依然として有益な結果が得られる。必ずしも本発明を限定するものではないが、この結果として界面活性剤が固相材料上に単分子層を形成すると考えられる。他の選択肢として、界面活性剤を固相材料に適用して乾燥させることにより、より厚い層を形成することが可能である。
【0063】
例示的なフッ素化界面活性剤(すなわちフルオロ界面活性剤)としては、フルオロポリオキシエチレン界面活性剤であるゾニール(ZONYL)FSN、FSN−100、FSO−100、およびFSO−300のようなゾニール(ZONYL)という商品名でデュポン(DuPont)(デラウェア州ウィルミングン(Wilmington,DE))から入手可能なもの、およびノベック(NOVEC)FC4432およびFC4430という商品名でスリーエム・カンパニー(3M Company)(ミネソタ州セントポール(St.Paul,MN))から入手可能なものが挙げられる。フルオロ界面活性剤は、固相材料の表面を被覆することにより、他の物質の結合を防止するものと思われる。
【0064】
他の例示的な好ましいフッ素化界面活性剤は、ポリアルキルエンオキシ側鎖を含有しかつアクリル酸またはメタクリル酸と共重合させてポリアクリレートまたはポリメタクリレートを形成しうるノナフルオロブタンスルホニルフルオリドから誘導される。特定例は、たとえば、米国特許公開第2003/0139550号明細書(サヴュ(Savu)ら)および同第2003/0139549号明細書(サヴュ(Savu)ら)に開示されている。
【0065】
そのようなフッ素化界面活性剤は、次式(I):
【化1】

〔式中、長方形ボックスは、重合性鎖中またはポリマー鎖中の結合を表し;Rfは、(C3〜C10)線状もしくは分枝状過フッ素化基(好ましくは線状基、より好ましくは−C49基)であり;RおよびR2は、それぞれ独立して、水素またはC1〜C4アルキル基(好ましくは、水素またはメチル)であり、nは、2〜10の整数(好ましくはn=2〜3、より好ましくはn=2)であり;そしてxは、少なくとも1である〕
で示される少なくとも1種の単位を含む。
【0066】
好ましくは、そのようなフッ素化界面活性剤は、次式(II):
【化2】

〔式中、長方形ボックスは、重合性鎖中またはポリマー鎖中の結合を表し;R、R1、およびR2は、それぞれ独立して、水素またはC1〜C4アルキル基(好ましくは、水素またはメチル)であり;nは、2〜10の整数(好ましくはn=2〜3、より好ましくはn=2)であり;R3は、連結一体化されて2〜6個の炭素原子を有する直線状もしくは分枝状アルキレン−オキシ基、または12〜20個の炭素原子を有する直線状もしくは分枝状アルキレン基であり;そしてx、y、およびzは、それぞれ独立して、少なくとも1である〕
で示されるフッ素化界面活性剤である。
【0067】
特定の実施形態では、式IIで示される界面活性剤のR3は、式(EO)p−(PO)q−(EO)pまたは(PO)q−(EO)p−(PO)qで示される基である。特定の実施形態では、pは1〜128の整数であり、かつqは0〜54の整数である。
【0068】
特定の実施形態では、式IIで示される界面活性剤のR3は、式(PO)q−(EO)p−(PO)qで示される。特定の実施形態では、RおよびR1はメチルであり、qは0であり、かつpは4〜10である。特定の実施形態では、qは9〜22であり、かつpは14〜164である。
【0069】
特定の実施形態では、式IIで示される界面活性剤のR3は、式(EO)p−(PO)q−(EO)pで示される。特定の実施形態では、pは7〜128の整数であり、かつqは21〜54の整数である。特定の実施形態では、pは11であり、かつqは21である。
【0070】
任意選択の二次ブロッキング剤
任意選択の二次ブロッキング剤は、ELISAアッセイ、イムノブロッティングなどで慣用されるものを包含する。例としては、ポリペプチド、特定的にはタンパク質、たとえば、カゼイン、ウシ胎仔血清、ウシ血清アルブミン、脂質結合タンパク質などが挙げられる。それらはまた、ポリA、ニシンDNA、サケ精子DNAなどのような核酸をも包含する。それらはまた、界面活性剤、安定剤、脂質、および生物学的溶液(たとえば乳)をも包含する。所望により、二次ブロッキング剤の種々の組合せを使用することが可能である。
【0071】
これらは、たとえば、ELISAアッセイ、イムノブロッティングなどで慣用される量で使用可能である。たとえば、二次ブロッキング剤(たとえば、脱脂粉乳、BSA、トゥイーン20(TWEEN20))は、たとえば、5重量%の脱脂粉乳溶液、3重量%のBSA溶液、または0.2重量%のトゥイーン20(TWEEN20)溶液から適用可能である。
【0072】
ブロッキング剤は、界面活性剤の前または界面活性剤と同時に添加可能であるが、典型的には、界面活性剤の後で添加されることはない。
【0073】
サンプル
本発明に係る方法は、多種多様なサンプル、特定的には生物学的サンプル、たとえば、体液(たとえば、全血、血清、尿、唾液、脳脊髄液、精液、もしくは滑膜リンパ液)、種々の組織(たとえば、皮膚、毛髪、毛皮、糞便、腫瘍、もしくは臓器(肝臓や脾臓など))、細胞培養物、または細胞培養物上清などから、標的分子(たとえば、生体高分子(ポリペプチドやポリヌクレオチドなど)および小有機分子)を単離するために使用可能である。サンプルは、食料サンプル、飲料サンプル、発酵ブロス、疾患もしくは障害を診断、治療、監視、もしくは治癒するために使用される臨床サンプル、法医学サンプル、または農業サンプル(たとえば、植物もしくは動物に由来するサンプル)、あるいは環境サンプル(たとえば、土壌、塵埃、もしくは廃物)でありうる。
【0074】
生物学的サンプルは、生物学的起源または生化学的起源のサンプルである。本発明に係る方法に使用するのに好適なサンプルは、哺乳動物源、植物源、細菌源、または酵母源に由来しうる。生物学的サンプルは、単細胞の形態もしくは組織の形態または生物学的起源の液体でありうる。細胞または組織は、in vitro培養に由来するものでありうる。注目すべき点として、本発明に係る特定の実施形態では、前処理(たとえば、溶解、濾過など)をまったく行うことなく全血が使用される。他の選択肢として、全血を前処理し、画分を本発明に係る方法でサンプルとして使用することが可能である。
【0075】
サンプルは、水中または有機媒体中に溶解または分散された固体サンプル(たとえば固形組織)でありうる。たとえば、サンプルは、臓器ホモジネート(肝臓、脾臓など)でありうる。
【0076】
サンプルのタイプは、本発明の限定要件ではない。
【0077】
単離された標的分子(たとえば、ポリペプチド、DNA、またはRNA)は、好ましくは、さらなる精製や洗浄を行うことなく多種多様な用途に使用可能である。たとえば、ポリペプチドは、サンプル中の標的分子の定量、リガンド分子と一緒になって形成される免疫複合体の定性的同定、結合リガンドの活性の試験で使用可能である。たとえば、核酸は、増幅、配列決定、標識化、アニーリング、制限消化、連結、逆転写酵素、ハイブリダイゼーション、サザンブロット、ノーザンブロットなどに使用可能である。
【0078】
標的分子は、不純なサンプル、部分的に純粋なサンプル、または純粋なサンプルから、本発明に従って単離可能である。かなり不純なサンプルからでさえも標的分子を単離しうるので、元のサンプルの純度は、それほど重要ではない。より高純度の元のサンプルを望むのであれば、本発明に係る方法を実施する前に当業者に公知の任意の従来手段によりサンプルを処理してもよい。たとえば、サンプルを本発明に係る方法に付す前に不溶性物質のような特定の不純物を除去するために、サンプルを処理してもよい。
【0079】
標的分子は、ポリペプチド、ポリヌクレオチド(すなわち核酸)、または小有機分子でありうる。標的分子は、任意の分子量でありうる。たとえば、ポリペプチドは、発現後修飾を有する数アミノ酸長から何千アミノ酸長までの大型および小型のインタクトなタンパク質、任意の数およびサイズの化学修飾および官能基を有する修飾ポリペプチドでありうる。
【0080】
標的分子を含有するサンプルは、さまざまな体積でありうる。たとえば、適用される体積は、1リットル程度の大きい体積もしくは1μL程度の小さい体積またはさらに小さい体積でありうる。サンプルサイズは、典型的には、所望の用途および装置によって異なる。
【0081】
本発明に係る方法に従って固相材料から取り出しうる標的物質の量は、フッ素化非イオン性界面活性剤を使用しないときに取り出しうる量よりも多い。フッ素化非イオン性界面活性剤で処理された固相材料から取り出しうる標的物質の量は、好ましくは固着された標的分子の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも98%の量である。
【0082】
溶出方法
固着された標的分子は、さまざまな溶出試薬を用いて溶出させることが可能である。そのような溶出試薬は、緩衝剤、界面活性剤(カチオン性、アニオン性、非イオン性、もしくは双イオン性でありうる)、酸性溶液、塩基性溶液、および高濃度の塩(たとえば、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウムなど)を含有する溶液を含みうる。有利なことにかつ驚くべきことに、固着された標的分子は、単にpHおよび/もしくはイオン強度を変化させることによりまたは変性剤を添加することにより、取り出すことが可能である。典型的には、溶出試薬は、水素結合を破壊しない試薬である。したがって、一般的には、有機溶媒は、溶出試薬として使用されない。
【0083】
好適な溶出緩衝剤の例としては、グリシン−酢酸、トリフルオロ酢酸、N−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸](HEPES)、3−[N−モルホリノ]プロパンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン−N,N’−ビス[2−エタンスルホン酸](PIPES)、2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)、TRIS−EDTA(TE)緩衝剤、クエン酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、炭酸塩、および重炭酸塩などが挙げられる。そのような物質の種々の組合せを使用することが可能である。溶出試薬中の溶出緩衝剤の濃度は、当業者であれば容易に決定可能である。
【0084】
使用される溶出試薬の量は、捕捉される標的の所望の回収率、方法が実施されるデバイスの形式、標的の最大許容希釈率などのいくつかの因子に依存する。典型的には、捕捉される標的の回収率は、溶出試薬の量の増加に伴って増加し、溶出を繰り返すごとに漸減する。スペースの制約上、デバイス形式(たとえばマイクロ流体デバイスなど)により、使用される溶出試薬の量は制限される。過剰の溶出試薬を使用すると、標的が希釈されることになろう。これらの方法において記載の精製に続く工程で使用不能になる前の許容しうる目標希釈率には、実用限界が存在すると思われる。たとえば、希薄溶液は、後続の工程の前に濃縮が必要になることもあり、これは、時間および装置の制約上、可能なこともあれば、不可能なこともある。
【0085】
デバイスおよびキット
本発明に係る方法は、遠心、吸引、または圧力などの手段により固相材料を貫通して溶液の移動が容易に行える濾過デバイス(フロースルー型デバイスと呼ばれる)で実施可能である。他のデバイスとしては、マイクロタイタープレートおよびマイクロ流体デバイスが挙げられる。
【0086】
本方法はさまざまなデバイスで使用可能であるが、マイクロタイターデバイスのさまざまな例示的実施形態は、米国特許第5,264,184号明細書(アイスタ(Aysta)ら)、同第5,464,541号明細書(アイスタ(Aysta)ら)、および同第5,620,663号明細書(アイスタ(Aysta)ら)、ならびに米国特許公開第2003/0080454号明細書および同第2003/0155034号明細書に記載されている。マイクロ流体デバイスのさまざまな例示的実施形態は、米国特許公開第2002/0047003号明細書(2003年4月25日)に記載されている。
【0087】
本発明はまた、ホルダー(たとえば、シリンジフィルターホルダーもしくはスピンフィルターホルダーのようなフィルターホルダー、または微粒子状物質を保持するための保持フリットを両端部に有するカラム)を用いるまたは用いない固相材料と、非イオン性フッ素化界面活性剤(ニートまたは溶液のいずれか)と、任意に二次結合剤と、使用説明書(たとえば、標的分子を固着させるためのおよび任意にそのような分子を溶出させるための説明書)と、を含みうるキットを提供する。好ましくは、本発明は、内部に固相材料を有するフロースルー型容器と非イオン性フッ素化界面活性剤とを含むキットを提供する。
【0088】
本発明に係るキット内に含まれうる他の要素としては、洗浄溶液、カップリング緩衝液、クエンチング緩衝液、ブロッキング緩衝液、溶出緩衝剤などのような従来の試薬が挙げられる。本発明に係るキット内に含まれうる他の要素としては、スピンカラム、カートリッジ、96ウェルフィルタープレート、シリンジフィルター、捕集ユニット、シリンジなどのような従来の装置が挙げられる。
【0089】
キットは、典型的には、キットの内容物を収容するために使用される1つ以上の物理構造体を意味するパッケージング材料を含む。パッケージング材料は、好ましくは、夾雑物を含まない環境を提供するように、周知の方法により作製可能である。パッケージング材料は、キットの内容物を示すラベルを有していてもよい。このほか、キットは、キット内の物質がどのように利用されるか示す印刷された説明書を含有する。本明細書中で使用する場合、「パッケージ」という用語は、ガラス、プラスチック、紙、フォイルなどのような固体のマトリックスまたは物質を意味する。
【0090】
「説明書」は、典型的には、たとえば、固相材料の調製、試薬とサンプルの相対量、保守期間、温度、緩衝剤条件などを含めて、本発明に係る種々の方法について記述した明瞭な表現を含む。
【0091】
用途
標的分子は、アフィニティー精製として知られる方法を用いてサンプルから分離可能である。この方法では、標的分子と特異的に相互作用するリガンド分子が同定される。これらのリガンド分子は、アフィニティー精製担体を形成する固相材料に結合または固定される(共有結合または非共有結合のいずれかで)。そのような担体をブロッキング剤に暴露して、開放吸着部位をブロッキングすることが可能である。サンプルを固相材料上のリガンド分子と相互作用させると、サンプル中の標的分子の一部は、リガンドに結合する。サンプルを除去したとき、これらの結合された標的分子は、固相材料上に保持される。固相材料から非標的分子を除去するために、さらなる洗浄を行ってもよい。最終的に、結合された標的分子の一部は、溶出試薬を用いて溶出される。これらの精製された標的分子は、アフィニティー精製により精製されたと言われる。
【0092】
特定の状況で(たとえば、細胞オルガネラ内で)一緒に相互作用する一群の標的分子は、免疫複合体分離またはタンパク質対タンパク質相互作用分離として知られる方法を用いて同定しサンプルから取り出すことが可能である。この方法では、標的分子との複合体の一部を形成する1種以上のリガンド分子が同定される。これらのリガンド分子は、アフィニティー精製担体を形成する固相材料に結合または固定される(共有結合または非共有結合のいずれかで)。そのような担体をブロッキング剤に暴露して、開放吸着部位をブロッキングすることが可能である。サンプルを固相材料上のリガンド分子と相互作用させると、サンプル中の標的分子の一部は、リガンドに結合して複合体を形成する。サンプルを除去したとき、これらの結合された標的分子複合体は、固相材料上に保持される。これらの複合体の一部でない分子を固相材料から除去するために、さらなる温和な洗浄を行ってもよい。最終的に、結合された標的分子複合体の一部は、溶出試薬を用いて溶出される。
【0093】
免疫複合体捕捉またはタンパク質対タンパク質複合体捕捉は、生物学的系においてタンパク質の機能および会合を研究する際に使用可能である。他の分子の機能および会合を研究するために、同一の原理を使用することも可能である。
【0094】
本発明の特定の実施形態、とくに、固相材料に疎水結合する分子(たとえば捕捉タンパク質)により捕捉部位が提供される実施形態は、ELISAおよびRIAのようなタンパク質に基づくアッセイで使用可能である。それらは、特定のタンパク質(たとえば、血餅の形成を防止するタンパク質)では被覆されるが他のタンパク質は結合されない医療デバイスを有することが望ましい医療用途で使用可能である。機能性タンパク質は表面に結合されるが、他のタンパク質または微生物の固着を促進する他の生体分子は吸着できないようにすることが望ましいこともある。
【0095】
本発明の目的および利点について以下の実施例によりさらに説明するが、これらの実施例に記載の特定の材料およびその量ならびに他の条件および細目は、本発明を過度に限定するように解釈すべきものでない。
【実施例】
【0096】
実施例1: 高分子フッ素化界面活性剤または非フッ素化界面活性剤のいずれかを含有するブロッキングカクテルの比較
エムフェイズAB1(EMPHAZE AB1)反応性担体を担持したペルフルオロポリ−テトラフルオロエチレン(PTFE)メンブレンを作製し、プロテインAで誘導体化した。高分子フルオロカーボン非イオン性界面活性剤または非フッ素化低分子界面活性剤のいずれかを含有するウシ血清アルブミン溶液を用いて、これをブロッキングした。その後、結合条件下においてメンブレンを放射性標識化ヒトIgG抗体の溶液でチャレンジした。その後、メンブレンを溶出処理し、溶出液を計数し、IgGの回収率を決定した。
【0097】
メンブレンの作製:
エムフェイズAB1(EMPHAZE AB1)反応性担体(ミネソタ州セントポールのスリーエム・カンパニー(3M Co.,St.Paul,MN))を担持したフィブリル化PTFEメンブレンを米国特許第4,906,378号明細書に開示されている方法に従って作製した。最終的なメンブレンは、90重量%のエムフェイズAB1(EMPHAZE AB1)であり、約0.8mmの厚さであった。この実験で使用するために、摩擦嵌めポリプロピレンリテーナーリングを用いて直径1.26cmのメンブレンディスクを6mLのポリプロピレンシリンジバレルの底に固定することにより、試験カートリッジを作製した。
【0098】
I−125標識化IgGの調製:
フレイカー(Fraker)およびスペック(Speck)(生化学生物物理学研究通信(Biochem Biophys.Res.Commun.),第80巻,p.849−857(1978年))の方法を用いて、ヒトIgGタンパク質抗体(No.009−0102,ペンシルバニア州ギルバーツビルのロックランド・カンパニー(Rockland Co.,Gilbertsville,PA))を放射性ヨウ素(I−125)で標識化した。
【0099】
緩衝液:
結合緩衝液:0.9M硫酸ナトリウムを含む0.10Mリン酸ナトリウム,pH7.5
洗浄緩衝液:リン酸緩衝食塩水(No.28372,イリノイ州ロックフォードのピアス(Pierce,Rockford,IL))
クエンチング緩衝液:3.0Mエタノールアミン,pH9.5
ブロッキング緩衝液:0.1%トリトンX−100(TRITON X−100)非イオン性界面活性剤(ミズーリ州セントルイスのシグマ・カンパニー(Sigma Co.,St.Louis.MO))または0.1%FC4432高分子フルオロカーボン界面活性剤(ミネソタ州セントポールのスリーエム・カンパニー(3M Co.,St.Paul,MN))のいずれかを含む洗浄緩衝液中の0.1%ウシ血清アルブミン
溶出緩衝液:2%酢酸を含む0.1Mグリシン,pH2.0
【0100】
手順:
1. 結合緩衝液中の1.5mg/mLのプロテインA(No.rPA50,マサチューセッツ州ウォルサムのレプリゲン・コーポレーション(RepliGen Corp.,Waltham,MA))溶液の0.5mLサンプルをカートリッジに添加し、室温で30分間インキュベートし、その後、真空を用いてメンブレンに通し吸引した。
2. 次に、カートリッジを1mLの結合緩衝液で洗浄し、続いて2mLの洗浄緩衝液で洗浄した。
3. 次に、2(2.0)mLのクエンチング緩衝液をメンブレンに通し吸引した。第2の2.0mLのクエンチング緩衝液を添加して2時間インキュベートし、次に、吸引した。次に、カートリッジを12mLの洗浄緩衝液で洗浄した。
4. 2(2.0)mLのブロッキング緩衝液をカートリッジに通し吸引し、第2の2.0mLアリコートを添加し、1時間インキュベートし、次に、メンブレンに通し吸引した。
5. 次に、カートリッジを15mLの洗浄緩衝液で洗浄した。
6. 洗浄緩衝液中の10マイクログラムのI−125標識化ヒトIgGを含有する0.4mLサンプルをカートリッジに添加し、15分間インキュベートした。次に、吸引し、そして2mLの洗浄緩衝液でカートリッジを洗浄した。洗浄工程を反復した。
7. 次に、溶出緩衝液の2つの別々の2mLアリコートで標識化IgGを溶出させた。
【0101】
この実験で得られたすべての画分およびメンブレンを保持し、計数し、I−125標識化IgGサンプルの最終結果を決定した。
【0102】
結果:
表1は、非イオン性高分子フルオロカーボン界面活性剤(ノベックFC4432(NOVEC FC4432))の使用によりIgGの回収率が顕著に高くなったことを示している。
【0103】
【表1】

【0104】
実施例2: 非イオン性高分子フルオロカーボン界面活性剤でブロッキングすることによる複合生体液からのタンパク質回収率の改善
I−125標識体を複合生体液中にスパイクし、次に、プロテインAで誘導体化されたエムフェイズAB1(EMPHAZE AB1)担持PTFEメンブレンに結合させ、そしてそれから溶出させた。
【0105】
メンブレン:
実験1に記載されているように作製されたメンブレンを使用し(ただし、0.77cmのディスクの形態にした)、96ウェルポリプロピレンフロースループレート(米国特許第5,264,184号明細書(アイスタ(Aysta)ら)、同第5,464,541号明細書(アイスタ(Aysta)ら)、および同第5,620,663号明細書(アイスタ(Aysta)ら)に開示されている)のウェルの底にポリプロピレンリテーナーリングで固定した。プレート遠心機を用いて遠心力により溶液をメンブレンに通し吸引した。
【0106】
手順:
使用した試薬および緩衝液はすべて、実験1で調製したときと同一のものであった。ただし、結合緩衝液の代わりに、標識化IgGをX−VIVO−20増殖培地(ニュージャージー州イーストラザーフォードのキャンブレックス・バイオ・サイエンス(Cambrex Bio Science Walkersville,Inc.,East Rutherford,NJ))に溶解させ、ブロッキング緩衝液は、洗浄緩衝液中の0.1%ノベックFC4432(NOVEC FC4432)または洗浄緩衝液のみのいずれかであった。すべての溶出液およびメンブレンを捕集し、計数し、I−125IgGの最終結果を決定した。
【0107】
1. 500マイクログラムのプロテインAを含有する結合緩衝液の0.166mLアリコートをプレートのウェル中にピペットで添加し、30分間インキュベートした。次に、この溶液を遠心し、捕集プレートに導入した。
2. 次に、ウェルを0.8mLの洗浄緩衝液で洗浄した。
3. クエンチング緩衝液の0.7mLアリコートを各ウェル中にピペットで添加し、遠心した。第2の0.7mLアリコートを各ウェルに添加し、プレートを2時間インキュベートした。この溶液を遠心し、ウェルを洗浄緩衝液の4つの0.8mLアリコートで洗浄した。
4. ブロッキング緩衝液または洗浄緩衝剤の0.7mLアリコートを各ウェルに添加し、次に、遠心した。
5. 次に、ウェルを洗浄緩衝液の4つの1mLアリコートで洗浄した。
6. 10マイクログラムのI−125標識化IgGを含有するX−VIVO−20増殖培地の0.135mLアリコートを各ウェルに添加し、プレートを15分間インキュベートした。次に、プレートを遠心してサンプルを除去し、0.5mLの洗浄緩衝液で洗浄した。
7. 次に、溶出緩衝液の2つの0.3mLアリコートを用いてIgGを溶出させた。
【0108】
結果:
表2は、ノベックFC4432(NOVEC FC4432)フルオロ界面活性剤でブロッキングすることによりIgGの回収率が増大することを示している。
【0109】
【表2】

【0110】
実施例3: 非イオン性高分子フルオロ界面活性剤および非イオン性低分子界面活性剤を用いるブロッキングの比較
メンブレンを処理し、次に、フルオレセインタグ付きタンパク質でチャレンジすることにより、タンパク質吸着に対するポリプロピレン担持フィブリル化PTFEメンブレンの抵抗性に及ぼす非イオン性高分子フルオロ界面活性剤または非イオン性低分子フルオロ界面活性剤のいずれかによる処理の影響を決定した。
【0111】
メンブレン:
ポリプロピレン粉末(ニューヨーク州タリータウンのマイクロパウダーズ・インコーポレーテッド(No.140S,Micropowders,Inc.,Tarrytown,NY))を用いて記載のごとくポリプロピレン粒子担持フィブリル化PTFEメンブレンを作製した。メンブレンは、約90重量%のポリプロピレンを含有し、約0.8mmの厚さであった。この実験のために、それを直径0.77cmのディスクの形態に切り出し、空の2.1cmポリプロピレンクロマトグラフィーカラムの底にポリプロピレンリテーナーリングで固定した。真空を用いて溶液をメンブレンに通し吸引した。
【0112】
試薬:
洗浄緩衝液: リン酸緩衝食塩水(No.28372,イリノイ州ロックフォードのピアス・インコーポレーテッド(Pierce Inc.,Rockford,IL))
フルオレセイン標識化IgG: 洗浄緩衝液中のIgG−FITC(No.F9636,ミズーリ州セントルイスのシグマ・カンパニー(Sigma Co.,St.Louis.MO))100マイクログラム/mL
非イオン性高分子フルオロ界面活性剤: 洗浄緩衝液中0.1%ノベックFC4430(NOVEC FC4430)フルオロ界面活性剤
非イオン性低分子フルオロ界面活性剤: 洗浄緩衝液中の0.1%ゾニールFSG(ZONYL FSG)フルオロ界面活性剤(デラウェア州ウィルミングトンのイー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.duPont deNemours & Co.,Willmington,DE))
【0113】
手順:
1. メンブレンをメタノールで湿潤させ、0.75mLの洗浄緩衝液で洗浄した。
2. メンブレンを0.75mLの界面活性剤または未処理メンブレンの場合0.75mLの洗浄緩衝液で処理した。
3. 30(30)mLの洗浄緩衝液をメンブレンに通し吸引した。
4. 0.2mLのフルオレセイン標識化IgG溶液を通過させることにより、メンブレンをチャレンジした。
5. メンブレンを洗浄緩衝液の2つの0.75mLアリコートで洗浄した。
6. フルオレセインフィルターセットを備えたライカ(Leica)MZFL III蛍光実体顕微鏡を用いてメンブレンの蛍光を調べた。
【0114】
結果:
未処理のメンブレンおよびゾニールFSG(ZONYL FSG)非イオン性低分子フルオロ界面活性剤で処理されたメンブレンは、強い蛍光を発したことから、フルオレセイン標識化タンパク質がそれに吸着されて洗浄緩衝液により洗浄除去されえなかったことが示唆される。ノベックFC4432(NOVEC FC4432)非イオン性高分子フルオロ界面活性剤で処理されたメンブレンは、蛍光を示さなかったことから、それはタンパク質を吸着していなかったことが示唆される。
【0115】
実施例4: アフィニティー固相抽出用のブロッキング剤としての非イオン性高分子フルオロカーボン界面活性剤の使用
この実験では、アフィニティーリガンドが疎水性相互作用のみにより固体担体に結合されるアフィニティー抽出におけるブロッキング剤として非イオン性高分子フルオロカーボン界面活性剤を使用しうることを例証する。
【0116】
試薬:
2.1cmクロマトグラフィーカラム中のポリプロピレンメンブレン、フルオレセイン標識化IgG溶液(IgG−FITC)、非イオン性高分子フルオロカーボン界面活性剤溶液(FC4430)、および洗浄緩衝液(WB)は、実施例3で使用したものと同一であった。1M硫酸ナトリウムを含有するpH9.0の35mM CHES緩衝液中に3mg/mLでプロテインA(rPA50,マサチューセッツ州ウォルサムのレプリゲン・コーポレーション(RepliGen Corp.,Waltham,MA))溶液を調製した。溶出緩衝液(EB)は、実施例1で使用したものと同一であった。
【0117】
手順:
空のカラム中の4つのポリプロピレンメンブレンを真空マニホールドに取り付け、0.75mLのメタノールで洗浄し、続いて0.75mLの水で洗浄した。メンブレン1および2は、プロテインA溶液で処理しなかった。それらをプロテインAが溶解された0.3mLのCHES/硫酸塩緩衝液で処理した。次に、メンブレン3および4を0.3mLのプロテインA溶液で処理した。次に、メンブレンを表3にまとめられている溶液で処理した。各溶液のアリコート(0.75mL)を使用した。ただし、フルオレセイン標識化IgG(IgG−FITC)溶液のときは、0.2mLアリコートを使用した。
【0118】
【表3】

【0119】
次に、実施例3に詳述されている方法により、3つのメンブレンの蛍光を調べた。
【0120】
結果:
メンブレン1は、プロテインAでもFC4430でも処理しなかった。それは、顕著な蛍光を示したことから、IgG−FITCが結合されて溶出緩衝液で除去されえなかったことが示唆される。メンブレン2は、プロテインAで処理しなかったが、FC4430では処理した。それは、蛍光を示さなかったことから、IgG−FITCが結合されなかったことが示唆される。メンブレン3は、プロテインAおよびFC4430の両方で処理したが、溶出されなかった。それは、顕著な蛍光を示したことから、IgG−FITCが結合されたことが示唆される。メンブレン4は、プロテインAおよびFC4430の両方で処理し、溶出緩衝液で溶出された。それは、蛍光を示さなかったことから、IgGが結合されなかったことが示唆される。
【0121】
結果から示唆されるように、プロテインAおよびFC4430の処理の不在下では、IgGは、疎水性相互作用により結合するが、プロテインAアフィニティー溶出に有利な条件下で溶出しない(メンブレン1)。FC4430処理のみでは、IgG−FITCは、まったく結合しない(メンブレン2)。プロテインAで処理してからFC4430で処理した場合、IgGは予想どおり結合し(メンブレン3)、溶出させることができる(メンブレン4)。
【0122】
したがって、FC4430は、処理前に疎水性相互作用により吸着されたタンパク質の除去を引き起こすことはないが、処理後は吸着を阻害する。
【0123】
本発明に対する種々の修正態様および変更態様は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者には自明なものとなるであろう。当然のことながら、本発明は、本明細書中に記載の例示的な実施形態および実施例により過度に限定されるものではなく、そのような実施例および実施形態は、単なる例として提示されているにすぎず、本発明の範囲は、本明細書中の冒頭に示される特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面への標的分子の非特異的結合を低減する方法であって、
標的分子を含むサンプルを提供するステップと;
疎水性部分と捕捉部位とを含む固相材料を提供するステップと;
2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤を提供するステップと;
任意に、二次ブロッキング剤を提供するステップと;
該固相材料を該フッ素化非イオン性界面活性剤に接触させて、かつ任意に、該固相材料を該二次ブロッキング剤に接触させて、該固相材料の疎水性部分の少なくとも一部をブロッキングするステップと;
ブロッキングされた該固相材料を該サンプルに接触させて、該サンプルの標的分子の少なくとも一部を該捕捉部位に固着させるステップと;
任意に、ブロッキングされた該固相材料から該サンプルの固着された標的分子の少なくとも一部を取り出すステップと;
を含む方法。
【請求項2】
前記固相材料が多孔性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固相材料が、ポリテトラフルオロエチレンフィブリルマトリックスと該マトリックスに絡ませた収着性粒子とを含み、該収着性粒子が捕捉部位を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記二次ブロッキング剤が、ポリペプチド、核酸、界面活性剤、安定剤、脂質、生物学的サンプル、またはそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フッ素化界面活性剤が、次式(I):
【化1】

〔式中、長方形ボックスは、重合性鎖中またはポリマー鎖中の結合を表し;Rfは、(C3〜C10)線状もしくは分枝状過フッ素化基であり;RおよびR2は、それぞれ独立して、水素またはC1〜C4アルキル基であり;nは、2〜10の整数であり;そしてxは、少なくとも1である〕
で示される少なくとも1個の単位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フッ素化界面活性剤が、次式(II):
【化2】

〔式中、長方形ボックスは、重合性鎖中またはポリマー鎖中の結合を表し;R、R1、およびR2は、それぞれ独立して、水素またはC1〜C4アルキル基であり;nは、2〜10の整数であり;R3は、連結一体化されて2〜6個の炭素原子を有する直線状もしくは分枝状アルキレン−オキシ基、または12〜20個の炭素原子を有する直線状もしくは分枝状アルキレン基であり;そしてx、y、およびzは、それぞれ独立して、少なくとも1である〕
で示されるフッ素化界面活性剤である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ブロッキングされた前記固相材料から前記サンプルの固着された標的分子の少なくとも一部を取り出すときに、固着された前記標的分子の少なくとも50%が放出される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ブロッキングされた前記固相材料から前記サンプルの固着された標的分子の少なくとも一部を取り出すときに、固着された前記標的分子の少なくとも90%が放出される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記捕捉部位が、疎水結合された分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
疎水性部分と捕捉部位とを含む固相材料を提供するステップが、
疎水性部分を含む固相材料を提供するステップと;
捕捉タンパク質を提供するステップと;
固相材料を捕捉タンパク質に接触させることにより捕捉タンパク質を疎水結合させて捕捉部位を提供するステップと;
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記捕捉タンパク質が、プロテインA、プロテインG、レクチン、抗体、アビジン、ストレプトアビジン、レセプタータンパク質、またはそれらの混合物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記捕捉部位が、共有結合された分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記共有結合された分子が、タンパク質、金属アフィニティーリガンド、ボロネート、タンパク質結合染料、ポリペプチド、プロテインA模擬体、オリゴヌクレオチド、またはそれらの混合物を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
表面への標的分子の非特異的結合を低減する方法であって、
標的分子を含むサンプルを提供するステップと;
ポリテトラフルオロエチレンフィブリルマトリックスと該マトリックスに絡ませた収着性粒子とを含む固相材料を提供するステップと;
2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤を提供するステップと;
任意に、二次ブロッキング剤を提供するステップと;
該固相材料を該フッ素化非イオン性界面活性剤に接触させて、かつ任意に、該固相材料を該二次ブロッキング剤に接触させて、該ポリテトラフルオロエチレンフィブリルマトリックスの少なくとも一部をブロッキングするステップと;
ブロッキングされた該固相材料を該サンプルに接触させて、生物学的サンプルの標的分子の少なくとも一部を該収着性粒子に固着させるステップと;
ブロッキングされた該固相材料から該サンプルの固着された標的分子の少なくとも一部を取り出すステップと;
を含む方法。
【請求項15】
表面への分子の非特異的結合を低減する方法であって、
疎水性部分を含む固相材料を提供するステップと;
2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤を提供するステップと;
任意に、二次ブロッキング剤を提供するステップと;
該固相材料を該フッ素化非イオン性界面活性剤に接触させて、かつ任意に、該固相材料を該二次ブロッキング剤に接触させて、該疎水性部分の少なくとも一部をブロッキングするステップと;
を含む方法。
【請求項16】
表面への標的分子の非特異的結合を低減する方法であって、
標的分子を含むサンプルを提供するステップと;
疎水性部分と1種以上の疎水結合された捕捉タンパク質とを含む固相材料を提供するステップと;
2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤を提供するステップと;
該固相材料を該フッ素化非イオン性界面活性剤に接触させて、該固相材料の疎水性部分の少なくとも一部をブロッキングするステップと;
ブロッキングされた該固相材料を該サンプルに接触させて、該サンプルの標的分子の少なくとも一部を該1種以上の捕捉タンパク質に固着させるステップと;
任意に、ブロッキングされた該固相材料から該サンプルの固着された標的分子の少なくとも一部を取り出すステップと;
を含む方法。
【請求項17】
表面を改質する方法であって、
疎水性部分を含む固相材料を提供するステップと;
タンパク質を提供しかつ該タンパク質を該固相材料に接触させて、該タンパク質を疎水結合させるステップと;
2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤を提供するステップと;
該固相材料を該フッ素化非イオン性界面活性剤に接触させて、該固相材料への他の分子の非特異的結合を低減するステップと;
を含む方法。
【請求項18】
疎水性部分を含む固相材料と;
2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤と;
任意選択の二次ブロッキング剤と;
請求項1に記載の方法を実施するための説明書と;
を含む、キット。
【請求項19】
前記フッ素化非イオン性界面活性剤が前記固相材料上で配置される、請求項18に記載のキット。
【請求項20】
疎水性部分を含む固相材料と;
2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤と;
任意選択の二次ブロッキング剤と;
請求項15に記載の方法を実施するための説明書と;
を含む、キット。
【請求項21】
前記フッ素化非イオン性界面活性剤が前記固相材料上で配置される、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
ポリテトラフルオロエチレンフィブリルマトリックスと該マトリックスに絡ませた収着性粒子とを含む固相材料と;
2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含むフッ素化非イオン性界面活性剤と;
任意選択の二次ブロッキング剤と;
請求項14に記載の方法を実施するための説明書と;
を含む、キット。
【請求項23】
フッ素化非イオン性界面活性剤が上に配置された固相材料を含む材料であって、
該固相材料が、ポリテトラフルオロエチレンフィブリルマトリックスと該マトリックスに絡ませた収着性粒子とを含み;かつ
該フッ素化非イオン性界面活性剤が、2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含む;
材料。
【請求項24】
前記フッ素化界面活性剤が、次式(I):
【化3】

〔式中、長方形ボックスは、重合性鎖中またはポリマー鎖中の結合を表し;Rfは、(C3〜C10)線状もしくは分枝状過フッ素化基であり;RおよびR2は、それぞれ独立して、水素またはC1〜C4アルキル基であり;nは、2〜10の整数であり;そしてxは、少なくとも1である〕
で示される少なくとも1個の単位を含む、請求項23に記載の材料。
【請求項25】
前記フッ素化界面活性剤が、次式(II):
【化4】

〔式中、長方形ボックスは、重合性鎖中またはポリマー鎖中の結合を表し;R、R1、およびR2は、それぞれ独立して、水素またはC1〜C4アルキル基であり;nは、2〜10の整数であり;R3は、連結一体化されて2〜6個の炭素原子を有する直線状もしくは分枝状アルキレン−オキシ基、または12〜20個の炭素原子を有する直線状もしくは分枝状アルキレン基であり;そしてx、y、およびzは、それぞれ独立して、少なくとも1である〕
で示されるフッ素化界面活性剤である、請求項23に記載の材料。
【請求項26】
フッ素化非イオン性界面活性剤が上に配置された固相材料を含む材料であって、
該固相材料が熱誘起相分離メンブレンを含み;かつ
該フッ素化非イオン性界面活性剤が、2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含む;
材料。
【請求項27】
前記フッ素化界面活性剤が、次式(I):
【化5】

〔式中、長方形ボックスは、重合性鎖中またはポリマー鎖中の結合を表し;Rfは、(C3〜C10)線状もしくは分枝状過フッ素化基であり;RおよびR2は、それぞれ独立して、水素またはC1〜C4アルキル基であり;nは、2〜10の整数であり;そしてxは、少なくとも1である〕
で示される少なくとも1個の単位を含む、請求項26に記載の材料。
【請求項28】
前記フッ素化界面活性剤が、次式(II):
【化6】

〔式中、長方形ボックスは、重合性鎖中またはポリマー鎖中の結合を表し;R、R1、およびR2は、それぞれ独立して、水素またはC1〜C4アルキル基であり;nは、2〜10の整数であり;R3は、連結一体化されて2〜6個の炭素原子を有する直線状もしくは分枝状アルキレン−オキシ基、または12〜20個の炭素原子を有する直線状もしくは分枝状アルキレン基であり;そしてx、y、およびzは、それぞれ独立して、少なくとも1である〕
で示されるフッ素化界面活性剤である、請求項26に記載の材料。
【請求項29】
フッ素化非イオン性界面活性剤が上に配置された固相材料を含む材料であって、
該固相材料が高内相エマルジョンを含み;かつ
該フッ素化非イオン性界面活性剤が、2個以上のフッ素化疎水性セグメントと1個以上の親水性セグメントとを含む;
材料。
【請求項30】
前記フッ素化界面活性剤が、次式(I):
【化7】

〔式中、長方形ボックスは、重合性鎖中またはポリマー鎖中の結合を表し;Rfは、(C3〜C10)線状もしくは分枝状過フッ素化基であり;RおよびR2は、それぞれ独立して、水素またはC1〜C4アルキル基であり;nは、2〜10の整数であり;そしてxは、少なくとも1である〕
で示される少なくとも1個の単位を含む、請求項29に記載の材料。
【請求項31】
前記フッ素化界面活性剤が、次式(II):
【化8】

〔式中、長方形ボックスは、重合性鎖中またはポリマー鎖中の結合を表し;R、R1、およびR2は、それぞれ独立して、水素またはC1〜C4アルキル基であり;nは、2〜10の整数であり;R3は、連結一体化されて2〜6個の炭素原子を有する直線状もしくは分枝状アルキレン−オキシ基、または12〜20個の炭素原子を有する直線状もしくは分枝状アルキレン基であり;そしてx、y、およびzは、それぞれ独立して、少なくとも1である〕
で示されるフッ素化界面活性剤である、請求項29に記載の材料。

【公表番号】特表2007−517217(P2007−517217A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546996(P2006−546996)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/038054
【国際公開番号】WO2005/066631
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】